提督「さあ、ドッキリを始めよう」
訳あり提督が所属艦娘全員にドッキリを仕掛けます。
ドッキリ種類多々。死んでみたドッキリからホラードッキリまで。
ヤンデレや行きすぎた感情表現をしてくる娘まで居る中、どうして彼は最後までドッキリを続けるのか。ぜひ、お楽しみください。
大和編、更新完了です。
後、そろそろリクエストを打ち切ろうと思います。理由は結構あるのですが、一番の理由はもう一つの方の作品の構成が出来上がったので、制作にうつろうと思ったからです。
たくさんのリクエスト、ありがとうございました。
提督「……時間が経つのもあっという間だな。
……やはり、やらなければならない、か。
これは、後々のことを考え、もし俺がいなくなったとしても、あの娘達が何とか頑張っていけるようにするために必要なんだ。
例え、嫌われようともやらなければならない。
そう……、
ドッキリを。」
0700 執務室
コンコン
大淀「失礼します。大淀、秘書官の任務のため参上しました。」
提督「お早う大淀。早速で悪いんだけど、
―――――帰っていいよ。」
大淀「……………え?」
提督「いや、深い意味はないよ。今日の書類が片付いたってだけだから。」
ほら、と提督は昨日のうちにやっておいた書類を大淀に見せる。
大淀「あら、本当ですね。………、しかし、私は秘書官という立場に身を置いています。書類がないからと言って、休みをもらうわけにはいきません。」
大淀(提督と一緒にいられないと考えるだけで胸が張り裂けてしまいそう。それっぽいことを言って何とかお側に置いてもらわねば!)
提督「………。」
想定外だ。普通、どの娘もお休みだと言えば、はしゃぎ回るほど喜ぶのに、大淀には通用しないと言うのか……!
……こうなっては仕方がない。難易度はかなり上がるが、本当のことを言って、大淀には何としてでもお休みをとってもらおう。
提督「大淀よ。」
大淀「はい!」
提督「実はだね、私にはやらねばならないことがあるのだよ。」
大淀「やらねばならないこと?」
提督「そうだ。」
大淀「一体、どんな…?」
提督「それはだなぁ、」
大淀「ゴクッ」
提督「…………ドッキリだ。」
大淀「…………………はい?」
提督「日頃なついてくれてると思っている彼女達も、蓋を開けたら、アラびっくり。実は俺のことなんて何とも思ってませんよ~!っていう娘がいるかもしれないじゃん!」
大淀「……はぁ。」
提督「その娘達の本心を確かめるべく、俺はドッキリをする。」
大淀(さっきまでの真面目な雰囲気はどこへやら。珍しく、私、なんて使ってるから、おかしいとは思ってはいたけど。)
提督「というより、本当に俺のこと嫌ってないか、ちょっと怖くてね。」
大淀「それなのにドッキリするのは怖くないと?」
提督「いや、怖いよ。でもさ、やっぱり確めたいじゃん?あの娘の本音。」
大淀「まあ、理由は分かりました。でも、いいんですか?私にそんなこと言って。私、先に色んな子にドッキリのこと、教えちゃいますよ?」
提督「そこは承知の上。それすらもはねのけて、俺は本音を聞き出して見せる!」
大淀「…わかりました。そうゆうことなら今日は引き下がります。……せいぜい頑張ってください。」
大淀(あぁ、提督と一緒にいたかったのに。)
大淀は執務室を出ていく。出る前に、なぜかこちらを一回チラ見したのは気になったが。
提督「さてと、まずは腹ごしらえだ。腹が減っては戦は出来ん、と言うしな。」
そうして提督も執務室を出たのであった。
食堂
\エェー!ウソォー!/
ホラ,ミテミテ.ヤバクナイ‥?
アノフタリガ,ソンナ/
何やら食堂が騒がしいな。
一体何だと言うのだ?
蒼龍「うわーーん!!提督ー!!」
飛龍「提督!助けてぇーーー!!!」
提督「おわぁ!何だ何だ!?」
二抗戦の二人が助けを求めて提督のところにくる。
どうして涙目なんだ?
蒼龍「アレ!アレ!!」
飛龍「アレ見てよ!提督!」
提督「アレ?」
そこには『青葉新聞』と大きく書かれた新聞が貼り出されていた。
『青葉新聞』
[意外な真実!二抗戦の二人の秘密の関係]
昨日の早朝、最近活躍している二抗戦の二人に話を聞きにいこうとしたところ、二人で抱きついて寝てる姿が確認された。
所々はだけてるのを見るに、これは二人で慰め合っていたのではと推測。
これから二人の仲がどう進展していくのか、気になるところである。
提督「……何だコレ?」
蒼龍「一昨日の夜にお酒飲み過ぎちゃって」
飛龍「よい潰れて寝ちゃったところを青葉に取られていたみたいなの!」
蒼龍「それで事実無根なことと関連づけられて~!うぅぅ…。」
提督「………。とうとうやりやがったな、アイツ。
よしわかった。ここは俺がこらしめてやろう。」
二抗戦's「提督ぅ!」ウルウル
とまぁ、こんなこともあり、最初の犠牲者は青葉に決定した。
~でっちあげの代償~
1000 執務室
青葉「失礼します。お呼びですか?提督。」
提督「お、来たね。青葉。」
ニコッ、柔らかい笑みを浮かべ、敢えて警戒心をとこうとする。
青葉「どうしたんです?」
提督「今朝の新聞、見させてもらったよ。」
青葉「お!本当ですか!?どうでした?面白かったですか!?」
提督「…。」ニコニコ
青葉「いやぁ、あんなレアな写真が撮れるなんて、青葉、思ってもいなくて」
提督「青葉」
提督は相変わらず笑みを浮かべていた。
けれど、どこか、いつもと違う。
青葉(な、何だろう?今、提督の青葉を呼ぶ声が、とても低くて威圧的な感じが…。)
青葉「て、提督?」
提督「言ったハズだよね?人のことで、でまかせを書くのはよくないって。何度も。
けれど、今まで注意だけで済ましていたのは、あくまで、俺のことだったからだ。
けどね、青葉。君はやってはいけないことをやってしまった。」
青葉「あ、いや、その、」
提督「二抗戦の二人、泣いてたよ。あんなこと、してないのにって。」
青葉「!!?」
提督「もう弁解の余地はないね。
青葉、君を、」
「解体する。」
青葉「!!そ、そんな!?」
提督「チャンスならたくさんあげてきたよね?でも、最後の最後に君は仲間を陥れようとした。これは許されることではない。」
青葉「ま、待ってください!青葉、そんなつもりじゃ」
提督「いい加減にしろ!!」
青葉「ヒッ!?」
提督「……言い訳は見苦しいぞ、青葉。俺も苦渋の判断なんだ。だが、もうこれ以上の被害が出る前に何とかしなければならないんだ。」
青葉「う、うぅ、そんなぁ…」ポロポロ
青葉が泣き出してしまう。本当は、青葉の音が優しいことくらい知っている。今回だって、ただちょっとお茶目をしちゃっただけなのだ。
けれどやらなければ!
そうしないといけないのだ!
―――――――――ドッキリのために。
青葉「許じで、許じでぐださい!提督ぅ」ポロポロ
提督「……ダメだ。」
青葉「うぅぅ…」ポロポロ
青葉(どうして…、どうしてこうなっちゃったんだろう?青葉はただ、皆が笑顔で笑ってくれれば、それで良かったのに。
そりゃぁ、ちょっとやりすぎなか?と思うところもあったけど、それでも、それでも青葉は。)
提督「それじゃあな青葉。これから言うのがお前に送る最後の言葉だ。」
青葉「うぅ、ひっく、いやぁあ…」ポロポロ
青葉(いや!いや!青葉、提督といられなくなるなんて、そんな!)
「ドッキリ大成功!!!」
青葉「………ふぇ?」
提督「解体っていうのは嘘だ。俺が可愛い青葉を解体するわけないだろう。」
青葉「…………。」ヘタ
青葉が何も言わずに尻餅をついてしまう。
けっこうパンチ力あったみたいだ。
青葉「……ふぅ、う、よがっだぁ~!」ウワーン!
提督「ごめんな、ちょっとやりすぎた。」ナデナデ
青葉「うぅぅ、うぅ~~!」ポロポロ
提督「でも、二抗戦の二人が涙目になってたのは本当な。
これからはちゃんと人のことを考えるように。」ナデナデ
青葉「はぃぃ~~~!」
提督は青葉が泣き止むまで頭をなで続けてあげた。
あの後、これからはあまりでまかせは書かないことを青葉に約束させ、
ドッキリのお礼として間宮券をあげた。
まさか青葉があそこまでガチ泣きするなんてな。結構心にくるものがある。
でも俺はドッキリを継続する。
このために入念な準備をしてきたのだ。
ここで止めるなんてことはあり得ない。
さぁ、次は誰にしようか?
~病まない雨~
提督「よし、時雨にする。
けれど、どうしたものか。もしかしたら、大淀がもうドッキリのことは伝えてるかもしれないし、
何度も解体というのは品がないしな。」
ふ~む、と提督は少し頭をひねる。
提督「致し方なしかな。アレで行こう。」
コンコン
時雨「提督、時雨だよ。入っていいかい?」
「どうぞ~」
時雨「失礼するよ。どうしたんだい?急な呼びだしでびっくりしたよ。」
提督「………すまないな。」
時雨「別に構わないよ。僕と提督の仲じゃないか。」
提督「そういう意味ではないんだ。」
時雨「?」
提督「……時雨。君に移動命令がでたんだ。」
時雨「え?」
提督「立花鎮守府に時雨を移動させよ、との命令がでた。」
時雨「ちょ、ちょっと待っておくれよ!どうして!?」
提督「立花鎮守府で戦力が不足しているらしくてな。しかも、駆逐艦の数が圧倒的にたりないらしい。
そこで、駆逐艦でありながら、主戦力としても活躍できるウチの時雨が選ばれたんだ。」
時雨「そ、そんな…。」
提督「……本当に、本当にすまない。」フルフル
提督は顔をふせ、震えていた。
時雨から見たら、提督は自分の無力さに怒りや憎しみを抱いているように見えるかもしれない。
時雨「…大丈夫だよ、提督。」
提督「時雨…?」
時雨「大丈夫。僕は提督と一緒にいるよ、いつまでも。
それを邪魔をするっていうなら、大本営だろうと容赦はしない。」ハイライトオフ
提督「時雨!?」
この雰囲気は非常にマズい。ヤンデレは個人的には好みだが、今回はドッキリなのだ。
こんなところでそれを発揮されたら困る。
提督「時雨、とりあえず詳しい話はまた夜にしよう。1800に再び執務室に来てくれ。」
時雨「ふふっ、わかったよ提督❤」
時雨が執務室を一度出ていった。
ドッキリに関しては無警戒に見えた。大淀から伝えられてなかったのかな。
提督「フゥ、後は手筈通りにやれば、」
そして提督はちゃっちゃっと準備を進めていった。
1523 執務室前 廊下
時雨(大本営か、どうやって潰そうかな。僕と提督の邪魔をするなんて、案外、大本営の人達は能無しかもしれないね。)ハイライトオフ
ーーーー。ーーー、ーーーーー。
時雨(ん?声が聞こえる。これは…執務室からだ!
提督かな?何を話しているんだろ。)
提督『いやぁ、これで厄介者が消えてくれるよ。』
時雨(厄介者?誰のことだろう?)
提督『時雨、確かに性能は良かったんだけどねぇ…。でもちょっとウザかったんだよね。』
時雨「!?」
提督『でも、これで一件落着だわ。本当、大本営様様だなぁ~。』
時雨「……。そっか、そうだったんだ。」
1800 執務室
コンコン
時雨「提督、時雨だよ。」
「ん、入れ~」
時雨「失礼するよ。」
提督「よし、それでは詳細を説明するぞ。立花鎮守府には~~~~~。」
提督は淡々と移動の話をつづける。
明らかに時雨の顔が暗くなってることに気づきながら。
提督「~~~~ということだ。話は以上だ。何か質問はあるか?」
時雨「………、1つだけ。」
提督「なんだい?」
時雨「提督にとって僕は一体、何だったんだい?」
提督「……。どういう意味だ?」
時雨「聞いちゃったんだよ。昼間、提督が一人言をいっているの。」
提督「……。そうだったのか。」
時雨「提督…、答えて…。」
提督「…。」
時雨「答えてよ!!」ポロポロ
あの時雨が泣き出した。
いつも笑顔ばかり見せてくれた、あの時雨がだ。
提督「…。」
時雨「どうして、何もいってくれないんだい?僕はただ、提督と、一緒に居られれば、それで良かったのに…。」ポロポロ
提督「…。」
時雨「お願いだよ…。嘘だと言ってくれよ…。」ポロポロ
提督「…。」
時雨「提督!!!」ポロポロ
提督「そうだなぁ…、まあお前とも話すのはもう今後ないだろうし、いいか。」
時雨「あ……。そっか…、そうなんだ。」ポロッ ポロッ
時雨(提督は、本当に僕のこと、ウザいと思っているようだ。……ずっと、ずっと提督のために、頑張っていたのに、全部裏目に出てた訳だ。……何で…、何で!!?)
提督「時雨、俺な…、」
時雨「………、う、ぅぅ、グスッ」ポロポロ
時雨(……提督、僕は君に嫌われてしまったの、かな?…はは、こんなの、今後どうやって生きていけばいいっていうんだい?……ひどい、ひどいよぉ…、提督…。)
提督「……?時雨、聞いてた?」
時雨「え…?あ、ごめん。聞いてなかった。」
提督「はぁ、だから、上。」
時雨「……上?」
時雨が提督に言われ、やっと顔を上にあげる。
[ドッキリ大成功]
時雨「…………え?」
提督「ごめんな時雨。これ、間宮券。」
時雨「ドッキリ……?一体どこまでが?」
提督「全部。」
時雨「えっと、移動の話は?」
提督「このために用意した嘘だ。」
時雨「で、でも!廊下で聞こえた、僕がウザいっていうのは」
提督「あれはな、カメラで丁度時雨が来るタイミングを見計らって、一芝居うっただけなんだよ。」
時雨「…。」
提督「いや、本当ごめんね。」
時雨「提督、やって良いことと悪いことがあると思うよ。
しばらく休ませてもらうよ。ダメとは言わせなから。」
提督「あ、あぁ、わかった。」
時雨「それじゃ、提督。」
提督「あ、待って時雨!」
時雨「…………なんだい?」
提督「時雨が俺のこと、どう思ってもいても、俺は時雨のこと大好きだからな」ニコッ
時雨「/////。
……全く、提督は卑怯だよ。」
提督「ははは、ごめんな。」
時雨「……ふふ。失礼するよ。」
提督「あぁ、今日は本当にごめんな。」
時雨「しばらく許してあげない、だ♪」
それだけ言って、時雨は執務室から退室した。
うむ、時雨がまだ重度のヤンデレじゃなくて良かった。
提督「もしそうだったら、俺、殺されてたかもな」ハハハハハ
時雨「……大好き、か…。
ふふ、まさかそんな言葉が聞けるとはね。
騙されたとはいえ、これはこれで良かったかもしれないね♪」
~壊れる者の抱き締め方~
提督「ふ、ふふふふ。遂にこの時がきた。我が真髄を試す時が。これにより、この計画の限界が見えるだろう。
絶対に成功させてみせよう!!
ふふふ、ふはははははは!!!」
提督「ふぅ、キャラ崩壊はここまででいいかな?けれど、次の相手は一筋縄ではいかない。だからこそ、チャンスは一度きり。
成功したとしても、腕の1本や2本は覚悟しないとね。」
1343 居酒屋鳳翔
提督「鳳翔さん、今いいかな?」
鳳翔「提督!どうしたんですか?」
提督「いや、実はね、今日これから大量の書類が届くんだ。それで、食堂まできて夜ご飯を頼む時間すら惜しいんだよ。だからね、
1800に夜ご飯を作って持ってきてもらえないかな?」
鳳翔「え?わ、私が、ですか?」
提督「うん。ダメかな?」
鳳翔「いえ!そんなことないです!誠心誠意作らせてもらいます!」
鳳翔(まさか、提督直々に頼みに来てくださるとは…。これは頑張らなくてはいけませんね♪)
鳳翔は自分を頼ってもらえたことに、とても喜んでいるようだった。
けれどまさか、これからあんなことが起こりうるとは思ってもいなかった。
1800 執務室前廊下
鳳翔(少し作りすぎてしまったかもしれませんね。でも、恐らく、あの口ぶりからして提督は、これから夜遅くまで仕事をすることになるでしょうし、これはこれで…。)
鳳翔は夕食を持って、執務室の前まで来る。
コンコン
鳳翔「提督、鳳翔です。夕食を、!?」
パリーン!
鳳翔「提督!何があったんですか!?提督!?………っ!失礼します!!」
何かの割れる音。
何があったかわからない鳳翔は、
提督の身に何かあったのでは!
そう思い、急いで執務室に入った。
そして、その予想は当たっていた。
提督「っぐ、…あがっ、がっ!」
提督は胸の辺りを押さえ、よろめいていた。
よく見たら、胸に注射器のようなものが刺さっている。
そして、執務室には割れた窓が1つ。
鳳翔(ま、まさか、狙撃!?)
しかし、それにしては妙である。
なぜ、狙撃ならば実弾ではなく注射器なのか?
というより、注射器なんてどうやって飛ばしたのか?
鳳翔(今はそんなことより提督を!)
鳳翔「提督!しっかりしてください提督!」
注射器の中身はすでに提督の中にうちこまれているようだった。
鳳翔「そんな…提督…、!?」
さっきまで、提督は倒れていたのだが、いきなり立ち上がった。
提督「…。」
鳳翔「……提督?」
提督「………………ぅぃ」
鳳翔「え?」
提督「WREEEEeeeeeeeeeeeey!!!!!」
鳳翔「!!?」
提督「そうか、そうだったのか!そうだ!やっとわかった!!」
鳳翔「え?え?提督?」
提督「俺の正体、それは、前代見門とまで言われる愚か者!自身の意思すら主張できない意気地無し!!」
鳳翔「!!?!?」
提督「ハハハハハ!!!なんということだ!俺は、俺は……、何も出来ないくs」
鳳翔「言わせません!!」ガバッ
提督「!」
鳳翔が提督に抱きついて、最後に言おうとした言葉を遮る。
鳳翔の目には涙が溜まったいた。
鳳翔「ご自分を卑下するのは止めてください!私は、私達は、アナタのことをそんな風に思ったことは1度もありません!!」
提督「!!」
鳳翔「ですから、そんな風に自分を落とさないで…。提督、」
「戻ってきて。」
鳳翔は提督の胸に顔をうずめて泣いている。
まさか、自分がここまで思われていたとは…。
提督は、このドッキリをしたことを少し後悔した。
提督「鳳翔…。」
鳳翔「うぅ、ひっく、ぐすっ」
提督「鳳翔、顔上げて。」
鳳翔「ひっく、……。」ポロポロ
提督「天井見てみて。」
鳳翔「………。」ポロポロ
鳳翔は、提督の言われるがまま、顔を上に向けた。
『ドッキリ大成功』
鳳翔「……………?」ポロポロ
提督「鳳翔さん、すいません。今までの、全部演技だったんです。」
鳳翔「………。」
本当に提督は申し訳なさそうに頭を下げる。
提督「だからですね、その」
パシーーーン!!!
提督「っ」
鳳翔「………最低です。」
提督に鋭い平手打ちがとんできた。
当たり前だ。こんなにも自分のことを心配してくれる人を騙したのだから。
鳳翔「こんなことして楽しいですか?」
提督「…。」
鳳翔「それに、提督がさっき言ってたこと、半分以上が本音でしたよね?」
鳳翔「それなのに、演技という言葉で隠そうとして………、
そんなに私達は頼りないですか?」
………。
提督「………参ったなぁ。そこまで見抜かれるとは。」
鳳翔「当たり前です。どれだけ一緒にいたと思っているんですか。」
提督「……そうですね。」
鳳翔「提督、もっと私達を頼ってください。アナタは時折、我慢しすぎるところがあります。ですから、たまには相談ぐらいしてもいいんじゃないですか?」
鳳翔は今度は提督を優しく抱き締めた。
鳳翔の温かい体温が伝わってくる。
提督「………本音にすいません。」
鳳翔「全くです。」
鳳翔「2度と、冗談でもあんなこと言わないでください。いいですね?」
提督「はい。」
鳳翔「それと、約束を。」
提督「約束?」
鳳翔「これからは自分で溜め込まず、きちんと相談すること。私はいつでも空いてますから、いいですね?」
提督「………、はは、鳳翔さんには一生敵わない気がしてきた。」
鳳翔「…ふふ♪」
その後、鳳翔が持ってきてくれた夕食を美味しくいただきました。
~大丈夫ではない時~
提督「………。
痛いなぁ。」ジンジン
鳳翔によりうけた張り手により、痛んでいた。
どちらかというと、頬より心が。
提督「……さて、こんな1回1回心にダメージ受けてたらもたないな。次いくか。」
コンコン
提督「ん?」
榛名『提督、榛名です。遠征の報告に参りました。』
提督「空いてるよ~。」
ガチャ
榛名「失礼します。」ボロッ
執務室に入ってきた榛名は中破していた。
提督「……またか。」
榛名「っ、申し訳ありません!」
ここ最近、榛名は中破と大破を繰り返している。特に難易度の高い海域でもなく、本来ならなんの問題もなく突破できるハズだ。
けれど、榛名は必ず負傷して帰ってきていた。
榛名は己の不甲斐なさからか、深々と頭をさげた。
提督「いや、気にしないで。俺の作戦が悪いんだから。」
榛名「そんな…。」
提督「ほら、女の子がいつまでもそんな格好でいたらいけないよ。早く入渠しておいで。」
榛名「……はい。」
榛名は遠征の報告をして、入渠するために執務室から出た。
さて、疑問に思ってる方もいるのではないのだろうか?
あの戦艦榛名が、こうも中破、大破するものだろうか?と。
勿論、そんなことはありえない。普通に出撃させれば、今の榛名でも十分な成果をあげてくれるだろう。
では、なぜこんなことになっているのか?
無論、これは提督が仕組んだことだ。
提督は、ドッキリをするにあたって、今まで出撃記録や敵の行動パターンなどを全て見直した。そこから、対象の艦娘が苦手とする敵、海域を導き出し、他の子やその子自身に勘づかれないよう、綿密な作戦をたてたのだ。
その作戦をたてるのに、たくさんの時間を浪費したのだが。
提督「さて、頃合いかな。」
提督は最後の準備を開始する。
榛名にドッキリを仕掛けるために大分前から準備してきたのだ。ここで失敗するわけにはいかない。
榛名「………。」
「……またか。」
榛名(提督、呆れていました。……やっぱり、こんな役立たず、必要ないですよね。
どうしましょう…。このままじゃ、榛名、提督に……。そしたら、そしたら榛名は……。)
榛名「………もっと、頑張らないと…。」
榛名はかなり思い詰めていた。他の子もいたのだが、榛名の様子を見て、誰も話しかけようとはしなかった。
2235 金剛姉妹の部屋
霧島「榛名、最近どうしたんですか?」
榛名「え?」
比叡「そうだよ、何か最近元気ないじゃん。」
榛名「そんなことは…。」
金剛「悩み事があるならお姉ちゃんに相談するネー。」
榛名「………。
実は、最近、よく被弾するんです。どんなに警戒してても、必ず意識の外から砲撃される。それで…、」
霧島「確かによく入渠しているのを見るわね。」
比叡「まあ、誰でも調子が悪いことってあるよ。」
榛名「もし、このまま敵に負傷させられて…、まともな戦果が上げられなければ…、
提督に見捨てられるかもしれない!それを考えると、榛名は、榛名は!」
比叡「は、榛名!?落ち着いて!」
金剛「……大丈夫だヨ、榛名。」
榛名「……金剛お姉様?」
金剛「提督がそんな人じゃないって、私達が一番よく知ってることネ。
それにね、もし提督がそんなことするようナラ、私達が直接提督に文句言ってやりマス!」
榛名「金剛お姉様…!」
比叡「そうだよ榛名。私達はずっと榛名の味方だよ!」
霧島「これでもう大丈夫?榛名?」
榛名「はい!榛名は大丈夫です!」
榛名の目には涙が浮かんでいた。
だが、その涙は悲しみからくるものではなく、嬉しさからくるものだったとは、言うまでもない。
翌日 0900 執務室
コンコン
榛名「提督、榛名です。」
「ん、入れ~。」
榛名「提督、お話とはなんで……しょ…?」
榛名は執務室に入るなり、そこで提督がしていることに目を見開いた。
榛名「なにを…なさっているんですか?」
提督「ん?ああ、その解答は今から話すことと一緒だな。
実はな、今日限りでここを去ることにしたんだ。」
榛名「え?」
提督「前々から希望は出していたんだがな、中々大本営が受諾してくれなかったんだ。
でも、やっと昨日、承諾してくれたんだ。」
榛名「ど、どうして……?」
提督「理由…か。それはだな、俺の指揮では力不足だと痛感したからだ。」
榛名「……そんなこと」
提督「ないと思うか?榛名も最近思ってきてるんじゃないか?俺の指揮が悪いせいで、自分は被弾するんだって。」
榛名「!!?」
提督「……すまん。言い方がひどかったな。でも、これからはもう大丈夫だ。大本営から俺よりも優秀な人が派遣されてくるから。」
榛名「あ…、あ……。」
榛名(そんな、そんな!違う!提督は何も悪くないのに!!悪いのは!悪いのは!!)
提督「だから安心してくれ、榛名。これからは、俺が作った不出来な作戦のせいで傷つくことは」
榛名「違う!!!」
提督「!」
提督の言葉を遮るように榛名が叫んだ。目からは涙が流れている。昨日、金剛達の前で流した嬉しさの涙とは違い、これは、明らかに悲しみからくる涙だった。
榛名「提督は…、提督は、何も悪くありません!いつも提督は私達の長所と短所を理解し、1人1人が活躍出来るように作戦を考えてくださっています。悪いのは、その作戦をしっかりこなせない榛名なんです!!
ですから…ですから…」ポロッ ポロッ
提督「…。」
榛名「辞めないてまください!!!」ポロポロ
提督「……。」
榛名「ふぅぅ、ぐすっ、うぅ、」ポロポロ
提督「…………本音を言うとな、もう辛いんだよ。榛名が、他の子が傷つくのを見るのが。」
榛名「…え?」ゴシ ゴシ
提督「俺は戦場に立つことは出来ない。だからな、代わりにお前らが傷つかなくて済むように作戦をたてる。
けどな、俺がどれだけ頑張っても、全然足りないんだ。どんな作戦をたてようが、無傷で帰ってくることのほうが少ない。
辛いんだよ。もうお前達の傷ついた姿を見るのが。」
榛名「あ……。」ポロッ
提督「すまないな、こんな軟弱な男で。海で戦っているお前達のほうがもっと辛いっていうのにな。
それじゃあ榛名、集会までは自由時間だ。以上、下がってよし。」
榛名「」ポロポロ
榛名(提督が…いなくなる…?そんなのイヤ!もう提督と会えないなんてそんなの…。でも、引き留められない。提督がいなくなる原因を作ってしまったのは…他でもない、榛名、だから…。)
榛名「…。」ポロポロ
榛名は泣いていた。何も言わず、その場から動かないで。
提督はその様子を見て思った。
頃合いだ。これ以上続けるのはマズい、と。
提督「そうだ榛名、ちょっと後ろを見てくれ。」
榛名「…………?」
提督「いいから、ほら。」
榛名は後ろを振り向いた。
涙のせいで、最初、何が書いてあるのかわからなかったが、徐々に何が書いてあるかわかってくる。
『ドッキリ大成功』
榛名「…………え?」
提督「いや、ごめんな。榛名が可愛くて、ついイタズラしたくなってしまったんだ。はい、これ間宮券。」
提督は間宮券を榛名のほうに差し出す。
が、榛名はその場で腰が抜けてしまった。
提督「お、おい!?榛名!!?」
慌てて榛名のほうに近寄る。
榛名「……う、うぅ、提督の、バカぁ~~~~~!!!!!」
榛名は提督の足に抱きつきながら、凄く大きな声で泣き出してしまった。
榛名「もう、提督に、会えないって、本当に、本当に信じちゃったんでよぉ。榛名、とても、悲しかったんですからぁ~~~」ウワーン
提督「……。」
提督はその言葉を強く否定できなかった。
それは、あながち間違っていない、そう思ったからだ。
提督「………ごめんなぁ。」
その謝罪は、ドッキリをしかけたほうの謝罪か、これからもう一緒にいられないから、という意味の謝罪かはわからない。
提督「本当にごめん…。」
榛名は盛大に泣き散らした後、提督の膝の上で眠った。
―――――
―――
―
榛名「………ん、んぅ。」
提督「お、起きたか?」
榛名「……あれ?提督?ここは…、!!」
榛名はやっと状況を把握する。
寝る前、提督に抱きついて泣いたことも思い出した。
榛名「あ、あ、て、提督、すいません!」
提督「いや、謝らなくていいよ。今回は全面的に俺が悪いんだから。」
榛名「で、ですが、出撃しては傷ついて帰ってくるのは事実ですし」
提督「あ~、それも俺が仕組んだことなの。榛名の苦手な海域や敵がいるところばかりに出撃させてたからね。
まあ、そんな中でも無事突破してほしいって思いが無かったわけではないけど。」
榛名「………ごめんなさい。」
提督「だから、謝んないでって。」
榛名「でも、提督はいなくなったりしないんですよね?」
提督「……。」
榛名「提督?」
提督「今のは本当にドッキリだよ、榛名。こんな嘘ついてごめんね。」
提督は、榛名の言ったことには肯定しなかった。
いや、出来なかったのだ。
榛名「…よかったです。」ホッ
榛名「で、でも、こんなことはもうしないでください。約束です。」
提督「うん、わかった。榛名にはもうしない。約束する。」
榛名「はい。」
トントン
提督「どうぞ~」
憲兵「失礼する。」
提督「おや、どうしました?」
憲兵「なぁに、お前が一線を越えてないか確認しにきただけだよ。」
提督「大丈夫ですよ。そもそも、俺にそんな度胸はない!!」
憲兵「ふっ、相変わらずだな。でも、ほとほどにしておけよ。ある程度のことは見逃すが、流石に艦娘達から苦情が入ったら、動かざるえないからな。」
提督「はい、わかってますよ。」
憲兵「なら、いい。では、失礼したな。」
憲兵が執務室を出て行く。
提督「さてと、次は誰にしようかな。」
~遅すぎた本音~
提督「よし、北上にするか。
となると、いつも一緒にいる大井が障害となりうるな。
アイツ、いつも俺に対して厳しいし、嫌われてるのは確実だろうからな。
だが、それでも長らく共に戦ってきたんだ。少しぐらいは信用してくれてるハズ!
その可能性にかけよう!」
0933 北上&大井部屋
大井「北上さんと朝食の後に飲むコーヒー、とても美味しいです。」
北上「あはは、大袈裟だなぁ大井っちは。でも、もうそろそろ提督のとこ行かないとね。」
大井「………。」
見るからに落胆している。
そんなに北上と過ごす時間が至福なのか。
大井(私と北上さんの時間を邪魔するなんて…。今度、酸素魚雷でも撃ち込んで差し上げましょうか…。)ブツブツ
北上「あれ?大井っち?おーい。」
大井「っは!な、何でしょうか?北上さん」ニコニコ
北上「……。」
北上は大井のあからさまな変容ぶりに少し苦笑いをしている。
でも、すぐに北上にしては珍しく真剣な顔になった。
北上「ねぇ、大井っちはさー、ぶっちゃけ、提督のこと、どう思ってるの?」
大井「へ!?ど、どうって…」
一気に大井が赤面した。完全に動揺している。
北上「私はね、好きだよ。提督のこと。
大井っちはどうなの?」
大井「え?き、北上さん?どうしたんですか?急に…。」
北上「急なんかじゃないよ。逆に遅すぎたぐらいさ。
ねえ大井っち。ここらではっきりしとこうよ。
流石に、私も好き、提督も好き、てのは我が儘なんじゃないかな?」
大井「わ、私は……。」
北上「大井っちが私のこと好きっていのなら、それも受け入れるよ。大井っちのこと、親友だって思ってるしね。」
大井「北上さん…。」
北上「でも、流石に両方好きってのは受け入れられないかなー。だからね、大井っち。ここではっきりしてほしいの。」
いつになく、北上は真剣だった。大井でさえ、ここまで真剣な北上は、数回ほどしか見たことない。
大井「……わ、私…は…」
大井は迷っている。当然だ。誰だって自分の気持ちに白黒つけるのは難しい。
いくら艦娘とはいえ、それは例外じゃない。
北上「答えられない?
じゃあさ、私と提督が2人でいるところを想像してよ。」
大井「提督と、北上さんが、2人で…」
北上「それで2人は見つめ合い、キスをしようとしている。」
大井「2人…キス…」
―――――――――――――――――――――
海が見える高台。
そこに提督と北上は登り、2人、見つめ合っている。
提督「北上…」
北上「提督…」
2人の顔が紅潮している。
そして、互いに目を閉じ、唇と唇が…
―――――――――――――――――――――
大井「だ、ダメーーーー!!!!」
北上「…。」
大井「そんなの…ダメ…。そしたら…私…。」ポロポロ
北上「ごめんね大井っち。ちょっとイジワルだったね。
でもさ、その涙はどっちに対して流してるの?」
大井「え…?」ポロッ ポロッ
北上「はっきりわかったんじゃない?どちらのほうが好きなのか。」
大井「あ………。…わ、私…」
北上「それが大井っちの答だよ。
……そっか、やっぱり提督なんだね?」
大井「………。」
北上「じゃあ、これからはライバルだ。負けないよー、大井っち。」
大井「……北上ざん…」ポロッ ポロッ
北上「ほら、泣かないで大井っち。そんな顔、提督に見られたら心配させちゃうよー。」
大井「ん……。」ゴシゴシ
北上「じゃ、行こっか!大井っち!」
大井「……。」
大井は、先に部屋を出ようとする北上の背中を見て、こう思った。
なんて大きいだろう、と。
大井(北上さん、ありがとうございます。)
0956 執務室
コンコン
北上「提督、きたよー。」
「入って~」
北上「失礼しまーす。」
大井「失礼します。」
執務室を叩いて、声が聞こえたのは北上だけだったのだが、入る時は、さも当たり前のように大井もいる。
相変わらずだな。
北上「それでー?話ってなにー?」
大井「北上さんとの時間を邪魔したのですから、それなりの用がないと許しませんよ。」
提督「んー。大井にとっては大したことじゃないかもな。
これを見てほしい。」
そう言い、提督は机の中から1枚の紙を取り出した。
『そウ遠くナい内に
お前を殺シに行く。』
紙には別々の新聞紙の文字を使って作られたと思われる怪文書が貼り付けてあった。
提督「これに心当たりがないか、いちよ皆に聞いているんだ。」
北上「うわっ、何これ?」
大井「何ですかこれは!?」バンッ
一番反応が薄いだろう、と思っていた大井が過剰に反応したので、提督は北上も一緒にびっくりしてしまう。
提督「…え?」
北上「……大井っち?」
大井「提督にこんなものを送り付けるなんて……一体どこの誰が…。」ブツブツ
え?どうなってんの?俺、夢でも見てるのかな?
いつも提督に対して冷たい態度ばかりとっていた大井が、今日は何か変だ。
提督「ちょい北上」コイコイ
北上「んー?」
大井がどうしてこうなっているのか気になり、同室の北上をそばに呼ぶ。
提督(何?これ、どうなってんの?)ヒソヒソ
北上(…まぁー、驚くよねぇー。)ヒソヒソ
提督(何かあったの?)ヒソヒソ
北上(……ちょっとねー。)
大井「何2人でコソコソ話してるんですか。」
提督&北上「」ビクッ
提督「いや、ちょっとな。まあそれよりも、2人に心当たりはないようだな。」
大井「当たり前です。私がそんなことをするハズがないじゃないですか。」
提督「それもそうだよなぁ。」
北上「でも、何でわざわざ呼び出して聞いてるの?こうゆうことなら、集会とかで皆集めた方が手っ取り早いじゃん。」
提督「いやな、もしかしたら駆逐艦の子達が面白がって送っただけかもしれないだろう?
それが、集会を開くほどの大事にしちゃうと、余計言いづらくなるかなって思ってね。」
北上「あー、なるほどねー。」
大井「提督!もし犯人が見つかったら私に教えてください!2度とそんなことが出来ないように教育してさしあげますから!!」
提督「お、おう…。
…大井、何かあったのか?」
大井「え?」
提督「いつもはそんなに俺のことについては熱くならないじゃん。
さては惚れたか?」ハハハ
大井「なっ!?/////」カアァァ
提督はあくまで冗談のつもりでそう言った。
そう言ったのだが、大井は一気に顔を赤くしてうつむいてしまった。
提督「……え?」
北上「まー、大井っちはわかりやすいしねー。」
提督「マジか…。」
大井「/////」プシュウゥゥ
提督はあせる。全くの予想外が発生したからだ。
え?本当にどうしよう?
今の大井の状態で、あのドッキリは流石にマズすぎるだろ。
…どうするか?
提督は必死に考える。この後、どうやってドッキリをしようか、と。
……いや、今だからこそか。
提督「先に言っておく。大井、北上、すまん。」
北上&大井「「え?」」
パリーン!!
北上&大井「!?」
急に提督の後ろの窓が割れる。
…え?鳳翔さんの時も割れてたやろって?
いやね、そこは、ほら。明石がいるやん。
大井「な、何!?」
北上「一体何が」
提督「うっ、ぐぅ」
北上&大井「! 提督!?」
そして、胸を押さえて苦しそうにしている提督がいた。胸からは、赤色の何かが、どんどん提督の白い軍服に染みてきている。
大井「そ、そんな!提督!!」
北上「何が…、ま、まさか!狙撃!?」
大井は提督のほうにかけより、北上は窓のほうに行って狙撃手を探している。
大井「提督!提督!!いや!そんな!!!」
北上「うっ、くっ、クソぉ、一体どこにいるんだぁ?」
大井も北上も、目に涙を浮かべている。
大井が自分のことを好きだと分かっている分、提督はいつもより心が痛んだ。
うん。もう無理。
提督「」ムクリ
大井「え?……提督?」
北上「ふぇ?」
提督「…北上、大井、すまん。実はだな…」
北上&大井「ドッキリ?」
提督「うん。何か、その、本当ごめん。これ、間宮券。」
北上「……提督、あのさー」
大井「サイッテー!!!」
北上が何かを言う前に、大井が声を荒げた。
大井「本当に最低!!何なんですか一体!!!」
提督「…。」
大井「もう2度と顔も見たくありません!
失礼しました!!」ガチャッ バタン
提督「……。」
北上「……提督さー、もう少し、タイミングってものを考えようよ…。」
提督「…………まあ、そうだよなぁ。」
北上「……………?」
鎮守府廊下
大井(本当に最低!提督があんなことをする人だなんて思いませんでした!!)
北上「お~い!大井っち~!」
大井「……北上さん?」
北上が走って大井のほうに来る。
大井「北上さん…。」
北上「ハァ、ハァ、早いよー、大井っち。」
大井「…。」
大井は北上から目をそらしている。
北上「……提督のことだけどさー、」
大井「!」
北上「多分、何かあったんだと思うよ。だってさー、おかしいじゃん。あの提督がこんなことするなんて。」
大井「それは…、そうですけど……。」
北上「なら、信じて待ってあげようよ。きっと、そう近いうちに話してくれると思うからさー。」
大井「北上さん……。」
北上「大井っちも、まだ提督のこと、好きでしょ?」
同意を求めるように、北上は大井の頬に手をそえる。
大井「…そうですね、北上さん。」
大井は、北上のその手を両手でしっかりと握った。
~嘘をつかわば穴3つ~
1312 鎮守府廊下
提督「さて、次はどの子にするか…。」
テクテク
提督「ん…、あれは、イクか?」
ア,テイトクー
伊19「こんにちはなの!」
伊19は提督を見つけるなり、駆け足で近づいてきた。
提督「いや、うん、こんにちは。
それよりイク。今日はオリョールのハズだろ?どうしてここにいるんだ?」
伊19「」ギクッ
伊19「えっと、実はろーちゃんがどうしても行きたいってゆうから、譲ってあげたのね。」
提督「はあ?そんなわけないだろう。」
伊19「本当なのね!」
―――――――――――――――――――――
伊19「あ、いたいた。ろーちゃん!!」
呂500「?イク?どうしたのって?」
伊19「これ、なんなのかわかるのね?」
呂500「?……!!提督の写真!!!」
伊19「そうなのね。これ、ろーちゃんにあげるのね。」
呂500「本当!Danke!じゃなかった…、えと、ありがとう…?」
伊19「構わないなのね。でも、代わりに3日ぐらいオリョールに行ってほしいのね。」
呂500「うん!わかった!!」
―――――――――――――――――――――
伊19「本当にただ代わってあげただけなのね!」
提督「……。」
伊19「そ、そらじゃぁ、イクは行くの!」
伊19は走ってどこかに行った。
提督は今のやりとりで、伊19がサボっていることに気づく。
提督「…決まりだな。」
1822 執務室
提督「というわけで、イクには少し反省してもらおうと思うんだ。」
伊58「それはいい考えでち。」
伊8「それで私達を集めたわけね。」
呂500「別にろーちゃんは気にしないよ。」
提督「ダメ!これは皆が平等に休めるように組んでいるの。だから、イクにもきちんと働いてとらわないと。」
伊58「その通りでち。」
伊8「わかったわ、協力するわね。」
提督「ありがとう、ゴーヤ、はっちゃん。よし、それで作戦はな」
翌日 1000 執務室
伊19「急に呼び出してどうしたの?提督。」
提督「やっぱりいやがったか。」
伊19「ひどい言いぐさなのね!イク、怒ちゃったのね!」
提督「怒なのはこっちだ!お前、どうして俺が皆平等に休みを与えてるか、わかってないのか!?」
伊19「うぐっ、それは…。」
提督「これでろーちゃんが傷ついたりでもしたら、お前はどうするつもりなんだ!?」
伊19「………。」
イクは下を向いている。
提督の言っていることは正論だ。だから言い返せないのだろう。
提督「これにこりたら、次からはきちんとスケジュールを守るように。」
伊19「……わかったのね。」
提督「よし、それじゃ……、!?」
プルルルルルル
いきなり緊急用の通信がかかってくる。
伊19「ど、どうしたの!?」
提督「っ、はい、こちら提督。」
伊58『提督!どうしよう、どうしよう!!』
提督「落ち着け!何があった。」
伊8『貸して。提督、よく聞いて。
ろーちゃんが、敵の攻撃を受けて、』
『沈んじゃった…。』
提督「………え?」
伊19「!!?!?」
伊8『急に多数の深海棲艦が現れて、連絡を入れる暇もなく』
提督「待ってくれ!」
提督「本当なのか!?本当にろーちゃんは…」
伊8『本当よ。』
提督「なっ……」
伊8『今、なんとかやっとヤツらから逃げ出せたところ。ゴーヤも大破しちゃってる。私も大破、だからドッグを空けておいてほしいの。』
提督「………。わかった。」
伊8『ごめんなさい。』
提督「いや、いい…。気を付けて帰ってきて。」
ブツッ
伊19「う、嘘…。」
提督「……。」
伊19「嘘、嘘なのね!ね!提督!?」
提督「…。」
伊19「そんなの…、う、うぅ…」ポロッポロッ
提督「今のが、嘘に聞こえたか?」
伊19「ふぅ、ぅぅ、うわあぁぁ~」ポロポロ
ガチャ
伊8「艦隊が帰投したましたぁ。」
伊58「ドッキリ!」
呂500「大成功、ですって!」
伊19「……ふぇ?」
急に、さっきとは全く違うテンションで現れた3人に、イクはついていけないでいる。
提督「悪いなイク。これは全部ドッキリだ。」
伊19「ドッキリ?」
伊8「ろーちゃんが沈んだってのは冗談よ。」
伊58「びっくりしたでしょ!」
呂500「ろーちゃんは元気って!」
伊19「……ふっ、うぅ、」ポロッポロッ
ろーちゃんが元気な姿を見て、安心したのか、嬉しかったのか、イクがまた泣きそうになる。
呂500「泣かないで、イク。」
伊8「今までサボってきたバツね。」
伊58「そうでち。これからはサボらず働くこと。」
伊19「わかったのね~~」ウワァーン
―――――
―――
―
呂500「落ち着いた?」
伊19「グスッ…、うん…。」
ろーちゃんが泣いてるイクを抱き留めて、頭を撫でている。
見てるこっちにとっては微笑ましい状況だ。
呂500「それにね、ろーちゃんはそんなに怒ってないって。」
伊19「そうなの?」グスッ
呂500「うん。提督の写真には、それだけの価値があるかもって。」
ん?俺の写真?
提督「何だと?」
伊19&呂500「「あっ。」」
提督「それはどういう」
伊19「逃げるのねー!!」ピュー
呂500「わ、わかったって!!!」ピュー
提督「こら!待てぇ!!」
イクとろーちゃんがすごい勢いで執務室を出ていく。
全く、いつ撮ったんだよ…。
伊58「…。」
伊8「……私も、頑張らないとね…。」
伊58「……。」
伊58(提督の写真、イクに頼めばくれるかな?)
~予想不能の勝利~
翌日 0922 執務室
ドアバーン
伊14「提督ー!!」
提督「うおっ!?びっくりしたなぁ。どうしたイヨ?」
伊14「大淀さんから聞いたよー!ドッキリやってるんだって!?」
提督(遂に大淀の手が回り始めたか…。)
提督「…。」
伊14「沈黙は肯定って受けとるよー!それでさ、ちょっと頼みがあるんだよぉ。」
提督「……何だ?」
伊14「次のドッキリ、姉貴にやってくんない?」
提督「ヒトミにか?」
伊14「そうそう!姉貴って、いつもどこか自信なくてさぁ、自分の言いたいことをすぐに押し込んじゃう癖があるじゃん。
それで、ドッキリをしかけることにより、姉貴を怒らせ、普段聞けない本音を聞き出すって寸法だよ!」
提督「おい、ちょっと待て。それ、最悪俺がヒトミに嫌われないか!?」
伊14「そこをなんとか!私と姉貴を助けると思って…」
手を前で擦り合わせながら頭を下げてくる。
まあ嫌われるのが目的だし、いっか。
提督「いいぞ。」
伊14「そうだよねぇ、だ……いいの!??」
提督「あぁ、どっちにしろ全員に仕掛けるつもりだからな。問題ない。」
伊14「ありがとう提督!
これで姉貴の隠された本性が……」ワクワク
提督「ところでイヨ、ヒトミもそれを知ってるの?」
伊14「ん?何のこと?」
提督「ドッキリのこと。」
伊14「あぁ、うん。姉貴と一緒にいる時に大淀さんから聞いたからね。」
提督「…そうか。」
何事もない普遍的な日常。
それが突然壊れることもある。
提督「まあ何とかし、ぐっ!?」
パァァン!
伊14「!?」
いきなり発砲音がして、提督が胸を押さえている。その胸には血が広がっている。
伊14「え?え!?」
提督「うぅ、ぐっ!」
バタン、と提督が机に倒れる。
その後、提督は動かなくなり、机は血で染まり始めた。
伊14「え、え……、あ、わかった!ドッキリ!ドッキリなんでしょ!!ね!」
??『油断したなぁ。あまいぜぇ、boy。』
伊14「!?」
執務室のドアから聞いたことのない男の声が聞こえる。よく見たら、ドアに小さい穴が空いていた。
伊14「…そ、そんなぁ。」
イヨは、これはドッキリではない、とわかった。執務室に誰かが忍び込み、提督を殺した。そう判断した。
いや、ドッキリなんだけどね。
伊14「っ、提督!ね!しっかりしてよ!!」
イヨは提督に駆け寄り、必死に提督を揺さぶり叫ぶ。
伊14「嘘…嘘だよ…提督……」ポロポロ
その声もどんどん小さくなり、イヨは涙を流し始める。
伊14(いや…、いやぁ!!こんなの、こんなのやだよぉぉ!!!提督が死んじゃうなんて、そんなのやだぁぁぁ!!!!)
それでもイヨは揺さぶるのを止めない。
けど、提督は全く動かない。
イヨの前には絶望しかなかった。
提督「…こんな感じでいいか?」ムクリ
伊14「!!??!」
何事も無かったように提督は起き上がる。
伊14「ふぇ?…へ?」
提督「何驚いてんだよ。ドッキリ、ドッキリだよ。」
ホレ、っと手を振って、無事だということを証明する。
伊14「で、でも、その血…」
提督「血潮。」
伊14「さっきの声は…」
提督「録音し、改造した俺の声。」
伊14「…。」
提督「ど、どうした?イヨ。」
伊14「…………提督の」
提督「?」
伊14「バカァーーーー!!!!」
―――――
―――
―
あの後、イヨにスッゴい起こられた。
自分はドッキリ仕掛けようとしてて、いざ仕掛けられたら起こるって、理不尽な。
提督「まあ、それは置いといて、だ。
ヒトミにはどうゆうふうに仕掛けるか…。
なんかヒトミって、普通のドッキリだと効果ないような気がするんだよなぁ。
………。
仕方ない。アレを使うか…。」
提督はドッキリをするため、準備にとりかかった。
1752 執務室
ヒトミは提督に呼び出され、執務室まで来ていた。
伊13(これって…あれ、かな?大淀さんの言っていた、ドッキリ…?
だったら、イヨちゃんが…うまく、やったのかな?)
提督がドッキリを仕掛けようとしてることは、ヒトミにはバレているようだった。その上で、ヒトミは何か企んでいる様子だ。そして、イヨもグルらしい。
コンコン
伊13「提督…?ヒトミです…。」
「…。」
返事がない。
いつもならすぐに、入ってよし、の声がかかるのに。
提督から呼び出したわけだから、いないなんてことはないだろう。
伊13「……?提督…?……入り、ます…。」ガチャ
ヒトミは扉を開けて執務室の中に入る。
ヒュゥ~
おかしい。
室内のハズなのに、扉を開けたら少し強めの風がヒトミにとんできた。
伊13「………え?」
カァーーー ヒュ~
カァーーー ヒュ~
ヒュ~ ヒュ~
執務室は半壊しており、部屋にはたくさんの破片が飛び散っている。
ポタ… ポタ…
その部屋の中央には、
十字架にはりつけられた、
提督の姿がある。
提督の胸には、大きめの杭がうたれており、服に大きな血の後が…。
よく見ると、提督は全身血だらけだ。
伊13(……これが……ドッキリ…?)
ピチャ ピチャ
ヒトミは提督に近づき、提督に突き立てられている杭に触れてみた。
肉に沈んでいくような、嫌な感触がする。
伊13(これ、ホンモノ…!?)
伊13「あ……あ…」
ピチャ… ピチャ…
ヒトミは震えながら、少しずつ後退する。
カシャ
伊13「……?」
後退していると、足で何かを踏んでしまった。
下を見ると、それは紙だった。
『己らの司令官の
危機にすら気づかないとは
無能共め』
誰が書いたかはわからない。
けど、赤い文字でそう書かれていた。
伊13「あ…あ…ぁ…」
バシャ
ヒトミは前にある血溜まりに膝から崩れ落ちてしまう。
提督は、殺害された。
これだけの荒らされようだ。
かなりの音がしていたハズ。
なのに、私達は気付けなかった。
大好きな司令官のピンチに。
伊13「あ…あ、ぁ、あ」ポロッポロッ
伊14「……何、あれ…?」
提督とイヨは、扉の前で中の様子を見ていた。勿論、隠れて。
提督「明石が作っていたクローンだ。」
伊14「へ?クローン?」
提督「あぁ、アイツ、俺の寝ている間にDNAやら血液やらを搾取していたみたいでな。
作っちゃいました☆、だってよ。」
伊14(明石さん、スゴい!)
伊14「て、そうじゃなくて、やり過ぎって言ってんの!!
どうすんのアレ!あれじゃあ、姉貴の本性聞き出すどころか、もっと奥に閉じ込めちゃうよ!!!」
提督「…正直、俺も取り返しがつかなくなって焦ってる。」
伊14「はぁ!?」
提督「だが、こうなっては仕方がない…。
行ってくる!!」
伊14「え?ちょっ!?何しようとしてんの!!?」グイッ
扉を開けようとした提督を、イヨはギリギリのところで止める。
提督「いや、執務室に入ろうとしてるのだが。」
伊14「そんなの見ればわかる!
まさか、入って『ドッキリ大成功』なんてやる気じゃないよね!??
そんなことしたら、姉貴、人間不信に陥っちゃうよ!!!」
提督「安信しろ。そんなことはしない。
いいか、イヨ。この世にはこんな言葉がある。【嘘もつき通せば真実】。」
伊14「え、どうゆうこと?」
提督「まあ見とけ。」
そうして提督は執務室に入っていった。
ガチャ
提督「ふぅ、悪いヒトミ。待たせ……、何だ、これは…?」
伊13「…え?……てい、とく…?」
提督「ヒトミ!?大丈夫か!?」
ヒトミは目を開けたまま泣いていた顔を提督に向ける。
提督は、血だらけで泣いているヒトミに驚き駆け寄った、ふうを装う。
伊13「提督…?何で……。」
提督「大丈夫だぞ、ヒトミ。俺は生きている。
大方、俺を疎ましく思う他鎮守府のヤツらが、俺が出張に出ていると勘違いして、艦隊の士気を下げようと送ってきた模造品だろう。
全く、趣味が悪い。」
そう言いながらヒトミを抱き締めてあげる。
伊13「……、………本物の、提督…?」
提督「それ以外、何に見えるんだよ?」
伊13「こっちが、模造品、かも…。」
提督「……俺がか?」
なるほど、そういう見方もできるか…。
盲点だった。
伊13「だから、確かめさせて…ください。んっ」チュ
提督「んっ!!?」
提督はヒトミの完全に予想外の行動に対処できなかった。
ヒトミが提督の唇を奪ったのだ。
伊13「はむっ、ん、ぢゅぅ、ぅん、」
ヒトミは舌を入れだし、提督は口を犯されていく。
伊13「んん、はぁ……、
…うん、間違いない。この味は…、提督、だぁ…。」
提督「な、何を…?」
いきなりのことで、提督はついていけてない。
ヒトミはそのまま提督に抱きついた。
伊13「…本当に……死んじゃったかと…思いました。」ギュッ
提督「うっ。」
伊13「だから…もう、離しません…。」
提督「え?」
伊13「提督…、これで、ずっと一緒です…。」
目ハート&ハイライトオフ
提督「ひ、ヒトミ?」
あ、あかんこれ。このままだと、ま―――
伊14「姉貴!ズルい!!つまみ食いなんて!」
イヨも執務室に入ってくる。
あ、あれ?……ズルい?
伊13「だって……怖かったから…。」
伊14「うぅ、まあいっか。今日は1日中一緒にいられるわけだし。」
提督「お、おい。お前ら、何いっ……、!?」ドサッ
言い終わる前に、ヒトミに押し倒された。
提督は、ヒトミに上に乗られた。
所謂、騎乗位の態勢。
あ、あかんて。
伊13「これで、逃げられません…。」
伊14「ふふ、それじゃあ提督、」ハイライトオフ
伊13「夜戦…しよ…?」
伊14「夜戦だよ?」
―――――――――――――――――――――
提督「…。」
あの後………、言うまでもないか。
憲兵「邪魔するぞぉー。」ガチャ
提督「……。」
憲兵「…やっちまったのな?」
提督「………。」
憲兵「まあ、今回はどちらかと言うと、お前のほうが被害者っぽいし、いいんじゃね?」
提督「!?」
え?何その言い方?見てたの?ねえ見てたの?
憲兵「憲兵様は何でもお見通しなのさ。
それにな、合意の上でのことまで首を突っ込むつもりはねえから安信しな。」
提督「……助けてくださいよ。」ゲッソリ
あの夜、かなり搾られました。
憲兵「はっはっはっ!俺からしたら羨ましいかぎりだぞ。」
提督「…。」
憲兵「……まぁ、お前からしたら、そうでもないか。」
提督「……。」
憲兵「…………、とりあえず、残り少ない期間だ。頑張れよ。」ガチャ
そう言って憲兵は出てった。
提督「……次、いくか。」
~アイドルの笑顔~
提督「大淀からドッキリのことを知らされていたとはいえ、流石にやりすぎたなぁ。
まさか、そのせいであんなことになるとは…。
……うん、次はシンプルなのでいこう。絶対にそのほうがいいな。」
ミンナーキテクレテアリガトウ!
中庭から元気な声が聞こえてくる。
提督「ん?この声は…、那珂ちゃんか!」
そうして提督は中庭のほうを覗いてみる。
そこには、駆逐艦の子達の前で歌って踊る那珂ちゃんの姿があった。
提督「…………フッ」 ニヤァ
提督はそれを見て、嫌な笑みを浮かべた。
―――――
―――
―
1102 執務室
コンコン
那珂「提督!那珂ちゃんがきたよ!!」
「入って~」
那珂「那珂ちゃん入りまーす!」ガチャ
提督「……よく来たね、那珂ちゃん…。」
那珂が入ると、提督は険しい顔をして執務机に座っていた。
那珂(あれ?どうしたんだろう?いつも優しい顔をしている提督が、眉間にシワをよせてる…
…ちょっと怖いかも。)
提督「那珂ちゃん……まずはこれを見てくれ。」
そう言って提督は1枚の紙を那珂ちゃんの前に出す。
そこには大本営からの命令が書かれていた。
『某鎮守府に命令を伝達す。
軽巡洋艦
川内型3番艦 那珂
を解体せよ。
大本営より』
那珂「え…何……これ…?」
提督「…っ、本当にすまない!」
提督は机に頭をつけて、那珂に謝罪をする。
那珂「ま、待って提督!どうして、どうして那珂ちゃんが!?」
提督「……悪目立ちしすぎたんだ…。」
那珂「え?」
提督「那珂ちゃんは歌もうまく、顔もよくて性格も明るい、そんな子が目立たないわけがないんだ。
那珂ちゃんはよく駆逐艦や他の子達に歌を聞かせてあげて人気を得てるだろう?
でも、それをよく思わない奴等もいる。
そして、別鎮守府から多数申請が届いたらしい。
ウチの那珂が他鎮守府の子達までも奪いさろうとしているって。」
那珂「!!?そんなの言いがかりだよ!」
提督「そんなことは分かってる!分かって、いるのだが…」
提督は歯ぎしりをたてている。とても、悔しそうにしながら。
それを見て、那珂ちゃんは思ったのだ。
那珂(そっか…。提督は精一杯反抗してくれたんだね。)
そしてそれでも覆らなかった、と。
那珂「大丈夫だよ、提督!」
提督「…え?」
提督はバッと顔をあげる。
そこには笑顔でいる那珂がいた。
那珂「那珂ちゃんはアイドルだもん!
ファンの人に悲しませるような行動をした時点で那珂ちゃんが悪い。
だから私はあまんじてその命令を受けるよ。
さて、そしたら最終ライブ開かないと。
提督!ファン1号として提督もきちんと見に来てね!!」
アイドルとして、最後の最後まで輝いていようと。
なんて強い子なんだろう。
もう、限界だ!
提督「那珂!」ギュッ
那珂「て、提督!?」
提督は後ろから那珂に抱きついた。
那珂「…もう、那珂ちゃんは皆のアイドルなんだから、おさわりはダメだよ。」
提督「そんなに強がる必用はないんだ。アイドルだって、悲しい時は泣くんだ。それに…、
今はアイドルじゃなくて、ただの女の子で、いていいんだよ。」
那珂「……。」
提督「今は、俺の前だけは、那珂は素直になってもいいんだよ…。」
那珂「………でいどぐぅ、」グスッ
那珂は提督の方を向く。その目には涙が溜まっていた。
那珂「どうじて、どうじて那珂ちゃんなの!?おかしいよぉ、グスッ、そんなごど、思ってないのにぃ~」ウワーン
提督「あぁ、分かってる。ちゃんと分かってるから。」
那珂「嫌だよぉ!もう皆の前で歌えなくなるなんて!グスッ、嫌だよぉ!ここから離れるなんてぇ!提督と会えなくなるなんて、嫌だよぉ!!」
提督「ん?」
おっと、思わぬところで那珂の本音が聞けてしまった。
那珂「嫌だぁぁ!!提督ともっと一緒にいたいよぉ!!!」
提督「…うん、大丈夫、大丈夫だからな、那珂。」
その後しばらく那珂は泣き続けた。
―――――
―――
―
提督「落ちついたか?」
那珂「うん…」グスッ
提督「そうか、それは良かった。」
那珂「ごめんね、提督。情けないとこ見せちゃって。」
提督「いや、いいんだ。それよりもな、
すいませんでしたぁぁ!!!!!」
那珂「え!?」ビクッ
急に提督が土下座をしたので、那珂ちゃんはびっくりしてしまう。
那珂「ど、どうしたの!?」
提督「那珂ちゃん、上を見てくれ。」
那珂「え?」
那珂ちゃんが上を見ると、そこには『ドッキリ大成功』の紙が。
那珂「」
提督「そう、これは全部嘘なんだ。」
那珂「…………そっかぁ。」
提督「……。」
那珂「これはオシゴトだったんだね!提督♪」
提督「え?」
予想外の反応に提督は驚き、顔を上げる。
那珂「もう、那珂ちゃんがいくら可愛いからって、こんなイタズラしたらダメだぞぉ♪」
提督「な、那珂、ちゃん?」
那珂「いきなりドッキリなんてびっくりしちゃった♪それじゃあ提督、お疲れ様でしたぁ。」
ガチャ
那珂は執務室を出ていってしまう。
提督「…何でだろう。後がすっごい怖い。」
廊下
那珂「……。」
那珂は無言で廊下を歩いていた。
那珂(まさか提督があんなことするなんて…。
もう1週間ぐらい口聞いてあげないんだから。
でも…、)
『素直になってもいいんだよ。』
那珂(……そっか、那珂ちゃん、提督の前だけは頑張らなくてもいいんだ。
それなら、少しだけ甘えてもいいよね…?)
そして那珂はいつもの様に明るいアイドルに戻った。
~病の予兆~
提督「う~ん、那珂ちゃんから何も無かったっていうのは怖いところではあるが、次の子に移るか。
そろそろ、前々から準備をしてきた子達にもネタバラシをしていく頃合いかな。」
榛名の時もそうだったが、提督はこのドッキリのために何人かの子達には事前に準備をしてきたのだ。
提督「今回は朝潮でいくとしよう。なんでかって?
朝潮の悲しそうな顔にもう耐えきれなくなってきたからだよ!」
誰もいないのに提督は1人で問答をしていた。
―――――
―――
―
1326 執務室
コンコン
朝潮「提督!朝潮です!遠征の報告に参りました!!」
「どうぞ。」
朝潮「失礼します!」ガチャ
提督「ゴホゴホッ、すまないな。ありがとう朝潮。」
朝潮「い、いえ、当然のことです。」
朝潮(提督、今日も具合が悪そう……。やっぱりどこか悪いのかな?)
そう、提督はここ最近、朝潮に具合が悪そうに見せかけていたのだ。
これこそが、朝潮をドッキリにはめるための準備である。
提督「報告書はここに置いておい、ゴホゴホッ」
朝潮「!!提督!?」
提督「……すまない、大丈夫だ。」
朝潮「大丈夫って………!提督、血が…。」
提督は少量だが吐血していた。
提督「ハァハァ、……気にしなくていい。」
朝潮「そういうわけにはいきません!やはり、提督はどこかお体の調子がすぐれないのですね!?」
朝潮は提督の側まで駆け寄り、背中をさすってくれる。
提督「………。」
朝潮「提督……、どうして何も言ってくださらないのですか?
……朝潮では頼りないですか?」ウルウル
提督「!!?」
気づけば朝潮は涙目になっていた。
本当に提督のことを心配してくれてるのだろう。
提督「……そういうつもりでは無かったんだ。ただ、俺は…!!ゴホゴホゴホッ」
朝潮「提督!!」
提督はさらに吐血を繰り返す。
明らかにこれは非常事態だ。
朝潮「は、早く医務室に!」
提督「ダメだ!!!」
朝潮「!?……どうして…?」
提督「朝潮……君にだけは、話しておこう。」
朝潮「え……?」
提督「私は…もう長くないらしい。」
朝潮「?!」
提督「癌があちこちに転位しているらしい。いつ死んでもおかしくない身だ。」
朝潮「そ、そんな…!」
提督「ならせめて!私は最後の最後まで君達の提督でいたい!!」
朝潮「………提督……。」
提督「だから頼む朝潮。このことは黙っておいてくれ。」
朝潮「で、でも」
提督「君だから頼むんだ。」
朝潮「っ……。」
ズルい言い方だった。
そんな風に言われたら、朝潮に断ることなど出来はしない。
朝潮「わかり、ました…。」
提督「……すまない。ありがとう朝潮。」
朝潮の本心としては、提督には今すぐ入院して治療に専念してもらいたかった。絶望的な状況でも、もしかしたら助かる方法がみつかるかもしれないから。
でも、提督のあの言葉を聞いてしまったから、朝潮はその気持ちを抑え込んだ。
提督「ゴホゴホッ、それともう1ついいだろうか?」
朝潮「!何でしょうか!?」
提督「最近、うまく朝が起きれなくなってきてね。明日、起こしにきてはくれないか?」
朝潮「わ、わかりました!お任せください!」
提督「頼んだよ。」ニコッ
提督は辛そうにしてるのにも関わらず、笑顔を朝潮に見せた。
けれど、その笑顔はどこか無理をしているのがよく分かるものだった。
そうして朝潮は退室していく。
提督「…ふぅ、これで大丈夫かな?」
仕込みは完璧。
後は明日の朝に仕掛ければいいだけとなる。
提督「悪いな朝潮。だが、これはやらないといけないことなんだ。」
なぜここまで提督がドッキリをやろうとするのか、ここにいる艦娘達は誰1人としてそれを知らなかった。
―――――
―――
―
0700 提督寝室前
朝潮「提督、起こしに来ましたぁ~。」コソコソ
他の人達を起こすわけにはいかないと思い、朝潮は静かに部屋に入る。
まあ、本音は提督の寝顔を見たかったからなのだが。
朝潮「提督の寝顔、レアものですね。少しぐらい眺めていてもバチは………アレ?」
ここで朝潮は気づく。
あまりにも静かすぎる。寝言どころか寝息すら聞こえてこない。
朝潮「て、提督?」
朝潮の中に嫌な予感が膨れ上がっていく。
朝潮(う、嘘…。そんな、そんなことって…。)
朝潮は提督の首に触れる。
冷たい……
朝潮「あ……あ……、」
目の前で提督が死んでいる。
朝潮は、この現実を受け止められるまで少し時間がかかった。
朝潮「どうして……どうしてですか提督」ポロポロ
ついに朝潮は泣き出してしまった。
朝潮「こんなの……こんなのって……あまりにも急すぎますよ…。」ポロポロ
今まで尊敬していた人が、信頼していた人が、お慕いしていた人が、これからも一緒に過ごしていたいと思っていた人が、朝潮の目の前で動かなくなっている。
朝潮「う、うぅ、うぅぅ、」ポロポロ
涙が溢れだして止まらない。
これから、どうすればいいのだろう?
朝潮にとって、提督は生きる全てだった。
それほどまでに大きな存在へとなっていたのだ、この男は。
朝潮「……」ポロポロ
朝潮は泣きながらもその場から立った。
朝潮「……そうですよ。提督を、このまま1人にさせるわけにはいかないですよね?今、そっちに行きます。」
提督「!!!!」
提督は明石に作ってもらった体温急速低下剤と心拍低速剤を使い、瞼を閉じ、じっとすることで生きる屍と化していた。
だから、朝潮が何をしようとしてるかは分からなかった。
でも、耳が機能していないわけではない。
提督「!」ガバッ
勢いよく起き上がり、瞼を開けて周りを確認する。
そこには、涙を流しながらも目を閉じて、首にナイフを突き立てている朝潮の姿が。
提督「朝潮!!!」
カラン カランカラン
提督は朝潮が持っていたナイフを弾き飛ばし、朝潮を抱き締めた。
朝潮「あ……れ……?」
提督「大丈夫だ朝潮。俺は生きてる。生きてお前の側にいる。」
朝潮「てい…とく…?」ポロッポロッ
提督「すまない。本当にすまなかった朝潮。」
朝潮「ふぅ、うっうっ、うわあぁぁぁ!!!」
朝潮は、提督を抱き締め返し、盛大に泣き始めた。
―――――
―――
―
朝潮「ドッキリ?」
提督「そんなんだ。本当にすまなかった。」
提督はあの後、朝潮に全てのネタバラシをした。
朝潮「で、では!あの病気というのは」
提督「勿論嘘だ。」
朝潮「あ……良かったぁ…。」
心底安心したのか、朝潮はまた提督に寄りかかってしまう。
提督「もう大丈夫そうか?朝潮。」
朝潮「………。」
朝潮は黙ったまま何も言わない。
提督「…朝潮?」
朝潮「大丈夫じゃないです。」
提督「え?」
朝潮「えい。」グイッ
朝潮はそのまま提督を押し倒した。
提督「え、おい、朝潮?」
朝潮「提督、私と寝ましょう。」
提督「……………はい?」
朝潮「勿論、ただ添い寝するという意味ではなく、その、夜戦の方です///」
提督「いや、何いってんの?」
朝潮「よく言うではないですか。絆を深めたり、確かめあったりするには裸の付き合いだと。」
提督「それ、いろいろ意味が」
朝潮「提督!
怖いんです。もしかしたら、まだ提督は無理してるんじゃないかって。…だから、それを確かめるという意味でも……。」
提督「いや、でもな、」
朝潮「……私とは、嫌ですか?」ウルウル
提督「」
―――――
―――
―
提督「」
あの後、朝潮と夜戦をした。いや、してしまった。
憲兵「おい。」ドアバーン
提督「……。」
憲兵「お前さぁ、もう少し警戒心とか持ったらどうなの?
分かるだろ?あんな可愛い子にせがまれたら理性がもたないって。」
提督「………はい。」
憲兵「ったく、もう少し節度を持ってだな、こういうことは……。」
提督「……すいません。」
~瓦解するプライド~
提督「はぁ……。どうして、こっちは最低なドッキリをやったりしているのに逆効果なことが起きるんだ?
初めのほうは順調だった。そう、順調だったのだ。だが、やるごとにどんどんおかしな方向に……。
いや、考えるのはやめるべきだな。どっちにしろ、全員にしかけると決めているんだ。今更泣き言を言っても遅い。
さて、次は誰に………、」
ドアバーン
文月「提督ー!!!」グスッ
雪風「しれぃー!!!」ウルウル
提督「うおっ!どうしたお前ら!?」
文月「長門さんが!長門さんが!!」
提督「落ち着け。長門が何だって?」
提督はなんとか2人をなだめ、何があったかを聞き出した。
提督「なるほどな、長門がしつこく抱き締めてきて困ってると。」
文月「」コクコク
雪風「はい…。」グスッ
提督「………マジかよ。あの頼れるビッグ7だろ?」
文月「ほ、ほんとだよ~!」
雪風「最近、長門さんの目付きが怖いなとは思っていたんです。でも、今の長門さんは獣みたいで恐ろしいんです。」ウルウル
文月「抱き締める力も強くて痛いんだよ~!」グスッ
提督「」
おいおい長門よ。
いくら同性とはいえ、それでは変質者と何ら変わらないぞ。
提督「……決まったな。」
文月「へ?」
提督「長門には俺から厳重なバツを下すことにする。だからもう安心してくれ。」
雪風「しれぇ!!」パァァァ
雪風だけでなく、文月も一緒に顔を明るくする。
長門にはアレが最適だろう。
確か、ここらへんにしまって……。
提督は明石から募集した物が入ってるタンスをあさりだした。
―――――
―――
―
執務室
コンコン
長門「提督、私だ。」
シーン
ドア越しに入室の許可をとろうとした長門であったが、中から一向に声が聞こえる気配はない。
長門「………………………?何だ、いないのか提督?」ガチャ
長門は執務室へ入る。
予想通り、提督の姿はどこにも無かった。
長門「…………………本当にいないのか。全く、むこうから呼び出したと言うのに……………。」
長門は、どうするかと迷いながら執務机の前でつっ立っている。そして、考え事をしていたせいか、後ろから誰かが迫って来ていることに気づかなかった。
??「ふひひひひ!」ガバッ
長門「なっ!?」
誰かがいきなり長門に抱きついた。
長門「き、貴様!一体なにも――― !?」プスッ
抵抗しようと力を込める長門であったが、抱きついてきた中太りの男に何かを首に注射され、全く力が入らなくなる。
長門「な、何を……………?」ガクッ
??「ふひひひひっ!」
かろうじて手を動かし抵抗しようとする長門だったが、男にとっては大した抵抗にはなっていないようで、どんどん長門の体をまさぐっていく。
長門「や、やめろ………………。」
??「ふひっ、ふひひひ!」
長門「う、うぅ……………。」ジワッ
抵抗しても無意味だと悟り、どんどんと抵抗を弱めていってしまう長門。
長門(提督、あなたは今、どこにいるのだ……?)
最早、心の中でいもしない提督に助けを求めることぐらいしか出来なくなっていた。
長門「や、やめて、くれ………………。」グスッ
今まできづいてきたプライドが、少しずつ崩れていくのを長門は感じていた。
それでも、
長門(このまま、こんな男に肌を触られたくなどない!私は、あの人に一生ついていくと心に誓ったのだ。あの人、提督以外に触られるなんてこと、そんなのは、)
力の入らぬ状態でも諦めようとしない長門。
だが、いつもビッグ7だ、などと言ってはいても、長門も1人の女性なのだ。
今まで押し込んできた弱い部分が、どんどんと表に出てきてしまう。
そしてそれは、男をより調子づかせるだけとなってしまった。
??「ふひひひひひぃ!!!」
長門「うぅ、う…………。…………助けて…………、提督………。」
??「たく、これで少しはあいつらの気持ちが分かったか?」
初めて長門が助けを求めたことで、男からよく知っている声が聞こえた。
長門「…………………え?」
提督「よっと、」カポッ
男の頭部が胴体から切り離された。
中から提督が出てくる。
つまり、男の正体は着ぐるみをきた提督だったのだ。
長門「?、?、?!?!?」
何がなにやら。
状況をつかめない長門は明らかに混乱していた。
提督「明石が作った、『特製・キモ男装備』だそうだ。ご丁寧に音声までついてやがる。」
長門「…………提督、なのか?」
提督「それ以外に何に見えるんだ?」
イタズラをした子どものような、少しいじらしい笑みを浮かべながら長門に声をかけていく提督。
長門「……………………。」ペタッ
提督「お、おい!?長門!?」
安心して気が抜けたのか、長門は足から脱力して床に座り込んでしまった。
少しして、長門がやっと状況を理解し終えたらようで、提督に少しずつ怒りの目を向けていく。
長門「それでは提督。こんなことをしたわけを話してもらおうか。」
提督「駆逐艦の子から苦情が入ったんだ。お前が異常に抱きついてきて困ってるってな。」
長門「む、」
提督「む、じゃねえよ!あの気高いビッグ7が何やってんだよ。」
長門「……………確かに、今考えると迷惑な話だったな。先程、私が味わった苦痛をあの子達に味わあせていたのだな、私は。」
どうやら反省してくれたようだ。
とりあえず、今回はこれで終わりでいいかな。
――――――――――いい思いも出来たし。
長門「ところで提督よ。」
提督「っ!」ビクッ
長門「いくら駆逐艦の子達のことを思ってやったことであったとはいえ、流石に女性の体をまさぐるのはどうかと思うぞ。」
提督「…………………はい。」
提督は直ちに長門と同じになるようひざまづいた。
長門「しかも貴様、私の胸やスカートの中にまで手を入れてきたよなぁ。それも駆逐艦の子達のためと?」
提督「いえ、そんなことないです。」
長門「………………………。」
提督「……………………。」
長門「………………提督、」
提督「はい。」
長門「責任はとってもらうぞ。」
提督「え?」
ガバッと長門に押し倒されてしまう提督。
顔面に拳骨一発とかを想像していた提督は、完全に裏をかかれたせいで長門の為すがままとなってしまう。
提督「な、長門?」
長門「ハァハァ、先程薬を射たれてから体が変なのだ。」
提督「!?」
長門の顔がこれ以上無いほど蕩けていた。
明石のやつ、ただの脱力剤だって言ってたじゃねえか!募集される時に減罰を狙って嘘つきやがったな!!
提督「待て、長門!」
長門「あそこまでやったのだ。最後までいかせてもらうぞ。幸い、鍵は貴様自身が閉めているようだしな。」
あ、そうだった。
あんなところ、誰かに見られるわけにはいかないからって鍵閉めたんだった。
提督「ちょっ、まっ」
長門「いただきます。」
―――――
―――
―
提督「…………………………。」
翌日、提督は執務机に座り、考え事をしていた。
提督「俺さぁ、ドッキリやってんだよなぁ…………?
それが何でこんなことになるん?
俺さぁ、別に狙ってるわけじゃないんだそ?」
誰がいるわけでもないのに、提督は1人で言い訳のように呟いていた。
提督「ええい!こうなったら次の子は言い訳が出来ないぐらいの酷いドッキリをやってやらぁ!!!」
提督はヤケクソ気味になってしまった。
~酒の罪~
提督「今回ドッキリするにあたり、助っ人を呼んであります。どうぞ~!」
ガチャ
zara「失礼します提督。いきなり何なんですか?」
提督「いやね、今回はある子にドッキリ仕掛けようと思うんだけど、そのために手助けをしてほしいんだ。」
zara「なっ!しませんよ、そんなこと。何でザラがそんなこと……………。」
非協力的な態度をとるザラ。
しかし、提督にはザラが絶対協力してくれるという根拠があった。
提督「きっとザラも協力してくれる相手さ。」
zara「え?……………一体誰何ですか?」
提督のその自信満々な姿勢に、ザラはつい相手が気になってしまう。
提督「ポーラだ。」
zara「!!!」
提督「最近、ポーラだけでく飲兵衛共の勢いがすごいからなぁ。ちょっと経済的面でもダメージがね。だから、ここらでどぎついのを一発かましてやろうかと考えたんだよ。」
zara「それはとてもいい考えだと思います、提督!」
さっきとはうって変わって協力的になるザラ。
いつも妹の酒癖で苦しめられているからなぁ。
当然と言えば当然か。
提督「でしょ。それで、どぎついのをやるには俺1人だと荷が重いから、1回ドッキリをくらったことのあるザラに助けを求めたわけよ。」
zara「……………あれは、本当に心配したんですからね?」ジワッ
ザラが、受けたドッキリを思い出して泣きそうになってしまう。
提督「本当に悪かったって。今度また間宮に連れてってあげるから泣かないで。」
少し慌てながら提督はザラを慰めようとする。
……………提督が仕掛けたわけだから、慰めたはおかしいか?
zara「約束ですよ?」
提督「おう!まかせよけ。で、ドッキリの内容なんだが…………、」
そうして提督とザラのドッキリ計画は始まったのである。
―――――
―――
―
0811 pola&zara の部屋
zara 「それじゃあ行ってくるね。くれぐれもお酒は早くから飲まないようにね!」
pola「は~い。分かってますよザラ姉様。」
そうして部屋を出ていこうとするザラ。
が、ドアを開ける前にピタッと止まり、再びポーラの方を振り向く。
zara「あ、そうそう。冷蔵庫の中に酒瓶が一つ入ってるんだけど、あれ、飲まないでね。大事なお酒だから」
pola「大事なお酒?」
zara「えぇ、だからお願いね」
pola「分かりました、ザラ姉様。ポーラ、きちんと守ってみせます」
zara「(守る?)と、とりあえず宜しくね」
今度こそ、ザラは部屋から出ていった。
pola「……………行ったようですね。
これでお酒が飲み放題です! さあ、さっそく一本開けて―――――」
―――――
―――
―
1時間後
pola「えへへへ、気分が良くなってきましたぁ~。……………………あれ? もうお酒が無い。ん~、もう無かったかなぁ~」 ガサゴソ
部屋の戸棚などをあさるポーラ。
そして、彼女はついに冷蔵庫の方にも手を伸ばした。
pola「あ! あった!
…………けど、これ確かザラ姉様のお酒だ。どうしよう…………?」
ポーラは少しの間、考える仕草を見せる。けれど、それは本当に数秒ぐらいの間だった。
pola「………まあいっか。そうだ! 提督も一緒に飲んで貰お! そうすれば怒られるのはポーラだけじゃなくなるハズ」
言うが早いか、ポーラはすぐに執務室の方に向かった。
―――――
―――
―
1118 執務室
コンコン
提督「どうぞ」
pola「Bonjour! 提督! お酒飲みましょ!」
提督「ポーラ!? なんて格好でくるんだ!?」
今のポーラは服が半脱げになっていて、ブラが少し見えてしまっていた。
pola「え~、だって熱いんですもん」
提督「もんじゃない! ったく、ザラがいないって時に」
目を祖しつつ、ポーラの服を整える提督。
嫌々ながらも、ポーラは抵抗せずに服を直される。
pola「それで提督、お酒、飲みましょ?」
提督「ダメ、仕事中」
pola「むぅ~。飲みましょうよ~!」
提督「うわぁ!? ちょっ、止めろぉ!!」
執務中なのにも関わらず、ポーラが提督の腕を引っ張ったりして執務を妨害してくる。
pola「お酒ぇ~~~!!!」
提督「だぁぁぁ! 分かった、分かったから離せ!!」
ポーラの必至の懇願の末、提督はあっさりとおれてしまう。いや、最早これは駄々をこねただけだな。
提督「1杯だけだぞ」
pola「さっすが提督~。ささ、早くこっちに座って」
提督「全く………」
しぶしぶポーラに引かれ、提督は畳へと移動する。
ここまで、想定外のことばかりに見えるもしれないが、これは全部提督の思い通りになっていたのだ。そんなこと、ポーラが知るよしもないが。
pola「さぁさぁ、提督、飲んでぇ~~」トクトク
提督「ハァ、分かったよ」コク
そうして注がれた酒を、一口、提督は口に含んだ。ゴクッという音と共に酒が喉を通っていく。
そうして、数秒経ったところで、
提督「うっ!?」バタッ
pola「!?」
突然、提督が机に突っ伏した。
とても辛そうに呼吸をしている。
提督「ハァハァハァ」
pola「て、提督!? どうしたんです!? しかっりしてぇ!!」
提督「ぐっ、ゴホゴホ。ハァ、ハァ、ポーラ、これは………ぐっ、」ゴホゴホ
吐血までし、提督は胸の辺りを押さえている。まるで、毒でも盛られたかのような反応だ。
pola「そんな、提督、どうして?」
zara「ポーラ! ここにいる!? あのお酒、どうし…………え?」
慌てて入ってきたザラの視界には、苦しんでいる提督と、泣きそうになったポーラの姿があった。
zara「これは……一体? ………! ポーラ、もしかしてあのお酒を提督に飲ませたの!?」
pola「ビクッ、は、はい。そしたら提督が!」
zara「何で………? あれほど飲まないでって言ったのに!!」
pola「ご、ごめんなさいザラ姉様!」
zara「あれにはね! 動物どころか深海棲艦にだって有効な毒が入ってたの!」
pola「え!?」
zara「昨日、明石さんから渡されてね。機会があったら使ってみてください、て。でも、そんな時なんて滅多にないから保存しといたのに。なのに!」
pola「あ………あ……!」
ポーラはやっと自分のやってしまったことの重大さを知り、頭を抱えて震え出す。
迫り来る罪悪感、なぜ深く考えなかったのかという後悔、何より一番大事な人をこの手で殺してしまうかもしれないという事実が、彼女を蝕み出す。
pola(な、何で……? こんな、こんなの……。ポーラがいけないの? ポーラが悪い子だから)ポロポロ
あまりの重圧に、静かに涙が流れるポーラ。その目には、もう、光は灯っていなかった。
pola「…………んなさい。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
ポーラは、壊れてしまった。
ぐちゃくぢゃに心は砕け去り、あるのは、失わせたという罪悪感のみ。
ただひたすら彼女は謝り続けた。
pola「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
提督「ポーラ!!!」ガシッ
流石にこれ以上はマズいと感じたのか、提督は起き上がってポーラの腕を掴んだ。
pola「………提督?」
提督「ああ俺だ。この通り元気だし、死んだりなんてするもんか」
pola「……………………うぅ、ひっく」ポロポロ
提督が生きている。
この事実を知り、ポーラは別の涙が零れてきた。
pola「うっ、ひっく、ふぇぇぇん! 提督、提督! 良かったぁ~~! ごめんなさい、ごめんなさい~~!」
提督「大丈夫だからな。こっちこそごめんな、ポーラ」
ポーラの精神は、なんとかギリギリのところで保たれたようだった。
―――――
―――
―
pola「もうヒドイです! ザラ姉様も提督も」
提督「ごめんて。流石にやり過ぎたと後悔してる」
zara「ポーラ、ごめんなさい」
あれから事情を説明し、ポーラに謝る二人。それを聞いたポーラの方は、怒ってるようであったが、提督の腕に抱きつきながら離れようとしない。
zara「で、ポーラ? いつまでそうやって提督にくっついてるの?」
pola「もうしばらくは離れません」
提督「いや、ね? 俺にも仕事が……」
zara「仕事、終わってますよね?」
提督「いや、そうなんだけど。今それ言う?」
pola「ん~、提督~」スリスリ
ポーラは提督の腕に頬をすり付けている。
この後1時間はこのままだったとか。
~類は友を呼ぶ~
提督「ふぅ、大分ドッキリにも馴れてきたな」
あれから提督は、何人もの艦娘にドッキリを仕掛けていった。もうすでに、この鎮守府に所属している艦娘の内、半分以上が犠牲になっいた。
提督「だがな、俺はまだ、ドッキリと言えばこの人、と言える人物に手を出せてはいない
彼女には散々やられてきたからな。少しトラウマになるようなエグいやつを仕掛けても問題はあるまい。
というわけで、私は準備に入ることにする。これは絶対に失敗出来ない企画だ。念入りに準備せねば」
提督は誰がいるわけでもないのに、一人で扉を指差して話している。その様は、おかしくなった人格破綻者の一歩手前と言っても過言ではないほど、不気味な状態であった。
―――――
―――
―
1321 執務室
卯月「司令官からの呼び出しって何なんだろうな? 何か良い話なのかな?」
卯月は午前中の間に、1300に執務室へ来るように、と言われていた。現在、約20分の遅刻だ。
そんなことはお構い無しと、話の内容について想像をふくらませる卯月。まるで、誕生日前の子供のような可愛らしさがある。
さあ、この笑顔を歪ませてみようじゃないか。(←誰や)
コンコン
卯月「司令官! 卯月だぴょん!!」
シーン
卯月「あれ? おかしいなぁ。司令官? いないの?」
いくら待っても返事が来ない。このままここで待っているのもあれなので、卯月は扉に手を掛けてみる。
ガチャッ
卯月「…………空いてるぴょん」
そうして卯月は扉を開け、中へと入っていく。
卯月「……お邪魔しま~す……、え?」
静かに部屋へ入ったところで、卯月の視界に入ったもの、それは――
執務机にべっとりと染み付いた赤色絵の具。ポタポタと、机の端から滴が垂れ落ちている。
卯月「………こ、これは……」
あまりにも非日常的な光景。
いつも笑顔な卯月でさえ、この状況には目を見張るしか出来なかった。
卯月(これは………血?
なんで執務室に血がこびりついてるぴょん? ………というか、あの血は誰の……?)
卯月「………司令官の?」
その結論に至り、ガクッと膝を落としてしまった。
執務室に遺体は無い―――けれど、血の量からして致命傷は確実。
そして、いつも執務室に居るのは、提督と大淀の二人。でも、最近大淀は入り浸ってないと卯月は聞いていた。
導きだれる結論―――この血は、提督のものである可能性が高い。
卯月「う、嘘だよねぇ………司令官……。だって、司令官はうーちゃん達と一蓮托生って言ったぴょん。
だ、だから………」ポロポロ
そう言っているハズなのに、卯月の瞳から滴がいくつも垂れ落ちていく。
いつも笑ってくれた司令官。
いつも誉めてくれた司令官。
たまに怒ってくる司令官。
そして、いつもうーちゃん達のことを一番に考えてくれる司令官。
―――それら全てを思い出し、卯月は、
卯月「ヒック、う、うぅ、うわぁぁぁぁぁ!!!!」ポロポロ
盛大に泣き崩れてしまった。
提督(………ど、どうしよ?)
そんな中、執務室の前で慌ててる男が一人。
提督(まだ場を整え終えてもいなかったのに、先に卯月が来て、しかも泣き出しちゃってる……!)
完璧な流れを推定してあった提督だが、まさか始める前に崩されるとは想定していなかったらしい。
それから数分、彼はどうしようか迷っていた。
卯月「………酷いぴょん」グスッ
その後、覚悟を決めた提督から種明かし。
ドッキリだったと知った卯月は、完全にむくれていた。
提督「いや、悪かったよ。ごめんって」
卯月「ふん! そんなのじゃ許さないんだらね!」プイッ
提督「………そっか……」
確認のために言うが、提督はこれを嫌われるためにやっている。
事情があるのだ。そのために致し方なく、ドッキリ等と不毛なことをやっている。
でも、やはり長年一緒に戦ってきた仲間に嫌われるのは、心にくるものがあるらしい。
卯月「………でも」
提督「ん?」
卯月「条件によっては、許してあげないこともないぴょん」
提督「ほ、本当か!?」
卯月「ぴょん! うーちゃんに、これからするドッキリの手伝いをさせて欲しいの!」
提督「―――え?」
卯月「それ以外、許してあげないぴょん!」プイッ
提督「……う、う~む……」
迷ってしまった。
嫌われるのが目的とはいえ、「許してあげる」と言ってくれる娘の好意を無下にするのは心許ない。
提督「……しょうがない、許可しよう」ハァ
卯月「やったぁぁ!!」
提督「じゃ、これから頼りにしてるぞ、卯月?」
卯月「任せるぴょん!」
テレレッテッテッテー
卯月が 仲間に 加わった! ピョン
~恐怖は全てを葬り去る~
提督「という訳で、今回から卯月が同行することになりました」
卯月「よろしくぴょん!」
提督「さて、次の相手だが……」
卯月「もう決まってるの?」
提督「もっちろんさー。
次のターゲットは、摩耶と天龍のダブルコンビだ!!」
卯月「え、二人同時!?」
提督「さぁー! 気張っていこう!!」
卯月(流石に二人は同時はキツい気がするぴょん)
卯月「で、どんな方法ぴょん?」
提督「そ・れ・はぁ~」ゴニョゴニョ
卯月「」フムフム
提督&卯月「」ニヤッ
―――――
―――
―
現在、午後の十一時四十八分、執務室までの廊下にて。
天龍「ったく、提督のやつ……こんな時間に呼び出しなんて何考えてんだぁ?」
摩耶「さぁな? めんどくさいぜぇ」
卯月「あれ? 天龍さんに麻耶さんだぁ」
天龍「おん? 卯月? 何でこんな時間に……?」
摩耶「おいおい、こんな時間まで夜更かしかぁ? ほどほどにしねぇと提督に怒られちまうぞぉ」
卯月「うっ、……で、でも! それはお二人もおんなじことだぴょん!」
天龍「オレ達は提督に呼ばれてるからな」
摩耶「特別ってことよ!」
卯月「うぅ、ズルいぴょん……。
あっ! そうだ!
お二人は午前零時の噂、知ってるぅ?」
天龍「……午前零時の」クビカシゲ
摩耶「噂ぁ?」クビカシゲ
卯月「おっ、この感じは知らないみたいねぇ。
じゃ、うーちゃんが教えてあげるぴょん!
実はねぇ……」
卯月から教えられたのは、駆逐艦の間で流行ってると言われる、午前零時の鐘の話だった。
いつの日の午前零時かは分かっていないが、とある日の境目、執務室にて鐘の音が鳴り響くらしい。
補足だが、この鎮守府には鐘なんて無い。無論、周辺の町にもだ。
なのに、午前零時になると鐘の音がするという。
天龍「……それで、その鐘が鳴るから何なんだ?」
卯月「さぁ? そこから先は曖昧ぴょ~ん。異次元に連れていかれるとか、廃病院に繋がってるとか」
摩耶「んだよそれ?
ただ単に、どっかのびびりが、何かの音を鐘の音と聞き間違えて、勝手に妄想しただけじゃねぇか。
聞いて損した」
卯月(……あれ? 意外に二人とも平然ぴょん。
もしかして、幽霊とかの類いには強い?)
卯月「……作戦失敗の危機だぴょん……」ブツブツ
天龍「ん? どうした卯月?」
卯月「な、何でもないぴょん!
じゃ、うーちゃんはここらへんでぇ」
摩耶「お、おう………じゃあな」
そうして卯月は歩いていく。
二人はそこまで怖じ気づいていないように思える。
しかし、布石はうった。
後は罠を起動するのみ。
全ては、提督が仕掛けたドッキリしだいということだ。
コンコン
摩耶「よっ提督! 摩耶様の登場だぜ!!」ドアバーン
天龍「オレも到着だ。
で、提督、用ってのは何なん………」
そこまで言って気付く。
執務室に、提督が居ない。
摩耶「あれぇ? どこにいんだ? 提督のやつ」
天龍「分からねぇ………。
ったく、アイツから呼び出したくせに」
摩耶「だよなぁ」
天龍、摩耶、二人共不満そうな声を出す。
こんな遅い時間に呼び出したというのに、その張本人が不在。致し方ないところである。
しかし―――
ゴーーーン ゴーーーン
天龍&摩耶「!!?」
いきなり鳴り出す鐘の音。
時刻は、丁度午前零時。
天龍「なっ……嘘だったんじゃ……」ゴーーーン
摩耶「と、とりあえず! 早くここから出よう。
何か、嫌な予感がす―――」ゴーーーン。
そう告げたが、遅かった。
二人の足元の床が、四角の穴へと変貌。
二人は為す術無く落ちていったのであった。
―――――
―――
―
天龍「ん……うぅ……」ググ
摩耶「あれ……? ここ、どこだぁ?」ムクッ
二人が意識を取り戻したのは、薄暗く、非常用階段の標識により、怪しい緑色に照らされている病棟のようなところだった。
見渡す限りの白い壁。ただの壁のハズなのに、それが今では、より怪しさを倍増させる。
天龍「なんだぁここ?」
摩耶「……病院……か?」
天龍「何でこんなところに……?」
摩耶「まあ、とりあえず進もうぜ。
ここがどこだか把握しねぇと、戻るに戻れねぇよ」
天龍「それもそうだなぁ……。行くか」
摩耶と天龍は歩き出す。
一見、二人共全く怖がっていないように見える。
普段、偉そうな態度をとってる二人だ。案外、暗いところやホラーは苦手、みたいなギャップがあると思っていたんだが………。
ガタッ!
摩耶「」ビクッ
天龍「何だ?」
二人が歩き始め、丁度、前と右の別れ道があるところ。―――そこを通り掛かった時、右手側の道から誰かが歩いてきていた。
だが、どこか変だ。
足取りはやけにおぼつかないし、ケガでもしているのか、「ぁ~、ぁ~」という声まで聞こえてくる。
天龍「人?」
摩耶「な、何だよぉ。驚かせるんじゃねぇよ」ビクビク
天龍「白衣を着てるってことは医者か? にしても、やけにボロボロの白衣だなぁ」
摩耶「はぁ? ボロボロ? そんな格好して――――――ひぃぃ!!」ビクゥ
天龍「うわぁっ! な、何だよ!?変な声出して」
摩耶「あ、あれ………」ビクッ ビクッ
摩耶がその“誰か”を指をさし、疑問に思った天龍が目を凝らす。
???「あーー………、あーー………」ピチャピチャ
それは、体から赤色の滴を垂らし、口が開け閉め出来ないのか、だらしなくヨダレを垂れ流しにしている。
両手は前に出し、皮膚は爛れ、目は白く濁し、………あれは正しく―――
摩耶「ゾンビ………!」
摩耶がそう言った瞬間―――
ゾンビ「あ”、あ”ぁあ”ぁぁあああ!!!!」ドタドタ
天龍「うわぁっ!?」ビクッ
摩耶「ヒィィィィィ!!!!」ガクガク
迫り来るゾンビ。
「お”ぁぁあ”ぁぁぁ!!!」の声が次第に大きく――――
天龍「っ! 近寄ってくんじゃ、ねぇっ!」ドスッ!
ゾンビ「ごぁっ!! ぐっ、あっ、ぅぅ……」ゴロゴロ
それにいち早く反応した天龍が、左足を前に出し、ゾンビに渾身のみぞおちを食らわせた。
ゾンビは一瞬宙に上がり、その勢いのまま後ろに転がっていく。
天龍「よしっ!
ほら摩耶、さっさと逃げ―――」チラッ
摩耶「」バタンキュー
天龍「マジかよっ!?」
急いで、天龍は気絶した摩耶の手を肩に回し、引きずりながら、ゾンビの居ない方の道に歩き出す。
天龍「くそっ! 急いがないといけないってのに!」
文句を言っても結果は変わらない。
出来るだけ急いで、その場から去る天龍だった。
―――――
―――
―
モニタールーム
卯月「」ビクビク
提督「う~ん、意外に天龍の反応が薄いな」
卯月「て、提督、あれ……何?」ビクビク
提督「ん?
あぁ、あれな。
実はな、この地下施設、明石が極秘裏に造っていたものでな」
卯月「ぴょん!?」
提督「それを俺が見つけて没収。この“ホラードッキリ”に利用しようと考えた訳だ」
卯月(あ、明石さん、どうやってこんなの造ったんだろ?)
卯月「じゃ、じゃあ! あのゾンビは!?」
提督「あれはアンドロイドに似たようなもの。あれも明石から没収した」
卯月(本当に明石さんは何やってるぴょん!?)
―――――
―――
―
天龍「ったく! さっきから何なんだよここは!?」
摩耶「」
天龍「いい加減起きろよ摩耶!!」
今、天龍達は階段を上っていた。
彼女達はここに来る時、穴に落とされた。つまり、ここは執務室の地下にあると思うのが妥当。
だから天龍は階段を目指したんだ。
現在、摩耶を引きずりながら上っている。
ゾンビⅠ「あ”ぁあ”ぁぁぁ!!!!」ピチャピチャ
ゾンビⅡ「お”ぉお”お”!!」ビチャ ビチャ
ゾンビⅢ「お”ぎゅがぐぁあ”ぁあ!!!!」ヒチッ グチッ
天龍「あぁもう! キモい! クサい! 気持ち悪いぃぃ!!」
その天龍達を追いかけるように大量のゾンビが階段を上る。
一体はゆっとりと。
一体は体を異常にくねらせ。
他には体を這いずらせた者の上を強引に踏み荒らす者まで。
天龍「はぁ………はぁ………」タッ タッ タッ
天龍(アイツらは一体何だ? あんなヤツらが居るなんて聞いたことないぞ!)
天龍は別にコイツらを恐れてはいなかった。
普段、深海棲艦と戦う天龍にとって、こんなヤツらなど恐れるに足らない相手だったのだ(摩耶は違ったようだが)。
けれど、こんな量の、しかも異色他多なゾンビを見れば、おのずと嫌な予感も走る。
天龍(もし、なんらかのせいでコイツらみたいになったら―――)ハァハァ
コイツらみたいになったら、永遠にここをさ迷い続けることになるだろう。
元々、こんなところにこんな場所があるなんて聞いたことが無い。
おそらく、誰にも見つかることはえ、無く、こんな場所で―――
天龍(嫌だ! もう一生提督に会えないなんて、そんなの――!)ウッ ウッ
涙が、流れた。
あの、いつもの強気な天龍から、何粒もの涙が。
階段に上がれる最上階、天龍達は廊下に出た。
天龍「はっ、はっ、はっ」
摩耶「」
天龍(いつ起きるんだよ摩耶ぁ)
天龍も最早グズッていた。
それでも、ここに居るのがゾンビだけというのと、一刻も早く提督に会いたい、その気持ちが天龍を突き動かしていた。
天龍「………ん?」グズッ
けど、その前に現れた人が居た。
白くて長く、薄汚れたワンピースを着た、ボサボサの長い黒髪、そのせいで顔が見えない女性(と思わしき人物)。
女性(?)「………」
天龍(こんなとこにまだ人が? と、とりあえず―――)
天龍「っ、お、おいお前! こんなとこに居るなんて危ないぞ! 早く逃げろ!!」グシグシ
女性(?)「………」ヒタ ヒタ
天龍「お、おい!」
女性(?)は一向に返事を返さない。
けど、その代わりか、天龍にどんどんと近付いてくる。
天龍「え、あ、お、おい!」ズル ズル
その女(?)の異様な気配、天龍はつい後ずさりしてしまう。
しかし、天龍の後ずさりより女(?)が近付く方が速い。
女性(?)「」ヒタヒタヒタ ピタ
天龍「………な、何だ?」ビクッ ビクッ
女性(?)「………」
スッ
天龍「―――ふぇ?」
その女(?)は、さらに前進。
天龍の体にぶつかることなく、すり抜けていってしまった。
天龍「………あ……あぁ……」ブルブル
まだ、実体のあるものなら対処出来た。
天龍の練度はかなり高い。
それゆえに、艤装が無くても、実体がある敵なら難なく倒せるとふんでいた。
でも、目の前に居た女(?)には、その実体が無かった。
天龍の体が、今までのどんな時よりも震えを大きくする。
天龍「」フッ
天龍が後ろを振り向く。
すると、予想以上に女(?)の顔が近い。
目と鼻の先だ。
天龍「うわぁっ!」ビクゥ
あまりの近さに驚き、尻餅をつく天龍。
その衝撃で、摩耶を落としてしまった。
摩耶「ん……んぅ……天龍?」ゴシゴシ
そこで起きる摩耶。
まだ、寝起きで今の現状を理解していないのか、呑気に目をこすっている。
天龍「」サー
摩耶「………?」
が、血の気が引いていく天龍を見て、ただ事ではないと気付き、摩耶は天龍の向いている方に視線を向けた。
摩耶「――――ヒィ!」
そこに居るのは、不気味な女。
長い髪を半分に分け、瞼や眼球があるところには何もなく、黒い空洞が。歯はいくつも抜け落ちており、その口で笑っているから、より一層不気味に見える。
どんどんと、顔を下ろして近付いてくる女(?)。
摩耶「く、来るな! 来るなぁぁぁ!!」ガクブル ガクブル
天龍「」ブルブル ブルブル
女性(?)「」スッ
女(?)は二人の顔の間に顔を埋め、両手を二人の肩に。
そして――――
女性(?)「ザんねんダったネぇ」
そう、呟いた。
「「ああああああぁぁあぁあぁああぁぁあ!!!!」」
―――――
―――
―
提督「……えぇと、これはやりすぎたな」
天龍「」バタンキュー
摩耶「」バタンキュー
卯月「し、司令官、あれ、何だったの?」ウッ ウゥ エグッ ヒック
提督「ん? あれはホログラムだよ。
明石が造ってたのを没収、改造して、こしらえたものだ」
卯月(もう、何でもかんでも明石さんのせいな気がするぴょん)ウルウル
提督「さて、この二人、どうするかな?」
卯月「とりあえず部屋に運んであげるぴょん!」
提督「……そうだな、それが妥当か」
その後、事情を聞かされた天龍と摩耶によってボコボコにされた提督が見つかったという。
~絆の強さ~
提督「あ~、酷い目にあった」
卯月「自業自得だと思うぴょん」
摩耶「そうだぜ。
ま、まあ、摩耶様にかかればあんなの、屁でもなかったけどな!」
卯月(何でここで強がるんだろ?)ジー
提督「そうかそうか、全然、苦でも無かったか。
それなら、今度摩耶にはあの地下に一日過ごしてもらうとするか」
摩耶「えっ!? ちょっ! う、嘘! 嘘だから!!」
提督「ふん、変な見栄を張るからだ。
………で、どうして摩耶がここに?」
摩耶「べ、別にいいだろ! 何か文句あるのかよ!?」
提督「いや、特に無いけど……」
摩耶(実は、あの日以来、提督に会えなくなるんじゃないかって不安でしょうがないから、なんて言える訳ねえ)
提督「とりま、次のドッキリに移ろうか」
卯月「待ってたぴょん!」
摩耶「……まだ懲りてねぇのかよ」
提督「いんや、これでもかっていうほどコリゴリしてる」
摩耶「はぁ? じゃあ何でやるんだよ?」
提督「………」
卯月&摩耶「?」クビカシゲ
提督「……とりあえず、次のターゲットは朧と潮でいこうと思う」
卯月「おぉ! 驚かしがいのありそうな二人だぴょん!!」
摩耶「あの二人か……。大丈夫なのか?」
提督「大丈夫とは?」
摩耶「トラウマとか……信頼関係とか……そんなのだよ」
提督「………分からん」
摩耶「おい!」
提督「さ、行ってみよー!」
卯月「ぴょん!」
摩耶「あ、こら待て!」
―――――
―――
―
朧「提督から直のお呼び出しなんて珍しいね。
何かあったのかな?」
潮「ん~、どうなんだろうね?
も、もしかしたら、どこかで失敗、してたのかなぁ?」オドオド
朧「落ち着いて潮。
失敗してたとしても、提督ならそこまで責めたりしないよ。そうだった場合、私も一緒に謝ってあげるから」
潮「お、朧ちゃぁん……」ウルウル
朧「ほらほら。泣かないで、ね?」
潮「う、うん!」ゴシゴシ
コンコン
朧「失礼します」
潮「し、失礼します……」
提督「……来たか、潮、朧」
男性A「おぉ! 君達が潮君と朧君かね!」
男性B「………」
潮「―――え?」
朧「誰……?」
提督「この方達は、大本営に勤める、俺よりも階級が上なお偉いさん方だ」
潮「ふぇぇ!?」
朧「し、失礼しました!」アタマサゲル
男性A「はっはっはっ、気にしないでくれたまえ。楽にしなさい」
男性B「……」
男性Aの方はきわめておおらかであるが、男性Bの方は、潮や朧の方を見ようとはせず、ただ顔を伏せて黙っている。
けれど、何を隠そう、実はこの二人の正体、卯月と摩耶なのである。
明石特性・変装キッド、により、二人とも中年のヒゲオヤジに大変身していたのだ。
声の高さや体型、口癖まで直してくれる優れもの。最早、変装している者の面影すら残さない完璧な変装道具だった。
摩耶(おい! これは一体どういうことだよ!? 何でこの摩耶様がこんなことしなくちゃいけねぇんだ!?)
卯月(まあまぁ♪ 乗り掛かった舟たぴょん!)
摩耶(ふざけんなぁぁぁ!!!!)
提督「実はこの二人が君達と会って話がしたいらしくてね。それで呼んだんだ」
朧「あ、そうだったんですね」
潮「」ビクビク
提督「潮、人見知りなのは知ってるけど、そんな怯えなくても」
潮「は、はぃぃ! ご、ごめんなさい!!」ビクゥ
提督「お、おう……」
男性A「はは! まあ、しょうがないこともあるさ! 私は気にしないよ」
提督「す、すいません……」
(卯月のヤツ、何でこんなに演技がうまいんだ?)
男性A「さて……提督君、席をハズしてもらえるかな?」
提督「え? どうしてです?」
男性A「君が居たら、彼女達が気を遣ってしまうかもしれないからねぇ」
提督「あぁ、そういう………分かりました。
潮、朧、分かってるとは思うけど、失礼の無いようにね?」
朧「あ………はい、朧、頑張ります」
潮「う、潮も、頑張り……ます………」
提督「はは………それじゃ私は失礼します」ガチャ
バタン
潮&朧「………」
男性A「ふむ。さ、立ってないで、とりあえず座りなさい」
朧「は、はい……失礼します……」
潮「……」
男性A(卯月)に誘導されるがまま、朧と潮は、さっきまで提督が座っていたソファに座る。
けれど、その様子は、提督が居た時よりも明らかに落ち込んでいた。
男性A「……さて、本題に移ろうか。
朧君、潮君、君達には、私達の慰め者になって欲しいんだよ」ニヤリ
潮&朧「!?」
男性B「ハァ!?」
朧「な、何言ってるんですか!?」
潮「お、朧ちゃん……」ギュッ
あまりにも荒唐無稽な男性A(卯月)の発言に声を荒げる朧に、その朧の袖を握り寄る潮、そして摩耶までもが声を上げた。
摩耶(おい! 何言ってんだよ!?)
男性A「悪い話じゃないんだよ?
もし、君達がおとなしく慰め者になってくれると言うのなら、提督君の階級を二つ、進級させよう」
朧「!」
摩耶(無視すんじゃねぇよ!)
男性A「だがもし断れば、君達の解体も余儀無くされる」
潮「そ、そんなぁ……」
朧「そんな権限、貴方達には無いハズだ!」
男性A「それが可能なんだなぁ?
俺がちょちょいと圧力を掛ければ、君達、駆逐艦の解体なんて朝飯前なんだよ」
潮「!!」
朧「………ゲスがぁ……」
男性A「ふふ、何とでも言えばいい。
けど、君達も提督と離れるのは嫌だろ? なら、とっとと―――」
朧「解体すればいい!」
男性A「………え?」
朧「お前達みたいなのに触られるぐらいなら、解体した方がマシだ!!」
潮「お、朧ちゃん……?」
朧「潮、君だって嫌だろ? あんなヤツらに触られるのは」
潮「そ、そうだけど……」
朧「それとも潮は、あんなヤツらに触られながら、提督を裏切りながらも生きたいのかい?」
潮「!!」
提督(え? 何この状況? ヤバくない?)
実は、この男、部屋から去るフリをして、執務室のドアに張りついていたのだ。
提督は、朧と潮は断らないだろうと踏んでいた。
我ながら最低なドッキリだと思うが、嫌われるなら最適なドッキリ。
もし、受諾して、卯月が「服を脱げ」と言った瞬間、提督が部屋に乱入。「何をしてるんだ!?」という罵倒後、男に変装している二人を追い出して、ドッキリだとバラす。
そういう手筈だった。
しかし、朧が真っ先に断ったことで、いきなり計画はつまづいたのだ。
潮「……潮も、嫌です」
男性A「なっ!」
潮「潮の体は、提督のためにあるんです!
だからぁ……その提案は受けられません!」グスッ
卯月(そ、想定外だぴょん……。
こ、このままだと、ドッキリが成功しないぴょん。な、なんとかしないと………)
男性A「い、いいのかい?
このままじゃ解体はまぬがれないよ?」
潮&朧「分かってます!」
男性A「ぐっ………」
男性B「………」
摩耶(はぁ………しゃぁねぇな)
男性B「だが、提督はそうもいかん」
男性A「!?」
潮&朧「!」
摩耶(提督のことだ。何か意図があってのことなんだろ?
仕方ないなぁ。この摩耶様が、一肌脱いでやるぜ!)
提督B「解体を命令されるということは、その者の指揮能力、管理能力が疑われるということだ。
つまり、そうなると提督は、必然的に降格、または追放を考えられるようになる」
朧「そ、そんな……」
潮「あ……あ………」
男性B「それでも君達は、拒むのかい?」
提督(摩耶………。
えっぐ! えぐすぎるぞ摩耶! どうして協力してくれたかは分からんが、ようこんな即効でそんなの思い付いたな!! 正直引くぞ!)
ドアに張りついている提督でさえ、若干、摩耶のやり口に引いていた。
が、そのおかげで首のかわ一枚つながった。
後は―――
朧「………分かりました」
潮「………うぅ」
朧「言うことを聞きます」
男性A「」
卯月でさえも、摩耶のやり口に絶句していた。
これはドッキリだ。
ドッキリで解体を持ち出すのもどうかと思うが、まさか提督を、愛する者を貶める提案までしてくるのは、流石にどうか、と。
けれど、もう後には退けなくなった。
男性A「……ふ、ふふ、そう! 最初からそう言っておけばいいのだよ!!
さぁ! 服を脱ぎたまえ!!」
朧「………くっ」
潮「う……うぅ……」グスッ
朧と潮は、もう従うしかなかった。
彼女達にとって提督は、最早なくてはならない、かけがえのない存在となっていたのだ。
提督に誉められるのは至福。
提督に撫でれるのは至福。
提督の膝の上に座るのは至福。
彼と居る全ての時間が、最高で、最良の時間だった。
自分達はどうなっても構わない。けれど、彼に危害が及ぶのは耐えられない!
だから彼女達は、おとなしく汚されることを選んだんだ。
そうして二人が、自分の服に手を―――
提督「ちょっと待ったぁぁぁ!!!!」
一同「!?!!?」
朧「て、提督!?」
潮「あ……あぁ……」ウルウル
その瞬間、待ってましたと言わんばかりに(というか待ってたんだけど)姿を現す提督。
その姿に、来るハズ無いと思っていた人が来来たことに朧は驚き、潮には救世主のように輝いて見えた。
提督「一体どういうつもりだお前らぁ!!」
男性A「い、いや、これは……」
提督「これはクソもあるか!!
このことは軍法会議にて審議してもらう!
とっとと出てけぇ!!」
男性A「し、失礼しましたぁ~!!」ソソクサ
提督の勢いに負かされ、尻尾を巻いて逃げるように振る舞う男性A&B。
ミッション・コンプリート。
提督「二人共、だいじょう―――」
潮&朧「うわぁぁぁん!!!!」
提督「!?」
潮「ふぇぇぇぇぇん!!!!」
朧「提督! 提督ぅ!! ありがとぉ~~!!」
大粒の涙をこぼし、大声で泣く潮と朧。
もう彼女達は絶望しか残されていなかったのだ。
深海棲艦と戦っているからこそ、土壇場で誰かが助けてくれるなんてことはないことを、二人は知っている。
だから、今この時も、心の中では(提督、助けて)と願いつつも、同時にそんなことは起きないと思っていたんだ。
けれど、差し伸べられた。
他ならぬ、愛してやまない提督自身から。
二人は、心から感謝し、そして安堵した。
その勢いのせいで、提督は「ドッキリだった」と伝える余裕が無くなってしまった。
―――――
―――
―
卯月「で? その後はどうなったぴょん?」ジトー
提督「あの二人に嫌われることに耐えられないと思い、結局ドッキリだと伝えられませんでした」ドゲザ
摩耶「はん! せっかく摩耶様がお膳立てしてやったってのに」
提督「いや、でもお前、よくあんな言い回し出てきたな。
俺らなんかより、よっぽど向いてるんじょないか?」
摩耶「はぁ!?」
卯月「うーちゃんもそれ思ったぴょん。
あれは流石に無いよね~」
提督「なぁ~」
摩耶「ちょっ、待てよ!
お、俺はただ………ただ……」
言い淀む摩耶。
「ただ」、何なんだろうか?
卯月「?」
提督「?」
摩耶「う……うぅ……覚えてろよぉ~~!!!!」ウワーン
提督「え? ちょ、摩耶!?」
卯月「出ていっちゃったぴょん……」
提督「アイツ……最近、精神が弱くなってないか?」
卯月「………」
卯月(多分、あのゾンビドッキリのせいだと思うぴょん)
~崩れ落ちる十秒前~
卯月「で、次はどうするのぉ?」
提督「次のターゲットは神風だ」
卯月「おぉ、あの真面目そうな神風ぴょん」
提督「ここでも、卯月の力を申し分なく発揮してもらうぞ」
卯月「任せるぴょん!」
提督(まだドッキリをしていない艦娘も残りわずか。
さぁて、どうなることやら……)
提督は窓を見て、これから起こることについて考えながら黄昏ていた。
提督(残り、二日、か)
―――――
―――
―
神風「司令官からの呼び出しって、何だろ?」
神風は執務室までの廊下を歩いていた。
神風「う~ん………あっ、そういえば大淀そんが、「提督がドッキリをやってる」って知らせてくれたっけ? もしかして、それ?」
そう神風も、そして、まだドッキリされていない残ってる艦娘全員にも、すでに大淀からドッキリがあると伝えられていた。
ここから難易度上昇。
提督は一体、これからどういう策をとるのだろうか?
神風(と、もう執務室だ)
もう歩いて一分もしないところに執務室の扉がある。
神風は、少し早歩きに変えて、歩を―――
パァーン!!
神風「!!?」
神風(発砲音!? そんな!? 執務室から!)
神風は急いで執務室の扉に手を掛ける。
そして、勢いよくドアノブを回し―――
神風「司令官!!」ガチャ
卯月「あ………」ポロポロ
神風「―――――え?」
神風は自分の目を疑いたくなった。
卯月が、顔を伏せている提督の前に居る。
両手には一丁の銃が握られ、立ち上る細い煙。
涙目の卯月が、入ってきた神風を見続けていた。
神風「う、卯月……?
何で………どうしてアナタが……ここに……?」
そうして、さらに信じたくないものが。
伏せている提督から、ドロドロと赤い沼が広がっている。
ドロドロ ドロドロ
それを止めどなく流れて、ついには、机から溢れ、ポタポタと床に垂れ出した。
神風「あ……あ………」
体が震える。
目を閉じたくなる。
けれど、自分の意思では動かせなくなった体は、ただその状況を見やることしか出来ない。
卯月「提督が、悪いんだぴょん」ポロポロ
神風「………え?」
卯月「提督、言ったぴょん。
『いやぁ、本当に艦娘は、出来の良い兵器だな』って」
神風「―――――!!」
その言葉を聞き、神風は真っ先に否定をした。
神風「う、嘘。そんなの………」
卯月「私達は道具だ、人とは違う……」ポロポロ
神風「い、嫌、止めて……」
卯月「俺とは、違うって」ポロポロ
その瞬間、神風の糸が切れた。
神風「あ………」ストン
地面にへたりこむ。―――否、それしか出来ない。
震える体は一層激しくなり、勝手に目頭が熱くなる。
神風(聞き間違いよ! 司令官がそんなこと言うハズない!)
そう否定すればいいだけなのに、口から出てきてくれない。
代わりと言わんばかりに、涙が、溢れた。
神風「あ………あ……」ポロッ ポロッ
神風(司令官は……私達艦娘を……私を、何とも…)
提督「おいこら卯月。お前、流石に設定盛りすぎだ」ムクリ
神風「ふぇ?」ポロポロ
卯月「えぇ~、うーちゃん的には良い感じだと思ったんだけどなぁ~」テヘペロ
神風「………え? あ、あれ?」オロッ オロオロ
提督「という訳で神風、後ろ見てみ?」
神風「?」
『ドッキリ大成功』
神風「」
神風「で? つまり、私がドッキリだと知ってる可能性があったから、あんな手の込んだドッキリをしたということ?」
提督「い、いや、皆あんな感じ……」セイザ
神風「」ギロッ
提督「っ!? な、何でも無いです」ダラダラ
卯月(神風……怖いぴょん)ブルブル
神風「はぁ、もう司令官、私、本当に心配したんだからね!」
提督「わ、悪かった。この通りだ」ドゲザ
神風「もう………。
卯月、ちょっと席ハズしてもらえない?」
卯月「? どうしてぴょん?」
神風「お・ね・が・い」
卯月「」
卯月(何でだろう……? どうしてか逆らっちゃいけない気がするぴょん)
卯月「わ、分かったぴょん……」
神風「ありがと♪」ニコッ
ガチャ バタン
神風「さて………司令官♪」
提督「ん……うお?」
卯月が執務室を退室した途端、神風が、胡座をかいている提督の上に抱き寄ってくる。
提督「ど、どうした?」
神風「本当に司令官は、私のこと、物だと思ってない?」
上目遣いで聞いてくる神風に対し、提督は即断で―――
提督「当然だ。それは自信を持って言える」キリッ
神風「本当に?」
提督「本当だ」
神風「だけど、あのドッキリのせいで私、少し人間不信気味よ?」
提督「ぐっ」
神風「だから……」
神風が、胸に添えていた手をどんどんと上に。
片手は肩に、もう片方は頬へと添え、
提督「」ゴクッ
神風「司令官、その言葉を神風に、信じさせて?」
少し悲しげに、そう告げたのだった。
―――――
―――
―
卯月「あの後、何があったんぴょん?」
提督「………」ゲッソリ
卯月「なんだか、随分とお疲れみたいだぴょん」
提督(な、なぜなんだ!? 俺は、こうも最低な行いばかりしているというのに!!
最初の方は順調だった。そう! 順調だったのだ。
だが、事が進むにつれ、どんどんと―――)
卯月「おーい、提督ぅ?」
提督「」ハッ
卯月「やっと気付いたっぴょん」
提督「す、すまない」
~輝く先、消えて絶望~
卯月「次は誰行くぴょん?」
提督「次は瑞鶴にしようと思う」
卯月「瑞鶴さん? 一気に簡単そうになったねぇ。
どんなドッキリをするの?」
提督「ホラードッキリだ」ニヤリ
卯月「」ゾクッ
提督「確かに瑞鶴なら、幼稚なドッキリでも簡単に引っ掛かるだろう。
だが、そこであえて大掛かりなドッキリを仕掛けることで、より一層、素晴らしい反応を獲得出来るのだぁぁぁ!!!!」クワッ
卯月(うわぁぁぁ………。瑞鶴さん、可愛そう)
提督(とか言いつつ、ワクワクしてるんだろ?)
卯月(!? 直接脳内に!!)
提督「さてと、それじゃあ行ってみようか!」ガチャ
卯月「瑞鶴さん、骨を拾うぴょん」
――――――
―――
―
瑞鶴「………」オドオド
現在時刻、午前一時。
瑞鶴は今、鎮守府の廊下を歩いていた。
瑞鶴(もう……提督さんたら、どういうことなのかしら。こんな時間に呼び出しなんて………。
うぅ、夜の鎮守府って何か怖いわね)トコトコ
瑞鶴は、提督の呼び出しによって、こんな時間に外出をしている。
本来なら寝静まっている時間。そのせいで、他の艦娘は一切見つからない。
静寂が、今では耳に痛いぐらいだ。
瑞鶴(うぅぅ………、何も起こりませんように何も起こりませんように何も起こりませんように)ブツブツ
肩を震わせ、一人念じる瑞鶴。
自分の下からする足音だけが、嫌に響く。
そんな状況だからこそ―――
ガタン
―――横の壁から音がするのは、“お約束”というものだろう。
瑞鶴「ひぃぃぃ!!!!」ビクゥ
たかが小さな音が鳴ったくらい。
それでこの驚きようである。
最早、これからもつのか心配だ。
瑞鶴「な、何よ! 驚かさないでよ!!」フン!
強がってはいるが、明らかに血の気が引いてってる。
ガタン
瑞鶴「っ!!!!」ビクゥ
またしても同じような音を立てる壁。
しかし、瑞鶴はそんなのにも大きく驚いてしまっていた。
瑞鶴「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ―――」
顔は青く、動悸が速くなり、冷や汗が次々と流れ落ちる。
それでも瑞鶴は歩く。―――否、それしか選択肢は無いのだ。
瑞鶴(怖い………怖いよ提督さん。助けてよぉ)グズッ
監禁されてる訳でもなければ敵に囲まれている訳でもない。
だというのに瑞鶴は、それ以上の恐怖を味わっていた。
???「あーー……あーー……」
瑞鶴「!?」
掠れるような低い声。
根底を震わせる野太さ。
暗闇から届く恐怖。
それが、瑞鶴の前に姿を現した。
瑞鶴「―――――!!!!」
瞬間、彼女から声が失われた。
「あーー……あーー……」
泥沼の色をした人獣。
全てを失い、ただただ狂気に呑まれた存在。
ヒタ……ヒタ……
ゆっくりと、そして着実と、それは近付いてくる。
瑞鶴「あ………ぅあ………」ドサッ
逃げようと、震える足を無理矢理動かそうと瑞鶴―――だったが、そのせいで腰が下ろされてしまった。
瑞鶴「ぁぅあ………はっ……」ブル ブル
もう、足は震え、手には力が入らない。
瑞鶴「いや………嫌……!!」フルフル
みっともなく涙を流し、頭を振るわし、体を怯えさせ。
瑞鶴の中には、“退避”という言葉すら消えていた。
「あーー……あーー……」
ヒタ……ヒタ……
逃げられない距離となった。
化け物との距離は一、二メートル。
立って走ろうとしても、それより先に掴まれて終わりだろう。
正真正銘の“終幕”だ。
「あーー……あ”、ぁあ”ぁぁあああ!!!!」
瑞鶴「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」
―――――
―――
―
瑞鶴「バカぁぁ……、提督さんの、バカぁぁ……」ポロポロ
卯月「うっ、グスッ、ふぇぇ……」ポロポロ
提督「ご、ごめん。ごめんって二人共。やりすぎたよ……」
あの後、ゾンビ型アンドロイドを殴り込み参上を果たした提督は、瑞鶴に事情を説明。現状に至る。
卯月はというと、一緒に提督とモニターを見ていた訳なんだが、あまりの怖さに逃げ出そうとしたので、提督が無理矢理留め、モニターにくぎ付けにしたのだ。(←瑞鶴と鉢合わせてバレるのを恐れた)
瑞鶴「バカ、バカぁぁ………。
絶対に、絶対に許さないんだからぁ!!」ポカポカ
提督「ご、ごめんってばぁ」
卯月「うぇぇぇぇぇん!!!!」ダバー
提督「う、卯月!? ちょっ、勘弁してぇぇ!!」
この後、間宮券十枚で手をうった。
~終焉、僅かな希望~
提督「………ついに明日か……。
早いもんだな、時間が経つのは。
こんな俺にも、中々良い思い出が出来た。
それだけでも上々と言えるんじゃないかな?」
提督には家族が居ない。
両親は事故で死に、引き取ってくれた親戚夫婦はどちらも病死した。
それから彼は死神扱い。近付くと自分も殺されるという風潮が立ち、提督は迫害されてきた。
自分は居てはいけない存在。その思想が真相意識に芽生えてしまっていたのだ。
そんな彼も、ここに来て変わったと思う。
沢山の十人十色な艦娘達とふれ合い、仲を深め………いつしか、彼にとっては かけがいのない家族となっていた。
提督「………大丈夫だ。お前達は、俺が守るから」
そう一人、提督は呟くのだった。
コンコン
提督「………来たな」
大和「失礼します」ガチャ
提督「やぁ、よく来た大和」
大和「提督、ご用というのは、やっぱり……」
提督「ははっ、最後の一人ともなれば、必然的に気付かれるか」
大和「では………」
提督「あぁ大和、今からお前にドッキリを仕掛ける」
大和「………提督、そういうのは、例えバレていたとしても言わないのが常なのでは?」
提督「いいんだよ、これはとびきりのドッキリだからな」
大和「はぁ……? そうなのですか?」
提督「おうよ」
提督「なぁ大和、人体強化実験って………聞いたことあるよな?」
大和「えぇまあ。けっこう噂になってますし」
提督「そして、その成功確率もべらぼうに低いことも」
大和「はい。
ですが、失敗しても人体には なんら影響が無いため、軍関係者全員に行っているとか」
提督「その通りだ。
そして―――――」
「その成功例が俺だ」
大和「……………え?」
提督「来週、大規模抗戦が開始する。
文字通り、深海棲艦側と こちら大本営側の一大決戦だ。
それに、一番、肉体的にも指導者的にも優秀な俺が召集されるのは、最早 必然と言えよう」
大和「ちょっ、ちょっと待ってください提督!
何ですかそれ!? 大和、そんなの初めて聞き―――」
提督「そうだろうな。なんせ初めて言ったからな」
大和「そんな………」
提督「お前らは………大丈夫だ。
俺が指揮を執る条件として、大和達の身の安全、これからの待遇を保証することを誓わせている」
大和「提督………」
提督「だから―――――」
大和「ドッキリですよね?」
提督「……………」
大和「そうなんですよね? 提督。
だって最初に言ったじゃないですか、『ドッキリを仕掛ける』って」
提督「………」
大和「そう……なんですよね? そうだと……言ってください!」
提督「悪いな大和」
大和「っ!!」ポロッ
提督「今 言ったことは嘘でもなければドッキリでもない。物的証拠ありの事実だ」
大和「………大和も、一緒に戦います」ポロッ ポロッ
提督「ダメだ」
大和「っ、それじゃあ提督が! ……一人に……」ポロ ポロ
提督「一人じゃないさ。他鎮守府の艦娘、大本営に所属する艦娘だって居る」
大和「そういう……意味じゃ………」ポロポロ
提督「ここを頼むな、大和。
お前だからお願いするんだ」
大和「ふっ、うぅ………」ポロポロ
提督「………」フッ
ギュッ
大和「あ………」ポロポロ
提督「大丈夫だ、帰ってくる。
………それまでの間、頼むな」ダキシメ
大和「う、うぅ………はい! はい! ………」グスッ グスッ
提督(………)
―――――ありがとな
―――――
―――
―
鎮守府正門
憲兵「行くのか?」
提督「あぁ」
憲兵「ったく、最後の見送りくらい してもらったらどうだ?」
提督「そしたら別れづらくなるだけだ。
それに―――――」
「これが今生の別れじゃあるまいし」
提督「」ニッ
憲兵「………そうか」フッ
提督「それじゃ、ちょっくら行ってくるとするよ」
憲兵「……ちょっと待て」
提督「ん?」
憲兵「行ってらっしゃっいませ、司令官殿」ビシッ
門をくぐろうとした提督に、正しく敬礼をする憲兵。
それに対し、提督は―――
提督「はい。行ってきます、憲兵さん」ビシッ
同じように、敬礼を返すのであった。
―――――
―――
―
二週間後
歴史に残すほどの大決戦。
艦娘側 対 深海棲艦側、無事、我々艦娘側が勝利することが出来た。
これで深海棲艦が撲滅された訳じゃないけれど、相手側に壊滅的な打撃を加えられたのは確かだ。
これから どうなるかは、私達の働きにかかっているというところだ。
時雨「憲兵さん、まだ提督は帰ってこないのかい?」
戦いは熾烈を極めたという。
艦娘側にも甚大な被害が出て、半分以上の艦が轟沈したとか。
その中で提督も、前線とまでは言わないにしろ、戦場に赴いていたらしい。
現場を見ながらの指揮、最初こそ 数で押されていたにしろ、中盤辺りでひっくり返せたのは提督のおかげらしい。
けれど、戦闘が終わってから、提督とは連絡が取れなくなったと聞いた。
なにしろ、深海棲艦側の最後の抵抗で、提督が居た辺りに大きな爆発が起きたのだとか。
それから提督の安否は不明となった。
憲兵「えぇ、まだ帰ってきておりません」
時雨「そうかい……」シュン
憲兵「大丈夫ですよ時雨さん。
彼は言っていました、『これが今生の別れではない』と。
なら、我々は信じて待つだけでしょう」ニッ
時雨「………そうだね。
僕も信じるよ、提督のこと」
「お、嬉しいこと言ってくれるね」
時雨&憲兵「!!」バッ
時雨「あ……あぁ……」ポロッ ポロッ
憲兵「………全く、遅いんだよ」
―――――
―――
―
執務室
コンコン
大和「はい、大丈夫ですよ」
ガチャ
大和「どなた……で……」
「おぉすごいな、ほとんど書類が片付いてる。
流石 大和だ」
大和「あ………ぇ……あ……?」
「ただいま、大和」
大和「あ……あぁ……!!
はい! お帰りなさい!!」ポロッ ポロッ
―――――提督
終わったぁ~~!!!!
いやぁ、長かった。非常に長かった!
やっと終えることが出来ました、提督「さぁ、ドッキリをはじめよう」。
皆さま、時間が掛かってしまい申し訳ありませんでした。
これにて、以上となります。
沢山のリクエストが来たとき、「あれ? これ 最後までいけるかな?」と不安になりましたが、どうにか終わらせることが出来ました。
ここまで読んでいただき、感謝です!
期待!
青葉にはいい薬になったと思うよ。
こういうのなら歓迎出来るドッキリだ。
時雨のお話よかったなぁ…少し参考にさせていただきます!
期待!!!!!
ヤンデレがくるとは思わなかった。
そしてさりげなく二航戦がいることに拍手!!!!!
時雨君はもう手遅れだと思うよ。
とても面白いです!続き期待してます!
リクエストで榛名お願いできますか?
了解です。
ストーリー考えておきます!
北上希望^^
北上希望^^
伊19オナシャス!
北上、伊19の順でいきます。
リクエスト、ありがとうございます。
ヒトミ(伊13)お願いします!
ヒトミ(伊13)お願いします!
連投してしいました。すいません
「大本営からの解体命令」で那珂をお願いします。
あかん。此れじゃ病んだ榛名に拉致されて監禁されてまう!
しかも姉妹も協力して完璧な隙のないパーフェクトな監禁をされる!
3人位ならまだ逃げれるが4人じゃ無理だ!
では、伊19の後に、伊13、那珂の順でいきたいと思います。
リクエスト、感謝します。
後、榛名をヤンデレにするかは迷ったのですが、時雨でヤンデレやったばかりだったので、控えました。
楽しみにしてた方、すいません。
(;^ω^)<(あれ…?結末一緒になりそう…)
わざと大破させるとか榛名のドッキリはやりすぎじゃない?
それに関しては本当に申し訳ないです。
ちょっとやりすぎた感が自分でもいなめないです。
何でやwヤンデレ榛名は薄い本の常識やでwまあ最近はヤンデレ事態が減ってるけどねw
僕自身、ヤンデレが好きなので、違うキャラでまたやるかもです。
狙撃のとこでンソゲキッ思い出したのは俺だけだろうなぁw
リクエストよかったら朝潮お願いします
23>>同意w
異常な提督のほうなんですが、一話で落ちた同期が再テストで合格して提督になるという展開お願いできますか?
15 です。
御採用していただき誠にありがとう御座います。
23さん、了解です。
朝潮もけっこう好きなので、腕がなりますねぇ。
25さん、なるほど。そういう展開もありですね。また構成改めます。
ありがとうございます^^
リクエストOKなら……
長門をリクエスト
嫌がる駆逐艦にムリヤリ抱きついたって設定?にして←ありそうで怖いけど
29さん
いいですね。確かにありそうです。
了解しました。
お酒を飲み過ぎるポーラに
お仕置きドッキリをお願いします!
31さん
わかりました!
ヒトミ編の執筆ありがとうございます。ヒトミみたいな子は何かの拍子に感情が暴走して...とかありそうですねw今後の展開も楽しんで読ませていただきます。
15・26 です。
リクエストさせていただきました「那珂 編」の執筆ありがとう御座います!
中々、面白かったです ♪
リクエストがまだ可能でしたら、「ホラー・ドッキリ」で天龍、摩耶をお願い致します。
33さん
コメントありがとうございます。
何気にヒトミってヤンデレ似合うかなぁ、て思ってやってみたんですよ。
34さん
了解です。
分かりました、ホラーですね。手加減無しで全力でいかさてもらいます。
ホラードッキリの様な悪戯チックな感じだと、うーちゃん味方に付けたら最強になりそうwww
15・26・34 です。
採用ありがとう御座います。
36さん
確かに最強になりそうですけど、どちらかというと卯月にはドッキリを仕掛けたいなって思ってます。
でも、先に卯月にドッキリ仕掛けてから手伝ってもらうっていう展開もありかもですね。
すいません!最近youtubeのほうでSS動画を始めたんですが、 狐from雪桜さんの異常な提督物語を採用してもよろしいでしょうか?
39さん
大丈夫ですよ!
是非、よろしくお願いします!!
36です
自分もうーちゃんへのドッキリは是非見てみたいと思っています。良ければ執筆をお願いできますか??
了解しました!!!
大変図々しいのですが……朧か潮で書いてほしいです!
すんません書いてくださいなんでもしますから!(なんでもするとはいってない)
43さん
最近、多忙になってきたので更新スピードがかなり落ちているんですが、了解です。
何とか頑張って時間を作って書こうと思います。
できれば大和おねがいします
神風とか見てみたい
更新きたー!
特にリクエストなどございませんが楽しいSSありがとうございます
見ているか分かりませんが頑張ってください
瑞鶴お願いします
今まで沢山のコメント、ありがとうごさいました。
これにて、神風→瑞鶴→大和の順で終わりを迎えようと思います。
随分と時間が掛かってしまいましたが、最後までお付き合い願います。
~絆の強さ~の摩耶の心境・・・これ、天竜のじゃ・・・?
51さん
確かに天龍も同じようなこと思ってますが、ホラードッキリの際、摩耶を気絶させずぎて、提督LOVEの心情を出せなかったということで、その心情を出すためにも描いてたんですが、……思考が天龍とかぶりすぎてますね。
要反省です。
完結おめでとうございます
楽しく読ませてもらいました
国王「名づけて……勇者ドッキリ大作戦!」ってss思い出した
最後まで読みましたがとても面白かったです!
これからも頑張ってください!