2017-09-21 10:44:47 更新

概要

異常な提督の鎮守府物語、番外編その2です。まあ、今回は提督の生まれる前後、つまるところ、過去話です。


前書き

誤字、脱字、文法のおかしいところがあるかもしれません。ご指摘いただけるとありがたいです。


コンコン


S提督(以下提督)「失礼します。」


元帥「やあ、よくきたね。とりあえずそこに座りたまえよ。」


提督「ありがとうございます。」


提督は元帥に案内されるがまま、元帥が座っている机の真正面のソファに座った。


提督「それで、お話とは何でしょう?」


元帥「……うむ、次期元帥と名高い君になら話しても問題ないだろう…。」


提督「そんな、次期元帥なんて、畏れ多い。」


元帥「謙遜しなくてもいい。聞いているぞ、君の戦果は。この前の大規模進行だって、充分活躍してくれたではないか。艦娘達の扱いもいいと評判だぞ。」


提督「まあ、艦娘達の扱いは当然ですよ。いくら兵器とは言え、意思をもっている以上、何してくるかわかったものではないですからね。それ相応の対応をするのは当たり前です。むしろ、存外に扱って、艦娘達の反感を買おうとしてるやつのほうが私にはよくわかりません。」


元帥「はは、なるほどな。確かにそう考えれば、それが普通だろうな。やはり、君は素晴らしいよ。」


提督「お誉めいただき幸いです。」


元帥「やはり、君には話しておこう。ある戦争のことを。」


提督「戦争、ですか…。」


元帥「あぁ、もう20年ほど前のことだ。」


提督「深海棲艦が現れてすぐのことですね。…まさか、その時にも一度大規模戦闘を行ったのですか?」


元帥「いや、その当時敵となったのは深海棲艦ではない。」


提督「?では一体、何が…?」


元帥「人間だよ。」


提督「!?」


元帥「あの時はな、まだ世間が深海棲艦を共通の敵という認識を完全に認めてはいなかったんだよ。それどころか、深海棲艦は海神様の使いだと言って信仰するやからまでいた。」


提督「まさか、それって…。」


元帥「我々が相手することになったのは、そういう反政府組織だった。」


提督「…そんな、まさか。どうやったら、あんなのが神の使いだと勘違いできるんだ?」


元帥「まあそう言うな。その頃はまだ深海棲艦もそれほどの猛威をふるってはいなかったのだ。だからまだ、勘違いする余地もあったのだ。」


提督「…。」


元帥「あの時はまだ艦娘達の数も少なくてね。いたのは戦艦長門、陸奥、大和、武蔵、そして一抗戦の赤城と加賀だけだったんだ。」


提督「本当に少ないですね。相手は一体どんな兵器を使っていたんですか?」


元帥「時代遅れの砲台、戦闘機、潜水艦とかだよ。まあ、もう言わなくてもわかるとは思うが、この戦争の結果は、最後以外、我々の圧勝だった。」


提督「でしょうな。しかし、なぜ最後は違ったのです?それに、当時の司令官がどんな人だったかも気になりますね。」


元帥「……当時の司令官は、私だ。」


提督「!」


元帥「あの時の功績があったからこそ、私はここまで上りつめることが出来た。」


提督「そう、だったのですか…。」


元帥「あぁ。……、それで、最後だけ違ったのはなぜか、という質問だったな。」


提督「はい」


元帥「ヤツらが、艦娘を上回る兵器を開発したからだ。」


提督「!?」


元帥「私も初めは驚いたさ。」


ーーーーー

ーーー



元帥(20年前)『戦況はどうだ?』


長門「問題ない。あらかた殲滅し終わった。これより、敵本拠地に浸入する。」


元帥『そうか、よし、これでこの戦争も終幕を迎えるだろう。皆、頑張ってくれ。』


全員「はい!」


赤城「これでやっと、人間との戦いは終わるのですね、加賀さん。」


加賀「えぇ。そうです、赤城さん。早く終わらせて、鎮守府に戻りましょう。」


武蔵「!敵影発見!」ピピッ


陸奥「嘘!?さっきまでそんな反応無かったわ!」


長門「そんなことより…、相手の数は!?」


武蔵「……一隻。」


大和「え?」


赤城「一隻、ですか?」


長門「……どういうことだ?何かの誘導か?」


陸奥「とりあえず、提督に通信を!」


元帥『どうした?』


武蔵「相手の艦を殲滅後、新たに敵艦を探知。だが、発見されたのは一隻のみ。どう捉える?提督。」


元帥『ふむ、本当に一隻のみなのか?』


加賀「はい、それは間違いないかと。」


元帥『……。相当追い詰められ、苦し紛れの奇策に走った、というのが一般的な見方だな。おそらく何かあるぞ。気を付けろ。』


大和「了解しました。」


武蔵「なるほど。もう戦える全力は残ってないと見せかけ、潜水艦などで不意討ちでもしてくる気か。ふん、そんなもので沈む私達ではない。」


長門「だな。行くぞ!」


大和達は警戒しつつも、相手の本拠地へと距離をつめていく。そうして進むことで、相手の正体が見えてきた。


陸奥「…え?アレって」


長門「人…なのか?」


敵の本拠地を目前にして、それを拒むように一人の男が立っていた。艦娘達と同じように、海の上に。


武蔵「ただの人間が海面に立つのは不可能だ。そして、アイツから敵艦の反応が出ている。つまり、アレは間違いなく、兵器だ。」


男「…。」


男はどこにでもいるような、普通の顔をしていた。海の上に立っておらず、軍服さえ着ていなければ、誰だって彼のことをただの一般人だと言うだろう。


大和「私達と同じように、人の形をした兵器…?じゃあ、相手も艦娘と似たような兵器を開発したってこと!?」


赤城「そうなりますね。ただ、実力のほうはどうか知りませんけど。」


そう言って、赤城は弓を構えだす。


赤城「この追い詰められた局面で出してくるということは、アレはまだ、完成していない可能性のほうが高い。ここで仕留めましょう。」 


赤城が矢を放った!そうして矢は、形を変え

   バシャアァァァァァ!!!


加賀「え?」


最初に気づいたのが加賀だった。


男がいつの間にか距離を詰め、赤城の頭を掴み、海面に浸からせながら進行を続ける。先程赤城が放った矢はどこかに消えていた。


男「…。」


赤城「~~~~~!!?!?」


赤城は抵抗するも、男は赤城の頭を海面から出そうとはしない。


加賀「赤城さん!?」


陸奥「嘘…、いつの間に。」


大和「早く赤城さんを助けないと!」


ある程度進むと、男は赤城から手を離す。


赤城「……うっ、ゲホッゴホッ!」


赤城は、かろうじて、まだ意識を保っていた。

だが、赤城は分かっていない。

まだ男が近くにいることを。


加賀「赤城さん!すぐそこから離れて!!」


赤城「ゴホッ、ゴホッ……、え?」


瞬間、また男が赤城の頭を海の中に突っ込む。

しかし、今度はすぐに出して、また突っ込む。それを何度も、間髪いれずに男はやりだした。


赤城「っ、アガッ、ゴボッ、アッ」


加賀「赤城さん!!」


長門「貴様ぁ!いい加減にしろ!!」


そこにいち早く駆けつけた長門が、男に拳をくらわそうとする。だけれど、男はそれを簡単に避けてしまう。


それでも、赤城の頭からは手を離させ、距離をとらせることに成功した。


加賀「赤城さん、大丈夫?」


赤城「ゴホゴホッ、ゲホッ、…ハァ、ハァ…。」


今ので赤城は小破していた。

息もまともにできなかったため、加賀の質問に答える余裕すらない。


武蔵「あいつの初動、まるで見えなかった。つまり、一人で勝つのは不可能。さて、どうするか…?」


長門「皆で協力してたたくしかあるまい。どうやら、アイツを倒さなければ敵本拠地に行けないようだしな。」


大和「赤城さん、いけますか?」


赤城「ハァハァ、ハァ、…何とか。」


長門「よし!では赤城と加賀で援護を!私と陸奥と、」


大和「私と武蔵で対象を沈めます!」


4人が一斉に動き出す。

赤城は何とか立ち上がり、加賀と一緒に艦載機を放つ。


男は冷静に眺めていた。

男の与えられた使命は一つ。ここにいる娘共を沈めること。

どうするのが一番いいか、考えていた。

まだ、この男に専用の武器はない。出来ることは限られている。


男「…。」


フッ、とその場から消え、陸奥の前まで一気に詰めた男は、陸奥の腹部に拳を決めていた。


陸奥「ーーーーーー!!!!!」


    バキッ!メキッ!  バシャァァァァ


けっこう深く拳はめり込み、ぶっ飛ばされた。


陸奥「ふっ、うっ、ぐぅぅ」


長門「陸奥!」


かなりの威力。陸奥は小破してしまう。

陸奥はうずくまり、その場で腹を押さえている。

男は、その間に陸奥との距離を縮めようとする。が、


長門&武蔵「いかせん!!」

             ドドォォン!!


戦艦の二人による高威力の砲弾が、男を捉えた。流石の男も、これは避けることが出来なかった。


           ―――――――直撃。

けれど、男は所々傷を負っているだけで、怯んでいる様子はない。


長門「くっ!」


武蔵「なんという耐久力か。」


男は目標を変更する。今度は武蔵のほうを向いて、態勢を

        ドォォン!


その隙を後ろから陸奥に狙われた。

またしても直撃。

これには男も驚き、少し怯んでしまう。


大和「今です! ってーーーーー!!!」


ドォォン! ドォォン!  ドドドドドッ!

     ドゴォン!  ドコォォン!! 


艦娘達による一斉射撃。

そのどれもが男を捉えていた。


男「っ、っ、っ、」


男はただこらえるしかなかった。

1分間ほど砲撃は続き、それが終わる頃には男の姿はなくなっていた。


陸奥「……やった、の?」


武蔵「ちょっと待て、今確認する。」


男の姿が見えなくなり、少し艦娘達の気が緩み出したとこらで

 サバァァァ!     ガシッ!

海中から出てきた手が、長門の足を掴んだ。


長門「なっ!!?」


突然片足を掴まれ、後ろに引っ張られることで、長門はバランスを崩し、倒れてしまう。


ザバッ、と男が海中から現れる。


赤城「そんな!」


陸奥「あれだけの砲撃を受けて、まだ生きてるっていうの!?」


男は長門の足をつかんだまま、長門を振り回し、おもいっきり海中に長門をぶつける。

今度は逆方向に、そしてまた逆方向に。


バシャン!  バシャン!   バシャン!


長門「ガッ!  グッ!  ガッ!」


武蔵「いけない!」


長門を助けようと武蔵が男のほうに前進しだす。しかし、男は長門を振り回すのを止め、武蔵のほうに長門を放り投げる。

長門と武蔵は衝突。そして、そこに男は小さく黒い球体を投げた。


        バシャァァァァァーー!!


球体は長門に触れた瞬間、爆発。

結構な高さの水柱がたった。


長門「う…。」中破


武蔵「……おのれぇ。」小破




敵本拠地


A「おお!流石は我らが開発した兵器だ!あの艦娘どもを圧倒している!」


B「えぇ、すごいですな。」


敵本拠地では、かなりの者達が今の戦果に満足していた。……一人を除いては。


C「……………このままでは勝てませんね。」


全員「!?」


A「何を言っておられるのだ、C殿。アナタが立案し、発明した兵器ではありませんか。」


C「確かに、それは間違いない。アレは艦娘達に勝つために開発した物。ですが、それは専用武器までを含めていいます。今の状態では、艦娘達を傷つけることはできても、倒すまでには至らない。」


B「そ、そんな…。」


C「諦めましょう。我々は敵を侮っていた。敗因は、ただそれだけです。」




俺の使命は艦娘を倒すこと。


だが、このままではそれを果たせそうにない。


いくらヤツらを中破まで追い込むことができても、大破、轟沈まで至らすことができない。

物量差がありすぎる。

ヤツらの武器は砲台。それに対し、俺は何の武器も積まれてない上、持っているのは少量の爆弾のみ。


最早、ここまでだろう…。


だが、ただでは終わらぬ。ただでは…。




男は海に倒れた。

最後に、戦艦大和の一撃を受け、ほとんど動けなくなった。


大和「や、やったの?」


男はピクリとも動かない。


加賀「やりました。」


艦娘達は喜びの声を上げた。

今までにないほどの強力な敵、それを倒すことが出来たのだから。


大和「提督に通信を入れますね。」


被害状況

  中破…大和、長門、赤城

  小破…武蔵、陸奥、加賀


大和「……が今の状態です。」


元帥『そうか…。よし、よくやった。皆で一時撤退してくれ。』


大和「ですが、もう敵の本拠地は目の前にあるのですが」


元帥『そこはもう、我々の仕事だ。お前達はよくやった。こちらに戻ってきてくれ。』


大和「わかりました。………皆さん!鎮守府に帰艦します!準備してください!」


艦娘達は、鎮守府に戻ろうと立ち上がり、動き出した。

大和も同じように鎮守府に帰ろうとする。


元帥『……終わったな。』


大和「はい。これでもう、人間とは戦わなくて済むんですね。」


元帥『あぁ。……大和、帰ったら大事な話があるんだ。』


大和「ふぇ?はい、わかりました…?」


男は、まだ、死んでいない。

最後の力を振り絞り、海に潜った。


大和「?」


武蔵「どうした?大和、早く帰るぞ。」


大和「……今、音が」

   サバァッ!   ガシッ!


大和&武蔵「!?」


男は海から出て、大和にしがみついた。


武蔵「な!?まだ動けたのか!!」


男「はは、己の力でお前らを沈めることができなかったのは残念だが、せめて、コイツだけでも道連れに出来れば上々だろう。」


武蔵「なんだと!?」


元帥『どうした!?何があった!!?』


大和「くっ、この」


長門「何だ?……!そんな、大和!」


その声で、先に行っていた陸奥、赤城、加賀も今起こっていることに気づいた。


男「……じゃあな。」


男がその言葉を発した瞬間、かなりの規模の大爆発が起こった。



男がいた場所には何も残らなかった。

大和の姿は、どこにも見当たらなくなっていた。



―――――――――――――――――――――


元帥「その後、敵本拠地を制圧。戦争は終結した。」


提督「元帥殿、アナタは…。」


元帥「それ以上は言うなよ?…で、ここからが本題なのだが、


敵本拠地制圧後、地下である物が見つかった。おそらく、その男が作られた施設であることはほぼ間違いなかった。


そこには5つのカプセルがあった。内、3つには赤ん坊がはいっていた。」


提督「赤ん坊、ですか…。」


元帥「あぁ、で、その赤ん坊を男と同類の兵器だと睨んだ我々は、保護して、ウチで十分に働いてもらうことにした。」


提督「…もしや、その3人って」


元帥「そう。川内、神通、那珂だ。」


提督「なるほど。あの不可解な強さには、そういう理由があったのですね。


……あれ?カプセルは5つあったのですよね?

で、その内3つは川内達。」


元帥「…。」


提督「で、1つは話に出てきた男のものだとしても、後1つは」


元帥「見つからなかったのだよ。」


提督「!?そうか、わかりましたよ!元帥殿がこの話をしてくださった理由が。次の戦争時、それが乱入してくるかもしれないということを伝えたかったのでね!!」


元帥「い、いや、そうではない。君にこれを話した理由、それは、


君が元帥になった時、川内達に今までと同じように生活させてほしいということだ。」


提督「?どうゆうことですか?」


元帥「先も話したが、彼女達は艦娘を上回る強力な存在だ。もし、彼女達の機嫌を損ねたら、どうなると思う?」


提督「……甚大な被害をくらう。」


元帥「そうだ。そして、川内達はあの男と違い、専用武器も持っている。ここまで話せば納得してくれるだろう?」


提督「はい、わかりました。けれど、自分が元帥になると決まったわけでは」


元帥「胸の内に留めておいてくれればいい。話はこれだけだが、聞きたいことはあるか?」


提督「いえ、特には。」


元帥「そうか。では、下がっていいぞ。」


提督「失礼しました。」


S提督が部屋を出ていく。

元帥は席を立ち、窓から外の様子を眺める。


元帥「大和よ。人間との争いは終わっても、まだ戦争は続いているよ。君はこの世界、どう思う?」


元帥はそんなことをつぶやいた……。



だが、誰も知るよしもない。

このすぐ後、S鎮守府が深海棲艦の襲撃にあい、崩壊するとは。


後書き

次で最終章になると思います。一気に書くんじゃなくて、ちょこちょこ更新していく感じでいこうかな、と考えているので見てくださったら嬉しいです。
希望があれば、そのキャラの話を番外編、または別の話で出そうと思います。
見たい艦娘がいたら、言っていただけると幸いです。


このSSへの評価

2件評価されています


SS好きの名無しさんから
2017-11-16 00:59:48

SS好きの名無しさんから
2017-09-28 06:46:39

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SS好きの名無しさんから
2017-09-28 06:46:40

このSSへのコメント

2件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2017-09-28 06:52:19 ID: 2EaREVYf

海の底で深海と成らずにヤマトと融合してウルトラ漢息として復活したか。
若しくはまだヤマトの生前の無念であり悲願の宇宙戦艦YAMATOとなりイスカンダルを目指す。うん此は外伝だw

2: SS好きの名無しさん 2017-11-17 12:16:26 ID: YHpQmWlX

続きはよーはよー(ゆっくりでええんやで)


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