もう一度、もう二度と逢いませんように
ある戦いの渦中に生まれ落ちた『重巡』のお話です おしまい
はじめましての方ははじめまして、クソ文才のたくちゃんです!
今回はかなりシリアス多いです、てか多分全編シリアスです
流血表現とかもあるので閲覧はご注意を!
あはは
あはははは
痛いなぁ・・・
『また』右腕とれちゃった
もう4回目だよー・・・私右腕取れやすいのかな?
左腕はまだ1,2回しか取れてないのに
帰ったら『直して』もらわなきゃね
さてと・・・
「重巡『鈴谷』、帰投しまーーす」
「ただいまー」
提督「ああ、おかえり、またひどく損傷したな」
この人は鈴谷の提督、提督には男の人が多いはずなんだけど、この人は女の人なんだよね
というか、鈴谷の知ってる提督の人って、女ばっかり
「生きてるだけましでしょー」ニシシ
提督「…その通りだな 腐る前にその傷を直してこい」
「はーい、ドックは空いてる?」
提督「…? もちろんだ、すぐ直せ」
提督「直したらすぐに出撃の準備をしておけ」
「はーーい♪」
「♪~~~」
長門「っ! お前は…」
「お、長門さんじゃん、こんちわー!」フリフリ
長門「いや、そうだったな、失礼した とはいえ礼儀をきちんとしろ」
「えー、鈴谷そういうの柄じゃないんだけど…」
「そういえば長門さんもこれから入渠?」
長門「いや、私は今終わったところでこれから出撃だ」
「そっか、頑張ってねー」
「ああ^~生き返るわ~!」
春雨「もう、おじさんみたいなこと言わないでくださいよー」
「え~、そんなこと言わずにさー、春雨ちゃんもお風呂の気持ちよさ、わかるっしょ?」
春雨「まぁわからないでもないですが…」
「でしょでしょ! じゃあ自然とこんな声が出ちゃうのもしゃーなしなんだよ!」
春雨「もう…私はもうすぐ出ますから」
春雨「あ! ほかの人の迷惑になりますからこの間みたいに泳いじゃダメですからね!」ビシッ
「もー、大丈夫だって、鈴谷、あれで懲りたよ」ヘラヘラ
春雨「…どうだか」
ガラガラガラ
「行ったか…」
「いやっはー! まずは手始めにクロールだぁ!!」バシャバシャ
春雨「……」
「あっ…」
「ドーモッス」ペコ
春雨「……♪」ニッコリ
「え、えへへへ……」
春雨「何笑とんねん」
「は、春雨ちゃんも、やるかなーって…」
春雨「やるわきゃねぇだろぉん!? 私言いましたよね!! 泳・ぐ・なって!」
春雨「これは司令官案件ですね、ついてきてください」
「ちょまっ!? 提督案件はマジやめて!! 頼んます!! なんでも島風ちゃん!」
春雨「つべこべ言わずに来いホイ!!」ズルズル・・・
「いやぁ~!! おーたーすーけー!!」ズルズル・・・
周りの人たち(((何やってんだあいつら…)))
廊下・・・
春雨「……」スタスタ
「…………」スタスタ
ヒソヒソ・・・ ヒソヒソ・・・
「あ、あのさぁ…」
春雨「何ですか」
「ひうっ!? い、いやぁ、みんながひそひそ話してるからさ、何の話題なのかなーって」
春雨「…まぁあなたにならいいでしょう」
春雨「…これはまだ不確実で大きな声では言えないんですが」
春雨「ーーーーー」ヒソヒソ
「陸奥さんが…沈んだ…?」
春雨「……はい」コクッ
「………………」
春雨「……………」
「なーんだ、そんなことか!」
「別段深刻なことでもないじゃん、そんなこと」
「この間は扶桑さんが沈んでるし」
「そもそも替えはきくんだから何の問題もないじゃん?」
春雨「それはそうですが」
春雨「戦艦クラスがやられた、というのは艦隊の士気にかかわることですから、慎重に伝達しないといけないんです」
「まー、普通にばれてるっぽいけどねー!」
春雨「ぐっ、痛いところを…」
春雨「お、おほん! では執務室につきましたから」
「うん! 鈴谷は提督に出撃の報告とその僚艦の招集やってもらわなきゃだから、ここでね」フリフリ
春雨「はい、ご武運を」
提督「……来たか」
「ほいほい、鈴谷さんが来ましたよー」
提督「早速だが今からお前は出撃任務だ、目的は」ファサッ
提督「地図上のこの地点の防衛だ」
「ふむふむ、なるほどね、ここに今から向かえと」
提督「そうだ、当然奴らが攻めてくるだろうが、それを迎え撃つことがお前たちの役割だ」
「ふっふーん、この鈴谷にお任せ!だよ! 深海棲艦なんて、ちょちょいのちょーいで倒してきてあげるから!」
提督「…そうか 既にお前の僚艦となるやつらは第五会議室に招集済みだ」
「はーい、じゃあすぐに向かうね!」
提督「ああ、頼んだ」
ザザーン・・・ ザザーン・・・
「穏やかな海だねぇ~…」
「こんな日は、みんなでスイカ割りがしたいねぇ~」
朝潮「…? スイカワリ、とは何でしょうか…?」
皐月「確かに、ボクも気になるな!」
「えー、二人ともスイカ割りも知らないのー?」
霧島「私も知りませんね」
日向「ああ、私もだ」
「えぇー! 朝潮ちゃんとさっちんはともかく霧島さんと日向さんも知らないのかー、そっかー」
「スイカ割りってのはね、まず棒と目隠しとスイカを用意します!」
「次に一人に目隠しをして棒を持たせます、その際、その人からは見えないようスイカを置いておきます!」
「あとはその目隠しされた人がスイカを割るためにうろちょろしている様子を楽しむだけ!」
「簡単で楽しーよ! みんなでやろうよ!」
日向「ふむ、スイカ割り、か、面白そうじゃないか、この出撃が終わったらやろうじゃないか、スイカとやらは…」
皐月「その辺の実でいいでしょ!」
朝潮「そうですね! 皆さんでやりましょう!」
ザザーン・・・ ザザーン・・・
提督『ご苦労だったな』
提督『すまないがお前にはしばらくそこにいて防衛の指揮をとってくれ』
「うん、わかった」
提督『欠員は随時補てんする、すでにそちらに今日の損失分である5隻を派遣した』
「わかった」
提督『明日からもあいつらからの猛攻が予想される、がんばってくれ』
「あはは、提督らしくないね、応援するなんて」
提督『……それほどまでに激戦が予想される地域なのだ』
「わかってるって、別に提督は私のことを心配してるわけじゃないもんね」
提督『ああ、お前はなかなかに出現するものではないからな、替えが利きにくい』
「あはは…そこまではっきし言われると清々しいね」
提督『…? その代わりといってはなんだが要望があればこちらもできる限り応えよう』
「…一艦娘の鈴谷にそこまで言うってことはそこまで重要なポイントってことだよねぇー」
提督『…ああ、そこは絶対に落とせない、我々の勝利のために…!』
一日目
今日は結構うまくいった こっちの損害は2隻、それで向こうが撤退していったからね
いつもこういう戦いができればいいんだけどねぇ
二日目
今日はー…微妙 こっちの損害は4隻、しかも危うく向こうさんを通しそうになった
設置してた機雷にぶつかってくれたおかげでなんとかなったけどねー
ちょい反省
五日目
今日は損失4 敵は通さなかったよ
でもなんか頭が痛い、なんでだろ
七日目
ちょっと疲れてきたなー…っと危ない、日記で愚痴るとこだった 今日は損失3、敵撤退
まーまーの戦果じゃん? 今日は満足
九日目
頭痛がひどかった
そして今日は最悪、私以外みんな沈んだ しかも敵を通しちゃった
敵は島の部隊の人たちが何とか撤退させたみたいだけど、これちょー怒られるよねー…
十日目
提督が疲れてるんだろうってちょっと休暇くれた、えへへ、嬉しいな
でも私の代わりに来た子、大丈夫かな…?
十一日目
あの子、案の定沈んじゃったみたい、ごめんね、鈴谷のせいで
頭痛いのは続いてるけど明日からは鈴谷が頑張るぞいっ!
十三日目
「ーーっ 痛った…」
「おーい、誰か生きてるー?」
「あー、やっちゃったかー」
「まぁ敵は撤退したし、前の時よりはましか」
「……」
「なんだろ、なんでこんなに頭ががズキズキするんだろ」
ーーー
???「あー鈴谷! 覚ーてまーーー? 私ですー!-----ー! まーーーてーれしーーすー!」
ーーー
「ぐっ!? あーもうなんなんだよ! ほんとに!」
「また頭痛薬もらわなきゃじゃん! あーめんどくさい!!」
十四日目
頭痛があまりにひどいから、ちょっと診てもらった
精神的なものなんだって、人によっては特定の敵艦を見るだけでこうなる時もあるんだって
いわゆる、トラウマってやつなんだって
損失3 敵は撤退、まぁまぁ
二十日目
頭痛の原因がわかった、気がする
最近鈴谷が頭が痛くなる時に敵に居る艦を見てみた
そしたら必ずいる艦がいた、それは
『重巡棲姫』
あれがいるからいけないんだ、あいつをつぶせばこんなにつらい頭痛に悩まなくて済む
殺してやる
二十四日目
またあいつがいた、今日は暁ちゃんと榛名さんがあいつに殺された
クソッ! ふざけんな! 私の大切な仲間を何人も沈めやがって!!
憎い憎い憎い憎い憎い!!
ぶっ殺してやる!
「ハァハァ…!」
提督『落ち着いたか? 要件を話す、手短に済ませるからな』
「…うん」
提督『最近敵の勢いが減ってるのはわかるか』
「……」
提督『…まぁ構わん、統計上かなり勢いが減っている、ここが攻め時だと上が判断した』
提督『明後日より大規模反攻作戦を決行する』
提督『貴様はそれまで悟られないように防衛を継続してくれ』
提督『わかったな』
「…了解」
どこかの鎮守府・・・
最上「聞いたかい? 大規模な作戦が決行されるって」
三隈「聞きましたわ、どうやら今回は上の方も本気ですわね」
熊野「……………」ジッ
最上「…熊野? どうかした?」
熊野「…いえ、少しだけ覚悟を決めていたところですわ」
最上「…そっか、ごめんね」
熊野「いいんですのよ、心配しなくても」
熊野「私は…あの『重巡棲姫』を倒すだけですわ」
二十五日目
「っ! 睦月ちゃん!!」
睦月「なっ!?」ドガァァァン!!!
瑞鶴「クッソ! おのれぇ!!」ビューーン!
「よし!当たった! これで…!」
「チッ、また大破どまりかよぉ!!」
瑞鶴「…こっちも大破どまり」
「睦月ちゃん…!」
瑞鶴「…それはもう……」
ヒューーーーーーン
ズガァン!!
「え…………?」
「瑞鶴さん? え、え? なんで、沈んで……」
「ぁぁぁぁぁ! ああああああああ!!」
「またお前かァ!! 重巡棲姫ィィィ!!!!!」
「クソ! クソ! クソァ!!!」
「絶対沈めてやる!! この『鈴谷』が絶対に沈めてやる!!!」
「……作戦、明日かー」
「まぁ鈴谷の仕事は今日も明日も変わんないんだからいっか」
「……」
「あの重巡棲姫、明日も来るかな…」
「そしたら殺せるけど…でも」
「やっぱり鈴谷の手で殺したいよね」
「うん、殺したい」
「まあ、今日もキッチリ寝よう」
「寝不足で寝ぼけてて沈みましたー、なんて恥ずすぎるしね」アハハ
「よっし、おやすみー!」
ーーーーーーーーー
???「鈴谷! 今日ーーんなでスーカ割りーーりますーー!」
???「大ーーですー! 出撃が終ーーたら、って提ーー言ってくれましーー!」
・・・何この記憶
これ、鈴谷の記憶? それにしては酷くぼやけてるなー
そもそもこんなの経験した覚え…あった、かな……?
???「鈴谷! しーーり、しっかーーて!!」
???「沈んじゃいや、沈んじゃいやぁぁ!!!」
え、え、え? 鈴谷沈んじゃったの?
いやいやいや! 鈴谷生きてるし! 今ここにいるし!
はっ! まさか未来予知の能力に目覚めちゃった!?
これで未来を変えろってー!?
・・・はぁ、なんでだろ
なんでこんなに
過去最高レベルに
頭・が・痛・く・な・る・ん・だ・ろ・う・!
「……」パチッ
「ああ、頭痛い」
「もうこんな時間か、いかなきゃ」フラフラ
・・・
「…」ボー
鳳翔「危ない!!」ダッ
ドガァァァン!!!
「あ……」
「ごめんなさい」
ドガァァァン!!!
「ごめんなさい」
ドガァァァン!!!
「ごめんなさい」
ドガァァァン!!!
「ごめんなさい」
ドガァァァン!!!
「ごめんなさい」
・・・
「…はぁ」
「今日はあの重巡棲姫、来なかったな」
「…」チラッ
「今日も鈴谷以外全滅か」
「確か明日からは鈴谷も攻撃要員になるから一旦鎮守府に帰るんだっけ」
「…うまくいったかなー、あの重巡棲姫、沈んでないといいなー」
「私が沈めるんだ、絶対」フラフラ
「あー、頭痛い」
「…ん?」
駆逐艦「あ……あ……」
「…あーあ可哀想に、大破のままおいて行かれちゃったのか」
駆逐艦「寄るな…」
「…ん? まだ喋れるんだ」
駆逐艦「寄るな、化け物!!」
「は?」
駆逐艦「…お、お前なんかな! お前なんかな!! ーーさんがいれば一瞬で!」
「ぐっ!?」ズキッ
(なんで…? 今はあの重巡棲姫はいないのに)
駆逐艦「ーーさんがいれば、お前なんか!」
(そうか…! こいつが叫んでる名前か…!)
「うるさいからさ、耳障りだからさ」
駆逐艦「ひっ! く、来るな化け物!!!」
「とりあえず、沈んでよ」ガスッ
駆逐艦「がはっ!?」ドサッ
「ふんっ、ムカつく はーいこいこ」
駆逐艦「熊野さんが…いれば…………」
ゴンッ
「…んー? なんか足に当たったなー」チラッ
「…え?」
「な、長門さん…? なんで、こんなところに」
「し、しかも頭だけ…」
「そういえば……」
シーン・・・
「もう、基地近いよね…? あ、あれ…? なんでこんなにシンとしてんの…?」
「な、なんで海が、赤いの…?」
「……」
「ち、違うよね! 戦艦クラスが沈むなんて普通だし! 海が赤いのは深海棲艦たちの血だよね!」
「んでもってこんなに静かなのはみんなが出撃しちゃってるからだよね!!」
シーン・・・
「…………」
「…はやく、帰らなきゃ、鎮守府に」
「ああああ」
「ああああああ!」
「ああああああああああああ!!」
「あああああああああああああああああああああああ!!!」
「嘘だウソだウソだ!!!」
「ねぇ、ドッキリだよね!? 趣味悪いよ!!? ねぇねぇ!!!」
「春雨ちゃん、やけにリアルだね!! 瞳孔まで開いて、脈も止めてるの!? すごいよ!」
「高雄さんはなにそれ! 片方無いけどでっかい胸見せつけてるの!? いやぁ嫉妬しちゃうなぁ!!」
「雲龍さん、大切な艦載機も体もばらっばらになっちゃってるじゃん! 今すぐ直してもらおうよ!!」
「ねぇ! みんな!! はい!ドッキリおしまいだって!! ホラ起きて!! 作戦中だよ!!?」
「…………」
提督「無駄だよ」
「提督…! よかった、生きてて」
「!?」
提督「残念ながらな、もう長くはない」
「え、ね、ねぇ、なんでみんな寝てるふりなんてしてるの?」
「み、みんな趣味悪いと思わない…?」
提督「………」
提督「いい加減にしてくれ!!!!」
「…え?」
提督「状況見ればわかるだろうが!! みんな死んだんだよ!」
提督「待機中だった者、帰投した者、出撃準備をしていた者、出撃していた者…」
提督「みんなあいつらに殺されたんだよ!!!」
提督「腕もがれて、足ちぎれて、心臓撃ち抜かれて、頭吹き飛ばされて!!」
「…また深海棲艦g「だからそれをやめろって言ってるんだよ!!!!」
「は…?」
提督?「何が『深海棲艦が』だ! てめぇ自分の姿見てから言え!!」
「え、す、鈴谷は『重巡 鈴谷』だよ…?」
提督?「黙れ黙れ黙れ!!!」
「え、え……?」
提督?「…ああもういい、教えてやるよ」
提督?「お前はな」
提督?「お前の名前はな」
「は、え? い、意味わかんないし」
「だって鈴谷は艦娘だよ? 艦隊のみんなと一緒にいた、艦娘『鈴谷』だよ…?」
提督?「違う」
提督?「お前は」
提督?「私は、私たちは深海棲艦だ」
「そ、そんなわけないよ! そこにいるのは」
深海司令官「そこに『ある』のは駆逐棲姫の残骸!」
深海司令官「そこに『ある』のは重巡ネ級の残骸!」
深海司令官「そこに『ある』のは軽空母ヌ級エリート改の残骸!」
深海司令官「そこらに『ある』のは私たち深海棲艦の残骸だ!!!!」
深海司令官「そして!!私の目の前に『ある』のは『重巡棲姫』という戦闘艦だけだ!!!!」
「……」
深海司令官「…わかったか重巡棲姫」ハァハァ
「…『鈴谷』わかったよ」
深海司令官「ではお前には今から北方の支援nムグッ!?」
「『鈴谷』わかったよ」
「今まであなたたちは『鈴谷』をだましてたんだよね?」
「だっておかしいもん」
「鈴谷は『鈴谷』だもん、艦娘だもん」
「そいであなた達は深海棲艦なんでしょ?」
「じゃあ殺さなきゃ、沈めなきゃ」
「深海棲艦は敵だもん、沈めなきゃ」
「あなたはその第一歩」
深海司令官「重巡棲姫ッ! やめっ」
「だからさぁ…」
「鈴谷の名前は…」
「『鈴谷』だって言ってんじゃんかぁ!!!」ゴキッ
プラーン・・・
「えへへ、敵の司令官やるなんて『鈴谷』大手柄じゃん!」
「やったー!これで提督に褒めてもらえるよ!」
「早く帰らなきゃ、鎮守府に」
「今まで鈴谷が頑張ったこと、鎮守府のみんなに自慢してやるんだ!」
「特に喜ぶだろうなぁー! --は」
「…あれ?」
「誰だっけ」
「鈴谷の戦果自分のことみたいに喜んでくれて」
「いっぱい鈴谷のこと助けてくれて」
「ずっと一緒にいた」
「大切な人」
「だれだっけ」
ドォン! ドドドドォン!!!
「あっはっはっは! 雑っ魚!!」
「ほんと笑っちゃうくらい雑魚いね!」
「深海棲艦ってこんなに脆かったっけ?」
「なんか制服とか着た深海棲艦もいるし、新種かなぁ?」
「戦艦はともかく、普通の駆逐艦に人型っていたかなぁー?」
「ま! いいや!! こいつらはみーんな深海棲艦! 殺してなぶって沈めれば万事OKだもんねー!」
「あはははははは!!!!」
「沈め沈め沈めェ!!」
・・・
提督「…みんな、集まってくれてありがとう」
提督「緊急事態だ」
提督「昨日、我々は全国の鎮守府による大規模反攻の計画を実行したのはわかるな」
提督「作戦は成功、見事わが軍は敵の前線基地を潰すことに成功した」
提督「…だが」
提督「先ほど、ここより200Kmほど離れた別の鎮守府より打電が入った」
提督「『正体不明の超大型深海棲艦が侵攻中』と」
提督「…その後その鎮守府とは通話不能だ」
提督「……」
提督「そして、このままいけばあと9時間でこの鎮守府まで到達する」
提督「攻撃はもっと早くに始まるだろう」
提督「…」
提督「…今、この場にいるのは作戦に出撃していない艦、言い方が悪いが…戦力になるような人員は少ない」
提督「主力艦隊は未だ遠方にいる、到着までには、もう…」
提督「だから…ここを…」
最上「何言ってるのさ、僕たちは戦うためにいるんだ!」
三隈「ですわ、というか私たち最上型のみんななら時間稼ぎくらいなら大丈夫ですよ?」
提督「だが…! その時間稼ぎのためにお前らを…!」
熊野「私たちはただ、戦うだけですわ」
熊野「提督、あなたには妻がいて子供がいて、あなたを大切に思ってくれる人がたくさんいますわ」
熊野「私たちは艦娘、あなたと、その大切な人を守るために生まれた存在ですわ」
提督「知るかそんなこと!! 俺は…俺は…! 誰にも沈んでほしくないんだよ…!」
提督「鈴谷が沈んだように、お前らが沈んじまう、それが何より怖い!!」
提督「家族が減ることが一番つらいんだ!!」
提督「だから、だから…鎮守府を失っても、職を失っても…何もかも失っても、家族は失くしたくないんだ……!」
熊野「…だったら」
熊野「だったらなおさらですわ」
提督「熊野…?」
熊野「私は、みんなが帰ってくる家を守りたいだけですわ」
熊野「そして、あの深海棲艦を倒して、帰ってくるだけですわ」ニコッ
午前2:38 急遽編成された 最上 三隈 熊野 により迫りくる正体不明の敵艦の威力偵察を行うため、抜錨
「邪魔だってばァ!!」
「ああ!もうウザイウザイウザイ!! 邪魔すんなカスどもがァ!!」ドガァァァン!!!
「……」
「あは」
「みいつけちゃった」
「みんなのか・た・き」
「ね、『重巡棲姫』」
最上「な、なんなのあれ…!?」
三隈「よく見てみると重巡棲姫の持つ艤装に似たところがありますけれど…」
熊野「もうあれは深海棲艦と言っていいかも怪しい存在ですわね…!」
最上「いやデカすぎでしょ!?」
熊野「まあでも」ガチャン
三隈「私たちのやることは変わらないもの」ガチャン
最上「ま、そうだね」ガチャン
熊野「合図は私がしますわ」
最上「了解」
三隈「…」コクッ
熊野「全艦、一斉射用意!」
熊野「3」
熊野「2」
熊野「1」
熊野「全門斉射ぁーー!!」
ドドドドォン!!! ドドドドォン!!! ドドドドォン!!!
ドガァァァン!!!
「ぐああああああああああああああああ!!!」
「痛い痛い痛い!!! 何してくれんのさァ!!? クソ深海棲艦ー!!」
三隈「…それなりに効果はあるようですけれど…」
最上「デカすぎて全体的にはあんまりダメージ入ってなさそうだねー」
熊野「…鈴谷……?」
最上「ん? どうしたの熊野」
熊野「あ、いえ失礼しましたわ」
熊野「このままできるだけ時間を稼ぎましょう」
最上&三隈「了解!」
熊野(とはいえ…)クルッ
ザパンザパンザパン・・・
熊野(なかなかにキチンと狙ってきますわね)
熊野(長期戦となれば、集中力の問題でこちらの方が不利、ですわね)
熊野(それまでに、なんとか…)
熊野「……」
熊野(…敵に対してこのような射撃をする艦娘を、私は知っている…でも、でも……)
熊野(いえ、やめておきましょう、鈴谷は…)
「クソックソックソッ! さっきからくるくる避けやがってあの重巡棲姫!」
「大人しく鈴谷に倒されてろっての!」ドドドン!
ザパンザパンザパン・・・
「っ!? あいつら近づいてくる…!」
「うっ、頭痛がどんどんひどくっ…!!」
「来、る、な、来るな来るな来るな来るなァァァ!!!」ドドドドドドォォン
最上「お、敵の攻撃が適当になってきたね、弱ってきているのかな」
三隈「そうだよいいわねっ!」ドドン!
「うああああああ!!! 来るなァーーー!!」ドドドドドドドドドドォン!!!
熊野「っ!!? 最上、三隈!!」
ドガァァァン!!! ドガァァァン!!!
最上「がっ…! かはっ」
三隈「……ぐっ」
熊野「二人とも大丈夫ですの!?」
最上「…ちょいきついかな」フラフラ
三隈「もがみん、肩を貸しますわ、さぁ立っtガスッ --バシャン!
最上「クッソ、あんなに遠くまでふっ飛ばされて…!」
熊野「三隈ぁーーー!!」
「あっは、あははは! もう一匹もっ!」
最上「なっ!?ゴスッ ーーバシャン!
「あはは! 気持ちイイィーーー!! デカくて触手生えててキモくて不便な体だと思ったけどこうやって相手殴れると気持ちいいね」
熊野「あ、ああ! 最上…!」
「じゃあ次はアンタだね、『重巡棲姫』」
熊野「……なさい」
「あはは! 謝罪なら向こうでやってよねっ!!」ガチャン カチッ
「…え?」
「な、なんでこんな時に砲が故障するんだよ!?」
「クソッ! 動け動け動け! こいつを殺すんだよ! みんなを殺して、鈴谷を苦しめたこいつを…!」
熊野「……もう、おやめなさい」ヨロヨロ・・・
「っ!? く、来るな、近づくな…!」
「なんで体も言うこと聞かないんだよっ!? こいつを殺せば辛いこと、全部忘れられるんだよ!!」
熊野「…そうですわね」
熊野「また、あなたと私が出会わなければ、こんな辛い思い出は、忘れられたでしょうに…」
熊野「…もう二度と、逢いませんようにと、お願いしたはずだったのですけれどね」
熊野「掴まえましたわ」ガシッ
熊野「鈴谷」
ーーーーーー
熊野「あら鈴谷! 覚えていますか?私熊野ですわ! また会えて嬉しいですわ!」
熊野と艦娘として出会ったのは3年前
ある海域の攻略中に鈴谷は拾われて、その拾われた鎮守府が熊野のいる鎮守府だった
その時はその鎮守府は規模か小さくて、鈴谷も少し訓練したらすぐに前線に送られた
戦うのは大変だった
でも、その度に提督は「頑張ったな、ありがとう」って言ってくれて
みんなで今日の戦いはこうだったねって話して
時には損傷しちゃって
でもみんなが励ましてくれて
そのうち皆が驚くぐらい敵に弾を当てるのうまくなってて
気づいたら鈴谷、鎮守府でも熊野と並んで指折りの艦になって
『四点バーストの鈴谷』なんて言われてたなー
それで、それで…
そうして、あの日…
みんなで帰ったらスイカ割りをしようって話した、あの日
ーーーー
ドガァァァン・・・ ダダダダダ キャーー! ガァァン!!
「鈴谷!鈴谷ぁ!!」
鈴谷たちは敵の攻撃を受けた
駆逐棲姫 戦艦棲姫 重巡ネ級 空母ヲ級改 空母棲姫 ツ級エリート
勝てるわけがなかった
こっちは精々航巡が2隻、軽空母が1隻、戦艦が1隻、駆逐艦が2隻
逃げるのがやっとだった
いや、逃げることすら困難を極めた
だから、体力の多い鈴谷たちがわざと的になるしかなかった
夜になって攻撃は止んだ
けど
直撃弾12発 至近弾多数
正直、無理だ
鈴谷「あ、はは…ごめんねー…」
熊野「鈴谷! しゃべってはいけませんわ! 傷が広がりますわ!!」
鈴谷「ねぇ熊野ー…」
熊野「鈴谷!だから!!」
鈴谷「ありがとね」
熊野「…え?」
熊野「ね、ねぇ、鈴谷…? な、何かしゃべってくださいまし…」
熊野「なんでうなだれたままなんですの…?」
熊野「…こんなのが」
熊野「こんなので終わりなのですか!?」
熊野「あなたの命! 思い出! 約束! 全部全部全部!! こんなにあっけなく終わってしまうんですの…!!?」
熊野「ぅっううううああああああああああああ!!!!!」
熊野「こんなっ…こんな終わりなら出逢わない方がよかった!!」
熊野「こんなに悲しくなるんだったら、もういっそ! もう二度と!出逢いたくなんてない!!」
熊野「うっ、うううああ、ああああぁぁぁ……!」
…泣いている声が聞こえる
…そうだ、これは、この声は…
…行かなきゃいけないのに、動かない
どうして、もう、思い出せない
大切だったみんなのなまえ
自分の名前しか思い出せない
そう、私は、鈴谷
『重巡鈴谷』それだけは覚えている
でも、何か違う気がする
このズキズキは…何?
ーーーーーーーーーーーーーー
熊野「さぁ…思い出してくださいまし」
熊野「あなたの名前を」
熊野「わたくしの名前を」
熊野「あなたは」
熊野「もう」
熊野「帰ってきていいんですのよ」
ーーー
誰かが呼んでいる
もう、いいよと
疲れたでしょうと
大切だった人の声がする
でも、もう一人の自分が言う
壊せ壊せと
もう消えるお前の命の灯を
暴虐のために燃やせと
すべて壊せば、気持ちがよくなるのだろう
もう私は、そういう生き物に成り下がってしまった
この拳を、少しでも振るえば
目の前にいる大切な人は壊せるだろう
この力を使えば
私を阻む雑魚たちは消せるだろう
この命を燃やせば
大切だったものをすべて壊せるだろう
だから…
だから鈴谷は
この命を燃やすことにした
『重巡 鈴谷』じゃなくって
『改鈴谷型航空巡洋艦 一番艦 鈴谷』として
怪物としてじゃなくて
艦娘として
ただあなたに逢いたい、それだけの願いのために
もう一度逢うために
ね、
熊野
ーーー
最上「…ぅう…」
三隈「あの深海棲艦の艤装が……」
最上「あれは…」
三隈「噓…」
熊野「おかえりなさい」
熊野「鈴谷」
鈴谷「うん」
鈴谷「ただいま」
鈴谷「熊野」
熊野「あんなにきれいだったお肌、真っ白になってしまいましたわね」
鈴谷「うん」
熊野「サラサラで綺麗な緑色だった髪も」
鈴谷「うん…」
熊野「目も赤くなって」
鈴谷「うん…」
熊野「でも、鈴谷ですわ」
熊野「ずっと一緒に、笑って泣いて怒って、生きた鈴谷ですわ」ギュッ
鈴谷「…! うん!」ギュッ
熊野「…少し、冷たいですわね」
鈴谷「ごめん」
熊野「でも」
熊野「でももう一度」
熊野「あなたの温度を感じられること」
熊野「絶対に叶わないと思ってましたから」
熊野「冷たくても、鈴谷ですもの」
鈴谷「…ありがとう」
鈴谷「…」
熊野「…もうそろそろですのね」
鈴谷「…!」
鈴谷「知ってたんだ」
熊野「知ってはいません、でもわかりましたわ」
熊野「何年一緒にいたと思っているんですの?」
鈴谷「そっか」
熊野「そうですわ」
鈴谷「せめてさ」
鈴谷「最後は熊野の手で終わらせてよ」
熊野「…」
鈴谷「ごめんね、こんなことさせて」
熊野「…いえ、全然…辛くはないですわ……」
熊野「…な、泣いて、なんか……」
鈴谷「……」
鈴谷「…スイカ割り、やりたかったね」
熊野「……ええ、もう、できませんわね」
熊野「…」
熊野「そういえば、提督に子供が生まれましたのよ」
鈴谷「マジで? 見たかったなー」
鈴谷「もう一度、みんなで夏祭りやりたかったね」
熊野「鎮守府の財政が終わってしまいますわ」フフフ
熊野「…」
鈴谷「もうすぐ夜明けだね」
熊野「空がとってもきれいですわね」
熊野「海鳥が飛んでますわね」
鈴谷「元気だね」
熊野「何もかも言い足りないですわ」
鈴谷「そうだね」
熊野「でも」
鈴谷「でも」
熊野「結局のところ伝えたいことなんて」
鈴谷「たった一言だよね」
熊野「……」
鈴谷「…」
・・・あとがきはできるだけ短く
・・・文字が滲んでしまわないように
熊野&鈴谷「「本当に伝えたいのは」」
「「『ありがとう』 の五文字だけ」」
ガチャン
バンバンバン
・・・
熊野「これでよしと」
提督「よかったのか、これで」コツコツコツ・・・
熊野「あら、提督、来ていたのですね」
提督「ああ、お前の姿が見えなかったからな、ここだろうなと」
熊野「何だか暇があれば来ている気がしますわね」クスクス
提督「……」
熊野「先ほどの質問ですが」
熊野「後悔はありますわ」
熊野「どうにかして、鈴谷が死なずに済む方法はなかったのか」
熊野「でも」
熊野「これ以上は、鈴谷がつらいですわ」
熊野「どんなに延命しようとも、ただ、あの娘がつらくなってしまうだけですわ」
熊野「だから、後悔はあるけれど、満足はしていますわ」ニコッ
提督「…そうか」
提督「そういえば何で鈴谷の…亡骸を海で弔わなかったんだ?」
熊野「ああ、その節は本当にありがとうございましたわ」
提督「まぁ確かに上になんとかばれないようにするのは大変だったけどさ」
熊野「ええ、本当に」
提督「まぁ代わりといっては何だけど、さっきの質問、答えてくれないか?」
熊野「…ええ」
熊野「といっても、大した理由ではありませんわ」
熊野「最初に鈴谷が沈んだ時、こうお願いしたんですの」
熊野「『もうこんなつらい思いをしたくないから、二度と鈴谷と出逢いませんように』と」
提督「…!」
熊野「でもまた出逢ってしまいましたわ」
熊野「だから」
熊野「だから、今度は」
熊野「『あの娘がもう、ぐっすりと休めますように』って」
熊野「もう一度、もう二度と出逢いませんようにって」
熊野「そう、願ったからですの」
お読みいただきありがとうございます!
終わりです といっても前のハルサメチャンSSみたいに加筆するかもですが コメントはもらえると、嬉しいなー、なー(チラッ、チラッ
普通はこういう提督が当たり前だからこそ。
前回の提督君は拉致られたんだなあw
1さん、コメントありがとうございます!
確かに普通の戦時下の提督はこうでしょうけど、このSSでは少し秘密があるのでご期待ください!
前回の提督君は元気でやってます(白目)
果たして受け入れられるのかな?
人は見た目で判断するからね。
何より味方を討ちすぎた。
良くて研究材料かね
嫌だねえ。
3さん、コメントありがとうございます!
嫌ですねぇ そもこの鈴谷は『自称鈴谷』なので、鈴谷自身が『自分は艦娘だ』と勝手に思ってるだけなんですよね
それでも鈴谷の記憶を持つなら鈴谷や。
姿じゃなく思い出を持ってるかが大事
5さん、コメントありがとうございます!
そうですね、確かにこの重巡棲姫(鈴谷)は艦娘の時の記憶を持っていますからね 見方によっては、鈴谷そのものですね
ただ、はたから見たら、『鈴谷の記憶を持つ重巡棲姫』でしかないのです
鈴谷の運命はどうなるか気になります。更新頑張って下さい!
7さん、コメントありがとうございます!
多分、ほんとにもう少しで終わりになると思います!
ですが気合! 入れて! 書きます!
敵の頭を取った以上は立場的に戦争終結の英雄だし。悪い扱いはされないだろうが。提督は難しい立ち位置に成るね
9さん、コメントありがとうございます!
一応世界観的に敵の提督も複数いるし、しかも鈴谷も鈴谷で深海棲艦状態で結構な数沈めてますからね… まあ確かに武勲あげてはいるんですが・・・
愛は地球を救うんやなあって。
良かったなあ。本当に良かった。
11さん、コメントありがとうございます!
尊い、鈴熊尊い・・・