【改訂版】提督「何してるんだ、青葉」
改訂版。内容はあんま変わってないので読む意味はなし。
「ども!先日着任しました、本日の秘書艦青葉ですぅ!」
「ああ、今日はよろしく頼む」
「りょーかいっ!」
と、本棚の裏を見ながら返事を返す。あれ?ない……。
「何してるんだ、青葉。本棚の裏なんか見て」
「いえ、少し探し物を……」
おかしいなー、どこだろ?
「そうかそうか、ところで青葉」
「はい?」
「これが、何か分かるかな?」
そう言って司令官が取り出したのは、小さな機械。
「これな、青葉が着任した次の日に大井が見つけてくれたんだよ。本棚の裏から」
「は、はぁ……」
ああ、終わった。私が付けた盗聴器がバレたなんて……。
「これについて何か、知らないか?」
……ここで嘘を吐いても意味がない。衣笠曰く、この人には嘘が通じないらしいのだ。ここは潔く自白するしか……。
「いえ、青葉は何も知らないですよ?」
って、なんで嘘ついてんですか!
「……そうか。ならいいんだが」
……あれ?お咎めなし?
「さあ、執務だ執務。始めるぞ」
「は、はい!」
……何が起こったか分かりませんけど、とりあえずはバレてないみたい?やったー!
・・・
可愛すぎんだろ青葉ぁ、全く怒る気が起きないだろうがよぉ……!
・・・
「……さて、俺は飯食いに行くけど青葉はどうする?」
「んー、私はもうちょっとキリがいいとこまで終わらせてからにします!」
「……そ、そうか。じゃあ、頼むぞ」
「はい!」
……畜生待てば良かったぁぁぁ!
・・・
……行きましたね。さてさて……。
「盗聴器は本棚の裏だけじゃないんですよっと……」
司令官の机の引き出し、上から2段目。そこにも仕掛けてあったはずです!バレてなければいいのですが……。
「……あれ?」
引き出しには盗聴器は無く、代わりに謎のノートが貼り付けてあった。
「……読みますかね」
結局、私は好奇心には勝てないんです。ええ、知ってましたとも。
・・・
〇月✕日。
今日、俺はこの鎮守府に着任した。妖精が見えるというだけで軍学校に入れられ、そのまま流れで提督にされてしまった。ともあれ、今日から俺の提督生活が始まる訳だ。といっても、今日は執務がなく、本格的なスタートは明日かららしい。なので、俺より先にこの鎮守府に来ていた初期艦の吹雪に鎮守府の案内をしてもらった。明日から執務が始まるので、今日は日記だけ書いて休もうと思う。
・・・
「日記、ですかねぇ……」
・・・
〇月✕日。
さて、今日から執務がスタートした訳だ。だが、まだ着任したてなので執務は軽いめ。なので、本日は建造を進めることにした。まず、最低値で1回。初建造の結果、漣が着任。いくら俺の立場が上だからって、いきなり『ご主人様』呼ばわりはないと思う。駆逐艦2隻では戦力が乏しいと想い、適当に資材を詰め込み建造。すると、戦艦の山城が着任。『扶桑姉様は?』と聞かれたので『まだいない』と答えると、露骨にガッカリしていた。扶桑も早めに着任させてやりたい。
・・・
「ふむふむ、漣ちゃんは結構古参なんですね……この日記、この鎮守府のことを知るのにうってつけです!そうだ、私が着任した日は……」
・・・
〇月✕日。
昨日の飲み会のせいであまり眠れなかった。隼鷹、那智あたりは暫く酒を飲ませられない、酒が入ったら手がつけられなくなる。本日の秘書艦は長門。俺の顔を見るなり睡眠不足を見抜き、俺の分の仕事も手伝ってくれた。流石は長門、俺もいずれはあんな風になりたい。日課の建造で着任したのは青葉。一目惚れしてしまったのは秘密にしておく。
・・・
「なっ、なななななんてこと書いてるんですかぁ!わた、私が……!?あ、あわ、あわわわわっ……!」
・・・
……何してるんだ、青葉。勝手に人の日記なんか見て。飯食って帰ってきたら日記読まれてましたってか?いやいやいや、ないわー。
「うぅ……この後どんな顔して司令官と話せばいいのか分かりません……」
こっちの台詞なんだよなぁ……。
「さ、さて……司令官が帰ってくる前に直さないt……」
「……」
「……」
……もう提督辞めようかな。
・・・
……もう解体してもらいましょうかね。
「……ただいま」
「……お、おかえりなさい」
……なんて気まずいんでしょうか、この空気。
「……あ、青葉は飯食わないのか?」
「そ、そう言えばまだでしたね!そろそろお腹が空いたので、食べに行ってきます!」
「いってらっしゃい……」
「い、いってきます……」
部屋から出て、やっと盗聴器が2段目ではなく3段目に付けられていたことを思い出した。
・・・
食堂。お昼時ということもあり、よく賑わっている。
「……あっ、おーい!青葉ー!おーいってばー!」
衣笠が遠くから声を掛けてくる。
「あ?」
「ひっ……す、すいません!大井さんのことじゃないです!」
とりあえず衣笠の所へ移動する。
「……ふぅ、怖かった……。青葉、今日初めての秘書艦だけど、やってみた感想は?」
「聞かないでください……」
さっきの文面、思い出しても恥ずかしいです……。
「……ほうほう」
「うう……そ、そんなことより!衣笠は何を食べてるんですか!?」
「私?私はねー……日替わりランチ!青葉は?」
「わ、私はランチセットBです」
「それ美味しいわよねー!……で、そんなことより何かあったの?」
くっ、しつこいです!
・・・
「た、ただいま帰りました……」
「お、おかえり……執務の続き、頼む」
「はい……」
……気まずい。そうだ、何か話を私から振って……。
「「……あの」」
……被った。
「……どうぞお先に」
「そ、そっちこそ」
さっきより気まずいです……。
「……で、では……。司令官は、気になってる人とかいるんですか?」
……ってしまった!なんで自分から地雷踏んでるんですかぁ!もっと他にもあるでしょ!『司令官は、好きな食べ物とかあるんですか?』とか!ああもうやらかしたぁぁぁぁ!
・・・
「司令官は、気になってる人とかいるんですか?」
……え、何?俺の日記見たよね?俺が青葉に絶賛一目惚れ中だって知ってるよね!?何?わざとか?わざとなのか?俺に答えを期待してると見てもいいのか!?
「……どうだろうな」
……えっ、俺そこでヘタレちゃうの!?
・・・
「……どうだろうな」
……何ですかその反応!?察しろと?青葉に察しろと!?
・・・
「……ってことが」
「……自業自得だね」
青葉型の部屋。そこで今日の出来事を衣笠に話した。
「……で、だ。青葉はどう思ってるの?」
……ニヤニヤ顔で聞かれるとイラッときますね。
「……どう、とは?」
「決まってるじゃない、提督のことよ。一方的に提督の想いを知っちゃった、つまり告白されてるのと同然でしょ?で、その答えはどうなのかなーって」
「そそ、そんなこと急に言われても……」
こここ、告白……。
「……ちなみに、明日の秘書艦は私!青葉にゃ負けてられないわねー?」
「……っ!」
なんでしょう、何か嫌な予感が……!
・・・
「……ということがあってだな」
なるほどー、昨日青葉に聞いた内容と一緒ね。
「俺はこの先どうすればいいと思う?」
「そうねー、とりあえずは応援しといてあげる!衣笠さんにお任せよ!」
「青葉に嫌われてないかな……」
乙女か。
「大丈夫よ、青葉はそんな娘じゃないわ!」
「衣笠……!」
「さ、そんなことより執務しましょ?」
「そんなこと……はあ、そうだな。執務するか」
……そうだ、いいこと思いついちゃった。
「……あのー、衣笠さん?少々近くないですか?」
「……嫌なの?」
「い、いや……別にそういう訳では」
「ならいいじゃない!ね、もうちょっとこっちに寄ってよ!」
「そ、それは……」
「……ダメ?」
「くっ……分かった」
……さて、青葉のことだしきっと……。
・・・
なぜ私はこんなことをしているのだろうか。執務室のクローゼットの中に隠れ、音は聴こえないながらも外の様子を中から眺めている。……まあ、会話は未だ回収できていない盗聴器で聞くことが可能だが。
「……」
……あれ?衣笠がこっちを見て……うわ、ニヤッとした!バレてる!……あれ、衣笠が司令官に近づいて……何か話してますね。……何故かイライラします。……って、司令官から衣笠のほうに?顔も真っ赤で……私のことが好きなくせに、なにデレデレしてんですか!
・・・
「くっ……分かった」
ああ、衣笠が青葉だったら尚よしなんだけどなぁ……。
・・・
「提督、そろそろお昼よ!一緒にご飯食べましょ!」
「ん、分かった。行くか」
……。
「……ごめん、ちょっと先行ってて」
「……?分かった」
さて、盗聴器はここね。妹として、姉を応援する準備をしましょうか!
・・・
衣笠が盗聴器の前で何か話している。と、衣笠が出ていった。さて、今のうちに回収しよう。
・・・
「再生再生っと……」
盗聴器からデータを取り出し、記録を再生する。
『ごめん、ちょっと先行ってて』
『……?分かった』
『……青葉、聞いてるわね?このままモタモタしてるようじゃ、私が提督を奪っちゃうわよ?』
……え?
・・・
「よし、終わった……。衣笠、ご苦労だった」
執務が終わり、しばらくの休憩時間に入る。
「……ねえ、提督。お願いがあるんだけど、いいかな?」
……お願い?珍しいな、衣笠はそんなことあまり言わないからな……。
「……なんだ?」
「えっとね……明日とは言わないわ。近日中でいいから、青葉をもう一度秘書艦にしてあげてほしいの。駄目?」
「……考えておこう」
「よろしく頼むわね!じゃ、おやすみなさい」
「おう……」
……何故だ?全くわからん。
「あ、あともう1つ!」
「まだあるのか……なんだ、言ってみろ」
「えっとね……」
衣笠に耳元で囁かれる。
「……なっ」
「じゃ、あとは任せたわよ!」
……oh。
・・・
「きっ、衣笠!」
「どうしたの?」
部屋に帰ると、青葉が出待ちしていた。
「なんで司令官とイチャイチャしてるんですか!」
ふふん、焚き付けた甲斐があったかな?……もーちょっとだけなら……いいよね。
「えー?だってぇ、青葉がハッキリしないからもらっちゃってもいいのかなーって」
「で、でも司令官は私のことが……」
「そんなの、無理やりこっちに向けさせればいいだけじゃない!」
「そ、それは……」
「じゃあ、青葉は提督のこと、好きなの?」
「……分かりません」
「分からない、とは?」
・・・
青葉はこの半生の中で、艦娘になる前もなった後も、所謂『恋』と呼ばれることをしたことがありません。だから、衣笠に嫉妬してるのも、司令官が私を好いてくれていることが嬉しいのも、それが『恋』なのか分かりません。この気持ちが『青葉』の気持ちなのか、はたまた『私』の気持ちなのかすら分からないんです。だから、司令官のことが好きなのかは青葉には分かりません……。
・・・
「……なんだ、もうそこまで辿り着いてたんだ」
これは、別に焚きつける必要なかったかな?
「あーあ、仕方ないなぁ。姉と想い人が被るなんて、最悪よ。こんなの、姉に譲るしかないわよねー」
と、チラチラ青葉のほうを見ながら言ってみる。
「……衣笠、ありがとうございます。私、司令官のこと、好きなんですね」
「……ふふっ」
……今更だけど、私別に提督のこと好きじゃないんだよねー……さっきのも全部口からでまかせだし。
「……衣笠、お姉ちゃんは頑張ります!」
「頑張ってねー」
と。
『えー、駆逐艦曙並びに重巡洋艦青葉に告ぐ。明後日の秘書艦担当は、駆逐艦曙から重巡洋艦青葉へと変更する。繰り返し連絡する。明後日の秘書艦担当は、駆逐艦曙から重巡洋艦青葉へと変更すr……ど、どうした曙。そんなに息を切らしてって痛っ!やめっ、脛を蹴るnぐはぁっ!髪を引っ張るなっ、ぐぇっ、首を……絞めるなぁぁぁぁぁ……』
……提督、今だけはちょっとタイミングがマズかったかなーって思うの。
「……衣笠?」
「な、なーに?」
「あ な た の 仕 業 で す か ?」
この後めちゃくちゃ説教された。
・・・
「……で、や。なんでキミはそないなカッコしとるんや?ぎょうさん絆創膏貼ってあるみたいやけど」
今日の秘書艦、龍驤が話しかけてくる。
「……昨日の全体放送聞いてた?」
「うん、あのビミョーな時間にあったやつやろ?覚えとるで」
「曙に俺が〆られてたのは?」
「あっ……(察し)」
身体中を引っ掻かれ、つねられ、殴られ、蹴られ……。気がつけば、こんな無残な身体で医務室に横たわっていた。
「首もえらい痛そうやな……包帯まで巻いて」
「首をやられたときに捻挫したみたいでな……」
「キミも大変やなぁ……」
……さて、そんなことより執務だ執務。早めに始めるとするか。
「ところで、今日はいつもより書類多ないか?」
「なんでだろうな」
明日の分を多少今日に回してきたなんて言えない。
「提督っ!」
息を切らした大淀が執務室に入ってくる。
「ど、どうした?」
「明石が……明石が、艤装をつけて暴れ回っています!」
「な、なんだと!?」
・・・
「うおぉぉぉぉぉぉお!」
工廠に到着した俺と龍驤が目の当たりにしたのは、艤装をつけて何故か連装砲ちゃんと一緒に暴れている明石の姿だった。
「明石ぃ!おまっ、何やってんだ!」
「あっ、提督!」
「キュイッ!」
明石と連装砲ちゃんがこちらに気づき、歩いてくる。
「おい明石、なぜこんなことをした?」
「それは、その……少しでも、提督の気を惹きたくて……」
「キュイィ……」
連装砲ちゃんは『遊んで欲しかったから……』的なことを言ってる。島風に連装砲ちゃん語を教えてもらった。
「……そうか、気づいてやれなくてごめんな」
「……提督」
「お前の気持ち、全く分からなかったよ。許してほしい」
明石がそこまで思い詰めていたなんてな……。
「なら……!」
「ああ、休暇は1日増やして週休3日、給料もアップだ。ごめんな、お前の仕事は過酷だもんな……」
「えっ」
「じゃあ、そういうことだからよろしく頼む。龍驤、戻るぞ」
「えっ、えっ?」
「……明石、諦めなはれ。この男は鈍感やねん」
「キュイ……」
「龍驤、何してるんだ?行くぞー」
「あぁ、ごめんな。ちょっと待ってやー」
「……えぇぇ」
・・・
「スクープあるところに青葉あり、です!明石さん、今回の騒動のキッカケは?」
少しくらい青葉らしいことしとかないとヒロインを青葉にした意味がありませんしね、取材の時間です!
「……少し、提督とのことでね」
「あ?」
司令官との……こと?
「ひっ」
「なんだとテメェもっかい言ってみろや!」
「な、なんか分からないけどごめんなさぁい!」
・・・
……さて、いよいよ明日が、青葉が秘書艦担当の日なのだが……。
「眠れない……」
そう、緊張でまったく眠れないのである。いやまあ分かってたけどね!
「緊張、するな……」
と、扉がノックされる。こんな時間に誰だろう。
「……はい、どうぞ」
「失礼するわ、クソ提督」
「ひぃっ!」
曙だった。俺をこんな体にした張本人。
「もう……悪かったと思ってるわよ、もうしないから怯えないで。ね?」
……ふ、不安な顔の可愛い。天使か。
「す、すまない。ところで何の用だ?」
「……それが、今日は七駆の皆……私以外は遠征で夜は帰ってこないのよ」
「……それで、心細いと?」
「……」
無言で頷く曙。天使だな。
「分かった、誰か探してきてやるよ。少しここで待っててくれ」
この時間に起きてそうなのは……よし、川内のとこに連れていくか。
「……それは駄目」
「しかし、心細いなら誰かと一緒のほうが……」
「……あんた」
……ん?
「あんたが、いい」
……?
……。
「( 'ω')ふぁっ!?」
「か、勘違いしないでよね!その選択肢は既に試したけど、みんな『提督の所に行きなさい』って言うから仕方なくあんたと寝てあげるって言ってんのよ!」
・・・
だれもそんなこと言ってませんけどね。
ども、クローゼットの中からこんばんは、青葉です。え、何故クローゼットの中にいるのかって?そりゃ司令官のプライベートが知りたい……もとい、いいネタがあると思ったからですよ。盗聴器をセットしていざ帰ろうとしたところで司令官が帰ってきちゃって、急いでこのクローゼットに飛び込んだというわけです。前と違って、部屋の声が聴こえるのでありがたいですね。
曙ちゃんのことに関しては、全ての部屋に設置してある小型カメラと手持ちの端末を使って常にチェックしてましたから。音が出ないかわりに、結構鮮明な映像が見られるんですよ。曙ちゃん、自室からこの部屋に直行してました。どうして曙ちゃんをチェックしていたかって?ライバルの情報は少しでも多いほうがいいじゃないですか。
・・・
おかしいな、艦隊の皆はそんなに酷いこと言わないと思うんだが。まあ、曙がそう言うからにはそうなのだろう。
「……だから、あんたと寝たい……」
……まあ、どちらにしろ。
「……ダメ?」
俺には断るだけの非情さはない。
「……し、仕方ないなー、曙がそう言うんだったら俺に断る理由はないしなー」
「なら!」
曙の目が輝く。
「いいぞ、一緒に寝よう」
「……ありがとっ、クソ提督!」
はぅっ。可愛いすぎません?ヤバいわ、青葉以外の娘に惚れそう。
・・・
ちょ、司令官!?なんでOKしちゃうんですか!?そんな、そんな……!うらやまけしからんです!曙ちゃん、そこ代わってください!
・・・
どうも、クソ提督です。寝てる曙に抱きつかれてます。いやね、曙ね、めっちゃいい匂いなんですよ。はい。それに加えて……この無防備な顔。普段とのギャップが激しくて、可愛くて堪らないんですよ。
・・・
よし、寝てるフリして抱きつけたわ。……クソ提督、いい匂い。それに加えて、普段見られないようなプライベートの時間に二人っきり……ああもう「だいすき……」……不味い、声に出ちゃった。
・・・
Foooooooooooooooooo!!!!!え、ヤバい!曙が、寝言で「だいすき」って!ちょ、脳が!脳が追いついてない!
・・・
ああ、もういっそ寝込み襲おうかしら……いや、やめとこ。これで満足……。もうちょっとしっかり抱きつこ。
・・・
oh……一体何が?曙が俺を激しくholdしてるぞ?……と、頭の中に声が響く。
「ウィッス」
OK、お前は眠ってろ提督Jr。
・・・
ああ、最高……。もう堪んないわぁ……。
・・・
「元気100倍!提督マン!」
よーし落ち着け!曙が頬擦りしてきたからって覚醒するんじゃない!素数を数えるんだ、素数を。2,3,5,7,11……。
・・・
朝です。クソ提督です。やってしまいました。
「すぅ……すぅ……」
俺は悪くない。寝させてくれない曙だって悪いはずだ。……いや、言い訳はよそう。俺が、自分の欲求に勝てなかっただけだ。
「すぅ……すぅ……」
無垢な曙の寝顔を見て、罪悪感が増大する。自分は、とんでもないことをしてしまったのだと、実感する。……ん、ナニをシたのか、だと?
……寝坊に決まってるだろ、言わせんな恥ずかしい。まさか2分も起きるのが遅れるなんて……提督失格だ。提督たるもの、時間だけは守らないと……。
「……っと、こんなことしてる場合じゃない。準備準備っと……」
・・・
「……ん、朝?」
目が覚めると、そこは提督のベッド。
「……何、まだ4時なのにもう起きるの?」
「曙か、おはよう。まだ早いし寝ててもいいぞ。俺は吹雪と日課のランニングがあるから……」
「……ん、そうする」
・・・
「おはようございます、司令官!」
「おはよう、吹雪。今日は冷えるな」
「はい……朝起きたら寒くてビックリしちゃいました」
「身体を壊さないように気をつけるんだぞ。じゃ、走るか」
「はいっ!」
・・・
「……へくちっ」
「吹雪、大丈夫か?」
「これくらい、平気です……へくちっ」
くしゃみがいちいち可愛い。
「まだまだいけます!……へくちっ」
「あんまり無理するなよ?」
「はい、心配をおかけしてしまってすみません……へくちっ」
・・・
吹雪とのランニングが大体30分。次は……。
「クマー……寒いクマー……」
「おう球磨、今日の調子はどうだ?」
「んー……幾つかは収穫できそうだけど、この時期にしては例年より少ないクマ。寒いから仕方ないクマね」
農園の管理だ。鎮守府ではいろいろ野菜を育てている。誰か早起きして管理を手伝ってくれないかと募集をかけたところ、『意外に優秀な球磨ちゃんにお任せクマ!』と、自分から買って出てくれたのだ。
「どうして秋なのにここまで寒いんだろうな……」
「分かんないクマー……寒い寒い、温めるクマー!」
「全く……どうすればいいんだ?」
「抱き締めるクマ!球磨はぬいぐるみじゃないクマけど、今は許すクマ!」
不思議だよなー、コイツにはよく抱き締めろって言われるけどあんまりドキドキしない。
「はいはいっと……うぉっ冷たっ!」
「ふー、ぬくぬくクマー!」
・・・
農園でおおよそ30分。次だ次。
「ごめんなさいね、提督……いつも手伝ってもらっちゃって」
「いいんですよ、好きでやってることだし」
間宮さんのお手伝い。
「今日は何を出しましょうかね……」
「そうねー、寒いし豚汁定食とかどうかしら?」
「豚汁定食ですね、分かりました」
・・・
調理に1時間。さて、次は……。
「明石ー、いるかー。品出しの手伝いに来たぞー」
「いつもすみません……ありがとうございます」
アイテム屋の開店準備。
「寒くないか?」
「少し、寒いですね……温めてほしいなぁ、なんて……」
「仕方ないな、ほれ」
「えっ」
どうせさっき球磨にもしたんだ、1人や2人そんなに変わらないだろう。
「……あ、あのっ」
「んー、どうしたー?」
「ありがとうございます!」
「いいのいいの、風邪はいけないからな」
果たしてハグに効果があるのかは疑問だが、少しでもマシならそれでいい。艦娘の体調管理も提督の仕事の内だからな。
・・・
7時。やっとこさ本日の業務開始だ。
「おはよーございます、青葉です!」
「お、おはよう青葉。すまないな、急に変わってもらったりして」
「いいんですよ、青葉は嬉しいです!執務室なんて、そうそう入れませんからね!……ところで司令官。インタビューしても宜しいでしょうか?」
「インタビュー?」
「はい。青葉、実は新聞作りが趣味なんですよ!それで、次の記事のために少しネタを頂きたくて……」
青葉は新聞作りが趣味なのか。いいな、今度鎮守府に飾る用に何か作ってもらおうかな。
「そういうことか、いいぞ。なんでも聞いてくれ」
「では、失礼して……司令官、昨日曙ちゃんと寝たという噂が立っているのですが、事実ですか?」
「ブホォッ」
ど、どうしてそれを……!?
「……沈黙は、肯定と受け取りますよ?」
「……分かった、答えよう。事実だ、俺は曙と寝た」
逃げ道が見つからず、結局自白。
「……あっさり認めちゃうんですね」
「……まあ事実だし……あと、青葉には嘘を吐きたくないしな」
「えっ?」
おっと危ない、小声だから聞かれずに済んだものの、大分恥ずかしい台詞を口走ってしまった。
「なんでもない、なんでもないよ」
「……ホントですか?」
「あ、ああ」
なんかやけにグイグイ来るな……。
「……ならいいんですけどね。さ、執務始めましょー!」
「お、おう」
・・・
「……昼だな」
「……お昼ですね」
……。
「……一緒にどうだ?」
「……はいっ!」
……っふぅ良かったぁぁぁ……。
・・・
「……さて、何頼む?奢るぞ」
「いいんですか!?」
「ああ。いいぞ」
「ありがとうございます!じゃあ……」
……よしよし、上手くやってるわね青葉。
「何を見てるの?」
「なんか面白いモンでもあったか?」
「なんでもないわ。それより早く食べましょ、古鷹、加古!」
・・・
俺が頼んだのは焼肉定食、青葉が頼んだのはカツ定食だった。
「じゃ、いただきます」
「いただきまーす!」
美味え。
「……」
……ん?青葉がこっちをジッと……。
「……欲しいのか?」
「はい!」
「……ほれ、皿出せ」
「え?」
……え?
「……えっと」
「あーん、ですよ。分からないんですか?」
いや、分かるけども。いいのか?いいんだな!?
「……はい、あーん」
「はむっ……美味しいです!」
……はぁぁぁぁぁ緊張したぁぁぁぁぁぁ。
「……じゃ、じゃあお返しをしないといけませんね」
……え?
「はい、あーんっ!」
oh……。
「あむっ……うん、美味いぞ」
「ありがとうございます!」
・・・
「お、おい鳳翔?空母共が……」
「龍ちゃん見ちゃダメ。あんなの見ちゃダメです」
「ひぇぇ……おっかないなぁ」
・・・
「姉さん姉さん」
「ん、どしたの村雨」
「夕立と時雨姉さんが……」
「わっ、どうしたの二人とも!?そんなおっかない顔して!」
・・・
「お姉様、どうか正気を保ってください……!」
「そ、そうですよ!金剛お姉様、ほら深呼吸!」
「金剛お姉様、落ち着いて……!」
・・・
……ああ、恥ずかしかった。食堂で食べさせ合いとか公開処刑じゃないか……。
「司令官、午後の執務も頑張りましょー!」
ははは、どうして青葉はこんなに元気なんだろうな。ま、気にしても仕方ないか!
「そうだな、気合い入れてくぞ!」
「はい!」
……さて、衣笠。今のところは順調だぞ。
・・・
私が提督に頼んだのは2つ。1つは青葉を秘書艦にしてもらうこと。もうひとつは、その日のうちに青葉に告白すること。あの提督だし期待はしてないわ。少しプレッシャーをかけただけだけど、ちょっとでも最善の一手をとるべきだからね。
・・・
「ぽーい!」
午後の分の執務がそろそろ終わるかというところで、演習組が帰ってきた。
「おう、お帰り。じゃ、報告頼む」
「戦果は完全勝利、MVPは夕立っぽい!」
「おお、凄いな。よくやったぞ」
「ぽい!頭撫でてほしいっぽい!」
「全く……仕方ないな!」
「ぽぉい!」
「うりうり!」
「ぽいぽいぽい!」
あ、ちょっと楽しくなってきた。
「ほりゃほりゃ!」
「ぽいぽいぽいぽいっ!」
「うりゃりゃりゃ!」
「ぽぽぽぽぽぽぽぽーいっ!」
「じゃかあしいっ!」
「「!?」」
青葉がキレた。
「あ、青葉?」
「ぽいぽいぽいぽいうるさいです!時雨ちゃんにでも構ってもらってください!」
「ぽ、ぽいぃ……」
「司令官も!構うなら夕立ちゃんじゃなくて青葉……に……」
……え、今なんて?
「……すみません、取り乱しました」
「……あー、なんだその」
「ごめんなさいっぽぉぉい!」
「ちょっ、夕立!?」
泣きながら部屋から飛び出していく夕立。
「……」
「……」
「……あー、なんだその」
仕切り直し。
「ごめんな、気づいてやれなくて」
「司令官……」
「お前も夕立に構いたかったんだろ?」
「……え?」
あれっ、違った?
「……」
「……」
「……この……鈍感クソ提督ー!」
「青葉!?」
青葉も走って出ていった。……じゃない、追いかけないと!
・・・
はあ、いくらなんでも鈍感すぎです……。ほんとに青葉に気があるんですかってほどにアピールに疎すぎますよ……。
「はぁ……」
これは、司令官に直接告白するしか手がないですかね……?
「青葉、どこだー!……ってうおっ!?」
「ぇ……?」
ごっ。
「ぐはぁっ!」
「し、司令官!?」
角から出てきた司令官とぶつかり、司令官は吹き飛ばされて……って、そっちは!
「司令官、危ない!」
「ぐっ……!」
どぼーん。
「ちょ、おれ泳げボボボボボボボ」
「大丈夫ですか!?」
・・・
「はぁ、はぁ、はぁ……死ぬかと思った」
「ごめんなさい、考え事してて……」
水に突き飛ばされてからの記憶がない。気がついたらすっかり辺りは暗くなっていた。目が覚めたとき、俺は青葉に波止場で膝枕されていた。
「いや、俺も周りが見えてなかった。すまない」
……いつもは騒がしいここも、夜では打って変わって静かだ。
「なあ、青葉……何してたんだ、こんな所で」
「考え事ですよ……恋愛についての」
……!やっぱり、俺が青葉のことを好きになるなんて迷惑だったか……。
「私には、好きな人がいるんです」
「……」
「その人は、色んな人から好かれていて」
「……」
「鈍感で、こっちのアピールにも全く気づいてくれなくて」
「……」
「頼み事は断れないお人好しで」
「……」
「誰にもバレないように日記なんか書いてたりして」
「……?」
「日記を読まれたって分かってるクセに、私を咎めることもなく」
「……!」
「駆逐艦の娘と寝たりして」
「……っ」
「そして、皆に、私に優しく接してくれる。そんな人なんです」
……何を言えばいいのか分からない。口も、頭も、動かない。
・・・
「日記を読んだときから意識し始めて」
『一目惚れしてしまったのは秘密にしておく』
「毎日その人のことばかり考えるようになって」
『なぜ、私はこんなことをしているのだろう』
「胸が苦しくなって」
『私が好きなクセに、なにデレデレしてんですか!』
「妹に助けられて」
『 こんなの、姉に譲るしかないわよねー』
「それが『恋』だと分かって」
『衣笠、お姉ちゃんは頑張ります!』
「他の娘に嫉妬しちゃって」
『うらやまけしからんです!』
「全く気づいてくれないことに不安を感じて逃げ出しちゃって」
『……この……鈍感クソ提督ー!』
「私が悪いのに、探しにきてくれて」
『青葉、どこだー!』
「今、こうして二人きりで話しているんです」
……タメはこのくらいでいいですかね。
「……司令官、青葉は司令官のことが好きです」
・・・
「どうか、返事を聞かせてくれませんか?」
……そんなの、言わなくても分かってるだろうに。
「……俺もだよ」
「!」
ああ、ヤバいな。こんなシチュエーション、ドキドキするに決まってる。
「……司令官。ありがとう、ございますっ……!」
泣きそうになる青葉。それにつられて俺も泣きそうになったが、そこは男の意地でカバー。
「青葉は……幸せ者です……!」
「……そう言ってもらえるなら嬉しいよ」
と、あることを思い出す。
「そうだ、青葉……聞きたいことがあるんだが」
「聞きたいこと、ですか?」
「ああ。今の練度はいくつだ?」
「うーん、あんまり出撃してないのでまだ15です」
15か……まだまだだな。
「そうか……練度がMAXになったら、俺は青葉にあるものを贈ろうと思う」
「あるもの……なんでしょう、ワクワクします!」
「まあ、あまり期待はしないでおいてくれ。さ、帰るぞ」
「はい!……って、あれ?からだに……ちから……が……」
急に倒れ込む青葉。
「ど、どうした!?」
急いで青葉の傍に駆け寄ると……。
「すぅ……」
……あー、そういう?
・・・
「……はっ」
目が覚める。自分が部屋に戻るまでの記憶がない。
「あ、おはよー青葉」
「衣笠、おはようございます」
「いやー、昨日は頑張ったねー!えらいえらい!」
昨日……?と、自分が夜に何をしていたのかを思い出す。
「なっ、なんで衣笠がそのこと……!」
「だってさー、提督がこの部屋まで青葉を運んできてくれたんだよ?」
「し、司令官が……」
「そのときに事情を説明してくれたんだー」
な、なんてことを……!
「ほらほら、はやく準備して旦那さんのとこに行ってきな!」
「まだ旦那さんじゃないです!」
「まだ、ねぇ……ふふふ」
「くっ……」
・・・
「おはよう、青葉」
「おはようございます、司令官!」
……ヤバい、恋人ってこういうときに何をするべきなんだ!?
「司令官、なんで衣笠にバラしたんですか?」
「それが……」
・・・
「おーい、衣笠ー。起きてるかー」
「あれ、提督?どうしたの、こんな夜中に」
「青葉引き取ってくれ」
「引き取る……?」
「ほら」
そう言って、おんぶ中の青葉を見せる。
「……ヤった?」
「ヤってない」
「でも青葉寝てるし、パッと見それしか思い浮かばないなー」
「はあ……実は」
・・・
「という流れになってな」
「そこでバラしたんですか……」
「バラしちゃダメだったか?」
「いえ、そういう訳ではないんですけど……自分の口で言いたかったというかなんと言うか」
「そうか、すまなかった」
……なんか、全く恋人っぽくないな。
「……ふふっ」
「ん?」
「いえ、恋人っぽくないやり取りが少し可笑しくて……あははっ」
「……ふっ」
……まあ、こういうのも俺たちらしくていいかもな。
・・・
「さて、青葉」
「は、はい!」
「まずは、練度MAXおめでとう。ここまでよく頑張った」
「ありがとうございます……ここまで来ることが出来たのも、司令官のおかげです」
「そうか、ありがとうな。……さて」
……緊張する。
「青葉。前に話したように、渡したいものがある」
一言一言、言葉を紡ぐ。
「……これを、受け取ってくれ」
「……これって」
青葉に差し出した小箱。その中身は……。
「指輪……!」
「俺と……」
この言葉を言えば、後には戻れない。だが、1度言うと決めたのだ。
「俺と、ケッコンしてくれないか」
……実際は3秒程度なのだろう沈黙が、3時間ほどの沈黙にも感じられた。
「……不束者ですが」
「!」
・・・
「……不束者ですが」
「!」
青葉、今とっても幸せです。好きな人からプロポーズしてもらえてます。この幸せは二度と失いたくない。だから……。
「絶対、離さないでくださいね!」
艦!
🍅『対馬』🍅が危険
リアルに危険
西暦2020年『東京五輪』の時
💀🇰🇷韓.国🇰🇷💀が🍅『対馬』🍅を侵略してくる。💀