明石「懺悔室です!」
概要って何書けばいいんだろうね。 おじさんよくわかんない
さて、突貫工事で書き上げたこのクソSSを読みに来たそこのお前!
このSSには
・誤字、脱字
・キャラ崩壊、口調などのミス
・謎理論
・設定の矛盾
・クソ雑展開
・既出展開
・同じフレーズの使い回し
・その他もろもろ
が含まれている可能性があるぜ!
苦手な方はブラウザバックよろしくな!
「これどこかで似たようなの読んだ!」とかあっても俺は書くの初めてだから優しくスルーしてくれよな!
「何これ」
「何って懺悔室以外の何でもないでしょ」
何言ってんだこいつ、とでも言いたげな明石。
「いや懺悔室なのは分かるんだよ。 この前岸辺○伴が動かなさそうなアニメで見たし」
「なら何がご不満なんです?」
「俺の部屋が懺悔室に改築されてることに決まってんだろ!」
日付も変わり、今日の執務を終えて部屋に帰ってきたら懺悔室。
疲れすぎて幻覚でも見ているのかと顔を洗いに行き、戻ってきたらやっぱり懺悔室。
そりゃ怒りたくもなるだろう。
「で、なんで懺悔室なんだよ」
「切り替え早いですね」
「こんなん今更どうにもできねえし」
「それもそっか。 実はですね、大本営からの依頼なんですよこれ」
「これが?」
「艦娘と言えど一人の人間、カウンセリングを行うべき。 上司や同僚に言い難いことを打ち明けられる人間が必要。 だが軍事機密も守らなければならないため万が一に備えて外部の人間は雇えない。 さて、こんなとき提督ならどうします?」
「外部の人間として軍から採用する。 無論艦娘にはそのことを告げずに」
「そうなりますね。 そこで大本営が考えたのが懺悔室だそうです。 設定としては教会から派遣された神父だとかなんとか」
なるほど、たしかに筋は通る。
話す相手の顔は見えず、相手側からも自分のことは分からない。
「でも俺の部屋でそれやる必要ある?」
「都合のいい場所ここしかなかったんですよ」
「他に空いてる部屋あっただろ」
「執務室から遠いじゃないですか。 呼び出しボタンひとつでいつでも駆けつけられるようには執務室の隣、この部屋しかなかったんです」
「待って俺がやんの?」
「当然じゃないですか、他に誰が?」
「人員くらい派遣しろよ」
「鎮守府の実情を一番知ってる人が適任に決まってますよ!」
「はあ……俺これからどこで寝ればいいの?」
「それはご心配なく。入口のスペースをちょっと貰っただけなので奥は提督のお部屋のままですよ」
「でもこれ俺の部屋の半分くらいスペースとってない?」
「そこは明石の腕の見せ所、匠の技でほぼスペース減少ナシです!」
「何それどうなってんのこわい」
「怖いとは心外な、努力の賜物ですよ! あと執務室と提督のお部屋、提督のお部屋と懺悔室の壁はぶち抜いてあるので隠し通路として有効活用してくださいね」
「待て今なんつった」
「それでは!」
こうして、俺の新たな仕事が(半ば無理矢理)始まった。
・・・
次の日。
「ん?」
知らない間に改造されていたらしい机の引き出 しが勝手に開き、その中に勝手につけられた液晶画面に『呼出』の文字が。
「なるほど、こうなってんのか」
棚を動かして隠し通路を使い、懺悔室へと入る。
「えーと……」
懺悔室など当然利用したこともない。こういうときどうすれば良いのか聞いておけばよかった……。
「あの、明石さんからお悩み相談室ができたって聞いて来てみたんですけど……」
「は、はい。 ここで合ってますよ」
なるほど、外見は懺悔室でもお悩み相談室として扱えば変に決まりとか設けなくて済むのか。ナイス明石。
「へ、変な声ですね……」
と、いきなり失礼なことを言われるが、相手はどうやらまだ気づいていないらしいので指摘しておく。
「どうやらこの部屋の中では常時ボイチェンかかってるみたいですね。 あなたも」
「えっ……す、すみません!」
「いえいえ。 それで、どのようなお悩みを?」
すると、相手側からは言い淀むような空気。数秒の後、彼女は語り出した。
・・・
私、人のことをなかなか信じられないんです。
昔イヤなことがあって、それからなんですけど。
この鎮守府に来た時、私は姉妹や以前からの知り合い以外には気を許せなくて。
あろうことか提督……この鎮守府の中で一番偉い人なんですけど、私はその人に向かってクソて……もとい、クソ野郎だなんて酷いこと言っちゃって。
それから一緒に過ごすうちに、彼が悪い人じゃないことや私のことを大切に思ってくれていることが分かってきたんです。
だからとっても尊敬してるし、その……き、嫌いではないんですけど。
なかなか「ありがとう」の一言も言えなくて、口からはつい罵倒が出ちゃって。
彼の前だとどうしても素直になれないんです。
だから私、彼に嫌われてるんじゃないかってすごく心配してて。
彼に嫌われてるって考えるだけで、心がきゅうって締めつけられるような感じでイヤなんです。
……どうしたら、彼は私の本当の気持ちに気づいてくれるんでしょうか。
・・・
「なるほど……」
この艦娘……仮称Aは、どうやら俺に嫌われているのではないかと不安らしい。
俺は鎮守府の中に嫌いな艦娘なんていないし、傷つくレベルの罵倒をしてくる艦娘もいない。
要するに、杞憂というやつだ。
「心配する必要はありませんよ」
「えっ?」
「その提督という方は、きっとあなたの気持ちを理解しています。 あなたはとても優しい心の持ち主であり、そういった人柄などは自然に伝わるものなのです」
「そ、そうなんですか?」
「ええ。 だから安心して気持ちを言葉にしてみてください、きっと彼は受け止めてくれるはずです」
「わ、分かりました! ありがとうございました!」
「いえいえ、良い結果になることを願っていますよ」
……Aが退室したのを確認してから、猛ダッシュで執務室に戻る。
椅子に腰掛けた瞬間、ドアがノックされた。
「入って良いぞ」
「し、失礼するわ!」
扉を開けて入ってきたのは、綾波型駆逐艦の八番艦、第七駆逐隊の曙。
恐らく彼女が先程の艦娘Aだ。
「どうした?」
「……あ、あのね」
「おう」
「わた、わたしっ!」
「おう」
先程のお悩み相談の話からすると、彼女が俺に伝えたいのは感謝の気持ちだろう。
感謝されるほど何かをした覚えもないが、受け止めてくれると言った手前その気持ちはしっかりと受け止めよう。
そう覚悟して曙を見つめると、彼女は顔を真っ赤にして。
「……クソ提督のこと、すき、だから」
「えっ」
「か、勘違いしないでよね!あ、か、勘違いじゃ、ないん、だけど……」
「えっ」
「浮気したら許さないから! それじゃ!」
叫んだり言葉に詰まったりと忙しそうな曙を見送り、俺は再び懺悔室に戻る。
「……おお、神よ。 駆逐艦とケッコンって合法なんでしょうか」
「はーいこちら神です。 合法ですよご主人様、なんてったって艦娘ですから」
「……そっちは懺悔する側が入るとこだぞ漣。 てかなんでボイチェンかかってるのに俺だって分かったの?」
「ご主人様だってどしたん?話聞こか?側から懺悔してるじゃないですかヤダー。 ご主人様のことを漣が把握してないなんてことあろうはずがこざいませんとも」
……。
「どこから聞いてた?」
「聞いてたってよりボノが入るとこ見てたんで」
…………。
「俺どうするのが正解だったのかな」
「押し倒してハメれば良かったんじゃないすかね。 指輪もイチモツも」
「女の子が下品な言葉使うんじゃありません。 あと曙まだ練度99なってないし」
「じゃあヤるだけヤっといたらいいと思いますよ。 知らんけど」
「お前に頼ったのが間違いだったわ」
「女の子はお前って呼ばれるの嫌なんですよ」
「女の子の尊厳捨てた奴に言われたくねえよ」
「まあ冗談はさておいて、ボノもああ見えて随分前からご主人様のことLoveってたんですよ。 だいたい一回目の大規模改装してからくらいですかね」
「えっうそめっちゃ前じゃん」
「で、クソご主人様はまったく気づかず放置してたと。 そんでもってボノは改二になって気持ちが抑えられなくなって」
「……マジ?」
「マージ・マジ・マジーロ。 だからとっとと一筆奏上筆おろしでも本能覚醒野外ックスでもやっちまえと」
「俺そんな男に見える?」
「長年鎮守府運営してるくせに一人も手を出せないヘタレにしか見えませんね」
「じゃあ黙ろうか。 初期艦だからって何言っても許されると思うなよこの野郎」
「にゃはは、それじゃあ負けヒロイン漣ちゃんはこのあたりで退散しますので」
「え? ここにいるってことは一応悩みがあるんじゃないのか?」
「まあ言っても良いんですけど、せっかく揺らいでるチャンスのところを漣が潰すのも可哀想かなと」
「?」
「うーんよく分かってなさそう。 そんじゃま聞き流す程度でいいから聞きます?」
「おう」
・・・
漣、ご主人様、好き。
ぼの、ご主人様、好き。
漣、ぼの応援or自分の恋路。
・・・
「以上でーす。終わり、閉廷、解散」
「俺が言っちゃうのもアレだけど雑すぎない?」
「あ? なんですかちゃんと好きって言ってほしいアピールですかそうやって見つめられると勢いで誤魔化しちゃったので言い直すのは恥ずかしいしムリですごめんなさい」
「あ、そう……てか俺どうすればいいの?」
「死ねばいいと思うよ」
「理不尽」
「ま、漣はこの恋心を秘めておきますよ。 ボノにはこれ以上迷惑かけたくないので」
「秘めてない秘めてないそれ俺さっき聞いちゃったって秘められてないって」
「(思考が……読めるのか? まずい……)」
「読んでないんだよ自分で喋ってんだよ誰が鬼舞辻無惨だ」
と、一頻り騒いだ後。 漣は落ち着きを取り戻し、こう呟いた。
「……やー、結構ツラいんですこれが。 漣としてはご主人様とずっと一緒にいられるのがベストなんですけど、それでボノが悲しむのは違うっていうか。 でもご主人様を諦めるのは絶対に嫌なんです」
「漣……」
彼女はその独特な雰囲気や言葉選びからふざけているように思われがちだが、その実誰よりも誠実で真剣だということを、俺はきっと誰よりも知っている。
だから、理解している。 これは軽率に結論を出して良いものではないと。
「……今決めろ、なんてことは言いませんけど。 漣は、ご主人様に判断を委ねたいです」
「!」
「ご主人様ならきっと、誰も傷つかない方法を見つけてくれる。 漣はそう信じて待ってます」
一息おいて、漣は再びいつもの調子を取り戻す。 否、そうであるように取り繕う。
「さーて、ボノが布団にこもって震える様子でも見に行くとしますか! じゃーご主人様、そゆことで!」
「お、おう……」
どうやら漣は部屋を出て行ったらしい。
俺は一気に疲れたような気がして、執務室に戻ることもなく懺悔室に座っていた。
「曙、漣……」
二人の顔を思い浮かべ、これからのことを考える。 漣が俺に託した判断を、俺は正しく下すことができるのだろうか。 曙が決心して伝えてくれた気持ちに、俺は応えられるのだろうか。
そんなことばかり考えていると、懺悔室のドアがノックされる。
「し、失礼します……」
「っとと……はい、どうぞ」
「え、えと……私、潮って言います!」
「えっ? あ、あー。 こういうときは名前出さなくても良いんですよ。 というかむしろ出さないほうが良いですよ」
「そ、そうなんですね……お恥ずかしいところを」
「いえいえ、ご利用が初めての方は大抵戸惑いますから大丈夫ですよ」
それっぽいことを言ってみたが、当然デタラメである。 しかし潮は純朴の塊なので、それをすんなりと信じ込んだようだ。
「それで、どのようなお悩みが?」
「は、はい! 実は……」
・・・
私、周りの子より少しだけ胸が大きくて。
だからサイズの合うブラが酒保に売ってないんです。
戦闘に出て被弾したら破けちゃうことも多くて、その度に外出届を出して買いに行くのが結構大変で……なんとかなりませんかね?
・・・
俺にどうしろと。
「たしか明石さんの酒保には取り寄せシステムがあったと思うのですが」
「あるにはあるんですけど、その。 ……あんまり可愛くないんです」
「……そうですか。 明石さんに掛け合ってみます」
「あ、ありがとうございます!」
イケナイコトをしている気にはなるが、とても平和な悩みで何より……。
「あ、あともう一つ悩みがあるんです!」
「えっ」
・・・
わ、私……最近提督の近くにいられないんです。
近くにいると、理由も分からないのに動悸がして、見ているとそれが激しくなって。
あ、べ、べつに嫌いとかそういうワケではないんです!
それで、動悸を抑えるには提督から離れるしかなくて。 でも、提督から離れると今度は胸の奥がきゅうって痛くなるんです。
提督のことを考えているだけで落ち着かなくて、じっとしていられなくて。
朧ちゃ……じゃなくて、姉妹の皆に聞いても「それは人から正解を教えてもらうものじゃない」って言われて。
でも、どうしても気になるんです。
……この気持ちは、なんなんでしょうか。
・・・
はい。
助けてください。
俺にはこんなときの最適解が見つかりません。
「ご、ごめんなさい! すごく抽象的というかふわふわした話をしちゃって……」
「……いえ、とてもわかりやすかったですよ」
「そ、そうですか? よかったぁ……」
よくない全然よくない、すっごくよくない。
なんなら伝わらないほうがよかった。
ほんとどうすればいいんですかね。
「……あ、あのっ!」
「はいっ!?」
「もし、この気持ちが悪いものでないなら……私は提督とどう接すればいいんでしょうか?」
彼女の言葉には、今までの弱気な彼女からも感じられないくらいの不安があった。
「私……提督のお側にいては、いけないんでしょうか……?」
「そんなことない!」
「わっ」
気づけば、ノータイムで返していた。
潮の驚く声を聞いて、ようやく自分がなんと言ったのかを理解した。
「……すみません、大声を出してしまって。 それで潮さん、あなたの悩みについてですが」
「は、はいっ」
「あなたを悩ませるその感情については、ご姉妹の仰るように自分で気づくことが大切です。 ですから、私があなたに教えられるのは一つだけ」
「一つ、ですか?」
「はい。 ……その感情を乗り越えれば、あなたはきっと今よりも強くなれます」
「強く……」
これは俺をはじめとする、多くの者の経験だ。
どのような結果であれ、自分の感情と向き合えた者は今より少しだけ強い心を持てるのだ。
「……ありがとうございます。 私、今から提督のところに行ってみようと思います!」
「お疲れ様でし……えっ」
潮が部屋を出た音が聞こえ、ワンテンポ遅れて彼女が執務室に向かったことに気づく。
「やっべ……!」
なんとか執務室に先回りし、通路を隠す本棚を動かしたタイミングで潮が入ってきた。
「し、失礼しま……提督?」
「ああいやなんでもない、少し模様替えしてただけだから」
「そうなんですか?」
「そうなんですそうなんです。 それで、何か用か?」
息切れをどうにか抑えて会話する。
幸い潮は気づく様子もなく、応接用のソファに腰掛けて話し始めた。
俺も机を挟んで向かい側のソファに座り、潮の話を聞く体勢に入る。
「えっと、私……お願いしたいことがあるんです」
「お願い? 聞けることなら聞くけど」
「ほんとですか!?」
「ほんとほんと。 提督嘘つかない」
「じゃ、じゃあ……!」
身体を乗り出し、潮は俺の腕を掴む。
「うぉっ、何すん……」
「えいっ」
むにゅっ。
「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
未知の感触。
手が『それ』に触れた瞬間、俺の意識は執務室ではないどこかへと飛んでいた。
「……やっぱり、ドキドキします」
俺も心臓バクバクです。
脳裏に過ぎる『責任』の二文字が、俺の鼓動を無限に加速させていく。
「う、潮」
「……じゃあ、次です」
「えっ」
「目を瞑ってください。 ……お願いします」
この状況で目を閉じるのは非常に怖い。
胸を触っている状態を撮られて拡散され人生終了とかそういうオチが目に見える。
が、彼女のお願いを聞くと言ってしまった手前断ることもできず、ゆっくりと瞼を下ろす。
俺の手は潮の胸から離され、ゆっくりと膝の上に戻される。
「……自分の気持ちに、気づくために!」
「……?」
「失礼しますっ……!」
ふよんっ。
ぎゅっ。
「……あの、潮さん」
「い、今は何も言わないでください……!」
「無理があると思うんです。 目ェ開けていいですか」
「だ、だめです!」
うーん困った。
俺の上半身に何が起きているのかまったく確認できない。
感覚として、ちょうど俺の左腕のあたりに柔らかい感触があり、腕のような何かが俺の胸あたりに回されている。
もしや、というかもしかしなくてもアレだ。
俺は潮に抱きつかれている。
「……ああ、やっぱり」
「ひゃんっ……」
耳元で囁かれ変な声を出してしまうが、お構い無しに潮は呟き続ける。
「これが、好きってことなんだ……」
「んひっ……!?」
身動きひとつとれない状態で耳に優しい吐息があたり、身体が跳ねる。
「えへへ……」
ときに諸君。
余談だが、艦娘の本気の抱擁は木の幹を余裕で粉砕する力を持つらしい。
「……もう少し、このままで」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い潮まってやめてめちゃくちゃ痛い折れる折れる折れる折れる!!!!!」
「今は、ドキドキが心地良いです……」
もはや何も聞いていない潮に全力で抵抗すること数十分。
俺は正気に戻った潮にようやく解放された。
「ご、ごめんなさいぃ……」
「いや、別にいいよ……いてて」
腕が変な方向に曲がらなくて良かった。
たぶん潮っぱいが俺の腕を保護してくれていたのだ。 ありがとう潮っぱい。
「えと、それで、その。 提督」
「は、はい」
「私、どうやら提督のことが好きみたいです」
「……そうか」
「で、ですから……どうすればいいんでしょう!?」
「えっ」
「いえその私誰かを好きになったことがないと言いますか、こういった場合にどうすれば良いのか分からなくて……」
「……あー」
たしかに、普通はそういうものだろう。
恋とはかくあるべし、などと決まってはいない。
「オトナな艦娘に訊いてみる……とか?」
「な、なるほど……陸奥さんのところに行ってきます!」
「あ、ああ。 行ってらっしゃい」
そのまま部屋を出ていく潮。
俺は何か間違ったことをしているのではないだろうか、と不安になってくる。
「ん、ペンが……」
思考に没頭しているうちに、ペンが手を離れて床に落ちてしまった。
拾おうとして椅子から立ち、屈んだところで。
「へぶっ!?」
勢いよく開いた引き出しが顔面にクリーンヒットする。
「今かよ……ああもうっ!」
引き出しを閉め懺悔室に向かおうとするが、それより早く執務室のドアが開かれる。
「すごい音がしましたけど、大丈夫ですか?」
「お、朧……」
「……何してるんですか?」
「ちょっと本棚の場所変えようかなって」
さっきもこの言い訳使ったな。 まあいっか。
「そうですか。 それよりはやくお悩み相談してください」
「すまんすまんすぐ行……待って今なんて?」
「お悩み相談です。 呼び鈴鳴らしたのに出てこないから直接来ました」
「お、俺じゃないぞ」
「元々あそこ提督の部屋でしたし、執務室の隣ですし……普通は気づきますよ」
まるで曙とか潮が普通じゃないみたいな言い方やめたげてよ……いや二人ともピュアだけど。
「もうここで良いですから」
「せ、急かすなよ……」
朧はソファではなく執務机用の椅子に座り、俺を手招きする。
「正座」
「なんで」
「いいから」
「……はい」
・・・
最近すごく困ってます。
第七駆逐隊の三人から多種多様なノロケを聞かされます。
曙ちゃんは
「ほんとあのクソ提督は……」
と文句を言うフリをして提督にしてもらって嬉しかったことを延々と語り始めるし、
漣は
「いやあ朧、聞いてよご主人様ったらさあ」
とあんまり構って貰えないことを延々と愚痴り続けてくるし、
潮ちゃんは
「最近、気づいたら提督を目で追ってて……」
と赤面モノの無自覚初恋体験談を真剣な顔で話すし……。
ここで問題が発生しました。
その問題とは一体なんでしょうか?
・・・
「なんでクイズ形式……?」
「なんでだと思いますか?」
「質問を質問で返すなよ……」
呆れたと言わんばかりのため息を吐き、朧は椅子から足を伸ばして俺の頭に乗せる。
「原因が提督だからですね」
「……つまり、俺が自分で問題に辿り着かないと意味が無いと」
「潮ちゃんから聞いたんですか? それ」
「……まあ、はい」
「潮ちゃん……漣や曙ちゃんと接してみて分かったこと、何かあります?」
今日、三人から話を聞いて感じたこと。
一つは、三人が俺の事を好いてくれていたこと。 もう一つは……。
「そんなに大事なことにも気づかないほど、俺が皆を見ていなかったこと」
「そう、それです」
・・・
では率直な感想を。
皆が好きな「私に優しい提督」は、「皆に優しい提督」でした。
艦娘毎に対応を変え、柔軟に接している。 それは事実です。
ただ、その裏で深く接しすぎないように制御しているとも思えるような行動も多々ありました。
トップとして、誰かに入れ込みすぎないようにする……まあ、分かります。
でも、それは皆の気持ちから目を逸らしているのと一緒。
現に誰ともケッコンしてないのがその証拠。
だから問題なんです。
「……自分にもチャンスがあるんじゃ」、だなんて思ってしまって。
・・・
「アタシの……朧だけの提督になってください。 まだケッコンできる練度じゃないけど、頑張るから」
「……」
俺に断る理由はない。
だが、今は受けられない理由がある。
「……明日まで待ってくれ」
「駄目」
まだ逃げるのか、と言われた気がした。
見れば彼女は震えており、不安そうな表情で。
それを見て、受け入れてしまってもいいんじゃないか、と心のどこかで誰かが叫ぶ。
それでも、
「……頼む」
それでも、今じゃない。
「……なんで?」
「頼まれてるんだよ。 誰も傷つけない方法を見つけろ、って」
「……そういうとこですよ、提督。 どうして平等であろうとするんですか」
「なんだ、俺の事を好きだ何だと言った割には理解してくれてないんだな」
「……っ」
「いいか朧。 さっき言ってただろ、俺は『皆に優しい提督』だって」
「だから、そうじゃなくて……!」
「それは事実だ。 でもな、理由がちょっとだけ違うんだ」
彼女が俺を好いているように。
曙や漣、潮が俺を好いているように。
「俺も皆が好きだから。 だから、優劣をつけたくないんだ」
「……それ、一番残酷な答えですよ」
「答えも聞かずに採点とは随分余裕だな」
「は……?」
「今のは言わば途中式、解はこの先だ」
・・・
「……クソ提督のこと、すき、だから」
初めに俺が揺らいだのは、彼女の言葉。
金剛のようにストレートに好意をぶつけてくる艦娘はいたが、あれは半ばスキンシップのための口実と化しているためそこまで本気にはしていなかった。
だから、心の奥の本音を俺のためだけに勇気を出して曝け出す彼女の姿は、とても眩しく見えた。
「ご主人様ならきっと、誰も傷つかない方法を見つけてくれる。 漣はそう信じて待ってます」
この道を拓いたのは、彼女の言葉。
きっと彼女も気づいていた。 俺が『皆に優しい提督』だったことに。
その上でどうするかを俺に委ね、俺のやり方を否定しなかった。
彼女はいつまでも、俺の自慢の相棒だ。
「もし、この気持ちが悪いものでないなら……私は提督とどう接すればいいんでしょうか?」
背中を押したのは、彼女の言葉。
その道が正しいかどうか分からずとも、歩みを決して止めない。
彼女の決断は、躊躇う俺に進み続ける勇気をくれた。
・・・
「そして最後に、朧の言葉」
俺が今、彼女の告白を受けられない理由はそこにある。
「潮ちゃん……漣や曙ちゃんと接してみて分かったこと、何かあります?」
と、彼女はそう言った。
「見てたんだろ、三人のこと。 今日も昨日も、ずっと前から」
「……嫌でも目に入りますよ。 同じ艦隊だから」
「だろうな。 なら分かる、分かってるだろ」
「……何を?」
「今、俺が朧のモノになれば……四人の間には、修復不可能な溝が生まれる」
日頃から曙達の話を聞き、彼女達が俺に想いを告げた上で横からかっ攫うような行為。 もしそんなことをすればどうなるのかは、容易に想像できる。
それは、俺や漣が望んだ全員の幸福でもなんでもなく。
「……分かってる。 けど、もう戻れない」
「……」
「自分の想いだけじゃなくて、三人の想いをアタシは持ってる。 抑えられるわけない」
「……」
「今じゃなきゃ、朧だけの提督には絶対になってくれない。 だから今じゃないと駄目」
「……」
「それが原因で皆に嫌われても、それでも……!」
「「それでも」、何だ? 泣きながら叫ばれてもわからんぞ」
「……っ!」
そうだろう、とは思った。
やはり、朧はその続きを口に出せない。
「……あの三人のこと、大事なんだろ。 じゃなきゃ愚痴だって惚気だってわざわざ聞いてやったりしない」
「……」
「それにな、朧。 三人分の想いを持ってるとか言ってたが……それは『持ってる』じゃなくて『知ってる』だ。 自分の想いを補強する材料にしてるだけなんだ」
「……なら」
涙を零しながら、嗚咽を交えながら、彼女は俺に尋ねる。
「なら、この恋は……贋物なんですか」
「そんなわけないだろ。 そうじゃなきゃ、朧はここまで来てないはずだ。 もちろん他の三人も」
たとえ勢いや焦燥感からの行動でも、根底にあるそのキッカケは同じ。
「だから、できればそれに応えたい。 朧も、皆も、全員が納得できる形で」
しばらくの沈黙の後、彼女は頬を伝う涙を拭う。
「……明日、もう一度ここに来ます」
「待たせて悪いな」
「ちゃんと、満足させてください」
「もちろんだ」
「……では、失礼します」
朧が部屋を出たのを確認し、俺は机に突っ伏す。
「どうしよう……」
もちろんさっきの言葉に嘘はない。
四人の気持ちはとても嬉しかったし、俺もそれに応えたい。
ただ、その方法が思い浮かばない。
「痛っ……!?」
悩んでいると、脛に引き出しがぶつかる。
呼出の文字が浮かび上がり、それが懺悔室のものだと気づくまでには数秒を要した。
「……いかん、切り替え切り替え」
本日何度目かのお悩み相談、続いてのお相手は……。
「さ、さっきぶりです」
「……朧か」
「はい……さっきの話なんですけど」
まだ何か伝え忘れたことでもあったのかと考えていると。
「最初から、外で皆が聞いてたみたいで」
「えっ」
「そういうことよ、このクソ提督。 あんた他人のフリして乙女の悩みを聞くとか覚悟はできてるんでしょうね」
「えっえっ」
「ご主人様、ボノはお怒りだぜ……?」
「えっえっえっ」
「……わ、私は提督で良かったし嬉しいですけど。 えへへ」
「えっえっえっえっ」
どうやら、非常によくない状況らしい。
「さあて、どうしてくれようかしら」
「ひっ……」
「こればっかりは擁護できないぜご主人様」
「ワァ……ァ……!」
「な、泣いちゃった……!」
「朧、さっき泣かされたし。 因果応報です」
逃げ場はない。
俺は刻一刻と迫る終わりに身を任せ、その場で目を瞑り……!
・・・
「で、懺悔室は半壊。 その場に残された提督は全裸だったと」
「提督、駆逐艦にボコボコ(意味深)にされた感想は?」
「……」
「あー、駄目みたいですね。 夕張、あったかいミルクか何か用意してあげて」
「分かりました!」
こうして懺悔室の存在は闇に消え去り、俺の尊厳もまた地に落ちた。
第七駆逐隊の四人は行方を眩ませ、艦隊から除名された……なんてことはなく、普通にその辺を歩いていたらしい。 明石による事情聴取の末彼女らは無実、俺の自業自得とされたようだ。おかしいね俺何も悪くないはずなのにね。
ちなみに今、俺は明石と夕張に保護され工廠の一室にいる。
「で、どうするんですか?」
「明石さん、まだそっとしておいてあげましょうよ」
「……いや、もう大丈夫だ」
なんとか立ち上がると、明石と夕張が吹き出す。
「生まれたての子鹿みたいになってますよ提督だはははは!」
「ちょ、笑っちゃ悪いですって! ……あははははははっ!!」
笑い転げる二人だが、俺は怒る気力も起きず。
「覚えとけよ……あと明石、頼みがある」
「なんですか子鹿」
「よく言ったこの野郎あとでぶっ殺す。 そうじゃなくて、大本営に連絡したいんだが」
「あー、なるほど。 ……ほんとにいいんですか?」
「もう決めたからな」
「ひゅう、男前。 いや一人に絞りきれてないから不貞ではあるんですかね?」
「絞りきれないのに搾りとられてて草」
「おっと夕張お前も死にたいかそうかそうか」
「艦娘を殺せるほど人間って強くないですけどね。 ……はい、繋がりましたよ」
「助かる。 ……すみません、注文したいものがあるんですけど」
・・・
翌日。
「……さて、第七駆逐隊。 貴様らには処分を下す」
「話が違うと思うなご主人様」
「そうよクソ提督、私たちに非はないわ」
「や、やっぱりやりすぎたのかな……」
「約束……」
彼女達を放送で呼び出しそう告げると、それぞれが落胆の表情を浮かべる。
「……ということで。 全員目を瞑れ」
「何? キスしてくれるんですかご主人様? それともキス顔撮影会? 時間停止モノみたいなシチュ楽しむ系?」
「ちゃうわアホ。 いいから」
全員が目を瞑ったのを確認してから、引き出しにしまっていた小箱を取り出す。
「今から四人に罰の証を配る。 俺が良いと言うまで絶対に外さないように」
そこから銀に、角度によっては虹色にも輝く指輪を出し、四人の指に嵌めていく。
「ク、クソ提督……これって」
「まだ目を開けるなよ」
きっと、今の俺は見せられたものじゃない。
だからこうして、独白のように。
「……俺には悩みがある」
彼女達がそうしたように。
「俺に、四人の艦娘が『好きだ』と伝えてくれた。 当然めちゃくちゃ嬉しくて、俺は告白されただけでその子のこと本気で好きになるくらいにチョロい男で」
俺も言葉で伝えよう。
「だから、一人を選ぶなんてできなくて。 俺のエゴで、こんな結果になった」
たとえ伝わらなくても。
「……その指輪が、俺からの返事だ。 もしもこの判断に納得できないようであれば、その時は……指輪を外してくれて、構わない。 必要練度には達していないから機能も発動しないし、外せるはずだから」
そう告げた途端、自分の声が震えていることに気づいた。 これが、彼女達が乗り越えた恐怖だったのだろう。 たった一瞬のはずの静寂が、妙に引き伸ばされて流れていく。
「……じゃ、何よ。 罰にかこつけて渡したってワケ?」
「うーん、それじゃお断りですかねえ」
「わ、私もあんまり……」
「皆と一緒です」
各々が指輪を外し、俺の机に置く。
「……そうか。 すまなかったな」
殴られたようなショックに揺らぐ視界に必死に耐え、その指輪を箱に戻そうとすると。
「は? なに仕舞おうとしてんのよ」
曙に手首を掴まれ顔を上げると、そこには何かを期待するような表情の四人。
「漣、罰とか関係なくちゃんとご主人様の気持ち100%で渡してほしいなーって」
「私も、そう思います……!」
「……朧だけの、じゃないのは不服だけど。 皆一緒なら、別に」
「そういうコトよ。 ほら、はやくしなさい」
視界は揺らぐことをやめ、代わりに歪み始める。
「……良いんだな?」
「当然じゃない」
「モチのロンですぞ!」
「も、問題ありません!」
「今更すぎです」
差し出されたその手に、俺はゆっくりと触れ──。
・・・
「……はい、どうぞー」
「えっ? ……クソ提督じゃないわね、あんた誰よ」
「曙ちゃんですか。 なんか処罰だのなんだの言われてお悩み相談担当になった明石ですよ」
「じゃ、いいわ。 邪魔したわね」
「待って待って、私にもノルマがあるんです! どんなことでもいいから話してみてくださいよぉ!」
「……仕方ないわね。 クソ提督には絶対内緒よ」
「おっ、これは痴話喧嘩の予感……!」
「ばっ、そんなんじゃないっての。 ……第七駆逐隊は全員ケッコンしたわけなんだけど、どうもクソ提督の中では『ケッコン艦』というか、そういう感じで一纏めに見られてる感じがして。 どうにか私があいつの一番になれないかなって」
「……はあ。 やっぱそうですか」
「は? 何よ、分かってたみたいな口ぶりね」
「そりゃそうですよ。 曙ちゃんで四人目だもの、同じ内容の相談は」
「えっ」
「いやー、ケッコンがゴールだと思ったら第二ラウンドの始まりとはなんとも大変そうですねえ。 それではここで助言をひとつ」
「助言?」
「実はですね、ケッコンカッコカリには戸籍上の関係を結ぶとかそういうアレはないんですよ。 つまり……」
「カッコガチ、ってことね」
「そう、ガチ結婚です。 今の日本は一夫多妻制ではないので……まあぶっちゃけとったもん勝ちですね」
「なるほど……感謝するわ」
「いえいえー!」
曙が部屋から出ていったのを確認し、私は裏口のほうに振り返ります。
「ほら、言った通りじゃないですか」
「……まさか本当に全員来るとは」
「これも愛のなせる技、ですかね?」
本日、半壊して修復中だった懺悔室は再始動。
私がキチンと仕事をしているか確認するため、提督も後ろで見守ってたんですけど……。
「駆逐艦と結婚って許されると思う?」
「普通にアウトです。 つまり提督はこれから鋼の意思を貫かなければならないというワケですね」
「……きっつ」
「ま、大人しく受け入れるのもまたひとつの選択肢ですけどね。 ほら、執務室に入ろうとしてますよ」
「やっべ、仕事サボってると思われる……!」
提督は慌てて走っていきます。
が、いきなり立ち止まると。
「明石、ありがとな」
「はい?」
「大本営に確認したら、別にそんな依頼出してないって言われてな。 艦娘のメンタルケアとか、色々考えてくれたんだろ?」
「……さーて、どうですかね。 ほら、はやく行かないと!」
「そうだった、間に合ってくれよ……!」
今度こそ提督がいなくなってから、私は一人言葉を虚空に投げかけます。
「先を越されるとは思ってなかったんですけどねえ。 まさか駆逐艦の中に同じような考えの子が四人もいるなんて。 いやまあ実質二人ですけど」
当然返事はありません。 この言葉を聞いてくれるはずだったあの人は、もう別の子の言葉を聞き入れてしまったから。
「ただの私のエゴを、あんなに優しく褒めてくれるあなたが好きですよ」
「ほうほう。 これはご主人様に報告案件ですな」
「えっ」
「ってことで失礼しましまー!」
「待って漣ちゃん!いつからいたの!!ねえ待って止まってもうやめてぇ!!!」
艦!
読んでくれてありがたいけど俺推敲もなんにもしてないから変な文章だったらごめんね……
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