陸軍司令、マグマ軍率いて提督になる2
中途半端な部分ですが分割しました
引き続きよろりんこくまりんこ
前回までのあらすじ
元陸軍第3紅蓮部隊司令官だった提督は、元艦娘であった深海棲艦ヲ級ことヒリュウを仲間にし、そしてかつての仲間だった飯塚椿・仙台智香・目達原楓・ウラールと再会する。
提督「市ヶ谷から話は聞いた。…あの部隊が解体になるとはな」
飯塚「あたい達もそれを知ったのは一昨日だったんだ…。提督が海軍に異動されたのを機にその話が出たんだとよ」
目達原「しかもそれを提案したのはアマテラス部隊を所有している本部所属の大将だ」
提督「あいつらか…」
仙台「権力的に逆らえず、市ヶ谷さんが水面下で異動の根回しをしていたそうなのです。バレないように1人で…」
アマテラスの名前を聞いて眉間を押さえる提督。
AMTRS(アマテラス)。マグマ軍の技術を使用し作り上げた武器娘部隊の名だ。
提督「アマテラスの武器娘を与えるから、今いるマグマ軍兵士を全て寄越せと言われて丁重にお断りしたのを根に持ってたか…」
ウラール(怒鳴って殴り飛ばしたの間違いでしょ…)
提督「とりあえず、来てくれて嬉しいよ。また、よろしく頼む」
その後4人は、案内役を任されたアルマータと共に執務室を出る。
それから数分後、執務室の扉が開かれた。
入って来たのはミーシャと明石だ。
ミーシャ「提督。対深海棲艦用の銃を試作したから演習場で実験したいのだが」
ミーシャから申請書類と銃の仕様書を受け取り、目を通す。
提督「わかった。今は天龍達が演習しているから、午後からやってくれ」
申請書類にサインし、ミーシャに返す。
そして再び執務を再会しようとした瞬間明石に呼ばれた。
明石「提督」
明石の表情を見るととても深刻な表情だった。
明石「ミーシャさんからヲ級の…ヒリュウさんの事を聞きました。…提督はこれからも深海棲艦を捕獲していくつもりですか…?」
提督「いや、全ての深海棲艦を鹵獲して仲間にする気はないよ。敵として襲って来る以上容赦せず撃滅する。例えそれが元艦娘であってもだ。そしてその中でチャンスがあれば捕獲、無力化していく方針だ」
明石の問いに迷うことなく即答する提督。
その言葉に嘘偽りも感じず、説得力があった。
明石「なぜ、そこまでハッキリと言えるのですか…?正直…答えに迷ってしまうかと…」
提督「……ちょっと昔の話になるな。座ってゆっくり話そう」
立ち上がり、来賓用のソファへ促す提督。
ミーシャ「…私は工房に戻っているぞ」
ミーシャも誘おうとした矢先、どこかそそくさと執務室から出ていってしまった。
提督「…ま、そうだよな」
軽く溜め息をつきながらコーヒーを2つ淹れ、1つを明石の前に置く。
明石「あ、ありがとうございます」
提督「さて、と」
明石と対面になる場所に座り、コーヒーを啜る。
提督「まだマグマ軍との戦争中だった頃、俺の部隊に10式戦車っていう武器娘がいたんだ。だがある場所で戦闘中にマグマ軍に鹵獲、闇墜ち状態になって俺達の部隊に襲い掛かったんだ」
明石「……」
提督「俺も初めての事態だったからさ。前線に出て説得しようと試みた……」
明石「どう…なったんですか…?」
思わず身を乗り出しそうになるのを堪える明石。
提督はコーヒーをもう一度啜り、深呼吸をして話を続けた。
提督「何度叫んでも彼女は一向に元に戻らなかった。終いには彼女が撃った砲弾が近くに着弾して、俺は身動き出来なくなっていた。……それでも希望はあると、そう思いながら彼女の名前を叫び続けた。その結果、俺は大事な部下を失った」
明石「え……?」
提督「61式戦車……その作戦で一緒に出撃していた武器娘。彼女が俺を庇って…目の前で死んだ……ケッコンを間近に控えていた娘だった。…気が付いたら俺は10式を撃ち殺していた……弾倉が空になるまで。俺は自分の甘い考えのせいで部下を2人、殺してしまったんだ」
コーヒーを一気に飲み干し、空になったカップを静かにテーブルに置く。
明石「そんな事が、あったんですね…」
提督「それ以降闇墜ちした武器娘と会敵しても基本撃破、可能なら捕獲という方針に決めたんだ。……まさかここでもそうなるとは、思わなかったけどさ」
苦笑いを浮かべる提督。明石にはそれがとても苦しそうな表情に見えた。
明石「教えてくれてありがとうございます。…私も提督の方針に異議はありません」
提督「…ありがとな」
明石「では、私も失礼しますね」
執務室を後にし、工房に戻る明石。
試作した銃の手入れをしていたミーシャが振り向く。
ミーシャ「聞いてきたか?」
明石「はい。話している時の提督…とても悲しそうでした」
ミーシャ「あの戦いでマグマ軍を指揮していたのは…私だ」
明石「え……」
ミーシャの告白に、明石は自分の頭が真っ白になるのを感じる。
そんな明石を大きな目で見ながら話を続けた。
ミーシャ「大阪での戦闘だったか……。戦力的に押され始めた頃に発案した作戦が、敵主力兵士の鹵獲、運用案だったんだ」
明石「その作戦って……」
ミーシャ「あぁ、皮肉にも戦争初期の人間側がたてた作戦と同じものだったんだ。…だが我々は仲間にするのでは無く、洗脳して強引に戦力に加えたのだ。そして、あの作戦にはもう1つ。敵側に精神的ダメージを与えるという目的もあった」
明石「そして、10式戦車さんを…」
ミーシャ「あぁ、作戦は成功。敵主力の1人を撃破、指揮官だったあいつも負傷し撤退。我々は喜んだ…だが」
明石「考えを変えた提督に…」
ミーシャ「次以降、あいつの部隊には通用しないどころか作戦に参加していた部下、鹵獲した武器娘は1人残らず殲滅されていた。そして、大阪を放棄して、京都、兵庫へ追い込まれ…挙げ句の果てには味方に謀られ退路を絶たれた私はあいつに最後の戦いを挑み、完敗した」
明石「…」
ミーシャ「正直、死を覚悟したさ。あんな戦術を使って命乞いなどする気はなかった。だが、部下だけは見逃して欲しいと、それだけは頼んだ。だが、提督ときたら…私が謀られたと知るや否や…生き残った部下を保護するどころか私まで助けたのだ……あいつの仲間を洗脳し、運用した私を」
明石「聞いたんですか…?提督に…?」
ミーシャ「もちろんさ。そしたら、確かにその事に関しては許せない。だが俺もミーシャの立場ならそうするだろう…現に俺もマグマ軍兵士を味方に引き入れている…そう考えたらヒトの事とやかく言えないな……って。なんてお人好しな人間なんだと、こんな人間に私は負けたのかと悔しさや憎たらしさを初めは感じてた。だが…一緒にいるアルマータや歩兵、あいつの仲間になったマグマ軍達の表情を見て…そして何よりあいつを傍で観察して納得してしまったんだ」
呆れたように、でも嬉しそうに笑うミーシャ。
明石「ミーシャさんは、提督の事…」
ミーシャの表情を見て思わず聞こうとするが、途中で遮られてしまう。
ミーシャ「お前の思っている通りだ。だが私には相応しくない。あの出来事がある以上、隣には居られない。それにあいつの隣にはアルマータが…歩兵が…沢山のヒトが傍にいる。私は、それを少し離れた所で見ていられればそれで良いのさ。さ、昔話は終わりだ!午後に備えて調整をするぞ」
空気を変える為にわざと大きな声を出し、銃の手入れを再会するミーシャ。
明石もそれ以上何も言わず、その作業に入った。
正午、昼食をとるために食堂に集まった天龍達は信じられないといった表情で固まっている。彼女達の目線はある人物に注目していた。
目線の先は提督と隣にいるヒリュウ。
天龍「提督…今、なんつった…?」
提督「彼女は協力者として本日から一部制限付でこの鎮守府に住むことに決定した」
理由を知っているアルマータや大淀は落ち着き、過程を知らない飯塚達も提督のやり方を知っているので納得している。
一方天龍の肩が震え、そして表情がどんどん怒りで歪められていく。
天龍「ざっけんじゃねえ!!何考えてやがる!!!こいつは深海棲艦だっ!オレ達の敵だぞっ!!!」
利根「提督よ。流石にこの処置は納得しかねるぞ」
鈴谷「捕虜扱いならまだしも、これはちょっとどうなのよ?」
利根、鈴谷も納得出来ない様子だった。
暁と響はどうすれば良いかわからずオロオロしている。
大淀「彼女の艤装も解体してあるのでもし…」
天龍「そういう問題じゃねえ!!!」
大淀の説明を遮り、刀を提督に向ける。
大淀「っ天龍さん!!」
アルマータ「貴様っ!!!」
刀を向けたと同時にアルマータを筆頭とした数人が天龍に銃を向けた。
だが、提督はアルマータ達に銃を下ろすように命じ、そのまま天龍が構えた刀の切っ先を自分の首に当てる。
提督「今は納得出来ないのは承知している…。だけど、いずれちゃんと話すよ。それでまだ納得出来ないなら…その時は容赦なく俺を斬ると良い」
天龍「っ!……わかった…今だけは信じてやるよ」
刀を納める天龍。
その後提督、ヒリュウ、アルマータの3人は間宮から食事を受け取り食堂を後にした。
天龍も午後の出撃に備えて昼食を食べ始める。
天龍「くそ…なんだって深海棲艦と一緒に…!」
イライラしながら乱暴に昼食を口に運んでいく。
そこに飯塚椿が昼食を持って隣に座った。
飯塚「隣、座るぜ」
天龍「あぁ?勝手にしろ」
飯塚を睨み付ける天龍、飯塚は笑いながら昼食を食べ始める。
飯塚「お前、中々度胸あるじゃねえか。気に入ったぜ」
天龍「…」
無視して食事を続ける天龍。さっきより食べるペースがどこか早い。
飯塚「あんたと提督のやり取り見てたら昔のあたいを思いだしちまったよ!」
少し気になったのか手を止め、隣で笑っている飯塚を見る。
飯塚「あたいも昔、マグ公が大っ嫌いでさぁ。あいつらを仲間にしてるアイツと何回もタイマン張ったんだ」
天龍「…」
飯塚「結果はあたいの完敗。攻撃の隙をついて1発でダウン…。そしてアイツは勝負がつく度に言ったんだ。今の君に彼女達の何がわかる?って…」
無言の天龍。気が付いたら顔を向けて真剣に話を聞いていた。
飯塚「最初は意味わからなくてよぉ。言われる度にんなもん知ったこっちゃねぇ!って言い返してたんだ。だけど5連敗した辺りから、やけくそでアイツらを傍で見て、話してみた。提督を負かす為にって意気込んでさ。………最初はギュイギュイうるせー虫女共だなって思ってたんだけどよぉ、あいつらと話してときどきタイマン張って…気が付いたらマグ公のダチが出来ちまった。だから」
天龍「…だから深海棲艦ともダチになれるってか?ふざけんじゃねえ、オレは御免だ」
天龍はそう言い残すと残った昼食を一気に食べ、食堂を後にした。
飯塚は去っていく天龍を見て溜め息をつく。
飯塚「あ~クソっ。もうちょい上手い言い方が出来ればなぁ…」
仙台「うふふ、前に比べれば充分器用になってますよ」
近くの席で天龍とのやり取りを見ていた仙台が優しく頬笑む。
飯塚はちょっと照れ臭く頬を掻く。
飯塚「そ、そうか…」
仙台「それに以前の貴女だったら、他人をあんな風に気にかけようとしませんから」
飯塚「…だけどよぉ。あいつに上手く伝えられてねぇよ」
仙台「今は、あれだけで充分かと。いきなり全てを教え説こうとしても駄目なんですよ」
飯塚「さすがシスター。言うことに説得力があるねぇ~。それも神の教えかい?」
仙台「さぁ、どうでしょう?」
13:15 場所は変わり演習場にて
ミーシャと明石が試作した銃の性能を確かめる為、歩兵、ウラール、大和、目達原を呼んでいた。
ミーシャ「集まってくれて感謝する。今回この銃の性能と使ってみた感想を聞きたくて集まってもらった」
明石「その銃であそこの的を撃って下さい」
ミーシャ「あの的は艦娘の艤装と同じ素材を使っている。通常兵器なら無理だが、これなら貫ける筈だ」
四人は銃を手に取り、感触を確かめる。
目達原「随分歪な形だな。形状としてはアサルトライフルに近いが…」
明石「M4をベースにマグタイトとヲ級の艤装の一部を組み込んでいます。弾薬にはマグマアモ、艦娘が使用している弾薬を混ぜ込んだ専用弾薬です」
明石の解説を聞きながら銃を構える四人。
そして各々のタイミングで発砲する。
撃ち出された弾薬は的を貫通し、穴を空ける。
明石「的に穴がっ!」
ミーシャ「弾薬に関してはクリア。だが…」
大和「くぅ!」
目達原「っつ!」
大和、目達原の2人は発砲した反動でよろけてしまっていた。
ミーシャ「人間には反動が強すぎるか…こちらは大丈夫そうだが…?」
歩兵、ウラールの2人は問題無く発砲している。
だが
歩兵「ギャイッ!(熱っ!)」
ウラール「…ギ?(銃身が溶けている?)」
連射時の熱に耐えきれず、銃身が溶け始め思わず銃を投げ棄てる。
明石「あちゃ~…実験終了します!…使ってみて如何でしたか?」
明石とミーシャの元に集まり、感想を述べていく。
目達原「正直あのサイズで反動がここまで強いのは使えんな」
大和「単発で、しかも反動によるブレを考えるともう少し大型化するのもありなんじゃないかしら」
明石「確かに携行性は高くなくても良いかも知れませんね。あと、反動に関しては改良を試みてみます」
ミーシャ「そっちでは銃身が溶けてしまったな」
歩兵「ギュギュイ!ギギギ…(我々の方では反動は然程問題ありませんでしたが、マガジン1つ空にする前にあそこまで発熱するのは…)」
ウラール「…ギュギュ?ギュイギュイ(…機関銃のような作りに変えてみては?それか使い捨てタイプに作り替えるとか)」
ミーシャ「ふむ、参考にしよう」
明石「今回のテストはここまでにします。皆さんありがとうございました!」
問題点や改善案をメモし、四人にお辞儀をする明石。ミーシャは敬礼をする。
一方警戒任務の為に第1艦隊は出撃、戦闘していた。
天龍「オラオラァ!!」
凄まじい形相で深海棲艦に突撃して沈めていく。
暁「天龍ちゃん怖いよぉ…」
鈴谷「あっちゃ~…こりゃマズイねぇ」
利根「こら天龍!旗艦であるお主が隊列を乱してどうする!?」
天龍「…ちっ!」
天龍もこれ以上は危険と悟ったのかしぶしぶ隊列を戻す。
響「マグマ軍と仲良くなった司令官なんだ。きっと何か考えがあるんだよ。きっと」
天龍「…だとしても、オレはぜってぇ認めねぇ…」
利根「お主の言い分はわかったから落ち着くのじゃ。そんな事で隊列を乱されてはこちらとしては良い迷惑じゃ」
天龍「うっ…そうだな…すまん」
利根「うむ!じゃあ改めて指揮をしてくれ!」
天龍「あぁ!艦隊前進!」
利根の言葉で冷静さを取り戻した天龍。
彼女の指揮で任務を再開する。
暁「天龍ちゃん…」
響「……」
そんな彼女を暁と響は心配していた。
そして鈴谷もそれを感じ、2人を安心させようと宥める。
鈴谷(提督……ちゃんとした理由があるんだよね?…じゃないと、私も流石に黙ってないよ……?)
その日の夜。
執務室の電話が鳴り響く。
提督(この時間に…?)
受話器をとり、耳にあてると懐かしい声が響いた。
『このあたしを置いて鎮守府に配属されるなんて良い度胸じゃない?』
提督「おま、カテリーナか!?」
カテリーナ『まさかあたしの存在を忘れてた訳じゃないでしょうね!?』
耳をつんざくような大声が受話器から鳴り響く。
提督「す、すまんすまん!そういう訳じゃないんだ!!で、どうした?お前もこっちに異動するのか?」
カテリーナ『はぁ~…』
わざとらしい大きな溜め息を吐き、呆れたように話し出す。
カテリーナ『愛達から聞いてないの?あたし、鎮守府で提督になってるのよ。あんたと同じでね』
提督「はぁ!?」
カテリーナの報告に思わず大きな声を出してしまう。
カテリーナ『うっるさいっ!』
提督「あぁぁすまない!ホントにビックリして……。確かに何人か海軍に編成されたのは聞いてたが…ホントにお前が?」
カテリーナ『何よ…私の名采配でどんどん進撃してるんだから!』
提督「へー…名采配ねぇ~…」
カテリーナ『何よぉっ!?…ってちょっと』
突如カテリーナの声が消え、また懐かしい声が聞こえてきた。
『聞こえるか、提督』
提督「近衛!」
近衛兵『何時になっても本題に入らなかったのでな。貴様の鎮守府と演習したいのだ』
提督「演習?」
近衛『そうだ。貴様のいる鎮守府を調べた結果、我々の鎮守府の近くだと判明したのだ』
カテリーナ『ちょっと返しなさい!』
受話器をふんだくる音が聞こえた後、カテリーナの自慢気な声が聞こえてきた。
カテリーナ『ま、そう言うこと。この私の艦隊であんたの艦隊をボッコボコにして私の凄さと九州での借りを返してあげるわ!!もちろん承けてくれるわよねぇ~?演習を通して部下の練度を上げるのも立派な提督の勤めだものねぇ~?』
あからさまに挑発してくるカテリーナ。
提督はいつもの事だと言わんばかりに受け流し、承諾する。
提督「わかった。引き受けよう。久し振りにお前達の顔も見たいしな」
カテリーナ『~~~~っ!!っバカ!!!』
先程の挑発的な態度が一変して動揺しているのが声を通して伝わる。
提督はその声を聞いて思わず微笑む。
提督「それで、日程は何時にする?」
カテリーナ『…そうね。3日後なんてどうかしら?』
提督「おう、わかった」
カテリーナ『明日そっちに書類がいくから』
提督「わかった」
その後一言二言言葉を交わし通話を切る。
翌朝、演習の事を天龍達に伝えた。
提督「…ということで、3日後別の鎮守府と対抗演習を行うことになった。このあと戦力を充実させる為に建造も行うつもりだ。以上」
日程確認を行い朝食を済ませる。
そして工房へ向かい建造を行い、その日の夜龍驤が着任した。
龍驤「軽空母龍驤や!よろしく頼むで~!」
提督「あぁ、よろしく。実は3日後に他の鎮守府と演習を組んでてな。それまでにはある程度まで鍛える予定だ」
龍驤「りょーかい。うちに任しときや!せや、うちの他に空母はおらんのか?」
提督「…居るにはいるんだが……ちょっと訳ありでね。実質航空戦力は君1人なんだ」
龍驤「ふーん。わかった。じゃ、明日からよろしゅうな」
翌日、天龍達が龍驤を踏まえた艦隊演習を行っている間、提督はヒリュウを工房に呼び出していた。
ヒリュウ「どうしました?」
提督「うむ、ちょっと気になる事があってね。これだ」
手渡されたのは空母用の弓と艦載機の矢。
明石「その体でも使用出来るかどうか試して欲しいんです」
提督「使えるなら何かあった時の戦力に。使えなかったら憲兵所属としてヘリ部隊に編成しようと思ってるんだ」
ヒリュウ「わかりました!」
3人は外へ出て、検証を開始する。
ヒリュウ「艦載機、全機発進!」
放たれた矢は飛行機へと無事変化し、ヒリュウ達の周りを旋回している。
提督「おーこりゃスゴい!」
ヒリュウ「どうですか提督?」
提督「問題なさそうだな。後は訓練で練度を上げていこう。…ただ」
ヒリュウ「天龍さん達ですね…?」
提督「すまない…」
ヒリュウ「いえ、仕方がないですよ」
提督「…ちゃんと説明する機会を作らなきゃな……」
明石「問題はその後ですね…。理由を知った上で戦えるかどうか」
提督「やるしかないさ…。じゃないと自分も周りの仲間も危険に晒してしまう」
明石「…提督……」
提督「それより、銃の方はどうだ?」
明石「現在一から設計してますよ!今回はヘリに備え付ける機銃タイプとスナイパーライフルの2種を開発してて、明日には試作モデルが出来ます!」
提督「本当か!これは楽しみだ」
そして彼女の宣言通り、新たに開発した銃は翌日の夜完成。
ミーシャと明石は鯖江達紅蓮隊メンバーを呼んで、演習場でテストを行っていた。
鯖江「お、良いね」
大和「前回より反動も小さくなってるわね」
目達原「精度も良い。これなら戦場でも問題無く使用できるぞ」
明石「ありがとうございます!」
スナイパーライフルを交代交代で試射し、その感触に納得する鯖江達。
ミーシャ「そっちはどうだ?」
歩兵を始めウラール、飯塚、仙台は機銃の試射を行っていた。
歩兵「ギュイギュイ!(砲身が熱くないです!)」
飯塚「威力も悪くねえな」
仙台「これで暁ちゃん達を守れますね!」
ミーシャ「それだけではないぞ。ウラールやアルマータは装備して持ち歩ける用にしてある」
ウラール「ギ?(ホントに?)」
ミーシャは機銃を床から取り外すと、ウラールの右腕に取り付ける。
ウラールは右腕軽く動かして感触を確かめた後、的に目掛け発砲する。
ミーシャ「どうだ?感触は」
ウラール「ギギュイ(素晴らしいわ)」
ウラールの表情が綻ぶのを見て、満足気な表情を浮かべるミーシャ。
明石「では、これをベースに微調整をして量産。ヘリに取り付けておきますね!」
ミーシャ「今後も改良は勿論、戦車砲の開発も予定している」
明石「テストに付き合って頂き、ありがとうございました!」
そして夜が明け、演習当日。
提督とアルマータ、そして天龍達第1艦隊は鎮守府から北の方角にあるカテリーナの鎮守府にたどり着いた。
鎮守府の門をくぐると、カテリーナと近衛兵、そして健軍サクヤが出迎えた。
提督「よ、久し振り」
カテリーナ「相変わらず間抜けな顔してるわね」
赤い服装をした単眼の少女カテリーナがこちらを睨んでいる。が、その顔はどこか嬉しそうにも見えた。
アルマータ「相変わらず閣下にそのような言い様……今度こそ死にたいようだな?」
カテリーナ「うっさいわよアルマータ。こいつと一緒になったからっていい気にならないことね!」
火花を散らさんばかりに睨み合う2人。
提督はまた始まったと言わんばかりの表情で仲裁に入る。
近衛「着いて早々すまないな。彼女、お前に会えて舞い上がってるんだ」
カテリーナ「な、ななな何言ってんのよ!そんなんじゃ無いんだから!!」
提督「はいはい。わかったよ。……近衛も久し振り」
歩兵に似た黒髪の少女、近衛兵と握手を交わす。
サクヤ「おいおい!俺の事も忘れんなよ!」
学生帽を被った淡いピンク髪の少女、健軍サクヤが提督の腰付近をポカポカ叩く。
提督「忘れちゃいないさ。サクヤも久し振り。サクヤも海軍に編成されたのか?」
サクヤ「まあな。だけど六花とは離れ離れになっちまった…」
提督「そうだったのか…でも彼女の事だ、きっと大丈夫さ。そうだ、紹介が遅れたな。うちの第1艦隊のメンバーだ」
カテリーナ達にメンバー1人1人紹介していく。
天龍達も敬礼をし、その後カテリーナ達も軽く自己紹介を済ませる。
カテリーナ「それじゃ、演習場に行くわよ。こっちのメンバーはそこで待機してるから」
カテリーナ達に着いていき演習場に到着する提督一行。
演習場の奥で6人の人影が見える。
カテリーナ「着いたわ。あそこに居るのが私の主力艦隊よ。集合!」
カテリーナの声でこちらに向かってくる人影達。
提督(マジかよ…)
カテリーナ「各員自己紹介!」
長門「長門型一番艦、長門だ」
金剛「金剛型一番艦、金剛デース!」
比叡「同じく金剛型二番艦、比叡です!」
北上「重雷装巡洋艦の北上だよー」
木曾「球磨型軽巡洋艦の木曾だ」
蒼龍「正規空母蒼龍です!」
提督「提督だ。そしてこの娘達がうちの主力艦隊。よろしく頼む」
平然を装っているが、メンバーを見て動揺する提督。
カテリーナ「言ったでしょ?あんたの艦隊をボッコボコにしてあたしの凄さと九州の借りを返すって。30分後に演習をスタートするわ。それまで、向こうの部屋で作戦会議してらっしゃい。ま、どうせあたしの勝ちだけど!」
それを知ってか知らずか余裕綽々の表情で挑発するカテリーナ。
天龍達はそれにムッと腹を立てるが時間も無いので一先ず指定された部屋に入る。
天龍「くそっ!なんだよあのガキなめやがって!!」
利根「じゃが向こうは戦艦クラスを3人も入れとる」
龍驤「それに正規空母…こりゃ制空権は取れんなぁ」
戦う前にして敗戦ムードが漂いはじめる。
鈴谷「どーすんの提督?」
鈴谷も他のメンバー同様、半ば諦めた様子で提督を見る。
提督「ふむ……ちょっと卑怯というか邪道だが、紅蓮隊流でやってみるか」
天龍達「?」
アルマータ「…あぁ!なるほど」
提督の言葉にアルマータ以外はピンと来ず、首を傾げる。
そんなメンバーに作戦説明を行った。
そして30分後
各艦隊は演習場の端で陣形をとる。
演習場は今回の対抗演習用に広く設定しており、両端に位置すると互いの姿が見えない程である。
カテリーナ所属大淀(以下大淀k)「これより対抗演習を開始します!各部隊、配置の方は以下でしょうか?」
カテリーナから審判を任された大淀kが無線で両艦隊に問いかける。
長門『こちら第1艦隊、準備完了』
天龍『第3紅蓮艦隊、OKだ』
大淀k「演習始め!」
両艦隊から配置完了の返信を承け、演習の開始を宣言する。
長門「まずは制空権を頂くとしよう」
蒼龍「了解!艦載機発艦!」
早速長門側は艦載機を放ち偵察兼制空権確保に動く。
蒼龍「見えました!相手は輪形陣、龍驤の艦載機発艦を確認!」
長門「ふむ、妥当な判断だ…ではこちらも進むとしよう」
進軍を開始する一行、長門が低速艦な為ゆっくりと進んでいく。
蒼龍「敵軽巡、駆逐艦の対空砲火、艦戦の抵抗激しく制空権拮抗!…そんな」
長門「どうした!?」
蒼龍「艦載機、艦攻艦爆全機撃墜されました!どうやら龍驤ちゃん艦戦だけ搭載してたみたい!こっちの艦戦の被害甚大、撤退させます!」
金剛「ワオッ!思い切りましたネー!」
長門「だが逆に向こうも制空権をとれないと言うことだ」
木曾「だとしたら残るは砲撃、雷撃のみ」
北上「なーんだ楽勝じゃん」
だんだん空戦があった場所に向かっていくと、そこには龍驤が1人だけポツンと立っている。彼女の周辺には艦載機の残骸。
北上「えっと…降参かな?」
木曾「罠かもしれないぞ」
龍驤は長門達がこちらに来ているのを確認するとゆっくりと後退していく。
比叡「あの先は演習範囲外になってしまいますよ?」
金剛「どういうことネー?」
皆が龍驤の行動に注目する。
その時
木曾「くっ!」
北上「ちょっとぉ!!」
比叡「っ!?」
何処からか機銃を撃たれ、木曾は小破、比叡はかすり傷程度に済んだが、北上は魚雷管に命中して爆発、轟沈判定を受けてしまう。
北上「まだ何もしてないのにー!」
長門「何処から…まさか!」
周りに漂っている艦載機の残骸に目を向けると、そこには瑞雲が数機無傷で浮いている。
長門「重巡2人の瑞雲か!」
龍驤「あちゃーバレてもうたか。利根!鈴谷!」
龍驤が叫ぶと同時に瑞雲が離水。
蒼龍「うそ、きゃぁ!」
全ての瑞雲が離水と同時に蒼龍目掛け爆撃。
蒼龍も対応出来ず中破判定を受ける。
長門「蒼龍!」
金剛「シィット!」
その一瞬だった。その一瞬全員の意識が瑞雲と蒼龍に移り、目の前にいる龍驤が対空砲を構えたのに気遣くのが遅れてしまった。
龍驤「空母でも砲を積めるん忘れてたんか?」
木曾「しまっ」
全速力で木曾に突撃し、機銃を撃つ。
機銃と言えど至近距離からの攻撃に大破判定を受ける。
比叡「っこの!」
龍驤「っ!あっちゃ~…」
木曾を大破に出来たものの、比叡の攻撃を受け轟沈判定を受けてしまう。
長門「本隊は、天龍達は何処だ!」
鈴谷「ここだよー!」
声がする方向を向くと鈴谷が水飛沫を上げながら突撃してくるのが見える。
だがよく見るとその後ろに鈴谷と水飛沫に紛れ暁、響がいた。
長門「…なるほど。鈴谷は囮、本命は後ろの2人か。金剛!」
金剛「イエース!いっくネー!」
突撃してくる鈴谷、そしてその背後にいる暁達目掛け砲撃を開始する。
鈴谷「2人共避けるよ!」
響「了解」
暁「え、ちょ…きゃぁ!」
長門達の攻撃を避けるが暁だけ対応に遅れ、被弾。轟沈判定を受ける。
長門「よし!」
相手の攻撃を防いだと確信する長門。
だが隣で大きな水柱が立った。
金剛「ホワッツ!?」
木曾「ぐぁ!」
蒼龍「いやぁ!」
金剛は大破、木曾と蒼龍は轟沈判定を受けてしまう。
長門「まさかあの突撃をする前からもう魚雷を放っていたのか…!それを悟らせない為にあの水飛沫と…作戦を誤認させる為に背後に駆逐艦を」
更に間髪入れず後ろの方角から砲撃を受ける。
振り向くと天龍、利根、そして合流した鈴谷と響が向かってくる。
天龍「やっぱ戦艦が残っちまったか!」
利根「じゃがまさかこんな戦法を思い付くとはのう。空戦で相手の航空戦力を潰す事だけに専念し散開、その後も色んなところに注意を向け不意を突くとは」
天龍「だがもうそれも通用しそうにねえ…!だったら正面からやってやらぁ!!」
長門「策が尽きて正面から来るか!まだまだだなぁ!」
互いに砲撃戦を開始。
戦艦3人相手に奮戦し、金剛を轟沈判定に持ち込むが、天龍・利根は大破判定、響・鈴谷は轟沈判定になってしまった。
大淀k「旗艦大破を確認!勝負あり!」
大淀kの声が響き渡る。
結果は、提督側の敗北だった。
天龍「くそっ…!」
長門「敢えて艦隊行動をとらずに戦うとは見事だった。艦隊行動前提に考えていたからここまで不覚をとってしまったよ」
天龍に手を差し伸べる。
天龍「…次は正面からぶつかって倒してやるよ」
長門「いつでも来い」
天龍もそれに応じ握手を交わそうとしたその時だった。
深海悽艦襲来のサイレンが鳴り響いた。
たくさんのしおりありがとうございます
また長くなりそうなので新しく書きます
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