2018-12-15 22:14:36 更新

概要

何だかんだで続いています。
相変わらずノリと勢いで書いています。


前書き

元陸軍第3紅蓮部隊司令官の提督は、元部下であり現在提督のカテリーナの艦隊と演習を行い、敗北。
その瞬間深海悽艦襲来のサイレンが鳴り響く。


提督「敵襲!?」


サイレンが鳴り響く中、提督が所持している携帯が震える。


提督「俺だ!」

大淀『提督!先程そちらの鎮守府目指して大量の深海悽艦が進軍しているのを観測しました!現在ミーシャさん主導でヘリ部隊を待機中です。この間購入したのも含め、3機全て出せます!』

提督「了解した。そのまま待機を命じてくれ!」

大淀『了解!』


電話を切り、カテリーナの元に向かう。

道中天龍達とも合流し、大量の深海悽艦が向かってくる事を伝えた。


カテリーナ「艦隊は即補給!迎撃準備!!」


カテリーナも長門達を補給に向かわせていた。

そして走ってきた提督を見つけて、こちらへ向かってくる。


提督「カテリーナ!」

カテリーナ「あんた達の艦隊も補給してきなさい!資材の事は気にしないで!!だけど」

提督「わかっている!全員補給と装備を実戦用に換装!!俺達も出るぞ!!」

カテリーナ「ふふっ。わかってるじゃない…!」


提督の指示を受け、補給を済ませる一行。

その後、簡易的なブリーフィングを受ける。


カテリーナ「恐らく敵は先日南西諸島を攻撃した仕返しをしに来たんだわ。あんた達を巻き込んで申し訳ないけど、長門達と連合艦隊を結成。これを殲滅してもらうわ」

提督「天龍達は前衛として敵戦力を減らしてほしい。はじめての連合艦隊で慣れないと思うが気を引き締めていけ!」


天龍「へっ!上等じゃねえか!」

長門「頼もしいな。よろしく頼むぞ」

天龍「おうよ!天龍、第3紅蓮隊!出るぞ!!」

長門「第1艦隊、抜錨!」


連合艦隊を組んで出撃した一行。

そんな彼女らを見送る提督とカテリーナは、そのまま海を眺めながら会話をはじめる。


カテリーナ「…まさかここでもあの戦い方をするとは思わなかったわ」

提督「あぁ、向こうでも6人編成だったろ?だからやってみたんだが…負けたよ、お前の部隊は強いな。流石だ」

カテリーナ「当たり前でしょ!誰かさんの指揮で生き抜いた女が提督をしているんだから…」

提督「…強くなったな。カテリーナ…それと、急にいなくなってすまない」

カテリーナ「…ふん、もう良いわよ…。こうやって会えたし、宣言通り勝てたし許してあげるわ!」


胸を張るカテリーナ。提督はそんな彼女の頭をそっと撫でた。


カテリーナ「…ふん。誰も見てないし、今だけは許してあげる…」


減らず口を言っているが、提督の撫でる手を受け入れる。


アルマータ「閣下、執務室にて指揮の準備整いました!」


アルマータが鎮守府の方から走ってきた。

提督は撫でるのを止め、カテリーナも帽子をかぶり直す。


アルマータ「私達の鎮守府にも繋がるようにしてあります!行きましょう!」

提督「よし、2人共行こう」

カテリーナ「命令しないでよねっ!私の鎮守府なんだから!」


執務室へ走る3人。

到着すると近衛兵、健軍、大淀kがいる。


近衛「遅いぞカテリーナ。今艦隊が交戦に入った」

カテリーナ「今入ったならギリセーフよ!相手の編成は!?」

大淀k「こちらです」


大淀kが作戦ボードを指す。


大淀k「蒼龍と龍驤が確認したところ、駆逐級20、軽巡級13、重巡級8、戦艦級4」

提督「なんと言う数だ…!」

カテリーナ「空母級がいないのが不幸中の幸いってところね…!」


その時、無線から大淀の声が聞こえてくる。


大淀『提督…提督!』

提督「俺だ!どうした!?」

大淀『こちらにも敵接近を確認!駆逐級5、軽巡級3、戦艦級1です!』

提督「ヘリ部隊を出撃!それとヒリュウも迎撃に向かわせろ!」




場所は変わり、提督の鎮守府のヘリポート。

深海悽艦接近の報を受け、各ヘリの運転席にいる歩兵、鯖江、目達原がエンジンを起動させる。

各後部席にはミーシャとウラール。仙台と飯塚。そして大和のみの編成で座っている。


大淀『提督からの出撃許可下りました!ヒリュウさんも出撃です!』


ヘリの無線から大淀の指示が入る。


ミーシャ「了解、出撃する。おいヒリュウ!貴様も出撃だそうだ!準備しろ!!」


無線を切り、明石と共に弾薬の積み込みの手伝いをしていたヒリュウに叫ぶ。


ヒリュウ「わかりました!」


ヒリュウが出撃ドッグへ向かったのを見届け、ミーシャは各員に出撃指示を出す。

3人が先に起動準備を終えていた為、すぐにヘリが離陸し、敵がいる海域へ飛んでいく。


ヒリュウ「お待たせしました!」


数分後、艦娘用の艤装を付けたヒリュウが合流。

偵察と先制攻撃をするため艦載機を放つ。


ヒリュウ「イ級、ホ級、ル級の編成ね。艦載機で先制、数を減らします!」


ヒリュウの合図と同時に前方で水柱が幾つか上がる。


ミーシャ「見えてきたな…総員射撃準備!」


敵艦隊を中心に円を画くように旋回するヘリ。

ヒリュウの攻撃でイ級2体撃沈、ホ級1体が大破している。


ミーシャ「ってぇ!」


ミーシャの合図である者は機銃の、またある者はスナイパーライフルの引き金を引く。

放たれた弾丸は深海悽艦の身体を貫通、ダメージを与えていく。


飯塚「っしゃあ!効いてるぜ!!」

大和「明石さんに感謝しないとね」

ミーシャ「…私も開発に関わったのだが…」

仙台「もちろん、感謝していますよ?」


ヒリュウ(あははは…無線で駄弁りながら確実に撃沈させていってる…)


イ級の体の穴だらけに、ホ級の頭部に一撃など確実に敵を葬る一行。


仙台「残るは戦艦級ですね」

ウラール「ギュギュギ…!(戦艦名乗るだけあってやるじゃない…!)」


ル級に一斉射撃を行うが、頑丈な艤装で防ぎ砲撃や機銃で応戦している為中々倒せずにいた。


鯖江「危なっ!」


ル級が放った砲撃が鯖江のヘリの横を掠める。


ミーシャ「気を付けろ!ヘリの装甲も強化したが軽巡級の砲撃を耐えるのがやっとだ!」


大和「どうする…?あいつ本体に当てなきゃ…!」

飯塚「あいつの顔面に一発かませりゃ良いんだけどよぉ!」


ミーシャ達の攻撃を上手く避けるル級。

ヒリュウも艦載機で攻撃するが、操縦に馴れていないせいか上手く当てる事が出来ずにいた。


ヒリュウ「……ミーシャさん、私でもその銃使えますか?」

ミーシャ「使えんこともないと思うが……まさか」

ヒリュウ「ル級に接近して至近距離で撃ちます」

ミーシャ(突撃…か)


ヒリュウの提案は確かに打開策としては有効性はあった。だが危険の方が高く下手をすればヒリュウが轟沈、最悪全滅もあり得た。


ヒリュウ「こうしてる間にも天龍さん達が…提督が危険です!………お願いです、やらせてください!」


その間にもル級の攻撃が続く。

提案を受け入れるしかなかった。


ミーシャ「しくじるなよ?」

ヒリュウ「…二航戦の名に懸けて…!」

ミーシャ「歩兵!ヒリュウの真上に来るように合わせろ!」

歩兵「ギュギュ!」


ヒリュウの動きに合わせるようにミーシャのヘリが動き出す。

ル級も何かを感ずいたのかヒリュウとミーシャを攻撃しようとする。

しかし


飯塚「おらおら突っ立ってんじゃねーぞゴルァ!!」

大和「じゃないと頭撃ち抜くわよ?」


残りのヘリがル級の左右に回り援護する。

更にヒリュウの艦載機の攻撃が加わりヒリュウ達への注意が逸れた。


ミーシャ「受けとれ!」


後部席からスナイパーライフルを落とし、ヒリュウは見事キャッチ。

ル級目掛け突撃していく。


ル級「!?」


迫ってくるヒリュウを見て、咄嗟に艤装を前に出してガードするが、その瞬間左右から艦載機の機銃を受ける。


ル級「ッギャア!」


痛みでガードを解き、苦悶の表情を浮かべる。


ヒリュウ「そこぉっ!」


ル級の喉にライフルを突き立て引き金を引いた。

弾丸は見事ル級の喉を貫通。その威力で数秒宙に浮き、着水。そのまま沈んでいった。

ヒリュウは沈んだ場所を見て、放心している。


ヒリュウ「はぁ…はぁ………やった…?」


大淀『敵艦隊全滅を確認しました!』


大淀の通信で我に帰るヒリュウ。


ヒリュウ「天龍さん達は!?」

大淀『未だ戦闘中です!援護に向かってください!!』


大淀の通信を聞いて進軍しようとするが、目の前に何かが浮かび上がって来るのを見て立ち止まる。


ヒリュウ「ミーシャさん!」

ミーシャ「…これは」


浮かんできたのは黒髪の女性、艦娘だった。


ミーシャ「ドロップ艦現象…さっき戦艦級だった者か…」

ヒリュウ「どうします…?このまま放置という訳にも…」

ミーシャ「私が保護し、鎮守府に送り届けよう。その後合流する。皆もいいか?」


ミーシャの提案に同意し、ドロップした艦娘を任せて進軍をはじめた。



一方天龍達連合艦隊は


提督『状況は!?』

龍驤「駆逐級5、軽巡級9、重巡級3、戦艦級4や!」

利根「じゃが皆最低でも小破しておる…それに比べ、向こうの戦艦級は無傷ときた…」


敵の物量はもちろん、重巡級と戦艦級の強さに苦戦を強いられていた。


天龍「くっそ、雑魚が多くて本命にいけねえ…!」

長門「数を減らすことの集中するんだ!」

金剛「だけど、あの戦艦級その隙を上手く突いてくるネー」

北上「木曾や暁ちゃん達と雷撃してもまだ居るんだもん…多すぎ…」


その時何処からかヘリのローター音が聞こえてくる。

そして同時にノイズ混じりの無線が聞こえてきた。


鯖江「聞こえてる?こちら提督鎮守府所属憲兵、鯖江静香。今から援護に入るわ」

長門「憲兵だと?」


音が聞こえてくる方向を見るとヘリが2機とヒリュウが向かってきていた。


金剛「なんで空母級を引き連れてるネー!?」

提督『その空母級は味方だ。繰り返す、彼女は味方だ』

天龍「あの野郎……」

鈴谷「まさか実戦に出すとはねぇ~…」


動揺する連合艦隊をよそに、ヒリュウは艦載機を放ち、飯塚や大和も援護射撃を行う。


木曾「おいおい…憲兵の銃撃が効いてるぞ…!?」

比叡「しかも空母級が空母の弓を使って………何なんですかぁ!?」

長門「だが、奴らも動揺して乱れているぞ…チャンスだ!」


深海悽艦内でも艦娘じゃない只の人間の銃撃が効くとは思っていなかったのか、その攻撃で轟沈していく駆逐級と軽巡級を見て陣形が乱れはじめる。


長門「これより敵重巡級、及び戦艦級に突撃する!私に続け!!」


穴が空いた陣に突撃する長門達。

残った駆逐級や軽巡はそれを阻止しようとするが、天龍達がそれを拒む。


天龍「テメーらの相手はオレ達だ!」




長門「ようやくお前達と殴り合えるな…」


敵主力と対峙する長門達。

そこに鯖江から通信が入る。


鯖江「援護するわ」

長門「いや、その必要はない」


主砲を戦艦級の1人に向ける。


長門「戦艦同士の殴り合いなら、得意なのでな」


轟音と共に長門の艤装から砲弾が放たれる。

そして砲弾は戦艦級に直撃、跡形も無く消し飛ばした。


飯塚「はは…マジかよ…あたいら束になってやっと勝てた奴を一撃かよ…」

仙台「感心するのは後です!来ますよ!」


仙台が叫ぶとほぼ同時に砲弾がヘリの装甲を掠める。

海上を見ると重巡級2体、対空射撃を行っていた。


蒼龍「やらせない!」


艦載機を放って、ヘリの護衛に入る蒼龍。

ヒリュウもそれに続く。


ヒリュウ「私も手伝うわ!」

蒼龍「え?あ、ありがとう…?」


一方木曾と北上はもう1体の重巡級の相手をしていた。

だが木曾は北上を庇って大破してしまう。


北上「木曾!」

木曾「問題ない!まだ撃てる!」


重巡級は弱っている木曾を集中的に攻撃していく。


北上「にゃーろー…流石にこの北上様も怒ったよぉ…?」


単装砲を撃ち、左右に動きながら一定の速度で接近していく。

重巡級はその動きに対応して、予測射撃を行う。

しかし


北上「よっと」


砲撃を避け今度は一気に加速。重巡級に突っ込んでいく。

重巡級は艤装を前面に向け、砲撃する。

だが北上は今度は滑り込むような動きで、重巡級の左に回り込む。


北上「ビビった?」


更に振り向いた重巡級の頭部に一撃、砲撃を与える。

単装砲で威力が低めだった為か、流血で済んだ。

血を拭い、怒りを露にしながら北上を探すと、また距離を空けた所でこちらを見ていた。


北上「さっきの演習で面白い戦法見て試してみたけど…」


艤装を構える重巡級。だが足元で何かが光ったことに気付き、視線を下げる。

そこには北上の魚雷が数㎝先まで迫っていた。


北上「相手の注意を色んなところにやって最後にズドン。いやーこりゃぁ良いねー」


魚雷で爆散する重巡級を見ながらニヒヒと笑う北上。

そこに木曾が駆け寄る。


木曾「やるじゃないか姉さん!」

北上「どうだい?これがスーパー北上さんの実力よ!」

木曾「オレも改二になったらやってみるよ!さて、蒼龍達の援護に行こう!」

北上「そうだね!いっちょやりますかー」


その後、重巡級を1体倒した蒼龍達と合流、蒼龍は中破、また鯖江のヘリも被弾し撤退していた。


蒼龍「なんでよりによって飛行甲板に被弾なのよ…!」

ヒリュウ「蒼龍下がって!」


追撃してくる重巡級に応戦するヒリュウと大和だが対空射撃で残った艦載機は全滅、ヘリも被弾してしまう。


ヒリュウ「そんなっ!」

目達原「私が操縦していながら…なんという事だ!」


重巡級は煙を上げ、不安定な飛行をするヘリに照準を定める。


北上「させないっての!」


残っていた魚雷全てを発射するが、命中したのはそのうちの2,3本で撃沈には至らなかった。

攻撃を食らった重巡級は目標を北上に変え、砲撃する。


北上「やば…ぐぅっ!」


まともに直撃はしなかったが中破してしまう。


ヒリュウ(どうしよう…艦載機がなきゃ何も…!)


その時、ふと隣にいる蒼龍を見た。

その矢筒にはまだ矢が、艦載機があった。


ヒリュウ「蒼龍、艦載機を貸して」

蒼龍「はぁ!?」

ヒリュウ「私が貴女の代わりに江草隊を出すわ」

蒼龍「…ふざけないで!!」


ヒリュウの突然の提案に激昂する蒼龍。


蒼龍「江草隊は私の大事な艦載機よっ!それをあんたに…深海悽艦になんか死んでも貸すもんですか!!!」

ヒリュウ「…蒼龍…!」


蒼龍が怒りを露にして拒絶する。

彼女の想像以上に強い否定に言葉を失ってしまう。


大和「ヒリュウ避けなさい!」

ヒリュウ「っ!」


隙を突かれ砲撃を喰らい、ヒリュウも大破。

艦載機の発着が不能になってしまった。

北上と木曾の砲撃、上空から大和の狙撃で応戦するが、威力が足らずあと一歩の所で倒せずにいる。

更に最悪なことに、ヘリの燃料漏れが発覚。

撤退せざるを得なくなってしまった。


目達原「くそっ…情けない…!」


北上「…これってピンチじゃない?」


航空援護が無くなり、残る対抗手段は単装砲のみ。

木曾と北上の頬に冷や汗が伝っている。

その時だった。


ミーシャ「すまない。待たせたな」

ヒリュウ「…ミーシャさん…!」


ミーシャとウラールが乗っているヘリが駆け付けた。


北上「あー、そこのマグマ憲兵さん?」

ミーシャ「ぬ?私か?」

北上「私らの火力じゃこいつを倒しきれないんだけど…なーんか手はない?」

ミーシャ「ほう…本当に良いタイミングだったな」


北上の質問に思わずにやけるミーシャ。


ミーシャ「早速出番だ。ウラール」

ウラール「ギギ…」


後部席から身を乗り出して構えたのは、戦車砲だった。


ミーシャ「明石が急ピッチで組み立てた砲だ。外すなよ?」

ウラール「ギュギュイ?(私を誰だと思ってるのかしら?)」


戦車砲を見て身の危険を感じた重巡級が主砲を構える。

だが北上と木曾が単装砲で妨害する。


北上「へいへーい」

木曾「よそ見するんじゃないぞ!」


2人の妨害で意識がヘリから逸れる。

そして狙いを定めたウラールは冷たい目で重巡級を見下ろしていた。


ウラール「ギーギャイ…ギュイ…(見下して撃つというのも良いわね…クセになりそう…)」


戦車砲を撃つ。

ウラールが放った砲弾が見事重巡級に命中、海中に引き摺られるように沈んでいった。


ウラール「ギャギイッ!(あつつつ!)」


不完全な戦車砲だったせいか、発射時の放熱が上手くいかず、砲身が熱しウラールの腕を焼きはじめる。


ミーシャ「ふむ、やはり放熱面とそれに伴う構造の改良が問題か…」


砲身の熱に耐えられず、投げ捨てるように外す。


その頃長門、金剛、比叡は戦艦級1体を撃沈。残り2体と対峙していた。

だが、比叡は中破。2人も小破している。


長門「2人は向こうを。私はあれをやる」

金剛「OKデース!」

比叡「気合、入れて、行きます!」


二手に別れ、2体の戦艦級を分断するように動く。


金剛「比叡、いっくヨー!?」

比叡「はい!お姉様!!」


金剛、比叡は副砲で牽制しながら高速で接近。

戦艦級も応戦するが2人の速さに追い付いていなかった。


金剛「ファイヤー!」

戦艦「ッ!」


金剛が放つ砲弾を間一髪で後ろに避ける。

先程まで戦艦級がいた場所に大きな水柱が立つ。

だがその水柱を突き破るように比叡が突撃、戦艦級の至近距離で主砲を放った。


比叡「ってぇー!」


咄嗟に艤装でガードし致命傷を避けたが、衝撃で宙を待ってしまう。


比叡「お姉様今です!」

金剛「バーニング…」


宙に浮いている戦艦級に狙いを定め、そして


金剛「ラァブッ!!」


砲撃。

宙に浮き、更に比叡の攻撃で艤装を損傷してしまった戦艦級に防ぐ術は無く直撃。

炎の塊となって着水、そして沈んでいった。


一方長門は戦艦級と文字通り殴り合いをしていた。…訂正、一方的に殴っていた。



長門「おいおい、艤装が無きゃ戦えないのか?」


戦艦級は主砲を放つ為、一歩後ろに下がるとその瞬間長門が一歩踏み出し、その勢いで殴り付ける。


長門「ははっ!惨めだなぁ!!」


更に続けて殴り飛ばす長門だが、自分が歪な笑顔をしている事に気が付き、表情を戻す。


長門「さて、流石に遊んでいられんのでな」


殴られた勢いで転倒している戦艦級に主砲を向け、撃つ。


長門「カテリーナの鎮守府に攻めた事をあの世で後悔するんだな」


戦艦級だった僅かな残骸にそう言い捨てると、状況を確認する。


長門(残るは天龍が相手をしている軽巡級のみか)



天龍「おらっ!さっきからちょこまか避けやがって!!」


イライラしながら砲撃を繰り返す天龍だが軽巡級はそれを避け、間合いを空けていた。

そして妙な事に、天龍にだけ攻撃をしていなかった。


利根「何なのだあの軽巡級は…?吾輩や龍驤を大破にしておきながら、何故天龍に攻撃しない?」


一方的に攻撃する天龍とそれを避ける軽巡級。

その様子をヒリュウが遠くで見ていた。


ヒリュウ「…あのホ級…何か変…」


ホ級の行動に異変を感じはじめたその時、風向きが変わり、天龍の声が聞こえてきた。


天龍「埒が明かねえ…だったら!」


刀を構え、ホ級目掛け突撃する天龍。

その時、水飛沫の音に混じって何かが聞こえてきた。


テ……ン……


ヒリュウ(え…?)


明らかに異質な小さな音。

天龍とホ級の場所に集中して耳を傾ける。


ヒリュウ(!!!????)


そして知ってしまった。ヒリュウだけが、それに気付いてしまった。


ヒリュウ「だめえええええええええ!!!!!」


天龍を止めようと走り出す。

だが天龍はそれに気付き、ヒリュウの足元を砲撃する。


ヒリュウ「っ!!」

天龍「邪魔すんじゃねえ!沈めるぞ!!」


さっきまで攻撃が当たらなかった苛立ちと、ヒリュウに邪魔されそうになった苛立ちで完全に頭に血が昇ってしまう。


ヒリュウ「ダメっ!天龍さん!!」

天龍「くたばれええええええええええええええ!!!!」


天龍の叫びと共に刀が、ホ級の頭部に深々と突き刺さった。


ヒリュウ「っ!!!」

天龍「はぁ、はぁ、ざまあみ…?」


勝利を確信して、冷静さを取り戻しはじめた天龍。

そして、ホ級から発せられているそれを…彼女も聞いた。


『テン……リュ………ン』


天龍「え…?」


エコーが掛かったその声を聞いて、頭が真っ白になっていく。

そして頭部に付いている艤装が割れ、ホ級が……ホ級の素顔が露になった。


天龍「龍……田…?」

『テン……リュウ……チャ…ン……』


真っ白な腕を伸ばし、天龍の頬を撫でようとしたそれは、ゆっくりと沈んでいった。

頭部に突き刺した刀を残して。


大淀k『深海悽艦全滅を確認!やりましたねっ!!』


無線から大淀kの声が響いてくる。

しかしそれを見た艦娘全員は、ただ茫然と立ち尽くしていた。




翌朝、提督鎮守府。

清々しい朝に反して食堂内には、重い空気が流れていた。


提督「おはよう。天龍は…?」

利根「部屋から出て来ぬのじゃ…」

提督「やはりか……」


昨日の事を思い出す提督。

あの後、全てを話した。


時間を巻き戻し、前日戦闘後。

帰港した天龍は提督に刀を向けていた。

どうしようもない怒りと哀しみが混ざったような目で、こちらを睨む。

また鈴谷、利根も天龍程ではないがこちらを睨み、暁と響は不安そうに見つめている。

その周りにはカテリーナをはじめ長門やアルマータ、ヒリュウ達がいる。


天龍「提督……深海悽艦って何なんだよ……?」

提督「……」

天龍「なんで…龍田が……深海悽艦になってんだよぉおおおおおおおお!!!」


日が傾き、紅く染まる空に天龍の叫びが響きわたる。


提督「…そうだな……知る限りの事を、話すよ」


ミーシャと明石がヲ級の艤装を解剖して判明した『艤装が寄生生物』の類いだということ。

艤装が艦娘に何らかの方法で寄生することによって人型深海悽艦になるということ。

そしてヲ級として捕獲した彼女は元艦娘、正規空母飛龍だということ。


その場にいる全員にしっかりと説明していく提督。

天龍をはじめ、皆信じられないといった表情になっていく。


天龍「なんだよ……それ…なんで分かった時点で言ってくれなかったんだよっ!!言ってくれたら」

提督「言っても信じたか……!?それに分かったとしてその後の戦闘で、その砲を!刀を!奴等に向けられたか!?お前達の姉、妹かもしれない人型深海悽艦をっ!お前は知ってて沈められるかっ!!??」

天龍「っ!」


提督の叫びに反論出来ず、俯く天龍。

悔しそうに歯を食いしばり、涙をながしている。


鈴谷「…熊野…」

利根「……筑摩」

北上「大井っちや球磨姉かもしれないやつを……」

木曾「沈める…」

暁「うっ……いや……いやぁっ!」


鈴谷や利根をはじめ何人かの艦娘も同様の反応を見せる。


金剛「そ、そんなのウソに決まってるデース……!」

ヒリュウ「いいえ、金剛さん…。残念だけど…私が、深海悽艦になってしまった私がここにいる事が…何よりの証拠です……」

金剛「……」



気丈に振る舞おうとした金剛もヒリュウの言葉に砕け、へたりこんでしまう。


蒼龍「そんな…飛龍が……!」

ヒリュウ「ごめん、蒼龍…」

蒼龍「いや……いやっ!!」


その場から逃げるように去っていく蒼龍。

ヒリュウはそんな彼女を黙って見ている事しか出来なかった。


その後、葬式のような空気で事後処理を行い提督鎮守府へ帰投。

録に日程確認も出来ないまま夜が明け、今に到る。


現在、鎮守府食堂にて。


提督「艦隊の皆…辛いと思うが、答えてくれ。これからも深海悽艦と戦う覚悟があるか?」


静かに、ハッキリと問いかける。

問いかけてから数秒で手が挙がった。


提督「龍驤…」

龍驤「うちは戦うで。まぁ、姉妹艦がいないってのもあるけど、そもそも深海悽艦と戦うのがうちら艦娘の使命でもあるわけやし」

提督「ありがとう…」


また手が挙がる。


提督「鈴谷…?」


震えた手を挙げ、少し怯えた様子の鈴谷。


鈴谷「ゴメン…提督……。今は、戦う覚悟が無いや……ちょっち、考えさせて……」

提督「構わないさ。覚悟が出来ないのも分かるし、覚悟が無い娘を無理矢理戦場に出す気も無いよ」


申し訳なさそうに話す鈴谷に優しく語りかける。


暁「司令官……」

提督「ん?」

暁「暁も…雷と電の事を考えちゃうと…」

提督「分かった」


今にも泣きそうな暁を撫でる。


響「私は、戦うよ。司令官」

提督「響…」

響「怖くないって言ったら嘘だけど…。これ以上誰かが傷付くのは見たくない」

利根「そうじゃな…。吾輩も覚悟を決めたぞ、提督よ」


覚悟を決めた強い眼差しでこちらを見る響と、彼女の決意に感化され、覚悟を決めた利根。


提督「ありがとう、2人共」


更にヒリュウが手を挙げた。


ヒリュウ「私も艦隊に入れてください」

提督「俺は構わんが、どうだ?皆?」


昨日の件もあり、3人の反応を伺う。


龍驤「うちはええで!」

響「もう敵では無いんだ。構わないさ」

利根「戦力は多い方が良いからな。頼むぞヒリュウ」

ヒリュウ「…はい!」


提督はその様子を見て、どこかホッとしていた。


提督「……よし。この後建造もして、昨日ミーシャ達が保護した艦娘がいるから彼女を加えて、利根を旗艦とした艦隊で運営していく予定だ」

ヒリュウ「そういえばその保護した艦娘は?」

提督「まだ目覚めていないから、紹介は後になるな。あと暁と鈴谷は鎮守府内の業務を行ってもらう。いいな?」

暁「うん」

鈴谷「それくらいはね?」


そして今日の日程を改めて伝え、解散。

提督は執務室へ戻り、電話をかけた。


提督「俺だ、カテリーナ」

カテリーナ『おはよう、昨日は散々だったわね…』


電話の相手はカテリーナ。

昨日の件もあり、いつもの高飛車な口調ではなく、真剣な様子が声から感じられた。


提督「すまなかった……君達にもあの話を聞かせてしまって…」

カテリーナ『そうね……でも、責める気にはなれないわ』


ハァ…と受話器からカテリーナの溜め息が聞こえる。


提督「皆の様子は?」

カテリーナ『長門と蒼龍が参っちゃってるわ。今金剛が必死に皆を引っ張ろうとしてる』

提督「…すまない」

カテリーナ『…謝らないでよ……』

提督「すまない…」

カテリーナ『だから謝らないで…!2人は私が何とかするし、こっちでも奴等についてデータを集めて浄化剤が出来ないか研究してみるわ。だから……あんたもそんな情けない声出さないでよ…』

提督「……あぁ、ありがとう…!」

カテリーナ『よろしい。それじゃ、また何かあったら連絡するわ』

提督「わかった。こっちでも研究を続けるよ」

カテリーナ『海域の解放も忘れるんじゃないわよ?て・い・と・く?』

提督「そっちもな?カテリーナて・い・と・く?じゃあな」

カテリーナ『それじゃ!』


提督、カテリーナ双方いつもの調子に戻ったところで電話を切った。


提督(まさか、あいつに元気付けられるなんてな)


先程のやりとりを思い出し、少しだけ目が潤む。

その時、扉がノックされ鈴谷が入ってきた。


鈴谷「保護した娘、目が覚めたから連れてきたよ」

提督「ありがとう。入ってくれ」


「失礼します」


提督「ここの鎮守府を任されている提督だ。よろしく頼む」


提督の挨拶に対し、彼女は礼儀正しくお辞儀をしてから自己紹介をはじめた。


扶桑「扶桑型戦艦、姉の扶桑です。よろしくお願いいたします」


姉、という単語にピクリと眉を動かす提督。


提督「扶桑、姉ということは妹が?」

扶桑「ええ、山城という妹が。えっと…なにか?」

提督「……聞いてくれ」


扶桑に深海悽艦について一通り説明していく。


扶桑「そんなっ…!」

鈴谷(まぁ、そんな反応になっちゃうよね……)


提督の話に驚く扶桑。

そして今朝の問いを、彼女にもぶつける。


提督「扶桑……この事実を聞いた上でも、戦えるかい?」

扶桑「……」


静かに深呼吸する扶桑。そして


扶桑「はい。例え出会った敵が山城であったとしても、戦います」

鈴谷(……)

提督「…ありがとう」


しっかりと提督の目を見て、ハッキリと答えた。

提督も彼女の覚悟を感じ、礼を言う。

一方鈴谷は、それを見て少し表情が曇っている。


提督「じゃあ鈴谷、彼女の案内役頼めるかな?」

鈴谷「え…?あぁ任せて!扶桑さん、行こ?」


ハッとなり、元の表情に戻る鈴谷。

そして鈴谷と扶桑は提督に挨拶した後、執務室を後にする。


鈴谷「ねえ」

扶桑「はい?」


廊下を歩きながら声を掛ける。だが顔は廊下の先に向けたままだ。


鈴谷「なんであんなに即決出来たの?」


鈴谷の口調は変わらないが、どこかトゲがあった。

扶桑はそれを感じ、思わず黙ってしまう。


扶桑「…」

鈴谷「答えてよ…?それとも口任せだった感じ?」


段々言葉に怒りが篭っていく。

そして終には立ち止まる2人。


鈴谷「それとも実感が無いの?そりゃそーよね?扶桑さん、実戦経験まだないもんね?…ねえ…黙ってないで答えてよ?」

扶桑「私は、深海悽艦になってしまった艦娘の不幸を無くしたい。そう思ったから決意したのよ」


怒りを隠さない鈴谷に静かに言い放つ。


鈴谷「…沈めて楽にしてあげるって事…?」

扶桑「寄生されて意思を、自由を奪われて苦しんでいるなら…そうするしか無いでしょう?そして、これ以上犠牲を増やさない為に、その娘の無念を…不幸を背負っていく」

鈴谷「不幸を…背負う…」


扶桑の言葉に怒りが消えていく。

だが代わりに、虚しさや哀しさが鈴谷の表情に表れていく。


扶桑「助けられるかもなんて、甘い事は言ってられないのよ…」

鈴谷「でも、でも…」

扶桑「そこで躊躇ったら…姉妹艦を更に苦しめる事になる。私は、そう思うわ…」


その言葉に、鈴谷は反論出来なかった。

ただ俯いて、受け止めるしか出来なかった。


後書き

いつもしおり、ありがとうございます。
りくじ早く新しい場所行けるようになんねーかなー…


このSSへの評価

1件評価されています


SS好きの名無しさんから
2018-12-03 13:58:05

このSSへの応援

1件応援されています


SS好きの名無しさんから
2018-12-03 13:58:07

このSSへのコメント


この作品はSS投稿速報ユーザーからのみコメントできます
ログイン・ユーザ登録

このSSへのオススメ


この作品はSS投稿速報ユーザーからのみオススメできます
ログイン・ユーザ登録