2018-11-29 08:06:21 更新

前書き

久しぶりの駄作。そろそろいい案が無くなってきた。


「うぅ……寒い」

朝。寒さに起きて窓の外を見ると、あたり1面が銀世界に。

「そぉいっ!」

「ふ、吹雪ちゃんが覚醒したにゃしぃ!」

「強すぎるっぽい!」

駆逐艦たちは、もう外で雪合戦を始めている。

「吹雪だけじゃない……かも……」

どうやら、吹雪型は活性化しているようだ。

「提督、起きたかしら?」

部屋の外から声がかかる。

「ああ、起きてるよ。入っていいぞ」

ゆっくりと扉が開き、矢矧が入ってくる。

「おはよう、提督。今日は一段と冷え込むわね」

「そうだな。まあ、外はあんな感じだし……仕方ないな」

伸びをしながら返事を返す。

「大和は……ほら、あそこ」

矢矧が指差した先には、駆逐艦に混ざって雪合戦をする大和の姿が。

「……楽しそうだな」

「なら、提督も混ぜてもらえばいいんじゃない?」

「寒いしヤダ」

「わかり切ってるわよ、そんなこと。時間まで、ここでゆっくりしましょ?」

矢矧はどこか嬉しそうに微笑む。

「ああ。まだ時間はあるしな」

矢矧は部屋の隅の椅子を持ってきて、布団の横に座る。

「……提督、今日と明日は非番なのよね?」

「そうだ、久しぶりの休日だぞ」

「……」

チラチラとこちらを見てくる矢矧。何かを期待しているような雰囲気だ。

「……矢矧、その」

「な、何かしら?」

寒いが、仕方ない。

「今日、一緒に出かけないか?」

それを聞くと、矢矧は急に俺の手を取り。

「いいわよ、行ってあげる!」

心底嬉しそうに、そう告げるのであった。


・・・


『号外!司令官と軽巡Y、デートか!?』

……。

「これって、つい10分前の話よね……しかもデートって……」

「ああ、そのはずなんだが……それにデートって……」

そうあってほしいとは思うが、実際にはデートですらない。俺は矢矧のことが好きだが、矢矧が俺のことをどう思っているのかが分からない。なので、今日はただ出かけるだけ、という扱いになる。

「司令官、おはようございます!青葉ですぅ!」

……元凶が来た。

「青葉、これはどういうことだ?」

「それですか?さっき書き上げたばかりの、ホヤホヤ新聞です!」

「違う、そうじゃない。こんな記事、身に覚えがないぞ」

「司令官の部屋の前を通ったら、偶然中から聴こえてきたんです!」

まさかの音漏れ。

「で?結局、デートなんですか?」

「「デートじゃない!」」

「……司令官の本音は?」

青葉が耳元で囁く。

「……デートだったらいいなとは思う」

こちらも囁き返す。矢矧にも同じことを聞いているのだろう、お互いが耳元で囁きあっている。

「……なるほどなるほど、ご協力ありがとうございました!この記事は訂正しておきますので、ご安心ください!それでは失礼します!」

そう言って新聞を引っ剥がし、青葉はスキップで去っていった。


・・・


「そうだ、矢矧。どこか行きたい場所はあるか?」

「そうね……せっかくの雪なんだし、雪が綺麗な場所がいいわ」

雪が綺麗……そうだ。

「京都に行こう」


・・・


京都。数多の観光地が存在するこの地にて、俺達が最初に向かったのは……。

「……あ、横須賀の司令はんや!」

「黒潮か。久しぶりだな」

舞鶴鎮守府である。ここの鎮守府は、珍しく女性の提督が指揮を執っている。

「ウチんとこの司令はんと、久しぶりに会いたいゆーとったとこやさかいにわざわざ寄ってくれてほんま嬉しいわ!」

「そうか、ありがとな」

「で、そっちの娘は?彼女?」

黒潮が矢矧を指さして言う。

「ち、違うぞ。矢矧は俺の秘書艦だ」

「矢矧よ、よろしくね」

しばらくの間、鎮守府の入口付近で談笑していると。

「黒潮ー、そろそろ時かn……マスター!?」

舞鶴鎮守府の提督が黒潮を呼びに来た。

「マスターってなんだ、提督だ提督。……久しぶりだな」

「ひ、久しぶりですね!来るなら言ってくださいよー!」

あせあせと髪を手櫛で整えながら挨拶される。

「お前なあ……誰も来ないからって、身だしなみは整えとけよ?」

「ご、ごめんなさい……えへへ」

「ねえ、提督。この方とは知り合いなの?」

矢矧が女提督をマジマジと眺めながら聞いてくる。

「コイツとは軍学校で同期だった沖田さん(仮名)だ。腐れ縁ってやつだな」

「えっ、ひどーい!もうちょいいい感じに紹介してくれてもいいじゃないですかー!」

すると、矢矧が複雑なそうな表情で。

「……仲がいいのね」

「……まあ、そうなるのか?」

「ところで司令はん、なんで急にこないなとこまで来たん?しかもめっちゃ寒いのに」

「ん、そういえば言ってなかったな。観光だよ。ついでに顔を見せにきただけだ」

「……なーんだ、私に会いに来たのかと思ったじゃないですか」

つまらなさそうに沖田(仮名)が呟く。

「……ねえ、黒潮」

「アカンで、ついてったら」

「ですよねー……」

絶望に打ちひしがれてる。

「ま、そーゆーことやから、お二人さんで仲良くデートしてき」

「なっ!?」

こちらの反応を見て、黒潮がニヤリと笑う。

「なんなら、ウチがオススメのデートスポット教えたろか?」

「い、いらん!」

「その割には気になってるみたいやけどなぁ……矢矧さんの方は」

「っ!?べ、別に気になってなんかないわよ!」

「ほうほう……」


・・・


「青葉はん、2人は出発したで。こっちは引き続き任務こなすから、報酬はよろしゅうな」

『はい!さすがに青葉がそっちに行くのは難しいので、そのまま尾行をお願いします!』


・・・


1日目。

「ここが鹿苑寺金閣だな」

「派手ね……」

雪の名所は2日目に回し、今日は有名所を見て回ることに。

「慈照寺銀閣だ、雪の白がいい味出してるな」

「日本文化の礎って感じがするわ」

しかし、雪の名所と言っても過言ではないレベルの建造物が大半だった。

「ここは清水寺だな。初めて来たぞ」

「秋に来たことがあるけど、印象が全然違うわね。どっちも綺麗よ」

その後も、様々なところを移動しながら。

「伏見稲荷大社だ、道中キツいだろうけど頑張れ」

「艦娘の底力、見せてあげる。提督こそ途中でバテないようにね」

1日目の観光は終了した。

「さて、泊まる場所を探さないといけないんだが……なにか要望はあるか?」

「私は別にどこでもいいわよ?」

「そうか。じゃ、その辺のホテルで……」


・・・


「司令はん達がホテルに移動したな。でも、あのホテルには手回ししといたで」

『ほうほう……どんな?』

「それはな……」


・・・


「すいません、部屋空いてますか?」

「はい。ですが、軍の重役の方々がお泊まりになられていて、空きが一部屋しかございませんが……よろしいでしょうか?」

一部屋……!?仕方ない、別のホテルを……。

「か、構わないわ」

矢矧!?


・・・


「舞鶴鎮守府の皆を泊まらせとんねん。ちょうど空きが一部屋になるようにな。他のホテルに逃げても無駄や、この辺のホテルはぜーんぶ買収済みや」

『GJです、黒潮さん!』


・・・


「……」

うわあ、気まずい。想い人とひとつ屋根の下で寝泊まりするとか、正気の沙汰じゃない。

「……」

何か、何か話さないと……。

「……矢矧、今日は楽しかったか?」

とりあえず、無難な質問。

「ええ、とっても。わざわざ連れてきてくれて、ありがとね」

優しく微笑みかけてくる矢矧に、心臓の鼓動が早まる。

「そ、そうか。なら良かった」

「……ねえ、提督。軍の重役って誰なのかしら」

……そういえば、そんな話はまったく聞いていない。

「……何か裏がある気がするな」


・・・


「ヤバいな、バレそうや」

『仕方ないですねー……わたしがサポートしますよ』

「堪忍や」


・・・


「……ん?」

着信音に携帯を開き、電話に出る。

「もしもし、こちら横須賀鎮守府の提督だ」

『司令官、楽しんでますかー?』

……青葉か。

「……何の用だ?」

『今司令官がいるホテルって、〇〇ホテルですよね?そこ、舞鶴鎮守府の方々が泊まってるらしいです!』

「……なに?」

『懸賞、当たったみたいですよ』

……なるほど。

「用事は済んだか?」

『はい!司令官、今夜はお楽しみですか?』

「なっ……!?」

『あはは、冗談ですよ。おやすみなさい、いい夜を』

そう言って電話を切られる。

「……」

もう恥ずかしくて矢矧の顔が見られない。


・・・


『黒潮さん、とりあえず誰の手回しかは分からないようにしておきました!』

「おおきに」


・・・


「……もう朝か」

結局、悶々として眠れないまま朝を迎えてしまった。

「すぅ……すぅ……」

横では矢矧が気持ち良さそうに寝ている。

「……」

矢矧を見ていると、邪な気持ちが湧き出してくる。こんなことではいけないと思い、朝の支度を始める。

「……しかし、今朝も冷えるな」

そう思い、カーテンを開けて窓の外を見ると。

「……は?」

そこでは凄まじい吹雪が吹き荒れていた。


・・・


「……これは、酷いわね」

『ですねー、電車まで止まっちゃいましたし。復旧までは吹雪が止んでから数日かかるらしいです。司令官も矢矧さんも、しばらく京都で過ごしてもらうしかありませんね……』

「……どうしよう、矢矧」

「……何とかするしかないわよね」

『こちらからも出来るだけ早く迎えに行きますから、それまで何とか凌いでくださいね』

「……分かった」

電話を切り、改めて外を見る。やはり、相も変わらず猛吹雪だった。

「……金、保つかな」

「……」

1番の問題は、泊まる場所や食事代だ。

「……あ、提督。それなら心配要らないわ」

矢矧がそんなことを言い出す。

「なんだと?」

「舞鶴鎮守府に泊めてもらえばいいのよ。いいでしょ?」

「……それだ!」


・・・


「ええ、ええ、もちろんいいですとも!なんならずっとここに居てくれても構いませんよ!」

「い、いや……それは遠慮しておく」

「がーん……」

今どき口で『がーん……』って言う奴いるのか。

「まあ、しばらくはここに居させてもらうよ。執務とかは手伝うから」

「いいんですか!?やったー!」


・・・


「……来よった」

『え?』

「青葉はん、舞鶴鎮守府に司令はん達が来よったで」

『あちゃー、そっちに行っちゃいましたか』

「司令はんモテるし、舞鶴鎮守府に混乱が訪れるやろな」

『そうですね……笑い事じゃありません』

「まあ、途中経過はおいおい報告するわ」

『はい、お願いします!』


・・・


「……」

「……」

無言の時間が過ぎていく。

「……」

「……」

さすがに堪えられなくなり、質問してみる。

「吹雪。なんで、お前がここにいるんだ?」

「いやあ、それが私にもさっぱり……」

ケラケラ笑いながら答える吹雪。

「帰りなさい」

「帰れません」

「……はぁ」

白雪に聞いてみたところ、『吹雪の気配が……』と、フラフラ鎮守府から出ていったようだ。おおかた、大雪に惹かれてここに辿り着いたのだろう。

「ここに居ると元気になるんです!こんな吹雪、『吹雪』としては体験しなきゃ損じゃないですか!」

知らんがな。

「沖田(仮名)が許してくれたからいいけど、もしここの配属がノッブだったら……いや、ノッブも許してくれるか」

ノッブ。沖田(仮名)とはライバルだったらしい、やはり同期のメンバーだ。

「まあまあ、過ぎたことはいいじゃないですか。物事は結果が肝心なんですよ」

「それは当事者の言っていい台詞じゃないんだが」


・・・


「さて、執務を手伝わせてもらおう」

「ホントに手伝ってくれるんですね!」

「そりゃ、タダで泊まらせてもらう訳には行かないからな」

「じゃあ、まずこのくらいお願いします!」

そう言って渡されたのは、普段俺がこなす量のおおよそ3分の1。

「こんだけでいいのか?」

「こんだけも何も、残りの仕事半分渡したんですけど……」

「いや少なすぎるだろ!」

「だってだって!武蔵さんが半分以上持ってっちゃうんですもん!私にはそれでも多いくらいなんです!」

いや武蔵甘やかしすぎだろ。


・・・


「おっ、矢矧?」

「……阿賀野姉か。久しぶり」

「テンション低いなー、もっとアゲてこーよ!きらり〜ん☆」

「……」

「……もう、どうしたのさ。そんな『恋人が寝取られました』みたいな重い顔しちゃってさ」

「寝取られ……!?」

「ほらほら、お姉ちゃんに話してみなさい!」

「……そうね、じゃあ……」


・・・


「ふむ、せっかくのお休みだから提督と2人きりでお出かけ、つまりデートをしてたらアクシデントが発生。流れでここに来たら提督がうちの提督にとられたと」

「要約お疲れ様、つまりはそういうことよ」

「……乗り込んだら?」

「は?」

「執務なんて少ないんだから、ちょっとくらい遅れても大丈夫!提督なら絶対構ってくれるから、さ!」

「……なんで提督のことが分かるの?」

「え……あっ、そっか。矢矧は知らないね」

「……何を?」

「私ね、矢矧が横須賀に来るまでは横須賀に居たんだよね」

「そうなの?」

「ええ。提督が、『矢矧が阿賀野の存在を知ったら寂しがるだろうから』って黙っててあげたんだって」

「……バカね、私はそこまで弱くないわよ」

「まあまあ。だから、矢矧が寂しがるようなことは絶対にしない筈!だからさ、ほらほら、突撃突撃!」


・・・


「……ちょいと近くないか?」

「気のせいじゃないですか?」

……。

「やっぱり近いよな」

「幻覚でしょうかね?」

……。

「あっ、無言で離れないでくださいよ!」

「狭いと執務に集中出来ない」

「もー、ちょっとくらいいいじゃないですかー!いけずー!」

「……」

「あっごめんなさいそんな冷たい目で見るのはやめてください」

俺は自分の分の執務を終わらせたのに、沖田(仮名)はまだ半分も終わっていない。先程からちょくちょく執務を中断しては、今のようなことをしてくる。集中切れるの早すぎだろ。……ん?何か物音が……。

「そこにいるのは誰だ?」

「え、誰かいるんですか?」

すると、勢いよく扉が開き……。

「提督さん!これ置いてくねー!」

阿賀野に押されて、矢矧が入ってきた。

「ちょ、ちょっと阿賀野姉!」

阿賀野は矢矧を押し込むと、すたこらと逃げていった。

「……」

「……」

「……」

……何これ。

「……どうした?」

「……ちょ、ちょっと迷っちゃって」

……。

「よし、俺が案内しよう。大体どこに何があるかは分かる」

「え!?ちょ、執務もちゃんとしてくださいよ!」

「……終わってるぞ、とっくに」

「え……?」

「よし、行くぞ矢矧」

「え、ええ」

「嘘……早すぎ……こふっ」


・・・


「……迷った、って言うのは口からの出任せだな?」

「……ええ」

「……ま、深くは追及しないさ」

「……ありがとう」

見知らぬ所で1人だと寂しいだろうしな。普段見ない顔だらけだと不安になるし。

「とりあえず、軽く1周するか」

「ええ」


・・・


「し、司令官!?お久しぶりです!この朝潮、再び会えるのを楽しみにしておりました!」

「朝潮か。元気にしてたか?」

「はいっ!」

「あぁ〜っ!司令官発見!ぴょん!」

「卯月……体当たりはやめてくれ」

「……提督でちか。そろそろでっちを雇ってくれてもいいんでちよ?ここはもう散々でち」

「……オリョクルお疲れ様。前向きに検討しておくよ」

「あ、提督クマ!クマ〜!」

「球磨か。お久しぶり」

「久しぶりクマ!」

「ク、クソ提督!仕方なーく!不本意だけど!顔を見に来てやったわよ!」

「不本意なら見にこなくてもいいだろう?」

「なっ、何よ!私には会いたくないって言うの!?」

「……いや、会いたかったさ。久しぶりだな、曙」

「……ふんっ!」


・・・


「……随分と、人気なのね」

「そうか?」

「ええ、とっても……」

「……?」

「提督さん、阿賀野ってば妬いちゃってるんですよ。ほらほら、今がチャンスです!」

……。

「阿賀野!?」

「あ、阿賀野姉!」

「ひっさしぶり〜!きらり〜ん!」

「なんでさっき矢矧をポイ捨てしていったんだ?」

「それはねー……むぐっ!?」

矢矧が阿賀野の口を塞ぐ。

「な、なんでもないわ……」

「そ、そうか……。まあいい、久しぶりだな、元気にしてたか?」

「もっちろん!阿賀野を舐めないでほしいな!なんたって、最新鋭軽巡だからね!」

姉妹なのに随分と性格が違うな、こいつら。

「……口に出てるわよ」

「……済まない、失言だったな」

「いいのいいの、事実だし!でも、好みは似てるんだよ?」

「好み?」

「好きな食べ物とか、好きな色とか……好きな人も、姉妹皆一緒だよ?」

「なっ……!?」

うちの某『ぴゃあ!』さんが頭に浮かぶ。

「……阿賀野姉、ちょぉっとお話しましょうか」

「なになに?ガールズトーk」

言い終わる前に、矢矧が拳骨を叩き込む。

「じゃあ、私は行くから。またね」

「お、おう……」

……嘘だろ?


・・・


「能代ー、いるー?」

「阿賀野姉、どうしたの……って、矢矧!久しぶりね!」

「久しぶり……」

「ここで能代に質問!ズバリ、横須賀提督のことは好きですか?」

「ぅえっ!?……ま、まあ……嫌いでは、ないけれど……うぅ」

「ほらね?」

「……ホントに最悪」

「え?え?」

「じゃね、能代!また後で!」

「……えぇぇ?」


・・・


「姉妹艦全員が提督のことを好きになるとか頭沸いてるんじゃないの?」

「矢矧もその姉妹の一員だよね?」

「……しかも提督にまでバレたし……」

「それは矢矧にとって結果オーライなんじゃない?」

「阿賀野姉もでしょ……はあ」


・・・


「……司令官、吹雪が止みました……」

吹雪が気力の感じられない声で言う。

「3日も吹き荒れるとは思わなかったな……」

しかし、これであと数日で帰れるだろう。

「……そうだ、司令官。矢矧さんは?」

「……聞かないでくれ」

「ほな、ウチが教えたるわ!」

「く、黒潮!?」


・・・


せやなー、先ずは続きからや。


「……」

「どうしたんですか?体調でも悪いですか?」

「……いや、なんでもない」

「困ったらすぐこの沖田さん(仮名)に言ってくださいね!」

「……分かった」


こんな感じで2日目は、前日の阿賀野はんの一言のせいでずぅっと悩んどったんや。執務のスピードがウチの司令はんと同じくらいになるレベルに。1日中悩み倒して、ようやく結論を出したのが日付が変わった午前0時。んで次の日。


「……矢矧」

「ど、どうしたの?」

「……少し、話がある」


後はもう分かるな?しばらくの間ウチの台詞はナシや。白熱のラブシーンやからな。


「単刀直入に言おう。俺は、矢矧が好きだ」

「!」

「……俺と、付き合ってくれ」

「……」

「返事を、聞かせてくれないか」

「……嫌」

「っ……!」

「……ケッコンじゃないと、嫌よ」

「……?」

「……ダメ?」

「いや、寧ろその方が嬉しいんだが……いきなりケッコンなんていいのか?」

「構わないわよ、私だってずっと貴方が好きだったもの」

「!」

「指輪、ある?」

「いや、持ってn……ある!?」

「……じゃあ」

「……ああ。俺と、ケッコンしてくれ」

「……ええ、喜んでお受け致します」


……で、そのあと矢矧がとんでもないことを言いよったんよ。


「そうだ、提督。ケッコンショヤってなに?」

「……はっ!?」

「阿賀野姉が言ってたんだけど、私恋愛沙汰には疎くて……」

「OK、知らなくていい。矢矧はまだ知らなくていいから」

「……能代に聞いてくる」

「待て待て!一旦落ち着い……電話?」

『司令官!おはよーございます!青葉ですぅ!』

「……何の用だ?」

『電話を矢矧さんに代わって頂けますか?』

「いいぞ。矢矧、青葉から」

「ええ……もしもし、なんの用?」

『ケッコンショヤについて、青葉がお教えします!』

「ぇ……?」

『阿賀野さんから連絡がありましたから。妹がケッコンショヤについてなんにも知らないって』

「……阿賀野姉め」

『では、詳しく説明して差し上げます!』


電話を終えるころには、矢矧はすっかりケッコンショヤについてを詳しく知り尽くしとった。


「矢矧、一体何の話だったんだ?」

「……提督、ベッドに行きましょう?」

「あっ……(察し)」


・・・


「以上や。何か質問は?」

死にたい。

「司令官、初めてはどうでした?」

「頼むからやめてくれ、これ以上はもう保たない。主にメンタルが」

「いいじゃないですか。純粋無垢な女の子に性の知識を叩き込むのも大人の役目ですよ」

「純粋無垢って言葉の意味を知らんだろ……」

「さあ、なんのことだか……」


・・・


さらに数日後。

「世話になったな。長々と失礼した」

「もう少し居てくれてもいいじゃないですかー!寂しいですよぉ!」

「俺の鎮守府、仕事溜まってるんだよな」

「せやね、電話越しでも青葉さんが忙しそうにしてるのは分かったで」

「という訳だ、帰らざるを得ないんだ。じゃ、またな」

「……絶対また会いに来てくださいね、マスター!」

「マスターじゃない」


・・・


『電撃結婚!司令官と阿賀野型三番艦が旅先で……!?』

「……」

「……」

「あっ、お帰りなさい!今から迎えに行こうと思ってたとこなんですぅ!」

「よし、青葉。溜まってた仕事、全部お前がやれ」

「え」

「じゃ、任せたぞ」

「嫌です!」

「……あまり使いたくはない手だが……。青葉、これは『命令』だ」

「もーっ!ケチ!」


・・・


「あ、ご主人様!矢矧さんも、お帰りなさいませ!ところでぇ……は・じ・め・てはどうでした?」

「はわわわわ……!司令官さんが帰ってきたのです!ごケッコン、おめでとうございますなのです!」

「ねぇねぇ提督、初めてってどうだった?……ふむふむなるほど……いやぁ、捗るわー!」

「提督のケッコンはゴーヤに報告なのね……」

「ここは譲れません、私ともケッコンしなさい」

「ああ、空はあんなに青いのに……」

「姉様、まだカッコガチが残っていますから……」


・・・


「……青葉め!」

「まさか、歩いているだけでここまで人が集まるなんてね……」

どこに行ってもケッコンの話。中には、ケッコンよりショヤのほうが気になっている娘もいるようだ。

「いやー、すごかったねー」

……。

「「阿賀野(姉)!?」」

「わ、私もいます!」

「能代姉!」

「能代まで!?」

どうして2人がここに……と、ベタな質問をしようとすると。

「いやー、矢矧が提督さんとケッコンしたのを沖田(仮名)提督に伝えたら、『……横須賀鎮守府に異動です、二人とも。妹の面倒を見てあげてください……はぁ』って言われちゃって……」

……粋な計らい、か。

「分かった、そういうことならこれからよろしく頼む」

「ええ!最新鋭軽巡の力、お見せします!」

「は、はい!」


・・・


数日後。

「もしもし、こちら舞鶴鎮守府……」

『俺だ』

「……ああ、マスターですか」

『だからマスターではないと……いや、もはや何も言うまい。阿賀野と能代の異動についてなんだが……』

「あぁ、許可してくれましたか?」

『いや、お前書類出してないだろ』

「……あっ」

『だからあいつらまだ正式には舞鶴鎮守府にいる扱い……』

「ごめんなさい、すぐ出します!」


・・・


「……というのが、俺達の馴れ初めだったな」

「そうね……もう、あれから1年になるのね」

外ではまだ5時だというのに駆逐艦が雪を投げあっている。

「……ところで、今日と明日は非番なのよね?」

どこかで聞いた懐かしい言葉。

「ああ、久しぶりの休みだ」

……つまりは、そういうことなのだろう。

「なら……」

「矢矧」

「……な、何かしら?」

「2人で、一緒に出かけよう」

「……いいわよ、行ってあげる!」


艦!


【酒匂】

「……あれ、私の出番は?」

「諦めろ、酒匂」

「でも、長門さん……」

「はあ……オマケに出してもらえただけマシじゃないか」

「……そうだね、原爆組のプリンツさんとか出してもらえてないもんね……酒匂は幸せ者なんだね!ぴゃあ!」

「……酒匂はいい子だな」


オマケ艦!


後書き

け、決して『京都だし沖田でいっか』なんて安直な考えではございませんよ!しっかり考えた結果ですとも!


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2018-11-29 11:56:20

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1: SS好きの名無しさん 2018-11-29 16:24:55 ID: S:RuagGV

艦娘・提督

『旗幟』を鮮明にする時期が来ている。

三菱重工(🇰🇷)

🇰🇷の最高裁、三菱重工(🇰🇷)にも新日鉄住金と同様の判決を下す。

旧・海軍、海上自衛隊

艦艇の多くは三菱重工で製造されている。

再度、強調

艦娘・提督

『旗幟』を鮮明にする時期が近付いている。


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1: SS好きの名無しさん 2018-11-29 16:23:19 ID: S:z4tJDM

三菱重工(🇰🇷)

🇰🇷の最高裁

三菱重工(🇰🇷)にも新日鉄住金と同様の判決

ちなみに旧・海軍、海上自衛隊

艦艇の多くは三菱重工が製造している。

艦娘・提督

『旗幟』を鮮明にする時期が来ている。


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