2019-01-31 12:00:39 更新

*本作品は"提督「化け物の誕生」 等活地獄"の続編です。話がわからないという方はそちらを先にご覧になることをお勧めします。














[着任初日 0900]

〈鎮守府〉

私はその荒れ果てた鎮守府に驚愕するばかりであった。


なんの物音もしない室内に、壊された窓や壁から海風が入り込み、ヒューヒューと不気味な音がこだます。


威風堂々鎮座するその大きな外観とは裏腹に、中は食い荒らされたかのようにボロボロになっていた。鉄筋コンクリートの上に木の板を貼り付けた壁は大きな穴が開けられ、そばに残骸が散らばっている。あかりは毛頭なく、蛍光灯のガラス片が散らばっている。モグラ叩きのように穴だらけの床がギシギシと軋む。


まるで廃墟!この鎮守府が調査を受け終えて私がここに来る今日までに空いたのは二週間ほどだったはずだが、こんな報告はなかったはずだ。それに、いくら提督がいなかったからと言って、どうしてここまで荒廃するのか?



「(既に深海棲艦に攻め落とされた………いや、それならさっきの軍曹は来ていないはず。ならば一体何者が…………)」



この建物の隣には艦娘の寮がある。同様に、なんの気配も感じさせないが、そちらも確認しておくべきだろう。


「(とにかく、まずは執務室を探そう)と言っても、入り口からこんなアスレチックみたいになってると、いささか前進困難だが……」


持ってきた荷物を持ち上げながら、執務室らしい部屋を探す。研修の時の記憶では、確か二階にあったはずだ。


すると、左にかろうじて無傷の扉が見えた。物音を立てぬよう、静かに隙間を作り、中を覗き込む。


「(ここは食堂か……。ん?ここは壊れてないな。電気はどうかわからないが、整然と椅子が並べられている。それに………………、これは何かの料理の匂い、か?)」


薄暗く広い部屋に、士官学校の食堂と同じようなテーブルと椅子の列が見えた。厨房もあるみたいだ。食器や調理器具まで、全く綺麗な状態で保管されている。床を見ても、破片や瓦礫なんかはない。



静かに扉を閉じ、そばにあった階段で二階へ上がる。むろん、穴が空いているところをうまく避けながらだ。手すりもあるが、ところどころ折れていてむしろ危険だ。



「(む………確かあれが執務室、だよな)」


一階と同様に燦々たる風景が広がっていたが、特に奥から三つ目の部屋は、外からの光がこれでもかというほど漏れていた。それこそ、部屋ごと千切られたように。



「こ、これは……………」



まず壁がない。扉を入って正面、そこからはどこまでも広がる海原が一望できた。壊され方からして、内側から砲撃されて壊されたように見えた。


次に床だ。瓦礫が転がっているのは当然だが、引き裂かれたソファがひっくり返っていて、腐敗した残飯がぶちまけられていた。それに群がる虫が嫌な羽音を立てる。


収納家具はない。机は真っ二つにおられていて、おおよそ使えるものは何もない。明らかに、故意に壊されたものだとわかった。



「(ここだけ損害、というが扱いが酷い。誰かの意思によって、集中的に破壊されている)」



考えられることは二つ、


まず、単純にここが落とされた、という可能性だ。提督がいない、つまり指揮をするものがいたい艦隊が、前線でこれまで通りの戦いができるのは考えにくい。戦局は悪化し、結果的にこの鎮守府は深海棲艦の直接攻撃を受けた。


しかしこれには説明がつかないことがある。まず、破壊されていない部屋があり、かつそこには最近の生活の痕跡があるということ。食堂の様子からみて、あれはまだ使われている。そして、大本営から鎮守府陥落の報告をされていなかったこと。罪人である私を騙した可能性も捨てきれないが、わざわざ田中軍曹を送り込むようなことはするまい。



となると次に考えられるのは、艦娘による破壊行為、が考えられる。


内側から砲撃された部屋、使われている食堂、機能していると判断している大本営。動機なんていくらでもあるだろう。特に彼女たちにとっては、自分たちを虐げた佐藤中将あるいは人間そのものは憎むべき敵である。それがいなくなった今、敵がいなくなった今、解放されて反発を起こすのも無理はない。


しかし艦娘がいないことがやはり引っかかる。私の着任が通達されていなかったとして、何故ここまで無人なのか。



「(考えてもわからないな…………。よし、この建物はもういいだろう。次は隣の艦娘寮舎を見に行こう。もしかしたらそこにいるかもしれない)」



瓦礫をある程度取り除き、綺麗なところに荷物を下ろす。盗まれても大したことはないものばかりなので、そのままにしても大丈夫だろう。いや、流石に軍刀は持っていくか。













〈艦娘寮前〉

本館よりも大した広さのない建物だが、それでも100人くらいが住むには足りる程度の部屋数があった。


カーテンが締め切られた窓を勘定していき、外から見ただけでも相当の部屋があることがわかった。しかし依然として、なんの気配も物音もしない。



「(ここにもいない、のか?………………中に入ってしっかり確認すべきだな…)」



静寂を撒き散らして佇む寮舎に向かう、その時だった。










パン!!!!!!










「ん?」


発砲音がした。あたりを見渡すと、私の右足の横10cmのところに、先ほどまでなかった小さな凹みができていた。


理解のために一瞬、体が停止ししたが、自分の状況に気づくと意識はすぐに覚醒した。



「(狙われてるのか!?クソッッ)」バッ



素早く後方に移動し、目の前の建物の窓を確認する。狙ってきたとしたら、あの建物の中だ。



「…………………あれか」

「……………」



右から数えて三つ、上から数えて二つの窓のカーテンと窓がほんの少し空いており、そこから細い砲身が見えた。煙が上がっていて、未だ銃口が自分に向いていることがわかる。


「(誰が私を狙っているのかわからんが、どうやら寮舎に私が近づくのが我慢ならないみたいだな………)」

「…………」カチャ

「………………ま、待ってくれ!!!」

「…………」



両手を挙げ、あくまでこちらが敵意がないことを伝える。他にどこから狙っているのかわからないため、向こうからすれば的がはっきり見えただけに過ぎないかもしれないが、それでも次の発砲はなかった。



「私はここに配属された宮本だ!君たちは、ここの艦娘なのか!?」

「…………」



沈黙はこの場合、なんの解答にもならない。


もし仮に深海棲艦が正体だとして、だとすれば私は敵陣に近づいたただの間抜けなわけだし、或いは艦娘だったとしても、こう狙われているのだからそれもそれで厄介な話である。


大声で言ったからおそらく聞こえているはずだ。もしかして、中で仲間たちと相談しているのか?




潮風が吹き込み、静寂の鎮守府は未だ変化なし。ここでこうしている時間がいつまでなのかは知らないが、とにかく動くことはできなかった。


しかし背後から、その呪縛を解く声がした。



「こらーーーーーー!!」

「うわっ!」

「!!」

「皆さん何してるんですか!宮本提督に銃口を向けて!!首謀者は誰ですか!?」



その女性、否、その艦娘は沈黙の建物に声を張り上げて、まるで子どもを叱りつけるようにそういった。


すると建物の中から、ドタドタと走るような音が聞こえた。突然のことにびっくりして、急いで窓から離れたのだろう。


そして鶴の一声の鶴、私の命を救った艦娘鹿島は、深いため息をついた後、苦笑いで私の方を向いた。



「すみません………、まだみんな人間を信じられないみたいなんです」

「あ、ああ………そうか………」

「同じように、今までいらっしゃった新任提督も追い払っちゃうし、何度も何度も注意しているんですけど、全くもう」

「う、うむ。いやそれよりも、君は……」

「え?あ、あ、失礼しました!」



鹿島は一瞬キョトンとした顔になり、そして役割を思い出したかのように慌てて頭を下げた。



「お久しぶり、です。この鎮守府の秘書艦を任されております、鹿島です」

「あ、いや、こちらこそ。私は今日から、この鎮守府の提督として配属された宮本會良だ」

「本来なら、この挨拶は執務室で行うべきなのに、提督は既に執務室に行かれましたか?」

「ああ……。だがしかしあれは……」

「あれも、ほかの艦娘のせいなんです。やったのは随分前ですけど、まだ手付かずのままで………。大変申し訳ありません、まともなお出迎えもできず、このような失態を……!」

「いやいやいいんだ!それより、まともに使える部屋はどこかないのか?流石にここで立ち話って言うのは、な?」

「そうですね。まずはそう、部屋がないと!…………確か執務室の奥に、物置として使われていた空き部屋があったはずです」

「よし、そこに行こう。まずはそこで話し合おう」

「ですね」















〈執務室奥 空き部屋〉

そこは誰も手をつけていないのか、それとも私のために最低限の片付けていてくれたのか、今までみた他のどの部屋よりもマシな状態であった。


中央には小さなテーブルがあり、明日の代わりにクッション一つと段ボール箱がある。明かりは付くようだが、部屋の元々の構造上、窓がないためどことなくジメッとした雰囲気のある部屋だ。しかし大きな損傷はなく、安い下宿のようなシンプルなデザインは、士官学校で寮生活を送っていた私にとっては、苦になるものではなかった。



鹿島は、「すみませんこれしかなくて…」と言って、申し訳なさそうに私にクッションを勧めてきた。しかし座っている方がキツイくらい、平べったい座布団のようなものなので、このまま立って話すことにした。私が提案すると、また鹿島は頭を下げた。



「改めまして、私はこの鎮守府の秘書艦、練巡の鹿島です。以後宜しくお願いします」

「私は宮本會良だ。今日からこの鎮守府に提督として着任することになった。こちらこそ、宜しく頼む」

「勿論です。それと……………」

「ん?」


自己紹介が終わると、突然鹿島は私に向かって土下座をした。


お辞儀ではなく、土下座。日本ことにおける最上級の謝罪、または感謝の姿勢。


「なっ……」

「先程のご無礼につきましては、誠に、誠に申し訳ございませんでした!!!」

「えっ」

「そして!!!」

「は、はい!」

「………………私たちを救ってくださり、本当にありがとうございました………!!」



突然の謝罪と感謝に、一瞬わけがわからなかった。なに?"救ってくださり"だと?


「えーっと、」

「はい」

「まずは、まずはそう、頭をあげてくれ」

「………」スッ

「あのー、話が読めないんだが、一体私がなにをしたというんだ?」

「えっ」

「え?」



鹿島は目を見開いて、信じられないと言う顔で私を見た。気づいていないのが私だけで、もしかしたら、鹿島は何か勘違いしているのではと疑ってしまう。或いは、自分が何か忘れているのではと不安になってしまう。


「て、提督は、覚えていないのですか!?」

「ええっ!?わ、私は何かしたしまったのか!?」

「あなたは、私たちをあの男から解放して下さったではありませんか!」

「…………………ああ」



事の理由がわかると、私の驚きは急激に冷めていき、ありきたりな展開に全く動揺しなくなった。


おそらくあの男とは、佐藤中将のことだろう。となると鹿島が言っていることはつまり……………。


「宮本提督は、長い間私たち艦娘を虐げ、まるで道具のように扱ってきたあの佐藤元提督から、私たちを解放して下さった救世主です!私たち艦娘は、あなたとこうして再び会い、そしてこの無限の感謝の念を伝えたく思っていたのです!」

「………………」

「勿論、上官を殺した罪で死罪になることは予想していました。しかし我々はどうしても感謝しなくてはならなかったのです。新任提督として招かれることは不本意だったかもしれません。ですがどうか、私たち艦娘に恩返しさせて欲しいのです!」

「……………」

「宮本提督は次期提督として士官学校から巣立ったお方。そんな方が正義を貫き、俗悪な提督から私たちを救ったことは素晴らしいことであり、それで提督の命が絶たれるなどもっての他なのです。ですから、直談判ではありましたが、この鎮守府にお招きさせていただきました」

「…………」

「そして!新任提督としてあるべき道に戻られた提督を、助けてもらった我々全員で、全身全霊全力でサポートさせていただきたいと、そう思った次第でございます」

「………」

「最初は混乱されることでしょう。ですがご安心下さい。私たちはこの命に代えても、提督に肉体的、精神的負担をかけるようなことはさせません!なんとしても、提督に尽くす所存であります!」

「……」

「そしてっ……………あの、提督?」

「…」



まくしたてるように私への忠誠を誓う鹿島をいつ止めようか、そしてどう説明したものかとぼんやり思案していると、鹿島はいよいよ、不安そうに私に言った。



「あの………」

「………………おっ、なんだ?」

「聞いて、おられました?」

「あ、ああ勿論だ。うむ、そうだな。まずなにから言ったものか………」

「?」

「ええとまずだな」


改めて、鹿島の目を見て言う。


「佐藤中将の件は、あくまで我々人間の問題だった。ここがブラック鎮守府だということを皆知っていた。しかし誰もがそれを黙認していたんだ。奴を気に入っていた上官たちと、奴に歯向かえない私の同僚くらいの若手たちはな。私はそれを正したというだけだ。お前たち艦娘は……………そう、巻き込まれただけの被害者なのだから、感謝してくれなくてもいいんだ。むしろ、謝るべきは私の方だ。余計な気を遣わせてしまったのだから」

「………!!め、滅相もございません!そんな………あなたは私たちの恩人なのですから………」

「いや、お前たちはついでに助かっただけなんだ。……………しかし、理由はどうあれ、死罪が決まっていた私を助けてくれたのは紛れもなく君たちだ。勝手にかけた恩を返してくれたのだから、私は実際なにもしていないようなものさ」

「いえいえ、私たちはただ生きるべき人に生きていてほしいだけです!それに、提督のような誠の正義を持つ人にこそ、私たちは従いたいのですから」



どうやら鹿島、ないしこの鎮守府の艦娘は私を過大評価しているようだ。そしてそれに伴い、私が知らずにかけた恩を、私が思うより何倍も重く受け止めているらしかった。


私はたしかにあの時、自分の正義をに忠実に貫いたが、しかしそれはあくまで利己的な正義でもあり、どこまで論じても、所詮私がやったことは人助けではなく、人殺しなのだ。


いじめられっ子のために、いじめっ子を殺しても、果たしていじめられっ子は感謝するだろうか?それと同様だ。やり方は全く正しくないのだ。




「そうか…………まあいい」

「………」

「ところで、先程私を撃ってきた、あいつらは何者なんだ?ここの艦娘、らしいが」

「ええ。実は、まだ提督の、というよりかは人間のことが信用できない艦娘も多いんです。宮本提督が来る前に来た何人かの新任提督も、嫌がらせをして追い返してしまいましたし……」

「そ、そうか……。まあそれもいいさ。これから距離を縮めていけばな。ああそうだ、この鎮守府の惨状は、彼女らの仕業なのかい?」

「佐藤中将がいなくなってすぐ、みんなが腹いせに寮と食堂と工廠以外を壊してしまったんです。新任提督もみんな提督と同じように驚かれました。何度か修繕も試みましたが、その度に壊されて………」

「(まさに無法地帯だな………。枷が外された分、今までの鬱憤が爆発したわけか。これでは艦隊運営すらままならないな。今後の課題だな)」

「も、もちろん、攻撃的な艦娘ばかりではありませんよ!ただその攻撃的な艦娘が、誰も止められないというだけで………」

「構わないさ。んー、とりあえず艦娘とのコミュニケーションをとらないと、出撃も遠征も無理だな。しかしまずは…………」

「まずは?」



建物を直すべきだな。















[同時刻]

〈鎮守府 艦娘寮〉

「また新しい提督が着任したらしいわ」

「またか?次はどんな奴だよ。ちょっと蹴り飛ばしただけで失禁した前回の奴よりはマシなんだろうな?」

「それがですね、あの佐藤提督を殺害した、その人らしいんですよ」

「なに…………?」

「鹿島さんとなにやら話していましたけど、また徒労に終わらなければいいですけどね」

「無理ね。鹿島さんも、そろそろ人間を信用するのはやめるべきと気付いてほしいのだけれど」

「でも………」

「あ?」

「僕は、僕は今回の提督は信用していいと思うよ?」

「…………」

「何言ってんだ?あんなの仲間同士で殺しあっただけで、俺たちが許す理由にはならねぇよ」

「そうね。私たちがあの男を殺さなかったのは、解体を恐れていただけで、それがない今となっては、人間の方が私たちより弱いのだから、今度はあちらが許しを請う番よ」

「………そう、かな………」

「何でもいい。とりあえずまずは様子見だ」












[翌日]

〈鎮守府 執務室〉

昨日は座っていたクッションをまくらに、替えの軍服を布団にして地べたで寝た。鹿島は寮に自分の部屋があるから問題ないようだった。提督のための布団もないとは、まるで貨物列車で生活しているような気分だった。


鹿島は0700ほどに、食事を持ってやってきた。「食堂で食べたい気持ちもあるとは思いますが、今艦娘と接触するとなにをされるか……」ということらしい。台所番の間宮は私を敵視してはいないようだが、食堂には当然、攻撃的な艦娘もいるため、わざわざ作ったのを持ってきてくれたということだ。



「ありがとう。今日はカレーか」

「はい。食べ終えたら食器は私が戻しておきますから」

「助かるよ。それで今日は……」

「はい。この執務室の修繕ですよね」

「元帥閣下に報告しようと思ったが、まさか電報を送る装置まで壊されているとは………。これでは部屋を直すこともできん。よって、簡易的ではあるが屋根と天井を作ろうと思う」

「しかし、どうやって?」

「工廠に廃材があるだろう?あれで何とかする。それから、壊れた廊下の床とかも使わせてもらおう」

「わかりました。では私は工廠に行って、廃材があるか聞いてきますね。それと、電報についても、作れるかどうか聞いてみます」

「頼むよ。では私は、使えないゴミをまとめておこう」



鹿島が出て行った後、改めて部屋を見渡す。



壁と天井がほとんどないのは前述の通りだが、

何より問題なのは瓦礫だ。コンクリートや木材にガラス、明らかに壊されている機械の残骸もある。部屋全体が穴の空いたのゴミ箱のようだ。


「とても人の力じゃ壊せないよな……。それだけ、佐藤中将を恨んでいたということだろう。負の遺産だな」


瓦礫をある程度一箇所に集めておいたが、細かいのまでは拾いきれない。なにより入ってくる潮風により移動してしまうためきりがない。


「箒と塵取り、荷車なんかも欲しいな。それは泊地内のデパートで買えるだろう。必要経費で落とせるといいんだが………」


机も椅子もテーブルも、跡形もなく壊されている。戸棚にはポッカリと穴が開いていた。


というか、床が軋みすぎな気がする。先程からどこを踏んでもギィギィ音を立てる。おそらく内側からの砲撃で、建物そのものが倒壊寸前なのだ。



ギィギィギィギィギィギィギィギィ


「まるで楽器だな。ははは」


ギィギィギィギィギィギィギィギィ


「すごい、どこもかしこも不安定だ」


ギィギィギィギィギィギィギバキャッ


「……………うん、そろそろふざけるのはやめておこう」



踏み抜いてしまったところからは、一階の様子が見えた。こちらの床の破片が下の床に落ちて行く。


すると、




「きゃあ!」





誰かの悲鳴が聞こえた。しかも下から。


「な、なんだ?」



先程空けた穴を再び見ると、4人の少女が見えた。頭しか見えないためだれかわからないが、黒髪と白髪、それに茶髪が2人いる。黒髪の方に床の破片が落ちたらしく、手で払っているのが見て取れる。



「突然何よ!この木の破片は!」

「はわわわ、大丈夫ですか、暁ちゃん!?」

「ほら、帽子の汚れはだいたい取れたよ」

「うーん、あの穴から落ちてきたみたいね」



4人は私の方、正確には穴を見た。


「(まずい!)」


私は慌てて穴を木の板で塞ぐ。


上を向いてくれたおかげで顔が見れたかもしれないが、しかしそれはこちらも同じこと。あの4人が私を敵視しているとも限らない。


しかし何故この壊れた管理棟に艦娘がいたのだろうか。もはや壊され尽くされたここに何の用があるのだろう。いや、1番の可能性は私か?つまり着任したこと自体は既に全艦娘に流布しているのか?



トントン


「ん?」


すると、穴を塞ぐために置いた板を誰かが叩いているような音がした。


トントン


「………………」パコッ



板を開けると、そこから見えたのは、まん丸な瞳であった。



「うおおおおっ!?」

「きゃあ!!」

「おおぅとととと!」

「はわわわ!」

「えええ、三人ともちょ、」


ドシーーーーン!!



下で何かが倒れるような音がした。


三度穴を覗き見ると、4人の少女がが倒れていた。


「なっ、大丈夫か!?今助ける!」















〈鎮守府 一階廊下〉

かろうじてその役割を果たす階段を慎重に降り、執務室の真下の廊下を探すと、うずくまって呻いている艦娘と、それを見て心配そうに腰を撫でてやる艦娘の姿が見えた。


慌てて駆け寄ろうとしたが、鹿島の発言を思い出すと、私の足はしだいに前へ出なくなった。



「暁、大丈夫!?」

「うう、腰を思い切り打ったわ………」

「うーん、うーん………」

「はうう………、どいて……雷ちゃん………お、重いよ………」



白い髪の艦娘以外、皆どこかしら体の不調を訴えているようだ。



「僕だけで三人はかつげないし…………、今、誰か助けを呼んで…………」

「………………………ん?」



白髪の少女は辺りを見渡していたが、そのうちある一点を見つめて黙り込んだ。


というか、私を見て黙り込んだ。



「(し、しまった!ついつい見入ってしまったが、廊下のど真ん中で立っていれば見つかるに決まっている!あの目は完全に私を見ている。なんという失態だ!)」

「…………」



今から後ろに下がって引き返すのも不自然だし、かと言って近づくのも危険だ。しかし、完全にロックオンされているこの状態では……。



「(そもそも助けると言った手前、歩み寄るのがベストだよな………)」

「…………」ズカズカ

「…………」

「…………」ズカズカ

「…………」

「…………」ピタッ



白髪の少女は私の真ん前でピタリと止まった。その間、私はどうすることもできないので、向かってくる彼女をただ見ていた。


すると彼女は戸惑ったように目を背けつつ、ぼそりと小声で言った。



「その…………運ぶのを手伝ってくれないかな………?」

「…………ああ…………ああ!勿論だ」



コミュニケーション成功。















〈鎮守府 入渠室 通称"風呂"〉

「大丈夫かい、みんな」

「うう………ここは?」

「お風呂………?」

「電たち、運ばれてきたのです?」

「そうだよ。僕と、新しい提督とでね」

「「「!!」」」



風呂と呼ばれているそこは入渠室だった。明らかに風呂にしか見えないそれに浸かると、艦娘たちの痛みは消えていくようだった。


部屋の内装もまるで銭湯そのものだ。ただ一つ違うとしたら、艦娘たちが服のまま入るということだ。そして風呂から上がると、服は一瞬にうちに乾いてしまう。



私が初めて見る入渠室に驚嘆している間に、三人もまた私の存在に同様の反応を示しているようだった。白髪の少女はもっとも落ち着いた反応であるが、内心驚いているのだろう。未だ目を合わせようとはしない。チラチラとこちらを見るだけである。


三人は驚いてばかりで、怒りも侮蔑も恐怖もその表情には存在していなかった。歓迎されているというか、信じられないものを見た、という感じの顔である。



「え、えーっと……」

「ほ、ほんもの………?」

「あなたが……」

「宮本會良さん………」

「そうだ、とりあえずお互い、自己紹介しないとね」

「そ、そうだな」

「ええ。そうね、お互い、うん」

「じゃ、じゃあわたしから………」

「ハァ…………僕からでいいよ、暁」オドオド


そう言うと白髪の少女はあらたまって言った。



「僕は暁型駆逐艦四番艦の響だよ。その働きぶりから不死鳥の異名もあるよ。それでこっちが………」

「暁よ!暁型駆逐艦一番艦で、この鎮守府1のレディの異名を持つわ!」

「私は雷!暁型駆逐艦二番艦。鎮守府のママの異名を持つわ」

「私は電なのです。暁型駆逐艦三番艦。ええと、異名………いみょう…………」



不死鳥にレディにママ………?なんだこの少女たちは……。



「あのさぁ、僕のは別として、暁と雷のは明らかに嘘だよね」

「う、嘘じゃないわ!暁はもう立派な大人の女よ!」

「私だって、料理に洗濯にお掃除、みんなのお世話なら完璧にできるわ!響だって、不死鳥って過大評価よ」

「僕には史実がついているからね。でも2人は…………」

「まあまあ、暁ちゃんも雷ちゃんも、これからなれればいいのです」

「むぅー」

「そうね。まあいいわ」

「それで…………」



四姉妹の漫才(?)も終わると、次の矛先は私に向いたようで、どうやら次は私の番のようだ。


「私は、今日からこの鎮守府の提督として着任した宮本會良だ。これからよろしく」

「異名は?」

「え?」

「「「「いみょうは?」」」」

「ん、んー」

「「「「…………」」」」ワクワク

「あ」

「「「「!」」」」

「上官殺しという異名があるぞ」

「「「「………」」」」



ウケなかった。




「と、ところでお前たち」

「何かしら」

「ここで何をしていたんだ?まあ別に何をしていてもいいんだが」

「そ、それは………」

「指揮官を手伝いに来たのよ!」

「ちょ、雷ちゃん!」

「素直に教えちゃうんだね………」

「て、手伝い?」

「………そうよ。鹿島さんがこっちの建物を直すのを手伝うって言うから、私たちも力を貸しに来たの」

「しかし、何故………」

「決まってるじゃない!誰かが困っていたら助けるのがモットーよ!」


他の三人も、雷の発言に苦笑いしつつも頷く。



4人の駆逐艦、暁、雷、電、響からは、敵意や憎しみといった感情は見受けられない。完全に警戒を解いているわけではないが、どうやら私を受け入れてくれるようだ。


この鎮守府の惨状にはあまりにも似合わない、微笑ましい仲良し四姉妹。鹿島から話を聞いたと言うことは、艦娘自体はそこそこ団結力があるのかもしれない。しかし、敵対する艦娘がいるのも事実だし………。私の、と言うよりかは人間に対する価値観の違いで、艦娘は一枚岩ではないのか?


今ここで聞き出してもいいが………。しかし、困っているから助けると言うのはあまりにもお人好しすぎないだろうか?もしやこれは艦娘側からの罠なのか?



「ねえねえ司令官」

「ん、なんだ?」

「今日はこの建物の修理をするんでしょ?」

「ああ。しかし壊され方がこの有様だと、今ある資材じゃ足りないからな。とりあえず使えない瓦礫とか残骸とかを処分しようとしていたところなんだが」

「ふむふむ。よしっ、それなら私たちも手伝うわ!瓦礫とか残骸とかを集めておけばいいのね?」

「え?まあ、そうだな。建物の前に集めておいて、あとで業者でも呼んで処理させようと思ってる」

「わかったわ。じゃあみんな、早速取り掛かりましょう!」

「おおー!」

「は、はいなのです!」

「了解」



何故私を敵視しない、と尋ねる前に、4人はそれぞれ散らばってしまった。


取り残された私は、ぼんやりと天井の穴を仰いで思う。



「いい子たちだな………」














[1800]

〈鎮守府 執務室奥〉

一通りの仕事を終えた私と、鹿島と暁型四姉妹の六人は、執務室奥の、現在私の私室として使われている部屋に集まっていた。


日は既に落ち、そろそろ夕飯の時間である。



「今日は本当に助かった!礼を言う」

「私からも、4人とも本当にありがとうございました!」

「ふふん、当然よ!」

「ね?私たちに任せて正解だったでしょ!」

「お疲れ様なのです」

「大人数でやれば、かなり進むもんだね」



暁型の4人は、瓦礫の撤去を本当に忠実にこなしてくれた。コンクリート片とガラス片歩くことすらままならない廊下を、どこからともなく持ってきた箒と荷台で回収し、また、修理する際に再利用できそうなものもまとめておいてくれていた。見た目的には小学生くらいにしか見えないが、明らかに私では持ち上げられないような瓦礫も撤去してくれていた(おそらくは艦娘の身体能力の高さ故だろう)。


移動すら困難だった廊下は歩けるほどにまで綺麗にされ、アスレチックのように点在していた瓦礫もその姿はない。


戻ってきた鹿島もこれには大きく驚いていたようで、途中から駆逐艦には負けんと言わんばかりの働きを見せてくれた。お陰でめぼしい瓦礫の撤去は完了し、穴だらけで電気などのライフラインが遮断されたままであることを除けば、鎮守府復活に大きく前進することができた。


5人は流石にくたびれたようで、地面に座って私の話を聞いている。この時間は夕飯の時間であるようで、このあとは食堂に行く予定らしい。食堂にきた他の艦娘も、様変わりしたこの建物に少しはびっくりするだろうと、五人ともうれしそうであった。



「ねえねえ司令官」

「ん、なんだ?」

「この後一緒に夕飯でもどう?私たちは4人で食べに行く予定なのだけれど」

「夕飯か……たしかにいい時間だ」

「みんなも、提督とお会いしたいと思っているのです」

「うん、それがいいと思うよ。着任したこと自体はみんな知っているけど、わざわざ会いに来る艦娘も少ないからね」

「そう………だな」

「て、提督っ」



4人の勢いに飲まれそうな私に、鹿島は慌てて声をかける。おそらく、鹿島の言うところの反提督派の艦娘の存在が気がかりなのだろう。正直私も不安である。


しかし、これはある意味いい機会なのかもしれない。艦娘たちは少なからずこの建物の修復には気付くだろうし、それを私が行ったことを知れば、少なくとも悪いイメージはつかないはずだ。それに、寮舎に近づくだけで発砲する彼女たちに接近できる数少ないチャンスを無駄にするわけにもいくまい。



「大丈夫だよ鹿島。何事も始めてなんぼだ」

「しかし………」

「心配してくれてありがとう。でも、いつかは乗り越えねばならないこと、だろ?」

「…………分かりました。気をつけてくださいね」

「司令官?」

「ん、ああ、じゃあ言葉に甘えてご一緒させてもらうよ」

「よしっ、決まりね!」

「じゃあ早速行こう」

「お腹ぺこぺこなのです」

「そうだな。よし行こう」



鹿島はまだ仕事があると言って、寮舎に戻るらしい。食事はあとで摂ると言っていた。

















〈鎮守府 食堂〉

食堂の扉からは明かりが漏れていて、また同じように艦娘の声も複数聞こえてきた。みななにやら楽しそうにおしゃべりしているようで、孤児院のころの食事を思い出した。


しかしこうあらたまって考えると、これが私と彼女らのファーストコンタクトになるわけで、なんか緊張してきた………。私はまだこの4人と鹿島しか対面していないから、ほかにどんな艦娘がいるのかと思うと、ますます緊張する。



「大丈夫よ、司令官」

「え?」

「みんな優しいのです。今までの司令官さんは追い返しちゃったけど、司令官ならきっと受け入れてもらえるはずなのです」

「そうよ。なんせ私たちを救ってくれた救世主なんだから」

「救世主か………」

「そうだよ。ね、暁」

「あ、うん…………」



響の問いかけに暁は少しうつむき、立ち止まる。


「どうした、暁?」

「……あ、あのね、司令官」

「ん?」

「その………あ、ありがとう……」

「…え?」

「司令官は私たちを助けるために、人殺しになっちゃったのよね?名も知らない私たちを生かすために、自分の身を顧みずに……」

「………まあな。あのまま解体されるくらいなら、私の命を対価に助けようと思っただけだ。もっとも、今はこうして大出世したわけだが」

「司令官は本当に私たちの恩人。返しきれないほどの貸しがあるわ。今日手伝ったのも、本当は恩返しのつもりだったの」

「暁…………」



そして急に振り返った暁は、突然私に抱きついてきた。



「ちょ、暁!?」

「本当にありがとう………司令官」

「………………お前、泣いてるのか?」

「な、泣いてなんかないわ!その、目にゴミが入ったの!」

「………………今までよく頑張ったな。こちらこそ、ありがとう」ギュッ

「………うん」ギュッ

「…………暁ばかりずるいわ!えいっ」ダキッ

「私も!」ダキッ

「僕も失礼するよ」ダキッ

「お、お前たち………」



どうにも、この4人に懐かれてしまったらしい。精神年齢が幼いながらも彼女らにとって、危機から救ってくれた私は唯一の信頼できる人間なのだろう。


自分が救った者がこうして前を向いて生きていると思うと、こちらまで涙が出るほど嬉しい。



「………………さあ、いい加減飯を食うとしよう。お互い腹が減ったろう」

「そうね!行きましょう」

「はいなのです!」

「おー」



そして、明かりと活気溢れる食堂の扉を、私はゆっくりと開けた………。














シーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
















「え……」

「「「「………」」」」



沈黙。


ただひたすらに、そこには沈黙しかなかった。


先程まで楽しそうに談笑していた艦娘の気配は霧散し、全員が私を直視して閉口する。表情はなく、画面をそこで一時停止したかのように、ピクリとも動かない。食事の時に出る、咀嚼音や食器のぶつかる音、スープや水を飲む音などもまた、それに伴い消え失せた。



となると、私も立ち止まってしまう。まるで彼女らの視線の一つ一つが釘で、それに打ち付けられたかのように、私はその場に固まってしまった。


暁たちも、その空気に気づいて、また同様に石にされてしまう。



雰囲気の変化に対し、私は恐怖よりも焦りを感じた。



そして焦りの延長線上に、堂々巡りのように畏怖の念を抱いた。




「(こ、これは……………)」

「い、行きましょう…………司令官」

「「「……」」」


暁は絞り出すかのように声を出し、私たちを先導した。声は明らかに震えているし、後ろからでもわかるほど、場の重さに怯えているようであった。


そして暁が「司令官」と言ったあの時、私に向けられていた釘がさらに奥まで突き刺さったように感じた。



暁と雷と電と響と私で5人。雷電の2人に私と暁と響が対面する形で席に座る。食事、つまりはリラックスする場所であるはずなのに、先程から心臓を握り締められているかのような心持ちだった。おそらく4人も、私ほどではないが少なからず圧迫感を感じているだろう。


長テーブルにはあと三つほど席に余りがある。我々は端に詰める形で座ったが、果たして同席するものはいないだろう。



「(まるで………、まるで捕虜のような気分だ)」

「ね、ねぇ、司令官」

「な、なんだ?」

「今日はその、何か食べたいものはあるかしら?」

「うーん………そうだな。特にはない、かな」

「じゃ、いつもの日替わり夕食でいいね。今日は秋刀魚の塩焼き定食だよ」



響は厨房の方に手を挙げ合図すると、横にある扉から割烹着をきた艦娘が出てきた。それが間宮であることは言うまでもない。



「はいは……………い。何かご注文ですか?」

「ええと、日替わり夕食を5つ。お願い」

「5つ……………」

「………」ゴクリ

「あ、あと、お冷もお願いします」

「…………分かりました。5つですね。少々お待ちください」



笑顔で向かってきた間宮は私の顔を見た途端に表情を変え、一変して感情を消した。


人数を確認するとき、明らかに私に向け嫌悪の視線を向けて、私をじっっと見つめながら、他には何も目に入れずに応答していた。


どうしようもないほど、あからさまな排斥意識を見せつけられた。



間宮はそのまま厨房を引っ込み、そしてまた食堂には、音を殺して食事をする艦娘と、怯える私たちが残された。沈黙はますます重いものになっていった。


「ねぇ、ひ、響」

「うん、わかってる」

「間宮さん、私たちには敬語なんて使わないのに、いま………」

「大丈夫。安心して。提督も」

「あ、ああ……」

「なんか、みんな怖いのです」

「そ、そうね………」



言葉など発さなくても、「邪魔だ」という意思は、痛いほど私に伝わっていた。そして、「何故そんな異物を連れてきた」という憤怒も、同様に彼女らに向けられていた。






誰も一言も喋らないまましばらくして、間宮が五人分の秋刀魚の塩焼き定食を持ってきた。勿論無言の無表情でだ。



「い、いただきます」

「いただきます……」

「いただきます……」

「い、いただきます……」

「いただきます」



そして私はなるべく目の前の料理に注目し、気配に気づいていないように振る舞うことに努めた。ほかの4人も同様だった。


この緊張の中、幸いにも料理はとても美味しかった。塩加減もちょうどいいし、焼き方も申し分ない。士官学校の料理で下が麻痺してしまっていたのか、それとも日中の疲労のせいなのか、心の中で静かに感心するほど美味かった。


しかし、やはり沈黙はひどいものだった。



「(チラチラとこちらを見るわけではなく、あくまでずっと目を離さない気らしいな………。警戒しているのか威嚇しているのか、それともわたしから接触してこいと誘っているのか……………)」パクリ

「そ、そうだ司令官!明日は何をするのかしら?」

「そ、そうそう、私もそれ気になってたのよ」

「明日か?明日は…………今ある資材で、執務室とか廊下の壁とかの修復だな。本格的な業者は後々呼ぶとして、せめて応急処置くらいはしないと」

「すみません、あんなずさんな建物になってしまって……」

「構わん。元は佐藤提督のせいだからな。私は人間として、君たち艦娘に償う側の人間なのだから、あれくらいどうということはない」



事実、ブラック鎮守府に関しては数年に一度、大きな摘発が起きる。それは密告であったり、艦娘の直談判であったりするが、今回はまさにそれである。そしてそこにいた艦娘は大抵人間に対し非協力的になり、最終的には鎮守府は解散し、艦娘たちはほかの鎮守府に分散させられてしまう。


艦娘を人間と捉える見方はかなり前からあるが、しかし戦時中の現代では艦娘に対し人道的配慮をすればそれなりに効率は落ちる。ブラック鎮守府も元はその効率のために起きてしまったことだし、その後の処理も効率が重視されてしまう。


しかし私はたとい前線を後退させることになろうとも、艦娘に対しても敬意と感謝を持って振る舞うべきだと思う。人間はもはや艦娘なしには生きてはいけないのだから。






「ほーん…………じゃあよぉ」



突然、後ろから高圧的かつ挑発的な声が響いた。


びっくりして振り返ると、そこには薄ら笑いを浮かべ、腰に手を当て近づいてくる、眼帯をつけた艦娘が歩いてきた。



「き、君は………?」

「天龍だ。軽巡洋艦の。よろしくな」

「ああ……」

「ところでよお、さっき提督は、建物の損壊くらい大したことないって言ったよなぁ?」

「え?ああ、まあな」

「俺たちが人間に受けた仕打ちに比べれば、全然耐えられるってよ」

「まあ………そうだな」

「じゃあよ………」



すると天龍は、突然私の髪の毛を掴み、そして











ガッシャャャァァァン!!














「ひっ!」

「きゃぁ!」

「きゃっ!」

「え……」


4人はたまらず悲鳴をあげた。


それもそのはずである。








「これくらい耐えられるよなぁ!?」








頭を掴まれた私は、そのまま食器ごとテーブルに叩きつけられたのだから。











後書き

読者の皆様、まずは新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

近頃は大変寒くなってまいりまして、風邪なども流行しております。私の知り合いもインフルエンザのパンデミックが起きたらしく、健康には気をつけたいと思う次第でございます。


さて、今回の作品についてですg
そんなことより!!!!!
聞きたまえ読者諸君!なんと私のパソコンがぶっ壊れて艦これできなくなってしまったのだよ!!!!
これでは愛しの皐月と天龍と榛名に会えないじゃないか!!!

え?スマホでやれって?
知ったことか!!!操作が面倒だしたまにエラー起きるしでやりづらいんだよ!!!

どうせみんなイベントやってたんだろ知ってんだぞ私は!!その間私は無言のパソコンとにらめっこだ!!もうどうでもよくなってPUBG始めちゃったよ楽しいなおい!!





…………次の作品も、是非読んでください。


このSSへの評価

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SS好きの名無しさんから
2019-01-26 00:59:28

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SS好きの名無しさんから
2019-01-26 00:59:31

このSSへのコメント

1件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2019-01-26 01:00:19 ID: S:xYRmNZ

更新おつかれさまです!

面白かったです!

続き楽しみに待ってます!


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