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愛の為に大事なものを犠牲にするーーー

そんなこと、ただの幻想だと思ってたーーー

“あの時”まではーーー

　『大丈夫。人はこの程度では死なないよ。』

僕は進学の道を捨てたーーー

全ては君に、もう一度会いたいから……

～グランドエスケープってネタバレ凄い～

司『だんな様。行くわよ！』

ナサ『えっ、どこへ？』

司『“天気の子”よ！』

ナサ『ああ！新海監督の最新作だね』

司『そして見るのは……

“グランドシネマサンシャイン”よ！』

ナサ『……池袋の？』

司『そうよ！それもIMAXでよ！』

ナサ『…チケットはもう取ってるの？』

司『それが、クレジットカードが必要で…』

ナサ『ああ、僕達持てないからね』

司『どうしよう、最前列のフラットシート試してみたいのに……』

ナサ『フラット、シート？』

司『えっ！？知らないのだんな様！？グランドシネマサンシャインの最前列は“フラットシート”と言ってまるでベッドのようなフラットさを誇る凄いシートなのよ！？』

ナサ(見辛そうと思っちゃ駄目だよなぁ、お嫁さんがこんな熱く説明することないんだよなぁ)

司『だから、早めに取っておきたいんだけど』

ナサ『う～ん…最近は先輩から頼まれた仕事が忙しいからなぁ』

司『そう…』

ナサ『あ、ああいや！１日だけ休み取ってたんだった！その日ならいいよ』

司『本当に！？』

ナサ『うん』

司『なら、その日に行きましょう！』

～9月某日～

司『池袋よ！すぐにチケット取りに行くわよ！』

ナサ『あ！ちょっと走ると、』

司『えっ？(ガッ)ああっ！』

ナサ『危ない！』(パシッ)

司『ありがとう…』

ナサ『ゆっくり行っても間に合うよ』

司『なら、行くか』

ナサ『……手、離さなくてもいいの？』

司『離す必要がないからな』

ナサ(最近の司ちゃん、結構素直になってくれるんだよなぁ…)

～ガンダムより大きいスクリーンって何～

ナサ『……』

司『な、何よこれ…』

ナサ『い、いや18m超えで何となく予想はしてたけど…それ以上だね』

司『何か、もう言葉を失ったわね』

ナサ『しかも僕達、最前列の中央だから、見辛いよね』

司『寝てしまいそうな席…』

ナサ『と、とりあえず、座ってみようか？』

司『これ、座るって言うか、寝るって言うか…』

司『首痛いわね…』

ナサ『このブランケットを枕代わりにして首の下に置くと楽だよ』

司『流石だんな様、頭いいわね』

ナサ『可能性を予測してあらかじめブランケットを受付で貰っておく！これが僕のやり方だよ！』

司『でもそうすると…寒くない？』

ナサ『た、確かに』

～観賞～

司『いや～面白かったわね！』

ナサ『何か、いい映画だったね』

司『…ん？何かだんな様、この類いの映画見たら、何となく「愛の為に東京を犠牲にするなんて許せない」みたいな感じだと思ってたよ』

ナサ『いや、多分少し前の僕ならそう思ったと思うよ、でも今は違う……分かるんだ』

司『えっ？』

ナサ『少し前までの僕は、成績の為に努力していた。親の付けた偏見を生む名前とそれに伴うコンプレックスを払拭する為に。でも変わった、変わったんだよ。あの日から』

司『あの日、というのはトラックに轢かれた、あの日のこと？』

ナサ『うん。あの日僕は逆らえない運命と出会ったんだ。そして僕は進学も親も捨て、ただ君に会いたいが為に努力した。会える訳でもないのに』

司『…そして結果、もう一度会えたその子は今のお嫁さん、ということか。』

ナサ『……だから彼の“愛する人ともう一度会うために全てを捨てる”って感じが分かるんだよ』

司『そこまでして会ったその子はいつか君の隣に居なくなる。そんなものだけどいいのか？』

ナサ『…そうなったら、多分その時の僕が何とかすると思うよ』

司『なら、NASAより速く、私に愛を教えた君に意味が付くな』

ナサ『意味なんていらないよ』

司『…そうだな』

このお話は、僕と彼女だけが知っている、たった一つの答えの物語だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　fin