2015-04-26 22:27:40 更新

概要

某ゲームのパロディです。導入以外のストーリーはオリジナルですが、殺害トリック等のクオリティはご容赦ください。一部キャラが死亡するので苦手な方はご注意。


 その巨大な劇場は、都会のど真ん中の一等地にそびえ立っていた。

 まるで…そこが世界の中心でもあるかのように…


 『765プロ ライブ劇場』…

 あらゆる分野の超一流アイドル候補生を集め、育て上げることを目的とした劇場。

 この劇場に入れば、アイドルとして成功したも同然…とまで言われている。

 歴史はそんなに深くないけれど、各方面に有望な人材を送り続けているらしい。

 アイドル界の将来を担う”希望”を輩出する、まさに”希望の劇場”と呼ぶにふさわしい場所だ。


 そんな劇場へ入るために必要な資格は2つ…

 ”現役のアイドル候補生であること” ”各分野において超一流であること”。

 オーディションは行っておらず、劇場側にスカウトされた候補生のみが所属を許可される。

 そんな、超が何個も付くほど、超すごい劇場の前に…


 私は立っていた……



 あ、そうそう。自己紹介がまだだったよね。

 私の名前は”矢吹可奈”。

 見た目は、何て言うか…普通?なのかな。特に人と大きく変わった所はないと思う…

 趣味は歌うこと!何でも歌にしちゃう所は、特技といっていいかもしれないかなかな~♪

 あとは、ちょっと楽器が得意なくらい。それだって超一流って呼ばれるくらいじゃないけど…

 他に、何か取り柄があるとすれば…

 人よりちょっと前向きな事くらい……かな。


 そんな、特に目立った特徴もない私がこの劇場に入ることになった理由は…

 劇場から届けられた、この採用通知を見れば一目瞭然。

 これによると、劇場は全国の候補生の中から一人を選んで採用通知を送るらしい。

 その当選した相手を、『超アイドル級の幸運』って才能の持ち主として迎え入れる。

 つまり、私が選ばれたのはただの『運』ってこと。あはは…

 それでも、あの765プロライブ劇場に所属できるチャンスなんて普通じゃありえないし…

 文字通りラッキーだったと思って、私は劇場に入ることを決めた。


 とは言え、こうして実際の劇場を目の前にすると…

 やっぱり場違いだったんじゃないかなぁ、なんて思っちゃったりして…

「…でも、いつまでも入り口の前で立ち往生してる訳にもいかないよね…」

 よしっ、と頬を叩いて自分に気合いを入れる。

 そして、希望を胸に、劇場の敷地内に一歩踏み出した所で…


 私の意識は暗転し、そして…



 ………



 ………………



「…う、ん……?」

 目が覚めた。体がやけにダルい。重い瞼を開けて周りを見渡すと、そこは…

「あ…れ…?ここ、教室…?」

 見覚えのない教室。どうして自分がこんな所で寝ているのか分からない。

(確か、劇場の敷地内に入ろうとして、それから…)

 思い出そうとしても、記憶に靄がかかったようにはっきりしない。どうしても思い出せなかった。

 諦めて教室を見渡すと、黒板の横にモニターが取り付けてあるのが見えた。

 すごく高そうだけど、何でわざわざ教室に設置してあるんだろう。

 上を向くと、監視カメラがある。

 最近は物騒だし、ここは多くのアイドル候補生たちが通う場所だから、不審者が入ってこないように設置してるのかもしれない。

 そして、

「…なに、これ……?」

 本来の教室なら窓があるべき場所。

 でもそこには、鉄板のようなものが打ち付けられていた。

 軽く叩いて見ると、やはり鉄板だ。かなり頑丈で、ちょっとやそっとじゃ壊れそうもない。

 完全に塞がれてしまっていた。

(何でこんなに厳重に塞いでるんだろう…?)

 分からない。

 だから私は、ひとまず細かいことは考えないことにした。

 じっとしていてもしょうがないし、ここがどこなのか調べないといけない。

 まずは人を探そう。考えるのはそれからだ。

「すっすめーすすめー可奈探検隊~♪見知らぬ場所も何のその~♪こわくないないへっちゃらだい!」

 教室のドアを開けて薄暗い廊下を進みながら、頭に浮かんだフレーズを口に出す。歌っていれば一人でも怖くない。

 ……怖くないもん。




 この時点で、私は気付いても良かったのかもしれない…


 私が765プロライブ劇場にやって来たのは、”超アイドル級の幸運”なんかじゃなくって…


 ”超アイドル級の不運”だったって事に……


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