八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その1
初投稿です
――20時頃、比企谷家。
八幡「小町の奴、今日は遅いな」
八幡(いつもなら、既に帰宅しているはずの時間だ。なのに、あいつが帰ってくる気配はまるでないし、俺のスマホにも特に連絡は入っていない)
八幡(もしや、小町の身に何か……いや、俺の考え過ぎか)
八幡(あいつはボッチではあるがそれなりに付き合いもあるみたいだしな、俺と違って)
八幡(一応あいつの分の晩飯も俺が作っておいたが、時間が時間だし、外で夕食を食べてそうだな)
ガチャッ。
八幡(ん? 玄関が開く音? 小町が帰ってきたか!)
八幡「小町か? おかえり……って、どうした!?」
小町「ひっ! な、なんだ、お兄ちゃんか。た、ただいま……」
大志「こんばんはっす、お兄さん!」
八幡「何で大志が一緒にいるんだ? それに、小町、お前……」
八幡(小町の制服が所々破れているし、膝や顔に擦り剥いたような痕がある。それに、表情も暗いし、俺が出迎えた時の驚き方。どう見ても、何かあったとしか思えない)
八幡「おい、大志」
大志「何すか、お兄さん?」
八幡「お前、小町に何をした? 答えろ!」
大志「別に何もしてないっすよ!? 本当っす!」
八幡「嘘をつくな! 小町があんなボロボロになっている理由が説明できないだろ! さっさと本当の事を……」
小町「お兄ちゃん! 大志くんは何も悪くないよ! 大志くんの事をこれ以上責めないで!」
八幡「こ、小町? 怒ってるのか?」
小町「大志くんはね、小町を助けてくれたんだよ。大志くんが偶々通り掛からなかったら、小町は今頃どうなっていたか……うっ、ううっ!」
八幡「お、おい、大丈夫か、小町!?」
小町「だ、大丈夫。ちょっと静かにしていたら落ち着くと思うから」
八幡「そうか。ならいいんだが」
大志「もう遅い時間なんで、そろそろお暇させてもらうっす。比企谷さん、約束通り明日の朝迎えに来るんで」
小町「うん……ありがとう。よろしくね」
大志「じゃ、これで失礼するっす! お兄さんも、また!」
八幡「おう、また」
ガチャンッ!
八幡「帰ったか。さて」
八幡(小町には色々聞きたい事があるが、今は話せる状態じゃなさそうだな。少し時間を置いてからの方が良いか)
八幡「小町、晩飯は食ってきたのか? 一応小町の分も夕食は作っておいたんだが」
小町「お腹すいてるし、頂くよ。あと……」
八幡「?」
小町「今日は、なるべく小町と一緒にいてくれる、お兄ちゃん?」
八幡「もちろんだ」
小町「ありがとう。じゃあ、夕食もらうね」
八幡「ああ、遠慮なく食ってくれ。味はあまり旨くないかもしれんが」
八幡(やはり小町の様子がおかしい。いつもよりやたら甘えてる感じだし、ポイント云々言わねぇし)
八幡(様子見も兼ねて、リビングで勉強でもするか)
比企谷家、リビング。
八幡「なあ、小町。浮かない顔してるけど、あんまり旨くなかったか、今日の晩飯」
小町「そんな事、ないよ。お兄ちゃんが作ってくれたご飯、ちゃんとおいしいよ」
八幡「でも、ポイントは別にないんだな。いつもだったら『あ、これ小町的にポイント高い!』って言ってるところだろ」
小町「ちょっと、ね。今日は、そういう事が言える気分じゃないかな……」
八幡「なぁ、小町。無理なら無理って断ってくれても全然構わないんだが」
小町「何? お兄ちゃん?」
八幡「今日、何があったのか、少しだけでも教えてもらえないか?」
小町「……」
八幡「言いたくないなら言わなくていいぞ。強引に根掘り葉掘りするつもりはないからな」
小町「ううん、やっぱり、ちゃんと説明するよ。お兄ちゃんがまた大志くんに迷惑を掛けるような事を言ったりしたら、申し訳が立たないし」
八幡「そうか。無理はしなくていいからな? これ以上は話せないと思ったら、すぐに止めてくれ」
小町「そうする。じゃあ、少しずつだけど、話すね」
小町「あのね、小町、今日の放課後に、別のクラスの男子に校舎裏に呼び出されたんだ」
八幡「おい、それってまさか」
小町「うん……用件は告白だった。でもね、相手の男子、知らない人だったし、断ったんだけど」
小町「断ってもしつこく食い下がられて、そのうち、段々言い合いみたいになっちゃって……」ガクガク
小町「それで、怒った相手が小町の事を地面に押し倒して」ブルブルッ!
小町「でね、でね……」ウルウル
八幡「もういい、分かった。分かったから、もう止めろ。」
小町「だ、大丈夫。スカート脱がされそうになった時に、偶々通り掛かった大志くんが助けてくれたから、最後までは、されて、ない、から……」
八幡(小町の目が真っ赤だ。当然だろう、男子に押し倒されて服を脱がされそうになるなんて、女子にとって恐怖でしかない)
八幡(小町をよくもこんな目に遭わせやがって! その男子とやら、絶対に許さないからな!)
八幡「よしよし、小町、大丈夫だ。今日は俺が一緒にいるから」
小町「うん。グスッ、ヒクッ、うぐぅぅっ! 怖かった……。怖かったよぉ……!」
八幡「大丈夫だ。大丈夫だからな、小町」
八幡(ひとしきり泣いた小町は、そのまま疲れて眠ってしまった)
八幡(そして深夜、2人揃って帰宅した両親から、俺は一通りのあらましを聞かされた)
八幡(小町は半裸の状態になっていたところを大志に助けられ、大志が大声で先生を呼んでくれたお陰で最悪の事態は避けられたらしい)
八幡(その後、学校からの知らせを受けて仕事を早退した両親と加害者の生徒、相手の両親、そして学校の担任や校長が集まり、話し合いの場が持たれた)
八幡(話し合いの中で、加害者が一応反省している素振りを見せた事、まだ中学生である事から、学校側はうちの両親に対して警察への通報などは止めて欲しいと言っていたそうだ)
八幡(当然うちの両親は学校側の言い分に納得していなかったが、今回の出来事が公になれば小町が周りから変な目で見られる可能性もあるという事で、泣く泣く一旦は矛を収める形で話し合いは決着したらしい)
八幡(ただ、今の小町は、到底まともに学校に通えるような精神状態ではない)
八幡(さりとて、受験を控えているので、学校を休んで授業を受けられなくなるのは問題がある)
八幡(そこで、苦肉の策として、登下校の際や休み時間は大志と行動させるという対策が取られる事になった)
八幡(襲われた後遺症なのか、小町は男の先生などに対してもビクビクしていたらしいが、実際に自分を助けてくれた実績のある大志は近付いても平気だったようだ)
八幡(大志に「小町はやらん」と常々言っていたが、今回ばかりは仕方がない。あと、今日詰め寄った事も、明日謝らないとな)
八幡(しかし、今日は全然寝付けんな。俺がベッドに入ってから、もう2時間くらいは経ってるか? まあ、こんな胸糞悪い話を聞かされたんだから当然ではあるが)
八幡(俺だって明日は学校があるんだし、さっさと眠らねぇと)
続きは不定期更新予定
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