八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その16
八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その15の続き
――夕方、喫茶店にて
雪乃「私を急に呼び出して、何の用かしら、姉さん?」
陽乃「ちょっと情報交換をね。ガハマちゃんも一緒なんだ?」
結衣「こんにちは、陽乃さん。あたし、今日はゆきのんと一緒に遊んでたので」
陽乃「そっかぁ。ま、いいよ。本当は雪乃ちゃん1人だけの方が良かったけど、ついて来ちゃったものは仕方ないし」
………………
陽乃「――さて。飲み物も揃った事だし、そろそろ本題に入ろうかな。あまり時間が遅くなったら困るだろうしね」
雪乃「そうね。早くしてもらえるかしら」
陽乃「もう、雪乃ちゃんは冷たいなぁ。せっかくお姉ちゃんが耳寄りな情報を持ってきたのに。例えば――比企谷君と小町ちゃんについて、とか」
雪乃「!」
結衣「ヒッキーと小町ちゃんって……陽乃さん、何か知ってるんですか!?」
陽乃「そりゃ、うちはああいう家だから。地域の学校でそれなり以上の問題が起きたら、少なからず情報は入ってくるでしょ」
雪乃「姉さん、その件に関しては突っ込まないようにして欲しいのだけど」
陽乃「あら、雪乃ちゃんらしくないね? 問題を解決するためなら、雪乃ちゃんは徹底的に相手を叩き潰すタイプじゃないの?」
雪乃「それは姉さんの方でしょう。今回に限っては、必ずしも相手を叩き潰す事は正解ではないわ。小町さんが望んでいない以上はね」
結衣「あたしは、小町ちゃんに何があったのか知らないですけど、ヒッキーも小町ちゃんも触れられるのを嫌がってるから、この話はもうやめて欲しいです」
陽乃「2人共、甘いなぁ。ガハマちゃんはともかく、雪乃ちゃんはいつからそんな子になっちゃったのかな? やっぱり、比企谷君の影響?」
雪乃「彼の影響ではないわ。奉仕部での経験を経て、私が変わっただけの事よ」
陽乃「ふーん。まあ、どっちでもいいけど。この話を聞いても、果たしてそう言ってられるかな?」
結衣「どういう意味ですか?」
陽乃「言葉の通りの意味だよ。あたしが持ってきた耳寄りな情報っていうのは、今回の事件の加害者の事なんだから」
雪乃「姉さんは、一体何を知っているというの?」
陽乃「加害者の男の子ね、雪乃ちゃん達と同じ高校が志望校なんだってさ。事件を起こした今も、転校はおろか、志望校を変更するつもりもないみたいよ?」
雪乃「……相変わらず回りくどい言い方をするわね。要するに、その加害者とやらは、小町さんの志望校を把握しているかもしれないという事かしら?」
陽乃「人間の本質は、そう簡単に変わるモノじゃない。今回みたいな甘い対応で、相手は果たして本当に心から反省しているのかな?」ニヤリ
結衣「ええっと、話が全然見えないんですけど、その男の子に、小町ちゃんは何かされたんですか?」
雪乃「由比ヶ浜さんは、深く考える必要のない事よ。詳しい事情にはこれ以上首を突っ込んでは駄目だと、以前から何度も言ったでしょう?」
陽乃「ガハマちゃんだけ仲間外れにするのは可哀そうだと思うなぁ? ガハマちゃんもそう思うでしょ?」
結衣「あたしは……いえ、やっぱりやめておきます。ヒッキーも小町ちゃんも、嫌がるだろうから」
陽乃「ふーん。そんなので本当にいいのかなー? ま、ガハマちゃんがそれでいいならあたしはこれ以上何か言うつもりはないけど」
雪乃「姉さんは、加害者の名前などを把握しているのね? だったら、情報を貰えるかしら」
陽乃「いいよ。あたしは元からそのつもりでここに来たんだし。今回の件が解決しないと、比企谷君を誰かに取られちゃうかもしれないからね」チラッ
結衣「……っ」ビクン!
陽乃「情報は教えるけど、そこから先は雪乃ちゃん次第だから。雪乃ちゃん達が『本物』になれるかどうか、あたしに示して頂戴」
雪乃「言われるまでもないわ。私はやるべき事をやるだけよ」キリッ
陽乃「楽しみだなぁ。雪乃ちゃんが比企谷君とラブラブになるところを見られるのが」
雪乃「い、一体何を言っているのかしら姉さんは。あんな目が腐った男と私がラブラブになんてなる訳がないでしょう。姉さんの目はいつからそんな節穴になったのかしら、本当に不思議だわ」
陽乃「おー、雪乃ちゃん、すっごい早口だねぇ。雪乃ちゃんが早口でまくし立てる時は……」
雪乃「この話はもういいでしょう!? それよりも、早く情報を頂戴!」イライラ
陽乃「はいはい、じゃこのファイルを渡しておくね」スッ
雪乃「確かに受け取ったわ。一応、感謝するわね」
陽乃「もう、素直じゃないなぁ。雪乃ちゃん、頑張ってね。あと、ガハマちゃんも」
結衣「……あたしも、負けませんから」
陽乃「ふふっ。じゃ、あたしはこれで失礼するね。ばいばーい!」
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