2020-08-25 23:41:31 更新

前書き

八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その8の続き


対面


――朝、下駄箱前にて


八幡「ふわぁぁ……眠ぃ」


八幡(昨夜は一色のせいで色々考えてしまって、あまり眠れなかったな……)


八幡(一晩考えたはいいものの、結局小町がある程度回復するまで結論はお預けという答えしか出なかった)


八幡(まあ別に急ぐ必要もない。ゆっくり考えればいい事ーー)


結衣「ヒッキー、おはよ」


八幡「っ! ゆ、由比ヶ浜……!?」


結衣「挨拶しただけなのに、ヒッキーキョドり過ぎだし」


八幡「……何の用だ?」


結衣「今日なんだけど、お昼休みに少しだけ時間を貰えないかなーって思って」


八幡「……!」


結衣「やっぱり、この前の事、まだ怒ってたりする?」


八幡「いや、別に」


結衣「嘘だよね、それ。さっきから、あたしと全然目合わせてくれないもん」


八幡「俺には暫く関わるな。これからどうするかは、ちゃんと考えて、いずれ話す」


結衣「そっか。だったら、少し顔を出してくれるだけでもいいから、今日のお昼休みに奉仕部の教室に来て欲しいの。ダメ?」


八幡「行かねぇよ。大体この会話の流れでどうしてそんな誘いを掛けてくるんだ」


結衣「うぅ~! ホントにすぐ終わるから、お願い! この前の事、あたしもゆきのんもヒッキーに謝りたいの!」


結衣「5分、ううん、3分だけでもいいから昼休みに奉仕部に顔を出して! 話が終わったらすぐに帰ってもらって構わないから!」


八幡「……」


八幡(昨日一色に指摘された事が、早くも現実になっちまったか。全く考えも纏まってねぇのにこいつらと相対するのは、あまり気が進まん)


八幡(とはいえ、こいつらの用事が単なる謝罪だけなら、大して突っ込んだ話にはならないハズだ)


八幡(俺が求める「本物」は、奉仕部でなければ得られない物なのか。生徒会で一色と共に探してみる方が良いのか)


八幡(昼休みにこいつらの話を聞いて、今後の俺の身の振り方の参考にするという手もアリだな……)


八幡(それに、ここでこいつらを満足させれば、当分首を突っ込んでくる事もないだろう。正直言うと逃げたいところだが、また小町に手を出されたらたまらん)


八幡「……本当に3分で帰るぞ?」


結衣「え? 来て、くれるの?」


八幡「お前が顔出せって言ってきたんだろ。だから、まぁ、少しだけならな。但し、3分経ったらすぐに帰る」


八幡「これで本当に構わないか?」


結衣「うん! 無理言ってごめんね、ヒッキー。あと、ありがとう……!」パアアッ


八幡「……はぁ」


八幡(何も用意してねぇのにいきなりボス戦とかクソゲーにも程があるだろ……)


八幡(だが、約束しちまった以上、行くしかねぇか)



キーンコーンカーンコーン……



八幡(とうとう昼休みが来てしまったか。さっさと購買でパンを買ってベストプレイスに向かいたいところだが――)


結衣「ヒッキー」


八幡「分かってる」


八幡(昼休みに入った瞬間、逃げる間もなく由比ヶ浜に捕まってしまった。そんなに信用ないですかね、俺? うん、信用ないですね」


八幡「はぁぁ……」


結衣「ご、ごめんね、ヒッキー。すぐに声を掛けないとヒッキー逃げちゃう気がしたから」


八幡「へいへい。で、あいつは部室にいるのか?」


結衣「うん。昼休みになったら部室で待ってる、って言ってたよ」


八幡「そうか」


八幡(雪ノ下と話すのは、この前喧嘩した時以来だ。由比ヶ浜はともかく、あいつはなぁ……)


――奉仕部、部室前


八幡「……」ゴクリ


結衣「ヒッキー、行くよ」


八幡「お、おう」


八幡(いよいよボス戦か。前みたいな喧嘩にはならないと思ってはいるが……)


ガララッ。


結衣「やっはろー、ゆきのん」


雪乃「こんにちは、由比ヶ浜さん。それと……来てくれたのね、比企谷君」


八幡「……まあな」


雪乃「急に呼び出してしまってごめんなさい。先日の事をちゃんと謝る場をどうしても設けたかったから……」


八幡「そうかよ」


八幡(どう来る、雪ノ下。お前の目的は、本当に単なる謝罪――)


雪乃「あの、比企谷君。先日は――本当にごめんなさい!」バッ


八幡「!」


八幡(雪ノ下が、俺に対して頭を下げた……だと!?)


雪乃「私は、いつもの冗談のつもりであんな事をしたのだけれど、あなたや小町さんをひどく傷付けてしまったわ」


結衣「あたしも、ゆきのんと一緒になってヒッキーや小町ちゃんに悪い事しちゃった。だから、ごめんっ!」


八幡「……」


八幡(予想してたのと微妙に違う展開だな。雪ノ下とは多少やり合うかもしれないと構えていたが、杞憂だったか)


八幡(一色に背中を押されたからって訳じゃないが、俺も、こいつらからいつまでも逃げてる訳にはいかねぇよな……)


八幡(奉仕部は、俺が求めた本物足り得るのか。その答えを、俺は未だ見つけられていない)


八幡(答えを見つける前に奉仕部が消えちまったら、元も子もねぇしな)


雪乃「……っ」


結衣「うぅ……!」


八幡「……2人共。顔を上げてくれ」


雪乃・結衣「……」ビクビク


八幡「お前達の謝罪は受け取った。まあ、その、なんだ。俺の方こそ、この前はいきなりキレちまって悪かったな」


雪乃「あ、あなたが謝る必要なんてないわ。私達が100%悪かったのだし」


結衣「そうだよ、ヒッキー! あの時のヒッキーは別に悪い事なんてしてなかったんだから、謝らなくていいよ!」


八幡「で、話はもう終わりか? 俺はさっさと購買に行きたいんだが」


雪乃「ま、待って! あなたと小町さんに渡したい物があるの。受け取ってもらえないかしら……?」


八幡「?」


結衣「ヒッキー、これ。あたしとゆきのんから、お詫びの手紙とお菓子。その、受け取ってくれたら嬉しいなー、なんて……」チラ


八幡「2人とも用意したのか?」


雪乃「そうよ。あの……比企谷君……!」プルプル


八幡(雪ノ下も由比ヶ浜も、今にも泣き出しそうな顔をしている。「いややっぱ受け取れねぇわ」と返せる雰囲気じゃねぇな)


八幡(ただ、俺はともかく、小町宛の手紙にこいつらが何を書いているのか、そこが問題だ。また小町のトラウマを抉られないよう、注意を払う必要がある)


八幡「一応聞いておくが、小町への手紙に変な事を書いたりしてないだろうな?」


結衣「う、うん。それは大丈夫。謝罪の手紙なんだから、余計な事書いたりなんてしないよ」


雪乃「こうして直接顔を合わせてもらえないかもしれないと思ったから、気持ちを手紙に認めたのよ。それに……」


雪乃「あなたと顔を合わせると、私はあまり素直になれなくなるみたいだから……。ここでまた誤解をされて、余計に疎遠になるのが嫌だったの」ウルウル


八幡「……分かった。とりあえず、手紙もお菓子も受け取っておく。こっちが落ち着いたらまた部活に顔を出すから、その時はまぁ、宜しく頼む」


結衣「ヒッキーが戻ってくるの、待ってるね。あと、部活じゃなくて、休み時間とかお昼休みに時々お話とかまた出来ない、かな?」


八幡「機会があれば、な」


雪乃「ええ……! 宜しくお願いするわね、比企谷君。あなたとまたこうして少しでも話が出来て、良かったわ」ニコッ


八幡「!」ドキン!


八幡「お、おう。じゃあ、俺はそろそろ行くから」


結衣「うん、またね!」


雪乃「わざわざ時間を割いてくれてありがとう。その……また今度、ね」


八幡(これで、一応こいつらとは和解したって事になるんだろうか。明日一色が来た時に、相談してみるのも良いかもしれないな……)


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