八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その13
八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その12の続き
いろは「どうしてせっかくのお出掛けでまず行きたい所が本屋なんですか……」ブー
八幡「本屋くらいしか行きたい所なんてねぇしな。それに小町は受験生なんだから、あまり大っぴらには遊べないだろ」
小町「あ、あのー……お兄ちゃんもいろはさんも、小町からあまり離れないようにしてくれると有難いなって」ブルブル
八幡「おう、分かってる。心配するな」
八幡(周囲の男の視線がまだ少し怖いみたいだ。小町も一色も外見は文句無しに良いから、人目を惹くのは仕方ない事かもしれんが……)
いろは「ふーむ、これは思ったより重症みたいですねぇ。さっさと静かなお店に入っちゃった方が良いかもです」
小町「書店だったら、駅前まで行かなくてもすぐそこにもあるじゃん。そこに行ってみようよ」
八幡「駅前の方が品揃えはいいんだが、小町がそう言うならそうするか」
――ウィーン、ピシャッ
八幡「さて、まずはラノベだな」
いろは「先輩、目的忘れてませんよね?」ジー
八幡「……分かってる。冗談だ」
小町「ゴミぃちゃんは全く……。小町は受験生だから、まずは参考書とかが見たいかな。いろはさん、お勧めの参考書はありますか?」
いろは「んー、わたしが去年使ってた参考書はこの辺りのやつかな?」
小町「ほうほう。じゃあ中身を――っ!?」ビクンッ!
いろは「お米ちゃん? どうかしたん……あ」
八幡「……マジかよ」
結衣「あ、あわわ」
雪乃「奇遇ね。比企谷君に小町さん、それに……一色さんも」
いろは「ど、どもですー。やー、偶然ですね!」アセアセ
雪乃「あなた達は、3人で買い物かしら?」
いろは「そうなんですよー。お米ちゃんの気分転換を兼ねて買い物しようかと思いまして。ついでに、受験で使えそうな参考書も見てみようとここに来たんです」
結衣「じゃあ、あたし達と同じだね!」
いろは「先輩達の受験って来年ですよね? あ、でも雪ノ下先輩はともかく、結衣先輩は……」
結衣「何かな、いろはちゃん?」ニコッ
いろは「い、いえ、何でもないですよ?」
八幡(由比ヶ浜怖ぇ……。俺の周りの女子で一番おっかないのって何気にこいつじゃね? 強化外骨格さんを除けば、だが)
小町「……」ブルブル
雪乃「……」
いろは「えっと、どうしましょうか、先輩?」
八幡「ここで俺に振るのかよ。まあ構わんが」
八幡(小町の様子を見る限り、やはりまだコイツらと顔を合わせるのは厳しそうだ。ここは退却するのが最善ーー)
小町「あ、あのっ!」
八幡「!?」
小町「も、もし、良かったら、なんですけど、その……お、お勧めの参考書とかあったら教えて欲しいなーって、あ、あはは……」プルプル
雪乃「小町さん……」
結衣「……どうする、ゆきのん?」
雪乃「……」
八幡(小町は、怖いという気持ちを押し殺して前へ進もうとしているのか?)
雪乃(やはり、小町さんは比企谷君の妹さんね。傷付きながらも、彼女は一歩踏み出した)
八幡(だったら、俺がすべき事は何だ? 小町がこれ以上傷付かないように守る事か? いや、断じて違う)
雪乃(私が小町さんに対して本当にしてあげたいと思っていたのは、彼女を立ち直らせるための手助けをする事)
八幡(俺は、小町が立ち上がるために、兄として手を貸してやりたい)
雪乃(小町さんが望むのなら、私は――)
八幡「小町!」
雪乃「小町さん!」
小町「うぇっ!?」ビクッ!
八幡「……っと、すまん。驚かせちまったみたいだな」
雪乃「ごめんなさい、小町さん。それと……あなたも」
八幡「俺は別に気にしてねぇよ。ところで、お前今何か言おうとしてたんじゃねえのか?」
雪乃「あら、比企谷君も何か言おうとしていたように見えたのだけど?」
八幡「大した話じゃねえから、そっちが先に言ってくれ」
雪乃「そう? なら、先に言わせてもらうけれど……小町さん。私で良ければ、参考書のアドバイスをさせてもらうわ」
小町「ほ、本当ですか? あ、ありがとうございます」ペコリ
八幡「大丈夫か、小町?」
小町「う、うん。多分。お兄ちゃんは、いろはさんと適当に回ってていいよ」
八幡「さいですか。もし何かあったらすぐ呼べよ」
小町「大丈夫だってば。ほら、お兄ちゃん」グイッ
八幡「へいへい。んじゃ適当に見て回るか、一色」
いろは「全く、仕方ないですねー。先輩に頼まれた以上、断る訳にはいきませんもんね」エヘッ
結衣「あっ、あたしも一緒についていっていいかな、ヒッキー?」
八幡「俺は別に構わんが」
結衣「ホント? じゃあ、お邪魔させてもらうね、えへへ……」テレテレ
いろは(チッ、結衣先輩も抜け目ないですね。だったらわたしは――)
いろは「せーんぱいっ♪ これ見てくださいよー!」
八幡「あん? これは女物のファッション誌か? 俺にこんな物見せてどうするんだよ」
いろは「いえいえ、男の人はどういう服装が好みなのか調査しようと思いまして。参考までに先輩のご意見をお聞かせ頂ければと」
結衣「だったら、あたしも! 色々参考にしたいし、あたしに合いそうな服を選んでよ、ヒッキー!」
八幡「何で俺がお前らの服を選ばなきゃならねぇんだよ。一色は葉山に聞け、葉山に。俺の意見なんて参考にならんだろ」
結衣「そうだよ、いろはちゃん! いろはちゃんの好きな人は隼人くんなんでしょ? ヒッキーに聞いたってしょうがないと思うよ!」
いろは「えー? でもこの前フラれたばかりなのにそんなあからさまな質問はし辛いじゃないですかー?」
結衣「大丈夫! いろはちゃんなら何とかなるよ! そういう訳だから、ヒッキーはあたしの服だけ選んで!」
八幡「いやお前のも選ばねぇから」
結衣「ヒッキーが選んでくれた服、今度ヒッキーの前で着てくるって言っても?」
八幡「は?」
結衣「ね、例えばこんな服とかどうかな?」
八幡(なんだこの際どい服は!? こいつがこんなの着てきたら絶対胸の谷間が見えちゃうだろ! 駄目だ駄目だ!)
いろは(ぐぬぬ……! 結衣先輩は意外と自分の武器を理解してるから厄介なんですよねー)
八幡「却下だ。さすがビッチヶ浜だな」
結衣「ビッチじゃないし! ヒッキーの前でしかこんな恥ずかしい恰好しないし!」
八幡「恥ずかしい自覚あんのかよ。つーか、そういう事言うのやめろ、勘違いしちゃうだろ」
結衣「……勘違いじゃない、って言ったら?」
八幡「!?」ドキッ
いろは「いやいや勘違いですよね! 結衣先輩、冗談が過ぎますよー!?」
結衣「冗談なんかじゃないよ。ここでこんな話をするのも何だし、とりあえず場所変えよっか」
いろは(はぁー……。どの道いつかはやり合うんだし、この際今でもいいかな。お米ちゃんがもう1人を引き付けてくれている今なら、1対2の構図にならずに済むし、わたしにとっても悪い条件ではないハズ!)
いろは「いいですよ、結衣先輩。でもその前に、ここを離れる事くらいはお米ちゃん達に伝えておかないとですね」エヘッ
八幡「え、マジで移動すんの?」
いろは「先輩も当事者なんですから、当然ですよー?」ニコニコ
結衣「ヒッキー……」チラ
八幡(とても逃げられる雰囲気じゃねぇ。これから何が起きるってんだ……!?)
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