八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その6
八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その5の続き
――放課後、奉仕部部室
雪乃「由比ヶ浜さん、助かったわ。川崎さんから話を引き出してくれたお陰で、状況もある程度見えてきたし、ここからが正念場ね」
結衣「えへへ……。本当は、大志くんと会って直接話を聞ければ一番良かったんだけどね」
雪乃「仕方ないわ。それに、今の話を聞いた限りだと、川崎さんの弟さんは、恐らく小町さんの事情を知っているのでしょうし」
雪乃「ここで下手に突っ込めば、私達が嗅ぎ回っている事が小町さんや比企谷君に伝わってしまう。これ以上私達の印象が悪化すれば、さすがに挽回は望めないわ」
結衣「じゃあ、これからどうするの? あたしが立てた作戦は、これで飛んだ?しちゃったし」
雪乃(作戦が頓挫した、と言いたかったのかしら……。小町さんの受験もそうだけど、来年の由比ヶ浜さんの受験も心配になってくるわ)
結衣「どしたの、ゆきのん?」
雪乃「いえ、何でもないわ。それよりも、次の作戦について話しましょう」
結衣「ゆきのんも、何か作戦を考えてきてくれたんだよね?」
雪乃「ええ。昨日、由比ヶ浜さんが提案してくれた『川崎さんの弟さんから話を聞く』作戦が成功した場合と失敗した場合、どちらでも対応できるように、作戦を練ってあるわ」
結衣「さすがゆきのん! でも、作戦を考えるために昨日夜更かししてない?」
雪乃「そ、その……私も、必死だったから、つい……」
結衣「やっぱり! 目の下の隈、凄い事になってるもん。ヒッキーみたいになってるよ?」
雪乃「あの男の目の腐り具合よりはマシだと思うのだけど」ムッ
結衣「でも、そのヒッキーと仲直りしたいから、夜更かししてまで一生懸命作戦を考えてくれたんだよね、ゆきのん?」
雪乃「……///」カァァ
結衣「あれ、いつもと違って否定しないんだね?」ニコッ
雪乃「由比ヶ浜さん、あまりからかわないで頂戴……」
結衣「今回ばかりは、恥ずかしがってちゃ駄目だよ! ちゃんと正直に気持ちを伝えないと、本当に取り返しがつかなくなるから」
雪乃「わ、分かっているわ。奉仕部の部長として、比企谷君を連れ戻す義務が私にはあるのだから」コホンッ!
結衣(あはは……。ゆきのん、ホント素直じゃないなぁ~)
雪乃「ここからは、私が考えた作戦について説明させてもらうわね」
雪乃「まず、比企谷君に戻ってきてもらうには、小町さんがある程度回復する事が必要不可欠となるわ」
結衣「小町ちゃんが原因っぽいのは間違いなさそうだもんね。だけど、結局何がどうなってるのか、まだあたし全然分かんないんだけど」
雪乃「由比ヶ浜さんは分からないままの方がいいわ。万が一、失敗した場合に、由比ヶ浜さんだけでも比企谷君達に許してもらえる可能性を少しでも上げるためにね」
結衣「気になるけど、ヒッキーや小町ちゃんが知られたくないって思ってるんなら、それを無理に引き出そうとするのも違うよね……」
雪乃「その通りよ。この作戦が失敗しても、傷付くのは私だけで終わらせたいの」
結衣「もしかして、ヒッキーがいつもやってるみたいな方法で解決する気なの!? 絶対駄目だよ、ゆきのん!」
雪乃「違うわ。そういう意味で言った訳ではなくて、あくまで失敗した場合のリスクを最小限に抑えたい、というだけの事よ」
雪乃「元を辿れば、ここまで問題が拗れてしまったのは全て私のせいなのだから」
結衣「大丈夫。あたしも頑張るし、絶対失敗なんてさせないよ!」
雪乃「ええ、あなたを頼らせてもらうわね、由比ヶ浜さん」
――丁度その頃、比企谷家
八幡「ただいまー」ガチャッ
小町「お、おかえり、お兄ちゃ……えっ、その隣の人は誰!?」ビクッ!
八幡「あー、こいつは俺の後輩だ」
いろは「初めまして~、一色いろはですっ♪ 君が先輩の妹さんかぁ。先輩とあんまり似てないですね?」
八幡「バッカ、俺なんかに似てたら小町が可哀そうだろ。似てないから良いんだよ」
いろは「先輩、シスコン過ぎて引きますよ……」
小町「……ええと、うちのゴミぃちゃんがすみません。こんな兄ですが仲良くしてやってください」ペコリ
いろは「はいっ♪ これからも先輩を存分に利用……じゃない、頼りにさせてもらうつもりなのでっ!」
八幡「おいちょっと? 今利用って言おうとしなかった?」
いろは「やだなー、気のせいですよ。ところで、先輩の用事って結局何なんですか?」
八幡「別に大した用事じゃない。それよりも、一色に頼みたい事がある」
いろは「お手伝いの件ですね? わたしは何をすればいいんですか?」
八幡「一色には、小町と暫く話をして欲しい」
いろは「……は? え、それの何処がお手伝いなんです?」
小町「お兄ちゃん、いきなり何言ってんの? 意味分かんないんだけど……」
八幡「小町。お前、最近学校で友達と喋ったりしてるか?」
小町「そ、それは……大志くんとは毎日話してるけど、他の人は、あまり……」
八幡「だろ? 気分転換のためにも、もう少し誰かと喋った方が気が晴れるんじゃないかと思ってな」
小町「でも、だからって何も初対面の人を連れてこなくてもいいんじゃないの?」
八幡「むしろ、初対面の奴が相手じゃなきゃあまり話せないだろ、今のお前は。もしかして、雪……由比ヶ浜辺りを連れてきた方が良かったか?」
小町「うっ……確かに、結衣さんと話すよりは、知らない人と喋る方がまだちょっと気が楽かも。結衣さんと喋るのも楽しいけどね……」
八幡「まあ、そういう事だ。一色、すまんが小町の話し相手になってやってくれ」
いろは「はぁ、構いませんけど……1つ聞いていいですか?」
八幡「何だ?」
いろは「先輩の妹さん、どうかしたんですか? さっきから会話の内容が不穏なんですけど」ヒソヒソ
八幡(耳元でコソコソ喋られるとくすぐったい……)
いろは「先輩? 聞いてますか?」
八幡「……おお、すまん。小町の事情は、一色には話せない。と言うより、話しても良いと思える相手がいないんだ」
いろは「じゃあ、結衣先輩や雪ノ下先輩にも説明していない……じゃなくて、出来なかったんですね?」
八幡「ああ、察してくれると助かる。その辺は、触れないようにしてくれ」
いろは「了解ですっ♪」
いろは(結衣先輩や雪ノ下先輩が先輩と喧嘩した理由は、多分これかな? だったら、勝負はここからですねっ!)
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