八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その7
八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その6の続き
――比企谷家、リビング
小町「へ~、いろはさんは1年生なのに生徒会長なんですか!?」
いろは「うん、そうなんだよ~♪ お米ちゃんのお兄さんからどうしてもって頼まれて」アハッ!
八幡「おい、話を捏造するな。お前に生徒会長をやらせようと動いたのは事実だが、『どうしても』と直接言った覚えはないぞ」
いろは「え~、言ってくれましたよ? 可愛い後輩との思い出、先輩は覚えてくれてないんですか~!?」
八幡「いや嘘だから。信じるなよ、小町」
小町「お兄ちゃんといろはさんが仲良しだって事は理解したよ……」ゲンナリ
いろは「ふふっ、先輩とわたしは仲良しだって、お米ちゃんも認めてくれましたよ、先輩?」
八幡「いや、それよりもお米ちゃんって小町の事か?」
いろは「もう、話を逸らして誤魔化そうとしないでくださいよ! はぁ、別にいいですけど……」
いろは「先輩の妹さんの名前って、お米と同じじゃないですかー? だから、お米ちゃんと呼ぶ事にしました!」
八幡「お米といえば日本の心、つまり小町は日本の誇る妹という事か。まあ小町なら当然だな」
いろは「うわー、また出たよシスコン。本当に気持ち悪いのでそういうのやめてもらっていいですかね?」
小町「いろはさん、すみません。うちの兄が気持ち悪いのはいつもの事なので気にしないでください」
八幡「ちょっと君達? 堂々と人の事ディスるとかやめてくれよ?」
いろは「だって、実際気持ち悪いですし。妹以外にも目の前に可愛い年下の女の子がいるんですから、そっちにもっと目を向けるべきじゃないですか?」
小町「そうだよ、お兄ちゃん。いろはさんってちょっとアレな人っぽいけど、何だかんだお兄ちゃんの事よく分かってくれてるんじゃない?」
いろは「お米ちゃん? アレな人、ってどういう意味かな?」ビキビキ
小町「あざといし、腹黒い感じがするって意味です!」
いろは「チッ! 初めてですよ……初対面でわたしをここまでコケにしたガキは……!」
八幡「何なの? 一色の女子力は53万あるの?」
いろは「は? 先輩の言ってる事が意味不明なんですけど」
小町「いつも唐突にそういう変な事を呟いたりするからなかなか彼女が出来ないんだよ、お兄ちゃん」
八幡「平塚先生なら分かってくれる話だから問題ない」
いろは「はぁ、あの先生を一般的な女子の基準に当て嵌めないでもらえますかね? 結婚できない女性が基準って色々おかしいですからね?」
八幡(誰か早く貰ってあげて! 本人のいない所で生徒にディスられる平塚先生を、誰か貰ってあげてよぉぉぉ!)
小町「小町的には、いろはさんはお兄ちゃんと相性良いと思うよ?」
八幡「何処をどう見たら相性が良いように見えるんだ……?」
いろは「いやいや、こんな目が腐った先輩と相性良いとかあり得ないから」
八幡「ねえちょっと? 君さっき俺と仲良しアピールしてなかった? 言ってる事矛盾してない?」
いろは「今はそんな事どうでもいいんですよ。ところで先輩、夕食はまだいいんですか?」
八幡「ああ、そろそろ夕食の時間か。だったら俺が夕食を作らねぇと……と、その前に一色を送ってかなきゃならねぇか」
いろは「わたしはまだ暫く帰らなくても大丈夫ですよー? それとですね、良ければわたしが夕食を作りましょうか?」
小町「いろはさん、料理できるんですか?」
いろは「もっちろん! わたし、これでも料理得意だし! お米ちゃんも料理できるようになっておいた方がいいよ?」
八幡「小町は料理できるぞ。しかもすげー旨い」
小町「愛を込めて兄の餌を作るのは妹の仕事ですから」フフン
八幡「その言い方に愛を感じないんだよなぁ……」
いろは「ほぇ~。じゃあ、お米ちゃんもわたしと一緒に夕食作ってみる?」
小町「いいですよ。いろはさんが義姉さんとしてやっていけるか見せてもらいますね!」
八幡(小町の奴、少し調子が出てきたみたいだな。一色を呼んだのは正解だったか)
八幡(一色には感謝しないとな……)
――その頃、雪ノ下マンション
雪乃「何とか及第点には達したわね。これなら、充分に美味しいと言える出来だと思うわ」
結衣「うん! えへへっ、あたしとゆきのん合作のお菓子、ヒッキーと小町ちゃんが喜んでくれたらいいなぁ……」
雪乃「普段の彼らなら間違いなく喜んでくれるでしょうけど、今回ばかりは何とも言えないわね」
結衣「そうだね……。でも、このまま離れちゃうなんて絶対嫌だから、やれる事は全部やらなきゃ!」
雪乃「ええ、その通りよ。あとは、これに添える謝罪の手紙の文面も考えていかなくてはね」
結衣「うう~! あたし、ちゃんと書けるかなぁ」
雪乃「この手のメッセージに関しては、私よりもむしろ由比ヶ浜さんの方が得意だと思うのだけれど」
結衣「へ? そ、そう?」
雪乃「こういったメッセージは、単純な文章力よりも、相手に感情や想いが伝わる物である事の方が重要よ。私は文章力には自信があるけれど、相手に気持ちを伝えるのは不得手だから……」
結衣「そっかぁ。だったら、手紙も一緒に考えながら書こうよ、ゆきのん!」
雪乃「そうしてもらえると助かるわ。だけど、お菓子作りだけで結構遅い時間になってしまったわね」
結衣「明日は金曜日だから、今日中に手紙を仕上げて明日渡さないと日が空いちゃうね……」
雪乃「あの、今から1人で帰るのは危ないし、由比ヶ浜さんさえ良ければ泊まっていっても構わないわよ?」
結衣「ホント!? あ、でも着替えとか何も持ってきてないや」
雪乃「着替えなら私の服……は、サイズが合わなそうね」ジー
雪乃(私も、姉さんや由比ヶ浜さんみたいに大きければ良かったのだけど……。その方が、きっと比企谷君も……)
結衣「ゆきのん!? ど、何処見てるの!?」
雪乃「ご、ごめんなさい。決して変なつもりじゃなかったのだけど……。ね、姉さんが前にここに来た時に置いていった服があったと思うから、それを着替えとして使って頂戴」
結衣「うん、分かった。じゃあ、そうさせてもらうね」
雪乃「手紙を書くのは時間が掛かりそうだから、由比ヶ浜さんは今のうちにお風呂に入ってきてもらえる? キッチンの片付けは私がしておくわ」
結衣「え!? あたしも片付け手伝うよ!?」
雪乃「大丈夫、1人で出来るわ。それよりも、今晩中に手紙を仕上げないといけないのだから、早めにお風呂は済ませておく必要があると思うの」
結衣「ゆきのんがそう言うなら……。ごめん、先にお風呂貰うね」
雪乃「ええ」
……
雪乃「はぁ……。本当に仲直りできるのかしら……」
雪乃(比企谷君や小町さんと仲直りするために私が考えた作戦は、2段階に分かれる)
雪乃(まず最初に私達が行うべきなのは、言うまでもなく彼らに謝罪する事。だけど、今の彼らが私達と……特に私と直接顔を合わせてくれる可能性は低い)
雪乃(そこで、私達は謝罪の手紙と品物を用意して彼らに贈る事にしたわ)
雪乃(ありきたりな方法ではあるけれど、確実に気持ちを伝えて2人に謝罪するには、これ以外に手が思いつかなかった)
雪乃(しかし、この作戦には1つだけ大きな問題があるわ。比企谷君達に、どうやって手紙と品物を渡すのかというところ)
雪乃(確実に受け取ってもらうためには、やはり手渡ししかない。その際に直接謝罪の言葉を言えれば尚良い)
雪乃(ここが上手くいくかどうかは、私と違って彼と同じクラスである由比ヶ浜さんに掛かっている……)
結衣「ゆきのん、お風呂上がったよー!」
雪乃「……」
結衣「ゆきのん?」
雪乃「! ゆ、由比ヶ浜さん? ごめんなさい、気付かなくて」
結衣「何か考え事でもしてたの?」
雪乃「ええ、ちょっとね……」
結衣「ヒッキー達の事?」
雪乃「……そうよ。比企谷君達と本当に仲直りできる保証は、何処にもないわ。もし上手くいかなかったら……」プルプル
結衣「あたしも、ここ数日はずっと同じ事を考えてるよ。今だって、不安でどうしようもなくて、もしあたし1人だけだったら挫けてたかもしれないって思う」
結衣「だけどね、ゆきのんと一緒だから、あたしはまだ頑張れるんだ」
雪乃「由比ヶ浜さん……。私も、あなたと同じよ。あなたがいなかったら、とっくに心が折れていたと思うわ」
結衣「えへへっ、そっかぁ。じゃあ、お互い様だね!」
雪乃「ふふっ、そうね。お互い様ね」
結衣「――あのね、ゆきのん。あたしね、今回の仲直りが上手くできなかったとしても、やってみたい事があるんだ」
雪乃「何をするつもりなの?」
結衣「ヒッキーと小町ちゃんが落ち着いたらね、あたし、ヒッキーに告白しようと考えてるの」
雪乃「え……! こく、はく……!?」
結衣「うん。ヒッキーと仲直りできてもできなくても、ちゃんと気持ちを伝えたい」
結衣「あとね、あたしの告白の結果がどうなろうと、あたしはゆきのんとヒッキーと、3人でこれからも奉仕部を続けたい」
結衣「それが、あたしが欲しい『本物』なの」
雪乃「……そう。由比ヶ浜さんも、『本物』を見つけられたのね」
結衣「本当は、とっくに前からこうしたいって思ってた。でも、言えなかったの」
結衣「ヒッキーは絶対逃げるだろうし、それに、ゆきのんもヒッキーの事……好き、だよね?」
雪乃「……」
結衣「今はいいけど、ヒッキーにはちゃんと正直に言わなきゃ駄目だよ、ゆきのん。でないと、あたしがヒッキーを貰っちゃうからね!」
雪乃「分かっているわ……。私も、負けない」
雪乃「今、覚悟を決めたわ。私は、比企谷君に告……いえ、違うわね。私は、比企谷君と恋人になってみせる」
雪乃「一色さんにも、由比ヶ浜さんにも勝つわ。絶対にね」
結衣「その意気だよ、ゆきのん! 誰が勝っても恨みっこ無しだからね!」
雪乃「ええ!」
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