八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その12
八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その11の続き
土曜日13時、駅前
結衣「ゆきのーん、お待たせ!」
雪乃「由比ヶ浜さん、こんにちは」
結衣「えへへっ、やっはろー! 待った?」
雪乃「いいえ、大して待っていないわ。それよりも、今日は急に呼び出してごめんなさい」
結衣「ううん、大丈夫! あたしも今日は予定なかったし! ここからが笑点場だもんね!」
雪乃「正しくは『正念場』よ、由比ヶ浜さん」
結衣「あ、あれっ、そうだっけ!? ま、まあ1文字しか変わんないし!」
雪乃「意味が大違いなのだけど……。次の国語の試験の際には、前回よりもみっちり勉強が必要そうね」
結衣「ええええっ!? あたし、そこまでひどい!?」
雪乃「私がしっかり教えるから大丈夫よ。多分」
結衣「だ、だよね!? ゆきのんがついてるんだし、あたしはきっと大丈夫! 赤点は絶対取らない……ハズ……」
雪乃(比企谷君も言っていたけど、由比ヶ浜さんがうちの高校に合格できた事が不思議に思えてくるわね……。でもここは、気を取り直して)
雪乃「コホンッ。昨日の夕方に部室で話した次の作戦について、覚えているかしら?」
結衣「あ、うん! ヒッキーと小町ちゃんとの仲直り作戦、第2弾の事だよね? お詫びの手紙とお菓子は受け取ってもらえたけど、まだ何か必要なのかな?」
雪乃「以前にも言ったのだけど、今回の問題の鍵となるのは、比企谷君ではなく小町さんよ。小町さんが私達を許してくれない限り、比企谷君は奉仕部には戻ってこないでしょう」
結衣「ん~、小町ちゃんと直接会っていないから様子は分かんないけど、滅茶苦茶怒ってるっていう事はなさそうな気がするなぁ」
雪乃「それについては私も同感よ。だから、今から解決しなくてはならない課題は、私が抉ってしまった小町さんの傷をどうしたら癒せるのか、ね」
結衣「難しいね。直接会わずに小町ちゃんを何とかする方法なんて、あたしには考えつかないや」
雪乃「由比ヶ浜さんならこういった問題の解決は得意そうだと思っていたのだけど、やはり難しいかしら?」
結衣「うーん、小町ちゃんがああなった原因、あたし未だに知らないし。原因が分からないとアプローチのしようがないっていうか……」
雪乃「確かにその通りね。でもごめんなさい、小町さんの事情はこれ以上話せないわ」
結衣「分かってるよ。小町ちゃんもヒッキーも知られたくないって思ってる事だもんね」
結衣「あたし達は、あたし達のやり方でいくしかない。でしょ、ゆきのん?」
雪乃「ええ」
結衣「で、今日はどうするの?」
雪乃「勉強よ」
結衣「そっか、勉強かぁ……って、勉強!? 定期テストはまだ先でしょ!?」
雪乃「由比ヶ浜さんの勉強ではないわ。小町さんの受験勉強の事よ」
結衣「でも、それってヒッキーに拒否されたんじゃなかったっけ?」
雪乃「直接顔を合わせなくても、勉強を教える事は出来るわ。例えば、受験に役立つ問題集を貸してあげたり、過去問の採点やアドバイスを送るとか、ね。要するに、通信制の学校の教師のような事をするの」
結衣「うう~、聞いてるだけで頭痛くなってきた……」クラクラ
雪乃「来年は私達も受験なのだから、他人事ではないわよ?」
結衣「やめて~! 今はそんな事考えたくない……」
雪乃「仕方ないわね。話を戻すけれど、私がやりたいのは、小町さんを立ち直らせる事よ」
雪乃「しかし、これをやるには小町さんの事情に踏み込まなければならない。小町さんも比企谷君も、それは望んでいないでしょう」
雪乃「だから、受験勉強で気を紛らわせる手伝いをする、というのが私の考えた作戦よ」
結衣「確かに、テストが近い時とか憂鬱だし、他の事を考える余裕とかなくなるもんね」
雪乃「要するにそういう事よ。もっとも、私は別にテストが近いからと言って憂鬱になったりはしないけれど」
結衣「それはゆきのんみたいに勉強のできる一部の人達だけだよ……」ゲンナリ
結衣「で、あたし達は今からどうするの? まさか、ヒッキーの家に直接行って勉強を教える訳じゃないよね?」
雪乃「もちろんよ。私は、これから書店を巡って良さそうな参考書などを見繕おうと思っているの。由比ヶ浜さんにも、それに付き合ってもらいたくて声を掛けたのよ」
結衣「へっ? あたしが一緒にいても、大した意見とか出せないと思うよ? あたしそういうのあんまり分かんないし」
雪乃「大丈夫よ。今回は、由比ヶ浜さんが使う参考書もついでに探すつもりだったのだから」
雪乃「比企谷君にもこの前言われたでしょう? 私が教えた割には、由比ヶ浜さんの前回の定期テストの結果はあまり振るわなかった、と」
雪乃「私、とっても負けず嫌いなの。だから、次の定期テストで由比ヶ浜さんには結果を出してもらって、比企谷君が戻ってきた時に見せ付けてあげるのよ」フッ
結衣「あたしが良い点を取る事が勝手に決まっちゃってる!?」
雪乃「来年の大学受験を見据えるなら、当然の事よ。とにかく、そういう訳だから早速近くの書店を覗いてみましょう」
…………
雪乃「小町さんはうちの高校を受けるつもりだと思うから、この辺りの参考書が良いかしらね」ジー
結衣「うーん、どうだろ。今気付いたんだけど、そもそも、小町ちゃんの志望校って本当にウチなのかな?」
雪乃「どういう意味かしら?」
結衣「小町ちゃんがあたし達を避けたいって考えてるなら、志望校を別の高校に変更してるって可能性はないの?」
雪乃「あり得なくはないけれど、まだ然程日は経っていないでしょうから、そこまでの決断を固めているとは考えにくいわね」
雪乃(もっとも、小町さんを傷つけた元凶の人の志望校がウチだったら話は変わってくるのだけど……)
結衣「んー……って、アレ?」
雪乃「どうしたの?」
結衣「ゆきのん、う、後ろ!」
八幡「……」
小町「えっと……」ビクビク
いろは「あちゃー……」
雪乃「……えっ?」
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