八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その8
八幡「また性犯罪者呼ばわりか……」その7の続き
八幡「悪かったな、遅い時間になっちまって」
いろは「いえいえ~、わたしこそ長居してしまってすみませんでした」
八幡「遅くなったのは、一色が夕食を作ってくれたからだろ。お前が謝る必要なんざねぇよ」
いろは「そうですか? でも、先輩もお米ちゃんも美味しいって言ってくれて良かったです」ニコッ
八幡「まあ、実際旨かったしな。意外と料理できたんだな、お前」
いろは「当然ですよー! 女子として料理できるのは大事ですから!」
八幡(女子でも料理できない人はいるけどな。由比ヶ浜はともかく、平塚先生は結婚したいと言う前に料理覚えた方が良いですよ……なんて言ったら殺されるか)
いろは「ではでは~、わたしはそろそろお暇しますね! お米ちゃんも、また!」
小町「はい。また遊びに来て下さい。それと、お兄ちゃん」
八幡「ああ、分かってる」
いろは「?」
八幡「一色、駅まで送っていくが、いいか?」
いろは「へ? もしかしてわたしの事が心配でたまらないんですか!? そんなに心配なら駅までと言わず家まで来て両親にも挨拶して恋人として認められるように頑張ってくださいごめんなさい!」
八幡「はいはい、行くぞ」
いろは「む~、少しくらいまともに聞いてくれたって良いじゃないですか~!? 待ってくださいよ~!」
……
いろは「あの、先輩。1つ聞いてもいいですか?」
八幡「何だ?」
いろは「今日のわたし、お節介じゃなかったですかね?」
八幡「いや、別に。嫌だったら最初から断ってるだろ」
いろは「普通に最初は断ってましたよね、先輩?」
八幡「面倒臭い事に巻き込まれるんじゃねぇかと思ったからな」
いろは「女の子はみんな面倒臭いんですよ? わたしも、奉仕部のお2人もそうですっ♪」
八幡「……」
いろは「先輩? どうかしましたか?」
八幡「いや、別に」
いろは「それ、嘘ですよね? 結衣先輩や雪ノ下先輩の事、まだ怒ってたりしますか?」
八幡「まあ、な」
いろは「珍しいですね。先輩って、あまり本気で怒るようなタイプじゃないと思ってました」
八幡「あいつらはこっちの事情を知らなかったはずだし、いつものじゃれ合いのつもりだったんだろうってのは分かってる」
八幡「だが、理屈で分かっていても、気持ちがついていかねぇんだよ」
八幡(全く、何が理性の化け物だ。今までの俺は、理屈を捻じ曲げる程強い感情を抱いた事がなかった、ってだけの話じゃねぇか)
いろは「だったら、もう二度と奉仕部には戻らないって考えてもいいんですかね?」
八幡「……」
いろは「せんぱーい? 話、聞いてますか?」
八幡「ああ、聞いてる。奉仕部をこれからどうするか、全然考えてなかったから答えられなかっただけだ」
いろは「先輩がもし奉仕部にはもう戻らないのなら、生徒会に入りませんか?」
八幡「は? 俺が、生徒会に?」
いろは「はいっ♪ と言っても基本的に人手は足りているので、忙しい時とか誰かが休んでる時の穴埋めが主な仕事になると思いますけど」
八幡「今までと大して変わらんだろ、それ」
いろは「全然違いますよ? 先輩の手をお借りする時に、毎回あの2人に話を取り付けなくて済む訳ですし」
いろは「特に雪ノ下先輩の許可を取るのは、先輩を説得するより面倒なんですから」
八幡「あいつは口が立つからな。あいつとやり合わずに俺の手を借りられるってのは、確かに一色にとって大きな利点か」
いろは「ですですっ。で、どうですか? 正式に生徒会に入りませんか? さっきも言ったように、先輩の手を借りるのは緊急時だけにするつもりですから、先輩の用事とかにも多少は配慮できると思いますよ?」
八幡「……悪くない話ではあるな。だが、俺が奉仕部に在籍しているのは、俺の捻くれた性格を更生させるため、という名目で平塚先生に無理やり入れられたからだ」
八幡「俺が奉仕部を抜けるには、平塚先生を納得させる必要がある」
いろは「先輩の更生なら、生徒会の仕事でも可能なんじゃないですか?」
いろは「最近の奉仕部の主だった活動内容は、生徒会関連の仕事ですよね。やる事が大して変わらないなら、奉仕部じゃなく生徒会でも問題はないはずです」
八幡「……」
八幡(一色の言う通り、俺の更生は生徒会でも出来なくはない。むしろ、依頼人が来ない限り暇な奉仕部よりも生徒会の方が向いているまである)
八幡(だが、俺は……どうしたいのだろうか)
いろは「反論がないなら、先輩も納得したと見做しますよ?」
八幡「おい待て、俺は別に納得してないから」
いろは「なら、あの2人と仲直りする気がある、って事でいいんですかね?」ジー
八幡「分からん。今まで全然そんな事を考える余裕がなかったからな」
いろは「まあ、今はそれでも構いませんけど。ちゃんと考えておいた方がいいですよ?」
いろは「結衣先輩や雪ノ下先輩だって、いつまでもこのまま黙ってはいないでしょうから」
八幡「……そうだな」
八幡(今は平塚先生があいつらを止めてくれているはずだが、だからと言ってずっと放置は出来ない。近いうちに、必ず決着をつける必要がある)
八幡(しかし、あいつらと仲直りすれば、必然的にあいつらが何処かで小町に接触する時が来るだろう)
八幡(小町の事を思えば、あいつらとの関わりを完全に断つ方向に持っていくのが正解なのは間違いない。でも、本当にそれでいいのか?)
八幡(奉仕部という場所は、ここで投げ捨てても構わないような「偽物」だったのか?)
いろは「ところで、先輩。先輩の用事って、これからも当分続くんですよね?」
八幡「そうだな。まだ暫くは続くと思う」
いろは「明日は生徒会に顔を出さないといけないので何も出来ないですけど、明後日の土曜日は暇なので、また先輩のおうちにお邪魔させてもらってもいいですかね?」
八幡「いや土日は忙しいから。あれとかこれとか、色々とやる事がある」
いろは「先輩、そういう嘘はもういいんで。どうせ暇ですよね? とにかく、明後日お伺いしますから!」
八幡「何でお前そんなに強引なの? 俺の家に来てどうするつもりなの?」
いろは「わたしがお米ちゃんのリハビリを手伝う、って言ってるんですよ」
八幡「……よく気付いたな。お前、小町とは初対面のはずだろ?」
いろは「さすがに気付きますよ。お米ちゃん、結衣先輩達から聞いてたのと大分キャラが違ってましたし、やたらビクビクしてましたし」
いろは「いつもぞんざいに扱われてるのに平然としてる先輩が結衣先輩達に対して本気で怒る理由なんて、かなり限定されますよ」
八幡「鋭いな」
いろは「で、先輩の用事っていうのは、お米ちゃんのケアの事ですよね? だから、これからもそのお手伝いを今後もさせて頂こうかなって」
八幡「何が目的だ? 一色がそこまでしなきゃならない理由なんてないだろ」
いろは「ありますよ。でも、今の先輩にはまだ言えません」
八幡「そうか」
いろは「そうですよ。先輩はお米ちゃんの事と、奉仕部をどうするか、生徒会に入るのかだけを考えておいてください」
八幡「……」
いろは「あ、もう駅が見えてきたので、見送りはここまでで大丈夫です。先輩、明後日の土曜日はちゃんと空けておいてくださいね! ではでは~!」
タタタッ……
八幡「言うだけ言って行っちまいやがったな、あいつ……」
八幡(だが、一色の言う通りかもしれない。俺もこれからどうするか、考えていかねぇとな)
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