サヨウナラ(第2話)
内容が色々と酷い事になってしまっています。
作者の低クオリティーssにお付き合いありがとうございます。
祐樹「…」
白露「…」
鎮守府にある優斗の自室には、異様な雰囲気が漂っていた。
目の前のベッドには、優斗が目を閉じて横になっていた。手足を動けないようにしている状態で。
祐樹「ホントに…。どうすればいいんだかな」
白露「私も…。分からないよ…」
時は、約1時間ほど前に遡る。優斗は、船上で茜に抑えられながら鎮守府に戻ってきていた。
壊れてしまった状態で。
優斗「もう…。嫌だ…」
白露「ゆーくん…」
祐樹「とりあえず、今は休め。今日は俺もここに留まる事にするから」
優斗「休んでいられるワケないだろ…?」
祐樹「だからと言って今、余計な事して更に被害者増やす気か?」
優斗「だったら…。俺がどうにかなればいい話だ!!」
優斗が、抑えていた茜を突き飛ばして船の方へと向かおうとする。
それを見た瞬間、祐樹は優斗の足を引っかけさせて転倒させた。優斗はすぐに立ち上がろうとするが、祐樹が上から押さえつける。
優斗「離せ…!! 離せって言ってんだろうが!!」
祐樹「おーおー。暴れてんなぁ。まぁ、いったん眠ってもらいますよっと」
どこからか、ボールペンのようなモノを祐樹が取り出し、優斗に突き刺す。
突き刺さった瞬間、優斗は気を失った。
祐樹「まさか、味方に使う事になるなんてな…」
白露「ちょ、ちょっと!! ゆーくんに何したの!」
茜が、気を失っている優斗を気に掛けながら祐樹に食って掛かる。
祐樹「コレ? ボールペン型のスタンガン」
白露「ゆーくんが暴れたからって、スタンガンはおかしいでしょ!!」
祐樹「じゃあ、どうやってコイツを止めるんだ?」
白露「そ、それは…。何かで縛ったりとか…」
祐樹「悪いが、ここにはそんなモノは無い。もしかしたら、軽いチョップか何かで首元狙えば、気を失わせる事が出来るとでも?」
白露「ぐっ…」
言おうとした事をまるで見透かされているかのように、返された。
祐樹は、あっさりと言葉を続ける。
祐樹「悪いが俺は、100%成功することしか実行しないんでね。一か八かの方法なんかに頼る事なんかしたくないから」
そう言うと、優斗を担いで祐樹は鎮守府内に向かって行った。
茜は、何も言い返す事もできずに後ろからついて行く事しか出来なかった。
その後、優斗は執務室内の自室に連れ込まれ、起きた時に暴れても問題ないように手足を拘束された。
そして今に至るというところだ。
祐樹「ちょっと、外出て来る。生き残った艦娘にも今の状況を説明しないといけないからな」
白露「生き残ったって…。言い方があるでしょ」
祐樹「じゃあ、お前は深海棲艦になった艦娘が完全に元に戻ることが出来るとでも?」
白露「そ、それは…」
祐樹「そういや、お前の妹艦にも深海棲艦になった経験がある娘がいたな。まぁ、完全に深海棲艦になったワケじゃないから正確な情報にはならないけれどもな」
白露(ま、また…)
言いたい事を、何1つ言えない。言おうとしても、言いたい事の欠点を的確に突かれてしまう。
祐樹「一応、完全に深海棲艦になった艦娘を元に戻そうとした事はあるらしい。けれども、結果は…。言わなくても分かるな?」
そう言い残して、祐樹は優斗の自室から出ていった。
部屋の中では1人で立ち尽くす茜と、ベッドで手足を拘束されている優斗だけが残された。
白露「ゆーくん…」
優斗は、何も言わない。気を失っているだけなのだが、茜にとってはこれ以上辛い事はない。
自分自身の無力さ、そして、何も出来ない自分に対しての怒り。優斗を見れば見るほど、様々なモノが頭の中でこんがらがってしまっていた。
白露「なにも、出来なくて…。ゴメンね…」
白露「慰めるだけで、何も出来ない。ゆーくんのいっちばん近くにいる人なのに…」
涙が、ポロリと落ちた。止まることなく、涙は流れ落ちていく。
けれども、これじゃあ…。
ゆーくんが記憶を失った時から何にも変わってないよ…。
優斗「…んん?」
白露「ゆ、ゆーくん!? 目が覚めたの!?」
優斗「そうだけれども…。あれ、何でこんな所に…」
白露「ゆーくん、暴れてここに連れて来られたんだよ…」
優斗「そうだった、な…。けれども、ここで寝てる場合じゃねぇ。急いで皆を助けに行かないと…」
懲りずに、優斗は部屋から出ていこうとする。拘束されたままだろうが関係ないと言わんばかりに。
それを見て、茜はドアの前に立ちふさがった。
優斗「どいてくれ、茜。茜を傷つける事はしたくはないから…」
優しい声ではあったが、優斗の顔は笑ってはいない。
むしろ、怒っているような顔をしていた。
けれども、茜はどこうとはしなかった。それどころか、優斗をベッドに戻そうとした。
優斗「何すんだよ、茜」
ベッドに押し戻そうとする茜を手で押しのけ、言う。
茜は一言だけ言う。
白露「ゆーくん、助けに行くなんてせずに、ここをどいたら死ぬ気だったでしょ」
優斗「…」
白露「無言って事は…。事実って捉えていいんだね」
優斗「…まぁ、な」
白露「なんでよ…」
白露「なんで、そんな事するの!?」
声を急に荒げて、茜が言う。急に大声を出されたので、優斗は驚いていた。
少し間をおいて、優斗も言い返す。
優斗「なんでって、俺が皆を殺してしまったようなモンだろ!? 数十人を殺した殺人犯が、のうのうと生きていいはずがないだろ!!」
優斗「俺は、人殺しだ!! もう、この世にいる事が許されていい筈がない!!」
白露「違う…」
白露「そんな、ワケ…。ない、よぉ…」ボロボロ…。
涙を流してながら、茜が言う。
いつものような明るい声ではなく、これまで聞いたことがないような弱弱しい声で。
白露「ゆーくんは、人殺し、なんかじゃない、よぉ…」
白露「そもそも、勝手に死んだって決めつけるなんて、可笑しいよ…」
涙を流して続けながら言い続ける。
優斗「けれども、俺は…。俺は…」
言葉が続かなくなる。目の前で泣きじゃくる茜をどうにもできず、優斗はドアをこじ開けてどこかに向かって駆けて行ってしまった。
優斗「っ…」ダッ…!
白露「あっ…!」
どこかに向かって走っていく優斗を見て、茜も部屋から出る。
白露「追いかけ、なきゃ…」
茜も、どこかに向かって行った優斗を追いかけて行った。
ーー廊下ーー
祐樹「さて、皆をどうやって落ち着かせるかな…」
食堂付近では、祐樹は艦娘を落ち着かせるための言葉を考えていた。
そんな中、すぐ横を茜が通っていくのが目に入った。
しかし、妙に様子がおかしいのを目にして何か異変を感じ、声をかける。
祐樹「おーい、白露。何かあったのかー? もしかして、優斗が脱走でもしたか?」
白露「まぁ、その…。近いっていうか近いけれども…」
祐樹「だろうと思った。こんな時のために、拘束具に発信機をつけておいて正解だったぜ」
白露「準備がいいね、ホントに…」
祐樹「アイツが死のうとしても、海の近くには俺の鎮守府の艦娘が監視してるし、拘束具があるせいで首もつれない。まぁ、今のアイツは死のうとしても死ねない状況だしな。さて、発信機オンっと…」
画面上に、1つの点が浮かび上がる。恐らく、そこに優斗がいるという事だろう。
場所は、海の近くで止まっていた。
祐樹「…悪いが、優斗の事頼んでいいか?」
白露「分かってる」
祐樹「今のアイツは、多分俺が言っても何にも反応しないだろ。だから、辛いだろうけれども…」
白露「…大丈夫。何とかして、ゆーくんを救ってみせるよ」
そう言って、茜は優斗がいる所へと向かって行った。
絶対に助けてみせる。と、心に決めて。
ーー海辺ーー
優斗「…」
優斗(なんで、ここに来たんだろうな。俺。ここにいても、何も起きないのに。何か解決するワケでもないのに)
海辺では、波打つ音しか聞こえない。
だから、嫌な事があった時はここに来ている。
けれども、今回はどうにかなるようなワケではない。
白露「…やっぱり、ここだったんだ」
優斗「茜、か…」
白露「まぁ、ゆーくんはいつもなら嫌な事とかがあったら、だいだいここに来てるからね」
優斗「なぁ、茜…」
白露「ん? 何?」
優斗「茜は、俺が生きてて欲しいって思ってるのか?」
白露「…」
優斗「別に、何言ってもいいぞ」
白露「私は、ゆーくんに何があったとしても、生きて欲しいよ」
優斗「俺の所為で、人が死んでしまっても?」
白露「また、言うの?」
優斗「…」
白露「ゆーくんは、奇跡とか信じないの?」
優斗「奇跡…?」
白露「ゆーくんの所為で、深海棲艦になった娘が元に戻るっていう奇跡」
優斗「そんな事…。あるワケないだろ」
白露「じゃあ、もう1個だけ聞くけども…」
白露「ゆーくんの記憶が戻ったのも、奇跡じゃないの?」
急な所を突かれたので、どう反応していいか分からなくなってしまった。
優斗「っ…」
白露「こんな感じで、奇跡が起こる事もあると思うよ? 私は」
作られた笑顔という事は分かってはいるが、茜の笑顔を見ると何かが起こるんじゃないかと思ってしまう。
けれども、そんな事はあるワケがない。
優斗「けれども、コレとソレは全く違う話だろ…?」
白露「そう、だけれどもね…」
優斗「どうにも…。出来ないんだよ」
優斗は、重く、暗い空気に包まれていた。
白露「こんな話しか出来なくて…。ゴメンね。一番辛いのは、ゆーくんなのに…」
優斗「…なんで茜が謝るんだよ。悪いのは、俺なんだから」
白露「こんな時に、慰めたりするのが私のやるべき事なんだけれども、ね…」
優斗「だからと言って、お前まで気に病む事はないんだから…」
白露「でも、どんな事があったとしても、私は奇跡を信じるから。そして、ゆーくんとまた2人で笑える未来が来ること…。信じてる」
優斗「茜…」
茜が、精一杯の笑顔を見せる。今度は、作られた笑顔ではなく心からの笑顔。
そんな笑顔を見ると、茜が言う奇跡を信じて見たくなる。
優斗「だったら、俺も…。奇跡ってのを信じてみるかな」
白露「うん。ソレがいいよ。だから…。もう死のうとなんかしないで」
優斗「分かったよ。茜…」
そう言って、鎮守府に戻ろうとすると、サイレンが鳴り響いた。
サイレンが鳴っているのは…。俺の鎮守府だった。
優斗「な…!?」
白露「まさか、あのバケモノがここにも…?」
優斗「行くぞ、茜!!」
白露「うん!!」
鎮守府に向かって走っていく。鎮守府が近づけば近づくほど、嫌な風景が見えてきた。
あのバケモノと、元艦娘だった、深海棲艦がこっちに向かってきている風景が。
優斗「嘘、だろ…?」
白露「なんで、私たちの鎮守府が…」
優斗「マズイ、このままじゃ祐樹や優香たちが…」
急いで鎮守府内に戻る。中では、祐樹の鎮守府にいる艦娘が戦闘準備をしていた。
祐樹「優斗…。もう、大丈夫か?」
優斗「ああ…。けども、これって…」
祐樹「まさか、ここをターゲットにしてくるとはな…」
優斗「俺は、どうすればいいんだ?」
優斗が、近くにあった刀を用意しながら言う。
それを見た祐樹は、刀を取り上げ言う。
祐樹「馬鹿か、お前は。お前は生き残った艦娘と地下の避難用シェルターに逃げ込んでろ。ここは…。俺らがどうにかしてみせる」
優斗「でも…」
祐樹「でも、じゃねぇよ。俺のトコの艦娘は、相手の攻撃が届かないトコから攻撃させるから大丈夫だ。お前は、生き残った艦娘の事頼むぞ」
優斗「…分かったよ」
祐樹に反論する事もなく、言われた通りに地下シェルターに逃げ込んだ。
地下シェルターには、全員が何とか逃げ込む事が出来た。
地下シェルター自体が大きいので、これなら祐樹たちが逃げこんで来ても大丈夫だろう。
しばらくすると、砲撃音が聞こえてきた。恐らく、攻撃を開始し始めたのだろう。
無事を祈りながら、シェルター内でジッとしておく。
しかし、数十分も経つと祐樹たちがシェルター内に逃げ込んできた。
しかも、来た時よりも人数を減らし、息を切らして。
優斗「ゆ、祐樹…? 何が…」
祐樹「アイツ…。身体中、改造していやがる…」
優斗「…え?」
祐樹「届かない所から攻撃してたのに…。急にアイツから、触手が生えてきて…」
優斗「嘘だろ…?」
祐樹「アイツの触手に触れた瞬間、俺の鎮守府にいた艦娘たちが…」
優斗「そん、な…」
祐樹「けれども、鎮守府内に侵入だけはさせなかった。いや…。皆が侵入させなかったって、言った方がいいか…」
優斗「…」
祐樹が今さっき起きた事を、話してくれた。
触手に触れられた瞬間、身体が変色し始め自我が失われた始めたらしい。
けれども、完全に自我が失われる前に祐樹たちを逃がしきった、という事だった。
祐樹「ホントに…。辛ぇよ…。俺の所為で、こうなったんだから…」
優斗「けども、皆がお前を守ってくれたんだ。お前は…。皆に信頼されてたんだよ」
祐樹「そう、だと信じたい、な…」
そのまま、一夜はシェルター内で過ごした。
翌日、シェルターから出るといい天気になっていた。バケモノたちは、俺の鎮守府からいなくなっていた。
優斗「いい天気、だけれどもな…」
祐樹「ホントに、な…」
優斗「どうにかして、あのバケモノをどうにかしねぇと…」
祐樹「俺は、いったん鎮守府に戻る。そして、調べて見るよ。あのバケモノが生まれた原因を…。そして、アイツを…」
優斗「あぁ」
祐樹が、少しだけ減ってしまった艦娘と一緒に鎮守府へと戻って行った。
俺は、残った十数人の艦娘と共に鎮守府内にいた。
あのバケモノが襲ってこない事を願いながら。
優斗「なぁ、茜」
白露「なに?」
優斗「朱里、大丈夫かな…」
白露「お姉ちゃんのトコ…?」
優斗「一応、あそこも結構大所帯の鎮守府だから、さ…」
白露「狙われるかも、って事?」
優斗「警戒しておかないと。失ってからじゃ、遅いから…」
茜とこれからについて話していると、警報音が鳴った。
しかも…。悪い予感は的中して。
優斗「コレ、って…」
白露「お、お姉ちゃんが!!」
優斗「急ぐぞ!!」
艤装は、完全に使えなくなってしまったモノもあるが、予備の艤装が残っていたのでそれを使う。
朱里のいる鎮守府に全速力で向かう。特に、茜は急いでいた。
今、朱里の鎮守府にはあのバケモノの情報があったとしても、祐樹が戦った時の情報はまだ届いていないはずだ。
だから、あの触手攻撃は予想できないはず。触手での攻撃をされる前までに、着かなければ…。
白露「み、見えた!!」
茜が指さす方に、朱里の鎮守府があった。
しかし、おかしい。救助を求めていたはずなのに、何も異常がないように見える。
鎮守府内も荒らされている様子もない。
あのバケモノを警戒しながら、海上で待機していると、朱里がこっちに向かって歩いてきた。
朱里「ど、どうかしたの!? 急に大勢で…」
優斗「ここから救助を求めてるって来たから…」
朱里「そんな事してないけれども…」
優斗「…え?」
しかし、液晶画面には救助を求めている信号を示すアイコンが表示されて、アラームが鳴っている。
しばらくすると、他の鎮守府や、祐樹の鎮守府からも救援が来た。
祐樹「…どうなってんだ、コレ」
優斗「誤報、なのか…?」
祐樹「いや、でもこの警報を鳴らせるのってパスワード知ってる本人と俺だけだし、そもそも、朱里がミスって鳴らす事ってあるのか?」
朱里「そもそも、私パスワードとか入力してないよ…?」
優斗「…え?」
祐樹「プログラムのエラーとかでもない、ってどういう事、だ…?」
??「こウいう…事ダよ!!」
優斗「えっ…」
祐樹「なっ…」
あの忘れられない声が海の中から…。
聞こえた。
そして…。
あのバケモノが、海の中から、現れた。
しかも。
他に救援信号を受けて集まってきた艦娘を深海棲艦に変えながら。
気がつくと、周りは深海棲艦ばかりになっていた。
優斗「う、嘘だろ…?」
祐樹「まさか、この信号を出したのって…」
バケモノ「そうダ、コノ俺だ。オ前らをマとメテ、処理シテやろウと思ってナぁ…」
朱里「な、何…。アレ…」
優斗「みんな、逃げろ!!」
バケモノ「逃がスわケナいだろウガぁァぁぁァ!!!」
あのバケモノが、触手を展開した。こっちに飛んでくる触手を必死でかわす。
祐樹、朱里も必死で逃げる。
海からなんとかして離れようとする。後ろからは、悲鳴と助けを求める声が聞こえる。
助けてあげたい、けれども…。戻ったら…。
「死」あるのみだ。
なんとか、触手の届く圏外に逃げ切り、各鎮守府にあるシェルター内に避難出来たのはよかった。
しかし…。外は、恐らく地獄絵図と化しているだろう。
優斗「ウソだ…。こんなの…」
祐樹「なんで…、なんでこうなるんだよ!!」
朱里「そ、そん、な…」
無事にシェルター内に逃げ込めたのは、全員合わせても50人程しかいなかった。
ほぼ…。壊滅状態だ。救援に来た艦娘はほとんどが深海棲艦にされ、提督の何人かは恐怖で精神崩壊を起こしている。
白露「こ、こんな事って…」
優斗「なんで…。こんな地獄に…」
朱里「みんな、が…」
シェルター内に逃げ込めた全員は、絶望に包まれていた。
生きてここに逃げ込めたのにも関わらず…。死んだも同然だ。
バケモノ「はハハ…。みンナ揃っテ地獄にサヨウナラだ…」
バケモノ「後ハ…。あノトッぷ3だケダ…」
次回に続く…。
茜 「もう…。どうすればいいのか…。分からない、よ…」
茜 「次回、「ゴメンね」に続き、ます…」
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