2021-02-08 01:08:02 更新

概要

世間はバレンタインデーだとなんのかんので忙しいようですが、俺のssはいつも通りです。


前書き

(今の状態)
優斗→洞窟の中に逃げ込んだ。
茜(白露)→身体の半分だけ深海棲艦化。性格などには異変ナシ。
      しかし、身体に異変が発生中。
祐樹→優斗を処分するために色々としている。
朱里→優斗らを救おうとどうにかしている。


静かな空間に、水が垂れる音が響く。

そんな静かな空間に、2人はいた。少女は苦しみに耐えながら。少年は少女を救う方法を探しながら。


白露「はぁ…。はぁ…」


優斗「茜、大丈夫か…?」


茜は、気を失ってから少し経つと意識が元に戻ったが、苦しそうにしている。


白露「ちょっと…。苦しい、かな…」


優斗「すまない、何もできなくて…」


白露「ううん。いてくれるだけで、私は安心できるから」


茜の身体の深海棲艦化が進んでいっているワケでもないのに、茜は苦しんでいる。

もしかしたら、毒みたいな感じなのか? 俺にはどうなっているのか分からないから、何も言える立場じゃないのは分かってるけれども…。


優斗「それにしても…。どうすればいいのか、分からなくなってきちまったな…」


白露「こんな状況じゃ、病院を探すどころじゃないからね…」


優斗「俺ら、どうなっちまうのかな。海軍にも助けてもらえる状況でもなくなったし」


白露「それに関しては、私のせいでもあるから…」


優斗「いや、茜が責任を負う必要はねぇよ。あそこにいたままだと、茜がどんな目にあわされるか分からないから」


今、海軍のヤツらは俺と茜を血眼になって探してるだろう。

あの街であったことが海軍の耳に入るのも時間の問題だ。一応、この場から更に遠くに逃げるのは可能だ。

でも、茜が苦しんでいる状況で逃げるとなると、茜の命が危険になってしまうかもしれないし、これ以上苦しめるような事はしたくない。


色々と考えていると、服の袖を引っ張られた。

茜の方を向くと、血が地面に落ちていた。血の出元は、茜の口の中からだった。


白露「ゆー、ゲホッ、ゲホッ…。くん…」


優斗「茜!? どうしたんだ、急に!!」


白露「きゅ、急に、苦しくなって…。ゲホッ…。あ、頭が痛くなって…、痛ッ…」


…ドサッ。


目の前で、急に茜は倒れた。


優斗「…茜?」


白露「…」


優斗「おい、茜!! 茜!!」


耳元で名前を呼ぶも、反応がない。けれども、心臓はまだ動いている。

生きてはいる。けれども、茜は気を失って起きなくなってしまった。


優斗「嘘、だろ…。そん、な…」


この近くに病院はあるだろうけれども、深海棲艦化した状態で病院にいくワケにはいかない。

また、吐血した理由などが深海棲艦化による影響なのかどうかも分からないので、簡単な処置も出来ない。


優斗「ど、どど、どうすればいいんだよ…。このままじゃ、茜が…」


頭が更に混乱する。茜を助けてあげたいけれども、どうすればいいのかが分からない。

しかも、この状態で見つかってしまえば茜も俺もただじゃ済まなくなってしまう。このままじゃ、茜を守り切れない。


優斗「クッソ…。助けを求める事も出来ないなんて…。クッソォ!!」ガンッ!!


洞窟の壁を殴りつける。手から血が流れる。

けれども、今はそんな事はどうでもよかった。茜を助ける事が出来ない、今の自分自身の状況に対しての怒りがこみ上げてきて止まない。

いっつもこうだ。茜が何かあった時は…。俺はいつも何もする事が出来ない。


優斗「あー、クソクソクソォ!! どうして俺は、大切な人を守り切れないんだ!!」


怒りが止まない。大切な人が苦しんでいるのに。なんで俺は無力なんだ…。


優斗「茜…。ゴメンな…。こんな俺で」


目をつぶって横になっている茜を見て、声をかける。

口元についていた血をソッと拭き取り、寒くないように、上着をかける。

上着が無くなったので、俺は寒いが今はそんな事はどうでもいい。


優斗「どうすればいいんだよ…。俺は」


外を眺めると、黒い雲が空を覆い始めていた。

雨だか雪だかどっちだか分からないが、何かしら降ってきそうな感じだ。

今日は、この洞窟の中で過ごす事になりそうだけども、食料とかは当たり前だが、ない。

2、3日間何も食べなくても、俺は死ぬ事はないだろうけれども、茜が心配だ。


優斗「いざとなったら、俺が茜を背負って行くしかない、か…」


「絶望」という言葉が、自分の背中に重くのしかかる。

もう、逃げ道はどこにもない。けれども、意地でも俺は、ない道を探し続ける。「希望」という道へ。



ーー同時刻、祐樹の鎮守府ーー

祐樹「なんだ、コレ…」


朱里「○○市にて、深海棲艦を連れた男が逃走中、か…」


祐樹「アイツ…。遂にやりやがったのか!」


朱里「一般人にバレるってなると…。マズいね。コレは」


祐樹「けれども、どこからこの情報が漏れたんだ…?」


優斗の件は、海軍と憲兵しか知らないハズ。意図的にこの事を漏らす事がない限りは、一般人が知ることが出来ないのに、どうして…。


朱里「写真も出てる…。どこからどう見ても、優斗だよね。コレ」


祐樹「あの、野郎…!」


朱里「どうするの、祐樹。このままじゃ、優斗は一般人に殺されちゃうかもしれないよ」


祐樹「この写真に載っている所周辺に、艦娘を派遣させろ。優斗とあの深海棲艦を見つけ次第、処分させる」


朱里「…え?」


祐樹「幸いにも、優斗が海軍所属という事はバレてない。だったら、海軍にダメージが回る前に処理する方がいい」


朱里「ちょっ、それって…。優斗と茜を殺すって事!? そんなのやりすぎでしょ!?」


祐樹「なんだ、お前の親戚と同期が命の危機だから、助けようってか? …けれども、この海軍という組織を崩壊させない為にもこうするのが正解なんだ」


朱里「そんな事、絶対に私は反対だから。祐樹は祐樹で勝手にしてなよ。私は私でどうにかする」


そう言って、朱里は別部屋にいる艦娘らの所へと向かった。

一方、祐樹は、自分自身の鎮守府内の艦娘に対して、優斗らの処分についての話をしに向かった。


??「アイツは何を考えているのか…。自分自身の部下に対して、自分の同期を殺せって…」


廊下上にて今さっきの話を聞いてしまった際、男はそう呟いた。

その後、男は部屋の中にある資料を片づけ始めた。どこかに向かう準備をしながら。



ーー駆逐艦寮のとある部屋ーー

朱里「みんな、力を貸して欲しいんだ」


部屋の中に来るや否や、朱里は話を始めた。


時雨「力を貸してって、どういう事?」


部屋には、優斗の鎮守府にいたが、優斗がいなくなった影響で異動した優香や由衣がいた。


朱里「優斗と茜の事について、だよ」


そう言うと、部屋の中の空気が変わる。優香らは、いつでも行けると言わんばかりに食いついている。


時雨「その話、詳しくお願いします」


朱里「手短に言うと、…このままじゃ、優斗も、茜も…。殺されちゃうって話」


時雨「…え」


夕立「ど、どういう意味っぽい! 茜お姉ちゃんと優斗が殺されるって!!」


朱里「いったん、落ち着いて。咲ちゃん。今から話すから」


全員の前で、今の優斗と茜の状況を話す。

話終わると同時に、優香たちは部屋の外に行き、出撃の準備を始める。


朱里「…みんな。この行為は、海軍を裏切る事になる。それは、ここにはもう戻れなくなっちゃうワケだよ。それでも、行くの?」


時雨「当たり前だよ。僕たちを家族として扱ってくれて」


夕立「大切にしてくれた人を殺されるワケにはいかないっぽい」


朱里「そう言うと思ったよ。じゃあ、私も行こうかな」


優香たちが使っている艤装とは、少し違う艤装を取り出して、装着する。


朱里「じゃあ、行こうか。みんな」


朱里と優香たち、心音は優斗と茜がいると考えられる場所に向かって、海上を走りはじめた。


祐樹「…アイツら、行ったか。じゃあ、こっちも行動を開始するか。行け。全員」


祐樹の指示で、別の場所から祐樹の部隊が出撃していく。


2人の提督が出撃を命令していく。けれども、やろうとしている事は完全に…。真逆だ。


救いたい朱里と、消してしまいたい祐樹。


ただ、今の優斗は海軍に対しての信頼度がほぼ0の状況だ。

なので、朱里が行ったとしても、救える可能性は低い。だからと言って、祐樹が先に見つけたとしても抵抗する事が目に見えている。


2人は、いざという状況になった時のために準備をしていた。

1人は眠らされるためのモノ。もう片方の1人は、殺すためのモノを。


朱里「…祐樹よりも先に見つけないと」


時雨「僕たちはこっちを探すよ」


朱里「分かった。よろしくね」


朱里たちの部隊と、優香たちはいったん分かれて優斗たちを探しに行く。


時雨「…早く見つけないと」


村雨「何ともにないといいけれども、ね」


時雨「そうだといいんだけれども…。何か嫌な予感がするんだ」


村雨「優香お姉ちゃんがそう言うと…。本当に何か起きそうな気がする」


時雨「何も起きないのが一番いいんだけれどもさ。こんな状況だから、何もない、ってのは絶対にないはずだから」


夕立「なに、アレ…?」


村雨「え? どこ?」


夕立「あれっぽい! 何か穴が空いてるっぽい」


時雨「アレって…。洞窟?」


村雨「あの中にいるのかなぁ…」


時雨「見てみないと分からないよ。とりあえず、行ってみよう」


夕立「変な生き物とかが出てこないといいっぽい…」


優香たちが洞窟に近づく。しかし、洞窟の入り口付近に赤い液体、つまり血が落ちているのを見て、背筋が凍り付いた。


時雨「こ、コレって…」


村雨「血、よね…」


夕立「もしかして、変な生き物が本当に…」


時雨「そ、そんなワケない…。たぶん」


村雨「ど、どうするの? 一応、入ってみる?」


夕立「変なのが出てきたらどうするっぽい!」


村雨「出て来るって決まったワケじゃないでしょ…」


時雨「でも、見ないよりかはマシなハズだから。そもそも、3人で行けばどうにかなると思うよ」


夕立「何も出てこない事を願うしかないっぽい…」


村雨「とりあえず、行くしかないわね…」


優香たち3人は、洞窟の中へと進んでいく。幸いにも、変な生き物は出てはこなかった。


夕立「何もいない…っぽい?」


時雨「いや、コレ…」


優香が、足元を指さす。そこには、入り口付近にもあった血の跡がついていた。


夕立「ぽいぃぃ!?」


村雨「な、なんでここにも血が…!?」


時雨「もしかして、この奥に何かが…」


村雨「戻った方がいいんじゃ…」


時雨「そ、そうだね。嫌な予感がするし」


夕立「早く行くっぽい!」


3人が外に向かって移動しようとする。すると、洞窟の奥から何かが放たれた。


時雨「危なっ…!?」


夕立「な、何か飛んできたっぽい!?」


村雨「やっぱり、何かいるんじゃ…」


時雨「に、逃げるよ!!」


夕立「分かってるっぽい!!」


村雨「分かっ…」


優香たちに遅れて動こうとした、由衣がなぜか、急に目の前で倒れた。


夕立「ゆ、由衣お姉ちゃん!?」


時雨「ど、どうしたんだよ、由衣!?」


村雨「いっ…。た…」


由衣の足元には、石が落ちていた。拳1つぐらいのサイズの石だ。


夕立「もしかして、これが当たったっぽい?」


時雨「でも、このぐらいで気を失うなんて…」


いや、不可能ではない。勢い良く飛んできた石なら、このサイズでも威力は大きくなる。

けれども、なんで急に石が飛んでくるんだ…? もしかしたら、本当に何かいるって事なの、か…?


??「誰だ…。ここに入ってきたのは…」


急に、洞窟の奥から声が聞こえてきた。声は洞窟内に響き渡り、よけいに恐怖をあおる。

由衣を連れて逃げなければならないのに、怖くて逃げだせない。


時雨「ひ、ひぃ…」


夕立「ほ、本当に何かいたっぽい…!」


??「出ていけ…。ここから…!!」


そうは言われても、動けない。震える手で、通信機の電源をつけるも、操作できない。


夕立「こ、こうなったら…」


咲が、奥に向かって主砲を放つ。しかし、当たる事はなかった。


??「抵抗するというなら…。ここで倒す!」


時雨「なっ…」


夕立「えっ…」


一瞬、何かが見えた後、2人は気を失った。



ーー海上ーー

朱里「優香ちゃん!? 聞こえてる!? おーい!」


通信が入ってきたので反応するが、優香、咲の声が聞こえた後、何も聞こえなくなった。


春雨「ど、どうかしたんですか!?」


朱里「優香ちゃんたちと…。連絡がつかなくなった」


五月雨「そ、そんな! それじゃあ、優香お姉ちゃんたちは…」


朱里「みんな、急いで優香ちゃんたちのとこに向かうよ!!」


春香たちとともに、優香たちがいると思われる所に向かう。

何かに襲われた可能性があると考えると、あのバケモノの事しか頭に出てこない。


朱里「お願いだから、無事でいてね…」


そう願いながら、現地へと向かう。


海風「朱里さん、あれって…」


七海が指さす方向には、洞窟があった。洞窟付近には、誰かが歩いたような跡、そして血がついていた。


朱里「もしかして、この中に…」


山風「こ、怖い…」


江風「確かに、コレは…」


涼風「ちょっと怖いな…」


愛香「けれども、この辺から通信記録が出てたんなら、この中にいる可能性が…」


朱里「…行くよ。怖いなら、ここにいてもいいから」


そう言って、朱里は洞窟の中に入っていった。

それに続いて、春香たちも入って行く。入ってからすぐに、洞窟の中に3人が寝かせられているのを見つけた。


朱里「優香ちゃん!!」ダッ…。


3人を見つけた瞬間、朱里は駆け寄っていった。

優香たちは、気を失っていた。


朱里「どうして、こんな事に…」


寝かせられている3人は、特に目立った外傷はない。

けれども、由衣に頭には、何か硬いモノが当たったような跡がついていた。


江風「危ねぇ!!」


朱里「えっ…」


江風「いっ…!」ドサッ…。


海風「愛香!?」


愛香が、朱里に向かって飛んできた何かに直撃し、気を失う。


山風「な、何、今の…?」


朱里「みんな、戦闘準備!!」


艤装を展開する。すると、声が聞こえてきた。


??「また、誰か来たのか…。出ていけと言ったのに…」


朱里「この声…。まさか」


再び、何かが飛んでくる。今度は艤装で何とか防ぎきれたが、艤装が少しへこんでしまった。


朱里「ゆう、と…?」


春雨「えっ…」


??「…。今度は、お前らか…」


洞窟の奥から、1人の男が出て来る。


優斗「海軍の操り人形どもが…」


朱里「なっ…」


目の前にいるのは、紛れもなく、優斗本人だった。

けれども、目はこちらに向かって敵意を向けていた。「殺意」をまとった目線で。


(次回に続く)


後書き

何かと大変な展開になってまいりました。
次回、「救えない、仲間」に続きます。


このSSへの評価

このSSへの応援

このSSへのコメント


このSSへのオススメ


オススメ度を★で指定してください