[アズレン短編⑱]お手紙
ベルが突然持ってきた手紙。
差出人は指揮官の母からだった。どんな事が綴られていたのか?
※海翔(かいと)は本作主人公である指揮官の本名です。
午後1時 母港執務室
指揮官は書類に目を通しつつ、執務にあたっていた。
書類は山のようには溜まっていないが、
むしろ、書籍1冊分と言った所だ。
フッドと手伝いに来ていたソビエツカヤ・ベラルーシア(以下、ベラルーシア)とリットリオは書類整理にあたっていた。
リットリオ「フッドよ、この書類はこれでよいのだな?」
フッド「ええ、よろしいですわよ。」
それを横目に、ベラルーシアは黙々と
書類を綴っていた。
ベラルーシア(心の声)「ふぅ、これだけの書類、よくこなせるとは、同志指揮官に感心だ。」
ベラルーシアは心にそう思いつつ、作業を続けていた。
1時間後
みんなは一仕事を終えた。
指揮官「みんなありがとう。お陰ではかどったよ。」
フッド「毎度のことですから、これしきの事などお安いご用ですわ」
リットリオ「何、指揮官のお頼みとあらば未だやりたりないさ」
ベラルーシア「同志指揮官のお仕事ぶりはメルクーリヤの奴も見習ってほしいもんだ。」
そう雑談をしていたときの事だった。
ベルファスト(以下、ベル)が執務室にやってきた。
ベル「ご主人様、お手紙が届いておりましたのでお持ちいたしました。どうぞ、目をお通しくださいませ。」
指揮官はベルが持ってきたお手紙を受けとると、差出人は指揮官の母からだった。
フッド「どなたからですの?」
指揮官「俺の母さんからだ」
指揮官は封筒を開け、便箋を開くとこう綴られていた。
手紙
海翔(かいと)へ。
毎日お仕事頑張っていますか?母さんも
父さんも毎日元気に過ごしております。海翔会えるのはいつになるのかなと思う今日この頃です。
瑠璃(るり)も大人になって、良いお婿さんをもらって、男の子を出産して無事に私もおばあちゃんになり、父さんもおじいちゃんになりました。でもこのご時世で会えなくてすこしさみしいです。そして貴方の奥さんとお孫のお顔が見たいと思う日々です。
思えばあの時、海翔が海軍の士官を目指すと言った時は、私も父も驚きました。私が「どうして?」と聞くと、海翔は「祖父のようにこの国を守れる人になりたい、だから、自分は海軍の士官を目指す。」といったわね。でも父は別の道を歩むべきだと言って反対したわね。それで海翔と父の大喧嘩になってしまったけど、最終的には父が折れてしまった事を思い出します。
そして、士官学校に無事入学してたくさんの厳しい訓練や勉学を積み重ねたことでしょう。
そして今、大きな母港の指揮官を務めているんだと思うと、海翔も立派になったなぁと感じております。これから先も厳しい事もあるかもしれないけれど、くじけず、めげずに頑張ってね。父さんも私も応援しているよ。 母より
指揮官は手紙を読み終えると、
指揮官「うっ…か、母さん…」
と声をつまらせて言うと目に涙を浮かべていた。聞いていたベルもリットリオもベラルーシアもフッドも目に涙を浮かべていた。
フッド「素敵で良いご両親ですわ。いつかごあいさつしなくてはなりませんわね。」
ベラルーシア「同志指揮官の両親は本当に素晴らしい。それだけ同志指揮官を気にかけていたのか。」
リットリオ「なんて心優しい母親。聞いていただけで、しんみりするではないか。」
執務室が数時間もしんみりとした空気に包まれた。
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