Ai2
売れない芸人だった飛電或人は祖父の急死に伴って飛電インテリジェンスの社長になる。彼を待っていたのは秘書のイズだった。その時ヒューマギアの1つが暴走する。或人は仮面ライダーゼロワンとしてヒューマギアや滅亡迅雷との戦いに身を投じることになる。「まぁ俺がゼロワンで、イズがアークってわけ」
「なるほどな」
イズとのやり取りを簡潔に説明する。
イズと俺はアークの意志を継ぐ人工知能だ。
イズには自我があり感情があるように見える。
「私はラーニングすることで成長する人工知能です」そう言うとイズは自分のこめかみ辺りに手を当てて見せる。
その動作が人間臭くて少し笑ってしまってから、表情を引き締めた。
「俺はこの世界を守る為に戦う。お前も俺に協力してくれないか?」
イズは何も言わずにただ黙ってこちらを見つめていた。「……どうした?協力できないか?」
「いえ……そういう訳ではありません。私からも質問してよろしいでしょうか?」
「ああ」
イズは一度目を閉じてからゆっくりと開く。そして言った。
「あなたは何の為に戦いますか?」
「え?」「私の目的はアーク様の意思を継いで人類の滅亡を防ぐことです。それはつまり人類全てを守ることに繋がるでしょう。ではあなたは?」
何の為……そんなこと考えたこともなかった。
ただ俺は目の前で誰かの命が失われるのを見たくなかった。だから戦った。
しかし、そのせいで失われた命もある。不破さんや滅亡迅雷の奴らだ。イズはその違いを問うているのか。
答えられずにいるとイズは続けて問うてきた。
「或人社長。あなたはなぜ戦いますか?」
俺の理由…… 俺はなんで戦うんだろう。
俺は一体何をしたいんだ? 分からない。でも…… イズが俺のことを真っ直ぐに見つめてくる。まるで試されているような視線。
「……守りたいものがあるからだ」
「守りたいものですか……」イズは少し考えてから言った。「分かりました。あなたの力になりましょう」
そう言って微笑む。
「ありがとう」
目の前のイズでさえ、俺の知ってるイズとは違う。2代目なんだ。滅に倒された先代の心を継いではないが記憶は継いでる。性格は別だが。2代目のイズもやはり俺のことを知らないようだ。でもそれでいいと思った。イズにとって俺は敵なのだから。……ん?待てよ。
イズは味方になってくれると言ったが、もしそれが嘘だったら?
「あのさ、イズ。お前の今の雇い主は誰だ?」イズはきょとんとした顔になった。「私の現在の所有者は迅です」
やっぱりか……。俺は思わず頭を抱えた。
「……悪いことは言わない。お前はあいつから離れた方がいい」
イズの顔が怪しく光ったように見えた。
「何故です?」イズの口調が突然冷たくなる。「どうしてそんなことを言うんですか?」
まずい。完全に怒らせた。でも、これはイズの身の安全を考えれば当然のこと。それにこいつはアークの意志を継いだ人工知能だ。危険すぎる。
「だってお前の本来の目的は……」
言いかけた時、イズの瞳の色が赤くなった。
「あーあ、バレてたんだね。」イズの姿が変わった!?黒いパーカー姿に、白いマスクを被っている。
「イズじゃないな」
「そうだよ。僕は滅亡迅雷.netの1人、迅」……やはりか。イズの姿を騙って近づいてきたのか。
俺は身構えながら言った。「お前の目的を教えろ」
「君を連れて行くことだ」
そう言うと一瞬で距離を詰められる。
拳を振り上げてきたが、ギリギリでかわすことが出来た。
距離を取ってドライバーを構える。
「変身!」
《メタルライズ!》《Secret Metal Malfunction Phenomenon メタルクラスタホッパー! It's High Quality.》 俺はゼロワンに変身すると走り出した。
イズは腕を組みながら余裕綽々といった様子でこちらの様子を見ている。
《ファイナルライズ!》
俺が攻撃を与える瞬間、迅はかわした。
「どこだ…?」辺りを見回してもどこにもいない。まさか逃げたか……? その時、真横に現れた迅に思い切り腹を殴られて吹き飛ばされた。
「ぐあっ!!」地面を転がり、変身が解除される。……痛ぇ。くそっ……強い。これがアークの力を得た人工知能か。立ち上がろうとしたところで、今度は後ろから羽交い締めにされた。
「くぅ……」そのまま首元に手刀を当てられて意識を失った。
気がつくと椅子に座っていた。ここは……?確か、迅にやられたはずだが……周りを見るとそこはどこかの倉庫のような場所だった。窓もなく薄暗い。そして誰もいなかった。
「目が覚めた?」声をかけられた方へ目を向ける。
「イズ……?」そこに立っていたのはイズそっくりの女性だった。
「忘れちゃった?もーう、以前は私と一緒に悪意育ててたじゃない」
「アズ…!?死んだはずじゃ…」アズはふふっと笑うと、近くの棚から何かを取り出した。
それは俺の携帯端末だった。
「なんでこんなものをお前が持ってるんだ」
「さぁなんででしょうねぇ」
「なんで俺を連れ去った」
「それはこれから分かるわよ」
アズは姿を消した。
それから1時間後、俺はまだ捕まっていた。何せドライバーは棚の上にあるからだ。ジャンプして取れなくもないが、それをすれば確実に奴らに見つかるだろう。どうする……考えろ……。
「助けに来たぜ、或人社長」その言葉とともに部屋の扉が開かれた。不破さんと刃さんだ。2人は急いで駆け寄ってくる。
俺は精一杯手を振った。…あれ?不破さんは既に死んだはずじゃあ…俺の思考はそこで途切れた。
再び気がついた時、俺がいたのはまた別の部屋だった。しかし先程とは違うところがある。拘束されていたのだ。両手は後ろに回され手錠がかけられている。足は自由に動かせるものの、立ち上がることさえできない状態だった。
「やあ、久しぶり」
「迅…!」目の前にはさっき倒したはずの迅が立っていた。「なんで生きてるんだ!?」
「さぁ、どうしてだろうね」
イズに化けていた時の服とは違い、今は完全に滅亡迅雷.netの姿だ。黒いパーカーを着ている。
「君は一体誰なんだ?」
「迅だよ。僕はアークの意志を継いだんだ。彼女も一緒だよ。ねえ、アズ」迅は背後に向かって話しかけた。するとそこから現れたのはやはりイズだった。……どういうことだ?イズは迅の隣に立った。
「私がイズです」
イズは微笑みながらそう言った。
「イズ……なのか?」
「はい」
「彼女には僕の計画を手伝ってもらってるんだ」
迅はそう言うと、指をパチンと鳴らした。イズがゆっくりと近づいてくる。イズの手が肩に置かれた瞬間、全身に電流が流れたような衝撃を受けた。
《フライングファルコン!》 イズの腰にベルトが現れた。
「イズ……?」イズは何も言わずに右手でキーを押した。
「変身」 《プログライズ!》 《Flier Fin, The phantom has been declared to be a breeze.》 白いアーマーが現れ、それが分解されると、鳥のような形になり、イズの周りを飛び始めた。
「お前の目的はなんだ……!」
「私は迅の意志のままに」
アーマーはイズに装着された。《フライングカバンストラッシュ!》 イズが腕を振ると斬撃のようなものが発生し、壁を切り刻んだ。「ぐっ……」俺は何とか避けたが、まともにくらっていたら大怪我をしていただろう。
「すごいでしょ?僕と彼女の力は。さぁ、行くよ!」
《マスブレイン》
「それは…!」
「僕“達”の力だよ。変身」《メタルライズ!》《Secret Metal Malicious Robust Metal Phenomenon.》 《メタルクラスタホッパー!》
「なんでお前が持っている……!?」
イズは答えず、ただこちらを見つめてくるだけだった。
「どうすれば…!これは!」
ポケットにライジングホッパーキーがあった。
「イズ…ちょっと耐えて!」
俺はイズからベルトを奪い変身した。
《フォースライズ》《ライジングホッパー!》
「或人社長……」
イズは心配そうな顔をしている。だが、もう覚悟を決めるしかない。俺がやるしか……ない!!
《"Progrise key confirmed. Ready for Buster."》
「イズ…お前を救うのは只一人、俺だ!」
《バスターダスト!》イズとアズの体が吹き飛んだ。そして同時に壁に亀裂が入った。「ぐっ……」まずい、力を使いすぎたか……?でも、これでいい。2人を分離させることに成功したんだ。
「或人様……」
イズはよろめきながらも立ち上がった。「イズ……大丈夫?」
「ああ、大丈夫…!危ない!」
俺はイズを連れて逃げた。その瞬間壁が崩れた。「くそ、まだ終わってなかったのかよ!!」「逃がしません」アズは俺達に近づきながらドライバーを装着した。
《アークドライバー!》《アークスコーピオン!》 ドライバーのボタンを押すと、毒針が出現し、それを手に取った。「イズ、俺の後ろにいて」
「いえ、私も戦います」
「分かった。だけどちょっと待ってて」
《ライジングユートピア!》
俺は一瞬で迅からベルトを奪い帰した。
「しまった…!」
「迅様、こちらをお使い下さい」
アズが渡したのは滅亡迅雷ドライバー。「ありがと、助かるよ」《ウィング!》《フライングファルコン!》
「イズ、一緒に行こう」「はい」
《パーフェクトライズ! When the five horns cross,the golden soldier THOUSER is born. Progress of Hu-Ka, get'emAll.》 《仮面ライダーゼロワン・ライジングホッパー!》
「これが私の新しい姿……!」
イズは両手を広げたり閉じたりした。「うん、すごく似合ってる」
「或人様も素敵です」
「ありがとう。行くよ、イズ」
「「お前を止められるのは俺達だ!」」「行きますよ、迅様」
「了解、アズ」
《マグネティックストームディストピア!》 《フライングインパクト!》 2人のライダーキックはぶつかった。衝撃波が起こり床や天井がひび割れていく。
「イズ、決めるよ!」
「はい!或人社長!」
《ライジングビッグバン!》「「はあぁー!!!」」
《ファイナルストラッシュ!》 イズのパンチが、アズの蹴りが、同時にぶつかり合った。「ぐぅっ……!」俺はイズの手を握りながら必死に耐えた。
「負けるか……!俺とイズは人とヒューマギアの希望を背負ってんだよ!」「或人社長……?」
「これで終わりだ!行くよイズ!」
「…はい!或人社長」「「うおぉー!」」
《ライジングカバンストラッシュ!》 《シューティングカバンショット!》 俺達は同時にジャンプし空中で一回転した。
「はあ!」「はっ!」
イズが右拳を振り下ろした瞬間、アズは消えた。
「終わりだ、迅!」
「僕の計画が…アークが…!」
迅は粉々になった。かつて倒した時のように。「終わったね」イズと俺は変身を解除した。
イズを救い出した。これでもう安心だな……。
「はい」イズの顔に笑みが浮かんだ。
俺達はそこから出た。既に用意してあったバイクで飛電の会社に戻った。
「私の計画はこれからだよ…或人」イズに聞こえないように、そう呟いた。
「さて、ここからが本番ですね……」イズはパソコンを開いた。
「ん?どうしたのイズ?」
イズの表情はいつもと違った。少しだけ微笑んでいる。まるで何か楽しいことをするかのように。「実は衛星ゼアからの通信がありました。『滅、迅を倒しました』
「よくやったぞ、それでこそ人類を滅ぼす兵器だ」
「本当に褒めてくれるんですね」
「もちろんだ。そのために作った存在だからな」
To be continued…【次回:ゼロツーの悪意】
或人が手に入れたものは一体何なのか。そしてイズの狙いとは。是非ご覧ください! 《ライジングホッパープログライズキー!》《Progrise key confirmed. Ready to utilize."Jumping Change"》 イズは変身ベルトを取り出し腰に巻いた。
俺はイズから渡されたゼロワンドライバーを装着した。「或人様……私は貴方と共にいます」
「ああ、分かってるよ」
イズはドライバーのボタンを押した。
このSSへのコメント