深海棲艦を指揮する提督[諫田政一]
強くなる一方の深海棲艦、腐った海軍…
最早愛想も尽きた。
私は私と家族を護る為に寝返る。
仮に世界を敵に回そうとも家族だけは護り抜く。
諸注意は第一作に記載
諫田政一は深海棲艦を指揮する事に。
深海棲艦と共に海軍、そして国を敵に戦う。
先に待つは全滅か、或いは幸せか…
ー第零章 逃亡ー
ー一月十九日 執務室 0:29ー
提督 「……此処は陥落した事にするのか。」
中枢(深) 「エェ、アナタハシンダコトニスルワ。」
提督 「…なら、血を残そうかねぇ……」シャッ
ポタポタッ
暁 「…引越し準備、終わったわ。」
中枢(深) 「ソウ、ナラスグニデテチョウダイ。」
暁 「分かったわ。」
提督 「…これから世話になる。」
中枢(深) 「カマワナイワ、アナタノタメナラ。」
パタン
提督 「…悪いが私は海軍を捨てる。」
不知火 「…行きましょう、提督。」
提督 「…あぁ。」
ー一月十九日 01:28 深海棲艦大本営襲撃ー
ー一月十九日 08:44 大本営陥落ー
ー一月十九日 14:49 元帥行方不明 死亡と判断ー
ー一月十九日 18:42 元帥配下艦娘捜索打切ー
ー一月十九日 20:22 ラバウルー
准尉 「…海軍の愚行に愛想も尽きたか……」
准尉 「…ゴーヤ、至急居場所を突き止めてコレを。」
准尉 「…政一、私は貴方と共に海軍と戦おう。」
ー一月廿日 04:48 深海棲艦本拠地ー
北方棲姫 「…オイ、コイツヲツカマエタゾ。」
ゴーヤ(ラバウル) 「…コレを渡しに来ただけでち。」
提督 「…手紙だけ受け取って返しなさい。」
北方棲姫 「…テガミハアズカル、カエレ。」
ゴーヤ(ラバウル) 「…返事、待ってるでち。」
提督 「さて、手紙の中身は…」ガサッ
提督 「………北方棲姫、ラバウルに使者を出せ。」
北方棲姫 「ハ?」
提督 「[貴殿と其の配下を快く迎え入れる]と。」
北方棲姫 「…シッテルノカ?」
提督 「嘗て勤務していたラバウルの提督からだ。
元大本営の大将だった奴だな。信用出来るぞ。」
北方棲姫 「…ホントウニカ?」
提督 「大本営から態々私の配下になる様な男だ。
今も善戦しているとの事だから早めに迎え入れて
戦力確保をしておきたいんだ。頼めるか?」
北方棲姫 「…アナタガソコマデイウナラ。」
提督 「そうか、頼む。」
ほっぽ 「政一、早く!!」
提督 「おう、今行く!!」
北方棲姫 「……シンヨウデキルノダナ、ヤツハ。」
ー第一章 深海棲艦との生活ー
ー本拠地内 10:42ー
電 「…怖いのです……」
叢雲 「昨日迄姫級と生活してたのに何を今更…」
ぷらずま 「…イ級が多過ぎて邪魔なのですが……」
中枢(深) 「コロサナイデ、タイセツナナカマヨ。」
ぷらずま 「分かってるのですが…」
武蔵 「然し全く姫級が居らんな。」
中枢(深) 「ヒメキュウトカオニキュウトカ、ゼンブ
アノヒトガヒッコヌイテイッタカライナイワヨ。」
武蔵 「むぅ、其れは済まない事をしたな…」
中枢(深) 「イイノヨ、アナタタチガコウシテココニ
キテクレタカラミンナモドッテキテクレタシネ。」
武蔵 「そうか…」
中枢(深) 「タダ、ワタシノチョクゾクノブカニハ
ヒメモオニモイナイワ…ダカラアノヒトニイッテ
センセンニダスコトニナルワネ。」
提督 「だろうな…」
武蔵 「……話は変わるのだが、深海棲艦は我々と
あまり変わらない生活をしているのだな…」
中枢(深) 「ソウネ…ウミニイラレナクナッタカラ。」
大和 「……」
提督 「人間は只管に我儘で理不尽を無理に通す様な
生物だからな…蟹が食いたい鯨が食いたいと言って
海を汚し生態系を崩し自然を壊し尚飽き足らず。」
中枢(深) 「…ダカラニンゲンハキライナノヨ。」
提督 「だろうよ…」
中枢(深) 「…コノワタシガナカヨクスルニンゲンハ
アナタダケダカラ、ワスレナイデネ。」
提督 「…そうか……まぁ、そうだな。」
早紀 「先輩!!」
提督 「ん?」
早紀 「浴場がヤバイっす!!」
提督 「風呂場がか?」
早紀 「兎に角来るっす!!」
ー浴場 11:00ー
提督 「…檜風呂かよ。」
中枢(深) 「モリノモクザイデテヅクリシタノヨ。」
提督 「あぁ…そういう……」
中枢 「ねぇ…私をジロジロ見ないでくれない?」
中枢(深) 「ワタシヨリムネガオオキイノネ…」
中枢 「何処を見てるのよ!?」バシャッ
提督 「…ソコには触れないでおく。」
天龍 「女のココは男がとやかく言うモンじゃねぇ、
触れねぇってのは良い判断だと思うぜ。」パシャッ
提督 「…天龍、お前早速適応してんな。」
天龍 「どうせ寝返ったんなら寝返ったで受け入れて
自由に過ごすってのが私のスタンスなんでな。」
提督 「そん位が丁度良いんじゃねぇのかね?」
照月 (…何か恥ずかしい、提督が来てる。)パシャッ
提督 「…あぁ、一つ聞きたいんだが男風呂ねぇか?」
中枢(深) 「シンカイセイカンニハオンナシカイナイ
トイウノニオトコブロガアルトオモウノカ?」
提督 「…混浴か……」ガクッ
照月 (あれ…嬉しそうには見えない……)
提督 「仕方無いか…暑い。」バサッバサッ
中枢(深) 「オイ!?」
提督 「…シャワーがきっちり出るのは有難いな。」
大和 「私も入ろっかな。」バサバサッ
武蔵 「丁度汗を流そうと思っていた。」ファサッ
早紀 「檜風呂初めてっす!!」バサッ
中枢(深) 「……ナゼテイコウガナインダ…」
大和 「私達は提督の御蔭様で出撃出来るのですよ。」
武蔵 「裸を見られる程度、大したモノでは無い。」
早紀 「私政一と結婚してるっすよ、勝ち組っす!!」
中枢(深) 「…ドオリデテイコウガナイノネ。」
提督 「…ふう……」ザバァ…
中枢(深) 「…シバラクハキュウカトオモッテ。」
提督 「ほーい…」
ー第二章 鹵獲ー
ー外洋 14:58ー
レ級 「……」
磯風 「…私を如何する気だ。」大破
レ級(深) 「ドウカシタノカ?」
レ級 「いや、大破艦が一名…恐らくは落伍。」
レ級(深) 「…ソーイヤチカクデセントウアッタナ。」
ル級(深) 「…ドウスルノ?」
磯風 「…戦艦が三隻、私もここまでか……」
レ級(深) 「…オイ、アイツアキラメハジメタゾ。」
レ級 「…仕方無い、連れ帰る。」
ル級(深) 「…ホンキ?」
レ級 「提督なら、恐らく殺しはしない。」
磯風 「…私を何処へ連れ行く気だ。」
レ級 「ウチの提督の所、陸だから安心しろ。」
磯風 「…従うが吉か。」
ー本拠地内政一自室 16:44ー
磯風 「……」←入渠済
提督 「…磯風ね……所属が大本営か。」←風呂上がり
磯風 「貴方は死んだと聞いていたのだが…」
提督 「……大本営と海軍に愛想尽きちゃってね…
逃げる為に死を偽装したのさ。」
磯風 「…そうだったのか。」
提督 「二つの選択肢が有るよ。」
磯風 「…何?」
提督 「一、此処に着任する。二、ラバウルに行く。
何方か好きな方を選ぶと良いよ。」
磯風 「…帰るという選択肢は無いのか?」
提督 「戦闘報告が上がっててね…君の居た艦隊は
大破進軍で三人死んでる。君が落伍したのは正に
神の救いとしか言い様が無い。恐らく姉が…いや、
何でもない……兎角君が仮に戻っても大破進軍で
死ぬ確率が迚高い状況だから帰す訳にはね…」
磯風 「成程、理解した…ならば私は此処の御世話に
なろうと思う。不束者だが宜しく頼む。」
提督 「分かった。じゃあこの書類に名前と前所属と
艦種、其れから練度と今の装備書いて執務室に。」
磯風 「…面倒だな……」
提督 「鉛筆で良いよ…これ鉛筆ね、後消しゴム。」
磯風 「鉛筆で良いのか?」
提督 「向こうで清書と処理はしてくれるから。」
磯風 「…分かった。」
提督 「…君みたいな不運な子が少しでも幸運になる
様にするのが私の役目だから、安心してね。」
磯風 「…所で提督は何故此処に来たんだ?」
提督 「昔からやり取りが有ってね…温和派と仲が
良かったりしたからさ、向こうの御偉いさんが
「良ければ指揮を執って欲しい」ってね。」
磯風 「…其の時には愛想が尽きていたと。」
提督 「そういう事…大本営の仲間は皆引越して来た
からあの時蛻の殻だったんだよ。」
磯風 「成程…書けたぞ。」
提督 「うん、執務室は出て左、隣の部屋だよ。」
磯風 「感謝する。」パタン
提督 「……落伍ねぇ…」
ー執務室 17:00ー
磯風 「……」
加賀 「…書類の方、受理しました。では今日から
宜しく御願いします、磯風さん。」
磯風 「あぁ、宜しく頼む。」
あきつ丸 「加賀殿、書類上がったであります。」
加賀 「分かったわ、タイムカードだけ切って頂戴。」
あきつ丸 「では失礼。」ピーッガシャッ
加賀 「政一が「終わったら部屋に来い」って。」
あきつ丸 「成程、では行って参るであります。」
加賀 「御疲れ様、明日も宜しくね。」
あきつ丸 「任せるであります、では失礼。」パタン
磯風 「…あの人は?」
加賀 「元陸軍船のあきつ丸ね。」
まるゆ 「戦闘報告、置いて行くぞ。」チャッ
加賀 「纏めとくわ、有難う。」
まるゆ 「構わん、どうせ戦闘以外に能は無い。」
磯風 「へ?」
まるゆ 「では失礼。」パタン
加賀 「…あの人はちょっと変わったまるゆさんよ。」
磯風 「何故男物の服を…」
加賀 「政一と寸法が同じなのよ。」
磯風 「…摩訶不思議だな。」
ー第三章 一手間違えれば戦況は変わるー
ー政一自室 18:40ー
あきつ丸 「…むむむ……」
提督 「…戦況は私が不利か。」
あきつ丸 「…こうであります。」パチッ
提督 「…王手。」パチッ
あきつ丸 「ぬっ…させませんぞ!!」パチッ
提督 「ほいありがとさん。」パチッ
あきつ丸 「なっ…詰んだであります……」
提督 「此処で飛車を動かしたのが間違いだな。」
あきつ丸 「…と言いますと?」
提督 「飛車は前後ろと横に睨みを利かせて初めて
役に立つ駒だ…此処では前にしか睨みが利かない。
故に此処に角を打たれると如何しようもない。」
あきつ丸 「…勉強になったであります。」
グラーフ 「…然し、私の方も詰ませるとは……」
提督 「まだチェックすらしてないが?」
グラーフ 「…最短三手、長くとも十七手で詰む。」
提督 「ほう、分かるのか。」
グラーフ 「あぁ…本国では相当強かったのだがな。」
暁 「…而も私の分も同時進行で一色にされたわ。
四十八しか置いてないのに全部黒よ…真っ黒。」
提督 「お前は角を狙い過ぎだな。」
暁 「…悔しいわ。」
グラーフ 「…どうせだ、麻雀でもしよう。」
あきつ丸 「そう言えば丁度四人でありますな。」
暁 「負ける未来しか見えないけど、やるわよ。」
ー18:55ー
提督 「ロン…清一色海底撈月ドラ三、倍満。」
グラーフ 「なっ…四枚待ちだと!?」
あきつ丸 「萬子を止めて正解であります。」
暁 「親倍満だから二万と四千ね。」
グラーフ 「…八百しか無いぞ……」
提督 「四暗刻は流石に無理かね…」
あきつ丸 「其れは最早神の怒りであります。」
ー19:27ー
提督 「ツモ、大三元。」
あきつ丸 「…箱であります。」
グラーフ 「と、飛んだぞ…」
暁 「…私一位だったのに……」
ー19:54ー
提督 「ロン、四暗刻単騎。」
あきつ丸 「ま、まさか倍役満を放銃するとは…」
暁 「而も白…たった一枚しか無かったのに……」
グラーフ 「…これは未来が暗いな。」
ー20:22ー
提督 「……ん、天和。」
暁 「…無双ね。」
あきつ丸 「…最早神の悪戯でありますな。」
グラーフ 「…ゲームを変えないか?」
提督 「…ならダーツでもやるか、01。」
ー20:38ー
提督 「上がり。」triple19!!Winner!!
暁 「……私、ビリ…」194
グラーフ 「…ダーツでも敵無しか……」85
あきつ丸 「ハットトリックまで決められては我々は
唯の賑やかしであります…」19
ー四人の夜は長いー
ー第四章 石の上にも三年とは言うが…ー
ー一月二十一日 02:44ー
提督 「…ツモ。」バタッ
グラーフ 「なっ…石の上にも三年だと!?」
提督 「役満だな。ローカルだが。」
あきつ丸 「初めて見たであります。」
提督 「…さて、寝るぞ。」
暁 「私は今日此処に御邪魔するわ。」
ー08:55ー
夕立 「ぽいぽいぽい!!大変ぽい!!」
提督 「如何したんだ?」
夕立 「あかつきちゃんが艤装を装備したっぽい!!」
提督 「………はぁ!?」ガバッ
ー工廠 09:12ー
あかつき 「……」ムフー
提督 「…マジだ、而も空母だ……」
暁 「…間違い無く貴方の子だからね。」
あかつき 「…名前欲しい。」
提督 「…名前……何か良いのは無いか?」
暁 「…何も思い付かないわ。」
提督 「…青龍。」
暁 「え?」
提督 「蒼龍って居るだろ?」
暁 「えぇ、まぁ…」
提督 「其の蒼を青銅の青に変えるんだよ。」
暁 「…良いかも。」
あかつき 「…やだ。」
提督 「そうか…」
あかつき 「……」
提督 「あ、早百合。」
暁 「え?」
提督 「早百合って如何だろうか。」
あかつき 「…良いね。」
提督 「今日から早百合だな。」
あかつき→早百合 「うん。」
暁 「…原型無いわね。」
提督 「親子で同じ名は流石にな…」
暁 「…そうね。」
ー執務室 09:33ー
早百合 「……」
加賀 「艤装展開、御願いします。」
早百合 「はい。」ガシャッ
加賀 「…上から28、38、20、20ですね。」
提督 「…上から艦戦、艦攻、艦爆、彩雲で頼む。」
加賀 「分かりました。」
提督 「…大きくなったな。」
早百合 「お父さんがあんな事しなければ…ね?」
提督 「お前だってあんな事しただろ、相殺だ。」
早百合 「…お父さんの意地悪。」
提督 「意地悪で結構、提督業は意地悪でなければ
上には立てんよ。まだまだお子様だな。」
早百合 「…石の上にも三年ってね。」
提督 「……だな。」
暁 「さ、訓練よ!!」
早百合 「え?」
加賀 「二航戦は出撃なので五航戦に頼みましょう。」
ー弓道場 10:22ー
早百合 「えい!!」バシュウ!!
カン!!
翔鶴 「…やぁっ!!」バシュウ!!
カン!!
瑞鶴 「お姉ちゃんも早百合ちゃんも上手いなぁ…」
提督 「……」バシュウ!!バシュウ!!バシュウ!!バシュウ!!
カン!!カン!!カン!!カン!!
提督 「少し鈍った。」バシュウ!!バシュウ!!バシュウ!!
カン!!カン!!カン!!
鳳翔 「あらあら…鍛錬ですね。」
提督 「だな…」
ー談話室 15:48ー
提督 「……」←仮眠中
磯風 「…仮眠中か。」
早百合 「……あぁ…疲れた……」
磯風 「早百合さん、何が有ったんだ?」
早百合 「鳳翔さんに扱かれたんだよ…」
磯風 「成程、其れで…」
加賀 「…レーションが届きました。」ドサッ
提督 「…御苦労。」ムクッ
磯風 「なっ!?」
早百合 「…やっぱりお父さんは何か変だよ。」
提督 「寝ようにも寝付けん、故に起きていた。」
磯風 「…驚いたぞ。」
加賀 「…レーションは流石に不要では?」
提督 「いや、試験をしろと言われてな。」
加賀 「へ?」
提督 「実は深海棲艦の新開発レーションだそうで。」
加賀 「…そうですか……」
提督 「味見だけすれば良いとの事。」
加賀 「分かりました。」
提督 「開発に二年か…よく続けたな。」
加賀 「石の上にも三年ですね。」
ー第五章 製造継続ー
ー工廠 17:44ー
提督 「…割と美味いな。」もちゃもちゃ
ガッチャンコンガッチャンコンガッチャンコン
…チャリン………チャリン………カッチャン……
南方棲戦鬼(深) 「…ナニシテンダ?」
提督 「…弾薬の製造……ラバウルに輸出する。」
南方棲戦鬼(深) 「…ナゼ?」
提督 「民間に千梃回してる…流石に製造を止めると
迷惑が掛かるのでね……まぁ、仕事は仕事さ。」
南方棲戦鬼(深) 「…ワタシガシヨウカ?」
提督 「…頼もうか。」
南方棲戦鬼(深) 「…ワレワレガツカウホウダンノ
ツクリカタトカワラナイナ……アンシンシタ。」
提督 「五十で箱に詰めてくれ。二十箱で一組だ。」
南方棲戦鬼(深) 「ワカッタ。」
ー政一自室 20:11ー
川内 「…ふぅ……」キラキラ
提督 「…夜戦馬鹿め。」
南方棲戦鬼(深) 「…アガッタゾ。」つダンボール
提督 「ん?」
弾薬×16000
提督 「……へ?」
南方棲戦鬼(深) 「テッコウトフツウノヤツ。」
提督 「…よし、採用。明日からも頼むわ。」
南方棲戦鬼(深) 「オウ、マカセロ。」ニヤッ
川内 「ねぇ、夜戦!!続き!!」
南方棲戦鬼(深) 「トリコミチュウカイナ…マゼロ。」
提督 「へ?いや混ぜろって…」
南方棲戦鬼(深) 「オマエノコトガズットスキダッタ
ノダカラモウガマンナンテデキナイ、マゼロ。」
提督 「いや倫理観とか周囲の目とか中枢さんとか
色々と問題が有ってですね!?」
南方棲戦鬼(深) 「シルカ!!マゼロ!!」ガバッ
提督 「ちょっと待って!?」
ー一月二十二日 執務室 05:44ー
提督 「誠に申し訳有りませんでした。」土下座
中枢(深) 「…アナタッテヒトハ……」
南方棲戦姫 「悔いは無いわ。」←元南方棲戦鬼(深)
中枢(深) 「ナンナノ?アナタノアレニハイッタイ
ナニガアルトイウノ?モウワケガワカラナイワ。」
提督 「私もあぁなるとは思いもせず…」
中枢(深) 「…ソノコハアナタニアゲルワ。」
提督 「……」
中枢(深) 「シッカリアイシテアゲナサイネ?」
提督 「了解…」
南方棲戦姫 「指輪はくれないの?」
中枢(深) 「アナタノタメニトクチュウデツクルワ。」
南方棲戦姫 「本当!?」
提督 「…セイキュウダケマワシテクダサイ。」
中枢(深) 「トウゼンマワスワヨ。」
ー工廠 08:44ー
提督 「…中二病か?」
木曾 「いや、大正浪漫だろ。」←改二
提督 「まぁ、雷巡改造おめでとう。」
木曾 「…なぁ、ずっと御無沙汰で欲求不満なんだ。」
提督 「…俺にお前を襲えと?」
木曾 「良いだろ、どうせ暫く休みなんだから。」
提督 「…仕方無い、漸くの改二だからな。」
ー球磨型自室 14:49ー
木曾 「ただいま…」へにゃ
大井 「お帰りなさイカ臭っ!?」
木曾 「シャワー浴びなきゃ…」
北上 「お、やったね?」
球磨 「改二序で子作りクマ?」
多摩 「随分元気にゃ。」
北上 「…んふふ。」
大井 「ちょっと御手洗い行ってきます。」
球磨 「行ってらっしゃい。」
多摩 「気を付けてにゃー。」
北上 「…あー……」
ー21:44ー
大井 「…彼奴、体力化け物よ……」
木曾 「だよな…本当に化け物。」
球磨 「クマァ!?」
多摩 「にゃっ!?」
大井 「…イカ臭いわね、シャワー浴びないと。」
北上 「…やっぱり行ってたね……明日行こっと。」
ー時は戻り17:44当時の政一自室ー
大井 「ひぐぁっ!?」
提督 「いきなり来てヤるとか意味分からんわ。」
大井 「痛い痛い痛い痛い!!」
提督 「お前はいきなりせずに先ず身体を解せ。」
大井 「待って待って痛い痛い痛い痛い!!」
提督 「木曾もお前も本当に物好きだな…」グググ
大井 「あがぁぁぁぁぁ!?」
ー政一自室 22:49ー
提督 「……」zzz
暁 「臭いが抜けないわ…」
早百合 「お父さん強いんだね…はい、消臭剤。」
暁 「有難う…」シュッシュッシュッ
早百合 「…お父さん大丈夫?」
暁 「この程度では死なないわよ。」
ー第六章 夜戦馬鹿と夜戦ー
ー一月二十三日 07:00ー
提督 「…馬鹿みたいに眠い。」
川内 「だねー…」ググッ
提督 「…何故お前がこの部屋に……」
川内 「だって夜戦まだだもん。」
提督 「お前は犬か?」
川内 「違うよ!!忍者だよ!!」
提督 「あっそ…」
川内 「冷たいな…」
提督 「さて、仕事仕事…」
川内 「ふっふーん、これなーんだ?」ピラッ
提督 「…俺の有給、其れも三日分……」
川内 「さ、時間はたっぷり有るよ?」ファサッ
提督 「……」
川内 「提督、夜戦馬鹿と夜戦しよ?」
提督 「…仕方の無い奴だなお前は……」
ー12:47 川内型の部屋ー
川内 「ただいまぁ…」ヘナッ
神通 「姉さん!?」ガタッ
川内 「やっぱり勝てなかったよ…」
那珂 「……」チラッ
神通 「……」コクッ
那珂 「やっぱり…予想はしてたけどさ……」
川内 「あはは…」
那珂 「…アイドル、攻め込みます。」パタン
神通 「那珂!?」
ー13:00 政一自室ー
北上 「まさか被るとはねぇ…」
那珂 「でも、三人ってのも有りだと思うなぁ?」
提督 「…これは一対一だから愛を伝えられるんだが。」
北上 「あはは…そりゃあねぇ…」
那珂 「でも、那珂ちゃんも北上も提督のお嫁さんで、
大好きだから無問題!!ほら、始めようよ!!」
提督 「…物好きだな。」
ー23:44ー
木曾 「…北上姉……」
川内 「あはは…那珂もやられちゃったかぁ…」
提督 「もう、持たねぇよ…」
木曾 「…連れて帰るよ。」
川内 「御免ね、提督。」
提督 「ちっとは休ませろ馬鹿…限界だっての……」
ー一月二十四日 08:07ー
提督 「……」
文月 「来たよぉ?」
提督 「何故お前達が此処に…」
卯月 「愛情確認ですよ。」
弥生 「最近、やってないから。」
提督 「明日じゃ駄目か?」
弥生 「怒りますよ?」
提督 「…怒る程なのか……」
ー22:49ー
提督 「…俺の部屋が俺の部屋じゃない。」
龍飛 「…だな。」
提督 「寝る、お休み。」
龍飛 「あぁ。」
ー第七章 磯風と提督ー
ー一月二十五日 07:44ー
磯風 「…散々やった挙句に寝坊か。」
提督 「三人相手は流石に体力がな…」
磯風 「で、飯を作ってやったぞ。食え。」
提督 「……」
ゲテモノ<一応普通の食材だったんですよ…
提督 「…これは何だ?」
磯風 「味噌汁と米だが?」
提督 「……料理を教えねばならんか。」
磯風 「そ、そんなにか!?」
提督 「見た目は兎角悪い上味もかなり悪いぞ…」もぐもぐ
磯風 「…私は料理が下手でな、隠していた。済まない。」
提督 「取り敢えず厨房行くぞ…」
ー厨房 08:00ー
提督 「お前は基礎から学び直せ。」テキパキちゃっちゃ
磯風 「……最早分からんぞ…」
ー12:44ー
提督 「…うん、これなら人前で恥はかかないな。」
磯風 「本当か!?」
提督 「保証しよう。」
磯風 「やったぞ!!」
鳳翔 「何とかなりましたね。」
提督 「あぁ、俺の胃袋が中破したが。」
ー19:23ー
金剛 「…美味っ!?誰の料理?」
磯風 「私DA☆」
金剛 「磯風、貴女料理が出来る様になったのね!?」
磯風 「あぁ、提督と鳳翔さんの御蔭様でな。」
金剛 「あぁ、美味しい…体調は崩さないわよね?」
磯風 「平気DA☆」
金剛 「なら安心DANA☆」
ー政一自室 22:49ー
磯風 「今日はどうも有難う。」
提督 「構わん。」
磯風 「で、話は変わるが…私の身体に興味は無いか?」
提督 「無い。」断言
磯風 「私は貴方が好きになった様でな。」
提督 「ほう、また物好きが増えたか。」
磯風 「……この辺りで一発夜戦、如何だ?」
提督 「…ほう、準備と覚悟は出来てるんだろうな?」
磯風 「当然だろう?」
ー一月二十六日 03:49ー
磯風 「…良いな、こうして愛を伝えるというのは。」
提督 「まぁな。」
磯風 「酒を飲みつつ二人で話すのも又良いものだな。」
提督 「だな。」
磯風 「私は貧相で魅力は少ないが…愛してくれよ?」
提督 「大丈夫だ。其の綺麗な黒髪が俺は好きだ。」
磯風 「嬉しい事を言ってくれるな。」
提督 「世辞や処世術は如何しても必要でな。」
磯風 「…私は貴方の其の眼が好きだ。」
提督 「これがか?」
磯風 「数々の惨状や悲劇…そして恨みや怒りを秘めて
我々にだけでも優しくあろうとする其の眼が好きだ。」
提督 「…嬉しい事を言ってくれる……」
磯風 「…貴方は一体何故提督に?」
提督 「妹に頼み込まれてな。」
磯風 「…其れ以上は聞かないでおこう。」
提督 「気遣い助かる。」
ー第八章 奴隷商人ー
ー09:22 日本 裏街道ー
奴隷商人 「…兄さん、ココらじゃ見ないな。」
提督 「久々に日本に戻ってな…」
奴隷商人 「へっ…そりゃ良かったな。」
提督 「話は変わるが、奴隷を見たい。」
奴隷商人 「……本来一見御断りなんだが…良いだろう。」
ー奴隷倉庫ー
奴隷商人 「近頃は奴隷も入らなくてな、此奴で最後だ。」
提督 「…店を畳むのか。」
奴隷商人 「仕入れても売れねぇし仕入れられねぇしな。」
?? 「……」
奴隷商人 「あんたが最期の客だ、割引しとくぜ。」
提督 「…千あれば足りるか?」
奴隷商人 「ほう、千か。もう少し値切ると思ってたぜ。」
提督 「生憎金だけは有るからな。」
奴隷商人 「じゃあ千、前払いで頼む。」
提督 「小切手で渡す、換金して来い。」ピッ
奴隷商人 「ほう…毎度有り。」
提督 「…序に服を頼めるか?」
奴隷商人 「あんたのか?」
提督 「いや、此奴のだ。」
?? 「!?」
提督 「流石に全裸で外を歩かせる訳にはな。」
奴隷商人 「…言い分は分かるが金がな……」
提督 「お前、小切手の額面見たか?」
奴隷商人 「は?」
つ[¥11,000,000]
提督 「服代と給料、合わせて百乗せてある。」
奴隷商人 「…一着で良いか?」
提督 「構わん、成る可く早目で頼む。」
奴隷商人 「了解。」
ー10:29ー
奴隷商人 「済まん、道が混んでな。」ガサッ
提督 「構わん…おい、着替えろ。」
?? 「……」
奴隷商人 「…然しあんた白軍服って事は提督かい?」
提督 「あぁ…其れが何か?」
奴隷商人 「この頃深海棲艦の動きが活発でな…而も艦娘が
其の深海棲艦と一緒に艦隊を組んでたりするとか。」
提督 「…変わった艦隊だな。」
奴隷商人 「而も其の艦隊は元帥が死んだ後に出て来たって
言うんだから、何か関係してんのかと思ってな。」
提督 「…元帥の死は謎が残る。」
奴隷商人 「ん?」
提督 「死体が無いし、痕跡は数滴の血の跡だけ。」
奴隷商人 「…其れが何なんだ?」
提督 「私は其の元帥が生きていると睨んでいる。」
奴隷商人 「ほう?」
提督 「其の元帥は敵である筈の深海棲艦を味方に付け、
深海棲艦との和解を目的にしていたとの噂だ。」
奴隷商人 「…そんな事出来るのか?」
提督 「出来たからこそ姿を消したのだと思っている。」
奴隷商人 「成程な。」
?? 「あの…」
提督 「よし、靴も履いたな。行くぞ。」
?? 「はい……」
奴隷商人 「俺も足を洗う時だな…じゃあな、提督。」
提督 「もう会う事は無いと思うがな。」
ー本拠地 談話室 15:44ー
?? 「えっと…あの……」
提督 「…奴隷扱いされると思った?」
?? 「はい…」
提督 「悪いけど私はそういうのが嫌いでね…」
?? 「…じゃあ何で私を買ったの?」
提督 「…奴隷扱いは嫌いだと言ったが?」
?? 「…私を助ける為に買ったの?」
提督 「そうだよ。」
暁 「貴方、如何したの其の子…」
提督 「奴隷商人から買った。」
暁 「…貴方って人は……」
提督 「…さて、君の名前は?」
?? 「…名前なんて無いよ。」
提督 「……なら名前を付けないとな。」
暁 「変な名前は付けないでね?」
提督 「…苗字は俺のを付けるとして名を如何するか……」
暁 「……ねぇ、美咲って如何かしら。」
提督 「…良いな、其れ。」
?? 「……」
提督 「今日から君は[諫田美咲]だ。」
??→美咲 「うん…」
暁 「無口ね…」
提督 「仕方無いさ…奴隷として売られた者は皆無口だ。」
暁 「…そうだったの……」
美咲 「……」
提督 「もう大丈夫だぞ。」なでなで
美咲 「…有難う。」
暁 「…おやつ、持って来るわ。」パタン
ー第九章 逃亡提督ー
ー呉軍港 22:48ー
?? 「もう嫌…もう嫌!!」バルルッバルルル!!
憲兵 「居たぞ、大佐だ!!」
中将 「抑えろ!!」
?? 「嫌!!」バウゥゥン!!
憲兵 「なっ…ボートで逃げただと!?」
中将 「…外は暗闇、もう助かるまい。」
ー一月二十七日 本拠地海岸 09:44ー
提督 「…白い軍服……階級章は大佐だな。」
不知火 「…!?提督、まだ息が!!」
提督 「医務室に運んで暖かくしてあげなさい。」
不知火 「了解!!」
ー医務室 17:22ー
?? 「……此処は…」
提督 「起きるな、まだ完治してないんだ。」
?? 「…貴方は?」
提督 「この基地の指揮官だ。」
?? 「…此処は何処ですか?」
提督 「日本から遠く離れた深海棲艦の本拠地だな。」
?? 「…今、何と?」
提督 「お前が敵として戦っている深海棲艦の本拠地。」
?? 「…詰まり私は敵の本拠地で目が覚めた……」
提督 「不知火と共に見つけた時は驚いたぞ。」
?? 「…私は呉からボートで逃げて来て、其れで……」
提督 「ボート…あぁ、あの粉微塵になった木片か。」
?? 「えっ!?」
提督 「お前は見つけた時に仰向けで倒れていた。」
?? 「…如何しよう……」
提督 「身元確認だが、君は[上野真衣]大佐だね?」
??→真衣 「あ、はい…」
提督 「呉軍港でO中将の指揮下に居た様だね。」
真衣 「はい。」
提督 「君はここで雇うから今後宜しく。」
真衣 「……へ?」
提督 「追われ逃げて此処に来たならもう戻れないよ。」
真衣 「…分かりました。」
提督 「よし、なら明日以降見張りが来るから仲良くね。」
ー第十章 救助と対価ー
ー一月二十八日 外洋 09:57ー
提督 「……ん?」
ほっぽ 「如何したの?」
提督 「陽炎と親潮を見つけたんだが…隣は誰だ?」
ほっぽ 「…あぁ、早潮だよ。最近発見されたって。」
提督 「逃げて来たか、或いは落伍か…」
不知火 「私が声を掛けます。」
提督 「頼むわ。」
ーー
不知火 「こんにちは。」
早潮 「ひっ!?」
親潮 「ど、どうか見逃して下さい!!」
陽炎 「逃げたのは謝るから沈めないで!!」
不知火 「…これは盛大に勘違いをしていますね。」
早潮 「か、勘違い?」
不知火 「提督の所へ案内します。」
陽炎 「お、送り返す気なの!?」
不知火 「まさか、逆ですよ。」
親潮 「えっ…逆?」
ーー
不知火 「三名、連れて来ました。脱走兵です。」
提督 「助かる…で、君達の所属は?」
陽炎 「…P大将。」
提督 「成程、黒いと噂の彼処から…道理で早潮が……」
早潮 「わ、私達を殺さないでぇ…」
提督 「何を言うかと思えば…殺さんよ、着いて来い。」
ー談話室 12:29ー
提督 「さて、多少は落ち着いたか?」
早潮 「はい…」
陽炎 「ま、まぁ…ちょっとは……」
親潮 「なんか、御免なさい…」
提督 「構わない…で、磯風と天津風、後黒潮を呼んだ。」
陽炎 「…皆私の妹ね。」
提督 「あぁ…不知火は執務、舞風は訓練中だな。」
陽炎 「…執務?」
提督 「[私がすると皆との時間を取ろうとして倒れるから
我々に任せて貴方は皆とゆったり過ごしなさい]と皆から
言われてしまってね…今となっては御飾り上司さ。」
親潮 「…御疲れ様です……」
提督 「私も少し席を外すから、姉妹で話をしてくれ。」
ー12:48ー
黒潮 「御免、遅れてもうたわ。」
磯風 「成程、今回の新人は姉三人か。」
天津風 「いらっしゃい姉さん、ゆっくりして頂戴。」
陽炎 「有難う…」
黒潮 「早速やけど此処の裂織りした説明しとくわ。」
親潮 「有難う黒潮。」
黒潮 「先ず言うとくけど此処は深海棲艦の本拠地や。」
早潮 「へ?」
陽炎 「ちょ、其れ大丈夫なの!?」
黒潮 「ほんでもってウチらの敵は大本営や。」
陽炎 「…そんな……信じられないわ…」
黒潮 「せやろな…今まで味方やったんが敵なるんやもん。
スッと入るモンとちゃうわな。」
早潮 「て事は、あの人は…」
黒潮 「深海棲艦とウチらを束ねる提督はんや。」
親潮 「いやいや、水と油よ?」
黒潮 「水と油は乳化させたら混ざるやろ?そゆ事や。」
親潮 「…納得出来ちゃった……」
陽炎 「…大体は分かったわ。」
黒潮 「ほんで、提督はんは嫁さん多いから執務には殆ど
入らんのよ…で、ウチらに当番来るから覚えとって。」
早潮 「分かったわ。」
黒潮 「したら、裏切り生活スタートやね。」
陽炎 「ちょっと、元の鎮守府に戻れないの!?」
黒潮 「アンタ等の移籍は多分無理やわ。」
陽炎 「何でよ!?」
黒潮 「深海棲艦の側に一度でも寝返ったら、戻れば直ぐに
死刑一択やと思うで…敵に情報渡した言うてな。」
陽炎 「…!?」ゾワッ
黒潮 「冤罪は幾らでも作れるさかい…な?」
磯風 「私も御勧め出来ない、後此処の方が良い環境だ。
私なんて美味しい料理が作れる様になった。」
天津風 「この前の料理美味しかったわ、またお願いね。」
磯風 「と、強請られる程だ。」
陽炎 「…損はしないみたいね。」
黒潮 「ようこそ、深海棲艦の側へ。歓迎すんで。」
ー第十一章 何だかんだで戦闘中ー
ー一月二十九日 外洋 08:46ー
真衣 「深海棲艦の方々は左舷を、艦娘の方々は右舷を。」
磯風 「了解。」
早潮 「分かりました!!」
親潮 「やります!!」
陽炎 「任せて!!」
黒潮 「やったるわ!!」
天津風 「戦闘は久々ね…上手く動けるのかしら……」
ほっぽ 「了解、出る!!」
北方棲妹 「…姉貴、気を付けろ。」
北方棲姫 「…ソウネ、キヲツケナイトネ。」
レ級 「…あんまり活躍出来そうに無いなこりゃ……」
南方棲戦姫 「…あの人の為に戦果を稼ぐのよ!!」
中枢 「えぇ、頑張らないと。」
ーー
真衣 「…皆行ってしまったわね。」
美咲 「……そうだね…」
ー10:27ー
戦果
五十隻撃沈
十八隻大破
十隻中小破
提督 「…ほう、やるな……」
早紀 「中将の指揮は一流っすね。」
真衣 「そんな…まだまだです……」
提督 「さて、帰ろうか…」
ー談話室 14:28ー
美咲 「…あ……」
提督 「…帰れ、屑共。」
?? 「そんな事言わずに…ね?千五百積むわよ?」
提督 「千も億もへったくれも無い、とっとと帰れ。」
?? 「もう、頑固ね!!私はあの子の母親よ!?」
提督 「黙れ!!奴隷商人に娘を売り払う奴は親では無い!!
そんな事も分からん様な屑に美咲は渡さん!!帰れ!!」
??→美咲母 「まぁ野蛮な事!!」
提督 「野蛮で結構!!心を閉ざし喋らなくなった彼女の
苦しみ!!恨み!!そして怒りが分かるのか!?」
美咲母 「なっ…貴方こそ分かってないのではなくて!?」
提督 「私は分かる!!拷問され殺され掛け其れでも死ねず
今まで生き延びた!!苦痛は十二分に分かっている!!」
美咲母 「なっ…」
美咲 「…!!」
提督 「彼女の…美咲の親として貴様に美咲は渡さん!!」
美咲母 「この分からず屋め!!」
提督 「分からず屋で結構!!朴念仁で結構!!貴様の様な
娘を金蔓としか見ん様な奴に我が娘の美咲は渡さん!!」
美咲 「…提督さん……」
美咲母 「…もう良いわ、やっておしまい!!」
警護 「…御覚悟を。」シャッ
提督 「其の言葉其の儘貴様に返却しよう…」スラッ
美咲 「…其れは……」
美咲母 「に、日本刀!?」
警護 「…くっ……」
提督 「…来るか?一斬りで終わるぞ?」
警護 「…降参だ、頼むから鞘に収めてくれ。」
提督 「…貴様は真面か。」キンッ
美咲母 「何故なの!?何故戦わないの!?警護でしょ!?」
警護 「流石に死にたくは有りませんので。」
提督 「如何する気だ?」
美咲母 「…くっ……アンタはクビよ、クビ!!」
警護 「命が有れば其れで良し、ですよ。」
美咲母 「このっ…勝手にしなさい!!」バタン!!
美咲 「…良かった……」ドサッ
警護 「美咲さん!?」
提督 「自分を捨てた筈の者が取り戻しに来た…となれば
身体に掛かるストレスは相当な物になるからな……
単なる疲労蓄積が原因の気絶だな。寝かせれば治る。」
警護 「ず、随分詳しいのですね…」
提督 「この手はかなりの数を見ているからな。」
警護 「…私はこの辺りで、失礼します。」
提督 「御疲れ様、また逢う日まで。」
ー第十二章 襲撃ー
ー一月三十日 政一自室 02:19ー
美咲 「…あれ…此処は……」←ベッド
提督 「……」←畳の上
美咲 「…そっか…護ってくれたんだ……」
不知火 「奇襲です!!」バァン!!
提督 「…数は?」
美咲 「お、起きてたの?」
不知火 「総数二千、三大隊です!!」
提督 「…内訳は?」
不知火 「上位個体が十、内指揮個体三!!」
提督 「残りが雑魚…陣営は?」
不知火 「深海棲艦と艦娘、海自も居ます!!」
提督 「それぞれで一大隊…面倒な…」
不知火 「兵装使用許可を!!」
提督 「…全ての兵装の使用を許可する、この本拠地を
落とされると厄介だ、死守しろ。夜戦馬鹿も起こせ。」
不知火 「其れが、川内さんは先に出られまして、現在は
敵艦隊と交戦中、優勢との事です…」
提督 「…彼奴はよく分かってるな……お前も出ろ。」
不知火 「はい!!」バタン
提督 「…て事で指揮を執ってくる。」
美咲 「うん。」
提督 「もう少し寝てていいよ。」パタン
美咲 「…提督さん、優しいな……」
ー02:37 海上ー
海自 「…糞、落とせねぇぞ!!」
海自 「んな事分かってんだよ!!」
海自 「攻撃しねえとこっちが死んじまう!!」
川内 「やぁやぁ、元気だねぇ?」
海自 「うわぁ!?」
川内 「…死ね。」ポイッ
ボカーン!!!!
川内 「いやぁ、やっぱ海自の船は爆雷処理に限るね。」
神通 「そうですね…其処!!」ブンッ!!
メキョッ
ヲ級(敵) 「ヲ"ッ"!?」
ボカーン!!!!
那珂 「魚雷は投げる物じゃないよ…」
神通 「こっちの方が確実に沈みますから。」
那珂 「怖いよ…其処だよ!!」ガンッ
ボカーン!!!!
川内 「水雷を蹴って当てるのも如何なものかと。」
那珂 「…皆一緒だね。」
川内 「…だね。政一の事好きだしさ。」
神通 「そうですね。」
那珂 「あ、政一から通信だ。」
川内 「何て何て!?」
那珂 「えっと…[早期迎撃感謝する、引き続き頼む。]
ってさ……政一らしいね。」
川内 「頑張るぞー!!」
神通 「姉さん…」
那珂 「あっはは…効果覿面だね。」
海自 「…嘗めやがって……」チャキッ
ドスッ
海自 「グアッ!?」
ズガァン…
那珂 「あ、狙撃始まってる…政一が起きたみたい。」
ガウゥン…
那珂 「というか政一が撃ってるよ…」
赤城(敵) 「慢心中が好機…」キリキリ…
バツン!!
赤城(敵) 「きゃっ!?弓の弦が!!」
ガウゥン…
赤城(敵) 「銃声…狙撃!?」
長門 「余所見する程の余裕は無いぞ!!」
赤城(敵) 「しまっ!?」
長門 「吹き飛べ!!」ドドドォォン!!!!
北上 「おぉ、飛んだねぇ…」
大井 「推定四十米ですね。」
木曽 「あんなデカくて重い奴も吹き飛ぶのか…」
球磨 「余裕ぶってないで、殺るクマ!!」
多摩 「早くしないと戦果奪っちゃうニャ。」
大井 「任せて、本領発揮よ!!」
ーー
提督 「お前達は下で狙撃しろ。狙撃手は分散すべきだ。」
不知火 「了解。」
文月 「分かったのぉ。」
青葉 「了解、御武運を。」
提督 「お前達もな。」
ガウゥン!!
提督 「三大隊…よく集めたものだ……」
ガウゥン!!
提督 「然し連携に差が有る…寄せ集めか。」
ガウゥン!!
提督 「烏合の衆では勝てんぞ、さぁ如何動く?」
ガウゥン!!
提督 「生半可な攻撃は通用せんからな…」ジャコッ
ジャキッガシャン!!
提督 「精々踏ん張る事だな…」
ガウゥン!!
ー応戦は続くー
ー第十三章 飛ばされた男ー
ー06:27ー
提督 「…空が白んできやがったな……もう朝か……」
ガウゥン!!
提督 「敵総数は粗方半分、此方は中大破四十か…」
ドサッ!!
提督 「ん?」
?? 「…此処は……」
提督 「あんた、こっちじゃ見ないな…ドイツ系か。」
?? 「…貴方は?」
提督 「見ての通り軍人だ、狙撃中だよ。」
?? 「…私は、一体……」
提督 「あんたは飛ばされたのさ、爆発に巻き込まれて。」
?? 「…何故爆発だと?」
提督 「あんたの傷は爆弾の爆発に巻き込まれて出来る物、
其れもテロリストとかが使う鉄片入りの簡易爆弾。」
?? 「……」
提督 「こっちも場数は踏んでるんだ、見りゃ分かる。」
?? 「…私は名前も、何をしていたのかも分からない。」
提督 「あんたは単に飛ばされたんじゃない。[彼岸]から
[この世界]に飛ばされてんだよ、記憶を失ってな。」
?? 「…彼岸から……」
提督 「恐らくあんたは其の戦場で死ぬ予定じゃなかった…
他の奴が死ぬか、或いは全員生きて戻ったか……だが、
悲運にもあんたは死んじまった、故に死人の集う此処に
あんたを飛ばして俺に託した、という事になるな。」
?? 「…死人の集う?」
提督 「俺は死人だ…死のうにも死ねず、仮に死んでも
直ぐに彼岸からこっちに送り返される。」
?? 「…そうなのか?」
提督 「あぁ…他にも複数死人は居るぞ。」
?? 「…故に私は飛ばされたのか……」
提督 「おう…あんたは不運と踊っちまったのさ。」
?? 「…私にも手伝わせてくれ。」
提督 「無理だな。右眼右腕左脚に欠損、真面に戦うにゃ
ちと荷が重すぎるな…これを持っとけ。」つHK45
?? 「…USPではないのか。」
提督 「…あんたやっぱりドイツ人だね。」
?? 「…これを見て少し記憶が戻ったんだ。」
提督 「そりゃ良いな、名前は思い出したか?」
?? 「…私は施設生まれで、識別番号で呼ばれていた。」
提督 「…そりゃ災難だな。で、其の識別番号は?」
?? 「…A-11……[アーエルフ]とでも言えば良いのか?」
提督 「日本発音に寄せりゃそうなるな…アーエルフ……」
?? 「…正直この識別番号は好かない。」
提督 「だろうな……何か良い名は無いものか…よし、君は
今から[ハインリヒ・フォン・ヴァインシュタイン]だ。」
??→ハイン 「…ハインリヒ?」
提督 「私は[ハイン]と呼ばせてもらうよ。」
ハイン 「…其れは構わないんだが、何故この名を?」
提督 「ドイツの知り合いにラルフって言う奴が居てな…
其奴がヴァインシュタインって所の産まれらしくて、
そこから頂戴した。後は本国で違和感の無いように。」
ハイン 「…そうか、感謝する。」
提督 「構わん…後であんたの治療をしないとな。」
ハイン 「…血は止まっているが……」
提督 「色々する事が有るのさ…」
ハイン 「…分かった。」
ガウゥン!!
提督 「…あんたは此処で何がしたい?」
ハイン 「…貴方に恩を返したい。」
提督 「そりゃ嬉しいな。」
ー第十四章 飛ばされた二人とハインの関係ー
ー10:22ー
提督 「…まだ一割程残ってるな……」
ハイン 「…この少数でよく守れますね……」
提督 「ウチは変梃と邪魔者と逃亡者と死人だからな…
流石に攻め難い部分は有るだろうな……」
ドサッ
バタッ
ハイン 「今のは何の音ですか!?」
提督 「人間、二人だな…」
ガウゥン!!
提督 「今度は誰だ?」
?? 「痛ってぇな…何処だ此処……」
?? 「随分と雑ですね…」
提督 「…知り合いか?」
ハイン 「えぇ、一応…」
?? 「あー!!A-11!!手前こんな所に!!」
?? 「まさか探し人がこんな所に居るとは…」
提督 「…二人がハインを知っているということは君達も
ドイツ軍の出身なのかな…君達の名前は?」
?? 「…あ?手前何様だコラ!!」ガシッ
提督 「…あまり海軍兵を嘗めない方が身の為だぞ。」
?? 「はぁ?」
ハイン 「彼の言う通りです、離して下さい。」
?? 「うるせぇな…手前何様だっつってんだよ!!」
ブンッ
ピトッ
?? 「ひっ!?」
提督 「今直ぐに離せば何もしないが、此の儘掴み続けると
君が言うのならば…君の首は胴体に別れを告げる事に
なるだろうな……賢明な判断を頼むよ、陸軍兵君。」
?? 「…わ、分かった……」パッ
提督 「…君達の名前を聞こうか。」
?? 「…M-5だ。」
?? 「S-4です。」
提督 「…となれば君達も施設の出だね……」
?? 「…何で分かんだよ?」
提督 「其処に居るハイン君…A-11君から話は聞いたよ。」
?? 「成程、前例が有ったのですね。」
提督 「…君達が此処に辿り着く迄の話を聞きたい。」
?? 「……俺達が其処に居るA-11…ハインだったか?
其奴を探しに爆発現場に行ったんだが、其処には一人の
マントを着た奴一人と腕と脚しか無かったんだよ。」
提督 「…間違い無くハイン君の無くした腕と脚だね。」
?? 「其れで、其のマントを着た方に話を伺った所、
ハインさんの所に案内して頂けると聞き、後を追ったら
急に足元の床が無くなり、気付けばこの場所に。」
提督 「マントを着た…顔とか、特徴は?」
?? 「顔はよく見えなかったんだよ、逆光でよ…あ、
そういやマントが風も無いのに揺れてたんだよ。」
?? 「其れから私には其の方が若干浮いている様にも
見えましたが、恐らく幻覚ではないかと…」
提督 「揺れるマント、浮遊、そして送り先…彼奴か。」
?? 「こ、心当たりあんのか!?」
提督 「君達、そしてハイン君を此処に飛ばした張本人は
間違い無く[死神]だね、私の後輩の子だよ。」
?? 「死神!?嘘だろ!?」
提督 「いや、本当さ…事実、私も[死神]に相当する様な
神として不要な命を間引く仕事をしていたからな。」
?? 「驚きましたね…まさか本物の神に会えるとは。」
提督 「…彼奴昔から変わんねぇな本当に……補佐の時から
ずっと思ってたけどよ、何で事前連絡も無しに勝手に
行動するんだよ全く…こっちの都合完全無視かよ……」
?? 「…あー、怒ってるのは分かんだが、あんたは誰で
此処は何処なんだ?見当が付かねぇんだ。」
提督 「私は今は提督をしている。君達に分かり易く言えば
[指揮官]や[司令官]に相当する業種だね…艦隊を指揮し
勝利に導くだけで無く書類仕事や所属員の体調管理も
同時に行うかなり仕事量の多い役職だよ。」
?? 「…成程、分からん!!」
提督 「何故!?」ずこっ
?? 「だ、大丈夫ですか?」
提督 「あぁ…今のは日本の関西地区でよく見掛ける物で
[ボケ]と呼ばれる物に対する[ツッコミ]の一種だ。」
?? 「…御免なさい、理解が出来ません。」
提督 「アンタもかい!?」ずこっ
ハイン 「…成程、理解出来ました。」
提督 「ハインは分かるんかい!!」ずこっ!!
ハイン 「…ふふっ。」
?? 「…手前が笑う所、初めて見たぞ……」
提督 「…場所についてだが、此処は一つの海軍拠点……
では無く、海軍から見て敵になる[深海棲艦]の拠点だ。」
?? 「はぁ!?て事はあんたは同士討ちをやってんのか!?」
提督 「同士討ちでは無い。私はもう海兵では無いんだ。」
?? 「…然し先程は海軍兵と……」
提督 「便宜上は海兵だが実態は死人や裏切り者を集め
敵と共に戦う[第三勢力]と呼ばれる様な物だ。」
?? 「…何だそりゃ、て事は今沈めてんのは……」
提督 「海軍大本営から送り込まれた刺客だ。」
?? 「もうわっかんねぇよ!!」
提督 「そうだろうな…」
?? 「あの…貴方の名前は?」
提督 「[諫田政一]…死人で神で吸血鬼で殺し屋な元海軍。」
?? 「…凄い経歴ですね……」
提督 「今までの人生を合わせれば三千年は行くか…」
?? 「…神と仰ってましたね。」
提督 「で、君達の所属は?」
?? 「…俺達は戦闘部隊だ。」
?? 「ハインさんが爆弾処理をしていた場所も私達が
先に突撃してテロリストを壊滅させたんですよ。」
提督 「で、死なば諸共で簡易爆弾を設置、解除に失敗し
彼岸経由でハインは此処へ、其の後に君達は死神に直接
此処へ送り込まれたという事になるな…」
?? 「…みてぇだな。」
提督 「…君達にも名前を付けないと。」
?? 「名前、ですか?」
提督 「あぁ、ハインの様にね。」
ハイン 「…そうですね。」
?? 「…ハイン、手前何て言うんだ?」
ハイン 「ハインリヒ・フォン・ヴァインシュタイン。」
?? 「あ?」
ハイン 「長ったらしいのは流石に面倒なのでハインと。」
?? 「…良い名前ですね。」
提督 「で、君達の場合、S-4君の方が厄介だ。」
?? 「あ?」
提督 「だって、君は女性だろう?私はどうも女性には
疎い様でね…良い名前を思い付けるかが分からない。」
?? 「…良く女だと分かりましたね。」
提督 「流石に女性に囲まれる職場では見分けられるよ。」
?? 「あ?女塗れの職場?」
提督 「後に分かるよ…さて、先ずはM-5君からだな。」
?? 「おう。」
提督 「君は今から[ハンス・フォン・オットー]だ。」
??→ハンス 「…名前は兎も角苗字まで変えんのか?」
提督 「君達の親が同じであると言えるのか?」
ハンス 「…そういう事か。」
提督 「そういう事だ、次にS-4君だが…」
?? 「…私は別に良いですよ……」
提督 「そういう訳には…よし、これで如何だろうか?」
?? 「…もう思い付いたんですか?」
提督 「あぁ、[シャルロッテ・フォン・フリードリヒ]だ。」
??→シャル 「…素敵ですね。」
提督 「思い付かなければ腹を斬る所だったよ。」
シャル 「そんな事する気だったんですか!?」
提督 「まぁ、未遂で良かったじゃないか。」
ハンス 「いや、良かねぇだろ。」
提督 「まぁ、私は死に抵抗が無いし死んでも戻されるし
如何やっても彼岸には居続けられないんだがな。」
シャル 「…羨ましいですよ、逆に。」
提督 「さて、君達は五体満足の様だから、迎撃に参加
して貰うよ…これを使ってくれ。扱いはG3A3と大して
変わらんからな、ガンガン撃ってくれたまえ。」
つ政一式半自動準対物狙撃銃零一型
ハンス 「…装弾十発かよ……」
シャル 「……距離が遠いんですが…」
提督 「載せてあるサイトで中心に敵が来たら撃て。」
ハンス 「んな事で当たる訳ねぇだろ…」ズガァン!!
<ウバァァァ!?腕がァァァ!?
ハンス 「…当たった?」
提督 「レティクルをズラしてんだ、来りゃ当たる。」
シャル 「成程…」ズガァン!!ズガァン!!ズガァン!!
提督 「反動も小さいから当て易いだろ、軍人よ頑張れ。」
ガウゥン!!
ハンス 「…手前のだけ音が違うな。」
提督 「私のは君達が使っている量産品の試作型だ。」
シャル 「成程…」
提督 「…さて、最後の仕上げだ。敵を殲滅するぞ。」
ー第十五章 新艦娘着任ー
ー12:48 軍港ー
提督 「…大丈夫か?」
ハイン 「大丈夫です。」←車椅子
ハンス 「…エリートの手前が車椅子とはな……」
シャル 「まぁ、現実は非情なモノですから…」
不知火 「提督、迎撃完了致しました。死者居りません。」
提督 「防衛戦御苦労、大破艦から優先して入渠を。」
不知火 「既に手配済みです。」
提督 「よし、ならば君は上がりなさい。」
不知火 「了解。」
シャル 「…今のは?」
提督 「駆逐艦不知火、ウチの一軍さ。」
ハイン 「…駆逐艦?」
ハンス 「そりゃ可笑しいぜ、船はもっとでけえ筈だ。」
提督 「言っただろう、[海軍]で[女に囲まれる]と。」
ハイン 「…成程、軍艦が女性になったと。」
提督 「理解が早くて助かる。」
ハンス 「…まだ信じらんねぇな。」
卯月 「…保護艦娘、合計三隻……駆逐艦のみです。」
提督 「駆逐艦…量産ゆえの遭遇率か……」
卯月 「如何されますか?」
提督 「……応接室に、其処で顔合わせをする…」サラサラ
卯月 「了解。」
シャル 「…今のは?」
提督 「駆逐艦卯月、彼女は準一軍だね。」
ハンス 「…基準が分かんねぇよ。」
提督 「基準は応接室で話すよ。」
ー応接室 13:11ー
提督 「…一人ずつ自己紹介を。」
萩風 「萩風です、P大将の所から来ました。」
浜波 「浜波…O中将の所。」
朝霜 「…あたいは朝霜、Q准将のトコからさ。」
提督 「…了解、大体分かったよ。」
ハンス 「…本当に軍艦なのか?」
浜波 「はい。」
萩風 「私でも人の骨なら折れますよ?」
ハンス 「…おっそろしいなおい……」
提督 「挑発するなハンス…提督業は死者も多いんだ。」
ハンス 「す、済まねぇ…」
提督 「…此処の仕組みを教えておこうか。」
ハイン 「…一軍や二軍についてですね?」
提督 「あぁ…一軍は各艦種二名、固定だな。」
ハンス 「二人…て事はあの不知火ともう一人居んのか。」
提督 「あぁ、其のもう一人が暁だ。」
ハンス 「暁?」
シャル 「…あ、知ってます。特型駆逐艦の最終型。」
提督 「そう、特Ⅲ型の暁…暁型一番艦とも言えるな。」
浜波 「…一軍は私達でもなれますか?」
提督 「無理だな…練度は兎も角其の射撃精度は五粁先の
十糎四方の的を射抜く程だ。君達では到底勝てないよ。」
ハンス 「…五粁先だって?」
提督 「あぁ、私でも今は無理だな。昔は射抜けたが。」
シャル 「あ、貴方も出来たんですか…」
提督 「まぁな…で、一軍補欠。通称準一軍だな。」
ハンス 「あぁ、卯月。」
朝霜 「はぁ!?卯月が準一軍!?」
提督 「彼女は兎角其の速力で敵を翻弄する。其の能力のみ
ならば彼女を超える者は私は今の所知らない。」
萩風 「そ、そんなにですか!?」
提督 「彼女が本気を出せばル級やタ級は敵ではないな。」
浜波 「そんなに…」
提督 「で、準一軍も定員二名…故に入れ替わらん。」
ハンス 「…何で二人なんだ?」
提督 「出撃固定人員で同艦種は四人で充分なんだ。」
ハイン 「…過ぎたるは及ばざるが如し、ですね。」
提督 「よく知ってるな。で、次の二軍が一番多い。」
シャル 「これまでの流れを見るに、出撃の補佐ですか?」
提督 「そうだな、他に遠征も担当する。」
ハンス 「遠征ねぇ…」
提督 「で、次が準二軍。ココが出撃出来る最低線だ。
準二軍は遠征専属になるが、戦闘にもなるからな。」
浜波 「…先ず目指すは準二軍、ですね。」
提督 「あぁ、そうだな…で、三軍が訓練中の人員、四軍が
君達の様な新入りの初期状態だ。で、他に非戦闘要員の
輸送艦や事務員が居る。君達は兎に角皆と仲良くなって
色んな話を聞くといいよ。じゃ、書類渡して部屋割りだけ
此処で決めちゃおうか…希望有るなら聞くよ?」
浜波 「あの、夕雲姉さんは…」
提督 「ん、居るけど…彼女は二軍だから遠征中だね。」
浜波 「あの、夕雲姉さんと同じ部屋が良いです…」
提督 「…聞いてみようか……」ザザッ
[…此方夕雲、何か御用?]
提督 「夕雲、今浜波が着任して、君と相部屋が良いって
聞いてるんだけど、君は如何なのかと思ってね。」
[…別に構わないわ、家具は搬入しといてよね。]
提督 「分かった。」
[じゃ、切るわ。]ブツッ
提督 「…との事だ。直ぐに手配するよ。」
浜波 「あ、有難う御座います…」
萩風 「…私、不知火と同じ部屋が良いわ。」
不知火 「私は別に構いませんよ?」ヌイッ
萩風 「きゃあっ!?」
ハンス 「どわっ!?」
シャル 「おっと!?」
ハイン 「一体何処から…」
提督 「不知火、萩風を部屋に。家具の搬入を頼む。」
不知火 「お任せ下さい、では。行きますよ萩風。」
萩風 「ちょ、まっ、不知火力強いって!!」ズルズル
バタン
ハンス 「…吃驚したぜ……」
シャル 「突然現れましたね。」
提督 「…彼奴は気配がとことん薄い奴なんだよ。本人も
気にしてる様だから優しく接してやってくれ。」
ハンス 「お、おう…」
提督 「…で、朝霜は?」
朝霜 「…うーん……あ、早霜の所行きたいぜ。」
提督 「…彼奴の所か……何日持つか見物だな。」
朝霜 「ぜ?」
ハンス 「如何いう事だ?」
提督 「彼奴の部屋…俺の写真とか人形とか、煙草の吸殻に
俺の飲んだ後のペットボトル、空の酒瓶とかまで有るから
マジで相部屋が二日と持たないんだよ。」
朝霜 「へ?」
提督 「彼奴の俺に対する好感度振り切って三周してるから
俺でも重たく感じたりする程だぜ?元ヤンデレで俺の為に
即断で前髪バッサリ切ったりする位の子だからな…」
朝霜 「や、やっぱりあたい一人部屋が良いんだぜ!!」
提督 「…そら、こんな[作り話]聞いたら辞めるわな。」
朝霜 「作り話なんだぜ!?」
提督 「おう、[写真の件を除き]だが。」
朝霜 「…ぜ?」
提督 「此処に引越し早十日。さて、何枚貼ってあるか…」
朝霜 「も、もう怖いんだぜ!!」
提督 「私は磯風との相部屋を強く推奨する。」
朝霜 「そ、そうさせて貰うんだぜ!!じゃ!!」バタン
ハンス 「…相当怖ぇな、其の早霜って子は。」
提督 「こんな子でも私は愛しているし、準一軍だぞ。 」
シャル 「え…卯月さんと同列ですか?」
提督 「俺への愛故に強くなる…とでも言っておくか。」
シャル 「えぇ…」
提督 「…こんな子でも結婚してるんだぞ?」
ハンス 「は?結婚!?」
提督 「相手は勿論私な訳で…はは…」
シャル 「…大丈夫ですか?」
提督 「大丈夫さ、着任当時こそ危なかったが、今では
優しくて強い良い子だよ。写真の件さえ無ければね…」
ハイン 「…あの、早霜さんってあの扉の所に居る……」
早霜 「……」ジトッ
ハンス 「うばぁ!?」
シャル 「ひっ…目に光が無いんですが!?」
提督 「…早霜、おいで。」
早霜 「……」ギュッ
提督 「大丈夫、早霜の事も大好きだからさ。」
早霜 「…政一さん、愛してます。此の世の何よりも。」
提督 「うん、分かってるから…ね?」
早霜 「…なら、今夜夜戦で証明して下さい。」
提督 「分かった、気が済むまで夜戦しような。」
早霜 「…愛してます……」ギュッ
提督 「……とまぁ、こんな子だよ。確り面と向かって
接すれば心を開いてくれるから大丈夫だよ。」なでなで
ハイン 「いや、其れは…」
ハンス 「多分だけどよ…」
シャル 「貴方だからこそ出来る事だと思います…」
提督 「いや、君達でも面と向かって話せる様になるよ。」
ハイン 「……」
ハンス 「うん、多分無理だぜ。」
シャル 「初期好感度が低すぎますよ…」
早霜 「…愛してます……」←邪魔すんなオーラ発動中
提督 「…まぁ、ウチはこの程度で音を上げてたら何も
出来ない魔境だからさ…頑張ってね、ドイツ兵さん。」
ハイン 「…了解。」
ハンス 「お、おう…」
シャル 「分かり、ました…」
提督 「君達三人は一旦相部屋で、浴場は混浴だから何も
気にせずに入って良いよ。トイレは地図見てね。」
ーこうして三大隊迎撃戦は幕を閉じたー
ー第十六章 シャルロッテと響ー
ー浴場 17:24ー
シャル 「ふぅ…」
暁 「お邪魔するわね。」
響 「御免ね。」
シャル 「良いですよ…貴女達は?」
暁 「私は暁、貴女がシャルロッテさんね。初めまして。」
響 「響だよ…暁型二番艦で、最後まで生き残った数少ない
駆逐艦の一隻として数えられたんだ…其の後、ロシアに
賠償艦として引き渡されて皆と別れちゃったけどね。」
シャル 「成程…暁さんは一軍だそうですね。」
暁 「えぇ…響も二軍になって、出撃が増えてるわ。」
響 「姉さん、私は戦いは好きじゃないって…」
暁 「その割には[提督と夜戦してみたい]とか言ってたけど
其の点は如何説明するのかしら?教えて頂戴?」
響 「あれは戦闘じゃなくて…あっ!?」///
暁 「あら、貴女にそんな感情があったなんてね…じゃ、
私は上がるわ。お先に失礼。」
響 「あわ、あわ、あわわわわ…」///
シャル 「…夜戦とはどんな意味なのでしょうか……」
龍飛 「ほう、響は政一と子を成す気で居るのか…」
シャル 「子を、成す…っ!?」///
龍飛 「お前まで赤くなって如何するんだ…」
響 「あの、えっと、其の…」ぼしゅー
龍飛 「完全に過熱状態だな…ん?」
提督 「…今日はえらく混んでるな。」ピシャッ
龍飛 「…些か都合の悪い時に来たな……」
提督 「…シャル、お前も入ってたのか。」
シャル 「な、何故貴方が此処に!?」
提督 「混浴っつったろ…男風呂が無い上人数が人数…
深夜閉鎖も相まって同時に入らざるを得ない。」
シャル 「然し、然し流石にこれは…っ!?」///
龍飛 「…政一、此奴過熱で爆発寸前だぞ。」
響 「……夜戦…提督と、夜戦……」ぼしゅー
龍飛 「此奴に至っては貴様との夜戦で頭が一杯だ。」
提督 「…んなバカスカ夜戦出来りゃ少子化問題なんざ
蚊帳の外だっつの……こっちの体力と都合考えやがれ…」
龍飛 「其れもそうだな…で、今日は早霜と夜戦をする
そうだが…身体は持ちそうか?」
提督 「仮に壊れようと満足はさせるさ…」
龍飛 「宜しい。」
早霜 「政一さん…夜戦しましょう。」
提督 「せめて部屋でだな?」
早霜 「待ち切れません、今直ぐにしましょう。」
提督 「手前はちったァ…」ガシッ
早霜 「へ?」アタマツカマレ
龍飛 「…南無。」合掌
提督 [我慢シヤガレェ!!!!]グッ
早霜 「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!御免なさーい!!」
ぷらずま 「…ざまーみろなのです。ケッ…」ゴシゴシ
電 「…ぷらずま、頭を流したら交代なのです。」
ぷらずま 「あいあい…洗いっこも久々だな。」ゴシゴシ
電 「なのです…昔は人格交代だったのです。」
ぷらずま 「懐かしいもんだな…ほれ、交代。」バシャァ
電 「なのです。」
ー響自室(暁型共有部屋) 19:24ー
シャル 「…振り向かせたい?」
響 「そうなんだ…提督は私に見向きもしないんだよ…」
シャル 「…なら魅力的にならないとね。」
響 「…そうだけど……」
シャル 「私も頑張って落とさないと…」
響 「…同盟を組もうか。」スッ
シャル 「そうね、形振り構ってられないわ。」ガシッ
龍飛 「おい。」チャッ
響 「なんだよ!?」
シャル 「は、はひっ!?」
龍飛 「政一から君達に手紙だそうだ。本文の他に付属品に
目を通しておくべきだな。では失礼。」パタン
シャル 「…付属品?」ガサッ
ーこんな形になって申し訳無い。
もし私の事を好いてくれているのなら
明日朝八時、執務室に来て欲しい。
其の時は私も君に愛情を注ぐ決意を固めるよ。
シャルロッテ・フォン・フリードリヒへ
諫田政一よりー
シャル 「…私の名前、長いのに…態々全部……」
響 「…シャルロッテさん、明日、突撃しよう。」
シャル 「…うん……」
ー第十七章 恋は盲目になるー
ー一月三十一日 執務室 08:00ー
シャル 「……」
響 「……」
提督 「…この様な状態で済まない……」
早霜 「……」zzz
提督 「力が強くて引き剥がせないんだ…」
シャル 「…昨日は激しかったんですね。」
提督 「あぁ…命が消え掛けたよ……」
響 「…其れで……」
提督 「分かっている、昨日の手紙の件だろう?」
シャル 「…良いんですか?」
提督 「私はもう何人増えても動じんよ…」
シャル 「えっ…一人じゃないんですか?」
不知火 「お早う御座います。」
提督 「お早う。」
シャル 「あ……指輪…」
不知火 「はい、ケッコンならしておりますが。」
暁 「ちょっと貴方、洗濯物!!」
提督 「済まない、御覧の通りで…」
暁 「あら…早霜ったら、普段大人しいのは我慢してたって
事なのね、意外だわ……じゃあ、後でまた来るわ。」
提督 「済まないな。」
暁 「良いのよ、貴方の為なら妻として何でもするわよ?」
シャル 「つ、妻!?」
暁 「あら、政一がケッコンしてばかりの女誑しって事、 貴女に言ってなかったかしら…」
シャル 「お、女誑し!?この人が!?」
龍飛 「おい、政一…朝食も食わずに何をしているんだ?」
提督 「コレで如何食えと?」
龍飛 「そんなの、私が食わせてやる…私だって一人の
男に惚れた女だ、其れ位は容易いモノだ。」
提督 「そうかい…」
シャル 「あ、貴女もケッコンを!?」
龍飛 「ん?私は籍を入れてないだけで結婚(ガチ)だぞ?」
シャル 「えぇ!?」
曙 「煩いわね!!私昨日今日と夜勤なのよ!!寝させて頂戴!!」
提督 「済まん、臨時ボーナス出しとくから…」
曙 「あ、あんた…昨日やたら激しいとは思ってたけど…
改めて見るとヤバいわね……御疲れ様。」
提督 「おう、曙も御苦労様。」
シャル 「あ、貴女はケッコンしてるの?」
曙 「は?あぁ、政一と?勿論、籍も入れたわよ?」
シャル 「ギャァァァァアアアア!!」
響 「まさかこの人、籍を入れられると思ってたのかい?」
提督 「見る限りは其の様だな。」
暗闇 「あーもう何なのよ…政一、何が起きてるの?」
提督 「かくがくしかしまさんぱちまるゆ。」
暗闇 「あー、成程。」
シャル 「あぁ…何でこんなにケッコンしてるの……」
暗闇 「落ち着いてシャルロッテさん…」
シャル 「あ…貴女は?」
暗闇 「私は暗闇、政一の[正妻]よ。」
シャル 「…正妻……」ドサッ
暗闇 「…これで良いかしら?」
提督 「おう、取り敢えず非番の奴は寝るなり遊ぶなり
好きにしてくれ、仕事の有る奴は仕事に戻れ。」
龍飛 「ほれ、サンドイッチを作ってみたんだ。」
提督 「おう、美味そうだな…」
龍飛 「食べさせてやる、ほら口を開けろ。」
提督 「待て待て、早霜を先に引き剥がしてだな!?」
龍飛 「ほれ!!」ガボッ
提督 「もごがっ…」
龍飛 「御託はいいからとっとと食え。」
提督 「……美味い。」
龍飛 「そうか!!」ニコッ
提督 「…このツンとくるのは山葵か?」
龍飛 「あぁ、試しに使ってみたんだが。」
提督 「…矢張り山葵は肉と合うな。」
龍飛 「そうか。」
響 「…提督。」
提督 「響、申し訳無いが机の引き出しを開けてくれ…
二段目の少し小さい奴…頼むわ……」もぐもぐ
響 「うん……こ、これは…」
提督 「シャルの分も有るから、持って行ってくれ。」
響 「…提督、ムードも何も無いね。」
提督 「こんなもんさ、場数を踏み過ぎたからな。」
響 「…でも、嬉しいよ。」
提督 「そうか…そう言ってくれると有難い。」
響 「…じゃあね。」
ー暁型共有部屋 10:27ー
シャル 「…此処は?」
ぷらずま 「手前は馬鹿なのですか?結婚してるかを安易に
聞きまくるとか手前は馬鹿なのですか?」
シャル 「え?あれー?私は執務室に居た筈…」
ぷらずま 「ぷらずまが運んでやったのです、有難く思え
なのですこの馬鹿女…まぁ、ブーメランなのですが。」
シャル 「ちょっと、馬鹿女って…」
ぷらずま 「政一に迷惑を掛けたら馬鹿女と相場が決まって
いるのです。手前は馬鹿女、私も馬鹿女なのですよ。」
シャル 「……」
ぷらずま 「政一とケッコンしている先輩としてアドバイス
なのですが、がっつき過ぎると嫌われるのですよ。」
シャル 「へ?」
ぷらずま 「なので程々にがっつく事なのです。逆に、
がっつかなさ過ぎも政一が離れる要因になるのです。」
シャル 「…どうも……」
ぷらずま 「…とっとと左薬指を見るのです鈍感馬鹿女。」
シャル 「ど、鈍感って…ゆ、指輪!?」
ぷらずま 「響が持って来たのを手前の指に通したのです。
寝てばかりの鈍感だから気付かないのですよ。」
シャル 「…え?て事は……」
ぷらずま 「手前も政一の妻なのです。大所帯の一員として
これから家事に育児、勿論執務も手伝って貰うのです。 覚悟をしておくのです、元ドイツ陸軍の軍人さん。」
シャル 「…なんか嬉しいのに怖くなってきた。」
ぷらずま 「やる事の詳細は暁か暗闇に聞くのですよ。」
シャル 「あ、はい…」
ー第十八章 提督の今の仕事ー
ー医務室 13:44ー
ハイン 「…腕と脚が、元に戻る?」
提督 「眼も治るぞ。」シュッ
ハンス 「そりゃ如何いう原理なんだ?」
提督 「見た方が早いぞ。」ポタッポタッ
ハンス 「…血を出して何になるんだよ……」
提督 「さて、飲んで貰おうか。」
ハイン 「……え?」
ハンス 「血を飲んで何になるんだよ!!」
提督 「…化物の血は最高の薬となる。」
ハンス 「…は?」
提督 「良いからさっさと飲め。」
ハイン 「……」ゴクッ
ハンス 「飲むのかよ!?」
ハイン 「……ふぅ…」
提督 「効果が出るのは一時間後…暫く待ちな。」
ハンス 「…おう……」
ー14:57ー
ハンス 「…よう、具合は……」ガララッ
ハイン 「…こんにちは。」
ハンス 「お、お前…立てるのか……治ったのか!!」
ハイン 「えぇ、腕も脚も…眼も見えます。」
ハンス 「彼奴の言ってた事は本当だったのか…」
提督 「…治ったね。」
ハイン 「あ、提督さん…」
提督 「じゃ、これからはガッツリ働いてね。」
ハイン 「はい!!」
ハンス 「おう。」
ー軍港 15:49ー
提督 「…偶にはゆっくりするのも良いな……」
ザザァン…
提督 「……ん?」
山風 「…死にそう……」
海風 「待って…彼処、人が居るよ。」
提督 「…」チャキッ
ポンッ
パシュゥゥ…
山風 「…信号弾?」
提督 「…気付いて此方に来ると良いのだが。」
海風 「…行こう。」
山風 「う、うん…」
提督 「…来るか。」
ー16:00ー
海風 「…貴方は……」
提督 「説明は後で、先に入渠しておいで。」
山風 「…でも……」
提督 「良いから、早く。大破してるんだからさ。」
山風 「…御免なさい。」
海風 「…資材、お借りします……」
ー17:48ー
提督 「…白露型、海風と山風だね……」
山風 「は、はい…」
提督 「P大将の艦隊から落伍したみたいだね…」
海風 「提督を、知ってるんですか?」
提督 「陽炎と早潮、其れと親潮が居るからな。」
海風 「…あの三人が?」
山風 「本当なの?」
提督 「あぁ、親潮が訓練中で陽炎と早潮が非番だな。」
海風 「…提督さん、三人を此処に呼んで下さい。」
提督 「親潮の訓練が六時上がりだから其れに合わせて
此処に呼ぼうか…ちょっと待っててね……」
ー18:12ー
親潮 「済みません、訓練が長引いてしまって…」
陽炎 「夕飯を食べてて遅くなっちゃったわ…」
早潮 「皆さん御久し振りですね…」
山風 「皆、生きてたんだ…良かった……」
陽炎 「ちょ、勝手に殺さないでよ!!」
海風 「…良かった、此処の提督は信用出来そう……」
陽炎 「…二人は知らないのね…知らなくて当然よね……」
山風 「な、何の事?」
早潮 「御二人共落ち着いて聞いて下さいね…」
海風 「え?」
親潮 「貴女達は此処に来た事によって、もう二度と元の
艦隊には戻れなくなってしまったのよ。」
山風 「えぇ!?」
海風 「嘘…じゃ、無いのよね?本当に、戻れないの?」
時雨 「うん、本当に戻れないよ。」
山風 「あ、時雨姉さん…」
時雨 「此処は深海棲艦の本拠地、仮に戻ればスパイだと
疑われて殺されると思うよ。敵に情報を渡したってね。」
海風 「そんな…」
夕立 「もし生きたいなら此処に着任すると良いっぽい。
政一、優しいっぽい。」
山風 「…良いの?」
時雨 「勿論、大歓迎さ。」
山風 「…じゃあ、此処に住もうかな……」
海風 「…そうだね。」
時雨 「分かったよ。夕立、加賀さんに報告お願い。」
夕立 「ぽいぽーい。」パタン
陽炎 「…駆逐艦も大所帯だね。」
時雨 「政一が優しいからね。」
ー執務室 21:22ー
提督 「…終わったぞ。」
赤城 「御疲れ様です。」
加賀 「タイムカード切って残業付けて下さい。」
提督 「おう、お休み。」
ー第十九章 軍人会議ー
ー二月一日 会議室 10:00ー
浅葱 「…会議、ですか……」
早紀 「珍しいっすねぇ…」
ハンス 「会議は嫌いだぜ…」
ハイン 「気持ちは分かりますが足は下ろして下さい。」
シャル 「…初めて会う人も居ますね……」
白鷺 「…表の奴、十時からって言ってたのにまだかよ…」
真衣 「…提督さん、何かあったんでしょうか……」
ターニャ 「分かりませんが、今は待ちましょう…」
中枢(深) 「ソウダナ…マツシカナイダロウ。」
提督 「申し訳有りません、少々資料制作に時間が掛かり
遅れました。只今より二月度の定期会議を行います。」
ハンス 「おう…で、資料って?」
提督 「近海の敵出現頻度並びに其の艦隊の平均練度です。
青葉や南方棲鬼さん等から証言を頂き、深海棲艦の方々
からの戦果報告や潜水艦の皆さんの撃沈破報告等を精査し
正確な情報をこの資料に纏めさせて頂きました。」
ハンス 「お、おう…」
提督 「では先ず資料の二頁目を御覧下さい。出現頻度の
高い順に艦種を並び替えました。見て分かる通り最も
出現頻度が高いのが空母、次に戦艦、駆逐艦と続き逆に
最も出現頻度が低いのが潜水艦となります。この事から
敵は通商破壊を行わず制空権から奪おうとしている事が
良く分かると思われます…よって今後は制空権を重視し
敵艦隊を撃破する事が重要と思われます、また現在我々
深海棲艦側には艦隊から落伍した駆逐艦が数多く集まり
数的優位に立っています。これらの艦を訓練で二軍へ
引き上げる事が可能であれば戦力的余裕がより一層大きく
なる事は確定事項と思われます…次に三頁を御覧下さい。
敵平均練度と其の分布です。」ペラペラペラペラ…
ハイン 「り、理解でやっとの速さ…」
ハンス 「は、速すぎて全く入んねぇ…」
早紀 「…成程っす……」メモメモ
白鷺 「となると此処を重点的にやった方が良いか…」
提督 「…よって敵はケッコン艦を戦場に出さず他の艦… 当鎮守府で言う所の[三軍以下]を主軸に出撃艦隊を組成
している事が分かります。この艦隊は練度の低さから
最適な行動に移る事が難しく、結果此方が容易く撃破
出来ているだけであると分かります。今後はこれまで
渋っていた[一軍級]艦隊が出撃してくる可能性が大きく
我々の戦力を強化する必要が有ると言えます。ここまでで
何か不明な点、意見や異論有れば挙手願います。」
真衣 「質問です。」
提督 「何でしょうか?」
真衣 「今後、当拠点は一体如何いった方針で戦闘活動を
続けるのでしょうか?」
提督 「其方は後でまた話しますので其の時に。」
真衣 「分かりました。」
中枢 「シツモンダ。」
提督 「はい、何でしょう?」
中枢 「ゲンジョウノワレワレノヒガイハドノテイドダ?」
提督 「丁度次の項目が其の件についてです。」
中枢 「ナラバゲンジョウシツモンハナイ。」
提督 「他に質問、異論等有る方は?」
提督 「…居ないようなので四頁、我々の被害と資材消費
に関して説明致します。現在高速修復材の消費が四十、
遠征等での確保分が五十八となり、十八の黒字です。
一方建造資材と高速建造材ですが建造資材は十二の赤字、
高速建造材は十の赤字となっており、今後迅速な確保が
求められると思われます…また、各資源に関しましては
鋼材並びに燃料弾薬が黒字、ボーキサイトが赤字です。
ボーキサイトを重点的に回収する必要が有り、今後遠征で
回収出来なければ空母運用が不可能に近いと思われます。
次に主な施設被害ですが、三大隊襲撃によって入渠場が
半壊…此方は先日復旧しました。次に硝子破損、此方も
破損当日に交換完了しました。よって現在は被害無し、
実に喜ばしい状況となっています。最後に被害を受ける
艦に関してですが、艦娘側の方が若干少なく、然し在籍
総数で割ると艦娘の方が被害が多く、決して油断出来ない
状況が続いていると言えます。では五頁と六頁、今後の
当拠点の方針についてですが、当拠点は今後哨戒と訓練を
重点的に行い、出撃や建造は最小限に抑えます。また、
遠征数を増加させボーキサイト、可能であれば建造用の
資材各種を確保する算段です。ここまでで不明な点や
質問、異論等有る方居ましたら挙手願います…」
シャル 「……」
早紀 「……」
提督 「居ませんね、では定期会議を終わります。資料は
各自持ち帰って貰って結構ですので、では失礼。」
ー第二十章 斃る提督ー
ー談話室 11:27ー
提督 「……」気絶
早霜 「もう…徹夜で資料を作るから……」
暁 「無理をして死んだら如何する気なのかしら…」
吹雪 「…シンダラシンデオイカケマスカラネ……」
暗闇 「……御飯だけは食べておきましょうか…」
ーー
ハンス 「…気に入らねぇな……両手に花とは言うが、
花に囲まれて気絶してら…」
ハイン 「…あの方は仕事が多いと聞いています。」
シャル 「心配ですね…斃る事は無いと思いますけど……」
龍飛 「おい、昼餉を持って来たぞ。」ガララッ
ハンス 「お、おう…済まねぇな……」
龍飛 「構わん、あの四人が食堂に来んから序で持って来た
だけに過ぎん…お前達も体調管理は徹底しろ。」
シャル 「そうですね…子供も欲しいですしね。」
ハンス 「!?」ブフッ
ハイン 「…え?」
龍飛 「ほう、昼から盛んな事で…まぁ、攻める事だな。」
シャル 「はい!!」
龍飛 「さて、そろそろ行くか…あの馬鹿共、政一が簡単に
斃る訳が無かろうが…」ガラガラ…
ー17:45ー
提督 「……」まだまだ気絶中
不知火 「…困りましたね……」
文月 「心配なの…」
潮 「お兄ちゃん…」
長門 「頼む、起きてくれ…」
加賀 「…流石に気分が滅入ります……」
霞 「……早く…早く起きなさいよ!!此の儘じゃ、あんたが
屑になっちゃうでしょ!?私、そんなの耐えらんないわよ!!
もう死んだ振りなんて要らないから早く起きて頂戴!!
もう嫌なの!!お願いだからもう私を置いて行かないで!!
あの時私を助けてくれたじゃない!!ねぇ、起きてよ!!
私に幸せを教えてくれたのは貴方でしょ!?」ぐずっ
曙 「…気持ちは分かるわ……」
満潮 「…起きてよ、政一……」
ーー
ハンス 「ふ、増えてら…」
ハイン 「…愛されてますね……」
鳳翔 「はい、夕餉ですよ。」ガララッ
ハンス 「お、済まねぇ…」
鳳翔 「…流石にここまで起きないと心配ですねぇ……」
ハイン 「…そうですよね。」
鳳翔 「私も見守ろうかしら、なんて…ね?」
ハンス 「良いと思うぜ、誰も文句なんざ言わねぇよ。」
鳳翔 「あらあら…じゃあ、混ざろうかしら。」ガラガラ…
ハイン 「…あの方は鳳翔さん、ですね……」
ハンス 「あ?昼のも鳳翔じゃねぇのか?」
龍飛 「そんな訳が無かろう、この阿呆。」
ハンス 「おばぁ!?鳳翔が二人!?」
龍飛 「私は龍飛だ…間違えるな。」
ハンス 「ミワケツカネェヨ…」
ハイン 「着物と口調、其れと髪型で分かりますよ。」
ハンス 「は?」
龍飛 「私は料理をする時にしか袖を捲らんからな…其れに
口調がキツいとよく言われている。抑私は髪を束ねるのが
嫌いでな、髪留めを使わん…まぁ、政一は両方好きだと
言ってくれるがな…奴は優し過ぎる。」
ハンス 「そ、そうなのか…」
龍飛 「…さて、いい加減に起こすか。」つ御新香
ハイン 「…漬物ですか?」
龍飛 「私の新香が食えるとなれば起きる筈だ…」
ーー
龍飛 「済まん、通るぞ。」
暁 「あら?この香りは…」
龍飛 「おい、政一。新香が漬かったぞ。」
提督 「…んぁ?」
長門 「お、起きた…政一が起きた!!」
霞 「心配かけさせてんじゃないわよ!!」ギュッ
提督 「…えらく長い時間気絶してたんだな……」
龍飛 「あぁ、花に囲まれる程にな。」
提督 「…まだちと浅いな。」ポリポリ
龍飛 「この程度の方が良かろう?」
提督 「まぁな…」
ーー
ハンス 「…マジで起きやがったぞ……」
ハイン 「日本の漬物は恐ろしいですね…」
球磨 「アレは単に政一が新香好きなだけクマ。」
ハンス 「おわぁ!?」
球磨 「ちょっと前通るクマ。」
ハンス 「お、おう…」
ハイン 「…まぁ、何とかなって良かったです。」
ハンス 「お、そうだな。」思考放棄
ー第二十一章 ドイツの高飛車戦艦ー
ー二月二日 執務室 09:24ー
陽炎 「提督!!」
提督 「ん?」
陽炎 「金髪で背の高い人が来てるんだけど!?」
提督 「…取り敢えず通してくれ。」
陽炎 「うん…」
ー09:44ー
?? 「御久し振りね。」
提督 「お前か…徒桜から遠路遥々御苦労な事で……」
?? 「あら、そうさせたのはAdmiralでしょ?」
提督 「…そうか?」
?? 「そうよ。」
提督 「…そうかい。」
陽炎 「えっと…提督、この人は?」
?? 「あら、紹介が遅れたわね…」
提督 「此奴はドイツから来た高飛車戦艦のビスマルク…
確か第三改装まで終わらせてた筈だが。」
??→ビスマルク 「えぇ、合ってるわ。」
陽炎 「ビスマルクさん!?ビスマルクさんって確か滅茶苦茶
自意識過剰な人だったと思うんだけど!?」
ビスマルク 「私が愚かだったわ…この人には勝てないって
あの時に思い知らされたわね。」
提督 「お前の高飛車っ振りは凄まじかったな。」
ビスマルク 「辞めて頂戴、まだトラウマなのよ…」
提督 「…さて、レーベとマックスは何処に居たかな……」
ビスマルク 「ちょっと待って、二人が居るの!?」
提督 「後で会わせてやるから…今は無理だ。」
ビスマルク 「そう…」
グラーフ 「Admiral、報告書を纏めて…」チャッ
ビスマルク 「あら、グラーフじゃない。」
グラーフ 「ビ、ビスマルク…何で此処に……」
ビスマルク 「この人を追い掛けて来たのよ。」
グラーフ 「そう…」
提督 「…此処、誤字がある。後内容がスカスカ。」
ビスマルク 「内容が無いようって?」
提督 「……」プルプル
グラーフ 「ビスマルク、其の駄洒落は詰まらないわ。」
ビスマルク 「あら、Admiralには刺さってるけど?」
グラーフ 「へ?」
提督 「……」プルプル
グラーフ 「…内容が無いよう?そんな事無いよう。」
提督 「ぶはっ!?」
グラーフ 「えぇ…」
ビスマルク 「…駄洒落に弱いのね、Admiralは。」
提督 「…取り敢えずやり直し。」
グラーフ 「はいはい…」
ビスマルク 「じゃ、私は此処で待ってるわ。」
提督 「あいあい…」
ー第二十二章 スパイ侵入ー
ー10:22ー
レーベ 「大変だよ!!」バァン
提督 「は?」
マックス 「スパイが居るってゆーが言ってたよ!!」
提督 「…時期尚早、馬鹿にも程が有る……」
ビスマルク 「兎に角落ち着きなさい。」
提督 「で、其のゆーは何処に?」
レーベ 「分かんない、何処かに行っちゃった。」
提督 「…分かった、私が探す…君達は此処に居なさい。」
ー10:38 潜水艦用大部屋ー
提督 「…ゴーヤなら心当たりが有る筈だが……」
イムヤ 「提督、如何したの?」
提督 「スパイの件について何か情報は?」
イムヤ 「…あぁ、其の話はゆーから聞いて。」
ゆー 「…何ですか?」
提督 「スパイが居るそうだな?」
ゆー 「うん、夕立に似てたけど、眼が緑だった。」
提督 「…となれば夕立を探すが吉か、助かったよ。」
ゆー 「うん…あ、改造宜しく…」
提督 「了解…済まないな寝ている所に邪魔して。」
ゆー 「良いよ…提督だもん……」
イムヤ 「じゃ、宜しくね。」パタン
提督 「…スパイは夕立……」
ー11:02ー
?? 「御飯頂戴っぽい…」
加賀 「…貴女にはあげられませんね。」
?? 「一口だけでも良いっぽい、お願いだから…」
提督 「此処に居たか、侵入者。」
?? 「ぽい!?」
提督 「迷惑を掛けるな…おい加賀、此奴に飯やれ。」
加賀 「…良いんですか?」
提督 「此奴は単なる脱走兵だ…入り方がアレだったから、
スパイと勘違いされるのも無理は無いがな。」
?? 「お願いっぽい…」
加賀 「…仕方が有りませんね、どうぞ。」
?? 「有難うっぽい…」
提督 「で、お前は誰だ?」
?? 「名前なんて無いし、夕立姉さんも死んだっぽい…」
提督 「夕立に育てられたが故の其の口癖か…」
?? 「…お願いだから匿って欲しいっぽい……」
提督 「…所属は?」
?? 「…大本営に居たけど提督は知らないっぽい……」
提督 「分かった、御飯を食べ終わったら工廠に。」
?? 「ぽい…」
ー工廠 13:28ー
深海妖精 「テキセイハクチクカントケイジュンヨウカンダナ。」
提督 「…なら軽巡で行くか」
深海妖精 「アトハマカセル。」
ー18:22ー
提督 「ほれ、目を開けな。」
?? 「…提督さん、私が私じゃなくなったみたい…」
提督 「そりゃそうさ、お前の本当の姿は軽巡洋艦だ。
そしてお前の今の名は「名取」…長良型の名取だ。」
??→名取 「…この姿が、本当の私……」
提督 「栄養失調で痩せこけて駆逐に見えただけだな。」
名取 「…提督さん、大好き。」ギュッ
提督 「抱き着くな、当たってるぞ。」
名取 「当ててるんだもの、当然でしょ?」
提督 「…そうかい……」
五十鈴 「…あら、名取じゃない。」
提督 「件の侵入者だ。」
五十鈴 「そうだったの…」
提督 「さて、これから忙しくなるな。」
五十鈴 「まだ居ないのは長良姉さんと鬼怒ね。」
提督 「そうだな。」
ー第二十三章 捨て艦ー
ーとある鎮守府 23:00ー
?? 「…何じゃと?」
Q提督 「作戦は今説明した通りだ…囮となれ。」
?? 「…妾達に死ねと、そう言うのか?」
Q提督 「嫌なら他を当たるだけだ、他をな。」
?? 「…相分かった。」
Q提督 「…ならば行け。」
バタン
?? 「……見損なったぞ…」
ー二月三日 沖合 09:27ー
グラーフ 「Admiral、逸れ艦が三隻。」
提督 「…艦載機で周囲を警戒。」
赤城 「了解。」
提督 「川内、迎えに行ってやれ。」
川内 「はーい。」
ーー
川内 「お早う、駆逐艦の皆。」
?? 「誰じゃ!?」
川内 「艦砲を向けないでよ…味方なんだからさ……」
?? 「…三人も、逝ってしもうた……」
川内 「三人で生き残ったの間違いでしょ。」
?? 「死んだのは事実じゃ!!囮となり、死んで行った!!」
川内 「…後悔しても、変わらないよ。」
?? 「然し!!」
川内 「大事なのは、彼女達が見られない未来を見る事。」
?? 「…そう、じゃの……妾は少し狂っておったな。」
川内 「良いよ、戻れたんだから。」
??→初春 「妾は初春じゃ、覚えておくれ。」
川内 「おぉ、初霜が喜びそうだね。」
初春 「そうじゃの…行こう。」
ーー
提督 「…初春、子日……後ろに若葉か…」
初春 「まだ三人居ったのじゃが…皆、死んで行った。」
提督 「分かった、Q提督の所からの移籍で処理しとくよ。」
初春 「申し訳無い。」
子日 「…何で有明と初霜は死んだの……」
若葉 「…神通さん、御免なさい。」
提督 「…先ずは乗ってくれ。」
初春 「そうじゃの…」
提督 「…捨て艦なんて憚られる方法を何故態々…」
初春 「恐らく、妾達が邪魔になった故じゃろうな。」
提督 「…お前達よりも戦闘能力が高い奴を重用、か。」
初春 「妾達は最早旧式艦、ドックを圧迫するだけだと…
そう踏んだのじゃろうな。引率は神通じゃった。」
提督 「神通は何時でも生産できると知ってか…」
初春 「…島風が来てから提督は変わってしもうた。」
提督 「…駆逐艦最速、其の高い性能に目が眩んだか。」
初春 「兎も角妾達はあの様な馬鹿は御免じゃ。」
提督 「安心しな、ウチは雇用満足度98.8%だ。」
初春 「成程…して、残りの分は?」
提督 「…御無沙汰過ぎて心配になりだしたウチの妻。」
初春 「ほう?」
提督 「毎日は体力持たねえし被るし多いしよ…」
初春 「…何じゃ、其の……心中、察するぞ。」
提督 「…せめて休日をくれ……」
ー執務室 17:46ー
初春 「……」
中枢(深) 「…ワカッタワ、ショリシトクワネ。」
子日 「怖い…」
南方棲戦姫 「…一応味方よ?」
若葉 「響、大丈夫なのか?」
響 「大丈夫、提督の優しさが世界を変えたんだよ。」
提督 「……」zzz
加賀 「初霜は寂しかった様ね。」
初霜 「……」ギュッ
初春 「其の様じゃの…」
加賀 「じゃあ、部屋は纏めておくわ。」
初春 「うむ、助かる。」
加賀 「宜しくね、初春型のお姉さん。」パタン
初春 「…彼奴の方が年上じゃろうて……」
ー第二十四章 提督引退ー
ー20:26ー
提督 「…さて、二人を呼んだ理由だが……」
早紀 「提督を辞めるって本当っすか!?」
提督 「私はもう年寄だ、其れに死と蘇生を繰り返す以上は
指揮を執るには向かんからな。なら若いお前達に譲ろうと
思って呼んだんだ…二人で手を組んで頑張ってくれ。」
真衣 「二人で…」
早紀 「手を…」
提督 「…この服ともお別れだな。」つ白軍服
真衣 「……提督…」
提督 「早紀は大将、真衣も中将…問題は無いな。」
早紀 「先輩…」
提督 「…もう教える事も無い、老兵は去るよ。」
早紀 「そんな事ないっす…私達はまだまだ若輩者っすよ!!」
真衣 「まだ私達は未熟です、もっと勉強させて下さい!!」
提督 「…私にはもう教えられる事が残ってないんだ。」
早紀 「そんな…」
提督 「もう泣くな、お前達を認めたから退けるんだ。」
真衣 「提督…」
提督 「…後は任せる、頼んだぞ。」パタン
早紀 「…はい!!」
ー政一自室 21:00ー
提督→政一 「……」
クローゼット<私服皆無ですぜ
政一 「軍服二着に白軍服八着、スーツと作業着三着…」
妖精さん 「これ程酷いクローゼットは初めて見たよ…」
政一 「服を仕入れる必要が有るな。」
ターニャ 「…あの……」
政一 「おう、軍服持ってけ。」
ターニャ 「…良いのですか?」
政一 「俺はもう提督を辞めたしお前なら着られるだろ?
俺の使い古しで良ければ使ってくれ。」
ターニャ 「…有難う御座います、提督。」
政一 「もう提督じゃねぇよ、俺は諫田政一だよ。」
ターニャ 「…有難う御座います、政一さん。」
政一 「言い直さなくても良かったんだが…」
暗闇 「政一、提督辞めたって本当なの!?」
政一 「あぁ、後輩二人に任せて隠居生活だな。」
ターニャ 「…失礼しますね。」
政一 「おう。」
暗闇 「……」
政一 「孰提督を辞める事になるのだから、今の内に辞めて
ゆっくり皆と生活したいんだよ。」
暗闇 「…そう、なら私も辞めようかしら……」
政一 「其れは早紀と相談してくれ。」
暗闇 「…そうね。」
ー二月四日 05:00ー
政一 「……」
南方棲戦姫 「お早う、政一。」
政一 「おう…隠居生活一日目だな。」
浅葱 「…お早う御座います。」
政一 「…来たのか。」
浅葱 「えぇ、かなり時間を掛けて調べ上げましたから。」
政一 「そうか…」
浅葱 「…軍服ではないのですか?」
政一 「提督を辞めたからな。」←作業着
浅葱 「……」
政一 「さて、服を調達しますかね…」
浅葱 「いや、あの…私は?」
政一 「早紀か真衣に言ってくれ。」
ー大阪 11:27ー
政一 「…この服は安いし丁度良いか。」
早霜 「政一さん、こんなの如何ですか?」
政一 「うん、似合うよ。」
客1 (…リア充め。)
客2 (艦娘とイチャイチャ…爆ぜろ。)
ーー
店員 「合計で18467円です。」
政一 「丁度だな。」
店員 「有難う御座いました。」
ー動物園 13:42ー
政一 「ふぅ…」←私服
早霜 「政一さん、アイスです。」←ワンピース
政一 「済まんな。」
早霜 「良いんですよ、貴方の為なら。」
観光客1 (…イチャイチャしやがってよ……)
観光客2 (うっぜぇなぁバカップルがよ…)
早霜 「貴方と結婚してから旅行に行けず何年経ったか…」
政一 「私にも分からんな…」
早霜 「でも、今日からは旅行出来ますね。」
政一 「あぁ、もう仕事に縛られずに済むな。」
観光客3 (無職かよwww)
観光客4 (直ぐに離婚しそうだなwww)
政一 「提督も楽じゃないからな。」
早霜 「でも、貴方が提督だったから出会えたんですよ。」
政一 「…そうだな、あの時は大変だったが。」
早霜 「今も昔もこれからも、私は貴方の為に…」ギュッ
政一 「…嬉しい事を言ってくれるね。」
観光客達 (…これ以上無いくらい甘いなぁ。)
観光客1 (…でも、あの子ヤンデレだな。)
政一 「…行くか。」
早霜 「はい。」
ー談話室 20:27ー
早霜 「政一さんが優しくなりました!!」
龍驤 「ホンマか、ええなぁ…」
あきつ丸 「辞職した事で余裕が生まれたでありますな。」
ゴーヤ 「…あ、仕事の時間でちね。」
イムヤ 「そうね、私達は失礼するわ。」
あきつ丸 「了解であります。」
早霜 「さて…寝ます、お休みなさい。」
龍驤 「ほい、お疲れさん。」
ーー
ハンス 「…辞めちまったんだな……」
ハイン 「会議には出席される様です。」
シャル 「信用出来る後輩が居るから退けるんですよね。」
長門 「あぁ、我々も政一が退く事には賛成だ。」
日向 「奴は優し過ぎるからな。」
加賀 「私達に愛情を注ぐ事を重視してくれるのは正直
有難いのですが…仕事と両立は厳しいのです。」
長門 「ならば我々は後輩である二人に指揮を執って頂き、
政一には前線から退いて頂こうと考えていたのだ。」
日向 「だからこそ、加賀や私は甘えようと思っている。」
加賀 「自然にバラさないで頂けますか!?」
ハンス 「…惚気はもう沢山だぜ……」
ー第二十五章 元提督と島風ー
ー二月五日 政一自室 05:00ー
政一 「…朝か。」
島風 「起きるのはっやーい…」ふわぁ…
政一 「……お前、何故此処に…」
島風 「だって提督辞めちゃったんでしょ?」
政一 「まぁな…後輩が居るからな。」
島風 「…私は提督が好きだよ。」
政一 「…あの時君を助けたのは私だったな。」
島風 「私って、お肉が付かないからぺったんこだけど…
でも、提督の事が大好きだから頑張って食べてたの。」
政一 「…そんな事しなくても良かったのに。」
島風 「でも、頑張ったからお肉が付いたよ。」
政一 「其れで遅くなったりしてないか?」
島風 「…ちょっとだけね。」
政一 「あんなに速さを求めていたお前が遅くなったか…」
島風 「だって、私より早い人が居るし…私は提督の事が
とっても好きだから速さは捨てたの。」
政一 「…そうか。」
島風 「…初めて会った時は痩せに痩せてたからね。」
政一 「あぁ、そうだったな…」
島風 「……」
政一 「…さて、そろそろ朝飯でも食うか。」
島風 「提督…結婚しよ?」
政一 「!?」ビクッ
島風 「私は提督の事が好きだから…速さよりも提督の方が
大切だから、お願い。」
政一 「…島風、そんなに私が良いのか?」
島風 「うん。」
政一 「…分かった、行こうか。」
島風 「うん!!」
ー食堂 18:24ー
島風 「……」zzz
龍飛 「…お疲れの様だな。」
政一 「おう、少しバタバタしてな…」
龍飛 「何が有ったんだ?」
政一 「未成年者に手を出した犯罪者だと思われた。」
龍飛 「…島風のこの痩せ具合ではそう思われるか。」
政一 「あぁ…弁明には時間が掛かったな……」
ー回想ー
警官 「…君、この子とはどんな関係なんだ?」
政一 「以前は部下でした、今は妻です。」
警官 「…未成年者に手を出すのはいけないな。」
政一 「未成年?彼女は艦娘ですが…」
警官 「あぁ、よく居るんだよ…免罪符に[艦娘]を使う輩。
私はそんな簡単には騙されないからね。」
政一 「…私は退役軍人ですが。」
警官 「そんな嘘には騙されないと言っているだろう?」
政一 「そんなに言うなら私の後輩を呼びましょうか?」
つ携帯
警官 「はぁ?後輩?」
政一 「大将を呼ぶか中将を呼ぶか…浅葱さんは今引継で
忙しいから白鷺を…いや、彼奴は執務中だな。」
警官 「…嘘ばかりぺらぺらと!!」
政一 「…よし、中枢棲姫に連絡するか。」prrr…
警官 「中枢棲姫?」
[あら、貴方。如何したの?]
政一 「島風と歩いてたら拘束された。砲撃求む。」
[…何処?]
政一 「○○警察署。」
[…十五分で粉に出来るわ。]
政一 「分かった、粉微塵にしてくれ。」
[…提督を辞めたのは残念ね。]
政一 「…お前達との時間が取れないからな。」
[…そうね。]
政一 「じゃ、頼んだ。」ブツッ
警官 「……え?は?」
政一 「お前の命は後十五分…精々楽しめ。」
警官 「ま、ままままさか本当に提督!?」
政一 「そう、其れも深海棲艦側の。」
警官 「……」冷や汗ダラダラ
政一 「…折角の休日を態々潰してくれて有難う。」ギロッ
警官 「す、済みません!!解放しますからどうか御許しを!!」
政一 「一度死んで出直せ屑警官。」
警官 「そんな、御慈悲を!!」
政一 「慈悲も情も無い、斃れ。」
警官 「そんな…嘘だ……」
ーー
政一 「で、中枢が警察署を潰して俺達と一緒に帰った。」
龍飛 「…災難だったな。」
政一 「あぁ…」
島風 「…政一?」
政一 「ん、済まない起こしたか。」
島風 「良いよ…政一だもん。」ベッタリ
政一 「……」
龍飛 「…今まで我慢していた分の反動だろうな。」
政一 「だろうな…」
島風 「大好き…」ギュッ
政一 「…二人で寝るわ。」
龍飛 「…分かった。」
政一 「じゃ…」パタン
龍飛 「…何とも言えんな。」
ー第二十六章 街歩きー
ー二月六日 大阪の街 09:59ー
政一 「…この街に来るのは何時振りか……変わったな。」
ワイワイ…ガヤガヤ……
政一 「…路地裏、か。」
路地裏<狭いが一応通れる
政一 「折角買ったパンが食べられないが…行くか。」
ーー
政一 「…比較的痩せ型の私でも通り難い道だな……」
?? 「……」
政一 「ん?」
?? 「……」キラッ
政一 「硝子でナイフを…服もボロボロだな……」ガサッ
?? 「…!?」ザッ
政一 「ほれ。」つパン
?? 「…?」
政一 「腹減ってんだろ?ゴミ漁らんでこれ食え。」ニコッ
?? 「……」そっ
政一 「食えって、別に俺は腹減ってねぇから。」
?? 「……」カプッ
政一 「硬いパンしかねぇんだ、悪いな。」
?? 「……」モグモグ
政一 「……喋らねぇんだな、お前は…」
?? 「……」ポロポロ
政一 「あぁ泣くな泣くな、可愛い顔が台無しだぞ…」
?? 「…有難う……」ボロボロ
政一 「泣くなって…お前に一体何が有ったんだよ……」
?? 「…お父さんもお母さんも居ないの……」
政一 「其れで路地裏にか?」
?? 「うん…家にも入れないの……」
政一 「…居なくなって何日経ったんだ?」
?? 「…分からない……十日は経ってると思う。」
政一 「そんなにか?酷いな…」
?? 「…お願い、助けて……」
政一 「…普通の暮らしとは違うが、良いか?」
?? 「今より良くなるなら、別に良い…」
政一 「…そうか……分かった、お前は今から俺の娘だ。」
?? 「…うん!!」
政一 「…服を買うか、靴を買うか……飯も行かねぇと…」
?? 「……」
政一 「…先に服、その後風呂だな。」
?? 「…分かった。」
政一 「…で、お前何歳だ?」
?? 「…多分八歳。」
政一 「八歳だって!?」
?? 「多分…今何日?」
政一 「二月の六日だが…」
?? 「…うん、じゃあ八歳。」
政一 「…直ぐに服を揃えるぞ。」グイッ
?? 「わわっ!?」お姫様抱っこ
政一 「急ぐからな、掴んでろ!!」ダッ
ー服屋 10:27ー
店員 「…えらい汚れた子やね。」
政一 「出した服は全部買う、合う物を探してくれ。」
店員 「ほんまですか?」
政一 「合う寸法の物を三着程欲しい。」
店員 「はぁ、成程…」
ー銭湯 11:08ー
番台 「…えんらい汚れとんね?」
政一 「水が止められて大変だったんだ。」
番台 「にしてはあんた汚れとらんね?」
政一 「滝の水は小さな子には毒だろう?」
番台 「…成程ね。」
政一 「この子を綺麗にする為に私も入りたいのだが。」
番台 「…汚れとる分大人料金で貰うで。」
政一 「構わない、大人二人で幾らだ?」
番台 「五百八十。」
政一 「…手持ちが札しか無いんだが。」つ万札
番台 「…金持っとんの?」
政一 「給料を受け取る前に水を止められた。」
番台 「…苦労しとんね。」つ御釣
政一 「済まないな。」
ーー
政一 「…湯を掛けるだけでこんなに汚れが……」
?? 「……」
政一 「……よし、目を閉じてろ…」つシャンプー
?? 「うん…」
客1 (…可哀想な子……あんなに汚れて…)
客2 (親子じゃないな…親が育児放棄でもしてたのか?)
客3 (あんな白髪赤眼の奴からあの娘が産まれるか?)
政一 「…流すぞ。」
?? 「うん。」
客4 (…アレがロリの身体……ヤりたい…)ジュルリ
客5 (…うわ、隣のヤツロリコンじゃねぇか……)
政一 「…よし、身体洗うぞ。」
?? 「うん、お願い…」
客6 (…身体も彼奴が洗うのか。)
客7 (…養子か?いや、抑彼奴は日本人か?)
政一 「よし、流すぞ。」
?? 「有難う。」
客4 (ロリは良いなぁ…ヤりたい。)じー…
?? 「…ねぇ、あの人ずっと見てる……」
政一 「…誰の事だ?」ギロッ
客1 (いや怖っ!?睨み顔怖っ!?人殺ってんじゃねぇのか!?)
客4 (バレた!?)ガタッ
床<あ、滑り易いんですが…
客4 「うわぁ!?」ツルッ
ドシーン!!
政一 「…お前、この子を見詰めて何をする気だ?」
客4 「痛…ん?お前、この子の親じゃないのか?」
政一 「私はこの子を保護している、親の代わりだ。」
客4 「…クソッ!!」タッ
床<いやだから!!
客4 「うわっ!?」ツルッ
バコーン!!
政一 「…二度目は風呂桶に直撃か。」
?? 「…気持ち悪い人。」
政一 「…俺もさっさと身体を洗って風呂に入るか。」
ーー
政一 「ふぅ…」ちゃぽん
?? 「…気持ち良い。」ちゃぽん
客1 「……なぁ、其の子…親って居るのか?」
政一 「…居るには居る様だが、家を出て消息不明だと。」
客1 「…其れであんたが……」
政一 「あぁ…」
客1 「…頑張んな。」
政一 「あぁ。」
ーー
政一 「…散髪に行かないとな。」ゴシゴシ…
?? 「うん…」
客3 (…痩せてんな……)
ー散髪屋 11:38ー
店員 「…如何されますか?」
政一 「前髪を切って全体を整えてくれ。」
?? 「…うん、お願い。」
店員 「分かりました。」
ー12:09ー
政一 「おぉ、良く似合うな。」
店員 「二千円です。」
政一 「丁度だ、助かった。」
店員 「有難う御座いました。」
ーファミレス 12:48ー
?? 「…美味しい。」モグモグ
政一 「沢山食べな。」
店員 「ご注文お伺いします。」
政一 「このパスタとこのプレートを頼む。」
店員 「はい、直ぐにお持ちします。」
ー13:38ー
店員 「…えっと……御会計が…」
モニター<¥8427
政一 「丁度だ、御馳走様。レシートは処分しててくれ。」
店員 「あ、有難う御座いました…」
ー靴屋 14:02ー
政一 「彼女の足に合う物を三足。」
店員 「はぁ、分かりました…」
ーー
店員 「…以上三足で一万四千円です……」
政一 「丁度だ、有難う。」
ー休憩所 14:48ー
?? 「…如何かな?」
政一 「うん、綺麗だ。似合ってる。」
?? 「…有難う。」
政一 「…名前をまだ聞いていなかったな。」
?? 「…私も。」
政一 「俺は[諫田政一]、君は?」
??→麗奈 「…私は[森谷麗奈]。」
政一 「…良い名前だな。」
麗奈 「…政一さんも。」
政一 「…さて、行こうか麗奈。」
麗奈 「うん。」
ー談話室 22:48ー
麗奈 「……」zzz
暗闇 「…可愛い子ね。」
政一 「家に帰ろうにも鍵が無いんだと…」
暗闇 「捨て子って事?」
政一 「恐らくは…」なでなで
麗奈 「ん……」ギュッ
暗闇 「…この髪色は中々見ないわね。」
政一 「だな…青葉の髪に近いか?」
暗闇 「そうね…」
政一 「…海軍も世間も、腐り切ってるな。」
暗闇 「……」
政一 「…私はもう人間が嫌いだよ。」
中枢(深) 「…ニンゲンナンテソンナモノダ。」
政一 「…腐った蜜柑の法則か……」
ー第二十七章 木を隠すなら森の中、提督を隠すなら…ー
ー二月七日 政一自室 06:27ー
政一 「…演習……」
真衣 「受けるべき、なのでしょうか…」
政一 「……」
白鷺 「…木を隠すなら森の中、此処は私が出よう。」
政一 「お前がか?」
白鷺 「此処には提督が元を含め四人居る。」
政一 「…俺の身代わりか。」
白鷺 「お前は島風と麗奈を見てろ。」
政一 「おう。」
真衣 「何故そこまで…」
政一 「…演習相手は誰だ?」
真衣 「えっと…Q中将ですね……え?」
政一 「…昇格が早い事で……」
白鷺 「更にO中将とP大将もな…三艦隊連合演習だと。」
政一 「…私は其の提督共の処分か?」
白鷺 「いや、今はコテンパンにするだけで良い。」
政一 「…そうか。」
ー演習場 11:30ー
大和 「…あら、あの方が例の……」
武蔵 「…いけ好かん男共だ。」
ビスマルク 「…私達のAdmiralに遠く及ばないわね。」
加賀 「早く終わらせて政一の元に行きたいです。」
瑞鶴 「そうよね…とっとと終わらせましょ?」
グラーフ 「…奴等は何を思って此処へ……」
熊野 「コテンパンにして差し上げますわ。」
鈴谷 「…ブッ殺して政一んとこ行こっと。」
最上 「…鬱陶しいなぁ……」
三隈 「…もう少し寝たかったわ。」
北上 「魚雷捻じ込んで終わらせようよー…」
大井 「そうよね…消すわ。」
木曾 「こんな時に来るとか彼奴等馬鹿だろ…」
早霜 「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス…」
暁 「大事ナ時二来ヤガッテェ…絶対許サネェ……」
吹雪 「邪魔ナ奴等ハコロシテコノ世カラ消シテヤル…」
卯月 「…面倒臭い連中が来たね……」
不知火 「…鬱陶しいので全部消してしまいましょう。」
O中将 「…なぁ、これ勝てるか?」
P大将 「いや、良くてC敗北。」
Q中将 「…負け戦とはこの事か……」
ー17:00ー
P大将 「…普通演習で殺される事有るか?」
O中将 「いや、普通は無いんだが…」
Q中将 「…ダメコン仕事しろ……」
ー政一自室 18:27ー
あきつ丸 「…以上、演習戦果報告であります。」
政一 「…良く殺ったな。」
あきつ丸 「そうでありますなぁ…」
政一 「…で、俺の部屋がヤバいのか。」
あきつ丸 「諦める方が良いでありますな。」
政一 「だな…こうなるのを覚悟で増やしたからな……」
あきつ丸 「序で私も御邪魔するでありますよ。」
政一 「…こりゃ床に直で寝る他ねぇなぁ……」
ー第二十八章 救助活動ー
ー二月八日 05:42ー
政一 「……」読書中
島風 「……」zzz
磯風 「…難しい本を読むんだな。」
政一 「まぁな…」
麗奈 「…分からない……」
政一 「分からなくて良いんだよ。」
麗奈 「…大好き……」スリスリ
政一 「…お前は本当に可愛い娘だよ。」
ー08:16ー
政一 「……」読書中
長門 「政一、浜に誰か来たぞ。」チャッ
政一 「…客では無いな。誰だろうか……」
ー海岸 08:29ー
政一 「…おいおい、重巡洋艦六隻は聞いてねぇぞ……」
妙高 「…迷惑なのは重々承知なのですが……」
那智 「燃料は無く損傷も酷い状態でな…」
足柄 「…どうか入渠させて貰えないかしら……」
羽黒 「お、御礼はしますから!!」
高雄 「…御願いします。」
愛宕 「もう私達限界なの。」
政一 「…坂を上がって左に工廠が有る、其の中だ。」
妙高 「…有難う御座います。」
政一 「案内は要らんだろうが、見張りは手配しておく。」
妙高 「…分かりました。」
ー工廠 11:48ー
ゴーヤ 「…やっと終わったでち?」
妙高 「は、はい…」
ゴーヤ 「だったら提督に挨拶行くでちよ。」
妙高 「あ、提督さんなら先程お会いしましたが…」
ゴーヤ 「政一は退役軍人でちよ。」
妙高 「へ?」
ー執務室 12:27ー
ハンス 「…何か用か?」
ゴーヤ 「大将は何処でち?」
ハンス 「早紀さんは今昼飯食いに行ってる。」
ゴーヤ 「入れ違いになったか…」
ハイン 「…御弁当持って来て貰いますか?」
ゴーヤ 「…そうした方が良さそうでちね。」
ー13:11ー
早紀 「さて、執務の続きを…あれ?誰っすか?」
ゴーヤ 「高雄型の前期型二人と妙高型四人でち。」
早紀 「…政一には会ってるっすか?」
ゴーヤ 「政一が見つけてるでち。」
早紀 「なら着任で処理しとくっす、御疲れ様っす。」
那智 「そ、そんなに軽くて良いのか!?」
早紀 「良いっすよ…ぶっちゃけ面倒っす。」
那智 「ほ、本音が酷いな…」
麗奈 「…政一さん、何処?」
早紀 「あー、今は釣りしてるっすね。」
麗奈 「…有難う。」
羽黒 「あの、今の子は…」
早紀 「此処で保護してる麗奈ちゃんっすよ。」
足柄 「保護?何で…」
早紀 「…育児放棄の可能性が高いっす。」
足柄 「酷い…」
早紀 「…人間は屑ばかりっすよ……」
ー第二十九章 政一の地雷ー
ー二月九日 政一自室 08:24ー
龍驤 「政一、悪いけど来てくれへんか?」チャッ
政一 「…分かった。」ガタッ
ー応接室 08:45ー
R中佐 「…お早う御座います。」
政一 「…こんな辺境の退役軍人に何か御用が?」
R中佐 「えぇ、まぁ…」
政一 「…龍驤、お茶を。」
龍驤 「了解。」パタン
R中佐 「…早速本題に入るか。」
政一 「…本題ですか……」
R中佐 「…此処の艦娘を私に寄越してくれ。」
政一 「………はぁ?」
R中佐 「私達も戦力不足、余剰が出ているのだろう?」
政一 「……」
ーー
龍驤 「アカン、あの人地雷踏みよった…」
黒潮 「止めに入れるようにしとかな…ヤバいでこれ……」
ーー
R中佐 「島風、磯風…ビスマルクやガングートも良いな。」
政一 「…だから何だ。」
R中佐 「今言った四人、寄越して貰おうか。」
政一 「…私にそんな権限は有りませんし有ったとしても
貴方に渡す気は微塵も有りません、御話は以上ですので
どうぞお帰り下さい、御出口はあちらです。」
R中佐 「…人を馬鹿にしおって……」
磯風 「政一、朝餉を持って来たぞ。」チャッ
政一 「…食うか。」
R中佐 「待て、磯風の料理を食う気か!?」
政一 「…お前が思っている磯風と此処の磯風は違う。」
磯風 「料理を教えてくれた政一には感謝し切れないな。」
R中佐 「…磯風、私の所に来ないか!?」
磯風 「…私の料理を疑う様な人は信用出来ないな。」
R中佐 「…この阿婆擦れ女が。」
政一 「…今の言葉、もう一度言ってみろ。」ガタッ
龍驤 「アカン、抑えな!!」バァン!!
黒潮 「政一、抑えんと!!」
R中佐 「此奴等、話を聞いていたのか!?」
政一 「…中佐よ、これが[信頼関係]だ。」
R中佐 「…擦れ枯らしの糞野郎が調子に乗りやがって……」
政一 「擦れ枯らしで結構、貴様よりはマシだ。」
R中佐 「このっ…」
龍驤 「出てけや…さっきから鬱陶しいねん。」
黒潮 「阿呆に構ってられんのよ、早よ去ねや。」
磯風 「…シュールストレミングでも食わせるか?」
R中佐 「…覚えてろ!!」ダッ
政一 「…御疲れ様。」
黒潮 「ええんよ。」
磯風 「料理が冷めてしまったな…」
政一 「構わない…」
ー地雷は踏むまで気付かない物だー
ー第三十章 初月着任ー
ー海岸 11:58ー
政一 「……海は良いな…」
?? 「そうだな。」
政一 「…誰だ?」
??→初月 「秋月型の初月だ。」
政一 「…初月か。」
初月 「貴方は誰だ?」
政一 「…死んだ元帥だよ。」
初月 「…大本営襲撃事件のか?」
政一 「あぁ…」
初月 「…貴方は、よく此処に来るのか?」
政一 「いや、皆との時間を大事にしているからな…」
初月 「…あまり此処には来ないんだな。」
政一 「あぁ…一人の時間が多くないからな……」
初月 「…貴方は、此処で何を?」
政一 「皆と仲良く暮らしている…提督も辞めた。」
初月 「…辞めたのか?」
政一 「あぁ…皆との時間を取りたくてね……私が指揮を
執る事はもう無いと思うよ。」
初月 「そうか…貴方の指揮を、見てみたかった。」
政一 「…そう言ってくれるのは嬉しいな。」
初月 「…貴方は、僕を此処に置いてくれるか?」
政一 「構わない、後で報告しておく。」
初月 「…良かった、これで活躍出来るな……」
政一 「…まぁ、今はゆっくりしよう。」
初月 「あぁ、そうだな…」
ー15:47ー
秋月 「…そしてゆっくりした結果、こうなったと……」
初月 「…大好きです……」ギュッ
政一 「…さて、如何するか……」
照月 「別に何も考えなくて良いのでは?」
政一 「…退役軍人が艦娘に好かれるとは……」
時雨 「政一の女誑しは変わってないからね。」
政一 「薄々は思っていたが、変わっていないのか…」
初月 「…僕では駄目なのか?」上目遣い
政一 「……抑えろ、抑えるんだ…箍が外れては単なる
外道になってしまう…理性を保て、真面で居るんだ……」
初月 「…駄目なのか?」グスッ
政一 「いやそんな事は無いんだが流石にまだ早い…」
初月 「早過ぎるなんて事は無い!!」
政一 「…いや然しだな……」
時雨 「…政一、惚れさせた責任は取ろうよ。」
政一 「……」
暗闇 「政一、其の子と理性…何方が大事なの?」
政一 「いや理性は大切だろう…」
暗闇 「別に私は気にしないから、今から夜戦でもして
満足させてあげなさい…泣かせたら殺すわよ?」
政一 「…分かった。」
初月 「良いのか!?」
政一 「普通の生活は出来ないが、其れでも来るか?」
初月 「あぁ、是非!!」
政一 「…よし、来い。」
ーー
時雨 「政一って、朴念仁で変に硬いよね。」
暗闇 「えぇ…だからこそ好きなんだけど。」
時雨 「…初月は、何回耐えられると思う?」
暗闇 「五も無いと思うわ…」
ー執務室 18:22ー
早紀 「…先輩、相変わらず誑しっすね。」ジトッ
政一 「知らん、私が何をしようが勝手にこうなる。」
早紀 「…嫌な特性っすね……」
初月 「……腰が、砕けて…立てない……」
政一 「まぁ、本人は幸せだと言うが。」
早紀 「…一応着任扱いにはしとくっす。」
政一 「あぁ、頼む…」
初月 「…政一、もう一度僕と夜戦して……」
政一 「またか?流石に体力が持たんぞ…」
早紀 「…あの、先輩。私とは御無沙汰っすよね?」
政一 「…明日、明日の昼に相手してやるから……」
早紀 「了解っす、ごゆっくりどうぞー。」
初月 「さぁ、部屋に運んでくれ…」
政一 「はいはい、仰せの儘に。」
ー第三十一章 加賀改二ー
ー二月十日 談話室 16:27ー
龍驤 「いやぁ、えらくお楽しみやったなぁ?」
曙 「やり過ぎなのよ、馬鹿ね…」
政一 「……」
大鳳 「寝不足が顔に出てますよ?」
文月 「一緒に寝る?」
政一 「……そうだな…其れも良いな……」
龍驤 「アカン、茶化しとる場合ちゃう…政一が限界や。」
大鳳 「大丈夫なんですか?」
曙 「大変、政一が壊れちゃうわ…」
文月 「大丈夫?」
政一 「…絶景だな……美少女に囲まれるとは……」
龍驤 「…此処居らしたらアカンわ、部屋運ぶで!!」
曙 「了解!!」
文月 「頑張る!!」
ー政一自室 17:44ー
加賀 「……」←膝枕中
龍驤 「…膝枕で良かったんか?別に添い寝でも…」
加賀 「此処は譲れません。」
龍驤 「……さよか…」
加賀 「膝枕であれば政一の寝顔が拝めるので。」
龍驤 「自分下心丸出しやないか…」
加賀 「其の位で無ければ正妻戦争に負けます。」
龍驤 「自分がどんなに頑張っても正妻は暁と暗闇やで。」
加賀 「……気分が落ち込みます…」
龍驤 「事実やろがい…」
加賀 「…所で、私に改二が有るとか。」
龍驤 「あぁ、聞いた事有るで。」
加賀 「然し、新型航空兵装資材に試製甲板カタパルト…
更に改装設計図と戦闘詳報、開発資材も大量に消費と。」
龍驤 「コストおっも…えらい大掛かりやな。」
加賀 「…認めて頂けるでしょうか。」
龍驤 「…政一はお前の事を大事にしとる、其の程度なら
普通に出すと思うで。[自慢の一航戦]言うとったしな。」
加賀 「…気分が高揚します。」
ー20:44ー
政一 「…何か顔に重みを感じる、前も見えない……」
龍驤 「お、起きよったか。」
政一 「…其の声と方言は龍驤か、今俺は如何なってる?」
龍驤 「膝枕しとった加賀が寝よって胸が顔に乗っとる。」
政一 「………はぁ?」
龍驤 「お前の顔に乗っとんのは加賀のデカいアレや。」
政一 「…マジか……」
龍驤 「待ち、今加賀起こすさかい。」
バチコーン!!
加賀 「…首に来ました……」
龍驤 「ワレの胸は政一の顔に来とるわ阿呆。」
加賀 「…え?」
政一 「起きたか、コレを退けろ。」
加賀 「……御免なさい。」
政一 「…ふぅ……さて、改造すっぞ。」
加賀 「えっ…」
政一 「加賀、早く来い。」
加賀 「…はい!!」
ー工廠 21:38ー
加賀(改二) 「…如何かしら?」
政一 「…綺麗だ。」
加賀 「そう…有難う。」
政一 「これからも、宜しく。」
加賀 「えぇ、此方こそ。」
龍驤(改二) 「…やっぱ似合うなぁ、あの二人は。」
工廠妖精 「見せに行かなくて良いの?」
龍驤 「邪魔したらアカン、今首突っ込んだらボコられる
だけじゃ済まへんで…傍観するんが一番ええねん。」
工廠妖精 「ふーん…」
ー第三十二章 駆逐艦+龍驤談話ー
ー二月十一日 政一自室 04:24ー
政一 「…四時半か……」
龍驤 「寝不足やろ?目の下黒いで?」
政一 「…お前達が何度も強請るからだろうが……」
龍驤 「あ、せやったせやった…御免なぁ。」
政一 「…構わんが。」
龍驤 「そっか…で、何でこの二人居るん?」
初月 「…僕は政一さんが好きだから。」
磯風 「私は朝餉の調理係だ、龍飛さんから御墨付きも
頂けたのでな、政一の専属調理人になる事にした。」
龍驤 「…愛情振り切っとんなぁ……」
吹雪 「……」チャッ
龍驤 「吹雪!?自分何で来たん!?」
吹雪 「…マサイチニウムが足りない……」ポスッ
龍驤 「[マサイチニウム]って何やねん!!」
磯風 「暗闇さんから聞いた事が有る、旧名称が確か……
[アイジョウニウム]とやらだった筈だが…」
龍驤 「アレか!!政一に触れると吸収出来てキラ付く奴!!」
政一 「…私から補給するのだからと改称したそうだ。」
吹雪 「癒されまふぅ…」ギュムゥ
龍驤 「…あっそ……どーでもええな。」
政一 「だな…」
時雨 「…御邪魔するよ……」
夕立 「するっぽい〜。」
政一 「…おい、俺の部屋は駆逐艦の休憩室じゃねぇぞ?」
龍驤 「諦め、増やした結果や。」
不知火 「ですね。」
龍驤 「何時から居ったん!?」
不知火 「四時半か辺りから。」
龍驤 「端からやんか!?」
磯風 「私達は知っていたぞ。」
初月 「あぁ、最初から居たな。」
龍驤 「電探は便利やなぁ…」遠い目
吹雪 「…誰か来てる。」
龍驤 「へ?」
響 「…楽しそうだね。」
電 「あの、電も混ぜて欲しいのです!!」
ぷらずま 「…おい、混ぜろなのです。」
暁 「随分と楽しそうね、混ぜて貰えるかしら?」
政一 「狭い部屋だが其れで良ければ自由に入ってくれ。」
響 「じゃあ遠慮無く。」
暁 「…やっぱり狭いわね。」
ぷらずま 「其処から退くのです!!」グイッ
吹雪 「いーーやーーだーーー!!!!」ジタバタ
政一 「おい揺らすな、酒飲んでて気分が悪ぃんだよ…」
電 「はわわわ…」
政一 「…うっ!?」
ぷらずま 「あっ…」
吹雪 「へ?」
ー映像が乱れております、暫くお待ち下さいー
政一 「…だから揺らすなっぶぇっ!?」
電 「あっ第二波が…」
ー映像が乱れております、暫くお待ち下さいー
龍驤 「…こら酷いな……」
暁 「…シャワー浴びて来なさい。」
ー06:44ー
政一 「……」ダウン中
響 「…凄かったね。」
吹雪 「…うぅ……」
ぷらずま 「酷い目に遭ったのです…」
暁 「馬鹿ねぇ…」
磯風 「これは…朝餉をズラさないと駄目だな。」
初月 「大丈夫かな?」
不知火 「この程度で斃る政一では有りませんよ。」
時雨 「…お休み。」
夕立 「お休みっぽい〜…」
龍驤 「よー寝れんなぁ…」
加賀 「そうね。」
龍驤 「おわぁ!?何時起きたん!?」
加賀 「政一が吐いた時からだけど。」
龍驤 「起きとったなら手伝ってぇなぁ…」
加賀 「私は食べる専門なので。」
龍驤 「よー言うわぁ…」
響 「…暁、如何する?」
暁 「寝ましょ…眠たいわ。」
響 「…そうだね……」
ー第三十三章 長門倒れるー
ー執務室 12:44ー
政一 「……」
早紀 「…という事で、駆逐艦の練度向上が重要っす。」
政一 「…駆逐艦同士で演習すれば良いのでは?」
早紀 「演習っすか…」
政一 「演習なら入渠時間も短いからな。」
早紀 「…了解っす。」
政一 「空母対防空駆逐艦に対潜水艦演習も必要だろう。」
早紀 「成程…了解っす!!」
バタン
政一 「…退役しても相談は絶えない、か……」
コンコン
政一 「…俺しか居ないぞ?」
チャッ
長門 「政一か…大将に渡す資料が仕上がったのだが……」
政一 「早紀は今出て行ったばかりだ。」
長門 「…そうか……」
政一 「…お前、寝てないだろ?顔色が悪いぞ。」
長門 「…大丈夫だ、長門型の私はこの程度では倒れん。」
政一 「…そうか……資料、預かるぞ。」
長門 「あぁ、済まなっ!?」グラッ
政一 「おい!?」ダッ
ドシャッ
長門 「……何が、起きたんだ…」
政一 「…矢張り大丈夫では無さそうだな。」
長門 「政一…済まない、迷惑を掛けた。」
政一 「一度医務室に行くぞ。」
長門 「あ、あぁ…痛っ!?」
政一 「おい、大丈夫か?」
長門 「…足が痛い……立てる気がしない。」
政一 「…私が運ぶ。」
ー医務室 13:22ー
医務妖精 「完全に折れてるね。」つレントゲン
政一 「脚の骨が折れたか…」
医務妖精 「一週間は絶対安静だね。」
政一 「…そうか……」
加賀 「失礼します。」
政一 「ん?」
加賀 「暗闇さんを筆頭に過半数の賛成を受け、政一さんは
本日より長門さんの完治迄の間、長門さんから離れる事を
禁止する事となりました。ですのでこの場で手錠を使用し
御二人を固定する事になりましたが、悪しからず。」
政一 「…はぁ?」
長門 「おい、嘘だろう!?」
加賀 「私は本気です。」ジャラッ
政一 「…終わった……」
ーー
政一 「…鎖が長いのが唯一の救いか……」右手に手錠
長門 「手洗いも風呂もずっと一緒なのか!?」左手に手錠
加賀 「完治するまで其の状態で御願いします。」
政一 「…寝泊まりもこの部屋か……」
長門 「…あぁ……」///
加賀 「ではごゆっくり。」パタン
長門 「…政一……如何するんだ?」
政一 「…如何もこうも無いだろ……」
長門 「…そう、だな……」
ー第三十四章 手錠拘束中ー
ー二月十二日 07:44ー
政一 「……」
長門 「…あー……暇だな?」
政一 「手錠をされては行動範囲が狭まるからな。」
長門 「済まない、体調管理は軍人の基礎だと言うのに…」
政一 「…お前に頼り過ぎた私の責任でもある。」
長門 「い、いや、そんな事は無いぞ!?」
政一 「いや、私の責任だ…済まない。」
長門 「政一…」
?? 「…入って良いか?」
政一 「…ん?」
?? 「…今日から此処で世話になるんだが……」
政一 「…私は提督では無いし手錠をされている。」
長門 「御覧の有様だ…情けない。」
?? 「…米海軍の奴は居るのか?」
政一 「…いや、露軍と独軍は居るが米軍は居ない。」
?? 「…そうか……」
政一 「で、お前は?」
??→スキャンプ 「…スキャンプだ。」
政一 「…潜水か。」
スキャンプ 「おう…」
政一 「……」
長門 「…悪いが執務室に行ってくれ。」
スキャンプ 「行き方が分かんねぇんだ。」
政一 「…動けない奴に聞きに来るな。」
?? 「…あの、誰か居ますか?」
政一 「……今度は何だ…」
?? 「…あの、御話……少し聞いてしまいましたの。」
政一 「…コマンダン・テストか……仏軍まで…」フラッ
スキャンプ 「おい、大丈夫か?」
政一 「手錠で怪我人と繋がれた状態で寝られると?」
スキャンプ 「お、落ち着けよ…な?」
政一 「……執務室行けよ…」
コマさん 「…えっと……」
あきつ丸 「…コマさんとスキャンプでありますな?」
スキャンプ 「ん?」
コマさん 「は、はい…」
あきつ丸 「執務室まで案内するでありますよ。」
コマさん 「あぁ、助かりました…」
スキャンプ 「Thank you…誰?」
あきつ丸 「私はあきつ丸であります。」
政一 「…あきつ丸……椅子をくれ……」
あきつ丸 「…手錠をしては寝られないでありますな……
暫しお待ちを、直ぐに持って来ます故。」
政一 「おう…頼むわ……」
ー12:27ー
政一 「……」←仮眠中
ゆー 「…改造したいなぁ……」
長門 「…改造すると其の肌が小麦色に焼けると聞くぞ。」
ゆー 「…其れは嫌だなぁ……」
ビスマルク 「国籍も日本になるって聞いたわよ?」
ゆー 「…まだ独軍の方が良いかなぁ……」
スキャンプ 「えっ…国籍が変わる?」
ビスマルク 「稀ではあるけど無い訳では無いわ。」
長門 「響は露軍に、ゆーは日本に。」
スキャンプ 「…知らなかった……」
潮 「…お兄ちゃん、居る?」
長門 「仮眠中だ、起こさないでくれ。」
潮 「…知らない人が二人居る……」
コマさん 「えっと、コマンダン・テストです…」
スキャンプ 「潜水艦のスキャンプだ。」
潮 「えっと、特型駆逐艦の潮です…」
スキャンプ 「あ?特型駆逐艦?」
長門 「あぁ、潮は確か特II型だったな。」
スキャンプ 「…鬼神綾波……」
長門 「鬼神と呼ばれた綾波も特II型駆逐艦だな。」
スキャンプ 「怖ぇ…」
コマさん 「…そんなに強かったのですか?」
長門 「あぁ…」
コマさん 「…其れで、潮ちゃんは何で此処に来たの?」
潮 「…お兄ちゃんに手紙。」
長門 「ならば私が代わりに見よう…」シャッ
ーコチラレキュウ ハンギャクシャアリ タスケコウー
長門 「…タイミングが最悪だな……」
潮 「お兄ちゃんは動けないのに…」
スキャンプ 「おいおい、奴等は敵だろ?」
長門 「…此処は深海棲艦側の拠点だぞ。」
スキャンプ 「何だって!?」
潮 「…如何すれば良いんだろう……」
長門 「先ずはこの手紙を暗闇に持って行くんだ。」
潮 「うん!!」タッ
長門 「…事態が好転すれば良いんだが……」
コマさん 「…大変ですね……」
スキャンプ 「此処に着任して大丈夫か?」
長門 「逃がしはせんぞ。」
スキャンプ 「終わった…」
ー第三十五章 援護部隊ー
ー二月十三日 04:48ー
暗闇 「…分かったわ。」
政一 「急げ、時間が経ち過ぎている。」
暗闇 「そうよね…急ぐわ。」
ー戦闘海域 08:29ー
暗闇 「大丈夫!?」
レ級 「…ヨウヤクキタノカ、マチクタビレタゾ……」
加賀 「遅れた分は働きます。」バシュッ!!
ル級 「テキノオヤダマハチュウカンセイキダ…」
早霜 「了解です。」
龍飛 「…居たぞ、どうも逃げる途中の様だ。」
龍驤 「逃がすかい!!」
金剛 「全門斉射!!放て!!」ドドドン!!
ーー
中間棲姫 「…くっ……」拘束
暗闇 「…逃げようとするなんて、臆病ね。」
あきつ丸 「どうするでありますか?」
夕立 「政一の所に持って行くっぽい?」
早霜 「…あまり良い案ではないですね。」
初月 「あの人は長門さんの面倒を見ているんだろう?」
磯風 「連れて行くべきでは無いと思うが…」
中間棲姫 「…殺しなさいよ……」
暗闇 [コロスワケナイデショ、バカ。]
夕立 [コロシタラオワッチャウッポイ…]
加賀 [シナナイテイドニコロシツヅケテアゲルワ…]
中間棲姫 「……」ゾワッ
磯風 「…よし、此処で大破させて政一に押し付けよう。」
初月 「そうだな。」ジャキッ
中間棲姫 (あぁ、私敵にする相手間違えたんだわ…)
ドドン!!
ー医務室 14:46ー
政一 「……」
中間棲姫 「見ないで…御願いだから……」
政一 「おい、何故此処に中間棲姫が居るんだ?」
磯風 「療養だ、諦めろ。」パタン
政一 「……」
長門 「…政一、結局あの反逆者は……」
政一 「其処に居るだろ…服の破れた大破艦が……」
長門 「…まさか、お前が反逆者なのか?」
中間棲姫 「…そうだよ……無様に負けたけどね…」
長門 「…連れ帰って来たのか……」
政一 「何で面倒事を増やすかなぁ…」
ー19:07ー
医務妖精 「新入りだよ。」
川内 「…うぅ……」
政一 「川内…」
川内 「政一…骨折っちゃった。」
政一 「…川内、お前もか…」
長門 「怪我人が増えていくな。」
政一 「勘弁してくれよ…」
暗闇 「急患よ!!」
早霜 「…大火傷をしてしまいました…」
政一 「…全員の面倒を見ろと?手錠をした儘で?」
暗闇 「…御免なさい、手錠は外すわ……」
政一 「当たり前だろ、これじゃ真面に寝られん。」
長門 「政一まで倒れては終わりだからな…」
ー第三十六章 新入り二名ー
ー二月十四日(St. Valentine's Day) 07:44ー
長門 「…暇だな……」
政一 「俺は忙しいけどな!!」ちゃぱちゃぱっ
早霜 「…御免なさい、不注意で油を零してしまって……」
政一 「気を付けろと何度も何度も言ったのによ…」
コンコンコン
政一 「んぁ?」
阿賀野 「こんにちわー、軽巡阿賀野だ…」
政一 「あ?軽巡?」ギロッ
阿賀野 「ひゃあぁぁあぁあぁあ!?」ダッ
政一 「…逃げる必要有ったか?」
長門 「いや、其の……我々が慣れていたのも原因だが…
高身長で銀髪紅眼で昔の癖で右眼を閉じた男が、足と腕を
組んで椅子に座り乍ら扉の方を睨んでいれば…殺されると
勘違いするのも無理は無いと思うのだが。」
政一 「…疲れてるんだ、休ませろ……」
中間棲姫 「…苦労人なのね。」
ー執務室 08:29ー
阿賀野 「たたた助けてぇ!!」バァン!!
阿武隈 「えっ…阿賀野さん、如何したの?」
北上 「確か政一の所に行く様に言ったよね?」
加賀 「えぇ、何故怖がっているのか分かりませんが…」
阿賀野 「きゅ、吸血鬼が睨んで来たぁ…殺されるぅ……」
加賀 「あぁ、其の吸血鬼に思える人が政一さんですよ。」
阿賀野 「嘘でしょ!?」
阿武隈 「新型軽巡とか言ってるけど肝はまだまだだね。」
北上 「実戦では使い物にならないと思うよ?」
阿賀野 「…御免なさい……」
加賀 「仕方が有りませんね…この後来る方と私と共に、
もう一度政一の所に行きますよ。」
阿賀野 「はい…あの、この後来る人って?」
北上 「オーストラリアから来たパースさんだって。」
加賀 「九時に執務室に来られるそうです。」
ー09:01ー
パース 「…英国生まれ豪州育ちのパース、以上。」
加賀 「…そう。先に言っておくわ、政一は怖いわよ。」
パース 「はぁ?」
阿賀野 「見た目も声も怖いよ…口調もキツいし……」
加賀 「…私は航空母艦の加賀よ、貴女を政一の所に案内
するわ……長話をしても意味は無いし、行きましょう。」
ー医務室 09:40ー
政一 「…加賀か。」←中間棲姫手当中
中間棲姫 「見ていないのに分かるのか…痛っ!?」
政一 「済まん…加賀は体重を右脚に掛けるからな。」
加賀 「…相変わらず、貴方は些細な事に敏感ね。」
吹雪 「其の癖して女心となれば朴念仁…」←暇で来た
政一 「吹雪、茶化すなら帰れ。俺は暇じゃねぇんだ。」
吹雪 「だから手伝ってるじゃないですか!!」
政一 「手伝うなら黙れ。」
吹雪 「むぅ…」
パース 「oh……」ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…
阿賀野 「怖い…」ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ…
政一 「誰だ再利用の砲弾使った奴!!砲弾は如何なる理由が
有ろうと再利用禁止だと言った筈だろ!?」
吹雪 「…駆逐艦の砲ですね……」
政一 「こんな物…フン!!」グシャッ
パース 「えっ!?」
阿賀野 「ほ、砲弾を…手で粉々に……」
政一 「連帯責任で全員に説教だ…覚悟しろ……」
パース 「…加賀さん、あの方は一体……」
加賀 「あの人が私達を率いる提督であり、恩人であり…
そして誰もが好意を抱く相手である諫田政一元帥です。
尤も、今となっては退役軍人ですが。」
政一 「…よし、暫く寝てれば治るから寝てろ。」
中間棲姫 「…済まない……」
政一 「[戦意無き者敵に非ず]…私はそう考えている。」
中間棲姫 「…そうか……貴方は優しいんだな。」
政一 「尤も、[敵に情与えず殺すのみ]とも考えるが。」
中間棲姫 「…極端だな。」
政一 「冷酷な面も有る、と考えれば良いのでは?」
中間棲姫 「…そうだな。」
パース 「…あ、あの……」
政一 「話は聞いた、豪州育ちのパースだろ?」
パース 「は、はい…」
政一 「…今お前と話す気は無い。」
パース 「…そんなぁ……」ガーン
加賀 「政一さん、少しは彼女と御話してあげて下さい。」
政一 「…仕方無い、話をする間は加賀が看病してやれ。」
加賀 「…分かりました。」
政一 「…阿賀野も来い、四者面談だ。」
パース 「…怖いです……」
阿賀野 「あ、阿賀野も…」
ー応接室 10:22ー
早紀 「こんにちはっすー。」にぱー
政一 「相変わらずだなお前は…」
パース 「……」カチコチ
阿賀野 「…あの……」
政一 「さて…名前年齢艦種練度、パースから。」
パース 「パースです、19です…軽巡で、Lv.49です。」
阿賀野 「阿賀野だよ。20歳で、軽巡!!練度は28だよ。」
政一 「…現状良くて三軍の下っ端だな。」
パース 「はぁ!?」
早紀 「…じゃあ、二人は此処で何がしたいっすか?」
パース 「私は…オーストラリアを、護りたくて。」
阿賀野 「阿賀野は特に無いかなぁ…」
早紀 「…如何するっすか?」
政一 「…適当に雑用でもさせてろ、以上解散。」
パース 「はぁ!?」
政一 「新入りは雑用で使えるか否か判断するんだよ。」
パース 「……」
政一 「信用させればお前達の勝ちだ、頑張れ。」
ー第三十七章 新入りの質問ー
ー二月十五日 談話室 09:42ー
暁 「…其れで、話ってなぁに?」
パース 「…政一さんの事について聞きたくて。」
暁 「……そう…分かったわ、場所を変えましょう。」
ー六駆自室 10:14ー
響 「…あぁ、御帰り。」←改二
暁 「あら?響、今日は御出掛けするんでしょ?」
響 「この吹雪で外に出られるなら苦労はしないよ。」
暁 「…本当だわ、外は凄い吹雪ね。」
響 「今日の予定は白紙になったから、暇を持て余してね…
こうして部屋で本を読んでいるのさ。」
暁 「…あぁ、紹介が遅れたわね。この子が響よ。」
パース 「あ、初めまして…」
響 「改二になって見た目は変わっちゃってるけどね。」
暁 「響、パースよ。」
響 「こんにちは、ゆっくりしてくと良いよ。」
暁 「…さて、政一について聞きたいって?」
響 「政一さんか…迚優しい恩人だよ。資源回収に使われて
裏切られ殺された私を助けてくれたんだ。」
パース 「えっ…」
暁 「第六駆逐隊は皆一度は死んでるわ。」
響 「政一さんが居なかったら私は死んだ儘でいたよ。」
パース 「…そんなの、可能なの?」
暁 「政一なら出来るわ。あの人は元死神だもの。」
パース 「元、死神?」
暁 「そうよ…追放されて、必死に逃げて……そして今は
此処で皆を纏めているの。此処は死人の集まる場所よ。」
パース 「…じゃあ、私が此処に連れて来られたのは……」
暁 「[殺処分]…或いは[廃棄処分]かしらね。」
響 「少なくとも、元いた場所からは消されてるよ。」
パース 「…そんな……じゃあ、あの人に嫌われたら?」
暁 「文字通りこの世界から[消される]と思うわ。」
響 「余計な事はしない方が良いよ。」
パース 「…分かったわ……」
暁 「…何か食べ物は有ったかしら……」
響 「…冷蔵庫には何も無いよ。」ガパッ
暁 「…駄目ね、食糧が無いわ。」
響 「…食堂に行こうか?」
暁 「今開いてると良いんだけどね…」
ー食堂 10:58ー
暁 「開いてて良かったわ…」
響 「済みません、カレーと炒飯と御蕎麦下さい。」
磯風 「了解、少し待っててくれ。」
パース 「……」
暁 「まぁ頑張りなさい、あの人は直ぐに捨てる様な人じゃ
ないからまだ名誉挽回の機会は有る筈よ。」
パース 「…はい。」
ー第三十八章 新入りの聞き込みー
ー二月十六日 パース・阿賀野自室 05:22ー
阿賀野 「へぇー、そうなんだぁ…」
パース 「…情報不足ではありますが。」
阿賀野 「じゃあ、聞きに行こっか。」
ー工廠 06:22ー
明石 「え?元提督の事?」
阿賀野 「そう!!」
パース 「御話を聞きたくて…」
明石 「…あの人は二面性が凄かったなぁ……」
パース 「二面性?」
明石 「そう…最初に大きな失敗をしてから、凄く冷たく
接されてね…大変だったのよ……」
阿賀野 「あの人が冷たいの?」
明石 「冷酷非情だったわ…普段は優しいんだけどね……」
ー食堂 06:44ー
麗奈 「…お父さんは優しいよ。御飯に服、御風呂と靴も
くれたんだ。今も勉強を教えてくれるから大好きだよ。」
パース 「…普通のお父さんだね。」
阿賀野 「だね〜。」
麗奈 「…あ、御飯食べなきゃ……」
ー談話室 07:19ー
叢雲 「え?政一の事?…面倒見は良いわね。」←改二
綾波 「迚信頼出来る人ですね。」←改二
阿賀野 「そうなの?」
叢雲 「綾波って、一度死んでるのよね…」
パース 「そうなんですか!?」
綾波 「はい…でも彼岸に着いたら直ぐに追い返されて、
政一さんの所で腕も治してもらいました。」
叢雲 「本当、政一って何でも出来て羨ましいわ。」
綾波 「でも、疲れを無視する癖が有りますよね?」
叢雲 「そうね…提督向きでは無いわ。指揮能力が高いから
提督に抜擢されてただけでね…まぁ、後任が来たし彼奴も
ゆっくりしてるから構わないけれど。」
阿賀野 「…叢雲ちゃん、髪短いね?」
叢雲 「これ?政一に切って貰ったのよ。」
パース 「へ?」
叢雲 「髪質が変わって櫛が通らないのよ。」
綾波 「私も手櫛してみましたが、指が止まって…」
叢雲 「で、政一に相談したらサクッと切ってくれてね。
眼鏡も掛けてるから印象は相当違うんじゃない?」
阿賀野 「うん、最初は分からなかったよ。」
叢雲 「彼奴はこういう事に[は]気が回るからね…」
綾波 「私達は大好きですよ。」
ー医務室 09:44ー
長門 「…政一の事か?」
早霜 「朴念仁です。」
中間棲姫 「容赦が無いな。」
川内 「押しに弱い!!」
長門 「女誑しの一言に尽きるな。」
パース 「……」
阿賀野 「…ボロクソに言うね……」
政一 「そんなモンだろ…」
パース 「うわっ!?」
政一 「長門、探してたのはこの本か?」つ教員用教科書
長門 「あぁ…多少は教えられる様にならねばな……」
政一 「教師が増えるのは有難い事だが、無理はするな。」
長門 「分かっている…この足ではな……」
パース 「…其の本は?」
長門 「学校の教員が使う教科書だ…」
政一 「此処には子供も居るからな…最低限は勉強させて
社会で通用する大人に育てなければいけないんだ。」
長門 「其の為の教科書という事だな…」
パース 「……」
阿賀野 「成程ね…」
ー食堂 12:11ー
パース 「色んな人に聞きましたけど…」
阿賀野 「殆どが[優しい][強い][格好良い]だったね。」
戦艦棲姫 「でしょうね…」
パース 「はぁ…」
阿賀野 「……戦艦棲姫!?何で!?」
パース 「うわっ!?」
戦艦棲姫 「…あの人は中枢棲姫を二度落としてるから、
まぁ無理も無い話なのよね……」
パース 「中枢棲姫を二度も!?」
戦艦棲姫 「えぇ…向こうとこっちで一度ずつ。」
パース 「えぇ…」
戦艦棲姫 「中間棲姫が言うには[あんな堅物な中枢棲姫が
交渉しようとする程の男なんだから皆が皆惚れ込んでても
全然可笑しくないわ]だそうで…」
阿賀野 「あの人ってそんなに凄いんだね!!」
戦艦棲姫 「だから貴女達は三軍入りを目指しなさい。」
パース 「…はい!!」
阿賀野 「そーするー!!」
ー第三十九章 似た者同士ー
ー二月十七日 医務室 09:22ー
政一 「……」
集積地棲姫 「…何だよ……」
望月 「…何だよぉ……」
政一 「…似た者同士で同じ怪我か?」
集積地棲姫 「…似てないって……」右腕骨折
望月「似てないってばぁ…」右腕骨折
政一 「眼鏡掛けて面倒臭がり、言い回しも粗同じ。」
集積地棲姫 「……」
望月 「…マジ?」
政一 「こうも似てて[似た者同士じゃない]は無理が有る。」
集積地棲姫 「…マジかぁ……」
望月 「うへぇ…認めたくねー…」
政一 「…まぁ、似た者同士仲良くな。」
長門 「…おい、誰か来てるぞ?」
政一 「ん?」
駆逐棲姫 「あの、この子拾ったんだけど…」
春雨 「春雨です、どうか匿って下さい!!」
政一 「…似た者同士でエンカウントか……」
駆逐棲姫 「政一、何とかならない?」
政一 「…夕立と時雨、呼んでおく。」
駆逐棲姫 「有難う…じゃ。」
春雨 「お、お邪魔します…」
白鷺 「おい表、燃料が尽きてんぞ!?」
政一 「…燃油?分かった……」ギシッ
春雨 「あの…」
政一 「長門、頼むわ…」バタン
ー燃油保管庫 09:55ー
政一 「…暫くは拠点防衛に絞るか。」
白鷺 「分かった…伝えておく。」
政一 「…俺達も似た者同士だな。」
白鷺 「そりゃ俺はお前の裏だからな。」
政一 「…帰るか。」
白鷺 「おう。」
ー医務室 11:29ー
政一 「……」仮眠中
長門 「君は何故此処へ?」
春雨 「…深海棲艦に鎮守府を襲われて……怖くて…」
集積地棲姫 「えっ…て事は離島の奴等かな?」
中間棲姫 「多分ね…今政一の元に居ない敵深海棲艦の中で
鎮守府を襲える程の大きな群れは離島棲鬼の群れ位ね。」
春雨 「……え?」
長門 「今其処で寝てる男は諫田政一だ…嘗て提督として
前線指揮を執り、敵である深海棲艦を味方に引き入れ、
今は退役軍人としてこの島で私達を支えてくれている。
政一が居なければ我々は敵と仲良くなんてなれなかった。
本当に有能で、信頼出来る旦那だよ。」
春雨 「…この人が、そんなに凄い人だなんて……」
長門 「尤も、今では六人が戦線離脱状態だが…」
春雨 「え?」
望月 「右腕折った…」
集積地棲姫 「同じく…」
川内 「私は左腕…」
長門 「私は右脚骨折だ。」
早霜 「油を零して大火傷を…」
中間棲姫 「ボッコボコにされて療養中よ…」
春雨 「……」
長門 「明日、政一を派遣しよう…深海棲艦を一瞬で彼岸に
送るだろうから、其れまで耐えれば生き残れる筈だ。」
春雨 「…はい!!」
ー第四十章 佐世保の惨状ー
ー二月十八日 佐世保軍港 08:22ー
政一 「…酷いな、これは……」←フル装備
春雨 「そんな…皆……」
政一 「兎に角、残党狩りをしつつ進もう。」
ーー
ズガァン!!!!
政一 「…残党が多過ぎるぞ……」
レ級 「…キキッ!!」
政一 「斬捨御免。」ズバッ!!
レ級 「ギャアアア!!」ドサッ
春雨 「ひぃっ!?」
政一 「…生存者が居る事を願うばかりだな……」
ーー
[執務室]
政一 「…行くぞ。」
春雨 「はい…」
政一 「ノックしてもしもーし!!!!」バコォン!!
離島棲鬼 「ナッ…ナゼココニオマエタチガキタ…マサカ、
ワタシノブカタチヲスベテタオシタトイウノカ!?」
政一 「…当たり前だろ、殺さなきゃ進めねぇだろうが。」
離島棲鬼 「…オマエタチヲココデコロシテヤル!!」
政一 [天の怒りの雷、今此処に落ちん!!!!]ピシャッ!!!!
ズガァァァン!!!!
春雨 「…へ?」
政一 「…隠していたが、こんな事も一応出来る。」
春雨 「…凄い……」
政一 「生存者を探すぞ。」
ーー
政一 「ノックしてもしもーし!!!!」バコォン
長良 「あっ…扉が……」
鬼怒 「そんな…見つかった……」
政一 「…長良と鬼怒か……二人だけか?」
長良 「…そ、そうだけど……」
政一 「よし、なら来なさい。」
鬼怒 「嫌だよ、誰かも分からない人に着いて行くなんて!!」
政一 「知ってる奴が居れば良いんだろ?」
鬼怒 「え?」
春雨 「鬼怒さん!!長良さん!!」
長良 「春雨?春雨なの!?」
政一 「本物だ…昨日私の居る拠点に逃げ込んで来てな。」
鬼怒 「…でも、外に深海棲艦が……」
政一 「[コレ]の事か?」つレ級の頭
長良 「ひぃっ!?」
鬼怒 「うわぁっ!?」
政一 「もう全部死んでる、早く行くぞ。」
長良 「う、うん…」
ー拠点 医務室 19:44ー
政一 「……」仮眠中
長門 「これで長良型が揃ったな。」
長良 「……」
鬼怒 「…何で深海棲艦が治療を受けてるの?」
集積地棲姫 「だって、ヘマして追い出されたんだもん…
引き取られなかったら死んでたよ……」
中間棲姫 「ボコボコにされて捕まったの…もう逆らう気も
起きないわ……身体中が痛くて痛くて…」
鬼怒 「えぇ…」
ーー
阿武隈 「長良姉!!鬼怒姉!!」
長良 「阿武隈!!」
鬼怒 「妹に会えるなんて…」
長門 「阿武隈は長良型の中では古参の方だな。」
阿武隈 「そうだね…暗闇さんには負けるけど。」
鬼怒 「暗闇?」
阿武隈 「政一さんと一番長い付き合いの人!!」
長門 「前の世界…二度目の提督着任の頃からの付き合い
だと聞いている。最初に結婚した者でもあるな。」
長良 「へぇ…」
長門 「長良型の今後の活躍、期待しているぞ。」
長良 「…はい!!」
ー第四十一章 甘えたがりな駆逐艦ー
ー二月十九日 医務室 06:00ー
政一 「……」仮眠中
時雨 「……」zzz
夕立 「……」zzz
長門 「…政一の仮眠寝台に駆逐艦が二人……」
川内 「何も起きない筈も無く!!」ガバッ
時雨 「……」何もされてない
夕立 「……」何もされてない
川内 「…何も起きてなかった……」
長門 「政一は寝てる女を無理矢理襲う様な屑では無い。」
川内 「だよねぇ…でも何か起きてて欲しかったな……」
長門 「其の二人が起きれば勝手に起こる。」
ー07:31ー
夕立 「…ぽぃ……ふわぁ……」
時雨 「お早う…」
長門 「ん?起きたか。」
夕立 「お早うっぽい…」
政一 「……」仮眠中
時雨 「…外は雪、だね…」
長門 「そうだな。」
綾波 「失礼しますねー。」
長門 「ん?」
綾波 「急患でーす。」ガラガラ
龍飛 「……政一に何と言われるか…」左脚骨折
瑞鳳 「…もうやだぁ……」左腕骨折
長門 「…何故此処で過ごす者が多くなるのか……」
吹雪 「…急患です。」
長門 「何!?」
稲田 「……ゲホッゲホッ…」
叢雲 「風邪を引くなんて…不運だわ……」
長門 「…おい、コレ大丈夫か?」
政一 「…んぁ?」
夕立 「あ、起きたっぽい!!」
政一 「…四人も追加かよ……」
時雨 「大丈夫、看護婦が此処に二人居るでしょ?」
政一 「…はいはい……」
ーー
長門 「世話になったな…」完治
政一 「…お前は俺の妻だろうが。」
長門 「ふふっ…そうだな。」
川内 「…狡い。」完治
中間棲姫 「そう言ってやるな…」完治
早霜 「…完治したからには看護婦として動きます。」完治
政一 「…変わらず、か。」
ーー
望月 「……」
政一 「だらけてんな?」つ新聞
望月 「だってさ…ゲームも出来ないじゃん。」
政一 「腕折れてんだから寝てろ。」
望月 「…で、あのカーテン閉めてる所何なの?」
政一 「隔離区画。私は風邪を引くと中々治らんのでな。」
望月 「うへぇ…」
政一 「……」
望月 「…あのさぁ?」
政一 「ん?」
望月 「…もし政一の事、私が好きだって言ったらさぁ…
私の言う事、信じてくれる?」
政一 「…そうだな……まぁ、信じるだろうな。」
望月 「やっぱりかぁ…………うぇ!?」
政一 「私は愛を受け入れる方針で居る。」
望月 「…じゃあ、さ。」
政一 「おう。」
望月 「…こんな私だけど、貰ってくれる?」
政一 「おう。」
望月 「…有難う。」
政一 「構わん。」
望月 「…甘えて、良い?」
政一 「今現に甘えてるだろ…まぁ構わんが。」
望月 「…有難う、愛してるよぉ。」
政一 「私もだ。」
ー第四十二章 流れ流され関西艦ー
ー数日前 呉第四鎮守府ー
R少将 「…で、結果は?」
R大淀 「…黒でした。ーーさん失踪とも関連が有ります。」
R少将 「……そうか…仕方無い、ーーを雷撃処分する。」
ー何じゃ!!離せ!!ウチは何もしとらん!!ー
ー……終わりや…何をどないすりゃこうなるんじゃ…ー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
[ウチはどないすりゃ良かったんじゃ…]
ー二月廿日 拠点医務室 09:44ー
?? 「…うっ……」
長門 「目が覚めたか、浦風。」←看護婦
浦風 「…ウチはどないなったんじゃ……」
長門 「今、政一が君の経歴を調べている。」
浦風 「…ウチの、経歴……じゃと?」
長門 「…雷撃処分の割には怪我が少ないと言っていた。」
浦風 「…そうじゃ…ウチは濡れ衣着せられて……」
政一 「…戻った。」
浦風 「…あんたは誰じゃ?」
政一 「諫田政一、唯の退役軍人だ。」ドサッ
浦風 「其の紙束は何じゃ?」
政一 「君の経歴と元居た鎮守府の情報、処分履歴等。」
長門 「これだけ有れば何か掴める筈…」
政一 「…有った。浜風失踪事件…未解決、三ヶ月前だ。」
浦風 「そ、其れは…」
政一 「…教えてくれ、何が有ったんだ?」
浦風 「…あの日、ウチと浜風とで街に出とったんじゃ。
けど、浜風が知らん男に誘拐されたんじゃ…ウチは相手に
反撃したんじゃが…あまりにも相手が強過ぎて返り討ち、
浜風は救えず其の儘じゃ。」
政一 「処分理由は肉体関係を伴う援助交際…」
浦風 「浜風を助けたいなら金を出せと言われたんじゃ…
けどウチは金を持っとらんけぇ、身体で払えって…」
政一 「…辛かったろうに。」
浦風 「…ウチは、浜風を助けられんで、其の儘…」
長門 「…政一、浜風を助けられないか?」
政一 「…丁度そん事について思案しとったトコや。」
浦風 「な、何じゃ!?あんた、いきなり口調変えよって、
どないしたんじゃ!?」
政一 「…したらどない潰すか考えんといかんね……」
浦風 「ウチの質問に答えぇな!!」
政一 「…こんでも大阪の出や、ワレと同じ大阪や。」
浦風 「えっホンマに!?」
政一 「せや…普段は出さんけど腹立つと出よんのよ。」
浦風 「……」
政一 「同郷の好や、浜風救うんやろ?手ぇ貸したる。」
浦風 「…えぇんか?見ず知らずに手ぇ貸して…」
政一 「グダグダ言わんでえぇから、返事。」
浦風 「…ウチに手ぇ貸してくれ…浜風助けてくれ!!」
政一 「よし、なら呉に行くぞ。準備進めろ。」
浦風 「い、今からけぇ?せめて明日なぁ…」
政一 「思い立ったが吉日、急がねぇと置いてくぞ。」
浦風 「わ、分かったけぇ置いてかんでぇな!!」バタバタ
パタン
長門 「…元気になって何より。」
ー第四十三章 救出作戦始動ー
ー呉軍港 16:48ー
浦風 「…なぁ、ウチ等が鎮守府出たん昼前じゃろ?」
政一 「あぁ、拠点を出たのは十一時だな。」
浦風 「何故五時前に呉に着いちょるんじゃ?」
政一 「あの場所は深海棲艦の拠点だから。」
浦風 「ふんふん成程のぉ…って、何じゃって!?」
政一 「俺達は第三勢力だ。尤も、深海棲艦が弱体化して
日本では俺達対海軍の状態だがな。」
浦風 「…まだ信じられん……ホンマなん?」
政一 「嘘を吐くのは嫌いだ。不必要な嘘は吐かない。」
浦風 「…ウチは……ウチは敵になってもうたんか…」
政一 「…深海棲艦と友好的になれたのでな。」
浦風 「普通はならんよ?」
政一 「だな…で、此処から捜索を始める訳だが…」
浦風 「…手掛かり有るん?」
政一 「まぁ待て……………居たぞ、三粁先だ。」
浦風 「何で分かるんじゃ!?」
政一 「説明は後だ、行くぞ。」
ーー
男 「…浦風が居なくなったらしい。バレたんだろうな。」
浜風 「なっ…」
男 「これじゃ、君を襲うしか無いね…」
浜風 「そんな…助けて…」
男 「仕方無いだろう、浦風は来ないんだから。」
浦風 「誰が来んって!?」バキャッ!!
男 「なっ!?」
政一 「…イントネーションから察するに東京者か。」
男 「…何故此処が分かったんだ?」
政一 「浜風の身体からは特殊な匂いがする。其れを掴んで
風向きから方角を特定、艦娘のみに反射する電波で距離を
特定、後は特定した位置に有る建物を特定して襲撃。」
男 「………は?」
政一 「ちょっとした計算だよ。」
男 「其れが[ちょっとした]で済む訳ねぇだろ!!」
浦風 「成程のぉ、そないして特定しとんじゃね…」
浜風 「…私から、特殊な匂い?」
政一 「個体によって濃さは変わるが、必ず[浦賀の重油]の
匂いが付いている。其れを追えば必ず会える。」
浜風 「…浦賀の、重油?」
政一 「浦賀生まれなら必ず付いている匂いだ。」
浦風 「…ホンマや、重油の匂いしよる!!」
浜風 「本当に!?」
政一 「重油の匂いを追う時に鎮守府の外の匂いを追った…
特定の絡繰は其れだけだ。」
男 「……」
政一 「ん?」
男 「……」失神
政一 「…情報処理が追い付かずに処理落ちしたか。」
浦風 「浜風の拘束、解けとるよ。」
浜風 「あ、あの…有難う御座います。」
政一 「よし、行くぞ。」
浜風 「え?」
浦風 「あの人に着いてくとえぇ事有るんよ。」
浜風 「…はぁ……」
ー医務室 21:49ー
政一 「…仕事が減らねぇな……」
長門 「…そう、だな……」
浦風 「…疲れたわぁ……」
浜風 「えっと…」
浦風 「また明日説明したる、今日は寝ぇ。」
浜風 「…はぁ……」
ー第四十四章 政一と仕入れー
ー二月二十一日 06:44ー
政一 「……」zzz
時計 [06:45]
ピピピピッピピピピッ
政一 「……」ガシッ
ピッ
政一 「……」zzz
浦風 「……寝乍ら目覚まし止めよった…」
浜風 「……」zzz
浦風 「こっちはまだぐっすり寝とる…」
早霜 「御早う御座います…」チャッ
浦風 「ん、御早う…早霜やな?」
早霜 「はい、今日の看護担当です。」
浦風 「…看護?」
望月 「…ん、おはよぉー……」
早霜 「御早う御座います望月さん。腕は大丈夫ですか?」
望月 「んー、まぁ、マシかなぁ…」
浦風 「…あぁ、そうか…この部屋医務室やったな。」
磯風 「朝餉、持って来たぞ…起きろ。」
瑞鳳 「あぁ、有難う…」
浦風 「……磯風、料理出来たん?」
磯風 「あぁ、政一の御蔭様でな。」
浦風 「…ほぉ、政一の御蔭様かぁ…えぇなぁ……」
親潮 「失礼しまぁす…」
早潮 「御邪魔しますね…」
政一 「……」zzz
磯風 「おい、起きろ!!」ゆさゆさ
政一 「……んだよ…俺の仕事八時からだぞ……」
磯風 「飯が冷めるだろ!!」
政一 「…分かったよ……」
ー08:00ー
政一 「……仕入れ行ってくる。」←作業着
浦風 「ちょ、待ちぃな!!」←下着姿
浜風 「置いて行かないで下さい!!」←下着姿
親潮 「準備がまだ出来てません!!」←表裏反対
早潮 「御願いです、待って下さい!!」←素っ裸
弥生 「…早くして下さい。」←私服
初春 「…こうも鈍臭いと腹が立つのう……」←私服
ー08:16ー
浦風 「…其の……御免なさい……」←私服
浜風 「…謝ります……」←私服
親潮 「……無理を言って御免なさい…」←私服
早潮 「…申し訳ないです……」←私服
政一 「…行くぞ。」
ー大阪 10:44ー
政一 「…後は煙草と酒、酒のアテと…調味料類。」
浦風 「アテならドンキがえぇで。」
ー16:44ー
政一 「帰るぞ。」つ段ボール×4(片手持ち)
浦風 「段ボール持ったな?」つ段ボール×2
初春 「では帰ろうぞ。」つ段ボール×2
弥生 「へばってる暇無いですよ…」つ段ボール×3
浜風 「ま、待って下さい…これ、重くて…」つ段ボール×2
親潮 「き、キツい…待って…」つ段ボール×2
早潮 「た、助けて…重い…」つ段ボール×2
政一 「軽いの回してんだから我慢しろ!!」
ー医務室 21:44ー
政一 「…この程度でへばるな。」ドサッ
浦風 「…帰りつっら……」ボスッ
弥生 「…貴女達は根性と体力が足りませんね。」ドサッ
初春 「ふむ、久しぶりだと体力消費が激しいの…」ドサッ
浜風 「…もう、無理……」ベシャッ
親潮 「…死にそう……」べギョッ
早潮 「…もう駄目……」ズシャッ
政一 「…酒とエタノールは俺持ちだってのに……」
長門 「補充助かる…実はつい先程使い切ってしまってな。
かなり困っていた所だったんだ。」←看護婦
政一 「おう…仕分けは任せる、良いか?」
長門 「あぁ、任せてくれ…お休み。」
政一 「おう、お休み…」ボスッ
長門 「…さて、仕分けに入るか……」
ー第四十五章 政一と添い寝ー
ー二月二十二日 05:00ー
政一 「……」zzz
龍田 「……」ニコニコ
天龍 「……」ニヤニヤ
阿武隈 「…何してんの?」
叢雲 「……」zzz
稲田 「……」zzz
龍田 「二人とも治ったからって政一に抱き着いてるの。」
天龍 「可愛らしい駆逐艦共だぜ、全く。」
阿武隈 「……風邪を治してぐっすりね…」
天龍 「…私も、こう出来たらなぁ……」
龍田 「一緒に寝られるのはケッコン駆逐艦の特権よね…」
阿武隈 「…あぁ……確かに。」
北上 「……ぷはー…」モゾモゾ
龍田 「き、北上さん!?」
天龍 「何で居るんだよ!?」
阿武隈 「北上さんが何で政一さんのベッドに!?」
北上 「んー?添い寝ー。良いでしょ?妻の特権だよー。」
阿武隈 「…羨ましい……」
龍田 「…もう一人居ない?」
モゾモゾ
天龍 「…まだ居るのか?」
文月 「ふはぁ…気持ち良いなぁ…」蕩け顔
龍田 「ふ、文月ちゃん!?」
阿武隈 「女の子がしちゃいけない顔してるよ!?」
天龍 「…でも指輪はしてるんだよなぁ……」
北上 「政一の[マサイチニウム]とハイパー北上様で挟むと
こうなっちゃうみたい…[マサイチニウム中毒]かな?」
天龍 「[マサイチニウム]!?」
北上 「そそ、政一の愛情が具現化した[マサイチニウム]。
政一に触れる事で摂取出来てー、気分がほわほわして、
気持ち良いんだけど摂り過ぎるとこうなるみたいだね。」
天龍 「…大丈夫なのか?」
北上 「文月は駄目っぽいね…イッちゃってるみたい。」
阿武隈 「イッちゃってるの!?」
北上 「うん、お股の所が凄いよ…ほら。」
天龍 「うお…凄いなこりゃ。」
龍田 「洪水でも有ったのかしら?」
阿武隈 「愛され過ぎでこうなったの!?」
北上 「私も多少影響受けちゃって、御覧の通り。」
天龍 「お前も濡れてんじゃねぇか!!」
龍田 「効果は凄いのね…」
阿武隈 「あぁ…政一さんの服に文月ちゃんのが……」
北上 「いやぁ、本当に凄いよねぇ…」
政一 「…何か冷たいな……うわっ何だこれ!?」
北上 「あ、起きた。」
政一 「文月、お前顔が緩んでるけど何が有ったんだ?」
文月 「えへへへへ…」ビッショビショ
政一 「本当に何が有ったのこれ!?」
北上 「[マサイチニウム]の過剰摂取だよ…ほら、私も。」
政一 「お前もなのか!?」
北上 「…あぁ、左右の二人も同じ症状だねぇ……」
政一 「…ちょっと風呂行って来る……」
北上 「あ、私もー。」
政一 「…本当に何が有ったんだよ……」チャッ
北上 「何が有ったんだろうねぇ?」パタン
天龍 「…平然としてたな…アレが愛の力か……」
龍田 「…凄いわね……」
阿武隈 「…だね……」
ー第四十六章 政一の潰れ易い休日ー
ー談話室 07:24ー
政一 「……」
宗谷 「あれ?政一、今日は暇なの?」
花音 「珍しいね?」
政一 「…医務室から追い出された。偶には休めって。」
花音 「ふーん…私行くね。」タッ
宗谷 「行ってらっしゃい…ねぇ、政一?」
政一 「ん?」
宗谷 「今日は…暇だよね?」
政一 「だな…」
宗谷 「僕と散歩しない?」
政一 「散歩で済めば良いんだが…護身武器持っとけ。」
宗谷 「うん。」
ー海上 10:44ー
政一 「…青い空に白い雲、隣には愛する我が妻と……」
宗谷 「…こんなのも、良いでしょ?」
政一 「………かもな。」
バシャッ
レ級 「…ギヒヒッ!!」
政一 「…折角の良い気分を打ち壊してくれて有難う。」
宗谷 「甘々惚気を駄目にしてくれて有難う。」
政一&宗谷 「貴様は此処で死ねェ!!!!」ジャキッ
ドカーン!!!!
政一 「…服が汚れたな。」
宗谷 「返り血で紅くなっちゃった…」
政一 「……近くで何か有ったのか?」
宗谷 「……あっ、逸れ艦娘だ!!」
政一 「保護、するかぁ…」
ーー
ローマ 「えっと…戦艦ローマよ。」中破
政一 「諫田政一、退役軍人だ。こっちは宗谷。」
宗谷 「初めまして。」
ローマ 「本隊は何処に居るのかしら…」
政一 「…もう近くには居ないな。」
ローマ 「えっ…落伍したって事ですか?」
宗谷 「そう、みたいだね…」
ローマ 「…そんな…イタリア姉さん……」
政一 「…南西二粁、微かに硝煙と血の匂い。」
ローマ 「えっ!?」
政一 「行くぞ。」
ーー
ローマ 「そんな…」
政一 「…何人が戦ったのか……」
宗谷 「…生きてる人は……居ました!!」
イタリア 「うっ…」大破
政一 「……今から直帰すればまだ治せる。」
ローマ 「本当に!?」
政一 「一つ聞いておこう…君達は寝返る勇気が有るか?」
ローマ 「当然よ…生きる為なら何でもするわ!!」
イタリア 「…生きたい……何でも、するから…」
政一 「…宗谷はローマを。俺は先にイタリアと帰る。」
ローマ 「え?」
宗谷 「…優しくね。」
政一 「任せろ、加減速度を調整する。」バサッ
ローマ 「つ、翼!?」
政一 「イタリア、少し痛むだろうが我慢してくれ。」
バシュウッ!!
ローマ 「なっ…もう、見えない……」
宗谷 「行きますよ!!」
ローマ 「え?あ、えぇ…」
ー第四十七章 政一とイタリアー
ー医務室 14:27ー
ローマ 「イタリア姉さんの容態は!?」←入渠上がり
政一 「心配しなくても死にはしない…」
ローマ 「…そう……」
加賀 「……」
ローマ 「……誰!?」
加賀 「一航戦、加賀です。」
ローマ 「は、はぁ…」
加賀 「政一、浦風が呼んでいましたよ…」
政一 「そうか…代わってくれ。」
加賀 「分かりました。」
ーー
浦風 「おぉ、よう来たの。」
政一 「何か用か?」
浦風 「単刀直入に言う、江風を探して欲しいんじゃ。」
政一 「…江風か……」
浦風 「……無理やったら構わんよ?」
政一 「脱走兵として来ない限り見つからないと思うな。」
浦風 「……矢張り無理か……」
政一 「済まないな、力になれなくて。」
浦風 「…いや、えぇよ。」
政一 「…戻るよ。」
浦風 「うん、御免な…」
ーー
政一 「戻った。」
加賀 「御帰りなさい政一…目が覚めましたよ。」
政一 「そうか…」
イタリア 「……あの…此処は……」
政一 「敵である深海棲艦の拠点です。」
イタリア 「…え?」
ローマ 「…やっぱり。」
政一 「私は聞いた筈だ。[寝返る勇気が有るか]と。」
イタリア 「……」
ローマ 「そうね…」
政一 「君達の返答は肯定する物だった。だからこうして
君達の治療をしている訳だが…何か問題でも?」
イタリア 「…皆は……他の皆は如何なったの!?」
政一 「…私は死者を蘇らせる力が有る訳では無い。」
イタリア 「……そんな…」
政一 「…もし死にたいと言うのなら海へ出て自沈しろ。
俺は単に生存者を助けただけで、死にたがりに時間を割く
余裕は何処にも持ち合わせていない。」
イタリア 「……」
政一 「…俺は死んだ奴等の分まで生きて、孰訪れる終戦を
見届けるのが良いとは思っているがな…」
イタリア 「……」
政一 「…最終判断はお前が下せ。俺は生きたい奴にだけ
手を貸してやる。死にたい奴に手を貸す程お人好しでは
無いからな…時間は有る、ゆっくり決めな。」
イタリア 「……たい。」
政一 「ん?」
イタリア 「…生きて、戦いを終わらせたい!!」
ローマ 「イタリア姉さん…」
政一 「…後で書類は通しておく。」
イタリア 「…有難う……」
政一 「…ようこそ、敵の拠点へ。歓迎するよ。」パタン
イタリア 「…良かったのかしら……」
ローマ 「……これで良いと思うわ。」
ー第四十八章 江風漂着ー
ー二月二十三日 海岸 04:55ー
政一 「…早朝の海岸も良いですね。」
玉藻 「……共感出来ぬ、何も見えぬわ。」
政一 「…夜目で見なければ何も見えませんよ。」
玉藻 「…御主は夜目が利くのか……」
政一 「多少ですがね………ん?」
玉藻 「如何した?」
政一 「…江風ですね……まだ息をしてます。」
玉藻 「漸く夜目に慣れてきた…これは酷い怪我じゃな!?」
政一 「一度入渠させましょう。」
ー05:44 入渠場ー
入渠妖精 「…駄目だね、何故か入渠出来ない。」
玉藻 「…変じゃの?」
政一 「…気絶…大破…入渠不能…適正喪失……まさか!?」
玉藻 「心当たりが有るのか!?」
政一 「祥鳳と同じ症状かも知れん、医務室に運ぶ!!」ダッ
玉藻 「御主、ちと待たんか!!先に説明せよ!!」ダッ
ー06:30 医務室ー
江風 「……ん…」ムクリ
玉藻 「おぉ、起きたか!!」
政一 「あまり無理をするな、治った訳では無い。」
江風 「…此処は……私は、誰だ?」
玉藻 「なっ…御主、まさか……」
政一 「矢張り祥鳳と同じ症状だな…記憶喪失を原因とする
艦娘適正の喪失…恐らくは二度と戦線には立てない。」
玉藻 「なっ…其れで祥鳳は暇を持て余しておったのか…」
江風 「…貴方は?」
政一 「退役軍人、諫田政一だ。此奴は九尾の狐。」
玉藻 「九尾の狐とは何じゃ!?妾は玉藻の前じゃ!!」
江風 「……」
政一 「…君が何処から来たのか……今は分からないな。」
浦風 「…何じゃ、騒がしいのぉ……江風?」
江風 「…貴女は?」
浦風 「なっ…ウチを忘れたんか!?」
江風 「…分からない、貴女が誰なのか…」
浦風 「…おい、政一!!コレはどないなっとんじゃ!?」
政一 「記憶喪失を原因とする艦娘適正の喪失だな……
今の彼女は普通の人間と粗同じ状態だ。記憶が無いから
君の事も元居た鎮守府の事も全てを忘れている。」
浦風 「……じゃけど、其の江風はウチと一緒の艦隊で…
第四艦隊で共に戦った江風じゃ!!」
政一 「何だって!?」ガタッ
玉藻 「何故特定が出来るのじゃ!?」
浦風 「江風の髪留めはウチが手作りした物じゃ!!」
政一 「髪留め…この青の飾りが付いたゴムか?」
浦風 「そうじゃ…ウチと江風とで同じ物を着けとった!!」
政一 「…お前は持ってるのか?」
浦風 「勿論じゃ!!ほれ、コレが証拠じゃ!!」つヘアゴム
政一 「…飾りの色も同じだな。」
浦風 「雷撃処分される時も、肌身離さず着けとったんよ!!」
政一 「……一つの仮説が浮かんだ。」
浦風 「な、何じゃ?」
政一 「お前が雷撃処分されて沈んだ後に、後を追う為に
海に出て沈められた時に頭を打って、倒れたとすれば…」
浦風 「記憶喪失になっても、可笑しくない言うんか?」
政一 「…事実、祥鳳が記憶喪失になった原因として最も
有力なのが頭を打った時のショックなんだ。」
浦風 「有り得ん訳では無いと…」
政一 「兎に角、今は治療に専念しないとな。」
浦風 「…江風はウチも面倒見る。」
政一 「分かった。」
玉藻 「…まぁ、何じゃ……妾は御暇を頂くとしよう。」
江風 「……」
ー第四十九章 江風と祥鳳ー
ー10:44ー
政一 「……」
江風 「…政一さん、私は喉が渇いた。」
政一 「ん、御茶だな…持って来る。」ガタッ
チャッ…パタン
浦風 「…ウチと、もう一度思い出作ればえぇんや……」
江風 「…そうなんだろうな……私には、分からないが。」
チャッ
浦風 「ん?えらい早いな?」
祥鳳 「お兄ちゃん居る?」
浦風 「…政一ちゃうかったわ……」
祥鳳 「…御邪魔しまーす。」
浦風 「邪魔すんなら帰って。」
祥鳳 「はーいって何で!?」
浦風 「おぉ、ノリえぇやん。政一に教えこまれたか?」
祥鳳 「うん…お兄ちゃんに教えて貰ったの。」
政一 「何を扉の前で話し込んでんだよ、退けよ。」
浦風 「うわぁっ!?」
祥鳳 「御免なさい!!」
政一 「はぁ…ほい、御茶。」つペットボトル
江風 「あ、あぁ…」
政一 「…祥鳳、お前は何故此処に来たんだ?」
祥鳳 「お兄ちゃんに会いたいのと、記憶喪失の子がまた
来たって聞いて…其れで会っておきたくて。」
政一 「…そうか……江風、祥鳳だ、彼女は君より早く
此処に来た子で、君と同じく此処に来る前の記憶が全て
無い状態だ。まぁ、仲良くしてくれ。」
江風 「祥鳳…何か引っ掛かるけど、何も思い出せない。」
祥鳳 「思い出さなくて良いよ?お兄ちゃんは優しいから
無理に思い出さなくて良いって言ってたよ。」
江風 「…思い出さなくて、良いのか?」
政一 「構わない。無理をせずに此処で暮らすと良い。」
江風 「…そうか。」
浦風 「…江風と出掛けてもえぇか?」
政一 「いや、まだ外には出ない方が良い。向こうが江風を
探している可能性が無いとは言い切れないからな。」
浦風 「…分かった。」
江風 「……私を探す?何故?」
政一 「命令違反者を仕留める為。」
江風 「なっ…」
政一 「今はまだ動かない方が良いだろう。」
江風 「…分かった。」
ー第五十章 医務室談話ー
ー15:44ー
イタリア 「……暇ね。」
浦風 「んな事言うても何も無いけぇ何も出来んわ…」
ローマ 「…このモールス通信機、動くのかしら……」
長門 「其の通信機は此処と工廠とを繋ぐ物だ。」←看護係
ピピピッピピピピーッピピピッピピピピーッ
長門 「…何用だろうか……」ガチャッ
ローマ 「通信が来た…」
長門 「…成程……」サラサラ
ローマ 「……」
長門 「……」サラサラ
ツツツーツツツーッ
長門 「直ぐに伝えなくては…」ガチャン
浦風 「どしたん?」
長門 「……大和の艤装が壊れたらしい。」
ー工廠 17:44ー
大和 「……」
政一 「…一度全部バラすしかねぇな、こりゃ。」
大和 「えっと、其の間私は何をすれば…」
政一 「…休暇って事で。」
ー医務室 19:48ー
政一 「……」ボスッ
江風 「…疲れている様だな。」
政一 「……」zzz…
浦風 「もう寝よった!?」
イタリア 「…相当御疲れの様ですね?」
長門 「…政一は無理をするからな……」
イタリア 「……そうなんですか…」
浦風 「ようやるわ…」
長門 「浦風は何故此処に来たんだ?」
浦風 「ウチか?雷撃処分や。」
長門 「…済まない。」
浦風 「んな事言うたら自分はどないしたんや?」
長門 「…ロリコンだと言われてな……冤罪で嫌われた。」
浦風 「うわぁ…」
長門 「幼女や少女は愛でる対象であり、性的欲求を向ける
相手ではない事等百も承知、当然其の様な目を向けた事は
一度も無かった…だが、私の前の提督は私をロリコンと
言い、駆逐艦とは目を合わせる事すら禁止された。」
浦風 「…えらい目に遭うとんね。」
長門 「そこに政一が来てな…私達を保護してくれたんだ。
今は結婚もしているし、迚信頼出来る夫だよ。」
浦風 「…そっか……ウチのこのモヤモヤは恋なんか…」
長門 「ふふっ…政一ならきっと受け入れてくれるさ。」
浦風 「…うん、今度アタックしてみるわ。」
江風 「…恋、か……」
浦風 「どしたん?」
江風 「…私は、恋する乙女になれるだろうか……」
浦風 「……ウチは分からん…」
長門 「きっとなれるさ…政一と過ごせば、何時か答えが
出てくると思う。だから今は身体を治そう。」
江風 「…分かった。」
ローマ 「…誰か来てるわ。」
長門 「ん?客か?」
曙 「……」
長門 「曙じゃないか…如何したんだ?」
曙 「…人肌が恋しくなったの。いけない?」
長門 「…いや、そういう時も有る。」
曙 「……落ち着くわ。」
長門 「そうか…」
ー時刻は十時を過ぎた頃、皆は喋り疲れて寝たという…ー
ー第五十一章 軽巡棲鬼と能代と政一ー
ー二月二十四日 08:44ー
政一 「…深海棲艦が一人保護されたらしい。」
江風 「……本当か?」
政一 「あぁ。軽巡棲鬼の様だが、名が違うと言う。」
浦風 「……そりゃ厄介やな?」
政一 「……正直に言うと、心当たり大有りだ。」
ローマ 「知っているの!?」
政一 「彼女が[黒鷺]と名乗れば確定だな。」
イタリア 「…黒鷺?」
政一 「少し訳有りなんだ。」
コンコンコン
政一 「鍵は開いている。」
チャッ
?? 「…久し振りだね、白鷺。」
政一 「…私を其の名で呼ぶのはお前だけだな、黒鷺。」
?? 「えへへ…来ちゃった。」
政一 「…で、何か有ったのか?」
?? 「…向こうでは完全に海が落ち着いたから、私はもう
仕事が無いって言われちゃってね…探したんだよ?」
政一 「そうか…平和になったんだな。」
?? 「うん…白鷺は如何なの?」
政一 「…私は名を変えた。[諫田政一]と呼んでくれ。」
?? 「…そっか。じゃあ、私も名前を変えよっかな。」
政一 「変えるのか…」
江風 「…この人は、貴方の知っている人なんだな?」
政一 「あぁ…黒鷺という名も昔私が贈った名だ。」
浦風 「…見た目は那珂さんと似とるね……」
江風 「……黒い…兎角黒いな。」
政一 「那珂に似ていて且つ黒い…なら[黒那珂]だな。」
??→黒那珂 「…良いね。」
政一 「…これからも宜しく頼むよ、黒那珂。」
黒那珂 「うん…宜しくね、政一。」
加賀 「…仲が良いのは良い事ですね。」←看護係
政一 「…さて、今日もゆっくりしますかね……」
ー工廠 11:49ー
工廠妖精 「…建造出来ちゃった……」
能代 「軽巡、能代よ。」
工廠妖精 「…誰の所に案内すべきかな?」
入渠妖精 「冷静に考えれば大将さんの所だけど…」
明石 「此処を指揮してるのは早紀大将だけど、皆を纏めて
いるのは政一さんなんだから、政一さんの所に案内して
あげたら良いんじゃない?今は確か医務室に居るわ。」
能代 「え?医務室?」
工廠妖精 「…そうだね。」
入渠妖精 「案内するよ。」
能代 「は、はぁ…」
ー医務室 12:18ー
能代 「能代、入ります…」チャッ
政一 「……」zzz
黒那珂 「あ、新入りさんだ。」
浦風 「おぉ、よう来たな。まぁゆっくりして行き。」
江風 「悪いが政一さんは仮眠中だ。起こさないでくれ。」
能代 「は、はぁ…」
加賀 「何時も此処は誰かが居ますね…」
ー現在の入室状況ー
ローマ・イタリア 現在療養中
江風 保護中
浦風・加賀 看護係
政一 看護係(仮眠中)
黒那珂(軽巡棲鬼) 休憩中
ーー
能代 「…此処はどんな所なんですか?」
加賀 「大本営及び敵対勢力と戦う深海棲艦の拠点です。」
能代 「…へ?」
加賀 「近頃は流れ着く人が多くて困り気味です。」
能代 「は、はぁ…」
加賀 「政一はもう少しすれば起きると思います。」
能代 「分かりました…」
ー第五十二章 真衣と早紀と能代ー
ー14:48ー
加賀 「…起きませんね。」
長門 「これは相当疲れている様だな。」看護係(増援)
真衣 「……心配ですね…」←呼出
早紀 「…今は何も出来ないっすよ。」←呼出
能代 「あの…」
真衣 「軽巡の能代さんですね?話は伺っています。」
能代 「はぁ…」
真衣 「貴女は此処に着任という形になると思いますよ。
最終的な判断は政一に委ねますが…」
長門 「そうだな…政一が我々を纏めている以上は政一の
判断を仰ぐ必要が有る…我々が抱えている一番の弱点だ。」
能代 「そ、そうなんですか…」
早紀 「…まぁ、心配は要らないと思うっす。」
能代 「はぁ…」
江風 「…外に誰か来ている。」
能代 「へ?」
浦風 「ウチが出るわ…」チャッ
白鷺 「よう、邪魔するぜ。」
浦風 「誰やねん、邪魔すんなら帰って。」
白鷺 「おう了解。」パタン
……
白鷺 「って、何でやねん!!」バァン!!
浦風 「あはははは!!やっぱ御決まりやなぁ!!」
白鷺 「つい乗っちまった…表の状態は?」
能代 (表?)
早紀 「疲れからかずっと寝てるっす。」
白鷺 「…目の下が黒いな……こりゃ相当無理してるな。」
早紀 「……」
真衣 「矢張り無理を…」
江風 「だ、大丈夫なのか?死なないよな?」オロオロ
白鷺 「死なねぇとは思うが何時起きるかが分かんねぇ…」
江風 「……起きてくれ…」ギュッ
政一 「……」なでなで
江風 「あっ…」
長門 「政一が、江風の頭を撫でている…」
白鷺 「表、起きたか?」
政一 「…あぁ……未だ身体は重いがな…」
白鷺 「…無理すんじゃねぇよ、壊れたら終わりだぜ?」
政一 「…だな。」
ー第五十三章 抜けない疲れー
政一 「……」ウトウト
江風 「大丈夫なのか?」
政一 「…疲れが抜けてないだけだ……死にはしない…」
長門 「死なずとも倒れるだろう!!」
政一 「…俺以外に誰が付きっ切りで居られるんだ?」
長門 「交代制を導入すれば良かろう!!」
政一 「交代は信用出来ない…一人は居ないと駄目だ。」
能代 「…あの、大丈夫なんですか?」
早紀 「うーん…一度強制的に休ませましょう。」コツコツ
能代 「へ?」
早紀 「ふんっ!!」ブンッ
ゴスッ
政一 「がっ!?」ドサッ
早紀 「…真衣中将、指揮は御願いします。」ガチギレ
真衣 「はい。」
早紀 「政一は療養に入るので私が代わりに着任書類を
制作します… 長門は其の手伝いを。加賀は江風の身体を
拭いてあげて下さい。黒那珂さんはイタリアさんの身体を
御願いします。能代さんは執務室へ、真衣中将と共に。」
加賀 「りょ、了解…」
長門 「ま、任された…」
黒那珂 「はーい。」
真衣 「…激怒状態ですね……行きましょうか。」
能代 「え、あ、はい…」
ー19:44ー
政一 「……痛えな…」
早紀 「政一が無理をし続けるからです。」
政一 「…これは手厳しい……」
早紀 「貴方が倒れれば我々は終わりです、其の身体は貴方
一人の物ではないのですから大事にして下さい。」
政一 「…善処しよう。」
早紀 「…何時も貴方はそうやって調弄すんですから……」
政一 「…保証は出来ない。」
早紀 「なら、強制的に何も出来ない様にしてあげます…」
政一 「お、おい…何をする気なんだ?」
早紀 「何を?ナニに決まってるじゃないですか。」
政一 「おい待て此処でか!?」
早紀 「…此処で?じゃあ違う部屋でなら良いんですね?」
政一 「あっ…」
早紀 「じゃあ行きましょうか、私の部屋に。」
政一 「言質取られた…これもう負け確定だよな……」
早紀 「うふふ…明日は何もさせませんよ……」
政一 「…もう俺は何も言わんぞ……」
パタン
長門 「…早紀大将は怒らせない様にしなくてはな……」
加賀 「語尾が消えて口調も変わって…恐ろしい……」
浦風 「……」
黒那珂 「本当に、何やってんだか。」
ー第五十四章 追手と迎撃ー
ー二月二十五日 10:29ー
早紀 「あぁ、スッキリしたっす…」キラキラ
黒那珂 「うわぁ凄いキラキラ…」
長門 「政一は如何なったんだ?」
早紀 「暫くは動けないと思うっす。」
長門 「…限界突破で回路遮断か……」
政一 「……」チャッ
早紀 「ふぇっ!?」
長門 「お、おい…目が怖いぞ……」
政一 「コイ、マダオワッテナイゾ…」グイッ
早紀 「えっ?ちょ、待って!!私もう充分で!!」
政一 「キノウノコトバノセキニンハトレ。」
早紀 「待ってー!!!!」
パタン
長門 「……」
黒那珂 「……」
江風 「あれは大将が悪い。」
長門 「だな…」
真衣 「大変です、深海棲艦の追手が来ました!!」バァン
長門 「何だと!?」
浦風 「政一の言う通りに来よったか!!」
黒那珂 「…私が出るから、皆はこの子を護って。」
浦風 「りょ、了解!!」
ー11:19 海上ー
黒那珂 「……」
?? 「キサマガナゼココニイル…ネガエッタカ?」
黒那珂 「私はとある人の為だけに動く存在…貴女の様に
馬鹿な真似はしないわ、軽巡棲姫。」
軽巡棲姫 「…ソウカ、ナラバシヌガイイ!!」ガシャン
黒那珂 「殺せるのなら殺してみなさい!!」ガシャン
ドドン!!ドドドン!!
レ級 「…アァ、ハジマッタヨ……」
戦艦棲姫 「おい。」
レ級 「ハイ?」
戦艦棲姫 「今の内に撤退すると良い。」
レ級 「アノヒトニナニイワレルカワカッタモンジャネェ…
オレタチハウゴケナイ、サイアクナジョウキョウカダ。」
戦艦棲姫 「なに、奴等一捻りで消してくれるわ。」
レ級 「…シンジルゼ、ソノコトバ……」チャプン
戦艦棲姫 「……さて、如何料理しようか…」
軽巡棲姫 「コノッ…エングンハドウシタ!?」
戦艦棲姫 「お前の仲間は帰ったぞ。援軍も同じだろう。」
軽巡棲姫 「ナンダト!?」
戦艦棲姫 「ワンマン指揮官は嫌われるぞ。」
軽巡棲姫 「ソンナコトハ…ワンマンナンテコトハナイ!!」
黒那珂 「実際にワンマンだから嫌われてんでしょうが…」
軽巡棲姫 「ハァ!?」
戦艦棲姫 「君は本当に馬鹿だな…ウチの政一の方が何倍も
良い指揮官だったぞ。無理をして倒れたりしたが。」
黒那珂 「そうそう…一人で抱え込みやすいけど、此奴と
違って皆の話をよく聞く良い人なんだよね…」
軽巡棲姫 「…ハナシヲ…キク……」
黒那珂 「あぁ…抑話すら聞いてなかったのか。」
戦艦棲姫 「話の通じない上司は無能な上司だな。」
軽巡棲姫 「…コノ……ウアアアアア!!」
ズガァン!!!!
軽巡棲姫 「……ァ……ガ…」ガシャッ
戦艦棲姫 「ん?」
江風 「…地獄に落ちろ、私を沈めた罪は消えぬ事を知れ!!」
軽巡棲姫 「……」バシャッ
黒那珂 「…死んでる。」
戦艦棲姫 「江風…記憶が戻ったのか?」
江風 「……全部思い出した。浦風が私の事を姉妹同然に
思ってくれていた事も、此奴の所為で私が沈んだ事も。
そして、先に逝った皆が私を此処へ運んでくれた事も。」
黒那珂 「…そっか。」
戦艦棲姫 「…帰ろう、私達の家に。」
江風 「あぁ…船が有って良かった。」
ー21:44 医務室ー
政一 「…記憶が戻ったか。」
江風 「あぁ…だが、艤装を扱える訳では無い。」
政一 「構わないさ…これからも宜しく。」
江風 「あぁ…狙撃なら任せてくれ。」ガシッ
政一 「…後で浦風を呼ぶか?」
江風 「いや、明日で良い。」
政一 「…そうか。」
ー第五十五章 姉妹の様に、家族の様に。ー
ー二月二十六日 05:44ー
浦風 「記憶、戻ったんか…良かった…良かった……」
江風 「済まない、迷惑を掛けた。」
浦風 「…性格も口調も変わってもうて……」
江風 「性格が変わろうと、口調が変わろうと私は私だ。」
浦風 「せやな…せやな……」
政一 「…今日から鎮守府の中を歩きなさい。」
江風 「…分かった。」
浦風 「政一、これからもウチと江風を宜しゅうな。」
政一 「あぁ。」
あきつ丸 「政一殿、新しい情報であります。」チャッ
政一 「ん?」ペラッ
浦風 「ど、どないしたん?」
政一 「…浦風、お前の元提督が斬首刑になったそうだ。」
浦風 「ざ、斬首!?」
江風 「其れは本当なのか!?」
政一 「あぁ…お前達の件の他にも不祥事が重なった故の
刑罰の様だな…まぁ、同情も糞も無いが。」
あきつ丸 「其れと、現在政一殿に恋愛感情を向けている
艦娘一覧であります。ケッコン艦は抜いております故。」
政一 「……要するに指輪強請りか?」
あきつ丸 「そういう事でありますな…好いている以上は
答えが欲しいと。政一殿は鈍いでありますからな。」
政一 「…天龍、龍田…阿武隈……瑞鳳…大和に武蔵……
ビスマルクにグラーフもか……ん?」
あきつ丸 「如何かしたでありますか?」
政一 「…これ、本当に全員そうなのか?」
あきつ丸 「長門殿や青葉殿に協力を仰ぎ調べました故、
間違い等微塵も無い物であります。」
政一 「…浦風と江風の名が有るが、間違いでは無いと。」
あきつ丸 「勿論であります。」
政一 「…一度集めよう。」
ー応接室 14:44ー
ビスマルク 「如何したの?」
天龍 「何があったんだ?」
政一 「……全員に渡しておく。」
つ指輪×10
阿武隈 「うわぁ…」
龍田 「あらぁ…今更なの?」
政一 「…俺はあきつ丸から渡された資料で漸く気付く様な
鈍感で朴念仁な男だという事は分かっている筈だ。」
大和 「…まぁ……」
武蔵 「私達を運用する事無く消えた様な男だからな。」
政一 「…其れでも良いなら受け取ってくれ。」
グラーフ 「……まぁ…好きな人に告白されたのだから、
断る理由等無いな。これからも宜しく頼む。」
瑞鳳 「…有難う。」
浦風 「…こんなウチ等やけど……」
江風 「其れでも良ければ、宜しく頼む。」
政一 「…そうか。これからも宜しく。」
ー第五十六章 突撃!!ほっぽちゃん!!ー
ー談話室 18:41ー
大和 「……」キラッ
武蔵 「いやはや、まさか本当に実るとは…」
大和 「武蔵?気分は如何?」
武蔵 「悪い訳が無かろう?」
大和 「そうね…」
政一 「……」つ新聞
大和 「本当に鈍いんだから…」
武蔵 「追って来た時点で気付いて欲しいものだが。」
政一 「……」ペラッ
ほっぽ 「政一!!」ドゴッ
政一 「うごっ!?」
ほっぽ 「へへへ…」スリスリ
港湾棲姫 「あぁ、御免なさい政一…」
政一 「ゲホッゲホッ……何だ、何が有った…」
ほっぽ 「…えへへ……」スリスリ
港湾棲姫 「えっと、其の…最近遠征ばかりだったから…」
政一 「…成程……」
Prrr…Prrr…
政一 「何か用か?」
[明石です!!至急工廠まで!!大和さんの艤装が!!]
政一 「分かったから落ち着け…今行く。」ピッ
ほっぽ 「…もう行くの?」
政一 「着いて来い!!」
ほっぽ 「やったー!!」ギュッ
港湾棲姫 「本当に御免なさい…」
政一 「構わん…」
ー工廠 19:22ー
明石 「済みません、大和さんの艤装が粉々に…」
政一 「…一から設計するしか無いな。」
ほっぽ 「えへへ…」ギュッ
明石 「……凄く懐かれてますね。」
政一 「…まぁ、色々有ったからな。」
明石 「へぇ…」
夕張 「明石、新型装備出来…政一さん?」
政一 「ん?其の声は夕張か…工廠に引き篭っているから
中々会えなくて困っていたんだが…生きていたか。」
夕張 「…久々に会って開口一言目が生存確認?」
政一 「何日会っていなかったと…」
夕張 「あぁ…」
ほっぽ 「…誰?」
夕張 「ほっぽちゃん、夕張ですよ。」
政一 「鈍足兵装実験軽巡洋艦夕張だ。」
夕張 「ちょ、鈍足は余計です!!」
北方棲妹 「おい、銃弾上がったぞ。」
政一 「ん、了解…」
南方棲戦姫 「ふぅ…お、政一だ。久し振りだな。」
政一 「だな…妻になった癖に工廠に引き篭り続けてるから
接点が中々ねぇんだよな…」
南方棲戦姫 「夕張に教えたから明日から暇出来るぞ。」
政一 「そうか…」
ほっぽ 「政一、帰ろ?」
政一 「だな…今日は遅いし明日来るわ。」
明石 「分かりました。」
ー談話室 20:10ー
ほっぽ 「えへへ…」ギュー
弥生 「…政一は、北方棲姫と結婚してましたっけ?」
政一 「いや、最早娘の立ち位置になりつつある。」
ほっぽ 「えへへ…」
政一 「まぁ…結婚を前提にした付き合いにも見えるか。」
ほっぽ 「…ほっぽは政一が大好き。」
政一 「…そうか。」
ほっぽ 「…子供、欲しいなぁ……」
政一 「ぶふっ!?」
ほっぽ 「良いでしょ?」上目遣い
政一 「……まぁ、長い付き合いだし…指輪渡すわ。」
ほっぽ 「やったー!!」ギュッ
弥生 「…良かった。」
政一 「……まぁ、これで良いか。」
ー第五十七章 引っ張られ振り回されー
ー二月二十七日 06:44ー
ほっぽ 「…えへへ……」ギュッ
政一 「……」読書中
佐渡 「ヤバいぜヤバいぜ!!やばいんだぜ!!」
政一 「おい、落ち着け…何が有ったんだ?」
佐渡 「曙先生から出された宿題、終わんねぇんだぜ!!」
政一 「……宿題が終わらない?」
択捉 「もう…だから一緒にやろうって言ったのに……」
松輪 「私達はもう終わってますよ?」
対馬 「提出明日だよ?大丈夫なの?」
佐渡 「御願いだから手伝って欲しいんだぜ!!」
政一 「……分かった、教えられる範囲で手伝おう。」
佐渡 「有難う!!じゃあ算数から頼むぜ!!」
10×49
政一 「…筆算してみろ。」
佐渡 「…500になっちまったぜ……」
政一 「掛け算を復習しないとな……」
ー10:49ー
佐渡 「な、何とか理解出来たぜ…有難う政一…」
政一 「気ぃ付けな。」
夕張 「ヤバいです!!五一糎連装砲、完成しました!!」
政一 「……分かった。」
明石 「夕張、大変!!工廠の中に油虫が!!」
政一 「…Cockroachか。」
明石 「こ?」
政一 「…Cockroachesの可能性も有るのか…」
明石 「え?」
松輪 「Cockroach…ゴキブリって意味ね。」
明石 「ひえぇ!?」
夕張 「何でそんなにサラッと言えるんですか!?」
政一 「あんなの大した事ないだろ…」ガタッ
ー工廠 11:27ー
カサカサッ
政一 「……」つ海苔ボトル
ガポッ
カタカタッ
政一 「……」つ厚紙
ヒョイッ
政一 「捕獲完了。」ドサッ
明石 「ヒッ!?」
夕張 「怖い怖い嫌だよぉ!!」
政一 「……」つ殺虫剤
シューーーーー
ジタバタジタバタ…
政一 「虫には殺虫剤煙幕か洗剤水、これ覚えとけ。」
ピクピク…
明石 「そ、そんな事言ったってぇ…」
夕張 「無理な物は無理ですぅ!!」
政一 「そうかい…」
ポイッ
ポチャン
明石 「う、海に捨てたの!?」
夕張 「もう海入りたくない!!」
政一 「…ゴキブリの一匹や二匹海に落ちるわ。」
明石 「……あぁ…そう、ですよね…」
夕張 「……そう、だよね…」
政一 「はぁ…寝る、お休み。」
ー第五十八章 死者蘇生ー
ー13:44ー
?? 「……」フラッ
政一 「……よし、大和に合わせてみるか。」
?? 「…御久し振りですね、提督。」
政一 「……八丈…なのか?」
八丈 「はい、あの時の八丈ですよ。」
政一 「……何故…何故此処に居るんだ?」
八丈 「死神さんが助けてくれたの。」
政一 「…彼奴がか……」
八丈 「…貴方の為に、此処まで来ましたよ。」
政一 「…そうか。」
八丈 「もう…反応が薄いんですから…」
政一 「…悪いな。」
八丈 「私、聞いたんですよ…婚約してるんですってね?」
政一 「…そうだな。」
八丈 「…私を大切にしてくれる人と私は結ばれたいわ。」
政一 「そうなのか…」
八丈 「…ねぇ……私を未来の御嫁さんにしてくれる?」
政一 「…分かった。」
八丈 「有難う…大好き。」ギュッ
政一 「……」なでなで
八丈 「…暖かい……」
政一 (護らねば…)
ー18:38ー
占守 「…こんな所で……また会えるなんて…」
政一 「……」zzz
八丈 「……」zzz
石垣 「良かった…」
国後 「…ぐっすり寝てるわ。」
加賀 「…あの人が絡んでるわね。」
国後 「あの人?」
加賀 「政一の後任の人。」
占守 「……」
暗闇 「あぁ、後任の死神さんね…政一の仕事を傍でずっと
見てた人だから、政一の様に生き返らせちゃったのね。
もう、無茶するんだから…」
明石 「……死んだ艦娘が生き返る…」
暗闇 「新しい身体に其の魂を移して生き返らせるのよ。
で、元の身体が使える状態なら其の身に戻すのよ。」
明石 「へぇ…」
暗闇 「政一曰く、本来折檻級の禁忌なのよ…」
明石 「えぇ!?」
暗闇 「閻魔が許可したか独断か…何方にしても無茶よ。」
明石 「えぇ…」
ー第五十九章 死んだ筈の彼女と生き返った彼女ー
ー二月二十八日 海上 04:40ー
球磨 「強過ぎるクマ…此奴化け物クマ……」
レ級に似た何か 「……」ギロッ
叢雲 「レ級の様でレ級じゃない…何者なの……」
長門 「砲撃が殆ど効かんとは…装甲が異常だな…」
レ級に似た何か 「…アニキ……ドコ……」
川内 「お兄さん?」
暗闇 「…そういう事ね……全艦一杯!!拠点に帰るわ!!」
球磨 「正気クマァ!?」
暗闇 「私には彼女が何者かは分からないけど、誰を求めて
この海に居るのかは分かったわ!!其の人の所に案内して
落ち着いて貰うのよ!!分かったら急いで!!」
ー軍港 05:44ー
政一 「…レ級の様で違うな……」
レ級に似た何か 「…アニキ……ヤット、アエタ…」
政一 「…もしかして、隼見か?」
レ級に似た何か 「…ソウダヨ……」
川内 「え?」
政一 「……間違い無い、此奴は隼見真琴だ…」
レ級に似た何か 「…オボエテタンダネ、アニキ……」
暗闇 「やっぱり…」
長門 「如何いう事だ?」
暗闇 「政一はよく[兄さん]とか[兄貴]とか呼ばれてるの。」
長門 「…そうだったのか……言われてみれば、確かに…」
叢雲 「潮や漣、段田さんもそうね…」
政一 「…レ級みたいになっちまって……治してやる。」
レ級の様な何か 「…アリガトウ、アニキ……」
ー医務室 08:49ー
レ級の様な何か→真琴 「……」zzz
政一 「取り敢えずレ級艤装と尻尾を取って人間に近くして
様子見かな…肌色は青いし眼は紅いし、深海棲艦の面影
ガッツリ残っちまってるけど、如何しようもねぇしな。」
江風 「…其の子は?」
政一 「昔結婚手前まで行って殺された隼見真琴。何故か
こっちでレ級みたいになってたが…」
八丈 「…多分追い掛けて来たんだと思う……」
政一 「お前と同じか…死んだ筈の彼女が此処に居るのは
十中八九奴が絡んでると…厄介だな。」
八丈 「…でも、貴方が好きじゃなかったら…ここまでは
しないと思う……好きだからこそこうして来たんだよ。」
政一 「だろうな…レ級みたいになっても理性を保ってた
一番の理由はやっぱ俺に対する好意かねぇ…」
八丈 「…喜んで良いと思うよ。」
政一 「…だな……先ずは肌色から治さねぇとなぁ…」
ー10:29ー
真琴 「……此処は…」
電 「あ、起きたのです!!」
ぷらずま 「煩いのです…起きたのは見りゃ分かるのです。」
真琴 「あの、私は…」
明石 「貴方は政一が元いた世界で死んだ後政一を追って
こっちに来たは良いものの、戦艦レ級に喰われたのか、
或は取り込まれたのか…何方にしても貴女はレ級として
活動していたのよ…で、ウチの艦隊に運良く遭遇して、
政一から人間化の施術を受けて今に至るの…分かった?」
真琴 「……えっと…」混乱中
政一 「阿呆、一度に情報を詰め込むな。」
真琴 「あ、兄貴!!」
政一 「お前の兄貴呼びは変わんねぇんだな、安心した。」
真琴 「私は、一体…」
政一 「お前は先ずレ級って奴になってた。」
真琴 「れ、レ級?」
政一 「その時のお前の写真がコレだ。当時偶居た青葉が
偶然にも撮っていた一枚だ。」つ写真
真琴 「…嘘……コレが、私?」
政一 「で、こっちが普通のレ級。俺が撮った物だ。」
真琴 「…髪色…服装……尻尾までそっくり…」
政一 「一応人間化はしたが…御覧の有様だ。」つ手鏡
真琴 「…眼が…髪が……肌が……」
政一 「一応聞くが…お前はこれから如何したい?」
真琴 「…もしも、兄貴がまた愛してくれるなら……」
政一 「俺は変わらずお前を愛する。」
真琴 「…なら……こんな私でも良いなら…」
政一 「なら、何だ?」
真琴 「……兄貴の、御嫁さんにして下さい!!」
政一 「…そうだな……御嫁さんになりたいなら、先ずは
兄貴呼びから治そうか。」
真琴 「へ?」
政一 「俺は[諫田政一]…お前の[兄貴]じゃなくなる。」
真琴 「……良いの?」
政一 「勿論良いさ。態々追って来る程だ…断るだなんて、
とんでもない。俺はお前の好意を受け入れるさ。」
真琴 「…有難う、政一……」
政一 「愛してるよ、真琴。」
八丈 「…取り敢えず、一件落着?」
明石 「ですね…他人が沢山居るのに何でこうもイチャコラ
惚気られるのか、意味が分かりませんよ。」
八丈 「…其れがこの人だよ。」
明石 「おぉう、達観してますね…」
八丈 「だって、何時かは帰って来てくれるんだから。」
明石 「…上級者過ぎですよ……」
ー第六十章 未だ明かされぬ過去の欠片ー
ー16:44ー
真琴 「…ねぇ、雪は?」
政一 「…雪菜か……彼奴はまだ見てない。」
真琴 「そんな…」
政一 「そう落胆するな…孰はお前の様に何かしらの形で
此処に来るさ。今は待て、暫く経てば来る。」
真琴 「…そう、だよね……」
八丈 「あの、雪菜さんって?」
政一 「真琴の妹だ。隼見雪菜、真琴とは三つ離れてる。」
八丈 「…其の方は今、何方に?」
政一 「…雪菜と真琴はあの日に一度死んだ。」
八丈 「え?」
政一 「今も鮮明に覚えている…二千十六年八月十日…
真夏の極普通な日に戦の火蓋は切られたんだ…」
八丈 「…如何いう事?」
政一 「あの日は俺は用事が有って内陸に居たんだがな、
真琴と雪菜は港湾都市で買い物をしていたんだよ……
普通で平和な昼下がりだと…俺は勘違いをしていた。
だがな、其の日の午後二時十八分だった…深海棲艦が
攻撃を開始したんだ。当然街は壊滅、二人が当時居た
港湾都市で生き残ったのは僅かに三人だった…」
八丈 「…じゃあ、真琴さんは……」
政一 「雪菜と手を繋いだ儘…頭を吹き飛ばされていた。」
八丈 「そんな…」
政一 「当時は艦娘なんて居なかった…陸軍が海岸付近で
進軍を止めるのが精一杯…戦死者もかなり出た。」
真琴 「……」
政一 「俺は真琴と雪菜を護れなかった…だから、陸軍に
編入された時に前線歩兵に自ら希望したんだ。」
八丈 「…何で?」
政一 「[死ねばまた二人に会える]…そう思っていたんだ。
だが現実は非情にも俺を彼岸には送らなかった…何故か
周りが撃たれ死にゆく中俺だけは無事だった…この時、
俺に付いた渾名が[海の死神]だった。」
八丈 「……」
政一 「死のうと思ったとしても死ねない俺は、後に海軍に
編入されて提督となり…後は暗闇の昔話通りだ。」
真琴 「…政一……」
政一 「……死ねど死ねど此方に戻されてはな…」
八丈 「大変だったんだね…」
[政一殿、近海に戦艦タ級と思われる艦影を確認!!]
政一 「了解、直ぐに出る。」
真琴 「何か有ったの?」
政一 「直ぐに戻る、待っていろ。」
ー海上 17:28ー
政一 「…あれは……」
タ級の様な何か 「…ニイサン、ヤットアエタ……」
政一 「全艦武装解除、下がれ。」
加賀 「はい…」
政一 「…お前は、雪菜か?」
タ級の様な何か 「ソウダヨ、ニイサン…」
政一 「…真琴が待ってるぞ。」
タ級の様な何か 「ホントウ?ウレシイナ…」
政一 「行くぞ、武装だけ下ろせ。」
タ級の様な何か 「ウン…」ガシャッ
島風 「…特定はっやーい……」
龍驤 「まるで待ってたかの様やったなぁ…」
ー医務室 22:07ー
タ級の様な何か→雪菜 「……」zzz
真琴 「雪菜…良かった……」
政一 「…現状は真琴と変わらず、か。」
八丈 「元深海棲艦だって一発で分かるね。」
政一 「…まぁ、元々此処深海棲艦の拠点だしな。」
八丈 「うん、問題無し。」
ー第六十一章 定期会議の後にー
ー三月一日 11:49ー
政一 「……」zzz
浦風 「九時半に会議に行って十一時過ぎに戻って来たと
思ったらいきなり寝よった…どんだけ疲れとんのや…」
江風 「…この左手に握られているのは資料か?」
浦風 「ホンマや…ちと借りるで……」パラッ
江風 「何が書いてある?」
浦風 「…嘘やん……何、どないしたらこない一から十まで
書けんねん…図も文章も頁限っ限までびっしりじゃ…」
江風 「…そうか……昨日の夜遅くに執務室の灯りが煌々と
灯っていたのは政一がこの資料を作っていたからか…」
雪菜 「もう…兄さんは相変わらず無茶をするのね……」
真琴 「政一は死なない、よね?」
大和 「死なないとは思いますが…私の艤装を新造して、
貴女達を治療して、且つ資料を作成していたとなれば
其の身体に掛かる負担は相当な物の筈…其れを顔色の
一つも変えずに熟していたのですからね…如何に彼が
人間離れしているとは言え、流石に限界が来たのかと。」
武蔵 「まぁ政一は我々大和型戦艦二人で立ち向かっても
一切歯が立たない男だ、そう簡単に斃りはせんよ。」
長門 「…単に相当疲れているだけだ。寝れば治る。」
雪菜 「…そっか。」
明石 「隼見真琴さん、雪菜さん…検査結果出たわ。」
雪菜 「本当に?」
真琴 「ど、如何だった?」
明石 「深海棲艦と人間、半々って所ね…艤装の装備は
不可能だけど、人間とは違って入渠すれば傷は治るわ。」
長門 「…政一とはまた違う半々だな。」
明石 「……其れで…政一さんなんだけど……」
武蔵 「む?」
大和 「如何したの?」
長門 「何だ?」
明石 「…とっても、言い難いんだけど……」
[ 政 一 さ ん の 余 命 は 、 残 り 三 日 よ 。 ]
ー第六十二章 無理をし過ぎた結果ー
長門 「なっ!?」
大和 「よ、余命!?」
武蔵 「あと三日だと!?」
雪菜 「ど、如何いう事なの!?」
真琴 「……政一が、死ぬ?私より、先に?」
明石 「そうなるわ…まさかこんな事になってたなんて…」
長門 「せ、説明してくれ!!何故後三日で政一が死ぬんだ!?」
明石 「度重なる徹夜や重労働…身体に負担を掛け過ぎて
遂に音を上げたって所ね…もう如何にもならないわ。」
大和 「そんな…何とかしてよ!!」
武蔵 「明石、お前は工作艦だろう!?」
明石 「無理な物は無理よ!!私だって何とかしたかったわ!!」
長門 「…政一は我々に心配を掛けさすまいと表面上は
平静を保っていたんだろう…我々は其れに騙された故に
こうして政一が倒れてしまったんだ…」
明石 「多分そうだわ…表では普通を粧って、裏で無理を
していたんだと思う……」
大和 「…まさか、もう目覚めないって事は……」
明石 「其れも有り得るから、先点滴を打ったのよ…」
長門 「そんな…政一……」
明石 「…彼岸の閻魔が追い返してくれる事を期待する、
今は其れしか出来ないわ。」
早霜 「政一さんは!?」バァン!!
暗闇 「大丈夫なの!?」
明石 「…残念だけど、もう後三日の命よ。」
早霜 「そんな…」
暗闇 「何で…何で相談してくれなかったのよ!!」グスッ
明石 「落ち着いて下さい…」
暗闇 「落ち着ける訳無いでしょ!?政一は他人の事ばかり
考えて、自分の事は後回し…私の悩みは聞くのに自分の
事は誰にも言わないで、其れで何時も勝手に自滅して…
何なのよ!!アンタはアンタだけの物じゃ無いのよ!!政一が
居ない世界に何の価値が有るのよ!!これから私達は何を
して過ごせば良いのよ!!何を如何すれば良いのよ!!ねぇ
答えてよ政一!!アンタの所為でこうなってんでしょうが!!
お願いだから目を覚まして!!!!お願いだから!!!!ねぇ!!!!!!
お願いだから!!!!!!起きてよ!!!!!!目を覚まして頂戴!!!!!!!!
お願いだから私を一人にしないで!!!!!!!!」ボロボロ
長門 「…長い付き合いだからこそ、か……」
早霜 「私達は彼女と比べると浅い付き合いですからね…」
明石 「あの方は初めて政一さんと結婚された方ですから、
政一さんへの思いも一入なのでしょうね…」
暗闇 「うぅ…行かないで……行かないでよ政一……」
長門 「…我々は一度退室しよう。」
明石 「…そうしましょうか……」
ー第六十三章 後二日ー
ー三月二日 執務室 10:00ー
ハンス 「何だと!?」
ハイン 「政一さんが、余命二日!?」
シャル 「有り得ませんよ!!あんなに元気な人が残り二日の
命だなんて!!何かの間違いですよ!!」
早紀 「……でも、本当みたいっすよ…」
真衣 「あの方は無理をされますから…」
浅葱 「確かに俄には信じられない情報ではありますが…
明石さんの言う事ですから、恐らく事実かと……」
吹雪 「嘘です!!政一さんが死ぬなんて有り得ません!!」
白鷺 「…吹雪、信じられないだろうが表は後二日で死ぬ。
昨日死神に聞いた。決して変わる事の無い運命だ。」
吹雪 「…そんな……」
中枢 「…駄目だな、矢張り起きない。」
中枢(深) 「モシカスルト、コノママシヌカモシレン。」
白鷺 「…やっぱりか……」
ハンス 「…彼奴、そんなに無理してたのか?」
ハイン 「思い出して下さい……丁度一ヶ月程前、私達は
政一さんが無理をしていた所を目にしています…」
ハンス 「一月前……あっ…あの時か!?」
ハイン 「えぇ…政一さんが気絶状態で半日起きなかった
事が有りましたよね…恐らくあの時にはかなりの無理を
していたのだと思います……あの時気づいていれば…」
中枢(深) 「…カコヲキニシテモナニモカワラン……」
中枢 「…今は政一が起きる事を願いましょう……」
ー12:49 談話室ー
夕立 「…ぽい……」
時雨 「政一が死んだら…止まない雨が降り始めるね…」
龍驤 「…雨やない、雪でもない…雹が降ってきよる……」
日向 「…そう、だな……」
大鳳 「…何で…死ぬの……」
加賀 「……あの人は昔から無理ばかりするのよ…」
龍飛 「あぁ…本当に、無理ばかりする男だ……」
鳳翔 「…仕込み、して来ます……」グスッ
ー16:49 食堂ー
青葉 「何でこんなに早く行ってしまうんですかぁ!?」
衣笠 「青葉、落ち着いて!!」
青葉 「落ち着いてられるならヤケ酒なんてしませんよ!!!!」
球磨 「…そうクマね……」グビグビ
多摩 「……」グビグビグビグビ
木曾 「……もっと私の活躍を見てもらいたかった…」
北上 「…コレ何?まぁ何でもいいかぁ……」つメタノール
大井 「北上さん、其れはお酒じゃないです!!」
北上 「…政一ノ所に行ケるなラ其れデも良いヨ……」
大井 「本当に辞めて下さい!!失明してしまいます!!」
北上 「……ベツニシツメイシテモカマワナイヨ…」
大井 「良くないです!!お願いだから其れを離して!!」
北上 「マサイチノイナイセカイハイラナイヨ…」
大井 「だから落ち着きなさいっての!!」
ー第六十四章 後一日ー
ー三月三日 談話室 08:49ー
白野 「離すのじゃ!!妾は政一の元に行きたいのじゃ!!」
暁 「だからって自殺なんてさせないわよ!!」ググッ
白野 「死なせてくれ!!死なせてくれぇ!!」つ包丁
不知火 「駄目です、辞めて下さい…私達だって我慢して
生きてるんですから…離して下さい……」ググッ
白野 「彼奴の居ない世界に希望等無いのじゃ!!」
水野 「…もう私、生きて行けないわ……」つ拳銃
弥生 「駄目!!」ガシッ
望月 「あーもー、面倒臭いなぁ!!」ガシッ
水野 「離して!!あの人の居ない世界は嫌なの!!」
弥生 「自殺したら二度と会えなくなるから辞めて!!」
望月 「考え直せってのー!!」
水野 「嫌!!死なせて!!死なせてよ!!」
弥生 「落ち着きなさい!!」
卯月 「辞めて!!」
曙 「…彼奴が居ないなら、もう生きてても何も無い……
私はもう諦める事にするわ…さようなら。」つ銃剣
霞 「辞めなさいっての!!」
曙 「お願い…死なせて…もう耐えられない……」グスッ
霞 「アンタが死んだら彼奴が悲しむのが分かんない!?」
卯月 「政一を思うなら自殺はしないで下さい!!」
初霜 「…返して……」ハイライトオフ
電 「駄目なのですぅ!!」つ艤装
ぷらずま 「手前に渡したら手前の頭を撃ちかねないから
絶対に渡せないのです!!」つ艤装
初霜 「返して…返シテ…カエシテ……」
電 「今はもっと駄目なのです!!」ダッ
ぷらずま 「先ずは光を戻せなのです!!」ダッ
綾波 「……返して。」
叢雲 「アンタ、死ぬ気でしょ?許さないから。」
綾波 「…そう…なら、力ずくで奪うだけ。」
叢雲 「初期艦の強さ、思い知らせてやるわ…」
初雪 「駄目!!」
響 「…其のお酒を返してくれ…其れが無いと政一が……」
初雪 「飲んだって会えない!!其れは幻覚!!」つ酒
響 「何を言うんだい…早く返しておくれ…」
初雪 「駄目!!」
あきつ丸 「…自殺志願者と其れを止める者で溢れている
でありますな……如何に彼が皆を纏めていたかが迚よく
分かる光景でありますな…宗谷殿?」
宗谷 「…離して……僕は向こうに行くんだ…」
あきつ丸 「こんな物騒な物を使おうとしているというのに
離せるわけが有りませんな。」つ十四年式拳銃
宗谷 「死にたいんだ…僕は政一と一緒に……」
あきつ丸 「そうは問屋が卸しませんぞ。」
バァン!!
あきつ丸 「何事!?」
弥生 「大丈夫…腕ですから……」ボタッ…ボタッ…
水野 「お願い、死なせてぇ!!」
あきつ丸 「…これは……明日が怖いであります。」
ー第六十五章 彼岸と此岸の往復切符ー
ー三月四日 04:00 医務室ー
ピッ…ピッ…ピッ…
暗闇 「……」
明石 「…政一さんが行くのは今日ですね……」
暗闇 「言わないで……分かってるけど…」
明石 「あんなに元気な人だったのに…」
暗闇 「私だって、彼の死地は戦場だと思っていたのよ…」
明石 「…戦地で味方を護り散る…ですか。」
政一 「……俺も、出来れば…そうありたかった…」
暗闇 「政一!?」
明石 「起きたんですか!?」
政一 「…向こうと話をしてきた……一日で戻る……」
暗闇 「…分かったわ。」
明石 「遺体は?」
政一 「…一日なら腐らんだろう……」
暗闇 「…絶対に……絶対に帰って来てよ。」
政一 「あぁ…少しだけ離れる……待っててくれ……」
ピッ…ピッ…ピーーーーー
明石 「……駄目ね…四時十一分、死亡確認。」
暗闇 「…皆に伝えましょう、一日で戻ると。」
ー談話室 08:00ー
暗闇 「…だから、一日だけ待って頂戴。」
水野 「……」
弥生 「…自殺、絶対しないで下さいね……私、今とっても
怒ってるんですから…分かりましたね?」ギロッ
白野 「…分かった……」
ー彼岸 10:49ー
政一 「あぁ、糞…何で彼岸に来てまで書類仕事を……」
死神 「諦めて下さい先輩。閻魔頭さんと相談して、漸く
通った条件なんですから…ほら、手を動かす!!」
政一 「お前マジで後で打っ飛ばして殺るかんな…」
死神 「辞めて下さい貴方の殺るからな宣言は本当に洒落に
ならないんですから!!この前だって私全治三年の大怪我
したんですから!!仕事にならなくなるんですよ本当に!!」
政一 「…なら金出せ金。無賃労働は反対だぞ。」
死神 「分かりました時給二千円出しますから!!」
政一 「言ったな?言質取ったぞ。」
死神 「はいどうぞ五万円です二十五時間働いて下さい!!」
政一 「有難く…って、休憩無しか…」
ー三月五日 医務室 06:49ー
政一 「…あぁ、糞が……五万円は手に入ったけど疲れが
抜けてねぇ……暫く寝るかぁ?」
暗闇 「政一!!」
政一 「…閻魔の頭が言うには俺が掛ける負担に耐えうる
身体に更新してあるらしいが…見た目変わんねぇな。」
暗闇 「其れで身体が動いてたの…」
政一 「怪奇現象ってか…」
暗闇 「…彼岸と此岸の往復切符…如何だった?」
政一 「向こうで書類仕事させられた…」
暗闇 「其れは…うん、御愁傷様…」
政一 「…ちょっと負荷掛けてみるか……」
ー談話室 10:00ー
政一 「…という訳で、俺は復活した。」
鈴谷 「良かったぁ…」
長門 「あぁ、政一が戻ってくれた…」
政一 「取り敢えず…今日明日は休みだ。」
大和 「まぁ…」
武蔵 「いきなり無理は出来んだろうな…」
政一 「弥生は俺と一緒に来い、以上解散。」
ー政一自室 10:29ー
政一 「大丈夫か?」
弥生 「はい…私は左利きなので……左腕が使えないのが
結構辛いですけど…何とか。」
政一 「…左利きだったのか……」
弥生 「……変、ですか?」
政一 「いや、普段は右利きの様に振舞っていたからな…」
弥生 「…両利き矯正中です……」
政一 「そうか…綺麗な腕なのに……」
弥生 「良いんです…命を護ったんですから…」
政一 「…そうか。有難う。」
弥生 「…久し振りに、今日…良いですか?」
政一 「腕に負担が掛からないか?」
弥生 「…私は動きませんから…お願いします。」
政一 「…そうか。」
ー22:44ー
政一 「…満足か?」
弥生 「はい…満たされました。」
政一 「腕は?」
弥生 「少し痛みますけど…大丈夫です。」
政一 「…そうか……」
弥生 「…普段は表に出しません…けど、今だけは……」
政一 「あぁ…愛してるよ、弥生。」
弥生 「私もです…有難う、政一さん…」
政一 「…良いよ……」
ー彼岸と此岸の往復切符はまだ売っているらしい…ー
ー最終章 一人は皆の為に、皆は一人の為に。ー
ー三月六日 海上 09:49ー
政一 「運動能力と反射神経…体力と持久力も底上げか。」
早霜 「純粋に強化された形ですね。」
政一 「だな…下がれ!!」
ガキン!!
政一 「誰だ!?」
?? 「……」ギロッ
?? 「……」ジャキッ
政一 「御話する気は微塵も無いってか!!」スラッ
?? 「待て!!」
政一 「今度は誰だ!?」
??→長波 「あたしは長波サマだぜ!!」
政一 「…長波……夕雲型四番艦か……」
長波 「ザラ、ポーラ…砲を降ろせ。其奴は味方だ。」
ザラ 「…分かった。」
ポーラ 「…は〜い……」
政一 「……で?」
長波 「あたしはアンタの事を知ってる。だから、アンタに
御願いが有るんだ…聞いてはくれないか?」
政一 「…聞くだけは聞いてやる。」
長波 「分かった…実は、あたし達は落伍しちまってな…
大鯨の護衛中だったから焦ってんだよ…」
政一 「…其奴を探せと?」
長波 「頼む!!あたしは如何なっても良いから!!」
政一 「……分かった。」
長波 「助かる!!」
政一 「駆逐艦はソナーを、巡洋艦は電探を使え!!」
川内 「了解!!」
不知火 「了解。」
長波 「そ、ソナー?」
政一 「深海棲艦に沈められている可能性も有る。」
長波 「……」
政一 「覚悟はしておけ。」
ー10:28ー
長波 「大鯨!!」
大鯨 「…長波、さん……」大破
政一 「ザラ級二人で大鯨を支えろ。戦艦は大鯨を中心に
輪形陣を組んで護衛しろ。巡洋艦は前方、駆逐艦は後方を
警戒しろ。さっさと拠点に戻るぞ。」
ー入渠場 12:44ー
大鯨 「…有難う御座います……」
政一 「…一人は皆の為に、皆は一人の為に…私は其れに
基づいて行動しただけだ。分かったらさっさと治す!!」
大鯨 「…不器用な人。」
政一 「不器用で結構。」
ー医務室 14:55ー
真琴 「…政一、大丈夫?」
政一 「多少。」
真琴 「何よ其れ…」
政一 「……もう直ぐ春、だな…」
雪菜 「うん…」
政一 「……」
浦風 「政一!!」バァン
政一 「浦風か…」
浦風 「政一!!」ギュゥゥゥ…
政一 「おいおい、如何したんだ?」
浦風 「……政一…良かった……」
政一 「……」なでなで
浦風 「…ウチの事、置いて行かんといて……」
政一 「…御免な。」
ー続くー
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