電ですが、鎮守府の空気が最悪なのです
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大変ブラックな内容で、キャラ崩壊を起こしています。
えげつないセリフも多く、そういうのが嫌いな方にはオススメできません。
エグいのが好きな方はどうぞ。
あと、那珂ちゃんに対する誹謗中傷、および那珂ちゃんファンの皆様を大変不快にさせてしまう記述が見られることを、ここに心よりお詫び申し上げます。申し訳ございません。
こんにちは、秘書艦の電です。今日は私の鎮守府のことを紹介するのです。
先月着任した提督さんはまだ新人さんで、艦これのことを勉強しながら艦隊の指揮を執っています。
戦略方針は「少数精鋭」。予備戦力を作らず、特定の艦娘を集中運用し、できるだけ短期間で高LVの艦隊を作ろうという目論見です。
もっともこの方針は、提督のドロップ運が悪すぎたため、そうせざるを得なかったという面もありますが・・・・・・
ともかく、この方針はある程度成功して、最初の頃は深海棲艦に対し有利に戦況を進めて来ました。
ですが、最近は思わぬところで暗礁に乗り上げてしまって・・・・・・そのせいもあり、鎮守府の空気が最悪なのです。
提督「頼む、今度こそ・・・・・・」
こちらは執務室です。提督さんがやつれた顔で、祈るように手を合わせながら主力艦隊の帰りを待っています。
今日の出撃は2-4。南西諸島、沖ノ島海域の攻略です。
鎮守府最強の艦娘で作られた第一艦隊「ハッピーラッキー艦隊」なら、突破はそこまで難しくはないはずです。
難しくはないはずなのですが・・・・・・
扶桑「失礼します。ハッピーラッキー艦隊旗艦、扶桑型戦艦、扶桑。ただいま帰投いたしました」
提督「来たか。戦果は?」
扶桑「・・・・・・申し訳ありません。攻略には至りませんでした」
ドンッ! 提督が机に拳を振り下ろす音が執務室に鳴り響きます。
もう見慣れた光景なので、驚いたりはしません。ただ、ちょっぴり悲しい気持ちになるのです。
扶桑さんも驚きはしませんが、うつむいてギュっと下唇を噛み締め、泣きそうなのを必死に堪えているように見えます。
提督「・・・・・・今度の原因はなんだ。隼鷹か、それとも金剛か」
扶桑「いえ、羅針盤が・・・・・・」
提督「あぁあああああああああああ・・・・・・またそれかっ!」
提督「これで何度目になる!? もう10回、いや20回は超えているぞ! もはや運が悪いどころの騒ぎではないっ!」
提督「何が原因だ!? wikiにも載っていないルート制御でも働いているのか!? それとも妖精さんの恨みでも買ったのか!?」
提督「それとも・・・扶桑! やはりお前たち不幸姉妹の仕業か!」
扶桑「いっ、いえ! そんなことは・・・・・・」
提督「もうそれ以外に考えられない! 思えばお前たちが来てから悪いことばかりが起きる!」
提督「戦艦は出ない、空母は出ない、大型艦建設で重巡が3連続で出る、うっかり龍驤を轟沈させてしまう・・・・・・」
提督「そしてこの羅針盤だ! 2-4回しをしてるんじゃないんだぞ! 俺は突破したいんだ!」
提督「仮に2-4回しをしてると考えても、ドロップの引きが悪すぎる! もう那珂ちゃんの顔は見飽きたんだよ!」
扶桑「わかっています! ですから、私達も必死に・・・・・・」
提督「何が必死だ! 今まで何度ボスにたどり着けた!? たったの3回だ! そしてその時に限って敗北している!」
提督「もうお前たち不幸姉妹が、艦隊そのものの運を下げているとしか思えない!」
扶桑「そ、そんなことはありません! 次は必ず突破してみせます! ですから・・・・・・」
提督「もういい、聞き飽きた! ああ、くそ・・・・・・だが、お前たちがうちの主力であることに変わりはない」
提督「お前たちにちなんだ艦隊名にしたのも、それだけ期待しているからだ。次は必ず責務を果たせ」
扶桑「は・・・・・・はい。必ず」
提督「もし、次も失敗するようなら・・・・・・お前をケッコンカッコカリ第一候補から外す。いいな」
扶桑「・・・・・・ッ!」
提督「俺はもう休む。お前たちも早めに入渠しておけ。下がっていいぞ」
扶桑「・・・・・・はい」
どんよりと暗い表情で、扶桑さんが執務室から出ていきます。その背中は心なしか小さく見えてしまいます。
提督「電。悪いがハッピーラッキー艦隊の補給処理を任せていいか」
電「はいなのです。あ・・・・・・燃料の備蓄が残り僅かなので、もしかしたら足りないかもです」
提督「那珂ちゃんは1号を除いて何人いる?」
電「えっと・・・・・・今日の出撃でまた1人着任されたので、6人です」
提督「すべて解体しろ。それで足しになるはずだ。それでも足りなければ赤城のメシを抜け。あいつは食い過ぎだ」
電「はいなのです・・・・・・・」
それだけ言うと、提督はぐったりと頭を落とし、もう何も言わなくなってしまいました。
沖ノ島海域が突破できないことで、だいぶ疲れがたまっているみたいです。
それにしても、嫌な任務を申し付けられてしまいました。
気が進みませんが、まずは補給に必要な量の確認のため、帰投したハッピーラッキー艦隊のドックへ向かいます。
ハッピーラッキー艦隊。元の名前は「不幸艦隊」でしたが、あまりにも縁起が悪いため、提督が改名しました。決して皮肉ではないのです。
その名の通り、通称「不幸姉妹」と呼ばれる扶桑さんと山城さんの2人を旗艦とする、鎮守府の主力艦隊です。
残る4人のメンバーは、正規空母の赤城さん、軽空母の隼鷹さん、航空戦艦の伊勢さん、高速戦艦の金剛さんです。
山城「おかえりなさい、お姉さま。提督に酷いこと言われませんでしたか?」
扶桑「山城・・・・・・やましろおおおおおおおぉぉぉぉ!」
ドックから扶桑さんの泣き声が聞こえてきます。提督さんが辛いように、扶桑さんもまた辛いのです。
扶桑「どうして・・・・・・どうしてこうなってしまうのよぉ・・・・・・! せっかく旗艦を任されたのに、こんなはずじゃ・・・・・・」
山城「お姉さま・・・・・・お姉さまのせいじゃありません。私が欠陥戦艦だから・・・・・・」
扶桑「いいえ、私が悪いのよ。私なんかに旗艦が務まるわけなかったのよ・・・・・・」
扶桑「うう、ごめんね山城。私のせいで、あなたまで不幸姉妹呼ばわりされてしまって・・・・・・」
山城「そんな、それこそお姉さまのせいじゃありません! 私がことあるごとに『不幸だわ』って呟いてしまうから・・・・・・」
隼鷹「それは言えてるよね~。山城ちゃん、アイテム発見のときにすら『不幸だわ』って言うし。いやーほんとキャラ立ってるわ~」
笑顔で話しかけてきた隼鷹さんを、山城さんがギロリと睨み返します。
隼鷹さんの良いところは、周りが暗くても明るさを損なわないところですが、それは逆に空気が読めないという欠点でもあります。
山城「隼鷹さん・・・・・・今日はお洋服がきれいね。昨日はボロボロになって帰投してたのに」
隼鷹「いや~私、装甲紙だからさー。それは言わないでくれよ~」
扶桑「・・・・・・隼鷹さん。あなた、もう少し自覚を持ったほうがいいのではないかしら」
隼鷹「え、自覚? なんの?」
扶桑「あなたが艦隊の足を引っ張っている、ということよ。自分で気づいていなかったのかしら?」
隼鷹「あ・・・・・・いや、私なりに頑張ってはいるんだけどさ。元が軽空母だから、なかなか上手くいかなくて・・・・・・」
扶桑「言い訳は聞きたくないわ。これまでの沖ノ島攻略で、あなたの大破によって帰投せざるを得なくなったことが5回ありました」
扶桑「提督のお叱りを受けるのは、旗艦である私なのよ? これ以上、私の顔に泥を塗らないでくれるかしら」
隼鷹「う・・・・・・うん、わかってるよ。努力はするからさ」
扶桑「努力してるのはみんな一緒です。私と提督が欲しいのは結果、それがわからないの?」
隼鷹「いや、そんなことない、そんなことないよ。もうヘマしないからさ、勘弁してよ、扶桑ちゃん。この通りだからさ、な?」
扶桑「・・・・・・ふん」
扶桑さんが隼鷹さんに辛く当たるのには理由があります。
それは、隼鷹さんが鎮守府の主力艦の中では最古参であると同時に、ケッコンカッコカリ第二候補の艦娘だからなのです。
隼鷹さんに対する提督の愛着は強く、軽空母でありながら主力として扱われていることからも伺えます。
もっとも、それは提督が赤城さん以外の正規空母を未だに引けていないのが原因なのですが・・・・・・
最古参であるため、LVも全艦娘の中で最も高く、度重なる改造も受けています。
軽空母なので、新しく正規空母の艦娘さんが着任すれば、主力艦隊からは外れる可能性もありますが、
それでも2軍のエースの座は約束されています。
あるいは扶桑さんより先にLV99に到達してしまい、ケッコンカッコカリの座を奪われるかもしれない・・・・・・
そのことを何よりも恐れている扶桑さんは、いつまで経っても隼鷹さんには冷たいままです。
金剛「みんな、元気出しなヨー! 扶桑も、暗い顔じゃ提督にますます嫌われてしまいマース!」
扶桑「金剛・・・・・・!」
金剛「それに、いくら提督に叱られたからって、八つ当たりは良くないデース!」
扶桑「八つ当たり、ですって・・・・・・ッ!?」
金剛「そうデース!隼鷹ちゃんをいじめるヒマがあったら、その傷んだ艦橋でも磨いておくべきデース!」
山城「なっ・・・・・・!」
金剛「Oh、Sorry! そのだるま落としみたいな艦橋、磨こうとしたらガラガラ崩れちゃうネー!」
金剛「扶桑の艦橋Brokenに巻き込まれないよう、山城も注意・・・・・・Shit! 山城の艦橋もジェンガみたいデース!」
扶桑「金剛・・・・・・! よくも、そんな口が私に利けたものね・・・・・・ッ!」
山城「不幸だわ・・・・・・!」
戦艦の中では一番の新顔、金剛さんは扶桑さん、山城さんと仲が悪く、よくこうして2人を煽っています。
どうやら提督LOVE勢なので、提督のお気に入りである2人に嫉妬しているみたいです。隼鷹さんとはそうでもないみたいですが。
不幸姉妹も金剛さんを嫌っています。それは煽ってくることとは別の理由があります。
扶桑「言っておくけど、あなたも艦隊の足を引っ張っている一人なのよ?」
金剛「What? 意味がワカリマセーン! 私、まじめに戦ってマース!」
山城「それ、冗談のつもりですか? あなたが大破したせいで帰投しないといけなくなった回数、隼鷹さんより多いんですから!」
金剛「Oh、それは仕方がないデース! だって私、みんなと違ってまだ若いネ!」
山城「LVが低いだけでしょ! 本当はおばあちゃんのくせに!」
金剛「それは前世の話ネ! 今は設定上、みんなより年下デース!」
扶桑「あら、そう。私、おばあちゃんだから弾が避けられないのだと思っていたわ。あなたの被弾率、異常だもの」
金剛「それはきっと2人のせいデース! 2人の不幸オーラで、私の運まで悪くなっていマース!」
扶桑「なんですって! 言うことに欠いて、このイギリス女・・・・・・!」
金剛さんは2人に比べ着任が大きく遅れたため、LVがまだ足りていないのは事実です。
ですが、それを考えても彼女の大破率は高く、提督が頭を抱える要因の一つです。
耐久が足りない、というのならわかります。ですが、戦闘の内容を見るに、彼女は他の艦と比べてやたら敵の攻撃を受けています。
そして、それを回避できていない。そのために大破、帰投を繰り返しているようなのです。
金剛さんの回避力は決して低くありません。むしろ扶桑さん、山城さんよりよっぽど高いくらいです。
それでも攻撃を受け、すぐ大破する。回避力はあくまで確率なので、そういうことも起こりえるのですが・・・・・・
扶桑「あなたの狙いはわかっているのよ! わざと大破して、その貧相な裸体を提督にアピールしてるんでしょう!」
扶桑「けれど残念だったわね。提督は巨乳属性よ。あなたのような貧乳に興味は示さないわ!」
金剛「Fuck! 私は貧乳じゃなくて美乳ネ! 提督もじきにこの美乳の良さに目覚めるはずデース!」
山城「とうとう本音が出たわね、このエセ帰国子女! その半端な外人訛りが鼻に付くのよ!」
金剛「なんだとこのFuckin Cunts! あんたたちこそ、大破グラの必死さに呆れてしまいマース! 脱げばいいってもんじゃないデース!」
扶桑「あなたの大破グラのほうがよっぽど必死よ! 露骨に女の子座りして、あざといったらないわ!」
金剛「黙れBitch! こっちも必死デース! お前のようなお化け艦橋に提督は渡さないデース!」
扶桑「言わせておけば、この紅茶中毒・・・・・・!」
伊勢「や、やめようよ、みんな。私達は同じ艦隊の仲間でしょ? もっと仲良くしようよ。な、金剛」
金剛「うるさいネ! 邪魔するなデース!」
伊勢「そんな・・・・・・旗艦の扶桑ならわかってくれるよね? 私達はこんなふうに争うべきじゃない、そうでしょ?」
扶桑「・・・・・・」
伊勢「あの・・・・・・ほら、山城からも何か言ってよ」
山城「・・・・・・」
伊勢「えっと、その・・・・・・」
伊勢さんは、いい人です。仕事もちゃんとこなしてますし、大破することもほとんどありません。悪いのは、着任したタイミングと艦隊です。
戦艦の中では最初に山城さん、翌日に扶桑さんが着任し、1週間もの間を開けて伊勢さんがやって来ました。
ちなみに金剛さんが来たのはその2週間も後です。不幸姉妹がドロップ率を下げている疑惑はこのときから始まっています。
御存知の通り、扶桑さんは前世の記憶から日向さん、伊勢さんに対抗意識を持っていて、それは山城さんも同じです。
ですから、2人は新しく艦隊に配属した伊勢さんを徹底的に無視しました。
当時、まだ艦隊名が「不幸艦隊」だった頃、そのメンバーは隼鷹さん以外、みんな重巡洋艦でした。
重巡の子が戦艦である扶桑さんに逆らえるはずもなく、みんなも伊勢さんを無視することを強要されていました。
あの頃が一番辛かった、そう伊勢さんは語ります。まだ見ぬ日向さんのことが恋しくて、夜中、何度も一人で泣いたそうです。
今はメンバーも変わり、状況はある程度改善されていますが、扶桑さん、山城さんに無視されていることに変わりはありません。
できれば助けてあげたいのですが・・・・・・下手に手を出すと、私まで標的にされてしまうのです。
赤城「あら、電さん。来てたんですか?」
電「あ、赤城さん。お疲れ様なのです。補給量の確認に来たんですが・・・・・・」
赤城「ああ、なるほど。みんながいつものようにケンカしてるから、なかなか近づけなかったんですね」
電「はい。もっと仲良くしてくれるといいんですが・・・・・・」
赤城「そうですね。はい、これ。みんなの補給量の詳細です。帰ってきてからすぐチェックしておきました」
電「あ、ありがとうなのです。助かりました・・・・・・あ、赤城さんの必要補給量、桁が一個多いですね。修正しておきます」
赤城「・・・・・・・・・・・・チッ」
赤城さんは艦隊の争い事には関わりを持とうとしません。たぶん、食べること以外に興味がないんだと思います。
戦闘においては、やはり正規空母なので、艦隊の中では一番仕事をしています。
ハッピーラッキー艦隊の裏番的存在かもしれません。
電「えっと、赤城さんと他のみなさんの分を足して・・・・・・あ、やっぱり足りないみたいです」
赤城「足りないって?」
電「実は燃料の備蓄が少なくて、全員には行き渡らないのです」
赤城「そうなんですか。私の分はありますよね?」
電「あの、言いにくいんですが・・・・・・足りなかったら、赤城さんのご飯を抜けと提督に言われてて・・・・・・」
赤城「・・・・・・電さん」
赤城さんは静かに手を伸ばし、そっと私の頬に触れました。冷たい手のひらが愛でるように私を撫でます。
表情は笑顔のままですが、その瞳は真冬の海のように冷たく、本当は笑っていないことが明白でした。
赤城「私の分は、ありますよね・・・・・・?」
電「あ、あの・・・・・・少しだけ待ってください。すぐ用意しますから」
赤城「急いでくださいよ? 私、お腹が空いてしまいました」
私は逃げるようにハッピーラッキー艦隊のドックから離れました。というか逃げました。
お腹の空いている赤城さんと出会うことは、飢えた獣に出くわすことと同義です。
生き延びるためには、食料を持っているならそれを渡すか、ないなら逃げるしかありません。
そうしなければ、食料になってしまうのは自分自身なのです。
さて、赤城さんから離れることはできましたが、このまま補給を怠っていると、本当に私が食料にされかねません。
とても憂鬱なのですが・・・・・・予定通り、那珂ちゃんを解体しに行きたいと思います。
続く
現実逃避で書きました。よかったら忌憚なきご意見をお待ちしています。
女所帯の職場って一歩間違えるとこんな泥沼になるんだよなぁ……。
上司がクズだと部下もクズになりやすいのはどの世界でも同じなんだよなぁ
この手のSSはただの悪口合戦になることが多いけど、凄くいいかんじにギスギスしてて面白い。
続きみたい
自分の運のなさを艦娘のせいにする無能提督がいるのはここですか?
面白いのです!
応援しているのです!
扶桑姉妹好き何ですよね?( ̄。 ̄;)
凄い胃に来る…でも読んじゃう…
5回以上は読み直している作品
読む人を選ぶ話だけれども、個人的には艦これSS最高傑作の内の1つだと思っている