2016-06-01 01:15:56 更新

概要



前大会
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451576137/


※注意事項
・一部に過激な暴力表現、グロテスクな描写を含みます。予めご了承ください。
・特定のキャラクター、及び国家、人種、格闘技を貶める意図がないことをご理解ください。
・あなたの嫁が顔面を割ったり割られたり、あるいはもっと酷いことになる恐れがあります。ご注意ください。
・一部に著しいキャラクター崩壊が見受けられます。ご容赦ください。


※階級について
艦種を実際の格闘技における重量階級に当てはめており、この作品内では艦種ではなく階級と呼称させていただきます。

戦艦級=ヘビー級

正規空母級=ライトヘビー級

重巡級=ミドル級

軽巡級、軽空母級=ウェルター級

駆逐艦級=ライト級


前書き


UKF無差別級トーナメント特別ルール一覧

・今大会は階級制限のない無差別級とする。階級差によるハンデ等は存在しない。
・今大会のルールは限りなく実戦に近く、公正な試合作りを目指すために設けられる。
・ファイトマネーは1試合につき賞金1000万円の勝者総取りとする。
・試合場は一辺が8m、高さ2mの金網で覆われた8角形のリングで行われる。
・試合後に選手は会場に仮設されたドックに入渠し、完全に回復した後に次の試合に臨むものとする。
・五体を使った攻撃をすべて認める。頭突き、噛み付き、引っかき、指関節等も認められる。
・体のどの部位に対しても攻撃することができる。指、眼球、下腹部、後頭部、腎臓などへの攻撃も全て認める。
・相手の衣服を掴む行為、衣服を用いた投げや締め技を認める。
・相手の頭髪を掴む行為は反則とする。
・頭髪を用いる絞め技等は反則とする。
・自分から衣服を脱いだり破く行為は認められない。不可抗力で衣服が脱げたり破れた場合は、そのまま続行する。
・相手を辱める目的で衣服を脱がす、破く行為は即座に失格とする。
・相手に唾を吐きかける、罵倒を浴びせる等、相手を侮辱する行為は認められない。
・武器の使用は一切認められない。脱げたり破れた衣服等を手に持って利用する行為も認められない。
・試合は素手によって行われる。グローブの着用は認められない。
・選手の流血、骨折などが起こっても、選手に続行の意思が認められる場合はレフェリーストップは行われない。
・関節、締め技が完全に極まり、反撃が不可能だと判断される場合、レフェリーは試合を終了させる権限を持つ。
・レフェリーを意図的に攻撃する行為は即座に失格となる。
・試合時間は無制限とし、決着となるまで続行する。判定、ドローは原則としてないものとする。
・両選手が同時にKOした場合、回復後に再試合を行うものとする。
・意図的に試合を膠着させるような行為は認められない。
・試合が長時間膠着し、両者に交戦の意志がないと判断された場合、両者失格とする。
・ギブアップの際は、相手選手だけでなくレフェリーにもそれと分かるようアピールしなければならない。
・レフェリーストップが掛かってから相手を攻撃することは認められない。
・レフェリーストップが掛からない限り、たとえギブアップを受けても攻撃を中止する義務は発生しない。
・試合場の金網を掴む行為は認められるが、金網に登る行為は認められない。
・金網を登って場外へ出た場合、即座に失格となる。
・毒物、および何らかの薬物の使用は如何なる場合においても認められない。
・上記の規定に基づいた反則が試合中に認められた場合、あるいは何らかの不正行為が見受けられた場合、レフェリーは選手に対し警告を行う。
・警告を受けた選手は1回に付き100万円の罰金、3回目で失格となる。
・罰金は勝敗の結果に関わらず支払わなくてはならない。3回の警告により失格となった場合も、300万円の罰金が課せられる。

・選手の服装は以下の服装規定に従うものとする。
①履物を禁止とし、選手はすべて裸足で試合を行う。
②明らかに武器として使用できそうな装飾品等は着用を認められない。
③投げ技の際に掴める襟がない服を着用している場合、運営の用意する袖なしの道着を上から着用しなければならない。
④袖のある服の着用は認められない。
⑤バンデージの装着は認められる。



大会テーマ曲

https://www.youtube.com/watch?v=7IjQQc3vZDQ





明石「全国一千万人のUKFファンの皆様、本日はようこそお越しくださいました!」


明石「本日は第三回UKF無差別級グランプリ出場選手発表、ならびにトーナメント組み合わせ抽選会を行います!」


明石「その後には本戦出場者以外の選手により、開幕戦を1試合行わせていただきます! そちらもお見逃しなく!」


明石「実況はお馴染み明石、解説は前大会では審査員長を勤めていただいた、香取さんにお越しいただいております!」


香取「香取です。今回は審査員長と兼任する形で解説者を勤めさせていただくわ」


香取「副審査員長として、妹の鹿島をリングサイドの審査員席にスタンバイさせるつもりだから、非常時の審査の方も任せておいてね」


明石「よろしくお願いします! 今回は3回目の無差別級グランプリということで、何かルール変更などはありますか?」


香取「基本的には変わりないけれど、1つだけルールが追加されたわ。毒物、薬物の使用規制ね」


香取「前回の比叡さんの例があるから、あれを真似して体に毒を仕込むような選手が現れたら収集がつかないことになるもの」


香取「ということで、毒物、および何らかの薬物の使用が発覚したら即失格です。今回はさすがにそんなことをしてくる選手はいないとは思うけれど」


明石「なるほど、ありがとうございます。ルールもそうですが、ファイトマネーや優勝賞品に関しても過去大会と同じものとなっております!」


明石「ファイトマネーは1000万円の勝者総取り! 敗者には一切支払われることはありません!」


明石「更に優勝選手には賞金10億円! 副賞には伊良湖さんと間宮さんの給糧艦1年フリーパス券が贈与されます!」


明石「艦娘ならば誰もが欲しがる富と栄光が手に入るわけですが、それを手にするのは勝者のみ!」


明石「ファイターの方々には全身全霊を以って優勝を目指していただきたく思います! では、さっそく出場選手の発表をさせていただきましょう!」


明石「今大会は初参加選手が多数いるため、まずはUKFの正式所属選手からご紹介いたします!」



明石「エントリーNO.1、正規空母級! UKF戦績20戦18勝2敗、K-1戦績28戦27勝1ドロー! あの立ち技絶対王者が帰ってきた!」


明石「戦慄のムエタイがリングを緋色に染め上げる! もはやK-1のベルトなど興味はない、欲しいのはUKFチャンピオン、即ち艦娘最強の称号のみ!」


明石「一航戦の名に震え慄くがいい! ”緋色の暴君” 赤城ィィィ!」



明石「エントリーNO.2、戦艦級! UKF戦績31戦21勝10敗! 永遠に沈まぬ不屈の戦艦、悲願の優勝へ向けて再始動!」


明石「幾多の勝利と敗北を乗り越え、ここまで来た! 不可能を可能に変える奇跡の戦艦が、王者の栄冠を求めて最後の戦場に足を踏み入れる!」


明石「もう敗北は許されない! 飽くなき勝利への執念は、最強の称号を勝ち取ることができるのか! ”不沈艦” 扶桑ォォォ!」



明石「エントリーNO.3、戦艦級! UKF戦績7戦5勝2敗! 立ち技格闘界の裏王者が今、最強の名を空手に取り戻す!」


明石「凶器と化すまで鍛え抜かれたその五体! いかなる流儀、いかなる相手であろうとも、この打撃で全てを打ち砕く!」


明石「孤高の空手家はヴァーリ・トゥードを制することができるのか! ”殺人聖女” 榛名ァァァ!」



明石「エントリーNO.4、戦艦級! UKF戦績3戦3勝0敗! 戦艦級初代王者、日向を超える柔術テクニックにて王者奪還を狙う!」


明石「グラウンドもスタンドも関係ない! この手足が絡みつくとき、貴様は逃げ場のない関節地獄へと引きずり込まれるのだ!」


明石「今一度、格闘界は柔術の脅威に戦慄する! ”東洋のクラーケン” 伊勢ェェェ!」




明石「エントリーNO.5、戦艦級! UKF戦績1戦0勝1敗! あの柔道王が山籠りより下山! UKFグランプリに再挑戦だ!」


明石「柔道こそ最強の格闘技! 組めば即投! 極めれば即折! デスマッチ無敗の柔道技から逃れる術など有りはしない!」


明石「前大会初戦敗退の屈辱を晴らせるか! ”死の天使” 大和ォォォ!」




明石「エントリーNO.6、正規空母級! UKF戦績9戦6勝3敗、K-1戦績11戦9勝2敗! 艦娘K-1新王者に輝いた、不死身のファイターの登場だ! 」


明石「打撃によるダウン経験、未だなし! 死してなお立ち続ける、不壊のファイターを倒せる者は果たして現れるのか!」


明石「五航戦の強さを知らしめる時が来た! ”ウォーキング・デッド” 翔鶴ゥゥゥ!」





明石「エントリーNO.7、軽巡級! UKF戦績35戦34勝1敗! UKF一の頭脳派ファイターが、優勝への最適解を弾き出す!」


明石「我こそはリング上の殺し屋! せいぜい足掻いてみせるがいい! 貴様の取る一挙一動は、全て私の描いたシナリオでしかないのだ!」


明石「幾多のファイターを破滅させてきた、殺人コンピューターの計算に狂いなし! ”インテリジェンス・マーダー” 大淀ォォォ!」




明石「エントリーNO.8、軽巡級! UKF戦績22戦16勝6敗! スキャンダルまみれのアイドルプロレスラー、名誉挽回を賭けてグランプリ参戦! 」


明石「人気を失い、ファンを失い、名声は地に落ちた! もはや失うものは何もない! ただ貪欲に、ファイターとしての強さを示すのみ!」


明石「得意の空中殺法が炸裂する! ”堕天のローレライ” 那珂ぁぁぁ!」




明石「エントリーNO.9、駆逐艦級! 駆逐艦級グランプリの新王者が、その勢いを借りて無差別級制覇を狙う!」


明石「階級の不利など弱者の戯れ言! 冴え渡る無限のテクニックは、最軽量級にして最強という奇跡を成し遂げられるのか!」


明石「恐れ知らずのビッグマウスにも注目だ! ”氷の万華鏡” 吹雪ィィィ!」




明石「エントリーNO.10、戦艦級! UKF戦績45戦45勝0敗! 誰も疑うことのない、最強の艦娘が全てのファイターの前に立ち塞がる!」


明石「彼女こそ究極の体現者! 私に小細工など通用しない、勝ちたければ、己の全てを賭けて掛かって来るがいい!」


明石「UKF無差別級絶対王者、前人未到の3連覇に挑む! ”ザ・グレイテスト・ワン” 長門ォォォ!」




明石「以上、10名がUKF所属選手! これより紹介するのは、いずれもUKF初参戦となる選手です!」





明石「エントリーNO.11、軽空母級! 流儀、中国拳法! 酔いどれファイターがUKFトーナメントに乱入だ!」


明石「飲めば飲むほど強くなる! その拳足は舞鳥のごとく優雅なれど、1つ1つが必殺の一撃! 中国拳法の深淵、とくと味わうがいい!」


明石「私の技に酔いしれろ! ”酔雷の華拳” 隼鷹ォォォ!」




明石「エントリーNO.12、重巡級! 流儀、古流柔術! 歴史の片隅に忘れ去られた神技が今、現代に蘇る!」


明石「武の真髄は古流にあり! 傷つくことも、傷つけることも必要ない! 完成された技術の前に、相手はただ平伏すのみ!」


明石「活殺自在の秘術が現代格闘技に挑む! ”銀眼の摩利支天” 古鷹ァァァ!」




明石「エントリーNO.13、重巡級! 流儀、截拳道! 陰府を従え進み出る、その者の名は死! 第四の封印が解かれ、妙高姉妹の死神が姿を現す!」


明石「重巡級王者、足柄を野試合にて瞬殺! その実力は全くの未知数! 彼女がリングに上がるそのとき、UKFに不吉な風が吹き荒ぶ!」


明石「冥府より来たりし死神は、いかなる戦いを我々に見せるのか! ”黒死蝶” 羽黒ォォォ!」




明石「エントリーNO.14 戦艦級! 流儀、剣闘術! イタリア最強の艦娘ファイター、満を持してUKFへ来日!」


明石「かつての世界最強国家、神聖ローマ帝国! その流れを汲むイタリアが弱いなど有り得ない! それを今、リングにて証明しよう!」


明石「最強の名はイタリアの地に持ち帰らせてもらう! ”闘神” ローマァァァ!」




明石「エントリーNO.15、戦艦級! 流儀、フリーファイト! とうとう奴らが来てしまった! 鉄底海峡より来たりし真の黒船、UKFに来航!」


明石「こなしたデスマッチは200戦! ルール無用の素手喧嘩にて無数の屍を積み上げてきた、正真正銘の魔人がUKFのリングに降り立つ!」


明石「我らの艦娘ファイターは、深海棲艦の女王を迎え討つことができるのか! ”黒鉄の踊り子” 戦艦棲姫ィィィ!」




明石「エントリーNO.16、正規空母級! 流儀、軍隊格闘術! ナチス・ドイツより解き放たれし新たなる怪物!」


明石「冷たき瞳に宿るのは闘志か、それとも狂気か! 思い起こされるはかつての悪夢! あの最凶の艦娘をも、この新造艦は凌駕するというのか!」


明石「地獄の門が再び開かれる! ”キリング・ドール” グラーフ・ツェッペリィィィン!」




明石「以上、16名! ただいまご紹介した選手により、トーナメント勝ち抜き方式で優勝を争うものとします!」


明石「初出場の選手が多数参加しておりますが、香取さん。注目選手はどなたかと思われますか?」


香取「難しいわね。運営が喧伝していた『優勝を狙える選手のみを集めた』って言葉通り、一筋縄じゃ行かない強者が勢揃いしているわ」


香取「しいて言うなら、目につくのは海外艦勢ね。ドイツのグラーフ・ツェッペリンに、イタリアのローマさん。おまけに深海棲艦の戦艦棲姫よ」


香取「ドイツ、イタリアはともかく、深海棲艦からも出場者が出てくるとは思わなかったわ。正真正銘、私達の敵ですものね」


明石「何でも、戦艦棲姫さんは単身でUKFに出場を表明したそうです。デスマッチのライバルだった大和選手を追いかけてきたみたいで……」


香取「なるほど、そういう経緯ね。あの大和さんのライバルとなれば、実力は相当なものでしょう」


香取「グラーフ・ツェッペリンも警戒せざるを得ないわね。あのビスマルクさんと同じ研究機関の出身なんでしょう? よく運営が出場を認めたわね」


明石「ドイツ側からの情報によると、決してビスマルク選手のような凶暴性はない、とのことです」


明石「むしろ礼儀正しく、理性的で、対戦相手に過剰な暴力を振るうようなことは決してないと……」


香取「どこまで信用していいのかしらね、それ」


明石「まあ、まともな選手ではなさそうですよね……UKF正式所属の選手はどうですか?」


香取「そうね、やっぱり扶桑さんの活躍に期待したいところだわ。数多くの伝説的な名勝負を残しながらも、未だに優勝だけは逃し続けているもの」


香取「今度こそ、という想いはとても強いでしょうね。彼女には頑張ってほしいわ。もちろん、他の選手だってそうよ」


香取「同じく優勝を逃している赤城さん、破格の強敵に敗北を喫した大和さんに榛名さん。K-1の新王者になった翔鶴さんも優勝は悲願のはず」


香取「全選手が等しく優勝を狙っているわ。果たして、現王者の長門さんはどう迎え討つのかしらね」


明石「長門選手がこの大会で優勝すれば前人未到の三連覇達成となります。そちらにも大きな期待が掛かるところですね」


香取「ええ。どの選手も、長門さんを倒せなければ優勝できない、ということは理解しているはずだわ。何らかの対策を講じていることでしょう」


香取「結局、一番の見所はそこでしょうね。長門さんを倒す選手は果たして現れるか否か」


香取「あとは組み合わせの運次第ね。選手同士の相性もあるし、誰が勝ち抜けるかはそこで大きく左右されるんじゃないかしら」


明石「確かにそうですね。ではそろそろ、トーナメント組み合わせ抽選会の放送に移りたいと思います!」


明石「抽選会は大会運営委員長により、完全なランダムで行われました! 偏った組み合わせを防ぐため、以下のルールを適用しております!」




・長門は最終枠に固定とし、15名で抽選を行うものとする。


・抽選の際、運営長は自己判断で一度だけ対戦カードの引き直しをすることができる。

 それは選手Aに対して選手Bを引き、その対戦カードが思わしくないと判断したとき、選手Bの抽選のみを引き直すことができるというものである。

 最初に引いた選手の引き直し、あるいは既に確定させた対戦カードの引き直しは認められない。


・全ての対戦カード確定後、運営長は1回戦の対戦カードを独断で選んだ対戦カードと入れ替えることができる。

 長門が出場する最終戦枠はこの候補から除外される。



抽選にお借りしたツール:とっすぃ☆しゃっふぉ~

製作者様サイト:http://kaqule-app-sqr.seesaa.net/category/4900315-1.html




明石「これらは念の為に設けられたルールですので、必要がなければ適用しないこともある、ということをご理解ください!」


香取「こういうルールを作っておかないと、引き運次第で変な組み合わせになるものね。1回戦でいきなり長門さんが出たら困っちゃうもの」


明石「ええ。大会運営委員長は大型艦建造で重巡しか出したことがないほど引き運がありませんから、これくらいの措置はしておかないとまずいです」


香取「ああ、そう……ともかく、既に抽選は終わっていて、今からそれを公開するということね」


明石「そうなります。当然のことですが、組み合わせ内容に運営側の恣意的要素は一切絡んでいません」


明石「抽選には上記のフリーソフトが使用されており、出場選手が被らないようランダムで選択されるようになっています」


明石「抽選会の録画は数回のリハの後、一発撮りで行われました。運営の都合のいい組み合わせになるまでやり直すようなことはしておりません!」


香取「一応聞いておくけど、その証拠は?」


明石「特にないんですが……そこは信じていただくしかありません。動画はノーカット編集ですので、その点は信用できるかと……」


明石「付け加えると、何度かリハをしてみた結果、運営が頭を抱えるような組み合わせは必ず発生するので、やり直しに意味はないとのことです」


香取「ああ、そうなの。何はともあれ、見てみましょうか」


明石「香取さんは組み合わせに関しては、どの点に注目すべきと思われますか?」


香取「やっぱり海外艦勢ね。未知数の相手と初戦に当たることで得する選手なんて、いるはずもないわ」


香取「グラーフ・ツェッペリン、戦艦棲姫は誰もが避けたい相手でしょう。長門さんの初戦の相手が誰になるかも気になるわね」


香取「さっきも言ったけど、選手の実力と同じくらい、対戦の組み合わせは勝ち抜けの結果を左右するはず。外れクジを引いてしまうのは誰かしら」


明石「ありがとうございます。それでは、抽選会の放送に移りましょう!」


明石「トーナメント組み合わせ抽選会は以下のURLよりご覧になれます! 視聴していただくため、30分ほど時間を取らせていただきます!」


明石「それでは抽選会動画を公開します! 誰が誰と相対するのか、ぜひご自身の目でお確かめください!」





第3回UKF(Ultimate 艦娘 Fighters)無差別級グランプリ トーナメント抽選会


ニコニコ動画

http://www.nicovideo.jp/watch/sm28927332


アカウントを持っていない方

http://nicoviewer.net/sm28927332


Youtube(字幕のみ)

https://www.youtube.com/watch?v=lIJXTvxIt7g


※字幕が小さくなりすぎた箇所がありますので、できるだけ大画面、高画質設定でご視聴ください。







.........................┏━ 扶桑

....................┏┫

....................┃┗━ 大和

...............┏┫

...............┃┃┏━ 赤城

...............┃┗┫

...............┃.....┗━那珂

..........┏┫

..........┃┃.....┏━ ローマ

..........┃┃┏┫

..........┃┃┃┗━ 戦艦棲姫

..........┃┗┫

..........┃.....┃┏━ 大淀

..........┃.....┗┫

..........┃..........┗━グラーフ・ツェッペリン

優勝┫

...........┃..........┏━ 榛名

...........┃.....┏┫

...........┃.....┃┗━ 翔鶴

...........┃┏┫

...........┃┃┃┏━ 隼鷹

...........┃┃┗┫

...........┃┃.....┗━ 伊勢

...........┗┫

................┃.....┏━古鷹

................┃┏┫

................┃┃┗━ 吹雪

................┗┫

.....................┃┏━ 羽黒

.....................┗┫

..........................┗━ 長門






明石「ご視聴、お疲れ様でした! トーナメントの組み合わせは以上のように確定いたしました!」


明石「どれも注目の対戦カード揃いかと思われますが、香取さん。トーナメント表を改めてご覧になられて、何か思うところはありますか?」


香取「そうね。少し偏った組み合わせになっちゃったかしら。海外艦勢の3人がみんなAブロックに入ってしまったわね」


香取「個人的には扶桑さんに頑張ってほしいけど、ここを勝ち抜くのは本当に厳しいわよ。海外艦だけじゃなく、大和さんや赤城さんまでいるもの」


香取「未知数の選手と強豪選手のぶつかり合いになるわね。最後に誰が残るのか、まったく予想が付かないわ」


明石「そうですね。一番引いちゃいけなさそうなグラーフ選手を大淀さんが引いてしまいましたけど、どう思います?」


香取「……きっと大丈夫よ。何だかんだ言って、大淀さんは強いんだから」


明石「えーっと、はい。では、Bブロックについてはどう思われます?」


香取「Aブロックとは対照的に、正統派ファイターが揃ってるって印象かしら。どの対戦カードも激闘になりそうね」


香取「榛名さんVS翔鶴さんなんて、ちょっとした立ち技頂上決戦じゃない。1回戦にはもったいないくらいの組み合わせよ」


香取「長門さんに目が行きがちなBブロックだけど、駆逐艦級王者になった吹雪さんや、王者奪還を狙う伊勢さん、初参加の選手にも注目したいわね」


明石「そういえば、大会運営委員長はグラーフ選手と同じくらい羽黒選手を気にしていましたね。理由は何なんでしょう?」


香取「さあ……確かに変ね。グラーフさんはともかく、戦艦棲姫を差し置いて羽黒さんを警戒するのはちょっと不自然だわ」


香取「重巡級王者の足柄さんを瞬殺したのは間違いなく凄いけど……情報が少なすぎるわね。私にはまだ判断できないわ」


香取「少なくとも、グランプリに出場するからには相応の実力者なんでしょう。あるいは、初戦で長門さんが落ちる可能性だってゼロじゃないわ」


香取「もし本当に長門さんが序盤で落ちれば、Bブロックは混沌と化すでしょうね。こちらも予想が付かないブロックだわ」


明石「やはり一番の焦点は長門選手ということですね。長門選手を倒す選手は現れるか否か、と」


香取「結局はそうなっちゃうかしら。長門さんには弱点も攻略法もない。勝利できるのは純粋な強さを持った選手だけでしょう」


香取「その選手は年々実力を増しつつあるUKF所属のファイターなのか、あるいは未知数の初参戦ファイターか、それともそんな選手は現れないのか」


香取「少なくとも、優勝を狙っているのはどの選手も同じね。たった1人しか手に入れることの出来ない栄冠、誰が手に入れるのか今から楽しみだわ」


明石「ありがとうございます。さて、これにてトーナメント組み合わせ抽選会は終了となります!」


明石「エキシビジョンマッチの候補者については、Aブロック1回戦終了の後に発表される予定となっております!」


明石「前大会との相違点ですが、エキシビジョンマッチの候補には、通常の候補選手だけでなく、1回戦敗退選手も含まれます!」


明石「今回のランダム抽選により、相性の関係で十分な実力を発揮できなかった選手、というのは高い確率で出現するかと思われます!」


明石「そのような場合を想定して、このような敗退選手の救済措置となるシステムを設けさせていただきました!」


明石「もちろん、選ばれるかどうかはリクエスト次第です! リクエスト方法に関しては、候補者発表と併せてお伝えさせていただきます!」



明石「それでは! これより、第三回UKF無差別級グランプリ、開幕戦を行いたいのですが……少々準備に時間が掛かっているとのことです!」


香取「それは大会運営委員長お得意の遅刻と捉えてもいいのかしら?」


明石「構いません! ということで、大変申し訳ありませんが24:00までお時間をいただきたいと思います!」


明石「開幕戦の準備が整うまで、しばしご歓談ください! では、一旦放送を休止します! 約1時間後にお会いしましょう!」


香取「それまでにはちゃんと間に合わせてほしいわね」




明石「皆様、大変お待たせしました! これより第三回UKF無差別級グランプリに先駆けて、開幕戦を行います!」


香取「大会のための景気付けみたいなものね。やっぱり、出場選手と組み合わせの発表だけじゃお客さんは満足しないでしょうし」


明石「開幕戦ということで、試合ルールはトーナメントと同じものが適用されます! 今夜限りのスペシャルワンマッチをどうぞお楽しみください!」


香取「出場者はどちらも本戦枠から漏れた選手だけど、それでも実力者よ。本選出場選手にも引けを取らない試合を見せてほしいわね」


明石「それでは、赤コーナーより選手入場! 初代戦艦級王者の登場です!」




試合前インタビュー:日向


―――今大会では出場枠を伊勢選手に譲られ、ご自身は引退の意志を固められているとのことですが、それはどういった心境の変化でしょうか。


日向「単純なことさ。伊勢は私より強い。私より強いなら、きっと誰にも敗けないだろう。優勝争いは伊勢に任せるよ」


日向「選手としてのトレーニングは続けるつもりだが、これからはブラジリアン柔術の指導をメインにやっていこうかなと思っているんだ」


日向「最近は全盛期に比べて、柔術の人気が下火でね。ブラジリアン柔術の黒帯を持つ者は残念でならない」


日向「今後は試合に出るのはそこそこに、柔術の発展に向けて活動していきたいんだ。ブラジリアン柔術は最強の格闘技だからね」


日向「この試合は、事実上の引退試合になるかも知れないな。伊勢の優勝への手向けになればいいんだが」


―――試合に向ける意気込みをお聞かせください。


日向「負けられないね。伊勢の晴れ舞台を前にして、私がここで醜態を晒すわけにはいかないだろう?」


日向「伊勢が私より強いと言っても、私がこの試合で負ければ、その響きは酷く薄っぺらいものになってしまうだろう」


日向「戦艦級王者は長門に奪われたが、初代王者として、今までその名に恥じない戦いをしてきたつもりだ……比叡との試合はノーカンにしてくれ」


日向「私は伊勢以外なら誰であろうと勝ってみせる。この試合の勝利を伊勢に捧げたい」



日向:入場テーマ「Cradle Of Filth/Cthulhu Dawn」


https://www.youtube.com/watch?v=o4iJJceQmkI



明石「最強の格闘技とはブラジリアン柔術である! いま再び、それを証明するために1人の艦娘がリングへ立つ!」


明石「スタンド、寝技、ともに隙はなし! グラウンドに引きずり込まれれば最後、何も出来ずに絞め落とされるという、敗北の運命が待っている!」


明石「初代戦艦級王者、推して参る! ”戦慄のデビルフィッシュ” 日向ァァァ!」


香取「柔術家の日向さんね。長門さんの参戦以前、最強の艦娘とは彼女のことを指す言葉だったわ」


香取「今や長門さんの登場や赤城さん、扶桑さんの台頭で陰が薄くなってしまったけど、彼女も戦艦級指折りの強豪選手よ」


明石「第二回グランプリでは、格下と思われた比叡選手を相手に初戦敗退という結果でしたが……まあ、あれは事故みたいなものですよね」


香取「負けは負けかもしれないけど、不運な事故なのは間違いないわね。事前に比叡さんの情報を知っていれば、一瞬で絞め落としてみせたでしょう」


香取「あるいは、立ち技でKOすることもできたかもしれないわ。日向さんはボクシングのテクニックも磨いているそうだから」


明石「らしいですね。最近では、プロボクサーとしてのライセンスを取ったとか。柔術の第一人者としては矛盾する行為にも見えますが……」


香取「そんなことはないでしょう。柔術家に取って、仮想敵である打撃格闘家のファイトスタイルを学ぶことは重要な事よ」


香取「日向さんのボクシングテクニックは、柔術の技を更に深めるツールであり、寝技に引き込むための補助技になっているんでしょう」


香取「試合運びとしては、まずボクシングの技で立ち回り、パンチで相手を崩してから寝技に引き込み、そして絞め落とす」


香取「それが日向さんの勝利するシステムね。総合格闘では極めて有効な戦術でしょう」


香取「本戦に出てくれないのがもったいない強豪選手よ。さて、相手は初代王者相手にどう戦うのかしら」


明石「ありがとうございます。それでは、続いて青コーナーより選手入場! 深海棲艦デスマッチより生還を果たした喧嘩屋の登場です!」




試合前インタビュー:霧島


―――最近まで深海棲艦デスマッチに参加されていたそうですが、そこでの戦績に関してお聞かせください。


霧島「10試合ほど戦って、全て勝ちました。とても刺激的で、有意義な体験でしたね」


霧島「深海棲艦では最強と言われている戦艦棲姫さんとはすれ違う形で戦い損ねましたが、それでもなかなか楽しい方々と戦うことができました」


霧島「学ぶべきことはUKFより多かったように思います。やはり私の理論は間違っていませんでしたね」


―――デスマッチで学ばれたというのは、具体的にどのようなことでしょうか。


霧島「格闘技術なんてものは、闘争において些末事に過ぎないということです。必要なのは、本能に根ざした凶暴性を如何に発揮するかですね」


霧島「相手を殺傷できる攻撃を躊躇うことなく繰り出せるかどうか。これこそが闘争を制するに当たって最も重要なことです」


霧島「それから、今までの私は相手を殺す気で試合に臨んでいたんですけど、その精神の在り方は間違いだとわかりました」


―――間違い、とはどういうことですか?


霧島「そこまで気負うことはなかったんですよ。私はもっとリラックスして試合に臨むべきでした」


霧島「相手を殺す、ではなく、『殺しちゃってもいいや』くらいの気持ちがちょうどいいんです。気を張らず、自然体で殺意を持つのが肝心です」


霧島「今日の相手は日向さんでしたっけ。可哀想ですね、姉の前で無様な姿を晒すことになるなんで。お悔やみ申し上げます」


霧島「でもまあ、徹底的にやらせていただきますね。試合が終わった後に、日向さんの原型が残っていればいいんですけど」




霧島:入場テーマ「KoRn/Right Now」


https://www.youtube.com/watch?v=VRPxao3e_jY




明石「本能のままに戦うリアルバーサーカー! 深海棲艦デスマッチを経て、ソロモン海の喧嘩屋が更に凶悪さを増して帰ってきた!」


明石「やることはただ1つ! 殴って、殴って、殴り倒す! 喧嘩とは、殺し合いとはこういう風にやるものだ!」


明石「誰であろうとリング上でぶっ殺す! ”血染めの狂犬” 霧島ァァァ!」


香取「ホント、メガネを外すと霧島さんは別人ね。以前と比べて一層凄みを増したんじゃないかしら」


明石「深海棲艦デスマッチを経験し、心身ともに変化があったという霧島選手ですが、香取さんはどう見られますか?」


香取「目付きの悪さが一次元上のステージに入ってる、って感じね。前はイカれたチンピラみたいな印象だったけど、今は凶悪な殺人鬼に見えるわ」


香取「デスマッチの戦場で、UKF以上に血の匂いを嗅いできたんでしょう。恐ろしい方向に成長を遂げてしまったわね」


明石「霧島選手と言えば喧嘩殺法で有名ですが、そのファイトスタイルに変化はないとお思いですか?」


香取「……変化はあるでしょうね。喧嘩と殺し合い、ルール無用の戦いという共通点はあるけど、性質としては全く異なるものよ」


香取「路上の喧嘩で勝つのに重要なのは躊躇いのなさ。相手より少しだけ残酷で、なおかつ先手を取りさえすれば大抵は勝てるでしょう」


香取「でも、今の霧島さんは喧嘩じゃなく、殺し合いに臨む覚悟で来ている。命のやり取りなら、求められるのは冷徹さになってくるわ」


香取「今の霧島さんは狂犬というより、血に飢えた狼に見えるわね。この上なく残酷で、それでいて氷のように冷徹な殺意を放っているの」


香取「技量は日向さんのほうが圧倒的に上だけど、今の霧島さんは何をしてくるかわからないわ。きっと一筋縄ではいかないでしょう」


香取「対戦カードを聞いた直後は日向さんの勝利は揺るがないと思ってたけど、怪しくなってきたわね」


明石「霧島選手が何をしてくるか……という点が勝敗を分ける、と見ていいんでしょうか」


香取「そうなるわね。殺し合いを知った霧島さんが何をするのか。そして日向さんはそれにどう対応するのか」


香取「ファイターとしての性質は真逆同士の対戦、どういう結末を迎えるのかしらね」


明石「ありがとうございます。さあ、両者リングイン! リング中央で激しい視殺戦が繰り広げられています!」


明石「震え上がるような殺意を込めてガンを飛ばす霧島選手! それを悠然と受け止める日向選手! どちらも視線を切りません!」


明石「レフェリーの妖精さんにより、ようやく両選手が引き離されます! 柔術家VS血に飢えた喧嘩屋、勝負を征するのはどちらか!」


明石「ゴングが鳴りました、試合開始! 両選手が颯爽と……いや! 霧島選手が先に仕掛ける! コーナーから勢い良く飛び出した!」


明石「いきなり振りかぶってワイルドパンチ! か、カウンターが決まったァァァ! 日向選手、躱しざまに顎へ左フック! 綺麗に決まりました!」


明石「早くも日向選手が主導権を……いや、霧島選手が崩れていない! 猛然と打ち返した! 日向選手、辛うじてパンチをガード!」


明石「続けて霧島選手、強烈なフックのラッシュを繰り出す! 先ほどのクリーンヒットが嘘のように、まるでダメージの色がありません!」


香取「デスマッチの経験のおかげね。きっと、霧島さんはその戦いの中で、何度も殺されかけたんでしょう」


香取「一度崩れれば、そこに付け込まれて殺される。それを学習したからこそ、ダメージへの覚悟が生まれ、覚悟は打たれ強さとなって現れてるのよ」


香取「後はアドレナリンね。命懸けの戦いとなれば、脳内麻薬はフルに分泌されていることでしょう。そうそうの打撃じゃ沈みそうにないわね」


明石「霧島のラッシュが続く! 日向選手、ガードとフットワークで耐え忍んでいますが、徐々に押されて来ている!」


明石「スタミナ配分など知ったことかと言わんばかりに霧島が殴る、殴る! 日向選手、反撃に移れな……いや、再びカウンター!」


明石「霧島の右ストレートに合わせた右フック! 再び霧島選手がよろめくも、すぐに体勢を立て直して打ち返す! やはりダメージがない!」


明石「プロボクサー級の鋭いフック! 日向、これをダッキングで躱した! 起き上がりざまにアッパーカットォォォ! またもや綺麗に決まった!」


明石「霧島、やや後方によろめく! しかし踏み止まった! 前進と同時に、今度はミドルキックを放つ! 日向、難なく肘でブロック!」


明石「逆に踏み込んでレバーブロー! 霧島、かすかに表情を歪ませるもお構いなし! 再び拳を振り上げる! なおもパンチで倒すつもりだ!」


明石「試合始めと全く勢いの変わらぬラッシュ、ラッシュ! しかし当たらない! 日向選手、見事なボクシングテクニックでこれを防いでいる!」


明石「序盤に打ち込まれていたのは何だったのか! 霧島の打撃がまるで通用しなくなりました! 全てのパンチを防ぎ、なおかつ正確な反撃!」


明石「状況は一転! 打撃戦の主導権は日向選手に移りました! 霧島選手の顔面がみるみるアザだらけになっていきます!」


香取「日向さんが最初に打ち込まれていたのは、きっと霧島さんの動きを観察したかったんでしょう。やっぱり、霧島さんに技術はないみたい」


香取「本能に任せた攻撃はどうしても単調になりがちね。格闘技はそうした攻撃を制するための技術。一流のファイターに喧嘩殺法は通用しないわ」


香取「あの打撃に耐え続けている霧島さんは凄いけど、このままじゃジリ貧ね。スタミナの消耗も、霧島さんのほうが大きいでしょう」


明石「確かに、霧島選手は大振りの打撃を尽く防がれ、なおかつ無数のパンチを食らっています! ここに来て、とうとう息が上がってきた!」


明石「日向選手は最小限の動きで攻撃を防ぎ、なおかつ反撃を繰り出している! 余力は十分残しています!」


明石「このままでは霧島選手の敗北は明らか! さあ霧島選手はどう出る! やはりパンチを繰り出……いや、タックルに行った!」


明石「パンチをフェイントに使い、日向選手にスウェーバックを取らせてからの胴タックル! 早い! 見事にテイクダウンを取った!」


明石「霧島選手、初めて格闘技術らしきものを見せました! 状況はグラウンド戦に移行! 霧島、ここから日向をどう仕留める!」


香取「うーん、タックルは上手だったけど、この状況ってどうなのかしら。私には、日向さんに誘い込まれた感じがあるんだけど」


明石「誘い込まれた? それはどういう……」


香取「試合前に言ったけど、日向さんのボクシング技術はあくまで寝技に引き込む補助でしかないの」


香取「さっきの打撃戦も、決めに行こうとはせず、ただ霧島さんにダメージを与えて追い込むのが目的だったように見えたわね」


香取「打撃で勝てないとなれば、テイクダウンを取るしかない。そうやって敢えて相手のタックルを受けて、グラウンドに持ち込んだのよ」


香取「グラウンド戦は日向さんの土俵。ほら、あっという間にガードポジションに入ってる。霧島さんは悪手を引いたんじゃないかしら」


明石「なるほど、確かに霧島選手、トップポジションを取るも、胴を足で挟み込まれて身動きが取れない! 顔面を殴りに行けません!」


明石「ならば、狙うのはボディ! 喧嘩屋の右拳が日向選手のボディに振り落とされ……いや、防がれた! 腕を抱き込まれてしまいました!」


明石「更に左腕も抱き込まれ、完全な密着状態! この体勢は日向選手にとっての勝ちパターン! さあ、ここから戦慄の寝技が霧島を襲う!」


明石「狙うは三角絞めか、腕十字か! 胴を挟み込む足が徐々にせり上がって……おっと、ここで霧島が動いた!」


香取「ああ、やけに大人しいと思ったら、消耗したスタミナを回復させてたのね。ここからどう反撃するのかしら」


明石「まるで猛獣のごとく、日向選手の懐でもがいている! しかしホールドは完璧! 腕も足もまったく動かせません!」


明石「しかし動きが激しすぎる! わずかながら拘束が緩みました! だが脱出には至らない! このまま絞め技の餌食に……うおっ!?」


香取「あら、やっぱりそういう攻撃を学んじゃったの」


明石「か、噛み付きぃぃぃ! ひゅ、日向選手の喉笛に噛み付こうとしました! これは危ない! 日向選手、腕で押しのけて噛み付きを回避!」


明石「しかし、霧島の腕を自由にしてしまった! パンチがボディに降ってくる! 日向選手、これを辛うじてブロック!」


明石「続けざまにボディへ拳が叩き込まれる! 密着して打撃を防ぎたいところですが、あの噛み付きがそれを許さない!」


明石「今度は日向選手のほうがジリ貧か! 霧島選手のパンチは強力です! ガードポジションからとはいえ、着実に日向選手の体力を削っている!」


明石「このまま霧島は削り切る気か! スタミナは完全に回復させた模様、猛然とラッシュを叩き込んでいる! 日向選手、防ぎ切れない!」


香取「ガードの空いたところに、片っ端からパンチを入れてるわね。強引だけど、ガードポジションの攻略法の1つよ」


香取「霧島さんは経験則でこの攻め方を知ったんでしょう。これをやられると、柔術家は結構苦しいのよね」


香取「ここからの攻防が重要ね。噛み付きがあるから密着はできない。密着できないとなると、技が掛けられないわ」


香取「かといって、霧島さんも隙を見せれば関節を極められるでしょう。どちらも下手に動けないわね」


明石「さあ、日向選手の表情が苦しげになってきました! 対する霧島、鬼の形相で拳を打ち続けている! 底なしのスタミナです!」


明石「このままだと日向選手の体力が先に尽きてしまう! さあ、どうする初代戦艦級王者! あっと、霧島選手が腕を取られた!」


明石「再び日向選手、腕を抱き込んでの密着を図る! やはり打撃に耐え兼ねたか!? 一か八か、再び絞め技を狙う気だ!」


香取「あら、それはまずいんじゃないかしら……」


明石「またも両選手、密着状態! 足がせり上がる! 間に合うか! いや、間に合わない! 霧島、とうとう噛み付いたァァァ!」


明石「狙いを変え、噛み付きやすい右の鎖骨に噛み付いた! みるみる道着に血が滲む! これはまずい! 堪らず日向選手が引き剥がしに掛かる!」


明石「腕のホールドを解き、手を差し込んで霧島を押しのけようとしています! しかし離れない! 狂犬霧島、一度捉えた獲物は決して逃さない!」


明石「更に流血が広がっていく! 霧島選手、血染めの狂犬の名に違わぬ凄惨な戦いぶり! このまま鎖骨を噛み砕く気だ!」


明石「日向選手はなおも手で押しのけようとしていますが、功を奏さない! 日向選手、絶体絶命か!」


香取「えっと、絶体絶命なのは霧島さんのほうじゃないかしら」


明石「骨の軋む音が聞こえてきそうです! 激痛に日向選手の表情が歪み……香取さん、今なんて言いました?」


香取「絶体絶命なのは霧島さんのほう、って言ったのよ。今、技を掛けているのは日向さんなんだから」


明石「はい? だって、日向さんは防戦一方……いや、違う!? 日向選手は霧島を押しのけようとしているわけではない!」


明石「日向選手、手に自分の道着の襟を掴んでいる! 押しのけるのではなく、下から霧島の頸動脈に道着の襟を巻きつけているのです!」


明石「柔術独特の、道着を使った絞め技です! まさか日向選手、これを狙って敢えて噛み付かせたのか!」


香取「そうなんでしょうね。霧島さんの咬筋力は強そうだから、本来なら既に鎖骨を噛み砕かれてるはずよ」


香取「でも、そうなっていないのは、初めから日向さんがこの絞め技を狙っていたからでしょう。噛み付かれると同時に、道着で首を絞めたのよ」


香取「頸動脈を絞められれば、脳に血が行かなくなって全身の力が抜けるわ。噛み付きの威力もそれで弱まっているんでしょう」


明石「まさしく戦艦級初代王者の名に恥じない、勝利への執念! 霧島選手、よく見れば既に顔色がどす黒く鬱血している!」


明石「いや、これは……あっ、日向選手が払いのけるように霧島を押した! 霧島選手、力なくリング上へ横たわりました!」


明石「か、完全に落ちている! まさか、意識を失ってもなお噛み付き続けていたのでしょうか! こちらも恐るべき勝利への執念です!」


明石「しかし、もう霧島選手は動かない! 日向選手、右腕をかばいながらゆっくりと立ち上がります!」


明石「ゴングが鳴りました、ここで試合終了! 最後までリングに立っているのは、初代戦艦級王者、日向選手です!」


明石「予想以上の激闘となりましたが、最後は技術と執念で勝利を収めました! 勝ったのは日向、日向選手です!」


香取「霧島さんは十分強かったと思うけど、相手が悪かったわね。やっぱり凶暴さだけじゃ、トップファイターの牙城は崩れないみたい」


明石「かなりの死闘となりましたが、香取さん。日向選手の勝因は何だったと思われますか?」


香取「技術もそうだけど、一番はあの状況で冷静さを失わない精神力かしら。ここは初代王者の貫禄を見せたと言ってもいいでしょう」


香取「ストリートファイトにおいて、何の技術も持たない暴漢に格闘家が負けることは珍しくないわ。その原因は、恐怖で相手に飲まれてしまうからよ」


香取「日向さんにそんな弱さはないわね。彼女より強いっていう伊勢さんの実力にも、これで十分期待が持てるようになったんじゃないかしら」


明石「ありがとうございます。それでは皆様、両選手の健闘を讃え、今一度拍手をお願い致します!」




試合後インタビュー:日向


―――試合をしてみて、霧島選手をどのように思いましたか?


日向「いやあ、恐ろしいやつだったよ。前の大会に出てたビスマルクといい、最近は噛み付き攻撃が流行っているのかい?」


日向「喉元を狙われたときはヒヤリとしたけど、学んだ技術に救われたよ。楽勝とまでは行かなかったけどね」


日向「まあ、柔術の強さはそれなりに示せたと思うから良かったよ。できれば無傷で勝ちたかったが、今回はこれで良しとするよ」


―――伊勢選手に何かメッセージはありますか?


日向「そうだな……おそらく本戦には、霧島以上に強い選手が当たり前のように出てくるだろう」


日向「だが、恐れることはない。君は私より強いんだ。長門を相手にしようとも、必ず君が勝つ。必ずだ」


日向「自信を持ってトーナメントに臨んでほしい。私は伊勢が艦娘最強の座に輝くことを、心から信じてるよ」




試合後インタビュー:霧島


霧島「クソがァァァ! ふざけんなよあの柔術女よぉ! デスマッチならテイクダウン取ったときに終わってんだよ!」


霧島「いいか!? デスマッチは路上でやるんだよ! わかるか? 床はコンクリートなんだからよお、叩き付けてやればそれで殺せるんだよ!」


霧島「なんでここのリングはあんなに柔らけえんだよクソが! 本当なら頭ぶつけてやった時点で脳みそぶちまけてるるんだよ、あの女は!」


霧島「リングをコンクリート製に変えやがれ! そしたらあいつの頭、粉々にブチ割ってやれるんだ! 何ならてめえで試してみるかオラァ!」


(取材班の逃亡により、インタビュー中止)










明石「皆様、お疲れ様でした! これにて本日の日程を終了させていただきます!」


明石「本戦放送日は未定となっていますが、おそらく2,3週間後になることと思われます!」


明石「なるべく早めに放送できるよう急いで準備させていただきますので、どうか今しばらくお待ちください!」


香取「大会運営委員長の調子次第ね。どうかしら、そっちのほうの調子は」


明石「かなりいいそうです。保険手当をつぎ込んで輸入した薬がよく効いているそうで」


香取「……何の薬なのかしら」


明石「10種類くらい飲んでるので、もうどれが何の薬かはわからなくなったとのことです」


香取「ああ、そう……調子がいいなら、それでいいわ」


明石「それでは、Aブロック1回戦にてお会いしましょう! それでは、さようなら」


香取「さようなら。また次回もよろしくね」



後書き



―――第三回UKF無差別級グランプリ。最強の艦娘を決める戦いの火蓋が今、切って落とされようとしている。

―――怪物、魔人の蠢くAブロックはいかなる死闘になるのか。放送日、現在調整中。


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2件評価されています


SS好きの名無しさんから
2016-06-04 12:28:24

SS好きの名無しさんから
2016-06-01 11:02:27

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SS好きの名無しさんから
2016-06-01 11:02:28

このSSへのコメント

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1: SS好きの名無しさん 2016-06-01 19:44:51 ID: anTiR3-7

飲み過ぎィ!(お大事に)


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