提督「艦娘の寝起きを観察する。重巡後編」
提督「利根と筑摩の寝起き観察から一週間」
提督「筑摩の処置に時間を取られ前回から間が空いてしまった」
提督「だが、逆に寝起き観察について知れ渡った事によって生まれた警戒心を薄めるのに丁度良かったとも言える」
提督「ここからは難敵も多い」
提督「元から警戒心の強い高雄型」
提督「隙は大きいが個性が強くこちらが飲まれかねない最上型」
提督「四人全員が提督適性を持ち近接格闘においては最強クラス、妙高型」
提督「彼女達はそれぞれが傷とそれに抗う強さを持った」
提督「女性(せんし)なのだと、忘れてはならない」
高雄「では、提督対策会議を始めますわ」
愛宕「はぁい」
摩耶「おう」
鳥海「はい」
高雄「提督は筑摩さんの一件以来目立った行動を見せていませんけれど、鳥海。何か報告は?」
鳥海「いえ、特には。でもあの人の性格からして『もうそろそろ警戒心も薄れてきた頃だろう』と考えていてもおかしくありません」
摩耶「一週間程度で薄れる訳ねーっての。風呂ん時もだったけどあいつの基準どうなってんだ?」
愛宕「不思議よねぇ、でも本人が大真面目なところが・・・・・・ね?」
高雄「・・・・・・相変わらず変わってますわね。馬鹿めと言って差し上げますわ」
愛宕「趣味が悪いってよく言われるけど、私から見れば高雄ちゃんもなかなかよ?」
摩耶「あー・・・・・・悪いけどわかる」
高雄「ちょっ、摩耶まで?・・・・・・低身長歳上くらいは普通の範疇、じゃないのかしら」
摩耶「いやいや姉貴。男はやっぱり一に筋肉だって」
鳥海「また摩耶の筋肉信仰・・・・・・」
摩耶「鳥海だって『毎日日記を付ける人』って何なんだよ、意味わかんねー」
提督「・・・・・・」
提督「完全に読まれていた」
提督「内通者もいない以上、無謀な突撃は身を滅ぼすのみ」
提督「今までの研究とその過程で学んだ事だ」
提督「高雄型・・・・・・いつか必ず、リベンジさせてもらうぞ」
提督「・・・・・・にしても」
提督「天井裏と言っても鼠さえいなければ掃除するだけでなかなか悪くないな」
提督「何故弥生が知っていたのかは分からないが、まあ瑣末な問題だろう」
高雄型、失敗につき保留。
鈴谷「あ、提督じゃーん。ちーっす」
鈴谷「最近楽しそーな事してるみたいだけど、こっちにも来んの?」
鈴谷「ふーん、寝起きかー。ホント変わった事してるよね」
鈴谷「じゃあ今日一緒に寝ようよ。いいっしょ?決まり決まりー」
鈴谷「あ、もが姉とくまりんこだ。熊野は・・・・・・後でいいや。ちょっと話してくるね」
鈴谷「また後でー!」
提督「・・・・・・」
提督「気が付いたら無条件で寝起き観察に成功する事になっていた」
提督「それぞれの個性の強さに隠れがちだが彼女らもそれなりの警戒心と寝起きを他人に見せるなど言語道断とも言える強固な観念を持っている」
提督「と、思ったのだが」
最上「え?でも提督だし、ボクは大丈夫だよ?」
三隈「むしろ提督の事を知る良い機会と思いましたので承諾しましたのよ」
鈴谷「ふっふーん。やっぱりナイスアイディアだよね」
熊野「殿方と言えど大恩ある提督ですもの。お断りする理由はございません」
提督「そして俺は最上型の私室にてパジャマパーティに参加、そのまま雑魚寝で朝を迎える」
提督「全員で起床し三隈主導の洗顔講座を受講した後、俺は観察結果をまとめに私室へ戻った」
提督「朝に弱い三隈と熊野の代わりに目覚めの一杯として最上が振舞ってくれた紅茶で目を覚ます朝」
提督「悪くない」
提督「そして鈴谷、この気温で流石にそれだけ薄着だと風邪を引くと思うぞ」
最上型、成功(?)にて終了。
提督「さて」
提督「いよいよ寝起き観察も最終段階」
提督「残るは・・・・・・妙高型か」
提督「まさかお前が俺を呼び出すとはな」
提督「羽黒」
羽黒「きょ、今日は、よろしく、お願いしますね」
提督「こちらこそ世話になる。何せ妙高型姉妹は揃って武闘派、隙が少ないからな」
羽黒「はい、姉さんたちは、とても強いですから・・・・・・」
提督「では行こう、案内を頼む」
羽黒「わかりました。・・・・・・ごめんなさい」
提督「羽黒が小さく呟いた謝罪について、俺はもう少し深く考えた方が良かったのだと思う」
提督「全く鮮やかな手際だった、改装空母三人による風呂処刑を想起する程に」
提督「音をなるべく抑え薄暗い部屋へ侵入した俺を待ち受けていたのは三つ」
提督「空のベッド」
提督「那智、足柄による真横からの急襲」
提督「そして」
提督「撤退しようと振り返った先で食らった羽黒の空気投げ」
提督「空中で一回転した俺を床へ縫い止めるかのように那智と足柄の追撃」
提督「まさに一瞬の出来事だ。捕縛された俺は妙高の前に引き出され」
提督「・・・・・・気が付けば、自室のベッドに転がされていた」
提督「何故か日付は二日進んでいた」
提督「・・・・・・おぼろげに残っている冷たさと息苦しさ」
提督「おそらくクレーンで吊られて海に落としたり引き上げたり、というあの有名な拷問を体験したのだろうと推測する」
提督「成程、文字通り命だけは助かったか」
提督「ちなみに、俺が意識を失っていた二日間、鎮守府は何の支障もなく運営されていた」
提督「優秀な部下を持つとありがたいものだ」
提督「重巡の寝起き観察」
提督「色々あったがまあ上手く行ったと言っていいだろう」
提督「次は、軽巡か」
提督「さて、何を観察するべきだろうな」
妙高型、強制終了。 重巡後編、終了
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