提督と○○23 「提督と9月」
提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です
注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
アニメとかなんかのネタとかパロディとか
二次創作にありがちな色々
長い
EXパートは思いつき小ネタです
23回目になりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね
それではこの番組は
提督「9月になりました。というわけで…」
皐月「今回は長月達が主役だよっ」
如月「可愛い菊月とっ」
睦月「カッコいい長月のお話だしっ」
卯月「うーちゃんはっうーちゃんはっ?」
弥生「卯月はこないだ(4月だけど)やったでしょ…」
菊月「長月っ主役だぞっ、やったなっ」
長月「私としては、あまり目立ちたくはないんだがな…」
金剛「9月といえば、紅茶が美味しい時期デスネっ」
大井「貴女は、別に9月じゃなくても美味しそうにしてるじゃないの」
北上「大井っちー、美味しいものが美味しい時に美味しいのは当然だよ?」
多摩「大切なのは、いつでもそれをおいしく食べる工夫だにゃ、料理とはそういうものにゃ」
大鳳「幸い、日本には四季もあるしね。味の工夫と場の工夫には事欠かないわね、きっと」
球磨「肉は焼けばいつでも美味いクマ」
木曾「脳筋じゃねぇか…」
望月「三日月。そろそろ覚悟しときなよ?」
瑞鳳「ああ、9月だもんね…」
夕張「提督が何もしないとも思えないし…」
三日月「え、え?なんなの?」
もろもろのメンバーでお送りします
↑後「提督とお月見」
~回想~
~母港~
出撃から戻るといつもこの場所に来ていた
母港の一番端にある桟橋
何をするわけでもなく腰をおろし
時折、足にかかる波を蹴っ飛ばして気を紛らわす
長月「…」
ぼんやりと水平線を眺める
海の端っこに足を付けたお日様は、その体をゆっくりと沈めていくそんな光景
ふと思う
その内、自分もああやって沈んでいくんじゃないかって
縁起でもない、その上ろくでもない考えだ
それは分かる。分かるが、一瞬頭をよぎった考えは
不安を呼び起こし、嫌な想像を見せつけてくる
ゾッとする。背筋が寒くなってくる
自分の手に視線を落としてみれば、小刻みに震えていた
何の事はない
出撃から戻ってみれば いつもこうだ
戦闘中はまだいい
緊張感と高揚感が奇妙な興奮を生み出して
そんな震えなど、武者震いにさえ思えてくるのだから
だが終わってみればこれだった
毎回毎回だ
帰還して、姉妹たちの無事を確認して安堵する
そしてそのまま姉妹たちと別れて
独りこの場所で、体の震えが治まるまでこうして呆けている
長月「はぁ…格好が付かない、な。ほんとに…」
溢れる溜息と愚痴は誰に聞かれることもなく、波間に溶けて消えていく
戦うのが怖い
理由なんて単純なものだ
だが、軍艦として生まれて、艦娘として戻ってきて…
姉妹達は立派に勤めを果たしているのに、自分1人弱音を吐くなどと出来るはずもなく
こうして毎回、姉妹達に何でもないって顔ができるまで海を眺めていた
??「だーれだっ」
長月「…」
再び吐こうとした溜息が、突然暗転した視界と共に遮られる
誰も彼もあったもんじゃない
この鎮守府でこんな事する奴は限られるし
姉妹達にの手にしては大きすぎる
長月「子供か、あんたは…」
提督「なははははは」
提督が笑いながら長月から手を離すと
そのまま、その隣へと腰を下ろす
提督「子供で結構。子供でいられるうちはそれでいい、時間が経てば嫌でも大人をやらされる」
人の世はかくも面倒なものだなと
長月「あんたが大人をしているの、見たことがないんだがな?」
提督「ふっふっふっ。だれも私にソレを求めなかったからねっ」
無駄な自信に溢れた返答だった
長月「なら、今からでも大人をやってくれ」
毎度毎度、姉妹達とじゃれている提督を見ていると
本当にココが鎮守府なのか疑わしくなってくる程だった
提督「じゃ、少しだけ」
そっと長月の手を取る
長月「っ…」
提督の手が触れた途端
引っ込もうとするその手を強引に握りしめ引っ張りだす
長月「…」
提督から顔を逸らす
手の震えは未だに止まっておらず
そんな状態で触られたら、嫌でも震えてるのが伝わってしまう
提督「怖いなら怖いって言えばいいのに?」
長月「…そんなこと」
提督「言えるわけがない?」
長月「…」
先の台詞を取られて口を閉ざす
提督「うちの娘達はそんな薄情じゃないと思うけどな」
長月「分かってる…」
分かってはいるんだ、そんな事は…
だからこれは自分の問題
プライドとか誇りだとか見栄とか意地とかそういった
提督「そう。まあ、どうしても無理なら…」
長月「解体…か?」
嫌な言葉が口から出る
使えない艦娘をいつまでも置いておく理由もないか
提督「…本気で言ってるの?」
一段と下がる提督の声
言葉を発する度に、口の端から不満の負の字が溢れて見えそうなほどに
長月「いや、すまない…」
本当にバカな発言だった
まだまだ短い付き合いとはいえ
この司令官が安易にそんな事するような奴じゃないのは、見てれば分かるだろうに
本当に…塵積もった不安は心だとか思考まで引きずり込むらしい
提督「まあ、いいけど」
長月「それで…私が無理だと言ったら、どうする気だったんだ?」
先ほど遮ってしまった言葉の続きを催促してみる
小さい鎮守府だ
艦隊戦闘は無理でも、偵察だとか警備任務だとか書類整理だとか、やることが無いはずはない
提督「私の遊び相手かな?」
長月「は?」
意外な言葉に疑問符を投げ返さずにはいられなかった
提督「だってー、皐月達が出払っちゃうと私1人じゃーん」
長月「いや…それにしたって仕事があるだろう?」
提督「いいかい長月」
長月「なんだ…」
提督「自分でやらんでいいことは、絶対やらないのがモットーなの、私は」
長月「働けっ、バカものっ!」
そんな下らない座右の銘を宣言する提督を小突く長月
提督「だからさ?長月がいれば捗るんじゃないかとっ」
長月「…本音はなんだ?」
仕事放棄を明言した奴の口から出る
「捗る」なんて単語が信用に値するわけもなく、その真意を問いただす
提督「長月を抱き枕にして寝る。人肌って案外と落ち着くものでね、丁度欲しかったのよ」
長月「…」
提督「そして、嫌がる長月がっ、無駄な抵抗をしてっ、腕の中で暴れるのを眺める所まで織り込み済みだよっ」
長月「子供かっ貴様はっ!」
思わず手が出ていた
それを避けるでもなく受け入れ、カラカラと笑う提督
提督「さ、戻るぞ」
ふいに立ち上がる提督
握られたままだった長月の手が持ち上がる
つられるように顔を上げてみれば、自分手が目に入った
長月「ぁ…」
何時の間にか震えが止まっていた
そのまま上へと視線を移せば、提督の顔が目に入る
「行かないのか?」と不思議そうな顔をしている提督
握っているその手、そこから伝わる温もり
意識した途端、気恥ずかしくなりそっと視線をそらす
提督「長月?」
長月「ああ、うん…」
手を引かれて立ち上がる
強めに引き上げられたせいか、バランスを崩して提督に寄りかかる
長月「司令官…」
そのまま、提督に抱きつくようにして
ほそぼそと言葉を紡ぐ長月
提督「なぁに?」
長月「司令官は、怖くはないのか?」
提督「…戦うのが?」
提督に寄りかかったまま、小さく首肯する
提督「怖いよ?」
長月「だったら、どうして…」
提督「どうって…そりゃお前…怖いのを怖くなくすには…な?」
長月「…」
冷たい声だった
伝わってくる温もりが、急になくなったかと錯覚するほどに
怖くなくすには?その先が気にはなるが、それさえ躊躇われる
提督「じゃ、行こうか。今日の夕飯はオムライスだってさ」
反応に困っていると
その手が引かれて、グイグイと歩かされる
提督「私はお腹が空いてるの、キリキリ歩きなさいな」
長月「…それで私を呼びに来たのか?」
提督「えくざくとりぃ、その通りでございます」
長月「まったく…」
本当に、子供みたいな提督だった
~食堂~
その後の食堂
提督と長月が戻ってみれば、食欲でギラついた視線が飛んできた
睦月「提督っ!」
卯月「長月っ!」
「さっさと席につくしっ(ぴょんっ」
長月「あ、ああ…すまない」
餌の前でお預けを食らった子犬の様なテンションだった
謝りながらも空いてる席へ、菊月の隣へ腰を下ろす
菊月「何処へ行っていたのだ?」
長月「少し、な…」
菊月「そうか…」
長月の横顔を眺める菊月
少し…とは、なんだろうか?
司令官との逢瀬だというならそれでも良いが
目尻の濡れた後は…とてもそういう風には見えなかった
そうして、菊月が悶々としている内に
金色に輝くオムライスがズラッと並ぶ
作:如月
チキンライスがはみ出ることも、それを包む卵が破れる事もなく
お皿の中央に鎮座していた
それと一緒に配られるケチャップのボトル
如月「それじゃあ、なにか描きましょうか」
オムライスにケッチャップと来れば定番か
子供っぽいかも知れないが、誰だって一度くらいやったことはあるはず
弥生「出来た…」
開始して10秒と経たない内に弥生が手を挙げる
長月「なんだ、それ?」
オムライスの画用紙に描かれたのは
長方形だった…箱か何かだろうか?
弥生「爆雷」
長月「…そうか」
弥生「うん、そうなの」
満足そうな弥生
返せる言葉はなかった、本人がそう言うならそうなんだろう
ただ少なくとも、長月の目には長方形にしか見えなかったが
卯月「うーちゃん、ウサギさん描いたぴょんっ!」
睦月「睦月はねー、お月様だよっ」
如月「❤」
皐月「お星様、かな」
文月「くちくかーん♪」
一瞬皆が耳を疑った
ここまで、定番な絵柄だったのに突然斜め上に吹っ飛んだからだ
文月のお皿の上
オムライスを船体にでも見立てたのか
決して広くはないお皿の余白を目一杯使って、艦上構造物が出来上がっていた
もはや、アートの領域に片足を突っ込んでいた
菊月「長月は何も描かないのか?」
長月のお皿を覗き込む菊月
お皿の上のオムライスは黄色いままだった
長月「いや、私は…というか、お前のはなんだ?」
菊月「…いや、これは」
対する菊月のお皿の上
黄色のオムライスは、何かの惨状後の様に赤く染まっていた
長月「タイトルは…血痕か?」
菊月「ちがうぞっ、これはっ…う、うまくケチャップが出なかっただけで…」
長月「そうか…まあ、食べれば一緒だしな」
菊月「うん、その通りだなっ」
正直、どうしたものかと悩んでいた
確かに食べれば同じだ、上手く描く必要も無いのだが
絵心がある方ではないし、隣の席でアートが出来上がっていると
尚更描きづらい
皐月「司令官、それは?」
提督のお皿を覗きこむ皐月
オムライスの両端を斜めに切り取るように、ケッチャプが埋め尽くしていた
睦月「お山かにゃ?」
なるほど、たしかにそうも見える
両端がケチャップで埋められ、残った黄色い部分が三角形になっている
提督「いやいや…最後に」
右側のケッチャプの海に、スプーンで切り込みを入れる
すると、赤い部分が削られて黄色の下地が三日月模様を描いた
如月「ふふっ…司令官ったら」
その答えに気づいたのだろう、如月が口元に手を当て笑みを零す
提督「みてみて長月♪」
殊更に楽しそうに長月を呼ぶ提督
長月「…なんだ」
嫌な予感がするが無視するわけにもいかず、司令官の方へ顔を向ける
目に映ったのは、変な模様の描かれたオムライス
提督「題名:長月のおでこ♪」
長月「…」
長月の沈黙とは裏腹に
回りの姉妹達にからは「ああ」と納得するような声が聞こえてくる
長月「…食べ物で遊ぶんじゃなぁぁいっ!!}
どこまでも子供見たいな司令官と、振り回される長月
そんな賑やかな夕食時だった
~回想終わり~
ー母港ー
睦月「さぁ、かかって来るが良いぞ妹よ」
菊月「今日は勝たせてもらう」
海上で相対する睦月と菊月
挑発的な笑みを浮かべて手招きをする睦月
それに対して、睨むように目を細めた菊月が主砲を構えた
12.7cm連装砲B型改2★MAX
現状やれるだけの回収を施した菊月お気に入りの主砲
直撃すればおそらく、改2になった睦月でさえ一撃で大破まで持っていける代物だった
だが、そんな主砲を向けられても
睦月の余裕は崩れることはなく、挑発的な笑みを浮かべたままだった
如月「はーい♪それじゃあ、はじめっ!」
如月が胸の前で小さく手を叩く
それと同時に、菊月の主砲が火を吹いた
過剰な火力を引き連れて吐き出された砲弾が、睦月を掠めて その上着の一部を削り取る
睦月「そんなんで、当たると思ったのかにゃぁ?」
体を少し逸らしただけで、砲弾をギリギリの所で避けると
次弾装填の隙間、そして菊月が発射の反動で固まった一瞬の合間を縫って距離を詰める
菊月「っぅ!」
睦月「おそいおそいおそいおっそーい!」
慌てて睦月の前に主砲を突き出す
だが、その腕。睦月が主砲を握る手を抑えこみ射線を外す
それと同時に体を屈めて、水面蹴りを放った
菊月「なっ!?」
菊月の足が海面から離れる
その合間に、睦月が水面蹴りの勢いを乗せたまま流れるように立ち上がると
それと入れ替わるように、菊月が海面に転がる事となる
睦月「菊月ちゃんはその主砲に頼り過ぎかにゃぁ?」
菊月「むぅ…」
反論しようにも、今しがた徒手空拳で転がされたばかりなので良い訳も立ちはしない
如月「そうね、もう少し主砲が使えない事も考えたほうが良いかもしれないわ」
如月が手を差し出すと、それを掴み ずぶ濡れのままノロノロと起き上がる
そもそも、駆逐艦の、戦艦と比べたらオマケの様な主砲に頼りきる事自体がアレなのだけれど
菊月「なら…不意打ちならどうだっ!」
おもむろに砲口を如月に突きつける
如月「だーめ」
菊月「っぅ!?」
再び海面に転がる菊月
転がされた当人は何が起こったのか分かってないような顔をしていた
何をどうされたのか、主砲が掴まれたのまでは覚えているが
その後、視界が回ったと思えば海面に転がされていたと
菊月「むぅ…」
如月「これは没収ね」
おまけに主砲まで取り上げられている始末
菊月「む、それは私のっ!」
跳ね起きると、飛びかかるように如月に手を伸ばす、が
如月「睦月ちゃんぱーす♪」
睦月「ほいほーい☆ミ」
菊月「ああっ!」
主砲を追っかけて、今度は睦月の方へと飛びかかる
睦月「如月ちゃんぱーす☆ミ」
如月「はーい♪」
菊月「もうっ!」
そのまま、ほいほいと続くキャッチボールに
睦月と如月の間を右往左往する菊月だった
ー
長月「はぁ…」
完全に遊ばれてるな…
皐月の相手をさせるのは、ただのイジメになるとは思っていたが…
別に睦月達が弱いから演習の相手を頼んだという訳ではない
日頃の資源確保の為の遠征や、補給艦等の海上護衛を主に引き受けてる彼女達だ
何かを守りながらの戦闘は容易な事ではない
そんな彼女達の練度が低いはずもなく、また状況判断能力なら相当なものでもある
故に、善戦するようならとも思ったが、これではな
提督「なーがつきっ。…なに、あれ」
傍目には新手のイジメのように見える光景
長月「…演習、だったはずなんだがな。あと、急に抱きつくんじゃない、危ないだろう」
毎度の事ながら、突然後ろから抱きついてくる提督
それに対し、抗議をしてはみるものの、改善された試しはなく
それどころか
提督「そんな…触るなっ、なんて提督寂しい」
長月「そうは言ってないだろう…」
提督「そんな、骨の髄まで抱きしめて、なんて長月ってば大胆ね」
長月「そこまでも言ってないがなっ」
なんていつものやり取りに発展するだけだった
長月「はぁ…たっく」
流れを断ち切るように、息を吐く
浮ついた空気を吐ききると、気持ちを切り替える様に胸を張った
長月「司令官、編成はそのままだ」
提督「そう。まだダメか」
長月「アレではなぁ…」
提督「そうねぇ…」
アレとはつまり、海上で睦月と如月に遊ばれてる菊月の事で
「もうっ!もぅっ!返してってばーっ!」
「…かわいい」
涙目になって主砲を追いかける菊月
そんな妹の姿に、ときめいたお姉ちゃん達だった
ー
次の日
母港には、出撃準備を終えた艦娘達が集まっていた
旗艦:金剛・続いて、大鳳・北上・多摩・皐月・長月
菊月「…」
あと、むくれてる菊月
昨日、お姉ちゃん達にからかわれてたのも若干尾を引いてないこともないが
なにより、長月と一緒に出撃出来ないのがご不満だった
長月「それじゃ、菊月。行ってくるからな」
菊月「私も…」
長月「ダメだ、睦月に勝ったらって言ったろう?」
菊月「むぅ…」
ふぃっと顔を背ける菊月。完全に拗ねていた
大鳳「ねぇ、提督?菊月1人くらいなら、私達で面倒見ても…」
そんな中、こっそりと提督に耳打ちする大鳳
提督「敵の編成が情報どおりならそれでも良いんだろうけど…」
大鳳「なにかあるの?」
提督「何もは…何かあったらって話」
大鳳「心配症なんだから」
微笑む大鳳
慎重なのは悪いことではないけれど、この人の場合もう少し大胆でも良いとは思う
提督「石橋は、叩いて砕くものだよ」
大鳳「…それじゃ、渡れないじゃない?」
提督「ああ。その変わり向こう側からもこれない、これで問題解決だ」
大鳳「あー、そうね…うん」
戦わずに済むとは良いことだと、胸を張る提督
「完全に引きこもりの発想だわ…」なんて言葉を、喉の奥に押し込む大鳳だった
金剛「てーとくー。それじゃーそろそろ行ってくるヨー」
提督「ああ、気をつけて」
両手いっぱいに手を振っている金剛に軽く手を上げて応える
金剛「戻ったら一緒に入渠するデース、きゃは❤」
提督「…」
そんな度胸も無いくせに、良くも言えるものだと感心する
とりあえず、修復剤でもぶっかけるか…きっと面白い顔をしてくれるだろうな
大鳳「提督…あんまり悪戯しちゃダメよ?」
知らず笑っていたのだろう
大鳳にほっぺたの位置を元に戻された
大鳳「それじゃ、行ってくるわね」
提督「ん」
頷き合うと、金剛達に合流する大鳳
提督「さて…帰って寝るか…んぅ…」
出発した艦娘達の背中が見えなくなるまで、ぼーっと眺めた後
踵を返し、あくびを噛み殺しながら部屋に戻る提督だった
ー
北上「金剛さーん、良かったのかい?あんな事言っちゃって?」
行軍中のその間
暇を持て余した北上様が金剛に擦り寄っていた
北上「あの提督にそんなこと言うと、ほんとに混浴ルートだよん?」
提督だって冗談なのは分かってるだろう
けれど、それをわかった上でやってくる
からかうためだけに、悪戯するためだけに
金剛「HAHAHA…どうしましょう?北上、北上様っ、へるぷみーっ!」
一瞬笑い飛ばすかと思われたが、急に顔を赤くして北上に縋りつく
その場の勢いで口から出ただけなのが、ありありと見て取れた
北上「どうって…水着でも着てりゃ良いんじゃん?」
金剛「またスク水デスカっ!」
北上「あー…そうねぇ、そうよねぇ」
先日、スク水を着た金剛さんが大変な事になってたのを思い出す
新しいの買えば良いのに、とは思うけども
デートの口実にとって置く腹積もりらしい
大鳳「二人共、そろそろ…」
北上「ほーい」
金剛「OK!」
大鳳に呼ばれると、直ぐ様陣形を整える2人
魚雷を装填する北上様と、自慢の46cm砲を展開する金剛さん
多摩「多摩達も行くにゃー」
皐月「うん、まっかせてよっ」
長月「了解した」
北上様の魚雷の射線を開けて
金剛達の前に出る多摩達
作戦なんて単純なものだ
大鳳で制空権の確保と余裕があれば航空打撃を加えて
そこに金剛の主砲と、北上様の魚雷で先制を突き刺した後に
多摩達が突っ込む、あとは臨機応変に
大鳳「ん、来たわね…頭は抑えるから」
金剛「任せるヨっ!それでは、行きますっFire!」
高速戦艦には過大なその主砲
それを、練度を上げて46cm砲で殴れば良いという発想の元、強引に振り回す
砲を旋回させる度に、その重量に振り回されそうにはなるが
そこを、意地と度胸と愛嬌で無理やりねじ伏せた
結果は上々。その辺の戦艦程度の装甲ならあっさりと貫き海の底へと叩き返していった
北上「3・2・1…どーん」
金剛の主砲より遅れて到達した魚雷が、数隻の深海棲艦を巻き込み爆発する
実際問題、魚雷を撃った数より当たった数の方が圧倒的に少ないのだが
こんなものは一発でも多く当たればそれでいいのだ
軍艦やってた頃は出来なかったからねぇ…
贅沢な話だよ本当に
多摩「まったく…猫の手も借りるほどなのかにゃぁ…」
混乱に陥っている敵艦隊のど真ん中に突っ込む3人
長月「猫か?」
そんな多摩の愚痴に疑問を覚える長月
あれはネコなんて優しいものじゃない気がするが
皐月「ネコ科ではあるんじゃない?」
長月「トラかライオンな…」
皐月「そうそうっ♪」
多摩「そこっ、聞こえてるにゃ。ほら駆逐艦が逃げ出してるにゃ、さっさと片付ける」
皐月「はーい。それじゃ、長月あっちはお願い」
長月「了解したっ」
2人で苦笑した後、散開して散り散りになっていく敵艦隊を追い詰める
中破して艦隊から落伍したものに、魚雷を撃ち込み
大破して動くこともままならなくなったものには、至近距離から主砲を叩き込む
そして、足の速い駆逐艦や軽巡を追い掛け追い詰め追い落とす
多摩「はぁ…戦艦ル級、まだ残ってたにゃ」
正直めんどくさい
奥には空母の姿も見えるけど…一瞬、上空に目を向けると、大鳳の艦載機達が敵の艦載機を飲み込む寸前だった
見た目的には、黒が3で緑が7くらいか…放っておいても良さそうだ
ル級の主砲が多摩に向く
46cm砲にでも抉られたのか艤装の一部が欠けている
とはいえ、まだまだ行動に支障が出るほどでもなさそうだが
多摩「さて、戦艦…無駄な抵抗をして沈むか、大人しく自沈するか、選ぶといいにゃ?」
ニヤリ、と多摩の口元がつり上がる
すぅっと細く息を吐く様はどこか、肉食動物のそれのようにも見えた
ル級に言葉が通じてるのか分からないが
まあ、撃ってきたってことは、無駄な抵抗をして沈みたいのだろうと判断する
多摩「おやすみにゃぁ♪」
次の瞬間には終わっていた
多摩の足元には沈み行くル級の姿
46cm砲によって抉られていた艤装の孔が、更に広がり大破孔にまで拡大していた
ダメ押しに多摩の主砲がル級に向く
一発、それっきり…
藁でも掴むかのように伸びていたル級の腕から力が抜け、水底へと返っていく
長月「果てはサーベルタイガーだな、あれは…」
皐月「ほんとに」
そんな光景を傍から見てた皐月達
ネコを被ってる。なんて言葉はきっと、ああ言う事を言うのだろう
皐月「これくらいだったら、ボクの代わりに菊月でも良かったかもね」
長月「あまり甘やかしてくれるな…」
皐月「ふふふ。厳しいんだ、お姉ちゃんは?」
長月「お前もだろう」
皐月「そうだけどさ」
雑談を続ける2人の周りには
死屍累々と深海棲艦の艤装の破片が波間に揉まれながら沈んでいった
ー鎮守府近海・海上ー
球磨・菊月・文月
3人で鎮守府近海を回っていた
なんの事は無い いつもの警備任務
といっても、念の為というか、ただの日課程度のものだった
鎮守府始まって以来、徹底的に掃除に明け暮れたせいか
今じゃ、たまに流れ着くはぐれものか、リポップした雑魚キャラ程度
多少気が抜けてもしょうが無いというものだ
実際問題、文月はたまたま見つけたイルカと一緒に戯れているし
球磨に至っては、海面を跳ねる飛魚を素手で掴み取り、キャッチ・アンド・リリース
余裕綽々である
菊月「むぅ…」
そんな中、菊月が1人浮かない顔をしていた
球磨「クマ?どうした菊月、潜水艦でも見つけたクマ?」
大人しいどころか意気消沈している菊月
一応はと文月に視線だけで合図を送ってみるものの
潜水艦の影はなしと首を振って返ってくる
菊月「いや…そうじゃないが」
球磨「なに?まーだ長月と出撃できなかったの気にしてるクマ?」
菊月「それは…まあ…」
近海であるなら問題はないが
ちょっと遠くに、ましてや敵の編成がガチになっていると
だいたいお留守番を任されるのが気にはなる
菊月「球磨…私は、弱いのだろうか?」
球磨「弱くはないがな…強くもないクマ」
菊月「む、そうか…」
歯に衣を着せることも事もなく、思ったまま口にする球磨
そうもハッキリ言われてしまえば返す言葉も思いつかなかった
菊月「なぁ…強くなるにはどうしたらいいんだ?」
縋るような瞳が球磨を見つめている
相手はこの鎮守府の最高戦力の一角なのだ
もしかしたら、望む答えを持っているのかもしれないと
そんな希望的観測が入り混じった
期待と不安と羨望とが交じり合ったそんな視線
球磨「…まーた、変なアニメでも見たのか?」
菊月「いや、そうではないが…」
またって、なんだろう…
私はそういう風に見られていたのだろうかと、少々不安になる
球磨「クマ。菊月は強くなって、どうしたい?」
菊月の視線を真っ直ぐに受け止めると、球磨が真剣な顔で見つめ返す
菊月「どうって…理由がいるだろうか?」
直ぐに思い浮かぶ言葉…長月の為
それを口にするのは何となく気恥ずかしく、そのまま聞き返すことにする
球磨「別にいらん」
菊月「…」
問いかけておいて、あっさり否定された
球磨「いらんが、そうだな…ここにおにぎりがあるクマ」
おやつ代わりに持ってきていたおにぎりを取り出す
球磨「菊月、腹は減っているか?」
菊月「ま、まぁ…少し」
気づけばお日様もいい感じに昇ってきている
一旦鎮守府に戻る頃には、お昼時だろうか
球磨「食べるか?」
菊月「それじゃあ…」
素直に手を伸ばした菊月
だが、その手がおにぎりに触れる前に、球磨が後ろに引っ込める
菊月「むぅ…」
何のつもりだと、不満そうな視線を球磨に向ける
球磨「さて、菊月。このおにぎり、今直ぐ食べないと死んでしまうクマーとなったらどうする?」
菊月「どうって、それは…」
頼み込む?いや、最終的には奪い取るになるのだろうか
菊月「無理矢理…か、やはり」
球磨「クマ。誰だってそうするな、球磨だってそうするクマ」
では、と。一つ前置きをして
球磨「今はどうだ?死に物狂いでこのおにぎりを奪いたいか?」
菊月「いや、そこまではしないが…」
球磨「クマ。目的とはそういうもんだ。なくても良いが、あるとなしでは覚悟に差が出る、そういうもんクマ」
菊月「つまり…」
ひと通り球磨の話を聞き終え、頭にうかんだ一つの結論
菊月「腹が減ってれば強くなれるということか?」
球磨「…」
「もう、それで良いクマ」
誤解は説かない方針の球磨ちゃんだった
文月「もう、お話し終わった?」
話に一区切りついたのを見定めて、文月が2人の元に戻ってくる
周囲にはイルカを引きつれて、それどころか背びれを掴んで引っ張ってもらってる始末
すっかり手懐けてらっしゃった
球磨「クマ。帰ったらイルカ料理クマ」
文月「やーめーてーっ」
じゅるりと、口元を拭う仕草をする球磨に、文月が縋りつく
球磨「くまくまくまくま♪じょーだんだくまー……じゅるり」
一瞬目がマジになる球磨ちゃん
文月「嘘だっ。かいさーん、皆かいさーんっ!」
文月がパンパンと手を叩くと、周りに集っていたイルカたちが一斉に逃げ出した
球磨「しゃーねークマ。イルカがダメになったし、一旦鎮守府に戻るクマ」
文月「やっぱり食べる気だったっ」
球磨「さてな?ほら、菊月も行くクマ」
不敵な笑みを文月に返すと、菊月の手を引いて鎮守府に進路を取る
菊月「あ、ああ」
手を引かれるままに、球磨についていく菊月
文月「ほっ…それじゃ、みんなまたねー」
遠巻きに見つめていたイルカさん達に手を振ると
球磨達の後を追う文月だった
ー鎮守府・食堂ー
文月「…」
今日のお昼は鯨料理でした…心臓に悪い
球磨「くまくまくまくま♪」
文月「…くまさん」
隣で愉しそうに笑っている球磨
なるほど、クジラがあるの知っててやったのか
その行動に、なんとなく司令官の影が見えてくる
似てきたのかな…厄介なことだ
菊月「…」
じーっと、なにやら小難しい顔をしてお皿を見つめる菊月
夕張「どうしたの?くじら、嫌いだった?」
いつもなら美味しそうに かきこんでるだろうに
箸が止まってるどころか、箸をもってすらいないその姿はかなり奇妙に思える
木曾「早く食わないと、球磨に横からとられるぞ」
大井「木曾さんじゃないんだから…」
ぽつりと呟くような大井の言葉
しかしそれは、ハッキリと木曾の耳に届くような音量だった
木曾「はっ、面白い冗談じゃねぇか、ああ?」
大井「あら、冗談に聞こえたの?手癖どころか、頭まで悪いのかしら?おほほほほ」
バチバチと見えない火花を散らす2人
瑞鳳「あんたら、その変にしとかないと、纏めて球磨おくりよ?」
球磨送りの刑:鎮守府内、最高練度の球磨による演習という名の鉄拳制裁
球磨「くまくまくまくま♪。瑞鳳、安心するといい。もう遅い」
瑞鳳「あ、うん」
そりゃ、そこそこ広い食堂とはいえ
同じ部屋の中で、姉妹喧嘩始めりゃ気づかれるか
木曾「いや、待てっ。今のはコイツがっ」
大井「貴女があれくらいでいちいち噛み付いてくるからっ」
球磨「昔の人は良い事を言ったクマ」
喧嘩両成敗
木曾「ちっくしょうっ!」
大井「覚えてなさいよっ!」
同時に立ち上がると、二人して食堂を飛び出す
ここでゴネた所で球磨のボルテージを上げるだけ
なら、お互い体力がある内に
演習で倒してしまったほうがまだワンチャンあるとの経験則だった
球磨「くまくまくまくま♪やる気があるの良い事だクマぁ」
必死な2人の後を追って、優雅に退室する球磨ちゃんだった
卯月「それで、ほんとにどうしたぴょん?」
未だに食べようとしない菊月の顔を覗きこむ卯月
菊月「球磨が、な…」
かんかんこれこれと
警備任務中に、球磨と話してた内容を伝える
お腹が減ってれば強くなれるって、そんな内容だったはずだ
夕張「いや、菊月それは…」
ハングリー精神という意味では間違ってないけれど
瑞鳳「球磨さんも、投げっぱなしにしないでよ…」
頭を抱える夕張と瑞鳳
弥生「菊月…」
菊月「ん…弥生?」
そっと、後ろから包み込むように菊月を抱きしめる弥生
弥生「私はね、菊月が美味しくご飯を食べて、楽しく遊べて、安心して眠れる
その為だったら、強くなれるって思う、かな」
優しく、諭すような弥生の言葉
菊月「それは…ありがとう」
弥生「うん」
その愛情は素直に嬉しく思うが
少々気恥ずかしいのも手伝って、赤くなった顔を俯ける
文月「はーい♪それじゃー、弥生お姉ちゃんは あたしが守ったげるね」
弥生「うん、ありがとう文月」
菊月を抱きしめてる弥生
そんな弥生の後ろから抱きつく文月
夕張「ふーん…」
ちょっと感動したって言えば大げさかもしれないけれど
ハングリー精神云々いうよりは
ただただ姉妹の明日のためにって言う方が、個人的には好きだった
だったら、便乗しちゃおうかな
夕張「それじゃ、私はそんな文月を、ね?」
文月「わーい」
弥生を抱きしめてる文月の、その後ろから腰に手を回す夕張
卯月「あ、ずるいぴょんっ!うーちゃんも仲間に入れるぴょんっ!」
夕張「いいわよー、こっちおいで?」
卯月「ぴょんっ♪」
文月を抱きしめたまま手招きする夕張
そして、その背中に飛びつく卯月
卯月「しゃーねーから、夕張は卯月が守ってやるぴょーん」
夕張「はいはい、よろしく頼むわね」
菊月←弥生←文月←夕張←卯月
気づけば何やら数珠つなぎになっていた
瑞鳳「…」
微笑ましい、とは素直に思うけど
なんとなく、本当になんとなくだ、今まだの経験が告げていた
この流れは不味いって
「…」
皆の視線が瑞鳳に向く
そうら、案の定だ
瑞鳳「いや、私は別に…」
とりあえず、お茶を濁す努力はする
別に嫌とかいうわけではないが
気恥ずかしさが先に立ち、素直にあの列に加わるのが躊躇われる
卯月「…ずいほうは、うーちゃんの事守ってくれないの」
瑞鳳「うぐ…」
瞳を潤ませて、瑞鳳を見つめる卯月
それに何よりコイツだ
今ここで認めたら、絶対調子に乗るんだから
こんなの絶対泣き落としだ、なーんてうそぴょーんとか言われるに決まってる
落ち着け私、落ち着け私
瑞鳳「…ま、守るってあんたの方が強いじゃないのよ…」
卯月「…」
ぶっきら棒に返される瑞鳳の返答を受けて
卯月がしばし考えこむ
が、それも束の間
卯月「はぁ、それもそうぴょん」
瑞鳳「…」
呆れるように溜息を付く卯月
それは、言い出したのは私だけど
こうもあからさまにやられると腹立つわ
卯月「しゃーねーから、うーちゃんが守ってやるぴょん」
瑞鳳「…」
嘲笑する様に顔を歪めて呆れるように首を振る卯月
卯月「ほら、うーちゃんの胸に飛び込んで来るぴょん、頭なでてやるぴょん」
瑞鳳「…」
大きく深呼吸
ここで騒いだらいつも通りだ、ここで反応するからコイツが余計に
卯月「いつまでも卯月が離れが出来ないとか、瑞鳳もまだまだ子供ぴょーん」
瑞鳳「っ!」
切れた
瑞鳳「このっ、私が子供ならあんたはどうだって言うのよっ!」
卯月「うぷぷぷぷ。うーちゃんに守られてるだけの瑞鳳よりは幾らかマシかと思うぴょんっ」
嘲笑を貼り付けて、無い胸を張る卯月
瑞鳳「ふふふふ。そう、それじゃあ…」
ちいさな笑いを零し、艤装を展開した瑞鳳が弓矢を構えた
瑞鳳「アンタは私が討つわ、今日っここでっ!」
卯月「瑞鳳が怒ったぴょん、逃げるぴょんっ!」
瑞鳳「待ちなさいっ!」
脱兎のごとく飛び出した卯月が、食堂の窓を飛び越え外にでた
それを追いかける瑞鳳もまた、食堂の窓を飛び越える
走り高跳びの選手権でもあれば良い線いけそうだった
「待てと言われて待つわけないぴょん、そんな学習しないからお子様だって」
「いっつも人の事からかってるアンタはどうだって言うのよっ!」
「これは愛情表現ぴょん。素直に受け取るぴょん」
「いるかそんなもんっ!」
食堂から2人が飛び出してみれば、自ずと喧騒は遠ざかり
静かな昼時の食堂の空気が戻ってくる
夕張「はぁ、いつまでやってんだか」
文月「仲いいよねぇ」
弥生「うん」
2人の背中を見送る3人
喧嘩するほど仲がいい、それを写真したらきっとああいう絵になるはず
そんな感想を共有していると
くぅぅ~
かすれるような音が聞こえてくる
菊月「…」
音のもとを探してみれば、元々俯いてた菊月が更に小さくなっていた
弥生「お腹すいた?」
菊月「…うん」
素直に頷く菊月
強くなる、そんなことより目の前の空腹を満たすほうに天秤が傾いていく
弥生「たべよ?」
菊月「うん」
一口。食べてしまえば後は簡単だった
いつもの調子を取り戻して、いや我慢してたせいかいつも以上に
元気よく食事を平らげる菊月だった
ー
一方その頃。母港、その海上
瑞鳳「木曾さんっ、そいつ止めてっ!爆撃出来ないっ!」
木曾「はぁっ!?お前ら何やってっ!」
大井「こっちはソレどころじゃないってのっ」
球磨「ほぅ…。卯月っ、頭抑えてるクマっ!」
卯月「おまかせぴょんっ!」
対空カットイン
超10cm砲+高射装置x2 13号対空電探改
木曾「くっそっ。瑞鳳っ球磨抑えてろっ」
大井「卯月はこっちでどうにかするからっ」
瑞鳳「了解っ!」
球磨「させるわけねぇクマぁぁぁ!」
卯月「身の程を弁えるぴょーん!」
大乱闘に発展していた
ー執務室ー
午後
いつもの昼下がりで、お腹が一杯になれば眠くもなる時間
そして、そうじゃなくてもソファーに寝っ転がってる提督
いつもと違うことと言えば
反対側のソファーに座っている菊月と、二人っきりって事くらい
たまには秘書艦やってみたらって事でお鉢が回って来たらしい
菊月「なぁ…司令官は何で戦ってるのだ?」
それは唐突だった
机の上に広がった書類とにらめっこしてるかと思えば
そんな事を口にする
提督「…そんなアニメやってたっけ?」
言葉の意味が分からんわけでは無かった
けれど、その意図まで汲み取れず
とりあえず、ありえそうな答えを選んでみる
菊月「いや、そういうわけでは…」
…球磨にも言われた気がする
やはりそんな風に思われているのだろうか…
いや、でも、司令官には言われたくない気もするが
まあ今は良い、重要じゃない
菊月「司令官は深海棲艦の事が怖いのだろう?それなのにどうして、戦っていられるのだ?」
提督「どうしてって…」
一瞬。茶化してしまおうかとも思ったけれど
寝転がったままに菊月の様子を伺ってみれば
真面目な顔でこっちを見つめていた
提督「菊月。自分の部屋に知らない奴がいたら怖いだろう?嫌だろう?」
菊月「そう、だな。それは分かる」
提督「しかも夜な夜な枕元に立ってるんだぞ?」
菊月「…怖いな、それは」
提督「だろう?」
何の事はない
提督にとっての深海棲艦なんてそんなもの
敵性のUnknownが家にいるから叩き出すってだけの話
菊月「でもだ。それなら、いつも見たいに逃げれば良いのではないか?」
提督「…まるで私がいつも逃げまわってるような言い方ね」
菊月「え?」
提督「…」
なにか間違ったのかと、不思議そうな顔で提督を見つめる菊月
まあ、実際間違ってもないのだからそこは良いのだけれど
提督「ここには私が先にいたの。なんで出て行かなきゃならんのだ」
これもまた至極単純な理由だった
世のため人のため何て正義の味方のする事だと
都合の良い事に、私はそういう風には生まれついてないし
菊月「そういうものなのか」
提督「そんなもんだろ?」
菊月「だが、私は艦娘で、あなたは司令官だ。人の為とか、世界の為とか、あるのではないか?」
ごもっともな話ではある
だが、そんな事の為に戦える奴は
夢見がちなお子様か、あるいは ネジの飛んでる馬鹿か阿呆な類だろう
提督「菊月」
菊月「ん…」
珍しく芯の通った、提督の声に居住まいを正す菊月
提督「お前は、世の為人の為に命かけられるの?死んじゃえるの?」
菊月「それは…」
できる。と、言おうとしたが口は動かなかった
だって、ピンとこない
艦娘や軍人としての在り方なら正しいのかも知れない
そうあるべきなのは何となく分かる
しかし、何となくなんだ
曖昧で漠然としていて、よくわからない
そんな良くも分からない ものの為に死ぬのは嫌な感じだ
提督「じゃあさ」
言い淀んだ菊月をみて少し安心した
これで死ねるとか言われた日には、どうしてやろうかと思ったところだ
提督「仲間の為、姉妹の為、長月の為、とかだったら?」
菊月「うん、問題ないな」
今度は素直に口が動く
先ほどと同じ質問だったのに、対象が変わればこうも違うものなのか
提督「あ、私の為だったらどうかな?」
明らかに からかいに来ていた
それはもう菊月でも分かるくらいに
菊月「ふふ、どうするかな、それは」
それならばと、小さく笑って
冗談は冗談で返す
提督「あはははは。冷たいんだ、私はこんなに菊月の事が大好きなのに」
菊月「礼は言わぬ、が。私も好きだぞ、司令官の事は」
提督「礼は言わねーぞ?」
菊月「ああ、言われなくても分かっている」
それだけ言うと、また書類に視線を戻す菊月
余程難しい事でも書いてあるのか、みるみる難しい顔をになっていく
提督「…」
そんな菊月を眺めながら考える
逃げれば良いのに、なんて菊月の言葉
確かに、最初の頃は最悪そうもしようかと考えてもいたけれど
提督「…家族も増えたしなぁ」
独り言が宙に消えていく
書類と睨めっこをしたままの菊月の耳には届いてはいないようだった
あまり深入りする気はなかったのに
気づけば ずぶずぶと…
こいつらがいなかった時の私は、どんな生活してたのかと忘れそうになる
菊月「なぁ…司令官?」
提督「今度はなぁに?」
神妙な顔をしている菊月
戦う理由の次とくれば、強くなりたいとかか
そんなの知らんがな、と言うしかないのだけれど
菊月「この書類、どうやったら片付くんだ」
提督「…」
予想が外れた上に、なんとも現実的な問いである
提督「良いか、菊月。先ずは書類を裏返して机に置くんだ」
菊月「わかった」
素直に書類を裏返して机に戻す菊月
提督「次にソファーに横になって目をつぶります」
菊月「ん」
提督「最後に羊を数えるんだ」
菊月「羊が一匹、羊が二匹、羊が…(以下略」
提督「…」
素直な娘だった
さすがにツッコんで欲しい気もするけども
菊月に習って、ソファーで寝直すこととする
隣からは菊月の声
子守唄というより、催眠術の類ではあるが
次第にそれも微睡んでいき
完全に聞こえなくなる頃には、寝息へと取って代わっていた
ー
三日月「…ねてる」
夕方。三日月が戻ってみればこれだった
ソファーで仲良く寝こけている司令官と菊月
仕事が終わったのだろうか
なんて期待も、裏返しになった書類の下から覗く、白紙の山に埋もれていった
望月「すげぇな」
何がって、この状況で堂々と寝れる度胸かな
望月「まぁ、とりあえず。あたしらも寝よっかぁ?」
司令官だって寝てるんだ、あたしが寝たって何の問題もないはず
三日月「ダメに決まってるでしょ」
望月「えー」
妙案だと思ったのに、あっさり三日月に却下された
三日月「はぁ、もぅ…夕食までに片付けないと。ほら、望月も、司令官起こして」
望月「あーい。ていうか、起きてんだろ?」
提督「…まぁね?」
望月が軽く提督を小突いてみれば
あっさりと目を開ける提督だった
三日月「はい、司令官。これ、確認お願いしますね」
提督「…あいあい」
提督の体をソファーの奥に押し込んで
空いたスペースに腰を下ろす三日月
そして、菊月と同じように書類を見つめるが
その手は止まることはなく、さっさかっさかと片付けていく
流石というべきか、手慣れてらっしゃった…
ー
菊月「…おお。凄いぞ司令官、ほんとに書類が片付いてるなっ」
目をキラキラさせて、綺麗になった机の上を見つめる菊月
彼女が目を覚ます頃には、散らばっていた書類は綺麗さっぱり片付いていた
望月「すげーだろ?寝てれば妖精さんが片付けてくれるんだぜ?」
菊月「なるほど。それでいつも司令官は寝ているのかっ」
望月「そうそう…くくくくくっ」
馬鹿みたいな冗談をあっさり信じる菊月
この程度、悪戯にもなりはしないが
ちょっと面白くなってきた望月だった
三日月「そんな訳ないでしょ…まったく」
呆れる三日月
結局、書類の大半は彼女が片付けていた
つまりは三日月が妖精さんってことになる
提督「そうそう、三日月はその辺の妖精より可愛いんだから、ね?」
同意を求める様に望月に視線を送る提督
望月「どっちかつーと、天使だしな」
提督「うん、天使だな」
いやらしい笑みを浮かべる2人の視線が、三日月に突き刺さる
三日月「わ、私が天使だなんて…あり得ないからっ」
そのまま勢い良く立ち上がると、逃げるように扉に向かう三日月
隠すようにうつむき加減な その横顔
そこに朱色が差しているのを確認する
結論は、可愛い
三日月「ほら、そろそろ夕食だからっ、先行くからっ…」
なんか言い訳めいた台詞を残し、執務室から逃げ出すように出て行った
確かにお腹も空いてきたし、いい時間ではあるのだけれど
菊月「三日月は、何を怒っているのだ?」
提督「…」
望月「…」
アレが怒っているように見えたのかと
顔を見合わせる、提督と望月
「菊月は可愛いなぁ」
2人で菊月を取り囲むと、その頭をなでくりまわす
菊月「ちょっ!?やめないかっ!」
抵抗虚しく、2人が飽きるまで揉みくちゃにされる菊月だった
ー鎮守府近海・海上ー
夜
月明かりのない海上は、いつもよりも一層暗く感じる
お月様が隠れてる代わりに、星明かりがいつも以上に見えはするのだが
陸地に見える灯りと混ざり合い
自分が今、何処に立っているのか分からなくなりそうな、不安を誘っている
菊月「失敗したな…」
そんな頼りない星明かりの中に菊月が1人でいた
昼間、あんな時間に昼寝をしてしまったせいか
布団に入っても寝付けずに
気晴らしに散歩でもしてようかと、海に出ていた
菊月「航海中に、後悔…なんてな」
そんな独り言が波間に消える
面白く無いのは分かってはいるが
なんとなく口からでてしまったのだから仕方がない
菊月「しかし…」
困ったな。全然眠くならん…
気づけば随分と沖合まで出ていた
明日もあるし、とりあえずは戻っておくか
そう判断し、菊月が進路を変更しようとした時
一瞬の雑音。次いで、電探に反応が上がる
菊月「こんな近海に…またイ級か…」
相変わらず何処にでも湧いてくるらしい
周囲に他の艦影もなし、それならと主砲を構える
見つけた以上放置というわけにもいかない
単独での戦闘は極力避けろ、とは言われているが
まあ、極力だ。イ級程度なら、もう2・3いたって問題にはならないだろう
それに何より、少し体を動かしたかった
ー
菊月「まぁ、こうなるよな…」
イ級が射程に入ってから、一発。それだけだった
勝利の余韻、それに高揚と達成感、そんなものはまるで感じない
主砲から吐き出される煙とともに、作業感だけが漂っていた
菊月「戻るか…」
頭を振って、鎮守府へと進路をとる
もう、2・3撃ち合いをしたくもあったが、贅沢は言ってられない
それに、一匹出たということは…釣られてもう2・3出ないとも限らない
菊月「ふぅ…嫌な予感は、嫌な現実を引き寄せる、だったか…」
今の自分の心境を、どこかで聞いた言葉に代弁させつつ、現状を確認する
電探に感あり…1・2・3・4…
見事に囲まれているな…
幸い、目の前の奴を除けば3隻とも駆逐艦で助かりはするのだが
菊月「重巡か…」
しかも色付き
鎮守府への航路を塞ぐように立つそれ、金色のオーラを纏う重巡
そこに目を向けると、自然とその仄暗い瞳と目が合った
勝てなくはない…いや、出来るだろう…
球磨より弱いと思えば、大概の巡洋艦クラスなんて可愛いものだ
だが、4対1という状況が面白くない
これで勝利は5分かソレ以下か…
どうする?
そんな自分への問い
ここまで派手に湧いているなら、司令官だって気づいているだろう
となれば、援軍がくるのも時間の問題…なら、逃げ回れば死にはしないか…
無難ではある…だが…
菊月「長月なら…」
長月なら、他の姉妹達ならどうするだろうか、この程度と1人で片付けてしまうだろうか
皆、私より強いんだ…おそらくやれるのだろうな
菊月「やってみるか…」
主砲を握りしめる
後々思い返せば、劣等感に焦燥感とか
多分そんな感情に背中を押されていたのだと思う
とはいえ、甘く見ても勝率は5分かそこら
時間稼ぎなら兎にも角、勝つともなれば少々厳しい
なら、勝率を少しでも上げるにはどうするか
作戦を立てるか…重巡を先に?駆逐艦を先に
やるなら後者か…数の優位は早めに潰しておきたい
だとして…あと自分に出来ることは…
意地とか気合とか根性とかなんて気休めは置いておいて、今の自分に打てる手は…
菊月「使うか…」
胸元に視線を落とす
首から下げられた紐。その先には銀色に輝くケッコン指輪
今まではお守り程度にしか思っていなかったが…やはり有るのと無いのでは違うものだ
指輪に触れ、しばし考える
球磨曰く、切り札は最後までとって置くべきだと
それは分かる。開幕ブッパで息切れではしようもないし
提督曰く、切り札は使える内に使っておけと
それも分かる。使いたい時に使えなくなっている位ならとも思う
どちらにせよ、結局はタイミングなのだ
では、今はどのタイミングなのか…
菊月「…エンゲージ」
指輪を外し、左手の薬指へと嵌めると、一言つぶやいた
別に言う必要ないが、気分を変えるための魔法の呪文のようなものだった
菊月の周りから、桜色の燐光が溢れだす
拙い星明かりに成り代わり、夜の海を染め上げた
体に力が漲り、視界が広がる
気分も高揚してるのだろうか、今なら何でも出来そうな気がした
これを使うと司令官が腹減ってしょうが無いと言っていたが、この際は我慢してもらおう
菊月「ふぅ…」
一つ、息を吐いて、改めて周囲を確認する
駆逐艦3,重巡1、変りなし、他愛もなし
勝利条件は…重巡を突破して鎮守府に戻る…最低限ならそうだが
菊月「まさかだろう…」
自然と持ち上がる口の端を抑えることもせずに
主砲を目前の重巡へと向けた
ー
長月「っ!」
提督「はい、すとーっぷ」
菊月の方へと、飛び出しかけた長月の肩を抑えて押しとどめる
長月「司令官…」
肩越しに提督を睨みつける長月
回答を間違えようものなら、ゼロ距離から主砲を打ち込まれそうな迫力だった
提督「過保護が過ぎるんでないかい?」
長月「そんな事は…」
大なり小なり自覚はあったのか、答えに窮する長月
提督「もう少し見てようぜ?」
長月「…」
提督「実際…何処までやれるか、見て置きたくもある」
長月「面白そう、だとか思ってないか…」
提督「0でもないけどね…大丈夫だよ、いざともなれば止めるさ」
長月「…まあ、良い。少しだけだからな…」
一応、溜飲は下がったのか
視線はそのままに、長月の体から力が抜けた
とはいえ、主砲こそ下ろしてはいるが
その魚雷発射管は正確に、矛先を敵に向け続けてはいるようだが
提督「シスコンめ…」
長月「だまれ、ロリコン」
冗談半分呆れ半分に、お互い小突きあう2人だった
ー
菊月「流石に、威力はあるな…」
重巡から飛んできた砲弾を、半身を逸らすことでやり過ごす
見積もりが甘かったのか、制服を掠めた砲弾が白いスカーフを弾き飛ばす
この程度では損害のうちにも入りはしないが
そっと、腰の方へと手を落とす
三日月形のアクセサリー
皆とお揃いのそれを持っていかれるのは嫌だなとは思う
菊月「さて…まずは一つ」
全速で後退して重巡から距離を取る
その間にも容赦なく重巡からの砲撃が飛んでくる
その中を掻い潜ること数発分
後方の駆逐艦がこちらの射程に入った
飛んでくる重巡の主砲
それを再び体を逸らして避ける
そして、その勢いのまま体を回転させ、主砲を後方の駆逐艦へと向ける
こちらが射程内にはいってるんだ
となれば、相手にとってもそうだろう
こちらが主砲を向けてみれば
大口を開けて、主砲をこちらに向けている駆逐艦が目に入る
だったらどうだというのだ?
構わずに引き金を引き、主砲を発射する
同時に相手の主砲も火を吹いた
狙いが同じだというのなら、射線もだいたい同じなのだろう
平行線を描くようにすれ違う二つの砲弾
ただ一つ、違っていたのはその威力
12・7cm連装砲B型改2★MAX
現状考えられるだけの火力増強を盛り込んだその主砲
その威力は、交差する敵弾を弾き飛ばしても なお有り余り
敵弾が菊月の足元へと着水すると同時に、真正面から突き刺さった
駆逐艦の装甲を抉って中へと食い込む砲弾
装甲の下がどうなっているのかは不明だが
何かよくわからない液体が漏れているのが見える
次いで、小さな爆発が起こる
それも束の間
弾薬庫にでも引火したのか、さらに大きな爆発が起こりズブズブと海中へと沈んでいった
菊月「…残り3」
思いっきり後退したお陰か
幸いにも正面の視界の範囲に、残りの敵が収まってはいるわけだが
菊月「真正面から突っ込むか…」
そう口にして、流石にと頭を振って踏みとどまる
指輪の力も相まって、持て余し気味のその力
調子に乗ると加減を間違えそうだった
気を取り直してもう1隻だ
両サイドには駆逐艦。直にまた挟み込まれるだろうか
だがしかしだ、同じ手は何度も食わんよ
そう…今朝方、姉たちに弄ばれた時のことを思い出す
そうだ、今にして思えば最初からこうして置けばよかった
菊月「突撃する…」
片方を潰す、一息で、この手に限る
全速で片方の駆逐艦へと突っ込むと、流石に敵からの砲火は激しさを増していく
だからどうだというのだ、どうせ厄介なのは重巡の主砲くらいなもの
球磨曰く、戦いの基本は攻撃であると
攻撃、そして攻撃、最後に攻撃だと
攻撃こそ最大の防御、相手に攻撃をさせないのが一番だクマ、と
菊月「とったっ!」
駆逐艦を真正面に捉える
今なら当てられるそんな確信を掴んだその一瞬
そんな僅かな合間に、重巡の主砲弾が飛来する
避けるか?否だな
引き金を引く、同時に爆雷を握りしめ空中に放り投げる
菊月「っぅっ!」
B型改2の砲弾に貫かれて、駆逐艦がズブズブと沈んでいく
同時に頭上で、投げ捨てた爆雷と重巡からの砲弾がぶつかり合って爆発を起こす
菊月「っ!ええいっ!」
その衝撃で足が止まった瞬間
間の悪いことに、横合いから飛来した駆逐艦の主砲が直撃する
その衝撃で、多少制服が破れはするがその程度だ
痛みはぐっと飲み込んで、主砲を最後の駆逐艦へと向ける
一発。まだ爆発の煙の晴れないその内に引き金を引く
狙い過たず、次弾装填中だった駆逐艦に強引に砲弾が押し込まれた
菊月「後はっ!」
正面を見据える
重巡リ級flagship、金色に輝くその異様
対して、桜色の燐光を従える菊月
海上で相対する二つの灯り
ふと思う
もしかしたら、あの重巡も指輪の様なものを持っているのだろうか?
だとしたら、後ろに提督、そんな存在がいるのだろうか?
益体もない思考ではある
だいたい、目の前の重巡の
その意思の薄い泥みたいな瞳からは、読み取れるのは…
菊月「ふっ、よくて首輪だな…」
言われるがまま、ないしは恨み辛みに突き動かされてるだけの瞳
まるで狂犬だな。だが、犬では私は倒せない
桜色が金色へと向かって動く
こちらの射程に入るまでに数発、先手を撃たれるだろうがそれだけだ
飛んでくる砲弾を、避けて、避けて、避けて…
ようやっと、こちらの射程へと入る
同時に更に飛んで来る砲弾
菊月が腰に手を伸ばすと、爆雷を引っ掴んでそれに向かって放り投げる
当然のように起こる大爆発
その炎と煙が都合よく重巡との間を遮る
その間に魚雷をばら撒く
狙いなんか適当だ当たればよし、そうでなくとも牽制になればいい
重巡も魚雷に気づいたのか、煙の向こう側、電探への反応が慌ただしくなる
菊月「さあ、フィナーレだ」
きっと火の輪潜りをするライオンはこんな気分だろうか
正直、頭がさがるな…
煙の中、目を開けるのも一苦労だというのに
肌は焼けるわ呼吸は出来ないわで、逃げ出したくなる
一歩。強引に爆発の中を抜けてみれば
こちらもようやっと射程に入る
目の前には魚雷の対処に動く重巡
都合が良いとはこの事だ
全速前進。そして、主砲を上げて引き金を引く
魚雷の対処に追われていた重巡が、反応するも遅い
着弾、爆発
だからといって沈むものでもない
爆発の向こうからでも未だに黄金の輝きは健在に見える
だからといって止めるわけもない
1発でダメなら2発3発…それでもダメなら
菊月の主砲。その衝撃に動きの鈍った重巡
とはいえ致命傷には程遠いだろう、流石に重巡まで来ると堅苦しい
だが、釘付けに出来てるならそれでいい
その間に距離を詰める、もはや主砲を外しようがないほど近づいたその距離
菊月の小さな手に爆雷が握られる
それをサイドスロー気味に重巡へと放り投げる
空中で勢い良く回転する円筒状の爆雷
それが海面に触れ、回転の勢いで弾み、波間の上を跳ねていく
そして、重巡の足元に到達すると…爆発した
重巡の目が一瞬、驚きに見開いた様な気がするがそこは置いておこう
そんな中、菊月は足を止めずに全速前進
その速度を保ったまま、爆雷が引き起こした爆発の中へ飛び込んだ
そして、空中で足を伸ばし、魚雷発射管を突き出した
期待通り、足の裏に衝撃が伝わる
爆発の余韻が収まらぬ中
胸元で、辛うじて菊月の足を受け止めてる重巡
衝撃を受け止めるように体を曲げる菊月
そして、溜まったバネが弾けるように体を伸ばした
胸元から跳ねた足が顎を蹴り上げ、そのまま後ろに飛ぶ
それと同時に残していた魚雷の全部を射出した
月のない夜。星明かりだけの頼りない光の中
一瞬だけ、月が顔を出す
それは三日月。桜色の綺麗な弧が夜空に浮かんだ
菊月が着水すると同時に、爆発
爆炎の中に黄金の輝きが飲まれ、焼きつくされる様に朽ちていく
菊月「ふぅ…」
息を吐く。どうなるかとも思ったが…
完全勝利S、だな
だがそうは問屋が卸さない
「このっ、馬鹿者がっぁぁぁ!!」
菊月「へ?」
突然の怒鳴り声、顔を向けてみれば長月の姿
だがその顔は、健闘を称えるものとは程遠く
阿修羅のような般若のような、そんなイメージの方が近かった
では、そこから伸ばされる拳は、羅刹のそれか夜叉のそれだろうか?
菊月「ぐはぁっ!?」
大技の後の硬直
まったくの無防備な菊月の頬に容赦なくめり込んだ
菊月「な、え、あ…なに、すんのさっ!?」
一瞬、状況に付いて行けずにフリーズする菊月だったが
行きなりグーパンされた事を理解すると、流石に抗議の声を上げる
長月「やっかましいっ、何をやっているんだ貴様はっ!」
殴られた頬を抑え、海面にへたり込む菊月
その前に鬼のような顔をした長月が仁王立ちになる
菊月「なにって…敵が、いたから」
長月「1人で戦うのはやめろって、いつも言ってるだろうがっ」
菊月「囲まれてたし…」
長月「必要以上に戦闘してたようにしか見えなかったがな…」
菊月「見てたんなら…」
長月「ああ、お前がどうするか気になったからな…だがなんだ、あんな無茶な戦い方をしてっ」
菊月「だって…」
長月「だって、じゃないっ。指輪まで使って…オモチャじゃないんだぞっ」
菊月「司令官だって…好きに使えって…」
長月「好きに使えと、無闇に使うのは別物だろうがっ」
菊月「ぅぅ…」
長月の勢いに追い立てられて、次第に菊月の言葉小さくなっていく
それはだって、久しぶりに指輪使って、調子に乗ってたのは認めるけど
私だって頑張ったのに…そんなに怒ることも無いじゃないか…
そんな思いがグルグルグルと渦を巻いて、胸中に広がっていく
ここは素直に謝ってしまうのが一番なのだろう
私だって悪かったのはそうなのだし…だが、しかし…
こうも一方的に怒られるのは、なにかこう…納得がいかない
だいたい長月はいつだって…
菊月「…うるさい」
長月「…なに?」
菊月「うるさいって言ったのっ!」
へたり込んだままの菊月が、海面に拳を叩きつける
海水が体にかかり、髪や服を濡らすがそれも もうどうでも良かった
我慢していたのに、一度口にだしてしまった言葉はもう止まらない
菊月「長月はいつだっていつだっていつだって、私の事子供扱いしてっ!」
長月「そうやって、癇癪起こすような奴が大人にみえるか?」
菊月「しらないっそんなことっ!
長月だって、戦闘が終わったらいつも震えてたじゃないかっ!そんなんが大人だって言うのっ!」
長月「なっ!?いつから…」
隠していたつもりだったそれを言い当てられて
長月の頭から血の気が引いていく
菊月「最初からだよっ!知ってたもんっ、見てたもんっ、姉妹なんだよっ!分かるよそんぐらいっ!」
長月「ぅぁ…」
菊月が口を開く度、その拳が海面を叩きつけ水飛沫をあげる
確かに、だれがどう見ても癇癪を起こした子供だろう、駄々っ子のそれにしか見えないだろう
けれどそれは、長月の口を縫い合わせるには十分だった
物静かな方では無かったが、こんな風に感情を吐き出すことなんて今まで無かったのだ
隠してた事がバレていたショックと合わさり、ここに形勢は逆転する
「なのにいつもいつもいつも!私ばっかり後ろに回そうとしてっ
安全な所に置いておいてっ!自分が一番怖いくせにっ!
私だって長月の事守ってあげたいのにっ、助けたかったのにっ!
私はそんなに頼りないのっ!そんなに邪魔なのっ、長月は菊月の事嫌いなのっ!
おねえちゃんのばかぁぁっ…もぅっやぁぁだぁぁぁぁ…うわぁぁぁぁん」
後はひたすら泣くばかり
言いたいこと言い切った後は
今まで塞いでいた感情を吐き出した後は
恥も外聞もなく、大声を上げて泣きじゃくる
長月「ぅ、ぁ、えっと…」
言葉に詰まる、何を言って良いのかわからない
ごめんなさい、なのか、ありがとう、なのか、それさえも違うのか
ただ泣きじゃくる菊月、その姿は確かに丸っきり子供の様ではあったけど
これを子供だといって切り捨てられはしなかった
ー
皐月「なに、あれ?」
飛び出していった長月に代わって、到着した皐月
そして目にした光景は、大泣きしてる菊月の前でおろおろしてる長月の姿だった
提督「喧嘩でしょ?可愛じゃない?」
皐月「司令官。顔、ニヤけてるよ?」
提督「おっと…」
皐月に言われて、上がっていた頬を元に位置に押しこむ
提督「夫婦喧嘩は犬も食わないというが、姉妹喧嘩誰か食べるかな?」
皐月「知らないよ、そんなこと…」
球磨「クマ。しらねーが、深海の奴らに食わせる姉妹喧嘩もないクマ」
ひょっこり顔を覗かせる球磨
提督「…また増えたのか」
球磨「クマ」
何がと言われれば深海棲艦だろう、今日は厄日らしい
球磨が一つ頷くと、その耳に通信が入る
夜禎さん「球磨様、そちらより2時の方向、敵艦隊発見ですわ…」
球磨「了解だクマ。お前はそのまま周囲の観測を続けてるクマ」
夜禎さん「御衣に」
球磨「さて…敵は空気を読む気は無いらしいクマ?」
どうするのか?と視線だけを提督へ向ける球磨
提督「久しぶりに3人で行くかぁ…」
ぐーっと背伸びをする提督
皐月「はぁ…今から皆呼びに言ってる時間もないか…」
球磨「くまくまくまくま♪別に提督はお留守番でも構わんクマ?」
提督「はっ、私に負けるのが怖いのか?」
球磨「…ほぅ、面白い冗談だクマ。いい度胸だクマ。いい加減どっちが強いかはっきりさせるクマっ」
バチバチと、火花が散りそうなほどに視線を突き刺し合う2人
皐月「ちょっと…ボクの事も忘れないでよ?」
やる気満々の皐月ちゃんだった
球磨「くまくまくまくま♪そうだったクマ、じゃー3人で行くクマー!」
2時の方向へ進路を取り先行する球磨
提督「皐月」
皐月「うん」
2人が小さく視線を交わすと、その後を追いかけていった
「あっ、提督っ皐月っ!二人がかりとか卑怯クマっ!」
「ふはははー。誰がタイマンだといった?」
「あはっ♪今夜の罰ゲームは球磨さんだねっ♪」
「クマぁぁぁっ!させねぇぇぇくまぁぁぁ!」
この夜の戦闘の事を、後に夜禎さんはこう語る
夜禎さん「いくら敵とはいえ、少々同情いたしますわ」
と…
ー母港ー
翌日
菊月「それじゃあ、言ってくるぞ司令官っ」
お空で輝く太陽と、同じかそれ以上に晴れ晴れとした菊月
昨夜、大泣きしてたのが嘘のようだった
いや、泣くだけ泣いたお陰なのかとも思う
提督「おう、気をつけてな~」
そんな菊月に、適当に手を振って応える提督
大鳳「ねぇ…提督?菊月、何かあったの?」
昨日はあんなに不貞腐れてた菊月
その噓のような変わりように訝しがる大鳳
提督「大好きなお姉ちゃんと一緒だからはしゃいでるんでしょ?」
それ以上は興味なしとばかりに、手で口を抑えあくびを噛み殺す
球磨「ゆうばりぃぃぃっ、旗艦に一番大切なモノはなんだぁぁぁっ!」
夕張「なにって…判断力、とか?」
球磨「ちっがーうっ。度胸だクマー、鉄の意志と鋼の強さだクマー」
ちなみに、今日の旗艦は夕張さん
次いで、瑞鳳と長月と菊月で対潜警戒の予定だった
瑞鳳「どうでもいいけどさ…菊月達、先に言ってるわよ?」
夕張「え、ちょっとっ!?」
慌てて、菊月達を追いかける夕張と瑞鳳
球磨「…はぁ、不安しかねークマ」
そんな球磨の愚痴はその背中に届く事なく消えていく
菊月「長月」
長月「ん?」
そっと、隣りにいた長月の手を握る菊月
菊月「がんばろうなっ!」
長月「ああ」
花が咲いたように満面の笑みを浮かべる菊月
そんな彼女の手を、しっかりと握り返す長月だった
夕張「置いてかないでってばーっ」(←32ノット
瑞鳳「ちょっ…ほんとに、待って…追いつけないから…」(←28ノット
ー
ーおしまいー
ー
どうも、初めましてですね
此処から先は私、米田 舞子の出番です
本編の鎮守府とは別の所になりますので、ご注意くださいな
とりあえず、軽く自己紹介しちゃいますね~
米田 舞子
元からの軍人ではなく、ただの一般人
本編の提督よろしく、3食昼寝付きなんて書かれた提督募集のチラシを真に受けて応募した人
怪しいとは重々承知の上ではあったが
明日の食事にも事欠くような貧乏さんには、悪魔のささやき所か天啓であった
いざ着任ししまえば、ご飯は食べれるわ、ベッドで寝れるわと大満足のご様子
艦娘達との中も良好で、人生で一番輝いてる時期だと自覚している
艦隊運営能力は普通。艦娘達のサポートも合ってどうにかこうにか、平均的な水準は維持してる模様
座右の銘は、生きることは食べることと見つけたり
お腹が満たされていれば概ね幸せになれる人
ただし、貧乏舌。食べても太らない体質
だが、太らないからといって健康なんてことはなく、医者からは匙を投げられている
親しい人からは、京都の「舞鼓さん」見たいな発音で呼ばれてる
年齢:お酒が飲めるかどうか?
身長:普通
体重:そこそこ
胸囲:まぁまぁ
髪:ウェーブの掛かった栗毛色。ポニーテール
目鼻立ちはハッキリしていて、美人さんというよりは、愛嬌のある人
好きな事は食べ歩き
好きな物は食べられるもの、強いて言えばジャンクフード
自分でこんなこと書くのは恥ずかしいわね…
さて、前置きが長くなりましたが、始めましょうか
ー鎮守府・給湯室ー
グツグツと、ヤカンに溜まったお湯が煮えたぎり、隙間からは蒸気を噴き出している
執務室の横に併設された小さな部屋
お茶汲み用に簡単な調理道具が置かれてるだけの狭い部屋ではあるが
現在はヤカンから吹き出す蒸気でちょっと蒸し暑かった
コンロの火を止める
ヤカンを持ち上げ中のお湯を注ぐ、向かう先はカップ麺
先日、溜め込んでいたカップ麺を、榛名に駆逐されたきり食べられていなかったが
今現在彼女は買い物に出ている。そう、今がチャンスなのだ
お湯を入れれば僅か3分、食べる時間も入れれば5分とかかるまい
舞子「…じゅるり」
蓋をしたカップ麺の隙間から、独特の匂いが立ち昇ってくる
美味そう、なんて匂いでは決して無いのだが
それが食べ物であるのはまぁ分かるそんな匂い
舞子「ふふふ、榛名が居らぬ間に かぷ麺を食すのです…出来ました」
時間にして2分
誰が3分なんぞ待つものか。硬麺派の舞子さんだった
秋月「し、しれい…」
舞子「っ!?」
給湯室の扉が開く
顔を覗かせた秋月が、まずいものを見たように顔を曇らせる
秋月「ま、まさかそれ…」
どう見てもカップ麺だ、しかも出来立てだ
榛名さんに「そんなのばっかり食べたらいけませんっ」て廃棄処分されたばっかりなのに
一体何処からもってきたのだろうか
舞子「まちなさいっ、秋月っ。今食べ終わるからっ」
蓋を取っ払いお箸を突っ込むと、まだ固さの残る乾麺をまとめて持ち上げる
無駄に洗練された無駄のない無駄な動き
一糸乱れぬその動作は、ある種の芸術ではあった
秋月「ダメですってっ怒られちゃいますからっ!」
慌てて止めに入る秋月
麺が口に運ばれるその間際に、辛うじて手を抑えた
舞子「あ、秋月…離して、お腹がお腹が鳴るのよ、食べろって、生きろって言うのっ」
秋月「我慢してくださいっ、もうすぐ夕食なんですよっ」
無理矢理にでも口に向かうお箸の先端
それを押しとどめる秋月
幸い、元一般人の舞子さんに
秋月に抵抗するほどの力はなく、容易に拘束には成功していた
舞子「夕食は夕食よっ、ちゃんと食べるわっ。食事を抜くなんて健康に悪いもの」
秋月「舞子さんが健康について語らないで~」
というのも、この提督、この米田舞子なる人物
先の健康診断で全部Xが付くほどの不健康さんだった
貧乏時代の不規則不摂生、提督になってからの暴飲暴食
どれもこれもが体に重大なダメージを重ねていた
お医者様曰く、「生活習慣病が服を来て歩いているようだと」
なぜ生きているのかさえ不明とまで言っていた
秋月「こ、こうなったらっ…はむっ!」
舞子さんの手を抑えている秋月
その目の前にぶら下がるカップ麺
司令は食べるのを止めないだろう、であるならばと
司令の口に運ばれる前に、自分の胃の中に押し込んだ
舞子「あっ!?あー…あぁぁぁぁ…はぁ…」
舞子さんの体がから力が抜ける…この世の終わりのような溜息が零れた
死んだ魚の様な目をして床にへたり込む舞子さん
秋月「あ、おいしい…」
舞子「そうでしょうね、そうでしょうともさ…」
秋月の素直な感想
それを聞いた舞子さんが、床にのの字を書き始め完全に不貞腐れる
秋月「えと、そうだっ。バナナ食べますかっ、確か戸棚にいい感じに熟したものが…」
あまりの落ち込みように見ていられず、果物なら与えても平気だろうかと
戸棚にしまっていたバナナを探してはみるものの
秋月「あれ…な、い?あ…」
目的のそれは確かにあった…
正し、戸棚ではなくゴミ箱に
そして、バナナではなくそれもう皮だった
秋月「なんで食べちゃうんですかぁっ!」
舞子「バナナはおやつにはいりませぬゆえ…」
がっくりと肩を落とす秋月だった
照月「秋月姉?そんな大声出してどうしたの…と、なにこれ?」
秋月「て、照月…しれいがぁ…舞子さんがぁ…」
秋月の大声に誘われて、給湯室を覗く照月
そこには、涙目になってる姉と
スープだけになったカップ麺をくるくるかき混ぜてる、自分家の司令官
状況はよくわからないが、原因がカップ麺なのは間違いないのは明白だった
秋月「あれ、照月が戻ってるってことは…榛名さんも?」
確か、榛名さんと一緒に買い物に行ってたような…
照月「もう、遅いかも?」
狭い給湯室の扉の前
そこから一歩、照月が引き下がると変わりに榛名が顔をのぞかせた
榛名「うふっ♪」
笑顔であった
秋月「でたっ」
榛名「はい、榛名です♪」
笑顔のままにその視線が床に向く
そこで提督がへこたれてるからってのもあるし
部屋に入ってからの匂いの原因がそこにあったからだ
舞子「ふふ、カプ麺ならここにはねーぜ…」
カップ麺を食せなかったショックからか、完全に開き直ってる舞子さん
秋月「違うんです、榛名さんっ。これは、そのっ、そうっ、秋月が司令のカップ麺を食べちゃったからでっ
司令はまだ何も食べてませんから…バナナ以外…」
必死で舞子さんを庇おうとする秋月はきっと良い子
実際、食べたのは秋月だ。まるっと嘘なわけでもない
榛名「そうですか。秋月は良い子ですね♪」
相変わらずの笑顔のままである
秋月「ばれてるぅぅ…」
照月「そりゃ、バレるよ…」
司令を守れずに肩を落とす秋月と
あからさまに呆れる照月
そこに一歩。榛名が部屋に踏み込んで、舞子さんの前にしゃがみ込み視線を合わせる
榛名「ねぇ、提督?どうして食べちゃうんですか?」
舞子「榛名よ、食べることに理由がいるのかい?」
榛名「いいえ、そこは諦めました。ですが、ジャンクフードはやめてくださいと、あれほど」
俯いてる舞子さんの頬を挟み込み、自分の方へ向かせる榛名
舞子「榛名よ。人の発展とともにジャンクフードは進化してきたのだ、それを食べるということは、進化のさいせんたいたいいたい」
榛名「…」
榛名が未だ喋ってる途中の舞子さんのほっぺをつねり出す
榛名「舞子さん…お腹がすいたなら、榛名がお作りしますからって言ったじゃないですか」
舞子「それは、はい」
榛名「榛名の料理は口に合いませんか?」
舞子「いいえ…」
榛名「でしたらこれは入りませんよね?」
ドンっ
榛名が給湯室の床に拳を叩きつけると
フローリングが割れ、小さな収納スペースが現れる
中には大量のカップ麺…
舞子「ご、ご無体なっ」
榛名「照月、お願いします」
照月「はーい。カップ麺は閉まっちゃいますねぇ」
舞子「てるてるーっ!」
秋月「舞子さん…耐えて、強く生きて…」
無情にもゴミ袋に纏められるカップ麺の山
ちょうど明日は燃えるゴミの日だった
ーEX:米田舞子の今日の一膳:おしまいー
はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです
それではこの番組は
長月「作戦完了だ…はぁ」
菊月「こんな事、威張れるものでもないがな…」(←MVP
夕張「うぅぅっ、対潜ガン積みしたのにぃぃ…」(←MVP取られた
球磨「木曾、大井っ!罰ゲームの時間だクマぁぁぁっ」
木曾「瑞鳳…恨むからなぁ…」
大井「…卯月が居なくても変わんなかったように思うけどね…」
卯月「ねぇ、瑞鳳?今どんな気持ちどんな気持ち?」
瑞鳳「…」(←駆逐艦に艦載機叩き落とされた、軽空母の顔
弥生「卯月…その辺にしとかないと、また後で…」
金剛「sorry提督。一緒に入渠する約束でしたが、今回はノーダメージデース。残念ダネー非常に残念ダヨー」
大鳳「そう?それじゃ、提督。私と一緒に入渠しましょうか?」
金剛「STOP、大鳳!貴女だって、ノーダメージではないですかっ!」
睦月「いや、ここは睦月がお背中流してあげるしっ」
皐月「ぼ、ボクだって、一緒に入るくらい…その…」
望月「ほら、三日月も行きなって?」
三日月「い、行くわけないじゃないのっ、そんな一緒にだなんてっ」
北上「…君たちのどこに入渠の必要性があるんですかね…」
多摩「北上、それ以上は止めるにゃ。巻き込まれたら悲惨なことになるにゃ」
如月「あらあら、司令官モテモテね?」
提督「正妻戦争か、いいぞもっとやれ」
以上のメンバーでお送りしました
ー
ー以下蛇足に付きー
ー
♪教えて皐月ちゃんのコーナー♪
皐月「というわけで、今回は9月だったし、菊長回だったね」
提督「菊月が逆ギレした挙句、泣き出したのはびっくり…」
皐月「ああ、うん。あれはボクもびっくりした」
提督「最初の予定は、私が長月の事守ってやるからな、くらいで収めるつもりだったのに」
皐月「どうしてこうなったんだが」
皐月「後はEXパートのお話だね」
提督「舞子さんが言ってたとおり、いつになったら本編に出せるのか分からんかったからね
気分転換も兼ねて、先出ししてみたよ。というわけで…」
舞子「はいはい。皆さん先ほどぶりねー
自己紹介は、最初のほうでやっちゃったし…後はそう、名前の由来とかになるわね
名前はそう、食いしん坊的な苗字を考えてたのだけれど
米田と飯田どっちが良いかなって事になったのね
そして、後に続く名前を考えた時に、米米さんにすればいいかって事になったの
という訳で、米田・米子。名前が米のままじゃあんまりなので、同じ音のする舞子になったわけよ
あとはねー、貧乏暮らしだったのは別にニートだったとかではなくて、単にエンゲル係数が高かっただけよ
そこんとこ間違えないように、以上よっ」
皐月「なんか、秋月さんと榛名さんが大変そうに見えたんだけど、大丈夫なの?」
舞子「平気よ、比叡と磯風にお料理教室するよりは楽なはず」
提督「うへ…」
皐月「あ…うん。と、兎に角体には気をつけてね?」
舞子「これが意外と平気なんだなぁ…」
提督「体の異常が日常になってるだけだろ、それ」
舞子「あっはははは。かもねー。ああそうだ、絵はかけないけど、キャラメイクファクトリーなんてものがあったから
試しにやってみたわ、よかったら私のイメージの参考にでもしてちょうだいな」
http://mac.x0.com/test/kdata/10409.png←米田舞子さん
♪皐月ちゃんラジオ♪
皐月「それじゃ、いつものお手紙という名のコメ返しの時間だよ」
舞子「あの、そろそろお腹すいたんだけど…」
提督「骨っ子で我慢してろよ…」
舞子「食べ物をっ食べ物をちょうだいっ」
皐月「ごめん、榛名さんから餌あげないようにって…」
舞子「…なんという」
提督「良いから、進めろ」
皐月「はーい。じゃあ、今日は…」
・一番上が21回になってたよ
・北上様が意外とお強い
・大鳳さん
・肝試しの仕掛け
・怯える皆可愛い
・長月のガチ泣き
・二式大艇ちゃんのトランスフォーム
・私製
・次回も楽しみ待ってます
舞子「多いのね、意外と…むぐむぐ」(←ガム噛んでる
皐月「うん、嬉しいことにね。それじゃ、上から行くよ」
・一番上が21回になってたよ
皐月「しれいかーん、なーにやってんのさっ」
提督「いや、その、ごめんなさい…ナンバリングってたまにごちゃごちゃになっちゃって」
舞子「わかるわかる、肉まんとか、今何個目食べてたのか分かんなくなるもん」
皐月「それは…舞子さんだけだと思うんだけど」
舞子「そう?」
提督「だろうよ…」
・北上様が意外とお強い
皐月「実際、妖怪魚雷お化けだよね…」
提督「なんて言うかな。大井が魚雷で網張るタイプなら
勘だけで、未来予測レベルの偏差射撃かましてくるようなタイプ」
皐月「気づけば足元に魚雷あるんだもん、ほんと怖い」
舞子「魚雷なんて、高価なものよくバラ撒く気になるわね」
提督「お前の鎮守府が苦しいのは食費のせいだろう、ぜったい」
・大鳳さん
大鳳「最初に言っておくわね
提督をあしらってるつもりは無かったのだけれど、そう見えてしまったのなら私の落ち度ね」
提督「大鳳が素直に好きとか言わないからこうなるのだよ」
大鳳「そうね。それじゃ、はっきり言っておきましょうか
私は提督の事が大好きで、恋していて、愛してるの。だからね、提督?」
提督「おまえ、それ…ぜったい拷問とか好きな人だろう」
大鳳「そんな事しないわよ?それにほら、コメントにも「妻」見たいってあるじゃない?」
提督「そこまでは考えた事なかったけど…まぁ、家で大鳳が待ってるって考えるのは悪く無いかな、とは」
大鳳「それで、お嫁さんは皐月ちゃんね」
皐月「…嫁と妻って何が違うのさ?」
提督「一緒に遊んで欲しい人と、お家に居てほしい人、そんな感じじゃね?
金剛型で言えば、金剛と比叡の2人と遊びに行って、お家に榛名と霧島が待ってたら、幸せになれそうな」
大鳳「人によるでしょうけれどね、そのあたりは」
・肝試しの仕掛け
皐月「企画者の底意地の悪さが丸見えだったよねっ!」
提督「えー物理的に再現出来そうなのだけをチョイスしたんだから、これでもイージーモードの筈だよ」
皐月「何処がだよっ、馬鹿なんじゃないのってっ!」
提督「来年もやろうねっ」
皐月「絶対やだっ!」
提督「にひひひひ」
舞子「あたしん所は、夜な夜な冷蔵庫あさってたら、照月に見つかってドン引きされわね
真夏の怪談になりそうなんて言われちゃったよ、あはははは」
提督「ああ、それ良いな。今度仕掛けるか」
皐月「…提督って人種は…こんなんばっかりなの…」
・怯える皆可愛い
皐月「まあ、ボクも。引きつった笑顔のまま固まってる文月なんて初めて見たけどさ」
提督「だろう、姉妹の知らない一面が見れるって楽しいだろう」
皐月「しゃらっぷっ」
提督「ぉぅ」
皐月「望月なら多分、司令官のやりそうなこと大体把握してたんじゃないかなって…」
提督「メタな話をすれば、ダイス目2でしたので。いやな顔はしても慌てることもないかなと」
提督「弥生さんは、圧巻のダイス目1でした。鋼のメンタルです」
皐月「怖がる弥生も見てみたかったんだけどね。あそこまで動じないとちょっと悔しいよね」
提督「だから来年も」
皐月「オダマリっ」
提督「怯る皆の姿は撮影済みなのさ。防犯カメラ扱いだから、バッチリ保管できるしな」
皐月「…一定期間すぎるまで消去もさせない気か…この人は…」
提督「なはははははは」
舞子「皐月さん、よくこんな人の秘書艦できますね?」
皐月「うん、榛名さんたちにもそう伝えておいて?」
舞子「あははははは」
・長月のガチ泣き
提督「ギャップ萌えって良いよね?」
皐月「女の子を泣かせて喜ぶのはどうかと思うんだけど」
提督「肝試しの結果だよ、私は悪く無い」
皐月「もう、あれで怖がりなんだから、程々にしてあげなよ…」
提督「はーい」
・二式大艇ちゃんのトランスフォーム
みつよ「そうね、公式で大艇ちゃんにテコいれ入ったら考えるわっ」
秋津洲「やめてっ、大艇ちゃんに酷いことしないでっ」
みつよ「秋津洲…貴女、晴嵐みたいに引っ張りだこになる二式大艇見たくないの?」
秋津洲「うっ…それは…」
提督「すっかり飼いならされたな、あれ…」
皐月「今は、苦労してとった割に使いみちがないっていう状態だしね…」
提督「中破絵は好きだけどな」
皐月「…」
舞子「私は速吸ちゃんのが好きね」
皐月・提督「ビフテキだろ?」
舞子「正解っ」
・私製
みつよ「そうねっ、私製だわっ、手作りよっ。やっぱり主砲は3連装砲であるべきよっ」
大和「惜しむらくは、ドイツがかの有名な列車砲搭載型の戦艦を開発し切れなかったことでしょうか」
みつよ「ええ、本当に残念だわ。それさえあれば陸上型でさえイチコロだったでしょうにっ」
提督「大艦巨砲主義者共が…」
皐月「でも、司令官も欲しいでしょ?列車砲」
提督「列車砲が嫌いな奴が提督になんてならないと思う」
舞子「その列車砲って美味しいんですか?」
皐月「知らない人ははいるみたいね」
・次回も楽しみ待ってます
皐月「はーい。それじゃあ今回もここまで読んでくれてありがとう」
提督「前回のお話で、涼が取れた人も居たようでなによりです」
舞子「こほん。それでは最後までお付き合いただき、ありがとうございます
また、オススメ・コメント・応援・評価・お気に入り・して下さった方々にも重ねて御礼申し上げます
よろしければ、次回もまた、この娘達にお付き合い頂ければ嬉しく思います」
皐月「…え?」
舞子「これでも元社会人だぜっ」
提督「…エンゲル係数どうなってたんだよ、本当に…」
舞子「乙女の秘密さ」
皐月「あーうん。それじゃあ、またねー」
提督「みなさまもご壮健で」
舞子「ごっはんー♪ごっはんー♪」
やはり姉妹っすね隠し事していてもバレバレなんすね、けどそれを知らないふりしてあげるのもまた姉妹ってことですね。
ふと気になったんですげと指輪の効力はどれくらいなのです?錬度でいえばどれくらいあがるのです?