2016-10-17 06:01:18 更新

概要

クリスマスパーティは続く。
堅洲島鎮守府の正式なクリスマスパーティが、たけなわから、終わるまで。
そして、提督や一部の艦娘で、深夜の二次会が始まる!


前書き

パーティなので色々な艦娘が出てきます。
地味に今後の伏線が多い回です。

酒に関しての那智と提督のやり取り、

六駆の渋すぎる銃へのこだわりに那智と提督が絶句するところ、

雪風と提督の小さなやり取りは、
この物語の中盤以降の大きな伏線になります。

見所は、意外としっかりしている利根姉さん、
荒潮と如月の抱負、
磯波のちょっとした本音と、やりとりする青葉と衣笠。

そして、パーティ後、真のクリスマス回とも言える、
二次会が始まる!


[第十五話 クリスマスだ!・中編]




―クリスマスの夜、堅洲島鎮守府、食堂ホール。


足柄「・・・というわけでね、イギリスでは皮肉も込めて『餓えた狼』って言っていたらしいんだけど、提督はどう思うかしら?」


提督「生物相が薄かったり、食べ物のセンスについていけなかったり、四枚舌だったり、英国面が炸裂したりで、あまりイギリスの言う事はなぁ・・・っていうのが正直な感想だよ。少なくとも、『餓狼』と言えばカッコイイわけで、おれは良い意味にしか取れないな」


足柄「でしょう?わかってくれると思っていたわ!」


提督「イギリスの狼は19世紀には絶滅しているから、実際にどんなものかはあまりわからない。ただ、痩せて狡猾ってイメージだったらしいから、おれたちがイメージする狼とはだいぶ違うな。あ、違うと言えば、イギリスのサソリもカッコ悪いんだよ、確か」


足柄「そうなんですか?」


提督「普段イメージするサソリのイメージより、だいぶ貧弱だったはず。まあさ、狼ちゃんはかっこよさげだから気にすることは無いって」


足柄「そうよね!そう!私は勇ましい方の狼で行くわ!」


那智「司令官よ、呑んでいるか?足柄とずいぶん楽しそうに話しているが、私の酒にも付き合ってもらおうか」


提督「いやー、待っていたよ。バーボンでいいかい?」


那智「洋酒か。なに?度数48パーセントだと?」


提督「七面鳥を喰って、七面鳥の酒を呑む。これぞ大人のクリスマスだ。でも意外と呑みやすいんだぞ?」


那智「なるほど。いただこうか」カラン


提督「どうだい?」


那智「む・・・ずっしりした香りの塊だが、これはこれでいいな。しかし、なぜこの酒は七面鳥の柄なのだ?」


提督「ああ、こいつは野生の七面鳥を狩りに行くときに、身体を冷やさないための酒だからだよ」


那智「なるほど、冬の任務前や、今の時期にはぴったりだな」


提督「呑み過ぎないなら、スキットルでもあれば、任務に持って行っても構わんよ?」


那智「なんだと?銃の時といい、貴様はなかなか話の分かる司令官だな!」


妙高「ダメですよ?提督。那智は意外と呑み過ぎちゃう時がありますから?」


那智「なっ、姉さんそれは無いぞ。せっかくいいところだったのに」


提督「ん?妙高さん的にはダメ?」


妙高「提督がいい、とおっしゃられたら、私は反対できませんが・・・」


提督「なるほど、じゃあ・・・羽黒はどう思う?」


羽黒「ええっ?わっ、私にふるんですか?」


提督「意外と冷静に状況を見ていたらいいな、という期待値を込めてだね・・・」


羽黒「じゃ、じゃあ、私は・・・少しならいいと思います。ごめんなさい!」


妙高「あら?羽黒はそう考えていたのね・・・」


提督「では、基本的に容認。ただし、妙高さんと一緒の時は、妙高さんに確認を取る、という形で」


那智「おお、ありがたい!ここぞという時にだけ呑み、それだけの戦果を挙げて見せよう!」


妙高「そのまとめ方では反論のしようもありませんわ。素早いご判断ですね」


提督「いやいや、皆の意見が正しいだけだよ。それにね、酒は戦場では力を与えてくれる事も多い。それで危機を乗り切れたらいいかなと」


妙高「一理ありますね、戦意の高揚、ですか」


提督「緊張をほぐす効果やら、色々期待できるしね。・・・あ、仕事の話は野暮かもしれないが、妙高型のみんなは銃火器の申請予定はどうなんだい?」


那智「私以外は、おいおい、と言ったところだな。そもそも司令官よ、カタログが無いと普通は選びようがないぞ?」


提督「あっ・・・そうだった。年内間に合うのは、おれの発注分とカタログになりそうだな。ふむ」


羽黒「・・・提督、私は対物ライフルとか、ちょっと撃ってみたかったりします。ダメですよね?ごめんなさい!」


提督「いや、構わないが、しかしいいね。引っ込み思案なのに選択は火力重視。イイと思う」


羽黒「えっ、そうですか?」ニコッ


妙高・那智(相変わらず怖い・・・)


??「司令官、銃の話をしているの?」


提督「んっ?」


那智「むっ?」


電「銃火器の装備の話なら、六駆はもう話し合って決めているのです!・・・ね?みんな」


提督「ほう、聞かせてもらえるかな?」


雷「まず、私が「ちょっと待って」」


暁「ここは、一番お姉さんの私から言うべきだわ」


提督「ふむ」


暁「私はね、司令官、S&WのM36とM39の・・・」


提督「・・・待て、わかったぞ、リボルバーとオートマチックの『レディ・スミス』を揃えるつもりか!」


暁「そうよ!良く分かったわね、司令官。レディにふさわしい銃と言ったら、この二つね」


那智「いきなり趣味の良いのが来たな!」


暁「どちらも黒ではなくて、スチールフィニッシュでお願いね!」


提督「たまげたなぁ・・・」


雷「でね、司令官、私は四四式騎兵銃が良いの。復刻モデルも何とかなるのかしら?」


那智「よ、四四式騎兵銃だと・・・確かに取り回しは悪くないし、戦闘力も高いが・・・」


提督「なんて渋い選択だ・・・いや、いいけどさ。震えるね。・・・では、電は?」


電「司令官、私は百式機関短銃が良いのです!」


那智「なん・・・だと・・・!」


提督「・・・えーと、ちょっと待って君ら六駆ってガンマニアだったの?」


電「叢雲さんから、司令官は銃に詳しいと聞いたので、みんなで勉強して、早めに機種を決めておいたのです!」


那智「その、私が言うのもなんだが、趣味が渋すぎやしないか?いや、実物を見るのも楽しみだが」


提督「やっぱり戦闘艦艇の魂を持つだけあって、選択が半端ないな・・・」


響「司令官、まだ希望を言ってないのだけれど・・・」


那智「待て待て、当ててみせるぞ!」


提督「よし、おれも当てる。ちょっと待ってくれ!」


響「わかった。当ててみて」


那智「スチェッキンだな、マシンピストルだし、なかなかいいだろう。どうだ?」


提督「んー、おれはドラグノフだと思うんだが、どうよ?」


響「どっちも当り。だけど、このほかにサイガ12Kも欲しいんだ。一通り揃えておきたくて」


那智「・・・私も、拳銃以外にも申請するべきだろうか。何か、重巡として負けてはならないような」


提督「いやいや、これはそういう話では無いだろう。この子たちが短い時間に良く突き詰めたという話であって。それでもびっくりだが。趣味が良すぎるというか、なんというか・・・たまげたなぁ」


陸奥「メリークリスマス!楽しんでいるかしら?提督、これはアレよ『艦娘と提督は互いに影響し合う』という噂どおりじゃないかしら」


提督「なるほど・・・」


那智「陸奥さん、よろしく!一杯注ごう」


陸奥「あらあら、ありがとう!まだしばらくは一緒に戦えなくて、ごめんなさいね」カラン


足柄「そんな事ないわ!一緒に戦える日を楽しみにしているもの!」


暁「陸奥さんが医務室だと、色々安心よ!」


叢雲「そうよ、陸奥さんはそんな事気にしなくてもいいと思うわ。みんなでここにいられる、それでいいじゃない。メリークリスマス!」


暁「あっ、叢雲さん、髪紐の飾りが可愛い!」


叢雲「そ、そう?ありがと・・・」カアァァ


電「猫さんの鈴が、とてもかわいいのです!」


響「ほんとだ、かわいいね」


陸奥「あら?その髪紐の飾りや色遣いの趣味って、もしかして・・・」


叢雲「み、みんなちゃんと飲み物や食べ物はいきわたっているかしら?ちょっと間宮さんたちの様子を見てくるわね」ダッ


電「叢雲さん、どうしちゃったのでしょう?」


響「髪紐と飾り、かわいかったね」


―陸奥は笑顔で、無言のまま、提督のわき腹を肘でツンツンした。


陸奥(素敵なのをプレゼントしたじゃない!)アイコンタクトー


提督(いや、まあな・・・)アイコンタクトー


陽炎「もしかして、あれをプレゼントしたのって、司令官?趣味いいじゃない!」


陸奥(あら、空気をイイ感じに読まない子が来たわ)


足柄「えっ?そうなの?提督」


漣「えっ?そうなんですか?ご主人様」


提督「ふぅ、叢雲が照れて間宮さんとこに行っちゃったか。・・・まあ、隠すような事じゃないからな。あれはおれがプレゼントしたんだよ。初期艦だし、進水日は外れているし、色々苦労も掛けたからね。感謝を込めて、さ」


曙「へぇ、そんな事をしない人だと思ってた・・・」


不知火「司令官、初見のたたずまいは軍人っぽいですが、隙だらけで緩い空気が漂っていたり、意外と女性にマメで、良く分からない方ですね」


提督「なるほど、多面的で奥深い魅力があると?」


不知火「そうは言っておりません。あ、何でも都合よく解釈する方と付け加えます」


提督「なるほど、常に前向きでポジティブであると」


不知火「・・・まあ、そのようにも言えますが」


陽炎「もしかして秘書艦やってると、進水日にプレゼントもらえたりするの?」


提督「こら、そういうところを突いてくるんじゃない!」


その場にいた全員(!)


陽炎「当りっぽいのね!じゃあ司令、例えば私が一生懸命秘書艦してたら、何をプレゼントしてくれるの?」


提督「んー?そうだな、リボンか、ブックマーカーかな。金属製の」


陽炎「・・・へぇ、なかなかいいわね!じゃあ、不知火だったら?」


提督「んー、不知火はまだよくわからないからなぁ。でも、意外と陽炎と同じで喜んでくれそうな気もするが。あ、リボンは髪留めの飾りに変更とかね」


不知火「ほう・・・なるほど。なかなかですね」


足柄「えっ、じゃあ例えば、私なんかはどうかしら?」


提督「そうだなぁ、狼をあしらった、かっこかわいいアクセサリーとかかな?」


足柄「まあ、素敵ね!」


漣「あっ、ご主人様、じゃあ私なんかはどうですか?」


提督「漣と曙と磯波のは、もう考えてあるから内緒だなー。まあ、楽しみにしててくれよ」


漣「わぁ、今聞いたことは忘れとこっと!」


曙「無理なんかしないでね?借りが増えすぎたら返せなくなるし(もう考えてあるなんて、嬉しい・・・)」


提督「楽しんでるから大丈夫。デザインやプロデュースは趣味の一つなんだよ」


―そこに、磯波が戻ってきた。


磯波「お疲れ様です。間宮さんたちのお手伝い、叢雲さんと交代になりました!」


提督「磯波、お疲れ様。メリークリスマス!」


磯波「はい!メリークリスマスですね!なんか、叢雲さん、顔が赤かったし、慌てていたようなんですが、何かありました?」


提督「ちょっと照れくさい事があったみたいだな。そんな事もあるさ。楽しみにしといてくれ」


磯波「えーと?はい。良く分からないですが、楽しみにしていますね!」


一同(いい子だ・・・)


望月「メリークリスマスだよー、司令官。呑んでるー?食べてるー?すごく楽しいねぇ、えへへっ!」


磯波「あっ、望月ちゃんも楽しんでいるようで良かったあ!」


望月「あーもー最高だねー!いそっちも仕事ばっかしてないで、司令官の隣で飲み食いして楽しみなよー。んー最高。人生は漂流してから開ける場合もあるんだねぇ」


提督「ははは、楽しんでくれているようで何よりだよ。年明けからは訓練もきつくなるし、今年は色々あったろうが、今日は存分に楽しんでくれ」


望月「ありがと!見ててね司令官。やる時はやるんだよー。なんかさー、漂流していた時にクジラに会ってから、すごくいい感じなんだよね」


磯波「あのクジラさんのお陰で、今ここにいられるようなものですもんね」


青葉「メリークリスマスです!捜索の時のお話ですか?あの時は、青葉もう帰投するところでした。クジラが跳ねたのでカメラを構えたら、二人を見つけたんですよ」


提督「クジラは艦娘に友好的なんだな。彼らも何か感じ取っているのかねぇ?」


扶桑「何か関係が本当にあるのかもしれないわ。深海勢力が現れてから、増えていたはずのクジラが激減している、と言う噂がありますよね?」


提督「制海権を握られて、ろくに調査ができないからだ、という公式の見解は述べられているが、実際に海に出ている人々の話だと、かなり減っている、と言う噂は根強いね」


山城「もしかして深海勢力って、クジラのお肉が好きなのかしら?」


提督「それだったら、クジラをご神体みたいに崇めてる環境保護団体みたいなのが深海勢力と戦えばいいんだがな」


秋雲「でもさー、深海側に赤城さんみたいな空母が居て、そういう空母がクジラ大好物だったら、激減しちゃうのは理解できるなぁ」


加賀「なら、環境の為にも、赤城さんを沈めてはいけないわ。もし艦娘と深海棲艦が表裏一体という噂が本当なら、赤城さんは間違いなく、沢山食べる何かに変わってしまうはずだもの」


赤城「加賀さんまで、そんな事を言うの?私、別にそんなにクジラを食べたいと思ったことはないわ!」


一同(論点がずれてる!)


提督「いやちょっと待て、扶桑が良い事を言った気がする。なるほど、クジラか・・・盲点だったな」


陸奥「どういうこと?」


提督「あくまで推測だが、もしかして深海の奴ら、クジラを捕まえて、生体艤装を組成する蛋白質の原料にしているんじゃないのかなと。ゼロから蛋白質を合成するより、だいぶ効率がいいはずだ。医療用3Dプリンタの、細胞マテリアル化技術の応用でいけちゃうだろ?」


陸奥「自分の身体から取った細胞をバラバラにして培養し、損傷個所の再生に使う技術よね?なるほど・・・」


那珂「えっ、じゃあもしかして、深海棲艦の白い生身の部分って、クジラとかから作られている可能性があるって事?」


提督「あくまで思い付きの推測レベルだけどな、無くはない話だよ」


望月「もしそうだったら許せないなぁ・・・」


金剛「ずっと勝ち続ければ、何もかもはっきりするネー!」


提督「おう、そうだな。金剛も楽しめて・・・ブフッ!」ゲホゲホ


―金剛はクリスマス仕様のパーティキャップに鼻眼鏡をつけて、七面鳥のモモ肉とビールを持っている。


提督「すまん、愚問だったな」


金剛「クリスマスの時に真面目な話をするのは感心しませんネー!こんな時くらい楽しまないとダメデース!それにしても、間宮さんの料理は最高ネー!」


陸奥「すごい説得力だわ・・・」


金剛「ムツー!一緒に呑むネー!」トクトク


陸奥「あら、ありがとう。私も注ぐわね」トクトクシュワー


金剛「Oh!提督が呑んでるのはアメリカのお酒ですネー!ダメデース!今度私とスコッチでしっぽり行くネー!」


提督「いや、スコッチだって、スコットランドの人はイギリスの酒って言うと、いい顔しないぞ?・・・しょうがないな、金剛にはこっちだ。グラス出してくれ」


磯波「あっ、こっちにありますよ?これどうぞ」


提督「お、サンキュ!」トクトク


金剛「ん、四輪の薔薇ですか?オシャレな瓶ですネー!」


提督「フォア・ローゼスの黒ラベルだ。どうよ?むっちゃんもどう?」


陸奥「いただくわ」


金剛「香りが素敵ネー」


那智「司令、こちらにもいただけるか?」


提督「もちろんだ!おーい、扶桑と山城もこれどうよ?」


扶桑「提督のお酒ですか?いいのですか?」


提督「こんな時に呑まないでいつ呑むんだい。なー山城?」


山城「そ、そうですね。いただきます(提督、ちょっと酔ってきているわね)」


提督「他にも、こんな珍しいものもあるんだぜ!」ゴソゴソ・・・ドン


足柄「あら?これもしかして?蜂蜜酒?」


提督「当り!当たった狼ちゃんにはこいつを最初に注ごう。はいグラス出してー!」トクトク


足柄「ありがとうございます!・・・んっ、あまっ!強いわね、これ!でも美味しいわ!」


漣「あっ、私もちょっと呑んでみたいです、ご主人様!」


提督「おう!いい飲み仲間だ!蜂蜜酒を呑もう!ってやつだな」


漣「スカ○イリムかっ!」


提督「伏字になってねえぇぇぇ!」


初雪「んー?提督ってス○カイリム好きなの?」


提督「おう、ゲーム大好きだぞ。最近21世紀前半の復刻ブームだろ?あの辺のものは一通り好きだね。って、伏字になってないっての!」


初雪「私もゲームはすごく好き。お正月はずっとやりたい」


提督「いいねぇ、もう少し時間があればいいんだが、まあ仕方ないか・・・」


提督「ほれ、甘い蜂蜜酒だ、曙も磯波も呑め呑めぇ」


磯波「つよっ、このお酒強いですよ!でも美味しいです」


曙「酔わせて、変な事しようとか考えてるんじゃないでしょうね?」


提督「おれは酔わせないで変な事をするほうが好きだ」ドヤァ


曙「ドヤ顔でなんてこと言うのよ、このクソ提督ー!」


川内「提督ー、夜戦はいつできるようになるのー?」


提督「好きなだけ夜戦ができるように調整しているよ。年明けからになるが期待していてほしい。・・・ただ、しばらくはそんな体力が残るかわからんけどな」


川内「ふーん?私は体力には自信あるんだけどなあ~」


提督「体力もすべて明確に数値化する。なので、近々体力テストもあるから、任務の合間に身体を鍛えていてくれ。普通の体力と、戦いに必要とされる体力は似て異なるからな」


神通「似て異なる、と言いますと?」


提督「説明は難しいので、実際に体感してもらおうと考えているよ」


神通「わかりました。楽しみにしていますね。・・・あの、提督、武術の鍛錬において、提督に手合わせをお願いすることは可能ですか?」


提督「可能どころか、最初からそのつもり。年明けのテストでは、皆の戦闘適正も見極めさせてもらおうと考えているしね。あまりみっともない姿は見せられないけどな」ニコッ


神通「いえ、決してそんな事は。ただ、川内が提督は絶対に強いはずだと言っていますが、私にはわかりかねますし、もしも高い技量をお持ちで、私たちの技を磨いてくださるなら、こんなうれしい事は無いと思いましたから」


提督「ん、出来る限り協力するつもりだよ」


川内「じーんづう、私のせいにしないで、提督と戦ってみたいってハッキリ言ったらいいじゃん。嬉しそうだよー?」ニヤニヤ


神通「そんな事ありませんよ?もう!」


提督「川内と神通には、おれはそこそこ強そうに見えてるのかい?買い被りすぎだと思うが・・・」


那珂「那珂ちゃんにも提督は強そうに見えてるよー?」


提督「ふむ・・・そうなのか」


足柄「私は、良く分からないわ。強いのはわかるけど、強さの質と言うか、タイプがわからない感じ?」


川内「あっ、そうその感じ!」


陸奥(へぇ・・・)


扶桑(この子達、わかるのね・・・)


山城「私は、強いというより、頼りになる方って思っていますが」


金剛「ヘーイ!まーたお仕事の話をしているネー!提督はめっちゃ強いデスヨ~!青ヶ島の提督は複数の格闘技の有段者デース。あの鎮守府の訓練は地獄のようネー。でも、うちの提督は青ヶ島の提督と二時間以上殴り合ってケンカさせてたネ。とんでもなく強い人って事デース!」


提督「うおーい金剛、そんな事言わんでいい。あれはケンカだからあてにならんって」


木曾「その噂の真相を聞きたかったんだよな。提督、メリークリスマスだ!」


提督「おう!メリークリスマス!楽しんでるかー?」


木曾「おうよ!料理もケーキも最高だな!それにしても、今時提督同士で殴り合って艦娘を連れてくるなんて、やるじゃねーか!しかも高練度の金剛さんだろ?うちの提督は隅に置けないなぁ」


提督「いやいや、そう言われると嬉しいが、それなりにボコボコにもされたからな、そんなカッコイイもんじゃないぞ?まだあちこち痛いから、こうして酒を呑むと痛みが散っていい感じだしな」


木曾「自分の上官が殴り合いもできて、そこそこ強いってのは、気分のいいもんよ!なあ姉貴」


球磨「何か言ったかクマ?姉ちゃんは料理喰うので手一杯クマよ?」モッシャモッシャ


多摩「同じくだニャ。間宮さんの料理はおいしすぎるニャ」モグモグ


木曾「おいぃぃ!」


提督「いや、クリスマスパーティだから正しい姿勢だと思うが」


赤城「そうそう、オンとオフの切り替えは大事ですよ?ねぇ、加賀さん」


加賀「同感ですね」


―提督は赤城たちの席を見た。他の席と比べて、その辺りだけ、テーブルの上が白く見える。食べられるものが全て無くなっているせいだ。


提督「・・・楽しめているようで何よりだが、食い物が足りてない?」


赤城「いえ、バイキング形式にしてくださったので、もうそろそろお腹いっぱいです」


磯波(そろそろなんだ・・・3時間くらい食べてましたね・・・)


加賀「さすがに気分が高揚します」


提督(とりあえず不足はないようで何より。しかしすごいな・・・)


鳳翔「提督、メリークリスマスです。間宮さんたちの料理、本当においしいです。私も負けられませんね」


提督「メリークリスマス。確かにおいしい。しかし、鳳翔さんの料理も期待しているよ?」


鳳翔「そんな、それほどのものでもないのですが。・・・ところで、提督、こんな時にお仕事の話で申し訳ございませんが、二航戦を中心とした独立組織の話を聞きました」


提督「赤城たちからだね?そう。なかなか難しい案件だよ」


鳳翔「その件なのですが、任務の編成に私も組み込んではいただけないでしょうか?交渉にせよ、戦闘になるにせよ、お役に立てるかと思います」


提督「・・・鳳翔さんも気になるんだね?」


鳳翔「はい。何となくですが、それなりの理由があると思います。提督もただ力で押しつぶす方針ではなさそうなので、私も何かできないかと思いまして・・・」


提督「ありがとう。確かに、鳳翔さんは適任かもしれない。もう少し先だけれど、おそらくお願いすることになるよ」


鳳翔「ありがとうございます!何とか、お役に立てるよう尽力してみますね」


提督「戦力としても、心情としても、そのまま叩き潰すなんてできないからさ」


鳳翔「そうですね。きっとそれなりの理由があるはずです」


??「メリークリスマスです!任務のお話ですか?ぜひ私も編成に・・・あっ!」ガッ


提督「おっと?」ガシッ


漣「キャッチ!」パッ


鳳翔「こちらは私が!」ハッシ


―提督は五月雨を支えて、漣は持っていた料理を、鳳翔はコップをキャッチした。


五月雨「すいません、足がもつれちゃって!ありがとうございます!」


提督「メリークリスマス!楽しそうで何よりだな」


五月雨「うう、すいません。でも、とっても楽しいです!」


漣「さみっちはドジっこ癒し系ですなー」


提督「初期秘書艦もずいぶん個性豊かだな。ところで、編成に入れてくれって?」


五月雨「あっ、はい!お役に立てるかはわからないんですが、何か伝えられることがある気がします。味方同士で戦うなんて悲しすぎますしね」


提督「ふむ、赤城、加賀、金剛、鳳翔、五月雨、望月ってとこかな、そうすると」


望月「えー、あたしが編成に入ってんのー?たまには真面目にやろうかなー」


提督「まだ先の話だけどな、この任務はさ」


金剛「ヘーイ!まーた任務の話をしてるネー!楽しまなきゃダメデース!でももうだいぶ遅い時間になってきたネー。提督、そろそろ寝ようヨー」


何人かの艦娘「!!!」


提督「ん?今日も一緒に寝る感じなの?」


何人かの艦娘「!!!」


金剛「えっ?ダメなノー?」


提督「いや・・・(こんな時は子犬みたいな眼をするんだな・・・)」


不知火「・・・なるほど、見事な手腕ですね、司令。まさかそのようなヘッドハンティングの手法があろうとは」


提督「いやいやそういうんじゃないからね?金剛もややこしい言い方をしないように」


荒潮「あらー、早いところはとっても手が早いのね、司令官たら。あ、早いのは手じゃなくて別の・・・」


提督「やめい!なんてことを言い出すんだ?」


如月「うふふ、良かった。健康的な司令官で。私はそういうの、嫌いじゃないわよ?」


金剛「・・・ンー、誤解がありますネー。くっついて眠るくらいですヨー?それ以上は無いネー。提督はみんなが深海化するのを心配してるんデス」


荒潮「あら?じゃあ司令にくっついて寝たいって言ったら、そこまではOKしてくれるのかしら?」


如月「えっ?そうなの?」


利根「提督よ、クリスマスを筑摩と堪能しておるぞ。メリークリスマスじゃ!料理も酒も最高じゃな!のう筑摩よ?」


筑摩「はい。提督、とても楽しいパーティ、ありがとうございます!お料理もお酒も美味しいです。とっても!」


提督「良かった!楽しんでくれているようで、何よりだよ」


利根「ところで、提督に近づきたい者が何人かいるようじゃが、舞い上がる前に実績を示すべきじゃと吾輩は思うぞ?挨拶がてら様々な話を聞いたが、金剛が提督にくっついて眠るのは、今は必要な事のように思えるのじゃし、他に親しい者も色々あったり、秘書艦を務めていたりする者ばかりじゃ。新着の駆逐艦の小娘たちも、提督に近づきたいなら、負担にならぬように実績を積むんじゃな。うちの提督は気が利いて筑摩みたいじゃから、あまり無理をさせてはいかんと思うのじゃ」


筑摩「姉さん・・・。あの、そこまで厳しい言い方をしなくても」


利根「こういうのは最初が肝心じゃ。着任してからいろいろ調べたが、つまらぬ色恋のトラブルも他では多いようじゃしな。ここは提督がしっかりしておるのじゃ。我々が気を付けるべきじゃろう?」


荒潮「耳が痛いわぁ。でも、そうね。実績を積まなければ、ただの勘違い女だもの。それは私も嫌だわ。勝利の女神になりたいもの」


如月「実績ね・・・。そうね、まだ何もできていないわね。言われてみれば」


提督「利根、ありがとう。さすが重巡で、お姉さんだな。・・・ところで金剛、まだ寝ないよ、今日はまだまだ。でも、金剛の気持ちは良く分かってるから、大丈夫」


利根「礼には及ばぬぞ?耳目が広いからな、これくらい把握したのじゃ」


妙高(さすが利根型ね、侮れませんわ)


足柄(ふふふ、実績なんて山のように積み上げてみせるわ!)


金剛(うー、余計な波紋を広げちゃいましたネー・・・)


雪風「しれぇ、メリークリスマスです!お料理とケーキ、とってもおいしいのです!」


提督「間宮さんたちの作るものは、ほんと何でもおいしいからなぁ」


雪風「しれぇ、教えて欲しいのです。海の上でも書けるノートとペンってありますか?」


提督「ん?あるよ?測量用のレベルブックの耐水型なんかがお勧めだな。何か海の上で記録でも取るのかい?」


雪風「はいっ。色々な記録を取って勉強したいのです!」


提督「・・・ふむ、他に必要なものは?」


雪風「距離を測るものと、時間を測るものも必要なのです!」


提督「小型測距儀と、防水のストップウォッチなんかでいいだろうか?」


雪風「もしあったら、雪風、とっても助かります!」


提督「わかった。鎮守府の武器やダイヤモンドは、雪風が工作員を丁寧に弔う、と言ったことで入手できたに等しい部分がある。なので、それらはこちらで用意しよう。年明けの支給になるかもしれないが、いいかな?」


雪風「はいっ!雪風、とてもうれしいです!」


―この小さなやり取りが、のちに奇跡・・・いや、とてつもない努力の積み重ねで想像を超えた戦果をもたらすのだが、この時点ではまだ誰も気づいていなかった。


提督「磯波ー!」


磯波「はいっ、なんでしょうか?」


提督「楽しめてるかい?そろそろみんなお腹は十分みたいだから、間宮さんたちもパーティを楽しむように伝えてくれないかな?」


磯波「はい!とても楽しいです!じゃあ、呼んできますね!」タッ!


―少し後。


間宮「皆さん一通り満足されたようで良かったです。お口に合いましたか?」


伊良湖「ケーキやデザートはいかがでしたか?」


―全員が、それぞれ満足や感謝の言葉を口にした。間宮と伊良湖もサンタのコスプレをしている。


古鷹「とってもおいしくて、幸せな気持ちです!」


加古「もうなんかさー、いつもだとこの時間にはとっくに眠くなっちゃうのに、美味しすぎて眠くならないんだよー!もう最高!」


提督「いやー、ほんと美味い!何食ってもうまい!自分が食ったことのある複数の店を超えた味が、殆んどここで味わえるような気分だよ」


間宮「ありがとうございます!この後、大晦日やお正月もありますから、皆さん期待しててくださいね!」


伊良湖「甘味ももちろんお任せくださいね!」


提督「さてと、ではここで、全員にささやかながらクリスマスプレゼントを!」


―サンタの姿をしたメンバーから全員に、間宮券が4枚ずつと、プレゼント券が一枚配られた。


提督「では、今年のクリスマスパーティの定時はここまで!以降は自由時間とする!吹雪型のみんなと、七駆、六駆は片づけをよろしく!」


一同「諒解いたしました!」


提督「えーと、ちなみにおれは、夜風に当たってから風呂に入って、それから執務室ラウンジでちょっと呑んで寝る予定。明日非番で付き合う人は歓迎するよ。ではまた!あ、磯波、寒いけど昼間の約束もあるから、散歩するなら執務室に来てくれ」


磯波「あっ、わかりました!」


金剛「提督ゥー!私も一緒に行くヨー!」


提督「じゃあ、磯波と金剛までかな。あとは貸せる上着が無いんだよ」


―提督と磯波、金剛は、寒さ対策をしてから鎮守府を出て、港を散歩し始めた。


提督「くぅ、いいねぇ!酔いがいい感じに覚める。月もいい感じに出ているな。おれは雪より、こういう空が好きだよ」


磯波「帰る場所があって、あったかい服を借りて、お腹いっぱいで冬の海を見るのって、最高の贅沢みたいな気がします!」


提督「そうだなぁ、ほんと、何よりだよ。おれもみんなも助かってるよ。磯波が頑張ってくれてるから」


磯波「そんな・・・嬉しいです」


金剛「ンー、月が綺麗で寒いけど、やっぱり何か変ネー」


提督「ん?何が変って?」


―金剛は、上着の袖をまくって、素手を出すと、手を開いて冷たい風にあてている。


金剛「風はとても冷たいのに、何かあったかい気がするネ。変な感じだヨ」


提督「あー!・・・金剛、まだ何かあったら、解体か何かで消えてもいいって気持ちがかなり残っているだろう?自分の意志より、完全に運を天にゆだねていないか?」


金剛「うっ!・・・そ、そんな事ないヨー?」


提督「図星か!まあ無理もない。しばらくすれば寒さしか感じなくなる、はず。そんな事もあるんだよ」


磯波「どういう事なんですか?」


提督「おそらく、一度この世からサヨナラしようと覚悟したから、心がこの世界から離れかけて、普段は慣れ過ぎて感じられないものを感じられるくらい敏感になっているのさ。めったに起きない現象だよ。『磔台から見る世界は美しい』と言うやつだな」


金剛「・・・どうしてあなたは、そんな事まで知っているの?」


磯波(あれ?金剛さん、言葉が?)


提督「あれ?金剛、言葉が・・・」


金剛「oh!たまに上手に喋れてしまう時があるネー!この話は後で詳しく聞かせてもらいたいネー!寒いから先に戻りマース!」ダッ


磯波「金剛さん、行っちゃいましたね・・・」


提督「余計な事を言ったかなぁ?」


磯波「そんな事、無いと思います。びっくりしただけだと思いますよ?私も、ちょっとびっくりしています。提督は何でも知っているみたい」


提督「インテリとも違うな。余計な事は沢山知っているんだ。虎の狩り方や、幽霊の追っ払い方までな」


磯波「ふふっ、なんですかそれ?」


提督「どんなことにも方法はあるって事だよ。効果が疑わしくても、人は色々考えるからなぁ」


磯波「どんなことにもですか」


提督「そう。しかし大抵、自分の人生の重大な問題の解決方法は見つからないというね」


磯波「・・・わかります。私も、そういう問題が生まれそうですけど、解決方法は見つからない気がします」


提督「ん?おれで良ければ話を聞くぞ?」


磯波「あっ、大丈夫です!自分で向き合わなくてはならない事なので」


提督「そうか。その姿勢なら大丈夫だ。何であれ、必ず得られるものはあるからな。磯波なら大丈夫だよ」


磯波「ありがとうございます」


提督「・・・冷えてきたな。そろそろ戻るか」


磯波「あっ、私はもう少し涼んでから行きますね!」


提督「ん?大丈夫かな?何の危険も無いとは思うが・・・」


磯波「はい、銃も携帯しているので、大丈夫です!」


提督「わかった。あまり身体を冷やし過ぎるなよー?」フリフリ


―提督は手を振りつつ、鎮守府に戻っていった。


磯波「ふぅ・・・金剛さんや漣さん、曙さんみたいに、自然な感じで提督と話せたらなぁ・・・」ボソッ


青葉「今のままで良いんじゃないかなぁ?」ニユッ


磯波「ひいっ!い、いたんですか?青葉さん(変な声が出ちゃった・・・)」


衣笠「びっくりさせてゴメンね?」


青葉「なんか、磯波ちゃんはそのままのほうが、提督は気楽なんじゃないかなぁ?」


磯波「えっ、あ、そんな・・・やっぱり、聞かれちゃってましたか」カアァァ


青葉「こっそり取材して、よく見つかっちゃうけど、提督が本気で怒ったり、慌てたりしたことが全然ないんですよ。最初からそんな気が無いから、だと思うんですけどね」


磯波「そうなんですか?」


青葉「ガサが改二になったら、本気で提督を誘惑してもらって反応を見るつもりなんですけど、今のところ、誰とも親しく話すけど、必要以上には親しくならないような、そんな感じがしているんですよねー」


衣笠「青葉!ちょっとちょっと!いま聞きずてならない事をサラッと言った!」


磯波「きっと、真面目な方なんだと思います」


青葉「それだけならいいんだけど、何だか青葉には、ちょっと違う感じがするんですよねー」


衣笠「わあ、ガン無視だぁ・・・」


磯波「どういうことですか?」


青葉「それが上手く言えないんですよ、まだモヤモヤしている感じなので。でも、磯波ちゃんは今のままの方が、きっと提督は楽なんじゃないかなって感じるんですよ」


磯波「そうでしょうか?」


青葉「うーん、頑張って言葉にしてみると・・・提督って、空気読むのが異常に上手過ぎません?だからきっと普段から気を使って他人に合わせるのに慣れ過ぎていると思うんですよ。でも、そんな風に生きてたら、疲れちゃって必要以上に誰かと親しくならないんじゃないかなぁ?って」


磯波「あっ!それは感じたことがあります。どこまで本気で、どこまで冗談なのか」


衣笠「へー、青葉って意外と提督の事を見ているのね」


青葉「こうして取材していると、なんていうのかな?提督の熱量みたいなものが少ない気がいつもするんですよね」


衣笠「そんなの全然気づかなかったなぁ」


磯波「青葉さん、なんだか、ありがとうございます。嬉しいです!」


青葉「いえ、参考になるかはわからないんですけどね」


衣笠「磯波ちゃん、いい子だなぁ。頑張ってね!」


青葉「ガサもがんばって!提督の真の姿を見る為に!」


衣笠「ええ~?本当にやる気なんだ・・・。でもさー青葉、青葉は何でそんなに提督の本当の姿を知りたいの?」


青葉「あれ?そういえば、何ででしょう?・・・って、それが記者だからだよガサー」


衣笠「記者ねぇ?」


磯波「あのっ!わたしも、親しくなりたいとか、そういうんじゃないんですよ?もう少し提督がどんな方なのか知りたいような、そんな気持ちです」


青葉「そっ。フレンドリーだけど秘密が多そうなんですよね、提督って」


―執務室ラウンジ、キッチン。提督は二日酔いによく効く麦茶を作っていた。


陸奥「戻ってきたのね?やっぱり麦茶を作っていると思ったわ。ねぇ、提督の麦茶って二日酔いによく効くけど、どんなレシピなの?」


提督「おう、この際だから説明するとさ、まず、地元の良い水か、買うなら軟水を用意する」


陸奥「軟水か湧き水ね?」


提督「次に、これ、なるべく粒の大きい、まあ値段が高めのやつなら間違いないだろ、麦茶パックを使って麦茶を煮出す。沸騰した後に火を止め、少ししてからパックを入れて、そのままにしておく。・・・ここまではまあ、普通の麦茶だよな?」


陸奥「そうねぇ」


提督「・・・でだ、最後にこいつを入れる。大体これくらいな」ガリガリッ


―提督はミル付きケース入りのヒマラヤ岩塩を二回し程、麦茶に入れた。


陸奥「あっ、そんなものを入れていたのね?」


提督「そう。これで、二日酔いの抜けが早くなるわけさ。悪酔いして足りなくなったものをほとんど補給できてしまうバランスだな」


陸奥「なるほどね!」


提督「あとは思いやりや愛情をちょっと込めるのも忘れちゃだめだ」ニッ


陸奥「ふふ、わかったわ。確かに大切ね」


提督「これであとは二日酔いしても大丈夫、と」


陸奥「私もお付き合いしていいかしら?」


提督「もちろん!」


―執務室ラウンジに、次から次へと艦娘たちが来た。


叢雲「私も今日は思いっきり呑むわよ!」


足柄「提督、私もお酒に付き合うわね!」


那智「司令、まだ飲み足りないのだろう?私もだ」


扶桑「扶桑、今日はまだまだ呑める気分です」


山城「姉さまも私も、まだ全然呑んでるって言える量じゃないわ」


金剛「私も呑むネー!でも、結構眠くなってきていマス!寝ちゃったらごめんなさいネ」


赤城「ここからが大人のクリスマスという気がします」


加賀「私も呑みます」


鳳翔「私も、お付き合いいたしますね」


間宮「おつまみを作りつつ、私もご一緒させてくださいね!」


漣「わぁ、ほんと、大人のクリスマスって感じで。あ、そうとも限らないかな。駆逐艦の子も結構いる」


初風「しばらくお酒は呑みたくないって思っていたのに・・・呑んじゃう」


如月「これも秘書艦見習いの務めね・・・なんて、楽しいだけだけど。うふっ」


曙「意外ー、クソ提督のところにこんなにみんな来るなんて。みんな騙されてるわ!」


漣「・・・と、一番騙されてるっぽい人がなんか言ってるんだお」


曙「漣、あんたねぇ・・・」


荒潮「司令になら、死ぬまで騙されてもいいわ・・・。なんてね、いやん!ちょっと酔っぱらっちゃってるかしら~」


曙「あんたのその、謎のお姉さんみたいな雰囲気は何なのよ?」


荒潮「艦娘ですもの、見た目と心が一致しない事もあるのよきっと。でも、曙さんは、言ってる事と心が一致していないように見えますよ~?うふふ」


曙「えっ?・・・そ、そんな事ないから!(返しが鋭いわ、この子!)」


漣「そりゃもちろん、胸部装甲の厚さがぼのより大人だからじゃないっすかねぇ?」


曙「へ、へぇ~」


提督「曙ー、人聞きの悪い事を言ってるなー?おれは誰も騙したりしないぞー?・・・あ、違った。曙の事は騙したな、この前」


曙「思い出した!あの時の事はまだ許してないからね?もうっ!」プンプン


提督「えー?そこはもう許しとけよ。美味い飯奢っただろう?」


曙「まあいいけどね。ふん!」


金剛「今の話で思い出しました。提督ゥー、昼間はおっぱいの話で私の事を上手にあしらいましたネー?さあ、本当の所を聞かせてもらいますヨ~?」


提督「とりあえず、金剛に関しては悪いところが無いし、スタイルが良いなと思ってるのは本当。これは嘘でもはぐらかしでも何でもない。その上で、もっと詳細におれの趣味を答えてほしいって事なんだろう?」


金剛「うう・・・提督は青ヶ島の提督より女の子の扱いが上手いデース!・・・ウン、そうね、知りたいですヨ?」


提督「んー、真面目におれの趣味ねぇ?ちょっと待てよ?うまくまとめてみるわ」


―この時、場の空気がワクワクソワソワした感じになったが、提督は気づいていない。


叢雲「最初期に私がまとめた、提督の趣味のレポート通りでいいってことでしょ?」


提督「あー、まあそうなるよな。でも、過去を振り返ると結局スタイルとかどうでもいい感じになっているわけで」


加賀「気を遣わずに答えてみてもいいと思いますよ?」


赤城「あらっ、加賀さんも興味があるのね?」


加賀「いえ、皆さんじりじりしているので、提督の何らかの返事が必要な局面かなと思っただけです」


提督「よし、じゃあ忌憚なく言うぞ?原則どうでもいいが、と前置きをしたうえで、簡単に言うと、立ち姿で尻より胸が大きく見えるスタイルはあまり好きじゃないかな。大きくてもいいが、大きすぎは嫌って事」


加賀「要するに、バランスですね」


提督「例えば、大きすぎる胸は気になるが、全然ないくらいでも気にならない」


赤城「なるほどですね」


提督「んで、胸と尻では尻が好き。それと、良い女の子は背中がキレイなので、背中をよく見るねー。そんな機会はあまりないけどさ」


金剛「やっと本当の事を言ってくれましたネー!そういうのが聞きたかったんデース!」


提督「まあこうなった以上、みんなの趣味なり何なりも色々聞かせてもらうつもりだけどな」


金剛「うっ、そう来るとは思いませんデシタ!」


陸奥(あら、珍しいわね、私たちのそういう事を色々聞きたいなんて)


叢雲(へぇ、ちょっと変わってきたのね)


提督「じゃあ今夜は、互いに可能な限り、色々聞く、答える、ってルールを酒の肴にするって事で」


足柄「面白くなってきたわ!」


―堅洲島のクリスマスはこれからだ!




第十五話 艦


後書き

作中で提督が陸奥に説明している麦茶は、夏バテにも二日酔いにも有効です。


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