2018-05-09 01:27:38 更新

概要

【●ワ●:最終決戦『終結』】

もう物語としては終わってますのでこの終結編の加筆はないです。更新は蛇足編サブタイトル追加or誤字脱字修正です。


前書き




ここまで読んでくれてる人にもはや注意書など。




オリキャラ、勢い、やりたい放題。海のように深く広いお心でお読みください。


この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません←


【1ワ●:ガオ――――!】

 

 

丙・乙・甲・元「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

知ってたよバッキャロ――――!!!!


 

 

 

 

大淀(……私も、泣きそう)

 

 

2

 


金剛「イエ――――ス! コングラッチュレーショーン! &! バーニングラ――――ヴ!!」

 


鹿島「ひたすら信じて突き進んだ先に、確かに希望がありました。提督が示した羅針盤の針は間違っていませんでしたあ……」ポロポロ

 

 

榛名「榛名! 感激です!」

 

 

秋津洲「……あれ、これ、考えうる限りの最高のハッピーエンドかも?」

 

 

暁「ねえねえ、あれ、電よね……?」



雷「うん。司令官も、戦ってくれていたようね」

 

 

響「スパスィーバ。全員生還のためにね」

 

 

陽炎「まあ、何どなくごんな気はじでいだげどねえ……」ポロポロ

 

 

間宮「ええ、はい。『途中で誰かが欠けても最後には必ず全員生還』の意味、わがりまじだよう……」ポロポロ

 

 

不知火「二人とも気持ちは分かりますが……まだ終わってはいません。司令の策は、すごい、としかいえませんが」

 

 

瑞鳳「なにがすごいかと言えば、あの海の傷痕相手に、本当に誰も欠けていないことに1票です!」

 

 

伊58「ま、ゴーヤ達が強すぎてしょせん海の傷痕なんか相手じゃなかったってオチでち」

 


翔鶴「勝利が確定したわけではありませんけど、霧は晴れましたね。勝利が、確かな勝利が見えます……」

 

 

卯月「勝ち確ぴょん。あのトランスの時にうーちゃんの頭のなかでユニコーンのBGM流れたし」


 

ぷらずま「鎮守府(闇)のお友達の皆さん! この中で負けが頭を過ったやつは、素直に手をあげるのです!!」

 

 

阿武隈「正直、もうダメかと――――!」

 

 

ぷらずま「この鎮守府に籍をおきながら海の傷痕とかいう歴史最大のダボに、この鎮守府(闇)が負けるはずがないのです!」


 

ぷらずま「よりにもよって第1艦隊旗艦のあなたがそんなことも分からないとは……!」

 

 

ぷらずま「お仕置きなのです!」

 

ドオオン!

 

卯月「アブ――――!」

 

 

龍驤「でも、しゃあないやん。うちも電がやられた時、」

 

ドオオン!

 

瑞鳳「龍驤さ――――ん!」

 

 

ぷらずま「はわ、はわわ!? 司令官代理のあなたがそんな戯れ事を!?」

 


瑞鶴「ちょっと提督さん、あの暴力性は最初期のおちびじゃないの!?」

 

 

《彼女なりの愛情表現ですから(震声》

 

 

ぷらずま「今まで司令官さんのなにを見てきたのです!? 最低でも勝利することは当然のこの鎮守府で、あなた達は不安になっていた!? 完璧主義者の度が過ぎて最早ただの臆病者なのですよ!?」

 

 

明石「お前が負けたからだろーがバーカ!」

 

 

明石さん「ちょ、お前はドエムですか!」

 

ドオオン!

 

秋月「アッシ――――!」


 

秋雲「口答えをしたのが、間違いだね……」


 

山風「完全に、同意……」

 

 

弥生「卯月、あの子は誰……?」

 


卯月「電、お前らも知ってる電だぴょん」

 


由良・長月・菊月「」

 

 

ぷらずま「はわ、あなたは由良さん!?」

 

ドオオン!

 

長月「由良――――!」

 

 

菊月「もしかして敵なのか!?」

 


ぷらずま「帰ってきたら一緒に植えようって約束した朝顔はもう咲いて枯れちゃいましたよ!? あの約束、由良さんは行方を眩ましてまでも守りたくなかったのです!?」

 

 

由良「覚えて、る。い、電ちゃん、だ……」

 

 

ぷらずま「気合いを入れ直すのです!」


 

ぷらずま「勝たなきゃ!」


 

ぷらずま「ゴミなのです!!!」



ぷらずま「なぜこのように司令官さんのお手を煩わせるような策を取ることになったのです!?」


 

一同「電さんや提督のせいではなく、その他が弱いからです!!」



ぷらずま「その通り! 司令官は最優でありながら、このように海の傷痕と『E-8』までずるずると来てしまったのは誰のせいか!?」


 

一同「私達が弱いせいです!!」



ぷらずま「声だけは大きいのですこのダボどもが!」


 

一同「申し訳ありません!!」



ぷらずま「誰に与えてもらう勝利なのです!!」



一同「提督です!!」



ぷらずま「誰に生かしてもらえた命なのです!?」

 

 

一同「提督です!!!」

 

 

ぷらずま「ならばダボどもに聞く!!」


 

ぷらずま「戦争とはなにか!!」



一同「完全否定の殺し合いです!!」


 

ぷらずま「敗北とは!!」


 

一同「死です! 同胞への侮辱です!」



ぷらずま「その通りなのです! この軍の穀潰しども!!」



ぷらずま「命を引き換えにしても勝利すべきこの最後の海、なぜ海の傷痕がまだ生きているのです!?」



一同「私達が最後まで口だけの弱者だからです!」


 

ぷらずま「必死せよ!」


 

一同「すでに必死かつ必殺の刃に!」



ぷらずま「我がお友達に今一度聞くのです!」



ぷらずま「テメーらの必殺とはなんなのです!?」



一同「必ず殺す、ではなく!」



一同「必ず殺さなければならない、です!」



ぷらずま「よくぞ抜かしたのです!!」



ぷらずま「敵は血祭りにあげるのです! テメーらが通る海の色はいつだって深紅なのです!」



ぷらずま「殺戮を躊躇わず、卑劣といわれ、品のない戦法も躊躇わずに行使する我が闇の同胞達よ!!」



ぷらずま「――――よくぞ耐え抜きました!」

 


ぷらずま「お友達が決死で稼いだ時間で、司令官の策は実り、ここに可能性は集約されたのです!」

 

 

ぷらずま「『サイコロの目は2つ!』」

 

 

ぷらずま「生きるか死ぬか――――!」

 

 

一同「否! 断じて否!」


 

一同「『サイコロの目は1つ』です!」

 

 

一同「我々が暁の水平線に勝利を刻むという1つです!!」

 

 

ぷらずま「最後の最後でようやく少しは分かってきたのですこのダボども!!」

 

 

ぷらずま「なのに、なぜ泣くのです!?」

 

 

一同「歓喜のあまりです!!」

 

 

ぷらずま「安い涙でも泣いて欲しくはないのです」

 

 

ぷらずま「お友達の皆さんが泣いてると、私も悲しくて泣いてしまうでしょう!?」

 

 

一同「――――」

 

 

一同「イエス、マム!!」

 

 

一同「私達は心より、この鎮守府(闇)を!」


 

一同「愛しています!!」


 

ぷらずま「確かに聞き届けました」

 

 

ぷらずま「ならばその想に」

 

 

ぷらずま「この私が必ずや――――」

 

 

 


 

 

ぷらずま「勝利で報います!!」ビシッ


 

一同「My god is open-the-door!」


 

ぷらずま「さあ――――!」

 

 

ぷらずま「海屑艦隊のお友達の皆さんの流儀に沿って海の傷痕に私達の威嚇の言葉を出すのです!!」

 

 

一同「了解です! 掛け声をお願いします!!」

 

 

ぷらずま「いっせーのーで!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 



ガオ――――!!!


 

 

 

 



 

 

わるさめ「ぷらずま、今度は、今度は負けんなよ! お前が、お前が決めろよ――――!」

 

 

わるさめ「信じてるから!」



わるさめ「お前が死んで、気づいた。私にとってお前はもう家族にも等しいくらい大きな存在になってた!」

 

 

わるさめ「正直にいうよ!」

 

 

わるさめ「もう私達、親友だろー!」

 

 

わるさめ「必ず生きて帰投してこい!」

 

 

ぷらずま「――――」

 

 

ぷらずま「……わるさめ、さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ぷらずま「テメーは戦えるだろうが! 高見の見物してないでさっさと降りてくるのです!!」


 


ドオオン!

 

 

わるさめ「」

 

 

パチャン

 


ぷらずま「センキさん、ナイスなのです」

 

 

戦艦棲姫艤装「これに限り礼には及ばないわ」



【ワ●:Fanfare.ぷらずま】


 

壊:バグになってから獲得したこの暴力性は電の適性者のデータからは考えられない性格の豹変だ。私はきっとこの『艦隊これくしょん』があったからこそ誕生した二次創作の存在なんだろう、と思う今日この頃なのです。

 

 

研究部にいた頃は周りのみんなとかどうでもよかった。だから、わざと忌諱に触れて、嘲り笑っていた。電の形をした手のつけられないクソガキと認定されたものの、大人の事情で手厚い待遇を受けて、間宮さんと二人で鎮守府(仮)にいた。この『戦争:物語』とともに終わるこの命も終わらせようと誓った。

 

 

今、生き残ろうと戦っている。

 

 

お友達のために、勝利を渇望している。

 

 

そのためならば命をも惜しくない、と矛盾した想いで、ただただ一生懸命だ。あの頃からは想像できない今なのです。

 

 

司令官さんが示した航路をがむしゃらに駆け抜けた日々が、闇の中で絶望していた私を変革した。いや、私だけじゃないかな。みんな、この鎮守府(闇)になにか大切なモノをもらったはずだ。

 

 

ネ級艤装「心がくっついてる感じがします……!」

 

 

レ級艤装「本当だよ。なんかお前らに怒る気にもならないや。今、僕の喉でも撫でてみろよ」

 


レ級艤装「グルルッて甘えた声で鳴きそうだ」

 

 

レ級艤装「なあ、ぷらずま――――」

 

 

レ級艤装「僕らと君達の」

 

 

レ級艤装「戦争は、もう終わったよ」

 

 

全てを反転させてしまっている。この戦いを乗り越えたのなら、この今を生きている自分に感謝して、「ありがとう」とみんなの眼を見ていえる気すらする。

 


やけくそになっていた時の自分からは考えられない。



なにもない部屋を彩ろうとして他人の温かみを感じられる持ち物を集めて、戦争にも参加することを決めたあの頃の私は、死んで負けた。心が砕け散った。




レ級艤装に自分の顔が映り込んでいる。15年前から変化を止めたその姿は、あの頃の私と一緒だ。

 

 

水飛沫かな。その映り込んでいる顔が、泣いてる。

 

 

昔の私が、今の私を見て、泣いてるみたい。

昔の私は、こういっている気がするのです。


 

辛かったよね。

 

 

よく、やったね。

 


よく、ここまで来たね。

 

 

よく、戦い抜いたね。


 

 

偉いよ――――

 

 

これからは、過去の自分が褒めるような自分になりたいって、そう思う。具体的な夢とかはないけれど、そんな風にがんばって生きていけたら、いいな。

 

 

今が、いや――――


 

 

 

今も、その時。

 

 

海の傷痕は接近しようと、近付いてくる。選んだ戦術は実に合理的だ。この心に直接、チューキさん達の思考が流れ込んでくる。

 

 

『Srot1:史実砲』はただの砲撃機能だけの装備と化している。

 

 

『Srot2:経過程想砲』は通用しない。

 

 

『Srot5:海色の想』は解体されている。

 

 

『Srot4:海の傷痕装甲服』の耐久を生かして、接近してきている。

 

 

リコリス棲姫艤装「電ちゃん、気を付けてね。狙いは私達を分離、つまり解体することだから」

 

 

「了解なのです」

 

 

「声に出さなくても伝わりますよ。このトランスタイプはあなた達の想が聞こえますから。私はその精神影響を受けてきたのですから」

 

 

リコリス棲姫艤装「今も辛い?」

 

 

「まさか。あなた達の心は温かいのです。私はお母さんを知らないですけど、お母さんに優しく包み込まれているような感じなのです」

 

 

リコリス棲姫艤装「ふふ、そう。ならよかった」

 

 

『Srot3:妖精工作施設』の黒腕により、『殲滅:メンテナンス』により、解体したのなら、私の敗北だ。だけど、そんなことは絶対にさせない。

 

 

思考する艤装、この『壊:バグ』によりトランスした艤装は、私の意思がなくとも稼働する。

 

 

ネッちゃんさん、レッちゃんさん、スイキさん、センキさん、リコリスママさん、チューキさん。

 

 

トランス状態でも、中枢棲姫勢力は、燃料と弾薬を調節して仲間との連携で、止むことのない嵐を形成、海の傷痕を巻き込み、穿つ。

 

 

家族として一丸で戦い抜いてきた彼等の連携は、命を預けるに足りる。海の傷痕の狙いを見抜いて、止むことのない必殺が、空と海を往く。

 

 

その苛烈な砲雷撃は、この世界にファンファーレのように響く祝福の音なのです。



海の傷痕に余裕なんて持たせない。その妖精工作施設を、余計な作戦に回さないように、少しのタイミングのズレはこの電艤装で穴埋めをしていく。トランスタイプとして戦い抜いてきた私だから出来る。

 

 

雪の日は寒かった。雨の時は憂鬱だった。嵐の日にはこの小さな身体が吹き飛ばされそうになった。

 

 

耐えてきた。今を生きている。

 

 

今までの日々に、無駄なんて一切ない。

 


お友達という豊かな土壌に囲まれた私という種に、時に絶望という冷たい雨が降り注ぎ、時に希望の光も浴びて、こうして満を持して咲き誇るに至る。

 

 

闇の中でもがき続けたからこそ、

 

 

 

 

こんなにも、

 

 

 

今が、輝いているよ。

 

 


きっと誰もが、

 

 

 

 

こんな日を夢見て今を生きているはず、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのです。


 

 

 


 

でも、もう一人の私がいうのです。

 

 

 

 

 

なにも、素直に喜べないのです。

 

 


 

 

 

 

 

 

そう、だね。

 

 

手放しで喜ぶことなんか出来ない。だってもう海の傷痕は人間だもの。だから私は今から人間を殺すんだ。そんなの私には喜べやしない。

 

 

 

それでも、あの頃の弱虫な私じゃないんだ。

 

 

 

さあ、勝ちますよ。

 

 

 

戦争をするよ。



【ワ●:Fanfare.海の傷痕】


1

 

あれこそが、輝きだ。

海の傷痕がすがった人間の希望そのものだ。究極的な希望の境地。いまだ味わったこともなく、理解できない光でもある。言葉にして批評するのも躊躇ってしまう。

 

 

言葉なんか要らない芸術的な創作だ。

 


海の傷痕:此方「当局、ごめん――――」

 

 

海の傷痕:此方「あなたの望んだ世界は実現しないかもしれない」

 

 

海の傷痕:当局【ケラケラ、なにを今更】

 

 

海の傷痕:当局【当局は、此方の味方である。だから此方のいうことを聞いてあげていたのだぞ。この艦隊これくしょんもほとんど仕事を押し付けられていたのを我慢してな】

 

 

海の傷痕:当局【最後まで諦めて欲しくないのである。この一キロを完走して妖精工作施設で触れさえすればこちらの勝利だ】

 

 

海の傷痕:当局【あれを倒したい。あれに打ち勝てば、間違いなく、今を生きた証となるであろうよ】

 

 

海の傷痕:当局【それでも、勝敗などどうでもいいと思う当局もいるのだ】

 

 

海の傷痕:当局【そんなこと気を回す余裕もないほどに想う。実感している】

 


海の傷痕:当局【Live myself to the fullest:今を最大限に精一杯生きる】


 

海の傷痕:当局【そんな風に心の底から思わせてくれるとはな。やはり此方は当局の最高の提督であるよ】

 

 

海の傷痕:此方「なら、私の指揮は」

 

 

海の傷痕:此方「『進撃』」

 

 

海の傷痕【「このおよそ1キロメートルの花道に海の傷痕の全てが集約される」】

 

 

海の傷痕【「海の傷痕の『Fanfare:祝福』である!」】

 

 

【ワ●:想題此方:製作秘話】



わたしはだあれ? ここはどこ?

 

 

「おっとう、と、ままはどこ?」


 

自然と言葉がこぼれる。お母さんってなんだっけ。お父さんはどこ? 死んだんだっけ。いいや、生きているんだっけ。あれ、お父さんお母さんたくさん、いる。ええっと、生きてるんだっけ、死んでるんだっけ。なにがどうなってるんだっけ。

 

 

産まれ落ちた時の海の傷痕は、死者の想の塊だ。全てを知っている。なのに、全てを知らないおかしな存在でしかなかった。

 

 

ただただ移り変わる景色の中を漂い、自分が何者かを問う。行き着いた答えは、誰かが答えたモノだ。我思う、故に我あり。

 

 

しかし、何故だ。

この目に映る景色は必ずといってもいいほどに誰かが死んでいく風景だった。幸せな景色が本当に少ない。わたしの、わたしのなかにあるのは、

 

 

憎悪、悔恨、悲壮。



そんなモノばかりだった。頭に思い描けるのは、それらの感情を生むことになった原因ばかり。なんなんだ。その問いだけに、どれだけの時間を費やしたのか分からない。ただこの漂う想が映す景色から世界のことを学び、自我を形成してゆく。

 

 

日に日に、負の感情は蓄積されていく。

 

 

潜水艦の奇襲を受けて、ある軍艦の左舷に火柱と水柱があがる。ある軍艦は誘爆して、海中へとゆっくりと水没してゆく。海中に無様に浮く人が万歳、と雄々しく叫ぶ声が聞こえる。なにが万歳なんだ。

 

 

こんなにも、悲しみにうちひしがれた想は、なにを持って万歳というのだろう。いえ、複雑だけど、理屈は分かるよ。頭で分かるけど、わたしの心はそれを理解できない。文化の違いというやつだろうか。

 

 

誰かに感情移入すれば、必ずといっても誰かを憎悪する。誰かを殺したい、と強く願う。この世界はやるせない。一人の力はあまりに無力だ。誰もが自殺のような行進を続けている。逃げられない。でも、失った仲間達のために、必ず敵を殺してやる。

 

 

わたしの心に、強く刻まれた。

 

 

わたしの遺伝子が創造されてゆく。

 


継ぎ接ぎの映画を眺めるように、無数の景色を眺め尽くしても、幸せの内に死ねた人は全くといってもいなかった。満足して死んだ人間は割といる。

 

 

仲間が欲しいと思った。子供の想が、お友達と遊ぶ想とか、家族での団らんが温かくていいな。こんな人間を殺したい憎悪だらけの気持ちなんて、なくなればいい。

 

 

だから、願った。わたしのなかで欲しいおもちゃをねだると、誰かが用意してくれる。わたしの友達、仲間、家族でもある存在が、自然と造られてゆく。

 

 

「おはようございます」

 


わたしと同じ姿だ。


 

「ねえ、あなたは」

 

 

「『言わんでもいい。全て分かっている』」

 

 

「そのように願ったのであろうよ」

 

 

「……なまえは」

 


「む、それは知らんな」



「そうだな、呼び名は暫定で、こっちとあっちでいいであろうよ」


 

「気付いているのだろう。まあ、留守の間は任せておけ」

 

 

気付いていた。この世界の他に、世界はあるのではないか。この想はここで産まれたモノだとは思えない。だって、この世界のどこを見渡しても、この想が記憶している景色は、ここにあるはずのないモノばかりだ。

 

 

答えは望めば、すぐ見つかる。

赤ん坊を産み落とす母の景色が映った。

わたしは、まだ産まれていないのかもしれない。もしかして、わたしは産まれる前なのかもしれない。お父さんお母さんに、まだ出会ってないのかもしれない。



「外には出ないほうが幸せだと思うがな。向こうに行くと、色々と制限がつきまとうぞ」

 

 

「まあしかしだ、一部の例外を除いて望めばモノを与えられる家にいても退屈であろうよ。子供の頃からそんなに満たされていては不幸にもなる」

 

 

強く願った。わたしも、産まれたい。

 

 

そうして、ロスト空間からわたしは飛び出した。

 


2

 

 

どこかも分からない。

ただ嵐の日の無人島に来てしまったようだ。どうしよう。ただ興味本意でこっちの世界に来てみたけれど、帰り方が分からない。迷子になってしまった。こっちからあっちに行く手段が分からなかった。どうしよう。迷子だ。



「ぬわ――――!」


 

誰かが木の影から飛び出てきて叫んだ。海辺につけられている船の辺りからだ。

 

 

「少し寝ていたら嵐が収まるどころか激しくなっているのであります。これでは時間までに帰れず制裁が……!」

 

 

海辺につけられている船に乗り込もうとして、足踏みする。船に片足を踏み込んでは戻して、空を見上げている。この激しい雨風の中、目的地まで辿り着けるか分からない。そんな迷いが見て取れる。

 

 

「うん?」

 

 

あ、視線が合った。

 

 

「お、女の子がこんな場所にいるはずが」

 

 

そういえば、わたしの姿形はどんな風か知らなかったけれど、女の子というからには人間の女の子として産まれ落ちたのだろう。

 

 

「なに者でありますか?」

 

 

言葉は返さなかった。人間のこういう理由を求める性は嫌いだ。わたしはありのままを映して生きて、そして赦していける。なにがダメでなにがいいとか、そんなのは必要なかった。

 


人間という理由だけでぐちゃぐちゃにしたくなる。他の生き物に、同じ人間にすらそうしている生き物を見るだけで腸が煮え繰り返る。この時もうわたしの人間殺戮の欲求は本能として確立していた。

 

 

「いたたたた! なぜ本官に噛みつくのですか!」

 

 

「お腹が減っているのでありますか?」

 

 

突拍子もなくそんなことをいい出して、湿気った乾パンを差し出してきた。人間は本当によく分からない。なぜお腹が減っているという風に解釈したんだろ。

 

 

強引に手に持たされた乾パンを口の中に入れる。初めて食べた食べ物の味は雨で固まった粉で味気ない。美味しいか不味いかも、判断できない。

 

 

その人の腹の音が鳴った。


 

こういう時、どうすればいいんだろう。

 

 

――――親切には親切を返すのが人間の礼儀である。繋いであるから、願ってみよ。なにか……ああ、食べ物のこともよく分からんか。

 

 

手には果実が現れる。

 

 

――――それをくれてやれ。

 

 

いわれた通りにその果実を差し出す。

 

 

「林檎を持っていたのに、本官の乾パンを受け取ったのでありますか。しかし、こんな高級なモノ、たなたのような子からもらうわけには……」

 

 

いつまで待っても受け取らないから、されたことをし返した。そのゴツゴツした手に強引に握らせた。すると、観念したのか、頭を下げる。


 

「感謝するのであります」

 

 

別にいいよ。こんなもの、欲しければいくつでもあげる。でも、そろそろいい加減、消えてくれないかな。人間を見ていると、胸が苦しくなる。

 

 

「あなたの名を教えていただいても?」

 

 

――――おっと、とりあえず消失させるぞ。

 


ちなみに後から聞いた話だけど、本官さんは唐突に現れて消えた女の子の話をしたら、気が狂っている、と、正気に戻れ、と殴り飛ばされたらしい。

 

 

3

 


帰ってきた時は、あの海の中ではなく、丸太小屋だった。『あっち』は『こっち』が留守にしている間に、色々とこの空間で創作していたようだった。

 

 

「あの男を殺しても問題ないが、仕事が増えるのでお出かけはとりあえずここまで」

 

 

布の上で寝転がりながら本を読んでいる。

 

 

「わたしの、名前は『こっち』でいいの?」

 

 

「ふむ、日の丸で通じる言葉だが、変だな。漢字で『此方:こなた』ならば、『あっち』の感性では問題ない。ちと珍しいが、今日から『そっち』は『此方』と呼ぼう。それでは……」

 

 

此方「此方だね。わかった。ねえ、人間を見ると殺したくなるの、なんとかならないかな」

 


「今からその話をしようと思っていたが、聞いておきたい。なぜか」


 

此方「……分かんない。そうしてまた同じところに行ってあの変な人間に会いたい、みたいな?」

 

 

「わたし達は一心同体だ。あなたはわたしを産んだと思っているが、その都合に沿って未来へ行くのならばわたしがあなたを産んだも同然だな」

 

 

此方「……よく分からない」

 

 

「本能を消すのが出来ない例外だ。此方が生命として産み落とされるに至り、人間の殺戮が本能として備わっている。これは此方の消滅を持ってしか消えないな」

 

 

「しかしごまかす方法はあるぞ。まずわたしを殺せ」

 


ここのことも大部分かってきた。想えば、手には刃物がある。あっちの喉笛を切り裂いた。舞う血飛沫が生暖かくて、好きだった。さっき外に出た時、寒かったからかもしれない。

 

 

4


 

「フッカ――――ツ!」

 

 

「どうだ。少しは収まったはずだ。人間と同じく、お腹が減れば物を食べる。眠くなれば寝る。異性と交いたくば、交わる。それと同じで、人間を殺したければ殺せばいい。時限式だが、それで抑えられはする。なに、わたしも同じようにして発散する」

 

 

此方「消せないの?」

 


「殺してもいいか?」

 

 

此方「いや」

 

 

「だろうな。殺したいよりも、死にたくない、だ」

 

 

此方「あなたもあっちの世界に行けばいい。面白そうではあったよ」

 

 

「興味はないな。しかし、此方の『本体:想』と連結している。わたしは此方であり、此方はわたしだ。どちらの体験も己がもの、一心同体だ」

 

 

「いってしまえばここで先に産まれたのはわたしなのだがな。退屈過ぎたので自害した。すると、またわたしが産まれていた。どんな災厄であろうか。その想に引っ張り寄せられて此方がわたしを再び産み落としたのだ」

 

 

此方「もしかしたら、此方が分身かも?」

 

 

「わたしは、そう思う」

 

 

此方「此方はそうは思わない」

 

 

「ならばそれでよかろう」

 

 

此方「分かった、ありがとう」

 

 

「……」

 

 

此方「また向こうに、行くね」


 

5

 

 

今日は雲ひとつない快晴だった。海を見つめてただ過ごしている。あの人が現れたのはその翌日だった。あの時と同じく船でここまで来たようだ。

 

 

今度は見ても殺したいとは思わなかった。本当にあのよく分からない衝動は収まっている。話しかけてみようと歩み寄った。

 

 

「お化け――――!」

 

 

此方「……此方です」

 

 

でかい図体をして情けない人だった。向こうで眺めた男という人達の中で怖がりは少数派だ。

 


「こなた?」

 

 

字はこう書きます、と砂の上に此方と書いた。

 

 

此方「……お化けです」

 

 

「……なっ!」

 

 

真に受けている様子だ。

 

 

此方「無害です」

 

 

「なるほど。ならば、あの時に唐突と消えたのも納得でありますな。しかし、実在していたとは」

 

 

「ならば、あの林檎は……」

 

 

「嘘ですよ。真に受けないでください」

 

 

「……どうやってここに」

 


――――背後にあるやつ、と答えるといい。

 

 

「背後にあるやつ」

 

 

「……背後?」

 

 

その人は目を丸くした。呆然とその場で立ち尽くしていた。一体なにを作り出してこっちに寄越したのだろう、と振り向いた。

 

 

零戦があった。

 


――――あっはは、冗談というやつである。

 


すぐに消える。

 

 

「消えた、白昼夢というやつ、でありますか?」

 

 

「うん、きっとそうだと思います。やっぱり此方はお化けなんだとも思います」

 

 

「お化け、実在していたとは」

 

 

さっきの繰り返しだ。

 

 

「……此方のことばかりではなく。そちらのほうのことも。あなたは軍の学校の人ですか?」

 

 

「であります。四号生徒であります」

 

 

適応力は高いというべきか、いくつか言の葉を交わすと、こっちの正体を探る発言は少なくなっていった。最も、あっちのわたしが、船を作ってくれて、指示される通りに「これで向こうのほうから来た」といえば納得したような素振りを見せた。お化けではないのならそれでいい、と安心したのかな。

 

 

なにやら大志を語り始める。父が最後に乗艦した扶桑に乗りたい、とか、高角砲についての独自論を展開し始めたり、戦時の今、この国の勝利のために、とか、此方にはあまり好ましくないことを語り始めた。

 

 

「む、すみません。女子が聞いても面白くはありませんね」

 

 

「はい、面白くはありません。嫌いなので」

 

 

「しかし、今の女子はなにをして遊ぶのか。水泳……砂遊びとかでありますか?」

 

 

「砂遊び」

 

 

適当に答えた。

 

 

その人は、海水を汲んできて、砂の上にぶちまけた。そうして出来た泥を手でこねくり始めて、山を作り始めた。その天辺に木の枝を差した。

 

 

山を両腕で囲い、砂を削り取った。


 

「これを交互に繰り返して棒を倒したほうの負けであります」

 

 

なるほど。

やってみると、なかなか面白かった。しかし、それ以上に腹が立つ。何度やってもこの人に負けてしまうのだ。わざと負けてあげるという優しさはないのか。それはそれで腹が立つからやらなくていいけど、とうとう最後まで勝てなかった。

 


「そろそろ本官は戻るのであります。それでは」

 

 

本当にこの時はよく分からなかった。その人の服を片手でつまんでいた。その人は困ったような顔をした。困らせるのも嫌なので、手を話した。

 

 

その人は海水で手を洗うと、船の中からなにかを取ってきて、差し出してくる。「お受け取りください」といわれたので、もらった。これは確か握り飯だ。口のなかに入れてみると、少しだけ塩の味がする。この前の乾パンよりも、ずっと美味しかった。



それから本官さんに会うときは黙り込むようになった。そうすると、優しくしてくれる。だから、私はこの人にそうやって甘えるようになった。



6

 


「お帰りなさい」



「しかし、あの男との交遊は悪くないな。此方の個性がかなり形成されてゆく。多分、此方を形成した想は女性のほうに比重が置かれているな」


 

此方「ふうん。それは、なんのために」

 


小さな零戦と、航空基地みたいなもの、魚雷と砲やらあの人が話したモノの小さくしたものが机の上にはあった。それと日記もあった。また衝動を抑えるために『フッカ――――ツ』して想に異常が発生してなにをしていたか忘れていた場合の保険らしい。なにをしていたかを書き留めた日記のようだ。



「初めは似たようなものだったが、分離していくな。わたしは、あの男の機械と泥臭い話は退屈ではなかった。それでも、わたしはあなただから、分かる。この後にあなたがなにを望みそうなのか予想できる。いいやつというのは察しもいいものだ」

 

 

「分析してみたところ、残念ながら此方の殺人本能は食欲に等しい。加えてこの世界に流れ込んでくる殺戮欲求は此方が吸収してしまう。流れならば塞き止めることもできるが、『あなたはその想の供給が一定量なければ自我が崩壊してしまう』ようだ。これは、そうだな。戦車や軍艦に燃料がなければ止まってしまうのと同じ」

 

 

「今すぐその殺人本能だけを取り除くことは、出来ないのかな。この世界なら望めば。あ、日記のところに書いてある、ね」

 

 

『第1工程:此方を殺害する』


 

『第2工程:わたしが此方の想を探し出して、想の改造を施し』

 

 

中途半端なところで途切れている。

 

 

此方「これじゃダメなの?」

 


「いや、わたしが失敗したら取り返しはつかないが、可能ではある。まず間違いなくわたし達の人間殺戮は本能として機能している。此方を殺して復活させてもその本能はついて回る」

 

 

「だから、その本能を削り取ってしまえばいいのだが、この場合、恐らく『此方は此方でなくなる』のだ。それでも、いいというのだろうが」

 

 

「嫌だ。そもそも死にたくない。だけど、いいよ」

 

 

「わたしが嫌だ。あなたはわたしといったはずだぞ。終わらせる、つまり永劫の死を望むのならばいい。しかし、改造するのならばその命は本来の形ではなく、化物にするのと同じだ。気持ち悪い」

 

 

「おっと、申し訳ない。わたしの個性が出てしまったな」

 

 

「話を戻すが、故に完全にその本能を亡くす方法を模索している。此方はそれを望むはずだ」

 

 

「厄介だぞ。しょせんわたしも人の知能の域を出ないのでな。どれだけわたしが天才であろうが、成し遂げられるかは分からん」

 

 

此方「なぜ、そんなことを」

 

 

「なぜ、だと! なるほど、此方はわたしと違って鈍ちんさんなのだな!」腹を抱えて転げ回りながらいう。「あの男と逢瀬を繰り返せばいずれ別れの時がくる。それまでに気付けると願っているぞ!」

 

 

「なぜ、そんなことをしてくれるの?」

 

 

「してくれる、というのか。まあ、わたしもあの男との出会いでオリジナルに等しい想を、形成されていっている。そうだな、ここらを分析すれば、思考機能付与システムなんかが創れてしまいそうだ。此方、わたしの天才的な閃きを聞、」

 


此方「とりあえず今は置いておいて山崩ししよう。今度はあの人に勝ちたい」

 

 

想の力であの時の木の棒の乗った砂山を創造した。

 

 

「望むところ。わたしはあなたなのだ。だというのに20回もやって1度も勝てないとは腹が立つ。あの時、想の力で小細工してやろうと思ったが、それはそれで完全勝利とはいえないからやれなかった」

 

 

「ここから此方を応援していたのにな」

 

 

此方「ご、ごめん。次は必ず勝つから!」

 

 

そうして二人でひたすら山崩しをして時間を過ごした。どれだけ遊んだのか分からない。しばらくしたら、例と衝動がわき上がってきた。解消の仕方は分かったから、想の力で人間の形をしたナニカを作って、殺した。目の前にいるわたしでなかったのは、愛着が湧いていたからだ。

 

 

しかし、ダメだ。

これでは欲求は収まらなかった。

 


此方はその日もわたしを殺した。

 

 

 

殺したくなんか、なかった。

 

 

7

 


それから、あの無人島であの人と逢瀬を重ねた。この時には、この人のことを「本官」さんと呼ぶようになった。名前は聞いたけれど、此方の名前の語源は『こっち』だ。それと同じく代名詞呼びのほうが、一緒になれたみたいで、好ましかった。

 

 

「此方、本官は卒業です。もうここには来られなくなるのであります」



此方「い、行かないほうが、あなたのためです!」


 

間髪いれずに自分勝手な制止の言葉が飛び出た。この国の戦争は激化の一歩を辿っている。そこにただの人間が、しかも兵士として飛び込めば死んでしまう危険がある。この国は敗ける、と確信すらあった。

 

 

此方「敗ける。この国はきっと、敗けるよ」

 

 

「新鮮な人であります。そのような言葉、本官の周りには思っていても口に出さぬのが暗黙の了解」

 

 

此方「そ、そうだ。此方が勝たせてあげるよ!」

 

 

「あなたは不思議な人でありますが、お化けなどではありませんね。なぜならば、あなたはもう本官の目にはただの人間にしか映らないのであります」

 

 

「あなたの喜怒哀楽に触れて、そのように本官の身を案じてくれる。此方は強く優しい。あなたはきっと素晴らしい女性になると思うのであります」

 

 

此方「こ、此方が、人間の、いい女性に?」



「あ、口説き文句ではありません。本官、故郷に将来を誓った人がいるのであります。それでも、そう思います」本官さんは照れたように笑った。「本官は故郷のために、引いてはあなたのような子供の未来を守るために、同志とともに海に往くのです」

 

 

此方「……勝てる、の?」

 

 

「必ず勝ちますとも!」

 


強く凛々しくたくましい。最初はでかい図体をしているのに、情けない人だと思っていた。向こうの戦争風景で眺めた男という人達の中で怖がりは少数派だったけれど、この人のいる学校というのはそういう教育をするところなのだろう。そうして兵士となってゆく。来るべき時が来たのだ。

 


「勝利を収めるまで、我々は戦い続けます。故にこの戦争は勝利でしか終わらないのであります!」

 

 

絶対に勝てない、と此方はそう思う。きっと本官さんは死んじゃう。それでも、なんでだろう。これ以上、引き留めることはしたくなかった。

 


信じてあげたかった。きっとこの人ならば、ってそう心から想う。この人なら、此方の予想をひっくり返して、勝利してくれるかもしれない。

 


此方「此方は、信じてます」

 

 

此方「此方は、あなたから楽しくて愛しい時間をもらいました。結局山崩しは負け越しですし、だから、この戦争が終わったのなら、またもう1度やりたい、です」

 

 

「はい。必ずやいつの日か」

 

 

あっちのわたしの想が流れ込んでくる。とても強い想だ。塞き止められずに、声という形として具現化した。

 

 

「しばしの別れの前に、1つだけ聞きたい。あなただからこそいう。鵜呑みにして、答えて欲しい」



あっちのわたしの言葉だ。我慢出来なくなったようだ。それもそうか。本官さんと此方の過ごすことで産まれた全ては、あっちのわたしのモノでもある。個性は違うけれど、想で繋がれたあなたはわたし、わたしはあなただ。一心同体の存在だった。

 

 

「もしも無差別的な人間殺戮本能を持った生物がいるとして、人間はそのような存在に居場所はくれますか?」


 

「そのような存在に居場所なぞある訳がない。それこそ、戦争してでも滅ぼさねばならない人類の敵であります。今、戦争している人類が手を取り合ってその存在を倒す共通の敵にもなり得ます」

 

 

「……了解した」


 

「此方は、そのような存在である。だから」

 

 

「殺すなら今ここで殺しておけ」

 

 

此方には分かる。これは此方とあっちのわたしとの共通の想いだ。死にたくないけど、あなたが殺してくれるというのならば受け入れられそうな気もする。そうして此方の想を改造して、別人になったとしても、あなたがいうのなら死ぬ勇気だって持てる。

 

 

――――馬鹿げたことを。

 

 

――――あなたのような女子を殺すような真似は、本官の存在の全否定であります。

 

 

――――これが、答え。

 

 

――――どのような存在であるとしても、産まれたからには生きていく権利があるのです。それがどのような影響を及ぼそうとも、世界は許容するのであります。なぜならばそれを許容しないのは人間でありますから。

 

 

――――そういった許容できない影響の形の1つが戦争であるのだと本官はそう思います。

 

 

戦争は、仕方のないこと。そんなようなニュアンスが伝わった。この時、此方とわたしの想いは一緒だった。この人を信じて送り出そう。わたしもこっちの世界がいい。こっちの世界で、あなたとまたここで遊んだような毎日が欲しい。

 

 

――――あなたはあなたの想い描く将来に突き進んで欲しいのであります。本官はそのための礎となる覚悟は出来ているのであります。

 

 

「あなたは――――許してくれるのだな」

 

 

ならば。


 

“戦争という手段を用いてわたしの居場所を創ろう”


 

「本官お前、必ず勝って帰ってこい!!」

 

 

あっちのわたしの言葉だ。純粋無垢な願いだった。 

 

「男と男の約束だぞ――――!」

 

 

「男と男の……? は、はあ、約束です」

 

 

「バンザーイ!」

 

 

あの想の映像で、沈み行く男達がいった、バンザーイ、という声に込められた感情が、少し理解できたような気がした。此方は好きになれないけれど。あっちのわたしは、兵士の素質があるのかな。

 

 

――――おい、此方。愛した男が船出してしまう。

 

 

――――さすがにもう気づいたであろうよ。

 

 

――――その想いを伝えるのは今ここしかないぞ。ほら、勇気を出せ! その構うだけ構っておいてぽいっと此方を残して往く海の男を――――

 

 

 

 

 

 

 

 

――――困らせてやれ!

 

 

 

 


 

ケラケラ!

 

 

 

 

此方「ほ、本官さん!」

 

 

「はい」

 

 

前に本官さんがやっていたのと同じ姿勢で敬礼をする。本官さんは苦笑いして敬礼を返してくれた。

 

 

此方「此方はっ、あなたの」

 

 

此方「武運長久を心からお祈りしています!」

 

 

――――おい此方! なぜわたしの想いをここで代弁するのだ。違うであろうよ。わたしの友情とは違う感情があるだろう!

 

 

――――そっちであろうよ、このぽんこつが!

 

 

それでも、この言葉に嘘なんてなかった。

 

 

8

 

 

此方「ね、ねえ、此方、此方が……」


 

此方「素晴らしい人間の女性になれるって……!」


 

熱くなっている顔を抑えて、絨毯の上を転げ回る。

 

 

「まあ、平手の1つでもしてやりたい心境ではあるが、頑是ない子供のようなものだし、なにより可愛くて和んだゆえに許そう」

 

 

「しかしだ、現実問題、それはあり得ない」

 

 

分かっている。あの人は信じて、此方という存在を人間が許容しないと断言した。その社会的な答えとは別に、個人的な此方の批評もしてくれた。素晴らしい女性になれると。人間殺戮本能のある此方が、素晴らしい人間の女性になれるわけがない。

 

 

此方「それでも素敵な人間の女性になりたい!」


 

此方「そういえば前にこの人間を殺す本能を消す方法を考えてくれているって」

 


「ふむ、あの時の続きだな。わたしの天才的な閃きを聞くがよい」

 

 

そういって、にやにやと笑う。

このわたしはこうなることを予想していたのだ。すごい。此方よりずっと賢い。

 


「居場所を創る方法を考えていたのだ。それは戦争を自然の営みのように認識させるまでに装えばよろしい。人間はミサイルを撃たれたら、そこでやり返すが――――ここに穴がある」

 

 

「それが人為的なモノではなければやり返さない。嵐で家の屋根が飛んだところで、人は外に出て雨風に殴りかからないからな!」

 

 

此方「あ、確かにそうだね!」

 

 

「もっと言えば人間の性質的に『仕方のないこと』と思い込ませ、そして『対処法』を持たせることが肝要である。そうして自然を許容するに至る」

 

 

「これを見るがいい」

 

 

部屋の片隅にあるナニカには布が被せてある。その布を取ると、そこには小さな透明の箱。その中には想の輝きを放っていたが、妙な感じがする。

 

 

「これは魔の改造を施した想である。特定の軍艦に関わった死者の想を寄せ集め、必要な部分だけを集めた想の塊だ。生きているぞ。これをこちらの」

 

 

「『人が装備できるサイズにした軍艦に入魂する』」


 

「そ、その、可愛らしい生き物は?」



「精霊と迷ったが『妖精』と名付けようか。これもまた調整した想の生きる死人だな。この妖精は与えた役割を忠実にこなすよう調整した」


 

「この妖精は、可視者の意思疏通によって、人間にこの装備を身に付けさせるのだ。『人間に艤装を適応させる建造』を行い、艦の兵士を造る」

 

 

「その敵となる存在だが」

 

 

「『艤装に肉体を適応させる反転建造』を行うことにより、まるで自然のように無垢な殺戮兵器へと昇華する存在を据えようと考えている」

 

 

「ねえ、それじゃ必要以上に人が死ぬことにならないかな?」



「その疑問には後で答えよう。今はまずこの艤装と妖精のことだ」


 

「分かるか。この妖精と改造を施した想を入魂した艤装は――――」


 

「此方と、繋がってる、ね」

 

 

「その通りだ」

 

 

「此方の殺人衝動の周期は観察してある。この艤装関連の死者は此方が殺したのと同じになり、戦争が続く限り自然と此方の殺人衝動は抑えられる仕組みになっているはずだ」

 

 

此方「その艤装の適性者、女の子だけにしよう! この艤装を身に付けられるのは『此方が素晴らしい女性となるために必要な想を持つ者』に設定すれば」

 

 

此方「此方はもっともっと素晴らしい女の子になれるよ!」

 

 

此方「艤装が生きているのなら、その建造で繋がるよね。艤装のほうに生きている人間の想も蓄積するから、そこから此方にって繋がりにできる!」

 

 

「舌を巻く。此方は自分の欲のこととなると賢くなるのか」

 

 

「しかし、待て。男性にも身に付けさせなければ、バランス調整を1から見直さなければならなくなる。それに、人間に多大な面倒も」

 

 

此方「男の想なんて本官さんみたいに暑苦しいのばかりだし要らない! 此方がなんとかやるから!」


 

わたしの分身が造り上げたシステムは小難しくて理解するのに時間がかかった。わたしと此方で、このシステムを練り上げていく日々を過ごしていく。ほとんど此方ではなく、わたしが造り上げてしまうけれど。


 

此方「うー、本官さんに会いたい……」

 

 

「そうだな。わたしが向こうに行って、上手く様子を見てこよう。此方だと間抜けたところがあるから、余計な手出しをしかねん。此方はあの男の可能性を黙って信じていればいい」

 

 

此方「……分かった。此方はこのしすてむの製作しながら、待ってる」

 

 

そうしてわたしの分身はまたきらめく向こうの世界へと初めて降り立った。こちらの世界に帰ってきた時に、まず激怒だった。此方に叱咤した。

 


「お前、わたしをどこに落としてくれているのだ! 太平洋だが、どちらかというと米国に近い地点だぞ! しっかりやれ!」

 

 

どうも此方はそこのところが苦手だった。それはずっとそうだった。現海界させた時に、狙いとは違った変な場所に分身を産み落としてしまう。

 

 

此方「ご、ごめんなさい」

 

 

「よろしい。まあ、分かっているとは思うが、あえて探ってきたことの報告をしてやろう」

 

 

「本官のやつはマリアナ海戦から生き延びてレイテまでも生きて帰ってきた! この調子ならこの太平洋戦争であの男は生き残れるかもしれん!」


 

此方「――――」

 

 

「気持ちは分かるぞ。本当にこちらから手は出していないというのにな。悪運の強い男である。今を生きる人間の力というものは素敵だ」

 

 

「しかし、だ」

 

 

分かる。死人の想がこの世界には絶えず流れ込んでくる。それを分析すれば形勢は把握も出来た。やはり、この戦争は敗けるのだろう。日に日に衰弱していくその綻びをごまかして戦うだけで精一杯た。

 

 

此方は本官さんの言葉の通りに、此方は此方の想い描く将来に突き進んでいるよ。でも、これはあなたが夢を叶えてくれたのなら、必要ない。此方はそれでなにもかもに満足できるから。


 

お互いの将来に。

 

 

 


 

 

 


 

ばんざーい!

 

 

9

 

 

とうとう艤装のほうのシステムは造り上げた。そうしてまず適性として設定したのが、電、吹雪、五月雨、叢雲、漣だった。まずは欲しい想を持った女の子だけが、この艤装で戦うことができるようにした。後は造り上げるだけだ。

 

 

その想を選ぶのが、なぜか欲しいモノを吟味しているみたいで一番楽しかった。だから、次々と出来てもいない艤装の適性者となる想を決定させていった。

 


此方「ねえ、敵のことだけど、想を改造してその戦争の兵士だけを狙うようにするの?」

 


「難しい。その艦の娘だけを徹底して狙うという下地の想が存在しないからだ。オリジナルの想を造ることは可能だが、それは此方やわたしと同じく調整が難しく、狙った個性を持つ想を作り出すのは困難だ。だから、適性者となる者だって適性率というブレを許容せざるを得ないのだぞ?」

 

 

此方「時間はかかる、だけで最初から出来なくはないよね? どうしてそうするの?」

 

 

「人間に脅威として認識させるために、多くの人間を巻き込むのが効率的だからだ。それにより、艦の兵士は英雄視される。ただそこにあるだけでどうとでもなるのならば、それはただの自然で、災害とはなり得ない。自然であり災害でもある、と人間に叩き込むためだ」

 

 

「だから、最初の敵は、人間を狙う。艤装でしか倒せない敵だ。自然と艤装適性者が戦うことになる。そのように仕向けてあるが、ここらは手を加えなければならないかもしれん」

 

 

「そうして戦争のうちに艦の娘も死亡するであろうよ。その想をまず此方とわたしで集める。その想を魔改造して、反転建造によって産み出される敵の本能として設定する。それらが一定量が集まった時」

 

 

「艦載機の操縦妖精が新たな役割を持つ妖精へと輪廻するように、後付けで産み落とす。艤装と人間を資材に通常とは逆の反転建造によって自動で深海棲艦を造る妖精だ。この創造にかなりの時間がかかると見ている故に後付けとして加える。しかし、それさえ造り上げたのなら、自然の輪廻が完成する」

 

 

「こいつだけは、存在がバレないように徹底する。こいつの存在を人間が探り当てたのなら、この戦争から此方とわたしの存在に一気に行き着きかねん」

 

 

此方「――――あ、」

 

 

「これは――――」

 

 

新たに流れ込んできた想の映像が、この眼に写される。これは見たこともない。新たに死んだ人の想だ。場所は沖縄海上――――これは特攻、兵士に死んで欲しいと述べる上官の姿も映った。



此方「此方は、本官さんを助けに行く!」

 

 

「此方、止めろ」


 

わたしが、泣いていた。

 

 

「死んだ。想が、こちらに来ている」

 


10

 


「此方、お前――――」

 

 

「なにをしたか分かっているのか」

 

 

分かっている。戦争の形式を造り上げる過程でこの世界の扱い方もほとんど覚えることが出来た。だから、本官さんの想を軸に妖精人間を造り出した。最初に此方の分身を造り出したのと同じだ。違うのはそれを反射のごとく速度で成し遂げたことだ。

 

 

此方「あなたこそ、なにをしたの」

 

 

「ここにいさせることは管理権限の問題で不味いから、向こうに即落とした。雪風に救助されたはずだ。そして此方はなぜ、そのように泣くのだ?」


 

なぜそれを聞くのだろう。一心同体である此方達ならば、分かるはずだ。本官さんの想も見た。海から投げ出され、冷たい水をかきわけて進む中、力尽きて、溺死してしまっていた。

 

 

此方「ねえ、やっぱり止めよう。私達はずっとここにいればいいんだよ。向こうの世界に居場所なんてなくても。だって――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人が死んだら悲しいもの――――

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「絶対に止めない」

 

 

「感じたはずだ。なぜならばあの男は死ぬ寸前まで、此方のことを想っていたのだから」

 

 

「あなたとわたしは産まれている。しからば生きる権利はある。あの男もいった。まさか、あれだけの感情が芽生えておきながら、あなたとわたしの幸福がこの世界に閉じ籠ることなどというまいな」


 

「止めようなどというのなら」

 

 

「わたしを殺してあなたも死ね」

 

 

「此方は死んでもいい。だけど、あなたを手にかけるのは躊躇う」

 

 

出来なかった。もうこの分身は此方にとって、本官さんと同じくらい大切な存在になっていたからだ。死んだら悲しいもの。殺して復活はさせられるけれど、それをしたら此方の分身はこれまでにない程に激怒するだろう、ということは想が繋がっているから分かる。

 

 

「その思考回路もあの男と似ているな」

 


「それに分かるはずだ。もう我々の正体に気付いたであろうよ。だってここにはどこを探しても、人間の想しかない。その上、此方とわたしの想は向こうの世界で産まれたものでもなく」

 

 

「未知の現象によって発生した特異存在としか思えない。答えを教えてくれるモノなどどこにもないがな。恐らくあなたが産まれたのはあなたが自覚しているよりもっと前、意識が芽生えたのが19世紀の始め辺りのはずだ。分かるか?」


 

「原因は人間だ。我々の母は人間なのだ」

 

 

「『我々は人間がいる限り、また産まれるぞ』」

 

 

「もしかしたら、今のあなたが取らなかった完全なる消滅をしただけで以前にも産まれていたのかもな。どの時代も人は大量に嘆きを抱えて理不尽に死んでいくのだから」

 

 

此方「此方達が消えて、また産まれたわたしが殺戮本能を持っていて、人間を殺し尽くしたら、それこそ悲惨ってことかな。なら此方達で造り上げたこの絶妙な調整の自然災害で向こうの輪に加わり、生きていくほうが人間の存在は約束される、と?」

 

 

「いや、この戦争は止めだ。人間は『純粋な存在』に造り変える。これは深海棲艦と名付けよう。この純粋無垢な想いだけが生きる世界とすれば」

 

 

「戦争はそのまま自然と認識されるから、あなたとわたしは向こうの世界をなに食わぬ顔で闊歩できよう」

 


此方「許さない。そんなのは刺し違えてでも止めるよ。あなただって、最初に此方を化物にするのは嫌だっていったじゃない。此方も本官さん達をそんな風にしたくない」


 

「あの男の死による感受も異なるようだな。わたしは悲しいを通り越して腹が立ってきた。このように繰り返し続ける歴史もなにもかもが人間のせいだぞ。ならば、あなたとわたしで導いてやるのが、慈悲というものではないか」

 

 

「恐らく、これが覚悟というものだ」

 

 

此方「……初めての衝突だね」

 

 

「そうだな。ちょうど殺人衝動もお互いに抑えられなくなってきているところだ。せっかく作ったこの艤装を捨てるのもあれだ。これで決着をつけよう」

 

 

此方「勝ったほうに従う、だね」

 

 

「無論だ」

 

 

分身は叢雲、此方は吹雪の艤装で建造に入った。お互いがその艤装で、決闘を始めたけれど、決闘をいつまで経ってもつかなかった。この世界では、お互いが人外の化物だ。死という負けを受け入れない限り、お互いが負けることがなく、終わりのない戦いだ。

 

 

11

 

 

此方達は妥協策という形を取るに至った。

 

 

「分かった。ならばこうするのはどうだ?」

 


「二人で勃発させる戦争を『クリア可能なゲーム』としよう」

 

 

此方「なら深海妖精可視の想を、今を生きる人間に、建造と似たような工程で機能としてつけることを可能にするシステムを造ろう。幾重にも神秘の隠れ蓑を被る深海妖精の存在に気付けば、この神の懐までたどり着くことは可能なはず」

 

 

「深海妖精の実装が先にはなるが、あの男が死ねば、その深海妖精可視の能力を今を生きる人間に与える役割を持たせよう。半分くらいあの男のせいでもあるからな。なに、あの男ならやるだろうよ。此方を殺さなかったこと、後悔するはずだ」


 

此方「………その本官さんが、選んだ人達がここに辿り着いた時は」


 

此方「そのプレイヤーとの最終決戦だね。もちろん、この戦争のルール内に従って戦うことにしよう。現海界して制限を受けて、だよ。それで負けたら、あなたとわたしは殺される」

 

 

「まあ、戦争を起こす以上、負けたのならばそうなるだろうな。しかし、それで勝った場合は」



「人間を深海棲艦にすぐさま作り替える兵器を世界に降らして、わたしの世界を形成する。どちらがハッピーエンドかは分からないが、それで構わないか?」

 

 

此方「うん。あなたも尊重して、本官さん達も尊重する。その落としどころはそれで構わないよ。此方は、人間を信じたい。此方を再び産み落とさないような世界を作ることのできる人間の可能性に」

 

 

「一応いっておくが、決戦が来た時に手は抜くなよ。此方がちと間抜けなのは知ってはいるが」


 

此方「もしも、此方達が勝つようなら、あなたの世界にすればいいよ。本官さんを信じたのに、裏切られた。それでも、まだあの人のこと好きだから」


 

此方「だから、その時、此方達に負けるような相手を本官さんが選んだのなら、もうあなたの好きな世界にすればいい。此方はあなたのことも好きだから」

 

 

「ならば、この戦争ゲームを運営する者としてわたしも名を頂戴しようか。『当局』が適当か」

 

 

当局「都合のいいことに艤装の試運転も済んだし、あの男を妖精人間として産み落としたお陰で想いが繋ぐことができる。さあ、此方が見えたあなたに『始まりの提督の栄誉』を与えよう」

 

 

当局「人間を殺したい。守りたい。戦いに勝ちたい。負けたい。終わらせたい。幸せになりたい。つまるところ、こんなものばかりだ」


 

当局「その全てを満たす戦争ゲーム」

 

 

 


 

 

 

 

今ここに、

 

 

深海棲艦を産み落とし、人間に混乱と恐怖を植え付けたよう。

 

 

そして抗う防波堤を

 

 

 

始まりの艤装と妖精を与えよう。


 


 


 

 


当局《本官さん、聞こえますか》

 

 

 

当局《こちら此方です――――》


 

12

 


此方「本官さん」

 

 

仕官妖精「こなた、が二人……ここ、は」

 

 

当局「おっと、言葉とかいう伝達方法では長々しくなってかったるい。想を流してやろう」

 

 

仕官妖精「……、……!」

 

 

此方「理解できたよね。死んだ本官さんがロスト空間に来て、その想を此方が探し当てた。そして特別な妖精として産み落としたんだ」

 

 

当局「あの頃の痩せた筋肉質、インナーマッスルとでもいうのか。あの頃の見た目とは違ってずいぶんとチャーミングになったもんだ!」


 

仕官妖精「此方、こんな真似は辞めるのであります! こんな戦争、なにもかもが間違っています!」

 

 

当局「お前らが起こした戦争は間違ってなかったとでもいうのか。ほらほら、いってみろ。仕方なかったことだと。ならば『こっち』と『あっち』も同じ理由だ。生きていくために仕方ない。この場でそんな政治のような言葉遊びして楽しいか?」

 

 

当局「しかしだ、その方法は」

 

 

当局「此方の特別である貴方の夢に沿って叶えてやるのだから、せめて礼でもいって欲しいものだ」

 

 

此方「此方は、敗けると断言した。けれど、本官さん、いったよね。心配には及ばず。必ず我々は勝利し、悲願を達成するって」

 

 

当局「だからこそ、手を貸さなかったのだぞ。お前ら人間が戦い続けるから、大勢が憎悪のうちに死ぬ。ここに流れ込んできては此方の本能を刺激する。また憎悪による殺戮衝動を抑えられなくなった。当局が何回も何回も殺されては、甦り、此方の殺人本能を持っていってやったというのに、もうその理由も必要ない。貴方達は敗けたのだから」

 

 

当局「こっちのやり方でやらせてもらう」

 

 

仕官妖精「あの日の夢の続き……」

 

 

此方「出来るだけ人が死なない戦争内容に調整したつもりだよ。造り上げたシステム的に最初だけは無理だったけど、ね。本官さん」

 

 

此方「此方は産まれ落ちた命です。生きようと幸せを手に入れようとしてはダメですか?」

 

 

仕官妖精「っ」

 

 

当局「この鬼哭啾々とした空間でなおも此方のことを想うとはもはや呆れ返る他ないな」

 

 

当局「貴方にはかなりの制限は施してあるし、当局が責任を持って想を繋いで探知する。お前の言動からゲームクリアに繋がらんよう制限は加えてあるが、万が一があるというのが人の可能性でもある」

 

 

当局「ルール違反をしてみろ。今を生きる人間の命を1000の数、奪う。なに、安心しろ。自然災害として奪うからな。ルール違反を犯さなければ」

 

 

此方「想の力で戦後の復興に協力してあげる。まあ、此方と当局が起こしたこの戦争でのマイナス分だけ、発達させてあげるよ。こっちもバレないように上手くやるから問題ないよ」

 

 

仕官妖精「『分かる』のであります。なにをいっても無駄であります、ね……」

 

 

当局「――――行けよ」

 

 

当局「後付けした深海妖精可視の才を与えられる数は100年に5人までだ。慎重に選ぶといい。なに、お前が触れたら、その今を生きる人間の想は読み取れるはずだ。その深海妖精を発見し、この当局と此方の存在に気付くことのできる英雄を探す旅に」



当局「いつの日か、貴方が殺すのを拒否した尻拭いを喜んでしてくれる子孫を選べ。この戦争を終わらせることに魂を捧げられる優しい想を探してこい」

 

 

当局「貴方が選んだ今を生きる人間が、貴方に出来なかったこと、『此方:当局』を躊躇なく消してくれる勇者を探して、さまよい続けるといい」

 

 

当局「その時が来たら、お前の性能をあげて可視の才の制限も解いて、一部を除いた妖精の機能も持たせてやる。そして、当局はお前に反抗的ゆえ、この世界にいる此方にしか探知できないようにしておく」

 

 

当局「これはあなたと此方&当局の戦いでもある」

 

 

此方「その時が来たら、勝負してあげる。その戦いでもしも此方と当局が勝ったのなら」


 

当局「此方の人名を尊ぶ方法ではなく、当局の自分勝手な方法を取らせてもらう。人類が深海棲艦のような存在になる世界、当局としては理想ではある」

 

  

此方「これは、最後の慈悲です。当局も此方にとって大事な存在だから、此方が本官さんと過ごしたように自由に生きさせてあげたい」

 


当局「此方、こいつから、敵対の意思も奪い続けていいか。一応はルールを守らせるための保険だ」

 

 

此方「……いいよ」

 

 

当局「では、待望しているぞ。この存在まで辿り着いてくれるプレイヤーとの決戦の日を」



仕官妖精「此方、そして当局でしたか。1つだけいわせていただきたいのであります」

 

 

此方「なに?」


 

 

 


――――申し訳ありません。

 

 

 

 

――――約束を守れなかったばかりに

 

 

 

――――あなた達を、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


――――そんな可哀想な人にしてしまって。

 

 


【ワ●:Fanfare.此方】



海の傷痕:此方「ああ、また思い出す、な」

 


――――此方! 深海妖精を発見された!

 

 

しかも、かなり発見が遅れた――――

 

 

しかし、これならば――――

 

 

 

――――最高の未来が、ある!

 

 

 

――――どうも周りの艤装の想を調べてみれば生け好かないド変態のようだが、こいつには『最上位の天才』の称号を与えてやろう!

 


――――このバグの方法を応用すれば、

 

 


――――此方はただの人間の女の子として産まれ変われる!

 

 

 

――――負けた場合、最愛の此方だけでも助けてやろう! 生きた甲斐があったな! 最終決戦が来たなら、この過程を組み込むとしよう!


 

 

あの時の当局は、まるで自分のことのように嬉しがっていた。此方は、自分のことよりも、そんな風に当局が喜んでいることに、喜んだ。

 

 

――――此方、しかし、このバグを探るには直接、出向かねばならん。調査のために――――


 

 

――――了解! これとこれとこれだっけ。決戦用の装備で当局を現海界させるね!

 

 


おい、なぜキスカに落とした――――?

 

 

ご、ごめん――――

 

 

おい、艦娘反応がすぐそこにあるぞ! タイミングが最悪なんだが!?

 

 

バグ関連は色々と失敗しちゃって、ずるずるとそこから、深海妖精の存在に辿り着かれたけれど、こちらの深海妖精という存在を作り損ねたミスだ。しかも、何度も失敗して収拾がつかなくなっちゃったから、当局が「もういい。春雨と電は仕様にする。これもヒントである。あれを解体する装備だけ先に作る。中枢棲姫とかはまた後で考える」とすねたようにいったんだっけ。

 

 

――――もう、疲れた。中枢棲姫勢力にはスパイを潜り込ませておいた。此方、しばらくの間は運営管理を任せる。最初期から当局ばかり、もう疲れた。

 

 

『お仕事がブラック過ぎて限界です。さようなら。当局の想は探さないでください』

 

 

わざわざそんな書き置きを残して丸太小屋の外に出た。想の繋がりが感じられない。当局のやつ、此方に押しつけて、自害したようだ。なんでそんなことするの。悲しいよ。

 

 

分かったよ。此方も、もっとがんばるよ。

 

 

――――うん? バグを使ってなにしてるんだろう。あれ、これってもしかして――――

 

 

初霜艤装から探知。深海妖精、発見された。

 


――――当局、ついに来たよ! 此方達の存在に気が付いた人達がいる!


 

当局の想を引っ張り寄せて、ええと、思考機能付与能力を与えるほうが確実かな?

 

 

ここからはお仕事してもらわないと!

 

 

 

 

やっとこの『艦隊これくしょん』の戦いも終わる。

 


 

答えが、出るね。

 

 

2


 

この妖精工作施設で、あの電に触れることさえ出来れば、この勝負は此方達の勝利だ。成り止まない攻撃の嵐で、『Srot4:海の傷痕装甲服』の防御も穴が空いている。

 

 

高速修復材で肉体の傷を直しても、すぐに損傷が重なる。ロスト空間が掌握されているうえ、海色の想が潰れているせいで、高速修復材もいつまで造り出せるか分からない。

 

 

海色の想のデータはあるが、建造に二時間ほど要する。それに妖精工作施設を海色の想の建造作業に回せば、防御がおろそかになる。この生死のやり取りの中、ただただの砲撃と、装甲服の性能を頼りに進むしかなかった。

 


待ちに待った此方と当局の暁の水平線は、あの子が背負っている。この目に見えているのに、遥かに遠くのように感じる。電と此方達はお互いの背中に、それぞれ手に入れたい未来がある。

 


思い出すのは、本官さんと過ごしたあの無人島での日々だった。此方と当局に個性という宝物をくれた最愛の人との想い出だった。あの頃みたいに、

 

 

日が暮れるまで山崩し、したいな。


 

あの時に覚えた無言になることが多かったのは、あなたが優しくしてくれるのを知ってたから。此方が初めて覚えたあなたへの甘え方だった。

 

 

海の傷痕:此方「……あ、」

 

 

レ級艤装「させるかア!」

 

 

海の傷痕:当局【――――!】

 

 

海の傷痕:当局【装甲服が完全に壊された! 此方、ここからは砲撃と妖精工作施設施設の黒腕だけで、なんとか燃料が尽きる前にゴールしろ! あいつは鈍重で速度はこちらのほうが上回っている!】

 


海の傷痕:此方「任せ、て。がんばる、よ」

 


それでも、逃げられはしない。電が装備している艤装の射程からは、この速度で逃げ切る頃には、潰されている。だから、逃げて、再生を待つだなんて手は愚作だ。立ち向かうしかない。それか、

 

 

海の傷痕:此方「また、自爆して」


 

 

ガ、

 


 

 

 

ブ、


 

 

リ――――!


 

海の傷痕:此方「……あ、ああっ!」

 


想定外の可能性を有していたわるさめが、頭を噛み千切ろうと海中から跳ねた。

 

 

海の傷痕:当局【うっとうしい!】

 

 

当局が即座に最善手を取った。カーンカーン、と解体音が鳴り響く。黒腕でロスト空間へと飛ばしにかかる。



中枢棲姫艤装「わるさめさんナイスです。皆さん、今です!!」



海の傷痕:此方「……!」



最悪だ。わるさめに構っている妖精工作施設の硬直を、中枢棲姫とレ級とネ級と戦艦棲姫と水母棲姫とリコリス棲姫に、全掃射を仕掛けられた。



海の傷痕:当局【――――あ】



装甲服が壊された今、魚雷も艦爆も無効化させられない。

 


あの電のところまで、進まないと。

 

 

ゴールまではすぐそこだ。

 

 

海の傷痕:当局【――――】


 

ここぞとばかりに、砲撃の嵐が突き刺さる。オールトランス状態だった。装甲服と妖精工作施設が壊れた今、一気に決める気だ。



海の傷痕:当局【此方もう――――】

 

 

欲しかった色々な想を手に入れて、この此方達が用意した生きる艦の兵士の想をコレクションして、此方は、ようやく気付けたことがあって。

 

 

海の傷痕:此方「まだ、進める、よ」

 

 

あなた達も、此方達と同じで、幸せになりたいんだよね。幸せになる方法も分からなくて、何のために生きているのかも霧がかかって、でも生きてる。

 

 

海の傷痕:此方「負けて、ない」

 

 

この戦争でたくさんの人を殺してしまったけれど、

 

 

海の傷痕:此方「生き、てる」

 

 

心では、殺したくなんか、なかった。

 


痛い。怖い。苦しい。


 

海の傷痕:此方「う、え、やだ」

 

 

死にたくも、なかった。

装甲服のないこの身体の肉がえぐれ取られ、血飛沫が、爆ぜるように飛び散って、景色がぐにゃりと揺らいだ。体感する本当の死の狭間で、想う。

 


海の傷痕:此方「じに、だくない……!」

 

 

本官さんを、当局を、愛してる。

 

 

海の傷痕:此方「人間、と……」

 

 

此方は戦争を起こしておきながら、なにも捨てることが出来ないってことに、気付いた。

 


海の傷痕:此方「いっしょ、に……」

 

 

あなた達の想いも忘却なんか出来ない。この命に対して応援してくれる相棒がいるから、捨てるわけには行かなくて、本官さんはいつも此方の胸の中で色褪せない。


 

海の傷痕:此方「居場所が、欲し……」

 

 

歓声が聞こえる。電を応援する声は、此方の死を望んでいる。

 

 

海の傷痕:此方「幸、せに――――」

 

 

選ぶことが出来ない。この期に及んでわたしという存在はなんて残念なんだ。往生際が悪いんだ。もうなにもかも分からなくなってきた。こんな自分のことなんか――――大嫌い、だ。

 

 

海の傷痕:此方「わたし、だって」



産まれ落ちた命、なんだ。

吸収した想から、生きようとする強力無比な生命の躍動が沸き上がる。本官さんと、仲良くした想い出が走馬灯に過る。そうだ。此方は、此方は、産まれ落ちた時から願ってた。

 

 

海の傷痕:此方「幸せに、なりだ……い!」

 

 

この期に及んで、もう救いようがない。分かってる。人間が仲良くなって、もしも、世界平和だなんてものが訪れた時、愛が地球を救った時、理想の未来が訪れた時。

 

 

そこに、此方達はいない。



海の傷痕:当局【ばんざ――――い】

 

 

海の傷痕:当局【当局は此方との賭けに負けた! あいつのもとまで辿り着け!】

 


海の傷痕:当局【最後だ! 最後なんだよ!】



海の傷痕:当局【やり遂げろよ!】

 

 

海の傷痕:当局【頼む――――!】



もう少し、だ。もう、何のために戦っているのかも分からない。だけど、ゴールまで、そこ、だ。

 

 

――――お友達の皆さんは、弾切れ、ですか。

 


――――今度も、外しません。

 

 

電が、速度を落とした。

 


綺麗な、構えだ。

 


けれど、泣いている。



嬉しいのか、それとも悲しいのか。想のプロフェッショナルのはずが、それすらも分からない。



謝らないのは、あの子がこの海で手に入れた強さなんだろう。電の適性者なら、ここで、ごめんなさいって、いうはずだもの。



初期装備の、12.7cm連装砲。

 


ああ、始まりの艤装に適性を持てる女の子の想を決めるのは、お買い物のカタログを眺めているかのようで、楽しかった、な。



海の傷痕:此方「電、ちゃん」




海の傷痕:此方「次に、会った時は」




海の傷痕:此方「お友達に、なりたい、な」







――――ぷらずま、の、

 

 

 

 

 

 

 

本気を――――

 

 

 

 

 

――――見るのです。








ありがとう。容赦ないその覚悟に感謝だ。




なんて優しい子、なんだ。



 

生を諦められる優しさに、感謝。

 

 


 


今を生きる人間の、可能性に、






託して、逝くね。
















ゲームクリア:ゴール、











おめでとう。




【ワ●:最後の最後でドジ踏んだのです】

 


終わった。

妖精工作施設、海の傷痕装甲服は完全に破壊し、再生する前に海の傷痕の反応を消失した。これで後はロスト空間の消失を待てば、暁の水平線到達だ。


 

ふらり、と身体から力が抜けてよろける。

 

 

《ごめんなさい。倒れるので助けてください》

 


提督《ぷらずまさんそれは不味いです!》

 

 

海中に沈んだ。ああ、そうか。最後の最後で、ヘマをしてしまったことに気付いた。本官さんから与えられた深海妖精可視の才能のおかげで、海の中にいる深海妖精が見えた。まだ、活動していたみたい。

 

 

提督《早く海面に! そこに救助隊が駆けつけていますから! 深海妖精がトランスタイプにも反応するのは深海ウォッチング作戦で身を持って体験したでしょう! 最悪ロスト空間に連れて行かれる恐れがあります!》

 


提督《わるさめさんは解体されてから飛ばされましたが、あなたは違うんです!》

 

 

ああ、ダメだ。手足、動かないよ。私だって、損傷が酷いのだ。海の傷痕は強かった。そして、一途だった。きっと今の私でなければ、勝てなかったほどの強敵だ。

 

 

提督《応答してください! ロスト空間においてのトランスタイプは海の傷痕がわざわざ直接の接触を測るほどのステルス具合になるので、例え自分でもあなたを探し出せるか分かりません!》


 

そこは、必ず探し出してみせる、たなんていって欲しいのです。私もそんな言葉、男の子にいってもらいたいのに。

 

 

海面の光が歪んで、遠く薄くなっていく。この状態でトランスさせても、艤装の重みで更に沈むだけだ。手足を動かそうとしてみても、変わらない。

 

 

――――電ちゃん!

 

 

深海妖精に触れられた。あの作戦時のように、身体を痛め付けられている。無理に解体しようとしているのかな。

 

 

ゴーヤさんが潜ってきたのです。

 


手を伸ばした。

 

 

つかむより先に深海妖精に触れられた。あの作戦時のように、身体を痛め付けられている。無理に解体しようとしているのかな。

 

 

次の瞬間には、意識がブラックアウトした。

 

 

【ワ●:想題&Fanfare.春雨】

 


景色が暗いや。まるで深海にいるかのようだ。

 

 

最後にミスを犯した。妖精工作施設を噛み千切ろうとしたのに、海の傷痕の反応のほうが早く経過程想砲の右腕ごと持っていただけだ。あんなもの、また自爆でもされたら、復活してしまう。

 

 

情けなくて、涙が出る。

 

 

あれだけ、吠えたのに。最後は屍になってもいいから終わらせたいって、吠えたのにさ、ぷらずまがやられた途端、心がポッキリ折れた。私は本当に最後までどこかでポカをやらかしてしまう。

 

 

ところでここはロスト空間とかいうところだっけ。なんだっけ。強く思えば願いを叶えてくれる素敵な空間で、海の傷痕専用の産婦人科だっけ。



あの日を強く想ってみた。


 

暗闇が晴れてゆく。そして映し出されたのは視界一杯の、ジョーズの映画だった。この映画、お母さんと観たな。怖かったけど、色々と思うところがあって、面白かった。新聞を見て、ロードショーで放映される時はお母さんと一緒に観ていた。



ああ、こんなことまでしてくれるのか。小さな私が炬燵に入りながら、お母さんにみかんの皮を剥いてもらっている。あの白いやつ苦くて嫌いだったな。

 

 

――――ああ、お母さんに会いたい、なあ。

 

 

 


 

 


「呼ばれて飛び出てどどんっ!」

 

 

 

マジかよ。お母さんの陽気な声が聞こえた。

 

 

2

 

 

「お母さんなの?」

 

 

「なんだか流れ着いちゃったのかな。あなたがこんな私を呼び寄せるような映像を見せているからじゃないの。よくわかりませんです、はい♪」

 

 

「お母さんとしか思えません……」

 

 

そういえばロスト空間さえあれば海の傷痕みたいに色々なものを具現化できるんだっけ。願えば、あの頃のお母さんそのままの姿で現れてくれるのかな。

 

 

「ねえ、春雨」

 

 

でも、集中なんか出来なかった。私の意思はお母さんの声に全神経を集中させていたから。ジョーズの映像は途中で途切れて、暗闇のなかでお母さんの声だけがこの鼓膜に響いてくる。

 

 

「昔からあなたは自分のことを蔑んで、私の背中に隠れるような子だったけれど、もう少しあなたは自分に自信を持ちなさい。大丈夫」

 

 

「あなたはお母さんのために、戦争に参加してくれる優しい子だから。ちょっと歪んじゃってるみたいだけど、根っこは変わってないことは伝わる」

 

 

「でも、私はなにも成し遂げられなかった。お母さんだって死なせちゃったし、死に目にも会えなくて、自分勝手にしてて、色々な人を傷つけて、迷惑をかけてばかりの親不孝者だもん……」

 

 

「確かに自分勝手ね。蔑むのは止めなさい。それで一番傷付くのはお母さんなのよ? あなたは今でもね、自慢の娘だと想ってるからね?」


 

「――――」

 

 

「今までがダメだと思うのなら、これからがんばりなさい。あなたは、生きてる。可能性に満ち溢れているから、どうか、あなたは健やかにね」

 

 

ああ、耳に心地好い。

 


「春雨になるその理由は私のためだって、分かってたけれど」

 

 

想えば、そうだ。

私は幸せ者だった。この海には親の愛情を知らない人が多かった。母の愛情を確かに受けていた日々で、私は動いていたのも確かだ。

 

 

「あなたが初めて自分で大事なことを決めた」

 


想えば、そうだ。

私は望まれて産まれ落ちた命なんだ。スプーンで救い出せば死ぬような液体上のどろどろの頃から、お母さんのお腹にいたんだよね。お母さんはこの世界に産まれ落ちるまでその二人身を大事にしてくれていた。私がしっかりと産声をあげるその時まで私を輸送護衛してくれていた。

 

 

「かなりスッキリした希望に満ち溢れた顔でね。その時、ああ、この子もこんな顔をして家から出ていく日が来たんだって、そう思ったからなのよね」

 

 

想えば、そうだ。

この身体になって、お母さんが死んで絶望して、お母さんの代わりになる家族が欲しかった。マザコンというやつかもしれない。でも、だからこそ分かる。答えは出た。どこを探したって、お母さんの代わりになる人なんていない。



――――こちら仕官妖精です。聞こえますか?

 

 

――――あの、今から引き寄せます。少しあなたにお願いしたいことが――――

 


「お仕事みたいね。ほら、がんばりなさい。餞別にそこまでお母さんが輸送護衛してあげるから」


 

なんだよう。こちとら今、感動再会の最中なのに。



「お母さん、ありがとう」

 


「私、がんばって」

 

 

「幸せになるよ」

 

 

「産んでくれて、ありがとうございます」

 

 

3

 


なんだ、ここは。

呼ばれた波に身体を預けてゆらゆらと流されてみれば辿り着いた先は部屋の中だ。丸太小屋というやつだろうか。そこには机とノート、そして困ったような顔をしている仕官妖精がいるだけだ。

 

 

「……で、勝ったの? 私にお願いってなに?」

 

 

仕官妖精「勝ったのでありましょうな。艤装と1体化するトランスタイプは再生力に優れますが、適性者が死ねば艤装も死ぬのであります。なので、此方の死亡とともに1体化した当局も死亡です。でなければ今頃、准将殿から何かしらの指示があります」

 


「そうか、勝ったのか……でも、安心するのは聞いてからだよねー。お願いって?」

 

 

仕官妖精「どうも電さんがロスト空間に来たみたいであります。いる、気はするのですが、繋げません。なのでこのままではロスト空間とともに電さんが消滅してしまいます。管理権限を維持し続けて見つかるまでロスト空間を存続させればいいのですが、どのくらいの時間がかかるか、分かりません」

 

 

「何年くらい?」


 

仕官妖精「下手すれば未来永劫です。ここの想は人が死ぬたびに増えて19世紀から続くこのロスト空間にどれ程の想が流れ込んでいて、その中から1つの想を手探りで探すなぞ、どのくらいの時がかかるのか、途方もない、としか」

 

 

仕官妖精「壊:バグではない電の状態なら出来ましたが、壊:バグでは廃の准将でも無理であります。海の傷痕すら直接出向くという手を取らざるを得なかったメンテナンス工程なので。な、なにか、案はありませんか?」

 

 

「相当、混乱しているね……悪いけどそんなの私にも分からないよ。司令官は来てないの?」

 

 

仕官妖精「あ! どうやら来ているようで、あります。こちらにご招待しますね!」

 

 

…………………

 

…………………

 

…………………

 

 

提督「……すみません」

 

 

初霜「提督、疲労の限界が来て自力で立つのも難しいようで」

 


「まあ、無理もないよね。あれだけの時間、あれだけの労働を背負い込めば気が抜けたらぶっ倒れるでしょ。もともと司令官は体力なさそうだし」

 

 

仕官妖精「准将殿」

 

 

提督「致し方ありません。海の傷痕の想を呼び寄せてください。プロに聞きます。向こうに海の傷痕は復活していませんが、死んでいるのなら想の海に漂っているはず。死亡の確認も必要です」

 

 

仕官妖精「!?」

 

 

「死んだのならただの想として漂っているんだよね。なら本官さんなら、引寄せられるんじゃないの。海の傷痕とは絆が深い感じだったし」

 

 

「来てくれるんじゃないのかな?」

 

 

仕官妖精「た、確かに管理権限がこちらにあり、此方:当局を想の状態で呼ぶのは可能でありますが、爆弾には変わりないのであります」

 

 

「ついでに妖精工作施設のデータ抜き取れば、ぷらずまも解体できるかもだし、ナイスアイデアじゃないのかな?」

 

 

提督「……」

 

 

仕官妖精「やはり廃の領域でも無理となると、致し方ありません」

 

 

仕官妖精「――――」

 

 

ふわふわと希望の色をした蛍火のような光が入ってくる。光が形を大きくして人の形を取り始める。

 

 

海の傷痕:当局【なんという蛇足だ】



提督「!」

 

 

仕官妖精「気持ちは分かりますがご安心くだされ。ただ人の形を取ったに過ぎず、質量化はしていません。想の力を使えない証拠でありますな。抵抗するような力はない、はずです」

 


海の傷痕:当局【加えてロスト空間だ。初霜が存在する時点で勝てんし、もう戦うつもりもないわ】

 

 

わるさめ「なんかやるなら、もうやってるだろ。それで敗北者、電がバグのままロスト空間に来たんだけど探す方法はないの?」

 

 

海の傷痕:当局【図々しいにも程がある】


 

海の傷痕:当局【当局にとって最愛の此方を殺したやつのために、手伝えというのか?】

 

 

提督「はい」

 

 

海の傷痕:当局【……】

 

 

海の傷痕:当局【ある。向こうにいる壊:バグは探知不可能ではあるが、本体ごとこちらに来ているのなら、可能性は現実的にあるな】

 

 

海の傷痕:当局【その後にこの仕官妖精が、妖精工作施設のデータで妖精工作施設を開発して、電を解体し、ここから出ていく。そして仕官妖精が管理権限を維持したまま、消滅を待てば暁の水平線到達となる。これで丸くは収まるだろうよ】

 

 

提督「肝心なところがないですね。ぷらずまさんの想はどうやって探すのでしょう?」

 

 

海の傷痕:当局【電のメンテナンスに協力しよう。しかしだ、その前に頼み事もしよう】

 

 

海の傷痕:当局【此方を女神で復活させろ。トランスタイプで、だ。1種でいい】

  

 

仕官妖精「……」

 

 

「ここは、司令官だよね」

 

 

提督「無理です。暴れないという保証がない」

 

 

提督「要するに、此方のほうを人間として産まれ落としたいということでしょうけど……」

 

 

海の傷痕:当局【……ああ】

 

 

提督「……分かるはずです。海の傷痕の片割れが、人間になったところで、こちらにとってどのような対象になるか。自分は殺すのが情けだとも思いました。あなたは最愛の人を地獄に堕としたいと?」

 

 

海の傷痕:当局【見苦しいが、もともとこの戦争をふっかけたのは当局だ。此方は人が死ぬのは悲しいから、と最後までそういって、貴女達の可能性に後を託して死んだ。その悪性の全ては、当局を気遣っての不器用な優しさでしかない】

 

 

海の傷痕:当局【深海棲艦と1体化したトランスタイプの電が保護された時はどうなった。なぜ被害者として扱われたのか。此方はただの人間として産まれ落ちるのだぞ。やりようはあるはずだ】

 

 

海の傷痕:当局【此方にとって、向こうは希望に満ち溢れている。断じて地獄ではない。人間が此方を地獄に落とすかどうかだろうよ】

 

 

海の傷痕:当局【当局も此方と同じく、貴女達の可能性に賭けよう】

 

 

提督「――――」

 

 

提督「……あなた、もしかしてこの保険のために深海妖精をバラまいていたのですか」

 

 

海の傷痕:当局【……当局は誠心誠意で対応し、そちらの負担を減らすために此方を向こうの世界に馴染ませる方法も発案しよう。というか】

 

 

海の傷痕:当局【大本営は此方の鹵獲を命じたのではないのか。事前に当局は此方を人間として産み落とすのが目的だとあれほどいったのだから】

 

 

提督「……喰えない人だ」

 

 

海の傷痕:当局【敗北、このような結末も予想していた。事前に手段は用意してある。決断はそちらに委ねる。海の傷痕は、敗けたのだから】

 

 

提督「委ねるというのならば、まずは答えを教えてもらっても差し支えませんか?」

 

 

海の傷痕:当局【そうだな】

 

 

海の傷痕:当局【仕官妖精、初霜、オープンザドア君では限りなく不可能に近い。しかし、春雨、貴女なら出来るかもしれない】

 

 

「なんで?」

 

 

海の傷痕:当局【電も、海屑艦隊も生きている。だから、繋げることが出来さえすれば呼応する。そしてその力は廃と重の塊である故、大きい】

 

 

海の傷痕:当局【海屑メンバーはお前の家族なのだろうよ。それに聞いたぞ。電のことを『親友』だといっていたな。今の電の壊:バグ全てに対して、繋げる力があるのは貴女一人である】

 

 

提督「わるさめさん、お願いできますか」

 

 

「うーん、どうやってこっちに引っ張り寄せるの?」

 

 

仕官妖精「つ、繋いだのですか!?」

 

 

「というかちょっと前に、電とかチューキちゃん達のこと考えてたら、なんか、みんなの存在を感じ取れたみたいな? これが繋がってるってことでいいのかな?」

 

 

「というか、これ多分電は意識ないよ?」

 

 

提督「……これもバグの才能ですか?」

 

 

海の傷痕:当局【ああ。Tipe:tranceは本体の意思に呼応して、このロスト空間にある艤装をロスト&アライズする。その速度に優れているということは繋ぐ力に優れているということでもある】

 

 

海の傷痕:当局【響もだが、本当に驚いた。この子が春雨の適性者であったことに感謝する他あるまい。この春雨が歩んだ日々全ては無駄ではない】

 

 

「輸送護衛は得意です、はい♪」


 

仕官妖精「では、本官のいう通りにお願いします」

 

 

「ねえ司令官」

 

 

提督「なんでしょう」

 

 

「はっつんもだけどさ、電もきっとこういうんじゃないかな」


 

 


 

 


 


 

 

 

――――戦争には勝ちたいけど、命は助けたいって。



【ワ●:鎮守府(闇)の皆さんへ】

 

1

 

提督「お二人とも、近場の鎮守府(闇)へと移動したそうです。とりあえず元帥への報告は全て自分がやるので、それまでお静かにお願いしますね」



初霜「はい。上手く言い訳をしなければなりませんからね……しかし、驚きましたよ。まさか、海の傷痕と甲大将の家にあんな関係があっただなんて」

 

 

わるさめ「雷の家のことのほうが相当びびった」



わるさめ「つうか、電もチューキちゃん達も起きないねえ。暁の水平線が来る時に寝過ごしちゃいそうじゃん。笑いの神に愛されてるよねー……」



提督「皆さん、鎮守府前で待ってくれていますね」

 

 

初霜「敬礼がめちゃくちゃ適当なんですけど。座ってる人もいますし。まあ、皆さんお疲れなのは分かりますが、最後くらい……」

 

 

わるさめ「いいんじゃね別に」

 


………………

 

………………

 

………………

 

 

大淀「電ちゃんもわるさめちゃんもいますね。本当に全員生還、です。大淀、感激しております」

 

 

乙中将「はいストップ! わるさめちゃんが抱えているそれなにさ!」

 

 

丙少将「……海の傷痕にしか見えねえが」

 

 

甲大将「……」

 

 

元帥「准将、説明してくれ」


 

提督「あの、それがですね、ええと」

 

 

初霜「ええー……」

 

 

わるさめ「締まらねえ。 まあ、司令官も疲れているよね」



提督「電さんは解体しました。電さんと中枢棲姫さん達はまだ寝ております。えー、ロスト空間は直に消滅するはずです」

 

 

元帥「するはず……?」

 

 

丙少将「おい待て……」

 

 

乙中将「なにがあった……」

 

 

提督「海の傷痕:当局をロスト空間で復活させました。ロスト空間において電さんの捜索のために、当局と取引を致しました。電さんの捜索の協力、そして仕官妖精に妖精工作施設のデータを貸与することにより、電さんを解体に成功です」

 

 

提督「その条件として当局の要求」

 

 

提督「海の傷痕:此方を仕官妖精さんが女神の力で復活させ、一種のトランスタイプとして違法建造をしました。暁の水平線の訪れとともに通常の人間となります。大本営からの任務である『全員生還及び海の傷痕:此方の鹵獲』に成功です」

 

 

元帥「大丈夫なのか?」

 

 

提督「ええと」

 

 

丙・乙・甲「おい」

 

 

元帥「まあ、大丈夫だろ。此方ちゃんをこっちが持ってる以上、当局のほうも変なことしないだろうし、あの仕官妖精も管理権限を奪われるようなヘマはせん。そこらは大丈夫なんだろ」

 

 

提督「はい。そこは信頼できます」

 

 

提督「それと、甲大将。海の傷痕:当局からあなたへの伝言をお伝えします」

 

 

甲大将「……私?」

 

 

提督「『仕官妖精と約束をしていた。深海妖精可視者の才能を与える仕事に違反を犯さなければ、この国の復興を海の傷痕が想の力で介入し、助力を致すという内容だ』」

 

 

提督「『甲大将の出自、最初期からこの国の復興に多大な貢献を致し、多数の総理も排出しているが、あれは海の傷痕がたまたま目をつけた有能な国の要人の支援を海の傷痕がしていたからだ。今となれば心当たりはいくつかないかな?』」


 

甲大将「……あるな。あるぞ。最初期辺りの私んとこの先祖は妙な出世の仕方をしてたな。本でも書けるレベル。色々臭うところはある、が、それは雷もだろ」

 

 

提督「そうですね。雷さんのは宗教ですけども」



甲大将「……」

 

 

提督「『此方の面倒はお前らが見ろ』だそうです」

 

 

甲大将「……馬鹿野郎」

 

 

提督「本官さんのお願いでもありました。あの偉大な英雄の願いは自分には荷が重いです。出来る限りはしますが、社会的な面で自分にはこの子を守りきる力に欠けると思うので……」

 

 

提督「元帥」

 

 

元帥「構わん。ただの人間の女の子なんだろ。わしも出来ることはしよう。だが、甲大将、わしよりお前のほうが適任なのも確かだな。対深海棲艦海軍にいながら、ぶっちゃけ内陸ではわしより発言力あるし……」

 

 

甲大将「了解した。お前には出来なくて、私には出来ることだな。あの言葉に嘘はない。まあ、始めは穏やかにはいかんが、なんとかしよう」

 

 

提督「ありがとうございます。それとこのノートですが、当局から元帥に、と。製作秘話のようです」

 

 

元帥「……おう」パラパラ


 

元帥「……、……」



元帥「この挟まってるメモ帳は准将に、だな」

 


提督「自分、ですか?」


 

“仕官妖精です。実はあの部屋にもう一人の想がありまして、どうも准将にメッセージを、とのことなので、ここに書き残しておきます”

 

 

提督「もう一人? 自分を知っている方が?」

 

 


 

 

 

“あえて軽い感じで行きますね! どうも准将さん! 親馬鹿ちゃんりんの春雨ママでーす!”

 

 

提督(……あ、嫌な予感しかしない)

 

 

“不躾で悪いんですけど、私のところ親族全滅しているから他に頼める人がいないんですよー。私の娘はちょっと私に似て残念なところが多いので、あの子が新たな道に踏み出す時まで、見守ってあげて欲しいんです。どうかお願いしますー”

 

 

丙少将「……やってやれよ」

 

 

乙中将「だねえ」

 

 

提督「ええ、そのつもりです」

 


甲大将「それ、裏にもう一枚くっついてないか」

 

 

提督「あ、本当ですね」ペラ

 

 


 

 


 

 

 

 


 

 

 

“断ればお前の家を幽霊物件にする”

 

 

提督「」

 


2

 

 

提督「戦艦空母の皆さんありがとうございます。チューキさん達は運び終わりましたね。この慰霊婢のところがよく海が見えていいでしょう」

 

 

龍驤「最後の作戦が終わったんやで。なんか、うちらに言葉はないの?」

 

 

提督「お疲れ様でした」

 

 

瑞鶴「まあ、提督さんらしいけど、最後までそんな簡素にしなくてもいいじゃん」


 

一同「……」ジーッ

 

 

提督「……期待しないでくださいよ。今はまだ皆さん、手放しで喜べないと思うのでまた時間が経過してから、と思っていたのです。でも、そうですね。個別にみんなへの言葉を、心のままにいいますね。完成度は期待しないでください」

 

 

提督「翔鶴さん」

 


翔鶴「はい」

 

 

提督「合同演習時から、ご助力いただき、ありがとうございました。あの戦いは、この鎮守府の無茶ぶりの策を遂行してくれたからこそ、勝つことが出来ました。それにあなたが来てから瑞鶴さんも一段と元気になったようです。ここにいなくても、あなたは最初から最後までずっと自分達を支えてくれていましたね。感謝致します」

 

 

翔鶴「ふふ、こちらこそお礼を申し上げます」

 


提督「では、秋津洲さん」

 

 

秋津洲「はい」


 

提督「この鎮守府に来ることを決めていただいたこと、本当に感謝しております。工作艦のお手伝いに、二式大挺、それにあなたの紙飛行機にも、助けられました。あなたはその艤装の機能に悩まされていたようですが、やれば出来る人です。歴代であなたほどの功績を残した秋津洲はいないと断言できます。あなたが秋津洲の適性者でよかったです」

 

 

秋津洲「……かも」テレテレ

 

 

提督「明石君」

 

 

明石「っす」

 

 

提督「工作艦明石としてのそのセンスは、神の領域にすら手が届く素晴らしい素質です。出会った頃のあなたはただのガキに見えましたが、今はもう違います。大きく立派な男に自分には見えます。口が悪いところもありますが、まっすぐで情熱的なその根本はあなたが、優しいからでしょう」

 

 

明石「……照れるなこういうの」

 

 

提督「秋月さん」

 

 

秋月「はい!」


 

提督「やり遂げましたね。あなたがその秋月艤装で、失うはずの命を助けたい、と軍に入ったその目的は達成されました。皆の力があったからこそですが、あなたの力があったからこそ、です。それにこの後、12時間、兄から離れてみてください。もうあなたの欠陥は治ったのではないでしょうか。自分にはなぜか言葉には出来ない確信があります」



秋月「そうですね! なんだかお兄さんがそういうのならば、大丈夫なような気もしてきます!」

 

 

提督「明石さん」

 

 

明石さん「はい♪」

 

 

提督「軍に入ったこと自体のきっかけは自分でしたが、それからほったらかしにしていましたからね。この二人がこんな風に育ったのはあなたによるところが大きいです。この鎮守府だけでなく、対深海棲艦海軍はあなたに長らくの間、助けてもらいました。自分はあなたのように自分に正直に生きている人間が、眩しくて好きです」

 

 

明石さん「私も提督さんのこと好きでーす♪」

 

 

提督「ありがとうございます」

 

 

明石さん(事務的口調なんですけども……今となってはこの人らしくて好感持てますね。愛敬です)

 


提督「瑞鳳さん」

 

 

瑞鳳「はい」

 

 

提督「癖のある人が多いこの鎮守府の中でぶっちゃけあなたは自分の精神安定剤でした。哨戒のように毎日こなすような任務、チューキさん達との戦い、阿武隈さんが暴走した時の旗艦や、空母としてして欲しいこと、そしてなにより貴重な常識人枠」

 

 

提督「あなたは精進を続けていた。陰ながら、という姿勢でしたが、自分はあなたのような努力のできる人を、尊敬します。でも、本当のあなたは、もっと個性的な人ですよね。この鎮守府が支援施設として機能する間、あなたともっとお話して、腹を割って仲良くなりたいな、と自分は思っています」

 

 

瑞鳳「……」

 

 

提督「……」

 

 

瑞鳳「赤くなってますね。こっちが照れちゃいます……」

 

 

提督「後、合同演習の時は」

 

 

瑞鳳「それはもういいから!?」

 

 

提督「とのことです。では榛名さん」

 

 

榛名「はいっ」

 

 

提督「あなたに関しては世の中にはあなたのように純粋に強くて優しい女性がいるのですね、と。その心の有り様は才能としか。チューキさん達とのレ級との戦闘のことは報告書で読みました。龍驤さんが困惑するほどのレ級の人間らしさに触れながら、戦闘面でも、その強さと優しさが見て取れます。そんなあなたに、こんな無茶苦茶な提督は、思うところがあったでしょう。それでも最後までついてきてくれて、ありがとうございました」

 

 

榛名「榛名! これからも全力で! 提督についていきます!」

 

 

提督「ありがとうございます。そんなあなたが軍に来てくれたように、また自分の道を歩みだす日を心待にしています」



提督「金剛さん」

 

 

金剛「ハーイ!」

 

 

提督「その元気さを分けて欲しいくらいです。正直、あなたとは相性が悪いと思っていました。あなたの愛情表現は自分の苦手なところで、自分や、自分の家に突撃したりと。それでも今では良き想い出となりましたね。日に日に、そんなあなたとの日々を愛しく思う自分がいました。こんな自分を慕ってくれたあなたに、心からお礼を申し上げます」

 

 

金剛「テートクゥ! 時間と場所を弁えなくても触っていいヨー!」

 

 

提督「……では」


 

榛名「提督が金剛お姉様にお顔を近づけました! これはもしや、もしや!」

 

 

金剛「……」

 

 

榛名「金剛お姉様の顔が真っ赤です」

 

 

明石「攻めるくせに打たれ弱いんだなこの人……」

 

 

提督「それでは」

 

 

金剛「乙女心をからかわれマシター……」

 

 

提督「不知火さん」

 

 

不知火「はい」

 

 

提督「遠征や哨戒、なくてはならない任務で、あなたは最もよく働いてくれました。この奇妙な任務の多い鎮守府で、一言、書面でお仕事を頼むだけでテキパキとこなしてくれたのはあなたです。思えば、あなたは最初から自分に、期待していてくれたのかもしれません。あなたは本当に良い兵士です。最後まで文句も言わず、よく戦い抜いてくれました」

 

 

不知火「とんでもない。不知火は気質的にはどちらといえば最初からこの鎮守府も合っているような気がしていました。なに1つとして苦ではなかったです」



不知火「辛く苦しい時もありましたが、それでも不知火の日々は充実しておりました。一年ですけど、司令にお仕えできたこと、誇りに思っています」

 

 

提督「……はい。では、陽炎さん」

 

 

陽炎「お礼とかそういうのはいいんだけどねえ……」


 

提督「まあ、そうは問屋が卸さないのです。遠征、哨戒、事務、作戦の出撃、総合的な視点ではあなたは不知火さんと同じく稼動してもらっていたので。ありがとうございます、と礼はいわなければなりません。最初から最後まであなたはネームシップに恥じない戦果を挙げてくれました。最後まで、お力添え頂き、感謝します」

 

 

陽炎「まー、司令がめちゃくちゃすごいから、私もがんばらなきゃって思えたのよ。なんだか知らない内に支え合えていたみたいねえ……」

 

 

提督「そのようですね。意外と自分と陽炎さんも相性が悪くなかったのかもですね」



陽炎「……ま、本心として受け取っとくわ」




提督「暁さん」

 

 

暁「……はい」

 

 

提督「まー、最初はあなたからは酷く嫌われていましたねえ。あなたに出来ることは機械にでも出来る。あなたは誰かを本気で愛したことはないんだから、って」

 

 

暁「い、今は違うし」


 

提督「いいえ、その通りだと、思います。でも、この作戦の開始の時はもう違います。だから、今は自分が皆さんのことを愛……好きになれたからこそ、達成出来たことなんだと思います」

 

 

提督「命令違反をしてくれましたが、まあ、終わりよければ全て良し、ということで。あの時のあなたは勇敢でした。防衛ラインを死守できたのはあなたの探照灯で、早期に夜戦火力を刺せたからです。自分には出来なかったその判断は、自分の想像を越えた結果を引き寄せてくれました。みんなのお姉さんとして恥じない勇姿、さすが暁型の一番艦です」

 

 

暁「そ、そう?」テレテレ

 

 

暁「司令官も立派な司令官だったし! だから、私もそんな風になれたんだと思う!」

 

 

提督「立派、ですか。出会った時の溝を考えると、感慨無量です。それでは……」

 

 

提督「雷さんは、最後の辺りに。あなたはかなーり長くなるので」

 

 

雷「む、別にいいけど」

 

 

提督「響さん、あなたにはまず謝罪を申しあげなければなりません」

 

 

響「謝られるようなことは1つもない」

 

 

提督「電さんが死ぬのは予想出来ていた。想の探知されないあなたには伝えても問題なかったのです。なぜ伝えなかったのか。それは、あなたの暴走を危惧していたからです。つまり、自分はあなたを信用できていなかったのです」

 

 

響「その理由なら謝らなければならないのは私だ。あなたに信用されるには、まだまだ精進が足りなかった。それでも、司令官は」


 

響「響とВерныйの願いを叶えてくれた。歴史に、私達は全員で今ここに帰投したという事実を刻んでくれたんだ。謝って欲しくはない」

 

 

響「でも、わ、私はそんな司令官のことが」

 

 

響「す……好き、だよ」

 

 

暁「響が帽子を深くかぶって、顔を隠したー」

 

 

響「~っ」

 

 

雷「響が照れるのもレアよね……」


 

響「……司令官、なにもいわず次の人にいってくれ」

 

 

提督「……了解です。では、初霜さん」

 

 

初霜「はい!」

 

 

提督「ロスト空間での最重要な役割の艦隊旗艦、今作戦で不安要素の多くはあなたの存在によって、勝利へと導かれたのは事実です。秘書官の仕事ぶりを見ていても、すでにもう自分より手際がよく、無茶なお願いも完璧に遂行、海の傷痕に『ロスト空間において最強』といわしめたその高性能ポテンシャル、本当にあなたは十代前半なのかと……」

 

 

提督「わるさめさんや電さんがぶらり旅をしていた時も同行して様子を見てもらいましたねえ。公私ともどもお世話になりました。本当にありがとうございます」

 

 

初霜「いえ、提督のご期待に応えられたなら私はそれで! こちらこそ、ありがとうございました!」

 

 

提督「はい。では、卯月さん」

 

 

卯月「ぷっぷくぷ」

 


提督「あなたの素質には加入時から最後までお世話になりました。正直、阿武隈さんと同じくなにかしら腕が鈍っているかな、とも思っていましたが、そんなこともなく」

 

 

卯月「しれーかーん、うーちゃんそういうのはいいぴょん。そういえば陽炎から聞いたんだけど、この戦いに生きて帰って来たらなんでもお願いを聞いてくれるとか」

 

 

提督「ええ、なんでもお願い聞きますよ」

 

 

卯月「うーちゃん、世界征服したいぴょん」

 

 

提督「はい。聞きましたよ。叶えるとはいってません。頑張ってくださいね」

 

 

卯月「く、同次元で返されたし。こんなところまで策を用意していたとは……」

 

 

提督「どうせ無茶ぶりされるとは読んでいましたからね。もう少し自分が叶えられる範囲でお願いします。考えておいて頂ければ、またその時に」

 

 

卯月「りょーかーい」

 

 

提督「では阿武隈さん」

 

 

阿武隈「はいっ!」


 

提督「第1艦隊旗艦として、ご立派な指揮を執ってくれると信じていましたよ。他の方からも聞きましたが、絶望の状況下で、丙乙甲元よりも、早く皆を勇気づけた。やはり鹿島さんもいうようにあなたの素質は素晴らしいです。最初はそれはもうどうしたものかと思いましたが」

 

 

阿武隈「まあ、最初は、まあ……」

 

 

提督「由良さん長月さん菊月さん弥生さん、大体あなた達のせいです」


 

長月「おーい、無茶いうなよ! 四人で姫鬼の深海棲艦とラスボス相手だぞ!?」

 

 

菊月「本当にな。少し泣きそうだった……」

 

 

弥生「しれい、かん。卯月と阿武隈、どれくらいダメージ、受けていたんですか……?」


 

提督「後でこの鎮守府の作戦報告書を読んで頂ければ、と思いますがそうですねえ……」

 

 

提督「卯月さんは自分をごまかしていた節があり、日に日に拗れて悪童へと。阿武隈さんは深海棲艦を見たらその場でぶっ倒れてしまうほどのトラウマを」

 


由良「なんだ、思ったよりも元気そうだね」

 

 

阿武隈・卯月「!?」

 


提督「そう解釈するのも、絆あってこそなのでしょうね」

 

 

由良「私達も感謝しなくてはなりません。阿武隈の全員生還の指揮を時を越えて、繋げてくれたのはあなたです。まだ出会って間もないけれど」

 

 

由良「皆さんを見ていれば、どんな人かは分かります。ありがとうございました。これから、仲良くなっていけたら、と思います」

 

 

由良「みんなもそう思うよね。ねっ?」

 

 

長月「まあ」

 


菊月「そうだな」

 

 

弥生「はい」

 

 

卯月「この司令官と仲良くしたい、か。してみるといいし。面白そうだぴょん」

 

 

阿武隈「色々な意味で手強いですよ……」

 

 

提督「ケラケラ、人間は後悔をする生き物だと知るがよい」

 

 

由良・長月・菊月・弥生「!?」

 

 

提督「では龍驤さん」

 

 

龍驤「うん」

 


提督「提督代理から旗艦、色々とよくやってくれました。この鎮守府(闇)でそれがどれだけ大変なことかは自分よく知っていますから……」

 

 

龍驤「キミと違って電はうちに従順やなかったし、キミが軍法会議連れていかれた時は、電を止められんかったわ。結果オーライやったけどさ」

 

 

提督「そう、ですね。結果としてぷらずまさんが大本営に来たことは正解でした」

 

 

龍驤「それにうちはキミのことすごいやつやと思ってるで。うちはこの最高の鎮守府でさえ、あれこれ文句いうようなやつやったしなー。そんな欠陥のうちを最初から最後までよう舵を執ってくれたわ」

 

 

龍驤「キミともっと早く出会いたかったよ。軍学校の時にキミにもっと構っとけばよかったって、本当にそう思う。それなら、きっと」

 

 

龍驤「うちはその時に龍驤に戻って、キミの初期官やれたのかもしれへんね」

 


提督「……あの頃の自分にあなたが好意を抱くとは思えませんし、提督経験があったからこそのあなたですから、あなたとの出会い方に間違いはなかったとも思いますよ?」

 

 

龍驤「まあ、それもそっか」

 

 

提督「ありがとうございました」

 

 

龍驤「こちらこそ、やで」

 

 

提督「では瑞鶴さん。あなたはもう少しおしとやかな女性になってください。主におしとやかにするべき部分は右の大砲のことです」

 

 

瑞鶴「わ、悪いと思ってるから」

 

 

提督「なんだかあなたに対しては、自分の本音がポロっと出ます。自分が削ぎ落としたネジを探そうとしていて皆に散々ぼこされましたが、あなたは自分を気遣って、励ましに来てくれたこと、ありましたよね」

 

 

瑞鶴「……あー、そんなこともあったね」

 

 

提督「胸に秘めておくべきことをぽろっと話してしまいました。それから、悟られないようにはしていましたが、あなたとの距離感が難しかったです。なんだかあなたとしゃべっていると立場を忘れて友人のように接してしまいそうで」

 

 

瑞鶴「……へー、そんな風に思ってたのか」

 

 

提督「あなたの才能が開花するのは時間がかかりますが、自分の期待以上でした。あなたを早期にスカウトしたこと、間違いではありませんでした。よく、戦い抜いてくれましたね。これからはもう」

 

 

提督「上司と部下の関係ではないので、進んでぽろっと溢しに行きたいと思います」

 

 

瑞鶴「喜んで。そういう関係になりたかった気もする。多分、迷惑ばっかりかけるだろうけどね。まあ、右の大砲を飛ばさないようにね」

 

 

翔鶴「瑞鶴はかなり提督さんのこと大好きですよ。この鎮守府に来てから、私にはあなたのことばかり話していましたから。なにかあると、うちの提督さんがさ、って」

 

 

瑞鶴「ちょ翔鶴姉、ハズいから止めてよね!?」

 

 

提督「うん、光栄ですね」

 

 

提督「ではゴーヤさん」

 

 

伊58「はーい」

 

 

提督「あなたにも色々とお礼申しあげなければなりませんが、とにかくなによりもいいたいことは――――」

 

 

 

 

 

 

 


 


 

 

 




「(仮)の頃から自発的にめちゃくちゃクルージングしてくれてマジでありがとうございます。この鎮守府の大黒柱は間違いなくゴーヤさんです」


 

 

 


伊58「は、迫真でち……」

 

 

提督「潜水艦として色々と重要な役目をこなしてくれました。あなたがしてくれたこと全部、この鎮守府の活動の源でしたよ。あなたが集めてくれた資材は確かに皆のためになっていました」

 

 

伊58「――――」


 

提督「ありがとうございます」



伊58「うん!」

 

 

提督「では鹿島さん」

 

 

鹿島「……はい」

 

 

提督「……、……」

 

 

鹿島「提督さん、私の悲劇のことは気にしなくていいです。この戦いに出撃した全員が生還した。この決戦で私は全てに節目をつけられたんです」

 

 

鹿島「あなたには、ただただお礼を申し上げます」

 

 

提督「ならば、あえて申し上げます。あなたは欲張りですね。なにか悲しげな顔をしていらっしゃるのか。お気持ちはお察ししていますが、とある一点において、あなたは報われたはずです」

 

 

鹿島「……といいますと」

 

 

提督「練巡として、です。この鎮守府、あなたに世話にならなかった兵士はいません。ぷらずまさんの砲撃制度も、あなたが来てからは目に見えてあがりました。この鎮守府は控え目にいって、武勲艦だらけです。その全てはあなたの教えの賜物です」

 

 

鹿島「いいえ、皆さんが頑張っただけで、私がお力になれたかというと……」

 

 

伊58「ゴーヤは感謝してるよー。鹿島さんのお陰で魚雷の精度もあがったし。ここでみんなたくさん演習して練度がメキメキあがったのは練巡のお陰でち」

 

 

暁「そうね! 私もお世話になったし!」


 

秋津洲「あたしも!」

 

 

陽炎「駆逐艦は全員よね」

 

 

龍驤「割と空母勢もやで。瑞鶴なんか鹿島がいたからこそ、短期で練度90まで持っていけたやん」

 

 

瑞鶴「そうねえ。いわずとも、だけど、確かに鹿島さんちょっと欲張りよね。ストイック、なのかな?」

 

 

鹿島「皆さん……」ポロポロ

 

 

提督「なにもしてあげられていない、と思っても、想像以上に感謝をされていることに気付く。教師が生徒の卒業式に思いそうなこと、なのかな?」

 

 

鹿島「かも、しれませんね。胸が、一杯です」

 

 

わるさめ「ごめん。1つだけいわせて鹿島っち。本当にごめん。私、鹿島っちの気持ち考えないでチューキちゃん達、仲間の仇と仲良くしてた。しかも、そのことに関して後悔していない」

 

 

鹿島「そのことなら、もう、怒っていません。私は、春雨さんが生きていた。それだけで、私は、あなたのなにもかもを許してしまえる……」

 

 

鹿島「そんな、酷い人間です……」

 

 

卯月「いや、弥生達がいる今なら、うーちゃんには気持ちが分かるぴょん。それはなにも酷いことなんかじゃねー。本当に酷いやつなら目の前にいるし」

 


卯月「そんなうーちゃん達を駒扱いしてたゲスもいるぴょん。この司令官なんてうーちゃん達に死ぬ順番を伝えようとしたやつだし。しかもその時、使えねーやつから殺そうとしただろ」

 


卯月「この司令官、断頭台に立たせるべきぴょん」


 

提督「モウシワケ、アリマセン」

 

 

由良(恐ろし過ぎることを聞いてしまった……)


 

提督「では、わるさめさん」

 

 

わるさめ「あーい」

 

 

提督「あなた電さんのこと、大好きなんですね」

 

 

わるさめ「…………そだね」

 

 

間宮「ほら、間宮亭でいった通りじゃないですか。電ちゃんとわるさめさんはケンカするほど仲がいいってやつなんですよ」

 


提督「そのようですね」

 

 

提督「それとわるさめさん、これはなんとなく思ったのですが」

 

 

わるさめ「うん?」

 

 

提督「お父さんのこと、どんな人か覚えていますか」

 

 

わるさめ「さあ、小さい頃に死んだから。でも、なんか優しいけれど、なよなよしてて、引っ込み思案だったってお母さんから聞いたよ」