No1 提督 『 建造だけで艦隊を揃える 』
着任早々トラブルでメイン初期艦5人が不在。代わりに送られていた少し多めの資材を費やし、提督は建造を開始……
此処から楽しい楽しい建造生活が始まる。
初めまして。柔時雨と申します。
以前から、いろいろな方が既に作られた艦これSSやMMDドラマなどを拝見させていただいていたのですが
自分で艦これ系統の作品を投稿するのは、これが初めてです。
艦これのゲームを始めたのもつい先日で、実際にはまだ来てくれていない艦娘も居るので、会話文主体のくせに艦娘たちの台詞とかに違和感を感じるかもしれませんが
生暖かい目で、クスっと笑ってもらえる程度に楽しんでいただければ幸いです。
やたらと面倒な試験やら適性検査とやらを潜り抜け、本日晴れて提督になることができた……のだが
提督 「え?初期艦娘が選べないって、どういう……」
元帥 『いや、本当にすまんと思っている。君と同じ日に提督になった者が丁度他に5人居てな。その者達に1人ずつ配布していたら……な』
提督 「どこかのスーパーマサラ人みたいな始まりになってしまったのは仕方ないとして……どうしたらいいんですか、今後の運営は?」
元帥 『詫びと言っては何だが、資源、資材を通常より多めに搬入しておいたから、それで建造すると良い。』
という経緯を経て、俺は今鎮守府の工廠を訪れている。
妖精さんA 「ていとくさん、けんぞうするのです?」
提督 「あぁ、頼むよ。」
妖精さんB 「どんなふねがいいのです?」
妖精さんC 「しざいはいくつつかうのです?」
提督 「そうだな……ここはやっぱり戦艦を狙いたいな。資材はオール999で!」
妖精さんA 「りょうかいであります~」
妖精さんB 「はわ~。ごうきなおかただ」
妖精さんC 「がんばったごほうびは、あまいものでよいのです」
提督 「わかった。後で用意しておくよ。」
建造時間 : 01:20:00
提督 「1時間ちょいか……戦艦って意外と簡単に作れるんだな。」
妖精さんA 「これはぁ~……」
妖精さんB 「もうダメかと……」
提督 「駄目?よくわかんないけど、俺は執務室に居るから、建造が終わったら呼びに来てくれ。」
妖精さんA 「しょうちつかまつったぁ~」
*****
提督になった初日だから業務なんて殆どないだろうと思っていた数分前の俺を、グーで殴り飛ばしてやりたい。
今後の運営方針とか、近海の様子、深海棲艦の活動範囲や頻度などの報告書が段ボールの上にしっかりと積み上げられていた。
提督 「……とりあえず、目を通しておくか。」
座布団すらない床の上に直に座り、冷えていく尻と戦いながら書類に目を通していると
妖精さんA 「ていとくさん、けんぞうオワタ~」
提督 「おっ、そうか。どんな子が来たのか楽しみだな。」
工廠
「貴様が司令官か。私は那智。よろしくお願いする。」
提督 「こちらこそよろしく。 へぇ……重巡洋艦って艦種なのか。」
那智 「妖精さん達から話は聞いた。すまなかったな、戦艦ではなくて。」
提督 「いや、そのことに関してはあまり気にしていない。また狙えばいいだけのことだ。」
那智 「そうか。そう言ってもらえるのはありがたい……が、建造で殆どの資材を費やしたという件に関して2、3問い質したいことがあるのだが?」
提督 「…………」
那智 「素面でできる話ではないな……今日はとことん飲ませてもらうぞ。」
提督 「あ……俺、今日着任したばかりなのに加えて、下戸だから酒の類は何も無いぞ。」
那智 「それでも酒保に行けば何かしらあるだろう。那智戦隊、出撃するぞ!」
提督 「うっす!( まぁ、机や椅子も見たかったし、ちょうど良いか )」
*****
那智 『ちぃっ!』
提督 「那智、どうした⁉」
那智 『すまない、司令官。相手は駆逐艦だったのだが、数が複数居てな……全て沈めてやったが、少しだけやられてしまった……だが、まだいけるぞ。このまま進軍するか?』
提督 「……いや、今はまだお前1人なんだ、無理することはない。戻ってゆっくり休んでくれ。」
那智 『承知した。これより帰投する。』
那智との通信を終え、小さく溜め息を吐く。
提督 「いくら重巡とはいえ、練度も低い状態で1人で出撃させるべきではなかったな……鎮守府正面海域だからって油断した。今後のことも考えて、また新しい艦娘を建造するか。」
工廠
提督 「…………というわけで、また建造を頼む。」
妖精さんA 「またなのです?」
妖精さんB 「あんたもすきねぇ~」
提督 「那智1人にばっかり苦労かけられないからなぁ……」
妖精さんC 「それで、こんかいはしざいどれくらいつかうです?」
提督 「可能なだけ費やしてくれ。どうせ時間が経てば不思議なパワーで資材が溜まっていくみたいだからな。」
妖精さんA 「かしこまりぃ~」
建造時間 : 01:00:00
提督 「おっ……那智の時より20分早いのか。どんな子が来るのか楽しみだな。」
那智 「司令官、此処に居たのか。」
提督 「おう。新しい艦娘の建造をしていたところだ。……見た感じ、小破で済んだみたいで良かった。」
那智 「それでも被弾してしまったことに変わりはないからな。補給と入渠をしようと思ったのだが…………」
燃料 : 1 ・ 弾薬 : 1 ・ 鋼材 : 1 ・ ボーキサイト : 1
那智 「これはどういうことなのか……説明してもらおうか?」ゴゴゴゴゴゴ……
提督 「ちゃうねん……」
那智 「何が違うというのだ?現に資材がごっそり減っているじゃないか。」
提督 「お……落ち着けって……言い訳をさせて……助けて、妖精さん!」
妖精さんA 「これはワンパンふかひあんけんですわぁ~」
妖精さんB 「おとなしく、しばかれるのです。はぁ、くいしばれです」
妖精さんC 「いっぺん……しんでみる?」
~ 1時間後 ~
那智 「むっ…… 新しい艦が進水したようだ。楽しみだな。」
「オレの名は天龍。フフフ、怖いか?」
提督 「きたっ!天龍型の可愛い方。これで勝てる!」
那智 「なるほど。これが巷で有名な『 フフかわ 』というやつか。」
天龍 「何なんだよお前等、いきなり人を馬鹿にすんなぁぁぁ!!……っていうか、何であんたは小破してて、提督は鉄板の上で正座させられてんだよ?」
那智 「ん?あぁ……気にするな。どこかの馬鹿な司令官が、資材を殆ど建造に費やしてしまってな。入渠や補給ができる状態になるまで、説教していただけだ。」
提督 「頬にグーパンチされてから正座すること1時間……だんだんと足の感覚が無くなってきて、気持ち良くなってきたんだが……」
那智 「まったく……これが妙高姉さんだったら、貴様の命は無かったぞ。猛省しろ!」
提督 「すんませんっしたぁぁぁ!!」
天龍 「とんでもねえ所に来ちまったな……」フフ怖ぁ~……
執務室
那智 「司令官。天龍に鎮守府の案内をしてきたぞ。」
提督 「おう、ご苦労様。」
那智 「では、今度こそ入渠と補給を済ませてくる。天龍、司令官がまた馬鹿な真似をしないよう、見張っていてくれ。」
天龍 「へいへい。ゆっくり休んで来いよ。」
那智はそう言い残すと踵を返し、執務室から出て行った。
提督 「さてと……天龍、何か質問とかあるなら聞くぞ?」
天龍 「んぁ?質問って言われてもな……あっ、そうだ。1つだけ……那智に案内をしてもらってる時に思ったんだけどよぉ、他の艦娘は居ねえのか?」
提督 「あぁ。上の手違いでな……初期艦が貰えなくって。代わりに頂いた多めの資材を使った最初の建造で生まれた……いや、蘇ったのが那智だ。天龍は2番目だな。」
天龍 「そうなのか?じゃあ、ちゃんと主力として使ってくれるんだよな?」
提督 「当たり前だ。那智共々頼りにしてるぞ。」
天龍 「よっしゃあ!やる気が出てきたぜ!早速出撃……は那智が戻ってからにするか。別に1人でも大丈夫だけど、勝手な行動をしたら、後でうるさそうだしな。」
提督 「賢明な判断だ。」
数日後……
執務室
那智 『提督、聞こえるか!?』
提督 「聞こえている!どうした、何か遭ったのか!?」
那智 『天龍が大破した!撤退の許可を願いたい!』
提督「なっ……!? 馬鹿野郎!そんなのいちいち俺の許可を取ろうとするな!明らかにヤバい状況なんだろ?追撃や夜戦、海域開放なんてのはどうでもいいから、すぐに戻ってこい!!」
那智 『最後の発言は提督としてどうかと思うが……承知した。これより帰投する!』
~ 数時間後 ~
港まで出迎えに行った俺の目に、小破した那智と大破した天龍の姿が飛び込んできた。
提督 「那智!天龍!無事か!?」
那智 「この状況を無事と言ってよいものだろうか……とにかく、私はまだ大丈夫だが、天龍が……」小破!
天龍 「くそっ……提督……何で撤退なんて……死ぬまで戦わせろよ……」大破!
提督 「…………天龍。確か、お前には妹が居るんだよな?」
天龍 「龍田のことか……?今はあいつのことなんて関係ねえだろ……」
提督 「その妹さんがもし、今のお前と同じ状況で戻って来て、同じことを言ったらどうする?どう見ても無事じゃないのに……轟沈寸前の体で、『自分はまだ大丈夫だから、死ぬまで戦わせてほしい』って。」
天龍 「そんなの……全力で止めるに決まってるだろ!あいつは俺の大切な相棒で……妹なんだからよぉ……」
提督 「それと一緒だ。俺にとって天龍は大切な仲間なんだよ。これが那智だったとしても、まだ見ぬ艦娘でも変わらない。どんなに罵られようと、任務が失敗しようと、誰か1人でも中破・大破したら撤退させる!大切な仲間を守るための判断だと思って理解して欲しい。」
天龍 「なっ⁉ おい、提督!頭を下げるなよ!俺が何か悪いことさせてるみたいじゃねえか!」
那智 「ぷっ……くく……司令官はこういう奴だと思って諦めろ、天龍。」
天龍 「~~~っ!わぁったよ!さっさと入渠して来りゃ良いんだろ⁉ ったくよぉ……」
まだ若干納得していないような雰囲気を滲み出しながら、天龍が入渠場の方へと歩いて行った。
提督 「本当に自分勝手なことばかり言って……駄目だな、俺は。」
那智 「そうか?私は司令官の言ったことは尤もだと思うが……あいつもきっと本心では理解しているはずだ。」
提督 「だと良いんだが……あっ、那智。入渠に行く前に、軽くでいいから何が遭ったのかを教えてくれないか?確か、 製油所地帯沿岸に行ってたんだよな?」
那智 「あぁ……道中の深海棲艦は問題無く殲滅してやったんだが、敵の主力艦隊に戦艦クラスの奴が居てな……何発かダメージを与えたのだが……」
提督 「戦艦クラスだと⁉ そうか……こりゃ、こっちもそろそろ戦力を整えないといけないってことか。」
那智 「しかし、順調に海域を開放できているのは良いが、ここまでドロップ艦が無いというのも運が無いというか……呪われているというか……」
提督 「心配するな!ドロップ艦が無いなら、建造で艦娘を招き入れればいいだけのこと!」
那智 「建造の度に資材を全て投入する馬鹿な司令官殿は口を閉じていろ。」
提督 「大丈夫!俺も自分で『 何かが間違っている 』ってことに気付き始めたから!那智と天龍の入居が終わったら、また建造しよう!」
那智 「承知した。では、私も少し休ませてもらおう。」
工廠
提督 「資材チェック、1,2!よし、建造するぞ!オラァ!」
天龍 「おい、あんなこと言ってるけど大丈夫なのかよ?」
那智 「まぁ……今回は私達も見ているし、無茶な真似はしないだろう。」
提督 「ん?よく見たら建造って2隻同時にできるのか?だったら同時進行で一気に戦力を増やすか。」
天龍 「結局浪費すんのかよ!それじゃあ1回の建造で資材全部費やすのと、結果はあんまり変わらねえだろ!」
那智 「司令官。闇雲に資材を投入するのではなく、ある程度の目安を……」
提督 「大丈夫!ちゃんとリアル友達提督から建造レシピとかいうのを事前に聞いておいたから!妖精さん、頼む!」
妖精さんA 「うけたまわりぃ~」
建造時間 : 01:25:00
建造時間 : 04:20:00
提督・天龍 「「4時間!?」」
那智 「もう一方は私達妙高型と建造時間が近いな……何にせよ、これは期待できるんじゃないか?」
提督 「そ……そうだな。とりあえず、時間が来るまで残りの仕事を片付けるとするか。」
那智 「では、私も手伝ってやるとしよう。なに、礼は仕事が終わった後、晩酌に付き合ってくれればそれでいい。」
提督 「何か事あるごとに飲もうとするの、やめてもらえませんかね?天龍はどうする?」
天龍 「俺はこの工廠の近くで素振りでもしてるわ。1時間の方の建造が終わったら、案内がてらその艦娘と一緒に執務室に行くからよ。」
提督 「わかった。よろしく頼む。」
*****
1時間後……
執務室
提督 「………そろそろか。」
那智 「確かに建造は終わっているだろうが……天龍が鎮守府を案内しているだろうし、もう少し時間が掛かるんじゃないか?」
天龍 「うぃ~っす。新参者の登場と案内が終わったから連れてきたぜ。」
「こんにちは。高雄です。貴方のような素敵な提督で良かったわ。」
天龍 「素敵な提督?」
那智 「社交辞令だろう。」
提督 「お前等……まぁ、素敵かどうかはともかく、これから宜しくな。」
高雄 「はい♪ お任せください。」
提督 「…………」
那智 「どうした?司令官。」
提督 「いや……俺、産まれて初めて、女の人にこんなに優しく接してもらえて……嬉しくって涙が……」
高雄 「あらあら。私でよろしければ、いつでも頼ってくださいね。」
天龍 「あんまり甘やかすと調子に乗るだろうから、ほどほどにしておいたほうが良いぜ、高雄。」
提督 「天龍、1週間便所掃除。」
天龍 「何でだよ!? 」
提督 「まぁ、冗談はこれくらいにして……もう1人はあとどれくらい掛かるんだろうか?」
那智 「高雄が此処に来てから天龍に案内してもらって……少なくとも3時間は切っているだろうな。」
提督 「そうか……どうやって過ごすかな。那智が手伝ってくれたおかげで執務も終わったし……」
那智 「ならば、これから皆で飲みに行かないか?この近所に居酒屋があるらしいんだ。」
天龍 「いいじゃねえか!もちろん、提督の奢りだよな?」
提督 「えっ!?」
高雄 「提督……」
提督 「高雄……」タスケテ……
高雄 「……ごちそうさまです。」
提督 「くっそぉぉぉぉ!……まぁいいか。お前等の着任祝いだと思えば……よし!今日は許す。好きなだけ飲んで食え!」
那智 「流石は私の司令官だ。理解が良くて私も嬉しいぞ!」
天龍 「よっしゃあ!天龍、水雷戦隊、出撃するぜ!」
那智 「待て!今は私が旗艦で秘書艦だぞ。ここは普通に那智戦隊だろう!」
高雄 「あらあら、楽しいそうですわね。では、提督……私に続いてくださ~~い!」
提督 「楽しそうだな、お前等。……今度、改めてちゃんと艦隊名を考えるか。」
~ 数時間後 ~
那智 「…………ZZZ」
提督 「まさか酔いつぶれて寝てしまうとは……」
高雄 「静かでしたが、かなりの量のお酒を飲まれてましたからね。」
天龍 「…………なぁ、提督。」
提督 「何だ?那智を背負うのを交代してくれるのか?」
天龍 「いや、そうじゃなくて……何か忘れてねえか?」
提督 「忘れて……?……あぁっ!そういえば、建造がもう1つ残ってたんだっけ?」
天龍 「あれからずいぶんドンチャン騒ぎしてたからなぁ……もうとっくに建造終わってんじゃねえか?」
提督 「そうだな……那智は寝てしまっているが、このまま工廠に行ってみるか。高雄も一緒に来てくれるか?」
高雄 「はい。私も新しい艦娘に早く会いたいですし。」
工廠
妖精さんも既に休んでいるのであろう薄暗い工廠の中でボンヤリと浮かび上がる人影に、一瞬背筋が凍り付くかと思った。
「扶桑型戦艦姉妹、妹のほう、山城です。あの、扶桑姉さま、見ませんでした?」
提督 「いや……こうしてちゃんと戦艦が来てくれたのは君が初めてだから……悪いけど、お姉さんの扶桑?はまだ見てないな。」
山城 「そうですか……はぁぁぁ……姉さまは居ないし、此処に来て鎮守府内や執務室にも行ったけど誰も居ないしで……不幸だわ。」フコォォォォ……
提督 「それに関しては本当にすまなかった!」ドゲザー
天龍 「こりゃ明日も歓迎会しねえとだな。」
提督 「マジでか!?俺の財布の中身は大破寸前だぞ!」
高雄 「大丈夫ですよ、提督。食材があれば明日は私が作りますから。」
提督 「うぅ……高雄がマジで天使……とにかく!さっきも言ったけど、山城がウチの初めての戦艦なんだ。その活躍、大いに期待しているからな。」
山城 「あ……はい、わかりました。姉さまは居ませんが、他の皆さんのためにも頑張りますね。…………姉さまは居ませんが。」
提督 「大事なことだから、2回言ったのか……」
天龍 「どれだけ姉貴のことが好きなんだよ……」
高雄 「摩耶もこれくらい甘えてきてくれればいいのに……」
*****
翌日
執務室
那智 「…………なぁ、司令官。」
提督 「何だ?」
那智 「いや……昨夜からの記憶が無いのだが……居酒屋に行った後、何があったんだ?知らぬ間に艦娘が1人増えていたし……」
提督 「知らぬ間って……まぁいい。とりあえず、山城のことは座敷童か何かだと思っておけ。」
那智 「座敷童とは家に幸福を招く妖怪ではなかったか?出撃までの間、ずっと 『 不幸、不幸 』 と言っていたのだが?」
那智とそんな話をしていると、出撃していた天龍から入電があった。
提督 「天龍、どうした?」
天龍 『提督……すまねえけど、今から撤退してもいいか?』
提督 「何が遭った?怒らないから言ってみろ。」
天龍 『ボスんトコ辿り着く前に山城と高雄が中破しちまった。』
提督 「そっか……まあ、昨日の今日でいきなり出撃だったからな。わかった、皆無事に戻って来るように!」
天龍 『了解!殿は無傷な俺に任せろ!』
天龍との通信が終わった後、傍に居た那智が口を開く。
那智 「中破撤退か……中々先に進めないというのは、もどかしいな。くっ……私が二日酔いなどしていなければ……共に出陣できたものを!」
提督 「本当それな。まぁ、艦娘が揃ってきてもまだレベルも練度も低いからなぁ……」
那智 「司令官、確か……友人で提督をしている方が居るのだったな?何とか演習の都合をつけてもらえないだろうか?」
提督 「そうだな……ちょっと本気で検討してみるか。けど、今は……中破した高雄と山城が心配だ!那智、入渠ドックの準備をしてきてくれ!」
那智 「承知した!」
鎮守府港
提督 「…………見えた!高雄、山城、無事か!?」
高雄 「はぅっ!? 提督、ダメ……見ないでください!! 」
高雄の はたく 攻撃! 提督に 効果は 抜群だ! ▼
提督 「ぶるあぁぁぁぁ!! 」
心配して駆け寄ったのに……まさか高雄から平手打ちが飛んでくるとは思わなかった。
高雄 「うぅ……馬鹿め…と言って差し上げますわ!」中破!
天龍 「とんでもねえ理不尽な現場を見ちまった。」フフ怖ぁ~……
山城 「こんな恥ずかしい恰好を提督に見られるなんて……不幸だわ……」フコォォォォ……( 中破! )
那智 「お前達、無事に戻ったか!…………で?何で司令官が大破しているんだ?」
天龍 「聞かないでおいてやってくれ。」
工廠
提督 「さてと……演習をする前に、やっぱり艦隊の頭数を揃えておきたい。よって、とりあえず後2回建造して計6人の第1艦隊とする!」
那智 「確かにこのところ撤退が続いて、ドロップ艦に会うことすらなかったからな。良い判断だと思う……しかし……」
天龍 「これで左頬に立派な紅葉さえなけりゃ、そこそこ決まってただろうにな……」
提督 「あれは俺の配慮が足りなかった。後で高雄と山城には間宮の羊羹を特別に差し入れしようと思う。とまぁ、それはともかく!妖精さん、頼んだ!」
妖精さんA 「われにまかせよ~」
妖精さんB 「ひさびさのでばんですぅ~」
妖精さんC 「ようせいのほんきをみるのです!」
建造時間 : 02:20:00
建造時間 : 00:22:00
提督 「なぁ……俺の目の錯覚じゃなければ、何か極端に短い建造時間が見えるんだけど?」
天龍 「奇遇だな。俺にも見えるぜ。何だ?駆逐艦でもできるのか?」
那智 「もう1人は2時間越えか……どうする、司令官?此処で早い方の建造が終わるのを待つか?」
提督 「そうだな。山城のときみたく出迎え皆無じゃ可哀そうだし……20分くらい此処で待っててやろう。」
建造終了
那智 「とりあえず規則のようなものだから言わせてもらう。新しい艦が進水したようだ。楽しみだな。」
提督 「そうだな。今度はどんな子が来るんだろうな?」
天龍 「おっ!見えたぜ。」
「伊168よ。何よ、言いにくいの? じゃ、イムヤでいいわ…よろしくねっ!」
提督 ・ 那智 ・ 天龍 「「「潜水艦だとぉぉぉぉぉ⁉ 」」」
168 「え……?そうだけど……」
提督 「マジで⁉ 夢じゃないよな?那智、これが現実か確かめたいから、とりあえず俺を殴ってみてくれ!」
那智 「わ……わかった!」
鉄☆拳☆聖☆裁!
提督 「ありがとござごふぁぁぁぁぁぁぁ!! 」
168 「きゃあああ!! 司令官の頭が工廠の壁に突き刺さってる!早く助けなきゃ!」
天龍 「ん?あぁ、大丈夫。此処じゃこれが基本だからよ。」
168 「これが基本ってどういうこと⁉ 」
提督 「大丈夫……すぐに慣れるさ……」
168 「あんまり慣れたくないんですけどぉーーー!! 」
数分後……
執務室
提督 「さっきはすまなかった。潜水艦は入手が難しい的な話を噂で聞いていたんで……まさか建造で来てくれるとは思わなかったよ。」
168 「ううん。あんなに喜んでもらえて私も嬉しいわ。これからの出撃も演習も海のスナイパー、イムヤにお任せ!正規空母だって仕留めちゃうから。」
那智 「頼もしいな。活躍に期待しているぞ!」
天龍 「これであの厄介な深海棲艦を突破できるな。提督!早く出陣させてくれよ!」
提督 「気持ちは解るが落ち着け。とりあえず高雄と山城の入渠が終わって、残りの艦娘の建造も終わってからだ。その後先に演習を挟む。皆の練度を上げたいからな。相手の方との連絡は俺に任せてくれ。」
天龍 「確かに出撃したは良いけど、今日みたいに進軍途中で撤退ってのは俺も嫌だからな……了解。提督の指示に従うよ。」
高雄 「提督。高雄、入渠から戻りました。あの……先程は失礼しました……」
執務室の扉が開き、怪我が治った高雄が入ってきた。同時に、あの良い感じにきわどく破れた服も元に戻っている…………くそぅ。
提督 「いや、俺も配慮に欠けていた……気にしてないから頭を上げてくれ。」
高雄 「ありがとうございます。そして、そちらに居るのが168ちゃんですね。初めまして、 重巡洋艦 高雄型1番艦 高雄です。これから宜しくお願いしますね。」
168 「はっ、はい!よろしくお願いします。」
提督 「それより高雄、山城はどうした?」
高雄 「まだ入渠中です。先程天龍さんが入渠ドックにいらして大体の事情は伺っておりますので、入渠が終了次第工廠に新しく来る艦娘を迎えに行ってもらうよう、お願いしてきました。」
天龍 「案外入渠が早く終わって、工廠に行ったら建造時間がまだ大半残ってて 『 このままだと、湯冷めしちゃうじゃない……不幸だわ……』 とか言ってたりしてな。( 笑 )」
提督 「普通にありえそうだな……」
那智 「普通にありえそうで笑えないぞ……」
山城 「山城、入渠から戻りました。ずいぶんと楽しそうな話をしていたのね、私抜きで……不幸だわ……」フコォォォォ……
提督 「おぉ!戻ったか、山城。戦艦だから入渠の時間はもう少し掛かると思ってたんだけど、重巡とそんなに変わらないのか?」
山城 「そんなことないわ。ただ、まだ練度が高くないから、費やす時間もそれほどではないのよ……うぅ、自分で言っていて惨めな気分になってきたわ。中破してしまってごめんなさいね、天龍、高雄。」
高雄 「いえ、私も中破してしまいましたし……頭を上げてください、山城さん。」
天龍 「そうだぜ。大体あれはウチで1番練度の高い重巡洋艦様が、二日酔いとかいうワケわかんねえ理由で出撃できなかったっつう戦力の欠落が、今回の敗因なんだからよぉ。」
那智 「うぅ……返す言葉もない……だが、大丈夫!我ら那智艦隊には新たに2人加わって戦力が増したからな!次は絶対に勝てるさ!」
山城 「そうだったわ。建造が終わった新しい子に外で待っていてもらっていたんだった……もう入ってきていいわよ。」
「千歳です。日本では初めての水上機母艦なのよ。よろしくね!」
提督 「お……おぉ?水上機母艦?あんまり聞きなれないな。空母や軽空母の強化版だったり?すまんな、勉強不足で……」
千歳 「いえ、大丈夫ですよ。簡単に説明しますと、空母や軽空母の方々と違い敵艦を攻撃するための艦載機は搭載できませんが……
代わりに索敵用の艦載機を多く積むことができるんです。」
提督 「なるほど、索敵がメインなのか。」
高雄 「情報は多ければ多いほど良いですし、制空権も取りたいこともあります。潜水艦の168ちゃんには水中を、千歳さんには水上と上空をと役割りを
決めて深海棲艦を発見・情報収集をしてもらえれば、こちらも作戦を立てやすくなり、戦局そのものが有利になります。彼女の運用は、提督の腕の見せ所ですよ。」
提督 「そう言われると、逆にプレッシャーなんですけど……」
168 「あの……今、スマホで調べたんだけど……千歳さん、改装すればするほど強くなるみたい。」
天龍 「改装をすればするほどって、改と改二のことだろ?」
168 「それが……5回改装できるみたいよ。」
提督 ・ 天龍 ・ 山城 「「「5回!?」」」
高雄 「凄いですわね、千歳さん。大器晩成型なのですね。」
千歳 「うふふ……恥ずかしいです。」/////
山城 「5回も改装だなんて羨ましいわ……うぅ……千歳と千代田には負けたくないの……」
提督 「艦種が違うんだから争うだけ無駄だって。とにかく!水上機母艦がどういうものなのか解った。今後とも我が艦隊の主力として頑張ってくれ。」
千歳 「はい。お任せください。」
提督 「そういえば……さっきから静かだな、那智。どうしたんだ?千歳をジッと見つめて……」
那智 「ん?あぁ……いや、千歳から何やら同類の波動?匂い……のようなものを感じたんでな。」
提督 「那智と千歳が同類?艦種も違うのにな……」
天龍 「よっしゃあ!何はともあれ、これでやっと6人揃ったぜ!提督、覚悟はできてるんだろうな?」
提督 「は?……あっ、もしかして昨日言ってた 『 今日も飲み会 』 ってやつか⁉ 」
天龍 「あったりまえだろ!168と千歳は今日此処に来たんだし、昨日来たのに参加できなかった山城が可哀想とは思わねえのかよ?」
提督 「むっ……それを言われると……仕方ない、今日もやるか!」
結局、今日も盛大にドンチャン騒ぎをすることになった。
千歳……おとなしそうな顔をして、結構飲むんだな。同じ呑兵衛の那智とはすぐに意気投合したし……
鎮守府港
提督 「ふぅ……」
那智 「何だ?こんな所に居たのか、司令官。」
提督 「ん?あぁ……酒は飲めないが、場の空気に酔ってしまってな。此処で少し休んでいた。」
那智 「そうか……」
係船柱に座っていた俺は立ち上がり、那智にその場を譲る。
穏やかで静かな時間がゆっくりと過ぎていく。
提督 「こうして那智とゆっくり過ごすのも久しぶりだな。」
那智 「そうだな。初めて出会った次の日にはもう天龍が来たからな……建造する度に資材を殆ど費やしていたこと、まだ覚えているからな?」
提督 「そんなつまらない思い出、早く忘れたほうが良いよ……最初にさ……」
那智 「うん?」
提督 「適性検査みたいなのを通過して提督になったものの、鎮守府に配属される前日に上の不手際で初期艦が用意できなかったって通達された時は
どうなるかと思ったけど、初めての建造で那智が来て、天龍、高雄、山城、168、千歳が来て……賑やかになったもんだ。」
那智 「……そうだな。単艦出撃をしたことを思ったら、賑やかなのは良いことだ。」
提督 「しかし、賑やかで楽しいだけという日々では……な。 深海棲艦は次々に湧いてくるし、第一艦隊として6人が揃ったとしても俺の采配次第では
また敗北するかもしれない……」
那智 「不安になるようなことを言うな……そうならないようにしっかりしてくれ。」
提督 「いや、でもなぁ……ほら、勝負は水物っていうだろ?そりゃ俺も頑張るけどさ、何か遭った時は助けてくれよ。頼りにしてるんだからな、初期艦殿。」
いつ終わるのか分からない深海棲艦とのこの戦争も、このメンバーでなら乗り越えられる。
戦争中という荒んだ時代の流れの中でも、このメンバーとなら毎日を楽しく過ごせる自信ならある。
先日着任したばかりで実績が殆ど無い俺の貫き通したいたった1つの目標……
戦争の終結?そんなもんは俺よりも遥かに実績のある提督の艦隊に任せる!とにかく……その終戦の時まで、誰1人としてメンバーを欠かさないこと
隣に居る重巡の初期艦にも悟られないよう静かに決意をした頃、水平線から丁度朝日が顔を出していた。
作品要素を『 コメディ 』にしていますが、オチがつかないというか、何というか……わかってるんです、えぇ、解ってるんです。
とりあえず、こういう形で区切りを付けましたが、またこのメンバーの日常系なんかを書いて投稿できたらなと思っています。
需要ですか?……言わせないでください……
勝つことは容易く。生き残る事は難しい。
開発→着任挨拶→既にスマホ装備のイムヤの手際の良さに脱帽w
あ・・・内容は面白いです
頑張って下され
おぉぉぉ!コメントや評価が……!ありがとうございます、ありがとうございます!
168はまだ実際ウチに来てくれてないので……『スマホ』って初期装備じゃないんですね。
知りませんでした……
面白いと言ってくださり、また評価で星を5つも灯らせてくださり
本当にありがとうございます!
こうして楽しんでいただけているようで、幸いです。
新人提督!?
もてなさねば・・・あ、お茶をどうぞ。
初期に駆逐が居ないSSって珍しい。
そして那智姉さん残念イケメン、良いですね。
楽しみにしてます!
お茶、ありがたくいただきます……結構なお手前で。
感想ありがとうございます!那智さんは飲んだくれ可愛い……
今回、このSSを始める前に他の先輩投稿者さん達の作品を読ませていただいた際に
『不知火、時雨、時雨、不知火、電、秋月、不知火、夕立、時雨、曙、曙、……クレイジーサイコレズビアン ( 軽巡 )』
……と、たぶん自分が読んだ作品が偏っていただけなのでしょうが
とにかく 『 駆逐艦の作品はいっぱいあるから、別に第一艦隊の話に使用することもないか 』という考えが浮かび
こんな現状になりました。……なっちゃいました!
ですが、聞いた話だと駆逐艦でしか行けない出撃みたいなのがあるそうなので
6人……とまではいかずとも、3人くらいは後々出そうと思います。
新人提督か。これからが楽しみな逸材ですなぁ
また次回期待してます。