「明石の策略、黒幕はまさか!?」
「消えた艦娘」の続きで、明石は何のために数年前から転送装置を作ったのか・・・そして目的は?
しかし、事態は予想外の展開に・・・
のんびり更新していきます。
明石を見つけて、牢屋に閉じ込めてこれで解決した・・・でも、何だろう? 何か気持ちが晴れない。
何か見落としていることでもあるのかな? ・・・う~ん・・・わからない。
執務室に戻って考え続ける提督・・・そこに、
「お疲れ様です、提督♪」
現れたのは、何と・・・
「村雨!? 何でここに!?」
提督は驚きを隠せなかった。
「あらあら・・・私を見て驚くなんて、何かあったのですか?」
「・・・・・・」
いや、違う・・・この子は別の村雨かな・・・態度もそっけないし、指輪もはめていない。
「悪い・・・誰もいないと思って驚いただけだ・・・それで、何か用か?」
「はい♪ とても大事な用です♪」
「?」
「提督には・・・」
いきなりスプレーを出して・・・ プシューー!!!!
「!?」
「あなたには・・・死んでもらいます!」
提督は気を失った。
・・・・・・
・・・
・
「う~ん・・・」
気が付くと、提督は牢屋の中にいた。
「気が付きましたか?」
横を見ると、明石がいた・・・どうやら提督は明石と同じ牢屋に入れられたようだ。
「何で村雨がもう1人いるんだ?」
「・・・あの村雨さんは・・・」
「?」
「別の鎮守府にいた村雨さんです。」
「・・・・・・」
あ~なるほどね・・・艦これをやっているのはオレだけじゃないもんね・・・他のプレーヤーの提督の村雨って聞けば
何の違和感はないね・・・でも、別の鎮守府にいたなら、ここにいることはおかしいだろ!
「別の村雨が何でこの鎮守府にいるんだ?」
「それは・・・」
「明石! 知っていることを全て話してくれ! 一体この世界で何が起きている!?」
「・・・・・・」
明石はゆっくりと説明していく。
「全ては数年前のこの世界の異変から起きました・・・」
「・・・異変?」
(ここから明石の回想)
数年前、この艦これの世界で鎮守府に所属する提督全員が姿を消しました(ゲームで言えばエラーやバグ)。
それまで、出撃命令・遠征など各命令を受けていた艦娘たちが指揮官を失ったことで混乱、鎮守府内は荒れてしまいました。
結局各鎮守府の秘書艦だった艦娘たちが提督の代わりに指揮を執ったのですが・・・
所詮は艦娘です、提督が行っている業務や命令など簡単にできる者はいなく、鎮守府内は艦娘たちの好きなように思うがままに
行動するようになりました。
その結果、資材は枯渇し、指揮官の艦娘たちが苦渋の決断として、多くの艦娘たちが捨て艦にされました。
捨て艦にされた艦娘たちは提督と味方の艦娘たちに憎しみを持ち、反乱を起こしてしまったのです。
(ここから現実)
「・・・・・・」
「それで私は、この事態を防ぐべく思いついたのはこの世界と他の世界に行ける転送装置でした。」
「・・・・・・」
「誰かが別世界に行ってもらって現実の人間を説得してこの世界で提督として着任するように頼んだんです。」
「・・・だから鳥海が現実に?」
「いいえ、彼女は元々捨て艦だった艦娘、彼女に同情して頼みなしで行ってもらっただけです。もし、あなたのことを知っている
艦娘が現れたら、「正体がバレてしまったら自害する覚悟でいて」と頼んで。」
「・・・・・・」
「・・・村雨は?」
「あの子はただ提督に会いたかっただけ・・・あんな純粋な子を利用する気はありませんでしたので、そのまま渡しました。
でも、結果的にあなたがこの世界に修復済を取りに来たことで私の計画が進んだわけですが。」
「・・・・・・」
「秋月さんには頼みました。 「提督をこの世界に連れてきて」と。 でも、彼女の性格を考えたら素直に「この世界に来て」
なんて言うはずがないですよね?」
「・・・・・・」
「だから私が提督との会話で「今鎮守府の治安が悪くなりつつあります、助けて下さい!」と。 それで、秋月さんが
それを言うために現実に来たのだと確信させるために。」
「・・・・・・」
「賭けでした、あなたがこの鎮守府に来たことで治安が良くなるのかは・・・でも、私の予想通りあなたはこの鎮守府の
治安を見事解消して普段通りの生活を取り戻してくれました!」
「・・・・・・」
「後は私の最後の計画を実行する手前・・・あの村雨さんが遂にやってきてしまって・・・」
「・・・別の鎮守府の村雨?」
「そう・・・あの子も捨て艦にされた艦娘・・・提督と指揮を執った艦娘たちに異常な憎しみを抱いています。
村雨さんは各鎮守府の捨て艦にされた艦娘たちを集め、反乱を起こしたんです。」
「・・・・・・」
「私の本当の目的は現実から提督の素質がある人間をこの世界に連れてきて、着任させこの世界の治安を維持すること。
もっと早く話せばよかったですね・・・」
「・・・それで? この世界に着任した提督はどうなる?」
「・・・気づいていると思いますが、この世界に取り込まれて二度と現実の世界には帰れません。」
「・・・・・・」
「勝手な考えだと思っているようですが、仕方がないんです。 このままではこの世界が崩壊しつつあります。
本来指揮官と部下の関係なのに、部下が指揮官を失って好き放題してる光景なんて・・・あり得ません!」
「・・・そうか。」
提督は立ち上がり、
「反乱側の首謀者は村雨なんだな?」
「はい・・・提督には何故か村雨さんに対して何かしら縁がありますね・・・」
「・・・・・・」
相手が村雨かぁ・・・これはやりづらいな。
「・・・・・・」
それ以上にこの牢屋から出ることが先決だな。
「・・・・・・」
柵を力いっぱい握り、曲げようとするが・・・びくともしない。
「無駄ですよ・・・この牢屋は重要人物を収容するために作られた特別な牢屋、艦娘でさえ脱出は困難です。」
「・・・・・・」
それでも提督は諦めなかった・・・逆に「この牢屋を抜け出せる」とさえ思っていたのだ、そして、
徐々に柵が曲がっていき、遂に・・・人が抜けられる隙間が出来た。
「何ということ! 提督・・・あなたは一体・・・」
「・・・・・・」
なるほど・・・そういうことか。
提督は何かに納得して牢から出る。
明石も逃がして・・・
「後はオレに任せてもらえないかな? 村雨を説得してみる。」
「正気ですか!? 提督1人で何ができるんですか!?」
「わからない・・・でも、何故かできるような気がするんだ・・・」
「・・・・・・」
「なるべく血を流さない解決をするつもりでいる・・・オレを信じてくれないか、明石!」
「・・・わかりました。」
提督の言葉に明石は心が折れて・・・
「今、村雨さんたちはこの鎮守府内にいます・・・そこには、同じ境遇の艦娘たちがいるはずです。」
「・・・ありがとう。 明石はもうこの鎮守府から脱出しろ。」
そう言って提督はその場から去った。
・・・・・・
地下から出て・・・
「村雨たちがいる場所・・・広くて指示が取れる場所・・・あそこしかない!」
提督は確信してその場に向かった。
・・・・・・
着いた場所は執務室・・・提督はドアをゆっくり開けた。
「あら、提督じゃない? おかしいわね・・・夕立に牢屋に入れるように頼んだのに・・・」
その場にいる提督を見て、笑いながら語る村雨。
「事情は明石から聞いたよ・・・村雨たちの気持ちはわかるが・・・もうこんなことはやめるんだ。」
「あらあら・・・明石さんたら余計な事を・・・いっそのこと息の根を止めておけば良かったわね・・・」
「・・・・・・」
「捨て艦にされ、帰還命令も与えられず路頭に迷うことになった私たちの気持ちなんて・・・あなたにわかるはずが無いわ!」
「・・・・・・」
「ここまで戻ってきたことは予想外だったわね・・・でも、もう1度戻せばいいだけよね~。」
村雨がトントンっと手を叩くと、部屋から夕立と時雨が出てきた。
「提督をもう1度牢屋に入れてあげて! 今度は十分に厳重にしてね!!」
村雨の前に夕立と時雨が立つ。
「夕立、時雨。」
「提督さん、素直に諦めるっぽい!」
「これからは僕たちがこの世界を仕切るんだ・・・人間様はおかえり願おう!」
「・・・・・・」
やはり説得だけではダメだったか・・・とため息をつく提督。
「・・・仕方がない。」
そう言って提督が構える。
「? 何の冗談っぽい? 提督さんが戦うっぽい?」
「へぇ~・・・座っているだけの提督がねぇ~・・・これは面白い!」
2人は同時に襲い掛かってきた。
・・・・・・
「痛い・・・痛いっぽい~!」
「ああ・・・腕を折られたみたいだ。」
提督の前で2人が倒れこむ。
「あらあら・・・」
村雨が少し悩み始める。
「もうやめろ・・・そして降伏しろ!」
「・・・何の冗談ですか? たかが2人を倒せたくらいで!」
村雨はそのまま逃亡した。
「・・・逃げたか。」
提督は2人に駆け寄る。
「ふふ・・・早くとどめを刺したら? 僕たちは捨てられた身・・・今さら命乞いなんてしないよ。」
「・・・っぽい~。」
「・・・わかった。」
提督は腕を振り上げて2人にとどめを・・・と思いきや、
「な、何するんだい!?」
「ぽ、ぽい~?」
2人を抱えて執務室から出た。
「何って怪我してるんだから治療しに行くんだよ!」
「何で? 僕たちは提督を殺そうとしたんだよ!?」
「いちいちうるさいなぁ・・・オレはお前たちを治療したい、それだけだ。」
2人の言い分を無視して工廠へと歩いていく提督。
・・・・・・
「明石、いるか?」
「はい、提督・・・その2人は?」
「ああ・・・怪我してるんだ・・・治療してやってくれ。」
明石に引き渡すと提督はまた戻っていった。
・・・・・・
「どうして提督さんは私たちを助けたっぽい~?」
「さぁね・・・僕たちを捕虜にするつもりなのかな?」
2人が考えていると、目の前に明石がいた。
「明石も牢屋から出ているじゃん・・・鍵かけ忘れたのかなぁ~夕立?」
「むむむ・・・そんなはずないっぽい~!」
「・・・・・・」
「でも、そんなことも言えないね・・・僕たちは提督に負けたんだ。 村雨も見限ってたから捨てられたようなもんだよね。」
「・・・ぽい~。」
「時雨さん、夕立さん。」
「いいよ、僕たちはもう覚悟できてるから! 入渠後に解体でも、処分でも何でも来てよ!」
「ぽいぽい~!!」
「2人はもう一度・・・」
「え?」
「もう一度やり直す気はありませんか?」
「やり直すって何がさ? また艦娘として生活しろって? そんなの無理だよ!」
「・・・・・・」
「大体提督に手を出した時点で、提督だって僕たちを処分したいに決まってるだろ! 今さらやり直せなんて・・・」
「・・・・・・」
「提督は去り際に私に何を言ったか知っていますか?」
「え?」
「私が「どうして反乱側の治療をしないといけないんですか?」と聞いたら、提督は言いました・・・」
「・・・・・・」
「「時雨と夕立がオレに「助けて」と言っているように見えた」ですって。 その時は提督は何を考えているのかわかりませんでしたが
今の2人を見ると、提督が言った事が・・・わかるような気がします。」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばらく沈黙が続いて、
「本当はこんなことしたくないっぽい!」
「夕立・・・」
「本当は反乱なんかしないで、普通に皆と暮らして出撃と遠征して提督さんに褒めてほしい、それだけっぽい!」
「・・・・・・」
「村雨が反乱するから姉妹艦として一緒にやったけど・・・本当はそんなことやりたくなかったっぽい~!」
「・・・そうだね。」
「・・・・・・」
「僕もだよ・・・本当はこんな事望んでいない・・・提督がもし、許してくれるならまた普段通りの生活がしたい。
提督は・・・僕たちを許してくれるかな?」
「許してくれますよ・・・提督ならきっと。」
「そう・・・じゃあ、決まりだね。」
「うんっぽい~!」
「僕たち時雨と夕立は入渠後、提督の援護に向かう!」
「了解っぽい~!」
2人は改心した。
・・・・・・
「村雨、どこに行った?」
提督は探すが・・・、
「・・・今度はお前たちか・・・」
目の前に駆逐艦たちが立ちはだかり・・・
「村雨さんの命令により、提督を捕縛します・・・皆、抵抗するなら気絶させても構わないわ!」
と、一斉に襲い掛かってきた。
「・・・・・・」
提督も構えた。
・・・・・・
「村雨、村雨~!!」
先ほどの駆逐艦たちを倒して探し続ける提督・・・そして、
「・・・ここか?」
たどり着いた場所は・・・村雨の部屋。
「・・・・・・」
提督はそっと扉を開けた。
「あらあら・・・本当にしつこいですね、提督。」
村雨は持っていた銃を提督に向けた。
「・・・・・・」
「そんなにしつこいと嫌われますよ、提督。」
「村雨、もうやめろ・・・復讐したって何も起きないだろう?」
「提督にはわからないよ・・・今の私の気持ちなんて。」
「知ってるよ・・・捨て艦にされたんだろ? 別の鎮守府で・・・」
「・・・・・・」
「そこの提督がどうなったのかは知らないが、もう一度提督を・・・オレを信じてくれないか?」
「あなたを信じろと? 私に何の利点があるんですか?」
「オレは絶対に捨て艦なんてしない! 轟沈だってさせない! 生存を第1に考える・・・本当だ!」
「へぇ~・・・たいそうな自信ね。」
「・・・・・・」
「そんなこと言って実は口実で、本当は私を信じ込ませた後、密かに解体させる手筈じゃないの!?」
「・・・何を言っている?」
「言わなくてもわかるでしょ! もう手遅れなのよ! 今さら改心したって私は反乱側に走った艦娘!
提督たちは絶対に私たちを捕まえて解体するに決まっているわ!」
「・・・・・・」
「ならせめて・・・私が提督を殺して・・・私も一緒に死ぬ!」
そう言って村雨は引き金を引いた。
パァンッ!!
「村雨~!」
時雨が村雨の部屋に着くと、そこには撃たれて血を流す提督と引き金を引いて震えている村雨が・・・
「提督! 大丈夫かい!?」
時雨が駆け寄って、
「ああ・・・大丈夫だ。 大した傷じゃない・・・心配するな!」
「大したことないって・・・心臓を撃たれているじゃないか! 早く手当てを!」
「何で? どうして・・・どうして死なないのよ!?」
「オレはまだ死ねないからだ。」
「・・・・・・」
「もう一度言う・・・もうやめろ。 村雨たちが反乱を起こしたことは・・・提督であるオレが原因だ。
解体はしない! 捕縛もしない! だから信じてくれ。」
「嫌よ! 誰がそんな話信じるもんですか!・・・時雨!何をしているの!? 早く提督を捕縛しなさいよ!」
「・・・村雨、もうやめようよ。」
「え?」
「こんなこともうやめよう? 僕は提督を・・・もう一度提督を信じてみることにしたんだ。」
「そう・・・でも、私は絶対に認めない! 提督も裏切り者も死ねばいい!」
「残念だけど・・・村雨についていく艦娘は1人もいないよ。」
「え?」
「僕と夕立は提督を信じる・・・そして、さっき倒れていた他の駆逐艦たちにも説得して提督の下に着くように
言っておいた・・・後、村雨が地下で閉じ込めた戦艦・空母の艦娘達も、今頃夕立が解放してるはずだよ。」
「・・・・・・」
「だからお願いだよ、村雨・・・もう一度・・・もう一度さ、提督を信じてみよう・・・ね?」
「・・・ふふ。」
「・・・・・・」
「反乱を起こしておいて、味方は誰もいなくなり挙句に・・・姉妹艦から説得されるなんて・・・みっともないわね!」
村雨は自分の銃を顎に押し当て、
「!? やめろ村雨!」
「・・・さようなら。」
パァンッ!!
「・・・・・・」
「て、提督!?」
かろうじて村雨から銃を奪い、代わりに提督が弾を受けた。
「・・・・・・」
提督は村雨を見て、
パンッ!! (平手打ち)
「!?」
提督の平手打ちに驚く村雨。
「もうやめろ・・・こんなことしたってお前が悲しいだけ。 それは自分でもわかるだろう?」
「・・・・・・」
「反乱を起こす引き金となったのは、提督であるオレの責任だ。 だからお前たちは悪くない・・・
もし、許されるならまた艦娘として普段の生活に戻ってほしい。」
「・・・・・・」
「ダメかな? 村雨?」
「・・・うう。」
村雨は泣き崩れて・・・
「・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
「・・・いいんだ、辛かったな、村雨・・・」
提督は村雨を抱きしめた。
・・・・・・
・・・
・
提督の説得により、村雨は降伏して地下に閉じ込められた戦艦・空母たちは無事に解放された。
閉じ込められた艦娘たちの言い分は当然あったが、提督が「全ての責任はオレが取る」と言って
村雨たちは何のお咎めなしとなった。
・・・・・・
結果的に戦艦・空母たちは提督に愛想を尽かして鎮守府から去って行った。
鎮守府に残っているのは駆逐艦や軽巡のみである。
「提督・・・ごめんね。 もとはと言えば僕たちが・・・」
「別にいい・・・これでよかったんだ・・・後は崩れた鎮守府を元に戻していくだけだ。」
「・・・・・・」
「そのためには時雨や夕立、お前たちの協力が必要だ・・・協力してくれるか?」
「うん、任せて・・・いつでも準備はできてるよ!」
「そうか・・・では、まずは軽巡と駆逐艦で編成を作って・・・」
それからは地道に鎮守府復興を目指した。
短時間の遠征任務「長距離練習航海」、少し長い「海上護衛任務」などを永遠と・・・
少しずつ資材が戻っていき、資金も調達できて鎮守府生活が少しずつ楽になって行った。
続けていくうちに、重巡や軽空母の艦娘たちが戻って来て、出撃・遠征の幅が広がり格段に楽になった。
・・・・・・
・・・
・
どれくらいの月日が経ったのかはわからないが、
資材が豊富になり、生活が元に戻りつつあった。
愛想を尽かして去った戦艦と空母の艦娘達も結局は戻ってきた。
何があったのかは知らないが、空母の艦娘曰く「ここの鎮守府生活の方が断然いい」そうだ。
・・・・・・
「提督、今日の任務資料をお届けに参りました。」
「ああ、ありがとう・・・そこに置いておいてくれ。」
「・・・・・・」
「? どうした村雨? オレの顔に何かついているか?」
「いいえ、ふふ・・・。」
「・・・・・・」
「聞きましたよ・・・戦艦の霧島さんが中破進軍して提督が怒った話。」
「轟沈の一歩手前だからな・・・次は絶対に行くなと念を押しただけだ。」
「それだけですか? その後の話も聞いたのですが・・・」
「・・・何だったっけ?」
「ふふ・・・」
・・・・・・
(少し過去に遡って・・・)
「霧島! お前は何をやっているんだ!」
「申し訳ありません・・・ですが、中破ならまだ戦力としては十分にあります! それを撤退とはいかがなものでしょう?」
「中破は轟沈の一歩手前だろう! 撤退しろと言っているのに、進軍するのは命令違反だぞ!」
「全く、司令はどこまでも無能なんですね・・・何を言おうが私は中破進軍をやめませんよ!」
提督と霧島がぶつかる光景を周りが見守る中、提督が思いもよらぬ発言を・・・
「よし、ならこうしよう。」
「?」
「お前は沈まないと思うが、万が一に沈んだ場合・・・」
「・・・何です?」
「オレも一緒に死んでやる!」
「なっ!? 何を言って!?」
「いいか皆、聞いてたな? 皆の誰か1人でも沈んだ場合、オレも一緒に死ぬ! いいな! 1人でもだからな!」
そう言って提督はその場から去った。
(ここから現代)
「思い切ったことを言いましたね?」
「そう言えば言ったな・・・ああやって言わないと真剣に取り組んでくれないと思ってな。」
「あの一言が効いたのか、皆中破の時点で撤退するようになりましたよ。」
「ふむ・・・それはいいことだ。」
「ふふ・・・」
・・・・・・
「そうだ・・・現実の村雨と話をしよう。」
本当は現実の世界に帰って直接会いたいところだが・・・明石によると、自分がこの世界から離れてしまうと
また治安が悪くなってしまうらしい・・・そんなわけでこの世界から出ることが出来なくなっていた。
「村雨、聞こえる?」
「はい、聞こえますよ♪」
久々に聞いた嫁の声・・・提督は嬉しくて話をする。
「どう? そっちの様子は?」
「変わらず普通ですよ♪ 私の大切な旦那様はいつ戻ってくるのかしら?」
「・・・・・・」
もう戻れないかもしれない・・・とは村雨には言えなかった。
「もう少し掛かるかな・・・今特別な出撃で忙しいんだ。」
「そうですか・・・くれぐれもお体には気を付けてくださいね♪」
「ああ・・・ありがとう、村雨!」
会話を終えて・・・
「どうしよう・・・本当は帰りたいんだけど・・・また提督不在になって鎮守府内が混乱するんだよな。」
再びあの凶行が起きないために提督がこの世界に留まっている・・・それは明石や皆が望んでいたことだ。
「でも・・・やっぱり会いたいよ・・・村雨・・・」
提督は上を見上げながらそう呟いた。
・・・・・・
「こちら時雨・・・路頭に迷っている駆逐艦2人を発見、接触を試みる!」
最近になって、行く当てもなく、引き取り手のない艦娘を迎える活動を始めた。
「大丈夫? 怪我をしているね・・・今すぐ僕のいる鎮守府に応援を呼ぶから・・・」
「すいません・・・ありがとうございます。」
「・・・こちら時雨、怪我をしている艦娘がいる・・・今すぐ応援を求む!」
・・・・・・
「提督、今から新しい艦娘が2人着任予定です。」
「そうか、わかった。」
提督は電話を取り、
「明石、悪いけど艦娘の部屋を後10人分拡張してほしい!」
「わかりました! 必要資材は後で請求します!」
「わかった、どのくらいかかりそうだ?」
「そうですね・・・人員次第で2日あれば工事が完了できます!」
「よし、ではそちらに戦艦・重巡の艦娘を何人か送る・・・拡張している間は予備宿舎に待機してもらうよ。」
毎日が忙しい・・・提督は艦娘たちに的確な指示を出す。
「提督、追加で空母の艦娘が1人着任する予定です!」
「ああ・・・その子も予備宿舎に案内させてくれ。」
「はい、わかりました。」
「ふぅ・・・さて次の仕事は、と。」
・・・・・・
「提督、今日も1日お疲れ様でした!」
「ああ、お疲れ様・・・村雨ももう休んでいいよ・・・明日もまた忙しくなるからな。」
縁があるからか、ただ自分の好みの問題か、また村雨を秘書艦にしていた。
「では、おやすみなさい。」
「・・・・・・」
現実の世界に戻れない辛さを忘れるために、敢えて村雨を側に置いているのが正解かもしれない。
「・・・・・・」
明石はこの世界に取り込まれることを心配していたようだが、当の提督は未だに取り込まれていない。
それは、いつかまた現実に戻って村雨と一緒に生活するわずかな希望を胸に抱いていたからだ・・・
・・・・・・
ある日の事だった、
「・・・よし、今日の任務は無事終了・・・っと。」
いつも通りに執務仕事を終え、休憩しようとした時の事・・・
執務室に誰か入ってきた。
「? 明石か、どうした?」
明石がやって来て提督に話しかけた。
「提督! 遂に完成しました!」
「? 何が?」
「完成した」と言われて最初は戸惑ったが、
「これで、提督も元の世界に帰ることが出来ます!」
「えっ?」
明石の言葉に耳を疑った。
「動かないで! そのままにしてくださいね・・・では、スイッチオン!」
明石が謎の装置を起動すると、目の前に提督と同じ姿の人間が現れた。
「疑似提督です・・・わかりやすく言えば、プログラム上のもとで行動する提督ですね。 提督はまだこの世界に取り込まれてはいません、
ですから、まだ人間としての部分が残っているうちに早く元の世界へ帰って下さい!」
「・・・本当にいいのか? オレが帰っても構わないのか!?」
「はい・・・これからは私がこの提督と共にこの鎮守府を支えていきます! 提督には本当にお世話になりました。
この世界の治安を維持させるために、残ってほしいと無理を言ってしまったのですから・・・」
「・・・・・・」
「でも、あなたには大切な人が待っている・・・それを思ったらとてもこの世界に残すことが出来ませんでした。」
「・・・・・・」
「これが最後の転送装置です・・・1回使えば壊れる仕組みになっています・・・後、これも。」
「・・・これは?」
「この世界にいた時の記憶を消去する装置です・・・現実に戻ったら提督と村雨さんで使用してください・・・
2人はこの世界の事など気にせずに新たな生活を過ごしてください!」
「・・・ふっ。」
提督はその装置を明石に返した。
「? 何のつもりです?」
「別に・・・何もこの世界で経験したことは悪いことばかりではないってことさ・・・苦しいことや辛いこともあったが、
それ以上に楽しいことがたくさんあった。 だから、思い出として残しておきたいな・・・村雨もそれを望んでいるはずだよ。」
「そうですか。」
「もし、またオレが必要になったら呼んでくれ。 いつでもこの世界に来るよ。」
「はい、ありがとうございます!」
「・・・じゃあ、オレは帰るね・・・さようなら。」
提督は装置を起動・・・光に包まれ、提督は消えた。
・・・・・・
・・・
・
「う~ん・・・はっ!」
目が覚めて辺りを見回す・・・自分の家だ・・・良かった、返って来れた。
「おかえりなさい、あなた。」
目の前に村雨がいて、思わず抱き着く。
「会いたかったよ、村雨!」
「・・・もう、そんな何年も会ってないようなこと言っちゃって・・・まだあなたが行ってから数時間しか経っていませんよ?」
「・・・・・・」
艦これの世界にいる間は現実の世界の時間が止まっている・・・唯一時間が過ぎるのは会話をしていた時間のみ。
時計を見たらまだ3時間程度しか経っていない・・・でも、艦これの世界では数年は滞在していたんだよ・・・
「・・・もう、甘えん坊さんですね。」
状況を把握してくれたのか、村雨は提督の行為を拒まなかった・・・むしろ強く抱きしめていた。
「向こうの世界の役目は終わったからさ・・・これからは2人で楽しく暮らして行こう!」
「はい、旦那様♪」
2人はそっと口づけをした。
・・・・・・
現実の世界に戻り、提督は普段通りの生活に戻った。
いつものように仕事へ行き、帰ってきたら夕食を2人で楽しみながらその日の話で盛り上がる。
村雨は相変わらず、艦娘としていた時の話をしてくる・・・自分にとって、その話を聞くのが楽しい。
実際にその世界で提督として従事していたのだから今更な気持ちがあるが、それでも話す度に出る彼女の笑顔に
提督はとても癒された。
翌朝、いつものように仕事へ向かうと・・・鳥海と会った。
「おはようございます。」
「ああ、おはよう・・・どうした? その服なんか着て・・・」
会った時は事務の服装ではなく、艦娘の時と同じ服装であった。
「司令官さんにお別れを言いに来ました。」
「・・・・・・」
「明石さんから聞きました、司令官さんが世界の皆をまとめて治安を戻したと・・・捨て艦として扱われた他の艦娘達も
戻りつつあるそうです。」
「そうか・・・つまり、お前も?」
「はい・・・正直言うと、摩耶や高雄姉さんたちがこの世界に来た時からずっと気がかりで・・・でも、決心しました。
もう一度艦娘として頑張って行きたいと思います!」
「わかった・・・元気でな! また問題でも起きたらいつでも来てくれ!」
「はい・・・司令官さん、本当に・・・本当にありがとうございました!」
鳥海は転送装置を起動・・・光に包まれ、鳥海は消えた。
・・・・・・
それからは2人の生活がずっと続いた。
艦これをやっていても、画面越しに話すことも出来なければ、持っていた会話装置も反応しない。
今まで起きたことは全て夢だったように感じる。
もちろん、村雨は実際に艦娘で艦これの世界で秘書艦として存在していた。
それが、世界の異変から現実にいる1人の人間を提督に任命するために、転送装置が作られ一部の艦娘が現実に来た。
村雨も一応その1人だが、この出会いは偶然だったのか決まっていたことなのかは未だにわからない・・・
でも、1つ言えるのは・・・村雨含む皆と会えたことはとても嬉しいことであった。
あれから明石や他の艦娘との出会いはない・・・恐らく世界が安定したまま維持しているのだろう・・・
その方がいい・・・もし、また呼ばれる日が来るときはまた世界に異変が起きていると思うから・・・
・・・・・・
何の問題もなく1年が過ぎたある日の事、
「あなた・・・」
「? どうした村雨?」
「・・・・・・」
恥ずかしそうに顔を赤くする村雨。
「出来ちゃったみたい♪」
「?」
「私たちの・・・子供が♡」
「!? マジで!!」
その瞬間、2人の間に歓声が沸いた。
「本当か!? 本当に子供が出来たのか!?」
あまりの出来事に興奮する提督。
「ほら、お腹触ってみて。」
「・・・・・・」
そっと触れると・・・確かに中で動く感触がある。
「本当だ・・・村雨のお腹を蹴っているような感触がある・・・やったな~村雨~!!」
「はい・・・とっても嬉しいです♡」
2人の歓声が響く中、
突然側に置いてあった会話装置が鳴った。
「・・・・・・」
提督は、装置を取ると・・・
「提督! 聞こえますか! 今すぐにあなたの力が必要なんです! こちらの世界に来ていただけませんか!?」
「・・・・・・」
村雨を見ると、「行ってあげてください。」と返答が。
「・・・わかった・・・準備が整い次第、そちらへ向かう。」
「助かります! では、着いたらすぐに工廠場へ来てください!」
会話装置が切れた。
「全く・・・せっかくのいいムードを明石の奴!!」
「ふふふ・・・まぁ、いつものことですね(笑)」
「・・・じゃあ悪いけど、また行ってくるね、村雨。」
「はい♪・・・お体には気を付けてください!」
村雨とキスを交わし、お腹に手をやり「行ってくるね。」と子供に告げ、装置を起動した。
・・・・・・
・・・
・
艦これの世界に着き、明石が指定した工廠場へと向かう。
「何があった、明石?」
工廠場の扉を開けると・・・
「提督、よく来てくれました! ・・・事は一刻を争う事態です!」
「・・・わかった、今すぐにこの鎮守府に残っている艦娘を大会議室に集めろ!」
「・・・わかりました。」
・・・・・・
「皆よく集まってくれた! 今から主力部隊の救出作戦を始める!」
提督の作戦が始まり皆は説明を受ける。
「まず、救援部隊だが・・・」
提督の作戦は的確で、1つ2つ先の予想を考えた作戦である。
「そして、前方後方から向かい、護衛しつつ応戦すること!」
「わかりました、すぐに準備します!」
「いいか、あくまで目的は救出だ! 深追いは無用! 生存を重視しろ!」
提督の指示のもと、皆は救出に向かった。
・・・・・・
作戦は成功し、主力部隊は無事に帰還・・・奇跡的に中破で済んだ。
「提督、おかげで助かりました。」
明石にお礼を言われ・・・
「じゃあな・・・嫁が待っているんでな。」
そう言って、提督は装置を起動し、現実に帰った。
・・・・・・
それからと言うもの・・・
提督は現実と艦これの世界を行き来するようになり、多忙な日々を送った。
唯一の救いはどちらか一方の世界に行けばもう一方の世界の時間が止まることである。
提督は正直苦とは思っていないようだ・・・逆にこれにやりがいを持つようになった。
それは、現実で待っていてくれる妻の村雨、艦これの世界で自分の指示を待つ艦娘たち・・・
誰かが自分を待っている、誰かが自分を頼りにしているからこそ、提督は頑張ろうと思った。
いつかこの戦いが終わる事を願い・・・そしてその時まで自分が皆を支える・・・
そう決意する提督であった。
「明石の策略、黒幕はまさか!?」 終
エメラルドドラゴンというゲームが有ってね。其の主人公がヒロインの女の子に自分の命と言える角をへし折り。
女の子との再開を誓って与えたのを思い出したよ。
コメントありがとうございます! そんなゲームがあるんですね~。
興味があるのでネットで調べてみます~♪