鎮守府家庭教師の教育日和
最後の青年、登場。清掃員、図書館司書と比べるとかなり真面目で気難しそうな青年だけど……?
というわけで、3人目の青年が出てきました。
とりあえず青年シリーズは、この3人で行きます。
??「また間違ってる……」
吹雪「え、え~……」
??「はぁ……この前も同じこと教えたんだけど……」
吹雪「ご、ごめんなさい!」
??「はいはい。謝る暇があったら手を動かす!」
吹雪「はいっ!」
そう言って、吹雪は消しゴムを取り、慌ただしく自分の書いた字を消していく。今現在、吹雪は数学の勉強の真っ最中である。彼女を教えているのが、この鎮守府の家庭教師のような立ち位置で仕事をしている青年だ。
青年「……」
吹雪「……」
彼が、この鎮守府に来て仕事を始めた理由はここの提督から、「艦娘たちにも平等な教育を」と頼まれたからである。青年は、それなりに給料も弾むと言われているため、ここで住み込みで働かせてもらっている。もちろん、空き部屋の代金は支払っているが……。
吹雪「できました!」
青年「どれどれ……うん。いいね」
吹雪「ありがとうございます!」
青年「よしよし……おっと、もうこんな時間か、吹雪、宿題はここの残りの問題と次のページ、というわけで、今日は終わり」
吹雪「はい、お疲れ様でした!」
青年は、吹雪に別れを告げると吹雪の部屋から出て、次の艦娘が待つ部屋へと急ぐ。これが、彼の日常である。
提督「あら、青年君、こんにちは」
青年「あ、提督。どうも」
青年が少し急ぎ足で歩いていると、たまたまここの提督と出くわした。ここの鎮守府が他所と違うのは珍しく、女性の提督であるということがまず1つ挙げられる。
提督「忙しそうですね……艦娘のみんなはちゃんと勉強していますか?」
青年「あ、はい。真面目な子はとことん真面目なので、教えがいがありますよ。……たまーに、ちょっと面倒な子もいますけど」
提督「そうですか……。では、引き続き頑張ってくださいね」
青年「はい。それでは失礼します」
青年は、提督に一礼をすると次の艦娘が待つ部屋へと向かっていった。
朝、青年は起き上がり、体をぐっと伸ばした。そして、まず何をするかと言えば、机に向かい今日、教えに行くことになっている艦娘たちのチェックを行う。そして、今日教える範囲をノートと参考書を見ながらまとめ、それから食事へと向かった。
青年「……」
吹雪「あ、青年さん、おはようございます!」
青年「おはよう」
吹雪と挨拶をかわし、食堂へと向かう。既に中には艦娘たちがいっぱいであった。青年はこれと言って気にする素振りを見せず、食堂の朝食のメニューを受け取ってからはすぐに空いている席を取り、そこですぐに食事を取って足早に去っていく。
青年の中では、艦娘たちはあくまでも、教え子なだけであって、あまり馴れ合うような存在ではないという認識がある。そのため、青年は艦娘たちとはあまり必要最低限の会話はなかなかしないままであった。
青年「さて……朝一番最初に教えに行くのは……」
そう呟きながら、自分の部屋へと戻り、勉強道具を取ってからその艦娘の部屋へと向かっていく。艦娘たちに挨拶をされたら挨拶を返し、何も言われなかったら素通り。青年は目的の艦娘の部屋の前に立つと、扉を二回ノックした。
暁「あ、こんにちは。レディーを待たせないなんて、なかなかえらいじゃないっ!」
青年「……暁。何度言ったらわかる。レディーは目上の人にはちゃんと丁寧語で話すんだ」
暁「うっ……きょ、今日もよろしくお願いします」
青年「よろしい」
青年が中に入ると、普段暁と一緒に行動する響や雷、電の姿は見えなかった。基本的に青年は個人授業形式を取っているため、授業の時は他の艦娘たちには申し訳ないが他の場所へ行ってもらうことにしている。
青年「じゃあ、前回の続きだけど……。まず、宿題から見せて」
暁「えっと……はい」
暁がおずおずと、ノートを手渡してきた。青年はノートを開け、前回出した宿題をちゃんとやっているかどうかをチェックする。
青年「……うん。今回はちゃんとやっているな……」
暁「あったりまえじゃない! なんてったって、私はレディーなんだから!」
青年「そうだな……。でも、暁、1つだけ言わせてほしい」
暁「な、何よ……」
青年「ちょっとごまかしたろ……? 何問か飛ばしているぞ」
暁「うっ……」
暁は、青年が宿題を見る時、かなり早めに見るということを知った上で、あえて何問かをやらずに提出し、青年が見落とすのを祈るといった作戦で来たようだが、青年の目は誤魔化すことができなかった。
青年「……」
暁「し、仕方ないじゃない! わかんなかったんだから!」
青年「丁寧語」
暁「わ、わからなかったから仕方ないじゃないですかぁ……」
青年「でも、ちゃんと考えたっていう、証拠は残して欲しかったなぁ……。これは今日の宿題はいつもの倍は出さないと」
暁「ご、ごめんなさい! 次からはちゃんとしますからぁ!!」
青年「……」
暁「……」
青年「それは、今日の授業次第かな……。じゃ、40ページ開けて」
暁「はい……」
青年は暁が解くところの範囲を指示してからは暁が解き終わるのを待ちながら次の艦娘に教えるところを予め見ておく。彼にとっての暇つぶしは、勉強することだ。
青年「……」
暁「……う~」
青年「……」
暁「むぐぐ……」
青年が静かに予習をしているのに対し、暁はわからない問題が出てくると、すぐにうなり声のような声を上げて悩み始める。これはいつものことである。青年はそんなことはわかっているので、静かにただその様子を時折見ては自分の予習に戻る。
暁「……ふぬ~……」
青年「……」
青年は、教え子にわからないところがあっても、聞いてこない限りは教えない主義の人間だった。暁はどうしてもわからないということを口に出して言いたくないのかチラチラと青年の方を見てはすぐに悩むフリをする。
青年「……」
何となくこの光景に面白さを見出した青年はしばらく暁が悶える様子を見守ることにした。
暁「……ふぬぬ……ふにゅ?」
青年「……」
暁「――!! ………………うがー!!」
一瞬何か閃いた顔を見せ、スラスラとペンを取って書き始めたがどうやら間違いであったことに気づいたらしい。暁はとうとう諦め、青年にどうすればいいのかを聞いてきた。
暁「わかんないんだけ……ですけど」
青年「うん。見ればわかる」
暁「……」
青年「えっと、そこの問題だけど……思っているよりはシンプルだぞ? 変に難しく考え過ぎだな。こうすれば、あっという間に解ける」
暁「なるほどね……ま、本当は最初からわかっ―――「前回、教えた内容と関連した問題だから、解けないのはおかしいんだよなぁ……」
暁「……」
青年「……」
暁「ふぇ……うわああああああん! 青年がいじめるー!!!」
青年「はい?! ちょっ……そのくらいで泣くなよ……」
暁「……だ、だって、わかんないんだもん……私だって頑張ってるけどっ……わかんないんだもん……!!」
青年「……」
青年は、さすがに言い過ぎたと思い、暁の頭を撫でて落ち着かせる。暁は次第に気持ちが落ち着いてきたみたいで、まだ、グスッと鼻を鳴らしているが、大声は出さなくなった。
青年「ま……俺も経験あるから。そういうの……段々慣れていくから大丈夫だ」
暁「ぐすっ……本当に?」
青年「ああ……それに、暁は何となくだけど、大器晩成型な気がするんだよな」
暁「大器晩成……?」
青年「本当にすごい子は成長するのはちょっと遅いってこと。暁はやればできる『レディー』だから、きっと頑張り続ければ頭も賢い、すごいレディーになれるよ」
暁「本当? ……じゃあ、頑張る!」
青年「そうか……じゃあ、やったところ一回答え合わせするから、見せて」
暁「うんっ!」
青年「……『嘘も方便』だよなぁ……」
暁「何か言った?」
青年「いや、何でもないよ」
青年は、暁に次回までの宿題の範囲を教えた後、暁の部屋から出た。そして、メモ用紙に、『暁は褒めて伸ばす』とだけ書き、次の艦娘の部屋へと向かっていった。
青年「さて……卯月か……。……手がかかるからな……」
そう言いながらも部屋の前へ立ち、扉をノックする。すると扉が勢いよく開き、見るからに元気な卯月が姿を現した。
卯月「あっ! 青年さん! 待ってたぴょん!」
青年「おお……。どうした、卯月、珍しいな。今日はやる気があるみたいだが……」
卯月「そ、それについては後で話すぴょん」
青年を中に迎え入れながら、ちょっと恥ずかしそうに言う卯月。普段の卯月はお喋りが好きで、青年もその明るさは嫌いではないので、たまにお喋りに付き合ったせいで、授業にならなかった日も一度だけあった。
卯月「じゃあ、今日もよろしくお願いします!」
青年「……卯月、熱でもあるのか?」
卯月「失礼しちゃうぴょん。こう見えてもうーちゃんは真面目だよ!」
青年「そ、そうか……」
青年が違和感を覚えつつも、前回の宿題の範囲をチェックする。すると、普段の卯月とは思えないほどの正答率だった。これを見ただけでも、青年はご褒美にもう今日の授業は終わりにしてもいいかもしれないと思ったくらいだ。
青年「ほ、本当にどうしたんだ?」
卯月「……実は……」
卯月が話し出したのは、先日、駆逐艦のみんなで会話をしていた時に、やはり卯月の性格やら話し方のせいで、「卯月ちゃんって、難しいことは考えてなさそうだよね」と言われたらしく、その一方で、弥生が「卯月ちゃんと比べるとちょっと大人っぽいって言うか、色々考えてそう」との話になったようだ。卯月はそれが、妙にショックだったらしく、たまには見返したやりたいと思って、今回は、真面目に宿題に取り組んできたらしい。
青年「あー、卯月。その話なんだが……別に悪口言われてるわけじゃないと思うんだけど」
卯月「だ、だってちょっと嫌な気持ちになっちゃったんだもん……」
青年「う~ん、そういう時は捉え方を変えてみたらいいと思うよ。『難しいことは考えてなさそう』だったら、『気楽に物事を考えることができる』とか『あくまで純粋』とか……」
卯月「難しい話だぴょん……」
青年「ほら、例えば……そうだな。こう言っちゃ悪いかもしれないが……『意地っ張り』と言うと悪く聞こえるだろ?」
卯月「うん」
青年「それをあえて、ポジティブに考えると、『意志が硬い』とか、『強い意志がある』とかに考えられるし……たぶん、みんなは卯月のことをそこまで軽い気持ちで『難しいことは考えてない』なんて言ってないと思うよ。どちらかと言うと、卯月の素直さとか、純粋さが羨ましいんだと思う」
卯月「……そ、そうかな……?」
青年「うん。まぁ……俺もその素直さというか純粋さは嫌いじゃない」
卯月「ほんとに!? じゃ、じゃあ、うーちゃん、これからも難しいことは考えないで生きて行こうかな……」
青年「ちょっとくらいは考えような……」
卯月「冗談だぴょん♪ 青年さん、気を取り直して、授業、お願いします♪」
青年「お、おう……」
それからの授業は、いつもより真面目に受けた卯月だった。
てっきり、青年は自分の話で、『みんなを見返す』という意志が少しでも変わったのではないかと思ったがどうやらその意志は強かったようで、かなり真面目に受けていた。
そして、こういった場合、一度決心のついた子は集中力がなかなか持つものである。卯月のその時の集中力は今まで見たどの駆逐艦の子の中でもトップクラスだった。青年は思いの外、卯月が真面目に勉強するので、少しご褒美をあげようと思い、いつも懐に用意しているあめ玉を取り出した。
卯月「できたぴょん!」
青年「お疲れ、卯月。これ、舐めときな」
卯月「え、これは、飴?」
青年「うん。結構頭使ったからね。糖分補給」
卯月「とーぶんが何かはよく分からないけど、もらっとくぴょん!」
青年「うん。じゃ、ちょっと採点しておくから、待ってて」
卯月「はーい!」
そう言って、青年は卯月の答案を採点し始める。やはり、青年の予想した通り、今日の卯月は一味違った。正答率がいつもの倍は違う。青年は丸付けをしながら、嬉しくて微笑みがこぼれてしまった。
だけど、卯月は笑顔にはならなかった。
卯月「うっ……!!」
青年「ん? 卯月、どうした?」
卯月「せ、青年さんっ……こ、これっ……はっかの味だぴょ……ん」
青年「あ、苦手だった……? 俺いつも目覚まし代わりにそれ舐めるからつい……」
卯月「けほっ! けほっ!」
青年「ご、ごめん……」
卯月は確かに一味違った。一方で、青年は卯月にあげる飴の味を間違えてしまったようだ。
青年「ほ、ほら、ちょっとした間違いをする人をポジティブに捉えると、『お茶目な人』に―――
卯月「ならないぴょん!!!!」
青年は、卯月の意外な成長に満足して、卯月の部屋から出た。そして、メモのところに『卯月は意外と真面目。これからが楽しみ』と書き足しておいた。ちなみに、このメモは青年が艦娘を教える時の方針を決める参考になるものである。
青年「お、次は真面目な朝潮だな……ま、あの子はこれと言って問題はないはず……」
真面目な子が相手だとそれなりに気分が乗る青年は朝潮の部屋へ向かう途中鼻歌交じりに歩いていた。そして、朝潮の部屋の前に立ち、扉をノックする。
朝潮「あ、青年さん。お待ちしてました。どうぞ、中にお入りください」
青年「こんにちは。相変わらず、礼儀正しいね」
朝潮「いえ、やはり、教えてもらう立場ですので」
そう言って、朝潮は勉強机に座り、ノートを広げて宿題で出していた範囲を見せてくれた。青年は、それを確認しつつ丸付けをしていく。多少のケアレスミスがあったものの、基本的には駆逐艦の中でトップクラスの正答率を誇る朝潮の解答は青年が見ていて気持ちいいものであった。ついでに言うと、字もかなり丁寧なので、より見やすい。
青年「うん、まあ、朝潮についてはこれと言って言うことはなさそうだな。じゃ、前回の続きからしよっか」
朝潮「はい」
ちなみに、青年は、ここまでの様子を見ているとわかる限り、教える相手によってかなり態度が変わる。朝潮の場合は、真面目な彼女に合わせて無駄なことは一切話さないようにしているのだ。
青年「……」
朝潮「……」
静かな時間が流れる。朝潮は少し難しめの問題にあたっても、暁とは違い、冷静に考えて静かに悩む。こういった風に、艦娘たちの勉強時のクセを見たりするのも青年の一つの楽しみであったりする。
朝潮「あっ……青年さん、できました」
青年「おっ、お疲れ~、じゃあちょっとだけ休憩な」
朝潮「はい」
朝潮が、椅子に座って伸びをしている間に青年は、丸付けを開始する。以前できなかった部分の関連問題ができているのを見ると教えた甲斐が会ったと思い、青年は嬉しくなった。
青年と朝潮は、傍から見ればいい生徒といい先生の関係に近いと言えるだろう。
だからこそ、これと言った事故は起きない。
だが、これこそが青年にとっての一番平和な時間であり、心地よい時間なのであった……。
突然だが、このような話を聞いたことはないだろうか。
『夜更かしして勉強するくらいなら、早めに寝て早く起きて朝から勉強する方が効率がいい』と。
まさにその典型……と言うとおかしいのだが、それを試されている艦娘が1人いた。
青年「ほら、川内。起きろよ~」
ビシッと、青年は目が閉じかけているその艦娘の頭にチョップを入れた。
彼女は川内。彼女を一言で説明するなら『夜戦にこだわる艦娘』である。
「口を開けば『夜戦がしたい』とばかり言うので、夜に勉強できないから朝に教えてあげてほしい」と、提督が頼み込んできたので、青年は引き受けて、彼女の勉強を見ているが、どうも、川内は朝に弱いらしい。
青年「大丈夫か?」
川内「あ、うん……ちょっと眠いけど……勉強終わったら……夜戦……」
青年「まだ朝だから終わっても昼だぞ~。寝ぼけすぎだろ……」
青年はやれやれと言った表情で、川内のために水筒に入れている温かいお茶を入れてあげた。川内がそれをちびちびと飲むと、閉じかかっていた目が少しずつ開いてきた。
川内「ありがとう……私も起きないといけないのはわかってるんだけど……」
青年「難しいところだよな……。俺も少し眠いから大丈夫だよ。でも、川内が夜戦に行くためには今のうちに勉強しないといけないからな」
川内「うん。がんばる……!」
川内は自分に言い聞かせるように、そう言うと、止まっていた手の動きが一気に加速し始めた。
何だかなんだ言って、この鎮守府には真面目な艦娘が多くて安心する青年であった。
青年「さてと……。次は……」
青年が予定表を確認すると、『鳳翔』と書かれていた。それを見ると、青年は少しだけこわばった顔つきになる。これと言って、青年は鳳翔のことを嫌いではないのだが、妙に漂うあの大人な雰囲気を前にすると少し緊張してしまうのである。
青年「ま……いつも通り、冷静に……」
青年は鳳翔が深夜に開く、居酒屋『鳳翔』の扉を開ける。鳳翔は、青年が入ってきたことに気づき、優しい微笑みをかけて挨拶をしてきた。青年もそれに応えて、とりあえず、座席に座る。
鳳翔「すいません……少し片付けが遅れてしまって、もう少しで終わりますから」
青年「あ、いえいえ。ゆっくりしてください。ただでさえ、鳳翔さん、結構忙しいんですから」
鳳翔「ありがとうございます……」
鳳翔は、「申し訳ないのでよければ……」と言って、お茶を出してくれた。青年はそのお茶を一度すすり、勉強のための準備を整え、鳳翔に教えるための部分をもう一度見直す。しばらくすると、鳳翔も準備ができたようで、青年の隣へと座る。その際に、ほのかないい香りがしたことに青年はドキッとして、思わず、少しだけ2人の距離を開けてしまった。
青年「じゃ、じゃあやりましょう……」
鳳翔「はい、よろしくお願いします。先生♪」
青年「ふ、普通に呼んでくださっていいんですよ……」
『先生』と呼ばれることに妙に抵抗のある青年は恥ずかしそうにしながら、鳳翔に聞こえるか聞こえないかの境目くらいの声の大きさで伝えてみた。鳳翔はおそらく聞こえているのだが、優しい微笑みを浮かべながら『今日も前回の復習からですか?』と聞いてくる。
青年「あ、そ、そうですね……やりましょう」
青年は、鳳翔のやっている課題を受け取るととりあえず、それを一通り見通す。完璧すぎて、非の打ち所のない解答だった。青年は、ちゃんと見たと言う印のために、ハンコをノートの上に押す。
青年「はい、では復習に入りましょうか?」
鳳翔「……それだけ……ですか?」
青年「へ?」
鳳翔「……ちゃんと課題をやったので……その、もう少し褒めてみてほしいですね」
青年「……え、え~と」
鳳翔「お願いしますよ、『先生』♪」
「やりづらい」。そう思った青年は、どうすればいいのかわからない顔をしている。どうにも、青年は鳳翔に気に入られてるのかどうかはさておき、鳳翔が提督や他の艦娘に見せる顔とは違う一面を見せられているのだ。青年は、小さな声で、「よくできました」と、つぶやき、鳳翔の頭に手を置いた。
青年「……」
恥ずかしさで頭が爆発しそうになる青年はすぐに手を引っ込める。
鳳翔「ふふふ。青年さん、ごめんなさい」
青年「ど、どうして、からかうんですか……」
鳳翔「それはもちろん……私は他のみんなの前では、大人な扱いばかりされてるので……青年さんには、年下と言いますか、甘えてみたいんです……あっ。これ、内緒にしてくださいね?!」
青年「い、いいませんけど……」
なかなか鳳翔の行動パターンが読めなくて困惑する青年。しかし、こうした一面を見れる自分はある意味では幸せものと思えるように今後も、鳳翔にしっかりと勉強を教えようと決心した青年であった。
さて、鳳翔への授業が終わり、居酒屋『鳳翔』から出てきた青年。体はそこまで疲れていないものの、精神的には少しだけ疲れてしまったので思わず、「ふぅ」と息をはいた。そして、スケジュール帳を開いて、次の教え子の確認をした。
青年「長門さんか……」
青年は、戦艦の艦娘たちのいる寮へと歩いて行った。
そして、長門型戦艦の部屋の前に立つ。そして、二度ノックをする。中から、「はいはーい」と声が聞こえてきて、すぐにその扉が開いた。扉の向こうでは、陸奥が立って青年の姿を見つめていた。
陸奥「あら、青年さん、こんにちは」
青年「どうも……。長門さんに勉強を教えにきました」
陸奥「あら、もうそんな時間? 青年さん来たわよー」
長門「む。そうか……。入ってもらえ」
陸奥「というわけだから、青年さん、いらっしゃい♪ あ、お茶入れとくからもう授業始めてくれて大丈夫よ」
青年「そうですか……では」
長門型戦艦の部屋の中に入り、カバンの中から勉強を教えるための道具を取り出し、まずは、長門が前回の宿題をやってきたかいつも通り確認する。長門の解答は例えるなら正攻法で、もう少し捻れば、もっと簡単に正解に導くことができる解答なのだが、長門の性格のせいか、正攻法で常に解答している。
青年「ふむ……長門さん、ここの問題なんですけど」
長門「そこがどうかしたか? ま、まさか間違ってるのか? 自信はあったのだが……」
青年「あ、いえ、正解はしてるんですけどね、ここまで、求めれた段階で、こうすると」
長門「な、なんと……一気に時間が短縮できる答えになるのか」
青年「はい」
長門「……そ、その……だな、青年。もしかして、私は、いわゆる『頭が固い』と言われる部類なのだろうか」
青年「へ?」
唐突の、相談に完全に隙を突かれた青年は、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。確かに、傍から見ればそんな面もあるのかもしれないな、と青年は納得してしまった。
長門「実は、他の戦艦仲間から、『長門は頭が固い』と言われたことがあってだな……私も頭を柔らかくしたいところはあるのだが……何とかならないものだろうか」
青年「なるほど……うぅん」
青年には、艦娘たちの戦いのことはよくわからないが、今後のことを考えると緊急の際に機転を利かせないと苦しい場面に遭遇することがあるかもしれない。そして、長門は戦艦というみんなのリーダー的存在だ。だからこそ、いざというときみんなをまとめないといけない存在になるかもしれない。
そのことを考えると、やはり、頭は柔らかいにこしたことはないのだが……。
青年「……僕は大丈夫だと思いますよ」
長門「何?」
青年「確かに、頭が柔らかいのはいいことですよ、色々な発想ができますし。長門さんもいざというとき、頭をフル回転させないといけませんしね。……でも、頭の柔らかさはすぐに身につくほど簡単なものじゃない……かと。……え、偉そうなこと言ってるのはわかってます……ご、ごめんなさい」
長門「そうか……難しいところだな。どうにかして、少しでも身につけたいのだが……」
陸奥「経験しかないんじゃないかしら」
作者より
ながもん可愛いよながもん
もちろん、リクはアリですよ…。
やって来ましたか三人目の青年。
どうも土の中からこんにちわ、暇人なワッフルです。
青年シリーズ楽しんでます
このお話も楽しみです!頑張って下さい!
読みたくなるような面白さです。今回の青年はどうやって艦娘と触れ合っていくのか楽しみです。ところでこの青年編もリクエストとかOKですか?
ワッフルさん
一応、青年シリーズとしてはおそらくラストな気がしますw
頑張りますよー!!
ピースケさん
ありがとうございます!
あ、もちろんやってくれてオッケーですよw
また面白そうなことをしていますね(笑)
お体に気を付けてがんばってください!!
たぬポンさん
むしろ、ガンガン更新できるのは今の時期のうちなんで……
はい!体は壊さない程度に頑張りますw
卯月と朝潮お願いできますか?設定はお手数おかけしますがラインさんお願いしますm(_ _)mあまりいい設定が思いつかなくて…すいません
ピースケさん
卯月と朝潮、了解です!
とりあえず、定番で卯月は手のかかる子、朝潮は真面目みたいな感じでいきたいと思います!(展開は自分で何とか決めますw)
どうもぉ.....銃壱と言って分かりますかね?
う、卯月がやる気を出しているだと⁉︎
清掃員の方と共に楽しませてもらってます!
これからも、頑張って下さい!
えと、この家庭教師さんは駆逐艦のみに勉強を教えているのですか?
銃壱さん
ようこそ(謎
いや~もっと手のかかる子として描写しようと思ったら別方向に……
あ、駆逐艦限定じゃなくても大丈夫ですよ~
どうも、主さん銃壱です!
なら、リクエストで川内さんとかはどうでしょうか?
内容としては川内のみ朝方に教えるとか.......
銃壱さん
なるほど...いいですね!
川内、了解です!
あえての長門や鳳翔、雪風や島風
・お疲れ様です
・卯月はイタズラ出来る分きっと頭の回転は速いはず
やればできる子だと…いいなー
・青年くんの先生っぷりが良い感じですね
・朝潮との平和なやり取りがなんだか読んでいて安心しますw
・実は青年シリーズはこれが最初ですこれから徐々に楽しませて頂きますー!
ではでは失礼致します
更新してくれー
お疲れです。
時雨と夕立お願いします
後、がんばってください。
ファイトです。(^-^)>
matuさん
コメントありがとうございます!
時雨と夕立、ですね!了解です!
木曽お願いします
木曾、了解です!
良いですよね(^_^)b
もしお時間があれば正規空母組みをお願いします。
出来れば瑞鶴が
途中で打ってしまいました。
瑞鶴が他のみんなに勉強を教えるために、教え方とかを習ってる感じを見てみたいです。
19の名無しさん
鳳翔さん最高すぎますw
みっけさん
了解です!瑞鶴ですね!もちろん頑張りますよ~!
2016-01-01 22:47:25 ID: 8_SYt4Zsから今現在まで更新無し
…生存しているのだろうか…というか今何やってるのだろうか。
仕事が忙しいとかかねェ…