2015-02-11 19:32:48 更新

概要

孤独のグルメ。ついに海外進出へ―――。
犯罪都市・ロアナプラを舞台に井之頭五郎はどんな料理を食すのか?!


前書き

登場人物紹介
・井之頭五郎
個人で貿易商を営んでいる中年の人。体格はそれなりに大きく、割と何でも食べる。
嫌いなのは食事中の至福の一時を邪魔されること

・岡島緑郎(ロック)
一流企業である旭日重工の資材部東南アジア課に勤務していたが、あることがきっかけでロアナプラで活動する運び屋『ラグーン商会』のメンバーとなる。
銃器は一切使えず、また使わないが、いざという時の肝は据わっており、作戦においては頭脳労働が中心の参謀役。

・レヴィ
『ラグーン商会』のメンバーで、米系華人の娘。かなり短気な性格かつトラブルメーカーであり、ロックの正論に反発しては2人で口論になることも多いが、その一方では彼のことを心配し、庇うことを常とする。金にもうるさく、そのためなら単独行動に出ることも少なくない。



五郎(……ついにタイまで来ちゃったよ)


五郎(さすがに赤道付近の国だから暑いな……)


五郎(というより、この街でスーツ姿のやつなんて俺くらいじゃないか? なんだか浮いている気がする)


五郎(一応上だけ脱いでおくか)


五郎(それにしても……この街はどこか物騒だ)


五郎(最初、タクシーの運転手にロアナプラに行くなんて言ったら驚かれたしな……)


五郎(なんて言うか……雰囲気からして違うな……。明らかにここは俺の居場所じゃないな……)


五郎(……しかし、旧友からの頼みだから仕方ないな)


五郎(とっとと終わらせて、美味いタイ料理でも食べて気分を落ち着かせるのが一番かもしれん)



時間や社会にとらわれず、幸福に空腹を満たすとき


つかの間 彼は自分勝手になり、自由になる――


誰にも邪魔されず気を使わずものを食べるという孤高の行為。


この行為こそが現代人に平等に与えられた


最高の癒しといえるのである。


             「タイ、ロアナプラのタイ料理」


佐隈「いや~、井之頭、久しぶりだな~」


五郎「あぁ、久しぶり」


佐隈「わざわざ、こっちまで来てくれたのに大したもてなしできなくてごめんな」


五郎「気にするな」


佐隈「しっかし、よく無事でここまで来れたな。街中で銃ぶっ放すやつがいる街なのに」


五郎「そうなのか?」


佐隈「あぁ、この街はいわば犯罪都市さ。金を稼ぐ方法は人それぞれでなんでもありだ。この街では金こそが力さ」


五郎「じゃあ、わざわざこんなところで仕事しなくても……」


佐隈「いや、実はな……その手の人に保護してもらってるんだ」


五郎「……マフィアか!?」


佐隈「まぁ……な。万が一ビジネスが失敗すれば俺の頭が消し飛ぶのは簡単なことさ。さ、仕事の話に戻ろうぜ」


五郎「……あぁ」



佐隈「……とまぁ、これが俺の頼みたいもののリストだ」


五郎「……ん? こんなもの輸入してどうするんだ?」


佐隈「井之頭、この街では詮索屋は嫌われるぜ」


五郎「……そうか。というより、これは飛行機とかでは送れないぞ。絶対」


佐隈「安心しろ。ウチのボスがその手の運びの達人とコネがあってな。そういう心配はいらない」


五郎「なるほど……」


五郎(すっかり佐隈は変わってしまったな……)


五郎(残念だが……俺がとやかく言うことではないな)


五郎「よし、わかった。何とかしてみる」


佐隈「すまないな……」


五郎「あ、そうだ。お前はここら辺にある美味い飯屋とか知らないのか?」


佐隈「あるっちゃあるんだがな……基本的にどこもお腰にデッカイモンぶら下げたやつが多いもんでな」


五郎「……」


佐隈「教えてやりたい店は多いんだが、この街では警察もあんまり信用できないからな……」


五郎「そうか」


佐隈「どうしてもって言うなら、比較的安全な店しかないな……味もそれなりだが……」


五郎「……どのくらい安全なんだ?」


佐隈「そうだな……銃持って暴れまわるやつがきたら店長自ら追い出しにかかるくらいには安全さ」


五郎「……」





五郎(さて、佐隈に教えてもらったところを探すか……)


五郎(……ふむ)


五郎(……お、あったあった)


五郎(なるほど、屋外か……。これならいきなりぶっ放してくるやつもまだ少なそうだ)


五郎(さて、どの店にするかな……)


五郎(やっぱりタイに来たんだからタイ料理だよな……)


五郎(一応中華もあるのか……)


五郎(うーん、タイ料理は今日諦めてラーメン……)


五郎(いやいや、俺は一度決めたんだ。今日はタイ料理だ)


五郎(どれにしようか……とりあえず列に並んで待っておくか)


五郎(……)


五郎(……ん? あれは……日本人だよな?)


ロック「……はぁ。レヴィのやつ、今日は一段と不機嫌そうだな……」


五郎「……」


ロック「しかも混んでるし……これはますます不機嫌になるぞ……」


五郎「……」


ロック「……ん? あ、どうも」


五郎「……どうも」


ロック「観光ですか?」


五郎「いや、ちょっと仕事で」


ロック「そうですか……。この街、物騒でしょ?」


五郎「……まぁ。あなたはどうしてここに?」

      

ロック「僕は『一応』仕事ですね……」


五郎「そうですか……お互い大変ですね」


ロック「えぇ」


ロック「おっと、こっちの列のほうが結構先に進んでるな……それでは」


五郎「えぇ、それじゃあ」


五郎(……結構若かったな)


五郎(どちらかと言うと新社員……というより)


五郎(あいつ……あの目……)


五郎(……)


五郎(おっと、こっちも順番がまわってきたぞ)


店員『ご注文は?』(英語)


五郎『……えーと……バミー・ナームとソムタム……それとカオニャオ・マムアンをください』(英語)



五郎(さてさて……)



バミー・ナーム→通称『タイ風ラーメン』。上には肉団子やワンタン、長ネギのみじん切りなど具だくさん

ソムタム→パパイヤ、ライム、唐辛子、塩を用いたタイのサラダ。甘い、すっぱい、辛い、しょっぱいの4つのハーモニーをお楽しみあれ

カオニャオ・マムアン→ココナッツミルクで炊いた餅米に、マンゴーを載せたタイの定番お菓子。ここでしか味わえない甘さをあなたに


五郎(タイ料理といえばやっぱりトムヤムクンが有名だが……)


五郎(今日はあえて、こういう選択だな……)


五郎(どれどれ……。まずはこのバミーを頂こうか)


五郎(……うん。美味しい。麺がしっかりスープと絡んでいる……)


五郎(具も頂くか……)


五郎(おっ……この肉団子、いいな……。ふむ……)


五郎(しかし、ちょっと量は少ないな……まぁ、具はたくさんあるし、それにおかずも色々持ってきているし大丈夫だろう)


五郎(あぁ、いつしかデパートの屋上でうどん食べた時を思い出すな)


五郎(あの時は『青空がおかず』だったが……今日は違う)


五郎(こんなにもおかずにあふれているじゃないか)


五郎(さて、ソムタムも食べてみるか……)


五郎(む……甘い……いや、すっぱい……いやいや、辛い……、いやしょっぱい……)


五郎(なるほど。このサラダは四つの味を楽しむのか……)


五郎(小さい頃に味が変わるキャンディーみたいなの、食べてたなぁ)


五郎(このサラダはそれとは全然違うけど)


五郎(噛めば噛むほど味が広がっていく……)


五郎(麺との相性もバッチリ。これはいい)


五郎(さて、予想ができないのはこのマンゴーだぞ……)


五郎(さて、食べてみるか……)


五郎(……ん? 何だか騒がしいな)



レヴィ「残念だよ。掛け値なし、言うことなしのどデカ地雷を踏んだんだぜ。本当に残念だ」


レヴィ「最後に一つ聞いてくぜ。墓にゃなんて書けばいい?」




五郎(あ、あれは銃じゃないか……それにあそこにいるのは……)


五郎(さっきの日本人!!)


ロック「『暴力バカに――――つける薬はねえ』って書きな」


レヴィ「じゃあなロック」


バンッ―――――。







五郎(……と、止めたぞ……あの日本人)



ロック「見ろよ。銃じゃ――――解決しないこともあるんだぜ」



五郎(お、おいおい……ケンカ始めちゃったぞ)



レヴィ「綺麗事並べんじゃねェ、ホワイトカラー!! 手前にあたしの―――何がわかる!!」


レヴィ「何がわかんだよ? ああ? 言ってみろよ? てめェみたいな温室育ちにわかることを!! どんな暮らしをしてきたか……わかるハズがねェンだよ!!」



五郎(……英語だからあまり何を言っているかがわからないが……)


五郎(たぶん、育った環境が違うとかそういうことだろう。服装かなり違うし)



レヴィ「それしかやり方を、知らねェんだよッ!」


バキィ!


五郎(おいおい、殴っちゃったぞ……)


五郎(む、警察……)


五郎(……あ、向こうも少し収まったのか……?)


五郎(……)


五郎(……いかん。今は食事に集中しておこう)


五郎(さて、マンゴーマンゴー)


五郎(……甘いっ……とにかく甘いぞ!)


五郎(だが、嫌いじゃないな……)


五郎(うーん、口の中が甘さでいっぱいだ。ここは辛さやすっぱさで一度口の中をリセットだ)


五郎(うん。美味い)


五郎(タイ料理、侮れないな……)


五郎(まだまだ知らない味がいっぱいだ)


五郎(世界は広いな……)


五郎(様々な人がいるように、味も様々)


五郎(料理ってそういうのも楽しめるからいいよなぁ……)




~数分後~


五郎(いや~……今日はとんでもないことに遭遇してしまったな)


五郎(しかし、美味いメシにも遭遇することができた)


五郎(こんな物騒で、人に冷たそうな街でも、料理は温かい……)


五郎(やっぱりモノを食べるときは救われてなきゃあダメだなぁ……)



               孤独のグルメ×BLACK LAGOON ~完~

次回、孤独のグルメ「石川県湯乃鷺温泉街、『喜翆荘』の和食」孤独のグルメ×花咲くいろは




第1話


第2話


第3話


第4話・前


第4話・後


第6話パート1


第6話パート2


第6話パート3


第7話    


後書き

ちなみに、今回は若干ifストーリーチック。
原作2巻の話を参考にして作っています。もし、あの場に五郎ちゃんがいたら……みたいな。

次回、孤独のグルメは石川県にある某旅館喜翆荘にお邪魔します。
花咲くいろはとのコラボssなので、……はたして、『あの迷フレーズ』はでるのでしょうか。


このSSへの評価

2件評価されています


SS好きの名無しさんから
2021-02-11 10:38:41

ギョタンさんから
2015-02-20 21:12:19

このSSへの応援

3件応援されています


ギョタンさんから
2015-02-20 21:12:18

shinedoragon arkさんから
2014-11-03 22:31:40

SS好きの名無しさんから
2014-11-03 21:20:06

このSSへのコメント

4件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2014-11-03 22:29:23 ID: 7YuBzHqR

ゴローちゃん。よく生きてられるな。

2: SS好きの名無しさん 2014-11-04 14:25:06 ID: 1A6UMAap

ほんとに食って帰るだねなんだな

3: ライン 2014-11-09 22:48:28 ID: FSOnAJhI

>名無しさん
ゴローちゃんはメシ以外に関しては割りかし運がいいほうですw

>名無しさん
それが孤独のグルメです。

4: SS好きの名無しさん 2021-02-11 10:40:12 ID: S:K1dEvS

おもしろいコラボ!ゴローちゃんもレヴィも好きだから俺得でした!


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