少女のクリスマス(特別編)
クリスマスに出そうとしてたら体調不良になってしまった為、1日遅れの投稿です。
遅れて申し訳ございませんでした。
クリスマスの日に起きた、とある奇跡…?
白露「~♪」
駆逐艦寮のとある部屋。そこで、1人の少女が何かを編んでいた。
白露「由衣~。このままでいいんだっけ?」
村雨「ああ、うん。んで、ここをこうすれば…」
白露「サンキュ、由衣。いやー、それにしても由衣が縫物出来て良かったよ…。誰も出来なかったら、私の手が大惨事になっちゃうよ…」
村雨「あはは…。一応、最低限の事はできるようにしてるから…」
心音「しつれーしまーす。あれ? 何やってんですか?」
白露「まぁ、ちょっと編み物をね…」
心音「でも、何編んでたんですか?」
白露「それは、まだ、言えないかなー。今言っちゃったら、後々後悔しちゃいそうだし」
心音「茜さんがそんなに隠し事するって、珍しい…」
白露「今回ばかりは、ね…」
心音「?」
村雨(まぁ、仕方ないかな。今回は…)
ーーほぼ同時刻にて、執務室ーー
優斗「えっと…。この日に会議入ったから、前日に移動しなきゃいけんから…」
優斗が、大本営から送られてきたメールを見ながらスケジュール調整を執務室で行っていた。今月も色々あったため、スケジュール調整が上手くいかなかった。そのせいで後回しにしてきたことが今になってしわ寄せがきている。
優斗「まいったなぁ…。けども、大本営主催の会議だから任意参加だとしても欠席はマズいよな…。仕方ない、出席にして、と…。送信っと」
大本営にメールを返した後、優斗はカレンダーに〇を付けると、移動するための準備を始めた。
〇がついていたのは、12月の24、25だった。
優斗「今年のクリスマスは、男どものクリスマスになっちまうのか…。トホホ…」
ため息をつくと、作業を再開し始めるのであった。
ーー駆逐艦寮ーー
白露「できたー!!」
村雨「よかったよかった…。じゃあ、後は優斗を誘うだけね…」
心音「誘う? 何にですか?」
白露「実はね、近くのショッピングセンター、まだクリスマスの日にイルミネーションやってるんだってさ。だから、久しぶりにゆーくんと一緒に見に行こうかなーって…」
村雨「まぁ、簡単に言えば茜お姉ちゃんが優斗とデートしたいってわけね」
白露「ちょ、由衣!! 勝手に言い換えないでよ!!」
心音「確かに、クリスマスにデートするのは、女の子にとっては夢のようなイベントだし…」
白露「だーかーらー!! デートじゃないってばぁ!!」
村雨「でも本音は?」
心音「デートしたいんじゃないの?」
白露「それは…。その…。したい、です…」
村雨「やっぱり…。最初から本音言えばいいのに」
白露「いや、流石にそれは恥ずかしいよ…」
心音「じゃあ、お兄ちゃんの部屋に早く行ってきたらいいんじゃないですか? お兄ちゃん、今日はけっこう忙しいらしいみたいだから中々話せないだろうし…」
白露「そういやそうだった…。じゃあ、行ってくる!!」
村雨「行ってらっしゃーい」
茜は、部屋を出ると小走りで執務室へと向かって行った。
村雨「やっぱり、気合い入ってるわね…。茜お姉ちゃん」
心音「なんであんなに気合い入ってるんだろ…?」
村雨「最近、全然優斗と一緒に居れる時間が無かったからじゃない? ここ最近は、身体が入れ替わったり、入院したりしてたから…」
心音「なるほど…」
村雨「実はね、昨日に茜お姉ちゃんから相談を受けたのよ」
心音「相談? 茜さんが由衣さんに?」
村雨「そう。『最近、ゆーくんと全然一緒にいられないから、なんかいい案ない~?』って」
心音「それで、調べたらこのイベントが出てきたってわけですか」
村雨「そうそう。それで、クリスマスなら大体空けているだろうから、優斗を誘って行って来ればって言ったら、茜お姉ちゃんは聞いた瞬間にまだ一緒に行けるとも決まってないのに喜んでて…」
心音「茜さんもそうゆう所あるんだ…」
村雨「まぁ、戻ってくる時に満面の笑顔で帰ってくるでしょうね…」
~~茜移動中~~
白露(ゆーくんとデート…。旅行中に一緒に行った時以来だなぁ…。ゆーくんにあげるプレゼントも作ったし…。あとはゆーくんを誘うだけ!!)
茜が編んでいたモノ。それはマフラーだった。優斗は寒いのにめっぽう弱い。なので、大好きな人を想ってマフラーを編んだ。
しかも、2人が一緒に使えるように敢えて長めにしている。
白露(でも、ゆーくんマフラー使うのかなぁ…。まぁ、そんな事を今さら考えてもなぁ…)
少しだけ心配になった。けども、優斗は、貰ったモノは絶対に使うような人なので使わないということは滅多にないはずだ。
白露(それにしても、艦娘になってから初めてゆーくんと一緒にクリスマスを過ごすことになるのかぁ…。これまでのクリスマスは優香たちとクリスマスパーティーしてただけだもんなぁ…。ちょっとどころか、だいぶ嬉しいなぁ…)
気分が最高潮に達するところらへんで執務室に着いた。いつも通り、ノックもせずに執務室へと入る。
白露「しっつれいしまーす!!」
優斗「何だ、誰か入ってきたかと思ったら茜かよ。せめてノックはしろよ…」
白露「ごめんごめん。あれ? 何でこんなに荷物が…?」
優斗「ああ、これか? ちょっと会議があるからその準備。あと悪いけども、クリスマスイブもクリスマスも俺いないから」
白露「…え?」
優斗「いやー、急に会議が入っちまってな。クリスマスぐらいはゆっくり休みてぇのに…」
茜は、その言葉を聞いた瞬間に一気に気分がどん底にまで沈んでいくのが分かった。しかし、机の上に置いてある資料には「任意参加」と書いある。
白露(そんな…。クリスマスに会議に行かれちゃったら、デートに行けないじゃん…)
白露「あ、でも、「任意参加」って書いてあるよ。別に参加しなくてもいいんじゃ…」
優斗「いや、流石にそれはいかんでしょ…。まぁいいや、んでそっちの要件は何なんだ? なんか用事があるから来たんだろうけどさ」
白露「えっと、その…。もしクリスマス、空いてたら、一緒にイルミネーション見に行こうって誘いに来ただけ…」
優斗「ああ、なんか今年もイルミネーションやるみたいだな。まぁ、俺には関係ない話だ。カップルとかがたくさん行ってそうだな…」
白露「え、まぁ、うん…」
優斗「まぁ、俺も行けたら行きたいよ。けども、仕事と遊びを天秤にかけたらどっちをとるかって言うなら、もちろん仕事だな。まぁ、そういう事だ。悪いけど、優香たちと行ってくれ。まぁ、久しぶりに見れるから、あいつらも楽しみにしてそうだろ」
白露「そ、そんなぁ…」
優斗「どうした? そんなに残念そうな顔して」
白露「だって、初めてゆーくんと一緒にクリスマスを過ごせると思ったのに…」
優斗「あのな、茜。今さっきも言ったけども、仕事の方が今は優先順位は上だ。遊んでる暇はないんだよ」
白露「そんな…。じゃあ、私よりも仕事の方が上なの…?」
優斗「そりゃそうだろ。いくら恋人との予定が入ってるからといって、仕事に影響を及ぼすことはできない。分かったか? 分かったんなら、もう部屋に戻りなよ。俺もまだやることが色々あるからさ」
そう言われた瞬間。私の口から、思ってもいない言葉がでた。
白露「っっ…!! もう知らない!! そんなに仕事が好きなら一生仕事やってたらいいじゃん!! もう、ゆーくんなんか…」
白露「 い っ ち ば ん 大 っ 嫌 い ! ! 」
そう言って、私は執務室から逃げるようにして駆け足で部屋を後にした。
優斗「…は?」
優斗「何だったんだ、今の茜…。しかも、なんか大っ嫌いって言われちまったし…。俺、当たり前のこと言っただけなんだけどもなぁ…」
ーー執務室から駆逐艦寮の間の通路ーー
嫌い、嫌い、大っ嫌い!! 何なの、あれ!! 仕事、仕事って…。私よりもどんだけ仕事のほうが好きなの!?
そんなことをひたすら考えていた。けども、とある事に気づいた。
ゆーくんに「大っ嫌い」と言ってしまったことだ。
白露「あ…。やっちゃった…」
つい、思った事が口に出てしまっていた。そんな事思っていないのに。
確かに、ゆーくんに自分よりも仕事の方が上だと言われてしまったのは事実。けども、ゆーくんがそういう性格なのは昔から分かっていたはずだ。それなのに、感情に任せるままその言葉が口に出てしまっていた。
白露「ど、どうしよう…。このままじゃ…」
謝らなきゃならないのは分かってた。急いで、執務室に戻る。けども、部屋の前には「入室禁止」と書かれているパネルが出されていた。
白露「ど、どうすれば…。も、もう今日は無理だから、明日にしよう。うん」
逃げるように、私は執務室のまえから去った。
ーー駆逐艦寮ーー
村雨「あ、帰ってきた…。アレ?」
茜お姉ちゃんが帰ってきた。けども、顔は笑顔じゃない。むしろ、悲しそうな顔だった。
村雨「どうしたの、茜お姉ちゃん。そんな泣きそうな顔になって…」
白露「別に…。何でもないよ」
村雨「でも、顔…」
心音「茜さん、何かあったんですか?」
白露「だから、何でもないってば!!」
村雨「…。嘘つき。茜お姉ちゃん、嘘つく時は、こっちを絶対に見ないから」
白露「…。分かったよ。全部…、話すよ」
茜は、由衣と心音ちゃんに今さっき起きたこと話した。由衣と、心音ちゃんは話を聞いている間はただ無言だった。
村雨「…」
心音「…」
白露「ごめん…。由衣、心音ちゃん」
村雨「まぁ、明日、謝れば大丈夫…。なはず」
白露「うん…」
心音「とりあえず、もう今日は遅いから寝た方がいいんじゃ…」
村雨「そ、そうね。じゃあ、おやすみなさい」
白露「うん…」
心音「お、おやすみなさい…」
白露「…」
部屋には1人だけになった。同室の優香は、今日は夜間警備のため夜遅くまで帰ってこない。
白露「…」
白露(どうしよぉ…。はぁ…)
そのまま、私はいつの間にか寝てしまっていた。気が付いたら、もう朝になってしまっていた。
(朝)
白露「いつの間に…。…あ、そうだった。謝りに行かなきゃ…」
部屋を出る。執務室へと向かう。けども、執務室には、誰もいなかった。荷物もなくなっていた。
白露「嘘、でしょ…」
(数十分前)
優斗「さて、と…。準備はもうできたし…。そろそろ移動するか。茜には申し訳ないけども…」
優斗は、すでに鎮守府を後にしていた。会議の会場である、大本営へと向かうためである。
優斗「茜にも、来てもらおうと思ってたけども…。昨日、あんな事があったから止めておくか。『大っ嫌い』って言われちまったから…」
昨日のことが離れない。ただ、ずっと心が痛い。大事な人に「大っ嫌い」って言われる事って、こんなに痛いのか…。
ただ、今だけは忘れるしかない。仕事に行かなきゃなんないんだ。引きずりすぎると悪影響になっちまう…。
そうして、俺は鎮守府を後にした。
(今)
白露「そんな…。まだ行ってないと思ってたのに…」
急に涙が出てきそうになった。謝りたいのに。謝るんなら、ラインでもなんでもいいはずなのに。
けども、ゆーくんに会って謝らなきゃいけない。そうとしか思えなかった。
なのに。ゆーくんはもう行ってしまった。クリスマスが終わるまでゆーくんは帰ってこない。
心がボロボロになっていくのを感じていた。私は、ただ黙って部屋に戻ることしか出来なかった。
ーー部屋にてーー
白露「…」
時雨「あ、お姉ちゃん帰って来たんだ。…どうかしたの?」
白露「ゴメン。今はちょっと…。1人にしてくれる?」
時雨「わ、分かったよ…。じゃあ、由衣たちの部屋にいるね」
白露「ゴメンね…」
優香が部屋から出ていく。また、部屋には1人になった。
白露「うぅ…。っ…。なん、で…。あん、な、こと…」
涙が、あふれ出た。何であんなこと言っちゃったんだろう。そう後悔しても、もう遅すぎた。辛い。つらいよ…。
今はただ、泣くことしか出来なかった…。
ーー大本営ーー
優斗「…」
祐樹「んで、これがあーでこーして…」
優斗「…」
祐樹「じゃあ、この件について優斗から意見を…。おい、聞いてんのか、優斗!!」
優斗「うおっ…。びっくりした…」
祐樹「びっくりしたじゃねぇよ…。会議中にボケーっとすんな」
優斗「ワリィ…」
会議中。全然集中出来なかった。
白露『大っ嫌い!!』
優斗「っ…」
あの言葉が、ずっと心のどこかに突っかかっている。忘れてしまえば、あの時はあんなことあったなー。なんて事で済まされる事だ。
けども…。
痛い。ただ、ひたすらに痛い。心が締め付けられる感じがする。
いつの間にか、会議は終わっていた。この後は、集まった奴らでクリスマスパーティーするらしい。けども、参加する気にはなれない。
いや、参加なんかしたくない。今は、1人になりたい。
辛くて、泣きそうだから。
ーー優斗の鎮守府ーー
白露「…」
外では、皆の楽しそうな声が聞こえてくる。けども、あっちには行きたくない。
行ったところで大好きな人はいないから。帰って来てくれたとしても…。
もう、会わせる顔さえもないよ…。私には。
茜が1人で部屋の中で泣いている時。パーティーに参加せずに、ただ黙っている2人がいた。
時雨「…」
村雨「…」
時雨「そうとう、深刻みたいだね」
村雨「ええ…。立ち直れるには、ちょっと時間がかかりそう、ね…」
時雨「まぁ、優斗も優斗だよ。そもそも、女の子にほぼデートのお誘いみたいな事言われてるのに、仕事を優先するなんてさ…。失望を通り越してるよ」
村雨「まぁ、優斗はそういう人だもんね…。けども、茜お姉ちゃんもつい言っちゃったって感じだもんね…」
時雨「クリスマスイブなのに、こんなにもつらい事になるとはね…」
村雨「もっと、悪くならなきゃいいけども…」
ーー大本営ーー
優斗「はぁ…」
ため息がつい出た。それをして何になるんだ。
優斗「…」
優斗「って!!」
ひたすらどうすればいいのか考えていたら、後頭部に何かが飛んできた。
なんだこれ…。缶コーヒー?
祐樹「よっ」
優斗「痛ってえよ!! 急に缶コーヒー投げつけてくる奴がいるか!!」
祐樹「うるせぇよ。そうでもしねぇとお前は、気づかないだろ」
優斗「まぁ…。はぁ…」
祐樹「ったく…。今日のお前、おかしいぞ。会議では集中力欠かして。いざ、話しかけるとテンションはどん底で」
優斗「何なんだろうな…」
祐樹「何なんだろうな、じゃねぇ。何かあったんだろ」
優斗「まぁ、うん…」
祐樹「まぁ、俺が相談相手になれるかどうかは分かんねぇけども…。まぁ、話は聞いてやるよ」
優斗「えっと、実は…」
俺は、ここまであった事を全て話した。
仕事のことを優先したこと。茜に大っ嫌いって言われたこと。茜に何も言わずにここに来たこと。
言い終わった瞬間。祐樹の拳が俺の頬に直撃した。
優斗「痛ってぇ…。何すんだよ!!」
祐樹「お前、馬鹿か!! お前の天秤はおかしいんだよ!!! 何仕事優先させてんだよ!!!!」
優先「お、おお…。まぁ、はい…」
祐樹「ったく…。白露が可哀想だぜ。こんな奴が彼氏なんてな」
優斗「んだとぉ…」
祐樹「だって、クリスマスに仕事を優先にされて、自分は完全に後回し。そんな事を、お前がされたらどうなんよ」
優斗「そ、それは…」
祐樹「…。まぁ、お前がそういう奴なのは俺も分かってるよ。変に真面目なトコ。けども、たまにはそんな事忘れてしまえばいいのにさ。そういうやつが、今回は休めるように強制参加にしなかったのにな」
優斗「…」
祐樹「まぁ、今日ももう遅いから明日の朝にでも帰りな。別に、お前がいなくなっても会議には影響ないしな」
優斗「ちょ、おま…。しれっと俺を傷つける事言うんじゃねぇ!!」
祐樹「俺は知りませーん」
優斗「こんのぉ…」
祐樹「ほらー、はよ寝ろー。そしてさっさと帰れー」
優斗「こんにゃろぉ…」
こうして、俺はクリスマス当日の朝に急遽帰宅する事になったのだった。
(翌朝)
優斗「じゃ、あんがとな」
祐樹「おうよ、早く帰ってやれよ」
優斗「…ああ」
そう言い残し、俺はいつもの鎮守府へと向かっていった…。
ーーほぼ同時刻、優斗の鎮守府にてーー
白露「イルミネーションを一緒に見に行く? …なんで?」
時雨「確かに、優斗と一緒に見れないのは残念だよ。けども、このままお姉ちゃんが苦しんでいるのを見るのは…。僕はつらいんだ。だから、綺麗なモノでも見て落ち着くのもありかな~。って」
村雨「あ、もちろん私たちも行く予定よ? 白露型全員…でね」
白露「けども、私…。遠慮しとくよ。行ったところで…。悲しくなるだけだから」
村雨「まぁ、そう…だけども…」
夕立「でも、皆で行った方がいいに決まってるっぽい!! 茜お姉ちゃんがなんで落ち込んでるのかは知らないんだけども!!」
春雨「私も、咲お姉ちゃんと同意見です。やっぱり、私たちは、皆一緒じゃないと…。なんかつらいです…。はい」
五月雨「…。茜お姉ちゃんがいないと…。なんか、その…。まとまれないって言うか…」
海風「姉さんがいて、ようやく白露型としてまとまれるっていう事ですね」
山風「皆一緒じゃなきゃ、嫌、だよ…」
江風「姉貴の言う通りだぜ!! 茜姉貴!!」
涼風「だから、さっさと行くぜ!!」
白露「ちょ、皆、ひ、引っ張らないで~!?」
こうして、私は、(半分強引に)連れ出された…。まぁ、こうでもなきゃ、私をここから出せないと思ったのかなぁ…。
時計は、お昼頃を指している。イルミネーションの点灯は、9時から。
まぁ、遊ぶ場所は色々あるから、時間は潰せる…かな?
~~その頃の優斗(移動中)~~
優斗「さて、と…。何も持たずに帰るのも…。なんか、アレだな。なんか買っていこうかな」
電車に乗り込んだのはいいものも、茜に対して「帰って来たぞー」なんて言えるわけもない。
せめて、クリスマスだから、プレゼントを送るぐらいなら…。少しは話せるかな…?
俺は、そんな事を考えているといつの間にか次の駅で降りていた。まぁ、どっちにしろ降りていただろうけども。
優斗「まぁ、この辺にはプレゼントを買えそうな店はチラホラあるし…。ちょっとだけ見ていくか。けども、茜が欲しそうなモノ…。何なんだろうか…?」
茜が欲しそうなモノ。俺にはまったく分からなかった。とは言っても、茜の事だから『ゆーくんがくれたものなら何でもいいよ』って言いそうだもんな…。
優斗「あ、アレなら…」
茜がいつもつけてるアレ。俺と関係もあるアレ。それなら、茜も少しは…。喜んでくれる、かな?
とりあえず、アレが売ってそうな店を探すことを始めた。
(数時間後)
優斗「ようやく見つけられた…。って、もうこんな時間かよ!? ヤバい、早く帰んないと…」
そんな時、スマホの画面のとある写真が目に入った。
例のイルミネーションに行った時の画像だった。しかも、数年前の画像。俺たちが小学生だった頃の。
優斗「…。もしかしたら、行ってんのかな。ここに」
もしかしたら。を考えてる暇はない。俺は、行き先を変更することにした。
優斗「一か八か行って見るか。イルミネーションやってるショッピングセンター」
急いで、駅の方へと向かった。イルミネーションの開始は9時。今の時間は、6時半。まだ、余裕で間に合う。俺は、電車に乗り込んだ。
けども、1、2駅経った時。電車は急に停車した。
優斗「あり…? ここ、停車駅じゃねぇぞ…?」
車掌『ただいま、〇〇駅にて人身事故が発生したため、停車しております。安全が確認でき次第、発車致しますので、しばらくお待ちください』
優斗「…マジかよ」
まぁ、30分ぐらいで解決してくれるだろうと思っていた。けども…。
電車が停車してから、1時間経過した。
優斗「おいおい…。まだ動かないのかよ…?」
もうすぐ、8時になる。まだ間に合うっちゃ間に合うけども、ギリギリになりそうなのが今の状況だ。まぁ、多分…。大丈夫だろ。
車掌『安全を確認したため、運転を再開致します』
優斗「やっとか…」
なんとか電車が動き出した。時計は、8時をちょっと過ぎたぐらい。まだ大丈夫、なはず。
けれども、俺の運の悪さは…。こんな程度じゃ済まされなかった。
次の駅に着いたその時だった。
車掌『信号故障のため、しばらく停車致します。発車までしばらくお待ちください」
優斗「…は?」
今度は信号故障かよ!? また、運転再開を待ってたら間に合わねぇぞ!?
とりあえず、電車から降りる。バス乗り場へと向かうが、人が多すぎて乗れそうにない。タクシーも、同様だ。
優斗「クッソ…。もうちょっいなのに…。なんでこうなるんだよ…!!」
あと、たった数駅の距離。けども、歩いて行ける距離ではない。
絶望していると、電話が鳴った。相手は、祐樹だった。
優斗「もしもし…?」
祐樹『あ、もしもし、俺。もう着いたか?』
優斗「いや…? 電車が止まって、どうしようもない状況だよ」
祐樹『はぁ!? マジかよ…。 …今、何駅にいるんだよ』
優斗「へ?」
祐樹『だから、何駅にいるか聞いてんだよ!!』
優斗「え、えっと…。〇〇駅…」
祐樹『…分かった。そこで待ってろ』
優斗「え?」
祐樹『動くなよ!!』
優斗「は、はぁ」
そう言うと、祐樹は電話を切った。まさか、迎えに来る気か? いや、アイツ、会議まだ終わってねぇだろ…。
ーー大本営ーー
祐樹「由良ー!!」
由良「ど、どうしたんですか。急に叫んで…」
祐樹「ワリィ、会議の進行、大淀と一緒にやっててくんない? ちょっと緊急事態が発生したから」
由良「緊急事態? 何かあったんですか…?」
祐樹「まぁ、な。本当にスマン。じゃあ、時間無いから!!」
由良「あ、ちょっと…」
祐樹は、由良にそう言い残すと車に乗り込んでアクセルを踏み込んだ。
祐樹「高速使わねぇとヤベぇな…。アイツの事だから、イルミネーション行くって言ってそうだし…。開始は9時…。高速使って何とか、て感じか…」
高速道路を法定速度で走っていく。高速は、空いていたおかげで割とすぐに優斗のいる駅に着いた。
祐樹「優斗ー!! 来たぞー!!」
優斗「うるせぇ! いちいち叫ばんでも分かるわ!!」
祐樹「って、時間がねぇ!! 早く乗れ!!」
優斗「お、おう…」
とりあえず、言われるままに祐樹の車に乗り込む。まぁ、コイツの運転は見たことねぇけども。
祐樹「まだ、免許取り立てだから、気をつけろよ!!」
優斗「…へ?」
祐樹「おっしゃ行くぜー!!」
優斗「そう言っておきながら法定速度は守るのね」
祐樹「まぁ、破ったら警察のお世話になっちまうからな。って、そんな事を言ってる場合じゃない!! 行くぞ!!」
優斗「りょ、了解…」
こうして、俺を乗っけた祐樹の車は、ショッピングセンターへ向けて出発した。
時刻は、8時半。まだ…。いけるはず。
ところがどっこい、まーた上手くいかない。
なんで俺の運の悪さはこうも連鎖するんかね…。
祐樹「渋滞しとるやん…。全然進まねぇ…」
優斗「まぁ、電車が止まってるから仕方ないんじゃねぇか…?」
祐樹「いや、冷静に言ってるけども時間大丈夫なのかよ!?」
優斗「…。ハッキリ言うとヤバい」
祐樹「マジかよ…」
いつもの道だったら、もう着いてもおかしくはない。時間は残酷にも、どんどん過ぎていく。
優斗「…」
祐樹「クッソ…。抜け道とかあればいいのに…」
優斗「祐樹、こんな事言うのもアレなんだけども…。ここで降りるわ」
祐樹「は? いや、でも仕方ねぇか。分かった。とりあえず、降ろせそうなとこまで待ってくれ。そこで降ろす」
優斗「サンキュー…」
何とか渋滞から抜け出して、コンビニに入った。俺は、すぐに走り出せるように準備しておく。
祐樹「じゃ、多分また来年だな」
優斗「おう。ホント、サンキューな」
祐樹「んな事言ってる暇あるんなら、はよ行けよ。時間ヤバいんだろ?」
優斗「まぁな。じゃ、また来年!!」
俺は、祐樹の車から降りると、プレゼントを握りしめて全力疾走し始めた。
時間は、もう8時50分。ホントにギリギリだ。
優斗(こっからなら、8分ぐらいで行ける…。はず!!)
途中、すっ転びそうになったが、なんとかこらえた。暫くすると、ショッピングセンターが見えてきた。
時刻は8時55分。思ってたよりも早く着けた。
けども、問題はここからだ。茜がここにいるかどうか分からないままここに来ちまってるワケだから、間に合ったところで無駄な動きになるかもしれない。しかも、ここに来ていたとしても何処にいるかは分からないので僅かな時間で捜しまわるしかない。
優斗(ちょっとキツいけども…。どうにかするしかねぇ。全ては…。俺の所為だからな!!)
そのままの勢いで俺は、ショッピングセンターに入っていった。
ーーイルミネーション会場にてーー
時雨「もう少しで、点灯みたいだね」
夕立「早くみたいっぽい!!」
村雨「咲、少しはしゃぎすぎよ…。もうちょっと落ち着きなさいよ…」
夕立「それは無理っぽい!!」
村雨「でしょうね…」
白露「…」
白露(もうすぐ点灯、か…。本当はゆーくんと一緒が良かったけどもなぁ…。けども、今さら言っても…)
時雨「お姉ちゃん、大丈夫?」
白露「まぁ…。少しは、ね…」
時雨「別にキツいんなら、見なくてもいいんだよ…?」
白露「けども、来ちゃったんだし見なきゃ損でしょ?」
時雨「まぁ、そうなんだけども…」
白露「あ、いっちばん前で見れそうなとこが!! ちょっと行ってくるね!!」
時雨「ちょ、ちょっと待ってよ…」
村雨「行っちゃったわね」
時雨「まぁ、いつものお姉ちゃんに戻ってたからいい、のかなぁ…」
村雨「笑顔が戻っただけマシ、と考えていいのかってとこね…」
時雨「さぁ、ね…」
~~茜移動中~~
白露「えっと、ここなら、麗に写真も撮れそうだね…」
イイ感じの所に来る事ができた。写真も綺麗に撮れそうだし…。けども、横には誰もいないのがちょっと悲しい…かな。
って、今はそんな事を考えてたら悲しくなっちゃうから…。今だけは忘れよう、うん…。
時間は、イルミネーション点灯の1分前になっていた。皆がイルミネーションの方にスマホとかを向けている。
私も、スマホをイルミネーションの方へと向けようとした。
そんな時だった。いつも聞いてたあの声が、聞こえたのは。
??「茜ー!!」
白露「え…?」
その声が聞こえてきたのとほぼ同じタイミングで、イルミネーションが点灯した。
イルミネーションの明かりが、私、そして…。
目の前に走って来たいっちばん大切な人を照らした。
優斗「なんとか…。間に合った…。のか…?」
白露「な、なんで…。なんでゆーくんがいるの!?」
優斗「急いで帰って来たからな…。まぁ、今はそんな事はどうでもいいわ。イルミネーション見ようぜ」
白露「え、あ、うん…」
思ってもない事が起きてる所為で、頭の整理がまったく追いつかないよ…。けども…。
数時間前までは横にいないと思っていた大切な人が、今はいる。ただそれだけで満足だよ…。
優斗「あ、そうだ。手でもつなぐか」
白露「ふえ!?」
ゆーくんが私の手を握ってくる。走って来たせいなのかな。
ゆーくんの手は、これまで握ってきた手の中でも…。いっちばんあったかい気がする。
手を繋いだ瞬間から、顔が真っ赤になっていくのが自分でも分かる。
優斗「あ、そう言えば渡すもんあるんだった…。まぁ、あそこにでも座ってから話すか」
白露「う、うん…」
ゆーくんが私の手を引く。ただ、無言でついていくことしか出来ないけども…。ね。
優斗「んで、コレ…。喜んでくれるかどうかは、分かんねぇけども…」
ゆーくんが座ってからすぐに、ラッピングされた箱を渡してきた。
白露「開けても…いい?」
優斗「別に大丈夫だぞ…」
開けて見ると、中には黄色のカチューシャが入っていた。初めて貰った誕生日プレゼントとほぼ同じモノだった。
白露「これって…」
優斗「だって、ボロボロになってただろ? まぁ、思い出がたっぷり詰まってるやつだから、簡単には変えられないだろうけども…。…茜?」
白露「っ…。ひぐっ…」
優斗「茜!?」
気が付いたら、涙が出ていた。
白露「ごめ、ん…。だって、嫌われちゃったかと、思ってたからぁ…」
優斗「バーカ。嫌いって言われただけで嫌いになるぐらいなわけあるわけないだろ…。そもそも、今回の件は完全に俺が悪いんだし…。その…。ゴメン、な。仕事を優先させちまって…」
白露「ううん。私も、あんな事言っちゃってゴメン…。あ、そう言えば…。私もプレゼントがあるんだ…」
そう言うと、私は持ってきていたマフラーをゆーくんに渡した。
白露「その…。私が編んだんだ…。気に言ってくれるかどうかは分かんない、けども…」
優斗「気に入るもなにも…。使うに決まってるだろ。けども…長すぎねぇか、コレ?」
白露「それは…」
そう言うと、もう片方の方を私の首に巻く。
白露「こうする、ため、だよ…」
優斗「んなっ…。その、これは…。なんつーか…。ちょっぴり恥ずかしいかな…」
白露「んもう、別に私は大丈夫だもんね!!」
だって…。だって…。
白露「いっちばん大好きなゆーくんと一緒だから、ね!!」
優斗「はは…。じゃ、そろそろ移動するか。そろそろ寒い」
白露「そ、そうだね…。あ、でも移動する前に…」
優斗「?」
ちょっぴり強引だけども。
ゆーくんの服の襟を掴んでこっちにゆーくんの顔を近づけた。
優斗「ちょっ…」
そして…。
チュッ…
ゆーくんの唇に、私の唇を重ねた。
白露「私からの…。もう一個のクリスマスプレゼント。受け取って…もらえた?」
優斗「…。急にキスするのは…。反則だろ…」
白露「サプライズプレゼントだから、ね…」
優斗「そんなら…」
白露「ふえ?」
今度は、ゆーくんが唇を重ねてきた。しかも、今さっきに不意打ちでしたキスよりも時間長めで。
白露「ん…」
優斗「これで…。どっちもどっち…だろ?」
白露「え、えっと…。その…」
優斗「? どうかしたか?」
白露「もっと、キスしたいなぁ~って…」
優斗「まぁ、ここではもうしないけども。帰ったらいつだって…してやるよ。キスだろうがなんだろうが」
白露「約束…。だよ?」
優斗「分かってるって…。じゃあ、帰ろうか。マジで寒い」
白露「…うん!!」
私のクリスマスは、こうして終わりを告げた。
…なんか忘れてる気がするけれども。
ーー2人の近くにてーー
時雨「なんで、あの2人はあんな所で堂々とキスしてるんだ…」
村雨「そもそも、なんで優斗が来てるのかも不明なんだけども」
夕立「愛の力っぽい?」
春雨「咲お姉ちゃんにそんな言葉が言えるとは思ってもいませんでした。はい」
五月雨「春香お姉ちゃん、何気に酷い事言ってるよね…」
海風「あの2人は、アレが正常運転なんでしょうけども…」
山風「イルミネーション、どころ、じゃない…」
江風「まぁ、いつもの2人に戻ったンだから良かっただろ」
涼風「って言うか、姉貴たちあたいたちの事忘れてないか?」
時雨「今は近づかない方がいいと思うよ、うん…」
江風「近づいたら、砂糖吐いて死ンじまうよ…」
海風「そんな事言わない、愛香…。って言いたいけれども、事実ですね…」
優斗「茜ー。行くぜー」
白露「うん!!」(笑顔で手をつないでいる)
時雨ら(…。もう結婚すればいいのに)
特別編 少女のクリスマス 終
優斗「さて、ここまで読んでくれた皆さん。ここまで読んでくださりありがとうございます。作者曰く、初めての10000文字以上で、とっても疲れたそうです」
白露「2019年は、暇ならもう一個投稿するかもしれないんだって」
時雨「まぁ、作者がもう一度体調不良にならない限り投稿するだろうけどもね」
村雨「投稿するなら、優斗と茜お姉ちゃんがイチャイチャしてるssを出す予定らしいんだけども…」
夕立「また見てくれる人の胃を破壊するっぽい?」
春雨「すでに作者のリア友さんが糖分過多で見たくないって苦情がきたみたいです、はい」
五月雨「コメント欄にも、砂糖を吐いてる人数人いますし…」
海風「今回もそうなる未来が見えますね…」
山風「今回吐いた砂糖の量で、ケーキ作れそう…」
江風「吐きすぎだろ、それ…」
涼風「とりあえず、最後の挨拶やろうぜ」
優斗「じゃあ、皆さん」
白露型「ここまで読んでくださりありがとうございました!!」
優斗&白露型「次回もお楽しみにー!!」
序盤からのお決まりの展開…さすがですね。エスプレッソ飲んでるのに口の中が甘々ですよw
次回も(イチャイチャを)楽しみにしてます。頑張って下さい!!
※1
イチャイチャもの以外が最近書けないんですよね…。まぁ、いいや!!
私は、サンタから
インフルエンザのプレゼントを貰いました。
体調に気をつけて、イチャイチャを書いて下さい。
※3
優斗「サンタさんよ…。アンタはなんてモンをプレゼントしているんだ…」