我慢は辛い(苦情編、第2話)
少しの我慢なら耐えられるかもしれないけれども、長い期間もある我慢って辛いよね。
優斗「…」
白露「…」
優斗「あ、この資料まとめておいて」
白露「うん、分かった」
執務室では、いつも通りのようでいつも通りではない状況が広がっていた。
それもその筈、今日から1ヶ月間は色々と茜と優斗は出来ない状況だからだ。
いつも通りにあだ名で呼び合う事も出来ないし、暇な時にイチャイチャする事も出来ない。
おまけに、今日が終われば明日からは今日みたいに、一緒に執務室で作業する事もほぼなくなる。
たった3つだけ禁止事項を付けただけでここまで苦しくなるとは2人は思っていなかっただろうけれども。
優斗(あー…。辛ぇわ…。茜が真横にいるのに、仕事以外の会話は出来ないなんてな…)
白露(なんで横にゆーくんがいるのに、何にも出来ないのぉ…。仕事も、もう終わるのに…)
執務室の中は、ほぼ無言だった。
言葉を交わしたとしても、作業関係の事か、時間を聞いたりするぐらいだけだ。
そのまま、時間はどんどん過ぎていく。
仕事は、もう9割程終わっている状態だ。けれども、残りの1割をここで終えてしまうと明日からやる事が1個も無くなってしまうので、書類整理などを同時にしながら時間を潰していった。
そうこうしているうちに、お昼になった。
優斗「もうお昼か。じゃあ、昼ご飯行くか」
白露「うん、分かったよ」
2人が執務室から出る。
いつもだったら、2人で色々喋りながら食堂に向かったり、一緒にご飯を作ったりするのだが今日ばかりはそれは出来ない。
今日は、手を繋ぐこともなく、話をする事もなく食堂に向かった。
食堂では、お昼ご飯時だったというのもありたくさんの艦娘らが昼食をとっていた。
ちなみに、白露とやってはいけない3つの事は艦娘全員に知らされているので、やってしまった瞬間に大批判を浴びることは目に見えている。
なので、優斗と茜はいつもの癖が出ないようにまた我慢しなくてはいけなかった。
優斗「じゃあ、俺はこれにするかな…」
優斗が先にメニューから選んで食券を買いに行く。
茜も食券を買ったが、いつものように同じものを買っていない。
頼んだものを受け取った後は、2人は別々のテーブルへと向かった。
優斗は、だれもいないテーブルに。茜は、他の白露型がいるテーブルに向かった。
優斗(久しぶりに1人で飯食うなぁ…。いつもだったら、茜と一緒なんだけれどもな)
1人で、黙々と食事を口に運ぶ。たった1ヶ月我慢すればいいだけなのだが、1日だけでもこんなに辛いと感じるとは思わなかった。
優斗(早く、1ヶ月経たないかな…。あー、茜と早く色々したいなぁ…)
食事を終えて、皿などを片付ける。
そして、1人で静かに食堂を後にした。
白露「はぁ…」
一方、茜はため息をつきながら優香たちと食事を続けていた。
時雨「お姉ちゃん…。今さっきからため息ばっかじゃないか…」
白露「だってさ、真横にゆーく…、提督がいれるのが今日以降はしばらくないんだよぉ…」
時雨(しれっとやらかしかけたね、お姉ちゃん…)
時雨「ま、まぁ、会えなくなるワケじゃないから…」
村雨「そもそも、これまでイチャイチャし過ぎたのがこうなる原因作っちゃってるだけれどもね」
夕立「ある意味、自業自得っぽい」
春雨「我慢は辛いですけれども…。茜お姉ちゃんなら、どうにかなると思います、はい」
五月雨「そうですよね。ところで、ご飯が甘いんですけれども…」
海風「愛海姉さん、塩と砂糖を間違えてますよ…」
山風「茜お姉ちゃんの事だから、1週間ぐらいで我慢できなくなりそう…」
江風「それだったら、優斗だってそうだろ…。というか、優斗の方が割と先に折れそうな気がするンだけれども」
涼風「まぁ、そん時はそん時だろ…」
白露「それにしても、そんなに私たちって迷惑かけてたのかなぁ…」
時雨ら「え?」
白露「だって、大好きな人と一緒に色々する事って悪い事なのかなぁ…」
村雨「いや、少しだけなら許してもらえたかもしれないけれども、茜お姉ちゃんたちはし過ぎなのよ…」
白露「そうかなぁ…」
春雨「自覚症状無かったんですか!?」
白露「うん」
時雨「ダメだこりゃ…」
茜の言動を聞いて、優香たちは自分の姉が1ヶ月も耐えるのは無理だと確信した。
まぁ、こんな事を聞いていたら誰だってそう思うだろうが。
茜らは、食事を終えた後は自室へと戻っていった。
自室に戻ると、茜のテンションが更に下がっていってしまっていた。
白露「はぁ…」
時雨「部屋に戻ってきて、急にため息つかないでよ…」
白露「だってさ、明日からは提督と一緒にご飯も作れないし、お仕事も出来ないんだよ…」
時雨「決めたのはお姉ちゃんたちでしょ?」
白露「そうだけれどもさぁ…。うぅ…、もう少し緩くしておけば良かったぁ…」
時雨「まぁ、1ヶ月間我慢する事だね。じゃあ、僕は執務室に行って来るよ」
白露「なんで?」
時雨「明日の秘書艦は、僕みたいだからね。色々と準備とかあるから」
白露「そう…」
部屋から出ていく優香を見送ると、部屋で茜はベッドの上に寝転んだ。
白露「明日から、しばらくは一緒にいれないのかぁ…」
我慢しなきゃいけないのは分かっている。
みんなに迷惑をかけてしまっていたのなら、改善するために我慢する事も大切だとは分かってはいるけれども…。
白露「やっぱり、辛いなぁ…」
いつも通りの日常が、1ヶ月の間はいつも通りじゃなくなる。
大好きな人が近くにいるけれども、何も出来ない。
抱きしめたくても、抱きしめられない。夜に雷が鳴っていても、ゆーくんの所に行けない。一緒にご飯を作る事もダメ、手を繋ぐ事も出来ない。
こんな状況は、自分にとってはもはや、地獄に近い。
白露「はぁ…。嫌だなぁ…」
ため息が止まらない。大好きな人と何も出来ないのが1ヶ月間続くだけ、と言葉に表すだけだったら簡単だけれども、実行してみると1日目からここまで苦痛を感じるとは思わなかった。
白露「あー、もう…」
枕を思いっきり抱きしめる。
本来だったら、1週間の内の半分ぐらいは優斗に抱きついて寝るのがいつも通りだった。
それも、出来ない。
白露「辛いなぁ…。まだ1日も経ってないのに…」
でも、同時にこれほど自分は優斗の事を好きになっていたんだという事を感じた。
好きという一言では抑えきれないくらい、大好きだったんだ、私。
ハグとか、キスとか、そんなモノだけじゃ我慢できないくらい、互いが互いを求めあっているのが今の私とゆーくんなんだ。
白露「やっぱり、ゆーくんの事、好きすぎて我慢できる気がしないよぉ…」
枕を抱きしめながら、ベッドの上で転がりまくる。
好き、大好き、本当に大好き。我慢しなくちゃいけないけれども、想いがまったく抑えれそうにない。
白露「けども、我慢しなくちゃ、またゆーくんとイチャイチャできなくなるかもしれないから…。頑張らなきゃ」
好きという想いを意地でも押さえつける。我慢しなくちゃ、と自分に言い聞かせる。
そうすると、少しだけだが我慢できそうな気がしてきた。
そうこうしているうちに部屋に、優香が戻ってきた。
白露「あ、おかえり」
時雨「ただいま…」
帰ってきた優香は、あまりいい表情ではなかった。
白露「どうかしたの、優香?」
時雨「いや、やる事がなさすぎるんだよ! 執務室で、秘書艦がする事聞いてきたけれども、ほぼ優斗がやってるから明日から執務室に行っても何もやる事がないって聞いたら、そりゃこうなるよ…」
白露「まぁ、私と提督でほとんど終わらせてたからね…」
時雨「ま、まぁ、明日から頑張ってね。お姉ちゃん」
白露「う、うん…」
こうして、我慢の1ヶ月間が始まってしまった。
優斗と茜は、どうなる事やら…。
(次回に続く)
由衣「今日は、私たちが次回予告担当ね」
愛香「しっかし、姉貴たちは大丈夫なのか?」
由衣「た、たぶん大丈夫なはず…」
愛香「嫌な予感しかしないンだよな」
由衣「じゃあ、次回予告。次回、『我慢しなくちゃ…』に続くみたいね」
愛香「タイトルがちょっと怪しいンだけど」
由衣「た、たぶん、大丈夫だから!! じゃあ、皆さんここまで見てくださりありがとうございました!」
愛香「次回も、よろしく頼むぜ!!」
由衣・愛香「また、来週ー!」
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