絶望から、這い上がれ。(第14話)
就活に失敗したので初投稿です。(初投稿ではないです)
皆様、新生活はどうでしょうか。私は職探し中です。
(前回までのあらすじ)
暴走した優斗を止めるため、祐樹が優斗の元に出向く。
祐樹は、暴走した優斗相手に一方的に攻撃を行い、戦闘不能にし、規律に背いたとして優斗を殺害しようとする。優香たちが止めようとするが、狂気をまとった祐樹によって心身ともにダメージを負ってしまう。
戦闘後はどうにかして、優斗らを救出できたが絶望が全員を包んでいた…。
部屋の中では、誰一人話す事はなかった。
そんな重く、暗い部屋には外から太陽の光が差し込み、窓からは綺麗な青空が見えていた。
この一夜、誰も眠っていない。それでも眠気は感じなかった。
眠気さえも完全に消し去ってしまうような絶望がココにいる全員を包み込みんでしまっているからだった。
レ級「戻ってきたぞー。って、やっぱ暗えな」
ヲ級「まぁ、こんな事になってしまっては皆さんが暗くなってしまうのは仕方がないですね…」
どん底に沈んでいる部屋に、外で見張りをしていたレ級とヲ級が戻ってくる。
この2人はまだ完全にどん底に沈みきってはいないせいか、まだ顔色も暗くはない。
しかし、眠れはしなかったのか目の下にはクマができていた。
ーー別室ーー
白露「あー、よく寝たぁ…」
夕暮「おはよー…」
白露「あ、起きたんだ。夕暮ちゃんも」
夕暮「私も今さっき起きたばっかなんだけれどもね。それよりも、他の人が見当たらないんだけれども…?」
白露「ご飯とかじゃないの?」
夕暮「まぁ、そうかもね。とりあえず、着替えて外に出ようか」
白露「りょーかーい」
着換えを済まし、部屋から出る。
だが、色々な部屋を見て回っても誰もいない。同じ部屋で寝てるはずの優斗もベッドにおらず、そもそもベッドが使われた形跡もなかった。
夕暮「あれ…? どこに行ったのよー?」
白露「さぁ? 私に聞かれても困るよ」
夕暮「もしかして、上の階とか?」
白露「それは、あるかもね」
この階にいなければ、上の階にいるかどこかに別の場所に行っているのかの2択になる。
けれども、優斗がどこかに行くなら何かしらの連絡があるハズだ。なので、上の階にいる確率が高いと踏んだ。
白露「えっと、上の階に行くエレベーターってどこだったけ」
夕暮「いや、私が知ってるワケないでしょうが…。もしかして、茜も知らないとか?」
白露「どこかにあるって話は聞いたけれども、どこかにあるのかは聞いてなかったから…」
夕暮「そこ、大事なトコじゃない…。なんで聞いてなかったのよ…」
白露「ココから動くことが滅多になかったからね」
夕暮「まぁ、そうだろうけれどもさぁ…」
今さっきは優斗たちを探し回ったのに、今度はエレベーターを見つけるためにあちこちを歩き回らなければならなくなってしまった。
白露「エレベーターはどこだー!」
夕暮「叫んで出て来るんなら、私も叫ぶよ。うん」
白露「それどころか迷子になってる気もするよ」
夕暮「ソレは否定できない」
あちこちを歩き回っていると、研究室のような部屋に来た。
その部屋の中を歩き進めていくと、1つのドアが目に入った。
ドアノブに触れて見ると、特に何もなく開きそうだったのでそのままドアの先に進むことにした。
白露「とりあえず、ココの先の方見てみようか」
夕暮「何かあればいいけれどもね」
ドアを開けるとすぐに、エレベーターがあった。
止まっている気配はなく、ボタンを押すと何事もなく動き出した。
白露「これで上に行けるみたいだね」
夕暮「けれども、上に一般人とかいたらどうするの?」
白露「でも、この時間に一般人がいるかなぁ」
夕暮「そういえば、そうね。じゃあ、行きましょ」
2人が乗り込み、1階のボタンを押す。
地下から1階に向かってエレベーターが動き出した。30秒も経たずに、1階に到着する。
白露「着いたー!」
夕暮「さて、捜索再開ね。会議室とかにいるかもしれないかも」
白露「うーん。とりあえず、二手に分かれて…」
夕暮と話していると、少し先に明りがついている部屋が1つだけあるのが目に入ってきた。
白露「あれ? もしかしてあの部屋にいるんじゃない? 電気もついてるし」
夕暮「確かに」
白露「じゃあ、先に行って来るよー」
夕暮「ちょ、ちょっと待ってよ!?」
いつものテンションで、部屋のドアを開ける。
その後ろから夕暮がこけそうになりながら茜に突っ込むような形で部屋に入った。
白露「しっつれいしまー…す?」
夕暮「ちょ、いきなり入るって…。アレ?」
部屋に入ると、そこには目を疑うような光景が広がっていた。
心身ともにボロボロになっている妹たち。腕などに包帯を巻いている前元帥。目の下にクマが出来ているヲ級とレ級が部屋にはいた。
白露「えっ…? ちょっ、な、何が…」
前元帥「あぁ。起きたのか、2人」
白露「な、なんで優香たちが? しかも、ケガもしてるし…」
前元帥「…話せば長いけれども、聞くか?」
重々しい空気の中、前元帥が口を開く。
白露「何が…。何があったんですか」
前元帥「実は、な…」
(約30分後)
白露「そ、そんな…」
夕暮「ウソ、でしょ…?」
前元帥「嘘じゃない。本当の話だ」
白露「じゃあ、ゆーくんは今…」
前元帥「生きてはいるが、今は治療室だ。結構、身体にダメージを負ってしまっていたからな…。けれども、お前の妹たちの方も…、深刻だ」
横に座ったまま、何も出来なくなってしまっている優香たちに視線を移しながら前元帥が話す。
白露「そんな、そんな事って…」
膝から崩れ落ちた。立ち上がれない程の力が上からかかっているワケでも無いのに、立ち上がれない。
白露「なんで、なんで…。どうして、こんな事に私以外が…」
夕暮「茜ちゃん…」
前元帥「それと、もうここからは移動しなきゃならない。あのバケモノも、祐樹も俺がココにいるって知っちまったからな…」
白露「み、皆はどうすれば…?」
前元帥「…このままだと、どこかの病院に預けなければマズイかもな。精神的に大きなダメージを負いすぎてるからな…」
白露「そ、そんな!?」
前元帥「悪いが、ココにいたドクターでも心のダメージは流石に治療は出来ないんだ…。本当に、すまない」
白露「嫌だよ! 優香も由衣も、咲も! みーんな大事な私の家族なんだよ!! 家族を置いて、自分だけどこかに行くなんて…。そんなの、無理に決まってるよぉ…」
夕暮「でも、コレは仕方がないんだよ。じゃあ、茜ちゃんが皆の心を癒せるの?」
白露「それは…。それはぁ…」
夕暮「皆の受けた事は、私たちが返すしかないんだよ。今の皆じゃ、今度はまた私たちみたいになるんじゃなくて、本当に会えなくなっちゃうかもしれないんだよ!!」
白露「うぅ…。みん、なぁ…」
前元帥「…俺は、荷物をまとめる準備をしておくよ。この後どうするかは、2人に任せる」
部屋から前元帥が出る。部屋の中には、白露型姉妹艦と心音、夕暮だけが残された。
白露「…ゴメンね。私があの時起きていたら、こんな怖い目に合わなかったかもしれないのに…」
時雨「…」
震える優香たちをなだめるような優しい声で話しかけるも、誰も反応してくれない。
これまで経験したことの無い恐怖には、自分の声では妹たちには今は届かない。
夕暮「きっと、みんな治して戻って来てくるよ。だって、茜ちゃんと会いたい気持ちは完全に消えてないと思ってるから」
白露「そう、だよね」
夕暮「だから、今だけは少しの間だけ「さようなら」するしかないんだよ。今動ける私たちがあの時こうすれば、なんて考え続けちゃったら、今度は茜ちゃんや私も…。壊れちゃうよ」
白露「…うん」
この日を最後に、私は優香たちとしばらくの間「さようなら」する事になった。
翌日、私と夕暮ちゃん、前元帥らは別の場所に移動した。
けれども、その移動した場所はまさかの場所だった。
白露「…なんでよりによってココなの!?」
前元帥「ココが立地的にちょうどいいんだよ。まぁ、祐樹がほったらかしてくれてホントに良かったけれどもな」
夕暮「もしかして、ココ知ってるの?」
白露「だって…。ココ、昔私がいた鎮守府だからね!?」
夕暮「え…。えぇぇぇぇぇ!?」
移動して来たのは、少し前にあのバケモノのせいで一部が破壊されてしまっている自分たちの鎮守府だった。
前元帥「まぁ、水と電気は止まってるだろうけれども、どうにかなるだろ」
白露「いやそんな事は気にしてないよ!?」
前元帥「なんだ。何か問題があるのか?」
白露「そもそも、なんでココなんですか!?」
??「その点については…。俺が説明しよう」
別の車から、1人の男が助手席から降りてくる。
白露「…えぇ!? 何で、なんでゆーくんが!?」
優斗「まだ痛いけれども…。まぁ、動ける程度に回復してるから大丈夫だ」
白露「そ、それは分かったけれども…。なんでココを選んだの?」
優斗「あのバケモンを退治するには、ここが本当に立地がいいんだよな。本当に。周りに島とかがないから、景色もいいしこの鎮守府付近まで誘い込めれば、周りから袋叩きにできるような地形になってるからな」
白露「そうなんだ…。でも、何でゆーくんはこんなにすぐにケガが…」
優斗「実は、前元帥の言うドクターに治療してもらってな」
前元帥「え? もう来てたん?」
医者「来てましたよ。気づいていなかったんですか…。あ、それとデータとか解析しておきましたから」
優斗「それと、茜にいいお知らせだ」
白露「いいお知らせ…? もしかして、何か凄い事でもあった?」
優斗「実は、この人が春香を治してくれた張本人だったんだ。だから、茜や夕暮の深海棲艦化した部分も治せるかもしれないんだ」
白露「えっ…。それって、元に戻るって事?」
医者「まぁ、簡単に言えばそうですね。けれども、治すには条件がありますね」
白露「条件…? 何なんですか、ソレは」
医者「完全に治す事は可能ですが、治すには艦娘を止めなければならない事になってしまう事ですね」
夕暮「艦娘を、止める…?」
医者「はい。今、あなた達は身体の半分が深海棲艦化している状態ですが、深海棲艦化した時に装備していた艤装がそのまま身体の一部として身体に取り込まれてしまっている状態なんです。そのため、治すにはまず艤装を認証するために脳に埋め込まれているチップを取り出さなけれないけないんです」
優斗「艦娘になる時にやった手術で埋め込んだヤツだな。けれども、このチップを外すと艤装の認証が出来なくなる。だから、退役した艦娘と同じ状態になるって事だ」
医者「ソレでいいのなら、治療しますが…」
白露「…いや。まだ遠慮しておきます」
夕暮「まぁ、ここで治しちゃったらあのバケモノ相手に何も出来なくなっちゃうしね」
優斗「…そっか。じゃあ、深海棲艦化した方の部分の血液とかって少しだけでもいいからもらえるか?」
白露「いいけれども。何かに使うの?」
夕暮「もしかして、変な趣味が…」
優斗「オイ」
医者「いや、この血を分析してあのバケモノ相手に有効な薬を作るんです。なので、協力してもらいたいという事です」
夕暮「まぁ、そういう事なら…」
2人分の血液を採り、ドクターは試験薬や何だかよく分からないモノを使って調べ始めた。
優斗「さて、俺らも荷物整理とかしますか。じゃあ、茜と夕暮も手伝いよろしく」
白露&夕暮「はーい」
3人が荷物整理をする中、その後ろ姿を見ながらドクターと前元帥は過去、一緒に過ごしていたとある提督の話をしていた。
医者「今度はあんな目には、合わせるわけにはいきませんね」
前元帥「あぁ。それにしても、アイツがまだ生きてたらこんな感じになってたのかもな」
医者「…時が過ぎるのは早いですね。本当に」
前元帥「本当だな。…それにしても、本当に似てるよ。流石、アンタの息子ってとこか」
空を眺めながら、言う。空からは、太陽が全員を暖かく照らしていた。
ーー大本営ーー
朱里「何で、なんであの鎮守府に艦娘がいるっていう反応が…?」
モニターに映る艦娘の艤装の信号を見た瞬間、大本営にいる朱里は恐怖を感じていた。
朱里「祐樹はまだ帰って来てないし…。私が行くべき、だよね…」
自室にあるモニターなどを片付け、艤装を展開して海へと向かう。
自分の鎮守府にいた艦娘は、ほとんどが深海棲艦化してしまっていてほぼ艦娘が0の状態になってしまっていた。
なので、自分自身の鎮守府では自分1人だけしか出撃できる状態でしかない。
朱里「もしかしたら、茜…。いや、そんな事は…」
小さな期待を抱きながら、朱里は海上を走っていった。
(次回に続く)
次回、「再開、そして秘密兵器?」に続きます。
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