絶望 開始。(最終章、第1話)
悲劇、開幕。
タイトルから察してください。
この鎮守府に来てからもう半年以上経った。
私の練度は、ここに来る前は80だった。けれども今、演習を終えた時点で99になった。
練度99。それはとある事が出来るようになる練度だ。
ケッコンカッコカリ。艦娘の能力を更に引き上げるモノ。
名前に結婚と入ってるワケだし、当然指輪だってある。一部の鎮守府では、本物の結婚式みたいにして渡すところだってあるみたい。
ゆーくんはどういう風に渡してくれるのかな?
演習が終わった後からずっとそんな事を考えてた。
「…ちゃん! お姉ちゃん!!」
白露「はっ!?」
時雨「まったく…。今さっきからずっとにやけててまったく話聞いてなかったでしょ…」
白露「はい…」
完全にやらかしちゃった。まったく聞いてなかった…。
白露「で、どんな話だったの…?」
時雨「『後で、俺の部屋に来るように』って、優斗から」
白露「え!? そ、それって…」
時雨「まぁ、そうなんじゃない? この鎮守府に他に渡す候補なんていないしね」
白露「カッコカリだけれども…。えへへ…\\\」
時雨「早く行ってきなよ。多分、優斗待ちくたびれてるよ」
白露「うん…!! じゃあ、行ってくる!!」
優香と別れて、執務室…。別名、ゆーくんの自室に向かう。
どうゆう風に渡してくれるのかなぁ…。って、ダメダメ!!
今考えたら、歩けなくなっちゃうからね!!
ちょっと、早足で移動しようかな。
執務室に早足で移動を始める。まぁ、距離がそんなにあるわけではないけれども。
…1分も経たない間に執務室についた。
一旦、深呼吸して執務室のドアをノックする。
優斗「どうぞー」
ゆーくんの声が返ってくる。ドアを開けて部屋の中へと入る。
優斗「珍しいな。茜がちゃんとノックして入って来るなんてな」
白露「た、たまにはちゃんとするよ!?」
優斗「いつもそうしてくれれば、いいんだけれどもな…」
白露「まぁ、それは置いといて…。私を呼んだ要件って何?」
優斗「ああ、その話ね…」
ゆーくんの声がいつもとは違う、真剣な時のトーンになる。
優斗「実は…」
白露「…」
次の一言がゆーくんの口から発されそうになった時、ゆーくんのスマホが鳴った。
優斗「ワリィ、電話みてぇだ。相手は…。祐樹?」
白露「べ、別に後回しでもいいから。とりあえず、電話に出なよ」
優斗「ワリィ…」
ゆーくんが執務室から出ていく。まぁ、緊急事態かもしれないから仕方ないよね?
少し経つと、また戻ってきた。
優斗「まさかの呼び出し喰らってもうたがな…。ちょっと出るぞ、茜」
白露「う、うん…」
まさかの更に後回しになっちゃった…。仕方ない…よね?
優斗「じゃ、ちょっと車出して来るから正面玄関かなんかで待っててくれ」
白露「りょーかい」
ゆーくんが着替えてから、外に出る。私も、それを追うような感じで部屋から出ようとした。
けれども、とある事に気が付いた。
白露「あ…。靴ひも切れてる…」
縁起悪いなぁ…。このままで出ていくのは流石に嫌だから、靴ひもを変えてから部屋を後にした。
外に出ると、ゆーくんが待っててくれた。待たせちゃったなぁ…。
白露「ゴメン、靴ひも切れちゃってたから変えてた」
優斗「別にそんなに急いでいないから、大丈夫だよ。じゃ、行くか」
ゆーくんと、私が乗った車は鎮守府を後にした。
祐樹の鎮守府には、車で20分ぐらいで着く。外はいい天気だなぁ…。
青空が広がってる。雲が1個もないや…。ホントにいい天気だなぁ…。
優斗「おーい。外眺めてるのはいいけども、もうちょいで着くぞー」
白露「え? もう着くの?」
優斗「いや、お前10分以上外眺めてたぞ」
白露「えぇ~? そんなに?」
優斗「まぁ、別にいいけどもさ。あ、着いた」
祐樹の鎮守府に着いた。
あれ。…おかしいなぁ。何故か妙な胸騒ぎする。なんか嫌な事が起きそうな気がする。なんでだろ?
帰れば、嬉しい事があるはずなのに。
なんでだろ…?
優斗「おーい。もう降りていいぞー」
白露「あ、うん…」
優斗「どうかしたか? 今さっきから難しい事考えてそうな顔だったけれどもさ」
白露「いや、何故か嫌な事が起きそうな気がするな~って」
優斗「それはないだろ…。起きたとしても、俺が足の小指をぶつけるぐらいで収まってくれ…」
白露「いや、結局嫌な事が起きてるよ!?」
優斗「確かに」
白露「まったく…。あ、祐樹が呼んでるよ」
優斗「ホントだ。じゃ、結構重要な話だからここの部屋の前かなんかで待っててくれ。どうせすぐ終わるだろうけれども」
白露「う、うん…」
ゆーくんと、とある部屋の前で別れると私は1人になった。
でも…。気になるよね? 重要な話って言われると。
コッソリ聞いても…。バレないよね?
ドアにコッソリ聞き耳を立てる。
優斗『んで、この指輪の事だけどもさ…。返却って結局できるんやね』
祐樹『いや、練度が99になったお祝いで送った指輪を翌日に返却したいって言われた時はビックリしたけどもな』
白露「…え?」
指輪を…。返却?
どういう事? ケッコンカッコカリに指輪は必要だよね。その指輪を返却するって事は…。
ケッコンカッコカリをしないって事!? そ、そん、なぁ…。
優斗『んで、別の話になるんだけれどもさ。例の件は結局どうなんだ?』
祐樹『ああ、その事ね。まぁ、前例がねぇからどうなるか分かんねぇけども大丈夫だろ』
白露「例の、件…?」
??「アレ? そこで何やってるの、白露ちゃん?」
白露「あ…。由良さん…」
由良「まさか、盗み聞き? 流石にそれはダメだよ?」
白露「あ、はい…」
流石に、由良さんがいる目の前でずっと盗み聞きするわけにもいかないから、移動した。
けども、頭の中から2つの事が離れない。
指輪を返却するって事。例の件の事。
例の件ってのは何を表してるのかが分かんないけれども、何か関係してそうな気がする。
けども…。指輪…。
なんで、なの…? 私には貰う資格はないの…? いっちばん、ゆーくんの事好きなんだよ?
なのに、なんで…? なんでよ…?
気がついたら、下を向いたまま走りだしてた。考えたくなかった。
けれども、指輪の事は頭の事から離れてくれない。
ーー同時刻、会議室ーー
優斗「さて、と…。じゃ、そろそろ帰るかな…」
由良「あ、白露ちゃんのところの提督さん…。って、そんな事言ってる場合じゃなかった…」
優斗「? どうかしたのか?」
由良「今さっき、白露ちゃんがどこかに走って行っちゃったんです!」
優斗「え? ちょ、何処に!?」
由良「あっちの方です!」
優斗「サンキュー! じゃ、行って来る!!」
祐樹「とんでもない加速で走っていったぞ…」
由良「それほど、白露ちゃんの事を大事に思ってるんじゃないですか?」
祐樹「だろうな」
優斗「ったく…。何処に行ったんだ…。急に走って行くってただ事じゃないはずだぞ…。何かあったのか…?」
祐樹の鎮守府から出る。広い道に出てきたのはいいけれども…。まったく姿が見えない。何処に行ったんだ?
茜の事だから、辛い事があったらどっかに行って1人で泣いて、けれっとして帰って来るのがオチなんだろうけれども、何故か変な胸騒ぎがする。
優斗「何か起きなきゃいいけれども…。あ、あれって…。茜だ!」
割と時間がかからずに、茜を見つけた。
ーー数分前ーー
白露「…。なんで逃げちゃったんだろ」
一人で、道を歩きながら呟いた。指輪の事から逃げる為? それとも、他の何か?
分かんないよ。辛いよ。
気がついたら、涙が目から溢れてきていた。
泣きながら、道を歩いていた。目の前の信号機が赤になっていた。危なかったぁ…。
少し待つと、信号が青に変わった。下を向いたまま、歩き出した。
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茜を見つけたので、そっちの方へと向かおうとする。けども、信号を渡っている茜に車が突っ込んでいっていた。
茜は、下を向いている所為で気づいていない。
優斗「危ねぇ!!」
気がついたら、俺は茜を突き飛ばしていた。
突き飛ばしてから少しした瞬間。
俺の身体は…。
宙を舞っていた。
白露「いったぁ…。急に突き飛ばすなんて…。って、え…?」
目の前では、車が大破していた。もしかして、私を助けてくれたの? え、でも…。私を助けてくれた人って…。
周りを見渡すけれども、誰もいない。まさか、車に…。
一気に背筋から変な汗が止まらなくなった。私の所為で、助けてくれた人が…?
大破した車の方へと向かう。けれども、見なかったらよかったと、今では後悔してる。
そこにいたのは。
血を流して倒れている、ゆーくんだったから。
白露「え? ね、ねぇ、う、嘘だよね?」
ゆーくんは、何も言わない。ただ、そこで倒れてるだけ。
白露「い、嫌だ…。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁぁぁ!!!」
目の前には、血を流して倒れるゆーくん。
救急車に運ばれて行くのを見送ったけれども、心臓が今にも止まりそうな気がする。
私の、所為、だよね…?
私が逃げなかったら、ゆーくんはこんな目にはあわなかった?
私が前を向いてたら、ゆーくんは車にひかれる事はなかった?
私が。私が。私が。私が…?
結局、私が悪いじゃん。なんで。なんで。なんで…。
(次回へと 続く)
さて、不定期投稿1発目になります。急に重い話になりましたが、これからもよろしくです。
今までの、イチャイチャを吹き飛ばす
ような展開が始まりました。
次回が楽しみです。
※1
イチャイチャをどっかに置いてきました。
俺より強いイチャイチャに会いに行く‼️
※3
どこにいるんだ…?