2021-03-28 04:02:56 更新

概要

無事に短大を卒業しました。なお、このssには関係ないです。


前書き

(前回のあらすじ)
深海棲艦の力を10分だけではあるが、得ることができた優斗。
そんな中、例のバケモノが施設を襲撃してくる。早速この力を使うが、10分を越えてしまい暴走してしまった。
暴走した優斗を止めるため、前元帥らが向かうが、今度はバケモノの出現を聞いて出撃してきた祐樹らに見つかってしまう。
そして、祐樹らと暴走する優斗、前元帥たちが集まる事になってしまった…。


真夜中の海上。月の光が海に映り、揺れている。

本来なら美しい光景であるのだが、今の状態ではそんな事を言っている場合ではない。


腕がグチャグチャになり、血に似た液体をまき散らしながらバケモンはいつの間にか隙を見つけて脱出してしまった。

海の上では、血のような液体を浴びながらも狂ってしまっている優斗、前元帥とレ級、ヲ級、そして祐樹と何人かの艦娘がいた。


時雨「ゆ、優斗…?」


村雨「何なの、アレ…。深海棲艦みたいになってるし、いつもの優斗とも違うし…」


祐樹「行くぞ。お前ら。あのバケモノ、そして深海棲艦の味方をしていたあの男を…。殺せ」


静かに、けれど怒りを込めて言葉を祐樹が発する。


夕立「で、でもあの人って祐樹のお父さんっぽい! そんな事できるワケないっぽい!!」


祐樹「深海棲艦の味方をした時点で、もう敵だ。そして、あの狂人を放っておいたらどうなるかも予測がつかない。だったら、何か被害が出る前に処分する方が手っ取り早い」


あの狂人と言って祐樹が指さした人物は少し前まで友人だった、優斗だった。

指さした瞬間、優斗は祐樹に襲い掛かった。


優斗「ハハッ…。人の事、指差してる場合、かぁ!?」


今の優斗は身体には何も問題がなさそうに見える。

しかし、深海棲艦のような思考回路になっているはずなので人間や艦娘だけを襲うはず。なのに、海上を動き回る目に映るモノ全てを葬り去ろうとする狂人と化している。


時雨「危ない!!」


周りにいる優香たちが祐樹を守ろうとするが、優斗のスピードに追い付けず何も出来なかった。


祐樹「…。お前は馬鹿か? 真っ直ぐ突っこんで来る、なんて」


しかし、祐樹はそう言うと、優斗の顔目掛けて拳を叩き込んだ。

真っ直ぐ突っこんでしまっていた所為で、優斗の顔にクリーンヒットした。


祐樹「お前は狂っても、真っ直ぐ突っ込む癖が無くならなくて助かったぜ。まぁ、そのおかげでお前をココで消せるけれども…。なっ!」


浮いた優斗の身体の腹に今度は膝を入れる。海の上で、優斗が苦しむ。

海上で膝をついている吐きこんでいる優斗の上から、今度は祐樹が背中にかかと落としを喰らわせる。

優斗が更に苦しむ。立ち上がろうとする優斗の頭を祐樹が足で踏みつけながら話始める。


祐樹「この程度で俺を倒せると?」


優斗「ゲホッ…。グッ…ウッ…ゲホ、ゲホッ…」


祐樹「言ってみろ、よおっ!!」


更に優斗の背中にかかとが落ちてくる。

海の上に再び優斗が叩きつけられる。


祐樹「永遠にナンバー2のお前がナンバー1に勝てるとでも?」


優斗「ガッ…。グッ…」


祐樹「それにしても、深海棲艦になった娘と脱走して、その娘を守るためだけにこんな無様なザマになるなんてな」


海上に立ち上がろうとする優斗を押さえつけながら、祐樹は話し続ける。


祐樹「さて、裏切り者はココで処分するか。じゃあ、永遠にサヨナラだな」


首元に、冷たいモノが当てられる。

今の優斗は、祐樹にあっさりと倒され、裏切り者の汚名を背負いながら殺されそうになっている。

いくら狂ってしまっていても、どれだけ力を付けたとしても、優斗は少し一般人よりも力がある凡人。最初から天才で、少しの努力で成長する祐樹に勝てるハズなんてない。


祐樹「ホント、裏切りなんかせずに深海棲艦化したアイツを倒せばこんな事にならなかったのにな」


カチャリという音が聞こえる。

その音で、恐怖が身体を支配する。だが、咄嗟に脳裏に浮かんだ茜との思い出がその恐怖から一気に解放する。


優斗「ダァッ!!」


一瞬で、祐樹の手に持っていた銃を弾き飛ばした。

急な反撃で、祐樹もすぐには反応出来ず、そのまま弾き飛ばされた銃は海に沈んでいった。


祐樹「へぇ…。抵抗する、か」


優斗「倒せる、か…。あんな事になっても、茜は茜だ…!!」


祐樹「おーおー、愛の力ってヤツで自我を取り戻したってヤツか? カッコイイねー。でも、もう無理だろ。その身体」


優斗「んなワケねぇ、だろ…。まだ、ま、だ…」


最後まで言い終えられずに、優斗は海上に倒れた。

深海棲艦の力がまだ抜けきっていないおかげか、海に沈んでいくことは無い。


祐樹「まぁ、銃が無くなったとしても、お前を殺すことなんて簡単なんだけれどもな」


優斗と同じように海上を歩きながら言う。

祐樹が海上に浮かぶ優斗の元に一歩ずつ近寄ってくる。


だが、数歩前で足を止めた。


祐樹「…どういうつもりだ。 お前らも裏切りか?」


震えながら、祐樹の方に向かって優香たちが主砲を向けていた。


時雨「優斗を殺すなら…。僕たちが、許さない」


声は震え、恐怖で涙が流れていた。


祐樹「悪いが、コイツは海軍の裏切り者だ。このまま生かしておいても、害しかない」


話しながら、祐樹は今度は優香たちの方に向かってくる。


祐樹「もしかして、撃つつもりか? ホントに出来るのか? もし撃ったら、お前らは人殺しだぜ?」


時雨「ッ…!」


少しずつ近寄ってくる祐樹の恐怖で、優香たちは一歩、また一歩と後退していく。


祐樹「ホラ。今なら余裕で撃ち殺せるぞ?」


更に祐樹が歩幅を大きくする。どんどん、祐樹と優香たちの間が縮まる。


時雨「あっ…ああ、っ…」


遂には、優香たちは動けなくなっていた。足は大きく震え、怖くて顔は真っ青になっていた。

祐樹がわざと海水を蹴り上げる。

優香、由衣、咲は海の上に腰から落ちてしまって完全に動けなくなっている。顔は恐怖の涙でぐしゃぐしゃになり、いつもの顔とは遠く離れた顔になっている。

春香、愛海、里奈、心音は立ったまま動けずに震えている。

七海、愛香、鈴奈の3人は震えながらも意地で主砲を構えている。しかし、他の娘も恐怖で目に涙が溜まっていた。


前元帥「いい加減にしろ、この馬鹿息子、いや、ゴミクズがぁ!!」


3方向から、前元帥、レ級、ヲ級がそれぞれの武器を持ちながら飛びかかる。


祐樹「裏切り者の方がゴミ屑野郎だろ? バーカ」


3人が飛びかかってきたのにも関わらず、祐樹は一歩も動かない。

首元に3人の武器が突きつけられる。


祐樹「まぁ、殺せないでしょう、ね」


前元帥「この、野郎…!!」


レ級「クズがっ…!!」


ヲ級「…ッ!!」


祐樹「さて、俺はどうなるんですかね? このまま首が飛んじゃうのかな?」


煽るように言う。実際、今の状況は少しでも動いてしまえば祐樹の首はアッサリと落ちてしまう。


前元帥「お前は、どこまで狂えば気が済むんだ…!! 今のお前は、アイツ以上の狂人だ!!」


祐樹「狂人? どこがだよ。俺は、ルールから背いた人間を処分しようとした。ただそれだけの話だろ?」


前元帥「お前のやり方は、全て間違ってる!! 人の心身を痛めつけ、恐怖で支配するこのやり方のどこが正しいんだ!!」


祐樹「黙れよ。クソ親父。いい加減、そのご都合主義やめれば?」


前元帥「このゴミ屑野郎がァァ!!」


刀を大きく振り上げる。そして、振り下ろそうとするがレ級、ヲ級が止める。


ヲ級「落ち着いてください!! ココで切ったとしても何も解決しません!!」


レ級「コイツの言う通りだ!! アンタがここでこの屑野郎を切ってもアンタに余計な罪が重なるだけだ!!」


祐樹「ハハッ…。仲間割れしてて笑うわ」


3人が争うその光景を見て、祐樹は笑っていた。


レ級「この屑野郎はどうにもなんねぇ。とりあえず、あのガキたちを連れて行くぞ。このままだと、事態が悪化するだけだ!」


ヲ級「分かってます。あの狂人は放っておいたらそのまま去るでしょう。もう、あの狂人は話しても意味がありません」


レ級とヲ級が、笑っている狂人、祐樹を背にして優斗たちを回収し、施設へと戻っていった。

祐樹は、そのままどこかへと歩いていってしまった。恐らく、鎮守府へと戻ったのだろう。


顔には、絶望なんて言葉で表せられない程の表情を浮かべていた。


前元帥「…コイツが薬の力以外で自分を取り戻したのは大きな収穫、とも言えないな」


優斗を背負いながら、前元帥は言う。

眠っているかのようにピクリとも動かない。腹部は赤く腫れ、背中にも傷跡がついてしまっていた。


前元帥「あの屑が…。話も聞かずに傷めつけやがって…」


優斗が深海棲艦のように暴れ回っていたが、完全に人間から深海棲艦になったとは言えない。

だが、たとえ祐樹に言ったとしても、深海棲艦をかばっていたと決めつけている優斗相手に同じ事をしただろう。


前元帥「あの娘たちの事を頼む。俺はコイツを治療室へと連れて行く」


レ級「分かったけれども…。本当に大丈夫か?」


ヲ級「何も説明していないので、今度は深海棲艦に襲われると思われそうなのですが」


前元帥「無理やりにでも連れて行け。あのままだと、永遠に動けないぞ」


海上に座り込んで動けなくなってしまっている優香らを見ながら話す。

言われた通りにレ級とヲ級が優香らの近くに来たが、全員放心状態になっていて抵抗もしなかった。

全員を施設へと移動させるが、目からは光が消えていた。


レ級「ヤベェな。コレ」


ヲ級「あれだけの事があったのだから、こうなるのも仕方が無い…。ですね」


レ級「それにしても、アイツもあの男と同じぐらい、いや、それ以上に狂ってたな」


ヲ級「私たちは深海棲艦なので、人間の心や考えは分からないですけれども…。一部の人間は、なぜ既定のルールから外れた者を排除しようとするのでしょうか…」


レ級「んなモノ、私が知るかよ。都合が悪いからとかじゃねーか?」


ヲ級「そう、なのかもしれないですね…」


レ級「けれども、問題が更に増えちまったなぁー。あのバケモノの事だけでこっちも手一杯だってのに」


ヲ級「同時並行でどうにかするしかないですね…。厳しいですが」


2人は、優香たちを連れ終わった後、明るくなりつつある空を見上げながら話していた。


白露型のほとんどは心に大きなダメージを負い、優斗は身体的に更にダメージを負ってしまい再び行動不能状態になってしまった。

深海棲艦と合体してバケモノと化した人間は、優斗が大ダメージを負わせてはいたが逃げられてしまい行方不明。

祐樹も色々と問題アリになってしまい、どうにもならない状況となってしまった。


深海棲艦の力を手に入れたかと思えば、それを一瞬で台無しにしてしまうような絶望が全員を包み込みだした。

希望という名の浮き輪を探してひたすらに絶望という名の海を手足に重りをつけながら泳いでいるような状況になりつつあった。


絶望的な現実に希望が生まれたかと思えば、更に絶望が深まっただけだった。


太陽が少しずつ昇ってくる。一睡もしていないが、そんな事は今はどうでもよかった。


(次回に続く)


後書き

次回は、「絶望から這い上がれ」に続きます。


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