綺麗に消えた過去。(番外編、第8話)
戦争が終わった後の話です。
文章力が足りない。助けて。
…なんで寝てんだ、俺?
鎮守府内のベッドの上で目が覚めた。
寝た覚えは無いんだけれどもな…。
俺、何やってたっけ…。
思い出せねぇな…。あ、そっか。
なんかバケモノに襲われたんだっけ。んで、戦ったけれどもボロボロになって引き返したんだった。
…でも、ホントにこんなんだっけ?
茜に何か起きたはずなんだけれども、ホントに何かあったっけ?
いや、考えるだけ時間の無駄か。
俺の思い違いかもしれないワケだし。
茜のトコでも行くか。茜に何かあったんなら、本人に確認すればいいワケだし。
茜が何にもなかったって言えばそれはそれで終わりにすればイイだけの話だからな。
そういや、朱里と祐樹もバケモノを倒すためにこっちに来てるんだったな。
後で会いに行ってみるか。
…あれ。バケモノとの決着ってどうなったんだっけ。
倒した、のか…? そうだったら、戦争も終わりって事か?
あのバケモノって、深海棲艦のボスだったよな…。いや、違う。じゃあ、俺は何と戦ったんだ?
戦争は終わったのか? どうなってるんだ、記憶が混乱してる。
優斗「何がどうなってんだ、俺…」
大事な所がうやむやになって、正確に思い出せない。
そもそも、俺らが戦ったのはバケモノって言ってるけれども、どんな奴だったのかが思い出せない。
それなのに、俺はなんでバケモノと戦ったという記憶が頭にあるんだ?
部屋の中で頭を抱える。けれども、答えが出てこない。
大事な所が少しも分からない。訳が分からない。
なぜか、変な記憶が存在している。けれども、その記憶が正しい事を証明する事が出来ない。
俺、疲れてるのか?
優斗「…考えても意味ないか。茜のトコでも行くか」
存在しているのかどうかも分からない記憶の事なんて、考えるだけ無駄だ。
どうせ、何か変な記憶違いとかが絡み絡みあってでこうなってるんだろう。そんな事を1つ1つ考えていったら、頭がオーバーヒートする。
考えるはもうやめだ。忘れよう。
優斗「さて、行くか」
俺は、この訳の分からない事は忘れ、茜とゆっくりとする事にした。
部屋に着くと、茜と優香以外にも、姉妹艦が何人かいた。
優斗「うぃーっす」
白露「あ、ゆーくん…」
優斗「ん? どうかしたのか?」
茜がいつもよりテンションが低い。
いつも通りだったら、飛びかかってきそうなぐらいなんだけれども。
白露「いや、その…。なんか頭の中が変な感じがして…」
優斗「え、茜もか?」
白露「うん。それどころか、優香たちもみんな同じ感じだし」
夕立「私だけおかしいのかと思って、こっちの部屋に来たら、同じ感じでビックリしたっぽい」
優斗「うーん…。何がどうしてこうなってんだ…?」
その後、白露型の姉妹艦、心音、俺の頭に入っていた記憶を全て出していった。
しかし、全員覚えていた記憶は綺麗に同じだった。
変なバケモノと戦って、俺らはボッコボコにされて撤退。
その後、茜に何かあった。でも、その何かは不明。
あのバケモノとの決着はついたかはまだ分かっていない。
優斗「…ホントに大事な所が抜けまくってんな」
心音「なんか、意図的な感じもするけども…」
海風「もしも、心音さんの言ってる事が確かだったら誰かが私たちに何かをした、という事になりますね」
春雨「でも、そんな事をする理由は無いと思います」
江風「だよなぁ…。私たちの記憶に何かしても、そんなに有益な事なンかないだろ」
優斗「あー、ワケが分からん!」
考えても考えても意味が分からない。このまま考え続けても、頭が痛くなるだけだ。
考えるのが嫌になって天井を眺めていると、ポケットに入れていたスマホが鳴った。
優斗「もしもーし、なんですか祐樹さーん」
祐樹『やる気がない声だなぁ…』
優斗「んじゃ切るねー」
祐樹『おいおい待て待て。用があったから電話してるんだろ』
優斗「んだよ」
祐樹『そろそろそっちに着くから。ただそれだけ』
優斗「電話いるか、ソレ」
祐樹『とりあえず』
優斗「はいはい…。じゃ、また後で」
電話してから数分後、言っていた通りに祐樹が来た。
祐樹だけと思っていたが、朱里ともう1人来ていた。
優斗「まさかお前が迷わずにここまで来るとは…」
祐樹「そこまで馬鹿じゃねえよ」
朱里「はいはい、無駄話はそこまでにしなさい」
優斗「分かってるって…。そういや、その娘って誰だ?」
朱里「あ、夕暮の事? 私の妹だよ」
夕暮「ど、どうも…」
祐樹「いやー、朱里に妹がいたなんて始めて知ったぞ」
朱里「これまで言ってなかったからね。もしかしたら、茜も知らないかも」
優斗「ほーん」
祐樹「あ、そういやこれ見たか?」
手渡してきた新聞には、「深海棲艦、完全に鎮圧か」とでかでかと大文字で書かれていた。
優斗「やっぱり、戦争は終わってたのか…」
祐樹「けども、その戦争に関しての記憶が全くないんだよな」
優斗「祐樹もなのか? 俺らもなんだけれども」
朱里「私も夕暮もそうなんだけどもね。大事な所が思い出せないって感じ」
優斗「ホントに変な感じだな…」
祐樹「そこも大事だけれども、もっと大事な所があるぞ」
新聞をめくり、祐樹が一つの記事を指さす。
記事には、「艦娘、順次解体へ」と書いてあった。
まぁ、深海棲艦との戦いに決着がついたのなら、少女たちに艦娘の力があっても無意味だし、脳内に埋め込まれたチップのせいで改造すること以外で成長が出来ない身体なんか不必要だ。
優斗「…なんか、終わったって感じがしないな」
祐樹「まぁ、確かにな」
朱里「でも、考えすぎても仕方が無いよ。…あ、そういえば私、明日にも艦娘の力を取り除くんだ」
夕暮「私もです」
優斗「そっか。じゃあ、茜たちも…」
祐樹「あれ、知ってなかったのか? お前の嫁さんたちは既に艦娘の力を失ってんぞ」
優斗「…え?」
祐樹「あのバケモノと戦って、ボッコボコにされたろ? けれども、結果的には一番活躍してたらしいから、最初に回したってワケ」
優斗「そんな話知らんぞ、俺…」
祐樹「俺もそんな話知らんかったぞ。けれども、なんか部屋の中に置いてあった資料にそう書いてあったから、とりあえずその通りに行動したからこうなったんだ」
優斗「なんでこんなに脳内に色々と訳の分からない事が入ってくるんだ…」
祐樹「さぁな。まぁ、後は残りの細々とした作業をやっていくだけだ。お前にも手伝ってもらうぞ」
色々と書かれている紙を渡された。そこには、これから行っていく事が書かれていた。
優斗「これ、マジで全部やるのか…」
祐樹「しゃーない。一応、元帥だから。あと、お前は補佐に勝手に任命しておいたから」
優斗「はぁぁぁぁ!?」
急にとんでもない事を言われたので、祐樹にグーパン喰らわせてやろうかと思った。
けれども、やめておいた。
祐樹「てなワケで、手伝いよろしく」
優斗「おぅ…」
ーー??ーー
前元帥「さて、仕事も終わったしどこかにまた行くとするかな…」
医者「何も教えなくても大丈夫なんでしょうか…。あの戦闘などに関しての記憶は消去出来ましたけれども、代わりに埋め込んだ記憶との食い違いが起きてしまっているのではないかと…」
前元帥「それに関しては、お前でもどうしようもないなら仕方が無い。そもそも、この記憶はアイツらにとっては不要な記憶だ。残しておいたとしても、優斗にせよ祐樹にしても、今後生きていくための障害になる」
医者「そう、ですか…」
前元帥「まぁ、こんな事するのはあの9人を助けた時で最後にしたかったけれどもな…。さて、俺もそろそろあのバケモノの処理をしに行くか」
医者「結局、深海棲艦の力とは人間の過ちから生まれたモノなんでしょうかね」
前元帥「さぁ、な…。じゃ、行ってくる。何か分かったらそっちにも送るわ」
医者「分かりました。こっちもこっちで、艦娘のチップ除去作業は大変ですが頑張っていきます」
前元帥「頼んだ」
前元帥は、そのまま部屋の外に出ていった。
前元帥(こんな事をやるのは、俺みたいな手を汚しまくっている人間だけで十分だ)
前元帥(あのバケモノの処理…。解体、いやそんな簡単な言葉では言えない、か)
前元帥(後は、若い世代に任せるか)
前元帥は、そのまま何処かへと消えていった。
その後、彼を知る者は医者1人だけになった。今は、どこで何をやってるのか。
事情が知っている医者も、行方不明になっている。なので、もうこの男を知る者は、この世界にはいなくなってしまっているのかもしれない。
こうして、深海棲艦との戦争は、終わった。
たくさんの犠牲を出し、数え切れない程の痛みを人類は受けた。けれども、それは深海棲艦も一緒だ。
結局のところ、人類を改造するという発想をした人間自体が罪人でしかないが、今さら恨んでもどうしようもない。
人間を苦しめてきたのは、自分たち人類だという事を、この戦争に関係していない人間が知ったらどうなるか。
そんな事を考えている人間は、もうこの世界には数人しかいない。
優斗、祐樹らは知らない側の人間になった。
そうして、この戦争が終わった後でも何も戦争について知らないまま生きていくこととなった。
けれども、優斗や祐樹にとってはこれが正解だった。おかげで、全員幸せに生きていく事になった。
深海棲艦との戦い、そしてこの馬鹿げた物語は、今ここで終わった。
戦争編は、一応コレで終わりです。
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