悪夢 終わらず。(最終章、第2話)
絶望は、まだ終わらない。
(前回のあらすじ)
優斗が、茜(白露)を助ける為に車にひかれる。そして、病院に連れて行かれる。
優斗は無事なのか…?
一瞬で、絶望へと叩き落とされた。
私の所為で、ゆーくんはあんな事になってしまった。
あの時、もしもちゃんと前を向いて歩いていたら?
あの時、逃げたりしなかったらよかったの?
今更、後悔なんてしてももう遅い。もう起こってしまったものはどうしようもないから。
ただ、願う事だけしかできない自分自身を嫌いになる。こんな時、何にも出来ないなんて…。
白露「ゆーくん…」
病院のとある一室で、1人で治療が終わるのを待っていた。しばらくすると、祐樹と由良さんが来た。
白露「由良さん、祐樹…」
祐樹「白露…」
由良「…」
重い空気に包まれる。ただ、黙っておくことだけしか今は出来ないから。
少しすると、部屋からお医者さんが出てきた。
医者「あ、皆さん揃っていたんですか…。彼、命に関わる程のケガはありませんでした」
祐樹「そ、そうですか…」
医者「ただ、何故か目を覚まさないんです。あと、頭を強く打っているみたいなのでしばらく様子を見た方がいいですね」
祐樹「はぁ…。だってさ、白露。…白露?」
白露「…うん」
命に関わる程のケガはない。その一言で、安心は出来た。けれども、目を覚ましてくれなきゃ何もできない。
祐樹「とりあえず、優斗がいる部屋に移動しようぜ。ここでずっと座ってるのもキツいし」
由良「そ、そうですね…。し、白露ちゃんも行こう?」
白露「…はい」
3人で、ゆーくんがいる部屋へと移動した。部屋では、ベッドの上で目を閉じているゆーくんがいた。
白露「…」
祐樹「由良。ちょっと2人にしてやろうぜ」
由良「そう、ですね…」
白露「ゴメン、2人とも…」
祐樹と由良さんが部屋から出ていく。部屋には、ベッドの上で目を閉じているゆーくんと、ゆーくんに救われた私だけになった。
優斗「…」
白露「ゆーくん…」
目の前にいるゆーくんの手を握る。暖かい。けれども、動かない。
白露「ゆーくん…。ゴメンね…。私の所為でこんな目にあって…。痛かった、よね…。ホント、私って…。うぅ…あぁぁ…」
私が泣いたところで何か起きるワケないのに。けれども、今は泣くことしかできない。
生きてるのに、話す事も、何かする事も出来ない。ただ、それだけが辛い。
ベッドの上に涙が落ちていく。目の前にいる、ゆーくんの体にも涙は落ちる。けれども、動く事はない。
ーー部屋の外ーー
祐樹「…。まぁ、こんな事があったら普通はこうなる、よな」
由良「白露ちゃん、しばらく立ち直れそうになさそうですよね…。けれども、今は何を言っても白露ちゃんには届かないでしょうね」
祐樹「今は、そっとしてやるのが俺らの最大の出来る事だな。けども、優斗の鎮守府の事はどうするかな…」
由良「白露ちゃん以外の娘が知ったら、パニックになりそうだし…」
祐樹「優斗が目を覚ますまでは、俺が優斗の鎮守府の提督代理をするしかないか」
由良「でも、祐樹さん。身体持つんですか?」
祐樹「友達がこんな事になってんだ。今は、自分の身体の事は二の次だ」
由良「けども、倒れないでくださいよ?」
祐樹「分かってるよ」
白露「…。泣いてばかりじゃ…。ダメだよね。私が泣いてばかりじゃ…。ゆーくんも辛いだろうし」
溢れ出る涙を拭く。泣いてばかりじゃ、立ち直れないからね。
白露「ゆーくん、絶対に戻ってきてね。私、待ってるから」
そう言い残すと、私は部屋から出る。外では、祐樹と由良さんが待っててくれた。
祐樹「良かったのか? もうちょっとだけいても良かったんだぞ?」
白露「ううん。別に大丈夫。このまま待ってても、何も変わらないのは分かってるから」
由良「とりあえず、白露ちゃんのところの鎮守府に戻ろうか。この事も伝えなきゃいけないし」
白露「はい…」
病院から出る。外は、晴天だったのが曇り空に変わりつつあった。
病院から出た後は、もといた鎮守府に戻った。自分の部屋に戻ると、優香が心配そうな顔で聞いてきた。
時雨「お、お姉ちゃん…。なんか、顔色悪い気がするんだけれども…。大丈夫?」
白露「うん。大丈夫だよ。ちょっと…。色々あったけれどもね」
時雨「色々? 何かあったの? 後、帰って来る時に何故か優斗と一緒じゃなかったけれども…」
白露「っ…。な、なんでもないよ」
時雨「いや、何かあったでしょ。…何かあったの?」
白露「…。実は、ね…」
私は、これまであった事を優香に話した。ゆーくんが、指輪を返却しようとしてた事。車にひかれて、今は病院にいる事。
時雨「そんな事があったんだ…。けれども、お姉ちゃん、優斗がいなくて大丈夫なの?」
白露「…なんとかね。けれども、やっぱり辛いや。しばらくの間、ゆーくんがいるけれども、何もゆーくんと出来ないから」
時雨「お姉ちゃん…」
白露「でも、私が落ち込んでたらゆーくんも悲しんじゃいそうな気がするから…」
時雨「まぁ、お姉ちゃんがそう思うんなら…いいんじゃない?」
白露「そうだね。ちょっとだけ…辛いけどもね」
優香と話しているうちに、少しだけ辛いのが収まった気がした。けれども…。まだ、辛いのは変わらない。
その日は、特に何もせずに眠った。早く、大切な人が治ってくれる事を願いながら。
(翌日)
いつも通り、目が覚めた。そしていつも通りに、執務室に移動する。
白露「…あ。今は、いないんだった…」
いつもの癖で、朝起きてから執務室に向かっていた。いないのが分かってるのにね。
白露「…」
いつの間にか、壁に掛かっている服を掴んで握っていた。
白露「何やってんだろ、私…。…やっぱり、ゆーくんがいないのは辛いよ…」
また、泣きそうになる。泣かないって、決めたのに。やっぱり、我慢なんて出来るわけがなかった。
白露「ゴメン…。やっぱり…無理、みたい…」
結局、泣いてしまった。静かな執務室の中に、すすり泣く声が響く。そのまま、10分程経った。
その後もしばらく泣いていると、ドアが開く音が聞こえた。
時雨「やっぱり、ここにいたんだね。お姉ちゃん」
白露「あ…。優香…」
時雨「まったく…。1人で抱え込み過ぎだよ。お姉ちゃんは、もうちょっと僕たちに相談とかしてくれてもいいと思うんだ」
村雨「ホントに優香の言う通りよ。私たちだって、少しは相談には乗れるんだから」
夕立「そもそも、茜お姉ちゃんが落ち込んでる姿なんか、あんまり見たくないっぽい…」
春雨「やっぱり、お姉ちゃんは笑顔がお似合いです、はい!」
五月雨「茜お姉ちゃんが泣いてるのを見ると…。私たちも悲しくなっちゃいます」
海風「優斗さんが戻ってくるまで…。辛いでしょうけれども…。辛くなった時は…私たちが相手になってあげます」
山風「だから、泣かないで、茜お姉ちゃん…」
江風「まぁ、優斗の事だからすぐに戻ってきそうな気がするンだけどもな!」
涼風「確かにな。明日には戻って来たりしたりして?」
海風「いや、流石にそれはないでしょ…」
白露「あ、電話だ」
海風「え?」
白露「もしもし? え? ゆーくんが目を覚ました!?」
時雨「えぇ!?」
白露「じゃ、行って来る!!」
時雨「あ、ちょっ」
村雨「もの凄いスピードで走っていったわね…」
夕立「行動力が凄まじいっぽい」
ーー病院にてーー
白露「着いたぁ!!」
祐樹「あ、来た…」
白露「じゃあ、先に行って来るね!!」
祐樹「ちょ、待てよ!?」
由良「行っちゃいましたね…」
祐樹「今のアイツに会わせて大丈夫なのか…?」
由良「それは…」
会えるんだ、またゆーくんに。ただ、それが嬉しすぎて頭がおかしくなりそうだった。
病室の前に着く。思いっきりドアを開ける。
白露「ゆーくん!!」
優斗「…」
白露「よかったぁ…。目を覚ましてくれて…」
ゆーくんの顔を見た瞬間、一気に安心感が溢れてきた。
けれども、何かがおかしい。何故か、こっちを向いてからずっと、頭の上に?マークがついてそうな顔をしている。
白露「ゆーくん? どうしたの?」
優斗「あの…」
優斗「どちら様ですか?」
白露「え…?」
え? どういう…事?
白露「じょ、冗談だよね…」
優斗「いや、嘘じゃないんです…。僕が誰なのか、そして、貴方が誰なのかも…。分からないんです」
白露「そ、そんな…」
私は、膝から崩れ落ちた。希望は、一瞬で絶望へと変わった。
神様。なんで、一回だけしか奇跡を起こしてくれなかったんですか?
(次回へ続く)
2日連続の投稿は、流石にキツいですね。
次回も、不定期投稿になるかもしれません。
この悪夢を乗り越えて、
私たちに奇跡(イチャイチャ)の
物語を、待ってます!
※1
さぁ、来るんでしょうかねぇ…?
そうか!
これは、夢に違いない!
ほっぺたをつねる。
痛い!
※3
駄目じゃないか…。
サンタの正体を知った時同じ
衝撃を受ける日がまた来るとは!
※5
そんなに衝撃だったのか…。