2021-11-05 23:04:38 更新

概要

とある新設基地に於ける日常です。
教官として派遣された問題艦娘達が、立派な教官となるまでの基地稼働前1ヶ月をえがいていきます。
裏設定多めですが、読みやすいように配慮しているつもりです。
彼女らの奮闘劇をお楽しみください。


前書き

艦これについては、SSでしか触れたことがありません。
キャラ崩壊を意図的に入れていくと思いますので、ご了承下さい。


旅立ち


「お疲れさまです。貴方が新たに着任される教官殿ですね。」


「お待ちしておりました。さぁ、船へどうぞ。」


「目的地はナビに設定済みですので、エンジンを掛けて、自動操縦に切り換えて下さい。」


「では、良い旅を。」



出会い


「教官!お待ちしておりました!」


「五月雨、初期艦として着任済みです!」ビシッ


「そんなに畏まる必要はないよ。」


「僕は時雨、黒霧時雨だ。よろしくね。」


「はい!よろしくお願いしますです!教官!」


「教官はよしてくれ。時雨でいいよ。」フフッ


「そんなっ!教官に対して礼を欠くようなことはできません!」


「ぜひ、教官と呼ばせてください!」


「そんなことで失礼になるわけないじゃないか。」


「何せ君は、僕と同じく教官として此処に着任しているのだから。」


「はい!・・・はい?」



基地稼働前の1ヶ月


五月雨「ちょっと待ってください。私、そんな話聞いてないですよ!教官!」


黒霧 「そうなの?てっきり僕は周知のことかと。」


五月雨「艦娘の、しかも駆逐艦である私が教官だなんて、荷が重すぎます!どうか、ご再考ください。」


黒霧 「教える立場となることに艦種は関係ないさ。それに第壱期生は皆、駆逐艦の予定だよ。」フフ


五月雨「ですが!やはり日頃からドジばかりの私には、相応しくない・・・かと。」シュン


黒霧 「それは言い訳だ。」ズイッ


五月雨「」ビクッ


黒霧 「君の記録は見させてもらった。確かに大事なところでドジをして、周りに迷惑を掛けることも少なくなかったようだね。」


黒霧 「それも、戦闘中に。」


五月雨「」ウッ


黒霧 「はっきり言って、君は教官に相応しくない。艦娘としてもどうかと思うくらいだ。」


五月雨「それは、流石に言いすぎ・・・です。」グスッ


黒霧 「でも、それは飽くまで"今は"相応しくないというだけなんだ。」


五月雨「・・・どういうことですか?」


黒霧 「君の全ては僕が責任を取るということさ。」ニコリ


五月雨「それって。///」カァ


黒霧 「壱期生の娘達が着任するまでの1ヶ月で、君を立派な教官に育て上げてみせる!」グッ


五月雨「え・・・?えぇぇぇぇ!」



さぁ、特訓だよ。


五月雨「・・・なんてこともありましたねぇ。」グデーン


黒霧 「ほら、いつまでも寝てないで早く起きる。」


五月雨「・・・はい。」


黒霧 「特訓はまだ始まったばかりだよ、五月雨。」ニコリ


五月雨「・・・そうですね。」


着任2日目である。



ドジは天性の才能だと思う。


教官は私のドジを直すため、あれこれ苦心している。


運動能力テストをしたり、平衡感覚の検査をしたり・・・。


とにかく、色んなことをしました。


結果、私のドジの原因は・・・。



黒霧 「注意散漫だね。」フム


五月雨「」エェ


黒霧 「君はあるひとつのことにしか注意を向けられないみたいだ。要するに、視野が狭い。」


五月雨「あの、私はいったいどうすれば?」


黒霧 「」ニッコリ


五月雨(あっ。)



死ぬ気でやればできる!きっと!


黒霧 「視野が狭いといっても、別に見えていないわけじゃない。」


黒霧 「ただ、君が視界に捉えたものを上手く認識できていないだけなんだ。」


五月雨「はぁ・・・。」


黒霧 「だったら、無理矢理認識させてやればいい。」


五月雨「それは、いったいどうやって?」


黒霧 「全周囲型回避機能向上訓練さ。」ニッコリ


五月雨(嫌な予感が。)


黒霧 「四方八方から砲弾が飛んでくるから、全力で避けてね。」


五月雨「」オゥ


黒霧 「使うのは準実弾だから・・・。この先は言わなくてもわかるよね?」ニィ


五月雨(今日が命日か・・・。)トオイメ



終わらないエンドレスワルツなんですよ。


五月雨「」チーン


黒霧 「15分か。意外に耐えたね。やればできるじゃないか。」


五月雨「避けなきゃ死にますからね。」


黒霧 「じゃあ、二回戦逝こうか。」ニタァ


五月雨(神様ッ。)



お風呂で寝られる=赤疲労のサイン


五月雨「海の底って、意外と温かいですね。」シミジミ


黒霧 「此処はドックだよ?」


五月雨「知ってます。というか、なんで居るんですか。」エッチ


黒霧 「うちは急設の基地だからね。施設の建設が間に合ってないの。」


五月雨「つまり?」


黒霧 「入浴施設はドックしかありません。序でに、寝室も一部屋しかありません。」


五月雨「因みに、ベッドは?」


黒霧 「」ニコニコ


五月雨「そうですか。」トオイメ



秋ですか。そうですか。


黒霧 「君、ものの数時間で随分と性格変わったね。」


五月雨「貴方の所為ですよ、時雨さん。」ニコー


黒霧 「やっと、名前で呼んでくれたね。」


五月雨「本気で殺しにくる悪魔に払う敬意はありませんから。」ハッ


黒霧 「そう・・・。でも、僕は今の五月雨のほうが好きだよ。」


五月雨「///」


黒霧 「顔、紅いよ?」


五月雨「逆上せたんです。」プイ


黒霧 「」フフッ


五月雨「」ムー


五月雨「ところで、どうしてドラム缶風呂なんですか?」


黒霧 「察しておくれ。」


五月雨「」ハァ



無人島で生き抜ける気がしない。


五月雨「ふと思ったんですが。」キガエチウ


黒霧 「何かな?」


五月雨「食堂ってあるんですか?」


黒霧 「着任2日目に訊くことではないね。」


五月雨(電気の通っていない無人島に置き去りにされて、それどころではなかったですからね。)


黒霧 「まぁ、結論から言えば、無いよ。」


五月雨「だったら食事はどうするんですか?私は燃料だけでも大丈夫ですけど。」


黒霧 「自炊するさ。」


五月雨「誰が?」


黒霧 「僕が。」


五月雨「」フーン


黒霧 「何か言いたいことでも?」


五月雨「いえ、その程度の常識はあるのかと感心しまして。」


黒霧 「出会ったばかりの君は何処へ行ったんだい?」


五月雨「数時間前に逝ってしまったのです。」トオイメ



設定?知らない子ですね。


五月雨「クロさんや。」


黒霧 「何かな、ミーさん。」


五月雨「なんですか、ミーさんて。」


黒霧 「始めたのは君だよ?」


五月雨「いや・・・。教官のこと、何と呼べばいいかなと。」


五月雨「いずれは私も教官になるわけですし、"教官"と呼ぶのは変ですよね。」


五月雨「名前だと時雨姉さんと被りますし、苗字は初期艦としてのプライドがですね。」ムー


黒霧 「クロさんが妥当なところじゃないかな。」フフッ


五月雨「そうですよね!」パァ


五月雨「クロさん。うん、クロさんですよ!」~♪


黒霧 「随分と楽しそうだね。」


五月雨「昼には殺されかけるんですから、夜くらいはこんなキャラでもなければやってられませんよ。」ケッ


黒霧 「夜には訓練がないだなんて、誰が言ったのかな?」ニコリ


五月雨「いっそひと思いにやってくれぇ!!」クワッ


訓練開始初日の夜である。



海抜数センチでも島は島。


ザッパーン


五月雨「・・・。」ボー


黒霧 「入水でもするのかな?」


五月雨「しませんよ。私は太宰でもサカキでもありません。」


黒霧 「深刻そうな顔をしていたから、心配したよ。」


五月雨「率先して沈めにくる貴方にだけは言われたくないですね。」ヘッ


黒霧 「本心なんだけどね。」アハハ


五月雨「一応、ありがとうございます。」


黒霧 「上官として当然のことさ。それで、どうしたのかな?」


五月雨「この島、狭すぎません?」


黒霧 「何分、急設なもので。」


五月雨「人工島かよ。」



六波羅探題!名前だけの知識。


五月雨「全く目的が見えてこないのですが、結局のところどうなんですか?」


黒霧 「此処は艦娘の訓練施設だよ。」


五月雨「知ってます。で、本当は?」


黒霧 「深海棲艦に占拠された実験施設の監視基地。」


五月雨「そんなことだろうとは思ってました。」ヤッパリ


黒霧 「へぇ、察しが良いね。」


五月雨「明らかに異常ですから。こんな沖合に、態々島を造ってまで基地を新設するなんて。」


五月雨「で、私は何をすればいいんですか?」ソワソワ


黒霧 「教官として新人の面倒を見ること。」


五月雨「え?それって建前じゃないんですか?」


黒霧 「君の本務は教官だよ。監視は僕の役目さ。」


五月雨「ということは、今日の訓練も単に教官として一人前になるための・・・。」


黒霧 「最初にそう言ったよね?」ニコリ


五月雨「過剰訓練だよ!鬼!悪魔ッ!」



先生呼びされると名前を覚えてくれてるか不安になる。


五月雨「クロさんは海軍の所属ですよね?」


黒霧 「君は、自分の上司が陸軍の所属だと思うの?」


五月雨「だから訊いてるんですよ。練習巡洋艦は知っていますが、人間の教官なんて聞いたことがありません。」


黒霧 「・・・海軍の所属で、間違いはないよ。」


五月雨「含みのある言い方ですね。」


五月雨「まだ隠してることがあるんですか?まったく、秘密の多い人ですね。」ヤレヤレ


黒霧 「信用できないとでも?」


五月雨「そうですね。信用はしてません。」


黒霧 「信用は、ね。」


五月雨「はい、"信用は"してません。」ニパ



立場が同じでも上下関係はあるのです。


五月雨「しかし、クロさんが海軍所属なら階級は何になるんですか?」


黒霧 「階級?そんなものは無いよ。」


五月雨「なるほど。口にできないくらいに低いと。」ウンウン


黒霧 「これまで僕が嘘を吐いたことがあったかな?」


五月雨「たかが一日くらいでは証明に足りませんよ。」


黒霧 「確かにそうだね。」フム


五月雨「でも、クロさんがそう言うなら、そうなんでしょうね。」


黒霧 「そうだとも。強いて言うなら、教官かな。」


五月雨「それは役職であって、地位ではないですよ?」


黒霧 「海軍に教官が何人いると思う?」


五月雨「なるほど。人数が少なければ役職がそのまま地位になると。」ナットク


黒霧 「佐官扱いだってさ。」


五月雨(どの佐官ですか。)


黒霧 「で、いつまでこんな波打ち際に居るつもりなのかな?」ザッパーン


五月雨「だって、この島電気通ってないですもん。」ヘヤノナカクライ


黒霧 「蝋燭があるでしょ。」フロハイリナオスカ


五月雨「今、西暦何年でしたっけ?」ゴイッショシテモ?



最近、死んだように寝てしまう。


五月雨「本当にひとつしかベッドが無いんですね・・・。」


黒霧 「昨日は何処で寝たのさ。」


五月雨「執務室の机で横になってました。」シレッ


黒霧 「君、実は元からガサツなのでは?」


五月雨「それ以上はメッですよ?クロさん。」キャピッ


黒霧 「」ヤサシイマナザシ


五月雨「やめてくださいよ。同情は時として凶器になり得るんですから。」


黒霧 「大丈夫、疲れているだけさ。」ニコニコ


五月雨「泣いてもいいですか?」


黒霧 「おいで。」フトンヒロゲ


五月雨「はい。」


モゾモゾ


黒霧 「素直でよろしい。」ナデナデ


五月雨「明日は優しくしてください。」ギュッ


黒霧 「それとこれとは別問題。」


チッ シタウチシナイ



深夜は要らんことばかり話してしまう。


五月雨「私って、教官になるんですよね。」


黒霧 「そうだね。」


五月雨「ということは、私も佐官の仲間入りですか。」エリートデスネ


黒霧 「艦娘の教官を務める香取や鹿島は佐官だったかな?」


五月雨「ですよね。」シッテマス


黒霧 「艦娘に対する教官に地位は与えられないのさ。」


五月雨「そうなんですね。って、あれ?」


五月雨「クロさんも艦娘の教官として着任してるんですよね。」


黒霧 「そうだよ。」


五月雨「なら、どうして佐官扱いされてるんですか?」


黒霧 「・・・。」


五月雨「おかしいですねぇ。どうしてなんですかねぇ。」ニヤニヤ


五月雨「さぁ、白状しましょうか。本当は、何の教官なんですか?」


黒霧 「」Zzz


五月雨「寝るなぁ!」クワッ


黒霧 「」グイッ ガシッ


五月雨「く、首が!」


五月雨「し、絞まるぅ。」グギギ


ガクッ



アラームの音に文句を言いにきた人の気配で起きるタイプ。


五月雨「・・・朝か。」パチクリ


五月雨「今、何時だろう?」キョロキョロ


五月雨「時計が・・・無い!?」ガーン


五月雨「そんな莫迦なぁ!!」ズガーン


五月雨「・・・クロさんはいずこ。」ハァ


ガチャ パタン



もう2年以上、従姉妹に会ってません。


五月雨「」ホケー


???「ん?なんだ、もう起きたのか。」


五月雨「・・・誰ですか?」ミガマエ


???「そう警戒してくれるな。私は別に怪しい者ではない。」


五月雨「性犯罪者は皆、そう言うんです。」アトズサリ


???「何故、逃げようとするのだ?」


五月雨「いえいえ、滅相もございません。」ジリジリ


???「色々と間違っているぞ。」マッタク


???「奴ならまだ寝ている。」


五月雨「」ピタッ


五月雨「奴・・・とは?」


???「時雨のことに決まっているだろう?」


五月雨「どうして貴女が知っているんですか。黒霧教官は何処に居るんですか。」キッ


???「そう語気を強めるな。」フッ


???「温和しく部屋で待っているといい。そのうち帰ってくるだろう。」


五月雨「待てません。今すぐに教官の安否を確認しなくてはなりませんので。」


???「強情だな。いや、真面目と言うべきか。それとも惚れたか?」ニヤリ


五月雨「」キッ


???「時雨は無事だ。姉である私が保障しよう。」ハァ


五月雨「え・・・?御姉様で、いらっしゃる?」


黒霧茜「そうだ。黒霧茜、時雨の姉だ。」


五月雨「言われてみれば、何処となく似ているような・・・。」キレイナハクハツトカ


黒霧茜「双子だからな。似ているのは当然だ。」モットホカニアルダロウ



白髪の似合う人になりたかった。


五月雨「御姉様はどうしてこんな絶海の孤島に?」


黒霧茜「此処は千葉近海だぞ。横須賀も大本営も近いではないか。」ナニヲイッテイル


五月雨「なるほど、御姉様は冗談を真に受ける方なんですね。」


黒霧茜「巫山戯た話し方は好かん。それから、御姉様はやめろ。」ナマエデヨベ


五月雨「そんなところまで似ているとは・・・。」サスガフタゴ


黒霧茜「姉と呼んでいいのは我が弟だけだ!」クワッ


五月雨(そっちだったかー。)アチャー



たかが一日、されど一日。


黒霧茜「ところで、時雨を捜していたのではないのか?」


五月雨「そうでした!茜さん!あのいけ好かないクールサディストは何処ですか!」


黒霧茜「ほう、私の弟について話があるなら聞くぞ?」ゴゴゴ


五月雨「あのS気質はどうにかなりませんか!?」クワッ


黒霧茜「・・・。」


黒霧姉「貴様、中々肝が据わっているな。」ココハヒクトコロダロウ


五月茜「三途の川を眺めるのが日課になる予定なので。」ナレマシタ



朝ご飯 逃し続けて 一ヶ月


黒霧茜「そろそろか。」フム


五月雨「何がですか?」


黒霧茜「食堂に行ってみろ。時雨が朝支度をしているはずだ。」


五月雨「なんと!本当に料理できたんですね!」


五月雨「これは見逃せません。ではっ!」バビューン


黒霧茜「元気が良いな。幼き者は早朝からこれだ。」ヤレヤレ


黒霧茜「お前もそうは思わんか、時雨よ。」フッ


五月雨「茜さん!」


黒霧茜「」ビクゥッ


黒霧茜「なんだ。食堂へ行ったのではなかったのか?」


五月雨「よく考えたら、此処に食堂はありませんでした!」クロサンハイズコ!


黒霧茜「そうか。それは災難だったな。」


五月雨「はいっ!」クロサンハイズコ!


黒霧茜「昨日、お前達が食事をした場所ではないのか?」


五月雨「わかりました。ドックですね!いってきます!」バビューン


黒霧茜「何をしとるんだ、お前は・・・。」ハァ


???「・・・。」



煙草一本 火事の元


五月雨「クロさん!」バァン


五月雨「・・・居ませんね。」


五月雨「まったく、何処へ行ったのやら。」ヤレヤレ


黒霧 「何がだい?」


五月雨「うひゃあ!」ビックゥ


五月雨「い、いきなり後ろから現れないでくださいよ!」ドキドキ


黒霧 「ごめんよ。」フフッ


黒霧 「でも、この様子だと気配を感じとる訓練もしたほうがいいかもね。」フム


五月雨(死んだ。)タラー



真実のみで人を欺く愉悦。


五月雨「今まで何処に行ってたんですか?」シンパイシマシタ


黒霧 「港だよ。今日は物資の搬入があるからね。」


五月雨「港ですか?」


五月雨(おかしいですね。茜さんと話していた場所は、港の近くだったのですが。)ウーン


五月雨「あの、茜さんとはお会いになりましたか?」


黒霧 「姉さんと?いや、会ってはいないけど・・・。どうかしたの?」


五月雨「いえ、なんでもないです。」


五月雨(入れ違いだったのかな?)



つを使いたかっただけ。


黒霧 「そろそろ朝支度をしようか。」


五月雨「はい!もうお腹ぺこぺこです。」グゥー


黒霧 「少し待っててね。」フフッ


五月雨「」ジー


黒霧 「」テキパキ


五月雨「」ジー


黒霧 「」フランベチウ


五月雨「薪でフランベとは、器用ですね。」ハヘー


黒霧 「さぁ、出来たよ。」


五月雨「おおっ。早いですね。」サスガデス


黒霧 「朝から手の込んだものを作ってもね。」


黒霧 「どうぞ、召し上がれ。」つ味噌汁


五月雨「ん?フランベ要素は何処に?」


黒霧 「消し炭になった。」ニコリ


五月雨「さてはポンコツですね?クロさん。」



3日目なのよ。


黒霧 「さぁ、始めようか。」


五月雨「」ハチマキ キュッ


黒霧 「どうしたの?」


五月雨「決戦仕様です。」フンス


黒霧 「やる気に溢れているようで何よりだよ。」フフ


五月雨「やる気なんてありませんよ。」シレッ


黒霧 「おや。」


五月雨「私はただ、明日を生きていたいだけなんです!」ドーン


黒霧 「なら、訓練は厳しくしないとね。」ニィ


五月雨「かかってこいやぁ!」ヤケクソ



天然はココロを救う。


ゼェ ゼェ オェッ


黒霧 「30分か。かなり伸ばしたね。」スゴイスゴイ


五月雨「昨日とは、覚悟が違いますから。」ゼェ ハァ


黒霧 「じゃあ、二回戦・・・。」


五月雨「待ってください。」


黒霧 「何かな?」


五月雨「私にこんな訓練をさせるのは、生徒に求めることを教官ができなくてどうする的な意味ですよね?」


黒霧 「まぁ、そういう側面もあるかな。」


五月雨「クロさんはどうなんですか?」


黒霧 「・・・。」


五月雨「お手本、見せてくださいよ。」ニンマリ


黒霧 「いいとも。」フッ


五月雨(あれぇ?)ヨテイトチガウ



最強主人公は仲間との別れが少ないから好き。


五月雨「」ポカーン


黒霧 「こんなところかな。」フゥ


五月雨「クロさん。」


黒霧 「なんだい?」


五月雨「深海棲艦に襲われたときは、ぜひ私をお姫様抱っこして逃げ回ってください。」キラキラ


黒霧 「自分の足で逃げておくれよ。」アハハ


五月雨「綺麗でした。」


黒霧 「ありがとう。」


五月雨「私とは大違いです。」ハァ


五月雨「あの流れるようなゆったりとした動き。まるで舞を踊っているかのような体捌き。感動です。」ウットリ


黒霧 「あれは、君の未来の姿だよ。」


五月雨「え?」


黒霧 「五月雨も、これからそうなるのさ。」ポム


五月雨「本当ですか!?」パァ


五月雨「なんだかやる気が溢れてきました!」ムフー



彼女が平凡だと思った?まずはその巫山戯た幻想をぶち壊す!


黒霧 「とはいっても、君はもう殆どできているんだけどね。」


五月雨「そうなんですか?」ナント


黒霧 「うん、君はとても頭が良いからね。」


五月雨「座学の成績は中の上でしたが。」ワルクハナイデスケド


黒霧 「そういう頭の良さじゃなくて。」


五月雨「どういうことですか?」ウン?


黒霧 「観察力、分析力、把握力、判断力、そして決断力。」


黒霧 「そういった、行動に関する頭の力が君は飛び抜けて高い。」


五月雨「はへぇ~。」ソウナンデスネ


黒霧 「君、奇襲を受けたときとか、撤退に専念しているときに被弾したことないでしょ。」ジカクナイノネ


五月雨「言われてみれば、確かに。」


黒霧 「歴戦の猛者が命を落とすのは、奇襲を受けての撤退戦や多勢に無勢の殲滅戦による場合が多い。」


黒霧 「君はその両方を満たす作戦に於いて、艦隊の皆が大破するなか、ただひとり無傷で生還した艦だ。」


五月雨「そんなこともありましたねぇ。」シミジミ


五月雨「みんなが反撃して包囲に穴を空けようとするなか、ひとり逃げ回ってましたよ。」ハズカシイカギリデス


黒霧 「それは、回避に専念していたということだよ。」


黒霧 「君が本気で回避行動を取れば、的の分散する戦場で被弾はありえない。」


黒霧 「君が目指すべきは、独りで数の暴力を凌ぎきることさ。」



考えるな。感じろ!


五月雨「んな無茶な。」エェ


黒霧 「無茶ではないよ。今の状態でも30分間は凌げているからね。」


五月雨「必死に避けてるだけですよ。」


五月雨「あれでは反撃ができません。体力が尽きて終わりです。」ジエンドデス


黒霧 「反撃するだけの余裕をつくればいいのさ。」


五月雨「どうやってですか?」


黒霧 「五月雨、君と僕の違いはわかるかな?」


五月雨「何もかもです。」ムシロオナジトコロガナイ


黒霧 「さっきの訓練の話だよ。」ワザトデショ


五月雨「目、ですね。」トウゼンデス


黒霧 「流石は五月雨だ。よく気づいたね。」


五月雨「私が目で砲弾の位置と速度を確認してから、弾道と着弾までの時間を予測しているのに対して・・・。」


黒霧 「僕は砲弾を目で追っていない。」


五月雨「にも拘わらず、死角からの砲撃を最小限の動きで躱す。」バケモノメ


黒霧 「どうしてだと思う?」キミモタイガイダヨ


五月雨「気配、ですか?」


黒霧 「そのとおり。」


黒霧 「君は頭に頼りすぎる。優秀であるが故にね。」


黒霧 「考えずとも体は動かせる。もう少し感覚に頼ってもいいと思うよ。」



眼が悪いと別の感覚が鋭くなる気がする。


五月雨「いきなり感覚に頼れと言われましても。」ドウスレバ


黒霧 「人の感覚で最も情報量が多いのは何処だと思う?」


五月雨「目、じゃないですか?」ニカイメデスネ


五月雨「一番敏感ですし。」センサイトモイイマス


黒霧 「どうしてそうなったのかな?」


五月雨「・・・わかりません。」サァ


黒霧 「光が一番速いからだよ。」


五月雨「単純ですね。」


黒霧 「周囲の環境を把握するための五感は、謂わば危機察知能力の根幹。」


黒霧 「情報の伝達が早いに越したことはないからね。人の目は鋭敏なのさ。」


五月雨「確かにそうですね。でも、それがどうしたんですか?」


黒霧 「次は、目隠しをして訓練を行う。」


五月雨(これはあかん・・・。)タラー


黒霧 「今回は砲撃しないよ。」フフ


五月雨「本当ですか!?」イキルキボウガ!


黒霧 「僕が直々に斬り捨てるからさ。」ニコリ


五月雨(私の制服は白装束だったのか・・・。)オゥ



危機察知能力=恐怖心。つまりビビりは命を救う。


五月雨「私は何処でしょう。」メカクシチウ


黒霧 「海の上だよ。」


五月雨「クロさんはいずこ~。」フラフラ


黒霧 「ん~。君の目の前、かな?」


五月雨「」ペタペタ


五月雨「わ~い。クロさんだ~。」フルエゴエ


黒霧 「いらっしゃい。此処が地獄の入り口だよ。」スラッ


五月雨「いやぁぁぁぁ!!」ダット


黒霧 「鬼ごっこなのかな~。」マテマテー



気功療法曰く、気合いでなんとかなる。


五月雨「オタスケー」プラーン


黒霧 「流石に最初から斬ったりはしないよ。」サイショハネ


五月雨「そうですか。」アシタガタノシミデスネ


黒霧 「まずは殺気がどんなものなのか、体で覚えてもらわないとね。」


五月雨「それ、目隠しする必要ありました?」


黒霧 「外したいなら構わないけど、死ぬよ?」


五月雨「何それ怖い。」ゼッタイハズシマセン


黒霧 「情報量が一番多いのは・・・。」


五月雨「目だからですね!」シッテマス!


黒霧 「よくできました。」エライヨ


五月雨「ふふん。」モットホメロ


黒霧 「調子に乗らない。」ギソウハズシ


五月雨「」ガボボボ


五月雨(クロさんを精神病院に連れていこう。そうしよう。)



大雨の日、雨が折りたたみ傘を貫通してきた。


五月雨「」ビッショリ


黒霧 「それじゃあ、本物の殺気を感じてみようか。」


五月雨「ばっちこーい。」


黒霧 「いくよ。」フー


黒霧 「」ザワッ


五月雨「」ドクンッ


五月雨(い、息がっ。)カハッ


黒霧 「はい、ここまで。」フッ


五月雨「なんですか、今のは・・・。」ゼェ ハァ


五月雨「あんなの、姫級と殺り合ったとき以上です。」


五月雨「一瞬、心臓止まりましたよ。」ソウマトウガミエマシタ


黒霧 「昔、武士崩れの剣客に習ったことがあってね。」フフッ


黒霧 「今ので気絶しなかったなら上々だよ。砲弾にも殺気は籠もる。今の感覚を忘れないうちに、訓練再開だ。」


五月雨(いったい貴方は何者なんですか、クロさん。)



か~ごめ か~ごめ


五月雨「」メカクシチウデス


黒霧 「その状態で僕が居るほうに顔を向けてみて。」


五月雨「こっちです。」クルッ


黒霧 「正解だね。」


黒霧 「それじゃあ、僕の動きを追ってみようか。」スッ


五月雨「了解です。」


黒霧 「」スィー


五月雨「」クルー


黒霧 「」ビューン


五月雨「!」グルッ ゴキッ ゴハッ


黒霧 「・・・大丈夫?」アタマダケマワスカラ


五月雨「涼風が、手を振って・・・。」アッ ミナモニウツッタワタシデシタ


黒霧 「重傷だね。」アタマガ



なんということでしょう。幼気な少女が・・・。


黒霧 「全周囲型回避機能向上訓練。四面楚歌、味方は無し、開始~。」ピー


五月雨(ふふん。 クロさんの殺気を完璧に把握した私に死角はありません!)


五月雨「砲弾ごとき、悉く躱してみせっ。」チュドーン


五月雨「なんだとーう!!」チョクゲキ


黒霧 「自動制御式の砲撃に殺気が籠もるはずないでしょ。」オバカ


五月雨「さっきまでの訓練は何だったんですかぁ!?」ボロッ



風が私を呼んでいる。


黒霧 「意志を持たない機械や、敵意の無いものに殺気は籠もらない。」


黒霧 「この訓練装置が良い例だね。」


五月雨「じゃあ、どうやって躱せばいいんですか。音ですか。勘ですか。」ムスッ


黒霧 「信用できるのは経験による勘と気配だけだよ。」


黒霧 「感覚はいくらでも狂わせることができる。特に耳はね。」


五月雨「そんなに駄目なんですか?暗闇で気配を感じる一番の要素は、音だと思いますけど。」


黒霧 「戦場は単なる暗闇とは違うからね。とりわけ海上戦は砲撃が主だから、遠くからの飛来物により早く気づく必要がある。」


五月雨「砲撃の音は遠くからでもよく聞こえますよ?」


黒霧 「音の速さは知ってるかい?」


五月雨「いいえ。」フルフル


黒霧 「秒速340メートルくらいだよ。」


五月雨「充分じゃないですか。何が不満なんですか?」


黒霧 「戦闘機より遅いからさ。」


五月雨「語るべき時代が違いやしませんか?」プロペラキハ ソンナニハヤクトベナイ



気配は波紋で表現するイメージがある。


五月雨「結局、どうやって砲撃を躱すんですか?」


黒霧 「空気の流れを感じるのさ。」


五月雨「空気を伝わるのが音なのでは?」


黒霧 「それは振動であって、流れではないよ。」


黒霧 「空気は川の流れのように絶えず動いている。」


黒霧 「その流れに異物が混じると、乱れが生じる。その乱れを感じるのさ。」


五月雨「なるほど。わからないことがわかりました。」


黒霧 「かなり上手く説明したつもりなんだけどな。」オカシイナ


五月雨「理屈じゃないんですよ。」


五月雨「そもそも、感覚的なことを理屈で説明しようとするのが変なんです。」


黒霧 「へぇ、まさか君に諭されるとは思わなかったよ。」ヤルネ


五月雨「みんな違って、みんないいんです!」ムフー


黒霧 「なら、頭でわからないミーさんは身体で理解しようか。」フフッ


五月雨「あ、なんかわかっちゃったな~。波ですよね~。」ウンウン


黒霧 「それは音だよ。」イクヨー


五月雨「どうあっても私を虐める気か!ていうか、ミーさん久し振りですね!」


五月雨「そこのところもう少し話をしまっ。」ボカーン


五月雨「あぁぁぁぁ!」



無意識の状態が一番強いのではなかろうか。それはもう身勝手の以下略。


五月雨(もう、駄目です・・・。あと一発で、確実に沈みます・・・。)フラフラ


ボカーン


五月雨(あっ。これ、躱せない・・・。)フッ


五月雨「」スカッ


黒霧 「おや。」


五月雨「」ユラユラ


五月雨「」フラッ スカッ フラッ スカッ


黒霧 「まさか、たった2日の訓練であの領域に到達するなんて・・・。」


黒霧 「大概君も化物だよ、五月雨。」フフ


五月雨「」ユラユラ



気づいていたか。これがまだ着任3日目であることに。


黒霧 「お疲れ、五月雨。意識はあるかい?」スィー


五月雨「・・・。」


黒霧 「流石に意識は保てな・・・。」


五月雨「うお~!!」


黒霧 「・・・。」


五月雨「なんですか、これ!身体が勝手に動きましたよ!」キラキラ


黒霧 「」フッ


黒霧 「やっぱり君も、大概化物だよ。」ニコリ


五月雨「ひどい!」ガーン



自分のイメージと文章の表現が一致しているか不安。


黒霧 「さぁ、これで今日の訓練は最後だ。気張っていくよ。」


五月雨「どんとこーい!」ゴゼンデオワリダー


黒霧 「それじゃあ、要望に応えて。」ポチッ


ボカーン< 砲弾の壁


五月雨「ホワァァァァイ!?」ザバン


黒霧 「へぇ、艤装を捨てて潜るとは考えたね。」ヤルネ


五月雨「」プハッ


黒霧 「流石はさみ・・・。」


五月雨「殺す気か、貴様ぁ!!」クワッ


黒霧 「折角褒めてあげようと思ったのに、残念だな。」ニコニコ


五月雨「いや、あの・・・。」サー


黒霧 「仮にも上官に向かって、貴様はないんじゃない?」スラッ


五月雨「あ、上官らしくない自覚はあったんですね。」イガイデス


黒霧 「艤装も無しに、いつまで逃げ果せるかな。」フフフ


五月雨「南無三!」ザバン


黒霧 「・・・潜ったか。」カチン



もしもし、私メリー。あのあなたは何処に・・・お前の後ろだぁ!


五月雨(ふふん。さしものクロさんも水中までは追ってこられないでしょう。)


五月雨(あんな格好ですし。)


五月雨(私はセーラー服ですからね。これは元々、貴婦人方の水着です。)


五月雨(そういえば、クロさんの軍服は少し変わってるんですよね。)


五月雨(どうして外套みたいなデザインなんでしょう?)マックロデスシ


五月雨(今度、訊いてみましょう。)


黒霧 (君に明日は来ないよ。)ガシッ


五月雨(!!??)ガボボボ



初めての人工呼吸は自動車学校の人形相手でした。


五月雨「」チーン


黒霧 「」ハァ


黒霧 「仕方ないな、もう。」スッ


・・・


五月雨「」ゲホッ ガホッ


五月雨「あれ・・・?生きてる?」


黒霧 「ずっと、目を覚まさなければよかったのに。」


五月雨「すみませんでした。調子に乗りました。」ドゲザー


黒霧 「いっそのこと力ずくで・・・。」チャキッ


五月雨「思った以上に怒ってる!?」


黒霧 「冗談だよ。」スッ


五月雨「」ホッ


黒霧 「さぁ、お昼にしようか。」


五月雨「やった!クロさんの料理、楽しみです!」ウキウキ


黒霧 「調子の好いことで。」


五月雨「えへへ~。」ニコニコ



人は見掛けによらない。偶にまんまの人もいる。


五月雨「何やら港のほうから気配が。」ムムッ


黒霧 「もう自分のものにしてしまうとは、本当に君は優秀だよ。」フフッ


五月雨「そうでしょうそうでしょう。」エッヘン


五月雨「ところで、誰なんでしょうね。こんな絶海の孤島に態々やってくるなんて。」ヒマナンデスカネ


黒霧 「必要物資の補給だよ。発電設備も整うはずさ。」


五月雨「ということは、蝋燭だけの暗い生活ともおさらばですね!」ミライハアカルイデスヨ!


黒霧 「いや、電灯を導入する予定は無いかな。」


五月雨「なんでですか!」


黒霧 「IHとか空調設備とかに電力を回したいからね。」


五月雨「LEDなら大して電力食いませんよ?」カガクノスイデス


黒霧 「明るいと落ち着かなくてね。」


五月雨「吸血鬼じゃないんですから。」


ハッ マサカホントニ! チガウヨ?



誰にだって苦手はあるさ。


???「あら、こんにちわ。貴方が教官だったのね。」ウフフ


黒霧 「まさか、君が来るとはね・・・。」


五月雨「間宮さんじゃないですか。」オヒサシブリデス


間宮 「久し振りね、五月雨ちゃん。元気にしてた?」


五月雨「それはもう。伊達に三途の川を眺めてませんよ。」フフン


間宮 「」ピクッ


間宮 「ねぇ、時雨さん。これはどういうことですか?」ニコニコ


黒霧 「」メソラシ


間宮 「無茶はいけませんよ?」ハァ


黒霧 「弁えているつもりだよ。」


間宮 「貴方の言う"つもり"ほど、信用できないものはないですよ。」モウ


黒霧 「わかっているさ。」


間宮 「わかってません。」


ダイタイ アナタハ イツモ・・・


五月雨(間宮さんの前だと、こんな感じなんですね。)アトデカラカッテヤロ



隠し事はカクシゴトです。


五月雨「ところで、おふたりは知り合いなんですか?」


間宮 「えっ?」


五月雨(あれ?)


間宮 「そ、そうね。知らない仲ではないわね。」アセアセ


五月雨「怪しい。」ボソッ


間宮 「ふぇっ!?」


五月雨「何をそんなに焦っているんですか?間宮さん。」


五月雨「おふたりに親交があるのは明白ですし、素直に知り合いと言えばいいではないですか。」


五月雨「それとも、他人に言えないような秘密でもあるんですか?」


間宮 「いえ、そんなことはないですよ?」メソラシ


五月雨「本当に?」ジトー


間宮 「うぅ。」チラッ


黒霧 「・・・。」


間宮 「」スクイヲモトメルマナザシ


五月雨「クロさん?」ジトー


黒霧 「婚約者だよ。」


間宮 「///」カァァ


五月雨「間宮さんって、Mなんですね。」


間宮 「・・・はい?」



色々あるのよ・・・。


五月雨「」チーン


間宮 「何も絞め落とさなくても・・・。」


黒霧 「五月雨は妙に勘が良いからね。」


黒霧 「下手にあしらうより、確実に気絶させておいたほうがいい。」


間宮 「そうですか・・・。これでも、心配してるんですよ?」


黒霧 「そうにしか見えないよ。」コレデモ?


間宮 「真面目な話です。」ジッ


黒霧 「・・・。」


間宮 「無理はしないでくださいね。そのための私達なんですから。」


黒霧 「だから僕は此処に居る。教官としてね。」


間宮 「屁理屈を言う貴方は嫌いです。」


黒霧 「お節介が過ぎる君は嫌いだよ。」


黒霧宮「ふふっ。」チュッ


間宮 「これを最後になんてさせませんから。」ニコリ


五月雨(大人の恋ですねぇ~。)ニヨニヨ



別れ際のタイミングは難しい。


間宮 「では、私はこれで。」


黒霧 「ああ。」


間宮 「勝手に居なくなったら、許しませんから。」


黒霧 「手紙くらいは遺しておくよ。」


間宮 「駄目です。貴方の最期は、私の腕の中でと決めてますから。」ウフフ


黒霧 「強情だね。」


間宮 「私は欲張りですから。約束、ですよ?」ジッ


黒霧 「それは約束でなく、決意というものだよ。」


間宮 「もう、いけず。」ムゥ


黒霧宮「」フフッ


五月雨(さよならを言ってからどれだけ話す気ですか、この人達は。)イライラ


五月雨(一度、別れという言葉の意味を調べさせたほうがいいですね。)



嘘だけは吐きません。


間宮 「」テヲフリ


黒霧 「」テヲフリ


テヲフリ・・・


五月雨(いつまでやってんだよ!もう間宮さん米粒サイズだよ!)


五月雨(間宮さんもまだ振ってるんだろうなぁ。)チャントマエミヨウヨ アブナイヨ


黒霧 「寝たふりはもういいの?」


五月雨「!?」ギクッ


五月雨「いつから気づいてたんですか?」ムクリ


黒霧 「始めからさ。君が落ちたふりをしていることくらいわかるよ。」


五月雨「気づいててあんなことしてたんですか。そうですか。」


黒霧 「隠すようなことでもないからね。」


五月雨「間宮さんも気づいてたんでしょうね。」ハァ


黒霧 「気づいてないさ。」シレッ


五月雨「なんと。」


黒霧 「間宮は体の不調には聡いけど、こういったことは見抜けないから。」


五月雨「最低ですね。」ウワァ



今夜はお楽しみですよ?


五月雨「まったく、こんな人の何処がいいんだか。」ヤレヤレ


黒霧 「間宮に訊いておくれよ。」


五月雨「無理ですよ。絶対、卒倒します。」


黒霧 「そうだね。」フフッ


五月雨「わかってて言ってますよね?」ジトッ


黒霧 「勿論。」


五月雨「クロさんの歪んだ性格は、高すぎる洞察力の所為ですかね。」


五月雨「私の演技だって、一瞥もくれずに看破してましたし。」


黒霧 「一度本当に絞め落としたんだ。力加減くらい覚えるさ。」


五月雨「やっぱり起きてたんですね!さぁ、答えてもらいますよ。クロさんが本当は何の教官なのか!」ズビシッ


黒霧 「続きはベッドの中でね。」ニコリ


五月雨「いやぁぁぁぁ!!」マタシメラレル!



まずは体を温めましょう。


五月雨「」ヘッキシ


黒霧 「風邪かい?」


五月雨「そういえば私、濡れてました。」ビッショリ


五月雨「クロさんもですよね・・・。あれ?」ヌレテナイ


黒霧 「お昼の前に温まっておいで。」ニコリ


五月雨「自分だけ着替えてたんですか!?」ズルイ!


チキショー オボエテロー ハヤクオフロイキナヨ



風呂が気持ちいいのは人生に疲れているから。


ガラガラ


五月雨「おお~。ちゃんとした湯船になってる。」イツノマニ


五月雨「では早速。」チャポン


五月雨「」ハフゥ


五月雨「んぁ~。生きかえるぅ~。」


???「まったくだ。」


五月雨「ん?」


???「この瞬間のために生きていると言っても過言ではないな。」フゥ


五月雨(・・・誰?)ワタシガキヅカナイナンテ



第一印象が強烈な人を見たときの反応は世界共通。


五月雨「誰ですか、貴女。」


???「私か?私は瑞雲だ。」


五月雨(日向さんって、こんなに小さかったかな?)ンンー?


日向ミニ「小さいからと甘く見るものではないぞ。」フッ


五月雨「心が読めるんですか!?」


日向ミニ「皆、そう言うのでな。」


五月雨「あぁ、なるほど。」



何を考えてるかわからない人は、何も考えてないか想像力豊かの二択。


五月雨「ところで、日向さんも着任されるんですか?」


日向ミニ「まぁ、そうなるな。」


五月雨「嗚呼、これでクロさんに地獄を見せられる仲間ができるんですね。」


五月雨「日向さんは航空戦艦ですから、私より厳しそうですね。」ケントウヲイノリマス


日向ミニ「私は工作艦だが?」


五月雨「はい?」


日向ミニ「私は工作艦だ。」


五月雨「・・・はい?」



従姉妹に子供が産まれました。おめでとう!


黒霧 「で、それから押し問答が続いて逆上せたと。」


五月雨「」グッタリ


日向ミニ「うむ、中々信じてもらえなくてな。」


黒霧 「世話の焼ける・・・。」ハァ


日向ミニ「まったくだ。」ウンウン


黒霧 「君も、風呂より先にするべきことがあったんじゃないのかな?」


日向ミニ「そうだな。私が来てやったぞ、父上!」ムフー


五月雨「父上ぇ!?」ガバッ


アッ バタンキュー


日向ミニ「こいつは大丈夫なのか?」


黒霧 「平常運転さ。」モンダイナイ



出でよ、三種の神器!!


黒霧 「生姜焼き、食べるか?」


日向ミニ「無論だな。」


黒霧 「はい、召し上がれ。」コトッ


日向ミニ「いただきます。」


日向ミニ「」パクッ


日向ミニ「やはり、父上の料理は美味いな。」パァ


黒霧 「そうか。」フフ


五月雨「クロさ~ん、私には氷をお願いします。」アツイデス


黒霧 「氷は無理かな。」


五月雨「なんでですかぁ~。」グッタリ


黒霧 「うち、冷蔵庫まだなんだ。」


五月雨「死活問題じゃないですか。」エェ



ふとしたときに会いたくなる。


五月雨「食材の保存はどうするんですか。」ヒモチシマセンヨ?


黒霧 「明日も、間宮が届けてくれるそうだよ。」


五月雨「えぇ~。また来るんですか?」


黒霧 「嫌なの?」


五月雨「あの何とも言えない世界に取り残されるのは、ちょっと・・・。」


日向ミニ「案ずるな。私も居る。」モグモグ


五月雨「日向さんは平気なんですか?父親の情事を見せつけられるなんて、私は御免です。」


日向ミニ「問題ない。瑞雲の発艦準備は既に整えてある。」マカセロ


五月雨「気が早すぎますよ。」モンダイシカネェ


テイウカ コウサクカンニツメマセンヨ? カイゾウズミダ ソウデスカ



もう既にキャラを維持できてない。


五月雨「ところで、クロさんはそっちの口調が素なんですか?」アッ ワタシモオヒルクダサイ


黒霧 「どれも素だよ。意識して変えてるわけじゃないから。」オアガリヨ


日向ミニ「父上は素っ気なさすぎる。」モットカマエ


黒霧 「日向は甘えん坊だね。」


日向ミニ「年相応だ。いずれこの立場は逆転する。」フフン


黒霧 「当分は心配なさそうだ。」フフッ


五月雨(家族に対しては甘々なんでしょうか?凄い懐きようです。)ア ショウガヤキオイシイ



細やかな夢。そう作者の・・・。


ゴチソウサマデシタ オソマツ


日向ミニ「さて、寝るか。」キリッ


五月雨(何故、決め顔を・・・。)


日向ミニ「父上、いつものを頼む。」キリリッ


黒霧 「仕方ないな・・・。おいで。」ポンポン


日向ミニ「わ~い。」トテトテ ポスッ Zzz


五月雨「子供かよ。」


黒霧 「子供だよ?」



口は災いの元


五月雨「ん~。訓練がないと暇ですね。」ダラダラ


黒霧 「なら、今からでも・・・。」


五月雨「結構です。」キッパリ


五月雨「というか、私に話があるんじゃないですか?」


黒霧 「・・・。」


五月雨「こうなることを見越して、午後は休みにしたんですよね?」


黒霧 「・・・。」


五月雨「あの、話を聞く準備は整ってるんですが。」


黒霧 「訊かれてもいないことを話すつもりはないかな。」


五月雨「めんどくせぇ!!」


シー ヒュウガガオキル スミマセン



彼女は婚約者?


黒霧 「どうして間宮と結婚していないのかって?」


五月雨「そうです。冗談とはいえ、お互いを嫌いと言いつつイチャつくなんて普通じゃないです。」


五月雨「どうして結婚ではなく、婚約なんですか?」


黒霧 「この戦争が終わっ。」


五月雨「そういうのはいいですから、本音でお願いします。」


黒霧 「・・・。」


五月雨「そんなに言いづらいことなんですか?」


黒霧 「男女の仲とはそういうものだよ。特に、僕の場合はね。」


五月雨「僕の、ですか。」


黒霧 「そう。これは僕の問題なのさ。」



ちょっとだけよ。


五月雨「何が問題なのかは知りません。でも、クロさんはひとりで抱えすぎだと思います。」


黒霧 「ひとりじゃないさ。間宮も、日向だって居る。」


五月雨「私は除け者ですか。そうですか。」ドヨーン


黒霧 「・・・離れていくからさ。」


五月雨「はい?誰がですか?」


黒霧 「僕が、離れていく。」


五月雨「婚約者も娘も置いてですか?」サイテイデスヨ?


黒霧 「いずれ、わかるときが来るよ。」


黒霧 「この世界に、僕の運命は無い。」トオイメ


五月雨(遂にイカレたか。)


キュウキュウシャ・・・ イヤ ドクターヘリカ


五月雨「はっ!この島、電話がねぇ!!」



ちっちゃい日向?


五月雨「なんでこのサイズなんですか?」


黒霧 「子供だからね。」


日向ミニ「」Zzz


五月雨「私達は艦娘ですよ?生まれてから沈むまで、ずっとこの姿です。」


五月雨「艦娘に子供も大人もありません。」シッテマスヨネ


黒霧 「改装で姿は変わるさ。艦種もまた然り。」


五月雨「小さくなる改装がありますか。誤魔化さないでください。」


黒霧 「僕は、嘘は吐かないよ。」


五月雨「誤魔化さないとも言ってませんね。」


黒霧 「・・・わかってきたようだね。」


五月雨「伊達に長く付き合ってませんから。」フフン


黒霧 「出会ってまだ2日だよ?」



日向の正体


黒霧 「それに、改装しているのは事実だよ。」


五月雨「若返りの改装ですか?そんな改装、聞いたことありませんが。」


黒霧 「表面的なものだからね。性能や艦種は変えずに、姿だけを変えてる。」


五月雨「艦種を変えずにですか?彼女、工作艦ですよね?」


黒霧 「そうだね。」


五月雨「まさか・・・。」


日向ミニ「それ以上はいいだろう。今はまだ、そのときではない。」ムクリ


五月雨「起きてたんですか。」イツカラ


日向ミニ「まぁ、始めからな。」フッ


五月雨「狸寝入りかよ。」



人工島の海上建設についての動画を観た。


日向ミニ「さて、仕事の時間だ。」


五月雨「仕事ですか?まだ基地として稼働すらしていないのに?」


黒霧 「だからこそさ。」


五月雨「どういうことですか?」


黒霧 「日向は、この基地建設の責任者なんだ。」


五月雨「は?」


日向ミニ「」ドヤァ


五月雨「」マジデスカ


日向ミニ「仕事の序でだ。基地の案内をしてやろう。」


五月雨「今更ですね。」


日向ミニ「行かないのか?」シュン


五月雨「・・・行きますよ。」


日向ミニ「そうか!」パァ


五月雨「子供ですね。」ヒソヒソ


黒霧 「子供だからね。」


五月雨「ちょっ!声が大きい!」シー


日向ミニ「私は父上の子供だが?」


五月雨「そういうことじゃねぇ!!」


日向ミニ「ならばどういうことなのだ?」


五月雨「・・・。」テヘッ



沈み続ける海上空港


五月雨「くそぅ。工作艦であの馬力は反則ですよ。」ボロッ


日向ミニ「他人を莫迦にするからだ。」フン


五月雨「この小さな軀の何処にあんな力が・・・。」


日向ミニ「着いたぞ。此処が私の城だ。」


五月雨「これはまた。小さいですね。」コヤデスカ?


日向ミニ「工作艦の城だぞ?工廠に決まっているだろう。」ナニヲイッテイル


五月雨「わかってますよ。それにしたって、もう少し頑張りましょうよ。」


日向ミニ「致し方あるまい。これ以上は島の浮力で支えきれん。」


五月雨「ん?今なんて?」フリョク?


日向ミニ「この島は浮島だぞ?」シランノカ?


五月雨「」マジデスカ



大学では土木専攻でした。


五月雨「なんで浮島なんですか?普通、埋め立てるのでは?」


日向ミニ「それでは時間が掛かりすぎる。」


五月雨「土を入れて終わりじゃないんですか?」


日向ミニ「・・・。」(゚Д゚)


五月雨「なんですか?その目は。」ムッ


日向ミニ「駄目だ。私では手に負えん。」アトハマカセタ


五月雨「えっ。クロさんに説明できるんですか?」


黒霧 「土木系の学科に在籍していたことがあるからね。少しくらいは。」フフ


五月雨(軍学校じゃないのか。)



知識自慢?いいえ、TVの受け売りです。


黒霧 「では、説明を始めようか。」


五月雨「お願いします!」


日向ミニ「終わったら呼んでくれ。」シゴトシテクル


黒霧 「まずは、埋め立ての意義についてだけど。」


五月雨「はい!建物を建てる地面をつくることです!」


黒霧 「そのとおりだね。では、埋め立てにどれくらいの時間が掛かるかな?」


五月雨「一週間くらいですか?」


黒霧 「場所にもよるけど、年単位で時間が掛かるかな。」


五月雨「そんなに・・・。」ホエー


黒霧 「水を含んだ土は軟らかくなるからね。土自体の重さで沈下してしまうんだ。」


五月雨「なるほど、投入した土そのままで積み重なるわけではないんですね。」


黒霧 「そうだね。しかも海底には河川の運搬作用によって運ばれた粘土が堆積している。」


黒霧 「粘土はとても柔らかいから、その上に建物を建てると傾いてしまうんだ。」


五月雨「でも、そこにあるものはどうしようもなくないですか?」


黒霧 「そこは人類の技術力さ。パイプを打ち込んで水を抜くんだ。水が抜ければ粘土は強くなるからね。」


五月雨「パイプを打ち込むだけで水が抜けるんですか?」


黒霧 「粘土層は埋め立て用の土に押されているからね。自然と湧き上がってくるよ。」


五月雨「だったら、此処も浮島にする必要はなかったのでは?」


黒霧 「この基地は急設だよ。」


五月雨「そうでした。因みに、水抜きに掛かる時間は・・・?」


黒霧 「スウェーデンで開発された技術を最大限用いて、2年くらいかな。」(羽田空港の実例)


五月雨「意外と早いですね。」


黒霧 「表面上はね。この方法で解決できるのは、精々深度数十メートルの地盤まで・・・。」


黒霧 「粘土層は200メートルの深さまで存在しているんだ。」


五月雨「なんと。でも、同じ様に水抜きしてしまえば・・・。」


黒霧 「無理だよ。」


五月雨「え?」


黒霧 「その領域は人間が手を出せない不可侵の領域。」


黒霧 「人間は地球の表面を弄っているに過ぎないのさ。」


五月雨「そんな。それではずっと沈み続けることに・・・。」


黒霧 「そのとおり。実際に今も沈み続けている場所がある。」(関西国際空港・羽田空港・神戸ポートアイランドなど)


黒霧 「この沈下は100年以上の時を掛けて進行するんだ。」


五月雨「そんなに・・・。なるほど、それで浮島ですか。」


黒霧 「島自体が浮いていれば、地盤の状態は関係ないからね。」


五月雨「でも、流されたりはしないんですか?」


黒霧 「本土に杭を打ってるから。」


五月雨「津波は・・・?」


黒霧 「どうしようね。」アハハ


五月雨「」エェ


日向ミニ「」


五月雨「どうしたんですか?日向さん。」


日向ミニ「・・・しい。」ボソボソ


五月雨「何か言いましたか?」キコエナイ


日向ミニ「長い!私にもっと構え!寂しかったぞ!!」グスッ


ワルカッタヨ ユルサン ヒシッ


五月雨「やっぱり、こど・・・。」


ナニカイッタカ


五月雨「いえいえ、滅相もございません。」



趣味は機械弄り・・・と言いたい。


日向ミニ「ここからは私の時間だぞ、父上。」


黒霧 「ああ、わかっているよ。」フフ


五月雨「クロさん、艤装の整備なんてできるんですか?」


日向ミニ「父上を甘く見ないほうがいいぞ。」


五月雨「それは身を以て知っていますが、それとこれとは話が違うじゃないですか。」


日向ミニ「父上は艤装の設計から改造までこなせる。」


五月雨「なんでそんな人が軍人やってるんですか。」エェ



混沌の始まり


五月雨「大本営の整備士でもそんなことできませんよ。」


五月雨「精々、明石さんとか夕張さんくらいです。艤装を改造するだなんて。」


日向ミニ「父上、今日は何を造るのだ?」


五月雨「聞いちゃいねぇ。」


黒霧 「五月雨用に大鎌を造ろうかと思ってね。」


五月雨「・・・はい?」


黒霧 「五月雨は砲撃と回避を同時にできない頭だから、近接武器のほうが合ってると思うんだ。」


五月雨「何か莫迦にされてる気がするんですけど。」


日向ミニ「莫迦にされてるのだろう?」


五月雨「というか、接近するまでただの的じゃないですか。」ムゥ


黒霧 「そのための回避訓練じゃないか。」


五月雨「そうでした。」


日向ミニ「任せろ。深海の装甲など軽く斬り裂ける鎌を造ってやる。」フンス


五月雨「まるで死神ですね・・・。」



幼女と少女とそれから彼女。


日向ミニ「父上はひんやりして気持ちいいな。」モゾモゾ


黒霧 「なら、もう少しくっついてあげよう。」ギュッ


キャー クスグッタイゾチチウエ


五月雨「ちょっと、あまり動かないでくださいよ。私が落ちるじゃないですか。」ムゥ


日向ミニ「貴様には床がお似合いだ。」ハッ


五月雨「辛辣ぅ!!夜になると急に辛辣ぅ!!」


日向ミニ「五月蠅いぞ。父上が起きるだろう。」


五月雨「え?クロさん、もう寝たんですか?」


黒霧 「」Zzz


五月雨「」マジカヨ


黒霧茜「」Zzz


五月雨「・・・あれ?」



何も言うな・・・。


五月雨「」ムニムニ


黒霧茜「どうした?羨ましいのか?」


五月雨「本物・・・だと!」ナヌ!?


黒霧茜「私は嘘が嫌いだと言ったはずだが?」


五月雨「そういうことではなくてですね。」


五月雨「・・・なんでクロさんが茜さんになってるんですか。」


黒霧茜「なんだ、そんなことか。私と時雨は同一人物だからな。」


五月雨「・・・はい?」


日向ミニ「おお、母上に会うのは久し振りだな。」


黒霧茜「そうか?私はつい最近に会ったような気がするが。」


五月雨「はいぃ!?」


ウルサイゾ シズカニセンカ スミマセン



双子の姉弟


五月雨「つまりクロさんが茜さんで、茜さんがクロさんということですか?」


黒霧茜「そういうことだ。」


五月雨「いや、どういうことですか。」


日向ミニ「」Zzz


黒霧茜「つまりだな。あれだ・・・。そう、あれだ。」キリッ


五月雨「チェンジでお願いします。」


黒霧茜「何処まで話してよいのか、難しいのだ。」ムゥ


五月雨「では、ひとつだけ。いいですか?」


黒霧茜「すまんな。気を遣わせた。」


五月雨「いつ、入れ代わるんですか?」


黒霧茜「まぁ、そのくらいであれば時雨も怒るまい。」ウム


五月雨(クロさんのほうが立場は上なんですね・・・。)


黒霧茜「時雨が眠ったときだ。」


五月雨「ということは、夜の間は茜さんになってるんですね。」


黒霧茜「必ずしもそうではないが、大体はそのとおりだな。」


五月雨「今朝も茜さんでしたね。」


黒霧茜「眠るのが夜だけとは限らないからな。」


五月雨「クロさんのときも、茜さんは意識がありますよね?」


黒霧茜「何故、そう思うのだ?」


五月雨「茜さんは私を知っていましたから。」


黒霧茜「失言であったか。また時雨に怒られる・・・。」シュン


五月雨(意外にポンコツなところもそっくりだなぁ。)ホンワカ



確認と質問は違うと認識している。


五月雨「それにしても不思議ですね。」


黒霧茜「ひとつの肉体に、ふたつの魂だからな。」


五月雨「いえ、多重人格くらいならそう珍しくもないですけど・・・。」


五月雨「身体まで女性になるってどういうことですか。」シカモオオキイ


黒霧茜「予想はついているのだろう?」


五月雨「まぁ、なんとなくは。」


黒霧茜「下手な嘘はやめろ。殆ど確信しているだろうに。」


五月雨「貴女方姉弟はどうしてそう他人の心が読めるんですか。」コワイデス


黒霧茜「経験故に、な。」


五月雨「経験ですか。」


黒霧茜「因みに、その予想は外れだ。」


五月雨「そんな莫迦な・・・。」


ハナシハオワリダ ネルゾ アイ



ずっと書きたかった。


日向ミニ「父上!父上!母上が帰ってきたぞ!」


黒霧 「ああ、そうだね。」


日向母「すまない。随分と待たせてしまったな。」


日向ミニ「母上ぇ~。」ヒシッ


日向母「ははっ。大きくなったな、我が娘よ。」ダキカカエ


日向ミニ「」ムフー


黒霧 「余程、母が恋しかったらしい。」


日向母「お前も抱きしめてくれていいんだぞ?」


黒霧 「ふふっ。もう離さないからな。」ギュッ


日向母「んっ、苦しいぞ。少し加減しろ。日向が潰れている。」


日向ミニ「私は幸せだぞ、母上。」ムギュー


日向母「そうか?ならばいいが。」


黒霧 「さぁ、帰ろう。我が家へ。」


日向母「ああ。だが、いいのか?あの娘は・・・。」チラリ


黒霧 「気にすることはないさ。僕が本当に愛しているのは君だけだ。」


日向母「おい、娘の前で・・・。恥ずかしいだろ。///」カァ


日向ミニ「母上、照れてる。」カワイイ


日向母「母をからかうな。」コラッ


ワイワイ


間宮 「」マッシロ


・・・


五月雨「という夢を見まして。」


黒霧 「・・・その話、今じゃないと駄目だったのかな?」


五月雨「寧ろ今しかないと思いまして。」フフン


間宮 「」チーン


黒霧 「・・・どう責任を取るつもりなのかな?」


五月雨「責任は男が取るものですよ。ここはやはり王子様のキスで・・・。」ムフフ


チュッ


五月雨「あの・・・。言い終わる前に行動するの、やめてもらえませんか。」


五月雨「あっ、駄目です!そのままディープなほうに行くのは駄目です!!」


ヤメッ ヤメロォ!


4日目の朝が来た。



鈍感でも耐性があるわけじゃない。


五月雨「くそぅ。下手に弄るんじゃなかった。」


日向ミニ「野暮はなしだぞ、五月雨。父上は間宮にぞっこんだからな。」


五月雨「そうですか?私には間宮さんのほうがぞっこんに見えますけど。」


日向ミニ「間宮を駄目にしたのは、父上の一途な愛だろう?」ドヤッ


五月雨「恥ずかしい科白を堂々と・・・。というか、駄目ってはっきり言うんですね。」


日向ミニ「間宮には母上のような武士の気質が足りん。」マダマダミジュク


五月雨「母上ですか。茜さんも、ああ見えて可愛いところありますけど。」


五月雨(クロさんの姉ですからね。多分、あの人も化物ですよね・・・。)ハァ


日向ミニ「///」カァ


五月雨「今更恥ずかしくなるんですか?随分と時間差ですね。」



フラグの概念が確立してからオチが見えるようになってしまった。


五月雨「ところで、昨日の夜から不思議だったのですが・・・。」


日向ミニ「想像のとおりだ。」


五月雨「最後まで言わせてくれませんか。変なところでそっくりですね。」


日向ミニ「私の両親のことだろう?」


五月雨「それも気になりますけど、もう少し浅い内容ですよ。」


日向ミニ「ほう、聞かせてみろ。」


五月雨「クロさんと茜さんは本当の親ではないですよね?」


日向ミニ「・・・そうだな。」


五月雨(いつものあれじゃないのか。)


五月雨「すみません。性分なもので、つい・・・。」


日向ミニ「構わん。いずれはお前も知ることになる話だ。」


日向ミニ「だが、まだそのときではない。それだけだ。」


五月雨「そうですか。」


日向ミニ「ああ、あの島を解放するまではな。」


五月雨(・・・殆ど答えなのでは?)



ちゃんと調整はしてるつもり。


間宮 「朝ご飯ですよ~。」


日向ミニ「わ~い。」トテテ


五月雨「わからない人だなぁ。」


黒霧 「日向のこと?」


五月雨「見た目は子供なのに思考は達観した大人のそれで。でも行動はほぼ子供・・・。」モウナニガナンダカ


黒霧 「日向は出生が特殊だからね。」


五月雨「生まれだけで人格は決まりませんよ。私達艦娘は例外ですが、人格形成は幼少期の経験に基づきます。」


黒霧 「日向も艦娘だよ?」


五月雨「・・・あっ。」ソウデシタ


黒霧 「さぁ、ご飯にしよう。今日は間宮のお手製だ。」


五月雨「本当ですか!?楽しみですね。間宮さんのご飯!」ウキウキ


マミヤサーン キョウノアサハナンデスカ? サバノミソニヨ♪ オォー



三莫迦此処に極まれり。


五月雨「さて、お腹も膨れましたし・・・。やりますか!クロさん!」ムフー


黒霧 「どうしたの?急にやる気だね。」


五月雨「今日、私の人生が変わる。そんな気がするんです。」トオイメ


日向ミニ「・・・阿呆だな。」


間宮 「無茶は駄目ですよ?ふたりとも。」


五月雨「えっ?私も入ってるんですか?」ソンナバカナ


日向ミニ「当然だろう?あんな訓練を考える父上は言うまでもなく、それに付き合うお前も大概だ。」


黒霧 「訓練用の機材を造った日向はどうなんだい?」


日向ミニ「ふっ。イカレているな。」キリッ


間宮 「自分で言っちゃうのね・・・。」



要らぬ気遣い余計なお世話


五月雨「今日のメニューは何ですか~?」


黒霧 「昨日までの成果確認と近接戦闘訓練かな。」


五月雨「もうちょっと声張ってくれませんか~。」キコエナイ


黒霧 「日向、弾速の調整は済んだかい?」


日向ミニ「当然だ。私の仕事は完璧だからな。」フンス


黒霧 「そうか。いつも助かってるよ。」ナデナデ


日向ミニ「」フフン


五月雨「あの!聞いてますかぁ!!」


黒霧 「」ポチッ


砲弾< 音速を超えるぜ!


五月雨「」エッ


チュドーン グワー!


黒霧 「日向・・・?」


日向ミニ「私なりの気遣いだ。」ムフー



これも信頼の形。


黒霧 「生きてるかい?」


五月雨「ナントカ」プカプカ


日向ミニ「あの状態からギリギリで躱すとは。やるな。」フッ


五月雨「衝撃波で吹き飛ばされましたけどね。」


五月雨「というか、掠っただけで腕もげますよ?あれ。」


日向ミニ「父上に鍛えられたお前なら、この程度できて当然だろう?」


五月雨「流石はクロさんの娘ですね。いい感じに狂ってます。」


日向ミニ「そんなに褒めるな。照れるだろう。」フフン


黒霧 「後で調整しとくから。」


五月雨「お願いします。」


黒霧 「それにしても、発射のタイミングを予測するなんて・・・。成長したね。」


五月雨「クロさんのことは信じてますから。」


五月雨「絶対、あのタイミングで撃ってくると。」ニコッ


黒霧 「」フフッ


五月雨「」ニコニコ


間宮 (止めるべきかしら・・・。)



死神の始まり


黒霧 「それじゃあ、本題に入ろうか。」


日向ミニ「これの出番だな。」つ大鎌


五月雨「本当に造ったんですね。」ヒュウガサンヨリオオキイ


黒霧 「大鎌は特殊な戦闘スタイルになるから、早く慣れてね。」


五月雨「うへぇ。」


日向ミニ「ほれ。」スッ


五月雨「はい。って、重い!」ガシャン


日向ミニ「軟弱な奴め。鍛え方がなっとらん!」クワッ


五月雨「貴女が異常なだけです。」オッモ


日向ミニ「父上も持てるぞ?」


五月雨「クロさんを基準にしたら大変なことになりますよ。」


日向ミニ「間宮も・・・。」チラッ


五月雨「なんと!!」


間宮 「えっ?」カルガル


日向ミニ「なん・・・だと。」


五月雨「冗談のつもりが現実に・・・。」


ドウカシマシタカ? ナニモナイデース



愛、故に。


五月雨「間宮さん、大本営に戻らなくて大丈夫なんですか?」


間宮 「心配ないですよ。お爺さまの許可は取ってますから。」ウフフ


五月雨「流石は元帥閣下の孫娘。やりたい放題ですね。」


五月雨「私が本営勤務だった頃もよく出掛けてましたけど、まさか・・・。」


間宮 「はい、時雨さんに逢いに・・・。」ポッ


五月雨「泣きますよ?元帥閣下。」


間宮 「お爺さまの涙は見飽きてます。」ケサモ・・・


五月雨「クロさん?」ニコニコ


黒霧 「」メソラシ


日向ミニ「一途なあーいというやつだな。」



上司の家に挨拶なんて行きたくない。


五月雨「クロさん、元帥の孫娘によく手を出せましたね。」


五月雨「上司の娘なんて悪い想像しかできません。」


黒霧 「別に手を出したわけではないさ。」


五月雨「告白したのが間宮さんだからとか、そんな言い訳は通用しませんよ?」マタマタァ


間宮 「私、告白なんてされてもしてもないですよ?」


五月雨「はい?そんなのでどうやって婚約するんですか。」


間宮 「時雨さんとは、お父様の勧めでお見合いを・・・。」


五月雨「なるほど・・・。」


間宮 「一目惚れでした。」ポッ


五月雨「訊いてませんよ。」



それが宿命ならば抗おう。凄絶にな。


日向ミニ「父上はどうなのだ?」


黒霧 「そうだね。献身的なところに段々とって感じかな。」


日向ミニ「幸せか?父上。」


黒霧 「そうだね。」


日向ミニ「ならば、護らねばなるまい。」


黒霧 「ああ。」


日向ミニ「たとえ世界の理に逆らったとしても。」


黒霧 「それだと、みんなを危険に曝すことになってしまう。」


日向ミニ「致し方あるまい。幸せを護るためならばな。」フッ


黒霧 「・・・。」


日向ミニ「家族と共に在ることが私にとって何よりの幸せだ。」


日向ミニ「この幸せを護りたくはないか?」


黒霧 「まさか娘に諭されるとはね・・・。」フフッ


日向ミニ「それが娘の役目だろう?」


黒霧 「そうかもね。」ナデナデ


日向ミニ「もっと褒めてもいいんだぞ?」ムフン


黒霧 「約束するよ。僕は、僕達の幸せを護る。」


日向ミニ「それでこそ父上だ。私も力を貸そう。」


黒親子「」フフッ


五月雨「・・・なんですか、あれ。」


間宮 「親子の絆ですね。」イイナァ


五月雨「」エェ



危うく忘れるところだった。


五月雨「というか、まだ訓練の途中ですよね。」


日向ミニ「そういえば、そんなこともしていたな。」


五月雨「此処、艦娘の訓練施設ですよね?最優先事項に"も"ですか。」


黒霧 「仕方ないさ。今のところ訓練が必要なのは五月雨だけだからね。」


五月雨「えぇ~。」クロサンマデ


黒霧 「ともかく、まずはその大鎌を満足に扱えるようにならないとね。」


黒霧 「訓練以前の問題だよ。」


五月雨「だったら、もう少し軽く・・・。」


日向ミニ「甘えるな。お前の非力が悪い。」


五月雨「あなた達が怪力なだけですよ。」


間宮 「時雨さんも日向ちゃんも力持ちだから。」ウフフ


五月雨(間宮さんも"あなた達"に入ってるんですけどね。言葉にはしませんが。)コワイカラ



ダンベル何キロ持てる?


五月雨「鍛えろと簡単に言いますけど、ダンベルとかあるんですか?」


日向ミニ「無いなら作ればいいだろう?」


五月雨「暴論・・・。」


黒霧 「間違ってはいないけどね。今回は必要ないよ。」


五月雨「器具なしで鍛えるんですか?効率悪いですよ?」


黒霧 「器具ならあるじゃないか。」


五月雨「何処にですか?」


黒霧 「君の背中に。」


五月雨「まさか・・・。」


黒霧 「大鎌を扱えるようになるための訓練なんだ。実際に振り回すのが一番さ。」


五月雨「すっぽ抜けても知りませんからね。」


日向ミニ「それで怪我をするのはお前だけだ。」


間宮 「え?私は?」


五月雨「言い返せない。」クッ


日向ミニ「精々足掻くことだ。」フフン


イマニミテロヨ チキショーメ


間宮 「・・・私は?」


黒霧 「僕が護るさ。」


間宮 「時雨さん・・・。」ソッ


日向ミニ「五月雨、取り敢えずそれ貸せ。」ブンナゲル


五月雨「我が半身を容易く貸すことは出来ぬ。」


日向ミニ「ならば征け!瑞雲!」


五月雨「うちに艦載機があるとでも?」


日向ミニ「五月雨アタァック!!」グイッ


五月雨「ちょっ!私を投げっ!あぁぁぁぁ!!」


クロサーン ウケトメ ゴシャァッ



これが私達の日常。(最終回フラグではない)


五月雨「クロさんなら、受け止めてくれると信じてたのに・・・。」ゴフッ


黒霧 「僕が受け止めてあげられるのは、一度にひとりまでだから。」


日向ミニ「そこに私も受け止めるくらいの甲斐性はあるだろう?」


黒霧 「勿論さ。」オイデ


日向ミニ「流石は父上だ。」ヒシッ


五月雨「私、日向さんとそんなに身長変わらないと思うんですけど・・・。」


日向ミニ「お前と私では"受け止める"意味が違うだろうが。」


五月雨「私も養子にしろぉ!!」


日向ミニ「ほぅ。"も"とはどういうことか、そこのところ詳しく聞こうじゃないか。」ユラァ


五月雨「走り込みしてきまーす。」ダッ


日向ミニ「逃がすかっ!」ダッ


マテコラー! ヒャー!


間宮 「養子を迎えるなら、結婚しないとですね。」


黒霧 「式はいつにしようか?」


間宮 「えっ・・・?結婚、してくださるんですか?」


黒霧 「日向に叱られてね。いい加減、覚悟を決めたのさ。」


間宮 「時雨さん・・・。」ジッ


黒霧 「間宮・・・。」スッ


???「雰囲気ぶち壊しアタァック!!」


ドンガラガッシャーン


黒霧 「歓迎してくれるんじゃなかったの?日向。」


日向ミニ「それとこれとは別問題だ!」


ギャアギャア


五月雨「賑やかですねぇ~。」ズタボロ


間宮 「これが私達の日常ですよ。」ウフフ


五月雨「その発言は、もう本土に戻る気がないと受け取りますよ?」


間宮 「構いません。私も覚悟は出来ていますから。」


五月雨「そうですか。」


間宮 「あっ。でも結婚の挨拶をしに戻らなくちゃですね。」


五月雨(ショックで亡くならないといいけど。大丈夫かな、元帥。)



やっと常在メンバーが揃うのよ。


「あれですの?この私を配属させようなどという不遜な基地は。」


「そうだね。この辺りの基地っていったら、あそこくらいだろうし。」


「血の滾るような闘いは期待できそうにないですわね。」ハァ


「あはは。相変わらずだね。」


「行きますわよ。」


「あいさ~。」



新人歓迎は穏やかなものがいい。


五月雨「誰か来ますね。」ムッ


日向ミニ「奴らか?」


黒霧 「そうみたいだね。」


日向ミニ「随分と早いな。もう左遷されてきたのか。」チッ


五月雨「えっ。此処って左遷されてくるような場所なんですか?」


黒霧 「知らなかったの?」


五月雨「初耳ですよ!」


日向ミニ「哀れだな、壱号。」


五月雨「余計なお世話ですよ、弐号。」


日向ミニ「私は零号だ!」クワッ


五月雨「知ったこっちゃないですよ。」


???「何を騒いでいるんですの?」


五月雨「おっと。もうご到着ですか。」


???「へぇ、大きな鎌だね。ちょっと見せてよ。」キラキラ


五月雨「ど、どうぞ。」


???「あはぁ~。かっこいいなぁ~。」ウットリ


五月雨(どうしよう。また変態が増えた。)


???「ちょっと、武器マニアも大概にしてくださいまし。そんなものに興味を持って何になりますの?」


日向ミニ「ああ、お前は素手で充分だからな。この怪力熊が。」イラッ


???「なんですの?喧嘩なら買いますわよ、ちっこいの。」ピキッ


アァ? ナンデスノ? バチバチ


五月雨(ふたりの間に火花が・・・。)オゥ


???「えへへへ。」スリスリ


五月雨「私の鎌が!!」



最早定番の流れ。だがそれがいい。


間宮 「もう、ふたりとも。そのくらいで・・・。」


???「年増が出しゃばらないくださいます?」


間宮 「・・・はい?」ピシッ


日向ミニ「」ヤバイ


???「元帥の孫だか何だか知りませんけれど。私、権力に屈する気はありませんの。」


間宮 「へぇ。」ピクピク


???「それから貴方。」


黒霧 「僕のことかな?」


???「ええ、そうですわ。たとえ上官でも、貧弱な人間に従う気はありませんの。」


???「そこのところ、よく理解しておいてくださいまし。」フン


黒霧 「へぇ。なら、勝負しようか。」


???「勝負、ですの?」


黒霧 「そう。僕と間宮、君と最上のツーマンセルで、何でもありの真剣勝負をね。」フフ


???「面白いですわね。いいでしょう、受けて立ちますわ。」フッ


最上 「ボクも賛成だよ~。」


三隈 「三隈の力、思い知るがいいですの!」



どうしてこうなった?


五月雨「え~、それでは。くろみやVSもがみくま、真剣タッグマッチを開催致しま~す。」


五月雨「司会は私、五月雨と・・・。」


日向ミニ「私だ。」


五月雨「で、お送りしま~す。」


五月雨「日向さん。この勝負、どうなるでしょうか?」


日向ミニ「父上と間宮の圧勝だ。」


五月雨「その根拠は?」


日向ミニ「決まっている。私がそう望んでいるからだ!」クワッ


五月雨「こちらからは以上で~す。」


三隈 「なんですの?あれは。」


最上 「さぁ・・・。」


チチウエー! ニドトオモテヲアルケナクシテヤレェー!! ソレハサスガニ・・・ モウヒュウガチャンッタラ マカセテ エェー



地獄。それは戦闘描写が苦手なくせにこんな展開にした私の責任。


三隈 「いきますわよ!」ボカーン


五月雨「さぁ、三隈さんの砲撃によって闘いの火蓋は切られました。」


間宮 「良い狙いをしてますね。ですが、この程度の砲撃で私は捉えられません。」スッ


五月雨「間宮さん、これを最小限の動きで躱します。あの人、本当に給糧艦ですか?」


日向ミニ「さぁな。」


最上 「こっちもいくよ~。」ジャキッ


五月雨「最上さんも三隈さんにつづ・・・。」


黒霧 「」ニタァ


最上 「へっ・・・?」


黒霧 「居合い抜刀・夜の帳。」ザンッ


最上 「」カハッ


三隈 「最上ぃ!!」


五月雨「まずいですよ、日向さん。クロさんが思った以上にキレてます!」ヒソヒソ


日向ミニ「問題ない。いいぞ!もっとやれ、父上ぇ!!」フハハ


五月雨(駄目だ。この親子、イカレてやがる。)


三隈 「・・・最上。」クッ


間宮 「他人の心配をしている場合ですか?」ユラァ


三隈 「」ヒッ


三隈 「こ、来ないでくださいまし!」ボカーン


間宮 「」フンッ ガキーン


三隈 「嘘・・・ですの。」


五月雨「今、砲弾を殴り飛ばしましたよね?」


日向ミニ「やるな。くっ、認めざるをえんのか!?」ギリッ


五月雨「こんなときに何の話ですか?」


日向ミニ「父上と間宮の結婚の話に決まっているだろう!」クワッ


五月雨「まだそのネタ引っ張る気ですか!」


日向ミニ「私は・・・。私は認めんかりゃにゃあ!!」ボロボロ


五月雨「えぇ、ガチ泣き?」


ウアアアア クロサーン オタスケー


間宮 「あらあら、これは勝負どころではないですね。」


黒霧 「間宮、最上を頼む。」


間宮 「ええ、早く行ってあげてください。」


黒霧 「ああ。」シュンッ


間宮 「さて・・・。」ギロリ


三隈 「」ビクッ


間宮 「どうしてくれましょうか。」ウフフフ


三隈 「」ビクビク


最上 「」チーン



本当に怖いのは大体女性。


間宮 「貴女、前の鎮守府では相当やんちゃしていたようですね。」


三隈 「・・・はい。」ヒッ


間宮 「此処での勝手は、私が許しません。いいですね?」ニコニコ


三隈 「肝に銘じておきます!」ビシッ


最上 「んん・・・。あれ?生きてる。」パチクリ


間宮 「最上さんも起きたようですし、私はこれで失礼します。」


間宮 「先程の言葉。くれぐれもお忘れなきよう、お願いしますね。」ニコリ


三隈 「Yes ma'am!!」ビシッ


最上 「・・・。」ポケー


最上 「みっちゃん?」


三隈 「その呼び方はやめてくださいまし!」


最上 「じゃあ、くまりんこ。」


三隈 「みっちゃんでお願いしますわ。」



地雷から踏まれにくるスタイル。


日向ミニ「」ヒシッ


黒霧 「」ナデナデ


五月雨「いい加減、このくだりやめませんか?」


日向ミニ「五月雨い。」


五月雨「言葉に悪意を感じるのは気の所為ですよね~?」イラッ


黒霧 「好きなようにさせてあげておくれ。日向はまだ子供なんだ。」


五月雨「元凶が何を暢気なこと言ってるんですか。」


五月雨「クロさんがそうやって甘やかすのがいけないんですからね。」モウ


日向ミニ「お前は私の何だ。」ジトッ


五月雨「家族ですけど?」


日向ミニ「・・・そうか。///」テレリ


五月雨(よかった。地雷は回避できたみたい。)フゥ


間宮 「お待たせしました~。」


五月雨(世界は残酷だった。)オゥ



私、将来お父さんのお嫁さんになる!


日向ミニ「」ムッスー


間宮 「あの・・・。日向ちゃん?」


日向ミニ「・・・なんだ?」


間宮 「私、何かしたかしら?」オロオロ


日向ミニ「心当たりが無いのなら、していないのではないか?」フンッ


間宮 「なら、どうして・・・。」


日向ミニ「・・・。」


黒霧 「日向、変えようとしなければ何も変わらないよ。それを教えてくれたのは日向じゃないか。」


日向ミニ「」ムー


日向ミニ「・・・からだ。」ボソボソ


間宮 「ごめんなさい。もう一度お願いできるかしら?」


日向ミニ「これからするからだ!」


五月雨「はぁ?」


間宮 「えっと、何をかしら?」


日向ミニ「結婚したらお前は、父上を独り占めする!」


間宮 「そんなことしないわ。だって時雨さんは日向ちゃんのパパでもあるんだから。」


日向ミニ「口ではどうとでも言える!」


日向ミニ「女というものは、一度手に入れた男はたとえ子供が相手でも手放したくなくなるものなんだ!」


五月雨「いやいや、それは言いすぎでしょう。」


日向ミニ「私がそうなんだ!間違いない!」クワッ


間宮 「えっ・・・?」ピシッ


五月雨「つまり日向さんは、父と呼ぶクロさんのことを男として意識していると。」ホホウ


日向ミニ「私は何を・・・。何故こんな所に?」ハッ


五月雨「誤魔化せませんよ?」


日向ミニ「今のはなかったことにしてくれ。」


五月雨「間宮さんは気絶しちゃいましたし、クロさんがいいなら私はそれで。」チラリ


黒霧 「娘から愛されるのはいいことだと思うよ。」ニコニコ


日向ミニ「父上ぇ。」キラキラ


五月雨「駄目だこいつら、手に負えねぇ。」


・・・


三隈 「私達、とんでもない場所に来てしまったようですわね。」


最上 「そうかな?ボクは楽しそうな場所だと思うけど。さっき見てきた場所に比べたら。」キキタイ?


三隈 「この世もあの世も地獄ということですわね。」エンリョシマスワ



高校・大学デビューは慎重に。


黒霧 「自己紹介がまだだったね。僕は黒霧時雨。この基地の責任者だよ。」


五月雨「五月雨です。今は訓練生ですが、いずれはクロさんと同じく教官になる予定です。」ヨロシクデス


三隈 「クロさん?」


黒霧 「僕のことだよ。」


三隈 「上官を渾名で呼んでいますの?」


五月雨「駄目ですか?」


三隈 「いえ、駄目というわけでは・・・。」


最上 「いいじゃん。ボク達もそう呼べば。これからよろしくね、クロさん。」ニコッ


黒霧 「よろしく、最上。」ニコリ


三隈 「もう。貴女はまったく・・・。」


黒霧 「君は呼んでくれないのかな?」


三隈 「うぅ・・・。これからよろしくですの、クロさん。///」カァ


黒霧 「うん。よろしくね、みっちゃん。」フフッ


三隈 「聞いていましたの!?///」カァ


モウ ヤメテクダサイマシ


最上 (これから楽しくなりそう。)フフッ



一度決まった関係性を変えるのは難しい。


間宮 「改めて紹介することもないかとは思いますが、間宮と申します。貴女方と同じく元人間の艦娘です。」


三隈 「先程は、大変な無礼を・・・。申し訳なかったですの。」フカブカ


間宮 「いえ、いいんですよ?今後の身の振り方さえ考えていただければ・・・。」ニコニコ


三隈 「はい・・・ですの。」タラー


日向ミニ「私は日向だ。工廠担当だ。この基地の設備や艤装に関しては私に訊くといい。」


最上 「うん。よろしくね、日向ちゃん。」ニコッ


日向ミニ「」ジー


最上 「どうしたの?」


日向ミニ(身長のことに触れないとは、こいつは善い奴だな。)キラキラ


日向ミニ(あいつと違って・・・。)チラリ


三隈 「な、なんですの?」


日向ミニ「怪力熊が。」ボソッ


三隈 「本当になんですの!?」



このノリが楽しいのは当人だけ。(一部例外除く)


五月雨「この基地も大所帯になってきましたね。」


三隈 「他にも誰か居ますの?」


黒霧 「うちは僕と日向、五月雨、間宮、三隈、最上の6人だけだよ。」


三隈 「大所帯・・・?」


五月雨「この基地の全容を見ればわかりますよ。この言葉の意味が・・・。」


・・・


最上 「確かに、6人でも大所帯だね。」アハハ


三隈 「この基地、狭すぎですの!」クワッ


五月雨「所長。」


日向ミニ「なんだね、五月雨くん。」


五月雨「基地拡張の検討を・・・。」


日向ミニ「却下だ。」


五月雨「せめて最後まで言わせ・・・。」


日向ミニ「父上との距離が開いてしまうからな!」フハハ


五月雨「開き直ったな、ファザコンめ。」


日向ミニ「血の繋がりは無いからファザコンではない!」クワッ


五月雨「それ前に私が言ったら怒りましたよねぇ!?」


ナンノコトカナ? コノキズヲワスレタトハイワセマセンヨ


三隈 「なんですの・・・。この基地。」エェ


最上 (いいなぁ。ボクも交ざりたい。)キラキラ


間宮 (日向ちゃん、楽しそうね。)ニコニコ


黒霧 (夕飯の材料、足りるかな?)ウーン



これも一種の娯楽。


カポーン


最上 「ふぅ~。温まるぅ~。」ノビノビ


三隈 「ドックはちゃんとしてますのね。」チャポ


五月雨「一日の疲れを癒やす場ですからね。当然です。」


間宮 「いえ、多分違うと思いますよ?」チラリ


日向ミニ「ん?ああ、私は風呂が好きだからな。」


五月雨「欲望に忠実すぎる・・・。」


最上 「まぁ、でもいいんじゃないかな?ボクもお風呂は広いほうが好きだし。」


三隈 「そうですわね。」


日向ミニ「もっと褒めろ。」フフン


黒霧茜「流石は日向だ。」ナデリコ


五月雨「なんで居るんですか・・・。」エェ


黒霧茜「時雨のほうがよかったか?」


五月雨「そういうことじゃねぇです。」


間宮 「時雨さんと混浴・・・。///」ボンッ


三隈 「誰ですの?」


最上 「あの人、何処かで・・・。」ウーン


日向ミニ「間宮が沈んでいく。」オォ


五月雨「エマージェンシィ!!」



初めて会った気がしない彼女。スイミングスクールの同級生だった。


五月雨「大丈夫ですか?間宮さん。」


間宮 「ええ、なんとか・・・。」ボー


五月雨「これは駄目なやつですね。」


日向ミニ「そこに寝かせておけ。」


五月雨「これ、リゾートとかにあるやつじゃないですか。」ハジメテミタ


日向ミニ「ああ、作っておいた。」


五月雨「自分が使いたいからですか?」マサカ


日向ミニ「他にどんな理由があるのだ?」


五月雨「ですよねー。」アハハ


最上 「あぁー!!」


五月雨「」ビクゥッ


三隈 「なんですの。いきなり・・・。」ジト


最上 「思い出した!この人、佐世保の憲兵隊・隊長、黒白雪だ!」


五月雨「憲兵隊の隊長?茜さんが?」


三隈 「そんなはずありませんわ。黒白雪は佐世保襲撃の際に戦死していますのよ?」


最上 「間違いないって!実は生きてましたとか、よくあるじゃん!」


三隈 「そんな、映画じゃないんですから・・・。」


日向ミニ「いや、最上の言うことは間違っていないぞ。」


三隈 「え・・・?」


最上 「ほらぁ!」


日向ミニ「母上は確かに、佐世保の憲兵隊を束ね、黒白雪と海軍の連中に恐れられた憲兵だった。」


五月雨(茜さんが憲兵隊出身ということは、クロさんも・・・。冗談だったのに。本当に陸軍だったなんて・・・。)


黒霧茜「・・・時雨に叱られる。」グスッ


五月雨「私も一緒に叱られてあげますから。」ナカナイデクダサイ


日向ミニ「まったく、母上はドジっ娘だな。」ヤレヤレ


五月雨「黙れ、確信犯。」


日向ミニ「母上の泣き顔は、こう・・・クるものがあるな。」ハァ ハァ


五月雨「変態だぁぁぁぁ!!」ワカッテタケド!


三隈 「可愛らしい方ですわね。」


最上 「可哀想ともいうね。」


三隈 「意味が全然違いますの。」



一度ボロが出るともう止まらない。


三隈 「佐世保の黒白雪といえば、確か弟君がいましたわね。」フム


五月雨「クロさんのことですか?」


三隈 「そうですけど、そうじゃありませんの。」ウーン


最上 「舞鶴の真宵烏?」


三隈 「それですわ!」ビシッ


五月雨「あぁ、憲兵なのに海に出て姫級を沈めたとかいうあの・・・。クロさんなら納得ですね。」


三隈 「ですが、華々しい経歴を持つ彼らが何故こんな所に?」


五月雨「クロさん達が前線に出たほうが早く戦争が決着しそうだからとかじゃないですか?」


日向ミニ「聡いな、五月雨。」ミナオシタゾ


五月雨「あれ?合ってた?」


日向ミニ「それが全てではないがな。大方、そんなところだ。」


五月雨「でも、訓練基地だから出撃は皆無ですよ?」


日向ミニ「全てではないと言っただろう?」


五月雨「寧ろそっちが主な理由なのでは・・・。」


日向ミニ「いずれ、わかることだ。」


五月雨「・・・あれ?茜さんは?」キョロキョロ


最上 「沈んでる。」ソコニ


五月雨「本日2度目のエマージェンシィ!!」


黒霧茜(はぁ・・・。憂鬱だ。)ブクブク



案ずるな。彼らは丈夫だ。少なくとも身体は。


五月雨「何やってるんですか!茜さんひとりの身体じゃないんですから、気をつけてください!」プンスコ


黒霧茜「いや、すまん。少し考え事をしていてな。」


五月雨「それで溺れただなんて笑えませんよ!」


黒霧茜「問題ない。30分は潜水できるからな。」フフン


五月雨「・・・さい。」


黒霧茜「ん?」


五月雨「そこに直りなさいと言ったんです。」ゴゴゴ


黒霧茜「・・・はい。」シュン


イイデスカ アカネサンノカラダハ・・・


最上 「五月雨ちゃんも中々やるね~。」


三隈 「ただのツッコミ担当ではなかったということですわ。」


日向ミニ「嗚呼、母上の心が大破していく。///」コウコツ


最上 「引き継ぎはみっちゃんに任せるよ。」スタコラー


三隈 「逃がすと思って?もがみん。」ガシッ


最上 「は・な・し・て~。」グググ


三隈 「放しませんわ。」ウフフ


ワーワー ギャーギャー


間宮 (・・・もう少し、気絶しておきましょうか。)


その後、耐えかねた茜によって叩き起こされた時雨が場を収めました。



艦これ漫画を見返して思い出した。


最上 「ねぇ、みっちゃん。」ヒソヒソ


三隈 「なんですの?」


最上 「五月雨ちゃんってさ、本当に五月雨なのかな?」


三隈 「・・・は?」(゚Д゚)


最上 「いや、そんな何言ってんのこいつみたいな顔してないでさ。」


最上 「おかしいと思わない?」


三隈 「別に何も・・・。」


最上 「あの五月雨がお風呂で転けなかったんだよ!?」


三隈 「貴女は彼女を何だと思ってますの?」


最上 「さっきだって!五月雨ちゃんの足許に石鹸滑り込ませたら、普通に蹴り返してきたし!」


三隈 「呆れ果てましたの・・・。というか、何してくれてますの!」


ギャアギャア・・・


日向ミニ「ドジっ娘じゃない五月雨は、五月雨でないらしいぞ。」フッ


五月雨「こちとら命懸けで直したってんですよ。」ケッ


日向ミニ「そこでものは相談なんだが・・・。」


五月雨「なんですか?」


ゴニョゴニョ ホホウ イイデスネ ダロウ?



鏡に映った自分が自分自身であることを信じたくない日もある。


最上 「みっちゃんは戦闘狂のくせに小心者過ぎるんだよ!」


三隈 「なっ!もがみんはマイペースが過ぎますの!少しは立場というものをっ。」


???「おうおう!どうしたどうした。喧嘩かい?」


三隈 「・・・。」


最上 「・・・。」


???「なんでぇ、あたいの顔に何か付いてるかい?」


三隈 「もがみん・・・。私が間違ってましたの。」


最上 「・・・それだけ?」ジトッ


三隈 「申し訳なかったですの・・・。」ペコリ


最上 「うん、許す。」


???「おうおう、仲直りできたみてぇだなぁ。これにて一件落着ってか?」ニシシ


最上 「えへへ、涼風ちゃんの御蔭だよ。ありがとねっ。」ニコッ


涼風?「ん?あんだって?」ズイッ


最上 「涼風ちゃんの御蔭で仲直りできたよ。ありがとねっ。」ニコリ


涼風?「あぁんだってぇ~?」ズズイッ


三隈 「貴女、本当に涼風さんですの?」クビカシゲ


涼風?「とんでもねぇ~。あたしゃ、五月雨さんだ。」ムフン


三隈 「・・・最上。」


最上 「」ダラダラ


三隈 「私の謝罪を返してほしいですの。」ニコー


最上 「また今度ねっ。」ダッ


三隈 「最上ぃぃぃぃ!!」マチナサイ!!


ワーワー ドンガラガッシャーン! モガミィィィィ!!


日向ミニ「何も壊していないといいが・・・。」フアンダ


五月雨「それにしても、髪を結んで口調を変えたくらいで見抜けないものですかね。」チョットショックデス


黒霧 「五月雨も間違えたことあったよね?」


五月雨「あぁ、初めて黄泉の川辺に行ったときですか?あれはノーカンですよ。」アハハ


三隈 「黄泉・・・。死!?」


三隈 「嫌ですの!まだ死にたくありませんの!!」


最上 (嗚呼、川の向こうで鈴谷が手を振って・・・。)チーン



新入りよ、現実を受け止めろ。


最上 「酷い目に遭った・・・。」


三隈 「自業自得ですの。」フンッ


最上 「今日はもう疲れたよ。早くベッドで落ち着きたい。」フラフラ


三隈 「それには同意しますの。この基地は色々と規格外過ぎて疲れましたの。」


最上 「それ自体は楽しいからいいんだけどね~。」アハハ


三隈 「全然よくありませんの・・・。」ハァ


ガチャリ


最上 「・・・。」


パタン


最上 「んん~?」クシクシ


三隈 「どうかしまして?」


最上 「いや、寝室って此処で合ってるよね?」


三隈 「ええ、間宮さんに訊きましたの。間違いありませんわ。」


・・・ダヨネ ナンデスノ?


最上 「ベッドがひとつしか無い・・・。」


三隈 「まさか、そんなはずありませんの。」ガチャ


ベッド< シングルサイズやで。


三隈 「マジですの・・・。」


最上 「みっちゃんと添い寝か~。」アハハ


三隈 「断固拒否しますわ。」


ナンデサー アナタノネゾウサイアクデスノ!!


五月雨「なんで最上さんの寝相を知ってるんでしょうね~。」ニマニマ


日向ミニ「他人のことを言えた口か?」


五月雨「そうですよね~。私が寝た頃を見計らって日向さんがクロさんにキ・・・。」フガッ


日向ミニ「貴様・・・。今夜はベッドで眠れると思うなよ。」ギラッ


五月雨「そっちこそ、バラされたくなければ温和しくしておくことですね。」フッ


クッ ワタシノマケダ フフン ショウリ♪


三隈 「・・・帰りたい。」


最上 「まだ一日も経ってないよ?」



思い出してみよう。この基地に寝室は・・・。


間宮 「こうやって夜を過ごすのは初めてですね。」ヨリソイ


黒霧 「陸軍の憲兵と海軍の艦娘だったからね。こんなに近くで君を感じたことはないよ。」ヨリソワレ


五月雨(そらそうでしょうね・・・。)


間宮 「これからはずっと、傍に居ます。」ギュッ


黒霧 「あぁ・・・。」フフッ


日向ミニ「間宮よ、もっと寄ってくれ。落ちてしまいそうだ。」グイッ


五月雨(本当ですよ。)


間宮 「これ以上は・・・。その、唇が・・・。///」カァッ


日向ミニ「今更何を言うか。そのまま窒息してしまえ。」ムスッ


間宮 「時雨さんと、一晩中・・・!///」ボッ


五月雨「ちょっと、あまり間宮さんをからかわないでくださいよ。ただでさえ暑苦しいんですから。」タイオンガ


三隈 「シングルベッドに6人で寝ればそうもなりますわ。」ナンデコンナコトニ


最上 「」Zzz


三隈 「順応が早すぎますの・・・。」



このナンバリングもいつまで続くことやら。


5日目・・・。


五月雨「おはようございます。」ポヤポヤ


三隈 「おはようですの・・・。」フラフラ


最上 「」Zzz


五月雨「寝不足ですか?三隈さん。」


三隈 「ええ、あんな状態で眠れるはずありませんの。一部を除いて・・・。」チラリ


最上 「」スヤー


ドウシテクレマショウ・・・ マァマァ


三隈 「ところで、他の方々は何処へ行きましたの?」


五月雨「クロさんは港だと思います。うちには冷蔵庫が無いですから、物資搬入の準備をしているはずです。」


三隈 「そうですの・・・。ん?冷蔵庫が無い?」


五月雨「間宮さんは朝食の仕込みかな?日向さんは、クロさんと一緒なんじゃないですか?」タブン


三隈 「ちょっと待ってくださいまし。冷蔵庫が無いって・・・。大丈夫ですの?」


五月雨「まぁ、なんとかなるんじゃないですか?」アハハ


三隈 「心配ですわ。」ハァ


最上 「」グガー


三隈 「いい加減起きてくださいまし!」バチーン


イッタァ!! サッサトオキマスノ!


五月雨(今頃、輸送部隊が編成されてるんだろうな・・・。旗艦、誰だろ?)


・・・


???「急な異動が決まったかと思えば、すぐさま小間使いかいな・・・。ええ度胸しとるなぁ、大本営。」オボエトレヨ


ウゥ ベッドオモ・・・



ジェイソン・スゲーサム


日向ミニ「穏やかな海、爽やかな潮風。良い朝だな、父上。」


黒霧 「そうだね、日向。」


日向ミニ「こんな良い朝を迎える日には、何かが起こる気がしないか?父上よ。」


黒霧 「もう既に色々と起きてしまった後だけどね。」フフ


日向ミニ「確かにそうだな。」フム


黒霧 「姉さんと僕が肉体を共有していること。」


日向ミニ「父上と母上が元憲兵隊であること。」


黒霧 「まだまだ隠していることはあるけれど・・・。」


日向ミニ「それを打ち明けるのは今ではない・・・か?」


黒霧 「そういうこと。」


日向ミニ「誰に何処まで話すつもりなのだ?父上。」


黒霧 「そうだね。いずれこの基地の常在メンバーには、この世界に関すること全てを・・・かな。」


ザーザー ピピッ


日向ミニ「・・・無線か?」


黒霧 「ああ、彼女達からだ・・・。」ナンダロ


???『サメ・・・デカイ・・・タスケロ。』


日向ミニ「行くのか?」


黒霧 「これを無視できるほど、冷酷ではないつもりだよ。」


日向ミニ「まぁ、そうなるな。」フフッ



行き先は事前にお伝えください。


最上 「・・・痛い。」ヒリヒリ


三隈 「今日から私達の訓練も始まりますの。もっと気を引き締めてくださいまし。」フンス


ミッチャン ソンナキャラダッケ? ダマリマスノ


間宮 「皆さ~ん。朝ご飯の用意ができましたよ~。」ヒョコッ


三隈 「」ビクゥッ


五月雨「は~い。今、行きま~す。」


三隈 「すぐに支度します、ですの!」ビシッ


最上 (あぁ、間宮さんが怖いのか。)ナルホド


間宮 「そんなに堅くならなくても大丈夫ですよ。」ウフフ


間宮 「ところで、時雨さんと日向ちゃんを知りませんか?」


五月雨「港じゃないですか?」


間宮 「そのはずなんですけど、姿が見当たらなくて・・・。」


ドコニイッタンデショウ? ・・・サァ?


・・・


日向ミニ「よかったのか?何も言わずに出てきて。」


黒霧 「まぁ、なんとかなるさ。」


日向ミニ「・・・このまま、何処かへ行ってしまうのもいいかも知れないな。」


黒霧 「職務放棄は勘弁しておくれ。」アハハ


日向ミニ「冗談だ。」フフッ


黒霧 「何割くらい?」


日向ミニ「3割だな。」キリッ


黒霧 「そう・・・。」


日向ミニ「ああ、そうだとも。」フッ



道端で昔の知人とすれ違ってもわからない。女性は特に。


日向ミニ「ところで、方向が逆ではないか?父上。」


黒霧 「ちょっと用事があってね。」


日向ミニ「それは、この先に居る艦娘と関係があることか?」


黒霧 「まぁ、そういうことになるね。」フフッ


日向ミニ「そうか。」


・・・


???「あかん。限界や。こない重いもん、うちひとりで運べるわけないやろ・・・。」ゼェ ハァ


???「牽引限界を超えて積載過多やから、装備外して抱えていけとか・・・。」グヌヌ


???「艦娘舐めとんのか!!孫が居るんかなんか知らんけど、防犯グッズ多すぎやろ!鮫用の撃退銛?いつ使うねん!」


???「孫の安全を守る前に、まずうちの安全を守らんかい!!」ウガー


ハァ ハァ


???「・・・疲れた。」


???「もう深海棲艦の襲撃に遭ったことにして帰ろかな・・・。」


???「ん?人影?あれは・・・。」ンー


???「!!」パァ


???「クロさんやぁ!!」キラキラ


オォーイ! クロサーン!! ・・・チチウエ ヨケルジュンビハイイカ? ヨウシャナイネ



彼女は過去を知る者。色々あった者。


???「クロさぁーん!!」トウッ


黒霧 「おっと。久し振りだね、龍驤。」ダキトメ


日向ミニ「」ピシィッ


龍驤 「えへへ。ほんま久し振りやなぁ。何年振りやろか?」ニッコニコ


黒霧 「あのとき以来だからね。3年くらいかな?」


龍驤 「もうそんな経つか。でも、またクロさんに会えて嬉しいわぁ。」スリスリ


黒霧 「ああ、僕もだよ。」ナデナデ


日向ミニ「・・・おい。」ユラァ


龍驤 「ん?なんや、日向か?えらいちっこいなぁ。」マジマジ


日向ミニ「父上から離れろ。」ギロッ


龍驤 「」ヒッ


日向ミニ「」コーホー


龍驤 「なんや、クロさん結婚したんか。おめでとうな。」フルエゴエ


黒霧 「うん、ありがとう。」ニコリ


日向ミニ「」ヒシッ


龍驤 「えらい懐かれとるんやね・・・。」


黒霧 「僕の愛する娘だからね。」フフ



買い物中、ママ友との談笑に花咲かせる母の足許の物語。


黒霧 「龍驤は輸送任務中かな?」


龍驤 「そうや、ちょっち聞いたって~な。あんな、大本営の爺がな・・・。」マルマルウマウマ


龍驤 「・・・てなわけや。どう思う?」


黒霧 「大変だね、龍驤も。」フフ


龍驤 「わかってくれるかぁ?流石はクロさんや。やっぱり現場を知っとる指揮官は違うわ。」ウンウン


黒霧 「」ニコニコ


龍驤 「だいたい、あの爺は心配性が過ぎんねん。うちら艦娘が鮫なんぞにやられるかいな。」


黒霧 「鮫?」


龍驤 「そうや。なんやようわからんけど、鮫用の撃退銛が荷物の中にあってん。」


龍驤 「ほら、これや。」つ撃退銛


黒霧 (注入針付き・・・。中身は、毒か。)フム


黒霧 「これは僕が預かっておくよ。いいかな?」


龍驤 「え?うちはかまへんけど。なんや、ほんまに鮫おるんか?」クビカシゲ


黒霧 「まぁ、ちょっとね。」フフ


日向ミニ「いつまで駄弁っているつもりだ?龍驤。」ジト


龍驤 「い、いや。久し振りの再会なんやから、少しくらい許したってぇな。」タジッ


日向ミニ「話なら輸送中でもできるだろう?」コーホー


龍驤 「お、仰るとおりで・・・。」


黒霧 「なら、僕達も手伝おう。この量は軽空母の許容量を超えてる。」


龍驤 「ほんまか!?」キラキラ


黒霧 「日向も手伝ってあげるよね?」ニコリ


日向ミニ「父上が言うなら、仕方あるまい。」フン


龍驤 「クロさん、日向。ほんま、ありがとうな!」ニッコー


日向ミニ「私は父上に言われたから手伝ってやるだけだ。///」プイッ


ナンヤ テレトンノカ? テツダッテヤランゾ



あんまり気にしてたら人付き合いなんてできない。


龍驤 「」ホエー


黒霧 「さぁ、行こうか。僕達の基地へ。」カルガル


日向ミニ「早く済ませて、奴らの所へ行かねばな。」カルガル


龍驤 「クロさんはともかく、日向もえらい力持ちなんやな。」サスガオヤコ


日向ミニ「お前が非力なだけだ。先に行くぞ。」フン


黒霧 「遅れちゃ駄目だよ、龍驤。」スーイ


龍驤 「あっ!ちょっ!待ってぇ~な!」ワタワタ


オイテイカントイテー! ハヤクコイ チッコイノ キミニダケハイワレタナイワ!!


・・・


間宮 「ドウシマショウ」オロオロ


五月雨「間宮さん、いい加減落ち着きましょうよ。大丈夫ですって。何たって、クロさんなんですから。」


最上 「そうだよ。あの真宵烏が簡単に死ぬはずないよ。」


三隈 「ちょっと、もがみん!貴女、もう少し言葉を選べませんの!?」コソコソ


最上 「いや、本当のことだし・・・。まぁ、日向ちゃんと駆け落ちしたんなら話は別だけどさ。」


間宮 「カケオチ・・・」ウツロナメ


三隈 「貴女って女は!貴女って女は!もう!!」バシバシ


最上 「痛っ!痛いって!わかった。ごめんって!」


五月雨(どうしよう。本当にありそうで怖い。でも、クロさんなら・・・。いやしかしぃ。)ムゥ


オォーイ! オォーイ!


五月雨「ん?あれは・・・?」ンー?


間宮 「時雨さん!!」シュバッ


五月雨「え?この距離で?ていうか、はやっ!?」


三隈 「ともかく、最悪の事態は回避できたようで何よりですの・・・。」ハァ


最上 「クロさんと、日向ちゃんと・・・誰?」チッコイカゲガフタツ


五月雨「龍驤さんじゃないですか?紅い服着てますし。」


最上 「えっ?でも龍驤にしては装甲が・・・ねぇ。」


五月雨「そうですね。これは触れないほうがいいやつでしょうか?」


最上 「いや、龍驤のことだからツッコミ待ちということも・・・。」


五月雨「なるほど、悩みどころですね。」


ウーン・・・


三隈 「日向、貴女も他人のこと言えませんの。なんですの?あの出鱈目な積載量は・・・。」エェ



裏設定により彼女の個性は失われました。


龍驤 「この基地の物資搬入を担当する龍驤や!みんな、よろしゅうな!」ニッコリ


五月雨「よろしくお願いします・・・。」チラチラ


最上 「うん、よろしくね・・・。」チラチラ


三隈 「よろしくですの。」ニコニコ


龍驤 「なんや?さっきからチラチラと。見るなら思っきし見たらんかい。」ムッ


五月雨(これは訊いてもいいやつでしょうか・・・。)


三隈 (ですが、これは女性にとってデリケートな問題ですの。ここは慎重に・・・。)


最上 「その胸部装甲って自前なの?」


三隈 (最上ぃぃぃぃ!!)


五月雨(やると思った・・・。)


龍驤 「ふふん。もち、自前や!」ドヤァ


三隈 (不憫な娘・・・。)ウゥッ


五月雨(なんで、この人泣いてるんだろう・・・。)


最上 「ほんとに!?ねぇ、触ってもいいかな?いいかな?」ワクワク


龍驤 「かまへんでぇ!」ムフン


最上 「じゃあ、遠慮なく・・・。」モミッ


龍驤 「ん・・・。んぁ。///」


最上 「ほ、本物だぁ!!」キラキラ


三隈 「なんですってぇ!!」クワッ


五月雨「すっかり馴染みましたね、三隈さんも。」アハハ


ナニナニ! ナニカップ? フフン Cヤ ヒケツハナンデスノ!?


五月雨「そんなに気になるものかなぁ・・・。」フニフニ


五月雨「う~ん。私にはまだ早いですね!」ピコーン



必ず戻る。愛する君の待つ場所に。


間宮 「行ってしまうのですね・・・。」


黒霧 「ああ、彼女達を見捨てるわけにはいかないからね。」


間宮 「時雨さんの仰ることもわかります。ですが、私はっ!」


黒霧 「そこまでだ。それ以上は、いけない。」


間宮 「すみません。私ったら、あの娘達のことを考えないで・・・。」


黒霧 「必ず戻る。」ダキッ


間宮 「はい、待っています。」ギュッ


日向ミニ「父上、時間だ。」


黒霧 「ああ。間宮、行ってくる。」ケイレイ


間宮 「はい、あなた。」グスッ


日向ミニ「案ずるな。父上には私もついている。」


間宮 「あのひとを頼みます。」


日向ミニ「任せておけ。」フッ


・・・


間宮 「私には、待つことしかできないのですね・・・。」


・・・


最上 (・・・何これ?)


三隈 「感動ですわ・・・。」グスッ


龍驤 「くっ。泣かせるやないか・・・。」ズビッ


五月雨「そんな莫迦な・・・。」エェ



メグよりトランスポーター派。ワイスピも可。


日向ミニ「こんなことであの島に戻る羽目になるとはな・・・。」イドウチウ


黒霧 「五月雨達を鍛え直すまでは、と思ってたんだけどね。」


日向ミニ「穏便に済むと思うか?」


黒霧 「まさか。彼女達も一枚岩じゃない。」


黒霧 「無線の存在を知っているのも、一部の穏健派だけだから。」


日向ミニ「だろうな。熱烈な歓迎があることは確定か・・・。」


黒霧 「下手に恩を売っても逆効果だろうね。」フゥ


日向ミニ「だが、行くのだろう?」


黒霧 「当然さ。あそこには僕を慕ってくれている娘も居るんだ。」


日向ミニ「怨んでいる奴も居るがな・・・。」


日向ミニ「母上に会ったら、どうするのだ?」


黒霧 「姉さんには会えないよ。」


日向ミニ「本当の・・・さ。わかっているのだろう?」


黒霧 「ああ。精々派手に喧嘩を売るとしようか。」ニコリ


日向ミニ「激昂するだろうな。」フッ


黒霧 「怒った顔を見るのが楽しみだよ。」フフッ


日向ミニ「流石は父上だ。いい趣味をしている。」


黒霧 「それはどうも。」



軍艦とメガロドン、どっちが強い?


???「被害状況は・・・?」


???「駆逐級、軽巡級、潜水級が全滅。手酷くやられたね。」カタカタ


???「クッ。ワタシのカワイイ子供達を・・・。」ギリッ


???「所詮はクローンってことだよ。あんたが腹を痛めて産んだのはあの娘だけでしょ。」カタカタ


???「ナんデスっテ・・・。」ギラッ


???「おっと、これは禁句だったね。ごめんよ。」ニタッ


???「アノひとのコトを思い出させないデ。」


???「まだ怨んでるの?」


???「エエ、当然デショウ?」ニタァ


???「アノひとはワタシを置き去りにシタ。アノ娘だけヲ連れて逃げタ。」


???「絶対ニ赦サナイ。」オォォ


???「要するに、寂しいってことでしょ。」カタカタ


???「・・・ハ?」


???「イヤ、そんなワケ。ハッ?ナイ!絶対!ないカラ!!///」


???「素直になろうよ、南方ちゃん。彼、近くまで来てるってさ。」カタカタ


南方戦「はぁっ!?なんで?というか、どうしてアンタがあのひとの居場所を知ってるのよ!」


???「流暢になったねぇ。人間らしさが出てきたんじゃないの?」ケタケタ


南方戦「質問に答えなさい!!」


???「ヲ級ちゃんがね。救援要請しちゃったのよ、彼に。」


南方戦「あの娘は勝手にぃ!」


???「まぁ、無線機の使い方を教えてあげたのは私なんだけどね。」ケタケタ


南方戦「結局、黒幕アンタか!集積!!」


集積姫「いやぁ、楽しくなってきたねぇ。」ニシシ


集積姫(これであの娘も用済みかな・・・。)ニタァ


アンタ イツモパソコンイジッテルワネ ナニシテルノヨ ナイショ



タグにシリアスって付けてたから。


間宮 「」ホケー


五月雨「見事なまでに呆けてますね。」ヒソヒソ


三隈 「声を掛けたほうがいいですの?」ヒソヒソ


最上 「なんて声を掛けるのさ?」ヒソヒソ


三隈 「それは・・・。」


ウーン・・・


五月雨「放っておきましょうか。」


三隈 「そうですわね。」


最上 「それがいいと思うよ。」ウンウン


間宮 「・・・イ」ボソッ



暇は人を殺すというけれど・・・。


三隈 「ところで、暇ですわね。」


五月雨「クロさんが居ませんからね。訓練もできませんし。」


最上 「五月雨ちゃんがボク達に指導してくれたらいいんじゃないの?」


五月雨「私は構いませんけど・・・。死にますよ?」


最上隈「えっ・・・?」


五月雨「訓練の内容は個人の適性に応じてクロさんが考えますから、駆逐用の訓練は・・・ねぇ。」


五月雨「回避訓練しかしたことありませんし、それに沈む覚悟がないとあれは無理ですよ。」


五月雨「それでも、やりますか?」テカゲンシマセンヨ?


三隈 「温和しくしておきますわ。」


最上 「・・・小心者。」ボソッ


三隈 「なら、もがみんはやりますの?」ニコニコ


最上 「い・や・だ。」ニッコリ


五月雨(その訓練を私はやってるんですよねー。大概化物ですね、私も。)アハハ



伏線回収はだいぶ先。


三隈 「しかし、何をしましょう。今日から訓練だと思っていましたのに・・・。」ウーン


最上 「訓練を拒絶してたくせによく言うよ。」


三隈 「なんですって・・・?」ピクッ


最上 「本当のことを言っただけだよ。」ハッ


オモテデマスノ モガミン ジョウトウダヨ ミッチャン


五月雨「仲が良いのか、悪いのか・・・。」アハハ


龍驤 「ええんやないか?」ヒョコッ


五月雨「やっと戻ってきた。どうしたんですか?チョロチョロと動き回ったりなんかして。」


龍驤 「まるで見とったように言うなぁ。ちょっち探検しとってん。」


五月雨「そうですか。探し物は見つかりましたか?」ニコリ


龍驤 「全部お見通しってわけか。恐ろしいなぁ、流石はクロさんの秘蔵っ娘や。」


五月雨「出会ってまだ4日ですけどね。」フフ


龍驤 (そうやないんやけどな・・・。)



暴露大会は全てを曝け出して・・・。


三隈 「ただいま帰りましたの・・・。」ボロボロ


最上 「砲弾が尽きたら殴り掛かってくるんだもんなぁ。お嬢様言葉はただの飾りだよね・・・。」ボロボロ


三隈 「まだやりますの?」ジト


最上 「もう勘弁。」ヒラヒラ


最上 (その気概をなんで他に向けられないかなぁ・・・。)ハァ


五月雨「取り敢えず、入渠の準備してきますね。」タタタッ


龍驤 「うちも入る~。」トテトテ


三隈 「自由ですわね、私達。」


最上 「今更でしょ。」


・・・


カポーン


龍驤 「あぁ~。ええ湯やなぁ~。」ハフー


三隈 「凄まじかったですものね、荷物の量・・・。」


最上 「途中まではひとりで輸送してたんでしょ?ちっこいのにやるねぇ。」


龍驤 「そうやろ~。クロさんの因子貰うとるからなぁ。って、誰がチビや!」クワッ


最上 「おぉ~。ナイスツッコミ。」パチパチ


三隈 「ちょっと待ちますの。今、とんでもない発言が聞こえましたの。」


五月雨「クロさんの因子?」


最上 「18禁の話?」


龍驤 「ちゃうちゃう。精々、15禁や。」


五月雨「そこのところ詳しくお願いします。」ズズイッ


三隈 「///」キキミミ


最上 「ムッツリみっちゃん。」ニヤッ


三隈 「ば、莫迦めと言ってさしあげますの!」ビシッ


最上 「他人の科白盗っちゃ駄目だよ・・・。」ミッチャン・・・



悪魔のような?


龍驤 「クロさんが人間やないのは知っとるか?」


五月雨「それはまぁ。予想つきますよね。」


最上 「あれで人間って言われてもねぇ。艤装も着けないで海上スケートしてるし。」


三隈 「え?そうなんですの?」


龍驤 「なんやひとり気づいとらんのも居るみたいやけど。あの人は、悪魔なんや。」


五月雨「確かに、悪魔みたいな人ですね。」ウンウン


龍驤 「そうやなくて。」


五月雨「え?マジなやつですか?」


龍驤 「まじもまじ。大まじや。」


五月雨「うそん・・・。」エェ



あんまりオリジナルを出すと独りよがりになるよね。でも出す。


五月雨「鬼だ、悪魔だなんて冗談のつもりで言ってきましたけど。まさか事実だったなんて・・・。」ハァ


龍驤 「流石の洞察力やな、五月雨。」ニシシ


五月雨「お褒めに与り光栄で~す・・・。」ブクブク


最上 「吃驚だよね~。軍隊の中に悪魔が紛れ込んでるなんてさ~。」


最上 「実は、海軍の上層部はみ~んな悪魔だったりして・・・。」ナンテネ


三隈 「やめてくださいまし。本当にそんな気がしてきましたの。」


龍驤 「滅多なこと言うもんやないでぇ~。まぁ実際、この世界に居る悪魔は数人らしいからな。それはないやろうけど。」


五月雨「へぇ~。そうなんですね。ところで、どうして龍驤さんはそのことを知っているんですか?」


龍驤 「知りたいか?」ニィ


五月雨「当然。」フフン


最上 「ボクも知りたいな~。」ニコリ


三隈 「私もですの。」フンス


龍驤 「直接訊いたんや。クロさんが最も信頼を置く、魔族のひとりにな。」ニィ



オリジナル集団。そのうち登場する・・・はず。


龍驤 「ここからはうちの独壇場やでぇ!!」イェイ


イェーイ!! ナンデワタクシマデ・・・


龍驤 「まず、クロさんは正確に言えば悪魔やない。」


エェー ウソツキー ニセチチー ホンモノヤッタヤロ!!


龍驤 「魔族や。暗殺を生業とする一族の出身でな。神が恐れるほどのおっかない連中らしいで。」


五月雨「暗殺者・・・。」


五月雨(私、そんな人に絞め落とされてたのか・・・。)ゾクッ


最上 「暗殺者の訓練か~。」


三隈 「・・・燃えますわね。」


エッ? ミッチャン・・・ ソンナメデミナイデクダサイマシ ハナシツヅケルデ


龍驤 「クロさんには5人の仲間がおってな。その内のひとりが、パオラや。」


五月雨「パオラさん、ですか。」


最上 「パラオみたいだね。」


三隈 「もがみん・・・。」シラー


龍驤 「まぁ、事実パラオ泊地の提督やけどな。あの娘。」


三隈 「え・・・?」


最上 「ふふん。」ドヤー


龍驤 「本名、パルテ・ハオ・ライト。縮めてパオラや。」


龍驤 「風と植物を操る魔族でな。弓が得意で、空母好きのかっこええ娘やで。ほんま。」


五月雨「空母好き=かっこいいの理屈は知りませんけど・・・。」


最上 「他の4人は?」


龍驤 「忘れた。」


三隈 「は?」


・・・ワスレテン



先輩の間違った威厳の示し方。


五月雨「欠片も憶えてないんですか?」


最上 「流石に少しくらいは憶えてるでしょ?」


龍驤 「そらまぁ、もうひとり女がおるとか、ひとりちっこいんがおるとかくらいは憶えとるけどやな。」ウーン


最上 「使えない。」ボソッ


五月雨「それで他人の人生が語れるのかよ。」ケッ


龍驤 「うち、泣いてもええやんな?」グスッ


三隈 「いらっしゃい。」ウデヒロゲ


ウァァァ ヨシヨシ ツラカッタデスワネ


五月雨「やりすぎましたかね?」


最上 「反省、反省。」


三隈 「貴女達、覚悟はよろしくて?」ニコニコ


最上 「お先で~す。」スタコラー


五月雨「クロさんに比べたら、三隈さんの笑顔は怖くないですよ。」フフン


三隈 「やはり通用しませんか。流石は先輩ですの。」ムゥ



いかん、話が逸れる。(いつものこと)


最上 「」セイザチウ


五月雨「で、何の話でしたっけ?」クピクピ


龍驤 「クロさんの因子の話や。」グスッ


五月雨「あぁ、そういえばそうでしたね。大本は・・・。」


ナニノンデルノ? ギュウニュウデス


三隈 「その前にひとつ気になったのですが、黒白雪は彼の仲間に入ってないんですの?」


龍驤 「仲間も何も、同一人物やからな。」


三隈 「そうなんですの?」チラッ


五月雨「肉体を共有してるらしいですよ?元々は別の肉体があったんだと思いますけど。」ソウキイテマス


三隈 「魂の共存・・・。そんなことが可能ですの?」


龍驤 「実例があるんやから、できるんやろ。」


五月雨「人間の成せる業ではないですけどね~。」ダラーン


龍驤 「実際、神様がやったらしいしな。」


三隈 「生きるオカルトですわね。」


五月雨「それがクロさんですから。」


最上 (足が、限界・・・。)プルプル



5万字超えたので・・・。


???「突然出てきてごっめ~ん。誠にすいまめ~ん!パオラだよ!」キャピッ


???「秘書艦の大鳳です。」ペコリ


パオラ「キャラじゃないんだけど、こういうの。あたし、クールビューティー枠なんだけど。」ネェ


大鳳 「知りませんよ。私に言わないでください。」


つカンペ ・・・ナニ? ヨメッテ?


パオラ「え~と、本編が5万字を超えたので、記念に裏話を公開します。今回は黒霧の一族について・・・。」


パオラ「大鳳、ちょっと・・・。」チョイチョイ


大鳳 「なんですか?」トテトテ


ゴニョゴニョ エェー ワタシガイウンデスカ?


大鳳 「では・・・。」コホン


大鳳 「本人に語らせろやー。」


大鳳 「///」カァ


パオラ「龍驤を連れてくるべきだったわね。」キレガナイワ


大鳳 「こんな恥ずかしいことをさせておいて、そんなこと言うんですか。そうですか。」プルプル


パオラ「大鳳・・・?」


大鳳 「」スゥー


大鳳 「パルちゃんの莫迦ぁぁぁぁ~!!」


パオラ「」キーン


大鳳 「うわぁぁぁぁん。」ダット


パオラ「・・・。」


パオラ「時雨に責任取らせよう。」ソウシヨウ



このふたりはこんな感じのはず。


パオラ「ひとり語りするの・・・?これ。」イヤヨ?


パオラ「誰かに合いの手をお願いしましょう。」ピッ ポッ パッ


ガチャッ モシモシ チョットシツムシツマデオネガイ エッ ミカエリ? イイカラハヤクキナサイ!


・・・


???「もう、なぁに?せっかく蒼龍と羽根つきしてたのにさぁ。」


蒼龍 「ほんとだよ~。ね~、飛龍。」


パオラ「今、何月だと思ってんのよ。あんたら・・・。」


蒼龍 「ん~。葉月?」


飛龍 「文月でしょ。」


蒼龍 「そっか~。」ニパッ


パオラ「卯月よ!というか、睦月じゃないの!?」


蒼龍 「え?なんで?」


パオラ「もういいわ・・・。」ハァ



キャラの過去に迫る回想は長くなりがち。


飛龍 「で?何の用なの?」


パオラ「ふたりとも、時雨のことは憶えてる?」


飛龍 「舞鶴の真宵烏?憶えてるけど?」


蒼龍 「私、あの人苦手~。」


パオラ「なんでよ?身内のあたしが言うのもだけど、優良物件よ?」


蒼龍 「だってぇ。夜、お手洗いに行こうとしてたときに・・・。」


・・・


蒼龍 『消灯するにしても、ちょっとくらい灯りを点けてくれててもいいのに~。』ウゥ


ボゥ


蒼龍 『ん?なんだろ、あの紅いの・・・。』


シュンッ


蒼龍 『あれ?消えた?』


黒霧 『』ユラァ


蒼龍 『』ヒッ


蒼龍 『ウーン』バタッ


・・・


蒼龍 「あの内股に広がる温かい感覚・・・。絶対、漏らしてたよね。」ボーゼン


パオラ(あの子ったら、もうっ。)


飛龍 「え?そんなことあった?」


蒼龍 「あったよ!何故か自室のベットに戻ってたけど!飛龍が運んでくれたんじゃないの?」


飛龍 「私は知らないよ?」


蒼龍 「じゃあ、パルちゃんが?」


パオラ「初耳よ。」


蒼龍 「でもでもっ。あのとき、下着とか替わってたし・・・。」


飛龍 「普通に考えて、時雨さんが色々やってくれたんじゃないの?」


蒼龍 「イロイロ・・・///」ボンッ


蒼龍 「どうしよう!もうお嫁に行けない~!!」ウワーン


飛龍 「いや、黒霧の嫁には行けるでしょ。」


蒼龍 「そういう問題じゃないの!」


パオラ(時雨に押しつけましょう・・・。)ソレシカナイワ



こんなに引っ張るつもりではなかった。


蒼龍 「///」ウゥー


パオラ「落ち着いた?」


蒼龍 「あと少し・・・。」パタパタ


パオラ「そう・・・。」


飛龍 「で?時雨さんは蒼龍を嫁に貰ってくれるの?」


蒼龍 「ちょっと!?」


パオラ「どんな手を使ってでも押しつけてやるわよ。」マカセナサイ


蒼龍 「パルちゃんまで!?」


飛龍 「蒼龍はどうなの?」


蒼龍 「へっ?」


パオラ「さっきも言ったけど、優良物件よ?彼。」


蒼龍 「えっと、具体的には・・・?」


飛龍 (食いついた。)


パオラ「まずは外見よね。整った顔立ちに綺麗な白髪。煌めく紅い瞳。高くも低くもない程よい身長に、細い割には筋肉質な体軀。」


パオラ「ちょっとSっ気が強くて敵には容赦がないけど、仲間には優しいわ。身内は特にね。」


パオラ「そして何より、時雨は蒼龍より先に逝ったりしない。絶対に・・・。」


飛龍 「いや、それは無理でしょ。私達建造組は沈まない限り永遠にこの姿のまま。朽ちることだってないんだし。」


パオラ「あたし達も似たようなものなのよ。とりわけ時雨には死の概念が無いから、確実にあんた達より長生きするわよ。」


蒼龍 「へぇ~。そうなんだ~。」


飛龍 「待って、今"あたし達"って聞こえたんだけど?」


パオラ「それも含めて説明してあげる。」ヤット ホンダイニイケルワ



黒霧という一族


パオラ「時雨はね。黒霧っていう魔族の血筋なの。」


パオラ「暗殺を生業とする一族で、神殺しの一族なんて呼ばれたりもしてた。」


蒼龍 「凄い人なんだぁ~。」ヘェー


パオラ「凄いなんてものじゃないわよ。時雨はそんな黒霧の中でも"最強の三姉弟"って有名だったんだから。」


飛龍 「全部、過去形で話すんだね・・・。」


蒼龍 「どういうこと?」ウン?


パオラ「黒霧の一族はね・・・。滅びたの。神々との聖戦の果てに・・・。」


飛龍 「・・・。」


蒼龍 「あー。」


パオラ「力を持ちすぎてしまったのよ、彼らは。神々が恐れるほどにね。」


パオラ「依頼さえあれば、たとえ神が相手でも容易く目的を果たしてしまう。それだけの実力を黒霧は持っていたの。」


パオラ「だから神々は妖精族、亜人族、魔神族を筆頭にありとあらゆる種族と協定を結んで、黒霧に戦争を仕掛けた。」


パオラ「あたし達の間では、これを"聖戦"と呼んでいるわ。」


蒼龍 「いくらなんでも狡いと思うな~。」ムー


飛龍 「戦力差がありすぎだよ。」


パオラ「いいえ、戦力的にはかなり拮抗してたわ。」


蒼龍 「おぉ~。やっぱり凄い人なんだね。時雨さんって。」キラキラ


パオラ「確かに時雨も規格外の実力者だけど、あの聖戦では茜のほうが凄まじかったわ。」


パオラ「彼女は名実共に、黒霧最強だから・・・。」


飛龍 「茜さんって、時雨さんのお姉さんだよね?ってことは、佐世保の黒白雪か。」フーン


パオラ「そうよ。黒霧には身体強化の秘術があるから、純粋な戦闘力で彼らを超える種族は無い。」


パオラ「特に茜の場合は授かった能力と黒霧の秘術の相性が良かったから、誰も止められなかった。」


蒼龍 「能力とかあるんだ。パルちゃんが空を飛べるのと同じみたいな?」


パオラ「大体合ってるわね。黒霧の秘術は"凶化"といって、呪印を刻むことで身体能力を強制的に向上させるものなの。」


パオラ「その代償として、闘争本能が覚醒して凶暴化するみたいだけどね。自我を失えば、敵・味方の区別もできなくなるらしいわ。」


飛龍 「それって日常的にそうなるの?」


パオラ「呪印を解放したときだけよ。平時の呪印はただの刺青みたいなものなの。」


パオラ「呪印を解放すると、身体全体に黒い痣が現れて、心も黒く染まっていくってわけ。」


蒼龍 「でも、そんな黒霧の秘術にぴったりな能力なんてあるのかなぁ~。」ムムム


パオラ「あるのよね、これが。」


パオラ「"心の闇を支配する能力"。それが茜の能力よ。」


飛龍 「つまり、闘争本能を支配できるってこと?」


パオラ「そのとおり~。」フフ


飛龍 「だったら、黒白雪は・・・。」


パオラ「そう。茜は全くのノーリスクで全開の凶化を発動することができるの。」


パオラ「それが、彼女の黒霧最強たる所以よ。」


パオラ「まぁ、他にも色々できるみたいだけどね。」


蒼龍 「おぉ~。」キラキラ


飛龍 「なるほどね。」


蒼龍 「じゃあじゃあ!時雨さんは!時雨さんの能力って何なの!」ハイ!ハイ!


パオラ「ノってきたじゃない、蒼龍。」ウフッ


飛龍 「未来の旦那様のことがそんなに気になるのかなぁ?」ニヤニヤ


蒼龍 「ふぇっ!?そ、そんなこと・・・。あるけど。///」モジモジ


パオラ(可愛い。)


飛龍 (可愛い。)



黒霧最凶の青年


パオラ「時雨の能力は"原初の霧"よ。」


飛龍 「・・・は?」


蒼龍 「難しいよ~。」ムゥ


パオラ「説明するのも難しいのよ。起源に関わる力は、解釈の枠を広げるだけで何でもできちゃうから。」


飛龍 「起源の力だから、"原初"ねぇ。」


パオラ「そう。万物の起源にして終焉。それが原初の霧。」


飛龍 「言い換えると?」


パオラ「全は無、無は全。」


蒼龍 「〇の錬金術師だ~。」キラキラ


飛龍 「他は?」


パオラ「メビウスの輪。」


飛龍 「もう一声。」


パオラ「ウロボロス。」


蒼龍 「もういっちょ~!」


パオラ「もう無いわよ!あんたら、話聞く気あるの!?」


蒼龍 「ゴメンナサイ」シュン


飛龍 「いや、呼び出したのそっちじゃん。」


蒼龍 「そうだった!」ハッ


パオラ「」ウグッ


・・・


パオラ「気を取り直していくわよ。」コホン


蒼飛龍「は~い。」


パオラ「原初の霧の基本的な能力は、崩壊・再構築・創造・強化・恩恵の5つ。」


蒼龍 「ほんとに錬金術師みたいだね。」


パオラ「まぁ、似たようなものよ。錬金術と違うのは、原初の霧を素材にするから属性や質量の制限が無いことかしら。」


飛龍 「等価交換を無視できるってこと?何それ、反則じゃん。」


パオラ「あたし達は魔族なのよ?人間の尺度で測ってもらいたくないわね。」


蒼龍 「そっか。確かに人間と魔族じゃ、そもそもの前提が違うもんね~。」


パオラ「あら、よくわかってるじゃない。偉いわ、蒼龍にしては。」ナデナデ


蒼龍 「えへへ~。でしょ~?って、"しては"ってどゆこと!?」


飛龍 「そういうことでしょ。」


蒼龍 「飛龍まで~。」ウゥ



死に嫌われた者


飛龍 「大事なことがまだ聞けてないんだけど。」


蒼龍 「何かあったっけ?」


パオラ「あたしも魔族よ?」


蒼龍 「そうなの!?」


飛龍 「それもだけど、そうじゃなくて。ほら、死の概念がって話。」


パオラ「あぁ、それね。」


パオラ「話は戻るけど、聖戦は神々の勝利で幕を閉じたの。」


飛龍 「黒霧は滅亡したんだっけ?」


パオラ「そう、生き残ったのはひとりだけ・・・。」


蒼龍 「時雨さん?あれ?でも、お姉さんも生きてたよね?」ドユコト?


パオラ「ふたりとも命を落としたわ。生き残ったのは時雨と茜の妹、黒霧神命よ。」


蒼龍 「ミコトちゃん?」


パオラ「ええ、神命はね。英霊をこの世に呼び戻すことができるの。」


飛龍 「それで、亡き姉・兄の魂を呼び戻したと・・・。」


パオラ「そういうことよ。ただ茜は肉体ごと消し飛ばされてたから、時雨の肉体に無理矢理押し込むことになったみたい。」


パオラ「魂を呼び戻しただけで肉体が甦ったわけじゃないから、時雨には死の概念が無いのよ。」


蒼龍 「ん~。でも、それっておかしくな~い?」


飛龍 「佐世保の黒白雪と舞鶴の真宵烏は同じ時期に憲兵隊・隊長を務めてた。それに死体は腐る。」


蒼龍 「」コクコク


パオラ「時雨の能力を忘れたの?」


飛龍 「まさか・・・。」


蒼龍 「人体錬成!?」


ソウイウコトヨ ワァオ エェー モウナンデモアリジャン



よくある言い訳。


飛龍 「それで?長いこと私達を騙してた貴女のことは教えてくれないの、魔族さん?」


パオラ「人聞きの悪い言い方はよしてちょうだい。」


蒼龍 「でも酷いよ、パルちゃん。私達に隠し事なんてさ~。」プクー


パオラ「別に隠してたわけじゃないわ。訊かれなかっただけよ。」


蒼龍 「そっか~。」ニパッ


飛龍 「貴女、人間ですか?なんて訊くわけないでしょうよ。」ハッ


蒼龍 「確かに!」


パオラ「」チッ


飛龍 「大鳳は知ってるの?これから話すこと。」


パオラ「知らないわよ。」シレッ


蒼龍 「それって・・・ねぇ。」エェー


飛龍 「呼んできなさい。」


パオラ「え~。今、顔会わせづらいんだけど・・・。」


飛龍 「いいから、行きなさい。初期艦でしょ!」


パオラ「あ~い。」


ガチャ パタン


飛龍 「まったく、世話の焼ける。」ハァー


蒼龍 「飛龍は良いお姉ちゃんになれるよね~。」フフー


飛龍 「これ以上は面倒見きれないわよ。」



これでも仲は良い。


パオラ「連れてきたわよ~。」ガチャ


大鳳 「拐かされました~。」ルンルン~♪


飛龍 「・・・。」


飛龍 「何したの?」ヒソヒソ


パオラ「何もしてないわよ。ちょっと時雨を引き合いに出して・・・。」ヒソヒソ


飛龍 「」ウワァ


パオラ「何よ?」


飛龍 「一回、ちゃんと怒られてきなさい。」


パオラ「え?なんで・・・?」


蒼龍 「機嫌いいね、大鳳。」ニコニコ


大鳳 「そんなことないです。普段どおりですよ。」ウフフ



パラオ泊地の日常


飛龍 「さぁ、さっさと終わらせて解散するよ。」


パオラ「聞く気がないなら、いいわよ?このまま解散しても。」


飛龍 「駄目。私と蒼龍はともかくとして、大鳳は知っておくべきよ。」


大鳳 「私ですか?」


蒼龍 「私も聞きた~い。」


パオラ「そう?じゃあ、話すけど・・・。あたし、妖精族の生まれなの。」


蒼龍 「え?」


大鳳 「はい?」


飛龍 「魔族だって言ってたでしょうに・・・。」


パオラ「"元"妖精族なの。聖戦で魔族落ちしたのよ。」


大鳳 「妖精族?聖戦?」


飛龍 「そっか、そこからか・・・。」ハァ


モロモロセツメイチウ・・・


大鳳 「そうですか。あの時雨さんが魔族ですか・・・。」


パオラ「あら?あたしに関しては何もなし?」


大鳳 「空を飛ぶ人間がいますか?」


パオラ「それもそうね。いや、それなら時雨も条件は同じでしょ?」


大鳳 「薄々感づいてはいました。ただ、あんなに優しい方が魔族だということがショックなんです。」ハァ


パオラ「そう・・・。いや、あたしは!?」


大鳳 「知りません。」ツーン


パオラ「機嫌直してよ~。」


蒼龍 「ねぇ、お話は~?」


飛龍 「これがうちの日常・・・。」ヤレヤレ



そこに紅い雨は降るか。


パオラ「話を続けましょう。」コホン


大鳳 「どうぞ。」ニコニコ


パオラ「大鳳が恐いんだけど・・・。」ヒソヒソ


飛龍 「後にしなさい。」


パオラ「じゃあ続きだけど、あたしは妖精族、それも世界樹の精霊として生まれたの。」


蒼龍 「すご~い!で、世界樹って何?」キラキラ


パオラ「世界樹は・・・そうね。あらゆる生命の根源となる樹よ。」


パオラ「雲を突き抜けるほどの大木で、その葉には死者を甦らせる権能があるの。」


パオラ「若し世界樹が枯れてしまったら、地が裂け、海は荒れ、全ての生命が死に絶えると伝えられているわ。」


飛龍 「それで植物を操ることができるわけか。」ナルホド


パオラ「そういうこと。植物操作は世界樹の精霊であることを証明する、謂わば種の証。黒霧にとっての"凶化"みたいなものよ。」


蒼龍 「じゃあ、空を飛べるのは?」


パオラ「あたし個人の能力よ。正確には"風を操る能力"だけど。」


蒼龍 「なんか普通でつまんない。」ブー


パオラ「あんたはあたしに何を求めてるのよ・・・。」


大鳳 「あの、世界樹の葉に甦生の権能があるなら、それで時雨さんや茜さんを甦らせたらいいのでは?」


パオラ「残念だけど、それは無理ね。」


大鳳 「何故でしょうか?」


パオラ「考えてみて。死者甦生の権能を持つ世界樹は妖精族が所有していて、黒霧は圧倒的多数の軍勢を相手にしていたのよ?」


大鳳 「なるほど。世界樹を放置することは黒霧にとって不利益でしかないと。」


パオラ「そう。だから妖精族は黒霧の最優先目標になってしまったの。」


パオラ「しかも指揮官が時雨でね。何が起こったのかわからないままに全滅させられちゃったわ。」フゥ


パオラ「思えば、あれが時雨との出会いだったわね~。」トオイメ


飛龍 「全滅ねぇ。なら、どうしてあんたは今此処に居るの?」


蒼龍 「ほんとだ!」


パオラ「ねぇ、ちょっと言い方酷くない?」


飛龍 「気の所為よ。」


大鳳 「気の所為です。」


蒼龍 「気の所為だよ!」ニパッ


アナタダケガイヤシダワ ソウリュウ イイカラハナシノツヅキ



そろそろ本編に戻りたい。


パオラ「それで、時雨が世界樹を魔界樹に創り変えちゃったの。」


パオラ「あたし達世界樹の精霊は、世界樹が枯れない限り何度でも復活できるから、消滅はしなかったんだけど・・・。」


パオラ「世界樹の変質に伴って、魔族として生まれ変わることになったのよ。」


飛龍 「それでまだ生きてるってわけだ。」ナルホドネ


パオラ「喧嘩なら買うわよ?」ニッコリ


飛龍 「やめとく。あんたの本気は見たことないから、底が知れなくて怖いわ。」フフフ


蒼龍 「ねぇ、魔界樹って~?」


パオラ「魔界に生えてる樹のことよ。闇の力を宿していることを除けば、何の変哲もない普通の樹よ。」


飛龍 「へぇ。人体錬成ができるなら、もっと凄いものなのかと思ってたけど、違うんだ。」


パオラ「流石の時雨も"魔王樹"は創造できないわよ。再構築ならできるだろうけど。」


蒼龍 「魔王樹?」


パオラ「魔王の素質を見抜く樹よ。相応しくない者が触れると魂を喰われるらしいわ。」


大鳳 「随分とリスクが高い判別ですね。王か死か、なんて。」


パオラ「自分を信じることも、王に必要な素質だもの。」


飛龍 「純粋な魔族でもないくせに、なんでそんなに詳しいのさ。」


パオラ「そりゃ、あたしと時雨は魔王直属の遊撃部隊の一員だから。」シレッ


蒼龍 「えぇぇぇぇ!?」


飛龍 「泊地史上一のとんでも発言認定だわ・・・。」


大鳳 「もうパルちゃんが前線に出たほうがいいんじゃ・・・。」



魔王の懐刀


飛龍 「なんで魔王の側近がパラオで提督なんてしてるのよ。」


パオラ「ある目的のためによ。その目的が何かまでは話せないわ。」


飛龍 「大鳳にも?」


パオラ「話せないわ。」


大鳳 「貴女がそこまで真剣な目をするなんて、余程のことなんですね。」フフッ


パオラ「ええ、ごめんなさいね。これは信用がどうとかいうレベルの話じゃないから。」


蒼龍 「じゃあ、その部隊のメンバーについては~?」


パオラ「いいわよ。話してあげる。」


蒼龍 「やった~!」ワーイ


パオラ「あたしが所属する部隊は"魔王の懐刀"といって、魔族の中から選抜された超エリート部隊なの。」フフン


飛龍 「自分で言うんだ。」


パオラ「事実だもの。」


パオラ「メンバーはあたしと時雨を含めて6人。」


パオラ「魔神スルトの末裔・紅蓮。大海の支配者・東。妖艶の毒師・茜。そして、魔王・真宵。」


飛龍 「魔王も所属してるんだ。」


パオラ「直属部隊だから。」


蒼龍 「魔王か~。ちょっと会ってみたいかも。」


パオラ「なら、会ってみる?」


蒼龍 「会えるの!?」


パオラ「みんなこの世界の何処かには居るはずだから、なんとかするわよ?」


蒼龍 「う~ん。今はいいかな。」


パオラ「そう?」


蒼龍 「うん!」ニパッ



パラオ泊地編~その壱~<了>


パオラ「さて、こんなところかしら。脱線しすぎて本題がわからなくなったわね。」


大鳳 「でも、楽しかったですよ?色んなお話が聞けて。」フフッ


蒼龍 「そうだね~。」


パオラ「そう?なら、よかったわ。」


飛龍 「ところでさ。」


パオラ「まだ何かあるの?」


飛龍 「いや、大鳳なんだけどさ。」


大鳳 「私ですか?」


飛龍 「なんで時雨さんを甦生させようと思ったの?」


大鳳 「え?」


飛龍 「パオラの話を聞くまで時雨さんが死んだ身だなんて知らなかったわけだし、普通に生活する分には何も問題ないよね?」


大鳳 「・・・。」


飛龍 「時雨さんの身体が生者のそれでないことに、何か不都合でもあったのかなぁ?」ニヤニヤ


大鳳 「それは・・・。だって、肉体が死んでいたら・・・。」モジモジ


飛龍 「いたら?」ニマニマ


大鳳 「あ、赤ちゃんが、つくれないじゃないですか。///」カァ


蒼龍 「・・・え?」


飛龍 「おっと、ライバル登場だね。蒼龍♪」アハハ


蒼龍 「えぇ!!大鳳もなの!?」


大鳳 「え?蒼龍さんも?」


蒼龍 「う~。私、絶対負けないから!」


大鳳 「私だって、負けません!」


パオラ「そんなふたりに朗報なんだけど。」


大蒼龍「なんですか?」


パオラ「時雨なら、子種の創造くらいできるわよ。」


大蒼龍「え?」


飛龍 「子種の錬金術師。」プフッ


大蒼龍「」ナンカイロイロモウソウチウ


大蒼龍「///」ボンッ


チョッ ヤメテヨ ヒリュウー ホントデスヨ モウ! ゴメンゴメン


パオラ(深海にかなり親密な娘が既にいるんだけど・・・。黙っとこ。)



まさか1万字近く費やす羽目になろうとは・・・。


五月雨「で、結局クロさんの因子ってどんなものなんですか?」ゴロゴロ


龍驤 「うちも詳しいことはようわからんけど、身体強化?できる黒い靄みたいなもんらしいで。」


最上 「黒い靄?」


龍驤 「そうや。クロさん、いつも黒い外套を着てるやろ。あれは靄を目立たんようにするためなんやて。」


三隈 「そうなんですの?」チラリ


五月雨「言われてみれば、漂ってたような・・・ないような。」ウーン


龍驤 「ともかくや。うちはそれを体内に注いでもらってん。」


最上 「それで多少ながら膨らみを得たと。」


龍驤 「Cもあれば充分やろ。めっちゃ痛かってんで?」


三隈 「どういう理屈なんですの?全く想像が・・・。」


五月雨「駄目ですよ、クロさんを理屈で語ろうとしたら。人為らざる者が、人の枠に収まるわけがないんですから。」


三隈 「そうでしたわね。」フッ


龍驤 「クロさん曰く、乳腺を刺激して強制的に成長させてるらしいで。」


最上 「それは、痛かっただろうね。」アハハ


龍驤 「そらもう・・・。でも、後悔はしてへん。」キリッ


三隈 (私もやってもらおうかしら・・・。)ジッ


龍驤 「注入のときにキスもできたし。」ボソッ


五月雨「聞こえましたよ。」ジトッ


三隈 「///」カァァ



立て込んでたから。


五月雨「そこのとこぉ。」ジリジリ


最上 「詳しく話してもらおうかぁ。」ジリジリ


龍驤 「身体は自由にできても、うちの心まで自由にできると思うなや!」クッ


三隈 (やりますの?三隈、やっちゃいますの!?///)モンモン


ガチャ


間宮 「あら。皆さん、此処に居たんですね。」ヒョコッ


五月雨「間宮さん。って、何ですか?その大荷物。」


間宮 「本棚と諸々の兵法書ですね。時雨さんの直筆みたいですよ?」ウフフ


五月雨「どっからそんなものが・・・。」エェ


龍驤 「あっ。」


龍驤 「なぁ。うちが輸送してきた荷物、どうした?」ヒソヒソ


五月雨「どうしましたっけ。」ヒソヒソ


最上 「ボク達、演習してたから。」ヒソヒソ


三隈 「それで、そのまま入渠に。」ヒソヒソ


五月雨「ということは・・・。」


龍驤 (誰も運んでない!!)ズガーン


間宮 「よいしょ。」ドスン


間宮 「では、私は昼食の支度をしてきますね。」ウフフ


パタン


龍驤 「どう思う。」


五月雨「怒ってはいないみたいですね。」


最上 「寧ろちょっと機嫌よさそうだったね。」


三隈 「助かった・・・。」ホッ


・・・


間宮 「冷蔵庫が届いたわ~。」ルンルン


間宮 「これでレパートリーも増やせるわね。」ウフフ


間宮 「今日は張り切っちゃいましょうか。」ムフン



子供の成長は早い。数年会わないと最早別人レベル。


日向ミニ「帰ってきたぞ、我が故郷よ・・・。」


黒霧 「変わってないね。まるであの頃と変わらない。」


日向ミニ「ああ、綺麗なものだな。襲撃を受け、捨て置かれた基地とは思えん。」フッ


ヲー! ヲー!


日向ミニ「早速、お出迎えか。」


黒霧 「可愛いほうのね。」フフッ


???「ヲー!!」トツゲキ!


黒霧 「おっと。」ダキトメ


日向ミニ「久しいな、ヲ級よ。」


ヲ級 「久し振りなの!」ニパッ


日向ミニ「・・・。」


黒霧 「随分と日本語が上手になったね。集積に教えてもらったのかな?」ナデナデ


ヲ級 「ううん。レーちゃんなの。」


日向ミニ「意外な名前が出たな。」


黒霧 「あのレ級が・・・。想像つかないな。」


ヲ級 「お父さんに暗殺術を習うんだって、張りきってたの。」


日向ミニ「なるほど。意思疎通は図れたほうが教えやすいからな。」カシコイヤツダ


黒霧 「人類の明日は暗いな。」フフ



深海の暴れ者?


???「此処で会ったが100年目ぇー!くらえ、レ級パーンチ!!」シュバッ


黒霧 「暗殺術を会得したいなら、もう少し静かにね。」パシッ


レ級 「久し振りだな、師匠!」ニッ


黒霧 「お父さんと呼んでくれてもいいんだよ?」フフッ


レ級 「そ、そんな恥ずかしいこと。言えるわけないだろ。///」ゴニョゴニョ


ヲ級 「どうして?お父さんはお父さんなの。ねっ、お父さん。」ニパッ


黒霧 「そうだね。」ナデナデ


ヲ級 「えへへ~。」


レ級 「ナチュラルに手を繋いでやがる・・・。」クッ


日向ミニ「もう少し素直になったらどうだ、レ級よ。父を父と呼ぶことの何を恥じる必要がある。」


レ級 「・・・誰だ?お前。」


日向ミニ「私か?私は瑞雲だ。」フフン


レ級 「若しかして、お前。オリジナルの・・・。」


日向ミニ「わかるか?」


レ級 「わかるさ。たとえ姿が変わっても。何年一緒に居たと思ってやがる。」ニッ


日向ミニ「そうか・・・。」フッ


黒霧 「ふたりとも、無事でよかった。」ダキッ


レ級 「おい!急になんだよ!・・・もう、仕方ねぇな。」ギュッ


ヲ級 「んふふ~。」スリスリ


日向ミニ「変わらないものだな。その甘え癖は。」フフッ


レ級 「ばっ、甘えてなんかねぇよ!寧ろ甘えてんのは父ちゃんのほうだろ!」


日向ミニ「父ちゃん?」ニヤッ


レ級 「っ!てめぇ!この!放せよ、師匠!あいつを一発ぶん殴る!」グググ


黒霧 「駄目。」フフフ


ヲ級 「なの~。」スリスリ


ハナセェー!! トウチャン・・・ プフッ ブッ〇ス!!



母と娘、そして・・・。


南方戦「来たのね・・・。」ユラッ


黒霧 「久し振りだね、南。」


南方戦「そこに居るのは、蓮華かしら。」ジッ


日向ミニ「ほう、流石は母上だ。一目で見抜くか。血の繋がりとは恐ろしいものだな。」フッ


南方戦「当然でしょ?母親舐めんじゃないわよ。」フン


集積姫「や~や~。仲が良いようで何より何より~。」ニタニタ


黒霧 「集積か、君は変わらないな。」


集積姫「今でも変わらず美しいだろう?」ニヒッ


黒霧 「そうだね。綺麗だ。」ニコリ


集積姫「おっと。そんなにはっきり言われると照れるぜ。///」ケタケタ


南方戦「ちょっと、ワタシはまだアナタを赦したわけじゃないのよ?あまり調子に乗らないでもらえるかしら。」オォォ


日向ミニ「嫉妬か?母上。」


南方戦「違うわよ!」


日向ミニ「いいや、嫉妬している。父上に構ってもらえなくて寂しいのだろう?」ニィ


南方戦「っ!あんたまで・・・。何を根拠に言ってるのよ!?」


日向ミニ「私なら嫉妬していただろうからな。まったく、親子の繋がりとは恐ろしいものだ。」フッ


南方戦「娘のくせに母を弄るとはいい度胸じゃない。無事に帰れるとは思わないことね!」ビシッ


集積姫「それはずっと一緒に居たいってこと~?」ニヤニヤ


南方戦「しつこい!!」クワッ


黒霧 「南!」


南方戦「何よ!」


黒霧 「いずれ君の心を奪いに往く。覚悟して待っていろ。」


南方戦「」ズキューン


南方戦「や、やれるもんならやってみなさいよぉ!!///」ブワァッ


南方戦「」ウッ グスッ エグッ


集積姫「あ~あ、泣いちゃった。ほら戻るよ。泣き顔は見られてないだろうからさ。」ヤレヤレ


集積姫「じゃあ、鮫のことよろしく~。」バイバーイ


黒霧 「ああ、任された。」


レ級 「誑しだな、師匠。」


日向ミニ「多少の戦闘も覚悟していたのだがな。予想以上に愛が深かったようだ。」


ヲ級 「みんな、お父さんが大好きなの~。」



最初で最後の恋なの。


南方戦「」ウァァァ


集積姫「マジ泣きだよ、まったく。これひとりで面倒見るの?」メンドクサ


南方戦「悪かったわね、面倒臭い女で。」グスッ


集積姫「やっべ、聞こえてた。」


南方戦「初めてだったのよ・・・。」


集積姫「語り出したし・・・。」


キキナサイ! ヘイヘーイ


南方戦「人間共に鹵獲されて、実験のモルモットにされていたワタシをあのひとは助けてくれた。」


南方戦「深海棲艦の生殖機能に関する実験のためだ、なんてあのひとは言っていたけど、それが本音じゃないことくらいわかるわよ。」


南方戦「美味しい料理を作ってくれて、温かいベッドを譲ってくれて、一向に手を出す気配がなかったじゃない。」


南方戦「人間を怨むワタシが、アナタの傍に居て感じていたのは安らぎばかりだった。」


南方戦「初めてだったのよ。ワタシが誰かのことをこんなにも愛しいと想えたのは・・・。」


南方戦「それからは苦難の連続だったわ。」


南方戦「だって、どんなに誘惑したって、アナタがワタシに手を出すことはなかったんだから。」


南方戦「やっとの想いで勝利を掴んだワタシは、アナタの子を身籠もり、蓮華が産まれた。」


南方戦「幸せだったわ。アナタと、愛する娘と暮らしたあの日々は・・・。」


南方戦「そんなときよ。集積、アンタが呼び集めた仲間達が基地に押し寄せてきたのは。」


南方戦「雨のように降り注ぐ砲弾と爆撃で研究所は全壊。まだ未熟で装甲の薄い蓮華を庇いながら、あのひとは姿をくらませた。」


南方戦「それは仕方のないことだってわかってる。でもきっとワタシを迎えに戻ってきてくれると信じてた。」


南方戦「信じてたのよ・・・。」フルフル


集積姫「だけど、彼は戻らなかった。」


集積姫「至上の愛を注いだ彼に裏切られたと思った南方ちゃんは、彼を怨んだ。」


集積姫「そして彼を殺し、自分も死ぬ覚悟を決めた。」


集積姫「そんなとき、彼は戻ってきた。最愛の娘を連れ、愛の告白を土産にして・・・。」


集積姫「揺らいでるんでしょ?彼の言葉を素直に受け取っていいのかどうか。」


南方戦「」コクッ


集積姫「まだ時間はある。悩んで、悩み抜いて、それでも答えが出ないなら、そのときの感情に任せればいいんだよ。」


南方戦「でも・・・。」


集積姫「愛してるんでしょ?だったら信じなよ。彼を愛する、自分自身の心をさ。」


南方戦「集積。アンタ、偶にはいいこと言うじゃない。」ドウシタノヨ


集積姫「今日だけの出血大サービスだよ。」


南方戦「そう。まぁ、気は楽になったわ。ありがとね。」


集積姫「二度目は無いからね。」


集積姫(安心してよ、南方ちゃん。私があんたを幸せにしてあげるからさ。)



成長とは外見の変化に非ず。


黒霧 「深海棲艦を喰らうとは、中々骨のある鮫みたいだね。」


レ級 「骨があるなんてもんじゃねぇぜ、師匠。何たって、俺の砲撃が通らねぇんだからよ。」


日向ミニ「ほぅ、それはもう鮫の域を超えているな。」


ヲ級 「魚雷も爆雷も効かないの!」


黒霧 「さしずめ"装甲機兵"ってところかな。」


レ級 「装甲機兵かぁ。うん、しっくりくるな。」


レ級 「砲雷撃に耐える鋼鉄の皮膚に、深海の装甲を引き裂く鋭い牙。装甲機兵・メガロドン。いいじゃねぇか。」ウンウン


日向ミニ「厨二病の卒業はまだ先らしいな。」


レ級 「なんだよ。かっこいいだろー?」


日向ミニ「そのかっこいい奴に、いったい何隻の仲間が喰われたと思っている。」


レ級 「・・・わりぃ。不謹慎だった。」シュン


ヲ級 「気にすることないの。たとえみんなの仇でも、かっこいいものはかっこいいから仕方ないの!」フンス


レ級 「お、おう。意外と大人なんだな、ヲーちゃん。」アリガトナ


ヲ級 「ううん。ヲーちゃんはまだまだ子供なの。それは自分が一番よくわかってるの。」


レ級 「それを自覚できる奴は、もう子供じゃねぇよ。」ハハッ



鮫に遭遇したらその場で待機。動けば魚と勘違いされるぞ。


黒霧 「さて、それじゃあ狩りにいこうか。大事な家族を喰い荒らしてくれた古代魚を。」ギラリ


レ級 「おぉ、師匠が本気モードに入ってる。」


黒霧 「この撃退銛を突き刺して終わりでいいかと思ってたけど、やめた。」グシャッ


黒霧 「砲弾や魚雷を通さない皮膚に刺さるわけがないし。何より、そう簡単に死なせるわけにはいかないからね。」フフフ


黒霧 「ご自慢の装甲を1枚ずつ剥ぎ取ってから、失血死するまで刻んでやる。」ニタァ


日向ミニ「スイッチが入ってしまったな。」


レ級 「いつ見てもおっかねぇ笑顔だよな。どうやったら真似できるのかな。」クイッ


日向ミニ「普通に可愛いな。」


レ級 「やめろよ。鳥肌立ったじゃねぇか。」ゾワッ


ヲ級 「こう?」ニパー


レ日向(天使だ・・・。)ホワァ



奴らの弱点は鼻先。センサーがあるらしい。


黒霧 「下に居るね。」ジッ


レ級 「上がってくるまで待つか?」


黒霧 「まさか。挨拶はこっちから出向くのが礼儀だよ。」ジャボン


ヲ級 「ヲー。もう見えなくなったの。」ハヤーイ


日向ミニ「父上には陸上も水中も関係ないからな。」


レ級 「原初の霧だっけ?いいよな、俺も師匠みたいな能力が欲しいぜ。」


日向ミニ「何を言うか。戦艦のくせに艦載機を飛ばし、魚雷まで放つだと?巫山戯るのも大概にしろよ、貴様。」ハッ


レ級 「おう。それは褒めてんのか、喧嘩売ってんのかどっちだ?」アァン?


日向ミニ「全力で褒めたつもりだが?」


レ級 「お前は力を入れる方向性を間違えてんだよ。」イツモソウダナ


ヲ級 「海中が真っ赤に染まっていくの。」ワァオ


黒霧 「」ザパン


ヲ級 「おかえりなの~。」ダキッ


黒霧 「ただいま。」ナデナデ


日向ミニ「奴はどうしたのだ?」


黒霧 「鮫の餌にしてやった。」


レ級 「いい気味だぜ。」ハッ


日向ミニ「ところで、その装甲はどうするつもりだ?父上。」


黒霧 「沈めておくのも勿体ないからね。最上の艤装に使おうかと思って。」


日向ミニ「ほぅ、それは面白そうだな。早く帰って造るぞ、父上!」ウキウキ


レ級 「お前の創作意欲も相変わらずだな。」


ヲ級 「もう帰っちゃうの?」ウルウル


黒霧 「また来るよ。」ナデナデ


ヤクソクナノッ! アア ヤクソクダ



そろそろ帰しとかないとね。


龍驤 「あ~。戻りたくない~。」ダラー


五月雨「いや、帰ってくださいよ。明日の補給物資は誰が運ぶんですか。」


龍驤 「代わりくらい居るやろ。大本営やで?忙しく動いとるんは男共の下半身くらいなもんや。」ハッ


三隈 「下世話ですわ。近寄らないでくださいまし。」ヒキッ


龍驤 「うちは新品やで?」


三隈 「クーリングオフを希望しますの。」


最上 「これは擁護できないな~。」


五月雨「出直してきてください。」


龍驤 「なんや、みんなして冷たいなぁ。ま、ええわ。今日のところはこのくらいで勘弁しといたる。」ヨッコイセ


龍驤 「ほな、またな。」ジャッ


五月雨「お土産、期待してますね~。」フリフリ


最上 「お饅頭がいいな~。」バイバーイ


三隈 「綺麗になってきてくださいまし。」ヒラヒラ


龍驤 「まだ穢れとらんわ!」



それでもやっぱりお嬢様。


最上 「ほんとみっちゃんはこういう話題が嫌いだよね。」


三隈 「当然ですの。淑女たる者、心も体も清くあるべきですわ!」フンス


最上 「心も?」


三隈 「何か文句でもありますの?」ジトッ


最上 「別に~。まぁ、確かに?未だに"クロさん"て呼べないくらいに初心な三隈ちゃんは、心も清らかかもね~。」ニヤッ


三隈 「なっ!?///」ボンッ


五月雨「そういえば呼んでませんでしたね、三隈さん。」


三隈 「そ、そんなことっ。どうでもいいではないですの!///」


最上 「今はいいよ?でもさ、みっちゃんとクロさんの微妙な距離感を訓練生の娘達が見たら、どう思うかな?」


三隈 「」ウグッ


最上 「せめて寝食を共にするクロさんくらいにはさ。それなりのスキンシップが取れるようになろうよ。ねっ?」


三隈 「頑張って、みますの・・・。」


最上 「うん、ボクも手伝うからさ。」ニコリ


五月雨「私もお手伝いしますよ!」ムフー



左遷の理由


五月雨「確か、おふたりは元人間なんですよね。」


最上 「そうだよ。ボクとみっちゃんは幼馴染みなんだ~。」エヘヘ


三隈 「ただの腐れ縁ですの。中学で引っ越したかと思えば艦娘養成学校で一緒になり・・・。」


最上 「配属先を転々として、何回一緒になったっけ?」


三隈 「7回ですの。」ハァ


最上 「そんなにだっけ?」


三隈 「間違いありませんわ。貴女と再会する度に演習をして怒られましたの。」


五月雨(あれぇ~。この人達、実はもの凄い問題艦なのでは・・・?)タラー


最上 「演習をして怒られなかったのは今回が初めてだね。」


三隈 「何を言ってますの?今回が一番恐かったですわ。思い出しただけで寒気が・・・。」ブルッ


最上 「え?そんなことあったかな?(怒ってたっけ?クロさん。)」


三隈 「ありましたわよ。(間宮さんを怒らせてはいけませんわ。)」


最上隈「???」


五月雨(クロさんに丸投げしよう。そうしよう。)ウン



建造組と改造組


最上 「五月雨ちゃんはどっちなの?」


五月雨「私ですか?それがよく憶えてなくてですね。」ウーン


三隈 「人間なのではなくて?話を聞いただけですけれど、貴女の回避能力は異常ですわ。」


三隈 「建造組にそこまでの能力はありませんの。」


最上 「やっぱりそう思う?」


三隈 「ええ。建造組は規定の能力値まで確実に成長する一方で、それ以上に成長することはありませんの。」


三隈 「対して私達改造組は能力値に個性が出ますわ。データ以上の能力値に成長する可能性もありますの。」


三隈 「五月雨さんの能力バランスは、正しく改造組のそれですわ。」


五月雨「確かにそうなんですけど・・・。」ウーン


最上 「何か気になることでもあるの?」


五月雨「いや、改造組なら人間だった頃の記憶があるじゃないですか。」


三隈 「そうですわね。」


最上 「ボク達もはっきり憶えてるからね。」


五月雨「何も憶えてないんですよね。大本営に着任する以前のことを。」


最上 「記憶喪失ってこと?」


五月雨「さぁ?」


三隈 「最初の記憶は何ですの?」


五月雨「・・・白い天井ですね。」


最上 「工廠じゃなくて?」


三隈 「これは決まりですわね。」


三隈 「五月雨さんは改造組の艦娘で、何らかの原因で記憶を失っている状態ですの。」


五月雨「まぁ、それが一番自然な結論ですよね~。」ムー


最上 「何があったんだろうね。」


五月雨「まっ、それはこの際どうでもいいじゃないですか。私達は今を生きているわけですし。」


五月雨「それにクロさんが帰ってきたら、それどころじゃなくなりますし。」トオイメ


最上 「あんまり痛いのじゃないといいな・・・。」


三隈 (本物の暗殺者が指導する訓練・・・。燃えますの。)ゴゴゴ



知らないうちに嫌われるともうどうしようもない。


五月雨「三隈さんは日向さんと何処で知り合ったんですか?」


三隈 「急になんですの?」


最上 「あっ、それボクも訊きたかったんだ~。」


三隈 「もがみんまで・・・。」エェ


五月雨「いえ、どう考えても知り合いとしか思えなかったもので。」


五月雨「日向さんが居るときに訊くと機嫌損ねそうでしたから、今のうちにと・・・。」


三隈 「そうですわね。確かに、私は日向と顔見知りですの。仲もそこまで良くありませんわ。」


五月雨「苦手なんですか?日向さんのこと。」


三隈 「私は別に苦手とかではないですの。何故か一方的に嫌われてますの。」


最上 「何やらかしたの?みっちゃん。」


三隈 「心当たりがありませんの。」


五月雨「日向さんと初めて会ったとき、なんて言いました?」


三隈 「確か・・・。"ちびっ娘がこんな所に居ては危ないですわよ。"でしたの。」


五月雨「それですよ・・・。」ハァ


三隈 「ですが、想像してくださいまし。」


三隈 「海上封鎖で立ち入り制限が掛けられた浜辺に幼子が独りで佇んでいましたのよ?それも可愛らしい服を着て。」


三隈 「誰だって声を掛けますの!」


最上 「声の掛け方が問題なんだよ・・・。」


五月雨「子供に対して"ちびっ娘"はアウトです。」


日向ミニ「貴様の言う子供とは、まさか私のことか?」


五月雨「」ゲッ


日向ミニ「少し、お話しようか。」ニタァ


五月雨「南無三!」バビューン


日向ミニ「逃がすか!!」ダッ


フハハハハ ヒュウガサンガコワレター!


最上 「さっきの日向ちゃんの笑顔、クロさんそっくりだった・・・。」ゾクッ


三隈 「血は争えませんわね。」



現時点では二股野郎。


間宮 「おかえりなさい、時雨さん。」ニコリ


黒霧 「ああ、ただいま。」ニコリ


間宮 「何事もなかったようで何よりです。」


黒霧 「僕達は・・・ね。」


間宮 「っ!すみません。配慮に欠けた発言でした。」シュン


黒霧 「構わないよ。全てを救うなんてことは、神を超越した者達でさえ為しえなかったことなんだから。」


間宮 「時雨さん・・・。」


バァン!


五月雨「クロさん、ヘルプ!!」ガシッ


黒霧 「おっと、どうしたの?」


日向ミニ「」フシュー


黒霧 「あぁ、なるほど。」


日向ミニ「父上、そこを退いてくれ。」コーホー


五月雨「」ヒッ


黒霧 「退いたら日向を抱き締められないよ?」フフッ


日向ミニ「」ピタッ


日向ミニ「ふむ、それもそうだな。」ケロリ


黒霧 「最上を呼んでこよう。速攻で仕上げるよ。」


日向ミニ「了解した。先に行っているぞ。」タッ


黒霧 「間宮。悪いけど、昼は握り飯にして工廠に持ってきてくれないか?」


間宮 「はい、お安い御用です。」ウフフ


黒霧 「ありがとう。」フフ


五月雨「クロさんって、女性の扱いが上手いですよね。暗殺者のくせに・・・。」イヤ ダカラコソカ


モガミー ナニー? ダッシュ エ ナンデ?



実際そんなに早くできるわけがない。


日向ミニ「随分早かったな。例の装甲はインゴットに加工済みだ。」


黒霧 「流石は日向だ。仕事が早い。」ナデナデ


日向ミニ「当然だ。私に不可能は無い。」フフン


最上 「呼ばれたはいいけど、ボクは何をすればいいのかな?」


黒親子「何も。」


最上 「え?」


黒霧 「盾は僕が仕上げよう。日向は艤装の細かい部分を頼む。後で因子を入れ込むことを意識してね。」


日向ミニ「任された。5分くれ。」


ゴォォォ カーン カーン・・・


最上 「なんで、呼ばれたんだろう・・・。」


オニギリモッテキマシタヨー アリガトウ



重装巡洋艦・最上


日向ミニ「出来たな・・・。」フゥ


黒霧 「ああ、良い出来だ。」


最上 「海を見ながら食べるおにぎりもいいね~。」シミジミ


黒霧 「最上、艤装を着けてみてくれないか。」ガシャン


最上 「いいよ~。って、何これ・・・。」


日向ミニ「私と父上の合作。最上専用の艤装だ。」フンス


ギソウ ソウチャクチウ・・・


最上 「すっごい重い・・・。」ズシッ


最上 「足首まで沈んでるんだけど・・・。」


黒霧 「ちょっと目を瞑って。」ソッ


最上 「え?・・・うん。」スッ


ムグッ ンンー プハァ


最上 「な、何を・・・。///」カァ


ブォン< 艤装起動


最上 「おぉ、身体が浮いた!」フワッ


黒霧 「最上の艤装は、航空巡洋艦の積載量を少し超過する設計になってる。」


黒霧 「通常の脚部艤装では支えきれないから、僕の因子を加えた特殊な脚部艤装に変更しているよ。」


黒霧 「反重力の力場を作って浮力を生み出しているから、膝にかなりの負担が掛かる。」


黒霧 「膝のサポーターは必ず着けて、出撃後は脚のマッサージを忘れないように。」


最上 「ん~。なんだか難しいけど、かっこいいからいいや!ありがとね!」ニコッ


黒霧 「海面上を少し浮いて移動するようになるから、魚雷も効かないよ。」フフッ


最上 「おぉ~。あれ?何か忘れているような・・・?」ンー


日向ミニ「艤装の説明がまだ途中だ。基本武装については私から話そう。」


最上 「お願いします!」ビシッ



海の重戦車


日向ミニ「基本武装は4つだ。」


日向ミニ「反重力の大盾、超口径砲、迫撃砲、そして自律型迎撃衛星。」


日向ミニ「大盾は脚部艤装と同様に反重力の力場を生み出し、砲弾を逸らせる仕様だ。」


日向ミニ「軌道の変化が激しいからな。流れ弾を味方にぶつけないように注意しろ。」


最上 「了解。」


日向ミニ「超口径砲は名前のとおり、特大の口径を有する砲火器だ。大和型の砲撃と同程度の威力を想定している。」


日向ミニ「当然、反動が凄まじい。砲撃の際は身体全体で支えるようにしておけ。片腕持っていかれるぞ。」


最上 「恐いこと言わないでよ・・・。」アハハ


日向ミニ「迫撃砲だが、弾を何種類か用意している。対空・対地・殲滅、用途に応じて使い分けることだな。」


日向ミニ「弾に関して要望があれば言ってくれ。開発しておこう。」


最上 「うん、ありがとね。」


日向ミニ「最後は自律型の迎撃衛星だな。まぁ、言ってしまえばドローンだ。艦載機にはできない立体機動を得意としている。」


日向ミニ「目標を指定すれば、勝手に発艦して迎撃する。機銃しか積んでいないからな。対空迎撃と威嚇射撃に使うといい。」


最上 「いいね。なんだかワクワクしてきたよ。」ゾクゾク


最上 「あはぁ~。早く使ってみたいなぁ~。///」コウコツ


日向ミニ「父上よ。こいつに専用艤装を与えたのは間違いだったのではないか?」


黒霧 「これから躾けるから・・・。」



本来の目的が二の次になっている現実。


五月雨「クロさ~ん。って、なんですか!そのゴツい艤装は!」ハェー


三隈 「これは・・・。いいですわね。」ゴクリ


最上 「でしょ?重装巡洋艦・最上。此処に見参ってね。」エヘヘ


黒霧 「さて、今日は最上の訓練をしよう。」


最上 「了解!」ビシッ


三隈 「私はおあずけですのね・・・。」ムゥ


黒霧 「三隈は明日だよ。新しい艤装も造るし、特別講師も呼ぶから楽しみにしててよ。」ニコリ


三隈 「本当ですの!?明日が待ちきれませんわ!」ウズウズ


黒霧 「五月雨。」


五月雨「なんでしょう?」


黒霧 「回避機能訓練をしておいで。その鎌は背負ったままね。調整は日向に任せる。」


日向ミニ「承知した。」ニタァ


五月雨「クロさん、娘さんに殺されそうです。なんとかしてください。」


黒霧 「危なくなったら鎌を使ってもいいから。」ニコリ


五月雨「昨日の今日で使えるようになるわけないじゃないですか!」


日向ミニ「行くぞ、五月雨。」ガシッ


五月雨「」グエッ


ズルズル アーレー



最上の訓練


最上 「ボクは何をすればいいのかな!」ワクワク


黒霧 「最初は姿勢制御の訓練かな。」


黒霧 「艤装が重い分、少し軸がずれただけでかなりの力が掛かるようになるから、これまでより姿勢を保つことが難しくなってる。」


黒霧 「ホバーとは違って、地表面から反力を得ているわけじゃないから波の影響はないけどね。」


最上 「姿勢制御かぁ。要するに体幹トレーニングってことだよね?」


黒霧 「大きな括りではそうだね。併せて下半身の筋力強化もしておこうか。」


黒霧 「まずは真っ直ぐ進んで戻ってくること。その次は蛇行で往復。旋回時には軽い屈伸運動をすること。」


黒霧 「ただし膝を軽く曲げる程度でね。それ以上は故障の原因になるから。」


最上 「思ったより地味な訓練だね。」


黒霧 「訓練とはそういうものだよ。」


ドカーン アァァァ!


黒霧 「あれは例外だから・・・。」


チョット ヨウスミテクル イッテラッシャーイ



遊ぶにしても道具と相手は選べ。


最上 「あ、あれ?」


三隈 「どうかしまして?」


最上 「・・・前に進めない。」


三隈 「そんなはずありませんの。日向とクロさんの合作ですのよ?」


最上 「何これ・・・。全然、動けない・・・。」ズーン


三隈 「重心を前に傾けるだけですの。何年艦娘やってますの?」マッタク


最上 「それはわかってるんだけどさ。重心を前に傾けたら・・・。」スッ


三隈 「どうして一歩踏み出しましたの・・・。」


最上 「耐えられないんだよね~。重すぎてさ。」ドウシヨ


三隈 「貴女、このままだとただの的ですわよ。」


最上 「そこはほら、この盾があるから。」ヒョイ


三隈 「反重力の盾・・・。」


最上 「試してみる?」つ小石


三隈 「いきますわよ。」フリカブリ


最上 「ばっちこい!」


三隈 「ふん!」ビュン


最上 (あっ、出力調整ねじがある。"反射"にしとこ。)クリクリ


ブゥン シュバッ


三隈 「ヘブッ」バチコーン


最上 「おぉ、跳ね返ってみっちゃんの顔面に・・・。」イタソ


三隈 「最上ぃ・・・。」ユラァ


最上 「え?ボクの所為?」


三隈 「貴女、今動けませんでしたわねぇ。」ニコォ


最上 「」ダラダラ


三隈 「乙女の顔に傷をつけた罪は重いですわよ?」フフフ


クライナサイ!! ボカーン ギャァァァァ!



気があるような反応は心臓に悪い。


三隈 「」チーン


最上 「この盾、凄いねぇ。あんな至近距離の砲撃も跳ね返すなんて・・・。」キラキラ


三隈 「明日を楽しみにしておくといいですの。三隈の新しい力、その身に教えてさしあげますの。」フフフ


最上 「うわぁ。未知数なだけに恐いなぁ。まぁ、ボクにはこの盾があるからねっ。」フフン


黒霧 「君達、遊んでたね?」


三隈 「」ビクッ


最上 「おかえり~。いや~、訓練しようにも前に進めなくてさ。」アハハ


黒霧 「いつもみたいな直立姿勢では無理だよ。肩幅より気持ち広めに足を開いて、少し膝を曲げてごらん。」


最上 「こう?」コシオトシ


黒霧 「サポーターを起動させて。その状態で固定されるから。」


最上 「おぉ、すっごい楽になった。」


黒霧 「膝を前に出すイメージで、重心を前に倒す。」


最上 「進んだ!」スー


黒霧 「元の体勢に戻したら止まるから、停止と発進の練習もしておいてね。」


最上 「は~い。」


三隈 「ク、クロさん!///」マッカ


黒霧 「ん。どうしたの?」


三隈 「三隈の艤装は、あの盾に負けない艤装にしてほしいですの!」


黒霧 「わかった。航空巡洋艦に相応しい、あの大盾を突破できる艤装を約束するよ。」ナデナデ


三隈 「///」プシュー


最上 「まぁ、みっちゃんにしては頑張ったほうかな。クロさんなら間違いも起きないだろうし・・・。」


最上 「後は、みっちゃんが本気にならないことと、間宮さんが勘違いしなければ平和かな~。」



ふたりの関係


五月雨「あ~。死ぬかと思った・・・。」プカプカ


日向ミニ「中々の見物だったぞ、五月雨。父上ほどではないが、舞っているようには見えたからな。」ヤルナ


五月雨「伊達に初期艦やってませんからね。この大鎌を外してもいいなら、もっと凄いですよ?」


日向ミニ「父上の言霊を破るつもりか?」


五月雨「意地悪ですね~。クロさんを引き合いに出されたら納得するしかないじゃないですか~。」ムー


日向ミニ「お前は、どうしてそこまで父上を信じられるのだ?」


五月雨「日向さんは信じてないんですかぁ?」ニィ


日向ミニ「真面目な話だ。」チャカスナ


五月雨「そうですね・・・。どうしてでしょう?私にもよくわかりません。」ニパッ


日向ミニ「そうか・・・。」


日向ミニ(変わらないな。その笑顔は・・・。)フッ


ナンデワラウンデスカー イヤ ナンデモナイ



処変わって。


レ級 「」ウーン


ヲ級 「どうしたの?レーちゃん。」ヲ?


レ級 「ん~?いや、どうやったら師匠みたいに笑えるかなって。」


ヲ級 「こうするといいの!」ニパー


レ級 「それは天使の微笑みだ。」イヤサレル


ヲ級 「え~。」ブー


南方戦「何の話してるのよ。」ズイッ


レ級 「南姉。」


ヲ級 「南お姉ちゃんなのっ!」トウッ


南方戦「おっと、アンタは相変わらずねぇ。」マッタク


レ級 「なぁ、師匠みたいに笑うにはどうしたらいいと思う?」


南方戦「はぁ?師匠って誰のことよ?」


レ級 「と、父ちゃん。///」カァ


南方戦「あのひとのことか・・・。あのひとの笑顔ねぇ。」


ヲ級 「とっても邪悪でかっこいいの!」キャイキャイ


南方戦「あぁ、そっちの・・・。」


集積姫「いったいどっちの笑顔のことを考えてたのかな~?」ニタァ


南方戦「ウッ///」カァ


レ級 「おぉ!集積姉のその笑顔!それだよ、俺が目指してる笑顔は!」


ヲ級 「お父さんにそっくりなの~。」


集積姫「そう?まぁ、時雨ちゃんと私は同じ部類の仲間だからね~。」ニシシ



テーマ設定は大事。


レ級 「部類?なんだそりゃ?」


集積姫「そうだな~。例えば、ヲーちゃんは天使系。」


ヲ級 「ヲ?」


南レ級(わかる・・・。)


集積姫「レーちゃんは、次女系。」


南方戦「素直になれないお年頃ね。」


レ級 「なんだよ!結構、素直だろ!」


南方戦(本当はヲーちゃんみたいに甘えたいくせに・・・。)


集積姫「南方ちゃんは、ポンコツ系。」


南方戦「はぁ!?」


集積姫「だってさ~。南方ちゃん、作戦指揮できないじゃない。」


集積姫「この間も南西諸島遠征部隊の指揮をして、何処に行き着いたんだっけ?」


南方戦「・・・ジャマイカ。」ゴニョゴニョ


集積姫「莫迦じゃないの?」


南方戦「う、五月蠅いわね!」


レ級 「集積姉の部類は何なんだ?」


集積姫「私はねぇ・・・。"道化"だよ。」ニタァ



規格外量産機


カポーン


最上 「体中が痛い・・・。」ズキズキ


三隈 「見るからに重そうな艤装でしたものね。」


最上 「"そう"じゃなくて、本当に重いの。」


三隈 「大丈夫ですの?艤装を着ける度にそうなっていては、話になりませんわよ?」


最上 「だよね~。まぁ、ボクは改造組だし、なんとかなるんじゃないかな。」アハハ


三隈 「相変わらず楽天的ですわね。」ハァ


ガラッ


五月雨「癒やしの一時だ~。」ウハハーイ


最上 「五月雨ちゃん、お疲れ~。」


三隈 「激しい訓練でしたわね。」オツカレサマデスノ


五月雨「慣れたら軽いものですよ。瞳を閉じてフラフラしてるだけですから。」アハハ


五月雨「私より最上さんのほうが大変ですよ。」


最上 「流石はクロさんの初期艦だね・・・。」


三隈 「規格外ですの・・・。」


五月雨「まぁ、初期艦とは名ばかりで、まだ着任5日目なんですけどね。」


最上隈「え?着任5日目?」


五月雨「あれ?言ってませんでしたっけ?」


三隈 「初耳ですの。」


最上 「クロさんの訓練とはいったい・・・。」



恒例の入浴シーン。ポロリはない。だってそもそも・・・。


ガラッ


日向ミニ「良い一日だった!」グッショリ


最上 「濡れまくってるね~。」


五月雨「それ全部汗ですか?脱水起こしますよ?」


日向ミニ「問題ない。既にフラフラだ。」フラッ


五月雨「だから問題しかねぇって!」ダッ


間宮 「もう、無茶は駄目ですよ。」スッ


日向ミニ「すまん。だが、ひとりは寂しいのでな。」


間宮 「お水持ってきますね。」ウフフ


五月雨(あっ、止まれない・・・。)ヤバイ


黒霧茜「」ガシッ


黒霧茜「反応の早さは評価するが、後のことも考えておけ。五月雨よ。」


五月雨「あはは。肝に銘じておきます。」タスカリマシタ


黒霧茜「時雨の訓練はどうだ?中々の鬼畜ぶりだろう。」


最上 「それはもう。一見楽そうな訓練が実はってところが、また鬼畜度を上げてますよね~。」アハハ


三隈 「その話は明日にしてほしかったですの・・・。」


黒霧茜「貴様に訓練をつけるのは時雨ではないぞ?」


三隈 「そうでしたわね。どなたが特別講師になってくださいますの?」


黒霧茜「魔族を統べる者だ。」ニィ


三隈 (明日が命日ですの・・・。)


五月雨(シンパシーを感じる。)ムムッ



最も恐ろしい者


三隈 「どんな方ですの?その、魔族を統べる方というのは・・・。」


黒霧茜「魔王だ。」


三隈 「それは大体想像がつきますの。」


最上 「どんな性格の人なの?」


黒霧茜「性格?・・・性格か。」ムゥ


五月雨「あぁ、茜さんに訊いても無駄ですよ。要領得ませんし、クロさんに代わってもらいましょう。」


三隈 「え?///」


最上 「流石にタオル無しで混浴は・・・。」チョット


黒霧茜「そうか・・・。私はお呼びでないか。そうか・・・。」シュン


間宮 「日向ちゃん、お水ですよ。」ハイ


日向ミニ「ああ、礼を言う。間宮。」ゴクゴク


三隈 「そろそろ上がりますの。逆上せてしまいそうですわ。」フゥ


最上 「待って。それならボクも連れてって。自力で動けない。」カラダガ


三隈 「たかが筋肉痛で何を言ってますの。此処まで自分で歩いてきたでしょうに。」


最上 「いや、これ筋肉痛なんてレベルじゃ・・・。」ピクピク


黒霧茜「それは筋肉痛ではないぞ。肉体が原初の霧に適合する際に伴う痛みだ。暫くは動けん。」


五月雨「原初の霧、ですか?」


黒霧茜「時雨の体内で生成される万象の素だ。肉体の改造にも使えるがな。」


五月雨「あぁ、龍驤さんが言ってた因子のことですか。最上さんも注入してもらったんですか?」


最上 「ん~。どうだろ?少なくとも、クロさんからは何も聞いてないよ。」


日向ミニ「何を言っている。あのときに注入されていただろう?」


日向ミニ「まったく、艤装を起動させるために必要なこととはいえ、気分の好いものではないな。」フンッ


最上 「艤装の起動・・・。注入・・・。あっ。///」カァ


三隈 「あら、逆上せましたの?顔が紅いですわよ。」


最上 「えっ!?いや、これは・・・。その・・・。///」アハハ


黒霧茜「原初の霧は時雨の体内で生成されるからな。粘膜を通してでなければ、他人に渡せんのだ。」イタシカタナイ


間宮 「はい?」ピクッ


五月雨「ってことは、最上さん・・・。」


最上 「・・・しました。///」


間宮 「最上さ~ん。ちょっと、お話しましょうか~。」ウフフ


最上 「ごめんなさい!でも、ボクは悪くないと思うんです!今、動けないからほんと勘弁してください!!」


間宮 「問答無用。」ニコォ


最上 「」ヒィィ


ギャァァァァ! ウフフフ


三隈 「明日は三隈が・・・。///」ボッ



万能に制限はつきもの。


五月雨「クロさんに代わらなくていいんですか?結構やばいですよ、あれ。」ウワァ


黒霧茜「そうすべきなのは承知しているが、今日の時雨は能力を使いすぎた。」


黒霧茜「明日のこともある。今は休ませてやらねばならんのだ。」


五月雨「原初の霧って、そんなに危険なものなんですか?」


黒霧茜「いや、原初の霧自体は別段危険なものではない。時雨自身にとってはな。」


黒霧茜「ただ、私達の肉体は原初の霧で構築されているからな。」


黒霧茜「時雨の魔力が尽きたが最後。私共々、消滅する。」


五月雨「・・・え?」


黒霧茜「そんな顔をするな、五月雨よ。そうさせんために私が共に居るのだ。」


五月雨「でも、クロさんが疲れているときに襲撃があったりしたら・・・。」


黒霧茜「お前達が居るだろう?」ポム


五月雨「・・・そうですね。はい、そうでした。」フフ


黒霧茜「それに私も居るからな。」


五月雨「クロさんの魔力が尽きかけていても、茜さんは平気なんですか?」


黒霧茜「魔力とは魂が放つ力なのだ。肉体を共有していようと、魔力が混じり合うことはない。魂を融合させない限りはな。」


五月雨「肉体の変換にも魔力が必要なのでは?」


黒霧茜「原初の霧を身に宿す者は、原初の霧を操る力を得る。私の魔力でも肉体の変換は可能だ。」


日向ミニ「父上が最上に因子を注入したのも、それが目的だ。」ヒョコッ


五月雨「おぉ、吃驚した。もう大丈夫なんですか?」


日向ミニ「ああ。遺憾ながら、間宮の御蔭でな。」チャプッ


五月雨(なんで、この人の気配だけは読めないのかな・・・。)ムー



三人組になるとよくある出来事。


日向ミニ「最上の脚部艤装と大盾、自律型迎撃衛星には父上の因子が仕込んである。」


日向ミニ「それで反重力の力場を生み出しているからな。あの艤装を扱うためには、因子の注入が必要条件となるわけだ。」


五月雨「その所為で最上さんは間宮さんの制裁を受ける羽目になったんですけどね・・・。」マダヤッテル


日向ミニ「仕方あるまい。お前達には並みの実力程度でいてもらっては困るからな。」フン


五月雨「大きな作戦でもあるんですか?」


日向ミニ「近いうちにな。」


五月雨「マジですか。うちは出撃皆無の訓練基地のはずなのに・・・。」


日向ミニ「明日も私が訓練に付き合ってやる。覚悟しておけよ。」フッ


五月雨「音速超えは勘弁ですよ?」ウデモゲルカラ


黒霧茜(時雨よ。私は今、空気だ。お前の処世術が羨ましい。)ボー



弱みを握られるともう勝ち目は無い。


五月雨「夕餉後寝るタ~イム!」バァン


五月雨「ベッドがふたつになってる!」


間宮 「はい、龍驤さんが運んできてくださいましたから。」ウフフ


五月雨(それを此処まで運んだのは間宮さんなんですよね・・・。何も言いませんが。)


日向ミニ「シングルとセミダブルか。ならば私はこっちだな。」トテトテ


五月雨「そっちはシングルですよ?」


日向ミニ「そうだが?」ナンダ?


五月雨「いや、最上さんと三隈さんがシングルで私達がセミダブルですよね?」


日向ミニ「私と母上がシングルだろ。」


五月雨「本気で言ってます?」


日向ミニ「何事にも全力で取り組むのが私の信条でな。」フフン


五月雨「・・・私が眠った頃を見計らって。」ボソッ


日向ミニ「セミダブルで決まりだな。」シュバッ


五月雨「わかればよろしい。」ヨッコイセ


アシタハカクゴシテオケ ノゾムトコロデス


三隈 「今日はまともに眠れそうですわ。」ヨカッタデスノ


最上 「ずっと緊張してたもんね、みっちゃん。」


三隈 「・・・何故、それを知ってますの?」


最上 「背中越しに感じる温もり。男らしい筋肉質な腕の感触。少し身を捩ればお尻に手が・・・。」ニヤニヤ


三隈 「///」プルプル


最上 「まぁ、みっちゃんのお尻を触ってたのはボクなんだけど。」テヘッ


三隈 「」ブチィ


三隈 「もがみん、新しい艤装のお祝いに私から安らかな眠りをプレゼントしますわ。」フフフ


最上 「それって、ちゃんと目覚めるほうの眠りだよね・・・?」


三隈 「勿論。ですが、気持ちよすぎて眠り続けてしまうかも知れませんわね。」ニコリ


最上 「アハハ」タラー



6日目の朝。今日は奴が来る。


三隈 「毎度思っていたのですが・・・。今、何時ですの?」


五月雨「さぁ?時計が無いのでわかりませんね。」


最上 「」スピー


三隈 「朝が苦手なのは変わりませんのね・・・。」マッタク


五月雨「今日も目覚めの一発、いっときますか?」


三隈 「そうですわね。」スッ


バチーン! イッタァ!


三隈 「っ~!!」ジンジン


最上 「」スカピー


五月雨「若しかして、クロさんの因子を取り込んだから・・・。」


三隈 「装甲の強度が上がってますの・・・!」クッ


三隈 「これではもがみんを起こせませんの。」


五月雨「口と鼻、塞いでみたらどうですか?」


三隈 「中々えげつないことをサラッと言いますのね・・・。」オソロシイコッ


ギュムッ ・・・フゴッ ブハァッ



現代の日本では捕まります。


最上 「本当に永遠の眠りに就くところだった・・・。」


三隈 「仕方ないですの。叩いても起きない最上が悪いですの。」


最上 「叩いたんだ・・・。」


五月雨「それにしても凄い変化ですよね。それもたった一晩で。」


三隈 「ええ、戦艦並みではなくて?」


最上 「そんなに?」


最上 「砲撃は大和型並み。装甲も戦艦並み・・・。ボク、戦艦になったのかな?」


日向ミニ「莫迦を言うな。お前は重装巡洋艦だ。うちに戦艦を保有するだけの資源は無いぞ。」フン


最上 「おはよう、日向ちゃん。既にびっしょりだね。」アハハ


五月雨「例にもよって、それ全部汗ですか?」ウワー


日向ミニ「三隈の艤装を造っていたからな。こうもなる。」フラッ


黒霧 「」ガシッ


日向ミニ「父上か。」グッタリ


黒霧 「汗を流してこようか。水は間宮に頼んであるから。」ヒョイッ


日向ミニ「うむ。」オヒメサマダッコ


黒霧 「三隈、朝食が済んだら工廠まで来てね。艤装のテストをするから。」


三隈 「わかりましたの。」


黒霧 「それじゃ、また後でね。」スタスタ


五月雨「クロさん、全く汗をかいてませんでしたね。これが魔族と人の違いなんでしょうか?」


最上 「頑丈なんだね。」


三隈 (三隈の新艤装・・・。燃えてきましたわ。)ムフー



海軍の実態(実在のものとは一切関係ありません。)


龍驤 「おっ、やっと来たか。随分と遅いお目覚めやなぁ。」ニッ


五月雨「龍驤さん、もう来てたんですね。暇なんですか?」


龍驤 「暇なわけあるかいな。うちには物資輸送って大事な任務があるんやで?」


最上 「他には?」


龍驤 「無いな。」キリッ


三隈 「それを暇というんですの。」


龍驤 「ええやんか~。大本営は居心地悪いねん。」グデッ


間宮 「あら、私の実家はそんな評価なんですね。」フキフキ


龍驤 「しゃーないやろ。直結思考の巣窟やで?」


間宮 「それには同意しますね。私もお爺さまの後ろ盾が無ければ、何度襲われていたことか・・・。」カタッ


五月雨「私の元職場って、そんなだったんだ・・・。」エェ


三隈 「本営勤務がなくてよかったですの。」ホッ


最上 「みっちゃんがそうなってたら、トラウマものだね。」



五月雨の過去


五月雨「私も本営勤務でしたけど、そんな様子はなかったですよ?」


龍驤 「そらそうやろ。」ジー


間宮 「まぁ、五月雨ちゃんはねぇ。」


五月雨「なんですか。私には需要が無いって言いたいんですか?龍驤さんみたいに。」ムスッ


龍驤 「そうやないわ・・・。今、なんて言うた?」オイ


間宮 「五月雨ちゃんは、時雨さん預かりということになってましたから。誰も手を出しませんよ。」


五月雨「え?クロさん預かり?」


龍驤 「"舞鶴の真宵烏"の名は伊達やないからな。」


五月雨「ちょっと待ってください。私とクロさんはこの基地に来る以前に出会っていたってことですか?」


龍驤 「なんや、ほんまに憶えとらんかったんか。」


間宮 「五月雨ちゃんは、件の実験施設襲撃に巻き込まれて轟沈寸前だったところを時雨さんに拾われてきたんですよ。」



最早隠れていない真実


五月雨「そんな・・・。」


三隈 「なるほど。それで五月雨さんの記憶が欠落していたわけですわね。」


最上 「ねぇ。実験施設って、何?」


龍驤 「この基地をもっと東に行った所にある孤島に建てられた施設のことや。」


龍驤 「秘密裏にえげつない実験しとったみたいやで?情報規制があったから、うちも詳しくは知らん。けど間宮なら・・・。」チラリ


間宮 「私にも詳しいことはわかりませんよ。」


間宮 「知っているのは、深海棲艦を鹵獲して実験していたこと。そして時雨さんがその実験に関わっていたことくらいです。」


五月雨「クロさんが?」


龍驤 「なるほどな。それであのとき、クロさんが居ったわけか。」


三隈 「あのときとは、何のことですの?」


龍驤 「実験施設が深海棲艦の襲撃を受けたときや。偶然、近くに居ったうちらが救援に駆り出されてな。」


龍驤 「燃え盛る海を背に、五月雨とちっこい深海棲艦を担いだクロさんが佇んどったわ。」


龍驤 「五月雨はうちらが預かって大本営まで曳航したんやけど、クロさんはどっか行ってしもうてな。」


間宮 「ちゃんと帰ってきましたよ。」


龍驤 「なら間宮。そのちっこい深海棲艦のこと、なんや知っとるんやないか?」


間宮 「ええ、知ってますよ。」


龍驤 「クロさんのことや。まさか消してはないやろ。今、何処で何をしとるんや?」


間宮 「貴女の後ろで・・・。」


日向ミニ「仁王立ちをしているな。」


龍驤 「」(゚Д゚)


五月雨「やっぱり深海棲艦だったんですね、日向さん。」



前を見ろ。振り返るな。そこに明日は無い。


日向ミニ「そんなことはどうでもいい。それより、父上を待たせるとはいい度胸だな、三隈。」ニタァ


三隈 「!」ゾクッ


三隈 「今すぐ行ってまいりますの!」バビューン


最上 「あっ、ボクも行くー。」ガタッ


龍驤 「おっかない顔やなぁ。クロさんそっくりや。珈琲、飲むか?」


日向ミニ「いらん。用事ができたからな。」


五月雨「三隈さんに何するつもりですか・・・。」テカゲンシテアゲテクダサイヨ?


日向ミニ「」ニヤッ


五月雨「本当に何する気ですか!?」


龍驤 「あんな話聞いた後やっちゅうのに、平常運転やなぁ。ショックとかないんか?」


五月雨「まぁ、驚きはしましたけど、憶えていないことを気にしても仕方がないじゃないですか。」


間宮 「憶えていないからこそ、気になるものじゃないかしら?」


五月雨「私は、今が好きですから・・・。」


五月雨「今が幸せだから、過去は気にしません!」ニパッ


龍驤 (日向のことを訊いたつもりやったんやけどな・・・。)


日向ミニ「」フッ


日向ミニ(本当に変わらないな、お前は・・・。)


・・・


???『不幸な今を憂うなら、幸せな明日を願って、今できることを考えるべきです!』


???『艦娘も深海棲艦も関係ない。私達はもう"家族"じゃないですか!』ニパッ



参戦ですの!


三隈 「遅れてすみませんですの!」ゼェ ハァ


黒霧 「大丈夫だよ。静かに海を眺めるのも風情があるからね。」フフ


三隈 「・・・本当に、申し訳ないですの。」シュン


黒霧 「僕は気にしてないよ。日向は怒るだろうけど。」


三隈 「死刑宣告を受けましたの。」アオザメ


黒霧 「日向も生死の線引きはきちんとしているからね。大丈夫、少なくとも命は助かるよ。」ナデナデ


三隈 (・・・落ち着きますわ。発言の内容は不穏極まりないですが。///)テレテレ


最上 「」チラッ


最上 「これはみっちゃんも参戦かな~。婚約者相手にどう闘わせようかな。」ウーン



修羅の道へ


三隈 「これが三隈の艤装ですの?」


黒霧 「そうだよ。」


三隈 「これは・・・。」


最上 「何これ、ジェットパック?」ヒョコッ


三隈 「もがみん、いつの間に・・・。」


黒霧 「取り敢えず、背負ってみてよ。」フフッ


三隈 「これで、いいですの?」ガション


黒霧 「三隈。」ソッ


三隈 「なんですの・・・。っ!」ムグッ


三隈 「っ~!~!!」


プハァッ


三隈 「///」ホケー


黒霧 「ちょっと長めにしたけど、これでよかったかな?」


最上 「勿論。良い仕事だったよ、クロさん。」グッ


三隈 「///」ホケー


黒霧 「戻ってこないね・・・。」


最上 「もっかいやっとく?」


黒霧 「天に召されそうだから、やめておくよ。」フフッ


最上 「みっちゃんは初心だからな~。」アハハ



航空機動巡洋艦・三隈


三隈 「」ハッ


三隈 「何が起きましたの!?」


最上 「ん~。いいこと?」


三隈 「いやらしいこと!?///」ボンッ


最上 「いや、そんなこと言ってないから・・・。」


黒霧 「三隈。」


三隈 「ヒャイ!」ビクッ


黒霧 「背中に意識を集中して。」


三隈 「せ、背中ですの?」


黒霧 「そう。自分の背中に翼が生えていることをイメージして。」


三隈 「三隈の背中に、翼が・・・。」ムー


黒霧 「それを、一気に広げる。」


三隈 「広げる!」バサッ


最上 「マー〇ルのファルコンだ!」


三隈 「鋼の翼ですの。」ガショガショ


黒霧 「三隈は航空巡洋艦だからね。空を飛んだっていいでしょ?」ニコリ


最上 「その発想はなかった。」ワァオ


三隈 「大空という海原を翔る船ですわね!」キラキラ


最上 「気に入ったんだ。」ヨカッタネ



理由さえあれば。


最上 「でも、これどうやって飛ぶの?噴射口らしきものが無いんだけど。」


黒霧 「最上の盾と大体同じだよ。艤装に重力を調整する機構を仕込んでおいたから。」


三隈 「反重力の力ですわね。」


黒霧 「少し違うのは三隈の場合、三隈自身にも反重力の力が作用することだね。」


黒霧 「そうすることで、より機敏な動きが可能になるんだ。」


最上 「それボクの艤装にも付けてほしかったなぁ。」ムー


黒霧 「最上の艤装は重いからね。すぐにエネルギーが切れてしまうよ。」フフッ


三隈 「そういえば、この艤装のエネルギーは何を素にしてますの?」


黒霧 「艤装本体は普通の燃料だよ。反重力のほうは君達の体内に蓄えられた因子だね。」


最上 「ん?ということは、若しかして補給の度にクロさんと?」


三隈 「///」カァァ


黒霧 「残念ながら、その必要はないかな。因子に適合した肉体は、体内に留まる程度には因子を生成できるようになるから。」


最上 「でも、緊急時には?」


黒霧 「外部から取り込ませることになるね。」


三隈 「///」プシュー


最上 「これはこれは。みっちゃんには派手に暴れてもらって、直接補給させないといけないねぇ。」


最上 「演習する?」ニヤッ


三隈 「」コクッ


最上 「な~んて、じょうだ・・・。今、頷いた?」アレ?


三隈 「勘違いしないでくださいまし。早く艤装に慣れるためですの。」プイッ


三隈 「でも、三隈は消費が激しいですから。補給、お願いしますの。///」ジッ


黒霧 「うん、わかった。」ニコリ


三隈 「約束ですの。」フフッ


最上 (みっちゃんが、一周回ってお嬢様っぽくなってる!!)ズガーン



許しません 好い雰囲気と 抜け駆けは


日向ミニ「随分と楽しそうだな、三隈よ。」


三隈 「!?」ビクゥッ


日向ミニ「艤装の説明も聞かずに演習ができると思うなよ。」オォォ


三隈 「はい・・・ですの。」フルフル


最上 (あれ?みっちゃんと日向ちゃんって、こんな力関係だったっけ?)


五月雨「よかった。まだ無事みたいですね、三隈さん。」フゥ


最上 「え?みっちゃんの身に何が?」


五月雨「これから日向さんがやらかす予定でして。」


最上 「なるほど。みっちゃん、安らかにね。」ナムナム


三隈 (後で叩きのめしてやりますの。)キッ



発射準備完了


日向ミニ「お前の艤装は反重力の力場を全周囲に展開し、身体ごと浮かせる設計になっている。」


日向ミニ「艤装に引っ張られるのではなく、艤装と一体となって浮くからな。機動力は段違いだ。」


日向ミニ「ただし、力場の規模が大きい分、エネルギー消費も激しい。あまり調子に乗らないことだな。」ギラッ


三隈 「リョウカイデスノ」


日向ミニ「エネルギー切れでも緊急時以外は補給させんからな。」オォォ


三隈 「!」ギクリ


日向ミニ「艤装の軽量化のため、武装には光学兵器を採用している。」


三隈 「光学兵器、ですの?」


日向ミニ「太陽光を極限まで収束して放つ"光熱砲"だ。プリズムを埋め込んだ反射衛星を使えば、あらゆる角度の射撃に対応できる。」


日向ミニ「プリズムもお前の意志で調整されるが、角度計算をする必要はない。」


日向ミニ「熱線の軌道をイメージすれば、それに合わせて勝手に調整されるからな。」


三隈 「随分ハイテクですのね。」サスガデスノ


日向ミニ「当然だ。戦闘中にそんな計算ができるわけがないからな。」


最上 「みっちゃんは座学の成績トップだったけど、流石に無理か~。」チラッ


三隈 「」イラッ


五月雨「煽らないでくださいよ・・・。」モウ


三隈 「上等ですわ。やってやりますの!」ムン


日向ミニ「ならばやってみせろ。」カチッ


三隈 「えっ?」ギュンッ


アァァァァ!


五月雨「三隈さんが大空に!」


日向ミニ「反重力の発生装置を少し弄っておいた。出力を数値調整するようにな。」ニタァ


五月雨「それ、正しい数値を導き出せないと永遠に上昇し続けるってことでは・・・?」エェ


最上 「た~まや~。」


五月雨「言ってる場合ですか!!」



汚れちまった哀しみに・・・。


アァァァァ・・・


三隈 (まずいですの!これは本当にまずいですの!)ゴォォォ


三隈 (止まるどころか加速してますの!!)ォォォ


三隈 (嗚呼、どんどん空気が薄く・・・。)ォォォ・・・


三隈 「」ビタッ フワッ


三隈 「な、何が起こりましたの?」


???「ほぅ、重力遣いか。だが、未熟だな。」フッ


三隈 「人が、浮いてますの・・・。」


???「重力を操り飛ぶことは、風の揚力を利用して飛ぶのとは違う。」


???「俺達が翔るのは空ではなく、宇宙だ。」


???「この言葉の意味を、これからたっぷり教えてやろう。」ニタァ


三隈 「」ダラダラ


三隈 (三隈の本能が囁いてますの。この人は、関わっては駄目な人ですわ!)


マズハチジョウニモドルカ エッ? ギュンッ アァァァァ!



魔王、来る。


五月雨「米粒ほども見えませんね。」ンー


最上 「宇宙に飛び出してたりしてね。」


五月雨「やめてくださいよ。」


最上 「星になったんだね、みっちゃん。」ガッショウ


アァァァァ!


日向ミニ「落ちてきたぞ。」


最上 「巨星墜つ、だね。」


五月雨「誰が受け止めるんですか?あれ。」


最上 「それは・・・。」チラリ


日向ミニ「父上にしかできんだろう。」


黒霧 「まぁ、できなくもないけど。もっと適任がいるかな。」


三隈 「ぶつかりますのぉ~!!・・・お?」フワッ


三隈 「ヘブッ」ビタンッ


???「久しいな、時雨。」スタッ


黒霧 「ああ。急に呼んで悪かったね、真宵。」フフッ


真宵 「気にするな。どうせ暇だからな。」フッ


黒霧 「三隈のこと、よろしく頼むよ。」


真宵 「任せておけ。」ニタァ



魔王さんといっしょ


真宵 「艤装は思考制御できるように再調整させた。さぁ、訓練を始めるぞ。」


三隈 「その前に、ひとつよろしいですの?」


真宵 「なんだ?」


三隈 「貴方の名前をまだ聞いてませんの。」ナントヨベバ・・・


真宵 「俺か?俺の名は、久遠真宵だ。」


三隈 「クオンさん・・・ですの?」


真宵 「名前でいい。久遠の姓は好かんのでな。」


三隈 「では、真宵さん。よろしくお願いしますの。」ペコリ


真宵 「ああ、従順な娘は好きだぞ。」ニッ


三隈 「へ?///」ドキッ


真宵 「取り敢えず、浮いてみろ。話はそれからだ。」


三隈 (不覚にもときめいてしまいましたわ。魔族というのは誑しばかりですの?)



三隈の制服


三隈 「地に足着かないというのは、不思議な感覚ですわね。」フワフワ


真宵 「慣れろ。陸上や海上とは違って、無重力下に於ける手足はただの付属物に過ぎん。」


真宵 「自由落下ならば話は別だが、俺達は風を受けて浮いているわけではないからな。」


三隈 「身体全体に等しく力が掛かってますものね。姿勢制御も楽ですの。」クルクル


真宵 「下着が見えているぞ。」


三隈 「///」バッ


真宵 「自分の格好くらい把握しておけ。」


三隈 「・・・ハイデスノ」


三隈 「最上にズボン借りてきますの。」スー


真宵 「時雨に借りてこい。」


三隈 「クロさんに、ですの?」


真宵 「お前達は時雨の率いる精鋭部隊になるのだ。他の者と同じ服では締まらんだろう。」


真宵 「時雨のことだ。用意だけはしてあるはずだ。貰って着替えてこい。」


三隈 「では、行ってきますの。」シュバッ


・・・


三隈 「ムフン」キラキラ


真宵 「似合ってるじゃないか。」フッ


三隈 「伸縮性に富んだシャツに可動域の広いホットパンツ。そして、クロさんとお揃いの外套。」


三隈 「黒で統一され、無駄な装飾を省いたシンプルなデザイン・・・。素敵ですわ。」ポワポワ


真宵 「気分も上がったところで、始めるとしようか。」ニッ


三隈 「はいですの!」



飛行訓練って何するの?


真宵 「さっきも言ったが、俺達は重力を操作して飛ぶ。」


真宵 「風の揚力で空を翔る戦闘機とは根本が違う。」


三隈 「ええ、それは理解してますの。」


真宵 「従って、訓練の内容も大きく異なるわけだが・・・。」


三隈 「何をすればいいんですの!」ワクワク


真宵 「さっぱりわからん。」


三隈 「・・・は?」


真宵 「俺達は空を飛ぶ何かに乗って舞うのではなく、風を受けて空に舞うのでもない。」


真宵 「自分自身の身体を浮かせ、何の制約も無く空を舞うのだ。」


真宵 「それはもう、重力という束縛から放たれた宇宙を舞うが如くだ。」


三隈 「言わんとすることはわかりますわ。ですが、何もすることがないというのは・・・。」


真宵 「空を舞うことに関しては本当にやることがない。停止と再加速の練習でもしていろ。」


三隈 「あるではないですの!」


真宵 「俺が態々教えることでもないだろう。」


真宵 「だが、まぁそうだな。少し、遊んでやろうか。」ニタァ


三隈 「!」ゾワッ


真宵 「俺が此処一帯の重力を乱してやる。刻一刻と変化する力場の中で、上手く飛び続けてみせろ。」ニィ


三隈 (思いの外、親しみやすい方で失念してましたの。彼、魔王でしたわ・・・。)アオザメ



昔、飛行機に乗ったことがある・・・らしい。


三隈 「」オエッ


真宵 「なんだ、もうダウンしたのか?」ナサケナイ


三隈 「いきなり、ハード過ぎますの・・・。あれはもう、乱れているとかいうレベルを超えてますわ。」ハァ ハァ


真宵 「あれくらい対応してみせろ。超大型台風に突っ込んだ程度だぞ?」


三隈 「台風に突っ込んでいくような莫迦はいませんの・・・。一部除いて。」


最上 「」クシュッ


真宵 「この先、どんな状況での戦闘を強いられるかわからん。だからこそ対策は大袈裟にすべきなのだ。」


真宵 「より過酷な状況に慣れてしまえば、通常の戦闘など児戯も同然だからな。」フン


三隈 「一理ありますわね・・・。」


真宵 「加えてお前達は少数精鋭だ。俺達、"懐刀"と同じでな。」


真宵 「人数で劣ればこそ、個人の戦力が重要になる。」


真宵 「お前達には、英雄すらも超える実力をつけてもらわねばな。」ニッ


三隈 「随分と高い目標ですこと。ですが、この三隈。必ずやその頂きにたどり着いてみせると宣言致しますわ!」ムフン


三隈 「俄然やる気が出てきましたの。さぁ、もう一度ですわ!真宵さん!」シュバッ


真宵 「良い根性だ。嬲り甲斐のある女は嫌いじゃないぞ!」ムンッ


フハハハハ! クッ マダマダデスノ!



命ある限り、果たせる使命がある。


五月雨「何やら不穏な気配を感じますね。」ムムッ


日向ミニ「魔王が来たのだ。不穏どころの話ではないぞ。」カチャカチャ


五月雨「確かに・・・。」


最上 「何造ってるの?日向ちゃん。」ポスッ


五月雨「地味に重いです、最上さん。」ウッ


最上 「一応、ボクも女の子だよ?重いだなんて失礼しちゃうなっ!」ムッ


日向ミニ「騒ぐな。撃ち抜くぞ。」チャキッ


最上雨「ゴメンナサイ」


五月雨「あれ?変わった形の銃ですね、それ。まるでニッパです。」


最上 「若しかして、レールガン?」


日向ミニ「そうだ。三隈の補助武装にしようかと思ってな。」


最上 「光熱砲で充分じゃないかな~。」


五月雨「曇りの日はどうするつもりですか。」


最上 「・・・囮?」


五月雨「私の役割盗らないでくださいよ。」プンスコ


最上 「それでいいの?五月雨ちゃん。」アリガタイケド



近代化の波


最上 「光熱砲に反射衛星、更には小型レールガンが2丁か~。」


最上 「みっちゃんの艤装は近代化が進んでるね。」


五月雨「最上さんには反重力の大盾と迎撃衛星があるじゃないですか。」


最上 「空まで飛んじゃうし。」


五月雨「最上さんも浮いてますよ?」


最上 「・・・意外にボクの艤装もハイテクだった。」キヅカナカッタ


五月雨「私なんて、この大鎌ひとつですよ。」ジャキッ


五月雨「正直、邪魔なんですよね。どうにかなりませんか?」チラッ


日向ミニ「お前は明日だ。」


五月雨「やりぃ!」グッ


日向ミニ「さて、一段落したな。では訓練にいくか、五月雨。」ヨッコイセ


五月雨「臨むところです。クロさん直伝の舞をご覧に入れてみせましょう。」ムフン



恋の仲介役の娘と・・・。うっ、頭が!


最上 「元気だな~。ふたりとも。」ニコニコ


黒霧 「子供は元気なのが一番さ。」


最上 「・・・いつからそこに?」


黒霧 「今し方さ。」フフッ


黒霧 「ところで、最上にプレゼントがあるんだけど・・・。」ゴソゴソ


最上 「何?何?いいもの?」ウキウキ


黒霧 「これ。」チャラッ


最上 「ペンダント?宝石まで付いてる。プロポーズ?」


黒霧 「そうだと言ったら?」


最上 「やめてよ。まだ死にたくないからさ。」アハハ


黒霧 「冗談だよ。さぁ、それを着けて訓練だ。今日も僕が見てあげるよ。」フフッ


最上 「は~い。お世話になります。」



艤装は召喚式がいい。


最上 「言われたとおりに着けてみたけど・・・。」


最上 「肝心の艤装を忘れてきちゃった。」テヘッ


黒霧 「忘れてないよ。」


最上 「え?クロさんが持ってきてくれたの?」


黒霧 「最上自身が持ってきてるでしょ?」フフッ


最上 「若しかして、このペンダントが?」


黒霧 「艤装を纏った自分をイメージして、"艤装展開"と念じてごらん。」


最上 (艤装展開!)ブゥン


パァァァ


最上 「できたー!」ジャキーン


黒霧 「部位毎の着装もできるから、場面に応じて出し入れするといいよ。」


黒霧 「艤装の展開・収納にはエネルギーを消費しないからね。」


最上 「非武装かと思いきや瞬時に完全武装・・・。いいね。アツイよ!」キラキラ


黒霧 (単に運ぶのが面倒なだけだったんだけど・・・。喜んでくれてるなら、いいかな。)ニコニコ



父と娘の差


日向ミニ「さて、この訓練も何度目か・・・。」カチャカチャ


五月雨「いっち、にー、さんっ、しー。にー、にっ、さん、しー。」クイックイッ


日向ミニ「余裕があるな、五月雨よ。」フッ


五月雨「かなり風の変化を感じられるようになりましたからね。」ノビー


五月雨「もう、私には中てられませんよ。」ニッ


日向ミニ「・・・流石は、私達のお姉ちゃんだ。」ボソッ


五月雨「何か言いましたか~?」


日向ミニ「」ポチッ


ボカーン!


五月雨「」サッ


五月雨「遣り口がクロさんと同じですね。」マッタク


日向ミニ「それはどうかな。」ニヤッ


アァァァァ!


五月雨「ん?」


三隈 「のぉぉぉぉ!!」ヒューン


五月雨「ヘブァッ」ゴチーン


バシャーン


日向ミニ「私は深海側の存在だ。目的のためならば艦娘さえも利用する。」


日向ミニ「父上にはできない遣り方だろう?」ニタァ


五月雨(いったい私に何の恨みがあるんですか・・・。)プカプカ


三隈 「」チーン



蒼の貴公子


真宵 「すまん。加減を間違えた。」スタッ


真宵 「思った以上に三隈が優秀でな。つい熱くなってしまった。」


日向ミニ「構わん。壊すつもりで遊んでやってくれ。」フッ


三隈 「ちょっと、他人の身体を勝手に売らないでくださいまし。」クッ


五月雨「人間ロケットは反則ですよ。反応できても、艤装がついてこないんですから・・・。」イタイ


日向ミニ「役者も揃ったところで、始めるか。」


三隈 「お待ちになって。まだ、頭がクラクラしますの。」ヨロヨロ


真宵 「敵は待ってくれんぞ。」


日向ミニ「そういうことだ。」ポチッ


ボカーン!


三隈 「ちょっ・・・!」


五月雨「」シュバッ


三隈 「っ~!!って、あら?」パチクリ


五月雨「大丈夫ですか?まったく。訓練なんですから、少しは加減してくださいよ。」モウ


三隈 「お姫様抱っこ・・・。」


五月雨「暫く休んでてください。大丈夫、私がついてますから。」ニコッ


三隈 「///」ズキューン


アノ オモクナイデスノ? セナカノカマニクラベタラ カルイモンデスヨ


真宵 「ほぅ、良い反応速度だ。時雨が鍛えただけのことはある。」フッ


真宵 「だが、言動まで似るとはな。時雨は何を教えていたんだ?」


日向ミニ「仕方あるまい。五月雨は生まれたときからずっと、父上の背中を見続けてきたのだ。」


真宵 「時雨が黒の王子なら・・・。」


日向ミニ「さしずめ"蒼の貴公子"といったところだな。」フフッ



恋愛初心者なんです。


三隈 「もう大丈夫ですの。下ろしてくださいまし。」


五月雨「砲弾の飛び交う中ですけど、大丈夫ですか?」サッ サッ


三隈 「心配無用ですの。私を誰だと思ってまして?」フフン


五月雨「いや、私そこまで三隈さんのこと知らないので・・・。」アハハ


三隈 「・・・そうですの。」シュン


五月雨「まだ出会ったばかりですから、仕方ないですよ。」


五月雨「これから、三隈さんの良いところを私に教えてくださいね。」ニコリ


三隈 「・・・ヒャイ///」カァ


日向ミニ「砲弾の雨に晒される中で口説くとは、随分と器用になったものだ。」


真宵 「当の本人には自覚が無いようだがな。」


真宵 「わかってやる時雨より質が悪そうだ。」フッ


三隈 (もうっ!クロさんに唇を奪われ、真宵さんにときめかされ、今度は五月雨さんにまでっ!)モンモン


三隈 (三隈の心はパンク寸前ですの!!///)プシュー



猪突猛進。どっかの猪姫みたいだ。いや、熊のほうか?


三隈 「ええい。みっともないですわよ、三隈!貴女らしくないですの!」ジタジタ


五月雨「ちょっと!腕の中で暴れないでくださいよ!」ワワッ


三隈 「考えるより、まず行動!三隈、行きますの!」シュバッ


五月雨「私の手を巻き込んで浮かないでください!」フワッ


三隈 「あっ。申し訳ないですの。」


五月雨「まったくもう・・・。」ムゥ


真宵 「長い前置きだったな。」


日向ミニ「やっと本題にいける。」ヤレヤレ


真宵 「三隈!そのまま回避訓練に交ざれ!」


三隈 「了解ですの!」


日向ミニ「五月雨!お前も続行だ!単独訓練とは状況が違うからな!上手く対処してみせろ!」


五月雨「合点でぃ!」ウォー



物理の法則?それだけで地球が語れるか!


五月雨「ちょいさぁ!」ヒョイッ ヒョイッ


三隈 「流石は五月雨さんですの。この弾幕の中でも余裕ですわね。」


三隈 「それにしても、正面からの砲撃は翼が気になりますの。」クッ


三隈 「でしたら!」ガションッ


クルッ バサッ


真宵 「ほぅ。一時的に翼を収納し、被弾面積を小さくしたか。考えたな。」


日向ミニ「あいつの場合は避ける必要などないのだがな。貴様、教えていないだろう。」ジトッ


真宵 「そのほうが面白いだろうが。」ニッ


三隈 「弾幕が更に厚くっ!」クッ


ドカーン


三隈 (避けきれない!)


フワッ スカッ


三隈 「あら?」


ヒューン ゴチンッ イターッ


五月雨「頭上から・・・。砲弾が・・・!」ウゥ


三隈 「何が起こりましたの?」



実は説明しているときが一番楽しい。


日向ミニ「重力の力場とは普通、同心円状に形成されるものだ。」


日向ミニ「三隈の艤装が発生させている反重力の力場もまた然り。」


真宵 「能力として重力を操れる場合はその限りでないが、三隈はまだ未熟。」


真宵 「そこまでのイメージはできていないだろう。」


日向ミニ「お前が教えていないからな。」ジトッ


真宵 「三隈は艤装の翼を覆うほどの力場を発生させ、空を飛んでいる。」


日向ミニ「言ってしまえば、常に反重力のバリアに護られているわけだな。」


日向ミニ「反重力の力場には重力が働いていない。地球に引き寄せられる力から解放された砲弾は、自然と上に逸れる。」


日向ミニ「それも縦に回転しながら・・・。」


真宵 「回転運動にエネルギーを持っていかれた砲弾は失速し墜ちる。」


真宵 「運悪く下に居た者は堪ったものでないな。」クハハ


五月雨「ちょっと、三隈さん!風を乱さないでください!砲弾の軌道予測が狂うじゃないですか!」プンスコ


三隈 「三隈に言われてもどうしようもないですの!自分でどうにかしてくださいまし!」


五月雨「どうにかって、うわっ!」バシャーン


五月雨「取り敢えず砲弾墜とすのやめてください!」


ギャアギャア


最上 「賑やかだね~。」


黒霧 「こっちも今に騒がしくなるよ。」フフッ


最上 「んふ~。楽しみだな~。超口径砲の試し撃ち。///」ニヘラ



さぁ、幕を開けよう!


南方戦「」スカピー


???「・・・チャン」


南方戦「・・・んぁ?」パチクリ


集積姫「やっと起きた。」ニヒッ


南方戦「集積?あれ?・・・ワタシ、どうしたんだっけ?」


南方戦「確か夕飯を食べた後、急に眠くなって。」ウーン


集積姫「」ニタニタ


南方戦「ていうか、なんでワタシが檻に入れられてるのよ。」


集積姫「なんでだろうね~。」ニタァ


南方戦「アンタ、何する気よ。」ギラッ


集積姫「お~、怖っ。まぁ、何をするかは後のお楽しみとして・・・。」チラッ


集積姫「そこのふたりのこと、頼んだよ。」クルッ


南方戦「ふたり?」フリムキ


レ級 「」グガー


ヲ級 「」スピー


南方戦「アンタ、まさか!って、居ないじゃない!」


南方戦「まったく・・・。死ぬ気じゃないでしょうね、集積。」



大和砲・・・だぁ!


黒霧 「覚悟はいいかい?」


最上 「怖い言い方しないでよ。」アハハ


黒霧 「艤装に接続こそさせてるけど、固定してるわけじゃないから。反動は全部、最上の身体で支えることになるからね。」ジッ


最上 「クロさんの真剣な瞳は初めて見たよ。」フフッ


最上 「それだけ危険なことなんだね。わかったよ。でも、大丈夫。」


最上 「何たってボクの身体には、クロさんの因子が流れてるからね。」ニコッ


黒霧 「そうだね。だけど、過信は禁物だよ?」ナデナデ


最上 「あっ。・・・初めて、撫でてくれたね。」フフッ


黒霧 「そうだったかな。」フフ


最上 「よし!充電完了!」ムフー


最上 「このエネルギーも砲塔に込めて!いくよぉ!」ガション


黒霧 「」E.耳栓


最上 「てぇ~!!」ドオォォン!!


シュバァァァァ チュドーン


最上 「これ、ボクの主兵装だよね・・・?」


黒霧 「そうだね。」ミミセンハズシ


最上 「変な異名が付きそうなくらい、巫山戯た威力だね・・・。」トオイメ


黒霧 (興が乗ったんだね・・・日向。)



三度の飯より風呂が好き。


カポーン


五月雨「たんこぶができました。」ムスッ


三隈 「・・・申し訳ないですの。」ウゥ


最上 「今日の訓練は楽しかったな~。」~♪


五月雨「爆風で風が乱れて大変でしたよ。」ムー


三隈 「ですが、あの一発以外は全て避けていたではないですの。」


五月雨「全力出しましたから。」フンス


最上 「凄いね、五月雨ちゃん。クロさんの因子を受け継いでるわけでもないのに。」


五月雨「そうでしょうそうでしょう。」ムフン


日向ミニ「何を言っている。私に次いで二番目に濃く継いでいるだろうが。」チャプン


五月雨「・・・は?」


三隈 「どういうことですの?」


日向ミニ「五月雨の異常な回避能力は父上の因子によるものだということだ。」フゥ



因子の恩恵


日向ミニ「だいたい艦娘にそんな地力があるわけないだろう?」


最上 「じゃあ、五月雨ちゃんはいつ因子を入れてもらったの?」


日向ミニ「さぁな。私は因子を入れられた後の五月雨しか知らん。」


五月雨「なんと・・・。この力がクロさんの因子によるものだったとは・・・。」


日向ミニ「そうでなければ、風の乱れを感じることなどできはせん。」


五月雨「言われてみれば、そうですよね。やればできるものだと思ってました。」フム


三隈 「ということは、若しかして三隈達にもそれができるようになるんですの?」


日向ミニ「可能性としては零ではないな。だが、受ける恩恵は個人の適性によるからな。何とも言えん。」


最上 「ボクの装甲強化も恩恵のひとつだよね?」


日向ミニ「そうだな。因子の恩恵は大きく分けてふたつ。身体機能向上と感覚機能向上だ。」


日向ミニ「五月雨の場合、感知能力と思考速度が向上し、異常な回避能力を獲得している。」


日向ミニ「最上は、筋力強化と骨格強化、装甲強化といったところだろう。」


最上 「うん、ボクの艤装が軽く感じたよ。」フフン


三隈 「三隈は何ですの?」


日向ミニ「知らん。」


三隈 「」エェ


日向ミニ「恩恵の効果が発現するのは明日だぞ?わかるわけないだろうが。」フン


三隈 「そうですわね。」


最上 「ところでさ。」


五月雨「なんですか?」


最上 「いつの間に一人称戻したの?みっちゃん。」


三隈 「・・・無意識でしたの。」イワレテミレバ


五月雨「それだけこの基地に馴染んだってことじゃないですか?」イイコトデス


最上 「つまり、みっちゃんも規格外の仲間入りってことだね。」


三隈 「否定できませんわね。」



暫しお別れ。(再登場の予定は無い)


ザパーン・・・


真宵 「何を黄昏れている。」


時雨 「明日を見ていたのさ。」


真宵 「相変わらずわけのわからん言い回しだな。」フッ


時雨 「三隈はどうだった?」


真宵 「思いきりの良い娘だな。危機的な状況を楽しんでいるようだ。」


時雨 「あまり戦闘狂の色に染まってほしくはないんだけどね。」


真宵 「案ずるな。あれで根っこはかなりの臆病だ。常に冷静な思考ができている。」


時雨 「なら、大丈夫そうかな。」フフ


真宵 「重力操作も教えておいたが、まだ実戦で使えるような状態ではない。」


真宵 「派手に消費するだろうからな。よく見ておけよ。」


時雨 「ああ、わかってる。」


真宵 「さて、俺はもう行く。あまり無茶はするなよ。」フワッ


時雨 「それは依頼か?」フッ


真宵 「王が下すのは命令だ、莫迦。」ニィ



深夜には何かが起こる。(家には鹿が遊びにくる)


最上 「」スカピー


三隈 「」Zzz


黒霧茜「」Zzz


日向ミニ「父上・・・。」ムニャムニャ


間宮 「」ムクリ


トテトテ ガチャッ パタン


五月雨(間宮さん?何処に行くんでしょうか。)


・・・


五月雨「」ソローリ


間宮 「五月雨ちゃん?」


五月雨「うひゃいっ!」ビクゥッ


間宮 「きゃっ!」ビクッ


五月雨「あ~、吃驚した。もう、なんで気配消してるんですかぁ。」ドキドキ


間宮 「ごめんなさい。起こしたらいけないと思って。」オロオロ


五月雨「いえ、私のほうこそすみません。大きな声を出してしまって。」フゥ


五月雨「ところで、何してたんですか?」


間宮 「少し喉が渇いてしまって。五月雨ちゃんも飲む?」つホットミルク


五月雨「いただきます。」クピクピ


オイシイデスネ ソウ? ヨカッタワ


五月雨(あれ?なんだか、眠く・・・。)バタッ


間宮 「ゆっくりおやすみ、五月雨ちゃん。」ニタァ



7日目の朝。前書きには1ヶ月って書いたのに・・・。


三隈 「清々しい朝ですの。もがみんは相変わらずですけれど・・・。」ジトー


最上 「」Zzz


三隈 「起きますの。」ギュムッ


最上 「」・・・グッ ブハァッ


最上 「」ハァ ハァ


三隈 「おはようですの。」


最上 「おはよう。・・・もっと他に起こし方ないの?」


三隈 「クロさんに目覚めの口づけでもしてもらいますの?」ヨイショ


最上 「みっちゃん、恩恵で耐性ついたの?」キョウガク


三隈 「莫迦なこと言ってないで支度しますの。五月雨さんが居ないということは、寝坊ですわよ?」


最上 「五月雨ちゃんが時計の代わりなんだね・・・。」



暗殺者の覚悟


三隈 「おはようございますですの。・・・どうかしましたの?」


日向ミニ「これを見てみろ。」テワタシ


三隈 「手紙、ですの?」ウケトリ


最上 「何?何?」


???『間宮ちゃんは預かったよ。』


???『返してほしい?それはできない相談だね。』


???『待ってるよ。』


???『追伸、五月雨ちゃんも連れてきちゃった♡』by 集積地棲姫


三隈 「なんですの?これは。」ワナワナ


最上 「クロさん。」ジッ


三隈 「今すぐ助けにいきますの!」グシャッ


黒霧 「言われなくとも、そのつもりだよ。」


三隈 「着替えてきますの!」フンッ


最上 「え?もう制服着てるじゃん。」キョトン


三隈 「本当の制服にですの!」


最上 「・・・何それ?」


日向ミニ「これだ。お前も着替えてこい。」サッ


最上 「うん、わかった。」ウケトリ


マッテヨ ミッチャン! ハヤクシマスノ!


日向ミニ「遂に、このときが来てしまったか。覚悟はできているのか?父上。」


黒霧 「僕は暗殺者だよ。相手が誰であれ、生命を狩ることに躊躇いはない。」ギラッ


日向ミニ「流石は父上だ。任せたぞ。お姉ちゃんのこと・・・。」ジッ


黒霧 「ああ、任された。」ポム



他人のそら似。自信がないから確認もできない。


五月雨「・・・んん。」ムクリ


五月雨「おはようございます。」ポヤポヤ


集積姫「おはよう。よく眠れたかな?」ニタァ


五月雨「・・・姫ちゃん?」


集積姫(あれ?記憶は消去したはずなんだけどな。)


五月雨「・・・あれ?なんででしょうか。貴女とは初対面のはずなのに・・・。」オカシイナ


五月雨「って、深海棲艦!しかも姫級!?」ズザァ


集積姫「今更だねぇ。」ニヤニヤ


五月雨「よく見たら此処、檻の中じゃないですか!なんですか!私は美味しくないですよ!」ガタガタ


集積姫「そう?私には美味しそうに見えるけどなぁ。」ニヒッ


五月雨「いやぁぁぁぁ!!」


集積姫「やっぱり面白いな~、五月雨ちゃんは。」ニィ


ン? ナゼワタシノナマエヲ? ナンデダロウネー



心のストッパーは愛である。


南方戦「さてと、どうしようかしら。」ムー


ヲ級 「何がなの?」ヒョコッ


南方戦「あら、起きたの。」


ヲ級 「うん!」ニパッ


南方戦「レ級は・・・。」チラリ


レ級 「」グォー


ヲ級 「ぐっすりなの。」


南方戦「この娘は・・・。もう少し女の子としての自覚を持ってほしいものね。」ハァ


ヲ級 「まったくなの。集積お姉ちゃんに南お姉ちゃんを見張るよう頼まれてるのに。」プンプン


南方戦「なんですって?」


ヲ級 「南お姉ちゃんなら壁を撃ち抜いてでも出てくるだろうからって、温和しくさせるためにヲーちゃんが居るの!」ムフン


南方戦「レ級は?」


ヲ級 「集積お姉ちゃん曰く、おまけなの。」


南方戦「そう・・・。」


レ級 「えへへ。父ちゃんに褒められちまったぜ・・・。」ムニャムニャ


南方戦「・・・しりとりでもしましょうか、ヲーちゃん。」オイデ


ヲ級 「はいなの!」チョコン



抱く想いの違い。


三隈 「さぁ、出撃ですの!」バーン


日向ミニ「熱くなりすぎだ、莫迦。」


三隈 「莫迦とはなんですの!」


日向ミニ「今日は曇りだぞ。光熱砲が使えない丸腰状態で行くつもりか?」


三隈 「」ウグッ


日向ミニ「これをやる。」ポイッ


三隈 「なんですの?これは。」パシ


日向ミニ「小型のレールガンだ。極小の弾丸を採用しているからな。急所に中てない限り殺傷能力は低い。しっかり狙えよ。」ニッ


三隈 「感謝しますわ、日向。これで、深海共を撃ち抜いてやりますの。」ギラッ


日向ミニ「熱くなりすぎだと言っているだろうが・・・。父上、頼む。」ハァ


黒霧 「三隈、おいで。」


三隈 「なんですの?」クルッ


黒霧 「」スッ


三隈 (顔が!///)ビクッ


黒霧 「」カチッ シャラン


三隈 「ペンダント、ですの?」キレイデスワネ


黒霧 「艤装収納用の装備だよ。エネルギーの都合上、飛んでいくわけにはいかないからね。」


三隈 「そうですの。宝石付きとは、凝ってますのね・・・。」


黒霧 「特別な意味も込めてるからね。」ポム


三隈 「ふぇ?///」カァ


黒霧 「助けたいという想いは皆同じだ。でも、この作戦で君を失っては意味が無い。」


三隈 「あっ・・・。」


黒霧 「君の強みは苦境の中に居ながらも冷静な思考を保てることだ。」


黒霧 「みんな揃って、此処に帰ってこよう。」ニコリ


三隈 「ええ。五月雨さんと間宮さんを救い出し、誰ひとり欠けることなく戻ってきますの。きっと。」ニコッ


黒霧 「ああ。」


黒霧 (嘘は吐かないと五月雨に言ったけれど・・・。撤回しないとね。)


三隈 (口づけくらい、してもよかったですわね。)フフ


日向ミニ「あそこまでやれとは言っていないぞ、父上。」ムスッ


黒霧 「これが僕の遣り方だから。」フフッ



ボクも居るよ。


最上 「ねぇ、ボクが待たされてるって、どういうことなのかな?」ムッスー


三隈 「完全に忘れてましたの・・・。」ソウイエバ


最上 「何それ!ボクは仲間だと思われてないってこと!?」


黒霧 「最上。」


最上 「何?」ムスッ


黒霧 「似合ってるよ。」ニコリ


最上 「・・・そうかな~。」エヘヘ


三隈 「もがみんがチョロい女になってますの・・・。」エェ


最上 「でもさ。なんでボクは長ズボンなの?」


日向ミニ「お前は火器中心の装備だからな。肌を露出させるのは危険だ。」


三隈 「乙女の肌を気遣った結果ですわね。」フフ


最上 「そっか。ありがとね。」ニパッ


三隈 「まるで太陽ですわね。どうして忘れていたのでしょうか。」


日向ミニ「太陽すらも覆う宇宙を見つけてしまったからではないか?」フッ


三隈 「宇宙。その表現、気に入りましたわ。」キラッ


最上 「若しかして、また忘れられてる?」



焦りは禁物。周りをよく見て。


黒霧 「いつもの調子が戻ったところで、出発しようか。」


最上隈「はい!」デスノ!


日向ミニ「思いっきり暴れてこい。己の限界を知ることもまた、訓練の一環だ。」


最上 「あれ?日向ちゃんは行かないの?」


日向ミニ「後から追いかける。」


三隈 「ひとりで大丈夫ですの?」


日向ミニ「誰がひとりで行くと言った?」


最上 「でも、この基地にはもう・・・。」


龍驤 「なんや?仰々しい格好して。かちこみか?」ヒョコッ


三隈 「まだ居たんですの?」


龍驤 「今、来たんや!昨日は誰も相手してくれへんかったから、寂しく帰ったんやで!」


最上 「間宮さんと話してたんじゃないの?」


龍驤 「いや、暫くしたら惚気話が始まってん。」


最上隈(あぁ、それで・・・。)ナットク


龍驤 「で、何処に行く気や?」


日向ミニ「それは私が説明しよう。」ガシッ


龍驤 「そうか?で、なんで腕を掴んどるんや?」


日向ミニ「来い。お前に頼みたい仕事がある。」グイッ


龍驤 「ちょっ!引っ張らんといて!力強いな自分!」ズリズリ


アーレー


三隈 「あれが人攫いですのね。」


最上 「そうかもね。」アハハ


最上 「あれ?クロさんは?」キョロキョロ


三隈 「・・・置いていかれてますの!」


イソギマスワヨ モガミン! リョウカイ!



やっぱり彼女が居ないと駄目だ。コメディが足りない!


五月雨「オタスケー」プラーン


集積姫「どんな味つけにしようかな~。」~♪


五月雨「嗚呼、私の人生はここまでなんですね。叶うなら、最後にもう一度クロさんの料理が食べたかった。」


集積姫「到着~。」


五月雨「私のお墓にごたいめ~ん。」


南方戦「は?」


五月雨「え?」


ヲ級 「五月雨お姉ちゃん・・・?」ウルウル


レ級 「・・・んがっ。」パチ


集積姫「五月雨ちゃんは向かいの牢ね。」ポイッ


五月雨「ブフッ!」ベチン


集積姫「南方ちゃん、後よろしく~。」スタコラー


南方戦「あっ。ちょっと待ちなさい!集積ぃ!!」ガシャガシャ


ヲ級 「んぐっ。ひぐっ。うぅ~。五月雨お姉ちゃんだぁ~!」ボロボロ


レ級 「マジかよ。五月雨姉じゃんか!」パァ


ヲ級 「ばぁぁぁぁ!!」ダバー


南方戦「あぁ、ヲーちゃん。泣かないで。」ヨシヨシ


五月雨「なんですか?この状況・・・。」エェ



五月雨の生まれた場所


南方戦「落ち着いたかしら?」ナデナデ


ヲ級 「・・・うん。」グスッ


レ級 「生きてたんだな、五月雨姉。流石、父ちゃんの一番弟子だぜ。」ニシシ


五月雨「父ちゃん?一番弟子?」


レ級 「なんだよ。憶えてねぇのか?」


五月雨「いやー、それがさっぱり・・・。」アハハ


ヲ級 「ヲーちゃんのことも?」


五月雨「・・・ごめんなさい。」メソラシ


ヲ級 「ひぐっ。」ウルウル


五月雨「あ!思い出しました!久し振りですね!元気にしてましたか?ヲーちゃん。」アセアセ


ヲ級 「」パァ


ヲ級 「五月雨お姉ちゃ~ん!!」タッ


南方戦「あっ、こら!格子にぶつかるわよ!」


スカッ


南方戦「は?」


ヲ級 「とうっ!」バッ


五月雨「うわわ!」ダキッ


ヲ級 「んふふ~。」スリスリ


五月雨(・・・どうしよう。この娘と私の間に何があったのか、全然思い出せない!)アハハ


レ級 「ヲーちゃんだけずりぃぞ!俺も行く!」ダッ


ゴチン! ヘブァッ!


レ級 「何故、俺は通れない・・・。」ガクッ


南方戦「どういう原理なのよ・・・。ヲーちゃんだけすり抜けるなんて・・・。」


五月雨「あの~。」


南方戦「ん?」


五月雨「私はどうすれば?」


南方戦「取り敢えず、その娘を撫でてあげてちょうだい。満足したら寝るだろうから、一緒に居てあげて。」


五月雨「そうですか・・・。」ナデナデ


ヲ級 「えへへ~。」ニパッ


五月雨(どうしよう。もの凄く可愛い!お持ち帰りしたい!)ポワァ


レ級 「畜生。この格子さえ無ければ・・・。」ブツブツ


南方戦「挨拶がまだだったわね。おかえりなさい、五月雨。みんな、アナタを待っていたわ。」ホホエミ


五月雨「はい、ただいまです。」ニコッ


・・・ン? タダイマ?



帰るべき場所はひとつじゃない。


五月雨「あの。差し支えなければ、教えていただけませんか?」オズオズ


五月雨「私がいったい何者で、此処でどう過ごしていたのか。」


南方戦「・・・そうね。いいわよ。話してあげる。きっと集積もそのつもりで連れてきたんだろうし。」


五月雨「ありがとうございます。」ペコリ


南方戦「そもそも、アナタは何処まで知っているのかしら?」


五月雨「そうですね。此処が秘密の実験施設で、クロさんがその実験に関わっていたことくらいでしょうか。」


レ級 「まぁ、間違いではねぇな。」


南方戦「此処は深海棲艦の生態を調査し、人類との和解を目指した実験を行っていた施設なのよ。」


五月雨「そうなんですか?何やらえげつない実験をしていたとか聞きましたけど・・・。」


南方戦「ただの先入観よ。でも確かに、生態調査を受けているときはモルモット扱いされているようで気分が悪かったわね。」


南方戦「一番酷かったのは生殖機能調査よ。」ギリッ


レ級 「最終的に父ちゃんと結ばれたんだから、いいじゃねぇか。」


南方戦「よくないわよ!ワタシがどれだけ悶々とした日々を過ごしたと思ってるの!」クワッ


レ級 「怒るなよ。蓮華が産まれてからは幸せだったんじゃねぇのかよ。」タジッ


南方戦「・・・幸せだった。」


レ級 「だったら、良い思い出ってことでいいだろ?」


南方戦「そうね・・・。」


五月雨「あの、色々と置いていかれてるんですが・・・。」


南方戦「あら、ごめんなさいね。」ウッカリシテタワ


五月雨「さっきから出てくる"父ちゃん"って若しかして、クロさんのことですか?」


レ級 「それ以外に誰がいるんだ?」


南方戦「此処の研究者達は臆病で、私達に直接関わろうとはしなかったものね。」


五月雨「ということは、貴女はクロさんの子を産んだ・・・?」


南方戦「そうよ。あと、ワタシのことは南でいいわ。昔もそう呼ばれていたから。」


五月雨「では、南さん。そのお子さんというのは、日向さんのことですか?」


南方戦「ええ、今の姿は日向だったわね。」


レ級 「本当の名前は"蓮華"だけどな。」ニッ


五月雨「でも、ひゅう・・・。蓮華さんからは、クロさんと血の繋がりは無いと聞いて・・・。」


レ級 「そうなのか?」


南方戦「アンタもあのひとの娘でしょうが。このくらい知っておきなさいよ。」


レ級 「なんだよ。父ちゃんが遺伝子を残せない身体だってのは知ってるぞ。」ムスッ


南方戦「それよ。あのひとは子種を創造できるけれど、その中にあのひとの遺伝子は含まれない。」


南方戦「だから蓮華を始め、此処に居るレ級、ヲーちゃんもあのひとの娘だけど、遺伝子的な繋がりは無いのよ。」


レ級 「なんだ。俺も知ってる話じゃねぇか。」


南方戦「言われる前に気づきなさいよ。」マッタク


五月雨(しかしクロさんは間宮さんと・・・。どうしよう。とんでもない爆弾を抱えてしまった!)ダラダラ


五月雨(恨みますよ。クロさんっ!)


ヲ級 「」スヤァ



五月雨の正体


五月雨「ところで、私はどういった経緯でこの実験施設に来たんですか?」


南方戦「"来た"わけじゃないわよ。」


五月雨「え?」


南方戦「アンタは造られたのよ。集積とあのひとの手によってね。」


南方戦「そういう意味では、アンタは集積とあのひとの娘ということになるわね。」


南方戦「集積は頑なに母と呼ばせようとしなかったけれど・・・。」


五月雨「私が深海棲艦によって建造された・・・?しかも、クロさんの娘・・・?」


レ級 「五月雨姉も師匠のこと、"お父さん"って呼んでたんだぜ!」ニッ


五月雨「じゃあ、日向さんと私。それにこの娘達も、義理の姉妹・・・?」


五月雨(なんてことでしょう。私も深海側だったんですね・・・。)ハハッ


後書き

第一部完結・・・しなかった。1週間の出来事さえも、10万字には収まらないのですね。1ヶ月の軌跡を書いていくはずだったのに・・・。というわけで、第二部の冒頭には第一部の続きを書いていきます。文字数によっては第一部そのに、ってことにするかも。さぁ、気を取り直して人物紹介ですよ!

黒霧 時雨
魔族・黒霧の一族。神々との聖戦の果てに命を落とすが、妹の能力によって魂だけ復活する。肉体は自身の能力"原初の霧"で修復しているため、生殖機能が失われている。訓練基地では教官として着任しているが、本所属は陸軍。嘗ては舞鶴の憲兵隊・隊長を務め、"舞鶴の真宵烏"の異名を持つ。実験施設の設立に伴って用心棒兼深海棲艦との仲介役として海軍に招集される。南方棲戦鬼と深い仲になり、娘(蓮華)を授かる。時雨に生殖機能はないため、子種は"原初の霧"で創造している。よって遺伝子的な親子関係は無い。レ級、ヲ級は体外受精によって産まれた時雨の娘。集積地棲姫とは悪友のような関係で、共に五月雨を建造した。間宮とは婚約関係にあるが・・・。続きは本編で。
白髪、紅瞳の青年。"魔王の懐刀"のひとり。

黒霧 茜
魔族・黒霧の一族。時雨の双子の姉。聖戦の際に肉体を消失する。その後、妹の能力によって時雨の肉体に魂を入れ込まれ復活する。佐世保で憲兵隊・隊長を務めた過去があり、"佐世保の黒白雪"と提督達に恐れられた。当時は時雨の能力で創造した肉体で生活していたが、佐世保襲撃の際に肉体を欠損。再び時雨の肉体に戻った。"心の闇を支配する能力"を持っており、黒霧の"凶化"を完全に自我を保ったまま発動できる。黒霧最強の闘士。暗殺者の才能は無かった。
白髪、紅瞳の青年。精神的に打たれ弱い。

五月雨
時雨の初期艦。ムードメーカー兼まとめ役。日向とよく身体をはった遊びをしている。因子の恩恵によって、感知能力と思考速度が向上。驚異的な回避能力を獲得している。大本営着任以前の記憶を失っているが、その犯人は集積地棲姫。拐かされた後、南方棲戦鬼から自身の過去を聞く。深海棲艦によって建造されたこと、日向が義理の姉妹であったこと、実験施設が生まれ故郷であること。真実を知った五月雨は今後どうするのか・・・。続きは本編で。

日向
時雨と南方棲戦鬼の間に産まれた娘。本名、蓮華(れんか)。"原初の霧"の影響を強く受けたのか、工作艦となっている。艤装弄りが大好き。父上のことはもっと好き。一度作業を始めるとぶっ倒れるまで手を止めない。汗をかいた後の風呂は至福。ドックの建設には一番力を入れた。時雨の秘密を知る数少ない人物。そして小さい。

三隈
命令違反が多すぎて左遷された戦闘狂。着任時に間宮から釘を刺されたため、今は温和しい。一人称を私(わたくし)に変えて気取っていたが、本人も気づかないうちに"三隈"に戻っていた。一応お嬢様で男性との関わりが皆無だったため、男性が苦手。最上が仕組んだ荒療治によって多少平気になるも、まだまだ恋愛初心者。時雨と真宵に心動かされ、五月雨にも揺らぎかけた。実はビビり、だからあまり虐めないでほしい。

最上
三隈の幼馴染み。武器マニアで空気を読まない点を除けば常識人。戦闘もそれなりにこなせる優秀な艦娘。因子の恩恵によって、強靱な肉体を得る。そんな彼女の左遷理由は朝寝坊と無許可演習。三隈の男性嫌いを直そうと荒療治を仕組んだ結果、三隈が修羅の道を往くことに・・・。最上も時雨と良い雰囲気になることがあるが、恋人未満の関係。それ以上の関係には特に興味がない。でも褒められると弱い。

間宮
海軍元帥の孫娘。自ら志願し、艦娘となった。時雨とはお見合いで出会う。その場で婚約を決め、遠距離恋愛がスタート。距離の隔たりも何のその。献身的に通い詰めた。時雨が訓練基地で教官を務めることは知らなかったが、偶然輸送任務を受け持ったことで再会。その後元帥に直談判し、基地に居ついた。集積地棲姫に拐かされたことになっているが・・・。続きは本編で。

さて、他にも登場人物はいますがまずはこのくらいにしておきましょうか。
ではまた、次回作で会いましょう。
お付き合いいただき、ありがとうございました。


このSSへの評価

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1件応援されています


SS好きの名無しさんから
2020-06-03 22:22:29

このSSへのコメント

8件コメントされています

1: SS好きの名無しさん 2020-06-12 23:41:49 ID: S:1kXrTB

間宮と結婚ではなく、婚約になっている理由。

2: 黒い歴史 2020-06-13 15:48:31 ID: S:B1l0Hl

コメントありがとうございます。
早速ですが、ネタにしてみました。
黒霧の秘密に関わる際どい質問でしたが、何とかごまかしたつもりです。

この形式を果たして安価と言っていいのか甚だ疑問ではありますが、引き続き安価(ネタ)募集してます。ホント、何でもいいのでコメントください。
コロナで人との繋がりに飢えております。

3: SS好きの名無しさん 2020-06-14 14:59:44 ID: S:e2_Fjw

日向の母親。

4: SS好きの名無しさん 2020-06-14 17:16:42 ID: S:0OmYso

趣味

5: SS好きの名無しさん 2020-06-14 23:38:34 ID: S:38nP8Q

茜さんについて

6: SS好きの名無しさん 2020-06-15 20:54:44 ID: S:YH6O7e

施設は?

7: 黒い歴史 2020-06-17 13:52:24 ID: S:8wYidB

突発ながら、コメントをくださり、ありがとうございます。
機会があれば、またやってみたいと思いますので宜しくお願いします。

また、着任する艦娘の希望があればコメントください。
正直に言うと、出す艦娘は決めてあるのですが、登場させる順番は一切決めていません。登場予定の艦娘であれば優先的に登場させようと思います。

8: 黒い歴史 2020-08-25 16:36:57 ID: S:k7hixq

さて、なんだかんだで10万字に達してしまいました。第1部も完結しないままに、次作へ続く・・・。的な展開に。
一応、誤字・脱字等の確認も済ませていますが、見つけてしまった場合はコメントください。
その他、感想等もお待ちしています。


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