2023-03-26 00:04:33 更新

概要

これは世界の歴史が紡がれる、少し前の物語。


前書き

艦娘強化訓練島の日常に登場する黒霧時雨が憲兵だった頃のお話。海波琴(後の足柄)との出会いから別れの日々までを描いていく予定です。基本、地の文は無しの方向で考えていますが、結局どうするかは未来の自分と相談ということで・・・。ごゆるりとお楽しみください。


入隊前夜、すれ違うふたり。


「やばい。めっちゃ緊張してきた。」


『急に連絡を寄越したと思えば・・・情けない。私が傍に居ないだけでこの為体か。』ハッ


「ちょっと。今、鼻で嗤ったでしょ。」


『貴様が配属されるのは舞鶴だろう?嗤いたくもなる。』


「・・・真宵烏が居るから?」


『よし。私と代われ、琴。姉妹ならば入れ替わっても暫くはバレまい。』


「莫迦言わないでよ。私達そんなに似てないし。第一、お姉ちゃん今、佐世保でしょ?どうやって入隊式に間に合わせるのよ。」


『冗談だ。真面目に返すな。』


「この姉はっ!」モウ


『ところで、晒の用意はちゃんとしたか?ひとりで巻けるように練習したんだろうな。』


「したわよ、ちゃんと。」


『そうか。ならばいい。』


「珍しくお姉ちゃんが真剣に言うんだもん。普段じゃ絶対に聞かないけど、それくらいの分別はあるわ。」


『お前は大人びたスタイルをしている割に男の扱いがド下手だからな。簡単に連れ込まれている姿が容易に想像できる。』


「いや、そんなほいほいと連れ込まれるような簡単な女じゃないから私。」


『そういう話をしているのではない愚か者。これまでの餓鬼と大人の男を同じと思うな莫迦者。』


「・・・切っていい?」


『』ブツッ


ツー ツー


「信じらんない。そっちから掛けておいて~とか、あるでしょ普通そういうのが!何もなしに切りやがってぇ!」ウガー


・・・


「少し、言いすぎただろうか。」ムー



入隊式、見渡す限りの野郎共。


「嘘でしょ・・・。養成学校の男女比率からして覚悟はしてたけど、そんなまさか・・・。」ガタガタ


(男しか居ないじゃない!同期が男ばかりになるのはまぁ仕方がないとして先輩にも女性が居ないってどういうこと!?)


「あの・・・大丈夫、ですか?震えて、ますけど・・・。」


「なんだ。緊張してるのか?安心しろ。この俺が同期になるんだからな。俺は結構、頼りになるぜ?」ニッ


「あ、はは・・・間に合ってます。」ヒキッ


(早速絡まれちゃってるじゃない!綾姉が晒を巻いておけば大丈夫だとか言うから巻いてきたのに!)


(私が女だから?女が私しか居ないから?何よ、養成学校じゃ綾姉ばっかりで見向きもしなかったくせに!)


「おいおい、力み過ぎだぜ?そんなんじゃあ式が終わるまで保たねえ・・・」ソッ


パシ グリィ!


「いっ!?いてててて!何すんだ!おい!」


「すみません。いきなり身体を触ろうとするものですから。つい反射で。」グイ


「いでででで!おい!なんで力入れてんだ!放すところだろ、今のは!」


「あ、あのあのふたりともっ!上官殿がこっち見てるよっ!」アワアワ


「あ・・・やば。」パッ


「ってぇ~。何なんだよ、チクショウ。」イテテ


「・・・では、これより入隊式を始める。都合により隊長殿は式に出席されないが・・・海波 琴 新兵。」


「は、はい!」ピシッ


「貴君は式終了後に隊長室まで来るように。」


「・・・はい。」



出逢い、これが全ての始まり。


「来てしまった、隊長室。」


「なんで私だけ・・・。悪いのはあっちなのに・・・。」ハァ


「落込んでても仕方ないか。新兵で隊長に会うのは私が初めてだろうし。お近付きになって優位に振舞ってやる。」ヘッ


「見てなさい、褐色筋肉ゴリラ。今にあんたを顎で使ってやるんだから。」フフフ


「・・・よし。それじゃあノックを・・・。ノックって、何回すればいいんだっけ?」アレ?


「確か二回・・・はトイレだし。一回・・・はないわね。なら三回。」


コンコンコン ・・・アレ?


「ノック・・・したわよね?」


ハーイ


「よかった。ノックできてた。」フゥ


ガチャ


「失礼しま・・・何これ。」


「何って、憲兵さん人形だよ。見たことない?」


「いえ、見たことはありますけど・・・。あの張紙は・・・?」


「“私が隊長!”。僕が離席しているときの代理を彼に担ってもらうために書いたんだ。中々に達筆でしょ?」フフッ


「そう・・・ですね。」


「ところで、上官に会ったなら先ずすることがあるんじゃないかな?」


「はい。海波 琴!御用命に預かり参上致しました!」ビシッ


プフッ


「何か、可笑しなことがありましたでしょうかっ!」ビシッ


「いや・・・なんで人形に向かって言うのさ?」プフッ


「離席中は憲兵さん人形が代理を担うと伺ったもので!」ムン


「あははっ!君、面白いね。気に入ったよ。」フフフ


「ありがとうございます!」


(作戦成功・・・!)ムフン



作戦失敗?全ては彼の脚本通り。


「海波 琴 新兵。入隊式前に早速やらかしたみたいだね。」


「あれは・・・。いきなり身体を触ってこようとされたもので・・・つい。」


「君は確か、養成学校からの入隊だったね。男性過多の状況には慣れたものだと思うのだけど。」


「いえ・・・まぁ、そうなんですけど。女性が私ひとりかと思うと緊張しちゃって・・・。」


「ひとり?・・・またサボったのか、あの娘は。」ハァ


「え?他にも居るのですか?私以外の女性憲兵。」


「ひとりだけね。まったく、今回は女性の新兵が加わるから必ず出席しろと言っておいたのに・・・。」ブツブツ


「あの・・・その方は若しかして規律違反上等とかそういう感じの?」


「いや?とても真面目なひとだよ。ただ、メイクに時間が掛かるから、なるべく人前に出たくないってだけさ。」


「はぁ・・・。いいのですか?それで。」


「仕方ないさ。君が来るまでは彼女がこの隊唯一の女性だったからね。男除けに色々と気を遣わなければいけなかった。」


(私が晒を巻いてるのと同じか。)ナルホド


「しかし、君は素顔を曝してしまったからね。これから大変だろうが、頑張ってくれ給え。できる限りの手助けはしよう。」


「ありがとうございます。」


「先ずは先輩でもある彼女に会ってくるといい。正しい晒の巻き方を教わってきなさい。」


「はい、了解しま・・・は?」エ?


「女性用の隊服は身体の線が出やすい。そんな雑な巻き方では、見抜いてしまう者もいるだろう。」


「・・・はい。」



女先輩、早速心が折れそうです。


「・・・と、そういうことがありまして。」


「・・・そう。」


「あの、そんなにわかりやすいですか?私の晒の巻き方。」


「そんなこと、ない、と・・・思う。」


「でも、隊長は見るひとが見ればわかると。」


「うん・・・わかる。」


「正しい巻き方を教えていただけないでしょうか。」


「・・・私が?」


「はい。」


「・・・どうして?」


「先輩に教えてもらえと隊長に言われたもので。」


「えぇ。」


(凄い嫌そうな顔するな、この人。)


「私、同じこと隊長くんに言われた。そんな巻き方じゃ、隠せないって。」


「そうなんですか?」


「だから、教えてもらった。正しい巻き方。隊長くんに。」ムフゥ


「はあ・・・。え、隊長に?」


「今でも、巻いて、もらってる。」ドヤァ


「今・・・でも。今でも!?」


「頼むなら、私、じゃ、なくて、隊長くん、にっ。」グッ


「嫌です。」


「えぇ・・・!?どうして?」ガーン


ドウシテモデス



再会、来る頃だと思っていたよ。


「何なんですか、あの可愛い生き物は。」


「成長し、大きくなってしまったものは小さなものに憧憬を抱く。君も彼女の虜となってしまったようだ。」フッ


「隊長・・・。」ヒキッ


「冗談だ。そんな犯罪者を見るような目で見ないでくれ。」


「本気で言っているようにしか見えませんでしたが。」


「事実、彼女は可愛い。」


「通報しますよ。」


「最高責任者は僕だ。」


「そうでした。・・・私を彼女に会わせた目的は何ですか?」


「リハビリだよ。彼女は憲兵として非常に高い能力を有している・・・が、それを打ち消して剰りある怠け癖を持っている。」


「後輩が出来たことを期に張り切ってもらえないだろうかと愚考してみたのだが、君が見てきたとおりの有様だ。」フゥ


「かろうじて部屋は片付いているようでした。」


「それは今朝、僕が片付けたからだよ。」


「・・・髪はきちんと梳いているようでした。」


「入隊式に間に合うように叩き起こして僕が梳いた。」


「・・・美人でした。」


「それは元からだ。ただ、妖怪メイクをした後は僕がメイクを落としている。放っておくとそのまま寝てしまうからね。」


「・・・まさかお風呂も!?」


「君、寝ている人を風呂に入れた経験は?」


「あるわけないじゃないですか。」


「代わってもらえると助かるのだけど。」


「無理です。」



晒指導、さあ脱ぎ給え。


「ひとつ、疑問があるのですが。」


「何かな?」セッセッ


「先輩は入隊式から晒に妖怪メイクだったのですよね。」


「そうだよ。過保護な姉に仕込まれたらしい。」マキマキ


(あー。私と同じだわ。ちょっと親近感。)


「彼女も君も、巻くほどのものは持っていないというのに、ねっ。」グイッ


「いったぁ!た、隊長!こんなにキツく締める必要あるんですか!?ていうか、凄い失礼なこと言いましたよね!?」


「晒は元々、腹を切ったときに内蔵が溢れ出ないようにするためのものだから。本当はもっと締めるんだよ?」


「そうじゃなくてですね。隊長、デリカシーが無いって言われません?」


「生憎そう言ってくれる相手がいないもので。」


「なら私が言ってやりますよ。デリカシー無し男!!」


「・・・そういう言葉遣いは何だか新鮮に感じるよ。」クス


「あ・・・。そう・・・ですか。」


(隊長って、こんな風に笑うんだ。)


「君には堂々とセクハラができそうだ。」パー


「ひゃくとうばんって何番でしたっけ。」ジー ジー


「こらこら。隊長室の電話を勝手に使っちゃいけないよ。というか、先ず受話器を取らないと掛からないよ?」


「くっ!なんでこの時代に黒電話なんですか!?///」ダン



実力主義、若い者にも苦悩がある。


「隊長って、いつも先輩の世話をしてるんですか?」


「そうだよ。おはようからおやすみまで、書類仕事を止めてでも決まった時間に部屋を訪ねるようにしている。」


「どんだけ入れ込んでるんですか。」ウワァ


「御蔭様で“妖怪趣味”だの謂れの無い噂を囁かれているよ。最近では、実は彼女が美人なのではないかって的を射た噂まで出る始末だ。」ハァ


「本末転倒じゃないですか。」


「いや、これがそうでもなくてね。隊長の女ってことで誰も寄りつかなくなった。元々寄りついてなかったけれど。」


「・・・付き合ってるんですか?」


「少なくとも僕にその心算は無い・・・が、彼女がどう思っているかは知らない。知りたくない。」


「いやいや、そこのところはっきりさせましょうよ。先輩が本気だったらどうするんですか。」


「健康体なのに自分の介護をさせる恋人を愛せるとでも?」


「それは・・・。」ウーン


「僕は愛せる。いや、彼女ならば愛せる。」キリ


「ならもう付き合いなさいよ。・・・あ、失礼しました。」


「いいよ。ふたりのときくらい。寧ろ砕けてくれたほうが楽でいい。年上からも敬語で話される環境は酷く疲れる。」


「隊長って、何歳なんですか?」


「22歳。」


「嘘でしょ。6つ違い!?若っ!!」



書類仕事、頭を使うのも楽じゃない。


「よくそんな歳で隊長になれましたね。」


「うちは完全実力社会だからね。暴走した艦娘を捕縛したりなんて仕事も多いから、実力のある者が上に立つ仕組みが出来ているのさ。」


「戦闘力の高い者が隊長に、指揮能力のある者が副隊長に、書類仕事のできる者が隊長補佐に・・・みたいな感じにね。」


「へぇ・・・。でも、此処では隊長が書類仕事もするんですね。」チラ


「うちは脳筋ばかりでね。」アハハ


「ところで、海波 琴 君・・・」


「やりませんよ?」ニッコリ


「まだ何も言っていないのだけど・・・。まぁ、そう言うと思っていたよ。」フゥ


「ちょっと、それどういう意味ですか。その書類貸してください。書類仕事くらい私にだってできるんですから。」パシ


オット


「書類に目を通して印を押すくらいの仕事、私にだって・・・私に、だって・・・。」ムー


「何ですか。この、“再発防止と未然防止に向けた意見具申欄”というのは・・・。」


「艦娘と提督の間で起きるいざこざを防止するため、何が問題だったのか、改善すべきことは何か、憲兵の目線で書く欄だよ。」


「書類仕事って、目を通して判子をぽんぽん突いていくだけなんじゃないんですか・・・!」


「君、自分の先輩がそんなこともできないような連中だと思ってたの?」



電話対応、学校の科目に入れてくれ。


ジリリリ


「隊長、電話ですよ。」


ジリリリ


「・・・隊長?」


「君が出てみるといい。」


「え、いいんですか?私、電話対応の仕方とかわかりませんよ?」


「構わないよ。相手が誰かはわかっているから。」


「そう・・・ですか?じゃあ・・・。」ガチャ


モシモ・・・


『お腹すいた。』


チン


「・・・え?」


「何だって?」


「えっと。お腹すいた・・・だそうです。」ハイ


「そうだろうと思ったよ。今日は入隊式のために少し早く起こしたからね。そろそろ催促の電話が来るだろうと思った。」ガタッ


「え。先輩、隊長に食事を運ばせてるんですか・・・?」


「運ぶだけではないよ。料理を作るところから食べさせるところまでお世話している。」


「本当に介護じゃないですか。」エェ


「だから言ったでしょ?健康体なのに介護をさせる恋人を愛せるのかって。」


「でも、愛せるんですよね?」


「僕は健康体なひとを介護させてもらってきたような男だから。」モチロン


「ちょっと何言ってるかわからないです。」



ふたりの距離、始まりが近いほど縮まらない。


「さてと、今日は何を作ろうか。」フム


「“今日は”って。本当に毎日お世話してるんですね。」ウワァ


「そんな顔をしないでもらえるかな。僕は好きで彼女の世話をしているのだから。」


「そうですか。好きで入浴の世話を。そうですか。」ヘェ


「切り取る箇所に悪意を感じるのだけど。これでも僕は君の上司だよ?」オドシノツモリ?


「上司だからこそですぅ。」ニシシ


「・・・それもお姉さんの仕込みなのかな?」


「中てられると何か腹立ちますね。」ムッ


「君のお姉さん、かなり男慣れしてるでしょ。真似ばかりしていても良いことないと思うよ。特に君の場合。」


「どういう意味ですか、それ。私が男慣れしていないってことですか。初心ってことですか!」


「後のはともかくとして“男慣れしていない”って部分は自覚があるんじゃないの?」


「いや、“負い目に感じている”と言ったほうが正しいかな・・・?」


「うーわ。乙女の秘密をペラペラと。隊長、デリカシーが無いって言われません?」


「君には言われた記憶があるね。」


「デリカシー無し男。」ボソ


「そう言ってくれるのは君だけだよ。」フフッ


「貶してるのに嬉しそうに・・・何なの、こいつ。」



ふたりの距離、君の前でなら僕は僕で居られる。


「君、料理の心得は?」スチャ


「あるにはありますけど包丁こっち向けないでください怖いです。」


「じゃ、野菜の皮剥きを頼むよ。僕は出汁の用意をするから。」


「出汁から取るとか本格的・・・。というか、作業量に差があり過ぎでは・・・。」エェ


「三人分なら大した量じゃないでしょ?それに料理の腕前は皮剥きの出来で大体わかるから。」テキパキ


「あー、そういう・・・。ん?」


「あの、隊長?私の料理の腕前を知って、どうするおつもりで・・・?」


「手伝ってもらおうと思って。駄目だった?」キョトン


「駄目ってわけでは・・・というか三人分って。私、食堂で・・・」


「え?一緒に食べないの・・・?一緒に介護、してくれないの・・・?」ズーン


「何これ。仮面で表情見えないのに絶望しているのが手に取るようにわかる。どんだけショック受けてるんですか。」


「はぁ・・・。そっか。君は重荷を背負ってはくれないんだね。」トトトトト


「隊長、遠くを見ながら包丁使うの止めてください。怖いです。」


「君は僕の隣を歩いてはくれないんだね・・・。」ハァァ


「プロポーズかっ!!」


「よし、付け合わせのサラダは出来た・・・から、取り敢えず冷蔵庫で冷やしておいて・・・。」ガコッ


「無視・・・?」


「あ、ごめん。僕、奥さんには後ろを付いてきてほしいタイプなんだ。」


「知りませんよ。隊長って亭主関白なんですか?何となくわかりますけど。自由人ですし。」


「どうだろ。あまり他人にどうこうしてほしいって思わないからね。」フム


「それ。他人に期待していないともいえません?隊長としてどうなんですかね~、そういうの。」チラ


「・・・そうだね。考えたことなかったけど、そうかも知れない。」フフッ


「何笑ってるんですか。笑うところじゃないですよ?」ンモウ



同期とひとり、後輩でツッコミとか精神的に終わる。


「入ったよ~。」ガチャ


「ちょ!隊長!?ノックも無しに乙女の部屋にっ!?」


シーン


「・・・あれ?先輩?せんぱーい?」


「返事が無い。待ちきれなくて拗ねたな。」ヤレヤレ


「いや、いくら先輩でもそんな子供染みたこと・・・」


「む~。」ブッスー


「するんだ。机の下で丸まってる。ちょっと可愛い。」


「いやかなり可愛い。」キラン


「隊長、気持ち悪いです。」


「辛辣だなぁ。可愛いものを愛でる心は老若男女に共通するものだと思うのだけど。」


「それは恋愛対象にならない明確な線引きがある場合に限った話ですよね。隊長と先輩って確か同期・・・。」


「隊長くん!」ワッ


ゴチッ! アゥ!


「・・・いたい。」ウゥ


「そんな狭い所で暴れるから・・・。ほら、ぶつけたとこ見せて。」


「うぅ・・・。隊長くんは、私のご飯と後輩ちゃん、どっちが大事なのっ・・・?」ウルッ


「後輩。」


「」ピシャーン


「隊長、先輩がこの世の終わりみたいな顔して固まってます。」


「そうだね。でも、人の命と一人分の食糧なんて比べるべくもないでしょ。」


「そうかも知れませんけど、そうではなくてですね・・・。」ハァ


「・・・む。」フルフル


「先輩?」


「私、隊長くんの部屋に住む。一生、面倒見てもらうっ!」グスッ


「これって逆プロポーズ?」


「私に訊かないでください。」


「後輩ちゃんがお母さんで、隊長くんがお父さんで、私がふたりの養子になれば、解決!」バーン


「いいね。それ採用。」キュピーン


「はああ!?なんで私がこんな奴の嫁にぃ!?というか、娘のほうが年上っておかしいでしょ!!」


「冗談(だよ)。」


「・・・何処からが!?」



入隊初夜、やっぱりすれ違うふたり。


ガチャ


「あー。どっと疲れた。」ボフン


「隊長ってば、あの後ずっと先輩と夫婦漫才してるし。私まで巻き込んでネタにしだすし。」ハァ


「これからあのふたりと付き合っていかないといけないのか・・・。」ゴロン


「どーしよ。もう既に後悔し始めている自分がいる。」


「それもこれも全部、お姉ちゃんが急に陸軍に入るなんて言い出した所為・・・!」ワナワナ


「文句言ってやる!」ピッ


プルルルル・・・


「・・・出ないし!」ウガー



入隊初夜、こっちはこっちで。


「良かったのか?電話に出なくて。」


「構いませんよ。折角の隊長との時間を邪魔されたくありませんので。」コト


「そうか・・・。しかし、風呂場にまで持ち込んでおいてその科白はどうなんだ?」


「これは隊長の肉体美を写真に収めるためのものですから。」ハイ コッチムイテー


「おい。流石に女同士でもそれは問題がポーズは要るか?」


「隊長のそういうノリの好いところ、私は大好きですよ。」フフ


「ところで、撮った写真はどうするのだ?」コレハドウダ


「どうもしませんが。強いて言えば個人的な鑑賞用でしょうか。」イイデスネ


「鑑賞用・・・。それはあれか。性的な意味での鑑賞か。」


「隊長、そっちの話題もいけるんですね。てっきり疎いものと許り・・・だから撮影を持ちかけたのですが、杞憂だったようです。」パシャ


「私の身体に見られて恥ずかしい部分など無いからな。余程後ろめたい使用目的でさえなければ大概のことは容認してやる。」


「それが性的な目的でも、ですか?」


「お前個人が愉しむためであればな。売り捌いたら許さん。」


「しませんよ。あ、でも弟さんに送っていいですか?」ゼツミョウニミエナイヤツ


「時雨にか?彼奴ならば態々送らずともいくらでも・・・いや待て。何故お前が彼奴の連絡先を知っている。」オイ


「連絡先は知らないですよ。私の妹が彼と同じ所属なだけです。」


「そうか・・・ならばいい。」


「ありがとうございます。」ピッ


ピロン ン・・・?


「メール?お姉ちゃんから・・・お姉ちゃんから!?」バッ


「あんの阿呆姉、電話を無視したくせしてメール寄越しやがって!しょうもない内容だったらただじゃおかな・・・」テンプ?


「なんてもの送りつけてくれてんのよ!あの阿呆ぉおおおおお!!」


「エロいじゃない・・・!!」ムフゥ!



繋がる世界、言葉も姿も思い出も。


ヴー ヴー


「今度は出てやったらどうだ?」


「騒がしくなりますよ?」ピッ


「どうした?愛しい我が妹よ。」フッ


『鼻で嗤いながら言うんじゃないわよ。この莫迦姉!なんてもの送りつけて・・・て、なんで裸?お風呂中ならビデオ切ってよ。』


「連れないことを言うな、妹よ。もう何度も同じ湯に身を浸した仲だろう?」ニッ


『何年前の話をしてるのよ。私達もうそんな歳じゃ・・・じゃない!さっきの写真!お姉ちゃん、終に罪を犯して・・・。』イツカヤルト


「勝手に姉を犯罪者にするな。あれは本人同意の許で撮影し送信したものだ。そっちの隊長殿との話のネタにでもするといい。」


『実姉の裸体を語る隊長なんて御免被るんですけど。あの人ならやりかねないから恐いんですけど!』


「ほう。その口振りからすると、それなりに仲を深めたらしいな。琴にしては仕事が早い。」


『ただ絡まれただけよ。まぁ、私の身を案じるお姉ちゃんの意図を汲んでのことみたいだったから悪い気はしてないけど。』


「なんだ。お前が籠絡されただけか。式はいつだ?美味い飯が出るなら祝ってやらんでもないぞ。」


『そんな予定は無い!・・・お姉ちゃんこそ、そっちの隊長に迷惑かけちゃ駄目よ?特に男関係!』


「案ずるな。自分の問題は自分で解決する。私は大人だからな。」フン


『・・・まさかとは思うけど、もう手を出したりしてないでしょうね。』


「同期ならば二人食ったが?」


『こんの阿婆擦れがああああ!!』


キーン


「すみません、隊長。騒がしい妹で。」


「いや、大丈夫だ。だが、頭が痛くなったから私はもう上がる。」ヌゥ


『えっ?そっちの隊長さん、居たの?私、超失礼なことたくさ・・・』ブツッ


ツー ツー


「あの姉は肝心なときにいつもいつも・・・!」ワナワナ


「いつかぶっとばぁす!!」ダン!


「とりあえず、この写真隊長に・・・。いやでも、勘違いされたら・・・。」ソワソワ


「ってぇ、なんで私が悩まないといけないのよぉ!!」


クソガー!!



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2023-02-17 11:35:03

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