2021-09-20 21:55:54 更新

概要

三笠を陰から操る存在が明らかとなり、宣戦布告した訓練島の面々。
力をつけ、最終決戦に臨もうかというその時。
海を彷徨う影が、少女の幸せを壊そうとしていた・・・。


前書き

三笠編は引き続き、主人公を入れ換えて物語を紡いでいきます。
定められた歴史が終幕を迎えるまで、彼女らの奮闘劇をお楽しみください。


幸も不幸も慣れて仕舞えばただの日常。


「なぁ、まだやんのか?」


「ん~?そりゃあ、まだ終わっていないからね。」カキカキ


「そうかも知んねぇけどよ。もう1時だぜ?そのくらいにして寝とこうぜ。」ナ?


「・・・寂しいの?」


「ち、ちげぇよ!何言ってんだよ!///」カァ


「思えば、僕達も結婚して長いし・・・。そろそろ踏み出してもいい頃・・・かな。」カタッ


「へっ?」


「今夜は、寝かせないよ。」フフ


「ばっ!寝ろって言ってんだろ!?///」マッカ


「だから寝ようって。」ウン?


「てめぇの"寝よう"は俺の"寝よう"と違うんだよ!」ダッ


「へ~え。何がどう違うのかせつめ・・・。」


「勝手にやってろ!莫迦!莫迦!ぶあ~かぁ!!」フン!


バタン!


「勝手にヤってろ・・・か。そそる捨て科白だ。」フム



教えられるより教える立場で在りたい。


「ったく、あの野郎。っと信じらんねぇ。」ブツブツ


ガチャ


「あら~。どうしたの?今日は旦那様と一緒じゃないの~?」ウフフ


「知らねぇよ、あんな奴。」フン


「ど~せまた弄り倒されてたんでしょ?言葉で。」


「うっ・・・。」


「初心も大概にしなさいよ~。カッコカリとはいえ、ふたりは結婚してる仲なんだから~。」


「け、結婚してっからって。そ、そういうことをしなくちゃいけないなんて決まりは・・・ねぇ、だろ?」モジモジ


「はぁ?」ジト


「なっ、なんだよ。やめろよ、その瞳・・・。」


「これだから超絶乙女は・・・。」チッ


「お前はもう少しお淑やかになれよ・・・。」イイトシダロ?



あたすのジャージは今や妹の部屋着兼運動着だよ。


「つーか、なんて格好してんだよ。それ中学んときのジャージだろ?色々溢れてんぞ。」


「別にいいでしょ~?私の部屋なんだし。」パタパタ


「ベッドの上で脚バタつかせるのやめろって。埃が立つだろーが。」


「あーもう。うっさい。あたしの部屋に避難させてあげてるんだから文句言わないでよ。」


「あたしのって、元は同部屋だろ?」


「勝手に出ていったくせに図々しいのよ。」フン


「・・・拗ねてんのか?」


「拗ねてない。」


「いや、拗ねてんだろ?」


「拗ねてない!」


「拗ねてんじゃねぇか。」


「しつこいなぁ!もう!いい加減にしないと、裸に剥いて"プレゼントは私"って提督の部屋にぶち込むからね!」


「すみませんでした・・・。」


「わかったならさっさと寝る!」


「はい・・・。」



君に明日があると、どうして言いきれる?


「ん~。」ノビー


フゥ


「やっと終わった。」ダラッ


「まったく。綱紀粛正の御蔭で不埒な輩が減ったのはいいが、この人員不足は大問題だな。」


「元帥閣下に直談判しようにも電話は繋がらんし、書類をほっぽって出向くわけにもいかんしな。」ハァ


「早々にどうにかして・・・。」ン?


ヒタッ ヒタッ


「足音・・・?」


ヒタッ ヒタッ


「誰だ?」


シーン


「・・・誰か、居るのか?」ミガマエ


ザシュッ


「がっ!」カハッ


バタッ


「死んだ?死んだ・・・の?そう・・・。そっか・・・。」


「あなたじゃ、ない。あのひとじゃ、ない。」ユラッ


「どこ?どこに、いるの?あなた。わたしの、いとしいひと。」フラフラ


ヒタッ ヒタッ



責任を取るなら何かを成し遂げてみせろ。


真宵 「と、そういうわけだ。引き受けてくれるな?時雨よ。」


黒霧 「」エェ


五月雨「はっは。お父さんでもそんな顔するんですね。」


蓮華 「余程嫌らしいな。私達と離れ離れになることが。」フッ


漣  「つーかさぁ。元帥が電話線ぶっこ抜いた所為で情報共有が為されてなかったことがそもそもの原因だべ?」


朧  「責任を取るヨロシ。」


真宵 「だから時雨を派遣するのだろうが。」


曙  「自分で責任を取れって話でしょ。」


潮  「でも、真宵ちゃんが大本営を離れるわけにもいかないんじゃ・・・。」オズオズ


真宵 「そういうことだ。他に任せられる者もいないのでな。頼む。」ペコリ


最上 「ほ~。魔王様がクロさんに頭を下げてるよ~。これは見逃せないね。」キラン


三隈 「三隈には何も見えませんの。聞こえませんの。」アーアー


最上 「ほらほら~。みっちゃんの師匠が頭を垂れて~。」ムフフ


三隈 「や~め~る~で~す~の~。」


紫苑茜「うっさい。」ノシッ


フガッ


三隈 「・・・重いんだよ。そのでっかい塊どかせや。」オラ


紫苑茜「あら、ごめんなさい。わたしのものが立派すぎる所為で見えなかったわ。」フフ


三隈 「てめぇ・・・。」イラァ


バチバチ


レ級 「何やってんだ?あのふたり。」


ヲ級 「放っておけばいいの。どうせお母さんが泣かされて終わるの。」ヘッ



他人に任せて失敗してもカバーできる範囲でしか頼まないから。


真宵 「頼む。」


黒霧 「・・・それは、依頼か?」


真宵 「いや、"お願い"だ。駄目ならば俺でどうにかしよう。」


黒霧 「自分でどうにかできるなら、態々僕に言うこともないだろうに。」


真宵 「相変わらず意地の悪い言い方をする。」フッ


真宵 「俺よりもお前のほうが適任だと、そう判断したのだ。」


黒霧 「・・・わかった。やるよ。」フゥ


真宵 「そうか・・・。」


五月雨「ぅえ~。ほんとに行っちゃうんですか?お父さん。」


蓮華 「寂しさのあまりに毎晩枕を濡らしてしまうぞ?母上が。」


南方戦「いくらワタシでも泣きゃしないわよ。」


蓮華 「いや、そっちではなくてだな。枕を股に挟んで・・・。」


五月雨「おっと、そこまでだ。」


南方戦「アンタ、いったい何処からそんな知識を得てるのよ・・・。心配だわ、親として。」ハァ



まさか机に肘を壊されるとは・・・。


真宵 「詳細は追って説明する。まぁ、お前には必要のないことかも知れんがな。」


黒霧 「現場を見れば、大体わかるからね。」


真宵 「一応だな。説明役を派遣してはいるのだが・・・。扱いは任せる。」デハナ


黒霧 「ああ。」


フワッ ビューン


黒霧 「さてと。それじゃあ、一緒に行く人員の選抜に・・・。」


時雨 「」ジトー


黒霧 「・・・どうしたの。」


時雨 「別に。最近、出番が少ないなとか。全然、修行をつけてもらってないなとか。これっぽっちも思ってないから。」フイ


黒霧 「一緒に来たいの?」


時雨 「ねぇ、にぃに。わかってて言ってるでしょ?怒るよ?」ニコー


黒霧 「本当に君は僕のことが嫌いなんだね。」フフ


時雨 「当然。」ニッコリ


フフフフ


近衛麗「遠慮のない関係・・・。これはこれでありね。」フム


神命 「いや、ないから。」



この御時世、直接会えるだけでも嬉しいものだね。


漣  「へいへ~い。修行をつけてもらってないってことに関しちゃ、うちらも同じだべ~。」


朧  「父と娘の団欒を要求するのん。」


黒霧 「元よりそのつもりだよ。」


漣・朧「うっし。」グッ


黒霧 「灯と姫百合もね。七駆は全員連れていく。」


潮  「はい!よろしくおねがいしましゅ!」アゥ


曙  「ま、チームだから仕方ないわよね・・・。」チラッ


紫苑茜「なぁに?わたしと離れ離れになるのがそんなに寂しい?」ンー?


曙  「べっ、別に、そんなんじゃないわよ!」プイッ


紫苑茜「大丈夫。わたしも行くわ。」フフ


曙  「そう・・・。」ニヨニヨ


漣  「嬉しそうだな、あかりん。」ヘヘッ


朧  「表情は緩めても貞操観念は緩めるなよ。」ヘッ


曙  「うっさい。そしてあんたは何の話してんのよ!」オダマリ!



とことん関わるか、無関心を貫くか。


黒霧 「それから、五月雨と麗。君達も来てくれるかな。」


五月雨「お父さんがそう望むなら。」ムフン


近衛麗「な~に、パパぁ。そんなに私と一緒に居たいの~?も~、仕方ないわね~。」ウフフ


黒霧 「君を置いていくと、何をしでかしてくれるかわかったものじゃないからね。最上のときみたいに。」ニコリ


近衛麗「」ウッ


黒霧 「向こうに行っても、僕の側から離れちゃいけないよ?」フフフ


近衛麗「笑顔が怖いわ、パパ・・・。」


五月雨「あっれぇ。若しかするとこれは、私もそっちの枠組ですかぁ?」


ヲ級 「お父さんがいないときの蓮華ちゃんと五月雨お姉ちゃんは交ぜるな危険なの。当然の判断なの。」


五月雨「はっは。中々言ってくれますね、ヲーちゃん。お姉ちゃんの心は大破寸前ですよ。」



一番の言い訳は子供の存在。


五月雨「ところで、蓮華ちゃんはいいんですか?お父さんと一緒に行くのが自分じゃなくて。」


蓮華 「ああ、構わん。私が残ってやらなければ、母上が可哀想だからな。」フッ


南方戦「莫迦言ってんじゃないわよ。アンタがワタシと一緒に居たいだけでしょ。」フン


蓮華 「その言葉、そっくりそのまま返してやろう。」


南方戦「あぁ?」


蓮華 「今夜は私が抱き枕になってやるぞ。独りの夜はいつも父上から貰ったアレをだ・・・。」モガッ


南方戦「アンタ、まさかまたカメラを仕掛けて・・・。」プルプル


蓮華 「んあ、ふぉうまうあ。」ニンマリ


南方戦「時雨!五月雨よりコイツを連れてって!寧ろワタシを連れてって!」クワッ


レ級 「南姉まで行っちまったら保護者がいなくなるだろうが。」


南方戦「っ~!!」


ヲ級 「そもそも南お姉ちゃんに保護者役は務まらないの。」ヘッ


レ級 「それもそうだな。南姉、行きたいなら行ってもいいぜ。俺達は俺達で、どうにかすっからよ。」ニッ


南方戦「アンタにまで気を遣われたらワタシがいたたまれないでしょうが!そこは引き止めなさいよ!」


南方戦「アンタ達のために仕方なく残るって選択肢を、ワタシから奪わないでよぉ!!」ウアァ


レ級 「難しんだな、大人って。」


ヲ級 「素直になれないお年頃なの。」


蓮華 「この頃のヲ級は本当に恐ろしいな。」


五月雨「お父さん、ヲーちゃんが悪女にまっしぐらです。」


黒霧 「深海に男がいないことが唯一の救いだね。」フフ



今時の家を支える柱はひとつじゃない。


黒霧 「さてと、それじゃあ行こうか。」


時雨 「随分と急だね。そんなに急いでどうするのさ。」


黒霧 「組織の長が不在って状況は、あまりよろしくないからね。」


時雨 「それを言ったら此処も同じでしょ?」


黒霧 「形だけの長が居なくなったところで困ることは無いさ。」


最上 「そうかな。ボクは結構、頼りにしてるよ?クロさんのこと。」フフ


三隈 「み、三隈もですの!」


黒霧 「そう?」


最上 「うん。ほら、一家の大黒柱ってよく言うじゃん。ただそこに在るだけで、ちゃんと支えになってるんだよ。」


最上 「勿論、真っ直ぐに立っていてくれなくちゃ駄目だけどね。」ニッ



頼られると嬉しくなっちゃうの。


黒霧 「そうなると、代わりの柱を用意しないといけないね。」フム


最上 「そうだね。」


三隈 「それでしたら、南さんに・・・。」


黒霧 「三隈にお願いするよ。」


三隈 「・・・へ?」


黒霧 「この訓練基地に於ける全権を三隈に委譲する。蓮華と相談しながら上手くやるんだよ。」ポム


三隈 「」パアァ


三隈 「わっかりましたの!三隈の全身全霊を以て、この基地を預からせていただきますの!」ムフー


最上 「チョ~ロい。」



化粧は美しさを際立たせるくらいが丁度いい。


黒霧 「茜姉さん、化粧品はちゃんと持った?」


紫苑茜「しーちゃん?それはいったいどういう意味なのかしら?」ニッコリ


黒霧 「もう若くないんだから、肌のケアは怠っちゃ・・・。」ムグッ


紫苑茜「忘れたのかしらぁ。わたし、転生してるからまだぴっちぴちの21歳なのよぉ?」オホホ


黒霧 「人間の肉体は老いるのが早いからさ。油断してるとすぐにばば・・・。」


紫苑茜「それ以上は駄目よ~?」ウフフフ


漣  「なぁ、漫才やってないで早く行こうぜ~。もう準備できちまったよ。」


朧  「時間稼ぎごくろうなのら。」


潮  「灯ちゃん、その書き物の束どうしたの?」


曙  「な、何だっていいでしょ・・・。」サッ


漣  「あれ、欲しいものリストだぜ。どんだけせん姉に買わせるつもりだよ。」ヒソヒソ


朧  「街に行けるかも知れないからって浮かれすぎなのね。」ヒソヒソ


曙  「違うわよ!これはちゃんと私のお給料で!・・・あ。」


漣・朧「うん。知ってた。」


朧  「偉いね、灯ちゃん。」ニコッ


曙  「っ~!!///」


紫苑茜「ねぇ、しーちゃん。」


黒霧 「わかってる。灯の夢を叶えるためにも、しっかりやらないとね。」


紫苑茜「頼んだわよ?"旦那様"。」フフッ



設定の復活だ~い。


黒霧 「やめてもらえるかな。勝手に"旦那様"なんて呼ぶの。」


紫苑茜「勝手にとは随分ね。わたしに"三人"も娘を産ませておいて・・・。」フフ


黒霧 「・・・やっぱり。」ハァ


紫苑茜「あら、気づいてた?」ニィ


黒霧 「若し本当に茜姉さんの妹だったなら、僕と魂の色が似通っていることが説明できないでしょ?」


紫苑茜「そうかしら?しーちゃんなら、わたしの母親を口説き堕としてとか、ありえると思うんだけど。」


黒霧 「」ウェ


紫苑茜「流石にその反応は失礼なんじゃな~い?」ウフフ~


曙  「ちょっと、何ふたりだけで話してるのよ。私も交ぜなさいよ。」


紫苑茜「やだ、灯ったら嫉妬?もう、ほんとに可愛いんだからぁ。」ムギュッ


曙  「お姉ちゃん、苦しい・・・。」ウッ


黒霧 「・・・。」ジー


曙  「あによ。見てないで助けなさいよ。」


黒霧 「いや、きっと素顔も可愛かっただろうなって。」フフ


曙  「んなっ!いきなり何口走ってんのよ!///」カァ


紫苑茜「当然よね。灯はこのわたしの妹なんだから~。」スリスリ


曙  「暑苦しいからっ。いい加減に、は・な・せ~!」グギギ



設定集でも姉妹に確定させてなかったものね。


黒霧 「ところで、中たったのはいつの話なの?」


紫苑茜「さぁ?聖戦が始まる前のいつかじゃないの?」


黒霧 「茜姉さんがヤりまくるから・・・。」


紫苑茜「湧き上がる情熱を抑えられなかったのよ。」キリッ


黒霧 「情欲の間違いでしょ?」


紫苑茜「そうとも言うわね。」


曙  「やめてよ。お姉ちゃんのえっちぃ話なんて聞きたくないわ。」


黒霧 「灯には現実を知っておいてもらいたいんだ。そして、頭のネジが外れた姉を諫めておくれ。」ポム


曙  「遠慮しとくわ・・・。」エェ



やりたいことができるがモチベーションなら、やりたいことしかやれないってことか?


漣  「あかりんの奴、ちょいとせん姉にべったりしすぎなんと違いますかね。」


朧  「うちら家族にはあんなことしない。」ムゥ


曙  「当然よ。あんた達に甘えたりなんてしたら、破滅への一本道を亜音速でぶっちするわ。」ハッ


潮  「え?でも、あのとき私には・・・。」


曙  「姫百合ぃ!!」クワッ


潮  「ひゃい!」ビクッ


曙  「それ以上は、駄目よ。」ダラダラ


漣・朧「ほっほ~ん。」ニヤニヤ


曙  「」


ヒメネエ! ソコノトコクワシク! ヤメロォ!!



モチベーションが無くても仕事ができるって、凄い才能だよ。


黒霧 「・・・楽しそうだね。」


紫苑茜「そうね。あのくらい賑やかなほうが、あの娘には合ってるのかも知れないわね。」


黒霧 「本が根暗だから?」


紫苑茜「あら~。あの娘の幼少期も知らないくせして、決めつけはよくないわ。」


黒霧 「茜姉さんがそうだったでしょ。」


紫苑茜「うっ・・・。よく知ってるわね。話したことあったかしら。」


黒霧 「見てたらわかるよ。掟も倫理も無視して暴走するのは思考が内側に向いていて、自己完結している証拠。」


黒霧 「周囲の意見も何のその。全く聞く耳を持たない。根っこが暗いんだよ。自分だけの部屋に閉じ籠もってるって意味でね。」


紫苑茜「よくもまぁ、そんな分析を・・・。どんだけわたしのこと好きなのよ。」ヤレヤレ


黒霧 「僕が、茜姉さんの光になる。」


紫苑茜「世界の闇に生きてきたくせしてよく言うわ。」


紫苑茜「・・・ほんとはもう、とっくの昔になってるけど。」ボソッ


紫苑茜「ちゃんとエスコートしなさいよね、旦那様。」ソッ


黒霧 「灯の姉として生きる道を決めたなら、その呼び方はやめようか。」


紫苑茜「はいはい。」フフッ


・・・


近衛麗「すんごい話が聞こえてきたわね。」


時雨 「いつか刺されろ。」


近衛麗「もう経験済みなんじゃないの?死んでないだけで。」


時雨 「そうだった。もう死んでるんだった。」チッ



駄目なときは何処に行ってもダメ。


???「遅かったですねぇ。女の子をこ~んなにも待たせるだなんて、感心しませんよぉ。」ニコニコ


黒霧 「時間の指定はなかったと思うんだけどな。」


???「指定がないなら猶のこと早く来るべきなのではないですか?」ウフフ


五月雨「はて。元帥閣下からは碌に話も聞かず、勝手に飛び出していったと聞いていますが。」


近衛麗「自分の身勝手に他人が合わせるように強要するだなんて、淑女としてどうなのかしら。」


時雨 「凡そ他人のことを言えた口ではないとも思うけど、ボクもその意見に賛成かな。」


近衛麗「ちょっと、それどういう意味~?」


時雨 「そのままの意味だよ~。」


五月雨「まぁ、そんなわけですんで。しっかりと反省してくださいね、榛名さん。」


榛名ミニ「此処でも私はこんな扱いなんですね・・・。」グスッ


紫苑茜「まずいわ。しーちゃんの沼に嵌まるルーティンが完成しちゃってるじゃない・・・!」


黒霧 「なら、茜姉さんが僕の代わりに彼女を慰めたらいいんじゃないかな。」フフ


紫苑茜「わたし、あーちゃん以外の女に興味ないから。」


曙  「それもなければよかったのに・・・。」ハァ



物事は計画的に。


黒霧 「家出娘の相談は後で乗ってあげるからさ。まずは此処の問題を解決しようか。」


榛名ミニ「・・・そうですね。」ハァ


榛名ミニ「では、始めにこの鎮守府についてですが、元帥閣下からは何か聞いておられますか?」


五月雨「な~んにも聞いていないですよ。お父さんなら、説明は不要だろうと。」


榛名ミニ「あんの筋肉達磨。」チッ


エ・・・


榛名ミニ「失礼。」コホン


榛名ミニ「簡単に紹介しますと、此処は比較的出撃が多い海軍主戦力の一翼を担う鎮守府のひとつです。」


榛名ミニ「指揮官も有能で、戦果の割に轟沈数が少なく、何より元帥閣下の綱紀粛正を免れる程度には人徳者でした。」


榛名ミニ「カッコカリではありますが、艦娘との結婚も済ませていたとか。彼女達からの信頼も厚く、だからこそ・・・。」


時雨 「彼の死は、あまりに大きな禍根を残すこととなった。」


榛名ミニ「はい・・・。」


近衛麗「わかるわ~。信頼を寄せる唯一の人との別れ。自棄になっちゃうわよね~。」ウンウン


黒霧 「君の場合は禁欲の理由が無くなって、存分に遊び呆けてただけでしょ。」


近衛麗「」ギクッ


紫苑茜「あんた、少し黙ってなさい。」ヤレヤレ



そう簡単に奪えると思うなよ!


???「てめぇか。あいつの後任ってのは。」


榛名ミニ「天龍さん・・・。」


天龍 「白い髪に、紅い瞳・・・。」ズイッ


黒霧 「・・・。」


天龍 「臭うな。血のにおいだ。」クンクン


漣・朧「わ~お。だいた~ん。」ヒュー


曙  「茶化さない。」


天龍 「」バッ


???「はい、ど~ん。」テイッ


天龍 「うお!」ヨロッ


黒霧 「」サッ


ズデッ ブフッ


天龍 「龍田、てめっ!何しやがる!危うくキ、キスしちまうところだったぞ!」


龍田 「あら~。それを狙ってたのに~。上手く避けられちゃったわ。」ウフ


天龍 「んなっ!」


漣  「な~、あかり~ん。」


曙  「・・・そうね。」ハァ


サン ハイ


漣・朧「わ~お。だいた~ん。」ヒュー



ありえない、なんてことはありえない。


天龍 「わかってんのか、龍田。あいつを殺ったのは、白髪に紅い瞳をしたっ。」


龍田 「小さな女の子だったんでしょ?何処をどう見たら彼が女性に見えるのよ。」


天龍 「関係者かも知れねぇだろうが!」


龍田 「白髪で紅い瞳ってだけで殴ろうとしたの?まったく、この姉は・・・。」ハァ


天龍 「白髪で紅瞳なんて人間はいねぇ!」クワッ


龍田 「世界は天龍ちゃんが思う数十倍は広いのよ~。」


五月雨「これが、禍根・・・?」


榛名ミニ「龍田さんの物分かりがよくて本当に助かりました。」フゥ



誕生日おめでとう、自分。


天龍 「ともかくだ!俺はこいつが信用できねぇ。だから、他の連中に近づけさせたくねぇ。」


龍田 「自分を犠牲にして、みんなを護ろうってこと?天龍ちゃんには荷が重いと思うな~。」


天龍 「んなことねぇよ!今までだって、俺が上手く・・・!」


龍田 「本当に~?」


天龍 「」ウッ


龍田 「私の手を借りないで、天龍ちゃんの力だけで、みんなの支えなしで・・・。」


天龍 「だぁ、もう!わぁったよ!俺ひとりじゃ無理だよ!だから、龍田。お前の力を貸してくれ。」


龍田 「わかればいいのよ~。」ウフフ


龍田 「まぁ、そんなわけだから。あなた達も力を貸してくれると嬉しいわ~。」ニコニコ


黒霧 「勿論。そのために来たからね。」フフ


天龍 「・・・話、聞いてたか?龍田。」


龍田 「え~?みんなで力を合わせて、謎の少女Xを倒そうって話でしょ~?」


天龍 「違ぇよ!俺はこいつの魔の手からみんなを護ろうって!」


龍田 「手を出しちゃうの?」


黒霧 「僕は既婚者だよ。」


龍田 「ほらぁ~。」


天龍 「それ以前に信用できねぇって言ってんだよ!わかれよ!」



さて、誰を登場させようかしら。


「あらら。荒れてんねぇ、天龍さん。」


「最愛のひとを失ったのです。ああもなりますわ。寧ろ、普段どおりの龍田さんが怖いですわ。」


「そ~お?龍田さんも結構殺気立ってるように見えるけど。」


「それが普段どおりと言ってますの。」


「言うねぇ。今の、本人に聞かれたら絶対やばいやつじゃん。」ニシシ


「滅多なことを言うものではありませんよ。龍田さんは、薙刀で学費免除を勝ち取るほどの実力者ですから。刻まれてしまいますよ?」


「ブーメランだよ、お姉ちゃん・・・。」


「ふ~ん。中々いい男じゃない。」フフン


「なんだ。また男漁りか?」


「ちょっと。変な言い方しないでよね。私はただ客観的に批評を・・・。」


「わかったわかった。で?お前的に何点なんだ?」


「そうね。70点くらいかしら。顔は良いけど、少し線が細すぎるわね。男子たる者、身体も人生も太くなきゃ駄目よ!」ムフン


「あら。随分と上からな物言いですね。」


「だから彼氏すらできんのだ。」


「んなっ!それは今関係ないでしょ!」


「私達姉妹の中で、男と付き合った経験がないのはお前だけだ。いい加減、古くさい理想は捨てることだな。」フッ


「むっきー!!言ってくれるじゃない!見てなさい。今に理想どおりの男を捕まえて、吠え面かかせてやるんだから!」ビシッ


「ほう。やれるものならやってみろ。」ニィ


「毎度毎度、よく飽きないものですわね。」


「あはは。できればこの話には関わりたくないかなぁ・・・なんて。」


「そういえば、貴女もまだでしたわね。」


「言わないでよぉ。これでも結構気にしてるんだからぁ。」ウゥ


「遊び慣れているように見えて実は、というのはポイント高いですわ。きっと、初恋は大恋愛になりますの。期待してますわ。」フフッ


「くっそ~。今年こそ、彼氏つくってやるぅ~!」


・・・


時雨 「理想に燃える女が一匹。恋に焦がれる乙女がひとり。そして恋愛上級者が三人。未知数がひとり・・・。」


時雨 「はぁ。ボクにはもう修羅場が見えてるような気がするよ。ねぇ、にぃに。」


黒霧 「まぁ、僕からは手を出さないからさ。」


時雨 「だから質が悪いんだよ。自分が追いかけられる側になるように餌を蒔くから・・・。」


黒霧 「何事も経験だよ。」フフッ


時雨 「あ~あ。駄目だ、これ。」ヤレヤレ


黒霧 「これから愉しくなりそうだ。」ニィ


近衛麗「若しかして、パパって実は危険な男?」


紫苑茜「あんたとは別の意味でね。」



人との食事は食べる早さに気を遣う。


漣  「おっしゃ。今日から此処が俺達の城じゃ~!」


朧  「うらー。」


曙  「喧しい。口より手を動かしなさい。さっさと荷解き終わらせるわよ。」テキパキ


漣  「いやいや。あたしら殆ど荷物にゃいし。どー見てもあかりん待ちだし。」


朧  「序でに足も動かすヨロシ。」


曙  「」チッ


潮  「大丈夫?手伝おうか?」


曙  「・・・姫百合。」


潮  「なぁに?」


曙  「大好き。」


潮  「ふぇえ!?///」ボン


漣  「ゆる百合してねぇで早く片せよ。あかりん念願の街ぶらだぜ?ぱぱんと一緒にお出かけだぜ?」


朧  「待ちきれないのん。」ムフー



同じとお揃いは違うんだ。


曙  「街ぶらったって、買うのは日用品だけじゃない。」


漣  「お揃いの歯ブラシ。」


曙  「」ウッ


朧  「お揃いの髪留め。」


曙  「」ウゥ


漣  「お揃いのした・・・。いや、それは無理か。」


曙  「」イラッ


朧  「姫ならいける。」


潮  「わ、私?」


漣  「だんね。せん姉とぱぱんに一着ずつ選んでもらうか。」


朧  「その話、のった。」


曙  「くっそ。羨ましい。」ボソッ


潮  「いくらぱぱでも、下着を選んでもらうのは・・・。」アハハ


漣  「ま、今はぱぱんをぱぱと認めただけで充分さね。父娘の距離感はこれから創り上げていこうぜ。」ニッ


朧  「うんむ。そんでもって次は。」ジッ


曙  「あによ。私は養子になんてならないからね。」フン


黒霧 「それは残念。」


曙  「うひゃい!」ビクッ


漣・朧「ぱぱ~。」ヒシッ


潮  「・・・ぱぱ。」ソッ


黒霧 「ん。」ナデナデ


エヘヘ~


曙  「んな心臓に悪い父親は要らんわぁ!」クワッ


漣  「あかりんってば、ビビりなんだから。も~。」


曙  「黙らっしゃい!」


黒霧 「さて、そろそろ行こうか。」ヨット


曙  「絶対的マイペース!人の話を聞けぇ!」


漣  「な~んか。あかりんが一番親子してね?ちょっと腹立つ。」ムッ


朧  「嫉妬の嵐。」ジト


曙  「知らないわよ。悔しいならもっと頑張りなさいよ。」


潮  「あの。どうして、私は抱えられて?」


黒霧 「さぁ?どうしてだろうね。」フフ


ピャー


曙  「人攫いぃ!!」


朧  「いざ往かん!姫の救出に!」ダー


漣  「勇者として歴史に名を刻むのはこの俺だ~!」イエー



疲れてるときは全てがどうでもよくなる。


潮  「ぴゃああああ!」


漣・朧「待て、おら~。」ウオー


黒霧 「僕を捕まえられたらね。」スタコラー


曙  「いや、ほんとに、待って・・・。」ゼェ ハァ


漣  「あかりん、もうギブっすか?」


朧  「情けないぞ!」


黒霧 「あんまりだらしないと、姫百合を着せ替え人形にしてしまうよ~。」


曙  「どーぞ、ご自由に。」


潮  「灯ちゃん!?」


漣  「躊躇なく仲間を売りやがりましたよ。」ヒソヒソ


朧  「世界は自分中心に回っているとでも思っているのかしらん。」ヒソヒソ


曙  「違うわよ。着せ替え人形くらいなら耐えられないことないでしょ。」ハー シンド


漣  「結果、仲間を売ったことに変わりないじゃん。」


黒霧 「体力が限界のときは思考を放棄するか。茜姉さんの悪いところが似てしまったね。」


潮  「あの。さっきのは、冗談・・・ですよね?」


黒霧 「僕が冗談を言うように見えるかい?」ニッコリ


潮  「ふえぇ・・・。」



とめどなく溢る。


漣  「ええい!あかりんはもう駄目だ!俺達で姫百合を救うぞ!」


朧  「おおー!」ヤー


???「お~!」イエー


漣・朧「・・・誰?」


・・・


黒霧 「追ってこないね。」


潮  「澪ちゃ~ん。撫子ちゃ~ん・・・。」ウゥ


???「他人に助けを求める前に、自分でどうにかする努力をしては如何です?」


黒霧 「容赦ない正論が飛んできたね。」フフ


潮  「ぴゃ~。でも、ぱぱに抱っこされるのは嫌じゃないから。別に、このままでも・・・。」テレテレ


黒霧 「受け入れる道を選んだみたいだよ。」


???「そうですの。」


パパー


漣・朧「不審なJKにあかりんが捕まった~。」


???「不審じゃないよ!ってか、JKでもないし!」


曙  「うっさい。耳元で喚かないで。頭に響くじゃない。」


???「おんぶしてあげてるのに、その態度は何さ。」エェ


曙  「なら下ろして。」


???「この娘はっ!」


???「鈴谷、早速いいように使われてますのね。」


鈴谷 「そういうことは思っても口に出さないのがお約束でしょ~。」ンモウ


???「新人に舐められては終わりですわよ。JKはJKなりに威厳を示すことですわ。」


鈴谷 「熊野まで・・・。JKって言われてる時点で威厳も何もないじゃんか。」ムゥ


熊野 「そこに気づける程度には脳が正常に機能しているようですわね。安心しましたわ。」


鈴谷 「あ~!ひっど~い!その言い方だと、まるで私がアンドロイドみたいじゃん!」プンスコ


熊野 「似たようなものですの。改造むす・・・。」


鈴谷 「やめれ~!!」イヤー!


黒霧 「さぁ、みんな。女子高生は放っておいて、街に行こうか。」


漣朧潮「は~い。」


曙  「それはいいけど。背負ってちょうだい。もう歩きたくないわ。」


黒霧 「はいはい。」ヨット


曙  「ん、ありがと。父さん。」ボソッ



誰にも生まれは選べない。


黒霧 「その言葉、聞かなかったことにしておくよ。」


曙  「絞めるわよ、クソ親父。」グイッ


黒霧 「締まってる締まってる。」


曙  「私がこの世界に捨てられた原因は、全部あんたにあるのよ?責任、取りなさいよ。」


黒霧 「それは、僕が"黒霧"だから?」


曙  「そうよ。あんたら黒霧が神々と喧嘩してたから、あんたの血を引く私は紫苑の一族にとって、不発弾のようなものだった。」


曙  「それを理解してた母さんは、私を身籠もったことさえも隠し通し、私を次元の狭間に落とした。」


曙  「全部、あんたが悪いのよ。あんたが黒霧でさえなければ。あんた達が神々と対立してさえいなければ!」ギリッ


黒霧 「僕達家族が、引き裂かれることはなかった?」


曙  「そうよ・・・。」


曙  「だいたい、母さんが自分をお姉ちゃんだって偽ってるのも意味わかんないし。」


黒霧 「・・・灯、君は父親に会えてどう思った?」


曙  「嬉しかった。私にはもう、家族がいないって思ってたから。」


黒霧 「その父親が僕だと知って、どう思った?」


曙  「こんのクズが。」グググ


黒霧 「締まってる締まってる。」



私はあの娘を捨てたのよ・・・。


黒霧 「つまりは、そういうことだよ。」フゥ


曙  「私があんたにがっかりしないようにって?はっ。お笑いね。そんな程度の低い誤魔化しで、私が納得すると本気で思ってるの?」


黒霧 「うん。」


曙  「絞めるぞ、くぉら。」ギチッ


黒霧 「だからもう締まってるって。」


曙  「・・・ほんとは知ってるのよ。母さんがどうして嘘を吐いたのか。」


黒霧 「"時鏡の瞳"か。いつの間に使いこなせるようになったのやら。灯って、そういうところあるよね。」


曙  「これ、そんな名前なんだ。ってか、莫迦にしてるでしょ。」ムッ


黒霧 「わかる?」フフッ


曙  「私だけ扱いが違いすぎない?他の娘には激甘なのに・・・。」


黒霧 「茜姉さんが認めていないのに、僕が勝手に君を娘と認めるわけにはいかないでしょ。」


曙  「くっそ。やっぱ、先に母さんをどうにかしないと駄目か。」チィ


黒霧 「優しくね。茜姉さんは、あれで結構繊細だから。」


曙  「アドバイスどうも。序でに言っとくけど。私、養子なんて妥協案には絶対にのらないから。」


黒霧 「それは何度も聞いたよ。」


アァ ソレカラ


黒霧 「君の名前が"灯"であることの意味を、よく考えることだね。」


曙  「灯は証、ね。憶えておくわ。ありがと、黒兄。」ンッ


漣  「さっきからな~にこそこそやってるのかにゃ~。」ムー


朧  「うちらも交ぜろ~。」コーホー


潮  「内緒話はよくないと思いますっ。」


曙  「知らぬが仏って言葉を知ってるかしら。」


漣  「寧ろ、あかりんがそれを知ってることに吃驚だぜ。」


曙  「黒兄、私の代わりにこいつぶっ飛ばしてくれない。」イラッ


黒霧 「生憎、僕は娘に向ける拳を持っていなくてね。」


漣  「愛してるぜ、ぱぱん。」ヒシッ


朧  「うちは殴ってもいいのよん。」ヒシッ


潮  「わ、私は、遠慮したい・・・でしゅ。」アゥ


曙  「へいへい。お優しいこって。」フン



みんなが均質な世界は平和だけど、絶対的につまらない。


近衛麗「ちょっと、パパぁ。娘を呼んでくるだけで、どんだけ時間掛けてるの~。」


黒霧 「娘との時間を大切にしたいだけだよ。」


近衛麗「私だってパパの娘なんだけど~?」ムゥ


黒霧 「今夜は一緒に寝てあげるから。」フフ


近衛麗「・・・はぁ。その一言で全部許しちゃう自分が憎いわ。」


時雨 「反吐が出そうなんだけど。誰か、エチケット袋持ってない?」オェ


紫苑茜「しーちゃんに創造してもらったら?」


時雨 「えー。」


紫苑茜「そんなにしーちゃんを頼るのが嫌?」


時雨 「・・・創造って、疲れるんでしょ?今のボクじゃ、どう考えても護られる側だからさ。あまり負担を掛けたくないんだ。」


紫苑茜「」キラキラ


時雨 「なにさ。そんな瞳で見ないでよ。」


紫苑茜「んもう。どうしてうちの娘達はこう可愛いのかしら。///」ハァ


時雨 「」ゾワッ


時雨 「にぃに。この人、変。」サッ


黒霧 「頭の良い人は見えてる世界が違うっていうからね。凡人の僕達からしたら、茜姉さんは相当な変態だよ。」


紫苑茜「変態とは失礼な!」


曙  「そうよ!せめて変人と言いなさい。」


紫苑茜「灯・・・。あんた、わたしのことそんな風に思ってたのね・・・。」ショックダワ



他人の理解力を疑う前に自分の説明力を疑おうか。


近衛麗「ところで、後ろのふたりはどちら様かしら。」ジト


鈴谷 「おっほ~。背筋が凍る~。」


熊野 「初対面の相手にそんな瞳を向けるだなんて・・・。人間不信でも拗らせてまして?」


近衛麗「ええ。パパに近づく女は特にね。」ウフフフ


鈴谷 「こいつはまずい。助けて、くまのん。」サッ


熊野 「私を盾にしないでくださいまし。」チョット


黒霧 「そんなに威嚇しないの。鈴谷と熊野には道案内をお願いしただけだから。」コラ


近衛麗「むぅ。」ヒシッ


曙  「ちょっと。邪魔なんだけど。」


近衛麗「邪魔はあんたよ、灯。いつまでパパに負ぶさってるつもり?」


曙  「無駄に走らされて疲れてるの。今はその首謀者に責任を取ってもらってるところよ。」


近衛麗「あっそう。でも、そろそろお姉ちゃんのほうに移ってもいいんじゃな~い?」ニコニコ


曙  「はぁ?何言ってんの?お姉ちゃんが誰かを負ぶって歩けるわけないでしょうが。」


漣  「言われてんぜ、せん姉。」


紫苑茜「否定のしようがないわね~。」ハハ



べっさぁん!!


五月雨「お父さん。いつまで駄弁ってるつもりですか?行くなら行くで、ちゃっと行って、ちゃっと帰ってきてください。」


黒霧 「わかったよ。」フフ


紫苑茜「寂しいなら一緒に来ればいいのに。」


五月雨「いえ。別に寂しいとか、そういうのはないです。」キッパリ


紫苑茜「言いきったわね、この娘・・・。」


五月雨「さぁさ、行った!行った!ぐだぐだしてると、私が仕事をする時間が無くなってしまいます。」シッ シッ


紫苑茜「ちょっと扱いが雑なんじゃ・・・。」


五月雨「いいから、早く行く!」グイグイ


紫苑茜「わかった。わかったから、押さないでちょうだい。」モウ


・・・


五月雨「やっと行った。」フゥ


五月雨「それじゃ。いっちょやったりますか!」フンス



取り敢えず大きな道に出ればどうにかなる。


漣・朧「うはは~い。」ワー


紫苑茜「こぉら。はしゃぎすぎると迷子になるわよ~。」


時雨 「そうだね。早速ひとり脱落してるみたいだよ。」


紫苑茜「・・・え?」


近衛麗「あら、ほんと。おっぱいちゃんがいないわ。」


紫苑茜「あの娘、方向音痴だったかしら・・・?」


曙  「どうでもいいけど。早く捜しにいったら?」


黒霧 「灯は行ってあげないの?」


曙  「・・・はぁ。仕方ないわね。」ヨイショ


曙  「さぁ、行くわよ、お姉ちゃん。失ったものを迎えに。」


紫苑茜「どうしたの?可笑しな言い回しを使ったりなんかしちゃって。少年漫画にでも影響された?」ウフフ


曙  「私の趣味じゃないわよ。」フン


ホラコッチ アァ ヒッパラナイデチョウダイ


時雨 「上手く、いくといいね・・・。」


黒霧 「灯なら大丈夫さ。何たってあの娘は、黒霧の血を継いでいるからね。」フフ


時雨 「そっか。・・・それはそうと、にぃに。姫ちゃんは何処に消えたんだろうね。」


黒霧 「全力で捜すとしようか。」ビキッ


鈴谷 「おぉ。頬に黒い痣が。何かのイリュージョンかな?」


熊野 「若し仮にそうだとしたら、酷く地味なイリュージョンですわね。」



わかってる。だけど・・・。


紫苑茜「ねぇ、灯?あなた、姫ちゃんの居場所に心当たりでもあるの?」


曙  「んなもんあるわけないじゃない。私、此処に来るのは初めてよ?」ハァ?


紫苑茜「だから訊いてるのよ。行く宛もないのに、突き進んでいくんだもの。」


ピタッ


曙  「行く宛・・・ね。確かにないわね、そんなもの。だって、私は失った過去を取り戻そうとしているだけだもの。」


紫苑茜「・・・灯?」


曙  「私は、母親がどんなものか知らない。父親がどんなものかも知らない。気づいたときには、あの孤児院に居て・・・。」


曙  「澪と撫子の莫迦コンビに振り回されてた。」


曙  「だけど、黒兄に出会って。家族の在りようを見せつけられて。みんな懐いちゃって。」ハッ


曙  「・・・私だけ、残っちゃった。」


紫苑茜「それなら、灯も養子に・・・。」


曙  「いやよ!絶対にいや!!どうして本当の両親が目の前に居るのに養子になんてならないといけないの!」


紫苑茜「灯・・・。あなた、気づいて・・・。」


曙  「ねぇ、母さん。どうして私を捨てたの・・・?どうして、嘘を吐いたの・・・。」フルフル


紫苑茜「・・・。」


曙  「答えてよ、母さん。」


紫苑茜「やってくれたわね、しーちゃん。わたしにだけはほんと、容赦ないんだから。」フゥ



君の言葉で伝えてほしい。


紫苑茜「まず始めに言っておくわね。わたし、紫苑茜は、あなた、紫苑灯の母親で・・・間違いないわ。」


曙  「知ってる。で?」


紫苑茜「あなたを捨てたことも認める。言い訳はしないわ。わたしは決して許されないことをした。」


紫苑茜「あなたと共に生きる道ではなく、彼と共に生きる道を選んだ。」


曙  「っ!言ってくれるじゃない。父さんと私と、その両方を取る選択肢は無かったのかしら。」


紫苑茜「身籠もった時期がもう少し遅ければ、或いは・・・。あのとき、わたしは独りだったから。」


紫苑茜「悔しいけど、わたしにはあなたを護ってあげられるだけの力が無かった。」


曙  「・・・父さんは?父さんはどうしたの。」


紫苑茜「お仕事で忙しかったのよ。当時は聖戦の真っ只中だったし。そもそも身籠もったこと自体、彼は知らないから。」


曙  「んのクソ親父。肝心なところで役立たずなんだから。」チッ


紫苑茜「ねぇ、灯?あなた、もっとわたしに怒ってもいいのよ?ううん。寧ろ怒ってちょうだい。そうでなきゃ、わたしが・・・。」


曙  「い・や・よ。怒られて、それで区切りをつけようだなんて、虫が良すぎると思わない?」


曙  「一生、後ろめたさに苛まれることね。」フフフ


紫苑茜「・・・はぁ。流石はわたしの娘だわ。いい性格してる。」ヤレヤレ



あなたの初恋は人生を蝕む毒か、将又薬か。


紫苑茜「ところで、しーちゃんとは何か話したの?」


曙  「え?まぁ、それとなく?」


紫苑茜「それとなくって何よ。それとなくって。」


曙  「だって、母さんが私を娘と認めていないのに僕が認めるわけにいかないとか、殆ど認めたのと同じことを平然と口走るんだもん。」


曙  「あいつ、絶対わざと言ってるわ。」


紫苑茜「それがしーちゃんだから。」ウフフ


曙  「はぁ~あ。父さん、これでちゃんと甘やかしてくれるかしら。」


紫苑茜「へぇ。それが灯の本音?うちの娘達は揃いも揃って・・・。しーちゃんの因子にはファザコンになる呪いでもあるのかしら。」


曙  「私の場合はどう考えても母さんの所為でしょ。父さんを想う母さんの心に毒されてるのよ。」


紫苑茜「毒されてるとは随分ねぇ。でも、しーちゃんはやめておきなさい。初恋の相手があの子だなんて、それこそ猛毒よ。」


曙  「・・・もう遅いっての。」フフ


紫苑茜「・・・。」


曙  「あによ。文句ある?」


紫苑茜「わたしに聞こえるように言ったのはわざとよね。宣戦布告と受け取るわよ?」ゴゴゴ


曙  「親愛と恋愛の違いくらい弁えてるわよ、ぶぁ~か。」ニッ


紫苑茜「この娘はっ。」ヒクッ


曙  「これからよろしく、母さん。」ウフフ


紫苑茜「わたしはよろしくしたくなくなってきたわ・・・。」ハァ



諦めても終われない仕合だってあるんだよ。by Uramichi


黒霧 「」オォォ


鈴熊野「・・・。」


時雨 「にぃに。娘への愛情が深いのはわかるけど、もう少し抑えなよ。色々漏れてる。」


黒霧 「漏れてるんじゃなくて、出してるんだよ。地下室で説明してあげたでしょ?」


時雨 「・・・え?若しかして、霧を使って壁との距離を測ってるとかいう・・・あれ?待って。街単位でやってるの!?」


黒霧 「そう。だから今は集中させておくれ。割と、余裕ないからさ。」フッ


時雨 「余裕ないとかそんなレベルじゃないでしょ!命に関わる問題だから!無茶しすぎだよ!」


黒霧 「姫百合だって、今正に命の危機に瀕しているかも知れないでしょ?無茶くらいするさ。」ニッ


時雨 「このっ!ああ、もう!わかった!能力を使うことは止めないから、救出はボクに任せて休んでなよ?いいね!」ビシッ


黒霧 「見つけた。こっちだ。」シュンッ


時雨 「話聞いてた!?休んでろって言ったよね!」


マテコラー!!


鈴谷 「ねぇ、くまのん。私、あんな親莫迦な人にアタックする勇気ないんだけど・・・。」


熊野 「初めては弄ばれるくらいがいいと言ったのは貴女ですのよ?彼以外の男性も近くにいないことですし、振り絞ってくださいな。」


鈴谷 「他人事だと思ってぇ。鈴谷ったら不幸だ~。」アァ



君はまだ自分の可能性に気づいていないだけさ。


潮  「んん・・・。」パチクリ


???「あ、やっと起きた。」


潮  「だぁれ・・・?」クシクシ


???「あれ?憶えてない?最近会ったばかり・・・。て、そっか。あのときは仄の姿だったね。」


潮  「仄・・・?」ハッ


潮  「じゃあ、貴女は・・・。」サー


???「んふふ。この姿では初めましてだねぇ。私が黒霧日陰だよ。」ニィ


潮  「ふぇえ。」ジワッ


日陰 「あぁ、泣かないで。ちょっと、そこに居る人と話がしたかっただけだからさ。」チラリ


黒霧 「君は本当に、回りくどい遣り方が好きだね、日陰。」フゥ


日陰 「どうしたの?時雨くん。随分と息があがっているようだけど。」ウフフ


黒霧 「眠ほどではないさ。」


時雨 「ほんとにねぇ。」ゼェ ハァ



もう、駄目だっ!


黒霧 「思ったよりも早い再会だね、日陰。それも君自ら出張ってくるなんて・・・。」


日陰 「ん~。本当は私も深海に籠もっていたかったんだけどね~。」ンフフ


日陰 「困ったちゃんの御蔭で外に出てこざるを得なくなったの。」オォォ


黒霧 「いい加減、その引き籠もり癖直しなよ。」


日陰 「私は家が好きなの~。海派か山派かと訊かれたら家派と答えるの~。」クネクネ


時雨 「にぃに。この人もう駄目だ。」


黒霧 「知ってる。」


日陰 「って、そんな話をしにきたんじゃないの。」


黒霧 「うん。用事あるから、手早く済ませてね。」ニコリ


日陰 「私の守護者になって?」キャピッ


黒霧 「・・・。」


時雨 「あんなことをしでかしておいて、よくもまぁ、ぬけぬけと。やっぱり駄目だ、この人。」



君もきっと河合荘。


黒霧 「もう少しだけ時間をあげるから、詳しく話してもらえる?」


日陰 「あっはは。上からくるね~。時雨くんのそういうとこ好きだよ。」ウフフ


黒霧 「いいから、早く。」


アイアイ アイハイッカイ アーイ エェ


日陰 「私、絶賛命を狙われてるの。」ニッコリ


時雨 「そのまま狩られてなよ。」ハッ


日陰 「酷いなぁ、眠ちゃん。」アハハ


黒霧 「で、誰に?」


日陰 「白くて黒い女の子。」


ピクッ


黒霧 「・・・君ほどの柔術使いなら撃退できると思うんだけど?」


日陰 「退いてくれないから困ってるんだな~。人外相手だと柔術は決定打に欠けるからさ。」


黒霧 「・・・わかった。解決するまでの間は近くに居ることを許可してあげるよ。ただ・・・。」


日陰 「ただ?」


黒霧 「澪との仲を取り持ったりはしないから、自分でどうにかしてね。」


日陰 「その問題があったか。」アチャー


黒霧 「さ、みんなの所に戻ろうか。おいで、姫百合。」


潮  「うん・・・。」トテトテ


時雨 「あ、にぃに。ボクも負ぶって。色々疲れた。」


日陰 「じゃあ、私も~。」


黒霧 「容量オーバー。走ってついてきて。」


日陰 「吐血しても知らないぞ~?」



どうしたって、私はあなたになれないの。


スズヤー? クマノー?


天龍 「ったく。何処に行きやがったんだ?あいつら。」


天龍 「部屋にも居ねぇし。秘密の漫画部屋にも・・・。」ハッ


天龍 「まさか。あの野郎に誘拐されて、あんなことやこんなことをっ!」ズガーン


天龍 「野郎!遂に本性を顕しやがったなぁ!」


龍田 「乙女の妄想力って、ほんと凄いわね~。」ユラァ


天龍 「妄想じゃねぇよ!鈴谷と熊野があいつの毒牙に!」ドッカラワイタ


龍田 「その根拠は?」


天龍 「・・・根拠?」


龍田 「そう。根拠の無い想像を人は妄想というの。天龍ちゃんが言うそれは、ちゃんと根拠があるのかしら~。」


天龍 「勿論あるぜ!あいつの為人を見ていれば・・・!」


龍田 「違う。」


天龍 「違わねぇって!」


龍田 「違う!・・・認めたくないだけなんでしょ。あの人以外の誰かが、あたし達の提督になることを。」


天龍 「ぐっ・・・!」


龍田 「ねぇ、お姉ちゃん。気づいてた?あたし、お姉ちゃんのことも好きだけど。あの人のことも・・・大好きだったの。」


天龍 「はぁ・・・?何だよ、急に。そんな素振り、今まで・・・。」


龍田 「見せなかったわよ。それが一番、幸せな選択だと思ったから。」


天龍 「幸せって。お前の幸せは何処にあるんだよ。お前が身を退けば丸く収まるって、それは違うだろ!」


龍田 「お姉ちゃんとあの人の幸せが、あたしの幸せだったの!幸せな、はずだったの・・・!」


龍田 「でも、結婚したふたりを見ていて、積もるのは苛立ちばかりだった。」


龍田 「結婚したくせに、大切にされてるくせに・・・。何あれ。ほんと、あたしが結婚してればよかった。」


天龍 「今更、何言ってんだよ。俺に相談もしないで、勝手に諦めたのはお前だろ!」


龍田 「五月蠅い!彼の隣りに居るのがあたしだったら!あの夜、彼がひとりになることはなかった。彼が死ぬことはなかった!」


天龍 「言いやがったな、てめぇ。もう終わったことをいつまでも。いい加減に俺も我慢の限界だ。」ビキッ


龍田 「それよ。」グスッ


天龍 「あぁ?」


龍田 「"もう終わったことをいつまでも"。彼の死は、もう終わったことなの。」


天龍 「龍田・・・。お前。」


龍田 「あなたは歴戦の勇士、天龍型一番艦・天龍!そして!このあたしが尊敬するかっこいいお姉ちゃんよ!」


龍田 「いつまでも過去を見てないで、未来を向きなさい!あなたが進まなきゃ、あたし達もついていけないでしょ!」


天龍 「・・・へっ。ったく。仕方ねぇな、チクショウ。」


天龍 「おらぁ!天龍様の復活だ!もう過去には囚われねぇ。ただ、取り敢えずの目標は、あいつの仇討ちだぁ!」


天龍 「全員、俺についてこ~い!!」



若いうちにやるかどうか迷ったなら、やってしまえ。


アーハッハッハッハー


龍田 「手の掛かる姉を持つと大変だわ・・・ほんと。」ハァ


龍田 「それにしても、可愛い顔して酷なことをさせるものね。」


五月雨「そうですか?本音でぶつかれるのは家族と親友の特権ですよ?権利は使ってなんぼです。」フンス


龍田 「んもう。正しいことって、意外と行動に移すのは難しいものよ?」


五月雨「繋がりの輪を壊してしまうからですか?その程度で壊れるような絆は、どうせすぐに壊れますよ。」


五月雨「私達の人生はまだまだこれからです。永い付き合いになるか否か。それを見極め、時には捨ててしまうことも大切ですよ?」


五月雨「私達が他人に伸ばすことのできる手は2本しか無いんですから。」フフ


龍田 「それは、一度に引き止めることのできる相手はふたりまで、ということかしら?」


五月雨「さぁ?どうでしょうね。」


天龍 「龍田~?さっきから何ぶつぶつ言ってんだ?」


五月雨「おっと。私が裏で色々とやっていたことを天龍さんに知られると面倒ですね。では、私はこれで。」スタコラー


天龍 「誰か居るのか?」ンー?


龍田 「居ないわよ。幻聴でも聞こえてたんじゃない?」ウフフ


天龍 「んなわけねぇだろ。妹の声を聞き間違えるかよ。」


龍田 「///」カァ


龍田 「じ、じゃあ!妖精さんの悪戯よ!」アセアセ


天龍 「ほ~ん。随分と暇してる妖精さんがいるもんだなぁ。」ニヤニヤ


???「あら~。それは私のことかしら~。」


天龍田「!?」バッ


龍田 「榛名・・・さん?」


榛名ミニ「はい、榛名です。よく似てますでしょう?」ニッコリ


天龍 「」ブフッ


龍田 「私の声で遊ぶのはやめてもらえるかしら~。」ニコニコ


龍榛名「あらあら~。」ウフフフ


天龍 「あははは!駄目だ!面白すぎるっ!」ヒー ヒー


龍田 「天龍ちゃ~ん。」ガシッ


天龍 「は・・・。」タラー


龍田 「覚悟はいいかしら~。」ニコォ


天龍 「」マッシロ



信頼とは、結果で勝ち取るものだ。


五月雨「さてさてさ~て。天龍さんのほうは一応片付きましたから、次はあの方々ですね~。」ルンタッタ


デハ


五月雨「お邪魔しまんにゃわ~。」ガチャリ


???「あら。見ない顔ですね。どちら様ですか?」


???「建造は止まっているからな。後釜が一緒に連れてきた娘だろう。」


???「あぁ、あのギリギリ及第点の。」


???「何様・・・。」ボソッ


ナニカイッタ? イエ


五月雨「後釜だの、及第点だの。随分と好き勝手言ってくれますねぇ。」


五月雨「娘の前で父親の悪口を叩くとは、いい度胸ですよ。」マッタク


???「娘?なるほど。あの方は既婚者なのですね。」


???「残念だったな、足柄。お前の付け入る隙は無いようだぞ。」ニィ


足柄 「ちょっと。まるで私が男に飢えてるような言い方はやめてよ、那智姉。」


???「事実ですよね。」


足柄 「何か言った?羽黒。」


羽黒 「いえ、何も・・・。」


五月雨「三人寄れば姦しいなんて言ったりもしますが、正しくですね。私の存在を無視しないでもらえますか?」


???「あら、ごめんなさい?」ウフフ


那智 「すまんな。我々は実力至上主義だからな。矮小な者の言葉は耳に届かんのだ。」フッ


五月雨「その言葉を待ってました。」ニタァ


羽黒 「ひっ。」ビクッ


五月雨「妙高型の皆さんに演習を申し込みます。まさか、断ったりしないですよねぇ。こんな"矮小な"娘からの挑戦を。」フフフ


妙高 「それは、4対1ということでしょうか?舐められたものですね、私達も。」


那智 「目にもの見せてくれる。」



だから戦闘描写は苦手だって。


足柄 「ん~。この艤装を着けるのも久し振りね~。」コキコキ


那智 「まさか鈍ったりはしていないだろうな、足柄。」


足柄 「はぁ?私を誰だと思ってるのよ。毎日の訓練は欠かしてないわよ。」


羽黒 「訓練用の艤装と本当の艤装は色々と感覚が違うと思うけど・・・。」


足柄 「揚げ足を取って愉しい~?」ガシッ


羽黒 「痛い。握力強い。ゴリラ。」ウゥ


足柄 「あんた最後なんつったぁ!」クワッ


妙高 「こら。妹を虐めては駄目ですよ?」メッ


足柄 「虐めって、どう考えても悪いのは羽黒っ!」


妙高 「足柄?」ニッコリ


足柄 「ぐっ・・・!」


那智 「諦めろ。妙高は羽黒には激甘だからな。」フッ


羽黒 「」ヘッ


足柄 「こいつぅ~!」ワナワナ


五月雨「やる気あるんですかね、あの人達。大破判定くらいでいいかと思っていましたが・・・駄目ですね。」


五月雨「プライドをズタズタに引き裂いて、轟沈してもらいましょうか。」ジャキン



慎重さを欠いては思わぬ失敗をする。


五月雨「演習開始~。」ピー


妙高 「距離を取って射撃。魚雷に注意しなさい。接近さえさせなければ、駆逐艦に敗北する道理はありません。」


那智 「承知。」ガション


羽黒 「五月雨ちゃん、砲も魚雷も装備してない。大きな鎌を持ってる。」


足柄 「へぇ、面白いじゃない。」ニィ


妙高 「一撃で仕留めます。主砲、一斉射!放て!」


ドーン!


五月雨「うっすい弾幕ですねぇ。」サッ


ザッパーン


五月雨「横一列に並んでまぁ。接近されてからのことを考えてないんですかね。舐めすぎですよ、まったく。」シュバッ


足柄 「はやっ!?」


五月雨「改造艦娘のお通りですよ~。」ギューン


妙高 「近づけてはいけません!」


那智 「わかっているさ!」ボカーン


羽黒 「敗色濃厚・・・かも。」ソローリ


足柄 「あぁ、もう!中たんないわ!私が動きを止めるから、しっかり狙ってよ!」


那智 「間違えて中てても文句言うなよ!」


足柄 「言うわよ!那智姉がそう言うときは大抵、わざと狙ってるときなんだから!」


五月雨「演習中によそ見ですか?」ブゥン


シュバッ


足柄 「へっ?飛んだ・・・?」


ザシュッ


羽黒 「あぐっ!」


五月雨「実戦の基本は"かも知れない"です。駆逐艦が鎌を使って、棒高跳びをする"かも知れない"。」


五月雨「その予測さえできていたならば、羽黒さんは傷つかずに済んだでしょうに・・・。」


五月雨「さて、お次は誰にしましょうか。」ニタァ



※大鎌からは反重力の弾が出ます。


妙高 「よくも、私の可愛い妹を!」ギリッ


那智 「足柄はそのまま主砲で狙え!私と妙高で足を止める!」


足柄 「了解!」ジャキン


妙那智「機銃、斉射!」ババババ


五月雨「中たりませんよ。」ブゥン ポンッ


グニャァ


妙高 「弾道が歪んで・・・!」


五月雨「重力操作って便利ですねぇ。これが私の実力だ、なんて傲ったことは言いませんが・・・。」


五月雨「持ち得た能力をどう使うかは、実力の内に含まれますよね?」ギュンッ


那智 「っ!」


五月雨「ふたりめ。」ドゴォ


那智 「がっは!!」メキィ


妙高 「那智ぃ!」


五月雨「貴女は少し浮いててください。」ポンッ


妙高 「か、身体が!?」フワッ


五月雨「その隙に刻みますので。」ザンッ


妙高 「がっ!」ゴフッ


バシャン


五月雨「あと、ひとり・・・。」ユラァ


足柄 「!」ゾワッ


五月雨「うふっ。愉しいですねぇ。ね、足柄さん?」ニチャァ


足柄 「この娘、本当に艦娘?雰囲気が完全にフラグシップ級じゃないの。」


足柄 「まさかこの私が、闘いに恐怖を感じるなんてね・・・。」ハハッ


五月雨「終わりです。」シュンッ


足柄 「バケモノ。」ニィ


ザシュッ



そして荒野は紅く染まる。


天龍 「なんだよ・・・これ。」


龍田 「演習場が真っ赤ね~。」アラアラ


榛名ミニ「これは流石に、ちょっと・・・。」ウワァ


五月雨「おや、皆さんお揃いで。どうかしましたか?」ニッコリ


天龍 「どうかしましたか?じゃねぇだろ。大惨事になってるじゃねぇか。ちゃんと生きてんだろうな、おい。」


五月雨「まぁ、かろうじて。ですが、那智さん以外のお三方は致命傷ですので、早く処置しないとまずいですよ。」


龍田 「あら、それは大変ね~。榛名ちゃん、手を貸してもらえるかしら~?」


榛名ミニ「そうしたいのは山々なのですが、今の私は妖精クオリティなもので・・・。」


五月雨「あ、羽黒さんは私が運びます。少し、話したいこともありますし。」ヒョイ


羽黒 「うぅ。」


龍田 「そう?じゃあ、私は足柄ちゃんを運ぼうかしら。」ウフフ


天龍 「つーことは俺が妙高かよ。」ハァ


妙高 「なんですか?その反応は。まるで、私が重いみたいな・・・。」


天龍 「おう、わかってんじゃねぇか。もうちょい痩せろよな。」グイッ


妙高 「このっ。というか、私は重症なんですよ?もう少し丁寧に扱って・・・。」


天龍 「お前が重いから引きずるしかねぇんだよ。」ズリズリ


妙高 「あなたっ。いったい私に何の恨みが!」クッ


天龍 「人の話を聞かねぇ奴の話なんざ聞いてやんねぇ。」ハッ


那智 「・・・放置プレイか。まぁ、悪くないな。」フッ


榛名ミニ「何を言ってるんですか。ほら、補助くらいはしてあげますから、しっかり歩いてください。」モウ


那智 「肋が折れている者に対して酷なことを言うものだ。」ゴフッ


那智 「・・・どうやら、肺に刺さったらしい。」フッ


榛名ミニ「台車持ってくるので休んでてください。」ヤレヤレ



自分だけの幸せを見つけたらいい。


足柄 「あー。酷い目に遭ったわ。」グデーン


那智 「そうか?私は中々に楽しめたが。」フッ


足柄 「肺に穴空けられといて何言ってるのよ。」


那智 「久し振りに昂ぶってしまった。お前もそうだろう?」


足柄 「・・・まぁ。否定はしないけど。」


那智 「そらみろ。」


足柄 「お姉ちゃんの悪いところが似ちゃったのよ!」フンッ


那智 「お前を産んだのは私ではないぞ。」


足柄 「先に産まれたのは事実でしょ。」


那智 「似た者姉妹だな。」フフ


足柄 「似たくない部分もあるけどね。火遊びが過ぎるところとか。」


那智 「鍛えてしまえば火傷なぞ・・・。何処かにこの身を焦がすほどの焔はないものか。」


足柄 「まだ遊ぶつもり?いい加減に落ち着いてよ。家庭は温かいくらいが丁度いいんだから。」


足柄 「家に帰る度に身を焦がしてたんじゃ、永続きしないわよ?」


那智 「私は別に家庭を持ちたいわけではないからな。ぬるま湯に浸かるのは、まだ先でいい。」


足柄 「あっそ。ま、那智姉にもいつかは落ち着く気があるってわかっただけ良しとしようかしら。」フゥ


那智 「は?」キョトン


足柄 「何よ。さっき自分で言ったじゃない。"まだ先でいい"って。それはつまり、将来的に結婚する意思はあるってことでしょう?」


那智 「そうか。・・・そう、だな。そのようだ。」


足柄 「自覚なかったのね。」ハァ


足柄 「今のうちにいい男見つけなさいよ?那智姉、遊び尽くした果てに凡庸な男とくっつきそうで心配だわ。」


那智 「未だ交際経験ゼロのお前に心配される筋合いは無いが。心に留めておくとしよう。」フッ


足柄 「あいっかわらず一言余計なのよね。こんちくしょー。」イラァ



自己分析を主観で行ったって意味はない。


妙高 「」ブッスー


天龍 「手酷くやられたなぁ。なぁ、妙高さんよぉ。」ニシシ


妙高 「冷やかしなら帰ってきただけますか?」


天龍 「別に、んなつもりはねぇよ。半分くらいしか。」


妙高 「そうですか。帰っていただけます?」ニコー


天龍 「まぁ、いいじゃねぇか。お前ら妙高型がこうも無様にやられるなんて、そんな機会滅多に拝めねぇんだからよ。」


妙高 「だからです!誇り高き妙高型が、あんな無様をっ!」ギリッ


天龍 「で、実際どうだったんだ?」


妙高 「・・・バケモノです。それ以外の言葉が出てこないくらいに、彼女の実力はバケモノ染みています。」


天龍 「そう・・・か。俺達だけじゃキツいか?」


妙高 「正直、厳しいと思います。龍田さんであれば、五月雨さんひとりを抑えることはできるかも知れませんが・・・。」


天龍 「他の連中を対処しきれないか。」


妙高 「第七駆逐隊の面々も、特殊な艤装を持っていると考えて対策を立てるのが無難でしょう。それに・・・。」


天龍 「あの白髪野郎が問題だな。見るからに只者じゃあねぇ。しかもだ。横に居た金髪と時雨、紫髪からもヤバい匂いがした。」


妙高 「キャパオーバーですね。」ハァ


天龍 「あいつらを呼び戻すしかねぇか。」ガシガシ


妙高 「あの方々を、ですか。それはまた・・・。」


天龍 「ああ。面倒なことになるな。」トオイメ



だって人は、あなたの内面を内側から見ることはできないのだから。


シャッ シャッ


羽黒 (何の音・・・?)パチクリ


五月雨「・・・こんなものでしょうか。」キラン


羽黒 「!?」


羽黒 (どうしてナイフを研いでるの~!?)ビクビク


サクッ


五月雨「おぉ~。これは中々。良い切れ味ですねぇ。」ニヤッ


羽黒 (ひぃ~!)ガタガタ


シャクシャク


五月雨「梨、うま~。」キラキラ


羽黒 「へ?」


五月雨「はい?」


羽黒 「今のは、その。山姥的展開なんじゃ?」


五月雨「あ、そっちのほうがよかったですか?」シャクッ


羽黒 「いえ、別に・・・。あの、私もひとつ貰っても?」


五月雨「はい、いいですよ。」ドウゾ


羽黒 「・・・。」


五月雨「食べないんですか?」ムグムグ


羽黒 (丸ごとひとつ貰っても・・・。)アハハ



受け入れ難きは信念の違い。


五月雨「まぁ、冗談はこれくらいにして。剥きますから、貸してください。」


羽黒 「あ、ありがとうございます。えと・・・。」


五月雨「私のことは五月雨でいいですよ。それから、敬語も不要です。」ムキムキ


羽黒 「うん。ありがとう、五月雨ちゃん。」


五月雨「お礼を言うのはまだ早いかも知れませんよ?私は、貴女のことが今のところ嫌いですから。」シレッ


羽黒 「そっか・・・。」


五月雨「ええ。味方の影に隠れて狙い撃つ戦法を否定するつもりはありませんが、姉妹を簡単に見捨てる貴女の性根には反吐が出ます。」


羽黒 「・・・。」


五月雨「だから私は、貴女を一番に狙ったんです。」ナシドウゾ


羽黒 「・・・。」シャクッ


五月雨「何か、言い訳のひとつでも無いんですか?」


羽黒 「言い訳というか・・・。姉妹って、そんなに大事かなって。」


五月雨「と言うと?」ヒクッ


羽黒 「私、孤児院の出だから、本当の姉妹なんて居ないの。それどころか両親だって居ない。ずっと、ひとりで生きてきた。」


五月雨「孤児院には仲間が居たんじゃないんですか?うちにも孤児院出身の娘達が居ますが、みんな仲良しさんですよ?」


羽黒 「それは特殊な例だよ。普通は、誰も助けてなんかくれない。みんな、自分が生きることに必死だから。」


五月雨「妙高型の皆さんもですか?」


羽黒 「ううん。お姉ちゃん達は違う。私のことを気に掛けてくれる。妙高お姉ちゃんは特に。」


五月雨「そんなお姉さん方を裏切って、貴女はどうともないと。」ジト


羽黒 「ないよ。」


五月雨「へぇ。」


羽黒 「私が一番欲しいのは家族の温もりじゃない。身の安全。私はね、艦娘になんてなりたくなかったの。」


羽黒 「特待生になって、大学の学費免除の資格を貰って、卒業して、そのまま普通に就職するつもりだった。」


羽黒 「だけど、孤児院に育ててもらった分は艦娘として働いて国に貢献しろって、強制的に徴兵されて・・・。」フルフル


羽黒 「冗談じゃない!」ダンッ


羽黒 「私は、自分の身を護るためだったら何でもする。何だって利用する。間違っても他人の為に自分を犠牲になんてしない。」


羽黒 「私の生を脅かす存在は消す。私以外の全てを犠牲にしてでも。それが、私の信念だから。」


五月雨「私とは真逆ですね。私は、家族の為なら全てを投げ出す覚悟をしています。」


羽黒 「別に、わかってほしいなんて思ってない。わかりたいとも思わない。だから、五月雨ちゃんの考え方を押しつけるのはやめてよ。」


五月雨「元よりそのつもりですよ。」シャクッ


羽黒 「え?」


五月雨「他人からどうこう言われたくらいで変わってしまう信念なんて、始めから無いのと同じです。」


五月雨「私はただ、確かめたかっただけです。羽黒さんがちゃんと自分だけの信念を持っているかどうか。」


五月雨「行動理念がころころと変わる人とは連携が取りにくいですからね。その点、羽黒さんはしっかりとした理念を持っていました。」


五月雨「まぁ、声を大にして褒められるようなものではありませんでしたが。いいんじゃないですか?それで。」


五月雨「命あっての物種とも言いますし。何より、自分を犠牲にしてまで助けられても、素直に喜べないですから。」


羽黒 「五月雨ちゃん・・・。」ジーン


五月雨「でもやっぱり羽黒さんのことは好きになれそうにないです。」ニッコリ


羽黒 「五月雨ちゃん・・・。」


龍田 「台無しね。」ヤレヤレ



蒼い髪に黒い外套・・・リ〇ルじゃねぇか。


五月雨「ま、羽黒さんの為人はわかりましたし。これで良しとしましょう。要は、羽黒さんを危険に晒さなければいいわけです。」


五月雨「蒼の貴公子と呼ばれるこの私にかかれば、娘っ子のひとりやふたり。華麗に護って魅せますとも。」フフン


羽黒 「どちらかと言うと死神のほうが・・・。」


五月雨「おっと、そこまでだ。」


龍田 「そうね~。貴公子はそんな大仰な鎌を振り回したりしないものね~。」ヒョコッ


五月雨「失敬な。背は低くても、これで結構かっこいいところあるんですからっ。」フン


龍田 「じゃあ、五月雨ちゃんの好きな色は?」


五月雨「黒です。」キリッ


羽黒 「だろうね。」アハハ


龍田 「何処が"蒼"なのかしらね~。」ウフフ


五月雨「・・・髪の色?」


羽黒 「演習のとき、蒼白く輝いてたよ?」


五月雨「何それ、かっこいい。」ワァオ



莫迦で天才なのさ。


龍田 「五月雨ちゃんったら、愈々普通の艦娘じゃないわね~。」


五月雨「それに関しては随分前に悟ったので置いといてください。」


龍田 「あら、そう?じゃあ、置いておくわね。」


羽黒 (いいのかな?それで。)


五月雨「で、何やらこそこそとやっていたようですけど。私に何か御用ですか?」


龍田 「あら~。五月雨ちゃんったら、何でもお見通しなのね。」ウフフ


五月雨「そうですとも。何なら、その内容まで中ててみせましょうか。」フフン


龍田 「虚勢を張りすぎると後悔するわよ~。」


五月雨「今将に後悔しているところですとも。」タラー


羽黒 「五月雨ちゃんって、時々天才なのか、ただの莫迦なのか、わからなくなるね。」


五月雨「はっは。言ってくれますねぇ。いいですよ。そういうの、大好きです。」グッ



負けないと勝てないは両立する。


龍田 「本題にいってもいいかしら~?」


五月雨「はい、なんでしょう。」


龍田 「第七駆逐隊の娘達に関してなんだけど。仮に妙高型と演習をしたとして、どっちが勝つかしら?」ジッ


五月雨「実際やったほうが早くないですか?それ。」


龍田 「まぁまぁ。いいじゃない、そこは。」ウフフ


五月雨「ん~。まぁ、そうですね。試合に勝って、勝負に負けるってところじゃないですか?妙高型が。」


龍田 「その心は?」


五月雨「七駆には物理攻撃が全く通じない肉壁が居ますから。」


・・・


ヘッブシ


朧  「」ブルッ


漣  「おう、どした。風邪か?」


潮  「この間、雪塗れになったから。」


曙  「だとしたら原因はあんたよ、姫百合。」


漣  「なら、龍驤ぱいせんも同罪だな。」


曙  「どう責任を取るつもりなのかしらね。」


漣  「人に風邪をひかせる。こりは高くつきまっせ~。」ヘッヘー


潮  「ご、ごめんなしゃい。」ヒグッ


曙  「冗談よ。これくらいで泣かないの。お姉ちゃんでしょ?」モウ


漣  「俺っちは結構まじで・・・。」


曙  「あ?」


漣  「にゃんでもな~い。」~♪


朧  「ぱぱん。」クイッ


黒霧 「どうしたの?」


朧  「パンツ、買う。」ウルッ


黒霧 「・・・眠、あとは任せるよ。」


時雨 「りょーかい。娘の危機を救ってらっしゃい。」


黒霧 「それじゃ。」シュバッ


イッテラー


時雨 「そういえば、にぃにってお金持ってるのかな。」ヒラヒラ


時雨 「ま、いっか。能力を使えばどうとでもなるだろうし。若し捕まったとしても元帥がどうにかするでしょ。」


近衛麗「権力の闇が見えるわ~。」



暑い今が汗をかくチャンスと考えるのは危険な思考だろうか。


五月雨「彼女は衝撃そのものを吸収してしまいますからね。砲弾が炸裂しなければ、数少ない弱点である火傷を負うこともありません。」


五月雨「そうなると残された攻撃手段は斬撃のみになるわけですが、この鎮守府でそれができるのは天龍型のおふたりだけですよね?」


龍田 「天龍ちゃんの日本刀は、殆ど飾りだけど・・・。剣術を修めているって意味では、そうね。」


羽黒 「でも、私達にはダメージを与える手段が無い・・・。」


五月雨「まぁ、その実あの四人は、艤装の扱いに関しては完全なる素人ですから。普通にやれば、まず負けることはないでしょう。」


五月雨「澪ちゃんの剛速球にさえ注意していれば。」ボソッ


龍田 「ふ~ん。それじゃあ、七駆の娘達は五月雨ちゃんのように特殊な艤装を持っているわけではないのね?」


五月雨「ええ。そうですよ?今のところは。」


龍田 「へぇ。」ピクッ


五月雨「明日か、明後日か。それがいつになるかはわかりませんが、此処に届く予定ですよ。彼女達の特別な艤装が。」ニパッ


龍田 「それは、頼もしい限りね~。」ウフフ


ウフフフフ


羽黒 (瞳が笑ってない・・・。)ダラダラ



SはSでも、どうしようもないS。


五月雨「そういえば、龍田さんは薙刀を使われるんですよね。」


龍田 「ええ、そうよ。試合、してみる?」


五月雨「天龍さんは刀を使うとか。」


龍田 「流されちゃったわ~。」アラアラ


羽黒 「こっち見ないでください。」サッ


五月雨「実はですね。私のお父さんも刀の使い手でして。相性はかなり良いと思うんですよね~。サディストですし。」


龍田 「天龍ちゃんはMじゃないわよ~。」


五月雨「だから良いんじゃないですか!お父さんは女性の泣き顔が好きなんです!」ムフー


羽黒 「えぇ・・・。」


龍田 「あら~。」ウフフ


五月雨「刀で興味を惹いて、鍛錬と称して虐め倒して、眼帯では留めきれなかった大粒の涙が零れる・・・。」


五月雨「最っ高じゃないですか!」クワッ


龍田 「この娘は一度、頭を取り替える必要があるようね。」スラッ


羽黒 「殺るなら外でお願いします。此処は病室なので。」



本命の前には初めてがある。


ガヤガヤ


鈴谷 「・・・。」ンー


オ コレカワイイ


鈴谷 「・・・。」クシクシ


ドウヨ コレ! スケスケジャナイノ! モドシテキナサイ!


鈴谷 「・・・。」チラッ


ヴー ヴー ピッ


鈴谷 「どったの?くまのん。」モシモーシ


熊野 『・・・何の為にふたりきりにしたと思ってまして?』


鈴谷 「いや・・・でも、何話したらいいかわかんないし。」コソコソ


熊野 『誕生日に血液型、好きな食べ物に味付け、これまでの交際経験やら女性に求めるものやら色々とあるでしょう?』


鈴谷 「見合いかよ。」


熊野 『似たようなものですの!』ワッ


鈴谷 「気合い入りすぎだよ・・・。」キーン


熊野 『いいこと、鈴谷。恋愛は情報戦です。今すぐ彼に話しかけて、何かしらの情報を引き出さないと・・・。』


鈴谷 「と・・・?」ミミイタイ


熊野 『学生時分に悪ノリして撮ったコスプレ写真をばらまきますわよ。』


鈴谷 「なんでそんな黒歴史をまだ持ってるのさ!?」


ブツッ ツー ツー


鈴谷 「切りおったぁ!!」ウガー



共通点があると話が続くよね。


鈴谷 「んもう。熊野ったら、スパルタなんだから。」トボトボ


近衛麗「ねぇ、パパ。こっちとこっちなら、どっちがいいかしら。」


鈴谷 「おっと。」サッ


黒霧 「蒼。」


近衛麗「即答ね。紫も色っぽくて良いと思うんだけど。」ウーン


黒霧 「麗は下着の色で底上げしなくても充分に魅力的でしょ?」


近衛麗「蒼にするわ。」


ジャ カッテクル


鈴谷 「ほ~。流石、手慣れてらっしゃる。でも、なんで蒼だったんだろ。」ノゾキ


黒霧 「僕の趣味。」


ウオッ


鈴谷 「あー、聞こえてた?」ヒョコッ


黒霧 「聞いてた。」ニッコリ


鈴谷 「そっか。」エヘヘ


鈴谷 「・・・青色が好きなの?」


黒霧 「好きだよ。透き通るような白も、妖しく煌めく紫も、淡く頼りない金色も。でも、一番好きなのは黒かな。」


鈴谷 「へぇ。だから服も黒一色なんだね。」マジマジ


黒霧 「黒は、あらゆる色が混じり合った色だからね。」フフ


鈴谷 「これ・・・さ。若しかして、手作りだったり?」


黒霧 「よくわかったね。君の言うとおり、全部僕のお手製だよ。」


鈴谷 「やっぱり!機械みたいに精密だけど、手縫いっぽい縫い目だな~って思ったんだぁ。」パァ


黒霧 「鈴谷も縫い物をするの?」


鈴谷 「うん!一から全部ってわけではないけど、フリルとか、ちょっとしたアクセントを付けたりしてるんだ。」ホラ コレ!


黒霧 「これは・・・中々やるね。」


鈴谷 「でしょ~。」ニシシ


黒霧 「灯が好きそうだ。」


曙  「あら、よくわかってるじゃない。父さんにしては。」


黒霧 「洞察力には自信があってね。」フッ


曙  「そこは家族だからって言いなさいよ、クソ親父。」



でっかいものクラブへようこそ。


黒霧 「お気に召すものはあったかな?」


曙  「どれもこれもまぁまぁね。」


漣  「よく言うぜ。サイズが無くて涙目になってたのは何処のどいつだよ。」


朧  「まだまだスポブラは卒業できないのよん。」ドヤァ


曙  「・・・私は、成長期。」グスッ


黒霧 「今度、僕が服を作ってあげるから。」ポム


曙  「うん。」ヒシッ


潮  「というか、サイズが無かったのはふたりも同じだったような・・・。」バーン


紫苑茜「此処、D以上の専門店みたいね。」ババーン


近衛麗「私は満足よ。」ムフン


漣  「これが格差かっ!」クッ


朧  「あと1ミリさえあれば!」クッ


ナンダト!!


曙  「もう父さんの作った服しか着ない。」ズーン


黒霧 「可愛いものを買い占めるのが夢じゃなかったの?」アハハ


曙  「変えたのよ。父さんに思いっきり甘やかしてもらうって夢に。」


黒霧 「それは夢でなく現実だよ。だから、元の夢を諦めちゃ駄目。灯には茜姉さんと同じ血が流れているんだから。」


黒霧 「ほら、見てごらん。希望しかないでしょ?外見だけは。」


曙  「・・・そうね。希望しかないわね。外見だけは。」


紫苑茜「中身はそっちに似たようね、このドSコンビが。」



だから写真は嫌いなのさ。


鈴谷 「熊野~。」ウワーン


熊野 「はいはい。よく頑張りましたわ、鈴谷にしては。娘さんに持っていかれるのは仕方ないですの。」ヨシヨシ


鈴谷 「私、頑張った~。」ウゥ


デ


熊野 「どんな情報を掴みましたの?」


鈴谷 「え?」


熊野 「まさか、ただ楽しくお喋りしていただけで何も聞きだせていないなんてことは・・・ないですわね?」ゴゴゴ


鈴谷 「も、もっちろ~ん!裁縫が趣味だって、バッチリ聞きだしたもんね~!」フンス


熊野 「他には?」


鈴谷 「へ?」


熊野 「他には?」ニッコー


鈴谷 「」ダラダラ


熊野 「これは、お仕置が必要ですわね。」


鈴谷 「待って!あれだけは!あのイタイ写真だけはご勘弁を~!!」ヒシッ


熊野 「問答無用ですわ。」フフ


イヤアアアア!



何でもは知らない。知ってることだけ。by Tsubasa


鈴谷 「何とぞ・・・何とぞ・・・。」ウゥ


熊野 「もう、冗談ですわ。言ったでしょう?鈴谷にしてはよく頑張ったと。」


鈴谷 「ほんとに?」グスッ


熊野 「本当です。」


鈴谷 「ほんとのほんとに?」


熊野 「本当に本当です。しつこいですわね。」


時雨 「話は終わったかな。」ヌッ


ヒャァ!


時雨 「あはは。期待どおりの反応をありがとう。」フフ


鈴谷 「心臓止まるかと思った。」フー


熊野 「いったい、いつから其処に・・・。」


時雨 「始めから居たよ?君達、もう少し周りに気を配ったほうがいいんじゃない?」


鈴谷 「今のは気を配ってどうにかなるものじゃなかったような。」


時雨 「それはいいとして。」


イインダ


時雨 「にぃにの何が知りたいのかな?」ニッコリ


鈴谷 「教えてくれるの!?」


時雨 「勿論。ボクが知っていることであれば、だけどね。」


鈴谷 「じゃあ、好きな食べ物は!」


時雨 「知らない。」ニコニコ


鈴谷 「なら、血液型は!」


時雨 「血の通っていない人の血液型を訊いたって何にもならないよ。」ニコニコ


鈴谷 「・・・女性の趣味は?」


時雨 「直接訊けば?」ニコー


鈴谷 「それができないから訊いてるのに!!」



知っているからこそか、何も知らないのか。


時雨 「でも、最後の質問については、わからなくもない・・・かな。」


熊野 「わからなくもない?」


時雨 「ボクの主観でいいならってことだよ。にぃには自分のことを殆ど話さないからさ。何を考えているかもよくわからないし。」


鈴谷 「それでもいいから!とにかく教えて!」ズイッ


時雨 「近い・・・。」


ア ゴメン


時雨 「にぃにが恋愛感情を抱いているであろう女性は、ボクが知る限りで5人。」


時雨 「豪快な阿呆に、明るい阿呆。ツンデレ美人に、大人美人。そして、お淑やかで優しい姉さん。」


時雨 「この5人全員に共通する特徴はひとつだけ。それは・・・。」


鈴谷 「それは・・・?」ゴクリ


時雨 「みんな、じょせ・・・。」


日陰 「初恋なんだよ。」


・・・エ?


日陰 「だから、初恋の相手が時雨くんなの。それがず~と続いてる。ま、一途ってやつだよね。」


日陰 「時雨くんは変わった律儀さんだからさ。向けられた愛情には、ちゃんと愛情で応えてくれるよ。ていうか、眠ちゃん今・・・。」


時雨 「間違いじゃないも~ん。みんな女性だも~ん。」イー


鈴谷 「鈴谷、もうこの娘には頼らない。」


熊野 「賢明な判断ですわ。」



日頃の行いって大事ね。


熊野 「ところで、貴女はどちら様ですの?」


日陰 「私?そうだなぁ。私は・・・。」ポクポク


日陰 「おっ。」チーン


日陰 「時雨くんの子供を産んだ女です。」ニヒッ


鈴谷 「奥さん!?そういえば、透き通るような白も好きって!」ハッ


日陰 「あぁ、違う違う。その白は別の娘。私と時雨くんは、全然そんな関係じゃないから。」アハハ


熊野 「つまり、元奥様ですの?」


日陰 「それも違う。里の掟でね、本当にただ子供を産んだって事実があるだけ。幼馴染みみたいなものだよ。」


熊野 「恋愛において、幼馴染みというのは相当な利点でしてよ。」


日陰 「そうかな?素の自分を見せられるから楽ってだけじゃない?」


熊野 「結局、側に居てほしいと思うのはそういう人ですわ。」


日陰 「へぇ。それが君の理想なんだね。」ニヒヒ


熊野 「口が滑りましたわ。///」プイ


鈴谷 「そっか。今まで付き合った男はみんな、くまのんに夢を見てたから。御嬢様を演じるのに疲れたんだね、くまのん。」フ


熊野 「憐れみの瞳を向けるのはやめてくださいまし。それから、"庶民が夢見る御嬢様"を演じるのに疲れただけですの。」


熊野 「そこのところ、間違えてもらっては困りますわ。」フン


時雨 「御嬢様ってめんどくさ~い。」


鈴谷 「ひっど~い。それじゃあ鈴谷も面倒くさい娘になっちゃうじゃん。」ブー


時雨 「はぁ?」


鈴谷 「いや、そんな何言ってんの?みたいな顔しないでよ。鈴谷、ちゃんと良いとこの出だから。世間一般には御嬢様だから。」


時雨 「頭でも打ったの?」


鈴谷 「全然信じてくれないよぉ!」ウワァン


熊野 「日頃の行いの所為ですわ。淑女としての振舞いを身につけてくださいまし。」ハァ



型の優劣はよくわかりません。


セイッ ヤァッ


五月雨「ふー。・・・暇だ!」クワッ


五月雨「道場があったので、お父さんに教えてもらった組み手をやってはみるものの・・・。」シュッ ダン


五月雨「ひとりでは型しかできませんし。」フー


五月雨「良い汗はかけますがっ。」ダン


五月雨「・・・物足りませんね。」フゥ


パチパチ


那智 「見事な型だ。いったい誰に教わった?」


五月雨「那智さん。もう大丈夫なんですか?右半身の肋骨は全て叩き折ったはずですが。」


那智 「大丈夫なわけがあるか。足柄が寝てしまったのでな。暇つぶしに出てきただけだ。で、誰に教わった?」


五月雨「やけに拘りますね。そんなに私の型が気になりますか?」


那智 「・・・ああ。それは、私の恩人が使っていた型だからな。」


五月雨「恩人、ですか。」


那智 「私は元々陸の軍人でな。嘗て深海棲艦の襲撃に遭ったとき、当時の上司に命を救われた。」


那智 「口数は少なく、背中で語る男だったよ。私の憧れだ。」


五月雨「」ハーン


那智 「全く女として扱われなかったことは癪だったがな。軍人として彼ほど尊敬できる者は居ない。」フッ


五月雨「」フーン


那智 「私が艦娘になった理由も彼だ。海軍に引き抜かれたと噂で聞いて、私は艦娘になった。」


五月雨「」ホーン


那智 「未だ再会は果たせていないが、いつかまた彼の下で働いてみたいと思っている。」トオイメ


五月雨「憧れの上司・・・。似合わない真似しちゃって、まぁ。」ヤレヤレ


那智 「何か言ったか?」


五月雨「いえ、何も。取り敢えず、一本お願いします。」スッ


那智 「無茶を言うな。本来私は床に伏せている身なのだぞ。」オイオイ


五月雨「それを自覚しておきながらも此処に来たということは、つまりそういうことなのでしょう?」


五月雨「付き合ってあげますから、さっさとかかってきてください。」ホレ


那智 「・・・ふっ。何故だろうな。お前を見ていると、彼を思い出す。」


那智 「一本、付き合い願おう。」スッ


五月雨「床に送り返してやりますよ。」ヘッ



明日は運命の日さ。


クァ~


足柄 「よく寝た~。」ノビー


フゥ ・・・ン?


那智 「Zzz」ボロッ


足柄 「なんで病室に居て傷が増えてるのよ・・・。」エェ


黒霧 「五月雨と組み手をしていたみたいだよ。」


足柄 「」ビクッ


黒霧 「傷が治りきっていないのに無茶をして。あの頃から全く成長していないじゃないか。」ソッ


足柄 「帰ってたのね。というか、那智姉のこと知ってるの?まさか、昔の男とかじゃ・・・。」


黒霧 「そう見える?」


足柄 「何とも言い難いわね。那智姉は見境が無いから。綺麗な顔してるけど、趣味じゃないだろうし。」ンー


黒霧 「綾の口癖は、"強い男以外に興味はない"だからね。」フフ


足柄 「アヤ・・・?あ、那智姉の名前か。すっかり忘れてたわ。」


黒霧 「姉の本名を忘れるだなんて、随分と薄情だね、"海波 琴"上等。」


足柄 「あんた、まさか・・・。」ウゲッ


黒霧 「元舞鶴憲兵隊隊長・黒霧時雨。海軍でも君の上司になる。これから"も"よろしく頼むよ、琴。」ニィ


足柄 「はは・・・。御免被るわ、鬼仮面。」



パンデミックは止まらない。


足柄 「はぁ。仮面の下にこんな綺麗な顔を隠してただなんて・・・。詐欺よ、詐欺。」ハッ


黒霧 「当時は陰で随分と好き勝手言ってくれたみたいだね。全部、僕の耳に届いていたよ?」


足柄 「まことにもうしわけございませんでした~。」


黒霧 「誠意が感じられないな~。」ウリウリ


足柄 「じゃあ、この身体を好きにすればいいじゃない。髪以外の所だって弄ればいいじゃない。」ホラッ


黒霧 「鏡見て出直してきなよ。」ニッコリ


足柄 「ムカつくっ!」


プフッ


足柄 「那智姉、起きてたの。」


那智 「いや、すまん。もう少し、ふたりの時間を楽しませてやろうと思ったのだがな。堪えきれなかった。」フフッ


足柄 「やめてよ。こんな奴とふたりだなんて、吐き気がするわ。」


那智 「何を言う。皆がお前達の関係を勘違いするくらいに仲睦まじかったではないか。」


足柄 「それは、こいつがウザ絡みしてきただけで!」


黒霧 「君が上官に対して全く敬語を使わないからだよ。」


足柄 「あんたが敬意を払うに値しないからよ!毎回毎回、会う度に女らしさが感じられないだの、胸につけたそれはただの重りかだの!」


足柄 「あーあー、お相手に苦労しない美男子はいいですこと!何もしなくても女が群がってくるものね!」フンッ


黒霧 「これは、随分と嫌われたものだね。」ハハ


足柄 「嫌われない道理が何処にあるのかしら。」アァ?


黒霧 「でも、その悔しさが自分磨きの糧になったでしょ?」


足柄 「は?」


黒霧 「莫迦にされて悔しくて、綾に追いつくことだけを考えていた君に、君だけの目標ができたでしょ?」


足柄 「それは・・・まぁ。」


黒霧 「綺麗になったよ、琴。」フフ


足柄 「・・・どうも。」フイ


黒霧 「改造手術の御蔭かな?」


足柄 「やっぱりぶっとばーす!!」ウラァ!



夢破れ猶我が道を往く。


黒霧 「はい、どーどー。」ガシッ


足柄 「くっ!この!頭を抑えるなぁ・・・!」グギギ


那智 「懐かしい光景だな。相変わらず、お前は腕が短い。」フッ


足柄 「そう見えるだけよ!肩を並べたら、こいつとも大差ないから!」ホラッ


那智 「良い画だ。タイタニックを彷彿とさせる。」フム


足柄 「やめてよ。そんな不吉なこと言うの。それから、しれっと腰に手を回すな。」コラ


黒霧 「琴、君さ。一度太って痩せたでしょ。」サワサワ


ギクッ


足柄 「そ、そんなわけないじゃない。私を誰だと思ってるのよ。」ダラダラ


黒霧 「急激に身体を絞ると、皮膚が体型の変化に対応できずに抓めるようになるんだよね。こんな風に。」ムニッ


足柄 「ひぅ!///」ビクッ


那智 「なんだ。そんな声も出せたのか。」ホウ


足柄 「てんめぇ・・・。」ワナワナ


黒霧 「どうせ揚げ物ばかり食べて太ったんでしょ?君は欲望に忠実だから。」ハァ


足柄 「別にいいじゃない。最終的には痩せたんだし。」フン


黒霧 「元には戻れてないだろうに。まったく、君は努力家なくせに雑でいけない。折角、綺麗な身体をしているのに。」ヤレヤレ


足柄 「綺麗な身体とか言わないで、いやらしい。だいたい、あんたにとやかく言われる筋合いは無いんだけど。」


那智 「確かにそうだな。前々から不思議だったのだ。私の誘いは突っぱねるのに、足柄に対しては自ら関わりにいくだろう?」


那智 「何か、特別な理由でもあるのか?」


黒霧 「さぁ?姉さんに似てるからじゃないかな。琴を見ていると、世話を焼いてあげたくなる。」ポム


足柄 「手を頭に乗せるな。」


黒霧 「振り払わないところ、嫌ではないみたいだね。」サラッ


足柄 「ちょっ!!///」バッ


那智 「どうした。お前は撫でられ慣れているだろう。私とは違って。」


足柄 「そうだけど!今、変な触り方した!」


黒霧 「普通にしたつもりだけど・・・。」ウン?


足柄 「あれが普通なわけないじゃない!あんな優しい触り方、今まで一度も・・・!」ハッ


那智 「ときめいたか?」ニヤニヤ


黒霧 「うっかり姉さんを撫でる感覚でやってしまったみたいだね。ごめん、本意ではないから。」ニコリ


足柄 「・・・ショックなんて受けてないもんね!」フンダ



それで付き合っていないだと!?


那智 「お前達の不思議なところは、派手に言い合いをした後にも拘わらず、平然と一緒に居るところだな。」


黒霧 「僕は別に、そうしたいわけではないけどね。」ペラッ


足柄 「ほんとムカつく。」チッ


那智 「とても、男の胸に背を預けている女の科白とは思えんな。」


足柄 「楽なのよ。こいつの前では女を飾る必要がないし。言いたいことが言えるからスッキリするし。」


黒霧 「僕を日頃のストレス発散に使わないでおくれ。」ペラッ


足柄 「そのストレスの原因もあんたよ、ばーか。」


黒霧 「だったら近づかなければいいのに。」


足柄 「そうしたくても近づいてくるじゃない、あんたが。だから寧ろこっちから行ってあげてるの。」


黒霧 「なるほど。抱き締めてあげようか。」


足柄 「勘弁して。」


那智 「・・・やはり、私が入り込む余地は無いか。ところで、さっきから何を読んでいるのだ?」


黒霧 「過去の報告書。五月雨からある程度は聞いたけど、君達の戦い方を引き出す前に終わらせてしまったみたいだから。」


足柄 「そう、あの娘!何なの?あんなバケモノが居るだなんて聞いてないんだけど。」


黒霧 「まぁ、僕の娘だからね。」


足柄 「納得したわ。」


那智 「舞鶴の真宵烏の遺伝子は確実に受け継がれているらしい。」フッ



魅せられるほどのものでもないだろうに。


パパー?


近衛麗「んもう。何処に行ったのかしら。今夜は一緒に寝てくれるって言うから、序でに昼寝にも付き合ってもらおうと思ったのに。」ムー


近衛麗「ちょっと、パ・・・。」ピタッ


天龍 「」ジー


近衛麗「覗きは犯罪よ?」


天龍 「!」ビックゥ


天龍 「べ、別に覗いてなんてねぇよ!」バッ


近衛麗「ばっちり覗いてたじゃない。私の大きな独り言にも気づかないくらい熱心に。」


天龍 「ちげぇよ!俺はただ・・・。そう!あいつを監視してただけだ!」


近衛麗「監視・・・ねぇ。」ヘェ


天龍 「ぐっ。だって、気になるだろ。過去の資料を見せろって言われて、そのまま資料室で見ればいいものを態々別の部屋に移動して。」


天龍 「自分の部屋に戻るのかと思えば、病室に入っていったんだぞ?それであの有様だ。あんな足柄見たことねぇよ。」


近衛麗「ふ~ん。」チラッ


足柄 「やっぱ、あんたの体温は心地好いわ。夏はひんやりして、冬は暖かで。最高よ、枕としては。」ウトウト


黒霧 「せめて生物として扱ってほしいものだけど。ゆっくりおやすみ、永遠に。」フフ


足柄 「今、いい感じに眠気がきてるから、目が覚めるようなこと言わないで・・・。」Zzz


近衛麗「私も交~ざろ。」ガチャ


天龍 「おい!?」


パパー オヤ イラッシャイ


天龍 「なんで、そんな簡単にこの状況を受け入れられるんだよ。俺か?俺がおかしいのか?」


龍田 「天龍ちゃんは割と昔から可笑しかったわよ~。」ウフフ


天龍 「トドメをありがとうよ!チクショウが!」ブワッ


ツーカ ナンカチガクネ? ソウ?



欲望全開ですね。


近衛麗「Zzz」スー


足柄 「Zzz」クー


那智 「懐かしいな。この光景も。」フ


黒霧 「非番のときは、よく枕にされていたよ。」フフ


那智 「言うまでもないだろうが、足柄はこれで貴方を慕っている。この先も、足柄をよろしく頼む。」スッ


黒霧 「僕が此処に居る間は・・・ね。」


那智 「つれないな。私としては、さっさと娶ってもらったほうが色々と都合が良いのだが。」


黒霧 「それはねと・・・。」


那智 「違う。貴方の中で私のイメージはどうなっているのだ。」ジト


黒霧 「淫魔。」


那智 「どストレートだな。」


黒霧 「引き際を弁えている分、麗以上に質が悪い淫魔だ。」


那智 「二度も言うな。貴方に言われると、流石に傷つく。」


黒霧 「一応、褒めたつもりなんだけど。」


那智 「感性が特殊すぎる・・・。」


天龍 「なぁ、俺達あんな奴の下につくのか?」


龍田 「いいじゃない。実力"だけ"は本物なんだし。私達の目的を果たすために、それ以外の要素は必要ないわよ。」



態度は一律にしたほうが都合が良い。


天龍 「ちょっと待て。なんでお前があいつの実力を知ってんだ?」


龍田 「なんでって、そりゃ。彼、"舞鶴の真宵烏"だし?」


天龍 「なん・・・だと。」


龍田 「天龍ちゃん、彼のファンだったわよね~。」


天龍 「いつからだ。いつから気づいてやがった。あいつが、舞鶴の真宵烏だって・・・。」


龍田 「最初から。素顔こそ知らなかったけれど、あの白髪と気配で大方予想はついてたわ。」


天龍 「だったら、どうして教えてくれなかったんだよ。俺、散々失礼なことを・・・。」


龍田 「面白かったから?」


天龍 「ちっくしょー!!」ウガー


龍田 「あらあら~。」ウフフ



苦内か苦無か。


天龍 「真宵烏さん!」バァン


黒霧 「五月蠅い。」


天龍 「すんません!」


ヒュカッ


黒霧 「だから、五月蠅い。麗と琴が起きる。」オォォ


天龍 「すんません・・・。」ヒィ


那智 「ほう。久し振りに見たが、流石の苦無捌きだな。」フッ


龍田 「刀だけじゃなく、暗殺道具まで使えるのね。」


黒霧 「僕の本業は暗殺だからね。この刀も、実は殆ど抜いたことないし。」


天龍 「え・・・。」


黒霧 「始祖様の魂が封じられているから手放せないだけで、正直なところ邪魔なんだよね、これ。」


天龍 「えぇ・・・。」ガーン


那智 「そういえば、抜いているところを見たことがないな。」


龍田 「残念だったわね、天龍ちゃん。彼に憧れて剣術を始めたのに。」アラアラ


天龍 「くそぅ。剣を教えてもらえると思ったのに・・・。」ズーン


黒霧 「それは別に構わないよ。」


天龍 「は?」


黒霧 「刀を使わないとは言ったけど、使えないとは言ってないでしょ?剣術指南くらい、付き合ってあげるよ。」


天龍 「本当か!」パァ


ヒュカッ


黒霧 「ふたりが起きたらね。あと、五月蠅い。」ニコニコ


天龍 「あい、すんません。ありがとうございます。」ヒッ



振り回されるオチが見える。


足柄 「・・・寝すぎた。」クラクラ


近衛麗「夜、ちゃんと眠れるか心配だわ。」フゥ


足柄 「あいつを枕にすれば大丈夫よ。」


近衛麗「駄目よ。今夜は私の番だし、寝ないなら寝ないでやることあるし。」


足柄 「・・・あんた、あいつの娘なのよね?」


近衛麗「そうだけど?何か問題でも?」


足柄 「・・・。」エェ


黒霧 「琴がもの凄い顔でこっちを見てるけど、無視して始めようか。」


オラ ムシスンナー ハイハイ


黒霧 「で、どうして君が此処に居るのかな?」


時雨 「やだな~。ボクがついてきた理由、もう忘れちゃったの?思い出させてあげようか?物理的に。」ニコニコ


マァ イイヤ テメェ・・・


黒霧 「剣術指南を始める前に、言っておくことがひとつ。刀は実戦で用いるには些か重い。」


黒霧 「改造手術を受け、筋力が向上しているとはいえ、元が非力の君達には負担が大きい。だから・・・。」


時雨 「だから?」


黒霧 「脇指ないし、短刀で我慢しなさい。」


天龍 「え~。俺、太刀がいい~。」ブー


黒霧 「君が紅蓮と同じくらいの体格になったら考えてもいいけど、君にゴリラと呼ばれる覚悟はあるのかな?」ニコォ


天龍 「短刀にします。」ハイ



このコンビが好きさ。


時雨 「ここでちょっと待った~。」ヘーイ


黒霧 「刀が要らないって話なら後でね。」


時雨 「な~ぜ、わかった。」


黒霧 「こっそり練習してるの知ってるから。"糸"を武器にしたいんでしょ?」フフ


時雨 「バレてたか。」チッ


黒霧 「そっちは僕よりも適任が居るから、彼に任せるとして・・・。」ズイッ


時雨 「な、何さ。」チョット


黒霧 「接吻は恩恵を授ける必要条件であって、十分条件ではないからね。僕の意識がないときにしても無意味だよ。」ボソッ


時雨 「んなっ!///」カァ


黒霧 「よかったね、あのとき僕が気づいて。でないと、ただ"した"だけになってたからね。」ニコリ


時雨 「あれはそういう練習だもんね!別に、こっそり能力を身につけて驚かせようだなんて思ってないもんね!」フン!


黒霧 「寒い演技をありがとう。」


時雨 「ま、後半の一部は本音なんだけど。実際さ、色仕掛けを暗殺に使うことなんてあるの?」


黒霧 「自分の魅力に自信を持てる人は使ったりもするかな。僕は使わないけど。」


時雨 「へぇ。自信ないんだ。」


黒霧 「僕は気づかれる前に狩るタイプだから。」


時雨 「あっそう。」


黒霧 「君は油断させて狩るタイプだよね。」


時雨 「よく御存知で。」ケッ



小太刀二刀:回転剣舞


黒霧 「というわけで、眠は糸の基礎を、天龍は小太刀の立ち回りを固めていくようにしようか。」


天龍 「え?短刀じゃないのか?」


黒霧 「太刀がいいんでしょ?僕からのちょっとしたサービスだよ。」フフ


天龍 「おぉ!」キラキラ


時雨 「最初からそのつもりだったくせに。」ボソッ


黒霧 「聞こえてるよ。」


時雨 「聞こえるように呟いたんだよ~。」ニコニコ


デ


黒霧 「天龍の相手役は麗にお願いするよ。」


近衛麗「え~。」


黒霧 「小太刀の扱いは昔仕込んだでしょ?」


近衛麗「そういう問題じゃな~い。面倒くさ~い。」ヤーア


黒霧 「御礼はするから。」


近衛麗「私に任せなさい。」ムッフー


足柄 「チョロいわ・・・。」ウワァ



今夜はきっと好い風がふく。


時雨 「でもさ。糸の指南はにぃにより適任が居るんでしょ?にぃには何をするのさ。」


黒霧 「何もしない・・・と言うよりは、できないと言ったほうが正しいかな。」スラッ


時雨 「何故、刀を抜く・・・?」


黒霧 「これから入れ替わるから。ちゃんと言うことを聞くんだよ?」フフ


ザシュッ


時雨 「なっ!?」


足柄 「何やってんの!唐突に切腹なんて笑えないわよ!」バッ


バチィ イッタ!


黒霧?「烏羽玉に触れるな。これは持ち主を選ぶ妖刀。気安く触れれば、怪我では済まんぞ。」ユラッ


足柄 「先に言いなさいよ!ていうか、あんた誰。」キッ


黒霧?「そう睨むな。少なからず、想いを寄せている相手なのだろう?」フフ


足柄 「親戚の兄貴くらいにはね!」フン


黒霧?「なんだ。恋慕の情はないのか?つまらん。」


足柄 「こいつっ。」イラァ


時雨 「はいはい。一旦、抑えて。」ドードー


時雨 「で・・・。誰だ、貴様。」オォォ


黒霧?「いい殺気だ。俺の弟子となるからには、この程度できてもらわねば困るが。」フッ


時雨 「はぁ?」


黒霧?「俺の名は・・・そうだな。"夜風"とでもしておくか。」フム


夜風 「俺は"黒霧 夜風"。全ての黒霧の父にして、暗殺術の基礎を築き上げた者だ。」ニィ


時雨 「ということは・・・。」


夜風 「簡単に言えば、黒霧の始祖だな。」


時雨 「あんにゃろう、説明もなしに引っ込みやがって。後で組み手に付き合わせてやる。」チッ



まんま転〇ラなのは気にしない方向で。


夜風 「早速で悪いが、糸の指南といこう。烏羽玉の封印の所為で、永くは入れ替わってられんのでな。」


時雨 「お願いします。」


夜風 「まず、お前は糸について何処まで理解している?」


時雨 「力の籠め方次第で形状を変化させられることくらいかな。蜘蛛の巣みたいに編み込むことはできるよ。」ホラ


夜風 「器用だな。独学で"蜘蛛の巣"を習得するとは、中々に見所がある。」


時雨 「それはどうも。」


夜風 「どうやらお前には手取り足取り教える必要はなさそうだ。基礎を仕込んでやるから、後は独学で伸ばせ。」


時雨 「あいさー。」


夜風 「いやに素直だな。」


時雨 「時間がないって言ったのはそっちでしょ?合わせてあげるから、さっさと進めて。」


夜風 「そうか。では、糸の基礎知識から仕込むとしよう。」


夜風 「糸には基本の型が二種類ある。耐久性に優れる"鋼糸"と、伸縮性に優れる"念糸"だ。」


夜風 「鋼糸は、わかりやすく言えば"ワイヤー"だ。同義と理解して構わん。主な用途は、即席の足場くらいか。」


時雨 「それなんだけどさ。径を細くして"斬糸"として使えないの?何度か試したけど、全然できなくて。」


夜風 「編み込めば別だが、爪と同じ感覚では無理だぞ。軽すぎて風に靡くからな。」


デスヨネー


夜風 「次に念糸だが、言うなればこれは"ゴム"だな。形状記憶の性質を有している。気分はス〇イダーマンだ。」


夜風 「ある程度の粘着性もある。拘束用にはもってこいだ。何せ、力ではまず引きちぎることができんからな。」


時雨 「説明してもらっておいて何だけど、ボク鋼糸しか使えないっぽいんだよね。」


夜風 「・・・そうか。糸の真髄は"念鋼糸"にあるのだがな。」


時雨 「念鋼糸?」


夜風 「鋼糸と念糸の性質を併せ持つ糸だ。鋼糸単体では不可能だった壁面への接着や、射出後の軌道操作が可能になるが・・・。」


時雨 「それって、こういうの?」シュッ


ビィン


夜風 「それだな。」


時雨 「これ、念鋼糸だったんだ。」フーン


夜風 「自力で念鋼糸の生成までものにしてしまうとは、本当に大したものだ。ならば、実戦でより磨きをかけてもらうとしよう。」ニィ


時雨 「やっぱりそうなるんだ。」ヤレヤレ


夜風 「"ならう"には、人に教わるという意味だけでなく、模倣するという意味もあるのだ。見て盗め、そして己の業にしてみせろ。」イクゾ



実力がなければ、巫山戯る余裕なんてあるはずがないのさ。


近衛麗「それじゃ、こっちも始めましょうか。」


天龍 「うーい。」ブー


近衛麗「そんなに嫌そうな顔をしないでもらえる?私だって嫌なんだから。」


天龍 「それなら向こうが終わるまで待ってようぜ。真宵烏に教わるってことに意味があるんだからよ。」


近衛麗「そうもいかないわ。パパが私に任せてくれたんだもの。まずは私の下で最低限の動作を身につけなさい。」


天龍 「へーい。」


近衛麗「あんた、若しかして私の実力を疑ってる?」


天龍 「・・・まぁな。」


近衛麗「へぇ。だったら、模擬戦から始めましょうか。」


天龍 「おう。いいぜ。」ヘッ


近衛麗「白兵戦に特化した近衛で、性格破綻者にも拘わらず部隊長に任命された私の実力・・・存分に魅せてあげるわ。」ニィ


天龍 「・・・これは、やっちまったか?」ハハッ



甲子園につれてって。


天龍 「」チーン


近衛麗「どんなもんよ。」ムフン


龍田 「あら~。天龍ちゃん、剣術"だけ"は確かな実力を持ってるのに~。」


龍田 「これは、予想以上ね・・・。」ギリッ


足柄 「ねぇ、たっちゃん。」


龍田 「あぁ?」ギロリ


足柄 「うっ。急に素を出さないでよ。あいつほどじゃないけど、貴女も、その・・・恐いんだから。」


龍田 「ごめんなさい。余所者に主導権を握られると思うと、苛立ちが抑えられなくて。」クシャ


足柄 「余所者か。私と那智姉にとって、あいつは身内みたいなものだから、あまり抵抗はないんだけど・・・。」


龍田 「此処は、あの人と私達で護ってきた場所。たとえ誰かの手を借りるとしても、私達が護らないと駄目なの。」


龍田 「護ってもらったじゃ・・・駄目なのよ。」


近衛麗「それに関しては心配要らないわよ。」


龍田 「」ジトォ


近衛麗「貴女、威圧感だけならパパ並みね・・・。」


龍田 「」フン


近衛麗「まぁ、いいわ。私もパパも、他人のために命を張ったりしないから。そこだけは間違えないでちょうだい。」クルッ


近衛麗「ほら、起きなさい!」ベシッ


天龍 「ぶっ。」アダ


イッテェナァ ツヅキヲヤルワヨ



他人に影響されたと思われたくない。


龍田 「他人のために命を張らない。そこのところ、どうなの?」チラ


足柄 「それが誰のためだったかは知らないけど、命は張りまくってたと思うわよ。」


足柄 「憲兵のくせに海に出て、血塗れになって帰ってきてたもの。もう何度シバき倒したか。」フゥ


龍田 「・・・足柄ちゃん。あなた、彼とどういう関係?」


足柄 「どういうって、枕にしたりされたり、撫でられたり、料理を作ってもらったり、あとは・・・。」


龍田 「わかった。もういいわ。」


足柄 「え~。これから愚痴が始まるのに~。」ムー


龍田 「ともかく、彼のことは足柄ちゃんに任せるわ。五月雨ちゃんは私が。あの金髪ちゃんは天龍ちゃんね。」


足柄 「それって、四六時中あいつの傍らに居ろってこと?絶対に嫌なんだけど。」


那智 「何を今更。同衾も混浴も済ませた身で、何を躊躇うことがある。」ガラッ


足柄 「那智姉・・・。」ゲッ


龍田 「那智ちゃん、もういいの?」


那智 「ああ、完治こそしていないが、日常生活に支障はない。」


足柄 「ちゃんと治してから来なさいよ。」


那智 「ひとりは寂しいのだ。付き合え、琴。」フッ


足柄 「本名呼びはやめて。今は妙高型四姉妹でしょ。」


那智 「しかし、あの方は本名呼びだろう?」


足柄 「だから嫌なのよ。」


那智 「そうか。あの方だけの特別がいいのだな。」フム


足柄 「ああ言えばこう言う。」クッ



しつこいようだが、よく見た!


那智 「まぁ、なんだ。そろそろ、はっきりさせておいてもいいんじゃないか?」


足柄 「何をよ。」


那智 「お前があの方に対して抱いている情の種類をだ。端から見ている限りでは、通じ合った恋人にしか見えんぞ。」


足柄 「だとしたら屈辱の極みよ。」フン


那智 「よく言う。先程まであの方の胸を枕代わりに寝息を立てていたのは何処の誰だったか。」


足柄 「それはそれ。これはこれ。恋愛感情がないからこそ、そういうことができるの。」


足柄 「本当に好きな相手だったら、緊張して安眠なんてできないわよ。」


那智 「それはそうかも知れんが。好きでもない相手の胸を枕にするか?普通。」


足柄 「まさか那智姉に普通を語られるとはね・・・。というか、別にあいつのことを好きじゃないなんて言ってないでしょ?」


那智 「何・・・?」


足柄 「あいつのことは好きよ。包容力あるし、近くに居ると安心するし。勿論、条件つきで。でも、恋愛対象にはならないわ。絶対に。」


足柄 「あんな人格破綻者と恋人になったら、ストレスで胃に穴が空くわよ。」ハッ


那智 「そうか。何と言うか、あれだな。勿体ないな。」


足柄 「なら那智姉にあげるわよ、あいつ。」


那智 「お前に譲られるのは癪に障る。それに、どのみち私は相手にされんさ。あの金髪娘のようにな。」


近衛麗「何か言ったかしら!」クワッ


天龍 「隙あり!」ウリャッ


近衛麗「あんたがね!」バコッ


ガッ


天龍 「容赦ねぇ・・・。」ピクピク



やるからには全力で。


時雨 「う、動けん。」プルプル


夜風 「"傀儡糸"といってな。相手の神経に接続して、傀儡のように操ることができるのだ。」フッ


時雨 「ボクに使えない糸を披露して、自慢なのかな?」ニッコリ


夜風 「使えないとは悪い冗談だな。黒の恩恵は、肉体か知覚機能にしか効果が及ばないはず。貴様のその能力、恩恵ではないだろう。」


時雨 「・・・は?」


夜風 「まぁ、深いことは訊かん。黒のことだ。またややこしいことに首を突っ込んでいるのだろうよ。」クフフ


時雨 「いや、待って。勝手に納得しないでちゃんと説明して?ボクの能力が、何だって?」


夜風 「さて、そろそろ時間だ。糸の基本は今見せたとおりだ。あとは自分で昇華させておけ。」ジャアナ


時雨 「話聞けよ!てめぇのそういうとこが遺伝してるから、こっちは迷惑してるんだよ!」クワッ


黒霧 「数百年越しの遺伝を持ち出されてもね。」


時雨 「ていうか、碌に糸のこと教えてもらってないんだけど!?」キー!


黒霧 「教える必要がないってことでしょ?鋼糸、念糸、斬糸、傀儡糸に呪糸。基礎は全部できてるってさ。」


時雨 「やるなら最後まで責任を持ってやってくれるかな。そこから先は自分で考えるからさ。」マッタク



一年が本当に短い。


黒霧 「じゃあ、少しだけ付き合おうか?」


時雨 「最後までって言ったの聞こえなかったぁ?」ニコォ


黒霧 「一日でどうにかなるわけないでしょ。永い目では、最後まで付き合うから。」フフ


時雨 「・・・わかった。」ムゥ


黒霧 「ま、僕には知識面の指導しかできないけど。」シレッ


時雨 「使えねぇ。」



情報統制はしっかりと。


近衛麗「ねぇ、パパ~。こいつどうするの~?」チョンチョン


天龍 「突くな。地味に痛ぇ。」ウッ


黒霧 「交代しようか。お疲れさま、麗。」


近衛麗「ちゃんと御礼してよね。」フフーン


ハイハイ


天龍 「やっと、真打登場か。」ヘヘッ


黒霧 「疲れていい感じに力が抜けてるでしょ。変な力みがなくなるから、型の修練には最適なんだ。」


天龍 「それはいいんだけどよ。」カラン


天龍 「刀握る力も入らねぇんだが・・・大丈夫か?これ。」


黒霧 「・・・麗。」


近衛麗「」ビクッ


黒霧 「君がやりすぎたことが原因か。天龍が未熟だったことが原因か。将又両方か。どれだと思う?」ジー


近衛麗「わ、私はっ。普通に・・・。」ハハ


黒霧 「天龍がタフでよかったね。これで立つ力も残っていないようだったら、不本意ながら初めてを奪わざるを得なかった。」


近衛麗「何の・・・?」タジッ


黒霧 「天龍のくち・・・。」


天龍 「だー!!なんでお前が知ってんだよ!」オイ!


黒霧 「五月雨から聞いてね。」


天龍 「いやいや、なんで五月雨がんなこと。そういう情報は龍田しか・・・。」ハッ


天龍 「龍田。お前、まさか・・・。」


龍田 「うふっ。」


天龍 「ちっくしょー!!」ギャー



呑まれ酒


天龍 「もういい。鍛錬に打ち込んで忘れてやる。」ウゥ


那智 「まぁ、私達は憶えているがな。」


天龍 「言うんじゃねぇ!」クワッ


足柄 「でも、未亡人なのにキスの経験がないってどうなの?」


天龍 「ぐっ。」グサッ


龍田 「顔が近づいただけで気絶しちゃうからできなかったのよね~。」ウフフ


天龍 「///」プシュー


近衛麗「想像でそれなのね。」ハァ


足柄 「考えすぎるから駄目なんじゃないの?考える前に行動。そうでなきゃ、大事なものを掴み損ねるわよ。」


那智 「生娘が何を偉そうに。」


足柄 「生娘で悪いか。」


黒霧 「いや、琴は生娘じゃ・・・。」


足柄 「シャァラップ!!」バッ


ムグッ


那智 「おい、琴。」ゴゴゴ


足柄 「な、何かしら・・・。」ダラダラ


那智 「吐け。」ガシッ


足柄 「」


龍田 「あらあら~。」


黒霧 「ふぁいへんなふぉふぉにふぁったね。」モゴモゴ


足柄 「誰の所為だとっ!」クッ



正々堂々とは何か。


那智 「で、ヤったのか。」ゴゴゴ


足柄 「いや、その・・・。」セイザチウ


那智 「ヤったのかと訊いている。」ゴゴゴ


足柄 「・・・はい。」メソラシ


那智 「」フンッ


ドゴッ ブフッ


足柄 「顔に、顔にグーはない・・・。」プルプル


那智 「いつ、何が契機だ。」ズイッ


足柄 「綾姉、恐い・・・。」ウゥ


那智 「いいから、吐け。」オォォ


足柄 「うっ。憲兵時代、黒の部屋で飲んでて、それで酔っぱらった私が・・・その。」モゴモゴ


那智 「襲ったのか。」


足柄 「いや、ちがくて・・・。」


那智 「なんだ。はっきり言え。」グッ


足柄 「言います!言いますから!拳を握らないで!」ヒィッ


那智 「さっさと吐け。」


足柄 「・・・です。」ボソボソ


那智 「聞こえん。」アァ?


足柄 「綾姉に処女を莫迦にされてつらいから、初めてを貰ってくれって泣きついたんです!」ブワッ


那智 「・・・。」


黒霧 「お酒が入っているとはいえ、本気で泣いている琴の願いを無碍に扱うわけにいかなかったからね。一度だけ、肌を重ねた。」フゥ


黒霧 「大本の原因は、綾。君だよ。君が追い詰めて、アルコールが爆発させた。」


黒霧 「結局はお酒の勢いで致したことだから、素面で周りに言いふらすことはできなかったみたいだけど。」