2023-02-14 02:58:36 更新

概要

三笠を陰から操る存在が明らかとなり、宣戦布告した訓練島の面々。
力をつけ、最終決戦に臨もうかというその時。
海を彷徨う影が、少女の幸せを壊そうとしていた・・・。


前書き

三笠編は引き続き、主人公を入れ換えて物語を紡いでいきます。
定められた歴史が終幕を迎えるまで、彼女らの奮闘劇をお楽しみください。


幸も不幸も慣れて仕舞えばただの日常。


「なぁ、まだやんのか?」


「ん~?そりゃあ、まだ終わっていないからね。」カキカキ


「そうかも知んねぇけどよ。もう1時だぜ?そのくらいにして寝とこうぜ。」ナ?


ピタリ


「・・・寂しいの?」


「ち、ちげぇよ!何言ってんだよ!///」カァ


「思えば、僕達も結婚して長いし・・・。そろそろ踏み出してもいい頃・・・かな。」カタッ


「へっ?」


「今夜は、寝かせないよ。」フフ


「ばっ!寝ろって言ってんだろ!?///」マッカ


「だから寝ようって。」ウン?


「てめぇの"寝よう"は俺の"寝よう"と違うんだよ!」ダッ


「へ~え。何がどう違うのかせつめ・・・。」


「勝手にやってろ!莫迦!莫迦!ぶあ~かぁ!!」フン!


バタン!


「勝手にヤってろ・・・か。そそる捨て科白だ。」フム



教えられるより教える立場で在りたい。


「ったく、あの野郎。っと信じらんねぇ。」ブツブツ


ガチャ


「あら~。どうしたの?今日は旦那様と一緒じゃないの~?」ウフフ


「知らねぇよ、あんな奴。」フン


「ど~せまた弄り倒されてたんでしょ?言葉で。」


「うっ・・・。」


「初心も大概にしなさいよ~。カッコカリとはいえ、ふたりは結婚してる仲なんだから~。」


「け、結婚してっからって。そ、そういうことをしなくちゃいけないなんて決まりは・・・ねぇ、だろ?」モジモジ


「はぁ?」ジト


「なっ、なんだよ。やめろよ、その瞳・・・。」


「これだから超絶乙女は・・・。」チッ


「お前はもう少しお淑やかになれよ・・・。」イイトシダロ?



あたすのジャージは今や妹の部屋着兼運動着だよ。


「つーか、なんて格好してんだよ。それ中学んときのジャージだろ?色々溢れてんぞ。」


「別にいいでしょ~?私の部屋なんだし。」パタパタ


「ベッドの上で脚バタつかせるのやめろって。埃が立つだろーが。」


「あーもう。うっさい。あたしの部屋に避難させてあげてるんだから文句言わないでよ。」ムッ


「あたしのって、元は同部屋だろ?」


「勝手に出ていったくせに図々しいのよ。」フン


「・・・拗ねてんのか?」


「拗ねてない。」


「いや、拗ねてんだろ?」


「拗ねてない!」


「拗ねてんじゃねぇか。」


「しつこいなぁ!もう!いい加減にしないと、裸に剥いて"プレゼントは私"って提督の部屋にぶち込むからね!」


「すみませんでした・・・。」


「わかったならさっさと寝る!」


「はい・・・。」



君に明日があると、どうして言いきれる?


「ん~。」ノビー


フゥ


「やっと終わった。」ダラッ


「まったく。綱紀粛正の御蔭で不埒な輩が減ったのはいいが、この人員不足は大問題だな。」


「元帥閣下に直談判しようにも電話は繋がらんし、書類をほっぽって出向くわけにもいかんしな。」ハァ


「早々にどうにかして・・・。」ン?


ヒタッ ヒタッ


「足音・・・?」


ヒタッ ヒタッ


「誰だ?」


シーン


「・・・誰か、居るのか?」ミガマエ


ザシュッ


「がっ!」カハッ


バタッ


「死んだ?死んだ・・・の?そう・・・。そっか・・・。」


「あなたじゃ、ない。あのひとじゃ、ない。」ユラッ


「どこ?どこに、いるの?あなた。わたしの、いとしいひと。」フラフラ


ヒタッ ヒタッ



責任を取るなら何かを成し遂げてみせろ。


真宵 「と、そういうわけだ。引き受けてくれるな?時雨よ。」


黒霧 「」エェ


五月雨「はっは。お父さんでもそんな顔するんですね。」


蓮華 「余程嫌らしいな。私達と離れ離れになることが。」フッ


漣  「つーかさぁ。元帥が電話線ぶっこ抜いた所為で情報共有が為されてなかったことがそもそもの原因だべ?」


朧  「責任を取るヨロシ。」


真宵 「だから時雨を派遣するのだろうが。」


曙  「自分で責任を取れって話でしょ。」


潮  「でも、真宵ちゃんが大本営を離れるわけにもいかないんじゃ・・・。」オズオズ


真宵 「そういうことだ。他に任せられる者もいないのでな。頼む。」ペコリ


最上 「ほ~。魔王様がクロさんに頭を下げてるよ~。これは見逃せないね。」キラン


三隈 「三隈には何も見えませんの。聞こえませんの。」アーアー


最上 「ほらほら~。みっちゃんの師匠が頭を垂れて~。」ムフフ


三隈 「や~め~る~で~す~の~。」


紫苑茜「うっさい。」ノシッ


フガッ


三隈 「・・・重いんだよ。そのでっかい塊どかせや。」オラ


紫苑茜「あら、ごめんなさい。わたしのものが立派すぎる所為で見えなかったわ。」フフフ


三隈 「てめぇ・・・。」イラァ


バチバチ


レ級 「何やってんだ?あのふたり。」


ヲ級 「放っておけばいいの。どうせお母さんが泣かされて終わるの。」ヘッ



他人に任せて失敗してもカバーできる範囲でしか頼まないから。


真宵 「頼む。」


黒霧 「・・・それは、依頼か?」


真宵 「いや、"お願い"だ。駄目ならば俺でどうにかしよう。」


黒霧 「自分でどうにかできるなら、態々僕に言うこともないだろうに。」


真宵 「相変わらず意地の悪い言い方をする。」フッ


真宵 「俺よりもお前のほうが適任だと、そう判断したのだ。」


黒霧 「・・・わかった。やるよ。」フゥ


真宵 「そうか・・・。」


五月雨「ぅえ~。ほんとに行っちゃうんですか?お父さん。」


蓮華 「寂しさのあまりに毎晩枕を濡らしてしまうぞ?母上が。」


南方戦「いくらワタシでも泣きゃしないわよ。」


蓮華 「いや、そっちではなくてだな。枕を股に挟んで・・・。」


五月雨「おっと、そこまでだ。」サッ


南方戦「アンタ、いったい何処からそんな知識を得てるのよ・・・。心配だわ、親として。」ハァ



まさか机に肘を壊されるとは・・・。


真宵 「詳細は追って説明する。まぁ、お前には必要のないことかも知れんがな。」


黒霧 「現場を見れば、大体わかるからね。」


真宵 「一応だな。説明役を派遣してはいるのだが・・・。扱いは任せる。」デハナ


黒霧 「ああ。」


フワッ ビューン


黒霧 「さてと。それじゃあ、一緒に行く人員の選抜に・・・。」


時雨 「」ジトー


黒霧 「・・・どうしたの。」


時雨 「別に。最近、出番が少ないなとか。全然、修行をつけてもらってないなとか。これっぽっちも思ってないから。」フイ


黒霧 「一緒に来たいの?」


時雨 「ねぇ、にぃに。わかってて言ってるでしょ?怒るよ?」ニコー


黒霧 「本当に君は僕のことが嫌いなんだね。」フフ


時雨 「当然。」ニッコリ


フフフフ


近衛麗「遠慮のない関係・・・。これはこれでありね。」フム


神命 「いや、ないから。」



この御時世、直接会えるだけでも嬉しいものだね。


漣  「へいへ~い。修行をつけてもらってないってことに関しちゃ、うちらも同じだべ~。」ヘーイ


朧  「父と娘の団欒を要求するのん。」ムフン


黒霧 「元よりそのつもりだよ。」


漣・朧「うっし。」グッ


黒霧 「灯と姫百合もね。七駆は全員連れていく。」


潮  「はい!よろしくおねがいしましゅ!」アゥ


曙  「ま、チームだから仕方ないわよね・・・。」チラッ


紫苑茜「なぁに?わたしと離れ離れになるのがそんなに寂しい?」ンー?


曙  「べっ、別に、そんなんじゃないわよ!」プイッ


紫苑茜「大丈夫、わたしも行くわ。」フフ


曙  「そう・・・。」ニヨニヨ


漣  「嬉しそうだな、あかりん。」ヘヘッ


朧  「表情は緩めても貞操観念は緩めるなよ。」ヘッ


曙  「うっさい。そしてあんたは何の話してんのよ!」オダマリ!



とことん関わるか、無関心を貫くか。


黒霧 「それから、五月雨と麗。君達も来てくれるかな。」


五月雨「お父さんがそう望むなら。」ムフン


近衛麗「な~に、パパぁ。そんなに私と一緒に居たいの~?も~、仕方ないわね~。」ウフフ


黒霧 「君を置いていくと、何をしでかしてくれるかわかったものじゃないからね。最上のときみたいに。」ニコリ


近衛麗「」ウッ


黒霧 「向こうに行っても、僕の傍から離れちゃいけないよ?」フフフ


近衛麗「笑顔が怖いわ、パパ・・・。」


五月雨「あっれぇ。若しかするとこれは、私もそっちの枠組ですかぁ?」


ヲ級 「お父さんが居ないときの蓮華ちゃんと五月雨お姉ちゃんは交ぜるな危険なの。当然の判断なの。」ヘッ


五月雨「はっは。中々言ってくれますね、ヲーちゃん。お姉ちゃんの心は大破寸前ですよ。」ウルッ



一番の言い訳は子供の存在。


五月雨「ところで、蓮華ちゃんはいいんですか?お父さんと一緒に行くのが自分じゃなくて。」


蓮華 「ああ、構わん。私が残ってやらなければ、母上が可哀想だからな。」フッ


南方戦「莫迦言ってんじゃないわよ。アンタがワタシと一緒に居たいだけでしょ。」フン


蓮華 「その言葉、そっくりそのまま返してやろう。」


南方戦「あぁ?」ピキッ


蓮華 「今夜は私が抱き枕になってやるぞ。独りの夜はいつも父上から貰ったアレをだ・・・。」モガッ


南方戦「アンタ、まさかまたカメラを仕掛けて・・・。」プルプル


蓮華 「んあ、ふぉうまうあ。」ニンマリ


南方戦「時雨!五月雨よりコイツを連れてって!寧ろワタシを連れてって!」クワッ


レ級 「南姉まで行っちまったら保護者が居なくなるだろうが。」


南方戦「っ~!!」


ヲ級 「そもそも南お姉ちゃんに保護者役は務まらないの。」ヘッ


レ級 「それもそうだな。南姉、行きたいなら行ってもいいぜ。俺達は俺達で、どうにかすっからよ。」ニッ


南方戦「アンタにまで気を遣われたらワタシがいたたまれないでしょうが!そこは引き止めなさいよ!」


南方戦「アンタ達の為に仕方なく残るって選択肢を、ワタシから奪わないでよぉ!!」ウアァ


レ級 「難しんだな、大人って。」


ヲ級 「素直になれないお年頃なの。」


蓮華 「この頃のヲ級は本当に恐ろしいな。」


五月雨「お父さん、ヲーちゃんが悪女にまっしぐらです。」


黒霧 「深海に男が居ないことが唯一の救いだね。」フフ



今時の家を支える柱はひとつじゃない。


黒霧 「さてと、それじゃあ行こうか。」


時雨 「随分と急だね。そんなに急いでどうするのさ。」


黒霧 「組織の長が不在って状況は、あまりよろしくないからね。」


時雨 「それを言ったら此処も同じでしょ?」


黒霧 「形だけの長が居なくなったところで困ることは無いさ。」


最上 「そうかな。ボクは結構、頼りにしてるよ?クロさんのこと。」フフ


三隈 「み、三隈もですの!」


黒霧 「そう?」


最上 「うん。ほら、一家の大黒柱ってよく言うじゃん。ただそこに在るだけで、ちゃんと支えになってるんだよ。」


最上 「勿論、真っ直ぐに立っていてくれなくちゃ駄目だけどね。」ニッ



頼られると嬉しくなっちゃうの。


黒霧 「そうなると、代わりの柱を用意しないといけないね。」フム


最上 「そうだね。」


三隈 「それでしたら、南さんに・・・。」


黒霧 「三隈にお願いするよ。」


三隈 「・・・へ?」


黒霧 「この訓練基地に於ける全権を三隈に委譲する。蓮華と相談しながら上手くやるんだよ。」ポム


三隈 「」パァァ


三隈 「わっかりましたの!三隈の全身全霊を以て、この基地を預からせていただきますの!」ムフー


最上 「チョ~ロい。」ハハ



化粧は美しさを際立たせるくらいが丁度いい。


黒霧 「茜姉さん、化粧品はちゃんと持った?」


紫苑茜「しーちゃん?それはいったいどういう意味なのかしら?」ニッコリ


黒霧 「もう若くないんだから、肌のケアは怠っちゃ・・・。」ムグッ


紫苑茜「忘れたのかしらぁ。わたし、転生してるからまだぴっちぴちの二十代なのよぉ?」オホホ


黒霧 「人間の肉体は老いるのが早いからさ。油断してるとすぐにばば・・・。」


紫苑茜「それ以上は駄目よ~?」ウフフフ


漣  「なぁ、漫才やってないで早く行こうぜ~。もう準備できちまったよ。」


朧  「時間稼ぎごくろうなのら。」


潮  「灯ちゃん、その書き物の束どうしたの?」


曙  「な、何だっていいでしょ・・・。」サッ


漣  「あれ、欲しいものリストだぜ。どんだけせん姉に買わせるつもりだよ。」ヒソヒソ


朧  「街に行けるかも知れないからって浮かれすぎなのね。」ヒソヒソ


曙  「違うわよ!これはちゃんと私のお給料で!・・・あ。」


漣・朧「うん。知ってた。」


潮  「偉いね、灯ちゃん。」ニコッ


曙  「っ~!!///」カァァ


紫苑茜「ねぇ、しーちゃん。」


黒霧 「わかってる。灯の夢を叶えるためにも、しっかりやらないとね。」


紫苑茜「頼んだわよ?"旦那様"。」フフッ



設定の復活だ~い。


黒霧 「やめてもらえるかな。勝手に"旦那様"なんて呼ぶの。」ジト


紫苑茜「勝手にとは随分ね。わたしに"三人"も娘を産ませておいて・・・。」フフ


黒霧 「・・・やっぱり。」ハァ


紫苑茜「あら、気づいてた?」


黒霧 「若し本当に茜姉さんの妹だったなら、僕と魂の色が似通っていることが説明できないでしょ?」


紫苑茜「そうかしら?しーちゃんなら、わたしの母親を口説き堕としてとか、ありえると思うんだけど。」


黒霧 「」ウェ


紫苑茜「流石にその反応は失礼なんじゃな~い?」ウフフ~


曙  「ちょっと、何ふたりだけで話してるのよ。私も交ぜなさいよ。」


紫苑茜「やだ、灯ったら嫉妬?もう、ほんとに可愛いんだからぁ。」ムギュッ


曙  「お姉ちゃん、苦しい・・・。」ウッ


黒霧 「・・・。」ジー


曙  「あによ。見てないで助けなさいよ。」


黒霧 「いや、きっと素顔も可愛かっただろうなって。」フフ


曙  「んなっ!いきなり何口走ってんのよ!///」カァ


紫苑茜「当然よね。灯はこのわたしの妹なんだから~。」スリスリ


曙  「暑苦しいからっ。いい加減に、は・な・せ~!」グギギ



設定集でも姉妹に確定させてなかったものね。


黒霧 「ところで、中たったのはいつの話なの?」


紫苑茜「さぁ?聖戦が始まる前のいつかじゃないの?」


黒霧 「茜姉さんがヤりまくるから・・・。」


紫苑茜「湧き上がる情熱を抑えられなかったのよ。」キリッ


黒霧 「情欲の間違いでしょ?」


紫苑茜「そうとも言うわね。」


曙  「やめてよ。お姉ちゃんのえっちぃ話なんて聞きたくないわ。」


黒霧 「灯には現実を知っておいてもらいたいんだ。そして、頭のネジが外れた姉を諫めておくれ。」ポム


曙  「遠慮しとくわ・・・。」エェ



やりたいことができるがモチベーションなら、やりたいことしかやれないってことか?


漣  「あかりんの奴、ちょいとせん姉にべったりしすぎなんと違いますかね。」


朧  「うちら家族にはあんなことしない。」ムゥ


曙  「当然よ。あんた達に甘えたりなんてしたら、破滅への一本道を亜音速でぶっちするわ。」ハッ


潮  「え?でも、あのとき私には・・・。」


曙  「姫百合ぃ!!」クワッ


潮  「ひゃい!」ビクッ


曙  「それ以上は、駄目よ。」ダラダラ


漣・朧「ほっほ~ん。」ニヤニヤ


曙  「」


ヒメネエ! ソコノトコクワシク! ヤメロォ!!



モチベーションが無くても仕事ができるって、凄い才能だよ。


黒霧 「・・・楽しそうだね。」


紫苑茜「そうね。あのくらい賑やかなほうが、あの娘には合ってるのかも知れないわね。」


黒霧 「本が根暗だから?」


紫苑茜「あら~。あの娘の幼少期も知らないくせして、決めつけはよくないわ。」


黒霧 「茜姉さんがそうだったでしょ。」


紫苑茜「うっ・・・。よく知ってるわね。話したことあったかしら。」


黒霧 「見てたらわかるよ。掟も倫理も無視して暴走するのは思考が内側に向いていて、自己完結している証拠。」


黒霧 「周囲の意見も何のその。全く聞く耳を持たない。根っこが暗いんだよ。自分だけの部屋に閉じ籠もってるって意味でね。」


紫苑茜「よくもまぁ、そんな分析を・・・。どんだけわたしのこと好きなのよ。」ヤレヤレ


黒霧 「僕が、茜姉さんの光になる。」


紫苑茜「世界の闇に生きてきたくせしてよく言うわ。」


紫苑茜「・・・ほんとはもう、とっくの昔になってるけど。」ボソッ


紫苑茜「ちゃんとエスコートしなさいよね、旦那様。」ソッ


黒霧 「灯の姉として生きる道を決めたなら、その呼び方はやめようか。」


紫苑茜「はいはい。」フフッ


・・・


近衛麗「すんごい話が聞こえてきたわね。」


時雨 「いつか刺されろ。」


近衛麗「もう経験済みなんじゃないの?死んでないだけで。」


時雨 「そうだった。もう死んでるんだった。」チッ



駄目なときは何処に行ってもダメ。


???「遅かったですねぇ。女の子をこ~んなにも待たせるだなんて、感心しませんよぉ?」ニコニコ


黒霧 「時間の指定はなかったと思うんだけどな。」


???「指定がないなら猶のこと早く来るべきなのではないですか?」ウフフ


五月雨「はて。元帥閣下からは碌に話も聞かず、勝手に飛び出していったと聞いていますが。」


近衛麗「自分の身勝手に他人が合わせるように強要するだなんて、淑女としてどうなのかしら。」


時雨 「凡そ他人のことを言えた口ではないとも思うけど、ボクもその意見に賛成かな。」


近衛麗「ちょっと、それどういう意味~?」


時雨 「そのままの意味だよ~。」


五月雨「まぁ、そんなわけですんで。しっかりと反省してくださいね、榛名さん。」


榛名ミニ「此処でも私はこんな扱いなんですね・・・。」グスッ


紫苑茜「まずいわ。しーちゃんの沼に嵌まるルーティンが完成しちゃってるじゃない・・・!」


黒霧 「なら、茜姉さんが僕の代わりに彼女を慰めたらいいんじゃないかな。」フフ


紫苑茜「わたし、あーちゃん以外の女に興味ないから。」


曙  「それもなければよかったのに・・・。」ハァ



物事は計画的に。


黒霧 「家出娘の相談は後で乗ってあげるからさ。まずは此処の問題を解決しようか。」


榛名ミニ「・・・そうですね。」ハァ


榛名ミニ「では、始めにこの鎮守府についてですが、元帥閣下からは何か聞いておられますか?」


五月雨「な~んにも聞いていないですよ。お父さんなら説明は不要だろうと。」


榛名ミニ「あんの筋肉達磨。」チッ


エ・・・


榛名ミニ「失礼。」コホン


榛名ミニ「簡単に紹介しますと、此処は比較的出撃が多い海軍主戦力の一翼を担う鎮守府のひとつです。」


榛名ミニ「指揮官も有能で、戦果の割に轟沈数が少なく、何より元帥閣下の綱紀粛正を免れる程度には人徳者でした。」


榛名ミニ「カッコカリではありますが、艦娘との結婚も済ませていたとか。彼女達からの信頼も厚く、だからこそ・・・。」


時雨 「彼の死は、あまりに大きな禍根を残すこととなった。」


榛名ミニ「はい・・・。」


近衛麗「わかるわ~。信頼を寄せる唯一の人との別れ。自棄になっちゃうわよね~。」ウンウン


黒霧 「君の場合は禁欲の理由が無くなって、存分に遊び呆けてただけでしょ。」


近衛麗「」ギクッ


紫苑茜「あんた、少し黙ってなさい。」ヤレヤレ



そう簡単に奪えると思うなよ!


???「てめぇか。あいつの後任ってのは。」


榛名ミニ「天龍さん・・・。」


天龍 「白い髪に、紅い瞳・・・。」ズイッ


黒霧 「・・・。」


天龍 「臭うな。血のにおいだ。」クンクン


漣・朧「わ~お。だいた~ん。」ヒュー


曙  「茶化さない。」


天龍 「」バッ


???「はい、ど~ん。」テイッ


天龍 「うお!」ヨロッ


黒霧 「」サッ


ズデッ ブフッ


天龍 「龍田、てめっ!何しやがる!危うくキ、キスしちまうところだったぞ!」


龍田 「あら~。それを狙ってたのに~。上手く避けられちゃったわ。」ウフ


天龍 「んなっ!」


漣  「な~、あかり~ん。」


曙  「・・・そうね。」ハァ


サン ハイ


漣・朧「わ~お。だいた~ん。」ヒュー



ありえない、なんてことはありえない by Greed


天龍 「わかってんのか、龍田。あいつを殺ったのは、白い髪に紅い瞳をしたっ。」


龍田 「小さな女の子だったんでしょ?何処をどう見たら彼が女性に見えるのよ。」モウ


天龍 「関係者かも知れねぇだろうが!」


龍田 「白髪で紅い瞳ってだけで殴ろうとしたの?まったく、この姉は・・・。」ハァ


天龍 「白髪で紅瞳なんて人間はいねぇ!」クワッ


龍田 「世界は天龍ちゃんが思う数十倍は広いのよ~。」


五月雨「これが、禍根・・・?」


榛名ミニ「龍田さんの物分かりが良くて本当に助かりました。」フゥ



誕生日おめでとう、自分。


天龍 「ともかくだ!俺はこいつが信用できねぇ。だから、他の連中に近づけさせたくねぇ。」


龍田 「自分を犠牲にして、みんなを護ろうってこと?天龍ちゃんには荷が重いと思うな~。」


天龍 「んなことねぇよ!今までだって、俺が上手く・・・!」


龍田 「本当に~?」ジッ


天龍 「」ウッ


龍田 「私の手を借りないで、天龍ちゃんの力だけで、みんなの支えなしで・・・?」


天龍 「だぁ、もう!わぁったよ!俺ひとりじゃ無理だよ!だから、龍田。お前の力を貸してくれ。」


龍田 「わかればいいのよ~。」ウフフ


龍田 「まぁ、そんなわけだから。あなた達も力を貸してくれると嬉しいわ~。」ニコニコ


黒霧 「勿論。その為に来たからね。」フフ


天龍 「・・・話、聞いてたか?龍田。」オイ?


龍田 「え~?みんなで力を合わせて、謎の少女Xを倒そうって話でしょ~?」


天龍 「違ぇよ!俺はこいつの魔の手からみんなを護ろうって!」


龍田 「手を出しちゃうの?」


黒霧 「僕は既婚者だよ。」


龍田 「ほらぁ~。」


天龍 「それ以前に信用できねぇって言ってんだよ!わかれよ!」



さて、誰を登場させようかしら。


「あらら。荒れてんねぇ、天龍さん。」


「最愛のひとを失ったのです。ああもなりますわ。寧ろ、普段どおりの龍田さんが怖いですわ。」


「そ~お?龍田さんも結構殺気立ってるように見えるけど。」ンー


「それが普段どおりと言ってますの。」


「言うねぇ。今の、本人に聞かれたら絶対やばいやつじゃん。」ニシシ


「滅多なことを言うものではありませんよ。龍田さんは、薙刀で学費免除を勝ち取るほどの実力者ですから。刻まれてしまいますよ?」


「ブーメランだよ、お姉ちゃん・・・。」


「ふ~ん。中々好い男じゃない。」フフン


「なんだ。また男漁りか?」


「ちょっと。変な言い方しないでよね。私はただ客観的に批評を・・・。」


「わかったわかった。で?お前的に何点なんだ?」


「そうね。70点くらいかしら。顔は好いけど、少し線が細すぎるわね。男子たる者、身体も人生も太くなきゃ駄目よ!」ムフン


「あら。随分と上からな物言いですね。」


「だから彼氏すらできんのだ。」


「んなっ!それは今関係ないでしょ!」


「私達姉妹の中で、男と付き合った経験がないのはお前だけだ。いい加減、古くさい理想は捨てることだな。」フッ


「むっきー!!言ってくれるじゃない!見てなさい。今に理想どおりの男を捕まえて、吠え面かかせてやるんだから!」ビシッ


「ほう。やれるものならやってみろ。」ニィ


「毎度毎度、よく飽きないものですわね。」


「あはは。できればこの話には関わりたくないかなぁ・・・なんて。」


「そういえば、貴女もまだでしたわね。」


「言わないでよぉ。これでも結構気にしてるんだからぁ。」ウゥ


「遊び慣れているように見えて実は、というのはポイント高いですわ。きっと、初恋は大恋愛になりますの。期待してますわ。」フフッ


「くっそ~。今年こそ、彼氏つくってやるぅ~!」ムゥ


・・・


時雨 「理想に燃える女が一匹。恋に焦がれる乙女がひとり。そして恋愛上級者が三人。未知数がひとり・・・。」


時雨 「はぁ。ボクにはもう修羅場が見えてるような気がするよ。ねぇ、にぃに。」


黒霧 「まぁ、僕からは手を出さないからさ。」


時雨 「だから質が悪いんだよ。自分が追いかけられる側になるように餌を蒔くから・・・。」


黒霧 「何事も経験だよ。」フフッ


時雨 「あ~あ。駄目だ、これ。」ヤレヤレ


黒霧 「これから愉しくなりそうだ。」ニィ


近衛麗「若しかして、パパって実は危険な男?」


紫苑茜「あんたとは別の意味でね。」



人との食事は食べる早さに気を遣う。


漣  「おっしゃ。今日から此処が俺達の城じゃ~!」


朧  「うらー。」


曙  「喧しい。口より手を動かしなさい。さっさと荷解き終わらせるわよ。」テキパキ


漣  「いやいや。あたしら殆ど荷物にゃいし。どー見てもあかりん待ちだし。」


朧  「序でに足も動かすヨロシ。」


曙  「」チッ


潮  「大丈夫?手伝おうか?」


曙  「・・・姫百合。」


潮  「なぁに?」


曙  「大好き。」


潮  「ふぇえ!?///」ボン


漣  「ゆる百合してねぇで早く片せよ。あかりん念願の街ぶらだぜ?ぱぱんと一緒にお出かけだぜ?」


朧  「待ちきれないのん。」ムフー



同じとお揃いは違うんだ。


曙  「街ぶらったって、買うのは日用品だけじゃない。」


漣  「お揃いの歯ブラシ。」


曙  「」ウッ


朧  「お揃いの髪留め。」


曙  「」ウゥ


漣  「お揃いのした・・・。いや、それは無理か。」


曙  「」イラッ


朧  「姫ならいける。」


潮  「わ、私?」


漣  「だんね。せん姉とぱぱんに一着ずつ選んでもらうか。」


朧  「その話、のった。」


曙  「くっそ。羨ましい。」ボソッ


潮  「いくらぱぱでも、下着を選んでもらうのは・・・。」アハハ


漣  「ま、今はぱぱんをぱぱと認めただけで充分さね。父娘の距離感はこれから創り上げていこうぜ。」ニッ


朧  「うんむ。そんでもって次は。」ジッ


曙  「あによ。私は養子になんてならないからね。」フン


黒霧 「それは残念。」ユラッ


曙  「うひゃい!」ビクッ


漣・朧「ぱぱ~。」ヒシッ


潮  「・・・ぱぱ。」ソッ


黒霧 「ん。」ナデナデ


エヘヘ~


曙  「んな心臓に悪い父親は要らんわぁ!」クワッ


漣  「あかりんってば、ビビりなんだから。も~。」


曙  「黙らっしゃい!」


黒霧 「さて、そろそろ行こうか。」ヨット


曙  「絶対的マイペース!人の話を聞けぇ!」


漣  「な~んか。あかりんが一番親子してね?ちょっと腹立つ。」ムッ


朧  「嫉妬の嵐。」ジト


曙  「知らないわよ。悔しいならもっと頑張りなさいよ。」


潮  「あの。どうして、私は抱えられて?」


黒霧 「さぁ?どうしてだろうね。」フフ


ピャー


曙  「人攫いぃ!!」


朧  「いざ往かん!姫の救出に!」ダー


漣  「勇者として歴史に名を刻むのはこの俺だ~!」イエー



疲れてるときは全てがどうでもよくなる。


潮  「ぴゃああああ!」


漣・朧「待て、おら~。」ウオー


黒霧 「僕を捕まえられたらね。」スタコラー


曙  「いや、ほんとに、待って・・・。」ゼェ ハァ


漣  「あかりん、もうギブっすか?」


朧  「情けないぞ!」


黒霧 「あんまりだらしないと、姫百合を着せ替え人形にしてしまうよ~。」


曙  「どーぞ、ご自由に。」


潮  「灯ちゃん!?」


漣  「躊躇なく仲間を売りやがりましたよ。」ヒソヒソ


朧  「世界は自分中心に回っているとでも思っているのかしらん。」ヒソヒソ


曙  「違うわよ。着せ替え人形くらいなら、耐えられないことないでしょ。」ハー シンド


漣  「結果、仲間を売ったことに変わりないじゃん。」


黒霧 「体力が限界のときは思考を放棄するか。茜姉さんの悪いところが似てしまったね。」ヤレヤレ


潮  「あの。さっきのは、冗談・・・ですよね?」


黒霧 「僕が冗談を言うように見えるかい?」ニッコリ


潮  「ふえぇ・・・。」



とめどなく溢る。


漣  「ええい!あかりんはもう駄目だ!俺達で姫百合を救うぞ!」クワッ


朧  「おおー!」ヤー


???「お~!」イエー


漣・朧「・・・誰?」


・・・


黒霧 「追ってこないね。」


潮  「澪ちゃ~ん。撫子ちゃ~ん・・・。」ウゥ


???「他人に助けを求める前に、自分でどうにかする努力をしては如何です?」


黒霧 「容赦ない正論が飛んできたね。」フフ


潮  「ぴゃ~。でも、ぱぱに抱っこされるのは嫌じゃないから。別に、このままでも・・・。」テレテレ


黒霧 「受け入れる道を選んだみたいだよ。」


???「そうですの。」


パパー


漣・朧「不審なJKにあかりんが捕まった~。」


???「不審じゃないよ!ってか、JKでもないし!」


曙  「うっさい。耳元で喚かないで。頭に響くじゃない。」


???「おんぶしてあげてるのに、その態度は何さ。」エェ


曙  「なら下ろして。」


???「この娘はっ!」


???「鈴谷、早速いいように使われてますのね。」


鈴谷 「そういうことは思っても口に出さないのがお約束でしょ~。」ンモウ


???「新人に舐められては終わりですわよ。JKはJKなりに威厳を示すことですわ。」


鈴谷 「熊野まで・・・。JKって言われてる時点で威厳も何もないじゃんか。」ムゥ


熊野 「そこに気づける程度には脳が正常に機能しているようですわね。安心しましたわ。」


鈴谷 「あ~!ひっど~い!その言い方だと、まるで私がアンドロイドみたいじゃん!」プンスコ


熊野 「似たようなものですの。改造むす・・・。」


鈴谷 「やめれ~!!」イヤー!


黒霧 「さぁ、みんな。女子高生は放っておいて、街に行こうか。」


漣朧潮「は~い。」


曙  「それはいいけど。背負ってちょうだい。もう歩きたくないわ。」


黒霧 「はいはい。」ヨット


曙  「ん、ありがと。父さん。」ボソッ



誰にも生まれは選べない。


黒霧 「その言葉、聞かなかったことにしておくよ。」


曙  「絞めるわよ、クソ親父。」グイッ


黒霧 「絞まってる絞まってる。」


曙  「私がこの世界に捨てられた原因は、全部あんたにあるのよ?責任、取りなさいよ。」


黒霧 「それは、僕が"黒霧"だから?」


曙  「そうよ。あんたら黒霧が神々と喧嘩してたから、あんたの血を引く私は紫苑の一族にとって、不発弾のようなものだった。」


曙  「それを理解してた母さんは、私を身籠もったことさえも隠し通し、私を次元の狭間に落とした。」


曙  「全部、あんたが悪いのよ。あんたが黒霧でさえなければ。あんた達が神々と対立してさえいなければ!」ギリッ


黒霧 「僕達家族が、引き裂かれることはなかった?」


曙  「そうよ・・・。」


曙  「だいたい、母さんが自分をお姉ちゃんだって偽ってるのも意味わかんないし。」


黒霧 「・・・灯、君は父親に会えてどう思った?」


曙  「嬉しかった。私にはもう、家族がいないって思ってたから。」


黒霧 「その父親が僕だと知って、どう思った?」


曙  「こんのクズが。」グググ


黒霧 「絞まってる絞まってる。」



私はあの娘を捨てたのよ・・・。


黒霧 「つまりは、そういうことだよ。」フゥ


曙  「私があんたにがっかりしないようにって?はっ。お笑いね。そんな程度の低い誤魔化しで、私が納得すると本気で思ってるの?」


黒霧 「うん。」


曙  「絞めるぞ、くぉら。」ギチッ


黒霧 「だからもう絞まってるって。」


曙  「・・・ほんとは知ってるのよ。母さんがどうして嘘を吐いたのか。」


黒霧 「"時鏡の瞳"か。いつの間に使いこなせるようになったのやら。灯って、そういうところあるよね。」


曙  「これ、そんな名前なんだ。ってか、莫迦にしてるでしょ。」ムッ


黒霧 「わかる?」フフッ


曙  「私だけ扱いが違いすぎない?他の娘には激甘なのに・・・。」


黒霧 「茜姉さんが認めていないのに、僕が勝手に君を娘と認めるわけにはいかないでしょ。」


曙  「くっそ。やっぱ、先に母さんをどうにかしないと駄目か。」チィ


黒霧 「優しくね。茜姉さんは、あれで結構繊細だから。」


曙  「アドバイスどうも。序でに言っとくけど。私、養子なんて妥協案には絶対にのらないから。」


黒霧 「それは何度も聞いたよ。」


アァ ソレカラ


黒霧 「君の名前が"灯"であることの意味を、よく考えることだね。」


曙  「灯は証、ね。憶えておくわ。ありがと、黒兄。」ンッ


漣  「さっきからな~にこそこそやってるのかにゃ~。」フシャー


朧  「うちらも交ぜろ~。」コーホー


潮  「内緒話はよくないと思いますっ。」ムー


曙  「知らぬが仏って言葉を知ってるかしら。」


漣  「寧ろ、あかりんがそれを知ってることに吃驚だぜ。」


曙  「黒兄、私の代わりにこいつぶっ飛ばしてくれない。」イラッ


黒霧 「生憎、僕は娘に向ける拳を持っていなくてね。」


漣  「愛してるぜ、ぱぱん。」ヒシッ


朧  「うちは殴ってもいいのよん。」ヒシッ


潮  「わ、私は、遠慮したい・・・でしゅ。」アゥ


曙  「へいへい。お優しいこって。」フン



みんなが均質な世界は平和だけど、絶対的につまらない。


近衛麗「ちょっと、パパぁ。娘を呼んでくるだけで、どんだけ時間掛けてるの~。」


黒霧 「娘との時間を大切にしたいだけだよ。」


近衛麗「私だってパパの娘なんだけど~?」ムゥ


黒霧 「今夜は一緒に寝てあげるから。」フフ


近衛麗「・・・はぁ。その一言で全部許しちゃう自分が憎いわ。」


時雨 「反吐が出そうなんだけど。誰か、エチケット袋持ってない?」オェ


紫苑茜「しーちゃんに創造してもらったら?」


時雨 「えー。」


紫苑茜「そんなにしーちゃんを頼るのが嫌?」


時雨 「・・・創造って、疲れるんでしょ?今のボクじゃ、どう考えても護られる側だからさ。あまり負担を掛けたくないんだ。」


紫苑茜「」キラキラ


時雨 「なにさ。そんな瞳で見ないでよ。」


紫苑茜「んもう。どうしてうちの娘達はこう可愛いのかしら。///」ハァ


時雨 「」ゾワッ


時雨 「にぃに。この人、変。」サッ


黒霧 「頭の良い人は見えてる世界が違うっていうからね。凡人の僕達からしたら、茜姉さんは相当な変態だよ。」


紫苑茜「変態とは失礼な!」


曙  「そうよ!せめて変人と言いなさい。」


紫苑茜「灯・・・。あんた、わたしのことそんな風に思ってたのね・・・。」ショックダワ



他人の理解力を疑う前に自分の説明力を疑おうか。


近衛麗「ところで、後ろのふたりはどちら様かしら。」ジト


鈴谷 「おっほ~。背筋が凍る~。」


熊野 「初対面の相手にそんな瞳を向けるだなんて・・・。人間不信でも拗らせてまして?」


近衛麗「ええ。パパに近づく女は特にね。」ウフフフ


鈴谷 「こいつはまずい。助けて、くまのん。」サッ


熊野 「私を盾にしないでくださいまし。」チョット


黒霧 「そんなに威嚇しないの。鈴谷と熊野には道案内をお願いしただけだから。」コラ


近衛麗「むぅ。」ヒシッ


曙  「ちょっと。邪魔なんだけど。」


近衛麗「邪魔はあんたよ、灯。いつまでパパに負ぶさってるつもり?」


曙  「無駄に走らされて疲れてるの。今はその首謀者に責任を取ってもらってるところよ。」


近衛麗「あっそう。でも、そろそろお姉ちゃんのほうに移ってもいいんじゃな~い?」ニコニコ


曙  「はぁ?何言ってんの?お姉ちゃんが誰かを負ぶって歩けるわけないでしょうが。」


漣  「言われてんぜ、せん姉。」


紫苑茜「否定のしようがないわね~。」ハハ



べっさぁん!!


五月雨「お父さん。いつまで駄弁ってるつもりですか?行くなら行くで、ちゃっと行って、ちゃっと帰ってきてください。」


黒霧 「わかったよ。」フフ


紫苑茜「寂しいなら一緒に来ればいいのに。」


五月雨「いえ。別に寂しいとか、そういうのはないです。」キッパリ


紫苑茜「言いきったわね、この娘・・・。」


五月雨「さぁさ、行った!行った!ぐだぐだしてると、私が仕事をする時間が無くなってしまいます。」シッ シッ


紫苑茜「ちょっと扱いが雑なんじゃ・・・。」


五月雨「いいから、早く行く!」グイグイ


紫苑茜「わかった。わかったから、押さないでちょうだい。」モウ


・・・


五月雨「やっと行った。」フゥ


五月雨「それじゃ。いっちょやったりますか!」フンス



取り敢えず大きな道に出ればどうにかなる。


漣・朧「うはは~い。」ワー


紫苑茜「こぉら。はしゃぎすぎると迷子になるわよ~。」


時雨 「そうだね。早速ひとり脱落してるみたいだよ。」


紫苑茜「・・・え?」


近衛麗「あら、ほんと。おっぱいちゃんが居ないわ。」


紫苑茜「あの娘、方向音痴だったかしら・・・?」


曙  「どうでもいいけど。早く捜しにいったら?」


黒霧 「灯は行ってあげないの?」


曙  「・・・はぁ。仕方ないわね。」ヨイショ


曙  「さぁ、行くわよ、お姉ちゃん。失ったものを迎えに。」


紫苑茜「どうしたの?可笑しな言い回しを使ったりなんかしちゃって。少年漫画にでも影響された?」ウフフ


曙  「私の趣味じゃないわよ。」フン


ホラコッチ アァ ヒッパラナイデチョウダイ


時雨 「上手く、いくといいね・・・。」


黒霧 「灯なら大丈夫さ。何たってあの娘は、黒霧の血を継いでいるからね。」フフ


時雨 「そっか。・・・それはそうと、にぃに。姫ちゃんは何処に消えたんだろうね。」


黒霧 「全力で捜すとしようか。」ビキッ


鈴谷 「おぉ。頬に黒い痣が。何かのイリュージョンかな?」


熊野 「若し仮にそうだとしたら、酷く地味なイリュージョンですわね。」



わかってる。だけど・・・。


紫苑茜「ねぇ、灯?あなた、姫ちゃんの居場所に心当たりでもあるの?」


曙  「んなもんあるわけないじゃない。私、此処に来るのは初めてよ?」ハァ?


紫苑茜「だから訊いてるのよ。行く宛もないのに、突き進んでいくんだもの。」


ピタッ


曙  「行く宛・・・ね。確かにないわね、そんなもの。だって、私は失った過去を取り戻そうとしているだけだもの。」


紫苑茜「・・・灯?」


曙  「私は、母親がどんなものか知らない。父親がどんなものかも知らない。気づいたときには、あの孤児院に居て・・・。」


曙  「澪と撫子の莫迦コンビに振り回されてた。」


曙  「だけど、黒兄に出会って。家族の在りようを見せつけられて。みんな懐いちゃって。」ハッ


曙  「・・・私だけ、残っちゃった。」


紫苑茜「それなら、灯も養子に・・・。」


曙  「いやよ!絶対にいや!!どうして本当の両親が目の前に居るのに養子になんてならないといけないの!」


紫苑茜「灯・・・。あなた、気づいて・・・。」


曙  「ねぇ、母さん。どうして私を捨てたの・・・?どうして、嘘を吐いたの・・・。」フルフル


紫苑茜「・・・。」


曙  「答えてよ、母さん。」


紫苑茜「やってくれたわね、しーちゃん。わたしにだけはほんと、容赦ないんだから。」フゥ



君の言葉で伝えてほしい。


紫苑茜「まず始めに言っておくわね。わたし、紫苑茜は、あなた、紫苑灯の母親で・・・間違いないわ。」


曙  「知ってる。で?」


紫苑茜「あなたを捨てたことも認める。言い訳はしない。わたしは決して許されないことをした。」


紫苑茜「あなたと共に生きる道ではなく、彼と共に生きる道を選んだ。」


曙  「っ!言ってくれるじゃない。父さんと私と、その両方を取る選択肢は無かったのかしら。」キッ


紫苑茜「身籠もった時期がもう少し遅ければ、或いは・・・。あのとき、わたしは独りだったから。」


紫苑茜「悔しいけど、わたしにはあなたを護ってあげられるだけの力が無かった。」


曙  「・・・父さんは?父さんはどうしたの。」


紫苑茜「お仕事で忙しかったのよ。当時は聖戦の真っ只中だったし。そもそも身籠もったこと自体、彼は知らないから。」


曙  「んのクソ親父。肝心なところで役立たずなんだから。」チッ


紫苑茜「ねぇ、灯?あなた、もっとわたしに怒ってもいいのよ?ううん。寧ろ怒ってちょうだい。そうでなきゃ、わたしが・・・。」


曙  「い・や・よ。怒られて、それで区切りをつけようだなんて、虫が良すぎると思わない?」


曙  「一生、後ろめたさに苛まれることね。」フフフ


紫苑茜「・・・はぁ。流石はわたしの娘だわ。いい性格してる。」ヤレヤレ



あなたの初恋は人生を蝕む毒か、将又薬か。


紫苑茜「ところで、しーちゃんとは何か話したの?」


曙  「え?まぁ、それとなく?」


紫苑茜「それとなくって何よ。それとなくって。」


曙  「だって、母さんが私を娘と認めていないのに僕が認めるわけにいかないとか、殆ど認めたのと同じことを平然と口走るんだもん。」


曙  「あいつ、絶対わざと言ってるわ。」


紫苑茜「それがしーちゃんだから。」ウフフ


曙  「はぁ~あ。父さん、これでちゃんと甘やかしてくれるかしら。」


紫苑茜「へぇ。それが灯の本音?うちの娘達は揃いも揃って・・・。しーちゃんの因子にはファザコンになる呪いでもあるのかしら。」


曙  「私の場合はどう考えても母さんの所為でしょ。父さんを想う母さんの心に毒されてるのよ。」


紫苑茜「毒されてるとは随分ねぇ。でも、しーちゃんはやめておきなさい。初恋の相手があの子だなんて、それこそ猛毒よ。」


曙  「・・・もう遅いっての。」フフ


紫苑茜「・・・。」


曙  「あによ。文句ある?」


紫苑茜「わたしに聞こえるように言ったのはわざとよね。宣戦布告と受け取るわよ?」ゴゴゴ


曙  「親愛と恋愛の違いくらい弁えてるわよ、ぶぁ~か。」ニッ


紫苑茜「この娘はっ。」ヒクッ


曙  「これからよろしく、母さん。」ウフフ


紫苑茜「わたしはよろしくしたくなくなってきたわ・・・。」ハァ



諦めても終われない仕合だってあるんだよ。by Uramichi


黒霧 「」オォォ


鈴熊野「・・・。」


時雨 「にぃに。娘への愛情が深いのはわかるけど、もう少し抑えなよ。色々漏れてる。」


黒霧 「漏れてるんじゃなくて、出してるんだよ。地下室で説明してあげたでしょ?」


時雨 「・・・え?若しかして、霧を使って壁との距離を測ってるとかいう・・・あれ?待って。街単位でやってるの!?」


黒霧 「そう。だから今は集中させておくれ。割と、余裕ないからさ。」フッ


時雨 「余裕ないとかそんなレベルじゃないでしょ!命に関わる問題だから!無茶しすぎだよ!」


黒霧 「姫百合だって、今正に命の危機に瀕しているかも知れないでしょ?無茶くらいするさ。」ニッ


時雨 「このっ!ああ、もう!わかった!能力を使うことは止めないから、救出はボクに任せて休んでなよ?いいね!」ビシッ


黒霧 「見つけた。こっちだ。」シュンッ


時雨 「話聞いてた!?休んでろって言ったよね!」


マテコラー!!


鈴谷 「ねぇ、くまのん。私、あんな親莫迦な人にアタックする勇気ないんだけど・・・。」


熊野 「初めては弄ばれるくらいがいいと言ったのは貴女ですのよ?彼以外の男性も近くに居ないことですし、振り絞ってくださいな。」


鈴谷 「他人事だと思ってぇ。鈴谷ったら不幸だ~。」アァ



君はまだ自分の可能性に気づいていないだけさ。


潮  「んん・・・。」パチクリ


???「あ、やっと起きた。」


潮  「だぁれ・・・?」クシクシ


???「あれ?憶えてない?最近会ったばかり・・・。て、そっか。あのときは仄の姿だったね。」


潮  「仄・・・?」ハッ


潮  「じゃあ、貴女は・・・。」サー


???「んふふ。この姿では初めましてだねぇ。私が黒霧日陰だよ。」ニィ


潮  「ふぇえ。」ジワッ


日陰 「あぁ、泣かないで。ちょっと、そこに居る人と話がしたかっただけだからさ。」チラリ


黒霧 「君は本当に、回りくどい遣り方が好きだね、日陰。」フゥ


日陰 「どうしたの?時雨くん。随分と息があがっているようだけど。」ウフフ


黒霧 「眠ほどではないさ。」


時雨 「ほんとにねぇ。」ゼェ ハァ



もう、駄目だっ!


黒霧 「思ったよりも早い再会だね、日陰。それも君自ら出張ってくるなんて・・・。」


日陰 「ん~。本当は私も深海に籠もっていたかったんだけどね~。」ンフフ


日陰 「・・・困ったちゃんの御蔭で外に出てこざるを得なくなったの。」オォォ


黒霧 「いい加減、その引き籠もり癖直しなよ。」


日陰 「私は家が好きなの~。海派か山派かと訊かれたら家派と答えるの~。」クネクネ


時雨 「にぃに。この人もう駄目だ。」


黒霧 「知ってる。」


日陰 「って、そんな話をしにきたんじゃなくて。」


黒霧 「うん。用事あるから、手早く済ませてね。」ニコリ


日陰 「私の守護者になって?」キャピッ


黒霧 「・・・。」


時雨 「あんなことをしでかしておいて、よくもまぁ、ぬけぬけと。やっぱり駄目だ、この人。」



君もきっと河合荘。


黒霧 「もう少しだけ時間をあげるから、詳しく話してもらえる?」


日陰 「あっはは。上からくるね~。時雨くんのそういうとこ好きだよ。」ウフフ


黒霧 「いいから、早く。」


アイアイ アイハイッカイ アーイ エェ


日陰 「私、絶賛命を狙われてるの。」ニッコリ


時雨 「そのまま狩られてなよ。」ハッ


日陰 「酷いなぁ、眠ちゃん。」アハハ


黒霧 「で、誰に?」


日陰 「白くて黒い女の子。」


ピクッ


黒霧 「・・・君ほどの柔術使いなら撃退できると思うんだけど?」


日陰 「退いてくれないから困ってるんだな~。人外相手だと柔術は決定打に欠けるからさ。」


黒霧 「・・・わかった。解決するまでの間は近くに居ることを許可してあげるよ。ただ・・・。」


日陰 「ただ?」


黒霧 「澪との仲を取り持ったりはしないから、自分でどうにかしてね。」


日陰 「その問題があったか。」アチャー


黒霧 「さ、みんなの所に戻ろうか。おいで、姫百合。」


潮  「うん・・・。」トテトテ


時雨 「あ、にぃに。ボクも負ぶって。色々疲れた。」


日陰 「じゃあ、私も~。」


黒霧 「容量オーバー。走ってついてきて。」


日陰 「吐血しても知らないぞ~?」



どうしたって、私はあなたになれないの。


スズヤー? クマノー?


天龍 「ったく。何処に行きやがったんだ?あいつら。」


天龍 「部屋にも居ねぇし。秘密の漫画部屋にも・・・。」ハッ


天龍 「まさか。あの野郎に誘拐されて、あんなことやこんなことをっ!」ズガーン


天龍 「野郎!遂に本性を顕しやがったなぁ!」


龍田 「乙女の妄想力って、ほんと凄いわね~。」ユラァ


天龍 「妄想じゃねぇよ!鈴谷と熊野があいつの毒牙に!つーか何処からわいた!」


龍田 「その根拠は?」


天龍 「・・・根拠?」


龍田 「そう。根拠の無い想像を人は妄想というの。天龍ちゃんが言うそれは、ちゃんと根拠があるのかしら~。」


天龍 「勿論あるぜ!あいつの為人を見ていれば・・・!」


龍田 「違う。」


天龍 「違わねぇって!」


龍田 「違う!・・・認めたくないだけなんでしょ。あの人以外の誰かが、あたし達の提督になることを。」


天龍 「ぐっ・・・!」


龍田 「ねぇ、お姉ちゃん。気づいてた?あたし、お姉ちゃんのことも好きだけど。あの人のことも・・・大好きだったの。」


天龍 「はぁ?何だよ、急に。そんな素振り、今まで・・・。」


龍田 「見せなかったわよ。それが一番、幸せな選択だと思ったから。」


天龍 「幸せって。お前の幸せは何処にあるんだよ。お前が身を退けば丸く収まるって、それは違うだろ!」


龍田 「お姉ちゃんとあの人の幸せが、あたしの幸せだったの!幸せな、はずだったの・・・!」フルフル


龍田 「でも、結婚したふたりを見ていて、積もるのは苛立ちばかりだった。」


龍田 「結婚したくせに、大切にされてるくせに・・・。何あれ。ほんと、あたしが結婚してればよかった。」


天龍 「今更、何言ってんだよ。俺に相談もしないで勝手に諦めたのはお前だろ!」


龍田 「五月蠅い!彼の隣りに居るのがあたしだったら!あの夜、彼がひとりになることはなかった。彼が死ぬことはなかった!」


天龍 「言いやがったな、てめぇ。もう終わったことをいつまでも。いい加減に俺も我慢の限界だ。」ビキッ


龍田 「それよ。」グスッ


天龍 「あぁ?」


龍田 「"もう終わったことをいつまでも"。彼の死は、もう終わったことなの。」


天龍 「龍田・・・。お前。」


龍田 「あなたは歴戦の勇士、天龍型一番艦・天龍!そして!このあたしが尊敬するかっこいいお姉ちゃんよ!」


龍田 「いつまでも過去を見てないで、未来を向きなさい!あなたが進まなきゃ、あたし達もついていけないでしょ!」


天龍 「・・・へっ。ったく。仕方ねぇな、ちくしょう。」


天龍 「おらぁ!天龍様の復活だ!もう過去には囚われねぇ。ただ、取り敢えずの目標は、あいつの仇討ちだぁ!」


天龍 「全員、俺についてこ~い!!」



若いうちにやるかどうか迷ったなら、やってしまえ。


アーハッハッハッハー


龍田 「手の掛かる姉を持つと大変だわ・・・ほんと。」ハァ


龍田 「それにしても、可愛い顔して酷なことをさせるものね。」


五月雨「そうですか?本音でぶつかれるのは家族と親友の特権ですよ?権利は使ってなんぼです。」フンス


龍田 「んもう。正しいことって、意外と行動に移すのは難しいものよ?」


五月雨「繋がりの輪を壊してしまうからですか?その程度で壊れるような絆は、どうせすぐに壊れますよ。」


五月雨「私達の人生はまだまだこれからです。永い付き合いになるか否か。それを見極め、時には捨ててしまうことも大切ですよ?」


五月雨「私達が他人に伸ばすことのできる手は2本しか無いんですから。」フフ


龍田 「それは、一度に引き止めることのできる相手はふたりまで、ということかしら?」


五月雨「さぁ?どうでしょうね。」


天龍 「龍田~?さっきから何ぶつぶつ言ってんだ?」


五月雨「おっと。私が裏で色々とやっていたことを天龍さんに知られると面倒ですね。では、私はこれで。」スタコラー


天龍 「誰か居るのか?」ンー?


龍田 「居ないわよ。幻聴でも聞こえてたんじゃない?」ウフフ


天龍 「んなわけねぇだろ。妹の声を聞き間違えるかよ。」


龍田 「///」カァ


龍田 「じ、じゃあ!妖精さんの悪戯よ!」アセアセ


天龍 「ほ~ん。随分と暇してる妖精さんが居るもんだなぁ。」ニヤニヤ


???「あら~。それは私のことかしら~。」


天龍田「!?」バッ


龍田 「榛名・・・さん?」


榛名ミニ「はい、榛名です。よく似てますでしょう?」ニッコリ


天龍 「」ブフッ


龍田 「私の声で遊ぶのはやめてもらえるかしら~。」ニコニコ


龍榛名「あらあら~。」ウフフフ


天龍 「あははは!駄目だ!面白すぎるっ!」ヒー ヒー


龍田 「天龍ちゃ~ん。」ガシッ


天龍 「は・・・。」タラー


龍田 「覚悟はいいかしら~。」ニコォ


天龍 「」マッシロ



信頼とは、結果で勝ち取るものだ。


五月雨「さてさてさ~て。天龍さんのほうは一応片付きましたから、次はあの方々ですね~。」ルンタッタ


デハ


五月雨「お邪魔しまんにゃわ~。」ガチャリ


???「あら。見ない顔ですね。どちら様ですか?」


???「建造は止まっているからな。後釜が一緒に連れてきた娘だろう。」


???「あぁ、あのギリギリ及第点の。」


???「何様・・・。」ボソッ


ナニカイッタ? イエ


五月雨「後釜だの、及第点だの。随分と好き勝手言ってくれますねぇ。」


五月雨「娘の前で父親の悪口を叩くとは、いい度胸ですよ。」マッタク


???「娘?なるほど。あの方は既婚者なのですね。」


???「残念だったな、足柄。お前の付け入る隙は無いようだぞ。」ニィ


足柄 「ちょっと。まるで私が男に飢えてるような言い方はやめてよ、那智姉。」


???「事実ですよね。」


足柄 「何か言った?羽黒。」


羽黒 「いえ、何も・・・。」


五月雨「三人寄れば姦しいなんて言ったりもしますが、正しくですね。私の存在を無視しないでもらえますか?」


???「あら、ごめんなさい?」ウフフ


那智 「すまんな。我々は実力至上主義だからな。矮小な者の言葉は耳に届かんのだ。」フッ


五月雨「その言葉を待ってました。」ニタァ


羽黒 「ひっ。」ビクッ


五月雨「妙高型の皆さんに演習を申し込みます。まさか、断ったりしないですよねぇ。こんな"矮小な"娘からの挑戦を。」フフフ


妙高 「それは、4対1ということでしょうか?舐められたものですね、私達も。」


那智 「目にもの見せてくれる。」



だから戦闘描写は苦手だって。


足柄 「ん~。この艤装を着けるのも久し振りね~。」コキコキ


那智 「まさか鈍ったりはしていないだろうな、足柄。」


足柄 「はぁ?私を誰だと思ってるのよ。毎日の訓練は欠かしてないわよ。」


羽黒 「訓練用の艤装と本当の艤装は色々と感覚が違うと思うけど・・・。」


足柄 「揚げ足を取って愉しい~?」ガシッ


羽黒 「痛い。握力強い。ゴリラ。」ウゥ


足柄 「あんた最後なんつったぁ!」クワッ


妙高 「こら。妹を虐めては駄目ですよ?」メッ


足柄 「虐めって、どう考えても悪いのは羽黒っ!」


妙高 「足柄?」ニッコリ


足柄 「ぐっ・・・!」


那智 「諦めろ。妙高は羽黒には激甘だからな。」フッ


羽黒 「」ヘッ


足柄 「こいつぅ~!」ワナワナ


五月雨「やる気あるんですかね、あの人達。大破判定くらいでいいかと思っていましたが・・・駄目ですね。」


五月雨「プライドをズタズタに引き裂いて、轟沈してもらいましょうか。」ジャキン



慎重さを欠いては思わぬ失敗をする。


五月雨「演習開始~。」ピー


妙高 「距離を取って射撃。魚雷に注意しなさい。接近さえさせなければ、駆逐艦に敗北する道理はありません。」


那智 「承知。」ガション


羽黒 「五月雨ちゃん、砲も魚雷も装備してない。大きな鎌を持ってる。」


足柄 「へぇ、面白いじゃない。」ニィ


妙高 「一撃で仕留めます。主砲、一斉射!放て!」


ドーン!


五月雨「うっすい弾幕ですねぇ。」サッ


ザッパーン


五月雨「横一列に並んでまぁ。接近されてからのことを考えてないんですかね。舐めすぎですよ、まったく。」シュバッ


足柄 「はやっ!?」


五月雨「改造艦娘のお通りですよ~。」ギューン


妙高 「近づけてはいけません!」


那智 「わかっているさ!」ボカーン


羽黒 「敗色濃厚・・・かも。」ソローリ


足柄 「あぁ、もう!中たんないわ!私が動きを止めるから、しっかり狙ってよ!」


那智 「間違えて中てても文句言うなよ!」


足柄 「言うわよ!那智姉がそう言うときは大抵、わざと狙ってるときなんだから!」


五月雨「演習中によそ見ですか?」ブゥン


シュバッ


足柄 「へっ?飛んだ・・・?」


ザシュッ


羽黒 「あぐっ!」


五月雨「実戦の基本は"かも知れない"です。駆逐艦が鎌を使って、棒高跳びをする"かも知れない"。」


五月雨「その予測さえできていたならば、羽黒さんは傷つかずに済んだでしょうに・・・。」


五月雨「さて、お次は誰にしましょうか。」ニタァ



※大鎌からは反重力の弾が出ます。


妙高 「よくも、私の可愛い妹を!」ギリッ


那智 「足柄はそのまま主砲で狙え!私と妙高で足を止める!」


足柄 「了解!」ジャキン


妙那智「機銃、斉射!」ババババ


五月雨「中たりませんよ。」ブゥン ポンッ


グニャァ


妙高 「弾道が歪んで・・・!」


五月雨「重力操作って便利ですねぇ。これが私の実力だ、なんて傲ったことは言いませんが・・・。」


五月雨「持ち得た能力をどう使うかは、実力の内に含まれますよね?」ギュンッ


那智 「っ!」


五月雨「ふたりめ。」ドゴォ


那智 「がっは!!」メキィ


妙高 「那智ぃ!」


五月雨「貴女は少し浮いててください。」ポンッ


妙高 「か、身体が!?」フワッ


五月雨「その隙に刻みますので。」ザンッ


妙高 「がっ!」ゴフッ


バシャン


五月雨「あと、ひとり・・・。」ユラァ


足柄 「!」ゾワッ


五月雨「うふっ。愉しいですねぇ。ね、足柄さん?」ニチャァ


足柄 「この娘、本当に艦娘?雰囲気が完全にフラグシップ級じゃないの。」


足柄 「まさかこの私が、闘いに恐怖を感じるなんてね・・・。」ハハッ


五月雨「終わりです。」シュンッ


足柄 「バケモノ。」ニィ


ザシュッ



そして荒野は紅く染まる。


天龍 「なんだよ・・・これ。」


龍田 「演習場が真っ赤ね~。」アラアラ


榛名ミニ「これは流石に、ちょっと・・・。」ウワァ


五月雨「おや、皆さんお揃いで。どうかしましたか?」ニッコリ


天龍 「どうかしましたか?じゃねぇだろ。大惨事になってるじゃねぇか。ちゃんと生きてんだろうな、おい。」


五月雨「まぁ、かろうじて。ですが、那智さん以外のお三方は致命傷ですので、早く処置しないとまずいですよ。」


龍田 「あら、それは大変ね~。榛名ちゃん、手を貸してもらえるかしら~?」


榛名ミニ「そうしたいのは山々なのですが、今の私は妖精クオリティなもので・・・。」


五月雨「あ、羽黒さんは私が運びます。少し、話したいこともありますし。」ヒョイ


羽黒 「うぅ。」


龍田 「そう?じゃあ、私は足柄ちゃんを運ぼうかしら。」ウフフ


天龍 「つーことは俺が妙高かよ。」ハァ


妙高 「なんですか?その反応は。まるで、私が重いみたいな・・・。」


天龍 「おう、わかってんじゃねぇか。もうちょい痩せろよな。」グイッ


妙高 「このっ。というか、私は重症なんですよ?もう少し丁寧に扱って・・・。」


天龍 「お前が重いから引きずるしかねぇんだよ。」ズリズリ


妙高 「あなたっ。いったい私に何の恨みが!」クッ


天龍 「人の話を聞かねぇ奴の話なんざ聞いてやんねぇ。」ハッ


那智 「・・・放置プレイか。まぁ、悪くないな。」フッ


榛名ミニ「何を言ってるんですか。ほら、補助くらいはしてあげますから、しっかり歩いてください。」モウ


那智 「肋が折れている者に対して酷なことを言うものだ。」ゴフッ


那智 「・・・どうやら、肺に刺さったらしい。」フッ


榛名ミニ「台車持ってくるので休んでてください。」ヤレヤレ



自分だけの幸せを見つけたらいい。


足柄 「あー。酷い目に遭ったわ。」グデーン


那智 「そうか?私は中々に楽しめたが。」フッ


足柄 「肺に穴空けられといて何言ってるのよ。」


那智 「久し振りに昂ぶってしまった。お前もそうだろう?」


足柄 「・・・まぁ。否定はしないけど。」


那智 「そらみろ。」


足柄 「お姉ちゃんの悪いところが似ちゃったのよ!」フンッ


那智 「お前を産んだのは私ではないぞ。」


足柄 「先に産まれたのは事実でしょ。」


那智 「似た者姉妹だな。」フフ


足柄 「似たくない部分もあるけどね。火遊びが過ぎるところとか。」


那智 「鍛えてしまえば火傷なぞ・・・。何処かにこの身を焦がすほどの焔はないものか。」


足柄 「まだ遊ぶつもり?いい加減に落ち着いてよ。家庭は温かいくらいが丁度いいんだから。」


足柄 「家に帰る度に身を焦がしてたんじゃ、永続きしないわよ?」


那智 「私は別に家庭を持ちたいわけではないからな。ぬるま湯に浸かるのは、まだ先でいい。」


足柄 「あっそ。ま、那智姉にもいつかは落ち着く気があるってわかっただけ良しとしようかしら。」フゥ


那智 「は?」キョトン


足柄 「何よ。さっき自分で言ったじゃない。"まだ先でいい"って。それはつまり、将来的に結婚する意思はあるってことでしょう?」


那智 「そうか。・・・そう、だな。そのようだ。」


足柄 「自覚なかったのね。」ハァ


足柄 「今のうちにいい男見つけなさいよ?那智姉、遊び尽くした果てに凡庸な男とくっつきそうで心配だわ。」


那智 「未だ交際経験ゼロのお前に心配される筋合いは無いが。心に留めておくとしよう。」フッ


足柄 「あいっかわらず一言余計なのよね。こんちくしょー。」イラァ



自己分析を主観で行ったって意味はない。


妙高 「」ブッスー


天龍 「手酷くやられたなぁ。なぁ、妙高さんよぉ。」ニシシ


妙高 「冷やかしなら帰っていただけますか?」


天龍 「別に、んなつもりはねぇよ。半分くらいしか。」


妙高 「そうですか。帰っていただけます?」ニコー


天龍 「まぁ、いいじゃねぇか。お前ら妙高型がこうも無様にやられるなんて、そんな機会滅多に拝めねぇんだからよ。」


妙高 「だからです!誇り高き妙高型が、あんな無様をっ!」ギリッ


天龍 「で、実際どうだったんだ?」


妙高 「・・・バケモノです。それ以外の言葉が出てこないくらいに、彼女の実力はバケモノ染みています。」


天龍 「そう・・・か。俺達だけじゃキツいか?」


妙高 「正直、厳しいと思います。龍田さんであれば、五月雨さんひとりを抑えることはできるかも知れませんが・・・。」


天龍 「他の連中を対処しきれないか。」


妙高 「第七駆逐隊の面々も、特殊な艤装を持っていると考えて対策を立てるのが無難でしょう。それに・・・。」


天龍 「あの白髪野郎が問題だな。見るからに只者じゃあねぇ。しかもだ。横に居た金髪と時雨、紫髪からもヤバい匂いがした。」


妙高 「キャパオーバーですね。」ハァ


天龍 「あいつらを呼び戻すしかねぇか。」ガシガシ


妙高 「あの方々を、ですか。それはまた・・・。」


天龍 「ああ。面倒なことになるな。」トオイメ



だって人は、あなたの内面を内側から見ることはできないのだから。


シャッ シャッ


羽黒 (何の音・・・?)パチクリ


五月雨「・・・こんなものでしょうか。」キラン


羽黒 「!?」


羽黒 (どうしてナイフを研いでるの~!?)ビクビク


サクッ


五月雨「おぉ~。これは中々。良い切れ味ですねぇ。」ニヤッ


羽黒 (ひぃ~!)ガタガタ


シャクシャク


五月雨「梨、うま~。」キラキラ


羽黒 「へ?」


五月雨「はい?」


羽黒 「今のは、その。山姥的展開なんじゃ?」


五月雨「あ、そっちのほうがよかったですか?」シャクッ


羽黒 「いえ、別に・・・。あの、私もひとつ貰っても?」


五月雨「はい、いいですよ。」ドウゾ


羽黒 「・・・。」


五月雨「食べないんですか?」ムグムグ


羽黒 (丸ごとひとつ貰っても・・・。)アハハ



受け入れ難きは信念の違い。


五月雨「まぁ、冗談はこれくらいにして。剥きますから、貸してください。」


羽黒 「あ、ありがとうございます。えと・・・。」


五月雨「私のことは五月雨でいいですよ。それから、敬語も不要です。」ムキムキ


羽黒 「うん。ありがとう、五月雨ちゃん。」


五月雨「お礼を言うのはまだ早いかも知れませんよ?私は、貴女のことが今のところ嫌いですから。」シレッ


羽黒 「そっか・・・。」


五月雨「ええ。味方の影に隠れて狙い撃つ戦法を否定するつもりはありませんが、姉妹を簡単に見捨てる貴女の性根には反吐が出ます。」


羽黒 「・・・。」


五月雨「だから私は、貴女を一番に狙ったんです。」ナシドウゾ


羽黒 「・・・。」シャクッ


五月雨「何か、言い訳のひとつでも無いんですか?」


羽黒 「言い訳というか・・・。姉妹って、そんなに大事かなって。」


五月雨「と言うと?」ヒクッ


羽黒 「私、孤児院の出だから、本当の姉妹なんて居ないの。それどころか両親だって居ない。ずっと、ひとりで生きてきた。」


五月雨「孤児院には仲間が居たんじゃないんですか?うちにも孤児院出身の娘達が居ますが、みんな仲良しさんですよ?」


羽黒 「それは特殊な例だよ。普通は、誰も助けてなんかくれない。みんな、自分が生きることに必死だから。」


五月雨「妙高型の皆さんもですか?」


羽黒 「ううん。お姉ちゃん達は違う。私のことを気に掛けてくれる。妙高お姉ちゃんは特に。」


五月雨「そんなお姉さん方を裏切って、貴女はどうともないと。」ジト


羽黒 「ないよ。」


五月雨「へぇ。」


羽黒 「私が一番欲しいのは家族の温もりじゃない。身の安全。私はね、艦娘になんてなりたくなかったの。」


羽黒 「特待生になって、大学の学費免除の資格を貰って、卒業して、そのまま普通に就職するつもりだった。」


羽黒 「だけど、孤児院に育ててもらった分は艦娘として働いて国に貢献しろって、強制的に徴兵されて・・・。」フルフル


羽黒 「冗談じゃない!」ダンッ


羽黒 「私は、自分の身を護るためだったら何でもする。何だって利用する。間違っても他人の為に自分を犠牲になんてしない。」


羽黒 「私の生を脅かす存在は消す。私以外の全てを犠牲にしてでも。それが、私の信念だから。」


五月雨「私とは真逆ですね。私は、家族の為なら全てを投げ出す覚悟をしています。」


羽黒 「別に、わかってほしいなんて思ってない。わかりたいとも思わない。だから、五月雨ちゃんの考え方を押しつけるのはやめてよ。」


五月雨「元よりそのつもりですよ。」シャクッ


羽黒 「え?」


五月雨「他人からどうこう言われたくらいで変わってしまう信念なんて、始めから無いのと同じです。」


五月雨「私はただ、確かめたかっただけです。羽黒さんがちゃんと自分だけの信念を持っているかどうか。」


五月雨「行動理念がころころと変わる人とは連携が取りにくいですからね。その点、羽黒さんはしっかりとした理念を持っていました。」


五月雨「まぁ、声を大にして褒められるようなものではありませんでしたが。いいんじゃないですか?それで。」


五月雨「命あっての物種とも言いますし。何より、自分を犠牲にしてまで助けられても、素直に喜べないですから。」


羽黒 「五月雨ちゃん・・・。」ジーン


五月雨「でもやっぱり羽黒さんのことは好きになれそうにないです。」ニッコリ


羽黒 「五月雨ちゃん・・・。」


龍田 「台無しね。」ヤレヤレ



蒼い髪に黒い外套・・・。リ〇ルじゃねぇか。


五月雨「ま、羽黒さんの為人はわかりましたし。これで良しとしましょう。要は、羽黒さんを危険に晒さなければいいわけです。」


五月雨「蒼の貴公子と呼ばれるこの私にかかれば、娘っ子のひとりやふたり。華麗に護って魅せますとも。」フフン


羽黒 「どちらかと言うと死神のほうが・・・。」


五月雨「おっと、そこまでだ。」


龍田 「そうね~。貴公子はそんな大仰な鎌を振り回したりしないものね~。」ヒョコッ


五月雨「失敬な。背は低くても、これで結構かっこいいところあるんですからっ。」フン


龍田 「じゃあ、五月雨ちゃんの好きな色は?」


五月雨「黒です。」キリッ


羽黒 「だろうね。」アハハ


龍田 「何処が"蒼"なのかしらね~。」ウフフ


五月雨「・・・髪の色?」


羽黒 「演習のとき、蒼白く輝いてたよ?」


五月雨「何それ、かっこいい。」ワァオ



莫迦で天才なのさ。


龍田 「五月雨ちゃんったら、愈々普通の艦娘じゃないわね~。」


五月雨「それに関しては随分前に悟ったので置いといてください。」


龍田 「あら、そう?じゃあ、置いておくわね。」


羽黒 (いいのかな?それで。)


五月雨「で、何やらこそこそとやっていたようですけど。私に何か御用ですか?」


龍田 「あら~。五月雨ちゃんったら、何でもお見通しなのね。」ウフフ


五月雨「そうですとも。何なら、その内容まで中ててみせましょうか。」フフン


龍田 「虚勢を張りすぎると後悔するわよ~。」


五月雨「今将に後悔しているところですとも。」タラー


羽黒 「五月雨ちゃんって、時々天才なのか、ただの莫迦なのか、わからなくなるね。」


五月雨「はっは。言ってくれますねぇ。いいですよ。そういうの、大好きです。」グッ



負けないと勝てないは両立する。


龍田 「本題にいってもいいかしら~?」


五月雨「はい、なんでしょう。」


龍田 「第七駆逐隊の娘達に関してなんだけど。仮に妙高型と演習をしたとして、どっちが勝つかしら?」ジッ


五月雨「実際やったほうが早くないですか?それ。」


龍田 「まぁまぁ。いいじゃない、そこは。」ウフフ


五月雨「ん~。まぁ、そうですね。試合に勝って、勝負に負けるってところじゃないですか?妙高型が。」


龍田 「その心は?」


五月雨「七駆には物理攻撃が全く通じない肉壁が居ますから。」


・・・


ヘッブシ


朧  「」ブルッ


漣  「おう、どした。風邪か?」


潮  「この間、雪塗れになったから。」


曙  「だとしたら原因はあんたよ、姫百合。」


漣  「なら、龍驤ぱいせんも同罪だな。」


曙  「どう責任を取るつもりなのかしらね。」


漣  「人に風邪をひかせる。こりは高くつきまっせ~。」ヘッヘー


潮  「ご、ごめんなしゃい。」ヒグッ


曙  「冗談よ。これくらいで泣かないの。お姉ちゃんでしょ?」モウ


漣  「俺っちは結構まじで・・・。」


曙  「あ?」


漣  「にゃんでもな~い。」~♪


朧  「ぱぱん。」クイッ


黒霧 「どうしたの?」


朧  「パンツ、買う。」ウルッ


黒霧 「・・・眠、あとは任せるよ。」


時雨 「りょーかい。娘の危機を救ってらっしゃい。」


黒霧 「それじゃ。」シュバ


イッテラー


時雨 「そういえば、にぃにってお金持ってるのかな。」ヒラヒラ


時雨 「ま、いっか。能力を使えばどうとでもなるだろうし。若し捕まったとしても元帥がどうにかするでしょ。」


近衛麗「権力の闇が見えるわ~。」



暑い今が汗をかくチャンスと考えるのは危険な思考だろうか。


五月雨「彼女は衝撃そのものを吸収してしまいますからね。砲弾が炸裂しなければ、数少ない弱点である火傷を負うこともありません。」


五月雨「そうなると残された攻撃手段は斬撃のみになるわけですが、この鎮守府でそれができるのは天龍型のおふたりだけですよね?」


龍田 「天龍ちゃんの日本刀は、殆ど飾りだけど・・・。剣術を修めているって意味では、そうね。」


羽黒 「でも、私達にはダメージを与える手段が無い・・・。」


五月雨「まぁ、その実あの四人は、艤装の扱いに関しては完全なる素人ですから。普通にやれば、まず負けることはないでしょう。」


五月雨「澪ちゃんの剛速球にさえ注意していれば。」ボソッ


龍田 「ふ~ん。それじゃあ、七駆の娘達は五月雨ちゃんのように特殊な艤装を持っているわけではないのね?」


五月雨「ええ。そうですよ?今のところは。」


龍田 「へぇ。」ピクッ


五月雨「明日か、明後日か。それがいつになるかはわかりませんが、此処に届く予定ですよ。彼女達の特別な艤装が。」ニパッ


龍田 「それは、頼もしい限りね~。」ウフフ


ウフフフフ


羽黒 (瞳が笑ってない・・・。)ダラダラ



SはSでも、どうしようもないS。


五月雨「そういえば、龍田さんは薙刀を使われるんですよね。」


龍田 「ええ、そうよ。試合、してみる?」


五月雨「天龍さんは刀を使うとか。」


龍田 「流されちゃったわ~。」アラアラ


羽黒 「こっち見ないでください。」サッ


五月雨「実はですね。私のお父さんも刀の使い手でして。相性はかなり良いと思うんですよね~。サディストですし。」


龍田 「天龍ちゃんはMじゃないわよ~。」


五月雨「だから良いんじゃないですか!お父さんは女性の泣き顔が好きなんです!」ムフー


羽黒 「えぇ・・・。」


龍田 「あら~。」ウフフ


五月雨「刀で興味を惹いて、鍛錬と称して虐め倒して、眼帯では留めきれなかった大粒の涙が零れる・・・。」


五月雨「最っ高じゃないですか!」クワッ


龍田 「この娘は一度、頭を取り替える必要があるようね。」スラッ


羽黒 「殺るなら外でお願いします。此処は病室なので。」



本命の前には初めてがある。


ガヤガヤ


鈴谷 「・・・。」ンー


オ コレカワイイ


鈴谷 「・・・。」クシクシ


ドウヨ コレ! スケスケジャナイノ! モドシテキナサイ!


鈴谷 「・・・。」チラッ


ヴー ヴー ピッ


鈴谷 「どったの?くまのん。」モシモーシ


熊野 『・・・何の為にふたりきりにしたと思ってまして?』


鈴谷 「いや・・・でも、何話したらいいかわかんないし。」コソコソ


熊野 『誕生日に血液型、好きな食べ物に味付け、これまでの交際経験やら女性に求めるものやら色々とあるでしょう?』


鈴谷 「見合いかよ。」


熊野 『似たようなものですの!』ワッ


鈴谷 「気合い入りすぎだよ・・・。」キーン


熊野 『いいこと、鈴谷。恋愛は情報戦です。今すぐ彼に話しかけて、何かしらの情報を引き出さないと・・・。』


鈴谷 「と・・・?」ミミイタイ


熊野 『学生時分に悪ノリして撮ったコスプレ写真をばらまきますわよ。』


鈴谷 「なんでそんな黒歴史をまだ持ってるのさ!?」


ブツッ ツー ツー


鈴谷 「切りおったぁ!!」ウガー



共通点があると話が続くよね。


鈴谷 「んもう。熊野ったら、スパルタなんだから。」トボトボ


近衛麗「ねぇ、パパ。こっちとこっちなら、どっちがいいかしら。」


鈴谷 「おっと。」サッ


黒霧 「蒼。」


近衛麗「即答ね。紫も色っぽくて良いと思うんだけど。」ウーン


黒霧 「麗は下着の色で底上げしなくても充分に魅力的でしょ?」


近衛麗「蒼にするわ。」


ジャ カッテクル


鈴谷 「ほ~。流石、手慣れてらっしゃる。でも、なんで蒼だったんだろ。」ノゾキ


黒霧 「僕の趣味。」


ウオッ


鈴谷 「あー、聞こえてた?」ヒョコッ


黒霧 「聞いてた。」ニッコリ


鈴谷 「そっか。」エヘヘ


鈴谷 「・・・青色が好きなの?」


黒霧 「好きだよ。透き通るような白も、妖しく煌めく紫も、淡く頼りない金色も。でも、一番好きなのは黒かな。」


鈴谷 「へぇ。だから服も黒一色なんだね。」マジマジ


黒霧 「黒は、あらゆる色が混じり合った色だからね。」フフ


鈴谷 「これ・・・さ。若しかして、手作りだったり?」


黒霧 「よくわかったね。君の言うとおり、全部僕のお手製だよ。」


鈴谷 「やっぱり!機械みたいに精密だけど、手縫いっぽい縫い目だな~って思ったんだぁ。」パァ


黒霧 「鈴谷も縫い物をするの?」


鈴谷 「うん!一から全部ってわけではないけど、フリルとか、ちょっとしたアクセントを付けたりしてるんだ。」ホラ コレ!


黒霧 「これは・・・中々やるね。」フム


鈴谷 「でしょ~。」ニシシ


黒霧 「灯が好きそうだ。」


曙  「あら、よくわかってるじゃない。父さんにしては。」


黒霧 「洞察力には自信があってね。」フッ


曙  「そこは家族だからって言いなさいよ、クソ親父。」



でっかいものクラブへようこそ。


黒霧 「お気に召すものはあったかな?」


曙  「どれもこれもまぁまぁね。」


漣  「よく言うぜ。サイズが無くて涙目になってたのは何処のどいつだよ。」


朧  「まだまだスポブラは卒業できないのよん。」


曙  「・・・私は、成長期。」グスッ


黒霧 「今度、僕が服を作ってあげるから。」ポム


曙  「うん。」ヒシッ


潮  「というか、サイズが無かったのはふたりも同じだったような・・・。」バーン


紫苑茜「此処、D以上の専門店みたいね。」ババーン


近衛麗「私は満足よ。」ムフン


漣  「これが格差かっ!」クッ


朧  「あと1ミリさえあれば!」クッ


ナンダト!!


曙  「もう父さんの作った服しか着ない。」ズーン


黒霧 「可愛いものを買い占めるのが夢じゃなかったの?」アハハ


曙  「変えたのよ。父さんに思いっきり甘やかしてもらうって夢に。」


黒霧 「それは夢でなく現実だよ。だから、元の夢を諦めちゃ駄目。灯には茜姉さんと同じ血が流れているんだから。」


黒霧 「ほら、見てごらん。希望しかないでしょ?外見だけは。」


曙  「・・・そうね。希望しかないわね。外見だけは。」


紫苑茜「中身はそっちに似たようね、このドSコンビが。」



だから写真は嫌いなのさ。


鈴谷 「熊野~。」ウワーン


熊野 「はいはい。よく頑張りましたわ、鈴谷にしては。娘さんに持っていかれるのは仕方ないですの。」ヨシヨシ


鈴谷 「私、頑張った~。」ウゥ


デ


熊野 「どんな情報を掴みましたの?」


鈴谷 「え?」


熊野 「まさか、ただ楽しくお喋りしていただけで何も聞きだせていないなんてことは・・・ないですわね?」ゴゴゴ


鈴谷 「も、もっちろ~ん!裁縫が趣味だって、バッチリ聞きだしたもんね~!」フンス


熊野 「他には?」


鈴谷 「へ?」


熊野 「他には?」ニッコー


鈴谷 「」ダラダラ


熊野 「これは、お仕置が必要ですわね。」


鈴谷 「待って!あれだけは!あのイタイ写真だけはご勘弁を~!!」ヒシッ


熊野 「問答無用ですわ。」


イヤアアアア!



何でもは知らない。知ってることだけ。by Tsubasa


鈴谷 「何とぞ・・・何とぞ・・・。」ウゥ


熊野 「もう、冗談ですわ。言ったでしょう?鈴谷にしてはよく頑張ったと。」


鈴谷 「ほんとに?」グスッ


熊野 「本当です。」


鈴谷 「ほんとのほんとに?」


熊野 「本当に本当です。しつこいですわね。」


時雨 「話は終わったかな。」ヌッ


ヒャァ!


時雨 「あはは。期待どおりの反応をありがとう。」フフ


鈴谷 「心臓止まるかと思った。」フー


熊野 「いったい、いつから其処に・・・。」


時雨 「始めから居たよ?君達、もう少し周りに気を配ったほうがいいんじゃない?」


鈴谷 「今のは気を配ってどうにかなるものじゃなかったような。」エェ


時雨 「それはいいとして。」


イインダ


時雨 「にぃにの何が知りたいのかな?」ニッコリ


鈴谷 「教えてくれるの!?」


時雨 「勿論。ボクが知っていることであれば、だけどね。」


鈴谷 「じゃあ、好きな食べ物は!」


時雨 「知らない。」ニコニコ


鈴谷 「なら、血液型は!」


時雨 「血の通っていない人の血液型を訊いたって何にもならないよ。」ニコニコ


鈴谷 「・・・女性の趣味は?」


時雨 「直接訊けば?」ニコー


鈴谷 「それができないから訊いてるのに!!」ムゥ!



知っているからこそか、何も知らないのか。


時雨 「でも、最後の質問についてはわからなくもない・・・かな。」


熊野 「わからなくもない?」


時雨 「ボクの主観でいいならってことだよ。にぃには自分のことを殆ど話さないからさ。何を考えているかもよくわからないし。」


鈴谷 「それでもいいから!とにかく教えて!」ズイッ


時雨 「近い・・・。」


ア ゴメン


時雨 「にぃにが恋愛感情を抱いているであろう女性は、ボクが知る限りで5人。」


時雨 「豪快な阿呆に、明るい阿呆。ツンデレ美人に、大人美人。そして、お淑やかで優しい姉さん。」


時雨 「この5人全員に共通する特徴はひとつだけ。それは・・・。」


鈴谷 「それは・・・?」ゴクリ


時雨 「みんな、じょせ・・・。」


日陰 「初恋なんだよ。」


・・・エ?


日陰 「だから、初恋の相手が時雨くんなの。それがず~と続いてる。ま、一途ってやつだよね。」


日陰 「時雨くんは変わった律儀さんだからさ。向けられた愛情には、ちゃんと愛情で応えてくれるよ。ていうか、眠ちゃん今・・・。」


時雨 「間違いじゃないも~ん。みんな女性だも~ん。」イー


鈴谷 「鈴谷、もうこの娘には頼らない。」


熊野 「賢明な判断ですわ。」



日頃の行いって大事ね。


熊野 「ところで、貴女はどちら様ですの?」


日陰 「私?そうだなぁ。私は・・・。」ポクポク


日陰 「おっ。」チーン


日陰 「時雨くんの子供を産んだ女です。」ニヒッ


鈴谷 「奥さん!?そういえば、透き通るような白も好きって!」ハッ


日陰 「あぁ、違う違う。その白は別の娘。私と時雨くんは、全然そんな関係じゃないから。」アハハ


熊野 「つまり、元奥様ですの?」


日陰 「それも違う。里の掟でね、本当にただ子供を産んだって事実があるだけ。幼馴染みみたいなものだよ。」


熊野 「恋愛において、幼馴染みというのは相当な利点でしてよ。」


日陰 「そうかなぁ?素の自分を見せられるから楽ってだけじゃない?」


熊野 「結局、傍に居てほしいと思うのはそういう人ですわ。」


日陰 「へぇ。それが君の理想なんだね。」ニヒヒ


熊野 「口が滑りましたわ。///」プイ


鈴谷 「そっか。今まで付き合った男はみんな、くまのんに夢を見てたから。御嬢様を演じるのに疲れたんだね、くまのん。」フ


熊野 「憐れみの瞳を向けるのはやめてくださいまし。それから、"庶民が夢見る御嬢様"を演じるのに疲れただけですの。」


熊野 「そこのところ、間違えてもらっては困りますわ。」フン


時雨 「御嬢様ってめんどくさ~い。」


鈴谷 「ひっど~い。それじゃあ鈴谷も面倒くさい娘になっちゃうじゃん。」ブー


時雨 「はぁ?」


鈴谷 「いや、そんな何言ってんの?みたいな顔しないでよ。鈴谷、ちゃんと良いとこの出だから。世間一般には御嬢様だから。」


時雨 「頭でも打ったの?」


鈴谷 「全然信じてくれないよぉ!」ウワァン


熊野 「日頃の行いの所為ですわ。淑女としての振舞いを身につけてくださいまし。」ハァ



型の優劣はよくわかりません。


セイッ ヤァッ


五月雨「ふー。・・・暇だ!」クワッ


五月雨「道場があったので、お父さんに教えてもらった組み手をやってはみるものの・・・。」シュッ ダン


五月雨「ひとりでは型しかできませんし。」フー


五月雨「良い汗はかけますがっ。」ダン


五月雨「・・・物足りませんね。」フゥ


パチパチ


那智 「見事な型だ。いったい誰に教わった?」


五月雨「那智さん。もう大丈夫なんですか?右半身の肋骨は全て叩き折ったはずですが。」


那智 「大丈夫なわけがあるか。足柄が寝てしまったのでな。暇つぶしに出てきただけだ。で、誰に教わった?」


五月雨「やけに拘りますね。そんなに私の型が気になりますか?」


那智 「・・・ああ。それは、私の恩人が使っていた型だからな。」


五月雨「恩人、ですか。」


那智 「私は元々陸の軍人でな。嘗て深海棲艦の襲撃に遭ったとき、当時の上司に命を救われた。」


那智 「口数は少なく、背中で語る男だったよ。私の憧れだ。」


五月雨「」ハーン


那智 「全く女として扱われなかったことは癪だったがな。軍人として彼ほど尊敬できる者は居ない。」フッ


五月雨「」フーン


那智 「私が艦娘になった理由も彼だ。海軍に引き抜かれたと噂で聞いて、私は艦娘になった。」


五月雨「」ホーン


那智 「未だ再会は果たせていないが、いつかまた彼の下で働いてみたいと思っている。」トオイメ


五月雨「憧れの上司・・・。似合わない真似しちゃって、まぁ。」ヤレヤレ


那智 「何か言ったか?」


五月雨「いえ、何も。取り敢えず、一本お願いします。」スッ


那智 「無茶を言うな。本来私は床に伏せている身なのだぞ。」オイオイ


五月雨「それを自覚しておきながらも此処に来たということは、つまりそういうことなのでしょう?」


五月雨「付き合ってあげますから、さっさとかかってきてください。」ホレ


那智 「・・・ふっ。何故だろうな。お前を見ていると、彼を思い出す。」


那智 「一本、付き合い願おう。」スッ


五月雨「床に送り返してやりますよ。」ヘッ



明日は運命の日さ。


クァ~


足柄 「よく寝た~。」ノビー


フゥ ・・・ン?


那智 「Zzz」ボロッ


足柄 「なんで病室に居て傷が増えてるのよ・・・。」エェ


黒霧 「五月雨と組み手をしていたみたいだよ。」


足柄 「」ビクッ


黒霧 「傷が治りきっていないのに無茶をして。あの頃から全く成長していないじゃないか。」ソッ


足柄 「帰ってたのね。というか、那智姉のこと知ってるの?まさか、昔の男とかじゃ・・・。」


黒霧 「そう見える?」


足柄 「何とも言い難いわね。那智姉は見境が無いから。綺麗な顔してるけど、趣味じゃないだろうし。」ンー


黒霧 「綾の口癖は、"強い男以外に興味はない"だからね。」フフ


足柄 「アヤ・・・?あ、那智姉の名前か。すっかり忘れてたわ。」


黒霧 「姉の本名を忘れるだなんて、随分と薄情だね、"海波 琴"上等。」


足柄 「あんた、まさか・・・。」ウゲッ


黒霧 「元舞鶴憲兵隊隊長・黒霧時雨。海軍でも君の上司になる。これから"も"よろしく頼むよ、琴。」ニィ


足柄 「はは・・・。御免被るわ、鬼仮面。」



パンデミックは止まらない。


足柄 「はぁ。仮面の下にこんな綺麗な顔を隠してただなんて・・・。詐欺よ、詐欺。」ハッ


黒霧 「当時は陰で随分と好き勝手言ってくれたみたいだね。全部、僕の耳に届いていたよ?」


足柄 「まことにもうしわけございませんでした~。」


黒霧 「誠意が感じられないな~。」ウリウリ


足柄 「じゃあ、この身体を好きにすればいいじゃない。髪以外の所だって弄ればいいじゃない。」ホラッ


黒霧 「鏡見て出直してきなよ。」ニッコリ


足柄 「ムカつくっ!」


プフッ


足柄 「那智姉、起きてたの。」


那智 「いや、すまん。もう少し、ふたりの時間を楽しませてやろうと思ったのだがな。堪えきれなかった。」フフッ


足柄 「やめてよ。こんな奴とふたりだなんて、吐き気がするわ。」


那智 「何を言う。皆がお前達の関係を勘違いするくらいに仲睦まじかったではないか。」


足柄 「それは、こいつがウザ絡みしてきただけで!」


黒霧 「君が上官に対して全く敬語を使わないからだよ。」


足柄 「あんたが敬意を払うに値しないからよ!毎回毎回、会う度に女らしさが感じられないだの、胸につけたそれはただの重りかだの!」


足柄 「あーあー、お相手に苦労しない美男子はいいですこと!何もしなくても女が群がってくるものね!」フンッ


黒霧 「これは、随分と嫌われたものだね。」ハハ


足柄 「嫌われない道理が何処にあるのかしら。」アァ?


黒霧 「でも、その悔しさが自分磨きの糧になったでしょ?」


足柄 「は?」


黒霧 「莫迦にされて悔しくて、綾に追いつくことだけを考えていた君に、君だけの目標ができたでしょ?」


足柄 「それは・・・まぁ。」


黒霧 「綺麗になったよ、琴。」フフ


足柄 「・・・どうも。」フイ


黒霧 「改造手術の御蔭かな?」


足柄 「やっぱりぶっとばーす!!」ウラァ!



夢破れ猶我が道を往く。


黒霧 「はい、どーどー。」ガシッ


足柄 「くっ!この!頭を抑えるなぁ・・・!」グギギ


那智 「懐かしい光景だな。相変わらず、お前は腕が短い。」フッ


足柄 「そう見えるだけよ!肩を並べたら、こいつとも大差ないから!」ホラッ


那智 「良い画だ。タイタニックを彷彿とさせる。」フム


足柄 「やめてよ。そんな不吉なこと言うの。それから、しれっと腰に手を回すな。」コラ


黒霧 「琴、君さ。一度太って痩せたでしょ。」サワサワ


ギクッ


足柄 「そ、そんなわけないじゃない。私を誰だと思ってるのよ。」ダラダラ


黒霧 「急激に身体を絞ると、皮膚が体型の変化に対応できずに抓めるようになるんだよね。こんな風に。」ムニッ


足柄 「ひぅ!///」ビクッ


那智 「なんだ。そんな声も出せたのか。」ホウ


足柄 「てんめぇ・・・。」ワナワナ


黒霧 「どうせ揚げ物ばかり食べて太ったんでしょ?君は欲望に忠実だから。」ハァ


足柄 「別にいいじゃない。最終的には痩せたんだし。」フン


黒霧 「元には戻れてないだろうに。まったく、君は努力家なくせに雑でいけない。折角、綺麗な身体をしているのに。」ヤレヤレ


足柄 「綺麗な身体とか言わないで、いやらしい。だいたい、あんたにとやかく言われる筋合いは無いんだけど。」


那智 「確かにそうだな。前々から不思議だったのだ。私の誘いは突っぱねるのに、足柄に対しては自ら関わりにいくだろう?」


那智 「何か、特別な理由でもあるのか?」


黒霧 「さぁ?姉さんに似てるからじゃないかな。琴を見ていると、世話を焼いてあげたくなる。」ポム


足柄 「手を頭に乗せるな。」


黒霧 「振り払わないところ、嫌ではないみたいだね。」サラッ


足柄 「ちょっ!!///」バッ


那智 「どうした。お前は撫でられ慣れているだろう。私とは違って。」


足柄 「そうだけど!今、変な触り方した!」


黒霧 「普通にしたつもりだけど・・・。」ウン?


足柄 「あれが普通なわけないじゃない!あんな優しい触り方、今まで一度も・・・!」ハッ


那智 「ときめいたか?」ニヤニヤ


黒霧 「うっかり姉さんを撫でる感覚でやってしまったみたいだね。ごめん、本意ではないから。」ニコリ


足柄 「・・・ショックなんて受けてないもんね!」フンダ



それで付き合っていないだと!?


那智 「お前達の不思議なところは、派手に言い合いをした後にも拘わらず、平然と一緒に居るところだな。」


黒霧 「僕は別に、そうしたいわけではないけどね。」ペラッ


足柄 「ほんとムカつく。」チッ


那智 「とても、男の胸に背を預けている女の科白とは思えんな。」


足柄 「楽なのよ。こいつの前では女を飾る必要がないし。言いたいことが言えるからスッキリするし。」


黒霧 「僕を日頃のストレス発散に使わないでおくれ。」ペラッ


足柄 「そのストレスの原因もあんたよ、ばーか。」


黒霧 「だったら近づかなければいいのに。」


足柄 「そうしたくても近づいてくるじゃない、あんたが。だから寧ろこっちから行ってあげてるの。」


黒霧 「なるほど。抱き締めてあげようか。」


足柄 「勘弁して。」


那智 「・・・やはり、私が入り込む余地は無いか。ところで、さっきから何を読んでいるのだ?」


黒霧 「過去の報告書。五月雨からある程度は聞いたけど、君達の戦い方を引き出す前に終わらせてしまったみたいだから。」


足柄 「そう、あの娘!何なの?あんなバケモノが居るだなんて聞いてないんだけど。」


黒霧 「まぁ、僕の娘だからね。」


足柄 「納得したわ。」


那智 「舞鶴の真宵烏の遺伝子は確実に受け継がれているらしい。」フッ



魅せられるほどのものでもないだろうに。


パパー?


近衛麗「んもう。何処に行ったのかしら。今夜は一緒に寝てくれるって言うから、序でに昼寝にも付き合ってもらおうと思ったのに。」ムー


近衛麗「ちょっと、パ・・・。」ピタッ


天龍 「」ジー


近衛麗「覗きは犯罪よ?」


天龍 「!」ビックゥ


天龍 「べ、別に覗いてなんてねぇよ!」バッ


近衛麗「ばっちり覗いてたじゃない。私の大きな独り言にも気づかないくらい熱心に。」


天龍 「ちげぇよ!俺はただ・・・。そう!あいつを監視してただけだ!」


近衛麗「監視・・・ねぇ。」ヘェ


天龍 「ぐっ。だって、気になるだろ。過去の資料を見せろって言われて、そのまま資料室で見ればいいものを態々別の部屋に移動して。」


天龍 「自分の部屋に戻るのかと思えば、病室に入っていったんだぞ?それであの有様だ。あんな足柄見たことねぇよ。」


近衛麗「ふ~ん。」チラッ


足柄 「やっぱ、あんたの体温は心地好いわ。夏はひんやりして、冬は暖かで。最高よ、枕としては。」ウトウト


黒霧 「せめて生物として扱ってほしいものだけど。ゆっくりおやすみ、永遠に。」フフ


足柄 「今、いい感じに眠気がきてるから、目が覚めるようなこと言わないで・・・。」Zzz


近衛麗「私も交~ざろ。」ガチャ


天龍 「おい!?」


パパー オヤ イラッシャイ


天龍 「なんで、そんな簡単にこの状況を受け入れられるんだよ。俺か?俺がおかしいのか?」


龍田 「天龍ちゃんは割と昔から可笑しかったわよ~。」ウフフ


天龍 「トドメをありがとうよ!チクショウが!」ブワッ


ツーカ ナンカチガクネ? ソウ?



欲望全開ですね。


近衛麗「Zzz」スー


足柄 「Zzz」クー


那智 「懐かしいな。この光景も。」フ


黒霧 「非番のときは、よく枕にされていたよ。」フフ


那智 「言うまでもないだろうが、足柄はこれで貴方を慕っている。この先も、足柄をよろしく頼む。」スッ


黒霧 「僕が此処に居る間は・・・ね。」


那智 「つれないな。私としては、さっさと娶ってもらったほうが色々と都合が良いのだが。」


黒霧 「それはねと・・・。」


那智 「違う。貴方の中で私のイメージはどうなっているのだ。」ジト


黒霧 「淫魔。」


那智 「どストレートだな。」


黒霧 「引き際を弁えている分、麗以上に質が悪い淫魔だ。」


那智 「二度も言うな。貴方に言われると、流石に傷つく。」


黒霧 「一応、褒めたつもりなんだけど。」


那智 「感性が特殊すぎる・・・。」


天龍 「なぁ、俺達あんな奴の下につくのか?」


龍田 「いいじゃない。実力"だけ"は本物なんだし。私達の目的を果たすために、それ以外の要素は必要ないわよ。」



態度は一律にしたほうが都合が良い。


天龍 「ちょっと待て。なんでお前があいつの実力を知ってんだ?」


龍田 「なんでって、そりゃ。彼、"舞鶴の真宵烏"だし?」


天龍 「なん・・・だと。」


龍田 「天龍ちゃん、彼のファンだったわよね~。」


天龍 「いつからだ。いつから気づいてやがった。あいつが、舞鶴の真宵烏だって・・・。」


龍田 「最初から。素顔こそ知らなかったけれど、あの白髪と気配で大方予想はついてたわ。」


天龍 「だったら、どうして教えてくれなかったんだよ。俺、散々失礼なことを・・・。」


龍田 「面白かったから?」


天龍 「ちっくしょー!!」ウガー


龍田 「あらあら~。」ウフフ



苦内か苦無か。


天龍 「真宵烏さん!」バァン


黒霧 「五月蠅い。」


天龍 「すんません!」


ヒュカッ


黒霧 「だから、五月蠅い。麗と琴が起きる。」オォォ


天龍 「すんません・・・。」ヒィ


那智 「ほう。久し振りに見たが、流石の苦無捌きだな。」フッ


龍田 「刀だけじゃなく、暗殺道具まで使えるのね。」


黒霧 「僕の本業は暗殺だからね。この刀も、実は殆ど抜いたことないし。」


天龍 「え・・・。」


黒霧 「始祖様の魂が封じられているから手放せないだけで、正直なところ邪魔なんだよね、これ。」


天龍 「えぇ・・・。」ガーン


那智 「そういえば、抜いているところを見たことがないな。」


龍田 「残念だったわね、天龍ちゃん。彼に憧れて剣術を始めたのに。」アラアラ


天龍 「くそぅ。剣を教えてもらえると思ったのに・・・。」ズーン


黒霧 「それは別に構わないよ。」


天龍 「は?」


黒霧 「刀を使わないとは言ったけど、使えないとは言ってないでしょ?剣術指南くらい、付き合ってあげるよ。」


天龍 「本当か!」パァ


ヒュカッ


黒霧 「ふたりが起きたらね。あと、五月蠅い。」ニコニコ


天龍 「あい、すんません。ありがとうございます。」ヒッ



振り回されるオチが見える。


足柄 「・・・寝すぎた。」クラクラ


近衛麗「夜、ちゃんと眠れるか心配だわ。」フゥ


足柄 「あいつを枕にすれば大丈夫よ。」


近衛麗「駄目よ。今夜は私の番だし、寝ないなら寝ないでやることあるし。」


足柄 「・・・あんた、あいつの娘なのよね?」


近衛麗「そうだけど?何か問題でも?」


足柄 「」エェ


黒霧 「琴がもの凄い顔でこっちを見てるけど、無視して始めようか。」


オラ ムシスンナー ハイハイ


黒霧 「で、どうして君が此処に居るのかな?」


時雨 「やだな~。ボクがついてきた理由、もう忘れちゃったの?思い出させてあげようか?物理的に。」ニコニコ


マァ イイヤ テメェ・・・


黒霧 「剣術指南を始める前に、言っておくことがひとつ。刀は実戦で用いるには些か重い。」


黒霧 「改造手術を受け、筋力が向上しているとはいえ、元が非力の君達には負担が大きい。だから・・・。」


時雨 「だから?」


黒霧 「脇指ないし、短刀で我慢しなさい。」


天龍 「え~。俺、太刀がいい~。」ブー


黒霧 「君が紅蓮と同じくらいの体格になったら考えてもいいけど、君にゴリラと呼ばれる覚悟はあるのかな?」ニコォ


天龍 「短刀にします。」ハイ



このコンビが好きさ。


時雨 「ここでちょっと待った~。」ヘーイ


黒霧 「刀が要らないって話なら後でね。」


時雨 「な~ぜ、わかった。」


黒霧 「こっそり練習してるの知ってるから。"糸"を武器にしたいんでしょ?」フフ


時雨 「バレてたか。」チッ


黒霧 「そっちは僕よりも適任が居るから、彼に任せるとして・・・。」ズイッ


時雨 「な、何さ。」チョット


黒霧 「接吻は恩恵を授ける必要条件であって、十分条件ではないからね。僕の意識がないときにしても無意味だよ。」ボソッ


時雨 「んなっ!///」カァ


黒霧 「よかったね、あのとき僕が気づいて。でないと、ただ"した"だけになってたからね。」ニコリ


時雨 「あれはそういう練習だもんね!別に、こっそり能力を身につけて驚かせようだなんて思ってないもんね!」フン!


黒霧 「寒い演技をありがとう。」


時雨 「ま、後半の一部は本音なんだけど。実際さ、色仕掛けを暗殺に使うことなんてあるの?」


黒霧 「自分の魅力に自信を持てる人は使ったりもするかな。僕は使わないけど。」


時雨 「へぇ。自信ないんだ。」


黒霧 「僕は気づかれる前に狩るタイプだから。」


時雨 「あっそう。」


黒霧 「君は油断させて狩るタイプだよね。」


時雨 「よく御存知で。」ケッ



小太刀二刀:回転剣舞


黒霧 「というわけで、眠は糸の基礎を、天龍は小太刀の立ち回りを固めていくようにしようか。」


天龍 「え?短刀じゃないのか?」


黒霧 「太刀がいいんでしょ?僕からのちょっとしたサービスだよ。」フフ


天龍 「おぉ!」キラキラ


時雨 「最初からそのつもりだったくせに。」ボソッ


黒霧 「聞こえてるよ。」


時雨 「聞こえるように呟いたんだよ~。」ニコニコ


デ


黒霧 「天龍の相手役は麗にお願いするよ。」


近衛麗「えー。」ブー


黒霧 「小太刀の扱いは昔仕込んだでしょ?」


近衛麗「そういう問題じゃな~い。面倒くさ~い。」ヤーア


黒霧 「御礼はするから。」


近衛麗「私に任せなさい。」ムッフー


足柄 「チョロいわ・・・。」ウワァ



今夜はきっと好い風がふく。


時雨 「でもさ。糸の指南はにぃにより適任が居るんでしょ?にぃには何をするのさ。」


黒霧 「何もしない・・・と言うよりは、できないと言ったほうが正しいかな。」スラッ


時雨 「何故、刀を抜く・・・?」


黒霧 「これから入れ替わるから。ちゃんと言うことを聞くんだよ?」フフ


ザシュッ


時雨 「なっ!?」


足柄 「何やってんの!唐突に切腹なんて笑えないわよ!」バッ


バチィ イッタァ!


黒霧?「烏羽玉に触れるな。これは持ち主を選ぶ妖刀。気安く触れれば、怪我では済まんぞ。」ユラッ


足柄 「先に言いなさいよ!てか、あんた誰。」キッ


黒霧?「そう睨むな。少なからず、想いを寄せている相手なのだろう?」フフ


足柄 「親戚の兄貴くらいにはね!」フン


黒霧?「なんだ。恋慕の情はないのか?つまらん。」


足柄 「こいつぅ。」イラァ


時雨 「はいはい。一旦、抑えて。」ドードー


時雨 「で・・・。誰だ、貴様。」オォォ


黒霧?「いい殺気だ。俺の弟子となるからには、この程度できてもらわねば困るがな。」フッ


時雨 「はぁ?」


黒霧?「俺の名は・・・そうだな。"夜風"とでもしておくか。」フム


夜風 「俺は"黒霧 夜風"。全ての黒霧の父にして、暗殺術の基礎を築き上げた者だ。」ニィ


時雨 「ということは・・・。」


夜風 「簡単に言えば、黒霧の始祖だな。」


時雨 「あんにゃろう、説明もなしに引っ込みやがって。後で組み手に付き合わせてやる。」チッ



まんま転〇ラなのは気にしない方向で。


夜風 「早速で悪いが、糸の指南といこう。烏羽玉の封印の所為で、永くは入れ替わってられんのでな。」


時雨 「お願いします。」


夜風 「まず、お前は糸について何処まで理解している?」


時雨 「力の籠め方次第で形状を変化させられることくらいかな。蜘蛛の巣みたいに編み込むことはできるよ。」ホラ


夜風 「器用だな。独学で"蜘蛛の巣"を習得するとは、中々に見所がある。」ホウ


時雨 「それはどうも。」


夜風 「どうやらお前には手取り足取り教える必要はなさそうだ。基礎を仕込んでやるから、後は独学で伸ばせ。」


時雨 「あいさー。」


夜風 「いやに素直だな。」


時雨 「時間がないって言ったのはそっちでしょ?合わせてあげるから、さっさと進めて。」


夜風 「そうか。では、糸の基礎知識から仕込むとしよう。」


夜風 「糸には基本の型が二種類ある。耐久性に優れる"鋼糸"と、伸縮性に優れる"念糸"だ。」


夜風 「鋼糸は、わかりやすく言えば"ワイヤー"だ。同義と理解して構わん。主な用途は、即席の足場くらいか。」


時雨 「それなんだけどさ。径を細くして"斬糸"として使えないの?何度か試したけど、全然できなくて。」


夜風 「編み込めば別だが、爪と同じ感覚では無理だぞ。軽すぎて風に靡くからな。」


デスヨネー


夜風 「次に念糸だが、言うなればこれは"ゴム"だな。形状記憶の性質を有している。気分はス〇イダーマンだ。」


夜風 「ある程度の粘着性もある。拘束用にはもってこいだ。何せ、力ではまず引きちぎることができんからな。」


時雨 「説明してもらっておいて何だけど、ボク鋼糸しか使えないっぽいんだよね。」


夜風 「・・・そうか。糸の真髄は"念鋼糸"にあるのだがな。」


時雨 「念鋼糸?」


夜風 「鋼糸と念糸の性質を併せ持つ糸だ。鋼糸単体では不可能だった壁面への接着や、射出後の軌道操作が可能になるが・・・。」


時雨 「それって、こういうの?」シュッ


ビィン


夜風 「それだな。」


時雨 「これ、念鋼糸だったんだ。」フーン


夜風 「自力で念鋼糸の生成までものにしてしまうとは、本当に大したものだ。ならば、実戦でより磨きをかけてもらうとしよう。」ニィ


時雨 「やっぱりそうなるんだ。」ヤレヤレ


夜風 「"ならう"には、人に教わるという意味だけでなく、模倣するという意味もあるのだ。見て盗め、そして己の業にしてみせろ。」イクゾ



実力がなければ、巫山戯る余裕なんてあるはずがないのさ。


近衛麗「それじゃ、こっちも始めましょうか。」


天龍 「うーい。」ブー


近衛麗「そんなに嫌そうな顔をしないでもらえる?私だって嫌なんだから。」


天龍 「それなら向こうが終わるまで待ってようぜ。真宵烏に教わるってことに意味があるんだからよ。」


近衛麗「そうもいかないわ。パパが私に任せてくれたんだもの。まずは私の下で最低限の動作を身につけなさい。」


天龍 「へーい。」


近衛麗「あんた、若しかして私の実力を疑ってる?」


天龍 「・・・まぁな。」


近衛麗「へぇ。だったら模擬戦から始めましょうか。」


天龍 「おう。いいぜ。」ヘッ


近衛麗「白兵戦に特化した近衛で、性格破綻者にも拘わらず部隊長に任命された私の実力・・・存分に魅せてあげるわ。」ニィ


天龍 「あー。これは、やっちまったか?」ハハッ



甲子園につれてって。


天龍 「」チーン


近衛麗「どんなもんよ。」ムフン


龍田 「あら~。天龍ちゃん、剣術"だけ"は確かな実力を持ってるのに~。」


龍田 「これは、予想以上ね・・・。」ギリッ


足柄 「ねぇ、たっちゃん。」


龍田 「あぁ?」ギロリ


足柄 「うっ。急に素を出さないでよ。あいつほどじゃないけど、貴女もその・・・恐いんだから。」


龍田 「ごめんなさい。余所者に主導権を握られると思うと、苛立ちが抑えられなくて。」クシャ


足柄 「余所者か。私と那智姉にとって、あいつは身内みたいなものだから、あまり抵抗はないんだけど・・・。」


龍田 「此処は、あの人と私達で護ってきた場所。たとえ誰かの手を借りるとしても、私達が護らないと駄目なの。」


龍田 「護ってもらったじゃ・・・駄目なのよ。」


近衛麗「それに関しては心配要らないわよ。」


龍田 「」ジトォ


近衛麗「貴女、威圧感だけならパパ並みね・・・。」


龍田 「」フン


近衛麗「まぁ、いいわ。私もパパも、他人の為に命を張ったりしないから。そこだけは間違えないでちょうだい。」クルッ


近衛麗「ほら、起きなさい!」ベシッ


天龍 「ぶっ。」アダ


イッテェナァ ツヅキヲヤルワヨ



他人に影響されたと思われたくない。


龍田 「他人の為に命を張らない。そこのところ、どうなの?」チラ


足柄 「それが誰の為だったかは知らないけど、命は張りまくってたと思うわよ。」


足柄 「憲兵のくせに海に出て、血塗れになって帰ってきてたもの。もう何度シバき倒したか。」フゥ


龍田 「・・・足柄ちゃん。あなた、彼とどういう関係?」


足柄 「どういうって、枕にしたりされたり、撫でられたり?料理を作ってもらったり、あとは・・・。」エート


龍田 「わかった。もういいわ。」


足柄 「え~。これから愚痴が始まるのに~。」ムー


龍田 「ともかく、彼のことは足柄ちゃんに任せるわ。五月雨ちゃんは私が。あの金髪ちゃんは天龍ちゃんね。」


足柄 「それって、四六時中あいつの傍に居ろってこと?絶対に嫌なんだけど。」エェ


那智 「何を今更。同衾も混浴も済ませた身で、何を躊躇うことがある。」ガラッ


足柄 「那智姉・・・。」ゲッ


龍田 「那智ちゃん、もういいの?」


那智 「ああ、完治こそしていないが、日常生活に支障はない。」


足柄 「ちゃんと治してから来なさいよ。」


那智 「ひとりは寂しいのだ。付き合え、琴。」フッ


足柄 「本名呼びはやめて。今は妙高型四姉妹でしょ。」


那智 「しかし、あの方は本名呼びだろう?」


足柄 「だから嫌なのよ。」


那智 「そうか。あの方だけの特別がいいのだな。」フム


足柄 「ああ言えばこう言う。」クッ



しつこいようだが、よく見た!


那智 「まぁ、なんだ。そろそろ、はっきりさせておいてもいいんじゃないか?」


足柄 「何をよ。」


那智 「お前があの方に対して抱いている情の種類をだ。端から見ている限りでは、通じ合った恋人にしか見えんぞ。」


足柄 「だとしたら屈辱の極みよ。」フン


那智 「よく言う。先程まであの方の胸を枕代わりに寝息を立てていたのは何処の誰だったか。」


足柄 「それはそれ。これはこれ。恋愛感情がないからこそ、そういうことができるの。」


足柄 「本当に好きな相手だったら、緊張して安眠なんてできないわよ。」


那智 「それはそうかも知れんが。好きでもない相手の胸を枕にするか?普通。」


足柄 「まさか那智姉に普通を語られるとはね・・・。というか、別にあいつのことを好きじゃないなんて言ってないでしょ?」


那智 「何・・・?」


足柄 「あいつのことは好きよ。包容力あるし、近くに居ると安心するし。勿論、条件つきで。でも、恋愛対象にはならないわ。絶対に。」


足柄 「あんな人格破綻者と恋人になったら、ストレスで胃に穴が空くわ。」ハッ


那智 「そうか。何と言うか、あれだな。勿体ないな。」


足柄 「なら那智姉にあげるわよ、あいつ。」


那智 「お前に譲られるのは癪に障る。それに、どのみち私は相手にされんさ。あの金髪娘のようにな。」


近衛麗「何か言ったかしら!」クワッ


天龍 「隙あり!」ウリャッ


近衛麗「あんたがね!」バコッ


ガッ


天龍 「容赦ねぇ・・・。」ピクピク



やるからには全力で。


時雨 「う、動けん。」プルプル


夜風 「"傀儡糸"といってな。相手の神経に接続して、傀儡のように操ることができるのだ。」フッ


時雨 「ボクに使えない糸を披露して、自慢なのかな?」ニッコリ


夜風 「使えないとは悪い冗談だな。黒の恩恵は、肉体か知覚機能にしか効果が及ばないはず。貴様のその能力、恩恵ではないだろう。」


時雨 「・・・は?」


夜風 「まぁ、深いことは訊かん。黒のことだ。またややこしいことに首を突っ込んでいるのだろうよ。」クフフ


時雨 「いや、待って。勝手に納得しないでちゃんと説明して?ボクの能力が、何だって?」


夜風 「さて、そろそろ時間だ。糸の基本は今見せたとおりだ。あとは自分で昇華させておけ。」ジャアナ


時雨 「話聞けよ!てめぇのそういうとこが遺伝してるから、こっちは迷惑してるんだよ!」クワッ


黒霧 「数百年越しの遺伝を持ち出されてもね。」


時雨 「ていうか、碌に糸のこと教えてもらってないんだけど!?」キー!


黒霧 「教える必要がないってことでしょ?鋼糸、念糸、斬糸、傀儡糸に呪糸。基礎は全部できてるってさ。」


時雨 「やるなら最後まで責任を持ってやってくれるかな。そこから先は自分で考えるからさ。」マッタク



一年が本当に短い。


黒霧 「じゃあ、少しだけ付き合おうか?」


時雨 「最後までって言ったの聞こえなかったぁ?」ニコォ


黒霧 「一日でどうにかなるわけないでしょ。永い目では、最後まで付き合うから。」フフ


時雨 「・・・わかった。」ムゥ


黒霧 「ま、僕には知識面の指導しかできないけど。」シレッ


時雨 「使えねぇ。」



情報統制はしっかりと。


近衛麗「ねぇ、パパ~。こいつどうするの~?」チョンチョン


天龍 「突くな。地味に痛ぇ。」ウッ


黒霧 「交代しようか。お疲れさま、麗。」


近衛麗「ちゃんと御礼してよね。」フフーン


ハイハイ


天龍 「やっと、真打登場か。」ヘヘッ


黒霧 「疲れていい感じに力が抜けてるでしょ。変な力みがなくなるから、型の修練には最適なんだ。」


天龍 「それはいいんだけどよ。」カラン


天龍 「刀握る力も入らねぇんだが・・・大丈夫か?これ。」


黒霧 「・・・麗。」


近衛麗「」ビクッ


黒霧 「君がやりすぎたことが原因か。天龍が未熟だったことが原因か。将又両方か。どれだと思う?」ジー


近衛麗「わ、私はっ。普通に・・・。」ハハ


黒霧 「天龍がタフでよかったね。これで立つ力も残っていないようだったら、不本意ながら初めてを奪わざるを得なかった。」


近衛麗「何の・・・?」タジッ


黒霧 「天龍のくち・・・。」


天龍 「だー!!なんでお前が知ってんだよ!」オイ!


黒霧 「五月雨から聞いてね。」


天龍 「いやいや、なんで五月雨がんなこと。そういう情報は龍田しか・・・。」ハッ


天龍 「龍田。お前、まさか・・・。」


龍田 「うふっ。」


天龍 「ちっくしょー!!」ギャー



呑まれ酒


天龍 「もういい。鍛錬に打ち込んで忘れてやる。」ウゥ


那智 「まぁ、私達は憶えているがな。」


天龍 「言うんじゃねぇ!」クワッ


足柄 「でも、未亡人なのにキスの経験がないってどうなの?」


天龍 「ぐっ。」グサッ


龍田 「顔が近づいただけで気絶しちゃうからできなかったのよね~。」ウフフ


天龍 「///」プシュー


近衛麗「想像でそれなのね。」ハァ


足柄 「考えすぎるから駄目なんじゃないの?考える前に行動。そうでなきゃ、大事なものを掴み損ねるわよ。」


那智 「生娘が何を偉そうに。」


足柄 「生娘で悪いか。」


黒霧 「いや、琴は生娘じゃ・・・。」


足柄 「シャァラップ!!」バッ


ムグッ


那智 「おい、琴。」ゴゴゴ


足柄 「な、何かしら・・・。」ダラダラ


那智 「吐け。」ガシッ


足柄 「」


龍田 「あらあら~。」


黒霧 「ふぁいへんなふぉふぉにふぁったね。」モゴモゴ


足柄 「誰の所為だとっ!」クッ



正々堂々とは何か。


那智 「で、ヤったのか。」ゴゴゴ


足柄 「いや、その・・・。」セイザチウ


那智 「ヤったのかと訊いている。」ゴゴゴ


足柄 「・・・はい。」メソラシ


那智 「」フンッ


ドゴッ ブフッ


足柄 「顔に、顔にグーはない・・・。」プルプル


那智 「いつ、何が契機だ。」ズイッ


足柄 「綾姉、怖い・・・。」ウゥ


那智 「いいから、吐け。」オォォ


足柄 「うっ。憲兵時代、黒の部屋で飲んでて、それで酔っぱらった私が・・・その。」モゴモゴ


那智 「襲ったのか。」


足柄 「いや、ちがくて・・・。」


那智 「なんだ。はっきり言え。」グッ


足柄 「言います!言いますから!拳を握らないで!」ヒィッ


那智 「さっさと吐け。」


足柄 「・・・です。」ボソボソ


那智 「聞こえん。」アァ?


足柄 「綾姉に処女を莫迦にされてつらいから、初めてを貰ってくれって泣きついたんです!」ブワッ


那智 「・・・。」


黒霧 「お酒が入っているとはいえ、本気で泣いている琴の願いを無碍に扱うわけにいかなかったからね。一度だけ、肌を重ねた。」フゥ


黒霧 「大本の原因は、綾。君だよ。君が追い詰めて、アルコールが爆発させた。」


黒霧 「結局はお酒の勢いで致したことだから、素面で周りに言いふらすことはできなかったみたいだけど。」


足柄 「うっ。ひぐっ。」ズビッ


那智 「・・・。」ギリッ


クルッ


近衛麗「ちょっと、何処へ行くつもり?」


那智 「少し、独りにさせてくれ。」ガラッ


黒霧 「」ポム


足柄 「頭に手を置くなぁ。」ウゥ


黒霧 「」サラッ


足柄 「う、うあああああ。」ボロボロ



出来ないことも口には出せる。


足柄 「屈辱だわ・・・。」ズーン


龍田 「泣き顔を見られたことが?」


足柄 「ううん。あいつに慰められて、嬉しいって思っちゃったこと・・・とか。」ゴニョゴニョ


龍田 「もっと素直になればいいのに。」


足柄 「私は素直よ。好きって感情も、嫌いって感情も、全部素直に伝えてるもん。」


龍田 「もんって。足柄ちゃん、実は精神年齢かなり低い・・・。」


足柄 「言わないで。普段は頑張って隠してるんだから。」


龍田 「あら。子供な足柄ちゃんも可愛いわよ。」フフ


足柄 「やめてよ。この歳で可愛いなんて言われても嬉しくないわ。」


龍田 「足柄ちゃんって、幾つだっけ?」


黒霧 「にじゅ・・・。」


足柄 「あー!!」ワー!


足柄 「いらんことばっか憶えてない!」


黒霧 「幾つだっけ?」アレ?


足柄 「憶えてなさいよ!」


龍田 「乙女心って複雑ね~。」


時雨 「修行は・・・?」



姉の本懐


カチャ パタム


那智 「何をしているのだろうな、私は。」ハァ


那智 「唯一、憧れた男を妹に取られ・・・いや、取られたわけではないか。」


那智 「しかし、一番負けたくないところで、ただ一度の敗北を経験することになるとはな・・・。」フッ


那智 「琴、お前は今まで、このような思いをしてきたのだな。私なりに姉としてお前を想ってきたつもりだったが。」


那智 「本当に"つもり"だったらしい。」


那智 「すまない。本当に、すまない・・・。」クッ


五月雨「そういうことはちゃんと本人に伝えるべきなんじゃないですか?」ユラッ


ビクッ


那智 「いつから其処に・・・。」


五月雨「さて、いつからでしょう。」フフ


那智 「今は独りにしてくれないか。」


五月雨「嫌です。」キッパリ


那智 「おい・・・。」


五月雨「別に、悩みを聞いてあげますとか、アドバイスをあげましょうとか、そんな目的で此処に居るわけではないので。」


五月雨「私はただ、那智さんの考えを聞きたいだけです。だから、考え事をしたいからなんて理由で追い出される謂れはありません。」ムフゥ


那智 「考え事は独りでないとできない質なのだが・・・。」


五月雨「人と話しているときは考えるより先に言葉が出ているからじゃないですか?案外、そっちのほうが核心を突いていたりしますよ?」


那智 「・・・どうしても、出ていくつもりはないようだな。」ハァ


五月雨「当然です。お父さんが壊して、私が修復する手筈になっていますから、ねっ。」キュピーン


那智 「全てはあの方の掌の上か。人心掌握術は今も健在のようだ。」



この世は全て相対的。


那智 「私と琴は、特段姉妹仲が良いわけでも悪いわけでもない普通の姉妹だった。」


那智 「琴が一方的に突っかかってくることは屡々だったが、喧嘩をしていたわけではなかったからな。」


那智 「だが、お互い思春期に入った頃から変わってしまった。如何にしてモテるか。それが勝負項目になってしまったからだ。」


那智 「これまでの勝負は、努力した分がそのまま結果として表れていた。が、恋愛勝負は違う。」


那智 「如何に努力をしたところで、それが相手に受け入れられなければ意味がない。」


那智 「しかもだ。工夫ひとつで何倍もの努力の差を簡単に覆すことだってできる。私はそれが得意だった。」


那智 「で、容赦なく自重もせず遊び呆けた結果がこれだ。」


那智 「琴と私の関係上、慰めてやることもできず。自尊心を煽るだけ煽って、琴が自力で克服することを期待して・・・。」


那智 「結局、私はただ琴を苦しめていただけだった。私は始めから、道を違えてい・・・。」


五月雨「それは違いますよ。」


那智 「何?」


五月雨「どんな道も、選んだその瞬間から間違っているなんてことはありません。」


五月雨「その道を間違いにしてしまうのはいつも、選択者である人間の歩みです。」


那智 「・・・なるほど。間違っていたのは、この私ということか。」


五月雨「というか、何を勝手に歩みを止めようとしているんですか?」


那智 「どういうことだ?」


五月雨「人が歩みを止めない限り、その歩みの証が道となり続けます。まぁ、つまりは、まだ道の途中だってことです。」


五月雨「これから先、いくらでも軌道修正できるじゃないですか。自分の何が駄目で、どうすればよかったのか、存分に悩むことですね。」


那智 「・・・。」


五月雨「では、私はこれで。そろそろお父さん成分を補給しないと、活動不能になってしまいそうなので~。」スタコラー


那智 「あいつは本当に子供なのか・・・?」



突然始まる茶番劇。


漣  「どきっ!身内だらけの下着品評会~!」


朧  「どんどん、ぱふぱふ~。」


曙  「あんたらの下着姿なんざ見飽きてるわよ。」ハッ


漣  「うっせ~な。こちとら暇で暇で仕方ね~の。うだうだ言ってないでさっさとそのねこちゃんぱんつ晒せや。」オラ


曙  「誰が猫ちゃんだってぇ?」オォン?


紫苑茜「ま~。灯ったら、なんて可愛らしい・・・。」ハァ


曙  「昔の話だからね!?」



知識など無い。


漣  「さぁ、一番手は言い出しっぺのあたいだよ!」バッ


オー


曙・朧「普通すぎてつまらん。」


グハッ


漣  「だって、しょうがないじゃないか。ネグリジェはせん姉に没収されたのだもの。」ウゥ


紫苑茜「子供が色気づくんじゃないの。澪ちゃんはシンプルにピンク一色の下着が似合うわ。」


漣  「そうそう。アクセントのリボンがいい感じ、じゃなくて。もちっと冒険させてくれてもええやないの。」


ツギー


朧  「わぁたぁしだぁ!」バーン


潮  「撫子ちゃん、少し胸がおっきくなった?」


漣・曙「ちぃ!」ケッ


紫苑茜「撫子ちゃんはスポーティに纏めてみたわ。エメラルドグリーンがよく栄えるでしょう?」ウフフ


漣  「・・・なんか染みてね?」


朧  「汗です。」


漣  「いや、それ・・・。」


朧  「汗です!」クワッ


紫苑茜「はい、次にいくわよ~。」


潮  「じゃあ、私が・・・。」オズオズ


漣・曙「いや、姫百合はなんかもういいや。」


潮  「折角ぱぱに選んでもらったのに・・・。」グスッ


漣  「なんだと!?」


曙  「あんた、父さんに選んでもらうのは恥ずかしいって!」


潮  「うん。だから、色だけ決めてもらったの。」エヘヘ


クッソゥ!


紫苑茜「しーちゃんは本当に蒼が好きね。」


紫苑茜「最後は灯ね。」


曙  「私はこれよ。」


漣  「何それ、乳バンド?」


曙  「乳バンド言うな。これは控えめな少女の為に作られた高尚な下着なの。」


漣  「はは~ん。要するに、無い乳バンドってわけだ。」ニヤッ


曙  「その喧嘩買った。」ビキッ


曙  「今日という今日はぶっ倒す!!」


漣  「やれるもんならやってみなぁ!」ハッハー


紫苑茜「こぉら!下着姿で暴れない!しーちゃん呼ぶわよ!」


ゴメンナサイ!



そんな名前の人知らない。by Sagiri


カチャカチャ


南方戦「・・・ねぇ。」


蓮華 「なんだ?母上。」ジジジ


南方戦「そろそろ休んだらどうなの?何時間ぶっとおしでやってるのよ。」


蓮華 「そうだな。ざっと17時間くらいか。」クリクリ


南方戦「本気で死ぬから休んでちょうだい。娘が過労死なんて、やりきれないわ・・・。」


蓮華 「母上の心配は尤もだが、私は深海棲艦だぞ。この程度の就労、どうということはない。」フッ


南方戦「あのねぇ。無理してるときって、無理してる奴が一番鈍感になるものなのよ?」


南方戦「身内の言葉に限らず、他人の言う"休みなさい"は素直に受け入れなさい。」


蓮華 「あと1時間したらな。」


南方戦「この娘はっ。」


蓮華 「ちゃんと言いつけは守っているだろう?1時間後には水飲んで、シャワー浴びて、水飲んで、母上の抱き枕になって寝る。」


南方戦「そう・・・。ちゃんと休んでくれるならいい・・・今なんて言った?」ン?


蓮華 「楽しみだ。母上の大きくて柔らかい胸に顔を埋めながら眠れると思えば、あと1時間程度・・・。嗚呼、愉しみだ。」フフフ


南方戦「」ゾワッ


南方戦「ウチの娘、いつからこんな変態になったのかしら・・・。」ハハ



読書感想文は国語の教科書一択。


三隈 「で、現在に至ると。」


南方戦「莫迦力で抱きついてるものだから、全然引き剥がせないのよ。」ハァ


最上 「まるで対面ざ・・・。」


三隈 「ふんっ!」


最上 「んんんん。」モガモガ


蓮華 「Zzz」


三隈 「もがみん、次に巫山戯たことを口走ったなら、容赦しませんの。」ゴゴゴ


最上 「あれがそういうワードだってわかるところ、知識だけはあるんだよね~。」


三隈 「三隈の保健体育の教本を、"夜の四十八手"なんて巫山戯た薄い本にすり替えてくれた貴女の所為ですの!」


最上 「あぁ。それ、実行犯はボクだけど黒幕は鈴谷だから。」シレッ


三隈 「すぅずやぁぁぁぁ!!」


・・・


鈴谷 「おぉう。何やら寒気が・・・。」ブルッ


熊野 「誰かに呪われているのではなくて?」


鈴谷 「やだなぁ、くまのん。私、誰かに呪われるような悪いことしてないよ~。」アハハー


熊野 「私にはひとり心当たりがありますけれど。」


鈴谷 「え・・・?」


・・・


蓮華 「ん~。」モゾモゾ


南方戦「三隈が全力で叫んでも起きないだなんて・・・。やっぱり無理してるじゃないの。」マッタク



苦楽は表裏一体。


パァァ シュン


レ級 「うし。艤装の収納は終わったぜ、ヲーちゃん。」


ヲ級 「ご苦労様なの。」


レ級 「つーか、ほんとに行くのか?やっぱりやめたほうが・・・。」


ヲ級 「いつかは持っていかないといけないの。それが少し早まるだけなの。」


レ級 「でもよぉ。父ちゃんと五月雨姉が居るとはいえ、艦娘の本拠地に深海棲艦である俺達が直接出向くってのは・・・。」


ヲ級 「力尽くで黙らせればいいの。」コォォ


レ級 「おいおい。」


ヲ級 「レーちゃんが行かないなら、ヲーちゃんひとりで行ってくるの。」フン


レ級 「澪達の艤装を持っていくって名目はどうしたよ。」


ヲ級 「その腕輪寄越すの。」


レ級 「この中には俺のタイラントも入ってんだぞ。渡せるわけねぇだろうが。」


ヲ級 「ん~!」ムー


レ級 「・・・はぁ。わぁったよ。俺も行くよ。」ヤレヤレ


ヲ級 「始めからそう言えばいいの。」プイッ


レ級 「父ちゃんも母ちゃんも居ねぇからな。流石のヲーちゃんも耐えられなかったか。」


ソンナノジャナイノ! ソウダロウガヨ



味気ない毎日に彩りを。


レ級 「海は広いな 大きいな~」スーイ


ヲ級 「真白い翼で ひとっ飛び~」


レ級 「そんな歌詞だっけか?」


ヲ級 「このだだっ広い大洋も、飛行機なら数時間で横断できるの。」


レ級 「ヲーちゃん、まさかもう面倒になって・・・。」


ヲ級 「空母も空を飛べたらよかったの。」ハァ


レ級 「ったく。父ちゃんの所に行くって、ヲーちゃんが言い出したんだろ?」


ヲ級 「面倒なものは面倒だから仕方ないの。途中でやめるつもりはないから問題ないの。」


レ級 「そっか。ならよかっ。」


チュドーン アブネッ


???「外したか。的が小さいと中てにくいな。」


???「もう、姉さんったら。相手はまだ小さな子供なのよ?少しは手加減してあげたら?」


???「何を言う。幼くとも深海棲艦なのだぞ?手加減などしていられるか。」フン


???「深海棲艦の子供、鹵獲したら彼女達の秘密を丸裸にできると思わない?」ウフフ


???「お前、幼女趣味は直せとあれほど・・・。」ハァ


???「なっ!自分のこと棚に上げて言う!?姉さんのほうがよっぽど!」


???「そんなことはない。私はただ、小さくて可愛いものが好きなだけだ。」


???「見境がない分、猶悪いって言ってるの!」


ギャアギャア


レ級 「今のうちに行くか。」


ヲ級 「なの。」ヲー



子供には好かれるタイプだと信じたい。


???「待て。勝手に何処へ行く。」ジャキン


レ級 「流石にバレるよな。」チッ


???「あら、遠目ではわからなかったけど、戦艦レ級に空母ヲ級じゃない。あなた達、艤装はどうしたの?」


ヲ級 「ヲー。」ジトォ


???「持っていないのかしら?」


???「なんだ。私達は丸腰の子供相手に主砲を撃っていたのか。それはすまないことをした。謝罪しよう。」


???「"私達"って、撃ったのは姉さんだけだと思うんだけど?」ネェ


レ級 「ヲーちゃん、後ろに隠れてろ。」ヒソヒソ


ヲ級 「まだ仕掛けるには早いの。我慢してなの。」ヒソヒソ


レ級 「わかってるって。合図は任せるぜ。」


???「ふむ。言葉は通じるのだろうか。私は"長門"。戦艦・長門だ。」


???「わたしは"陸奥"よ。この怖いお姉さんとは姉妹なの。」ウフフ


長門 「おい。あまり変なことを言うな。私は怖くなどないぞ。」


陸奥 「それを決めるのは姉さんじゃないわ。ねぇ、あなた達。こっちのガチムチお姉さんとゆるふわお姉さん、どっちが怖いかしら?」


レヲ級「あんた(なの)。」ビッ


長門 「そらみろ。」フフン


陸奥 「そんなっ。」ガクッ


レ級 「瞳がヤバい。」ソッ


ヲ級 「身の危険を感じるの。」サッ


長門 「よしよし。私が護ってやるからな。」


陸奥 「どうしていつも姉さんばかり!」クッ


長門 「お前は欲望がだだ漏れなのだ。少しは自重しろ。」


陸奥 「性欲を紛らすために筋トレしすぎてガチムチになったくせに。」ボソッ


長門 「何か言ったか。」ゴゴゴ


レ級 「どっちも駄目だ。」ウワァ


ヲ級 「自分の身は自分で護るしかないの。」ヤレヤレ



だから遠近法じゃねぇ! by Suzu


ヲ級 「艦載機到着まで、あと5秒。3・・・2・・・1。」


長門 「ん?何かが・・・。」


ヲ級 「攻撃開始。」


ガキンッ


長門 「主砲が!?」


レ級 「来い、タイラント!」ズォォ


陸奥 「艤装を隠してたの!?」


レ級 「痺れる程度じゃ済まねぇぜ!シュガル!お前の雷をくらわせてやれ!」ハッハー


ズガーン! アァァァァ!


レ級 「子供だって甘く見てると、痛い目に遭うぜ。」ニヒッ


長門 「ああ、そのようだ。」ニィ


陸奥 「あぁ、もう最悪よ。髪がボサボサ。」ハァ


ヲ級 「その軽口もすぐに叩けないようにしてやるの。」ニパ


レ級 「相変わらず可愛い笑顔なんだよなぁ。」


長陸奥「うん。」


ヲ級 「レーちゃんも纏めて、オーバー・ソニック。」イラッ


グォォォ ギャアアア! ホネガキシム!



レディ・ファーストの起源。


神命 「大変!大変!たいへ~ん!!」ズザァ


三隈 「何がですの。三隈の教本が薄い本にすり替えられていた件以上に大変なことがあるなら言ってみてくださいな。」アァン?


神命 「ヲーちゃんとレーちゃんが何処かへ行っちゃった!」


三隈 「どうせ日課の散歩ですの。そのうち帰ってきますの。」フン


神命 「かれこれ1時間経つのに?」


三隈 「そ、そんな日もありますの。」


神命 「七駆の娘達の艤装もなくなってるのに!?」


三隈 「後は任せましたの、もがみん!」ダッ


最上 「いってらっしゃ~い。」ヒラヒラ


最上 「で、此処にたどり着くまで1時間も掛かったの?」


神命 「1時間は掛かってないよ!58分だよ!」プンスコ


最上 「その2分に掛けるプライドとは・・・。」


龍驤 「よっ。」ヒョコ


最上 「それも自力ではないときた。」


神命 「もがみんが優しくない・・・。」ウゥ


南方戦「・・・。」チッ



それは身代わり。


最上 「みっちゃんの後を引き継いだはいいけど、結局暇なことに変わりはないんだよね~。」


龍驤 「なんや?クロさんが居らんようなっただけでこの為体かいな。」


南方戦「ほんと。露骨に気力を無くしてるわよね、アンタ。」


最上 「だってさ。ボクの役割は教官なのに、教える相手が居ないんじゃ仕事も何も・・・。」


龍驤 「レ級とヲ級が居るやないか。」


最上 「あの娘達に砲撃指導が必要だとでも?」


南方戦「そうじゃなくて。あのひとが居なくなったことが原因なんじゃないのって話。」


神命 「うん?」ピクッ


最上 「それはまぁ、拠所がなくなったわけだし?原因の一端と言えなくなくもないかな・・・なんて。」


南方戦「どう考えたってそれが主な原因でしょうに。」ヤレヤレ


龍驤 「そう言う君は平気そうやな。」


南方戦「ついこの間まで絶縁状態だったんだもの。遠距離は慣れたもんよ。」


龍驤 「クロさんのことや。また女増やして帰ってくるかも知れへんで?」


南方戦「別に構いやしないわよ。何人ライバルが増えようが、あのひとの一番はワタシだから。」フフ


龍驤 「おーおー。おアツいこって。」


神命 「変わったなぁ、南ちゃん。」


最上 「そうかな・・・。」


蓮華 (レ級とヲ級の心配はせんのか。)モゾモゾ


南方戦「蓮華、どさくさに紛れて乳首探るのやめなさい。」クスグッタイ


蓮華 「いつか約束したからな。吸わせてくれると。」


南方戦「んな約束はしてな・・・。」


カプッ ハァン



この番号は現在使われておりません。切るかキレるかなさってください。


南方戦「この娘はホントにっ。」グリグリ


蓮華 「頭が削れるぅ~。」アー


龍驤 「蓮華。君、最近愛情表現が過激やで。」


蓮華 「仕方あるまい。これが愛の形なのだ。」


南方戦「そんな愛はぶち壊してやるわ。」フンッ


蓮華 「母上、あんまり力を込めると毛根が死滅する・・・。」ハゲル


神命 「一大事なのに、みんな普段どおりすぎる。」エェ


最上 「ま、あのふたりだから。」



拾うだけが救いではない。


レ級 「魅せてやれ、ヘルズ!業火の舞!」


ゴォォォ


ヲ級 「この前は"非情なる蒼炎"とか言ってたの。同じ炎なのに言ってることが違うの。」


レ級 「かっこよければいいだろ?何だってさ。」キラキラ


ヲ級 「厨二乙なの。」ヘッ


ンダト!


陸奥 「姉さん、まだやれる?」ボロッ


長門 「愚問だな。たとえ艤装が使えずとも、この身ひとつで闘い抜いてみせよう。」フッ


陸奥 「要するに戦闘継続不可なわけね。」


長門 「おい、私はまだ・・・。」


陸奥 「黙りなさい。最後の一発、姉さんに撃ち込むわよ。」ガション


長門 「・・・ごめんなさい。」


陸奥 「さて、この状況。どうしたものかしら。」


長門 「今の、絶対に本気だった。本気で私に主砲を撃ち込む気だった。」ゾクッ



飛んだなら落ちる時が来る。


ヲ級 「そろそろ終わりにするの。」


長陸奥「くっ。」ジリッ


レ級 「ヲーちゃん、そりゃやりすぎって・・・。」ン?


ヲ級 「どうしたの?」


レ級 「なんか、聞こえねぇか?」


・・・!


ヲ級 「言われてみれば、聞こえるかもなの。」ヲー


長門 「あれは・・・。」


陸奥 「鳥?」


三隈 「くぉらぁぁぁぁ!!ふたり共、何してますのぉ!!」ゴォォ


レヲ級「うげ・・・。」ナノ


ヲ級 「叩き墜としてやるの。」クイッ


レ級 「みっちゃんを殺す気かよ!?」


三隈 「甘いわぁ!」ソーラーレイデスノ!


ナッ!?


ヲ級 「全機、撃墜・・・なの。」


レ級 「ただ見えるだけじゃなくて、正確に撃ち抜くなんてな。やべぇぜ、みっちゃん。」


三隈 「伊達に教官を任されてませんの。三隈だって、日々成長してますの。」フンス


三隈 「それはそれとして。ふたり共、覚悟はよろしくて?」ゴゴゴ


レ級 「みっちゃんの説教なんて怖くねぇっての。」ヘヘッ



子供と女の泪は強し。


レ級 「うっ。ひぐっ。」ズビッ


ヲ級 「ばああああ。」ビエェ


長門 「」マッシロ


陸奥 「三隈ちゃんって、こんなに威厳のある娘だったかしら。」


三隈 「まったく、もう。勝手なことをしくさってからに。後始末をする身にもなってくださいまし。」フン


レ級 「ごべんなざい。」


ヲ級 「あぁぁ!」ボロボロ


三隈 「ほら、説教は終わりましたの。いい加減に泣き止んでくださいな。」


ヲ級 「うぅぅ!」グズグズ


三隈 「どうしましょう。全然、泣き止んでくれませんの。」


レ級 「みっちゃんの所為だぞ。」ムスッ


三隈 「まだ説教が足りなかったようですわね。そもそも、あなた達が勝手な行動しなければ、こんなことにはなってませんの。」アァ?


レ級 「んなこたわかってるよ。怒られたくらいでヲーちゃんがマジ泣きなんてするかよ。」


三隈 「だったら・・・。」


レ級 「ヒント、ヲーちゃんは真性の負けず嫌い。」


三隈 「まさか・・・。」


レ級 「みっちゃんに艦載機を墜とされたことが相当悔しかったんだろうぜ。」


ヲ級 「ヲーちゃんは。ヲーちゃんはぁ!」ウゥゥ!


レ級 「こうなったら父ちゃんか母ちゃんじゃねぇとな。責任取って送り届けてくれよ、みっちゃん。」ポン


三隈 「小賢しい真似をっ!」クッ



名誉は返上するものではない。


五月雨「で、まんまと嵌められたわけですか。」


三隈 「そうは言いますが、三隈が追いかけなければこのふたりは・・・。」


五月雨「追いかける事態に陥る前に策を講じておいてくださいよ。」ヤレヤレ


三隈 「申し訳ありませんの。」ウッ


五月雨「このままだと、三隈さんを信じて任せたお父さんにも恥をかかせることになってしまうのですが。」


五月雨「そこのところ、わかっていますよねぇ。」ニッコリ


三隈 「も、勿論ですの!必ずや、名誉を挽回してみせますの!」ビシッ


五月雨「まぁ、当人は然程気にしていないようですし。別に何もする必要はないですけど。」シレッ


三隈 「そんなっ!」


ナニトゾ オジヒヲー



ならばせめて華麗で在りたい。


紫苑茜「あのふたり、いつの間にあんな力関係になったのかしら。」ヨシヨシ


ヲ級 「ん~。」ヒシッ


黒霧 「それだけ五月雨が本調子に戻ってきたってことじゃないかな。」ハイ ギュー


レ級 「父ちゃん、鼻血が。///」ポタポタ


紫苑茜「ハグで逆上せたのね・・・。大丈夫?ちゃんと将来結婚できる?」フキフキ


レ級 「俺はまだ〇歳だぞ。心配するには少し早いんじゃねーか?」ムガッ


ヲ級 「そもそも、深海棲艦と結婚するような強者がお父さん以外にいるとは思えないの。」


紫苑茜「それを言われると弱いわね。」ウーン


レ級 「つーか、母ちゃんだって別に結婚してるわけじゃねぇだろ。」


紫苑茜「」グサッ


ア・・・


紫苑茜「ええ、そうですよ。娘がいるのに、こんなにも愛し合っているのに、結婚はまだしてないですよ。そうですよ。」ドヨーン


ヲ級 「レーちゃん・・・。」ジト


レ級 「わ、わりぃ。つい・・・。」


紫苑茜「わたしなんて一生独身貴族なんですよ。バツはないのに、コブはあるんですよ。何それ、笑えない。」ハハッ


黒霧 「これが茜姉さんの本性。」


曙  「いたたまれないわね。」


紫苑茜「最近、ドSコンビが酷い件。」



誓いは呪い。


紫苑茜「む~。」ウリウリ


黒霧 「背中のツボを押さない。」


紫苑茜「抗議してるんですぅ。」


黒霧 「無駄なことを・・・。」


紫苑茜「わたしの心を奪っておいて、その態度は何よ。ちゃんと責任取りなさいよ。」


黒霧 「楽しいことは終わりがあるからこそ楽しいものだよ。寿命の概念が無くなった僕達にとって、永遠の誓いは呪いに等しい。」


紫苑茜「いいじゃない、呪い。しーちゃんと一緒に居られるなら、わたしはそれでも・・・。」


黒霧 「今も一緒に居るでしょ。」


紫苑茜「そうだけど!ちゃんと証が欲しいの。しーちゃんがわたしの傍に居てくれるっていう証が。」


黒霧 「・・・茜、君も薄情だね。」


エ?


黒霧 「証ならほら、此処に。」ヨット


曙  「抱え方がおかしいな~。」フフフ


黒霧 「灯は証。この娘の存在が君への愛の証だよ。」フフ


紫苑茜「・・・茜。///」エヘヘ


曙  「これは、聞こえてないわね。」


黒霧 「姉さん呼びは締まらないかなと思ったんだけど、失敗だったかな?」



無自覚が一番の罪。


カポーン


長門 「」ホケー


陸奥 「ちょっと。わたしの隣りで変な妄想しないでくれる?」


長門 「頭の中くらい、私の好きにさせてくれ。それに、あのヲ級の涙を止めてやりたいと思うことは、おかしなことなのか?」


陸奥 「動機に因るわよ。言ってることはまともだけど、裏にどんな劣情を隠しているか・・・。」ウワァ


長門 「勝手な想像はやめろ。だいたい、劣情を隠しているのはお前のほうだろう。」


陸奥 「そんなことないわよ。ヲ級ちゃんの涙は美しいと思ったわ。」


長門 「は?」


陸奥 「え?」


長門 「お前は本当に・・・まったく。」ハァ


陸奥 「何?わたし、何か変なこと言った?」


長門 「この件、提督に相談させてもらうからな。」


陸奥 「代理の提督も男性みたいだけど、大丈夫?」


長門 「・・・。」ムフ


陸奥 「だから変な妄想しないでってば。」



要するに考えて動けってことさ。


レ級 「あ、大事なこと忘れてた。」


黒霧 「七駆の艤装のこと?」


レ級 「なんでわかるんだよ。」


黒霧 「ヲ級が、ただ僕達に会いたいからなんて理由で以て、こんな大胆なことをしでかすとは思えないからね。」


レ級 「流石は父ちゃんだな。ヲーちゃんのこと、よくわかって・・・ん?俺は?」


黒霧 「君は感情優先でしょ?」


レ級 「今回は違うぞ!俺はちゃんと言いつけを守って!」


黒霧 「ついてきちゃ駄目と言った憶えはないけど。」


レ級 「・・・謀ったなぁ!?」


黒霧 「何をさ。」フフッ



持たざる者とは、己が持つ者であることに気づいていない者である。


レ級 「なんだよ、もう。ヲーちゃんだけ父ちゃんと通じ合ってよ。俺だってこう・・・繋がりがほしいぜ。」ムゥ


黒霧 「それ、ヲ級にだけは絶対に言っちゃ駄目だよ。」


レ級 「なんで?寧ろドヤ顔で誇ってきそうなもんだろ。」


黒霧 「僕の鎖骨の下辺りに黒い痣があるのは知ってる?」


レ級 「あれだろ?黒霧の血を継ぐ証になるっていう・・・。まぁ、俺達にはねぇけど。」


黒霧 「そう。血の濃さ次第では発現しないこともある、何ともいい加減な証。ヲ級が君に抱く、最大の劣等感。」


レ級 「れっとう、かん?」


黒霧 「鏡を2枚使わないと自力では見ることのできないこの部分。肩甲骨の丁度間の所にあるんだよ、レ級にも。」チョンチョン


レ級 「・・・え?ま、まじで?」ニヘラ


黒霧 「何とも言えない表情だね。」


レ級 「そりゃまぁ、嬉しいけどさ。ヲーちゃんのことを考えると、素直に喜べないっつーか。」


黒霧 「レ級、嬉しいときは素直に喜んでいいんだよ。君はまだ子供なんだから。我慢を覚えるのは、もう少し先でも遅くない。」ギュッ


レ級 「・・・じゃあ、もっとぎゅって、してほしい。///」テレッ


黒霧 「だってさ。」


ヲ級茜「うりゃー!」トウッ


レ級 「な、なんだよ!俺は父ちゃんにぎゅってしてほしいって!」


紫苑茜「いいじゃないの!レーちゃんが素直になった記念に!」ギュウ


ヲ級 「久し振りの御饅頭なの~!」キャイキャイ


五月雨「皆さん!誰かを忘れちゃいませんか!」バーン


五月雨「これで全員ですよ~!」トーウ


ギャー!!


曙  「私も、父さんと母さんの娘なのに・・・。」ムー


黒霧 (おいで。)クスッ


曙  「!」パァ


曙  「私も交ぜろ~!」ヤー!


ナンカフエタ! アハハハ



恋人で在る意味。


ワイワイ


鈴谷 「ありはなんぞや。」


熊野 「貴女こそなんぞやですわ。」


鈴谷 「だってさぁ。羨ましいじゃん?みんな、幸せそうな顔してる。」ポー


熊野 「・・・諦めますの?」


鈴谷 「まさか。簡単には振り向いてくれないからこそ燃えるってものだよ。」フッフー


熊野 「あの方の場合、振り向いたとしても大炎上は免れないですわよ。」


鈴谷 「大丈夫、大丈夫。最初からその先は期待してないから。私は恋がしたいだけだし。」ニシシ


熊野 「今年こそは彼氏がほしいと言っていたのは何処の何方だったかしら。」ハテ


鈴谷 「乙女心は秋空の如くってね。それっぽいことができれば、別に彼氏である必要はないかなって思ったわけさ。」


鈴谷 「それにあの人は多分、あんまり仲良くならないほうが優しい気がするしね~。」


熊野 「そうですの。でしたら最後に私からひとつ助言を。」


鈴谷 「おっ。何かな何かな。」


熊野 「強く生きてくださいまし、鈴谷。」ニッコリ


鈴谷 「え?何、どういうこと?」


三隈 「こういうことですの。」ガシッ


鈴谷 「おぉ、みっちゃんじゃ~ん。おひさ~。」


三隈 「夜の四十八手。」ボソッ


鈴谷 「・・・おぅ。」


三隈 「もがみんから聞きましたの。覚悟はよろしくて?」フフフ


鈴谷 「くまのん、鈴谷は今日が命日みたいです。」パー


ウルァ! イギャアアア!!



オフホワイトです。


妙高 「騒がしいと思って来てみれば・・・。」ワナワナ


妙高 「何ですか!これは!!」クワッ


天龍 「何って言われてもなぁ。」


龍田 「見たまんまよね~。」


羽黒 「幸せのおしくらまんじゅうに、過去の報いを受けた少女・・・。」


足柄 「カオスね。」


妙高 「それはともかくとして、何故深海棲艦が居るのですか!」


天龍 「んなこと俺達が知るかよ。」


妙高 「敵を鎮守府に招き入れるだなんて・・・。そんな裏切り行為が許されるとでも・・・?」ギリッ


龍田 「妙高ちゃんって、案外単純よね~。」ウフフ


妙高 「なんですって?」ゴゴゴ


龍田 「ひとつ、彼女達は敵なのか。ひとつ、そもそも彼は味方なのか。ひとつ、彼は何を裏切るのか。」


龍田 「他にも沢山あるけれど、このうちのどれかひとつでも、妙高ちゃんに答えられるものがあるかしら。」


妙高 「私達は彼らのことを知らなすぎる・・・と?」


龍田 「ええ。便利な道具ほど使い方を間違えると大惨事になるでしょう?まずは無知であること認めて、知ろうとすること。」


龍田 「彼らの扱いを決めるのは、その後でも遅くないわ。」


天龍 「龍田・・・。お前、かなり酷いこと言ってるのわかってるか?」


龍田 「承知の上よ。」


羽黒 「猶悪いかと・・・。」



姉妹とそれぞれの道


足柄 「これは困ったことになったわね。」ンー


那智 「莫迦か、お前は。」


足柄 「いきなり出てきて"莫迦"とは随分ねぇ。てか、今までの行いを反省してたんじゃないの?」


那智 「ああ、そうだな。私はお前との関わり方を誤り、徒に苦しみを与えてしまった。挙句、それに気づいてすらやれなかった。」


那智 「姉として、恥じるばかりだ・・・。すまなかった。」ポム


足柄 「微妙に上からなのがムカつくけど。まぁ、いいわ。その謝罪、受け取ってあげる。」


那智 「で、だ。お前にはひとつ言っておくことがある。」


足柄 「何よ。」


那智 「私は、あの方に惚れている。」


足柄 「・・・え?うん、知ってるけど。」


那智 「私の全ては、あの方に捧げると決めた。女としてでなくとも構わん。部下として、生涯あの方に仕えるつもりだ。」


足柄 「まさか那智姉があいつにこうも入れ込んでるとは・・・。予想外だわ。」ヘェ


那智 「私は、あの方の後を追って海軍に身を寄せた。たとえ水底の果てだろうと、私はあの方についてゆく。」


足柄 「ん?待って。それ初耳・・・。」


那智 「お前はどうする?」


足柄 「どうするって、私は別にあいつと一緒に居たいわけじゃないし。」


那智 「そうではない。あの方の為ならば、お前に砲を向ける覚悟があると言っているのだ。」


足柄 「今までも結構向けられてきたような気もするんだけど。」


那智 「私は、本気だぞ。」


足柄 「・・・はぁ。そんなの、言われなくたってわかるわよ。何年姉妹やってると思ってるのよ。」


那智 「26年だな。」


足柄 「具体的に言わんでいい。」


足柄 「ねぇ、綾姉。綾姉は、私にどうなってほしいの?」


那智 「それがわかれば苦労はない。」


足柄 「おいこら。」


那智 「私は今まで、お前に背中ばかり見せてきた。碌に向き合うこともせず、我が道を突き進んできた。」


足柄 「そうね。」


那智 「だが、今は。今は、お前に向き合っているぞ。ちゃんと、お前を見ているぞ、琴。」


足柄 「やめてよ、恥ずかしい。」


那智 「琴、私は真剣にだな。」


足柄 「わかってるわよ。だから安心してちょうだい。ていうか、私の為に振り向くのはやめて。」


那智 「だが・・・!」


足柄 「私達はそういう姉妹じゃないでしょ?いつだって自分らしさを忘れない綾姉に、私は憧れた。背中を追った。」


足柄 「どれだけ全力を尽くしても、手を伸ばしても、指先が掛かる気配さえないくらいに遠い背中。」


足柄 「手を差し伸べるどころか、歩みを緩めてだってくれやしない。そんな綾姉に、私は憧れてたの。」


那智 「琴・・・。」


足柄 「だけど、今は違う。私は、私だけの道を見つけた。もう、綾姉の後を追うだけの私じゃない。」


足柄 「だから、綾姉は綾姉の道を往ってよ。すぐ隣りにってわけにはいかないけど、いつか、横を見たら私が居るってくらいには・・・」


足柄 「追いついてみせるから。」ニッ


那智 「・・・そうか。」ウルッ


足柄 「あっれ~?綾姉、若しかして泣いてる~?」ニヨニヨ


那智 「違う。これは汗だ。」グスッ


足柄 「またベタな言い訳を・・・。」フフッ


ハンカチ ツカウ? ・・・ウム



見せられないよ!


長門 「むぅ・・・。」チャポ


陸奥 「どうしたの?まだ時間じゃないわよ?」


長門 「いやな。少し、逆上せてしまったようでな。」フラフラ


陸奥 「もう。だから妄想はやめなさいって忠告したのに。」ヤレヤレ


長門 「横になってくる。」


陸奥 「あぁ、待って。心配だから付き添ってあげるわ。」ザパッ


長門 「すまんな。世話をかけ・・・。」


ガラッ


黒霧 「おや。」


長門 「・・・。」チラッ


陸奥 「目線を下げるな。」コラ


長門 「不自然な霧がっ。」チィ


黒霧 「君はもっと恥じらいを持とうね。」



さぁ、覚悟を決めようか。


天龍 「ほれ、水着だ。」ポイ


長門 「ああ。」パシ


龍田 「はい、どうぞ~。」


陸奥 「ありがとう、たっちゃん。」ウフフ


天龍 「長門、お前さぁ。男の前で裸晒してよく平常心を保てるよな。」


長門 「見られて恥ずかしい身体ではないからな。」


陸奥 「女としてある意味恥ずかしいわよ。そのバッキバキの腹筋。」


長門 「何を言う。これは努力の証だ。」


陸奥 「性欲の間違いでしょ。姉さんの場合。」


龍田 「いいじゃない。魅力は人それぞれよ。」


陸奥 「まぁ、そうなんだけど。それをたっちゃんに言われると、何だか嫉妬しちゃうわ~。」


龍田 「あら、ありがとう?」ウフッ


陸奥 「ほんと、スタイル良いわよね。大きいだけじゃなくて形も綺麗だし、腰周りは引き締まってるし。何よりその水着がエロいわ。」


龍田 「え・・・?」


天龍 「だな。俺もそいつを着て人前に出る勇気はねぇぜ。」


龍田 「うそ・・・。え?え?」カァ


長門 「私も前から思っていたぞ。」


龍田 「ふぇえ・・・。///」マッカ


チラッ


近衛麗「見られてるわよ。」チョイチョイ


黒霧 「どう返答しても未来がないよね。」



肌は努力してこそ魅せられるもの。


日陰 「らしくないな~、時雨くん。いつもなら、何か気の利いた一言をかけてあげるものじゃない?」


黒霧 「君の前では、その"いつも"を見せていないと思うんだけど。」


日陰 「細かいことはいーの。さっ。お仕事お仕事。」グイグイ


シカタナイナ


黒霧 「えっと。」コホン


龍田 「・・・。」モジモジ


黒霧 「龍田、君はその水着を素敵だと思って選んだんだよね?」


龍田 「」コクコク


黒霧 「ちょっと露出が多いかなとは思わなかったの?」


龍田 「」フルフル


黒霧 「そんなことが気にもならないくらいに気に入っていたと。」


龍田 「・・・。」コクリ


黒霧 「だったら、それでいいんじゃないかな。その水着を着た君は、とても魅力的だよ。後ろの三人が視界に入らないくらいに。」


天龍 「おい。一応俺のこれも勝負水着だぞ。」


長門 「私のは急拵えだからセーフだな。」


陸奥 「競泳水着以上に姉さんに似合う水着なんて無いわよ。」


龍田 「でも・・・。」


黒霧 「似合ってるんだから、もっと堂々とする。あんまり恥ずかしがっていると、虐めてしまいたくなる。」フフフ


龍田 「」ヒキッ


日陰 「色々と台無しの巻~。」アハハー



混浴の温泉よりもスパに行きたい。


天龍 「つーか、チビ達はまぁいいとして、お前らはタオルくらい巻けよ。」


近衛麗「湯船にタオルを浸けるのはマナー違反よ~。」


天龍 「もろ出しもマナー違反だろうが!」クワッ


日陰 「でもぉ、お風呂には裸で入るのが普通だしぃ。」


天龍 「日本ではな!海外じゃ、水着を着るんだよ!」


紫苑茜「それ、お風呂じゃなくてスパね。日本語に直すと"温泉"って意味になるから勘違いしてる人もいるけど、根本が違うから。」


天龍 「え?そうなのか?」


紫苑茜「スパの目的は、身体と心の療養。基本混浴だし、身体を洗うわけでもないから、水着を着ない理由がないわよね。」


紫苑茜「一方で温泉も療養に使ったりするけど、主な目的は入浴だから、水着は邪魔でしかない。」


日陰 「まぁ、早い話。一日の汚れを落とす為に入浴するのに、水着なんて着てられないだろってことさ。」ニヒッ


近衛麗「と、いうわけで・・・。」キラン


天龍 「おい・・・?」タジッ


日陰麗「あんたも脱げー!」ワー


天龍 「ちょ!?お、おい!や、やめっ!」


ヤメロォ!!



測定は正しい姿勢で。


天龍 「ちくしょう。あいつにも見せたことなかったのに・・・。」


黒霧 「大丈夫、見たところで何とも思わないから。」


天龍 「喧嘩売ってんのか、おら。俺だけ気にしてんのが莫迦みたいだろうが。」オォン?


黒霧 「君の場合は気にしたほうがいいと思うけどね。」ジー


天龍 「何がだよ。というか、そんな堂々と見てんじゃねぇよ。恥ずかしいだろ。」サッ


黒霧 「だって、君。自分のサイズ、全く把握してないでしょ。」


天龍 「はぁ?んなわけねぇだろ。自分のサイズくらいちゃんとわかってんよ。」


黒霧 「龍田、ちょっと。」チョイチョイ


龍田 「何かしら~。」トテトテ


黒霧 「赤裸々、天龍ちゃんゲ~ム。」


龍田 「わ~。」パチパチ


天龍 「おい、何を・・・。」


黒霧 「天龍のバストは何カップ?」パンパン


龍田 「Gカップ。」パンパン


天龍 「そんなにねぇよ!」


龍田 「天龍ちゃんの胸を動物に例えると?」パンパン


黒霧 「ホルスタイン。」


天龍 「牛でいいだろうがよ!なんで具体的にすんだよ!つーか、いい加減泣くぞ!」ブワッ


龍田 「でもね、天龍ちゃん。これが現実なのよ。」


天龍 「とどめを刺すなよぉ。」ウゥ



なんでだ なんでだろ~♪


黒霧 「ね?」


天龍 「何が、ね?だ。俺を虐めて愉しんでただけじゃねぇか。」グスッ


黒霧 「"だけ"ではないさ。君が自分のサイズを自覚していないことを教えてあげたんだから。」


天龍 「巫山戯んな。誰がGカップだ。そんなにねぇよ。精々Dだよ。こんちくしょう。」ウジウジ


龍田 「あのね、天龍ちゃん。言いづらいんだけど、私のサイズが丁度Dなの。」


天龍 「は・・・?」


龍田 「だからね、私の目算だけど、その・・・。少なくともG以上はあるかな~て・・・思うの。」メソラシ


天龍 「え?いやいや、んなわけ・・・。は?だって、この前に測ったときには・・・。」


黒霧 「君、最近改装したんじゃない?」


天龍 「・・・した。」


黒霧 「それでだと思うよ。序でに言っておくと、剣術の稽古のときにはサラシを巻いたほうがいい。」


黒霧 「君、下着も着けてなかったから時々見えてたし、何より・・・垂れてきてる。」


天龍 「もういっそ殺してくれ・・・。」ズーン


龍田 「憐れな天龍ちゃん。」ヨヨヨ


・・・


時雨 「ああいうのを見ると、よかったって思うよ。」トオイメ


五月雨「そうですか。私は妹を見ると、なんでだって思います。」フフ


ゾワッ


レ級 「急に寒気が・・・。」ブルッ


ヲ級 「湯船で漏らさないでなの。」ジト


チゲェヨ!



腕を犠牲にしてでも頭は守れ。


紫苑茜「ほら、みんな~。こっち来なさい。頭洗ってあげるから。」


レヲ級「は~い。」ナノ


漣・朧「一番乗りだ~!」ビューン


ツルッ


漣・朧「あっ。」


ドンガラガッシャーン


潮  「澪ちゃん!?撫子ちゃん!?」


曙  「ほんと莫迦。」


五月雨「海を滑る艦娘ともあろう者が、風呂場如きで転けるとは・・・。まだまだですね。」スーイ


レ級 「五月雨姉、艤装なしでどうやってんだよ。」エェ



毛根が悲鳴をあげている。


漣  「あーあ。たんこぶできちった。せん姉、優しくしてくんろ。」


紫苑茜「はいはい、わたしはいつだって優しいですよ~。」ワシャワシャ


レ級 「五月雨姉、なんか髪の色が薄くなってねぇか?」ワシワシ


五月雨「そうですか?自分では気づかないものですね。」


ヲ級 「レーちゃん、背中を流してあげるの。」


レ級 「お、ありがとな、ヲーちゃん。」ニッ


ゴシゴシ・・・


レ級 「ヲーちゃん?さっきから同じとこばっか洗ってないか?」


ヲ級 「擦り続ければきっといつかこの痣も落ちるの。」ヲー


レ級 「んなわけねぇだろ!これは内側から浮かびあがってんだぞ!」


五月雨「それにしても不思議ですよね。遺伝子的な繋がりはないはずなのに、血の繋がりを証明する痣が発現するだなんて。」


ヲ級 「レーちゃんだけズルいの。蓮華ちゃんに言いつけてやるの。」


レ級 「んなこと言われても・・・。俺の所為じゃないし・・・。」


曙  「」ジー


五月雨「どうかしましたか?」ウン?


曙  「いや、証があるのは羨ましいなと思って。」


五月雨「・・・そうですね。」フ


潮  「あれ?この形、何処かで見たような・・・。」ウーン


ハァ


長陸奥「交ざりたい。」


時雨 「はい、駄目で~す。」ニコニコ



身内でも超えてはならない一線がある。


漣  「さ~て、野郎共。一列に並べ~い。」


イェーイ


漣・朧「あそ~れ ごしご~し ごしご~し」ワシワシ


潮・曙「ごしご~し ごしご~し」


レヲ級「ごしご~し」


紫苑茜「はぁ。尊いわぁ。写真に収めたい・・・。」


五月雨「黒歴史確定なんでやめてあげてください。」


潮  「ああ!」


曙  「な、なに!?」


潮  「見て!撫子ちゃんの腰のとこ!」


漣  「なんだべさ。撫子の腰なんぞ舐め飽きるくらいに見てるべや。」ノソノソ


レ級 「なんだそりゃ。て、おい。それ・・・。」


曙  「嘘・・・。どうして・・・。」


漣  「お~。レーちゃんと同じ痣があんじゃん。何、まじで隠し子だったんけ?」


ヲ級 「」ピシャーン


朧  「おぅ?」



いったい誰が貴様に正直さを求めた。


ヲ級 「む~。」ブッスー


黒霧 「そんなにくっつかなくても、親子の絆が薄れたりはしないよ。」


ヲ級 「そんなのじゃないの。」プクー


黒霧 「ふふ。」ナデナデ


ヲ級 「ん~。」


レ級 「しっかしまぁ。ここまでくると、怒るのも莫迦らしいというか、何というか・・・。」


日陰 「あぁ、時雨くんが黒なのは確定事項なんだ。」


レ級 「違うのか?」


日陰 「私は何もしりましぇ~ん。」フフー


近衛麗「何を隠そう。私とパパの娘なのよ!」バーン


レ級曙「それはない。」キッパリ


近衛麗「哀しいかな。私もそう思うわ。」ズーン


黒霧 「そんなことはないと思うけどな。」ボソッ


近衛麗「今の聞こえたわよ!」


黒霧 「今夜に期待だね。」フフ


イヨッシ!


時雨 「あ~あ。騙すほうも騙すほうだけど、信じるほうも信じるほうだね。」ヤレヤレ



そこまで節操なしではないよ。


朧  「お~ぅ。」ジー


黒霧 「どうしたの?」フフ


朧  「ぱぅぱ?」


黒霧 「そうだよ。"実の"ではないけれど。」ポム


ウリウリ オォウ


レ級 「でもさ。それならなんで撫子に痣が出たんだ?血の繋がりもないのに。」


黒霧 「これは僕の推測だけど、恩恵を授けたときに僕の体内で生成された因子を注ぎ込んだから、じゃないかな。」


黒霧 「そこかしこに漂うものはともかく、体内で生成された因子には不完全ながらも僕の遺伝子情報が転写される。」


五月雨「それで養子である"はず"の撫子ちゃんに痣が発現したわけですね。」ナルホド


黒霧 「少し引っ掛かる部分はあるけど、そういうことだと思うよ。」


ヲ級 「じゃあ、ヲーちゃんに痣が無いのは・・・。」


黒霧 「遺伝子情報の転写が不完全だから、だね。」


五月雨「つまりレーちゃんは、"完全体"。」キラン


レ級 「五月雨姉、その言い方は嬉しくないぞ。」


黒霧 「そのうち凶化の練習もしないとね。」


レ級 「ほんとかっ!」キラキラ


黒霧 「こう頬に黒い痣が浮かび上がる感じ、憧れてたんでしょ?」ビキッ


レ級 「うん!!」パァァ


五月雨「レーちゃん、過去一で良い顔してますね。」


ヲ級 「今だけは、浸らせてあげるの。"今だけは"。」ヘッ



血と絆は別物。


曙  「父さん・・・。」コソコソ


黒霧 「どうしたのかな?」


曙  「私が産まれたときって、まだ父さんは子孫を残せる身体だったのよね。」


黒霧 「そうだね。あの頃はまだ聖戦が始まったばかりのはずだから。」


曙  「なら、どうしてたった一世代しか変わらない私に痣が無いのよ。」キッ


黒霧 「・・・不思議だね。」


曙  「それで済むと思うなよ。」オォン?


黒霧 「結論から言えば、黒霧の血が薄かったからだと思うよ。憶測の域は出ないけど、僕はそう確信してる。」


曙  「なんでよ。」


黒霧 「だって、君の孤児院時代の名前は"紫苑"でしょ?それは、灯の髪が艦娘になる前から紫だったことに由来してる。違うかな?」


曙  「・・・そうね。」


黒霧 「若し灯が黒霧の血を濃く受け継いでいたなら、君の名前は"白"を連想させるものになっていたはずだよ。」


黒霧 「要するに、茜姉さんの血が強すぎたってことさ。その証拠に、灯の家系能力は凶化でなく錬成でしょ?」


曙  「・・・今だけは母さんに似たことが恨めしい。」ハァ


黒霧 「大丈夫、灯にはちゃんと黒霧の血が流れているよ。」フフ


曙  「そう、かな。」ポスッ


黒霧 「そうさ。血の濃さなんて関係ない。君は確かに、僕と茜の愛する娘なんだから。」ギュッ


曙  「・・・うん。///」エヘヘ



家では使わないなぁ。


紫苑茜「灯~。髪、乾かしてあげるから来なさ~い。」


曙  「ん~。」トテトテ


漣  「せん姉、うちも~。」


朧  「わっちも~。」


潮  「私もお願いします!」ムフー


紫苑茜「はいはい。」ウフフ


五月雨「じゃあ、私はお父さんにやってもらいますかね。」エヘヘー


時雨 「あ、ボクも序でにお願~い。」テテテッ


黒霧 「ん、任された。」フフ


近衛麗「ちょっと、パパ。私をのけ者に・・・。」


レ級 「待った。」グイッ


近衛麗「うっ。あんた、力強いわね。」


レ級 「俺の髪乾かしてくれよ、麗姉。お返しに俺が麗姉の髪乾かしてやるからさ。」ニッ


近衛麗「え~。」


レ級 「なんだよ。俺じゃ不満か?仮にも姉妹なんだぜ?俺達。」ムッ


近衛麗「・・・仕方ないわね。わかったわよ。やってあげるから其処に座りなさい。」モウ


レ級 「おう、ありがとな。」ヘヘッ


ヲ級 「ヲー。」ジッ


長門 「どうした?私に何か用か?」


ヲ級 「なの。」サッ


長門 「ドライヤー・・・。なるほど。私に髪を乾かせということか。好かろう。其処に座れ。」フッ


ヲ級 「んーん。お膝の上がいいの。」


長門 「そうか?よし、来い。」ポンポン


ヲ級 「なの!」ピョン


ワイワイ


陸奥 「どうして私じゃないのっ。」クッ


日陰 「残り者同士、仲良くしましょー。」ウフフ



仕事の基本はPDCA。


天龍 「なぁ、龍田。」


龍田 「な~に。」


天龍 「髪、乾かしてやろうか。」


龍田 「あら、いいの?じゃあ、お願いしようかしら。」ウフフ


天龍 「おう、任せとけ。」スチャ


ブォォ


龍田 「久し振りね。こういうの。」


天龍 「そうだな。」


龍田 「お姉ちゃんが出ていく前は毎日してもらってたのに。」


天龍 「お前は昔から甘えん坊だったからな。耳かきに散髪に歯磨きに。ったく、何でも俺にやらせやがってよ。」


龍田 「だって、あたしはお姉ちゃんの妹だもの。少しくらい甘えたっていいでしょ?」


天龍 「少し・・・な。」ハハ


カチッ


天龍 「ほれ、終わったぞ。」ポン


龍田 「ありがと~。今度は私がやってあげる番ね。」


天龍 「いや、遠慮しとく。」


龍田 「なんでよ~。」ムー


天龍 「お前、雑なんだよ。髪が傷むから自分でやる。」


龍田 「あたしだって、ちゃんとやろうと思えばできるわよ。妹の本気を信じなさい。」ムン


天龍 「そう言って俺の髪を焦がしやがったこと、俺は生涯忘れないからな。」


龍田 「そんなことあったかしら?」


天龍 「だから任せたくねぇんだよ。反省しないから。」ハァ



自分がどう思うかでなく、他人にどう思われるか。


龍田 「そういうお姉ちゃんだって無頓着じゃない。」ムッ


天龍 「あ?身嗜みはきちんとしてるだろ?髪は整えてるし、メイクもしてる。制服だって、皺ひとつ無いこの完璧な・・・。」


龍田 「じゃなくて。自分がどれだけやらしい軀してるか自覚してないでしょって。」


天龍 「や、やらっ!?///」ボッ


龍田 「しかも、金具がめり込んで痛いからって下着を着けずに剣術の訓練をして、挙句旦那にも見せることのなかった乳を晒すとか。」


龍田 「無頓着というか無防備すぎて妹は心配です!自分の魅力を正しく認識しなさい!」ビシッ


天龍 「お、おう・・・すまん。」タジ


龍田 「まずは、お姉ちゃんのサイズに合った下着を買って。サラシも調達して。それから・・・。」メモメモ


天龍 「俺の予定が勝手に決められていく。」


黒霧 「明日は休みにするから、ふたりで行っておいでよ。」


天龍 「いいのか?そう簡単に休みをやって。」


黒霧 「構わないさ。どうせ二、三日は仕事にならないだろうし。君が一番忙しくなるだろうし。」シレッ


天龍 「なんで提督のお前より補佐の俺のほうが忙しくなるんだよ。仕事しろよ。」オイ


龍田 (提督、か。また、あたしを置いていっちゃうのね、お姉ちゃん。)



見えないからこそ要チェック。


黒霧 「じゃ、此処に座って。」ポン


天龍 「なんだよ。俺まだタオル一枚なんだから、あんま気安く触んじゃねぇよ。」


黒霧 「それはつまり、着衣状態ならお触り歓迎と。」


天龍 「巫山戯んな。」


ブォォ


天龍 「おぉ。お前、意外と上手いな。」


黒霧 「伊達に子沢山じゃないからね。」フフ


龍田 「むー。」プクー


黒霧 「ところで、君にプレゼントがあるんだけど。」


天龍 「お?賄賂か?悪いがちょっとやそっとの代物じゃあ俺は絆されねぇぜ。」ニィ


黒霧 「君の為を想って仕上げてきたのに、そんな言い方をされると哀しいな・・・。」ヨヨヨ


天龍 「悪い。また悪巫山戯かと思っちまった。」


黒霧 「まぁ、冗談なんだけど。」ケロリ


天龍 「どれが!?」


ズボッ ワップ


天龍 「なんだこれ。てるてるタオル?」


黒霧 「そう。着がえ用のプールタオル。ラップタオルとも言うね。」


天龍 「で、なんでこれなんだ?」


黒霧 「・・・言ってもいいの?」


天龍 「え・・・?そんな口に出すのも憚られるような内容なのか?」


黒霧 「うん。大きすぎる胸を自覚せずにタオルを巻いてるものだから下半身がモロ出しになってるだなんて、口が裂けても言えないよ。」


天龍 「!?」ピシャーン


黒霧 「だから、何も言わずに受け取ってくれると嬉しいな。」イイエガオ


天龍 「ありがとう、ございます・・・。」



だって見てられないから。


龍田 「ちょっと?あたしのお姉ちゃんを盗らないでくれる?」ジト


黒霧 「盗られたなら取り返してみなよ。それとも君は、敵に譲ってくれと頭を下げるのかな?」


龍田 「あぁ?」ギロッ


黒霧 「ふふ。」ニィ


バチバチ


天龍 「ちょっと待て。なんで俺が盗られたことになってんだ?俺はそんなにチョロくねぇぞ。」


黒霧 「何も心を盗んだとは言っていないでしょ。これは立場の話だよ。君に世話を焼くっていうね。」


天龍 「あ?あー、いや、うん。は?」


龍田 「絶対負けない。」キッ


黒霧 「今の君に負ける気はしないかな。」フフフ


天龍 「龍田はともかくとして、何故お前が俺に世話を焼く?まったく訳がわからん。」


近衛麗「パパって、あれかしら。ずぼらな女性が好きなのかしら。」


時雨 「いや、多分逆の感情だよ。あれ。」


日陰 「完全に矯正よね~。」アハハ



よく食べ よく寝 よく遊べ


五月雨「な~ぜ迎えられる側の私が司会をしているのか理解できませんが。まぁ、それはこの際よしとしましょう。」


デハ


五月雨「我々の前途を祝して、かんぱ~い。」


カンパーイ!


プハァ


那智 「おかわり!」ダン


足柄 「相変わらずね・・・。」ウワァ


黒霧 「程々にね。」フフ


紫苑茜「はい、あ~ん。」


朧  「あー。」ン


ムグムグ


朧  「うっまぁ~。」パァ


漣  「せん姉、俺も~。」


紫苑茜「はいはい。」ウフフ


潮  「」パクパク ムシャムシャ


レ級 「どうなってんだ?姫の胃袋。」エェ


ヲ級 「料理がどんどん吸い込まれていくの。」ヲー


近衛麗「やっぱり、よく食べる娘がよく育つのね。」パクッ


時雨 「じゃあ、麗さんもよく食べる娘だったんだ。」


近衛麗「ん~?そうねぇ。確かによく食べてたわね、男を。」


時雨 「訊くんじゃなかった。」


近衛麗「そういえば、灯は?あの娘、何処に行ったの?」


時雨 「あそこ。」クイッ


曙  「初めて座ったけど、中々いいわね。」


足柄 「でしょ?黒の体温は心地好いのよ。一家に一台は欲しいわね。」


曙  「こう、包まれてる感じ?凄く落ち着く・・・。」フゥ


黒霧 「ほら。今寝てしまうと、夜寝つけなくなるよ。今は食べることに集中。」アーン


曙  「ん。流石、父さんの手料理ね。美味しい。」モグモグ


黒霧 「それはどうも。」


近衛麗「後で私もやってもらお。」


時雨 「体格的に無理があるような・・・。」


近衛麗「それは言わないお約束!」メッ


時雨 「あっそう。」



あなたに絶対は在りますか?


妙高 「何故この私が深海棲艦と同じ食卓を囲む羽目に・・・。」イライラ


天龍 「何をひとりで苛ついてんだ?これでも食って落ち着けよ。中々どうして美味いもんだぞ。」ホレ


妙高 「得体の知れない輩の手料理なんて、御免被ります!」フン


龍田 「あら~。そんなこと言っていいのかしらぁ。今後、うちの食事は全て彼が管理することになっているのに~。」ウフフ


妙高 「なっ!」


羽黒 「はい、お姉ちゃん。あ~ん。」スッ


ン モグモグ


羽黒 「美味しい?」


妙高 「ええ、美味しいわ。」パァァ


羽黒 「よかった。これでお姉ちゃんも餓えずに済むね。」フフッ


妙高 「何てことっ!」ガーン


天龍 「羽黒には敵わねぇな。」ニシシ


龍田 「妙高ちゃんの扱いをよくわかってるわ~。」



罪と罰 -ヒョードル=ドフトエフスキー-


???「ごめんなさいね。手伝ってもらっちゃって。」


三隈 「いいんですの。三隈には、歓迎会に参加する資格がありませんの。」カチャカチャ


鈴谷 「だったらみっちゃんだけでやってればいいじゃ~ん。なんで鈴谷まで裏方に回ってるのさ~。」フキフキ


三隈 「これで手打ちにしてあげてますの。ありがたく思いますの。」フン


熊野 「鳳翔さん、この食器はどちらに・・・。」


鳳翔 「あぁ、それはですね・・・。」エート


鈴谷 「嗚呼、くまの~ん。可哀想な親友を想って自ら手伝ってくれるなんて、鈴谷は幸せ者だよ~。」


熊野 「そんなのじゃありませんわ。口より手を動かしてくださいまし。」モウ


三隈 「そうですの。例の本を調達した張本人にもお仕置は必要ですの。」ジト


熊野 「ぐっ。」ギクッ


鈴谷 「わ~お。みっちゃんてばエスパー?」ハハ


鳳翔 「仲が良いんですね。」ウフフ


三隈 「ただの腐れ縁ですの。」


鈴谷 「そーいや、もがみんにはどんな罰を与えたのさ。」


三隈 「それも考えないといけませんでしたの。」ム


・・・


最上 「何だか寒気が。」ブルッ


南方戦「虫の知らせってやつ?やめてよ。レ級とヲーちゃんが居ない今、ウチの戦力は不安だらけなんだから。」


最上 「襲撃されたらまずいって?そういうことは思っても口に出さないのがお・・・。」


ビー! ビー!


最上 「言わんこっちゃない。」ヤレヤレ



どれだけ力があろうとも。


南方戦「確か龍驤がまだ居たわね。アイツにも手伝わせるわよ。」


最上 「りょーかい。序でに神命ちゃんを連れてくるように言っとく。」ピー


南方戦「完全に便利屋扱いね。まぁ、いいわ。頼んだわよ。」タッ


ヘーイ


南方戦「襲撃だっていうのに、あのやる気の無さ・・・。ホントに大丈夫かしら。」ハァ


南方戦「さて、ワタシの大切な場所に土足で踏み入る莫迦の顔を拝みにいくとしましょうか。」ニタァ


???「ここ・・・ここ?あのひとのにおい。わたしのにおい。わたし・・・の?」


???「ちがう。でも、にてる。にて・・・る。だれ?あなたはだあれ?」フラフラ


チラッ


龍驤 「なんや、あれ。あんなもん、見たことないで。」


神命 「あー。これはまずいなー。」


龍驤 「何がまずいって?まさか、君でも太刀打ちできんとか言うつもりやないやろな。」


神命 「正直きついかも。」


龍驤 「勘弁してぇな。」


ア・・・ ン? ドナイシタ?


神命 「ごめん、目が合っちゃった。」アハハ


龍驤 「・・・よし。戦略的撤退!」バビューン


神命 「ちょ!置いてかないで!龍驤ちゃ~ん!」



結局誰なのかは未定。


南方戦「・・・。」


???「あなた。あなた・・・。あなた、どなた?」ユラユラ


南方戦「誰かと思えば、まさかアンタとはね。真実の愛を知って成仏したんじゃなかったの?ねぇ、間宮。」ギラッ


間宮?「まみや?まみ、や。あは、あはハ。アハハハハ!」


南方戦「何、コイツ・・・。」ヒキッ


間宮?「そっか。そうだった。わたしはまみや。まみやだった。でもちがう。いまはちがう。だけど、あなたはコロス。」コォォ


間宮?「まみやからたいせつなひとをうばったあなたは、コロス!!」カッ


南方戦「はっ!恋愛勝負で負けたから今度は喧嘩で勝負しようって?無様なものね。今のアンタはあのひとに会わせる価値も無いわ!」


間宮?「アハハハハ!」ギュン


南方戦「屑鉄になりなさい!!」ガション


チュドォォン! サァァ


南方戦「あっぶないわね!何処狙ってんのよ!!」クワッ


最上 『余所見しない。今、ボクが間宮(仮)の動きを止めなかったら、懐に潜り込まれてたでしょ。』


最上 『初期動作、間に合ってなかったよ。』ガコン


南方戦「ワタシは肉弾戦のほうが得意なの!」


最上 『そっちは神命ちゃんに任せて。南さんは砲撃に専念して。この基地一番の火力持ちは南さんなんだから。』


南方戦「くっそ。正論ね。」ギリッ


神命 「あのさぁ!私もそんなに余裕ないから!話し込んでないで援護してくれないかなぁ!!」


間宮?「おっそ~い。」ニタァ


神命 「やっば。」ゲッ


チュドーン


間宮?「ちっ。」


龍驤 「ぎりセーフ。」フゥ


神命 「龍驤ちゃ~ん!」キラキラ


龍驤 「援護はうちに任しとき!そん代わり、そいつをうちのほうに来させんとってな!」グッ


神命 「私の負担大きくない!?」


最上 『好きでしょ?そういうの。』


神命 「否定しきれない自分が悔しい!」


南方戦「なんか調子狂うわ・・・。」



始めから全力なんて出していられない。


神命 「こんのぉ!」シュッ


間宮?「アハハ!おそいおそ~い。」シュン


龍驤 「そこぉ!」バッ


チュドーン


間宮?「このていど?」ニィ


龍驤 「爆撃機の直撃を受けて無傷かいな。どうなっとんねん、あの装甲。」チッ


最上 『ちょっと道空けてもらえる~?』カチッ


ドォォン! ウオッ!


龍驤 「こら!最上!言うと同時に撃つなや!掠ってもやばいんやからな、それ!」


最上 『相手に避ける隙を与えちゃ駄目でしょ~。ま、どうせ直撃したところでなんだろうけどさ。』


間宮?「あはっ。」ニタニタ


龍驤 「最上の最大火力でこれか。神命を相手にしたら、こんな感じなんやろなぁ。」ウワァ


神命 「ちょっと、それどういう意味!?」


間宮?「もうおわり?おわり?あは、アハハ!もっとあそぼう?」アハッ


南方戦「いい加減、鬱陶しいのよ。」フンッ


ドゴォ


間宮?「かっは!」メキィ


龍驤 「殴ったほうが強いとか、どんな膂力してんねん。」エェ


神命 「あらら。南ちゃんがキレちゃったか。じゃ、そろそろ私も本腰入れようかな。」フー


神命 「八割解放、"凶化"。」ビキッ


最上 『第弐ラウンド、開始だね。』


龍驤 「仕切り直したところで、うちの遣り方は変わらんけどな。出し惜しみなんてしてられへんわ。」ヤレヤレ



ラスト・ホープ


最上 『あー。弾切れだ・・・。』


龍驤 「そら大和砲やからな。ぽんぽん撃てるかいな。ま、そんなうちもジリ貧なんやけど。」


最上 『南さんは治癒能力があるからまだ大丈夫そうだけど、神命ちゃんは・・・どうなんだろ。』


龍驤 「さぁな。凶化を発動させてからずっと笑っとるからな。よぉわからん。」


神命 「限界だっての。」ゼェ ハァ


龍驤 「らしいで?」


最上 『ごめん、聞こえなかったからもうちょい頑張って。』


神命 「ひどっ!?」


蓮華 『つべこべ言うな。直に援軍が来る。それまで耐えてみせろ。』


神命 「あーい。」ウゥ


龍驤 「姿が見えんと思ったら、援軍要請しとったんかいな。助かるで。流石は蓮華や。」ウム


最上 『因みに訊くけど、誰を呼んだの?』


蓮華 『紅蓮とその一行だ。』


神命 「よりによって紅蓮か。あいつ、海の上じゃ役立たずなのにぃ。」


蓮華 『ほれ、わかったらさっさと母上の加勢をしてこい。』


神命 「加勢って言われてもな。南ちゃんって喧嘩戦法だから連携も何も・・・。」ハハ


蓮華 『文句を言うな。お前がこの基地最後の砦なのだ。しっかりやれ。』


神命 「あーん、もう!兄様、助けてー!」ワーン



感情をコントロールせよ。


間宮?「はぁはぁ・・・。」コフッ


南方戦「なに、もう終わり?案外大したことないのね、アンタ。」フン


神命 「いやいや、南ちゃんがおかしいだけだって。戦闘継続能力高すぎでしょ。」


間宮?「おもしろくない。おもしろく、ない。ない、なイ、ナイ・・・!」グギギ


ウアアアア! シュン


南方戦「消えっ!?」


間宮?「我が腕と共に爆ぜ散れ。」グォッ


神命 「南ちゃん!!」


ヒュゴッ ガキン


間宮?「かふっ!」


南方戦「っ!もう一発くらいなさい!」ドゴッ


間宮?「くぅぅ!」バキッ


南方戦「上手く防いだわね、この。」チッ


???「退け、でっかいの!巻き込まれても知らねぇぞ!」


南方戦「誰がでっかいのですって!」クワッ


???「生命の惑星よ。てめぇの鼓動を聞かせてみせろ。」コォォ


神命 「やばっ。南ちゃん、下がって!」グイッ


南方戦「ちょっ。何するのよ、神命!」


???「大地の息吹。」ゴォォ


間宮?「ふ、ふふっ。」ニィ


アハハハハ・・・


???「・・・逃げられたか。」チッ


神命 「この莫迦紅蓮!」バシッ


鳳紅蓮「だっ!てめぇ、何しやがる!」


神命 「それはこっちの科白!危うく兄様の大事なひとを巻き込むところだったんだよ!?兄様に殺されたいの!?」


鳳紅蓮「いや、それは・・・。」


神命 「紅蓮が兄様の逆鱗に触れるのは勝手だけど、私達を巻き込まないでよ!」


南方戦「神命。アンタはつまり、時雨の怒りが自分に向かなければワタシの身がどうなろうと知ったことじゃないと・・・」


南方戦「そう言いたいのね、そうなのね。」ヘェ


神命 「あ、そう聞こえる?」アハハ


南方戦「そうにしか聞こえないわよ!」コノ!


神命 「あっ!やめて!今は凶化の反動がきてるから!身体が上手く動かないから!」


南方戦「それは丁度よかったわ!」


イヤアアア!



必要なのは努力の証。


神命 「私、頑張ったのに・・・。」ウゥ


南方戦「頑張った程度で褒められるほど、世の中甘くないのよ。」フンッ


神命 「あとで兄様に思いっきり甘えてやる。」


南方戦「ワタシがそれを許すとでも?」


神命 「じゃあ南ちゃんでいいから私を甘やかして!」


南方戦「じゃあって何よ。じゃあって。」


神命 「義姉様~。」スリッ


南方戦「鬱陶しい!」


ギャーギャー


龍驤 「ったく。一番働いたふたりが一番元気って、どんな体力してんねん、あの娘ら。」


最上 『おつかれ~。今日は泊まってく?』


龍驤 「そうやな。お言葉に甘えるとしようか。」フゥ


最上 『じゃ、夕飯の準備手伝ってね。ボクは報告書の作成があるから、代わりによろしく~。』ブチッ


ザー


龍驤 「・・・返事する前に切りよったな。うちが断る思うたんか。それとも逆か。返答次第では説教が必要やな。」



気に入らない奴はとことん気に入らない。


神命 「というか、なんで紅蓮が海の上に立ててるの?」


鳳紅蓮「今更かよ。時雨の奴が俺用に脚部艤装を仕上げて送りつけてきてな。」ホレ


神命 「えぇ、兄様からの贈り物~?紅蓮のくせに。」ケッ


鳳紅蓮「神命、てめぇ。俺に対して露骨に態度悪いな。俺はお前らを助けに態々来てやったんだぞ。」


神命 「別に頼んでないし。」


鳳紅蓮「時雨に頼まれたんだよ。お前ひとりじゃ心許ないからってな。」ヘヘッ


神命 「喧嘩売ってるの?いいよ。買ってあげるよ、その喧嘩。」ビキッ


鳳紅蓮「魔力操作を覚えた俺は、もう以前の俺じゃねぇぜ。」ニィ


ゴゴゴ


南方戦「ワタシ、夕飯の支度あるから戻るわ。」ジャ


龍驤 「程々にしときや~。聞こえとらんやろうけど。」ホンジャ



友情ではない。


???「だいあもんどぉ~らりあっとう!」ソリャ!


鳳紅蓮「うが!」ゴッ


???「えへへ~。ダメですよ、ダーリン。ひとりで勝手をしては。私達は夫婦なンですから、いつも一緒に居ないと・・・。」テレテレ


神命 「は?夫婦?誰が?誰と?」


???「そんなこと・・・恥ずかしくて言えませン!」キャー


神命 「なんだろう。凄い腹立つ。」イラッ


鳳紅蓮「金剛、お前全力でかましやがったな?かなり痛かったぞ、この。」サスサス


金剛 「だって。ダーリンに置いていかれて寂しかったンだもん。」イジイジ


鳳紅蓮「それは悪かったけどよ。お前もいい加減慣れてくれよ。いつまでも俺が傍に居てやれるわけじゃねぇんだから。」


金剛 「え?それは、どういう・・・。」


神命 「ふんっ!」ベシッ


ダッ


鳳紅蓮「てめぇ、また・・・!」


神命 「ごめんね、金剛ちゃん!こいつったら紛らわしい言い方して。さっきのは単に仕事で忙しくなるって意味だから!」


金剛 「なぁんだ。てっきり私は、いつかお別れの時が来てしまうのかと思っちゃいマシタ。」エヘヘ


神命 「そんなわけないじゃな~い。こいつは殺しても死なないんだから~。」アハハー


グイッ


神命 「あんた、金剛ちゃんを泣かせたら、わかってるでしょうね。」ボソボソ


鳳紅蓮「お、おぉう。」


パッ


神命 「さ、金剛ちゃん。ゆっくりお風呂に入りながら紅蓮との馴れ初め聞かせてよ。」ニコニコ


金剛 「え~。恥ずかしいデス~。でも、神命になら話しちゃいマス!」ウフフ


神命 「ありがと~。」ヒクヒク


キャイキャイ


鳳紅蓮「急にどうしたんだ?あいつ。」


・・・


霧島ミニ「はぁ。紅蓮さんにはがっかりです。」


比叡ミニ「そう?寧ろ期待どおりですよ。」フフン


霧島ミニ「悪い意味にはそうですね。まったく。先が思いやられます。」ヤレヤレ



ちょっと箸休め。


「ああ、どうにか追い返したぞ。かなり危ういところだったがな。」


「ん?私か?私はただ眺めていただけだ。」


「ふっ。そうだな。私が出ていれば、紅蓮の奴を呼ぶ必要もなかったかも知れないな。」


「だが、いいではないか。紅蓮は己の成長を自覚した。神命は己の未熟さを自覚した。」


「最上と龍驤は・・・まぁ、身の程を弁えていたのではないか?」


「上からな物言いだと?事実なのだから仕方ないだろう。」


「そんなことよりだ。あれは己の内にある間宮を自覚した。今度は解放してやらねばな、父上。」



月が綺麗。


黒霧 「・・・。」フゥ


アラ ン?


鳳翔 「時雨さん、どうされたんですか?こんな所で。」


黒霧 「"庵"こそ、こんな人気のない所に来て。襲われても知らないよ?」


鳳翔 「昔の名前で呼ばないでください!その名前は、なんだか歳をとった気分になるので苦手なんです。」ウゥ


黒霧 「そう?僕は好い名前だと思うけど。庵は隠遁者が暮らす小さな家のことだからね。嘗て第一線で活躍した君にぴったりだ。」


鳳翔 「それは、利き手を負傷して引退した私への当てつけですか?狭霧ちゃんの旦那様は随分といい性格をしているようですね。」ムッ


黒霧 「君に戦場は似合わない。厨房で肉を刻むなり、庭で盆栽に刃を入れるなりしていたほうが君らしい。」


鳳翔 「一々癇に障る言い方をしますね。そんなに私を怒らせたいですか?私の説教は長いですよ?」ピクピク


黒霧 「好い月だ。」トオイメ


鳳翔 「話を逸らさない。」ガシッ


鳳翔 「まったく。学生時代からの狭霧ちゃんの親友である私に顔を合わせづらいのは理解していますが、流石に酷いですよ?」モウ


黒霧 「いや、庵がまだネタを拾いきってくれてないから。」


鳳翔 「え?何かありましたっけ?」


黒霧 「襲う。月。」


鳳翔 「・・・私に何をするつもりですか!?///」サッ


黒霧 「こんな所にひとりで来たのが運の尽きだったね。」フッ


鳳翔 「で、この先私はどうすればいいんですか?」ハァ


黒霧 「少し、話に付き合ってもらえないかな。」


鳳翔 「始めからそう素直に言えばいいのに・・・。」



君は何を懸けるか。


鳳翔 「それで話というのは・・・。」


黒霧 「間宮のことだよ。彼女がまだ、狭霧だった頃のね。」


鳳翔 「狭霧ちゃんですか。そういえば貴方は間宮になった後の彼女しか知らないのでしたね。」


黒霧 「大体の予想はつくけどね。人間嫌いで君にしか心を開いていない姿が目に浮かぶようだよ。」


鳳翔 「あら、そんなことはなかったですよ?人当たりが好くて、和やかで、誰にでも優しい素敵な女の子でした。」フフ


黒霧 「表向きは、でしょ?」


鳳翔 「ええ、そうですね。本性は時雨さんの言ったとおりです。貴方と出会った後も、それは変わりませんでしたね。」


黒霧 「・・・。」


鳳翔 「まさかとは思いますが、彼女の性根を正すつもりだったんですか・・・?」


黒霧 「あの計画は彼女が人生を懸けて進めてきたことだ。それを、ただ間違っているからなんて理由で掻き乱す真似はできないさ。」


黒霧 「だからこそ僕は、この手で彼女を斬る道を選んだ。」


鳳翔 「そうですか・・・。つらかった、ですね。」ポン


黒霧 「そこは頭を撫でるところじゃないかな。」


鳳翔 「撫でてほしいのなら、其処に直ってください。私の身長では手が届きませんから。」


黒霧 「直らずとも、こうすればいい。」ヒョイ


鳳翔 「きゃっ。もう、いきなり抱えないでください。結構怖いんですよ?この高さ。」ムー


鳳翔 「それに、誰かに見られて勘違いされたらどうするんですか。」


黒霧 「勘違いでなくすればいい。」


鳳翔 「既婚者がそういうことを言うものではありません。」コラ


黒霧 「ふふ。」


鳳翔 「もう。今だけですからね?」マッタク


ヨシヨシ


五月雨「お父さんが他人に甘えてる。」ナント


時雨 「浮気現場、押さえたり~。」


紫苑茜「しーちゃん・・・。」


レ級 「なんつーか。ドンマイ、母ちゃん。」


紫苑茜「どうせならわたしに甘えてくれたらいいのに!」クッ


レ級 「そっちかよ。」



好きなものは仕方がない。


鳳翔 「見られてますね。」


黒霧 「そうだね。」


鳳翔 「私、面倒事は嫌ですからね?誤解はしっかり解いてください。」


黒霧 「さっきも言ったけど、誤解ではないよ。僕は君が好きだ。ひとりの女性として。」


鳳翔 「・・・はい?」


黒霧 「吃驚した?でも、僕はちゃんと伝えてたでしょ。君が頑なに信じようとしなかっただけで。」


鳳翔 「そんなの、信じるわけないじゃないですか!貴方は親友の許嫁だったんですよ!?」


黒霧 「あはは。君のそんな顔、初めて見たよ。」フフッ


鳳翔 「こっ・・・!」


バカー!!



大事なのは誰を選ぶか。


鳳翔 「ほんとにもう。貴方はほんとにほんとにもう!」ポカポカ


黒霧 「やっと君を狼狽えさせることができたよ。」フゥ


鳳翔 「そんなことの為に告白したんですか!?外面だけの心無い告白だったんですか!?」


黒霧 「君のことが好きなのは本当だよ?」シレッ


鳳翔 「はぅあ!」


プフッ ワラウナァ!!


鳳翔 「さ、参考までに私の何処に惚れたのか、お訊きしてもいいですか?」コホン


黒霧 「からかい甲斐のあるところ。」


鳳翔 「怒りますよ!」


黒霧 「割と本気で言ってるんだけど。」


鳳翔 「猶のこと悪いです!」


フフッ ナニヲワラッテイルンデスカ!


黒霧 「いや、庵と居ると楽しいなって。」フフ


鳳翔 「あー!もう!貴方と居ると調子が狂います!というか、いい加減に下ろしてください!」


黒霧 「やだ。」ニコー


オロセェ!!



我こそが自由。


ゼェ ハァ


鳳翔 「だいたい、貴方には深海棲艦の奥様が居るのではないのですか?」フー


黒霧 「南のこと?間宮はそんなことまで君に話していたんだね。」ヘェ


鳳翔 「伴侶が居る身でありながら、別の女性を口説くだなんて不貞が過ぎますよ!」


黒霧 「口説く?僕は素直な気持ちを伝えただけだよ?」


鳳翔 「それを口説くというんです!」クワッ


黒霧 「僕が庵を好きなのは、変えようのない事実だよ?」


鳳翔 「こんなときに名前で呼ばない!」


黒霧 「君が好きだ。」キリッ


鳳翔 「貴方は何がしたいんですかぁ!!」


黒霧 「君に僕の素直な気持ちを知ってもらいたいだけだよ。」


鳳翔 「え・・・?それだけ?その先は?」ヘ?


黒霧 「その先?僕には南が居るのに?」ウン?


鳳翔 「もうやだ、この人ぉ!!」ウワーン


五月雨「そろそろ、止めましょうか。」


時雨 「そうだね。」ハハ



同情するなら?


鳳翔 「叫びすぎて頭が痛いです・・・。」アァ


時雨 「ごめんね、鳳翔さん。にぃにが異常なのはいつものことだけど、今日は一段と狂ってるみたいで。」アハハ


五月雨「価値観が違うといいますか、価値観が違うことをネタに遊んでいるといいますか・・・。」ヤレヤレ


五月雨「因みにどっちなんですか?」


黒霧 「後者。」


鳳翔 「この莫迦の伴侶になられた方には同情します。」ウワァ


レ級 「南姉に同情は必要ないぜ。なんだかんだ、父ちゃんと一緒になれて幸せみたいだからな。」ニシシ


鳳翔 「そうで・・・ん?父ちゃん?」


レ級 「あ?ああ、こっちが父ちゃんで、こっちが母ちゃんだ。」グイッ


黒霧 「おっと。」


紫苑茜「こら、レーちゃん。あなた、それなりに膂力があるんだから急に引っ張らないの。」メッ


鳳翔 「貴女も大変ですね。」フ


レ級 「俺にも同情は要らねぇ。」オイコラ



言いづらいと思うから言いづらい言葉になる。


レ級 「つーかさぁ。父ちゃんとこの人はどんな関係なんだよ。」ビッ


黒霧 「この人じゃなくて"庵"ね。」


レ級 「いろり?」アン?


鳳翔 「"いおり"です。間違えないでください。」


レ級 「おう。で?どんな関係なんだよ。」


鳳翔 「ただの知り合いです。」


時雨 「ダウト。」


鳳翔 「・・・親友の許嫁です。」


五月雨「間違ってはいませんが、正解でもないですよね。」


鳳翔 「・・・。」ムー


黒霧 「暫く一緒に暮らした仲だって、そんなに言いづらい?」


鳳翔 「ええ、とっても!」


時雨 「さらっと言ったほうが色々と詮索されずに済んだのにね。」


五月雨「ねー。」



さぁ、授業を始めよう。


五月雨「月光をバックに。」サッ


時雨 「机と椅子をセット。」シュバッ


五月雨「スーツに着替えて。」ササッ


時雨 「デスクライトを点ける。」パッ


露姉妹「準備オーケー。」キュピーン


露姉妹「さぁ、取り調べを始めよう。」パチン


レ級 「どっから持ってきたんだよ、そんなもん。」エェ



疲労感の無い楽は虚しいだけ。


時雨 「潔く吐いたらどうかね。」


五月雨「ネタはとっくに挙がっているのだよ、いろり君。」


鳳翔 「いおりです。」


時雨 「まったく君も強情だな。」


五月雨「カツ丼でも頼もうか、いろり君。」


鳳翔 「いおりです。」


時雨 「夜が明けるまで続けるつもりなのかな?」


五月雨「我々も暇ではないのだがね、いろり君。」


鳳翔 「いおりです。」ヒクッ


露姉妹「我慢比べといこうか、いおり君。」


鳳翔 「だから"いおり"じゃなくて"いろり"だって何度っ・・・!」ハッ


露姉妹「ほほう。」ニヤァ


鳳翔 「嵌められてしまいましたっ。」クッ


黒霧 「君も面倒な性格をしているね、庵。」



出番だ!変処理くん!


鳳翔 「だって、付き合ってあげないと可哀想じゃないですか。」


露姉妹「かわっ!?」ガーン


レ級 「うーわ。」


紫苑茜「容赦ないわね、この娘。」


黒霧 「真面目の方向性が迷子なだけだよ。」


時雨 「なんか、友達がいなくて淋しい奴みたいだね、ボク達。」トオイメ


五月雨「そうですね、姉さん。」トオイメ


鳳翔 「ご、ごめんなさい。決してそんなつもりでは・・・。」アセアセ


時雨 「まぁ、いいや。お詫びとして色々と答えてもらえるだろうし。」フフ


五月雨「まさか嫌とは言わないでしょうし。」フフフ


鳳翔 「・・・本当に嵌められました?」アレ?



年齢は話題の指標。


時雨 「じゃあ、まずはボクからね。」


鳳翔 「お手柔らかにお願いしますね?」


時雨 「鳳翔さんって幾つなの?」


鳳翔 「その質問の意図は何ですか?背が低いから子供に見えるってことですか?それとも、老けて見えるってことですか。」ゴゴゴ


時雨 「ゴメンナサイ」


五月雨「自分から地雷原に突っ込んでいくところまでお父さんを真似しなくていいのに・・・。」


鳳翔 「・・・24です。」ボソッ


時雨 「年齢より若く見えますね。」アハハ


鳳翔 「具体的にはどのくらいですか~?」ウフフ


時雨 「勘弁してください。本当にすみませんでした。」ドゲザ


五月雨「そういえば、お父さんは何歳設定なんですか?実年齢はまぁ、あれとしても戸籍上の年齢は設定しなきゃですよね。」


黒霧 「ん?そうだね。軍に入った当時が18とかだから、今は三十代前半かな。」ウーン


五月雨「ということは10歳差くらいですか。年の差婚ですね。」


黒霧 「政略結婚らしいでしょ?」フフ



しかし直接は訊きづらい。


紫苑茜「それで?同棲の契機は何だったの?」


鳳翔 「あの。同棲という言い方は、その・・・よしてもらいたいです。」ゴニョゴニョ


紫苑茜「でも一緒に暮らしてたんでしょ?」


鳳翔 「そうですけど~。」ウー


五月雨「鳳翔さんとの暮らしはどうでしたか?お父さん。」ニマニマ


黒霧 「昭和初期の薫りがしたかな。」


鳳翔 「それは私が古くさいってことですかっ!」


黒霧 「褒めてるんだよ。人のちょっとした仕草で、その人が何を考えているかを理解し、口に出すより先にその望みを叶えてしまう。」


黒霧 「そんな芸当ができるのは、この現代に於いて庵くらいなものさ。」


鳳翔 「やっぱり古くさいってことじゃないですか!」クワッ


黒霧 「気にしすぎだよ・・・。」


レ級 「最初の質問は何処いった。」



蕎麦屋に居るよ。


五月雨「はい、リテイク。」ドン


紫苑茜「で、どうして同棲することになったのかしら?」


鳳翔 「・・・白状しますと、戦力として使いものにならなくなった私を時雨さんが匿ってくださったんです。」


時雨 「匿った、か。海軍の闇が窺えるね。当時の、だけど。」


鳳翔 「ええ。御蔭で慰み者にならずに済みました。裏を返せばその所為で処女のままなのですけど。」パー


時雨 (若しやそういう願望が?)


鳳翔 「違いますよ?」ウフフ


時雨 「やだ、この人怖い。」サッ


黒霧 「最近、よく僕の後ろに居るね。」フフ



誰でもいい。それが平等の根幹。


五月雨「ところで、お父さんと鳳翔さんは同棲に至るまでの信頼関係をどうやって築き上げたんですか?」


鳳翔 「えっと・・・どういうことでしょうか。」


五月雨「自分の身に危険が迫っていたとはいえ、よく知りもしない男の家に居候したりしないですよね、普通。」


五月雨「だから、お父さんなら大丈夫だという信頼を得るに至った過程を知りたいんです。それとも、寧ろ抱かれる気だったんですか?」


鳳翔 「ああ、そういうことですか。それでしたら、信頼なんて微塵も無かったですよ。」


鳳翔 「抱かれる気もありませんでした。抱かれてもいいとは思ってましたけど。」シレッ


レ級 「最後にとんでも発言しやがった・・・。」


黒霧 「庵、言葉選びは慎重にね。抱かれても"いい"じゃなくて、抱かれても"仕方ない"でしょ?」


鳳翔 「気づいていましたか。流石、聡いですね。」


黒霧 「あの頃の君からは諦めの感情を強く感じたからね。」


鳳翔 「・・・艦娘としての存在意義を失ったばかりでしたから。何か、生きる意味が欲しかったのかも知れませんね。」


黒霧 「他人に依存するのは感心しないな。」


鳳翔 「昔の話です。今の私には料理研究という生き甲斐があります。その契機をくれたのは、貴方じゃないですか。」ニコリ


黒霧 「君の役に立てたようで良かったよ。」フフ


紫苑茜「しーちゃんって、誰を隣りに立たせてもお似合いのカップルになるのよね~。」フシギ


五月雨「それはお父さんが基本誰でもいいからではないですか?」


時雨 「その言い方は・・・。」


紫苑茜「強ち間違いでもないのよね。」ハァ


時雨 「にぃに・・・。」ウワァ



出会いよりも別れの印象。


紫苑茜「それにしても貴女、同棲までしてよくしーちゃんに惚れなかったわね。」


鳳翔 「同棲しただけで惚れるって、それは少し・・・簡単すぎませんか?」


紫苑茜「チョロいと言わなかったのは貴女の気遣いかしら。どうもありがとう。」ニコォ


鳳翔 「ひっ。」ビクッ


レ級 「母ちゃん・・・。」ハァ


時雨 「でもさ。いいなって思う瞬間が全くなかったわけでもないでしょ?」


鳳翔 「そう、ですね。少々歪んではいますが、彼の優しさを感じる場面は幾つかありました。」


鳳翔 「この時間が続けばいいのにと思ったことも否定しません。ですが・・・。」


五月雨「が?」


鳳翔 「そう思った次の瞬間には怒りが湧いていたことを私は忘れません。」ゴゴゴ


時雨 「何したのさ・・・。」


黒霧 「優しさだけでは終われなかったもので。」


鳳翔 「順番が逆だったら虜にできていたかも知れないのに、勿体ないですね~。」ニコニコ


黒霧 「君を本気にさせると後が恐いからね。庵のアプローチを撥ね除ける自信は、僕にはないかな。」フフ


鳳翔 「あら、いいことを聞きました。少し、本気を出してみましょうか。」ソッ


黒霧 「やってみなよ。」グイッ


鳳翔 「あっ・・・。」


紫苑茜「しーちゃん!?」


娘ーズ「おぉ~。」


黒霧 「この状況、君はいつまで耐えられるかな。」ニィ


鳳翔 「の、臨むところです。」キッ



ポッキーなしゲーム


黒霧 「あの頃の君は、自由に動かせない手にもどかしさを感じながらも、自分にできることを精一杯やってくれていたね。」


鳳翔 「弓を引けない私を拾ってくれた恩がありますから。それを返すのに必死だっただけですよ。」タラー


黒霧 「その長い黒髪を自力で結うことができなくて、いつも僕が結ってあげていたね。」


鳳翔 「紐の下着を買ってきて私に穿かせようとしたときは流石に殺意が湧きました。」ヒクッ


黒霧 「あれは結局、間宮に手伝ってもらって穿いたんだよね。」


鳳翔 「なんで知ってるんですか!?て、狭霧ちゃんしかいませんね。あの娘はもう・・・!」クッ


鳳翔 「次は私の番ですよ!えと・・・え~と・・・。」グルグル


アァ モウ!


鳳翔 「私の下手くそな料理をいつも残さず食べてくれてありがとうございました!」ワッ


娘ーズ「・・・ん?」


黒霧 「どういたしまして?」


鳳翔 「狭霧ちゃんとの仲を深める為に用意された家だったのに、私なんかが居候してしまって・・・」


鳳翔 「だから、せめて!せめて、ふたりが快適に過ごせるようにって。でも、この手の所為で。この手の所為で!」


鳳翔 「迷惑ばかり掛けて、すみませんでした!今の暮らしを与えてくれて、ありがとうございます!大好きです!」


黒霧 「・・・。」


鳳翔 「何か、言ったらどうなんですか。」ハァ ハァ


黒霧 「時として、言葉は無粋だ。」ギュッ


鳳翔 「勘違い、しないでくださいね。私は、この先なんて望んでいませんから。」キュッ


黒霧 「わかっているさ、区切りをつけたかったってことくらい。」


鳳翔 「ええ、そのとおりです。でも、あまりわかられているのも嫌ですね。」フフッ


黒霧 「暫く世話になるよ、"鳳翔"。」


鳳翔 「はい。お任せください、"提督"。」ニコリ


・・・


レ級 「これを見せられている俺達はどうすればいいんだ。」


紫苑茜「さっきしーちゃんが言ったでしょ?時として言葉は無粋だって。黙って見届けるの。この美しい、別れと出会いの場面を。」


五月雨「主に美しいのは月光ですよね。」


時雨 「こらこら、言葉が無粋だぞ~。」



暴走する乙女


ワァオ


金剛 「おっきなお風呂ですネ~。」キラキラ


神命 「蓮華ちゃんが本気を出したらしいからね。あと、金剛ちゃん。服のまま飛び込んだりしないでよ?」ヌギヌギ


金剛 「そんなことしないデース。神命は私を何だと思ってるんデスかっ。」ムッ


神命 「あれの親玉。」ビッ


比叡ミニ「見てください、霧島!天上からパイプが生えてますよ!」オー


霧島ミニ「このボタンを押せば、お湯が出るのでしょうか。」フム


ガコッ ドバッ


比叡ミニ「あははは!凄い威力ですね!まるで滝行です!」ドドド


霧島ミニ「姉様!いい感じに服がはだけてエロティックになってます!」キュピーン


アハハハハ!


金剛 「こらー!私も交ぜるネー!」ダッ


神命 「やっぱりじゃん!数秒前の科白にすら責任が持てないのかー!」


ギャアギャア


蓮華 「貴様、よくあれを娶る気になったな。」


鳳紅蓮「気づいたときにはケッコン書類が提出されてたんだよ。」


蓮華 「・・・強く生きるんだぞ。」ポン


鳳紅蓮「これも誓いを守るためだ。どうにかやってやるさ。」



文句があるから食べないよ。


南方戦「龍驤、塩とってちょうだい。」


龍驤 「はいよ~。こっちの味付けはこんなもんでええか?」ホイ


南方戦「ん。ん~。まぁ、いいんじゃない。」


龍驤 「はっきりせぇへんなぁ。駄目なら駄目でばっさり言ってくれてもええのに。」


南方戦「此処は料亭じゃないのよ?作り直すくらいなら我慢して食べさせるわよ。勿体ないし。」


龍驤 「でも、三隈の料理は捨てたんやろ?」


南方戦「食事に命まで懸けてらんないでしょうが。」


龍驤 「そんな酷いんか・・・。」エェ



それがあっても噛み合わない。


フゥ~


鳳紅蓮「まともな湯船に浸かったのは幾日振りだろうな・・・。」


蓮華 「よくもまぁ、蒸し風呂だけで耐えられるものだ。」


鳳紅蓮「風呂は風呂だろ。汗が流せるなら何でもいい。」


蓮華 「金剛達はどうなんだ。貴様がよければいいという話ではないだろう。」


鳳紅蓮「あいつらなら心配要らねぇよ。自分達で香油を作ったり、ヤシの毛を編み込んで垢擦り用のタオルを拵えたりしてるからな。」


蓮華 「ほう。中々器用な真似をする。」


鳳紅蓮「ああ見えてかなり家庭的なんだよ。」フッ


蓮華 「なんだ。嫁の自慢か?」


鳳紅蓮「あ?比叡は嫁じゃないだろ。」


蓮華 「会話には主語をつけろ。莫迦が。」



時には莫迦になりたまえ。


神命 「あ~。疲れた~。」ダラーン


金剛 「お疲れサマ。よく頑張ったネ。」ヨシヨシ


神命 「ほんと頑張ったよ・・・比叡ちゃん達のお守り。」ハハッ


比叡ミニ「水面スライディング!」トウッ


霧島ミニ「風呂桶ガード!」


カコーン アイタァ!


神命 「温和しく浸かってなさい!」クワッ


霧島ミニ「浸かれと言われましても。半身浴用の湯船でも私達にとっては足の着かないプールと変わりませんので。」


比叡ミニ「もう潜水と同じ・・・。」ブクブク


ネエサマ ホントウニモグラナクテイイデス


神命 「ん~!」バシャバシャ


金剛 「み、神命?」


神命 「兄様、かむばぁぁっく!!」


蓮華 「神命でも駄目か。」ヤレヤレ


鳳紅蓮「あいつらを振り回してやるくらいじゃないとな。神命には荷が重いだろ。」


蓮華 「貴様にできることなら神命でもできるかと思ったのだが、過大評価だったらしい。」


鳳紅蓮「二重に失礼だぞ、てめぇ。」オイ



深夜テンションなんです。


近衛麗「・・・。」


黒霧 「」ナデナデ


近衛麗「ん・・・。」モゾッ


黒霧 「緊張してるの?麗ともあろうものが。」


近衛麗「ぐっ。し、仕方ないじゃない。パパとこういう雰囲気になったの、初めてなんだから。」


黒霧 「だったらまずは、その"パパ"って言うのやめなよ。流石の僕も娘を抱く気にはなれない。」


近衛麗「し、しぐ・・・。しぎゅっ。」ウゥ


黒霧 「だから緊張しすぎだってば。」フフ


近衛麗「うー!」キッ


黒霧 「睨まない睨まない。」カチッ


近衛麗「何、これ。チョーカー?」サワサワ


黒霧 「うん。御礼はするって言ったでしょ?これがその御礼。」ハイ カガミ


近衛麗「黒い蝶・・・。これ、若しかしなくてもパパの手作りよね。」


黒霧 「急遽拵えてね。蝶の羽根にはかなりこだわってみました。」


近衛麗「ありがとう、パパ。」ハム


ン ハッ


近衛麗「やっと、男と女のキスができたわ。」クスッ


黒霧 「確か君の望みは一夜の過ちだったね。今日限りの逢瀬だ。全力でお相手するとしよう。」


近衛麗「熱い夜になりそうね。」ウフフ


榛名ミニ「」ジー


龍田 「野暮は駄目よ~。」アラアラ


天龍 「///」プシュー


龍田 「だから部屋で待ってなさいって言ったのに。」


長門 「」スチャ


龍田 「撮影禁止!」シュッ


ボン ナニヲスル!


黒霧 「龍田に監視役を頼んでおいてよかったよ。」ヤレヤレ


近衛麗「こ~ら。今は私に集中して・・・ね?///」フフッ


黒霧 「調子を戻してきたようで何よりだ。」



味付けは順番が命。


鈴谷 「」シャカシャカ


カラン トクトク


鈴谷 「ふぅ。完璧っ。」キラン


三隈 「鈴谷、貴女いつの間にカクテルを作れるようになりましたの・・・?」


鈴谷 「動画で覚えましたっ。」フフン


熊野 「これで味も美味しければいいのですけど。」クルクル


鈴谷 「それはまだ練習中でさ・・・。」アハハ


三隈 「うっ。まずっ・・・!」ウゲ


鈴谷 「も~。みっちゃんてば大袈裟だな~。いくら見栄え重視で適当に混ぜて作ってるとはいえそこまでなわけ・・・。」コクッ


鈴谷 「何これ、まっず!!」ピシャーン


熊野 「人は最後に得た情報を印象として定着させますわ。料理に於いて、最後に残る情報は見た目ではなく味でしてよ。」


三隈 「物事の順序を間違えないでほしいですの。」フン


鈴谷 「両方壊滅的なみっちゃんには言われたくない。」



他人と違うからこそ特別なんだ。


龍田 「あ~。疲れた~。」ガチャ


鈴谷 「お。たっちゃん、おかえり~。」フリフリ


熊野 「お勤めご苦労様ですわ、龍田さん。」


龍田 「はぁ~。」ツップシ


鈴谷 「ほんとに疲れてんね。大丈夫?」アハハ・・・


龍田 「どうして実力のある人に限って、こう面倒な性格をしているのかしらね。」ハァ


熊野 「お察ししますわ。」


鈴谷 「やっぱり長門さん?」


龍田 「ええ。鼻にティッシュを突っ込んだまま、扉に耳を押し当ててたわ。榛名ちゃんと一緒になって。」


三隈 「あんのムッツリ妖精。」ピキッ


龍田 「天龍ちゃんも、先に帰っていいって言ってるのに最後まで残ってて・・・。」


龍田 「本当にあたしの身を案じるならオーバーヒートしてぶっ倒れる前に帰れっての。」チッ


鈴谷 「あはは・・・。大変だったね、ほんと。」



興味が先走るお年頃。


龍田 「ねぇ、三隈ちゃん。貴女に訊きたいことがあるのだけど。」


三隈 「何ですの?」


龍田 「あの人はそっちでもあんな感じなの?」


三隈 「その訊き方でも何となく察した、というのが答えですの。」


龍田 「そう・・・。」ハァ


鈴谷 「なになに。そんなにお盛んなの~?」ムフフ


熊野 「むっつりスケベ。」ボソッ


鈴谷 「なっ!そういうお年頃なの!」


三隈 「穢らわしい。」ジト


鈴谷 「鈴谷は酷く傷つきました・・・。」ウゥ



最近、思考と口が連動しない。


龍田 「にしてもよ。自分を父と慕う相手を抱くかしら、普通。」


三隈 「は?ちょっと待ちますの。今回の相手は紫苑さんでは・・・。」


龍田 「ないわよ。あの金髪の・・・うるは?とかいう娘。」


三隈 「先を越されたっ!」クッ


鈴谷 「お?なになに、みっちゃんも時雨さん狙い~?」キラキラ


三隈 「・・・"も"?」ギラッ


鈴谷 「ヤバ」


熊野 「莫迦な娘。」ヤレヤレ



現実でやるには少しの勇気と周りの理解が必要。


三隈 「はぁ。もがみんに続いて鈴谷まで・・・。頭が痛いですの。」


鈴谷 「え?うそ、あのもがみんが恋煩い!?」ズガーン


三隈 「何もそこまで言ってませんの。もがみんの場合は"お友達"関係ですの。」


熊野 「それは・・・。」エェ


鈴谷 「文字どおりの友達じゃないよね、勿論。」アー


三隈 「まだ関係は始まっていないようですけど、それも時間の問題ですの。奥方の許可も取ってますし・・・。」


三隈 「あの夫婦は色々と普通じゃありませんの!!」クワッ


???「でも、そんなところが?」


三隈 「好き・・・て、何を言わせますの!五月雨さん!」ダン


五月雨「いや~、ははっ。三隈さんのそういうノリが良いところ、私は大好きですよ?」ニパッ


三隈 「っ!・・・どうも、ですの。///」フイ


鈴谷 「みっちゃん・・・。」


熊野 「チョロいですわ。」



赦される者で在りたい。


龍田 「というか、なんで五月雨ちゃんが此処に居るの~?子供はおねんねする時間でしょ~?」ダラー


五月雨「そう力無く喧嘩売られても買う気が起きないのですが・・・。まぁ、原因はお父さんですよね。なんか、すみません。」ペコリ


龍田 「ほんとよ~。お詫びに肩でも揉んでもらいたいくらいだわ~。」


五月雨「では、失礼して。」ワキワキ


モニュッ


五月雨「あれ?スタイルの割に全然凝ってませんね、龍田さん。」モミモミ


龍田 「そこは私の御立派様よ。」


五月雨「はっ。手が勝手に・・・。」


龍田 「次から気をつけてちょうだい。」


五月雨「あいあい。」


鈴谷 「たっちゃんが今のを流すだなんてっ。」


熊野 「余程疲れてましたのね。」



調べてみなければわからない。


ガチャ


陸奥 「あら。意外と起きてるわね。夜更かしはお肌の大敵よ?」


龍田 「最年長のむっちゃんが一番気をつけないとね~。」


陸奥 「わたしは建造組だからいいの!んもう。どうしてこの鎮守府は改造組ばかりなのかしら。というか、何してるの?」


五月雨「鍼です。陸奥さんもやってみます?肩凝りに効くツボ、知ってますよ。」キュピーン


陸奥 「遠慮するわ。」ハハ


龍田 「は~。極楽・・・。」フゥ


陸奥 「あんなに刺して大丈夫なの?」ヒソヒソ


鈴谷 「鈴谷に訊かれても・・・。そういうのはくまのんのほうがさ。」チラッ


熊野 「私はやられる側ですので。」


三隈 「五月雨さん、若しかしなくても無免許なのでは・・・?」


時雨 「艦娘相手なら少々失敗してももーまんたいとか言ってたよ。」ヌッ


三隈 「止めなくてはっ!」バッ



高卒且つ専門学校卒でないと取れません。


五月雨「失敬な。いくら私でも他人の身体を練習台になんてしませんよ。資格ならちゃんと持ってます。」ホラ


三隈 「そ、そんな莫迦な・・・。」


龍田 「ん~!スッキリした~。ありがと、五月雨ちゃん。」ウフフ


五月雨「いえいえ、この程度おやすい御用です。いつでも頼っちゃってください。」ムフー


陸奥 「へ~。鍼ってそんなに効果があるのね。わたしもやってもらおうかしら。」


五月雨「お、新規のお客様ですね?前払いで3おっぱい頂きますが、宜しいですか?」キリッ


陸奥 「あら、わたしの身体は安くないわよ?」ウフッ


五月雨「碌に料金設定もしたことない身体のくせして何をぬかしてるんですか。お父さんに値付けしてもらいますよ?」ニコー


陸奥 「・・・3おっぱいでお願いします。」


鈴谷 「ほっほ~。あのむっちゃんが負けるとは。」


熊野 「末恐ろしい娘ですわね。」



チーズ蒸しパンになりたい by Sorachi


時雨 「ひぃ、ふぅ・・・六人か。人数が合わないな。」ウーン


三隈 「どうかしまして?というか、五月雨さんも貴女もこんな夜遅くに何をしてましたの?」


時雨 「いや、ちょっと夜の見回りをね。例の襲撃は決まって夜に起きるらしいからさ。」


三隈 「三隈も声をかけていただければご一緒しましたのに。」


時雨 「屋内で君についてこられても邪魔なだけだよ。」キッパリ


三隈 「言い切りましたわね、この。まぁ、いいですの。それで、人数が合わないというのはどういうことですの?」


時雨 「茜さんと七駆の四人、あとレーちゃんは同じ部屋で寝てたでしょ。にぃにと麗さんはお取り込み中だし。天龍さんは気絶中。」


時雨 「那智さんは飲み過ぎで寝てるし、妙高さんは日記書いてたし、羽黒さんは鳳翔さんと一緒に星を眺めてた。」


三隈 「星とはまたロマンチックなことを・・・。ん?ヲ級さんはどうしてまして?」


時雨 「あぁ、ヲーちゃんなら。」


陸奥 「姉さんと一緒に寝てるわ。まったく、どうしていつも姉さんばっかり。」ブツブツ


五月雨「欲望が瞳に顕れてるからですよ~。」スッ トントン


時雨 「で、此処には僕を含めて七人。あとふたり足りないんだよね~。」


三隈 「名前が挙がっていないのは、日陰さんと・・・。」


熊野 「足柄さん、ですわね。」フム


時雨 「何処でナニをしてるのやら。」ヤレヤレ


鈴谷 「今、イントネーションおかしくなかった?」



恋の始まりは垣間見。


キー コソッ


足柄 「」ソローリ


近衛麗「寝ないなら寝ないでやることがあるって言ったこと、もう忘れたのかしら?」


ビクッ


足柄 「起きてたのね。」チッ


近衛麗「パパならもう寝てるわよ。」


足柄 「見ればわかるわよ。ったく、先に寝るのは相変わらずなのね。」


近衛麗「いいじゃない。こんなに可愛い寝顔が見られるんだもの。」クスッ


足柄 「・・・あんた、本当に黒のことが好きなのね。昼間とは全然顔が違うじゃない。」


近衛麗「ええ、好き。大好きよ・・・。」フルフル


足柄 「ちょっと・・・えぇ。泣いてるの?」


近衛麗「だって、思い知ったんだもの。パパにとって私は愛する娘でしかないんだって。愛する女にはなれないんだって。」ポロポロ


足柄 「娘と思われてるなら抱かれてないでしょうに。事後だってことはつまり、黒が貴女を・・・。」


近衛麗「違うのよ。パパは愛する女を抱くとき、愛をぶつけるように、お互いの愛を交ぜ合うように抱くの。激しく、情熱的に・・・。」


近衛麗「でも、私は違った。大切なものを包むように、私の求めに応えるように、優しく、静かに・・・。貴女ならわかるでしょう?」グスッ


足柄 「・・・そうね。あんなに優しい黒は初めてだったわ。だからもう一度甘えに・・・て、何言わせるのよ。」


近衛麗「あんたが勝手に言ったんでしょ。」ウゥ


足柄 「あぁ、もう。いい加減泣き止んでよ。私、こう他人を慰めたりって得意じゃないのよ。」


近衛麗「もう少し、待って。」ギュウ


足柄 「そこで黒に抱きついても虚しいだけでしょうに。」ハァ


足柄 「ところで、黒が愛する女性を抱くときの様子をどうやって知ったのかしら?」


近衛麗「パパと南がしてるとこを覗いてた。」


足柄 「あんたに同情してやる気も失せたわ。」ハッ



全て夜空が呑み込んでくれる。


パチッ パキッ


鳳翔 「こう揺らめく炎を見ていると、心が穏やかになっていきますね。」


羽黒 「うん。この時間だけは何も考えずに居られる。」


鳳翔 「私がご一緒してもよかったのですか?いつもなら独りで・・・。」


羽黒 「いいの。鳳翔さんに訊きたいことがあったから。」


鳳翔 「彼・・・のことですよね。」


羽黒 「鳳翔さんが昔、あの人と暮らしてたって聞いちゃって・・・。ごめんなさい。」


鳳翔 「構いませんよ。隠していたわけではないですし。あんまり皆さんに知られるのも本意ではありませんが・・・。」


鳳翔 「ですが、時雨さんの過去でしたら那智さんや足柄さんもご存知なのでは?」


羽黒 「お姉ちゃん達の話だと要領得なくて。ふたりが話す黒霧時雨って人物があまりにかけ離れてたから。」


鳳翔 「そうですか。確かに彼はよくわからない人ですね。」フフ


羽黒 「鳳翔さんでも?」


鳳翔 「はい。」ニコリ


羽黒 「そっか。よくわからくても好きなんだ。」


鳳翔 「それは言わないでください・・・。///」プシュー



あなたの好きは何ですか?


羽黒 「ねぇ、鳳翔さん。"好き"って何だろう。」


鳳翔 「好き・・・ですか。難しい質問ですね。」


羽黒 「昔ね、好きは大切って教えてもらったの。だけど私には大切が無いから、よくわからなかった。」


鳳翔 「そう、ですか・・・。」


羽黒 「五月雨ちゃんは家族が大切って言ってた。そこで初めて、好きと大切が繋がった。」


羽黒 「でも、やっぱり私には大切が無いから・・・。私の好きって、何だろう。」


鳳翔 「さぁ、何でしょうね。」


羽黒 「鳳翔さんでもわからない?」


鳳翔 「はい、わかりません。きっと、誰にもわからないと思います。」


羽黒 「そっか・・・。」


鳳翔 「だって、好きは人それぞれ違いますから。自分の力で見つけるしかないんです。」


羽黒 「そっか。」


鳳翔 「私の好きは尽くしたい。彼の好きは壊したい。みんな自分だけの好きを持っています。」


羽黒 「鳳翔さんはあの人に何か壊されたの?」


鳳翔 「・・・そうですね。壊されちゃいました。」フフッ


羽黒 「それは・・・何?」


鳳翔 「内緒です。」ウフッ


羽黒 「けち。」ムー


ウフフ


鳳翔 (狭霧ちゃん、貴女もきっと壊されたんですよね。狭霧ちゃんを縛っていた楔を。)


鳳翔 (そして見つけた。真実の貴女を受け入れてくれる存在を。貴女だけの、赦されたいという"好き"を・・・。)



護る為に。


鳳翔 「だから、戻ってきてしまったのですね。」


羽黒 「鳳翔さん・・・?」


鳳翔 「出てきなさい。其処に居るのはわかっていますよ。」キッ


???「」スッ


鳳翔 「艦娘の姿をしているということは、時雨さんに会いにきたのですか?狭霧ちゃん。」ジリッ


間宮 「そんなに警戒しないでください。唯一の親友を裏切るほど、私は堕ちていないですよ?庵。」


鳳翔 「よくそんなことが言えますね。私が艦娘を辞める理由となったあの戦闘。貴女が手引きしたものらしいじゃないですか。」


間宮 「怒ってる?」


鳳翔 「当然です。あんな真似をして、私を助けたつもりですか。私は、自分の身くらい自分で護れます。」


間宮 「庵に戦場は似合わないわ。」


鳳翔 「貴女まで、そんなことを言うのですね・・・。」クッ


間宮 「庵、確かに貴女は強い。でもね。貴女は優しすぎるの。戦場は貴女を壊してしまう。だから・・・。」


鳳翔 「だから、無理矢理退場させたと?」


間宮 「・・・。」コク


鳳翔 「狭霧ちゃん、貴女にはひとつ訊きたいことがあるんです。」


間宮?「なあに?」


鳳翔 「あのとき、あの場に時雨さんが居合わせたのは偶然ですか?それとも・・・。」


間宮?「その答えは、あの世で直接本人に訊きなよ。」ニタァ



其処に居なかったからでは済まされない。


羽黒 「黒いひとっ!」バァン


足柄 「わっ!?なんだ、羽黒か・・・。もう、吃驚させないでよ。」フゥ


羽黒 「なんでお姉ちゃんが此処に・・・?」ジトォ


足柄 「姉をそんな瞳で見るのはやめなさい。てか、あんただって黒に何の用よ?まぁ、今は居ないんだけど。」


羽黒 「居ない?なんで?」


足柄 「知らないわよ。いきなり起きたかと思えば窓から出ていって。ほんともう何なの、あいつ。」


羽黒 「そっか・・・。はぁ、よかったぁ。」ヘタリ


足柄 「なに、どうしたのよ?」


ナンデモナーイ



血塗れの道の上で。


黒霧 「これで、君を殺すのは二度目だ。」ズバッ


間宮?「こふっ。」ドシャ


鳳翔 「・・・はぁ。」ヘタッ


黒霧 「間一髪だったね。」


鳳翔 「ええ、もう少しで喉を裂かれているところでした。」


黒霧 「無理はするものじゃない。」


鳳翔 「時間を稼いでいただけです。羽黒ちゃんがこっそりと屋内に戻っていくのが見えましたから。」


黒霧 「あの娘には仲間を見捨てた前科があるんだけど。五月雨に彼女を任せたのは正解だったよ。」フゥ


鳳翔 「あら、この鎮守府は着々と貴方色に染められつつあるのですね。」フフッ


黒霧 「笑い事じゃない。」グイッ


鳳翔 「ちょ、ちょっと。私達はもう区切りをつけた関係で・・・!」ワタワタ


黒霧 「関係ない。間に合って、よかった。」ギュ


鳳翔 「・・・どうしてこういうときに限って、はっきり言ってしまうんですか。いつもみたいにひねた返しをしてくださいよ。」モウ


鳳翔 「そうでなきゃ、抑えられなくなってしまうじゃないですか。」ソッ


ンッ ハァ


鳳翔 「抱いてとは言いません。でも、もう少しだけ、抱き締めていてください・・・ね?」



これが私の選んだ道だから。


???「これで、暫くは大丈夫かな・・・。」ヨット


???「はぁ。疲れるなぁ、こういうの。なんで私が抹殺される側になるような立ち回りをしないといけないのかなぁ。」


五月雨「自分の命を懸けてでも、護りたいと思えるものの為だからじゃないですか?」ジャキッ


時雨 「素直に頼ればいいのに。なんで黒霧の人達はこう不器用なんだろうね。ね、日陰さん?」チャキ


日陰 「あっはは。取り敢えず、その大鎌と暗剣を仕舞ってもらえると嬉しいなぁ、なんて。」ハハ


五月雨「駄目ですよ。譲れないものがあるとはいえ、貴女はお父さんが愛した女性の魂を弄んだんですから。」フフ


時雨 「相応の罰は覚悟しておくことだね。まぁ、どうせにぃには赦しちゃうだろうけどさ。」アハッ


露姉妹「私(ボク)達は赦しません(さない)から。」オォォ


日陰 「娘って恐い・・・本当に。」



また忘れてた。


日陰 「それにしても、よくこの場所がわかったね。私、隠れるのは得意なんだけどなぁ。」


五月雨「それはまぁ。」チラ


時雨 「いくら隠れるのが上手くても、隠れた瞬間を見られてるんじゃあね。」ネー


榛名ミニ「ずっと後をつけてました。」フフー


日陰 「うそ・・・。全然気づかなかった。修行、やり直さなきゃかなぁ。また時雨くんにしごかれちゃう・・・。」ハハ


榛名ミニ「私にかかれば、こんなものです。」ドヤァ


五月雨「それで榛名さんの姿が見えなかったわけですけど。」


時雨 「御蔭ですっかり存在を忘れてたよ。いや、ほんとに。」


露姉妹「ごめんちゃい。」テヘッ


榛名ミニ「・・・何処かに私を見ていてくれる人、居ないかな。」ズーン



辻褄合わせの理屈を思案中。


黒霧 「さてと、それじゃあ答え合わせといこうか。」


五月雨「この一連の騒動の、ですね。」


時雨 「重要参考人は此処に。」


日陰 「態々縛ることないのに・・・。」ギチッ


五月雨「まぁ、ただの雰囲気づくりですので。」


日陰 「だったらもう少し加減してよ。」キツイ


黒霧 「今回、日陰は騒動の犯人を手助けする為に自分の身を危険に晒す真似をしたわけだけど。」


日陰 「こういうときの時雨くんは本当に他人の話を聞かないね。」


黒霧 「君にも娘を大切に想う心があったようだね。」


日陰 「あっは。もう言っちゃうんだ。」


五月雨「白い髪に紅い瞳という時点で、深海棲艦か黒霧の一族かの二択に絞られますからね。」


時雨 「更には日陰さんが行動を起こしたとなると・・・ね。」


日陰 「わからないよ?若しかしたら、深海棲艦を使って何か企んでいるのかも・・・。」フフ


黒霧 「仮にそうだとして、君が態々僕の怒りを買うような真似をする理由がわからない。そうまでして時間稼ぎをする理由がね。」


黒霧 「まぁ、君がそんなことにも気づけないような莫迦だったのなら話は別だけど。」


日陰 「あー。時雨くん、怒ってる?」


黒霧 「当然。」ニッコリ


デスヨネ



同じ意味の言葉なら、ふたつも要らない。


黒霧 「では問題。」


露姉妹「てーれん。」


黒霧 「僕は何に怒っているのでしょうか。」ニコー


日陰 「えーと。この世に残留する間宮の魂の欠片をかき集めて、適当な依代を建造して擬似間宮を造ったこと・・・。」


露姉妹「せ~か・・・。」


黒霧 「不正解。」


露姉妹「あっるぇ~?」


日陰 「え?えぇと・・・。他に心当たりがないんだけど・・・。」アハハ


黒霧 「君が命を懸けた理由は何だったかな?」


日陰 「それは、実の娘が大変なことになってるから・・・。」ア


日陰 「そっか。私の娘ってことは、時雨くんの娘でもあるんだったね。」


黒霧 「そういうこと。ひとりで勝手に背負い込んで、父親の僕には何もさせないつもりなのかな。」


時雨 「よく言うよ。自分だってひとりで背負い込むくせに。」ケッ


黒霧 「自分より仕事の出来が悪い人を頼ろうとは思わないでしょ?」


時雨 「それは同意するよ。でもムカつく!」ムゥ!



頼るまでもない。しかし確認は怠らず。


黒霧 「実はもうひとつあるんだけどね。僕が怒っている理由。」


日陰 「そうなの?でも、もう本当に心当たりがないよ?」


黒霧 「三笠の件だよ。澪の母親を殺したあの砲撃、日陰は何も関わってないんじゃないの?」オォォ


日陰 「若しそれが正しかったとして、どうして私が怒られてるのかな。」


黒霧 「よくも僕を騙してくれたね。」ガシッ


日陰 「逆恨みもいいところなんじゃ・・・。」イタイ


黒霧 「もうひとり仕込んでやる。」グイッ


日陰 「なんで!?というか、亀甲縛りだった理由ってそれ!?」ズルズル


イヤアアアア!!


五月雨「さっきまで麗さんとハッスルしてたんじゃ・・・。」エェ


時雨 「体力お化けめ。ところで、どうしてにぃには自分の間違いに気づいたのかな?」


五月雨「前の提督がこっそり当時の調査報告書を残してたみたいですよ?」


五月雨「それで三笠の照準が艦娘でなく民家に向いていたことに気づいたらしいです。」


時雨 「なるほど。"艦娘ごと民家を"って、にぃにの推理に矛盾が生じたわけだ。」


時雨 「それにしても、腹いせに子供つくるって、凄い倫理観・・・。」ハハ


五月雨「家族が増える分には一向に構いませんけどね。欲を言えば、今度は弟がいいですっ!」キラキラ


時雨 「さいで。」


五月雨「大きくなったら、一緒にキャッチボールをするんです!」ムフフ


時雨 「はーい、この話はここまで。」カイサーン



爆ぜ散れ!


日陰 「」ダラダラ


黒霧 「どうしたの?そんなに怯えて。別に僕とするのは初めてじゃないでしょ?」フフッ


日陰 「そういう問題じゃないです。怒った時雨くんは何をしでかすかわからないから恐いんです。」


黒霧 「大丈夫。優しくするから。でも・・・君が口を利けなく前に"まほろ"の状態について話を聞いておこうかな。」ニィ


日陰 「はぁ・・・。さようなら、幻。母は先に逝きます。」トオイメ


黒霧 「で、どういう状況なのかな。蓮華から聞いた限りでは、間宮と島風の魂を取り込んでいるようだけど。」


日陰 「あの娘はまだ自分の能力を使いこなせてない。だから今は無差別に霊魂を取り込んじゃってる。かなり危険な状態だよ。」


黒霧 「となると、君の能力で霊魂を引き剥がさないとだね。」


日陰 「実はそれが一番の問題でさ。"魄落"を使うにしろ"浄化"を使うにしろ、その魂の未練がわからないとどうにもできなくて・・・。」


黒霧 「そこは僕が何とかする。でも、最悪の場合も考えておいて。」


日陰 「記憶の完全消去?それだと幻の記憶も消すことになるけど。」


黒霧 「忘れて困るような記憶が幻と僕達の間にあったかな。」


日陰 「急に楽勝な気がしてきた不思議。」ワーオ



暗殺者の矜持


黒霧 「それからもうひとつ。どうしてヒールを演じたの?」


日陰 「いや、だって時雨くんが艦娘共と仲良くしてたから・・・。そのほうが私を殺すのに躊躇いとか無くなるかなって。」


黒霧 「その科白は、僕に対する侮辱なのかな。」スン


日陰 「うぇ!?い、いや、そんなつもりはっ!」アセアセ


黒霧 「僕は必要とあらば愛する女性さえも手にかける黒霧の暗殺者だ。君を殺すことに躊躇いなんて持ちようがないさ。」オォォ


日陰 (嗚呼、心臓が痛い。)ズキズキ


黒霧 「さて、訊きたいことも訊けたことだし、始めようか。」


日陰 「あ、冗談じゃなかったんだ。」


ム・・・ ドウシタノ?


黒霧 「縛ってるから服を脱がせない。」


日陰 「時雨くんって偶にもの凄くお莫迦さんだよね。」



つまりは夜明け前。


ガチャ


日陰 「ただいまー。」フゥ


露姉妹「おかえりー。」


日陰 「まだ起きてたんだ。もう暁の刻だよ?」


五月雨「つまりまだ夜じゃないですか。」


時雨 「序でにそんな時刻はないけどね。」


日陰 「そうだね。じゃ、おやすみ。」モゾモゾ


五月雨「いやいや、寝かせませんよ?」


時雨 「にぃにとのあれこれはどうだったのか、聞くまではね。」ニヨニヨ


日陰 「すっごいよかった。以上、おやすみ。」


時雨 「もっと具体的に。」


日陰 「そんなに知りたいなら抱かれてくればいいのに。」


時雨 「え?絶対に嫌だよ?」


日陰 「なんでこの娘は時雨くんと一緒に居るのかな。」エェ


五月雨「本人は嫌がらせのつもりらしいです。」



君はまだ死んではいけない。


時雨 「で、どうよかったの?」


日陰 「しつこいなぁ、もう。焦らされて、我慢できなくなって、いきなり弱い所を責められて・・・そこからは憶えてない。」モゾッ


時雨 「日陰さんってどんなよがり方するの?」


日陰 「知らないよ!知りたくもないよ!何、その質問!?」


五月雨「時雨姉さん、そのくらいにしておかないとお腹の子に障りますよ?」ンモウ


時雨 「あはは。ごめんごめん。ついね。」ハハ


日陰 「ほんとだよ。流産なんてしようものなら、もう一度時雨くんに・・・。」モンモン


五月雨「今、それはそれでって思いませんでしたか。」ジト


日陰 「そんなことはないです。」サッ


時雨 「ちょっと待って。大事なところスルーしてる。え?妊娠したの?」


日陰 「させられたの。私、ちょうど中たりの日だし。時雨くんの精子は原初の霧で創造した特別製だから、確実に卵子まで到達するし。」


日陰 「あ~あ、これでふたり目確定・・・。」フフッ


時雨 「なんか、嬉しそうだね。」


五月雨「そうですね。」


日陰 (死ねない理由ができちゃったな。)ウフフ


五月雨「あ、因みに私は男の子がいいです。」


日陰 「うん、知ったこっちゃない。」


後書き

天龍編、取り敢えず10万字到達。主人公の存在感が薄いのは漣編からのお約束。どちらかというと、足柄のほうがエピソード濃かったな、と作者ながらに思う次第です。さて、今回は話の舞台が訓練基地より遷り、碌に教官の役目も果たさぬまま提督代理に転身。そして提督としての仕事もほぼしないままに前半戦終了という"時雨、仕事しろ"な回でした。陸軍時代の時雨を知る人物の登場、日陰の真実、そして間宮の再臨。過去の設定を矛盾が生じないようにねじ曲げてお送りした本作。次回、お片付けをしていく"予定"にございます。では、人物紹介をば・・・。

鳳紅蓮
焔の魔神・スルトの肉片から生まれた一族。魔王の懐刀がひとり。スルトの仇である勇者を滅した功を讃えられ、一族からは英雄扱いされているが、本人はその扱いを酷く嫌っている。というのも、紅蓮が勇者を見つけたとき、彼は既に手を下すまでもない老体だったから。鳳の存在意義たる復讐を果たし、虚ろな余生を送っていたとき、紅蓮は復讐の為に生きる女神・ルミナと出会う。而してルミナに何をしてやることもできず、絶望の淵に追い込んだ挙句、時雨に救いを与えてもらう始末。何もしないことも罪なのだと悟った紅蓮は、ルミナの身に着けていた三日月の耳飾りを十字架として背負い、その誓いを果たす為、金剛姉妹と生活を共にしている。

金剛
金剛型四姉妹の長女。而して建造されたのは一番最後。妹達の頑張りにより、人間の汚い部分とは無縁の艦生を送ってきた。天真爛漫、快活な少女ではあるが時折暴走スイッチが入る。なんだかんだあって、紅蓮の妻となった。

比叡
金剛型四姉妹の次女。楽しいことが全てのスーパー自由人。神命がやらかした所為で今は妖精サイズになっている。因子の恩恵により、肉体を鉱物と同じ性質に変えることができるようになった。端から見ている分には阿呆の娘だが、意外と賢い一面も。実は紅蓮に恋をして・・・いるのかも知れない。

榛名
金剛型四姉妹の三女。姉妹の纏め役であり、色々と気苦労の多い苦労人。因子の恩恵により、声真似が得意になった。自由な姉妹と頼りにならない紅蓮に振り回される生活が嫌になり、絶賛家出中。霧島あたりが泣きついてくるかと思いきや、音沙汰無しで拗ねている。新しい配属先でも存在を忘れられ、更に拗ねた。

霧島
金剛型四姉妹の末っ子。見た目は才女だが、勉強は苦手。運動もそこまで得意ではない。普通を極めた少女。因子の恩恵により、熱に対して異常な耐性を獲得している。今は羅針盤妖精となっているが、方向音痴は治らなかった。因みに、眼鏡は度が入っていない。


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