艦娘強化訓練島の日常 ~第参期訓練生 大和~ そのに!
日陰の想いを継ぎ、決意を新たにする訓練島の面々。今、全ての元凶が姿を顕す・・・。
メインストーリー三笠編も佳境となりまして、愈々黒幕が姿を現す運びと相成りました。嗚呼、やっと漣の伏線を回収できる・・・。三笠編とか言ってたけど、次の話、何にも考えてないな。蒼龍の件とかどうしよ・・・。ま、未来の自分がどうにかするか。では、本編ですよっ。
黒霧 「原初に帰せ。」スッ
サァァ・・・
紫苑茜「今度は"崩壊"を使うのね・・・火葬ではなくて。」
黒霧 「日陰にはもう還すべき魂さえ残っていないから。」
神命 「・・・。」
・・・ハァ
黒霧 「はい、辛気臭いのはここま・・・」
黒霧幻「へぶちっ。」クシュ
氷雨 「姉さん、風邪?」ハイ ティッシュ
黒霧幻「わかんない。」ズビッ
黒霧 「・・・ふふっ。だとしたら君が氷の雨を降らせたりするからだよ、氷雨。」
氷雨 「!?」ピシャーン
黒霧 「少しベッドで横になろうか。おいで、幻。一緒に休もう。」
黒霧幻「うん。」トテテ
氷雨 「僕も行く!」タッ
黒霧 「神命もおいで。」
神命 「・・・うん。」
ガラッ ピシャ
五月雨「何というか。重いですね~。いつもの元気は何処へいったのやら。」ヤレヤレ
蓮華 「流石の神命も親友の死は堪えたということだろう。父上も言っていたが、奴は黒霧で唯一、人並みの感情を持つ娘だからな。」
五月雨「いやいや、もう唯一ではないですよ?氷雨くんが居ますし。何なら幻ちゃんだって・・・。」
蓮華 「母親の葬儀中にくしゃみをするような奴がか?始めこそ号泣していたが・・・。見たか?つい今し方の奴の表情を。」
五月雨「・・・普通でしたね。」
蓮華 「そうだ。あれは母を亡くした絶望から心を閉ざし感情を封印したとかそういうものではない。」
蓮華 「ただただ平静を保っていた。まるで、自分に母親など始めから居なかったかのように・・・。」
蓮華 「私は鳥肌が立ったぞ。あれが純然たる黒霧の娘か・・・とな。」
五月雨「はあ・・・。ま、私達も黒霧の父を持つ娘ではありますけど、その血を継いでいるわけではありませんからね。」
蓮華 「まったく恐ろしいものだな。神すらも暗殺してみせる一族というものは・・・。」
ヘブチッ
黒霧幻「ずび・・・。」ビヨーン
氷雨 「姉さん・・・はい。」グイ
黒霧幻「ん・・・。」チー
クシクシ
黒霧幻「ばしゅっ。」ブフッ
氷雨 「あ・・・。」ベットリ
黒霧幻「ごめん。」ズビッ
氷雨 「いや・・・。」フキフキ
黒霧 「幻、おでこ出して。」
黒霧幻「あい。」
ピト
黒霧 「んー。ちょっと熱い・・・かな。昼寝の心算だったけど、今日はもう休みなさい。」ポム
黒霧幻「お父ちゃんもいっしょ?」
黒霧 「幻が眠るまではね。」
黒霧幻「じゃあ寝ない。」
黒霧 「体長を崩してるときまで無理をしない。明日元気になれば、もっと一緒に居られるから。」コラ
黒霧幻「わかった。」ムフー
黒霧幻「Zzz」スカピー
氷雨 「横になってまだ3秒くらいしか経ってないのに・・・。」エェ
黒霧 「それだけ疲れてたってことだよ。心の疲労は自分が一番鈍感になりがちだから。」フフ
氷雨 「・・・。」
黒霧 「氷雨は寝ないでいいの?」
氷雨 「いい。寝るためについてきたわけじゃない。」
黒霧 「そう。」
氷雨 「・・・。」ムー
黒霧 「不満げだね。」
氷雨 「不満。そう。父さんが居るから。僕は姉さんの拠所となるために生まれたのに。父さん、邪魔。」
黒霧 「ふふっ。辛辣だねぇ。ま、わかっててやってるんだけど。」ニィ
氷雨 「このままじゃ、姉さんは自立できない。」ムゥ
黒霧 「そうかな。幻は良くも悪くも日陰によく似ている。多少の依存癖はあったとしても、気づけば自立しているさ。」
氷雨 「僕の生まれた意味・・・。」
黒霧 「生きる意味に固執すると陸なことにならないよ。理由なんて後付けするくらいで丁度いい。」
黒霧 「で、君の言う生まれた意味が果たされた後はどうする心算なのかな?」
氷雨 「姉さんが自立した後・・・。」
黒霧 「そう。幻はこの世界の生まれじゃない。だから連れて帰る。でも君は違う。確かにこの世界で生まれた、この世界の住人だ。」
氷雨 「・・・。」
黒霧 「さぁ、どうする?世界の歴史に名前を残さない君なら、必ずしも此処に残らないといけないわけでもないけれど。」
氷雨 「ついていこうとは、考えて・・・ない。今は。」
氷雨 「父さんの仕事は正しく導くことだから。定められた道を歩み続けるだけ。それは、僕のやりたいことじゃない。」
黒霧 「わかりやすい反抗期だね。」
氷雨 「違う。自分で決めたいだけ。何処を目指すのか、どう辿り着くのか。」
黒霧 「充分反抗期だよ。」フフッ
黒霧 「でもまぁ、好いことかな。父は息子の自主性を尊重するよ。」ポム
氷雨 「なら、暗殺術を教えてよ。僕は世界を変える力が欲しい。」
黒霧 「奪うことに何かを変える力は無いよ。悪辣な権力者を排除したからといって、必ずしも状況が好転するわけじゃない。」
黒霧 「何しろ、もっと悪辣な輩が台頭しないとも限らないからね。だから・・・。」
黒霧 「世界を変えたいなら創り出すことを覚えたほうがいい。それは僕に教えられることじゃないけどね。」クスッ
氷雨 「・・・。」ジトー
黒霧 「父をそんな瞳で見ない。」コラコラ
神命 「ふむぅ・・・。」ユラユラ
黒霧幻「Zzz」クー ッ
ヘバシュッ ウワワッ
神命 「あー、吃驚したぁ。眠ったまま嚔をするなんて・・・。」
黒霧幻「Zzz」ズビ
神命 「鼻水が・・・。んもう。」フキフキ
ン・・・
黒霧幻「へっ・・・!」
神命 「」ビクッ
黒霧幻「Zzz」クー
神命 「ふぅ。」ホッ
バフシュ! アンギャアアア!!
黒霧 「何をやっているのやら。氷雨、よろしく。」ヤレヤレ
氷雨 「わかった。神命おばさん、どいて。」グイ
神命 「おばっ!?というか、私の服のほうが大惨事なんですけど!」
氷雨 「服なら脱いで洗えばいい。鼻水で窒息したら大変。姉さんが優先。」
神命 「おうこら、餓鬼んちょ。今此処で大人の色気魅せつけてやんぞ、こら。」オウオウ
黒霧 「やめなさい、恥ずかしい。大したスタイルでもないんだから。」
神命 「そうですか。私の肉体は見せるのも恥ずかしい肉体ですか、そうですか。」ズーン
黒霧 「だいたい、神命の魅力は目に見えるものじゃないでしょ?」
神命 「・・・具体的には?」
黒霧 「天然縦巻ロールの白髪。」
神命 「視覚美!ちょっと癖っ毛なだけだもん!」
黒霧 「から香る血の匂い。」
神命 「え、うそ。最近は返り血なんて浴びて・・・たか。じゃなくて!そこはもっと別の・・・花の、香りとか。」イジイジ
神命 「私だって、一応、女の娘なんだし・・・?」
黒霧 「一応って。しかも疑問形・・・!」プフッ
神命 「なっ、何が可笑しいのさぁ!」ムー!
黒霧 「自信を持ちなよ。君は可愛いんだから。」
神命 「か・・・わいい。///」エヘヘ
黒霧 「そもそも、僕達にとって香りのするものは御法度だろうに。黒霧の匂いは空気の香りであるべきだ。基本でしょ?」
神命 「うぇへへへ。///」クネクネ
キイテナイナ
黒霧 「まったく。君の魅力は、どんな巫山戯た話題にも乗り切って魅せる愛嬌だと伝えたかったのに・・・。」ハァ
氷雨 「神命おばさん、気色悪い。」
神命 「んなはっ!?」グサッ
黒霧 「あーあ、二重にダメージが。」ヤレヤレ
神命 「お姉さんは酷く傷つきました。」シクシク
黒霧 「はいはい、おいで。」
神命 「やたっ。」ヒシッ
ヨシヨシ ムフフー
氷雨 「お姉さん・・・。」ヘッ
神命 「こら、そこぉ。今、鼻で嗤ったなぁ?」
氷雨 「だって、魂の枷が外れかけてる。年寄りの証拠だよ。」
神命 「氷雨くーん、女性に年齢の話をしちゃいけないんだぞー?」ピキッ
氷雨 「事実は受け入れるべき。いい歳なんだから。」
神命 「痛い目を見ないとわかんないかー。じゃあ仕方ないなぁ!!」バッ
黒霧 「子供相手に本気にならないの。」グイ
神命 「ふぐっ!?く、くびっ!兄様!首、絞まってる!」ペシペシ
ゲホッ エホッ
神命 「あー、死ぬかと思った。」
氷雨 「自業自得。」
神命 「まだ言うか、この餓鬼。」キッ
黒霧 「君達、本当に相性が悪いね。」
氷雨 「父さん達には、時の概念が無い。だから、時間の経過が原因で老いることはない。でも、摩耗はしていく。使った分だけ。」
黒霧 「そうだね。」フフッ
氷雨 「特に、魔力。魂から放たれる波動には、顕著に年齢が出る。」
氷雨 「肉体が未成熟なうちは、一度に使用できる魔力量を抑えるための枷が強く働く。だから子供は強力な魔術が使えない。普通は。」
氷雨 「肉体が魔力の反動に耐えるくらいに成長すれば、枷はその役割を変える。流れを止める堰から、調整する弁に。」
氷雨 「でも、何度も開いたり閉じたりしているうちに弁は緩んでいく。必要以上の魔力が溢れ出るようになる。それが、"老い"。」
神命 「小難しい話を長々と・・・。パルちゃんの要素は何処へと思ってたけど、こんなところに顕れてるなんて・・・。」クッ
黒霧 「パオラも勉強ができるほうではないけれど、流石は元妖精族。魔力に関する知識は人一倍に豊富だ。」
黒霧 「ま、要するに、時間経過に起因しない変化は僕達にも生じるってことだね。魂の枷が外れかけているのも、そのひとつ。」
黒霧 「魔力を使えば使うほど一度に放出できる魔力量は増えるけれど、それは成長でなく老いだとする考え方がある。」
黒霧 「だからこそ晩年の魔術師が大魔法を大成させたりするわけだけど。肉体の許容値を超えた魔力の放出は寿命を縮める。」
黒霧 「老体には死をもたらしかねない。」
氷雨 「母さんのように・・・。」
神命 「それに関して気になることがあるんだけど・・・。」
神命 「日陰って、何にそんな魔力を使ってたのかな。」
黒霧 「さあ?少なくとも、氷雨を無事に誕生させるために相当の魔力を費やしたことは確かだね。」ポム
氷雨 「だから母さんの意志は僕が継ぐ。父さんは引っ込んでていい。」フ
黒霧 「中々言うじゃないか。」ウリウリ
氷雨 「任せろ。」フフフ
神命 「あー、うん。なんか、こう微妙に噛み合ってない感じ日陰にそっくりだわ。」ウン
デモサ
神命 「疑問はそれだけじゃなくて。幻ちゃんって、日陰の"浄化"を受けて正気に戻ったんだよね。」
黒霧 「そうだね。」
神命 「じゃあさ。なんで昔の記憶があるの?"浄化"は完全に記憶を消し去る荒業なのに。」
黒霧 「・・・。」
神命 「・・・兄様?」
黒霧 「これは僕の勝手な想像だけど・・・。」
神命 「魂の記憶を無理矢理繋げた・・・?」
黒霧 「うん。」
神命 「いや、でもそれって・・・」
黒霧 「できないはずだよ、本来なら。日陰の能力は今に干渉するものだからね。過去を保管して現在に繋げることはできない。」
黒霧 「直接は・・・ね。」
黒霧 「例えば・・・そう。一度、幻に憑依して記憶を覗き、間接的に自分の記憶として取り込んだものを植え付け直す・・・とか。」
黒霧 「これなら日陰の能力の範疇で記憶を補完することができる。」
黒霧 「ただ、母娘とはいえ他人に記憶を植え付けるんだ。それが自分の記憶と錯覚させるために、相当気合を入れただろうね。」
神命 「しかも氷雨くんに魔力を分け与えている状態で・・・か。日陰って、そんな子煩悩だったっけ。」ハァ
神命 「無茶しすぎなんだよ、莫迦日陰・・・。」
ヘップチョイ!
黒霧幻「んん・・・。」パチクリ
神命 「あらら。起きちゃった。」
黒霧 「嚔が酷いね。無理に魂を入れ込まれた拒絶反応でも出てるのかな。」
神命 「母娘なのに?いや、そもそも本当に日陰の娘なの?」
黒霧 「どうだろう。まぁ、今となっては確かめようのないことだから。日陰の言葉を信じるしかないさ。」ナデナデ
黒霧幻「んん~。」Zzz
黒霧 「それよりも・・・今は、これからのことを考えよう。」
神州丸「・・・。」
ア イタイタ
パオラ「神州丸~。」ブンブン
シュバッ ヘッ?
神州丸「パオラっ!」トウッ
ズドム
パオラ「おはぁっ!」
ドテッ
神州丸「見つけた。やっと見つけた!パオラパオラパオラぁ~!」スリスリ
パオラ「そ・・・そう。よかった、わね・・・。」プルプル
天龍 「何やってんだ、お前ら。こんな所で抱き合って。」
龍田 「あたしにはパオラちゃんが襲われているようにしか見えないのだけど~。お姉ちゃんにとっての抱き合うはこれなのね。」ウフフ
チゲェヨ
神州丸「やっと、見つけたのぉ!!」クワッ
パオラ「わ、わかった。わかったからっ。一旦、降りてちょうだい。息ができないわ。」コヒュー
神州丸「パオラぁ!!死んじゃいやあぁ!!」ユサユサ
パオラ「だ・・・から、おり・・・。」カクカク
天龍 「降りろよ!お前が重い所為で息ができないって言ってんだよ!」ガシ
神州丸「私が重い女だってことくらい知ってる。」ジト
天龍 「そうじゃねぇよ!?」
パオラ(あ、これ・・・結構ヤバいかも・・・。)ガクッ
チーン パオラ!?
神州丸「じ、人工呼吸!」グイ
天龍 「莫迦!気道確保が先だ!」ドケ!
神州丸「いや!パオラは私が救う!」キッ
天龍 「追いこんでるのもお前だけどな!?」
ギャー ギャー
龍田 「こういうときは時雨さんを頼るのが一番かしら。」ウーン
ヨシ
龍田 「ちょっといってくるわね~。」ルンタッタ♪
コンコン
龍田 「お邪魔しま~す~。」チラ
黒霧幻「Zzz」
神命 「Zzz」
氷雨 「Zzz」
黒霧 「」クー
龍田 「あら、あらあらあらあらぁ。」ウフフフ
龍田 「仲良く抱き合って・・・はないわね。よく見ると。」
龍田 「時雨さんに背中から抱きつく神命ちゃんと、向き合って胸にしがみつく幻ちゃん・・・の隣の・・・。」エット
ダレカシラ
龍田 「それにしても・・・時雨さんの寝顔、きゃわわ~。///」ウフッ
龍田 「何でも見透かすような瞳がちょっと恐いけど。瞼って偉大ね。閉じるだけでこんなにも印象が変わるんだもの。」
龍田 「・・・。」ウズッ
龍田 「ちょっとだけなら・・・。」ソワソワ
ソーット
龍田 「ん・・・。」チュ
黒霧 「」スー
龍田 「むふ。むふふふぅ。」ンフッ
龍田 「しちゃった、しちゃった、やっちゃったぁ~。」キャー
龍田 「自分からした初めてのキス・・・ほっぺにだけど。」
ハァ
龍田 「キスっていいものね~。」ウットリ
サテト
龍田 「最後に写真撮っちゃお。こんな機会、滅多にないし。あたしの初めて記念だもんね。」ウフフッ
龍田 「こんなこともあろうかと明石ちゃんにスマホ風カメラを融通してもらってたのよね~。」フンフーン♪
龍田 「えっと、確かこれをこうして・・・。」ンー?
ア デキタ
龍田 「はい、ち~」
黒霧s「いぇい。」ピース
龍田 「ず・・・。」
パシャ
龍田 「あの・・・いつから・・・。」フルフル
神命 「部屋に着くちょっと前。」
氷雨 「お姉さんが入ってきたとき。」
黒霧 「僕はそもそも寝てなかった。」
黒霧幻「くしゅっ。」Zzz
黒霧 「幻はぐっすりみたいだね。」フフッ
龍田 「あぅ・・・。///」シュー
黒霧 「それにしても、花。君って案外、肉食系なんだね。」ニッコリ
龍田 「それ以上は言わないでぇ。///」ウゥゥ
龍田 「嗚呼、最悪よぉ。人知れずこっそり楽しむ予定だったのにぃ。///」ウゥ
黒霧 「こっそりって。好意は相手に届けてこそ芽吹くものだろうに。」
龍田 「いいの、知られなくて。あなたの知らない大胆な関係って、燃えるじゃない。」ムフー
黒霧 「君も大概歪んでるね。」アハハ
龍田 「はぁ・・・いいのよ、本当に。時雨さんのことは好きだけど、そういう関係になりたいわけではないし。」
龍田 「そもそも今のあたしに恋愛は無理。男の人と瞳を合わせるの怖いもの。」キッパリ
黒霧 「慣れてから恋しますって?花はもう29歳でしょ。幾つになってから恋を始める心算なのさ。」
龍田 「い・・・今は17歳だもん。」メソラシ
黒霧 「そこからの12年、あっと言う間だったんじゃない?」
龍田 「ぐ・・・。」ウッ
黒霧 「飛び込んでいかないと慣れるものも慣れないよ。あ・・・だから密かに大胆に・・・。」ナルホド
龍田 「」フイ
黒霧 「僕を練習台にするとは・・・。君も中々、恐いものを知らないね。」フフフ
龍田 「仕方ないじゃない身近な男性は時雨さんしか居ないしそりゃバレたら恐いのは知ってたけどでも外でなんて・・・」ブツブツ
黒霧 「あー。ごめん、花。練習ならいくらでも付き合うから、戻っておいで~。」
龍田 「・・・デート。」ボソ
黒霧 「一日しっかりと半日あっさり、どっちにしようか。」
龍田 「え?えっと・・・。ど、どうしよっかな。こんなにすんなりオッケー貰えるとは思ってなかったから。迷っちゃうなぁ。」エヘヘ
黒霧 「さ、パオラを救出にいこうか。心が決まったら誘いにおいで。」タッ
エ?
龍田 「誘う・・・?あたしが!?ま、待って!それは流石にハードルがぁ!!」
黒霧 「これも練習のうちだよ~。」スタコラー
オニィィィィ!!
神州丸「いぃやあぁ!私がするのぉ!!」
天龍 「漫画でしか人工呼吸を知らねぇ奴が駄々捏ねてんじゃねぇ!てめぇ、口窄めてただろ!キスとは違うんだぞ!」
神州丸「やあぁあぁ!」
天龍 「こいつっ!本当にパオラが大事なら、正しい知識を持った奴に任せやがれ!命が掛かってんだぞ!」ギラッ
神州丸「ぐっ・・・ぅうぅうううう!!」ギリッ
ポタッ ポタ・・・
天龍 「血が・・・。」コイツ
ハァ
天龍 「お前が本気なのはよくわかった。だから後は任せろ。パオラは必ず俺が・・・」
ヨーセッ
黒霧 「ふんっ。」ドッ
パオラ「がっはっ!」ゲホッ
ゴホッ アッハ
パオラ「はぁはぁ・・・。一瞬死んでた、あたし。」フゥ
天龍 「俺が・・・。」
黒霧 「おかえり、パオラ。」
パオラ「ええ、ただいま。というか、もっと他に起こし方なかったわけ?女に掌底打ち込むとか、どんな鬼畜よ。」
黒霧 「拳じゃ痣をつくるだけで内に衝撃を伝えられないから。効率的でしょ?」
パオラ「いや、そうじゃなくてね・・・?どうしてこう男って気持ちより効率を優先させるのかしら。」ハァ
天龍 「おれが・・・。」プルプル
龍田 「かっこよかったわよ、お姉ちゃん。」ヨシヨシ
神州丸「パオラぁ~!」トウッ
黒霧 「おっと。」グイ
アゥ
神州丸「うー。ぱおらぁ。」プラーン
黒霧 「死の淵から帰ってきたばかりの人に飛びついたりしないの。優しく、そっと・・・ね?」ニコリ
神州丸「・・・あい。」ウゥ
パオラ「へぇ。まさか時雨の口から"優しく"なんて言葉が出てくるとは・・・。あんたも丸くなったわね~。」シミジミ
黒霧 「僕は昔からこんなだけど。君は今まで僕の何を見てきたの?」ストーカーノクセニ
パオラ「あっは。ごめぇん、お姉さん最後のほうよく聞き取れなかったぁ。もう一度言ってもらえるかしらぁ~。」ニッコー
黒霧 「前々から疑問だったんだけど、パオラ自身は何の心算で付きまとってたの?」
パオラ「言い方・・・。そういうとこ本当そっくりね、あんた達。」マッタク
パオラ「あたしとしては、見て盗んでただけ。強いて言うなら・・・憧れを抱いた少女A?」
黒霧 「それなのに姉面してたんだ。」
パオラ「なに・・・不満だったの?」
黒霧 「まさか。ただ、よくもまぁ気持ちの整理がついたものだなって思っただけだよ。」
パオラ「不満だったんじゃない。」
黒霧 「ないって。」
パオラ「不満だったんでしょお。」ムゥ
黒霧 「だからないってば。」
パオラ「不満だったくせに。」ムー
黒霧 「しつこい・・・。」
パオラ「ふーんだ。」ツーン
黒霧 「そういうとこだけ17歳を演じなくていいから。」
パオラ「だからあたしの依代になった娘はって、この肉体に憑依させたのあんたでしょ!?」
黒霧 「いや、違うけど。」
エ ウソ・・・ チガウヨ?
黒霧 「だって、僕の能力じゃ魂をどうこうできないからさ。"崩壊"させることはできるけど。」
パオラ「そうだった・・・!色々と規格外だから失念してたわ。」ハァ
パオラ「となると、魂を操る能力を持った黒霧・・・は、神命か。あの娘ったらどうしてあたしを・・・」
黒霧 「それも違う。先に言っておくと日陰でもないよ。日陰の能力は自分の魂を別の器に移すものだから。」
パオラ「はぁ?じゃあ誰が・・・。」
黒霧 「名も無き青年A。」
パオラ「何それ。意味わかんないんだけど。」
黒霧 「正直、僕もよく憶えてないからさ。手に掛けた相手のことは特に・・・。」
パオラ「・・・あんた、これ以上踏み込んでほしくないときによく使うわよね。その断り文句。」
パオラ「はぁ。わかったわよ。この件に関してはもう訊かない。これでいいでしょ?」
黒霧 「うん。助かる。」フフッ
黒霧 「さて、それじゃあ本題に入ろうか。神州丸、よろしく。」
ハイ
神州丸「やっと見つけた。私達、"吉良の一族"が追い続けた宿敵。薄弱の亡霊、"鬼百合"。」
天龍 「鬼百合・・・?」
神州丸「陰陽師の家系が悉く潰える原因となった怨霊。お姉ちゃんの仇・・・。」オォォ
天龍 「お、おぉう・・・。こいつもあれだな。闇が深いタイプなんだな。」コソッ
黒霧 「君達艦娘は存在そのものが人類の闇みたいなものだろうに。改造組は特にさ。」
天龍 「まぁ、確かに俺も前向きな理由で艦娘になったわけじゃねぇけどよ。あんまり際どいこと言うなよな。ドキッとするぜ。」
龍田 「あらあら、もう奥さん気取り~?旦那様が不敬罪でしょっ引かれないか心配・・・みたいな?」ニィ
天龍 「気取りも何も嫁だっつの・・・。」チラッ
黒霧 「そこで僕を見ないの。」
天龍 「だってよ・・・。俺、まだちゃんとプロポーズされてない。」
黒霧 「そういえばそうだっけ。すっかりその心算だったから忘れてたよ。」フム
黒霧 「好きだよ、里。」キリッ
天龍 「お、おぉおおぉおまっ!///」ボンッ
龍田 「はいはい、ごちそーさま。」ヤレヤレ
パオラ「・・・くせに。」ボソ
黒霧 「で、話を戻すけど。薄弱の亡霊こと鬼百合は、人の生き死にを左右できる程度に力を持った怨霊。」
黒霧 「名のある数多の陰陽師が彼女に挑み、散らされた。そして魑魅魍魎が跋扈する時代が訪れ今や艦娘という不思議少女が・・・」
天龍 「ちょっと待て、こら。何自分から横道に逸れてんだ。」オイ
黒霧 「いや、神州丸が自分の世界に入り込んじゃってるからさ。場を繋ごうと思って。」
神州丸「ふふ・・・。鬼百合、やっと・・・見つけたぁ。」ニタァ
フフ フフフフ
龍田 「暫く戻ってきそうにないわね。」
黒霧 「でしょ?鬼百合について詳しいことは神州丸にしかわからないから・・・どうしようか。」
天龍 「正気に戻せばいいじゃねぇか。」
パオラ「無理よ。ああなったらもう勝手に戻ってくるのを待つしかないわ。あたし達でできる話を進めておきましょう。」
黒霧 「そう。例えば、どうやって霊体の彼女を倒すか・・・とか。」
パオラ「大問題ね。頼みの綱は神州丸だけど・・・。」チラ
神州丸「うふっ。ふふふふふふ!」
パオラ「鬼百合が絡むとどうにも理性がねー。せめてもうひとり霊体に干渉できる人材が欲しかったわ。」ハァ
天龍 「例えば、日陰の娘っ子とかどうなんだよ。」
黒霧 「幻は駄目だよ。確かに幻の能力なら霊体にも干渉できるだろうけど、精神が未熟すぎる。憑き殺されるのが落ちだ。」
龍田 「それ以前に、子供を矢面に立たせるってどうなの。」ジト
天龍 「た、例えばだよ。例えば・・・。」グ
黒霧 「氷雨なら任せられるんだけどね、精神的には。」
龍田 「より幼い子の名前を出してどうするの。」
黒霧 「黒霧に年齢制限は無いから。使えるものは使う。使えないものは使えるようにする。これが僕達の基本だよ。」フフッ
龍田 「状況が違えば良いことなんだろうけど・・・素直に感心できない。」
パオラ「せめて神命の能力が現世の霊体にも干渉できるものだったなら・・・あ、"御魂卸し"があるじゃない。」ソウイエバ
黒霧 「神命と陰陽師の英霊は相性が悪いと思うよ?」
パオラ「そこはほら、紫苑ちゃんとか。」
黒霧 「それ本気で言ってる?」
パオラ「わかってるわよ。運動能力が絶望的だから結局戦力にはならないってことくらい。でも一番の適任でしょ?」
龍田 「紫苑さんが自分で動けないなら時雨さんが背負って運んであげたらいいのに。」
パオラ「いいわね。採用っ。」ビッ
黒霧 「」エェ
パオラ「本当に嫌そうな顔するわね、あんた。紫苑ちゃんってそんなに重いの?」
黒霧 「うん・・・まぁ、でも。今、僕の背中に乗っている誰かさんよりはましかな。」
ネ級 「オゥ?」ヒョコッ
イツノマニ・・・
紫苑茜「何かしら。とてつもなく不愉快な気配を感じたわ。」イラッ
マジカルバナナ
漣 「バナナといったら黄色。」ヘイ
朧 「黄色といったら注意して進め。」ホイ
潮 「ちゅ、注意して進め!?と、いったら・・・えと、院長先生の部屋の前!」ハイ!
曙 「院長先生の部屋の前といったら悪巫山戯が過ぎて立たされてる莫迦ふたり。」
漣 「誰のことかにゃ~。」
朧 「撫子わかんな~い。」
蓮華 「莫迦ふたりといったら澪と撫子。」パンパン
漣・朧「なんか意味が変わってるぅ!!」ピシャーン
レ級 「澪と撫子といったら頭が良い。」パンパン
漣・朧「いやいやそれほどでもぉ。」テレテレ
ヲ級 「頭が良いといったらヲーちゃんなのぉ。」ムフゥ
五月雨「ヲーちゃんといったら天使。」ラストォ
鳳紅華「天使といったら・・・いったら・・・。あの善人気取りの高慢ちき共はいつか滅ぼす。」チッ
曙 「え?今、舌打ち・・・」
五月雨「はぁい!マ・ジ・カ・ル・バ・ナ・ナ!!」
五月雨「バナナといったらテ〇東!」
曙 「テ〇東!?て、テ〇東!?」
漣 「あかりん、アウト~!」
朧 「罰として今日が終わるまであっかり~んの刑に処ーす。」ウラー
ネ級 「オー。」プラーン
黒霧 「ネ級、背中に乗るならちゃんと乗ってくれないかな。ぶら下がられると余計に重い・・・。」ウッ
ネ級 「ウイ。」トウッ
ノシ フゥ
黒霧 「ま、それでも重いものは重いんだけど。」
ネ級 「キタエテルモノデ。」ムフゥ
天龍 「つーか、お前チビ共と一緒に遊んでたんじゃねぇのか?」
ネ級 「ウム。チョーイタカッタノネン。」ドヤァ
天龍 「・・・そっか。」
天龍 (何故にドヤ顔?)
龍田 (撫子ちゃんの口調が移ってる。)
オーイ ン アレハ・・・
天龍 「長門じゃねぇか。どうしたんだ?お前まで。」
長門 「どうしたも何も、黒を捜していたのだ。」
陸奥 「まさか鎮守府内を端から端まで歩かされることになるとは思わなかったわ。」ハー シンド
龍田 「むっちゃん、艦娘なのに歩いただけで疲れたの?妊娠でもしたの?男性恐怖症なのに。」
陸奥 「違うわよ!ずっとネ級がくっついてきて離れなかったから疲れたの!肉体的にも精神的にも!」ビッ
ネ級 「モチモチハセイギ。」ムフー
天龍 「ほーん。ネ級は長門より陸奥のほうが好いのか。よかったな。初めての陸奥派だぜ。」ヘッ
陸奥 「重巡は守備範囲外なのよ・・・!」クッ
龍田 「じゃあ、むっちゃんの守備範囲って何処までなの?」
陸奥 「それは勿論、駆逐艦までよ!海防艦もアリねっ!あと、龍驤ちゃんも!」ムフゥ!
天龍田「憲兵さん、このひとです。」
黒霧 「ちょっと向こうでお話しようか。」ニッコリ
陸奥 「ひぃっ!ふたりきりはいやぁ!せめて姉さんが隣にっ!」ヒシ
長門 「そういえば以前、ヲ級が陸奥の涙腺がどうのと言っていたな。これがそうか・・・。」フム
長門 「よし。好い機会だ。独りで頑張れ。そして離れろ。」
陸奥 「なんでよ!?」
長門 「私には戦艦棲姫を護るという使命があるのだ。見ろ、お前の所為で怯えているだろう。早く離れろ。」
戦棲姫「むっちゃん、こわい。」フルフル
陸奥 「この・・・!」
ウラギリモノォォォォ!!
黒霧 「さてと、それじゃあ久し振りに本職を全うするとしますか。」コキッ
コホン
黒霧 「長門型戦艦弐番艦・陸奥。」スン
陸奥 「・・・はぃ。」サー
黒霧 「君の幼女趣味は少々行きすぎている。通報こそ無いものの、その機会と手段さえあれば今頃仕置部屋の中か或いは・・・。」フ
陸奥 「」ガタガタ
黒霧 「これまでの憲兵は人間と艦娘との諍いを収めるための存在だった。だけど、これからは違う。」
黒霧 「これからは、鎮守府を故郷とする子供達の為、艦娘間のいざこざにも介入していく。」ギラ
陸奥 「」ピゥ!
黒霧 「此処には僕の娘達も居るんだ。自重する心算無しと判断すれば、その首を鎖で繋ぐぞ。」オォォ
陸奥 「・・・は!ん・・・っ。はぁ・・・あ!」コヒュー
・・・フム
黒霧 「やりすぎた。」パー
天龍 「いや、どーすんだこれ。」
陸奥 「はぁ・・・!ふっ!うぅ・・・はぁっ!」カヒュー
黒霧 「過呼吸には・・・。」スッ
パオラ「掌底を打ち込もうとするはやめなさい。」コラ
黒霧 「なら人間呼吸で・・・。」
天龍 「嫁の眼前で何てことしようとしてくれてんだ。」オイ
イリョウコウイダヨ? ソウイウモンダイジャネェ
長門 「おい、陸奥?大丈夫か?深く息を吸うんだぞ。ゆっくり~。吸って~。吐いて~。」
陸奥 「ん・・・はぁ!ふぅ!あはっ!はぁっ・・・!」
戦棲姫「むっちゃん、かわいそ。」
チロッ
長門 「ん?」
ジワァ
長門 「陸奥、お前・・・。」
ハーイ ドイタドイタァ!
時雨 「眠ちゃんのお通りだぁらぁっしゃあ~!!」ダダダッ
ウオオオオオ!
時雨 「おぉっと手が滑ったぁ!・・・あ。」ツルッ
ブベッ バッシャーン
陸奥 「」ビッショリ
長門 「」スッポリ
戦棲姫「ながもんの頭にバケツが。」オォ
時雨 「くっそ。誰だよ、こんな処に石ころ撒いた奴。」イテテ
デーモ
時雨 「任務完了っ。やったね、眠ちゃん!」キャルン
黒霧 「君、そんなキャラだっけ?」
時雨 「いい加減、貴様と同じ名前で呼ばれるのが嫌になっただけだ。まったく、姿と異なる本名を持つと苦労する。」ヤレヤレ
陸奥 「・・・よ。」フルフル
長門 「陸奥・・・?何か言った・・・」
陸奥 「嗚呼、もう!最悪!ウォータプルーフ使ってないのに!顔見せられないじゃない・・・!」ンモウ
長門 「・・・ふむ。元気そうだな。」
オカゲサマデネ!
黒霧 「元気になったなら話の続きをしたいんだけど。」
陸奥 「ひっ!・・・あ!ひっ!ひっ!ひぅ・・・!」コヒュッ
黒霧 「まだ駄目みたいだね。」
時雨 「にぃに、むっちゃんに何したの。」
黒霧 「躾け。」
天龍 「脅迫の間違いだろ。」
ソウトモイウ イワネーヨ
龍田 「むっちゃ~ん。大丈夫よ~。ほら、こわくな~い。こわくな~い。」ヨシヨシ
陸奥 「んくっ・・・はぁ。ひー。ひー。ふ~。」ホゥ
龍田 「・・・ほんとに妊娠したの?」
陸奥 「こんなときにっ。わたしにツッコませないでっ。」
陸奥 「すー。はぁー。すー・・・っ!」ウッ!
ゲホッ! ゴホッ!
龍田 「もう、大丈夫~?」サスサス
戦棲姫「むっちゃん、かわいそっ。」キラキラ
陸奥 「そんな瞳を輝かせながら言うんじゃないわよ。」ハラタツワネ
黒霧 「うーん。」ジー
天龍 「おい、今度は何をしでかす気だよ。」ジト
パオラ「それがわかってるなら、ちゃんと手綱を握っておくことね。思いついたら即行動に移すわよ、この子。」
天龍 「言われてみれば・・・。」ハッ
黒霧 「」ハム
陸奥 「ん"っ!!」
天龍 「だぁあああああ!!早速かよ!」オイ!
黒霧 「」フー
陸奥 「んー!!」ジタジタ
陸奥 「んんっ!」フンッ!
ドゴッ ウ・・・!
陸奥 「はぁ・・・はぁ・・・!殺す気か・・・!」エホッ
黒霧 「戦艦の一撃は、流石に重かった・・・。」ウゥ
時雨 「にぃにって最近もの凄くお莫迦さんだよね。面白いからいいけど。」
黒霧 「それは僕の行動自体が?それとも僕が痛めつけられるのが?」
時雨 「そんなの決まってるじゃん。後者だよ。」ニッコリ
黒霧 「いい性格してる。」フッ
時雨 「それほどでも~。」フフン
陸奥 「おかしい・・・。この人達は絶対におかしい!」
黒霧 「ところで・・・。」ガシ
陸奥 「んにゅ!」ムニ
長門 「む・・・。」
黒霧 「」スッ
陸奥 「・・・!///」ギュッ
ピタ
黒霧 「・・・ふふ。」クス
陸奥 「・・・?」チラ
黒霧 「今、ちょっと期待したでしょ。」ボソ
陸奥 「なぁ!?///」カァ
黒霧 「ふふっ。やっぱり君は"陸奥"だね。たった一度の経験で慣れてしまった。本当にちょろ・・・手が掛からなくて助かる。」ニッコー
陸奥 「チョロいって言いかけたわね、この。」イラッ
黒霧 「だって、君のほうから舌絡めてきたから。ただの人間呼吸だったのに。」
陸奥 「ぅえ!?あれって深い・・・。ぇえ!?」
黒霧 「接吻だと思って絡めてきたんだ。君って本当に。」クフフ
陸奥 「なに?なによぉ、もぅ・・・。」
長門 「ずるい。」ムゥ
神州丸(何、やってるんだろう・・・。)
パオラ「あら、戻ってきてたのね。神州丸。」
神州丸「戻って?私はずっと此処に居た。」ウン?
パオラ「あー、まぁ、そうね。うん・・・。」
神州丸「パオラ・・・?」
パオラ「なんでもないのよ、なんでも・・・。」ハハ
パオラ(どうしましょう。鬼百合の説明をって頼んだらまたあっちの世界に行っちゃいそうなのよね。)ウーン
時雨 「ねぇ、にぃに。ちょっと訊いてもいいかな。」チョイチョイ
黒霧 「訊くだけなら何でも。」
時雨 「前にさ。色仕掛けは使わないって話、したの憶えてる?」
黒霧 「憶えてるよ。僕は仕事で色仕掛けは使わない。」
時雨 「じゃあさ。なんでむっちゃんにはしたの?何を、とは言わないけど。はぐらかされたくないし。」
黒霧 「それが信頼のスイッチだからだよ。」
時雨 「すいっ・・・え?」
黒霧 「君達艦娘に反乱なんて起こされたら、将校じゃ太刀打ちできないでしょ?だからそういう機能を付加してるんだよ。」
黒霧 「形はどうであれ、唇を重ねることで反抗できない潜在意識が生まれるようにね。」
黒霧 「男性恐怖症とか向き合うの面倒だし。何とかなったりしないかなってやらかしたら上手くいった。」シレッ
時雨 「此処にクズが居る・・・。」ウワァ
ン?
時雨 「唇を重ねることがスイッチ・・・?ってことはまさか。」ゲッ
黒霧 「自分から罠に嵌まってくれるなんて。可愛い弟子を持てて僕は幸せだよ、眠。」ニィ
スゥー
時雨 「くそったりゃああああ!!」
時雨 「まぁ、いいや。にぃに大好きっ!」キャピッ
黒霧 「そういう洗脳的な効果は無いから。」
時雨 「なんでぇ。面白くねーの。」ケッ
黒霧 「君、五月雨に毒されすぎだよ?」
神州丸「あのふたり、仲好いね。」
パオラ「そう・・・なのかしら?」
ネ級 「」ヨジヨジ
黒霧 「君はまた・・・どうして僕の背中によじ登ってくるのかな。」オモイ
ネ級 「タカイトコロ、スキ。」ムフー
黒霧 「それでいうと僕より長門のほうが背は高いと思うんだけど。」
ネ級 「ナガモンハカミガジャマ。」ノンノン
黒霧 「なら陸奥は?」
ネ級 「ムッチーハ・・・ナンカイヤ。」
陸奥 「一番傷つく理由なんですけど!?」チョット!?
ネ級 「コウスイガキツイノネ~。」
黒霧 「あー。」
陸奥 「え、うそ。わたし、臭いの・・・?」
ネ級 「クサイ、チガウ。キツイ。」
黒霧 「君、硝煙とか潮風とかで香りが飛ぶのを想定して多めに付けてるでしょ。」
陸奥 「あぁ、それで・・・。でも、それならまだ・・・。」
長門 「出撃後の陸奥は臭いぞ?香水の匂いに色々と混じってそれはもうわけのわからん異臭をだな。」
陸奥 「ならそのときに言いなさいよ!わたし、ずっと臭いって思われてたの!?何のための姉妹艦よ!!」ワッ
長門 「・・・スマン」
黒霧 「この頃はシャンプーだけで充分好い香りがするからね。臭いが付くのが嫌なら黒霧印の無香石鹸でも贈ってあげようかな。」フム
時雨 「無香って、匂いがしないんじゃなくて、臭いが付かないって意味だったんだ。」シラナカッタ
陸奥 「無香石鹸。これがあれば・・・。」オォ カミヨ
時雨 「崇め奉ってる。」
長門 「大袈裟な。」ヤレヤレ
フワッ・・・
時雨 「ふ~ん。長門さんは自然な好い匂いがするね。」スンスン
長門 「私は汗をかく機会が多いからな。臭いには気を遣っている。」
時雨 「へぇ。なんかちょっと意外・・・」
長門 「子供達に嫌われたくないからなっ。」ムフン
時雨 「でもなかった。」アハハ
長門 「そうだ。臭いといえば黒よ。次から黒のところのシャワーを使わせてもらってもいいだろうか。」
黒霧 「いいけど・・・。」ナンデ?
長門 「いやなに、私は風呂上がりは裸で過ごしたい派なのだがな。陸奥が嫌がるのだ。」ウム
黒霧 「・・・これは誘惑されてるのかな。それとも喧嘩を売られてるのかな。」
時雨 「どちらにしろ手を出したら負けだからね、にぃに。」ポン
ネ級 「ヌー。」ウトウト
戦棲姫「ネ級、眠いの?」
ネ級 「ウンヌ。」コテッ
黒霧 「僕の背中で寝ないの。」コラコラ
ネ級 「ン~。」ギュウ
黒霧 「甘えたがりめ。」マッタク
戦棲姫「そろそろ帰らないと・・・。」オロオロ
黒霧 「だってさ。」ホラ
ネ級 「・・・ヨロスコ。」Zzz
スカピー
時雨 「連れてけってことなのかな。」
黒霧 「行くには行く心算だったけど、せめて一晩くらいは置きたいんだよね。」ウーン
時雨 「ボクは元気だよ?」
黒霧 「夜の霊体ほど厄介なものはないからさ。全部任せていいなら置いてくけど。」
時雨 「巫山戯ろ。」オイ
最上 「」ホケー
三隈 「見事に呆けてますわね、もがみん。」
鈴谷 「そりゃだって初夜だもん。緊張くらいするよ。」シャカシャカ
熊野 「緊張・・・とはまた違うような気もしますけれど。」
鈴谷 「そうかな?」トクトク
三隈 「どうせ柄にもなく色々と考えちゃっていますの。まったく、大事なことほど独りで抱え込むんですから。」ヤレヤレ
熊野 「こういうときこそ鈴谷の出番ですわ。JKのノリで不躾に踏み込んでくださいまし。」
鈴谷 「だからJKじゃないし。礼儀作法は一通り叩き込まれてるし、御嬢様だから。」ハイ シンサク
三隈 「学園の問題児が何を偉そうに・・・。今度は地味な色合いですのね。」
鈴谷 「基本に立ち戻ろうと思ってさ~。まずはシンプルな組み合わせで・・・って、問題児でもないし。」
熊野 「充分に問題児でしたわ。弦楽器の演奏会にエレキギターで参加したり、舞踏会でマジックショーを開いたり・・・。」
熊野 「これで成績優秀、楽器の演奏も踊りもマジックも達者ときて先生方も強く言えないものですから本当に質の悪い。」ハァ
鈴谷 「なに、くまのんってば鈴谷のこと嫌いだったの?鈴谷、泣いちゃうよ?」
三隈 「なるほど。この苦味は差し詰め"鈴谷の涙"ということですの。」カラン
鈴谷 「おっ、いいね。それ採用。」
熊野 「私、鈴谷のこういう切換えの早さが失恋に繋がっていると思うのですけれど。」
三隈 「確かに、そうかも知れませんの。」フム
鈴谷 「・・・どゆこと?」
熊野 「好きなひとがころころと変わる女の"好き"は信用ならないということですわ。」
鈴谷 「いやでも私、誰にも"好き"なんて言ったことない・・・。」
熊野隈「・・・。」
鈴谷 「全部、告白する前に失恋してるから・・・。」
熊野隈「」ヤサシイマナザシ
鈴谷 「今夜はヤケ酒じゃああああ!」ウラァ!
最上 「ボクにも一杯貰えるかな。」ユラァ
鈴谷 「あぁああ!・・・吃驚したぁ。」フゥ
三隈 「いいんですの?もがみん、貴女お酒はあまり強くなかったでしょう?」
最上 「うん・・・燃料追加。」
熊野 「かなり追いこまれてますわね、これは。」
最上 「あー、いや。別に追いこまれてるわけじゃないんだけどさ。余計なこと考えたくなくて・・・。」ヨッコイショ
最上 「今夜はね。集中したいんだ、クロさんに。」クスッ
鈴谷 「お~。今の笑顔いいね。なんか、大人の女って感じ。本当にバーに居るみた~い。」イッタコトナイケド
最上 「ありがと。」フフッ
最上 「みっちゃん、それ一口ちょうだい。」
三隈 「これですの?かなり強いですわよ?」ヤメタホウガ・・・
熊野 「因みに、何を混ぜてまして?」
鈴谷 「ジンライムとスピリタス。」シレッ
三隈 「やめましょう、もがみん。一口でも命に関わりますの。」
最上 「うん・・・。というか、なんでみっちゃんは平気なの。」
羽黒 「これは・・・こっちで。あれが・・・これもか。」ペラッ
妙高 「羽黒ったら、いつの間にこんな写真を。」アラアラ
那智 「妙高にはこれが写真に見えるのか・・・。」トオイメ
足柄 「うーわ。何よ、この表情。いかがわしい・・・。」ヤラシイワ
羽黒 「それ、虫刺されにム〇塗ったときの那智お姉ちゃん。」
妙高 「凄い記憶力。流石は羽黒だわ。」ウフフ
足柄 「顔だけ見るともう・・・ねぇ?」
那智 「莫迦を言うな。私がそんな女々しい表情をしてイクわけがないだろう。もっとこう荒ぶるような・・・。」タケダケシイヨウナ
足柄 「それはそれでどうなのよ。」
羽黒 「こっちは足柄お姉ちゃんの恥ずかしい表情。」ピラ
妙高 「パンク系ね。」
足柄 「ちょっと待って。私それ知らない。」
羽黒 「だって合成だもん。」アタリマエ
足柄 「なんてもの生み出してくれてるのよ、あんたは。黒に見られたらどうするのよ。」マッタク
羽黒 「因みに合成元はデーモ〇閣下の真似をする〇っさん。」
足柄 「知らないわよ。」
羽黒 「・・・と、お独り様で盛り上がってる足柄お姉ちゃん。」キュピーン
足柄 「・・・はい?」
羽黒 「で、素材がこちら。」シュバビン
那智 「どれ。琴のプライベートを覗き見てやるとしよう。」
足柄 「こら、姉。妹のプライベートなら守りなさいよ。」
妙高 「随分と落ち着いているのね、足柄。恥ずかしいところを撮られているというのに。」アラ
足柄 「それはだって、羽黒が嘘吐いてるのバレバレだし。」
羽黒 「・・・む。」
那智 「そうか?確かに肝心の部分は写っていないが、そういう場面に見えなくもないぞ?」ンー
足柄 「私、ひとりでしたことないもん。」シレッ
妙高 「・・・なんですって?」
足柄 「だから、したことないんだってば。」
妙高 「・・・何を?」
足柄 「ひとりえっち。」
妙高 「」
那智 「」
羽黒 「年増が清純ぶらなくていいから。」ジトォ
足柄 「事実なんだから仕方ないじゃない!ていうか、4つしか変わらない奴に年増とか言われたくないんですけど!?」
妙高 「自分を慰める必要がないくらいに充実した毎日を過ごしているようね、貴女の妹は。」トオイメ
那智 「私にばかり押しつけるな。今は貴様も姉妹だ。共に面倒を見ていこうではないか。」フ
曙 「ムー」ポクポク
潮 「・・・Zz」カクン
曙 「寝るな。」スパーン
潮 「アウッ」
曙 「勉強に付き合えって言ったのは姫百合でしょ?なんで先に舟漕いでるのよ。」ジト
潮 「ごめん・・・なさい。」ウゥ
曙 「ま、わからないでもないけどね。呪文みたいな問題文を読んでると眠たくなるわ。」ハァ
曙 「ったく。どうして算数の問題なのに、こう問題文が長いのかしら。」
紫苑茜「必要な情報を整理して考えることも算数の技能に含まれるからよ。」
潮 「茜まま・・・。」
紫苑茜「わたしが教えてあげるから、もう少し頑張りなさい。」トナリ シツレイスルワネ
潮 「うん。」
曙 「ぇえ。母さん、難しい言葉ばっかり使うから嫌なんだけど。」
紫苑茜「こぉら。人の厚意に対して嫌とか言わない。」メッ
近衛麗「それなら私が教えてあげようか~?こう見えて算術は得意よ?」ウフフ
曙 「・・・。」ジー
近衛麗「前にも言ったけど、そんな見詰め方じゃ濡れないわよ。」ウフッ
曙 「」ヘッ
近衛麗「今、鼻で嗤ったわね?」
曙 「いや?別に・・・?」プフッ
曙 「ねぇ、麗姉。この問題教えて~?」スリッ
近衛麗「・・・急に態度が変わるわね。まぁ、いいわ。見せてごらんなさいな。麗姉様が華麗に解説してあげ・・・。」ピタ
アゲ・・・
曙 「どうしたの~?まさか、わからないの~?」ニヨニヨ
近衛麗「そうね。わからないわね。」
曙 「え~!?自信満々に出しゃばっておいてわからな・・・!」
近衛麗「これ、なんて書いてあるの?」
曙 「は?」
紫苑茜「そういえばあんた、わたし達と同じ世界の生まれだったわね。普通に日本語で話してるから忘れてたわ。」
近衛麗「ものを覚えるのは早いほうだから。で、これなんて書いてあるわけ?」
紫苑茜「単純なわり算の問題ね。」エット
近衛麗「わり算?わり算って何。」
紫苑茜「大きな数を均等に分けるときに使う計算よ。かけ算の反対。」シラナイノ?
近衛麗「かけ算の反対ってことは数が減るのよね。なんでそんな計算が必要なのよ。減るのはひき算だけで充分だわ。」
紫苑茜「あんた、面倒臭いわね。」ワカッテタケド
曙 「麗には他人と物を分け合う概念を学んだことがないって視えたから、わり算を知らないかもって思ったのに・・・。」
曙 「それを莫迦にする前に思わぬところで躓いたわ。」チッ
コンコン
紫苑茜「はーい。」
黒霧 「お邪魔するよ。」ガチャ
近衛麗「パパぁ。この世界の言語を教えてっ。」
曙 「この変わり身の速さ・・・。あんたは私に算術を教えるんでしょうが。」
近衛麗「文字が読めないのに教えるも何もないじゃない。1時間で覚えるから、ちょっと待ってなさい。」
曙 「何、その自信。ムカつく。」ケッ
黒霧 「勉強はまた今度。撫子と澪は・・・居ないみたいだね。」
潮 「澪ちゃんと撫子ちゃんなら、五月雨さんに連れられて道場に行ったよ。」
黒霧 「五月雨と道場か。あんまり扱いてないといいけど。姫百合は算術の勉強かな?頑張ってるみたいだね。」ポム
潮 「うん。」エヘヘ
曙 「さっきまで舟漕いでたくせに。」
潮 「あ、灯ちゃんっ。」
曙 「あによ。事実じゃない。」フン
黒霧 「それじゃあ僕は道場の様子を見てくるよ。これは姫百合にプレゼントね。」コトッ
潮 「これ・・・は?」
黒霧 「ム〇。眠くなったら目の下に塗るといい。眠気が覚める。」ニッコリ
潮 「虫刺されの薬にそんな使い道が。」ゴクリ
紫苑茜「しーちゃん、純粋な姫ちゃんに変な入れ知恵しないでちょうだい。」
曙 「そーよ。姫百合ばっかり狡いわ。」
紫苑茜「灯・・・。」アンタ・・・
黒霧 「そう言われてもな。気持ちが昂ぶると"なに"が"あに"になる癖の直し方なんて知らないし。」ウーン
曙 「んな!?///」カァ
黒霧 「あ。それじゃあ艤装収納用アクセサリのデザインを決めさせてあげるよ。」ソウダ
黒霧 「"漆黒"の3人は揃ってペンダントでデザインも勝手に決めちゃったけど、灯の好みで創ってあげる。」
曙 「・・・ほんと?」
黒霧 「ほんと。」
曙 「やった。」ヨシ
黒霧 「うん。4人分のデザインを頼んだよ~。」ソレジャ
バタム
曙 「今、4人分って言った?」ハ?
潮 「言ってたね。」ウン
曙 「そう。あーそう。どうあっても私を甘やかす心算は無いってか、くそ。それなら私にも考えがあるわよ、クソ親父。」フフフ
近衛麗「あらあら悪い顔。そういうとこだけはパパにそっくりなのよねぇ、この娘。」
ハイ ソコマデェ!
漣・朧「はぁ、はぁ・・・。ありあとやしたっ。」
南方戦「はい、お疲れさま。頑張ってたわね。」
漣・朧「ぁあざぁっすぁ!!」ウッス!
南方戦「・・・なんて?」
五月雨「駄目ですよ、南ちゃん。ボケは乗るか流すかの2択です。聞き返す、深く追求するはNGです。」ブッブー
南方戦「あっそう。ところでアンタ達、やれば真面目にできるんじゃない。」
漣・朧「おっふ。」
五月雨「あのー。私のはボケじゃないので流さないでほしいのですけれども・・・。」
南方戦「ならもっとわかりやすくしなさい。ボケじゃなくても巫山戯るから判断に困るのよ、このふたりみたいに。」
漣・朧「ぎくりんちょ。」
五月雨「"みたいに"とは失敬な!私のほうが先ですよ!」ムゥ!
南方戦「・・・今のはどっち。」
五月雨「私にもわかりません。」
漣・朧「だめだこりゃ。」
レ級 「あっちは賑やかだな。」
ヲ級 「なの。向こうのふたりは巫山戯る余裕があるくらいには優秀なの。」
レ級 「それに比べてこっちは・・・。」チラ
蓮華 「脇が甘い。」フンッ
ドウッ
武蔵 「ごはっ!!」ガクッ
ク・・・
蓮華 「最強の戦艦も武装が無ければこの程度か。やはり艦娘は艦娘だな。」
武蔵 「何が・・・言いたいっ!」ゼェ ハァ
蓮華 「戦力の8割は武装の性能に左右されるということだ。貴様ら艦娘には地力がなさすぎる。」
蓮華 「だからこそ、この私と父上の業が光るというものなのだがな。」フッ
武蔵 「くそ・・・!あまり、艦娘を舐めるなよ。深海棲艦の娘ぇ!!」ズアッ
蓮華 「図体のでかい奴が小柄な者を相手に大振りするな、莫迦が。それでは自ら懐に招き入れているようなものだぞ。」ユラァ
武蔵 「なっ!?」
蓮華 「少し寝ていろ。」ズドッ
武蔵 「ぐ・・・ぁ。」フラッ
ドサ
レ級 「荒ぶりすぎなんじゃねーの、蓮華よぉ。お前が本気出すとマジで洒落になんねーぜ?」
蓮華 「知ったことか。それで素直になるなら万々歳だ。」フン
ヲ級 「恐怖政治なの・・・。」ヲー
レ級 「よし、それじゃあ大和の姉ちゃんは俺達とやろーぜ。」
大和 「えっ。私も・・・やるの?」
レ級 「そのために道場に来たんじゃねーのか?」ウン?
大和 「いや、私は・・・そのぉ、武蔵の付き添いというか、何というか・・・。」イジイジ
ヲ級 「安心してなの。レーちゃんもヲーちゃんも、蓮華ちゃんほどの莫迦力は持ち合わせてないの。」ニパッ
蓮華 「聞こえたぞ。」ムッ
レ級 「なんだ。自分が怪力なの、まだ気にしてたのか?別にいいじゃねぇか。見た目には普通なんだし。」
ヲ級 「南お姉ちゃんからの遺伝なの。」
蓮華 「だから嫌なのだ。私まで腕っぷしだけの女みたいではないか。」
南方戦「だぁれが腕っぷしだけですってぇ?」ユラァ
大和 「ヒッ」ビクッ
蓮華 「流石だな。その筋肉から放たれる腕っぷし感で最強の戦艦もたじたじだ。」フム
南方戦「あ?」ビキッ
レ級 「いや、腕っぷし感ってなんだよ。」
レ級 「大和の姉ちゃんは格闘技の経験とかあるのか?」
大和 「・・・ないです。」
レ級 「そっか。じゃあ基本の構えからだな。まず拳はな。こんな感じで軽く・・・」ウンヌン
大和 「こ、こう?」
レ級 「お、いいじゃねーか。んで、足の位置は・・・」カンヌン
コレデイイ? オウ カンペキダナ
南方戦「誰あれ。ほんとにレ級?何かに取り憑かれてるんじゃないの?」
ヲ級 「んーん。組み手の練習をしてるときのレーちゃんはあんな感じなの。」
蓮華 「そうだな。誰よりも基本に忠実で、このときだけは私の助言すら素直に聞き入れるからな。」
南方戦「へぇ。家族でも知らない顔ってあるものなのね。」フーン
黒霧 「それは南が稽古を嫌がって道場に来なかったからでしょ?」
南方戦「は?ワタシがいつ嫌がったってのよ。蓮華が来るなって五月蠅いからワタシは・・・何それ。」
黒霧 「何って、灯だけど。」
南方戦「それは見ればわかるわよ。なんで幼稚園児みたいな抱き付き方をしてるのかって訊いてるの。」
曙 「」ヒシッ
黒霧 「・・・さあ?」
漣 「おやおやぁ?あかりんったら、ぱぱ様らぶなんですかぁ?」デュフフ
朧 「だいしゅきなんですかぁ?」ヌルフフ
曙 「・・・。」ジトォ
漣 「な、なんて圧だ・・・!嘗て、これほどの圧を感じたことがあったか!?」クッ
朧 「落ち着け、ちゃん澪。いつもより目線が高いだけだっ。」
漣 「な~る。抱っこされてるもんにゃっ。」コノコノォ
曙 「」シラー
漣 「・・・どした、あかりん。なんかあったんけ?」
朧 「いつもなら口汚く罵ってくるはず。」オーウ
曙 「・・・。」
黒霧 「ほら、灯。澪と撫子が心配してるよ。」
曙 「私・・・ぱぱ、だぁいすきっ!」キャルン
漣・朧「・・・は?」
曙 「ん~!ちゅっ。」チュッ
漣・朧「はぁああああああ!?」ホッペニチューダト!?
曙 「えへへっ。」ニッコー
黒霧 「ま、こういうわけなんだ。」
南方戦「・・・何が!?」
漣 「ずりぃぞ、あかりーん。俺も抱っこされたい~。」ナァ
朧 「ぱぱにちゅーしたい~。」ナァ
曙 「だめっ!ぱぱは私のぱぱだもん!」
レ級 「どーしたんだ、あれ。灯姉らしくもねぇ。」
ヲ級 「普段が普段なだけにちょっと気持ち悪いの。」ドンビキ
曙 「うっ・・・。ぱぱ、すき~。」ヒクッ
漣 (お・・・?)
ハハーン ソウイウコトカ
漣 「なんでぇ。急にぶっちゃってよぉ。ツンばっかのあかりんがやっても可愛くねぇっつーの。」ケッ
曙 「あ?・・・じゃない。私、可愛くない・・・?」ウルウル
朧 「裏がありそうで恐いのね。ぱぱも大困惑なのね。」ノンノン
曙 「・・・ぁ・・・しろってのよ。」フルフル
漣 「なんてぇ?」
曙 「じゃあ、どうしろってのよ!!待ってても甘やかしてくれない!甘えてみれば気持ち悪い!ふっざけんじゃないわよ!」
漣・朧「おぉふ。」タジ
曙 「あんた達はいいわよねぇ!普段から巫山戯てるから?ちょっと過激なことしたって笑い話で済むんだもの!」
曙 「で?私がやったら何?裏がありそうですって?裏しかないわよ、ぶあ~かぁ!!」
曙 「でも・・・それでもっ。こうでもしなきゃ、変えられないって思ったんだもん・・・!」グスッ
曙 「父さんは私の父さんなのに!ちゃんと血の繋がった父さんなのにぃ!」
曙 「どうして私は、父さんの一番になれないの・・・?」ポロポロ
蓮華 「今、“血の繋がった”と言ったか?」
五月雨「言いましたね。」ハイ
蓮華 「ということは、あれか?灯は、黒霧の生き残りということか?」
五月雨「いえ、神命さんの鑑定ではお母さんの縁者ということでしたから、違うんじゃないですか?」
ヲ級 「つまり灯お姉ちゃんはお母さんとお父さんの娘ということなの。」
レ級 「なんだよ。知らなかったのか?」
五月雨「知りませんよ!」ワッ
蓮華 「知るわけないだろう!」クワッ
漣 「俺っちも初めて知ったぜい。」
朧 「こんなときはどうするか。」フム
漣 「叫ぶか。」
朧 「是非もなし。」ウム
娘ーズ「うあああああああ!!」
ダダダダ バァン
紫苑茜「喧しぃ!!向こうの部屋まで響いてるのよ!御蔭で姫ちゃんがぐっすり寝ちゃったじゃない!」
五月雨「五月蠅くて寝ちゃったとは、斬新なキレ方ですね。」
漣 「いや、姫姉は静かすぎると眠れねぇのよ。」
朧 「小さな物音が気になって寝付けなくなるらしいのね。」
五月雨「なるほど。それで昼寝をいっぱいするのですね。」ナットク
漣・朧「それはただの育ち盛りです。」キッパリ
ソウデスカ・・・
曙 「うぅうう・・・。」グスッ
紫苑茜「なに、灯ったらまた泣いてるの?」
曙 「泣いてない!」ブワッ
紫苑茜「思いっきり泣いてるじゃない。凄い顔してるわよ。」マッタク
紫苑茜「ほら、こっちに来なさい。わたしが抱き締めてあげるから。」
曙 「嫌。父さんがいい。」プイ
紫苑茜「はぁん?」カチン
紫苑茜「あ~そう。そんなこと言う。へ~。ふ~ん。」
曙 「あによ。」ジト
紫苑茜「もう一緒に寝てあげないから。」
曙 「はぁ!?・・・じゃなくて。な、何よ、それくらい。母さんの添い寝がなくったって私は・・・」
紫苑茜「あんたの分のご飯もつくらない。優しい優しい“父さん”に頼むなり、麗に料理を習うなりすることね。」フン
曙 「・・・!」ウルウル
黒霧 「灯って、悪巧みすると全てが裏目に出るタイプだよね。」
曙 「~!」ボロボロ
五月雨「お父さん、そろそろフォローしないと灯ちゃんが限界です。」ミテラレマセン
黒霧 「フォローと言われてもね。正直、かける言葉が見つからない。」
五月雨「だとしても、元凶はお父さんですので。何とかしてください。」
フーム
黒霧 「灯、明日は母さんと三人でお出かけしようか。」
曙 「・・・ふたりがいい。」
紫苑茜「まだ言うか。」イラッ
黒霧 「意地にならないの。明日は灯だけの父さんになってあげるから。」
曙 「・・・うん。」
黒霧 「ん。次は、茜。」
紫苑茜「っ・・・!な、名前で呼んだくらいで絆されない、わよっ。」ムフフ
漣 「すっげぇ顔緩んでっぞ。」
朧 「だぬ。」ウンム
黒霧 「大人げない。灯を虐めていいのは僕だけです。」キリ
紫苑茜「・・・大人げないのはあんたでしょ。」
曙 「虐めてたんだ。」
蓮華 「好きな娘ほど虐めたい、というあれだな。」ウム
レ級 「言うな。鳥肌が立つ。」ゾワッ
ヲ級 「蓮華ちゃんはレーちゃんのことが大好きなの。御愁傷様なの。」
五月雨「それはそれとして、お父さん。折角道場に来たなら一本やりませんか?」
黒霧 「そうしたいところではあるけど、これから外に出る用事があってね。日付が変わるまでには戻りたいから、また今度。」
五月雨「・・・日付が変わるまでに戻りたい理由って若しかしなくても最上さんですよね。」
黒霧 「何としても戻ってこないとね。」フフッ
五月雨「その返しは娘として複雑です・・・。」ヤレヤレ
南方戦「・・・ふん。」ムスッ
レ級 「拗ねるくらいなら貸し出さなきゃいいのに。本妻面して余裕ぶってると本当に父ちゃん盗られちまうぞ。」イイノカヨ
南方戦「ぐ・・・!」
蓮華 「ま、多少は目を瞑らざるを得ない状況にあるのは事実だがな。改造手術を受けた娘は色々と不安定になりやすい。」
蓮華 「艦となった娘を提督という男が使う構図は、つまりそういう意図の許で形作られたものなのだ。」ビシッ
南方戦「知ってるわよ、そのくらい。だから・・・っ。もういいわよ。ワタシが我慢すればいいだけの話だもの。」ギリッ
レ級 「なぁ、蓮華。これ結構まずくねーか?」コソコソ
蓮華 「なに、やきもきが積もるほど燃え上がるものもあるというものだ。そして私に可愛い妹を・・・!」キラッ
レ級 「そうじゃねーだろ。」オイ
ヲ級 「可愛い妹ならヲーちゃんで充分なの。」ドヤァ
レ級 「そういうことでもねーよ。」
武蔵 「ん・・・。」パチ
大和 「あ・・・武蔵。痛いところは無い?大丈夫?」
武蔵 「痛いところ・・・?そうだな。大和の膝に包まれている後頭部以外は全身が痛む。」フッ
大和 「もう・・・武蔵ったら。」ウフフ
大和 「そんなにお姉ちゃんの膝枕がきもちい・・・」
武蔵 「太ったな、大和。」
大和 「」ピシィ
武蔵 「前々から肉付きの好い質ではあったが、更に肉が付いたな。少しは鍛えたらどう・・・」
大和 「」スッ
武蔵 「だっ!?」ゴチッ
大和 「ちょっと、用事を思い出したから・・・鳳翔さんのところ、行ってくるね。」フラフラ
武蔵 「あ・・・あぁ。」イタイ
ガラッ ピシャ
武蔵 「なんだったんだ?」
大和 「と、いうことがありまして。」ズーン
鳳翔 「はぁ・・・。それは、何と申し上げてよいやら・・・。」アハハ・・・
大和 「食べる量は必要最低限に抑えているんです。だから、余剰には食べてないから、ふと・・・る、なんてことは・・・。」ゴニョゴニョ
鳳翔 (丼十杯が必要最低限・・・。)エェ
大和 「今、絶対食べ過ぎが原因だって思いましたよね!?」ガシッ
鳳翔 「ええ!?い、いえ、決してそんなことはっ!あ!そうだ!運動!運動なんて良いんじゃないですか?ほら、健康的ですし!」
大和 「運動なんてしたら身体が引き締まっちゃうじゃないですか!?」クワッ
鳳翔 「それが目的なのでは!?」
大和 「あ・・・そう、でした。」
鳳翔 「・・・あまり深くは訊きませんが、過去に囚われすぎてはいけませんよ?今はもう、取り巻く環境の何もかもが違うのですから。」
大和 「そう・・・ですね。でも、直ぐには難しいかも・・・です。求められることが、私にとって唯一の存在価値の証明だったから。」
大和 「もっと肉付きが好いほうが好みだとか、下着の好みがどうだとか。望まれるままの自分をつくっていって・・・。」
大和 「そうなろうとしてなったはずなのに。いざ“太った”と言われるとショックだなんて・・・ほんと、私・・・。」グスッ
鳳翔 「えっと・・・その。あの・・・えっと。」ウー
鳳翔 (どうしましょう!普段から皆さんの相談を受けたりはしていますが、これは流石に荷が重すぎます!)ダラダラ
鳳翔 (というか、私はこの基地で最年少なのですけど!?そんな人生経験豊富そうに見えますか!?老けてますか!?)キー!
鳳翔 (こういうときは時雨さんに丸投げして・・・。)アレ?
鳳翔 (若しそれでふたりが肉体の関係になったりでもしたら、大和さんは時雨さんの沼に嵌まってしまうのでは・・・?)
鳳翔 「どうしてよりにもよってあんなひとの許に・・・。」ハァ
大和 「・・・?」
鳳翔 「いえ、何でもないです・・・。」
鳳翔 (それだけは何としても阻止しなければ・・・!ふぁいとですよっ、庵!)ムン
鳳翔 「とはいえ、いったいどうすれば・・・。」ムー
大和 「あの、鳳翔さん?」
鳳翔 「すみません。少しだけ待っていただけますか。」サッ
大和 「ぁ・・・はい。」
鳳翔 (大和さんと時雨さんがそういう関係にならないために・・・。)ウーン
エー ベツニイイジャーン
鳳翔 (ん?あれは・・・。)
最上 「駄目なものは駄目。ボクだって初めてのことなんだから、大切にしたいって気持ち、わかるでしょ?」
鈴谷 「そうだけどさぁ。ひとりもふたりも変わんないじゃ~ん。」ブー
熊野 「ひとりでアタックする度胸が無いだけでしょうに。」
鈴谷 「ぎくっ。」メソラシ
三隈 「鈴谷、冗談でも言って良いことと悪いことがありましてよ。三隈だって、どさくさ紛れに押しかけ倒したいですのに。」
最上 「本気なら言って良いってものでもないからね、みっちゃん。」
鈴谷 「みっちゃんって実は肉食系だったんだ。昔は興味無しって感じだったのに。押しかけ倒したいとか、どんだけ・・・。」
三隈 「何か文句でも?」
鈴谷 「いや、別に。」
熊野 「溜まってますのね。」
三隈 「吐き出す先が無ければ溜まるのは当然ですの。何というかこう・・・ざわざわしますの。」
最上 「あれだけの戦闘があってまだ足りないの?」
三隈 「三隈は戦線に参加していませんの。不完全燃焼ですの。ですから演習を・・・」
最上 「やだ。」
三隈 「そこを何とか。」
最上 「無理。身を清めた後に汚れたくないもん。」
三隈 「ですの・・・。」ハァ
鈴谷 「・・・性欲の話じゃなかったんだ。」
熊野 「ストレートに言うのはやめてくださいまし。」ハシタナイ
鈴谷 「もがみんもみっちゃんもさ。なんかこう“艦娘”って感じだよね~。」
最上隈「はぁ?」
鈴谷 「いやほら、溜まってるって言葉から真っ先に思い浮かぶのが戦闘欲でしょ?」
鈴谷 「私達くらいの年齢だったらさ。性欲が浮かびそうなもんじゃん?」
三隈 「そういうものですの?」
最上 「いや、ボクは性欲が浮かぶ派だよ?みっちゃんなら戦闘欲求が主語だろうなって思っただけでさ。」
三隈 「何ですの。三隈だけ仲間外れですの?」ム
鈴谷 「因みにくまのんは何が浮かぶ派?」
熊野 「私は溜めない派ですわ。」
三隈 「そういところは流石ですわね。昔から自己管理が完璧ですの。感心しますの。」
熊野 「淑女として当然のことをしているだけですわ。」フフン
鈴谷 「そりゃまぁ、“そういう”エステでガス抜きしてればねぇ。」
熊野 「・・・は?」ピシィ
最上 「うそ、熊野ってそういう感じ?」
三隈 「そういう・・・?」ウン?
熊野 「い、いえ・・・その。」ダラダラ
鈴谷 「・・・なぁんて、冗談っ。冗談に決まってるじゃ~ん。いくらくまのんでもそんな金持ちの道楽みたいな・・・くまのん?」アレ?
熊野 「」メソラシ
鈴谷 「うわーお。まーじすかー。」トオイメ
最上 「淑女って何だっけ。」ハハッ
三隈 「何の話をしていますの?三隈にもわかるように言ってほしいですのっ。」ムゥ
鈴谷 「やっぱりあれなのかな。本物を知ってると偽物じゃ我慢できないのかな。これ、喜んだほうがいいとこなのかな。」ウツロ
熊野 「どうして鈴谷がダメージを受けてますの。発狂したいのは私のほうですのに。」
最上 「熊野って大人の玩具も持ってるの?それなら幾つか貸してほしいな。今夜使うから。」ケロリ
熊野 「もがみんはもがみんで色々とおかしいですわ。」
三隈 「何の話かはわかりませんけれど、卑猥な話をしていることは理解しましたの。」フンス
鳳翔 「熊野さんは性豪なんですか?」
熊野 「至って普通ですわ!」クワッ
鈴谷 「月一って普通なんだ。自慰行為は月一が普通っていうよね。月経周期も月一だし。そっか。自慰行為と同じ扱いなんだ。そっか。」
熊野 「毎度毎度そっちのエステに行っているわけではありませんわ!本当に偶にですの!」
鳳翔 「そんな熊野さんを見込んでお願いがあるのですが。」ズイ
熊野 「見込み違いですわ!?というか、いつの間に交ざっていましたの!?」
鳳翔 「時雨さんの夜のお相手をお願いしたいんです。できれば毎晩。」ズズイ
エ・・・?
鳳翔 「勿論、無理にとは言いません。身体が保たないようであれば私も一肌脱ぐ覚悟ですので・・・!」グルグル
熊野 「な、何を言っていますのぉ!?」
最上 「断るって選択肢は無いんだね。」
鈴谷 「鳳翔さん、すっごい瞳してる。発明スイッチが入って三徹してるときの明石みたい。」
三隈 「どうして熊野が・・・。三隈だって・・・。」ムスッ
鳳翔 「すみません。少々、取り乱してしまいました。」コホン
熊野 「少々・・・?」
三隈 「程度のことはさておき、クロさんの夜の相手が何ですの?三隈でしたら喜んで引き受けますの。」ムフン
鳳翔 「いえ、三隈さんでは恐らく、時雨さんを満足させるには足りないかと。」
三隈 「そんなことありませんの!クロさんの為ならば、この三隈、どんな責め苦にだって耐えてみせますの!」ムン
鳳翔 「・・・え?」
最上 「みっちゃん・・・。」ウワァ
三隈 「何ですの?ドSなクロさんのことですの。きっと夜の営みも想像を絶するような・・・!」モンモン
鳳翔 「あの、最上さん。三隈さんの中で時雨さんはいったいどういうことになっているのでしょうか。」ヒソヒソ
最上 「気にしないでいいよ。ただの妄想だから。」
最上 「南さん関連でやらかしてクロさんにお仕置されてたから。それで目覚めちゃったのかなぁ・・・。」ヤレヤレ
熊野 「で、本題は何ですの?私に、その・・・夜の相手をしろというのは。」ソワソワ
鈴谷 「何。くまのん、乗り気なの?乗ってやる気なの?それとも乗られてやる気なの?」
熊野 「ぁあなたは表現を自重することを覚えてくださいまし!///」
最上 「へぇ。熊野でもそんなに焦ることがあるんだね。」イガーイ
三隈 「ちょっと、熊野?貴女、まさか本気でクロさんを狙って・・・。」ゴゴゴ
熊野 「ち、違いますわ!ただちょっと興味があるといいますか。何というか・・・。」モジモジ
鈴谷 「何それ。くまのんってば鈴谷の応援をする傍らこっそり狙ってたってわけ?」
鈴谷 「恋の相談を請け負った序でに恋泥棒しちゃいましたってわけ。」ゾゾゾ
熊野 「・・・近い。」ウゥ
最上 「鳳翔さん、あっちで話しよっか。この三人に付き合ってると話が進まないから。」
鳳翔 「・・・そうですね。」アハハ
最上 「で、熊野をクロさんに宛がおうとした理由って?」
鳳翔 「実は・・・この話には大和さんが関係していまして。」
最上 「大和さんが?」
鳳翔 「はい・・・。その、大和さんって、依存癖が、あるじゃないですか。」
最上 「そう、だね。」シラナイケド
鳳翔 「だから、若し時雨さんを頼ったりなんてして身体の関係になったりでもしたらもうどっぷり嵌まってしまうのではないかとっ!」ズイ
最上 「うん・・・で?」チカイ
鳳翔 「ですので!時雨さんの身体のほうを埋めてしまえば大和さんと交わることもできなくなるのではないかと。」グルグル
最上 「・・・その相手に熊野を選んだ理由は?」
鳳翔 「時雨さんの全力を引き出せる方でないと大和さんも纏めて食べられかねませんので、性豪の熊野さんにとっ!」ムフー
最上 「それ、南さんでいいんじゃ・・・。」
鳳翔 「あ・・・。」
最上 「そもそも大和さんにその気があるかも・・・ねぇ。」チラリ
大和 「私、東さん一筋なので。でも・・・執拗に迫られると、断れない・・・かも。意志薄弱ですみません!」ウゥッ!
最上 「大丈夫だよ。クロさんは無意味に迫ったりしないからさ。」ヨシヨシ
大和 「それは意味があれば迫ることもあるということでしょうか!?」
最上 「あー、ははっ。そうきますか。」
鳳翔 「どうやら私の考えすぎだったようです・・・ですよね?」
最上 「ボクに訊かれても。」
明石 「う~い。泉ちゃん、飲んでるぅ?」デヘヘ
夕張 「寄るな、酔っ払い。私、お酒の臭い苦手なのっ。」グイ
明石 「あ~ん。つ~れ~な~い~。」ブー
夕張 「こいつっ。工廠じゃ酒類禁止にしてるから知らなかったけど絡み酒だったのね。」ウザイ
鈴谷 「はいはーい。追加のカクテル持ってきたよ~。」ヒョコヒョコ
夕張 「ちょっと、鈴谷!明石しか飲まないのに次々持ってこないでよ!まだ残ってるの見えるでしょ!」
鈴谷 「え?あ、ほんとだ~。困っちゃうなぁ。鈴谷のペースに合わせてもらわないと。」
夕張 「だったら一緒に水も持ってきて。カクテル一杯に対してバケツ一杯の割合で。」
鈴谷 「誰が得するの、その拷問。」ヨッコイセ
明石 「ん~。鈴谷ぁ~。」スリッ
鈴谷 「うっ!酒くさっ!まだ3杯目くらいなのに、なんでこんな・・・!」ギュム
黒霧 「そりゃあスピリタスなんて劇酒を莫迦みたいな割合で混ぜていたらこうもなるよ。」
エ・・・?
明石 「あ、クロさんだぁ~。」ニヘラ
夕張 「黒霧教官、こいつどうにかしてください。」
黒霧 「縛ってベッドに放り投げておけば朝には解決するさ。それより鈴谷、スピリタスの入手経路について後で話がある。」
鈴谷 「・・・はーい。」ハハ
明石 「奏、脱ぎま~しゅ!」ウェーイ
夕張 「脱いだら秘密がバレるぞ、お莫迦。」E.スタンガン
アバババ
明石 「キュウ」
黒霧 「ところで、夕張は下戸なんだね。」
夕張 「いや、下戸ってわけではないんですけど。臭いがどうにも苦手で。」
黒霧 「油の臭いは?」
夕張 「正直あんまり。」
黒霧 「・・・珍しいね。」
夕張 「よく言われます。」
鈴谷 「そろ~り。」
黒霧 「鈴谷、逃げたら押し倒す。」
鈴谷 「よっしゃ。滾ってきたぁ~!!」ダダダ
夕張 「・・・ほんとに襲うんですか?」
黒霧 「襲うとは人聞きの悪い。僕は確かに“押し倒す”と言ったけど、それ以上のことは言っていないからね?」フフッ
夕張 「悪い顔をしてらっしゃる。」アラアラ
夕張 「あ、そうだ。黒霧教官、鳳翔さんの弓についてなんですけど・・・。」
黒霧 「庵の・・・?あぁ、ゴリラ並みの握力と腕力がないとまともに扱うこともできないあれか。」
鳳翔 「時雨さ~ん?今何か不快な言葉が聞こえてきたのですが~。」ウフフフ
黒霧 「君を戦線から退かせるためだけに悪意を込めてつくったあれを簡単に引いてしまう君はもう充分にゴリラだよ。」
鳳翔 「・・・夕張さん。ちょっとこの阿呆をお借りしますね。」ガシ
夕張 「ど、どうぞ。」
サァ イキマスヨ アーレー
夕張 「そういえば私、まだちゃんと黒霧教官と話したことないんだよね・・・処女膜のこと以外。」
夕張 「んー。我ながらヤバいわ・・・。どーしたもんかなぁ。」ハァ
鳳翔 「被告は此方へ。」
黒霧 「いったい何を裁かれるのやら。」
最上 「心当たりしかないんじゃない?」ニィ
黒霧 「だからだよ。」フフッ
ナルホド
鳳翔 「今回は大和さんの件についてです。あと序でに私の件についても。」
黒霧 「序ででいいんだ。」
鳳翔 「よくはないです!よくはないですけど、物事には優先順位がありますから。」
最上 「鳳翔さんってば、おっとな~。」
鳳翔 「慣れただけですよ・・・悪い意味で。」
大和 「あの・・・私、時雨さんに何かされた憶えはないのですが・・・。はっ!若しかして、これからすることについて予め!?」
鳳翔 「そうですね。」シレッ
黒霧 「全く信用されてない・・・。」アハハ・・・
最上 「実際やるんでしょ?」
黒霧 「それで解決できるならね。」
鳳翔 「誓ってください。」
黒霧 「私、黒霧時雨は、如何な理由があろうとも、求められない限りは、大和に手を出さないと・・・」
鳳翔 「求められる状況をつくらない、に変えてください。」ジト
黒霧 「・・・個性死んじゃう。」
鳳翔 「サキュバスですか、貴方は!」
黒霧 「男性はインキュバスだよ?」
ドッチデモイイデス!
最上 「クロさんって、自分から口説きにいったりとかしないよね~。」アンマリ
鳳翔 「誰かひとりに狙いを定めてもらえると、こちらとしても楽なんですけど・・・ね!」ギン
黒霧 「庵に定めてもいいの?」
鳳翔 「既婚者が何を言っているんですか。捻り潰しますよ。」ゴゴゴ
最上 「真面目だな~、鳳翔さんは。」
鳳翔 「本当に真面目なら今夜のことを黙認したりしません。」ジッ
最上 「あはは~。何のことやら。」シラッ
鳳翔 「まったくもう。南さんが許可した以上、私は何も言いませんけれど、程々にしてくださいね?」ハァ
黒霧 「程々にねぇ・・・。ところで、大和。武蔵にちょっかい掛けてもいーい?」
大和 「え・・・はい、構いませんけど。」
鳳翔 「言ったそばからああああ!!」ベシベシ
イタイ イタイ・・・
鳳翔 「次から次へと・・・。このひとは本当に・・・!」ワナワナ
黒霧 「それだけ皆が魅力的ってことだよ。」
鳳翔 「良いように話をすり替えないでください。結局は時雨さんの自制心と南さんへの愛情の問題でしょう。」
黒霧 「それはそうなんだけどね。」
鳳翔 「いい加減、他人の深い処に入り込んで滅茶苦茶に引っかき回すその悪癖はどうにかしてください。」
黒霧 「え・・・無理。」
鳳翔 「その首、鎖で繋ぎますよ?」ジャラ
最上 「なんで持ってるのさ。」ハハ・・・
大和 「仲が好いんですね、おふたりとも。」
鳳翔 「ええ。まぁ、それなりに。」
最上 「あっれ。そこは照れながらキレるところじゃ・・・。」
黒霧 「庵は大人な女性だから。」
鳳翔 「貴方にそう言われると悪意を感じるのですけど。」ム
黒霧 「気の所為、気の所為。」ヒラヒラ
大和 「あの、こんなこと訊くと勘違いされるかも・・・ですけど。どうして私ではなくて、武蔵なんですか?」
最上 「それは大和さんのほうが色気あるのにってこと~?」ニヨニヨ
大和 「いえ。私のほうが簡単なのに、という意味で・・・。」
最上 「あー。ごめん、ボク酔っぱらってるみたいだ。」
大和 「大丈夫です。慣れてますから。」
黒霧 「そういうところだよ。」
大和 「えっ?」
黒霧 「僕はね。“葛藤”のあるひとが好きなんだ。心が揺れ動いている様を、僕は美しいと思うから。」
黒霧 「それぞれ状況は違うけれど、南も里も、庵も、武蔵も、自分の置かれた現状に抗って魅せた。」
黒霧 「彼女達のそういった姿を僕は美しいと思う。自分には無いものを持った彼女達に、どうしようもなく惹かれてしまう。」
黒霧 「ただ、それだけのことだよ。」フフッ
大和 「・・・。」
鳳翔 「///」シュー
最上 「ま、そうなるよね~。みっちゃ~ん、鳳翔さんに飛びきり濃い日本酒~!」オーイ
黒霧 「さて、それじゃあ僕は行くよ。日付が変わる頃には帰るようにするから、少しだけ待っていて。」ポム
最上 「うん・・・え?何処か行くの?」
黒霧 「最後の大片付けにね。」
最上 「ふ~ん。ま、いいよ。ボクとの約束を後回しにするくらいには重要なことなんだろうし?」ニィ
黒霧 「・・・要望があれば聞くけど。」
最上 「それは今夜のお楽しみ。期待してるから、裏切っちゃ・・・ヤだよ?///」クス
黒霧 「君は本当に・・・魔性の女だよ。」
最上 「行っちゃったね~。」フゥ
鳳翔 「最上さん、恋愛上手なんですね。後手に回っている時雨さんは初めて見ました。」
最上 「恋愛?鳳翔さんから見ても、ボクとクロさんってそういう風に見える?」
鳳翔 「いえ・・・正直、仲の深まりすぎたお友達にしか見えませんけど。でも、身体から始まる典型のようにも見えます。」
最上 「でしょ~?一線引いてるからこそ対等に駆け引きができるっていうか~。でも根底には淡い恋心があるっていうか~。」キャー
最上 「ん~!ノってきたぁ~!!今日は飲んじゃうよぉ~!!」ムッフー
鳳翔 「え・・・?でも今夜は・・・あれ?」エット
ウタゲダー! モガミサン!?
熊野 「久し振りに見ましたわね、あのもがみんは。」
三隈 「遅れてきた恥ずかしさに負けて騒ぎ出すんですから。鈍感も程々にしてほしいですの。」マッタク
鈴谷 「鈍感ってそういう意味だっけ。というか、クロさん追いかけてくれなかったんだけど。体良く追い払われただけだったんだけど。」
三隈 「それでも“押し倒す”とは言われたのでしょう?だったらそのうち実現しますの。」
鈴谷 「え、まじ?どーしよ。不意打ちされると心臓破裂するかも。」ヤッベ
三隈 「それは良いことを聞きましたの。クロさんには事故を装うように三隈から伝えておきますの。」
鈴谷 「くまの~ん、みっちゃんがいじめるぅ~。」
熊野 「・・・。」
鈴谷 「くまのん?」
熊野 「鈴谷、この件、私が預かってもよろしくて?」
鈴谷 「どったの、急に。」
熊野 「少し、試してみたいことがありますの。」フフ
黒霧 「では点呼をとる。番号!」
五月雨「ばんごう!」
蓮華 「いち。」
紫苑茜「に。」
パオラ「さん。」
神州丸「しー。」
ネ級 「・・・んご。」Zzz
戦棲姫「ろく。」
漣 「しち!」
朧 「はーち!」
時雨 「きゅう!現在員玖名、総員拾名、幽霊が紛れ込んでいます!」
黒霧 「もう一度・・・番号!」
五月雨「ばん、ごう!」
黒霧 「幽霊は君か。」グニィ
五月雨「ふみまふぇんっ!」アイヤー
黒霧 「この面々で鬼百合討伐に赴くわけだけど、澪と撫子は泳ぎに自信はあるかな?」
漣 「普通のプールならそれなりに泳げっぺ。」
朧 「海女さんより長く潜れるっす。」ウッス
黒霧 「潜水に自信があるなら丁度良い。澪と撫子は僕が抱えて潜る。なるべく急ぐけど、2分は息を止めててね。」
漣・朧「え・・・?」
蓮華 「目的地は海の底だ。人間であれば意識を失う危険がある深さだが、艦娘ならば何とかなるだろう。」
漣・朧「だろう!?」
黒霧 「パオラは神州丸と茜姉さんを。戦艦棲姫はネ級と眠を。蓮華は五月雨を頼むよ。」
蓮華 「任された。」ウム
戦棲姫「えっと。ねむ・・・ちゃんって。」
時雨 「ボクだよ~。よろしくね、姫お姉ちゃん。」ニパッ
戦棲姫「」ズギューン
戦棲姫「はぁ・・・眠ちゃんは俺の嫁。」ハフゥ
黒霧 「澪、あまり変な言葉を教えない。」
漣 「ノーモーションできたっ!?」
朧 「事実、犯人は澪ちんなのねん。」
紫苑茜「わたし、集積に戻れば自力で潜れるんだけど。」ネェ
パオラ「あたしが運んだほうが早いからでしょ。風の防壁ならひとりもふたりも変わらないから素直に甘えておきなさいよ。」
紫苑茜「釈然としないわ。」ムゥ
五月雨「夜の海上散歩というのも乙なものですね~。」
蓮華 「呑気なものだな、お姉ちゃん。これから恐怖の深海ツアーだぞ?」
五月雨「いやぁ。私、水の中で目を開けられない系女子ですから。どちらかというと廃墟ツアー・・・。」タハハ
蓮華 「嘘を吐け。訓練島の頃にしっかり水中で目が合ったと父上から聞いたぞ。」
五月雨「あの時は吃驚して目が開いちゃっただけですぅ~。普段なら絶対に目を開けたりしません~。」イーダ
紫苑茜「敵の本拠地に乗り込もうってのに限りなくいつも通りね、あのふたり。」フゥ
黒霧 「耳許で息を吐くの止めてもらえるかな。」クスグッタイ
紫苑茜「背負って行くって聞かなかったのしーちゃんでしょ?わたしは集積の姿で行くって言ったのに。」
パオラ「そうだよ、時雨。いくら紫苑ちゃんが運動音痴でトロいからって、自分が言った以上は責任持ってやり遂げなさい。」メッ
紫苑茜「パオラぁ。わたしが運動音痴なのは認めるけど、態々言葉にすることないでしょう?後で覚えときなさいよ。」チッ
パオラ「うわ。本気の舌打ちしてくれちゃって、この。紫苑が嫉妬深い家系だってこと忘れてたわ。」
紫苑茜「家系じゃないわよ!わたしの個性よ!」
黒霧 「背中で喚くの禁止。」ウルサイ
ア ゴメン
漣 「なーなー、いくさひめ~。これから行く所って戦姫の棲んでる所なんだよな~。」
戦棲姫「そうだけど・・・なに?」
朧 「どんな所なのねん。」
戦棲姫「どんなって、普通の研究施設だよ?」
漣 「じゃあさ!施設の周りに罠とか仕掛けられてねーの?」ワクワク
朧 「水雷とか機雷とか爆雷とか!」ヌフー
戦棲姫「それ、大体全部同じ・・・。うちは防衛設備とか付いてない・・・と思う。特に機雷は、寝惚けてぶつかる娘がいるから。」
ネ級 「クカー」Zzz
漣・朧「あぁ・・・。」ナットク
パオラ「神州丸、気配が近づいたら教えてちょうだい。」
神州丸「うん。今、丁度真上。」シレッ
パオラ「え・・・何が?あたし達が、上?それとも、あっち?」
神州丸「私達のほう。真下に基地が在る。500mくらい。」
パオラ「そういうのは、もっと早く言って?」ヒクッ
神州丸「聞かれなかったから。わかってると思ってた。」ゴメンナサイ
紫苑茜「上がポンコツだと下もポンコツね。」ヘッ
パオラ「うっさい。」クッ
黒霧 「これから潜るけど、無理はしないようにね。特に撫子。気絶するまで堪えるなんてことのないように。」ツン
朧 「うぉう。」ムガッ
時雨 「はーい、せんせー。苦しくなったときはどーするんですかー。」
黒霧 「第一段階は僕が人間呼吸で保たせる。それでもキツくなったらパオラの防壁に叩き入れる。」
時雨 「パオラさんの防壁って?」
パオラ「風で海水を吹き飛ばすの。球体の潜水艇に乗っていくようなものよ。」
時雨 「海中で活動できるひと以外はそれでよくない?」
パオラ「申し訳ないけど、それは無理ね。この人数が入るくらいの防壁となると、あたしの魔力が保たないから。往きが限度かしら。」
時雨 「・・・にぃにの仲間って、皆こんななの?」
黒霧 「魔力量が少ないって?パオラは多いほうだよ。元妖精族だし。ただ歳が歳だから。」
パオラ「だから精霊は歳をとらないから永遠の十七歳だって言ってんでしょうがっ!」スパーン
紫苑茜「歳はとらなくても色々と莫迦になってるのよ。魔力の放出量を調整する機能とかね。」
黒霧 「その分、強力な魔術が使えたりもするけど、無駄に放出してしまう魔力も増える。」イタイ
パオラ「だから直ぐに消耗しちゃうの。ただでさえ深海の水圧に耐えるだけの風圧を起こさないといけないのに。」ツカレルワ
五月雨「はーん。歳をとるとそこかしこで屁をこくようになるようなものですか。」
パオラ「全然ちがう!!」
黒霧 「さぁ、行くよ。撫子は後ろ、澪は前。300mくらいで息継ぎさせるけど、その前にキツくなったら抓って知らせること。」
漣・朧「ういっす。」ピシッ
蓮華 「お姉ちゃんは首を掴んでいけばいいな。」ガシ
五月雨「猫じゃないんですから。ちゃんと抱えてくださいよ。」
蓮華 「そうなると、両脇か。」フム
五月雨「擽るのはなしですよ。本当に死にますから。」
蓮華 「仕方ない。今回は自重しよう。」
紫苑茜「じゃ、よろしくね、パオラ。」ヨッコイセ
パオラ「うっ・・・。背中に感じるこの大質量・・・腹立つ。」チッ
紫苑茜「それぞれを浮かせるよりも纏めて浮かせたほうが節約できるんでしょ?だったら文句言わない。」ノシッ
パオラ「あーはいはい。役得ですよ、まったく。終わったらあんたのおっぱい枕にして寝るからね。」
紫苑茜「胸を枕にって、どんな体勢で寝るつもりよ・・・。」イイケド
パオラ「ほら、神州丸も来なさい。」
神州丸「ん・・・。」スッ
パオラ「いや、腕広げて待たれても・・・。後ろ、向いてもらえる?抱えていくから。」
ウン・・・
時雨 「・・・よく寝るね、ネーちゃん。」
戦棲姫「成長期だから。」
ネ級 「ウニャ」Zzz
時雨 「ボク、何処に掴まればいいかな。」
戦棲姫「・・・お腹?」
時雨 「そうなると、胸に顔を埋めることになるけど・・・大丈夫?」
戦棲姫「だいじょ・・・」
ネ級 「」ズリズリ
ポフン
時雨 「前に移ってきたね。」
戦棲姫「この娘、おっぱい大好きだから・・・。」
紫苑茜「着いたわね。」
パオラ「ええ、着いたわ。」
五月雨「」チーン
時雨 「やばい。耳鳴りがやばい・・・。耳、終わった。」キーン
ネ級 「カー」Zzz
朧 「海水、飲み過ぎた・・・。」ウップ
漣 「初ちゅー。初ちゅー、やっべぇ!」フオー!
蓮華 「流石に到着寸前でもまずかったか。」フム
戦棲姫「ちょっと速く潜りすぎた?」ゴメンネ
黒霧 「撫子は無理に舌を絡めようとするから。澪、敵地では静かにね。」メッ
パオラ「戦力の半分を犠牲にして。」
紫苑茜「ただ自滅しただけの気もするけど。どうするつもりなのやら。」ハァ
紫苑茜「それにしても、頭の悪い設計してるわね、この施設。」
パオラ「後から増設したんでしょ。そうでなきゃ出入口に培養ポッドなんて並べないって。」
黒霧 「上手く工夫すれば賢い設計にもなるだろうけどね。」
蓮華 「全部空だな、父上。防衛システムも機能していないと見える。お姉ちゃんは置いてきても良かったな。」フム
五月雨「大事な姉を殺しかけておいてこの扱い・・・ぐれてやる。」フフフ
漣 「なー、ぱぱん。そっちに居るのかー?澪ちんから見て右ー?左ー?上ー?下ー?」キョロキョロ
黒霧 「後ろかなー。」ヨット
漣 「うぉう。」ダッコ
黒霧 「撫子、右斜め前に三歩進んで背中に掴まって。配線だらけだから足許に気をつけてね。」
朧 「あいあい。いーち、にーい、さんっ。とうっ。」ピョン
ドフッ ウッ
朧 「吐きそ・・・。」ウップ
黒霧 「全力で耐えてねー。」サァ イコウ
戦棲姫「眠ちゃん、動ける?」
時雨 「なんとか・・・でも手繋いでて。周りに気を配る余裕・・・ないから。」ヨロヨロ
戦棲姫「うん。わかった。」ギュ
神州丸「・・・どうして皆、普通に動けてるの。真っ暗なのに。」ナニモ ミエナイ
飛龍 「ねぇ、私の仕事、日に日に増えてる気がするんだけど。気の所為かなぁ。」カリカリ
蒼龍 「きっ!気の所為じゃ・・・ない、かなぁ~。」アハハー
赤城 「終わらせる仕事よりも入ってくる仕事のほうが多いんですよ。」カリカリ
大鳳 (息をするように嘘を・・・。)
飛龍 「あっそう・・・パオラも大変なのね。」フーン
大蒼龍(納得したっ!)
飛龍 「今頃どんぱちやってるのかしら・・・。」ペラ
飛龍 「私も身体動かしたい。」ハァ
赤城 「・・・演習、付き合いましょうか?」
蒼龍 「え゛・・・!?」ビクッ
大鳳 「駄目ですよ、赤城さんっ!飛龍さんのそれはそういう意味じゃ・・・!」ヒソッ
赤城 「・・・?」
飛龍 「それじゃ、お言葉に甘えようかしら。」カタッ
赤城 「飛龍さん?どちらへ・・・?書類は・・・?」アノ
飛龍 「もう終わったわよ。身体温めてくるから、先に失礼するわ。日付が変わる前までには部屋に来てよね。」ソレジャ
・・・ア ソウダ
飛龍 「赤城は挿入れたい派?挿入れられたい派?」
赤城 「え・・・?えっ?いったい何の話をして・・・!?」ガタッ
飛龍 「ま、どうせ襲うの私だし。ふたりとも挿入れたらいっか。」パタム
赤城 「」ダラダラ
赤城 「!」バッ
大鳳 「明日の分もやっちゃおうかなぁ~。」フイ
赤城 「!!」バッ
蒼龍 「うちの飛龍ちゃんを、どうか宜しくお願いします。」スッ
赤城 「いやああああああ!!」ウワアアアン
時雨 「あ゛ー。ちょっとずつ治ってきた。」ポンポン
戦棲姫「ごめん・・・ね?ワタシが、急いだ所為で・・・。」
時雨 「ううん。君の所為じゃないよ。大体全部、にぃにが悪い。」
黒霧 「こらこら。本当のことを言っちゃ駄目でしょー。」
時雨 「ねっ?」
戦棲姫「あー。」ハハ
五月雨「ところで、静かすぎませんか?此処って三笠を建造していた施設なんですよね。機械音も何も聞こえないんですが。」
戦棲姫「この区画は放棄されてるから。ワタシ達が暮らしてるのは、もっと下。でも、其処まで行くと皆の身体が保つかどうか・・・。」
紫苑茜「此処まで来るのだって、半数が脱落したものね。」
五月雨「それは余計なことをしくさるからでは。」
時雨 「そう言われるとボクの立つ瀬が無いなぁ。」
スミマセン アヤマッチャイヤダヨ
パオラ「・・・!無駄口を叩けるのもここまでみたいよ。」ピクッ
神州丸「妖しきを照らせ、“篝火”。」ポゥ
鬼百合「・・・?」
黒霧 「さぁ、物語に幕を下ろそう。」
鬼百合「だぁれ?」ユラユラ
神州丸「虚空に杭を、“魂縫”。」バリッ
バチィ!
鬼百合「・・・?」
神州丸「御符じゃ駄目か。」チッ
鬼百合「あなた。あなた、知ってる。恐い娘。雷を落とす、恐い娘。」
神州丸「雷よ!!」
ズガーン!
鬼百合「恐い。こわい。こわい・・・。こわいね。こわいの。こわいよ・・・。」フルフル
神州丸「ぁあ!?」ブチィ
黒霧 「パオラ、神州丸を。」タッ
パオラ「嫌だと言いたい。んもう!」ガシ
神州丸「ん~!!轟け!“雷轟”!!」
パオラ「ちょっ!」
黒霧 「“避雷針”。」ガッ
ドォーン! バチィッ
黒霧 「・・・はぁ。間一髪。」ヤレヤレ
神州丸「はなしてぇ~!!」ジタジタ
パオラ「ああ、もう!暴れないの!」
ンー!!
黒霧 「君、大丈夫?」
鬼百合「・・・へーき。ごろごろはこわいけど。こわくない。」
漣 「何言ってっかはわかんねーけど綺麗な顔してんのな。ほんとにお化けさんけ?」
朧 「ちょー美人なのねん。」
鬼百合「あなたも・・・そう、だった?」
朧 「おぅ?」
漣 「撫子、言われてんぞ。今は美人じゃねぇってよ。」
朧 「なにおう!?」ウォウ!
鬼百合「ふふ。ふふふふ。」クスッ
神州丸「どうして止めるの!?あいつは!鬼百合はっ!私の家族の仇なのに!」ワッ
パオラ「神州丸がどれだけあいつを恨んでるかは知ってる。でも、問答無用ってわけにもいかないのよ。」
神州丸「あいつの答えなんて要らない!“答え”は私の中に在る!」
パオラ「鬼百合のこととなると本当に話を聞かないわね、この娘。」ハァ
紫苑茜「ちょっと眠ってなさい。」ギュム
神州丸「むがっ!?」
・・・カクン
神州丸「Zzz」
紫苑茜「やっと静かになった。」ヤレヤレ
パオラ「一応訊いておくけど、紫苑ちゃん。それ、ヤバい薬ではないわよね?」
紫苑茜「艦娘に効く薬がヤバくないわけがないでしょうが。」
パオラ「勘弁してよ、もう・・・。」
鬼百合「似てる。似てる。捜してた、あのひと。でもちょっと違う。ちがう。」マジマジ
黒霧 「・・・?」
鬼百合「殺されても死んでやらないと言った、あのひと。残された、あのひと。わたしが置いていった・・・。」
鬼百合「隣に居たのに。気づかなかった、あのひと。あのひと・・・〇〇〇。」
黒霧 「!?」
鬼百合「そう。わたしは残した、あのひとを。残された、あのひとに。世界を渡る“赤髪の勇者”に。」
黒霧 「何処に姿を隠したのかと思えば・・・。敢えて同じを道を辿るのは自分は失敗しないという当てつけかな。」
黒霧 「失敗なんてしたことないけどね・・・残念なことに。」ボソッ
鬼百合「あなた。」ポフポフ
朧 「おぉう。ぶるっとするのね。」ゾゾッ
漣 「幽霊なのに触れてる・・・。やっぱり幽霊ではない何かっ!?」ヒョエ
鬼百合「触れる。同じ血が流れてるから?細い髪・・・あ、枝毛。」
朧 「んのぅ!?」ガーン
漣 「あー。撫子ってば偏食なところがって何ですとぉ!?」
黒霧 「同じ血?撫子が、君の血族・・・?」
鬼百合「関わりの深いひとは、干渉しやすいの。記憶、血、繋がりのあるひと。」サワサワ
朧 「んにゅ~。」ムニムニ
漣 「どちらかってーと姫百合のほうが繋がり強そうだけどにゃ。名前的に。」
黒霧 「いや、鬼百合は本名じゃないと思うよ?」
漣 「そうなんけ?」
鬼百合「・・・忘れた。」
曙 「」シャコシャコ
ガラガラ ペッ
曙 「」イー
・・・ヨシ
潮 「灯ちゃん?」ヌッ
曙 「うわっ!び、びっくりしたぁ。」ドキドキ
潮 「今、どれくらい歯磨きしてた?」ジッ
曙 「どれくらいって・・・に、2分くらい?」
潮 「短い!やり直し!こっち来て!」グイ
曙 「え、ちょっ!力つよっ!」ウワワッ
潮 「はい、ごろんして。」ポンポン
曙 「ごろんって、お母さんじゃないんだから。」
潮 「む。」ジト
曙 「・・・。」ゴロン
潮 「よろしい。」
曙 「ねぇ、姫百合。膝枕は別にいいんだけどさ。」フカフカダシ
潮 「なぁに?灯ちゃん。」
曙 「あんたのおっぱいしか見えないんだけど、これで歯磨きなんてできるの?」
潮 「・・・セクハラ。」
曙 「そういう返しもできるようになったのね、あんた。」チョットハラタツ
潮 「灯ちゃん、あーん。」クイ
曙 「ちょ、開ける!自分で口開けるから指突っ込まないで!」
マッタクモウ
曙 「ここ最近、ほんっと強引になったわよね。父さんの影響かしら。」ヤレヤレ
潮 「そうかな?灯ちゃんには前からこんな感じだったと思うよ?」
曙 「私にはってどういうことよ、私にはって。」チョット?
潮 「だって、構ってあげないといつも独りだったから。」
曙 「私を寂しい奴みたいに言うのやめてくれる?」
潮 「寂しかったのは事実でしょ?」
曙 「それは父さんと母さんが居なかったからであって決して友達が出来なかったからでは・・・」
潮 「はい、口開けて~。」アーン
曙 「最後まで聞きなさいよ!」
ンガッ!
潮 「ねぇ、灯ちゃん。見てわかるくらいに磨き残しがあるんだけど、どういうこと?」
曙 「・・・ごめんなふぁい。」フガッ
潮 「次、べーしてみて。」
曙 「んべ。」ベー
潮 「白い・・・くっさい。」
曙 「」グサッ
潮 「もう。お口の臭いは舌の磨き残しが原因だからちゃんと磨きなさいって何度も・・・あれ?」
ゴシゴシ ンヴァ!
曙 「ちょっと・・・!私、嘔吐きやすいんだから優しくしてよ・・・!」ウェ
潮 「灯ちゃん、鏡・・・。灯ちゃんの舌・・・。」
曙 「鏡?自分の舌を見ろって?何だって他人に見せない部分を気にしなくちゃ・・・。」ンベ
・・・エ?
曙 「ほのあふぁ・・・。」
潮 「撫子ちゃんと・・・ぱぱと同じ・・・。」
曙 「あった・・・あったんだ。私にも、血の証・・・!」フルフル
曙 「よかった・・・。よかったぁ!」ウゥ!
ウアアアア!!
鬼百合「でも、残念。あなたはあのひとじゃなかった。似てるのに。こんなにも、似てる。」ジー
黒霧 「“赤髪の勇者”って、紅い髪に碧の瞳をした青年のことでしょ?天使の羽根を模した刻印のある剣を携えてる・・・。」
鬼百合「知ってるの・・・!?」キラキラ
黒霧 「幼少期の彼のことはね。旅立った後のことは何も。そっちは寧ろ君のほうが詳しいんじゃないかな。」
鬼百合「そう・・・だったのかも、知れない。」
黒霧 「・・・彼の何を憶えてる?」
鬼百合「名前と輪郭、剣の刻印・・・後は。」
黒霧 「彼を愛していたこと?」
鬼百合「」コクリ
黒霧 「あの子も君を愛していたと思うよ。何しろ僕を反面教師にしていたからね。最期まで君を愛し抜いたはずさ。」
鬼百合「知ってる。よく、知ってる。最期まで・・・そう、最期まで。」オォォ
黒霧 「この世界にあの子はもう居ない。あの子の性格上、同じ世界で別の伴侶をつくるとは思えないし。」
黒霧 「何より、撫子を放っておくはずがない。」ポム
朧 「うにゅ?」
鬼百合「あのひとは、もう居ない。そう、居ないの。知ってる。知ってた。知ってたはず・・・なのに。」
鬼百合「忘れて、思い出して。忘れて、気づいて。何度も、何度も・・・!繰り返した。」
鬼百合「寂しい。そう、寂しいの。わたし・・・さびしいの!!」グワッ
黒霧 「」カチ
鬼百合「ねぇ、あなたは一緒に居てくれる・・・?」
黒霧 「澪、撫子は後ろに。」
漣・朧「あいあいさ。」サッ
黒霧 「パオラ、神州丸は?」
パオラ「ぐっすりね。」
神州丸「」Zzz
黒霧 「今直ぐ起こして。」
紫苑茜「3分ちょうだい。意識がはっきりするまで少し時間が要るわ。」ガポッ
神州丸「むがっ!?」
黒霧 「きっついなぁ、もう。」ハァ
五月雨「頑張れ、お父さ~ん。」
蓮華 「父上ならやれるぞ~。」
時雨 「なんかよくわかんないけど、ふぁいお~。」マダミミナリガ
黒霧 「どうしてこの人選にしたんだっけな・・・。」
鬼百合「わたしの想いを受け止めて・・・?」ボォ
黒霧 「それが愛情なら歓迎してたかもね。」パアァ
???「・・・と、こんなものかな。」
鬼百合「・・・!」ピタッ
???「やあ。君の探し人は、僕で合ってるかな?」ニコリ
鬼百合「」ガバッ
???「」スカッ
ア・・・レ?
鬼百合「ちがう。あのひとじゃ・・・ない。わたしの想いが、すり・・・ぬけたっ!」キッ
???「やっぱり空真似じゃ駄目か。」パアァ
黒霧 「何秒稼いだ?」
パオラ「20秒くらい?」
鬼百合「赦さないっ!」ズアッ
黒霧 「肉体を失ってなお外見に囚われている君の落ち度じゃないかな。」ガッ
鬼百合「!?」
ヨーセッ ドシャッ
鬼百合「かはっ!」
黒霧 「・・・ふぅ。」
パオラ「あんた、霊体に干渉できるなら始めから言っておいてよ。」
黒霧 「僕も今知ったよ。やれば何とかなるものだね。」
パオラ「怨霊を背負投げする奴なんて初めて見たわ。」
鬼百合「き・・・さまぁ!」ギラッ
黒霧 「そういうわけで、神州丸が覚醒するまでは僕が相手をするよ。死んだ者同士、仲良くしよう・・・。」ニィ
アアアアア!! ドォーン
時雨 「あー、やっとましになってきた。」トントン
五月雨「珍しいですよね、姉さんが何の不手際もなしに不調になるの。」
時雨 「ボクが貧弱みたいな言い方やめて?確かに君達と比べると打たれ弱いかもだけどさ。」
蓮華 「どうせ耳抜きを怠ったのだろう?己の無知を肉体の所為にするな。」フン
時雨 「・・・耳抜きって?」チラ
五月雨「こう鼻を抓んで・・・ふんってするんです。」タラッ
時雨 「そんな汚い作法、ボクは知らない。」ハナミズデテル
蓮華 「だが必要なことだ。醜く生きるか無様に死ぬか、ふたつにひとつだ。」
時雨 「どの道な気はするけど・・・で?ボク達は何をするのかな。ボクの回復待ちだったんだよね?」
五月雨「それは蓮華ちゃんから説明が。」ドウゾ
蓮華 「三笠の設計図を回収しに行く。父上が踏ん張っている間にな。」
時雨 「え~。この暗闇の中?」
蓮華 「だから貴様の回復を待っていたのだ。帰りの歩数を憶えておけよ。貴様だけが頼りだ。」
時雨 「その頼られ方は嬉しくない。」
鬼百合「わたしの前から消えて!!」グワッ
黒霧 「消えてとは随分だね。これで僕は君にとって義理の父に当たるんだよ?」ヒョイ
鬼百合「赦さない・・・わたしを弄んだこと。赦せない・・・あのひとの面影を残したその顔。切り刻んでやる!」
黒霧 「やれるものなら。」ニィ
アアアア!!
漣 「ぱぱんのノリが普段と同じすぎて笑えねー。なんぞ、これ。命のやりとりってこんなだっけ?」
紫苑茜「永く生きてると色々と感覚が狂ってくるのよ。あの子、肉どころか内蔵まで喰わせて息の根を止めるところあるから。」マネシチャダメヨ
漣 「真似したくてもできねーつの。」ケッ
紫苑茜「いーや、あんたならやる。やってのける。」
漣 「・・・それ、褒めてるんけ?」
紫苑茜「莫迦にしてるのよ。」
ピシャ パシャ
蓮華 「しかし酷い状態だな。」
五月雨「踝辺りまで浸水してますからね。しかも海水じゃないっぽい。」カキカキ
時雨 「海の底で海水の浸水って笑えないから。というか、これ触れても大丈夫なやつ?なんか、粘っこい気がするんだけど。」
蓮華 「知らん。速効性でなければ何とかなる。今は急ぐことだけを考えろ。」イクゾ
五月雨「ちょっと待ってくださいよ、蓮華ちゃん。私マッピングしながら進んでるんですから、ペースが変わると困ります。」
時雨 「そうだよ。ボクだって歩幅が変わると正確な距離の把握がって、マッピング?ねぇ、今マッピングしてるって言った?」
五月雨「言いましたけど。」ナニカ?
時雨 「ボクが歩測しながら進んでる意味は・・・?」
五月雨「私作のマップがより完璧なものになります。」キリッ
時雨 「いや、1マスの規格が違ったら寧ろ完成度落ちるじゃん。」
五月雨「まぁ、どっちかがミスったときの保険ってことで。」
戦棲姫「あの・・・施設の案内なら、わたし、できるよ?」
露姉妹「・・・。」
五月雨「さーて、余計なことは忘れて身軽にいきますかー。」ポーイ
時雨 「ボクの記憶容量返してくれないかなぁ・・・。」ハァ
赤城 「来て・・・しまった。」ズーン
ハァ・・・
赤城 「まさか飛龍さんがそっちの気があるひとだったなんて・・・蒼龍さんはともかくとして。」
???「」ムッ
赤城 「思えばふたりの距離感は親友というには少しズレていたような・・・。今、合点がいきましたね。」ヤレヤレ
赤城 「きっと毎晩お楽しみだったのでしょう。」トオイメ
???「毎晩ではないからぁ!!」クワッ
???「ちょっ!蒼龍さん!?」
赤城 「やはり居ましたね。」スタスタ
ガシ
蒼龍 「え・・・?あれ?」
赤城 「さぁ、ともにいきましょう・・・蒼龍さん。」ニッコリ
蒼龍 「いやだあああああ!!」ダッ
赤城 「っ!?往生際が悪いですね!潔く道連れになってください!」グイ
蒼龍 「嫌だよ!こういうときの飛龍って恐いんだもん!自ら立候補した赤城さんが犠牲になればいい話でしょ!?」
赤城 「事情を知らない私を嵌めたのは貴女達ではないですか!!」
蒼龍 「止める前に突っ走られたらどうしようもないって!」
大鳳 「ふたりともっ、落ち着いてくださ・・・あ。」
蒼龍 「なに?どうしたの・・・あ。」
赤城 「?なにか・・・」ピシィ
飛龍 「何よ。」
大鳳 「ちゃんと服を着てください!飛龍さん!!///」
飛龍 「いいでしょ、別に。どうせ直ぐに脱ぐんだし。最低限の配慮はしてるし。」
大鳳 「確かに大事な所は見えてませんけど・・・。パンツ一枚に首からタオルは駄目です!乙女として!せめて巻いてください!」
飛龍 「タオルは巻くより羽織るほうが実は防御力たかい・・・」
大鳳 「いいから!部屋に戻ってください!」グイ グイ
・・・! ・・・マル!
神州丸「・・・ん。」
パオラ「いい加減に起きなさい!」コノッ
スパーン! アウッ
神州丸「痛い・・・。」ヒリヒリ
紫苑茜「それはこっちの科白。」ジンジン
パオラ「紫苑ちゃん・・・。」ウワァ
紫苑茜「何よ。文句ある?」
パオラ「別に無いけど。」
漣 「今の、あかりんにそっくりだったべな。」
朧 「母娘だもの。寧ろあかりんがせん姉にくりそつなのね。」
黒霧 「漸くお目覚めかな。随分とお寝坊さんなんだね。」
神州丸「薬を盛られた所為。そうじゃなきゃ仇の前で眠りこけたりしない。」スッ
黒霧 「僕達は薬を盛られたとしても眠ったりなんてしないけど。」
神州丸「一緒にされても困る。私は普通の艦娘。」
黒霧 「・・・そうかもね。」
神州丸「後は任せて。鬼百合は、私が滅する。」ギラッ
鬼百合「また・・・あなた?雷の娘。恐い・・・雷の、娘。」
神州丸「撃たれて焦げろ、薄弱の亡霊。」バサッ
イカヅチヨ!
朧 「・・・。」ムー
漣 「どした。むつかしい顔して。生理け?」
朧 「艦娘になってから来た憶えがない。」
漣 「そだな・・・て、艦娘になる前は来とったんかい。」マジカ
朧 「母になる準備は万端。」ムフン
漣 「子を育てる甲斐性が無いっちゅーの。」
朧 「ぱぱんが居るさ。」
漣 「じいじに集るとは親不孝者め。ま、我が子の不幸に比べれば軽いものかね。」
紫苑茜「あんた達、およそ小学生のする会話じゃないわよ・・・。」
漣・朧「自分、進んでるもので。」
黒霧 「僕はまだ孫の顔を見る心算は無いんだけどな。」
漣 「大丈夫さぁ。相手がいねーから。」ハッハー
朧 「ぱぱんが居るさぁ。」ヒャッハー
蓮華 「そっちはどうだ?見つかったか。」
五月雨「それらしきものは何も~。あ、プルタブみっけ。」ヒョイ
時雨 「真面目に探しなよ・・・。」ンモウ
戦棲姫「何を、探してるの?」
時雨 「三笠の設計図だよ。蓮華ちゃんがどーしても回収したいんだってさ。」ゴソゴソ
戦棲姫「それなら・・・」
五月雨「あったぁ!」ウオー
蓮華 「本当か!」
五月雨「さっき見つけたプルタブの本体!いや~、ドクペとは趣味が良いですな~。」ナハハー
マジメニサガセ!! ゴメンクサイ!
時雨 「ぶれないなぁ、五月雨は・・・。」ハァ
時雨 「ところで、さっき何か言いかけてなかった?」
戦棲姫「うん。設計図かどうかはわからないけど、そういう大事なものは全部、彼女の部屋に・・・」
ネ級 「ン。」つ紙束
・・・エ?
ネ級 「モッテキタ。セッケイズ。」ン
時雨 「いつの間に・・・。」エェ
ネ級 「コレデイイ?」
時雨 「ん~。どうだろ。ボク、こういうのはわからないからなぁ。」ウーン
蓮華 「貸せ、眠。」パシ
五月雨「言う前に・・・。」セッカチメ
ペラッ ペラ・・・
蓮華 「確かに設計図だな。」
ネ級 「ジャア・・・」
蓮華 「だが違う。これは私の求める設計図ではない。」バサ
五月雨「あーあー、要らないからって床にぶちまけるの止めてくださいよ。誰が片すと思ってるんですか。」ンモー
蓮華 「ネ級よ。貴様、何か隠していないか?私達に見られて困るものでもあるのか。」
ネ級 「・・・。」
蓮華 「この設計図は確かに三笠のものだ。但し、艦娘としてのな。」
時雨 「三笠は艦娘じゃないの?」
蓮華 「艦娘は培養などしない。だが、此処で造られていた三笠は培養器で強制的に成長させるタイプのものだった。」
蓮華 「小暮 菫こと紫苑 茜が嘗て研究していた擬似深海棲艦に近いものだ。丁度、お前達のように・・・違うか?」
ネ級 「・・・。」コキッ
五月雨「」ジャキン
蓮華 「言っておくが、私は強いぞ?」ニィ
ネ級 「ばいちゃ。」バビューン
五月雨「・・・逃げた!?」
蓮華 「全力で追えー!!」ビッ
マテコラー!
時雨 「・・・君は、一緒に行かなくていいの?」チラリ
戦棲姫「うん。逃げる理由も無いし。」
時雨 「・・・そっか。」スッ
戦棲姫「書類のある部屋、行く?」
時雨 「此処でやることもないし・・・お願いしちゃおっかな。」ニッ
コッチ ツイテキテ ハイハーイ
神州丸「はぁ・・・はぁ・・・。」
鬼百合「うぅ・・・。」フラフラ
神州丸「んっ!!弾けて唸れ、“稲妻”!」バッ
ピシャアア!!
紫苑茜「陰陽の術には随分と派手なものが多いのね。」
朧 「ぴかぴかごろーん。」ウオー
パオラ「自然現象を操るものはそうもなるわよ。殆ど魔法みたいなものだもの。」
紫苑茜「魔法ねぇ・・・。」
漣 「せん姉は加勢しなくていいんか?」
紫苑茜「あんた、わたしを名指しするなんて舐めた口きいてくれるじゃない。」ピキッ
パオラ「まぁ、指摘としてはごもっともよね。」
紫苑茜「そうね。戦力を増強するなら、個々を鍛えるよりも数を増やしたほうが遥かに効率が良いもの。でもね。」
朧 「これは意地と意地のぶつかり合いなのれす。」ムフン
紫苑茜「そういうことよ。」
パオラ「勝敗に因らず、あたし達が割って入るべきではない。そういうことにしておいてちょうだい。」
鬼百合「」シュー
神州丸「・・・しぶとい。」チッ
鬼百合「思い・・・出した。雷の、術。恐い、雷の・・・術。陰陽師の、一族。」
神州丸「はっ。今更、遅いのよ。失ったものは還ってこない。」
鬼百合「そう。還ってはこない。でも、また会えた。わたしの愛しい娘。」
神州丸「・・・はあ?」
鬼百合「あなたがお姉ちゃん。そして、あなたが・・・。」スッ
朧 「おう?」
鬼百合「愛する娘。撫でし子よ・・・。」
神州丸「何を莫迦な・・・。」ハッ
鬼百合「あのとき、わたしは大切なものを奪われて、殺された。あのひとも必死になって取り戻そうとした。」
鬼百合「でも、結局戻ってこなかった。何もかも・・・。」
「大切なものが奪われた、あの日。わたしの足許には力無く横たわった女の骸があった。」
「開け放たれた扉の外には雨が壁をつくり、その奥には黒い影が揺れて見えた。」
「わたしはその影を追った。雨粒がすり抜けていく感覚を気にも留めず。」
「でも、駄目だった。力の無いわたしは簡単に封じられ、あの娘達が捧げられるのを見ていることしかできなかった。」
「あの娘達が捧げられたのは時の祭壇。過去か、未来か。そのどちらかへの一本道が繋げられた時空の歪み。」
「彼女達が飛ばされたのは数百年先の未来。記憶を奪われた怨霊が復活し、災いを振りまく時代。」
「これは彼等の復讐。彼等を裏切り、役目を放棄したわたしへの・・・自分の幸せばかりを追い求めたわたしへの復讐。」
「大切な家族を巻き込んだわたしの・・・罪。」
神州丸「そんな創り話を私が信じるとでも・・・?」
鬼百合「信じない。信じるはずがない。そんな救いを彼等が許すはずがない。だから、わたしが救う。」
神州丸「ごちゃごちゃと・・・!いい加減、ウザいんだよ!!」カッ
鬼百合「あなたはきっと耐えられない。」
神州丸「これが私の全力・・・!」ゴゴゴ
鬼百合「真実という絶望に。」
神州丸「邪を討ち滅ぼせ・・・。」バチッ
鬼百合「そのときは一緒に・・・」
神州丸「“神の御雷”!!」ズバァアア
鬼百合「連れていってあげる。」ニタァ
朧 「」ゾワッ
ズガァァン!!
神州丸「はぁ、はぁ・・・。やっ・・・っ!?」ガクッ
神州丸「っぁ・・・!ぁあぁあああああ!!」バタバタ
???「今、楽にしてあげる。」スゥ
神州丸「ぁ・・・。」
パタ
???「“桔梗”、あなたはこっち。」ユラッ
ナデシコ・・・
朧 「」ビクッ
???「あなたはまだそっち。」クスッ
朧 「」サッ
黒霧 「おっと。」
???「ふふ・・・。撫子のこと、よろしく頼みますね。」スゥゥ
黒霧 「奪いに来たって、奪わせないさ。」
タノモシイカギリネ・・・
漣 「逝っちまったな。」トオイメ
紫苑茜「見事に魂だけね。」
パオラ「皆に何て説明しようかしら。」ヨイショット
パオラ「うわ、軽っ・・・。この娘、ちゃんと食べてたの?」
紫苑茜「それを管理するのがあんたの仕事でしょうが。」
パオラ「そーでした。」
漣 「あーあー、慣れないねぇ。この人が死んだ後のゆる~い空気。神経疑っちゃうね。」
紫苑茜「実際、そうなのだから何とも言えないわね。」
パオラ「あたしはこうなることを承知で神州丸を拾ったわけだし。覚悟はとっくに出来てたわ。」
漣 「つまり異常なのはせん姉ってことだな。」ウンウン
紫苑茜「パオラ・・・?」
パオラ「何よ。紫苑ちゃんが色んな意味で頭おかしいのは周知の事実でしょ?」
紫苑茜「そうかもね。だけど、あんたの頭が緩いのも周知の事実だってことを忘れてもらっちゃ困るわね。」フフフ
パオラ「へぇ。やろうっての?」ピキッ
紫苑茜「あんた、わたしに勝てたことないの憶えてる?」ニィ
漣 「絶対、汚い手を使ってんな、せん姉。」ヒクワー
朧 「おぉう。」フルフル
黒霧 「大丈夫だよ、撫子。少なくとも天命を全うするまでは、君を護り抜くから。」ポンポン
朧 「条件付きなのが怖いのね。」ギュ
黒霧 「僕は嘘を吐かないからね。」フフ
サテ
黒霧 「少し酷な質問をするけど、自分の出生を知って、どう思った?」
朧 「・・・よく、わからない。うちの家族は、ちゃん澪と姫姉にあかりんだけだと思ってたのん。」
朧 「せん姉と出会って、ぱぱんがぱぱになって、家族になって。本当のママは幽霊さんで・・・。」
朧 「撫子、大ぱにっく。」ムムム
黒霧 「そう・・・。」ウリウリ
朧 「うにゅ~。」
黒霧 「存分に悩むといい。誰と誰が家族かなんて、本人が納得してさえいれば後はどうだっていいのだから。」
黒霧 「さぁ、次は澪の隠し事を暴く番だ。」
漣 「おうお~う。本人を前にして随分な事を話してくれてんじゃね~の。」アーン?
黒霧 「自分だって知りたいと思っているくせに。」ニィ
漣 「・・・。」ケッ
黒霧 「さぁ、文書保管室を探そうか。三笠関連の報告書も、此処になら残っているはずだ。」
マタンカコラー!
蓮華 「くそ!何処に消えた!」チッ
五月雨「蓮華ちゃん、初めての場所ではしゃぐの止めましょう?戻れなくなりますよ?幼児の如く。」
蓮華 「誰がミニマムどチビかっ!!」クワッ
五月雨「言ってませんて。」ドウドウ
蓮華 「こうなったら二手に分れるぞ。お姉ちゃんは向こうを頼む!」
五月雨「あいあーい。」
・・・
ネ級 「子供ってほんっとしつこい。」ハァ
五月雨「ですよね~。蓮華ちゃんってばいつまで身長ネタを擦る心算なんでしょう。」ヤレヤレ
ネ級 「・・・え。」
五月雨「あ、ども。」ペコッ
・・・エ?
ネ級 「なんで・・・。」
五月雨「なんでと言われましても・・・私、気配には聡いですから。知っている気配を捜すくらい造作もないですよ?」
ネ級 「それ何てチート?」ハァ
五月雨「ちーと?」ウン?
ネ級 「わからないならいいよ。・・・で?私をどうするつもり?」
五月雨「さあ?」
ネ級 「さあって。」
五月雨「だって私、貴女が何者かなんて知りませんし。それがわからないことには扱いも決められませんし。」
アッソウ ハイ ソウナンデス
ネ級 「じゃあ言うけど。私は・・・」
ガシ ・・・ン?
蓮華 「見つけたぞ、なんちゃって深海棲艦・・・!」ニタァ
ネ級 「ヒッ」
五月雨「わーお、最悪のタイミングぅ。」アハハ
漣 「なー、ぱぱ~ん。うちのこと何処まで知ってんだ~?」
黒霧 「君と同程度には。」
漣 「俺が把握してる程度をなんで知ってんだよ。」ボソッ
黒霧 「世界の歴史に記してあったから。」
漣 「なーる。そんなことまで書いてあんのかよ。詳細まで書く容量なんてないって話じゃなかったのかよ。」ケッ
朧 「ちゃん澪、都合悪くなると露骨に態度悪い。」
黒霧 「そりゃあ知られたくないだろうさ。自分の父親が保身の為に愛人とその娘に砲を向けるような男だなんて。」
漣 「言うなよ!俺だって仮説程度にしか思ってなかったよ!今ので確信に変わったよ、チクショウ!!」ウラァ!
黒霧 「今のもただの仮説だよ。証拠はこれから、これから。」
漣 「へっ!殆ど確信してっから言ったくせに。」
黒霧 「ま、そうとしか考えられないよね。三笠の照準、不可解な暴走、試験場所と時間の選定。何もかも都合が好すぎる。」
漣 「裏で糸を引いていた黒幕が居る。それは研究所の関係者か、若しくは海軍の高官か。将又その両方を満たす・・・」
黒霧 「当時の研究所長 兼 軍事開発部局総括。後に海軍元帥の息子となる者。」
漣 「長瀬 龍興、さいっこうにくそったれできんっきんに冷めたエリート様だ。」
時雨 「ほんとにこの中から探すの・・・?」
蓮華 「当然だ。此処にあることは確かだからな。」
時雨 「本当に~?ボクは無い気がするけどな~。」
五月雨「インデックスを付けているくせに全く整理されてませんからねー。何故標本の棚にグラビア写真集が・・・。」ペラッ
五月雨「わ~お、あだるてぃ~。」キャー
時雨 「ここまで大きいとなんか色々大変そう。」ワー
五月雨「私達はスレンダーでよかったですねー。」
時雨 「そうだねー。」
五月雨「・・・。」
時雨 「無理、しなくていいんだよ?」
五月雨「一度でいいから、おっぱいの所為で肩が凝ると言ってみたいっ。」クッ
ネ級 「そんな時代もあったわね~。」トオイメ
五月雨「研究者というのは皆おっきいひとばっかりなんですかっ!!」チクショウメ!
時雨 「そんなことはないと思うけど・・・。」アハハ
蓮華 「おい。今、私を見ながら言ったか。」ゴゴゴ
時雨 「ミテナイデス」
時雨 「それにしても、まさかネーちゃんが三笠に関する研究の責任者だったとはね~。」ゴソゴソ
五月雨「どうりで人類側に友好的なわけです。」ペラッ
ネ級 「敵じゃないってわかってくれたなら、この縄解いてくれない?」ギチッ
蓮華 「それはできない相談だな。」
ネ級 「別に逃げたりしないから。」
蓮華 「そういう問題ではない。そもそもの前提が違うという話だ。」ゴトッ
五月雨「あー、そうですね。私達って、人類側でも深海側でもないんでしたっけ。」ペラ
ネ級 「何それ。共生を目指して仲良しこよしってわけ。」フン
蓮華 「そう見えるか?」
ネ級 「だってそうじゃない。深海棲艦の貴女と艦娘の貴女達が一緒になってる。」
五月雨「まぁ、姉妹ですから。」オッ コレハナカナカ
時雨 「五月雨、いい加減その写真集閉じて。脳に毒だから。」
ア ハイ
ネ級 「姉妹?深海棲艦と艦娘が?そんなことあるわけ・・・!」
ネ級 「ねぇ・・・小暮 菫って名前に聞き覚え、ある?」
五月雨「小暮・・・?」
蓮華 「知らん名だな。」
時雨 「・・・ボク、その名前知ってる。地下の研究所で見つけた書類に書いてあった。」
蓮華 「なんだと?」
五月雨「地下の研究所といえば、神命さんが迷い込んで一ヶ月の間彷徨っていたとかいうあれですか。」
時雨 「うん。其処で行われていた研究の責任者が確か・・・小暮 菫だった、気がする。」
ネ級 「やっぱり。だから深海棲艦と艦娘が姉妹に・・・。得心がいったわ。」
時雨 「ごめん。何も繋がらないんだけど、その小暮さんがしてた研究ってクローンに関することじゃなかった?」
ネ級 「始めはね。だけど、途中から変わったのよ。擬似的に深海棲艦を創り出す研究に。」
五月雨「で、ネーちゃんさんはその研究成果を利用して深海棲艦になったと。」ナルホド
ネ級 「そう。貴女もそうなんでしょ?」
蓮華 「私か?私は深海棲艦の母から産まれた純然たる深海棲艦の娘だぞ。」
五月雨「いや、お父さんの血が入ってる時点で純然ではって遺伝子的な親子関係は無いんでしたっけ。」
ネ級 「待って。深海棲艦が出産?冗談やめてよ。性の区別が無いのに生殖機能が備わってるとか生物の理論に反するんですけど。」
蓮華 「事実なのだから仕方があるまい。それよりもだ。三笠の設計図は何処にある。それからコイツの正体についても吐け。」ズイ
ネ級 「近い・・・。」
戦棲姫「ワタシ?」
五月雨「それはほら、あれじゃないですか?小暮 菫とかいう・・・」
紫苑茜「それ、わたしだから。」ヌッ
五月雨「・・・はい?」
紫苑茜「だから、小暮 菫はわたしが人間やってた頃の名前なの。」オワカリ?
五月雨「わかりたくないですね。」シラー
時雨 「これがボクの生みの親か。」シラー
ネ級 「先輩、太りましたね。」
紫苑茜「はったおすわよ、あんた達!」
黒霧 「で、感動の再会を果たしたと。」
パオラ「よかったわね、菫ちゃん。」
紫苑茜「そーね。可愛い後輩が生きていてくれたことは喜ばしいわよ。でもね・・・。」ワナワナ
ネ級 「ふかふか~。」ムギュー
紫苑茜「こんな変態になってるとは思いもしなかったわ!離れなさい!重い!」クワッ
ヤーダー エエイ ウットウシイ!
戦棲姫「・・・。」
蓮華 「」ジー
五月雨「どうしたんですか?蓮華ちゃん。そんなに戦艦棲姫さんを見詰めて。」
蓮華 「いや、何処か母上に似た雰囲気を感じると思ってな。」ムー
五月雨「そりゃ同じ深海棲艦なら似ることもあるでしょうよ。」
蓮華 「お姉ちゃん、それは人間誰しも似た部分はあると言っているのと同じだぞ。」
五月雨「ああ。これは失敬。」ポン
紫苑茜「・・・あんた、若しかして南方ちゃんのデータを使ったりしてないでしょうね。」コソッ
ネ級 「南方棲戦鬼のデータですか?使いましたけど。」
紫苑茜「はぁ・・・。どうりで南方ちゃんの遺伝子情報やらのデータが無くなってたわけよ。勝手に持ち出したわね、あいつら。」チッ
戦棲姫「・・・。」
黒霧 「・・・?」
戦棲姫「///」ポッ
五月雨「はっ!?いけません!戦艦棲姫さんが遺伝子的にお父さんに惹かれてます!」
蓮華 「なんだと!?子は親に似たひとを好きになるというのは本当なのだな!」
時雨 「その理論だとボクも他人事じゃないんだけど・・・。」
蓮華 「つまり私の恋心もおかしくなどない!」グッ
露姉妹「それはない。」キッパリ
ガッデェム!!
紫苑茜「それにしても、あんた。わたしの研究成果報告書を持っていたとはいえ、よくもまあ深海棲艦になろうと思ったわね。」
ネ級 「遠くない未来、見捨てられることがわかっていましたから。生きるための知恵です。」エッヘン
紫苑茜「その知恵、目的が違うわよ。」
ネ級 「いいんです。使えるなら何でも。」
五月雨「まるでお母さんですね。」
ネ級 「でしょう?伊達に先輩大好きな私じゃないのですよ。」フフン
紫苑茜「本当にただ“使えるものは何でも使う”主義なだけでしょうに。」
ネ級 「ぎくり。」プイ
時雨 「うわ。今の反応、五月雨そっくり。紫苑さんと五月雨って本当に母娘なんだね。」
五月雨「他人の空真似でそれを悟られるのは屈辱なんですが・・・。」
紫苑茜「所詮はあんたのそれも空真似だってことでしょう?」
五月雨「あー!!いっけないんだー!娘に対して、なんっちゅーことを。いっけないんだー!!」
紫苑茜「あーはいはい。折角の気遣いを無碍にして悪かったわね。でも、わたしにそんな気遣いは無用よ。」テシ
五月雨「あだす。」アウッ
紫苑茜「娘が母に似るとは限らないもの。下手に真似るくらいなら自分らしく在りなさい。」
五月雨「うーい。」
紫苑茜「返事は“はい”。」
五月雨「Si.」
紫苑茜「調子に乗るのはこの口かしら。」グイ
五月雨「いひゃひゃひゃひゃ!ひれはう!くひびるきれはうっ!」
パオラ「あたし、こんな自滅道まっしぐらの紫苑ちゃんなんて見たことないんだけど・・・似てるの?」
黒霧 「我が道を往くって意味ではそうなんじゃない。」
黒霧 「ところで、ネ級。」
ネ級 「なになにさ。」ダラーン
紫苑茜「重い・・・!」イラッ
黒霧 「三笠の運用試験に関する指示書の在処に心当たりはあるかな。」
ネ級 「あー、あれ。勿論、ありますよー。」ブラーン ブラーン
紫苑茜「くっ!こいつ!」グギギ
黒霧 「・・・教えてもらえると助かるんだけど。」
ネ級 「燃やしちゃった。」ニヒー
黒霧 「・・・。」
漣 「」スッ
朧 「ちゃん澪、すとっぷ。」ガシ
ネ級 「だって、そうでしょ?あーんな危ないもの持っておきたいわけないじゃん。元々そういう指示だったし。」ヒヒッ
黒霧 「そう・・・。」
ネ級 「・・・ていうのが、表向きの話。本当はちゃんと隠してるよ。私もあいつ嫌いだったし。」
漣 「あ?」
ネ級 「おっとぉ。そんな瞳で見ないでほしいなぁ。ていうか、今更あんなものを引っ張り出してどうするわけ?裁く相手もいないのに。」
漣 「裁く相手ならいるだろうがよ。」
ネ級 「・・・へぇ。君、訳ありだね?」ニィ
漣 「長瀬龍興。三笠を使って母さんを殺しやがった、極悪人がよぉ。」
時雨 「もういないよ。」
漣 「・・・は。」
時雨 「彼はもう亡くなってる。だから今の元帥は真宵さんなんだよ。」
漣 「は・・・はっ。なんだよ・・・くそ。なんなんだよ!ちくしょう!!」
漣 「てめぇ勝手に楽になってんじゃねぇよ!くそが!!母さんがどれだけてめぇを・・・!」
漣 「てめぇを待ってたと思ってんだああああ!!」
朧 「・・・澪。」
ネ級 「ふーん。」ニタニタ
紫苑茜「もう無理、限界。」フラッ
ネ級 「へ?」ガクン
ビターン! イッツァ!!
紫苑茜「昔は小っこくて可愛い後輩だったのに、知らない間に何処ぞの筋肉達磨よろしくなっちゃって・・・。」グデーン
ネ級 「頭・・・!頭、打った!」クゥゥ
紫苑茜「あんた、これからどうするの。」
ネ級 「どうって、先輩。この状況、もっと他にかける言葉があるでしょ。」
紫苑茜「無いわよ。」
ネ級 「おおっと。はっきり言っちゃいますねぇ。」ナハハ
紫苑茜「だって、そうでしょ?わたし、ヒトに深海細胞を移植する研究はしていても、その逆はしていないもの。」
ネ級 「そうですね~。」
紫苑茜「ヒトの細胞を侵食して同化する深海細胞を除去することはほぼ不可能。わたしならどうにかできないでもないけど・・・。」
ネ級 「遠慮しておきますよ、先輩。」ニヒー
紫苑茜「あっそ。ならもういいわ。時雨、帰るわよ。負ぶってちょうだい。」ン
黒霧 「しがみつく力も残っていないような人はこっち。」ヨッコイショ
紫苑茜「ちょっと。素直に抱えてくれるのは嬉しいけど、重い物を持つような掛け声はやめてもらえるかしら。」ヒクッ
黒霧 「事実、【ピー】キロは重い。」
紫苑茜「なんで知ってるのよ!?」
漣 「ブツブツ」
朧 「ちゃん澪・・・。」オーウ
五月雨「はてさて、どうしたものですかねぇ。」
蓮華 「実行犯も黒幕も、怨み言を並べるどころか、その姿さえ見ることが叶わなかったわけだからな。」
五月雨「時間の問題だったにしろ・・・ですよね~。せめて怨み言だけでもぶつけられていれば・・・。」
蓮華 「そこのところどうなんだ?復讐に生きた先輩としては。」チラ
時雨 「・・・あ、ボク?」
蓮華 「お前以外に誰がいる。」
時雨 「そう言われてもなぁ。今になって思えば、なんで復讐しようとしたのかもよくわからないし。」ウーン
五月雨「大好きなお姉さんを救えなかったお父さんに対する八つ当たり・・・とか。」
時雨 「まぁ、それが理由だったんだろうとは思うんだけどさ。」ムムム
蓮華 「なんだ。貴様にしては歯切れが悪いではないか。」
時雨 「そう。そうなんだ。ボクらしくないんだよ。なんだかこう、自分じゃない何かが頭の中で蠢いてるような・・・。」グルグル
五月雨「・・・信頼のスイッチ。」ア
時雨 「それだ!洗脳的な効果は無いとか言っておいて、何さ。しっかり洗脳されてるじゃないか!」モンクイッテヤル
蓮華 「その割に晴れやかな表情をしているように見えるが。」
五月雨「愛情の隠れ蓑にできる理由が出来てはしゃいでるんじゃないですか。」ジト
蓮華 「あぁ、そういうことか。」フッ
時雨 「そういうことか、じゃないからぁ!!」
五月雨「ということはですよ。澪ちゃんもお父さんとちゅっとやってしまえば解決なのでは?」ムチュット
蓮華 「それはもうしているだろう。」
五月雨「そうでした。」
時雨 「そもそも今回は復讐の対象がにぃにじゃないから意味ないんじゃないかな。」
五月雨「ふむ。では本人であればいいわけですね。」
蓮華 「おい、まさか死体漁りをするなどとほざく心算ではないだろうな。」
五月雨「そのまさかですが。」
時雨 「死体に口吻とか絶対に嫌なんだけど。というか、今頃はもう骨か灰になってるって。」
五月雨「将校の遺体安置場所は決まってますから、いけるかと思ったんですけどね~。やっぱり無理ですかね。」
時雨 「澪ちゃんの立場になって考えてみなよ。」
五月雨「お父さんが相手ならいけます。」キリ
蓮華 「それは同意せざるを得ないな。」ウム
時雨 「訊いたボクが莫迦だったよ。」ヤレヤレ
ネ級 「みんな、行っちゃったね。」フゥ
戦棲姫「よかったの?一緒に行かなくて。」
ネ級 「ええ?お姫様を放ってひとりで幸せになれって言うの?無理無理、そんな薄情なことできないわよ。」ヒラヒラ
戦棲姫「ネーちゃんが行くなら、ワタシもついていった。」
ネ級 「・・・ごめん。私の所為で姫まで巻き込んじゃった。」
戦棲姫「ち、ちがうの!そういうことを、言ってるんじゃなくて・・・。」シュン
ネ級 「あっはは。わかってるわよ。ちょっとからかってみただけ。」ニシシ
戦棲姫「ん~!もう、ネーちゃん?」ムゥ
ネ級 「でも、片付けは必要でしょう?」ピッ
プシュー
ネ級 「どうせいなくなるんだもの。だったら最期くらい、自分のやったことに責任を持たなきゃ。」
ゴポッ
ネ級 「惨めったらしく生き存えていないで終わりにしましょうよ。ね?元次期元帥候補さん。」コン
???「」ゴポポ
ザパッ
五月雨「ふぅ・・・。生きてるって素晴らしい!」イェー!
蓮華 「くそ。深海棲艦である私より速いなんてどうかしているぞ、お姉ちゃん。」チッ
時雨 「ほんとどうかしてる。五月雨をこんなにした誰かさんの頭が。」ハァ
紫苑茜「酷い言われようね。」
黒霧 「素質を伸ばして実力を勝ち取ったのは五月雨なのにね。」
五月雨「え。私には問答無用で扱かれていた記憶しか・・・。」アレ?
黒霧 「ま、それに平然とついていく君も大概だけど。」
時雨 「露骨な話題逸らしには屈しませ~ん。」イー
パオラ「あんた達、随分と元気が有り剰ってるみたいじゃない。何なら代わりに神州丸を背負ってくれてもいいのよ?」
黒霧 「遠慮しておくよ。」
紫苑茜「上司なんだから部下の面倒は最後まで見なさい。」
パオラ「意識があるのとないのでこうも重さが違うとは思わなかったわ。」クッ
五月雨「背負っているものは同じはずなのに不思議ですね~。」スーイ
時雨 「それが命の重さってやつなのかな。」
蓮華 「だとすると死後のほうが価値が高いことになるが?」
時雨 「人の評価ってだいたいそういうものじゃない?」
朧 「さっきから不謹慎な話題のオンパレードなのね。」
思えば、どうしてこんな研究を続けようとしていたのか。
確かそれは先輩への嫉妬だった気がする。
飛び級で学位を修め、博士号まで得た私は神童と称されるに相応しい経歴と研究成果を持ち合せていた。
それが研究機関に入ってみれば、私を遥かに超える天才がいた。
年齢は少し上。大学院どころか、大学にだって陸に通っていないという彼女は独学で神の如き才を伸ばしてきたらしい。
そんな彼女が私には妬ましかった。
私が頭を悩ませる難問を、彼女は一声で解決してしまう。
私には思いもつかない莫迦な発想で、彼女は無二の成果を挙げて魅せる。
経験が違いすぎる。
彼女の言葉、思想、その背景に在る経験はとても人ひとりの人生のものとは思えない。
嘗て神童と呼ばれた私をしてそう言わしめる彼女が、どうしようもなく妬ましかった。
だけど同時に憧れもした。
彼女の傍に居れば、彼女の考え方を吸収できたなら、私はもっと高みにいける。
誰も到達し得なかった領域に踏み込むことができる。
彼女は超えるべき目標であり、希望だった。
私にもまだ登り詰める高みがあるのだと信じさせてくれたから。
だから私は彼女の研究を継いだ。
彼女の意志は関係なく、勝手に・・・。
結局、彼女以上の成果は挙げられなかったけれど。
嗚呼、私には何が足りなかったのだろう。
私の研究は欠陥ばかりだ。
道徳を捨て、自分の寿命も捧げて、そして得たものは何だろう。
くそったれな共犯者?大切な家族?
それも直に失う。
せめて、一緒に逝こうぜ。この世界も滅茶苦茶にした罪を背負って、人知れず。
一緒に逝っておくれ。記憶の中で愛したひとと巡り会えた喜びを胸に秘めたまま。
・・・ォォン!!
時雨 「・・・今、何か聞こえなかった?」ピク
五月雨「さあ?聞こえはしませんでしたけど、心無しか揺れたような気はします。」フム
紫苑茜「海の上ならそりゃ揺れるでしょうよ。」
五月雨「いや、そうでなくてですね。」
黒霧 「みんな、移動するよ。巻き込まれたくなかったら全速力でね。」
時雨 「巻き込まれる?何にさ。」
黒霧 「空気爆弾。」
時雨 「・・・何それ。」
蓮華 「深海と海面の圧力差を利用した圧縮空気の爆弾だ。水圧から解放された気泡は木造の船くらい軽く沈めるぞ。」
黒霧 「多分、研究施設が爆破された。書庫には空気爆弾の設計資料もあったから、若し在庫を持っているとしたら・・・。」
時雨 「ら?」ゴクリ
蓮華 「此処ら一帯に巨大な泡が何発も上がってくるぞ。全員もれなく空の旅にご招待だな。」
黒霧 「但し、吹き飛ばされて叩きつけられるだけのね。」
パオラ「じゃ、あたしは空に逃げるから、各々どうにかしてちょうだい。」フワッ
五月雨「あ!ずるいですよ、パオラさん!私も空を飛んでみたいです!」
蓮華 「お姉ちゃんの装甲なら吹き飛ばされても耐えるんじゃないか?艦娘ロケットが空を舞うぞ?」
五月雨「傷は付かなくても痛いんです!前にも言いましたけど!」
時雨 「にぃに、三人も抱えて逃げ切れるの?」
黒霧 「能力を使えばどうとでも。爆発の瞬間だけ“崩壊”で霧化して“再構築”すればやり過ごせるし。」
時雨 「つまりヤバいのはボクだけか。んもう!こんなハリウッド映画みたいなスリルは要らないったら!!」
グォォォ!! イヤアアア!! オネエチャンガフキトバサレタ!
三隈 「それでこのざまですの。」
五月雨「このざまとは失敬な。空の旅から無傷で帰還した偉業を褒め称えてもらいたいものですよ。」フンダ
時雨 「そのとばっちりでびしょ濡れになったボクには謝罪してほしいものだけどね。」ジト
五月雨「・・・ごめんなさい。」
時雨 「いいよ、もう。五月雨に迷惑をかけられるのはいつものことだし。」ヤレヤレ
五月雨「あっれ。私ってそんな姉さんに迷惑かけてましたっけ?」
時雨 「いつも変なノリに付き合ってあげてるでしょ?」
五月雨「いや、ノリノリで乗っかってくるじゃないですか。」
時雨 「そんなことよりお風呂いこうよ。蓮華ちゃんはとっくに行っちゃったよ。」スタスタ
五月雨「今、明らかに話題を逸らしましたよね。お風呂のことになると本当に行動が早いですね、蓮華ちゃんは。」イツノマニ
マッテクダサーイ
三隈 「相変わらず自由な方達ですの。これもクロさんの教育の賜物で・・・あら?」クロサンハ?
紫苑茜「しーちゃんなら部屋に戻ったわよ。事の前に身を清めにね。」
三隈 「前言撤回ですの。これはただの遺伝ですの。」
ガチャ
黒霧 「・・・。」
長門 「どうした。入らないのか?」ン?
キィ
黒霧 「」チラ
長門 「此処は司令室で合っているぞ?お前の部屋だ。遠慮せず入ってこい。」
黒霧 「遠慮ではなくて混乱してるんだけど。なんで居るの?」
長門 「出立前に相談したではないか。この部屋のシャワーを借りてよいかとな。」
黒霧 「・・・そういえば。だとしても部屋主不在の中、勝手に使うのは如何なものかと思うけど。仮にも上官だよ?」
長門 「鍵を掛けていない黒が悪い。」
黒霧 「鍵・・・壊れてるんだけど。」
長門 「なんだと。それはいけないな。直ぐに修理しなければ。」ウンウン
黒霧 「ま、覗かれても平気なら僕はいいんだけど。」ヌギ
長門 「私を抱く気か!?」サッ
黒霧 「真っ先に出るのがそれってことは覚悟はしてたって解釈でいいのかな。全裸だし。じゃ、シャワー浴びてくる。」パタム
長門 「パンツは穿いているぞ!!」ゼンラジャナイ!
陸奥 (それ一枚で羞恥を隠せるほどパンツは万能じゃないわよ、お莫迦。)ヤレヤレ
長門 「」イジイジ
陸奥 「まったく。何をいじけてるのよ、姉さんらしくもない。」
長門 「だって、黒のやつ・・・。」イジイジ
陸奥 「じれったいわね。好きならバッといってガッとヤればいいのよ。」クイ
長門 「さっきのは手を出してくる流れだったろ!?というか、ひとりじゃ陸に男と会話もできないお前に言われたくないぞ!」
陸奥 「わたしは彼とディープキスしましたけど?」
長門 「ぐっ・・・!」
陸奥 「姉さんは彼とどこまでいったのかしら~?」アラアラ
長門 「こ、恋人繋ぎ。」ボソボソ
陸奥 「何それ、ちょっと詳しく。」ズイ
長門 「い、今はこの話はいいだろ!それよりもだな。今は・・・そう。何故、お前が此処に居るのかということをだな。」
陸奥 「あらやだ。もうこんな時間。夜更かしはお肌の天敵だわ~。」オホホ
長門 「待て、陸奥!さては貴様、姉の情事を覗く心算だったな!?待たんかぁ!!」ダッ
陸奥 「その格好で追ってくるつもり~?憲兵さんにキツ~いお仕置をされても知らないわよ~?」
長門 「んな!?///」サッ
長門 「くっ!後で覚えてろぉ!!」
黒霧 「で、胸高らかに戻ってきてみれば・・・。」
最上 「Zzz」スカー
熊野 「大した量は飲んでいないのですけれど、度数が度数でしたので。」
鈴谷 「ん~。」グリグリ
熊野 「犯人は先程からクロさんのお腹に顔を押しつけているJKですわ。」
黒霧 「・・・酔った鈴谷ってこんな感じなの?」
熊野 「私も初めて見ましたわ。いつもならずっと気持ち悪い笑い方をしていますの。」
鈴谷 「うぇへへへ。」ニマァ
熊野 「丁度このように。」
黒霧 「そう・・・。じゃ、“目が覚めたら腕の中。記憶はないけど若しかして!?ドッキリ大作戦”を決行するから、後よろしく。」ヨット
鈴谷 「うにゃ。」コテン
熊野 「どうせなら服を剥いてやってくださいまし~。」ヒラヒラ
夕張 (熊野さんって、意外とやることえげつないな。ちょっと距離置いとこ。)クピ
天龍 「あいつ、戻ってたのか。」グビ
龍田 「あら、ただいまを言ってもらえなくて拗ねてるの~?」ンフフ
天龍 「そりゃ拗ねるだろ。二番目とはいえ夫婦なんだぜ?」ムスッ
龍田 「んま。お姉ちゃんったら、本当に素直になったわね~。からかい甲斐がなくなって妹としては寂しい限りだわ~。」コクコク
天龍 「・・・おい。花、お前確か酒には強かったよな?なんか、いつもと違くないか?」ダイジョウブカ?
龍田 「え~?大丈夫よぉ。ほらぁ、あたしってばこんなに元気~。」ニコニコ
天龍 「ほんとかよ。まぁ、花は酒が入ると笑顔が柔らかくなってかわいい・・・。」ン?
天龍 「なぁ、花。」
龍田 「なぁに~?」フニャ
天龍 「俺達って、黒に肉体年齢を戻してもらってるんだよな・・・?」
龍田 「そうねぇ。」ウフフ
天龍 「花、今いくつだ?」ダラダラ
龍田 「んふっ。」ニッコー
天龍 「鳳翔!ありったけの水を花に!!」クワッ
鳳翔 「Zzz」クー
天龍 「鳳翔ぉおおおお!!」
南方戦「」
紫苑茜「・・・何これ。」エェ
近衛麗「何って、バスタオルで頭をぐるぐる巻きにしてベッドに突っ伏してる南ママよ。」
南方戦「誰がママよ。」モゴモゴ
近衛麗「なんですって~?声がくぐもって聞き取りづらいわ~。」ンー?
南方戦「・・・。」チッ
近衛麗「聞こえたわよ~。」
ゲシ イタッ
近衛麗「んもう。す~ぐ脚が出るんだから。で?ちびちゃん連れて茜ママは何の用?」
紫苑茜「誰がママか。これからお風呂だから誘いにきたの。一緒に入る?」
近衛麗「え~?パパが一緒ならぁ、考えなくもな・・・」
曙 「行く。麗、邪魔。」グイ
近衛麗「・・・顔で押し退けようとするの、やめてもらえる?」
曙 「あのね、母さん。これ、見て。」ンベ
紫苑茜「あら、可愛い舌・・・て、これ・・・!」
曙 「うん。あったの、私にも。黒霧の血を継ぐ証。父さんとの絆の証・・・!」ニッ
紫苑茜「そう・・・よかったわね。」ギュ
曙 「うん・・・うん・・・!」キュ
潮 「ぐすっ。」ズビッ
近衛麗「まったく、羨ましい限りね。」ハイ ティッシュ
潮 「ありがとうごじゃりまず。」チーン
黒霧 「こんな所に居た。」
南方戦「・・・。」ツップシ
黒霧 「・・・拗ねてるの?」
南方戦「」フルフル
黒霧 「じゃあ怒ってる。」
南方戦「なんで拗ねてなきゃ怒ってるで確定なのよ。」
黒霧 「実際、苛ついてはいるでしょ?」ヨッコイセ
南方戦「それは、まぁ・・・て、あんた、筋肉緩んだ?なんかふにゃふにゃしてるんだけど。」ン?
黒霧 「擬音を使う女性って可愛らしいと思わない?」
南方戦「何の話よ。自分のことを言われて同意できるわけないでしょうが。それよりこの柔いのは何。」ネェ
黒霧 「いい加減そのタオル外したら?」
南方戦「今は余計なものを視界に入れたくないのよ。」
黒霧 「君にとって僕は余計なものだと?」
南方戦「・・・その言い方はずるいわ。」ムゥ
シュル ン・・・
南方戦「は・・・ぁ。外し終わらない内から・・・。余程溜まってるのかしら。」フフ
黒霧 「君ほどではないさ。」
南方戦「それはあんたが他の女と宜しくやってるからよ。今夜までは我慢してあげる。でも明日は・・・。」ニィ
黒霧 「今ほど君の笑顔を恐ろしく感じたことはないよ・・・。」ハハッ
南方戦「やけに柔い感触だと思ったら・・・。」フニ
鈴谷 「うぇへへへ。」Zzz
南方戦「何よ、この二の腕の柔らかさ。最高じゃない。」ハラタツ
黒霧 「思い切り抱き締めたなら、さぞ心地好いだろうね。」
南方戦「本当にやったら絞めるわよ。」
黒霧 「君を感じられるなら寧ろ臨むところ。」ホレ
南方戦「・・・。」
ギュ
黒霧 「南は少し硬いね。」サス
南方戦「だったらこれで満足かしらっ!」グイ
黒霧 「ん。暫くこのままで。」
南方戦「ったく、素直に甘えてくれたらワタシだって・・・。」
黒霧 「もっと素直になれるのに?」
南方戦「可愛いワタシは嫌いかしら。」
黒霧 「まさか。照れ怒りする南の魅力に抗えないだけだよ。」
南方戦「何を言っても返してくるわね、この。」チッ
南方戦「で、なんで鈴谷と一緒に居るのよ。今日は最上の日なんでしょ?」ムス
黒霧 「そのはずだったんだけどね。最上が酔い潰れちゃっててさ。」
南方戦「はん。それで代わりに鈴谷を毒牙にかけようと・・・。」
黒霧 「確かに、ある意味毒牙かもね。」フフッ
南方戦「・・・何する気よ。」
黒霧 「ドッキリ大作戦。」
南方戦「面白いじゃない。ワタシも交ぜなさいよ。」ニィ
黒霧 「元よりその心算だよ。」
黒霧 「じゃあ南は・・・。」ウンヌン
南方戦「ええ、わかった・・・ん?それだとワタシ、鈴谷が起きるまで眠れないんじゃ・・・。」
黒霧 「・・・。」ニコッ
南方戦「このっ・・・!まぁ、いいわ。後で気が済むまで抱き枕になってもらうから。」ビッ
黒霧 「仰せのままに。じゃ、おやすみ。」シュバッ
南方戦「ふー。よし。数時間の辛抱よ。頑張れ、ワタシ。」ムン
赤城 「」チョコン
飛龍 「後輩の分際で先輩である私達を説教してみせたあの気概は何処へいったのかしら。随分としおらしいじゃない。」ギシ
赤城 「」ビクッ
飛龍 「ねぇ、赤城。貴女、こういうのは初めて?」サワ
赤城 「・・・初めてに、決まっているじゃないですか。男性経験はありますけど、同性経験なんて。」ゾワ
飛龍 「なぁんだ。処女じゃないんだ。つまんないの。」
赤城 「悪かったですね。普通に恋愛経験があって・・・!」
飛龍 「別にいいわよ。無垢な女の娘にイケナイことを教え込むのもいいけど、男を知ってる女をわからせるのも愉しいもの。」グイ
赤城 「あっ。」
ドサッ
飛龍 「覚悟しなさい、赤城。女同士のほうがイイってこと、たっぷりと教えてあげる。」ウフフ
赤城 「・・・タスケテ」ウルッ
アッ ンンッ!
蒼龍 「嗚呼、終に赤城さんもこっちの世界に・・・。」
大鳳 「でも、蒼龍さん的には好かったのでは。これまで蒼龍さんひとりで飛龍さんのあれを受け止めていたわけですし。」
蒼龍 「ん~。まぁ、確かに飛龍の苛々が分散するのは助かるけど、親友としてはちょっと複雑かなぁ。」
大鳳 「・・・え?」
蒼龍 「え?」
大鳳 「肉体関係のある・・・親友?」ヒキッ
蒼龍 「あ、あれ?大鳳ちゃ~ん?どうして距離をとるのかな~?」アハハ
大鳳 「すみません。私、蒼龍さんのことは大切な仲間でお友達だと思ってますけど、身体の関係は無理です、ごめんなさい。」
蒼龍 「いや、違うから。私にそんな趣味ないから!飛龍に襲われてるだけだからぁ!!」
大鳳 「都会の女性は遊びに慣れすぎですぅ~!!」ダット
蒼龍 「違うからぁあああ!!」
ネェ
蒼龍 「ヒッ」ビクッ
飛龍 「五月蠅いんだけど。喚くのはベッドの上だけにしてくれない?」クイ
蒼龍 「」チラリ
赤城 「」ビクッ ビクン
蒼龍 「」サー
飛龍 「来るの、来ないの、どっち。」
蒼龍 「イカセテイタダキマス」ハイ
キー バタン
シュボ カチン
那智 「」フー
ガチャ
足柄 「うげ、綾姉・・・。」
那智 「なんだ、お前か。セカンドバージンはひとりで準備運動でもしていろ。」
足柄 「一言目がそれか、この下ネタ女王。ったく、なんで行く先々に居るのよ。」チッ
那智 「それはこちらの科白だ。行く先々についてきおって。自分の道を歩むというあの宣言はどうした。」
足柄 「それはそれ、これはこれよ。人生の道と道程を同じ意味にとらないで。」
那智 「・・・一本吸うか?」スッ
足柄 「吸わない。私が煙草の臭い苦手なの知ってるでしょ?」
那智 「苦手なのはお前でなく黒霧隊長だろう。お前が煙草を吸わなくなったのは隊長に臭いと言われてからだからな。」スパー
足柄 「・・・何故それを。」
那智 「なんだ。本当にそうだったのか。」
足柄 「くっそ。嵌められた。」クッ
那智 「これだからお前は隊長にからかわれてばかりなのだ。少しは学べ。思い通りになりすぎる女は本命になれないぞ。」
足柄 「別に本命になりたいわけじゃないから!第一、あいつにはもう本命がいるし。略奪愛なんて趣味じゃないのよ。」フン
那智 「趣味どうこうの問題ではない、莫迦者。貴様の愛が本物かどうかという話だ。」
足柄 「・・・綾姉、他人の色恋の話になると真面目になるの何なの?いや、言ってることは陸でもないけど。」
那智 「どちらが先か後かなど些細なことだろう。大事なのは誰が一番かということだ。私は何番でもいいがな、選ばれさえすれば。」フー
足柄 「やっぱり陸でもないわ。」
鈴谷 「うにゅ・・・。」モゾッ
・・・ン?
鈴谷 「なんだろ。動きづら・・・い。」
黒霧 「」クー
鈴谷 「・・・?」チラッ
ゼンラー
鈴谷 「!?」バッ
鈴谷 (な、なんで!?どうしてわたし服着てないの!?///)カァァ
鈴谷 「若しかして、若しかしちゃう・・・!」キャー
鈴谷 「あ~あ、どうせならしっかりと記憶に刻んでおきたかった・・・な。」ア
南方戦「おはよう。よく眠れたかしら?」フフフ
鈴谷 「・・・スミマセン」サー
南方戦「あら、どうして謝るの?貴女はただ、一緒に寝ていただけなんでしょう?・・・ワタシの旦那と。」ニッコリ
鈴谷 「ホント スミマセン」ガタガタ
南方戦「だから、どうして、貴女が、謝るの?」
鈴谷 「ふぐっ・・・!」ボロボロ
南方戦「あ・・・やば。」
鈴谷 「鈴谷、何も憶えてないんです。昨日は凄い酔ってて。夕張と一緒で、それで・・・っ。」グスッ
南方戦「あーもう。わかったから、泣かないの。ワタシも悪かったわ。」ヨシヨシ
鈴谷 「うぅ・・・!ごめんなさぁい。」ヒグッ
スズヤ・・・
黒霧 「ドッキリだいせいこ~う。」
鈴谷 「・・・。」
黒霧 「鈴谷?」
鈴谷 「ばぁああああああ!!よがっだああああ!!」ボロボロ
南方戦「・・・どうするのよ、これ。」
アアアアア!!
三隈 「で、どうするんですの。」
最上 「どうするって、何を。」
三隈 「クロさんとの初夜のことですの!!」ワッ
最上 「・・・頭痛いからあんまり大きな声出さないでよ。」ウッ
三隈 「まったく。これで流れに乗れるかと思っていましたのに・・・。とんだ皮算用ですの。」フン
最上 「悪かったって。次はちゃんと・・・今、何て言った?」
三隈 「もがみんがさっさとやってしまえば三隈も流れに乗っかることができましたのにと言いましたの!」
最上 「みっちゃんが目指してるのってお嫁さんの座なんじゃなかったっけ・・・どうでもいいけど。いいの?それで。」エェ
三隈 「愛されている事実があれば形はどうでもいいですの。あと、一言余計ですの。」ム
最上 「あっそう。・・・ま、ボクの次は熊野か鈴谷あたりになると思うけどね。」ボソ
三隈 「むむっ。」キッ
熊野 「こちらに振らないでくださいまし。」ハァ
三隈 「そういえば熊野、貴女も夜の営みに熱心な女でしたわね。」
熊野 「違います!貴女方と一緒にしないでくださいな!」
最上 「序でにボクも熱心なわけではないからね?そこのところよろしく。」
三隈 「でも、クロさんとの営みには興味がおありなのでしょう?」
最上 「愚問だね。」ネー
熊野 「・・・。」
三隈 「熊野・・・?」ゴゴゴ
熊野 「・・・仕方がないではありませんか!!口を開けば“クロさん”、“クロさん”と!そう何度も聞かされていては興味も湧きますわ!」
熊野 「そうでしょう!?」バッ
鳳翔 「えっ?・・・あ、はい。そう、ですね?」
熊野 「そうなんです!」ダン
鳳翔 「えっと・・・?」
最上 「鳳翔さん、はずみで同意とかしないほうがいいと思うよ。寝てて話聞いてなかったでしょ。」
鳳翔 「はあ・・・。因みに、何の話を?」スミマセン
最上 「クロさんに抱かれたいって話。」
鳳翔 「・・・またですか。」ハァ
最上 「やめてよ。ボク達が陸でなしに引っ掛かってる莫迦な女みたいじゃん。」
鳳翔 (実際そうなんですよね。)スン
最上 「・・・うん。言いたいことは伝わったよ。だけど、鳳翔さんもこっち側だからね?」
鳳翔 「あ、うちテレビ無いので。」ケッコウデス
最上 「いや、集金でなくてね・・・?若しかして、まだ酔ってる?」
チュンチュン
長門 「・・・。」
陸奥 「Zzz」クー
長門 「何故、私は陸奥と同衾しているのだ?それも、ありのままの姿で・・・。」スーッ
陸奥 「ぅんん。」モゾッ
長門 「・・・色っぽいな。私に足りないのはこういう色気か。」ムゥ
???「色気なら長門さんにもあると思いますよ?」
長門 「そうか?」
???「はい。主にその大きなお・・・」
長門 「わかった。それ以上喋るな。」
???「はい。」
長門 「・・・私が言えたことではないが、色気の基準は胸部に限られたものではないだろう?」
???「そうですね。でも、それが大きな要因のひとつであることもまた事実です。」
長門 「そう言われるとだな・・・。」カエスコトバガ
???「人は顔だけでないとはいいますが、容姿の美醜も大きな判断基準であることと同じです。」
長門 「そうか・・・。」
???「ええ、昨晩ヲ級ちゃんが熱く語ってました。」
長門 「何をしとるんだ、あの娘は・・・。」ハァ
長門 「ところで、今更こんなことを訊くのもだが・・・。」
???「鳳 紅華です。鳳 紅蓮と金剛の娘の。」
長門 「あぁ、そうだった・・・あ?」グレン?
陸奥 「金剛の娘ですってぇ!?」ガバッ
鳳紅華「」ビクッ
長門 「なんだ。起きていたのか、陸奥。」
陸奥 「金剛の娘だなんて衝撃的なことが聞こえてきたら死んでても目覚めるわよ!」クワ
長門 「そこまでか・・・。」
鳳紅華「あの・・・父さんの評価があれなのはもう割り切りましたけど、母さんの評価も、その・・・なんですか?」
長門 「いや?私が知る限り、金剛は優秀な艦娘だぞ。」
陸奥 「艦娘としては、ね。あんな恋愛不適合者が結婚だなんて・・・この世の終わりよっ!」ゾワッ
長門 「そこまで言うか。」
陸奥 「だってそうでしょう!?白馬の王子様が迎えに来てくれるって本気で信じてるのよ!?」
陸奥 「そんな夢しか見てないようなお莫迦さんが現実で結婚できるわけないじゃない!!」
鳳紅華「だとしたら私は何なんでしょうか・・・。」ムッ
陸奥 「ねぇ、あなた!」ガシ
鳳紅華「な、なんですか?」
陸奥 「過去に頭を強く打った経験は?若しくはある時点以前の記憶がないとか・・・!」
鳳紅華「これ、怒ってもいいですよね、私。」イラッ
陸奥 「」ブツブツ
長門 「すまんな。こういった話題にはどうも過敏でな。」
鳳紅華「まったくです。でもまぁ、いいです。行き遅れた女性の焦る気持ちもわかりますので。」
陸奥 「失敬な!わたしは別に行き遅れたわけじゃっ!」
鳳紅華「同じですよ。過去にどれだけ求婚されていたって、今そういう相手がいないなら。」
鳳紅華「高嶺の花だって、摘まれて大切にされなければいつかは枯れるんです。」
陸奥 「ぐっ・・・!!」
長門 「まぁ、陸奥の場合は男が恐くて進んだ関係になれなかっただけだがな。」
陸奥 「進む価値のある男がいなかっただけよ!」
鳳紅華「遠目で見ているだけで価値が判断できるとは思いませんが。」
陸奥 「・・・何よ、ふたりしてっ。わたしを虐めてそんなに愉しい・・・!?」グスッ
鳳紅華「正直、少し。」フフッ
長門 「・・・は。」
陸奥 「あんた、本当は黒霧の血縁なんじゃないの・・・?」
パオラ「ただま~。」キィ
パオラ「なーんつって。誰もいるわけな・・・」
大鳳 「おかえりなさい。」ユラァ
パオラ「あああああ!?吃驚したぁ。」
大鳳 「ふふっ。やっと帰ってきてくれましたね、パルちゃん。」フラッ
パオラ「ちょっ、大丈夫?あたしが存在に気づかないって、あんたどれだけ仕事してたの。」ダキッ
大鳳 「さあ?溜まっていた書類が全部片づくくらい、でしょうか?」エヘヘ
パオラ「どうして独りで・・・んもう。赤城達は何をやってるのよ。」
大鳳 「ナニをヤっているんでしょうね・・・本当に。」トオイメ
パオラ「はぁ・・・。まぁ、赤城には後で言っておくとして、大鳳も大鳳よ?独りで全部抱え込んじゃ駄目じゃない。」
大鳳 「元はといえばパルちゃんが仕事を溜め込むからなんですけど・・・。」
パオラ「ウッ」
大鳳 「今回ばかりは感謝ですね。ありがとう、パルちゃん。仕事をしないでくれて。」クスッ
パオラ「ごめんなさい!これからはちゃんと書類仕事もするから!だから先ずは文字の読み書きを教えて・・・」
大鳳 「いえ、本当に感謝しているんですよ?本当に・・・。」
パオラ「え・・・?えっと。どゆこと?」
パルチャン ・・・ハイ
大鳳 「私、初めては男の人がいいです。」
パオラ「あー、そういう・・・。散ったのね、赤城は。」
大鳳 「はい。散ったんです、赤城さんも。」
武蔵 「・・・。」カチ
シュッ ド・・・
武蔵 「」キン
大和 「おぉ~。」パチパチ
武蔵 「まあ、こんなものだな。」フッ
大和 「武蔵は本当に武芸達者ね。居合も薙刀も柔道も、何でもできちゃう。」
武蔵 「稽古は怠っていないからな。大和も、一芸を磨いてみても好いのではないか?」
大和 「私も・・・?そうね。じゃあ、武蔵に稽古をつけてもらおうかな。」クスッ
武蔵 「・・・ふっ。ふふふっ。」
大和 「武蔵・・・?」
武蔵 「いや、すまない。少し、嬉しくてな。」
大和 「よかった・・・ね?」ウン?
武蔵 「ああ・・・。」
武蔵 (大和も変わろうとしているとわかったからな。)フフッ
五月雨「姉さん、姉さ~ん。」ネーネー
時雨 「何かな、妹よ。」
五月雨「この切断面を見てどう思います~?」
時雨 「そーだなぁ。比較的綺麗だとは思うけど・・・。妹はどう思う?」クリン
五月雨「刀の切れ味に頼り過ぎですねぇ。巻かれて圧の掛かっている中心部は綺麗に斬れてますけど、外側は折れちゃってます。」チョンチョン
五月雨「これは刀を振る速度より藁が折れる速度のほうが速い証拠です。明らかに振り遅れてます。」
時雨 「そう!無駄のない動きと速さを極めれば!」シュバッ
時雨 「たとえ糸でも。」シュル
五月雨「大鎌でも。」シュン
時雨 「何なら手刀でも。」スッ
ゴト
時雨 「ほ~ら、こんな綺麗な切断面に。」ドヤァ
五月雨「手刀は私には真似できませんが。」ドヤァ
時雨 「師を語るなら、この程度はできてもらわないとね。」
五月雨「そ~いうことです。」ウンウン
大和 「お~。」パチパチ
武蔵 「騙されるな、大和。このふたりは異常が過ぎる。目指すべきものを見誤るな。」
真宵 「・・・何故、早朝から仕事をせねばならんのだ。」ネムイ
近衛東「近海で原因不明の爆発が確認されたのだ。致し方あるまい。」
真宵 「どうせ時雨が何かしでかしたのだろう?電話で訊けば済む話ではないか。番号は何だったか・・・。」エーット?
近衛東「貸せ。主要な鎮守府の番号は全て頭に入っている。」
真宵 「ほう、流石だな。その若さで元帥補佐の座を勝ち取るだけはある。」
近衛東「年下が何を言うか。」
・・・ツナガランナ ガチャ
真宵 「まったく、懐刀の連中はどいつもこいつも仕事に対する姿勢がなっとらん。」
近衛東「そうかもな・・・。」ツー ツー
扶桑 「真宵ちゃん、真宵ちゃん。」クイ クイ
真宵 「どうした?」ン?
扶桑 「これ。」ヒョイ
真宵 「それは・・・切れた電線か?」
扶桑 「はい。加賀さんが煩わしい電話対応をしたくないと引き千切りました。」
真宵 「・・・そうか。」フゥ
近衛東「元帥殿、どの番号にかけても通じないのだが・・・これはどういうことか。」
真宵 「」スーッ
真宵 「通信網の見直しだっ!」クワッ
ヲ級 「ヲー。」カリカリ
レ級 「ヲーちゃん、それは何の呪文だ?」
ヲ級 「呪文じゃないの。素数を延々と足していってるの。」カリカリ
レ級 「ふ~ん。で、素数ってなんだ?」
ヲ級 「素数もわからないレーちゃんには呪文に見えても仕方がないの。」ヘッ
レ級 「うっせ。どんな天才だって教わってないことはわかんねぇだろうがよ。」
蓮華 「誰にもわからないことを自力で紐解くから天才なのだ。教わってできるのはただ真似事が得意なだけの凡人に過ぎん。」
レ級 「さいで。」
蓮華 「なんだ。言い返さないのか?」
レ級 「言い返してほしいか?」
ヲ級 「蓮華ちゃんの言ってることが理解できてないから何も言えないだけなの。気取っても誤魔化せないの。」ヤレヤレ
レ級 「そこまで莫迦じゃねぇからな!?」ナメンナ!
蓮華 「ヲ級、そろそろ黒板を返せ。浮かんだアイデアが消えていく。」
ヲ級 「蓮華ちゃん、睡眠はちゃんととったほうがいいの。記憶力が悪くなっちゃうの。」ハイ
蓮華 「構わん。常套手段を確立してしまっては特別なものを造れなくなってしまうからな。」
レ級 「そういうもんか。」
蓮華 「ああ、刹那的な思いつきこそ輝くというものだ。」カッ
レ級 「それ、ノリでやってるっていわねぇか?」
蓮華 「考えすぎては前に進まん。」
レ級 「あっさり認めんなよ。」オイオイ
ヲ級 「ヲーちゃんのはしっかり計算して設計してほしいの。今度こそ三隈お姉ちゃんの目にも止まらない艦載機を・・・!」ムン
蓮華 「無茶を言う・・・。だが、面白い。やってやろうではないか。」フフン
ヲ級 「ヲーちゃんも、来る時に備えて頭の体操をしておくの。」ムフン
レ級 「あぁ、だから素数の計算をしてたのか。ストレスが溜まってるのかと思ったぜ。」
ヲ級 「それもあるの。」
レ級 「あるのかよ。ったく、頭の良い奴は大変だな。」
蓮華級「・・・。」ジー
レ級 「なんだよ。」
ヲ級 「優れているが故に不幸で可哀想って見下されるのが一番腹が立つの。ちょっと表出るの。不幸を差し上げるの。」クイ
レ級 「不幸を差し上げるって何だよ。俺に何する気だ。」コェエナ
紫苑茜「魔力の使い方を教えてほしい?」
鳳紅華「はい。お願いします。」
紫苑茜「何でまたわたしに。」
鳳紅華「一番賢そうだと思ったので。」
紫苑茜「あぁ・・・貴女、魔術と魔法の違いが理解できてない口ね。居るのよねぇ、賢い=優秀って勘違いしてる子。」フゥ
鳳紅華「・・・すみません。」ムッ
紫苑茜「いいこと?魔術は式。魔法は想像。魔力は感覚で操作するものなの。わたしみたいな術式派は式を組み立てて現象を完成させる。」
紫苑茜「で、貴女みたいに感情が顔に出やすい感性派は感覚で魔力を操り現象を生み出す。ふたつは似て非なるものよ。」
紫苑茜「術式で魔力を制御するわたしにとって魔力は魔術を発動させるための対価でしかない一方・・・」
紫苑茜「感覚で魔力を操る貴女達にとっては魔法そのもの。魔力操作は何よりも重要な技術になる。」
紫苑茜「要するに“畑が違う”ってことよ。わたしが教えられるのはこのくらい。」
鳳紅華「では、術式について教えてください!」ズイ
紫苑茜「あんた、中々面倒くさいわね。まぁ、別に教えるのは構わないのだけど。そもそも、貴女の能力って術式向きなの?」
鳳紅華「わかりません!」フンス
紫苑茜「気持ちの好い返事だこと・・・。」ハァ
紫苑茜「確認だけど、貴女の能力は炎系ってことでいいのよね?」
鳳紅華「はい、それは間違いないと思います。魔力の放出で火が出ますし。」ボッ
紫苑茜「それができるなら貴女は確実に感覚派よ。術式派は魔力を放出するだけで火なんて出せないもの。」
鳳紅華「そうなんですか?」
紫苑茜「言ったでしょう?術式派は式で現象を完成させるって。燃料だけじゃ火は点かないのよ。」
鳳紅華「・・・なるほど。」
紫苑茜「貴女、あまりわかってないでしょ。紅蓮の娘にしては賢いと思っていたけれど、基準が低すぎたみたいね。」ハァ
鳳紅華「む・・・。」
黒霧 「見てごらん。これが怒りのツボを的確に刺激した挙句泣かされる母の姿だよ。灯にそっくり。」
曙 「・・・気をつける。」
紫苑茜「ちょっと?」
黒霧 「事実でしょ。君は賢いくせに他人に気を遣えないからいけない。言葉が的確すぎる。」
紫苑茜「あんたも大概でしょうに。」ハッ
鳳紅華「あの、さり気に莫迦にされている気がするのですが。」ムムム
曙 「本当に・・・気をつける。」
黒霧 「茜に魔術式を訊いていたみたいだけど、術式派なんて殆どが研究者だよ?」
紫苑茜「“なんて”とは随分ね。真に才ある者は皆、術式派なのよ。」フフン
鳳紅華「これは、いったいどちらの意見を聞けば・・・。」
曙 「私は感覚派にしたわ。原子とか分子とか・・・もう訳わかんない。」ハハッ
紫苑茜「灯、最終的に貴女がどちらの道を選ぶかは任せるけど、それを決めるのはまだ早いんじゃな~い?」
曙 「この間のテストの点数を聞いても、そう言える・・・?」
紫苑茜「・・・聞こうじゃない。」
曙 「〇〇点。」
紫苑茜「・・・30点満点で?」
曙 「100点満点で。」
紫苑茜「・・・まだ伸び代が。」
曙 「努力代がもう無いのよ。」ズーン
鳳紅華「」ジー
黒霧 「僕の顔に何かついてる?」
鳳紅華「ええ、ついてますね。気味の悪い仮面が。」
黒霧 「言ってくれるねぇ・・・ま、事実だけど。」ケラケラ
鳳紅華「っ!」ゾワッ
黒霧 「ふ~ん。君、やっぱり紅蓮の娘だね。悪意を察知する能力に長けている。」
鳳紅華「そんなっ。父さんが感性豊かだなんて嘘です!」
黒霧 「そうは言っていないけど・・・。紅蓮はああ見えて優秀だよ?特に勘の鋭さには目を見張るものがある。」
黒霧 「あの感覚を掴む早さはそう真似できるものじゃない。」
鳳紅華「・・・。」
黒霧 「えっと、どうかした?」
鳳紅華「いえ、父さんを褒めるひとは初めてだなと・・・。」ハー
黒霧 「毒されている・・・。茜、君が紅蓮の悪口を吹き込むから。」
紫苑茜「わたしは事実を言っているだけよ、悪意で以て。」シレッ
曙 「それを悪口と言うんでしょうに。」
金剛 「うぅ~。ぐぅれぇ~ん。」ズビッ
霧島ミニ「・・・なんですか、あれは。」
比叡ミニ「なんだろうねー。」ハハッ
金剛 「うぅううう。」グズグズ
霧島ミニ「声を、かけるべきでしょうか。」
比叡ミニ「私は嫌だよ?」ニッコリ
霧島ミニ「私だって嫌ですよ。ああなった姉様の愚痴は3日3晩続くんですから。」
比叡ミニ「いやいや、それは流石に・・・」
霧島ミニ「途中で寝てしまうひとにとってはそうでしょうね。」ジト
比叡ミニ「・・・まじ?」
金剛 「ばぁああああ!!」ウワーン
霧島ミニ「ほら、これみよがしに喚き始めましたよ。」イキマショウ
比叡ミニ「えぇ~。こーいうのは榛名の仕事なのにぃ~。」フワフワ
霧島ミニ「仕方がないではありませんか。その榛名こそ、今回の原因なのですから。」
鳳紅蓮「ん・・・。」ムクリ
榛名 「おはようございます。」
鳳紅蓮「ああ、おは・・・!」ズザァ
榛名 「あら、酷い。それがひとの顔を見てする反応ですか?」
鳳紅蓮「妥当な反応だろ。初めてだぜ。俺が黒霧以外の女に恐怖するのは・・・。」ニィ
榛名 「イイ表情をしますね。逆境を愉しむ・・・というのでしょうか。嫌いじゃないですよ?」ウフフ
鳳紅蓮「俺は嫌いだよ。」
榛名 「そうですか。まぁ、貴方が私をどう思っていようと構いませんけれど。私はただ、貴方の身体に語りかけるだけ・・・。」スッ
鳳紅蓮「おい・・・。」
榛名 「やぁ、こわい。貴方がちょっとでも力を込めたら、この華奢な身体は簡単に折れてしまいますわ。」フルフル
鳳紅蓮「ぐっ・・・てめぇ。」ギリ
榛名 「さぁ、始めましょう。元気にな~れ。元気にな~れ。」モゾッ
鳳紅蓮「・・・っ!」
榛名 「あはっ。こんな浮気性な方に姉様は任せられませんね。反応しなくなるまで、とことん絞って差し上げます。」ウフフフ
鳳紅蓮「この、悪女が・・・!」
五月雨「そういえば神命さんって、英霊の能力を借りることができるんですよね。」
神命 「うん、そうだよ。英霊に私の身体を貸してるって言ったほうが正しいけど。」
五月雨「じゃあじゃあ、近接戦闘が得意でトリッキーな戦い方をする英霊とかいたりしないですか?」
神命 「いるよ?・・・何、戦いたいの?」
五月雨「後学のために。」フンス
神命 「手合わせするのはいいんだけど・・・どうしようかな。」ウーン
五月雨「お願いしますよぉ、お・ね・え・ちゃ・ん。」キャルン
神命 「そういうのは妹に飢えてる娘にやってあげなよ。」
五月雨「ちっくそ。末っ娘だって聞いたからいけると思ったのに。」チッ
神命 「私は心配してあげてるのに。五月雨ちゃんの回避能力って海上限定でしょ?陸上でも動けるの?」
五月雨「失敬な!そりゃ多少機動力は落ちますけど、陸上でだって遜色なく動けますとも!」ムフン
神命 「本当かなぁ・・・。」ンー
時雨 「そんなに心配ならボクが五月雨のサポートをするよ。それならいいでしょ?」
神命 「・・・。」エェ
時雨 「何、その反応。ムカつくんだけど。」ムカッ
五月雨「私達の実力を疑うんですかぁ~?」
神命 「信じてるよ。」
五月雨「じゃあ・・・」
神命 「信じてるからこそ、底が知れてるんだよ。」
露姉妹「あ・・・?」ピキッ
神命 「君達、ちょっと調子に乗りすぎなんじゃない?ここらで一度思い知ったほうがいいよ。」ユラァ
神命 「命を奪ったことのある者とそうでない者の差を・・・ね。」
五月雨「姉さんって、命のやりとりはしたことないんでしたっけ。」
時雨 「実績は無いね。心構えはある心算だけど。」キュッ
五月雨「私も同じです。砲撃をしない分、そこいらの艦娘よりは覚悟がある心算ですが。」チャキ
神命 「準備はい~い?君達の相手は、“ジャック・ザ・リッパー”。名前くらいは知ってるでしょ?」
時雨 「それはまぁ・・・。」
五月雨「どちら様で?」
時雨 「嘘でしょ。知らないの?」
神命 「あーそれはちょっと予想外。ま、凶化を使った私と思ってくれたらいいよ。私達、似てるらしいし。」
五月雨「それはそれで知りませんが。」
神命 「我が身に宿れ、“ジャック・ザ・リッパー”。清らかな身を血に染めよ。」コォォ
神命?「ひひっ。遊ぼう、お姉ちゃん達。」ニタァ
五月雨「お姉ちゃん?」
時雨 「へぇ、切り裂きジャックって子供だったんだ。というか、子供と似てるって。」
五月雨「やっぱり精神年齢低いんですね、神命さん。」
神命?「けひひひひ!強いねぇ!お姉ちゃん達!」シュタタ
時雨 「ちぃ!でかい図体してちょこまかと!絡まれ、“念鋼糸”!」ピィン
神命?「んも~。わたちはでっかくないよぉ。お胸がちょっと重いだけぇ。」
露姉妹「」イラッ
神命?「隙ありぃ。」シュン
五月雨「そい。」クルッ
キィン
神命?「あっはは。これに反応するんだぁ。すごいすご~い。」キャハハ
時雨 「五月雨、平気?」
五月雨「見てのとおりです。まだまだ遊びの心算なんでしょうけど、対応できない程ではないですね。」
時雨 「頼もしいことで。ボクは正直キツい・・・かな。」ハハッ
五月雨「“ボクっ娘”の姉さんのままではそうでしょうね。」
時雨 「やっぱり?」
五月雨「はい。」
時雨 「それじゃあ、そろそろ・・・。」
五月雨「本気でいきますか。」
神命?「おぉ、なんか雰囲気変わった?じゃあ、あたち達も・・・“凶化”。」ゾァ
露姉妹「・・・は?」
神命 「私達、相性が好いらしいの。」
神命?「だから、神命の能力を使うこともできる。」ニヒヒッ
神命?「さぁ、第2ラウンド開始だよっ。」
時雨 「五月雨、生きてるー?」
五月雨「辛うじてー。」
神命?「けひっ。愉しかったね、お姉ちゃん達っ。」
時雨 「そーかもね。」ハッ
五月雨「殺されかけて愉しかったとか冗談じゃないですよ。」ケッ
神命?「また遊ぼーね。それじゃっ。」フッ
神命 「・・・思い知った?」
時雨 「嫌というほどね。無意識に一線を越えないよう加減していたことを自覚したよ。」
五月雨「装甲強化がなかったら死んでましたよ、マジで。殺意はないのに確実に殺しにくるとかイカレてますよ、マジで。」
神命 「あの娘は狂ってるから。暗殺者みたく殺意を隠す術を持っているわけではないけど、そもそも隠す殺意がないの。」
神命 「本人は至って普通に“遊んでいる”だけだから。その結果、死人が出た。ただそれだけのこと。」
時雨 「恐いねぇ。殺そうって意志がないから先読みが難しいし、遊びだから動きが不規則だし。」
五月雨「それでいて急所もしっかり狙ってくる。実戦で磨かれた殺すためだけの剣術が如何に恐ろしいか、身に染みましたよ。」マッタク
神命 「これでわかったでしょ。一線を踏み越えた者とそうでない者とでは同じ強者でも如実に差が出る。」
神命 「覚悟なんて言葉は無意味。戦ってはいけない者がいること、しかと胸に刻みなさい。」
五月雨「うぃーす。」
時雨 「しっかり刻んでおくよ、神命さんのその顔と一緒に。」
神命 「・・・。」ズタボロ
五月雨「女の娘なのに、生傷いっぱい。」ワァオ
神命 「主に傷つけたの五月雨ちゃんでしょ・・・!だから嫌だったの!あの娘、自分が傷つくことを厭わないから!」
神命 「もう兄様に顔向けできない~!!」ウワーン
五月雨「なんかもうほんとすみませんした。」
時雨 「調子乗ってごめんなさい。」
足柄 「朝っぱらからあっちこっち騒がしいわね・・・。」ムッスー
那智 「まったくだ。頭に響く・・・。」チッ
羽黒 「お姉ちゃん達、軍人のくせして朝に弱すぎ。しゃんとして。」
妙高 「そうね。私なんて時間ぴったりに目が覚めてしまうのに。」
足柄 「歳だからでしょ。」
妙高 「死にたいみたいね。」ガシ
足柄 「痛っ!握力つよっ!」
那智 「喧しい。妙高、そいつを黙らせろ。」
妙高 「言われるまでもないわ。」ググ
足柄 「いたたた!割れちゃう!頭割れちゃうから!」ジタジタ
羽黒 「那智お姉ちゃん、ヘアブラシ借りるね。」トテトテ
那智 「ああ、好きにしろ。」
足柄 「待って。那智姉、ヘアブラシなんて持ってないでしょ。それ私の!しかもそれなりに大事なやつ!」チョット!
那智 「大事?ヘアブラシがか?・・・さては贈り物か。」ホウ
足柄 「なっ!ちっ・・・がくもないけど。」ゴニョゴニョ
那智 「よし羽黒。そのヘアブラシを寄越せ。燃やしてやる。」
足柄 「鬼かっ!!」
那智 「なるほどな。憲兵時代に黒霧隊長から・・・何がきっかけだ。」
足柄 「訊くところはそこなわけ。」
羽黒 「他に何があるの。」
足柄 「そう言われると思いつかないけど・・・というかあんた、ムカつくくらいに綺麗な髪してるわね。」クシクシ
羽黒 「手入れはちゃんとしてるから。お姉ちゃんと違って。」
足柄 「してますけど・・・?」イラッ
妙高 「していないよりはマシ程度の手入れで何を。足柄には女性としての自覚が足りないのよ。」
足柄 「んなっ。そこまで言う!?」
羽黒 「言うよ。お姉ちゃん、このヘアブラシがどれだけ特別かわかってないでしょ。」
足柄 「は?普通のヘアブラシでしょ?」
羽黒 「ほらわかってない。一回梳いただけでこんなに整うわけないのに。」サラッ
足柄 「・・・特別。」
羽黒 「そう。特別。」
足柄 「あいつ、私のこと好きすぎない?」
妙高 「なんて憐れな・・・。」ハァ
那智 「いっそ惨めだな。」
羽黒 「ほんと莫迦。」
ナニヨ ミンナシテー!
足柄 「いいわよ、もう!本人に直接確認するから!」フンッ
羽黒 「やめたほうがいい。どうせ傷つくだけ。」
妙高 「万一好意で贈られた物だったとして、それを他人に使わせた事実は重いわよ。」
足柄 「ぐっ・・・!」ピタ
那智 「どちらにしろ今は無理そうだぞ。見てみろ。」クイ
足柄 「何よ・・・。」チラ
那智 「今日は家族水入らずの一日らしい。」
足柄 「ああ、そういえばそんなこと言ってたわ。」
羽黒 「お出かけ?」
那智 「私達も行くか?」
羽黒 「うん。今日は髪の調子が好いから行ってもいい。」ムフー
妙高 「羽黒がいいなら私もいいわ。」フフ
足柄 「また後をつける気?勘弁してよ。私、もう怒られたくないんだけど。」
那智 「誰がそんなことを言った?私達はただ買い物先で偶然鉢合わせてしまうだけだ。」フッ
足柄 「余計に質が悪いわ。というか、外出許可の申請してないんですけど?」
那智 「今すればいいだろう。」ガタッ
足柄 「は?」
那智 「隊長殿ー!妙高型4名、買い物で外出してもよいだろうかー!」
イイヨー
那智 「これでよし。」ウム
足柄 「いや駄目でしょ。」
鳳紅華「いいんですか?そんな簡単に許可を出して。」
黒霧 「代理とはいえ提督が外出すること自体異例だから。今更幾つか異例が重なったところで構わないよ。どうせ上は真宵だし。」
コラァ!!
足柄 「ちょっと、あんたぁ!海軍には海軍の規律ってもんがあるでしょうがぁ!適当やってんじゃないわよー!!」バァン
鳳紅華「・・・だそうですけど。」
紫苑茜「あの娘、自分がどんな格好しているかわかってるのかしら。」
曙 「ないわぁ。」ウワァ
黒霧 「琴ー!」
足柄 「なによぉ!」
黒霧 「そろそろ新しい下着買ったほうがいいんじゃなーい!」
足柄 「はぁ!?あんた、それセクハラ・・・!」ハッ
足柄 「ぶっ殺ぉす!!///」ダァン
羽黒 「理不尽。いい加減、カッターシャツに下着一枚で寝る癖を直すべき。」
妙高 「理解に苦しみますね。」
那智 「どうせ黒霧隊長との思い出が原因なのだろう?詳しく聞こう。」
足柄 「聞いてほしいだなんて言ってないんですけど・・・。」
羽黒 「因みに、今穿いてるのも黒いひとに貰ったもの?」
足柄 「・・・。」
妙高 「貴女、若しかして身の回りのもの全部・・・。」ドンビキ
那智 「尚更、買い物に行くべきだな。」
足柄 「くっそ、言い返せない。///」クッ
曙 「で?今日は何処に連れていってくれるわけ?」
黒霧 「ス〇ッチャ。」
紫苑茜「うわ。あんた、わたし達が運動音痴なのをわかった上で其処を選ぶなんて・・・。」
黒霧 「いいでしょ?運動できないふたりが運動で啀み合ってるの。滑稽で。」
紫苑茜「性悪・・・。」
曙 「あら、私は構わないわよ。少なくとも母さんよりはデキるもの。」フフン
紫苑茜「へぇ、言うじゃない。だったら身を以て教えてあげる。母は偉大だってね。」ババン
フフフフフ
黒霧 「ほらね。もう面白い。」
鳳紅華「苦手なことに本気になれるって凄いですね・・・。」
紫苑茜「いくわよ、灯ー!」
曙 「ばっちこーい!」
ソーレッ
鳳紅華「あの、よかったんですか?私までついてきて。」
黒霧 「君も家族のようなものだから。懐刀の一員として、交流も深めておきたいしね。」
鳳紅華「懐刀・・・ですか。」
黒霧 「・・・不満?」
鳳紅華「いえ、別に嫌なわけでは・・・。ただ、父の記憶だと任務らしいことをしたような憶えが・・・。」エット
黒霧 「紅蓮は基本自由行動だからね。それも含めて東が計画を立てるから、支障はないんだけど。」
鳳紅華「私も同じ扱いになるのでしょうか。」
黒霧 「君は東が嫌い?」
鳳紅華「それはまだ何とも言えません。ですが、為人を聞く限りは好感の持てる方だと思っています。」
黒霧 「なら大丈夫だよ。紅蓮は東の指示を聞かないから扱いが特殊なだけで・・・」フフ
黒霧 「君は素直だし、素質も充分。危機察知能力もそれなり。」ジッ
鳳紅華「」ビクッ
黒霧 「魔族の心は青くない。僕から君に教えられることはこれくらいかな。技術は東に教わるといい。」ガタッ
鳳紅華「・・・はい。」
黒霧 「それじゃ、僕達も交ざろうか。」
鳳紅華「そう、ですね。さっきから1ラリーも続いてませんし。」
黒霧 「カバーするのが大変だ。」ヤレヤレ
鳳紅華「できないと俄然やる気を燃やすところ、本当にそっくりな母娘ですね。微笑ましいです。」
足柄 「ねぇ、どうして私は公衆の面前で座らされているのかしら。」ヒクッ
羽黒 「お客さん、動かないでくださーい。手許が狂うと妖怪メイクになっちゃいますよー。」テキパキ
妙高 「ハーレイ・〇ァッキン・クイーン。」ボソ
足柄 「不穏な単語が聞こえたんですけどっ!」
羽黒 「こら、動かない。」ガシ
足柄 「くっ・・・!もう、どうしてこう妙高型は怪力ゴリラばっか・・・。」ブツブツ
那智 「そこの童貞くさい男共。そう、お前達だ。あのメイク中の女はどんな下着を着けていると思う?何、願望でも構わんぞ。」イッテミロ
足柄 「綾姉は後でぶっとばす・・・!」
妙高 「羽黒、ドレスはこれでいいかしら。」シャラン
羽黒 「んー。なんか違う。もっとお姉ちゃんのイメージとは真逆のやつがいい。」
妙高 「わかったわ。店員さん、清純さをイメージしたものはあるかしら。」ツカツカ
足柄 「私のイメージは共通認識ってか。」チッ
那智 「いっそウェディングドレスにしたらどうだ。そうでもしないとこれの野生は隠せんぞ。」
羽黒 「そんなことない。私のメイクで充分隠せる。でもドレス案は採用。それでプリクラにごー。」グッ
足柄 「頭、沸いてんじゃないの・・・あんたら。」
ズズッ ハー
鈴谷 「五臓六腑に染み渡るぅ~。」ハフゥ
熊野 「爺臭いですわ・・・。」
鈴谷 「何を仰る。これは日本の文化だよ~。」ズズー
プハァ
鈴谷 「鳳翔さん、おかわり~。」
鳳翔 「はーい。器は持ってきてくださいねー。」
鈴谷 「えー。じゃあ、お願い、龍驤。」ハイ
龍驤 「なんでやねん。」
最上 「序でにボクのもおねがーい。」
龍驤 「いや、厨房の中に居るやん、君。なんでうちを経由しとんねん。」
近衛麗「ほら、ちみっこ。これ水色髪の分ね。運んでちょうだい。」
龍驤 「あーはいはい。任しとき・・・て、誰がちみっこか!」クワッ
鈴谷 「龍驤~、まぁだ~?」
龍驤 「あーもう、他人に頼んどる立場なら、ちったぁ待たんかい!今運んだるから!ていうか、うちは先輩やぞ!」キッ
鈴谷 「先輩~?どっちかっていうと、お局・・・。」ンー?
龍驤 「」ズゾゾゾ
鈴谷 「あー!!鈴谷のお味噌汁ぅ~!!」ガタッ
龍驤 「だぁほ!!年齢弄りする奴にかける情けは無いわっ!!」
ギャアギャア
最上 「相変わらず龍驤が来ると騒がしいねー。」ズズ
三隈 「それだけが取柄ですの。」ズ
最上 「言うねぇ。旧知の仲である鳳翔さんを前にして・・・。」チラ
鳳翔 「私は気にしませんよ?」カチャカチャ
最上 「そうなの?」
鳳翔 「ええ、そういう扱いを“おいしい”と考えるひとですから。一々気にするのが莫迦らしくて。」ジャー
最上 「あー。そういう・・・。」ハハ
三隈 「メンタルコントロールの鬼ですの。」
鳳翔 「でも本当は傷ついている風を装って、時雨さんに甘えるんですよ・・・彼女は。」ジト
三隈麗「その手があった(ありましたの)!」
最上 「いやいや、力業で黙らせるでしょ。君達の場合。」
ブルッ
龍驤 「なんか、寒気が・・・。」ウン?
クイクイ
龍驤 「・・・ん?」
黒霧幻「・・・。」ジッ
龍驤 「なんや、お嬢ちゃん。うちに何か用か?」
黒霧幻「ん。」スッ
龍驤 「・・・空の器。」
黒霧幻「おかわり。」ズビッ
龍驤 「君もか・・・。うちは輸送部隊ではあっても給仕やないんやけどな。」ハァ
鈴谷 「部隊って、ご飯目当てに小物を運んでるだけじゃん。独りで。」
龍驤 「その小物で鎮守府の生活に彩りを得とるのは何処の誰やろうなぁ。」アァン?
鈴谷 「いや、龍驤が来なくても物資の補給くらいあるし。」
熊野 「寧ろお膝元でない分、此方のほうが規制が緩くて手に入れられる物も多いですわ。」
龍驤 「・・・。」スーッ
龍驤 「鳳翔印の味噌汁は如何ですか~!」クルッ
近衛麗「ちょっと~!味噌汁つくったの私なんだけど~!」
龍驤 「どうりで塩味が強いが思ったわ!まだまだやなぁ、麗!」
近衛麗「はぁ!?氷雨、あのちび捕まえて連れてきなさい!煮て出汁とってやる!」
氷雨 「断る。そんなことより早く姉さんに味噌汁のおかわり。」
近衛麗「くっ、パパに似てクールね。そういうとこ、嫌いじゃないわっ。」
鳳翔 「麗さん、事案だけは勘弁してくださいね?」
最上 「幻ちゃん、美味しい?」
黒霧幻「ん。うまい。」グッ
氷雨 「姉さん、“美味しい”。」
黒霧幻「む・・・うまし。」ビッ
氷雨 「姉さん・・・。」ハァ
三隈 「氷雨さんも苦労しますの。」
最上 「それは理想があるからでしょ?なるようになるさ精神なら苦心することも少ないよ。」
三隈 「自分のことならそれでいいかも知れませんが、未来ある子供のため導いてあげることこそ重要ですの。」
最上 「人ひとり分の人生も歩みきっていない程度の大人に何が導けるってのさ。」
三隈 「それは・・・。」
最上 「大人なんて、子供の選択肢を狭めないように頑張っていればいいんだよ。現にほら、幻ちゃんは成長してるでしょ?」ヨシヨシ
黒霧幻「ん・・・?」
最上 「人見知りが治ってる。」フフ
黒霧幻「・・・へっ。」フヒッ
三隈 「最早、別人では・・・。」エェ
氷雨 「撫でるの禁止。姉さんの背が伸びなくなる。」
最上 「植物じゃあるまいし・・・。」イヤイヤ
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