艦娘強化訓練島の日常 ~第弐期生 天龍~ そのに!
時雨と五月雨の活躍により、人間関係を整理させられた天龍達。新たな決意を胸に未来への一歩を踏み出した彼女達の前に、乗り越えるべき壁が姿を現す・・・。
さて、後半戦。
白くて黒い女の子の正体は、時雨と日陰の娘、"幻(まほろ)"だった。
而して、天龍の夫の仇である白髪・紅瞳の少女の正体は・・・?
さぁさ、放置していた伏線のような何かを回収しつつ、物語を進めていきますよっ。
チュンチュン
神命 「んぁ・・・。」パチッ
ムクリ クァ~ フゥ
神命 「寝た気がしない。」ズーン
比叡ミニ「Zzz」グガー
霧島ミニ「Zzz」スー
神命 「くっそ。金剛姉妹のお守りがこんなに大変だったなんて。榛名ちゃんが家出するわけだよ。」
金剛 「んー。ぐれ~ん。」ムフフ
神命 「この長女がもう少ししっかりしていればっ。」イラッ
金剛 「えへへ~。」ムニャムニャ
神命 「幸せそうな顔してぇ!」ムー!
モゾッ
神命 「あれ?なんか、不自然な膨らみが・・・。」
バサ
???「んみゅう?」
神命 「な・・・なんじゃこりゃあああ!!」
ダダダダ
南方戦「何、今の!?どうしたの!?」バァン
神命 「み、南ちゃん。あれ・・・。」フルフル
???「んちゃ。」ヨッ
南方戦「・・・。」クルリ
スー
南方戦「ぐれぇぇん!ちょっと神命の部屋まで来なさぁぁい!」
ゼー ハー
南方戦「取り敢えず、これでいいかしら。」フゥ
神命 「うん。でも、小さい娘の前で大声出すのはやめようね。泣き出しちゃうかもだから。」ミミフサギ
???「なぅ?」ミミフサガレ
南方戦「あ、ごめん。」
鳳紅蓮「なんだよ、朝っぱらからうるせぇな。」ネミィ
南方戦「悪かったわね。でも、あれを見たら目、覚めるわよ。」クイ
鳳紅蓮「はぁ?見ただけで目が覚めるなら誰も朝陽を憎んだりしね・・・。」ピシッ
???「ぱぅぱ!」キャイキャイ
鳳紅蓮「ちっちゃい金剛・・・だとっ。」ズガーン
こんご「ぱぅぱ!こっこ!」アゥアゥ
神命 「ほら紅蓮。抱っこだってさ。」ホイ
鳳紅蓮「なんで赤ちゃん言葉がわかるんだよ、お前。」ヨット
神命 「だって私、黒霧では養育舎の手伝いをしてたから。」
鳳紅蓮「神命が世話上手とか・・・イメージねぇな。」ヘッ
神命 「うっさい。これでも経産婦じゃ。舐めんな、莫迦たれ。」
金剛 「ん~。何事ネー。」クシクシ
神命 「金剛ちゃん。何か変わったことない?下半身の一部が痛いとか。」ガシッ
金剛 「え?なんでそんな限定的なノ?」
神命 「いいから!」
金剛 「え、えっと・・・。」ハッ
金剛 「なンだか身体が軽くなった気がしマース。」ニコッ
神命 「ということは・・・。」
南方戦「寝てる間に出産?聞いたことないわよ、そんなアンビリバボーな話。」
Oh! フトンガビショビショネー!
鳳紅蓮「ほれ、金剛。お前の娘だ。」
こんご「まんま!」アイ
金剛 「・・・。」
鳳紅蓮「どうした?抱いてやれ。」ホラ
金剛 「Yes.」ソッ
こんご「あ~ぅ。」スリスリ
金剛 「私にそっくりな very cute な女の子デース!」ウォォ
ワイワイ
南方戦「アンタ、やることやってたのね。」
鳳紅蓮「断りきれなかっただけだ。本気で泣きやがるから・・・。」
神命 「でも、できたからにはちゃんと面倒見なさいよ。"お前の"じゃなくて、"俺達の"娘なんだから。」バシッ
鳳紅蓮「だっ。てめぇ、一々叩くな。」
神命 「こうでもしないと理解しないでしょ?子育ては親の仕事であって、母親の仕事ではないからね。忘れんなよ、この野郎。」ギロッ
鳳紅蓮「お、おう・・・。」
南方戦(そういえばワタシ、あのひとに蓮華の世話任せっきりだったかも。今の神命、なんか怖いし、黙っとこ。)
金剛 「は~い、ご飯ですヨ~。」ムフフ
こんご「あ~うっ。」ムグムグ
金剛 「おいちいでしゅか~?」
こんご「あ~い!」
金剛 「それはよかったデース!」ニヘラ
南方戦「あの離乳食作ったの、ワタシなんだけど。」ネェ
神命 「因みに作り方を教えたのは私。」
龍驤 「産まれたばっかの赤子に固形物食わすなや。」
神命 「・・・なんで龍驤ちゃんが居るの?」
龍驤 「しばくぞ、きさん。」アァ?
南方戦「ところで、あの娘の成長速度、ちょっと異常じゃない?」
神命 「そりゃ、紅蓮の娘だし?」
龍驤 「ちょい待ち。それ以前に金剛は建造組やろ。子供は産めんはずやで。」
神命 「それこそ紅蓮の娘だからだよ。鳳の一族は、生殖機能を持たない代わりに分裂して増殖する能力を備えてるの。」
南方戦「金剛の腹の中で増えたってこと?それって、なんか・・・。」ウワァ
龍驤 「まるで寄生虫やな。」
カチャ
最上 「おはよ~。」
龍驤 「おはよう。最上にしては随分と早いお目覚めやな。」
最上 「・・・なんで居るの?」
龍驤 「お前もか。ちゅーか君の部屋に泊まったやろ。」
最上 「そうじゃなくてさ。龍驤が此処に居たら誰が今日分の食糧やら資材やらを運ぶのって話。」
龍驤 「寝るなってか・・・。ちゃんと代役頼んでるから安心し。」
タノモー
龍驤 「お。噂をすれば、やな。」
南方戦「はーい。」スタスタ
最上 「あ、今のなんか主婦っぽい。」
南方戦「主婦ですけど!」
龍驤 「はよ開けたりぃな。」
金剛 「んふふふ。」ニヨニヨ
こんご「あぅ。」ウトウト
神命 「お腹いっぱいになったから、おねむかな。」
金剛 「眠気を我慢してる顔も可愛いデース。」フフ
最上 「え・・・。いつの間に産んだの?」
龍驤 「つい今朝方な。」
ギャアアア!
龍驤 「なんや、今の悲鳴。」アン?
最上 「女の子の声だったね。」
こんご「おぅ?」パッチリ
金剛 「・・・。」
神命 「あらら。目、覚めちゃったかな?」
金剛 「ちょっと絞めてきマース。」ゴゴゴ
神命 「娘ちゃん、預かっとこうか?」フゥ
オネガイシマース
最上 「かなり怒ってたね、金剛ちゃん。」
龍驤 「素直な娘やからな、色んな意味で。」
アノー ン?
霧島ミニ「お姉様がもの凄い形相で出ていったのですが・・・。」
龍驤 「気にせんでええよ。ちょっと親莫迦な母になっただけやから。」
霧島ミニ「はぁ・・・。あ、それからもうひとつ。」
龍驤 「ん?」
霧島ミニ「南方棲戦鬼さんが大本営からの輸送部隊を出迎えにいかれたようですが、よろしかったのですか?」
龍驤 「・・・あ。」
最上 「深海棲艦の居る日常に慣れすぎて忘れてた。」ヤッベ
「ちょっと!ちょっと!鬼級が出るだなんて聞いてないんだけど!?」
「私だって知らないよ!何とかしてよ!」
「何とかって何よ!機銃しか積んでない私にどうにかできるわけないでしょ!一応は砲を積めるあんたがどうにかしなさいよ!」
「今日は荷物が多かったから置いてきたの!」
「使えねぇ!!」
「あんただって!その荷物の半分は置き場が無いから処分しろって、まーくんに怒られた発明品だって知ってるからね!」
「何故それを!?」
「ちょっとその中身見せて!きっと碌でもないマッドな発明が・・・!」ゴソゴソ
「失礼な!どちらかというとマッド担当はあんたでしょうが!」
「五月蠅い!苺ミルク!」
「なんだと、このおっぱいメロン!」
「誰がメロンだ、こらぁ!!」
ギャーギャー
南方戦「ワタシはいったいどうすればいいのかしら。」
???「連れが申し訳ありません。一応、説明はしていたのですが・・・。全く話を聞かないふたりで・・・。」ハァ
南方戦「別に気にしてないわよ。あのふたりの口論は聞いてて面白いし。」
???「その言葉を聞いて安心しました。では、改めまして。」コホン
加賀 「私は加賀と申します。大本営の筆頭秘書艦を務めております。そして、元帥の妻です。」キリッ
南方戦「そう。ワタシは南方棲戦鬼。南でいいわ。そして、伝説の憲兵の妻よ。」フフン
加賀 「存じております。向こうで騒いでいるふたりは"苺ミルク"と"メロン"で構いません。」
???「構いますけど!?」
南方戦「いきなり渾名で紹介されてもね。その由来がわからないことには覚えにくいんだけど?」
加賀 「それもそうですね。」フム
???「え?待って!夕張メロンはともかく私のはっ!」
夕張 「おぉい!自分だけ逃れようとか、それはないんじゃない!?明石はねぇ!おっぱいからぼ・・・。」
明石 「わー!あんたのと私のとじゃ受けるダメージの桁が違うの!わかるでしょ!?」
加賀 「明石さんは母乳が出る体質なんです。因みにそっちの経験はありません。」シレッ
明石 「身内にも鬼が居たぁ!」ウワーン
夕張 「はっ!ざまぁ、みそしれ!」ヘッ
加賀 「夕張さんは小学校低学年の頃から胸が成長し始め、当時は無自覚に上半身を曝していたそうです。」
夕張 「その話はやめて!今でも同窓会の度にイジられるんだから!」ハゥ!
加賀 「要するに、胸にコンプレックスのあるふたりです。まったく、堂々としていればいいものを。」フッ
南方戦「アンタ、いい性格してるわ・・・。」
明石 「あぁ、もう最悪。新しい職場では隠し通していくつもりだったのに・・・。」グスッ
夕張 「私だって、ただ大きいからってことにしようと思ってたのに・・・。」ズーン
明石 「でも、育ちきった今だと言うほど大きくないのよね。」
夕張 「言うなよ。昔は比較対象がまな板だったんだよ。」ハハッ
加賀 「まぁ、知られた相手が女性だっただけましではないですか。この基地唯一の男性は、丁度出張中ですから。」
夕明石「元凶が言うな。」オイ
ボカーン! ヒィッ!
金剛 「貴女ですか?私の可愛い娘の眠りを妨げたのは・・・。」オォォ
明石 「金剛ちゃんがちゃんと日本語喋ってるっ。」ガタガタ
夕張 「こわっ。ていうか、弾掠ったんだけど!?抉れてない?ねぇ、抉れてない!?」ガシッ
明石 「やめて。そんなグロい顔、近づけないで。」ヒキッ
夕張 「私、女の子なのにぃ~!」ウワーン
加賀 「落ち着きなさい。入渠すれば治ります。」
夕張 「治るならいいって話じゃないでしょ!」クワッ
金剛 「まだ、足りないようですね。」ゴゴゴ
南方戦「一瞬で母になったわね、あの娘。」
加賀 「すみません。金剛をお願いできますか?私はこっちをどうにかしますので。」
南方戦「ええ、わかったわ。」ヤレヤレ
金剛 「もう一発・・・。」ガション
夕明石「ひぃっ!」ダキッ
南方戦「やめなさい。」ゴス
アウッ
金剛 「んもう。何するデース!」サスサス
南方戦「何するじゃないわよ。アンタの今の姿、可愛い可愛い娘に見せられるわけ?」
金剛 「母には娘の知らない顔があるものデース。」フン
南方戦「あっそう。その科白、振り返ってもう一度言ってもらえるかしら。」
金剛 「何度でも言ってやるデース。母には娘の知らない顔が・・・。」クルッ
こんご「あいあ~い。」ンチャ
金剛 「」ピシィ
南方戦「親が子供を見守るように、子供も親を見ているものなのよ。いつ、どの場面を見られてもいいように、心掛けておくことね。」フフン
神命 「今回に限って言えば、南ちゃんが嵌めただけだけどね。」
神命 「はい、お母さんにパ~ス。」
こんご「ま~う!」
金剛 「い、いえーす。」フルフル
神命 「金剛ちゃん、気にしすぎだって。小さい頃の記憶なんて、どうせすぐに消えちゃうから。」
金剛 「そうですよネ!」パァ
神命 「人格形成には影響するかもだけど。」ボソッ
金剛 「」チーン
蓮華 「紅蓮の娘という時点で手遅れだろう。」ヌッ
金剛 「なっ!そんなことないデース!紅蓮は素敵な旦那様デース!」ムゥ!
こんご「あうあうあ~う!」
神命 「蓮華ちゃん、今まで何処に・・・。」
蓮華 「紅蓮のやつに子育てのいろはを教えてやっていたのだ。」ドヤァ
南方戦「何それ、すっごい不安。」
蓮華 「何を言う。全て父上の受け売りだぞ。」
南方戦「だからよ。あのひとの娘、碌なの居ないじゃない。」
蓮華 「・・・そうだな。」
神命 「認めちゃうんだ・・・。」アハハ
加賀 「久し振りですね、金剛。」
金剛 「加賀・・・居たんデスカ。」
加賀 「・・・ええ、このふたりを不要なガラクタと一緒に廃棄しに来たのですよ。」イラッ
チョット!?
明石 「私達の発明はガラクタなんかじゃないもん!」
夕張 「そうだそうだ!島ひとつ吹き飛ばすくらいわけないんだからね!」
加賀 「そんな危険物を実際の戦場でどう使えと言うのですか?諸共に吹き飛べとでも言うつもりですか?」ギラッ
夕明石「ゴメンナサイ」
コホン
加賀 「というわけで、この災厄を生み出す莫迦ふたりをお願いします。」
南方戦「そんな危険人物を寄越されても困るんだけど。」
蓮華 「何、心配は要らんさ。此処には好き勝手開発ができるような資源の余裕はないからな。」
南方戦「じゃあ、アンタが好き勝手開発に使ってる資源は何処から来てるのよ。」
蓮華 「大本営からだが?」
南方戦「やっぱり。アンタ、資源の無断使用してたのね。」ハァ
蓮華 「違うぞ、母上。大本営から送られてくる資源の殆どは元から私用のものだ。納品書にもそう書いてあるだろう?」
南方戦「あのひとはっ・・・。いや、それを許可した真宵も真宵か。」モウ
加賀 「ともかく、このふたりをお願いします。資源の遣り繰りを叩き込んでやってください。」
蓮華 「ああ、任された。」フフン
夕張 「ねぇ、私達あの娘の下で働くことになるの?」ヒソヒソ
明石 「そうなんじゃない?何処までできるのか知らないけどさっ。」
夕張 「へへっ。お手並み拝見といきま・・・。」
三隈 「ただいまですのー。」トッ
夕明石「へ・・・?」
蓮華 「なんだ、もう帰ってきたのか。もう暫くは向こうに居るものと思っていたぞ。」
三隈 「またすぐに戻りますの。ただ、蓮華さんが設計した動力部に関しては、クロさんでも修理ができないということでしたから・・・」
蓮華 「・・・壊したのか?」アァ?
三隈 「ち、違いますの!ちょっと調子が悪いだけですの!」アセアセ
蓮華 「私と父上の合作を僅か数ヶ月でぶっ壊すとはな。いい度胸だ。」ズゴゴ
三隈 「スミマセンデスノ」
明石 「あの娘には逆らっちゃ駄目だ。」オゥ
夕張 「やっべー。かっけー。」キラキラ
明石 「やっぱりあんたとは相容れないわ。」
加賀 「ところで、貴女が抱いているその娘は・・・。」
金剛 「私の娘デース。羨ましいデスカ?」ニヤァ
加賀 「別に。」ケッ
金剛 「え~。本当に~?素直に羨ましいと言えば、抱かせてあげてもいいですよ~?」ニマニマ
ブチッ
加賀 「結構です。直にその娘より可愛い娘を産みますので。」ニコォ
金剛 「私の娘より可愛い?ありえないですね!そもそも、男の子だったらどうするんですかぁ?」ハッ
加賀 「女装させます。」
南神命「やめてあげて!?」
明石 「ていうか、金剛ちゃん。普通に喋れるじゃん。」
夕張 「いったいどっちが素なんだか。」ヤレヤレ
鳳紅蓮「あー。頭いてぇ。」フラフラ
神命 「久し振りに頭使ったからでしょ?この脳筋。」
鳳紅蓮「そりゃてめーだ。俺は別に勉強は苦手じゃねぇ。」
神命 「あぁ?じゃあ紅蓮は自分の名前、漢字で書けるの?」
鳳紅蓮「ほれ。」サッ
神命 「・・・。」
鳳紅蓮「何なら、てめーの名前も書いてやろうか?」ニィ
神命 「くっそ。」チッ
鳳紅蓮「どうせ自分の名前しか書けねぇんだろ、お前。」
神命 「言い返せないぃ。」グギギ
南方戦(蓮華にできなかった分、神命に勉強教えてあげようかしら。)フム
鳳紅蓮「金剛、そいつ寄越せ。」
金剛 「んもう。自分の娘をそいつだなんて、言葉遣いが乱暴ですヨ?」
こんご「お~。」
鳳紅蓮「"紅華"、手ぇ握れ。」
こんご「あい。」ギュ
金剛 「"こうか"?」
鳳紅蓮「こいつの名前だ。適当に考えた。」
こんご「うぃ。」パー
神命 「適当って。娘の名前なんだからちゃんと真面目に・・・。」
金剛 「好い名前デス!」ムフー
エェ
鳳紅蓮「意味ならあるぜ。この紅い髪から連想して紅の華、紅華。」
こんご「あ~い!」ボコッ
神命 「安直・・・。てか、さっきから何してんの?紅華ちゃん、膨らんでない?」ダイジョウブ?
鳳紅蓮「蓮華の話を聞いて色々と考えた結果、俺に子育ては無理だと悟った。」
神命 「でしょうね。」
鳳紅蓮「だから、子育てをしないことにした。」
・・・ハ?
鳳紅蓮「紅華は俺の細胞が金剛の胎内で増殖して形作られた人型だ。なら、大地の魔力を吸って急成長した俺のように成長できるはず。」
こんご「う~。」ムクムク
鳳紅蓮「面倒を見てやる必要のない状態まで成長させてやれば、俺は子育てをしなくてもよくなる!」クワッ
神命 「その方法で成長するのは肉体だけでしょうが!中身のことを考えなさいよ!」
紅華 「その必要はないわ。私、貴女より賢いもの。」シュー
神命 「開口一発目がそれか。」オォン?
鳳紅蓮「紅華。お前、スルトの記憶はあるか?」
紅華 「ううん、あんまり。でも、父さんの記憶はあるわ。その・・・ルミナさんのこと、とか。」
鳳紅蓮「そうか。お前に勇者への怨みが無いならいい。飯を食ったら魔力操作の修行に付き合え。」ポム
紅華 「うん、わかった。」エヘヘ
金剛 「紅華は私にそっくりだったのに。もう髪の長い紅蓮じゃないですかっ。」ムスッ
紅華 「仕方ないわ、母さん。私は父さんの魔力を糧に成長したんだもの。父さん寄りの外見になるのは道理よ。」
金剛 「納得いきません。」フン
紅華 「困ったわ。どうしよう、父さん。」
鳳紅蓮「知らん。女の御機嫌取りは苦手だ。」
紅華 「そうね。時雨さんに丸投げしましょう。」
金剛 「こらー。それが嫁と母に対する態度かー。」
南方戦「子育ての段階を飛ばすねぇ。」チラ
蓮華 「なんだ。私は急成長などしないぞ。」
南方戦「アンタはもう少し中身を退行させてちょうだい。」
蓮華 「そういう母上はもっと成長したほうがいいな。」フッ
南方戦「喧嘩なら買うわよ。」ゴキッ
蓮華 「そういうところだぞ、母上。幼い娘と同じ土俵で喧嘩をする親が何処に居る。あぁ、此処に居たな。」
南方戦「ぐっ。」
蓮華 「まぁ、私はそんな母上が好きなのだがな。母上が大人になってしまうのは寂しい。」フ
南方戦「・・・普通逆でしょ?その科白。」
蓮華 「私達の何処に普通があると言うのだ?」ニッ
南方戦「そうね。アンタもワタシも、普通じゃなかったわね。」フフ
蓮華 「一番の異常者である父上に毒されているからな。」フフン
南方戦「・・・。」
神命 「せめて何か言おうよ、南ちゃん。」ハァ
ヲ級 「ここはもっとこうしたほうがいいと思うの。」カキカキ
黒霧 「それは構わないけど、操作がかなり複雑になるよ?」
ヲ級 「問題ないの。使いこなしてみせるの。」フンス
レ級 「父ちゃん、俺まだ眠い。」ポヤポヤ
黒霧 「僕の左膝、枕にする?日陰も肩で寝てるし。」
レ級 「おう・・・。」ポス
日陰 「Zzz」クー
近衛麗「・・・何これ。」
紫苑茜「いつものことでしょ?気にしない気にしない。」
黒霧 「ところで、五月雨と眠はどうしたの?」
レ級 「爆睡してる。徹夜したんだってよ。」クァ
黒霧 「そっか。ふたりには少し、負担を掛けすぎたかな・・・?」フム
鳳翔 「もう、駄目ですよ?成長期の娘達に無理をさせては。」メッ
黒霧 「ふたりを信じてるだけだよ。」フフ
鳳翔 「物は言いようですね。」マッタク
近衛麗「増えた・・・。」ズーン
紫苑茜「昨日、あんたに何があったのよ。」
漣 「そんで?こりがうちらの新しい艤装なのかにゃ?」
天龍 「みたいだな。」
龍田 「みたいね~。」ウフフ
漣 「ほ~ん。ま、それはいいとして。なんで艤装の説明ができる人が誰も居ないのかね。」
天龍 「知らねぇよ。直接あいつに訊けよ。」
朧 「撫子、いっきま~す。」テテテッ
曙 「待ちなさい。抜け駆けはなしよ。」ガシ
エー エー ジャナイ
潮 「でも、それだと艤装の使い方が・・・。」
龍田 「大丈夫よ~。手書きの説明書を預かってるから。」ピラッ
曙 「文字に起こす暇があるなら口で説明しろっての。」
天龍 「つーか、あいつ結構可愛い字書くんだな。」
マジデ!?
漣 「・・・あ。これ、蓮華たんの字だ。」
朧 「なんだ。つまらん。」ケッ
エート ナニナニ
漣 「父上へ。」
曙 「父さん宛てじゃないの!やっぱ父さんに説明させなきゃ駄目よ!」クワッ
漣 「前置きは飛ばして、艤装の説明は・・・うわ。これ読むの?」ウゲ
朧 「ちょー長いのねん。」オゥ
曙 「読まなきゃ仕方ないでしょ。使い方も何もわからないんだし。」
漣 「じゃあ、ばっさりごっそり端折りつつ・・・。」
マズ ナデシコ
朧 「おう!」
漣 「主兵装はマグネシウム合金を加工した篭手。なんか色々書いてっけど、要するに頑丈ってこったな。はい、おわり。」
朧 「おぅ!?」
漣 「んで、あかりんはぁ・・・衛星通信機。」
曙 「兵器ですらないじゃない!」
漣 「まぁまぁ。その真意は後でぱぱに訊こうぜ。」ドウドウ
潮 「あの、澪ちゃん。私は?」ソワソワ
漣 「姫姉のは・・・エネルギーシールド。」
曙 「やっぱり武器じゃないじゃない!何考えてんの、父さんは!」
漣 「いやいや、盾は立派な武器だぜ?使い方によっちゃ、剣よりも弓よりも槍よりも活躍できんだから。」
潮 「盾・・・。私が、みんなを護る・・・盾。」エヘヘ
朧 「姫姉、嬉しそう。」
龍田 「それで?肝心の貴女はどんな艤装になってるのかしら~。」
漣 「見てみそみ。」ホイ
龍田 「主兵装、仕込み刀と投擲用砲弾が数種・・・。」
コレダケ? オン
曙 「艤装ですらねぇ!」
天龍 「つーわけでだ。話、聞きにきてやったぜ。」
黒霧 「どういうわけかはわからないけど、よく来たねと言っておくよ。」
天龍 「阿呆言え。あんな奇天烈な艤装を寄越しといて、どうもこうもねぇだろうがよ。ちゃんと説明しろよ。」オラ
黒霧 「あぁ、七駆の・・・。なら、最終調整がてら話をしようか。」スック
ゴチッ ウッ
日陰 「いったぁ・・・。」サスサス
黒霧 「あ、ごめん。」
日陰 「ごめんじゃないよぉ。私のお腹には時雨くんの子供が居るんだから。もっと私に優しくして。」ムー
天龍 「子供?お前、嫁は深海棲艦なんじゃ・・・?」ハァ?
黒霧 「そうだけど?」
天龍 「なら、なんでこいつがお前の子供を身籠もってんだよ。」
黒霧 「もうそれが答えだよね。」
天龍 「やっぱりてめぇは危険だ!」クワッ
天龍 「いいか。この鎮守府の連中には手ぇ出すんじゃねぇぞ。特に、龍田にはな。」ズイ
黒霧 「君ってさ。純情初心な割に距離感が近いよね。レ級が君の胸に潰されてるんだけど。」
レ級 「Zzz」ムニュウ
天龍 「っ!///」バッ
黒霧 「いい加減に自覚しないと、襲ってしまうよ?」
天龍 「へっ。そんな冗談には乗らねぇよ。」ヒクッ
黒霧 「本当に、冗談だと思うの?」スン
天龍 「・・・。」タラー
黒霧 「期限は今日が終わるまで。それまでに自分の魅力を理解し、相応の振舞い方を身につけること。」
黒霧 「若し改善の兆しが見られないようなら、今夜襲うから。買い物序でに龍田から死ぬ気で学んできなさい。」
天龍 「はい、頑張ります・・・。」
黒霧 「じゃ、行こうか。おいで、ヲ級。」
ヲ級 「なの。」テテテッ
ヲ級 「相も変わらずお父さんは鬼畜なの。」トテトテ
黒霧 「急にどうしたの?」
ヲ級 「さっきの宿題のことなの。合格にする気がないのが丸わかりなの。」フフーン
黒霧 「そんなことはないけどな。」
ヲ級 「そんなことあるの。喪女の龍田お姉ちゃんに天龍お姉ちゃんをどうこうできるわけがないの。」ヘッ
龍田 「本人の前で言うかしら、普通・・・。」
黒霧 「怒らないとは大人だね。」
龍田 「怒りを通り越して呆れてるだけ。それに、貴方の娘に手をあげたら後が恐いもの。」
黒霧 「大丈夫だよ。死んだほうがましって程度の苦痛を与えるだけで、殺しはしないからさ。」ニコリ
龍田 「ほら、恐い。」
漣 「おっす、ぱぱん。おはざーす。」ヨッ
朧 「ざーす。」
黒霧 「おはよう。」フフ
漣 「ヲーちゃんも、おはざー。」
ヲ級 「なの!」ニパッ
朧 「レーちゃんはおめざー。」ツンツン
レ級 「んがっ。」Zzz
曙 「ほんとよく寝るわね、この娘。」
漣 「姫姉みたいだな。」
潮 「私、そんなに寝てないよ!」
曙 「いつも昼寝してるじゃないの。」
漣 「だからおっぱいが育つんだよ。」ケッ
朧 「寝る娘はそだーつ。」オー
潮 「ふぇえ・・・。///」カァ
曙 「父さん、もうひとりくらいなら抱えられるわよね。」キリッ
漣 「あ、抜け駆けはなしだぜ、あかりん。俺もぱぱを枕にして寝る~。」
朧 「寧ろ私が枕になって寝るぅ。」ムフン
潮 「わ、私もっ。」
漣 「え~。姫姉、まだ育ち足りねーの?」
朧 「何処までも上を目指す。恐ろしい娘っ。」
潮 「そ、そんなのじゃないも~ん!」ンー!
黒霧 「」ヒョイ
ア・・・
黒霧 「さて、それじゃあ艤装の説明をしていこうと思うんだけど・・・。」シレッ
漣 「姫姉を膝に乗っけたまま普通に喋り始めたよ・・・。」エェ
朧 「一番恐ろしいのは、ぱぱなのねん。」
潮 「ぴゃ~。」エヘヘ
曙 「狡い。」ムゥ
龍田 「ここだけ切り取れば好い風景なのにね~。彼の本性が本性なだけあって、手放しに見とれてもいられないのよね。」フゥ
黒霧 「まずは撫子の篭手についてだね。」
朧 「さー。」スチャ
黒霧 「この篭手はマグネシウム合金で出来てるから、強度はそのままにかなりの軽量化を実現してる。」
朧 「我が神速の百裂拳を受けてみよ。」フッ
黒霧 「但し、マグネシウムは燃焼中に水気に触れると水蒸気爆発を起こすから注意してね。」
朧 「我が捨身の爆裂拳を・・・!」
曙 「黙って聞きなさい。」
アイ
龍田 「大丈夫なの?そんな危険物をこの危なっかしい娘に持たせても。」ツン
朧 「おぅ?」
黒霧 「だからこそだよ。危険物は常識の枠に囚われない者が使うから面白いのさ。」フフフ
龍田 「撫子ちゃん、この篭手を使うのはやめましょう。命が幾つあっても足りないわ。」
黒霧 「・・・冗談だよ?」
漣 「いや~、今のは瞳が本気だったべな。」
曙 「父さんは嘘や冗談を言ったりしないって母さんが言ってたわよ。」
漣 「母さん?」
曙 「お、お姉ちゃんがっ!」アセアセ
漣 「ほ~ん。別にいいんでないのぉ?せん姉、包容力あるし。ほれ、言ってみそ?茜ママ~って。」ニヤァ
曙 「莫迦澪の性格が最悪で助かったわ。」ハッ
漣 「どういう意味じゃ、こらぁ!」
ドウモコウモナイワ! アァ!?
黒霧 「マグネシウム合金は腐食に弱くてね。表面処理をしてるから、メンテナンスさえ怠らなければ間違っても爆発なんて・・・。」
龍田 「保護者ならまずはあっちの喧嘩を止めましょうね~。」ニコー
黒霧 「で、次は灯だね。」
曙 「納得のいく説明を要求するわ。」フン
黒霧 「じゃあ遠慮なく言わせてもらうけど、僕は灯を戦力として全く期待していない。」
曙 「・・・え?」
黒霧 「体力は零、筋力もないし、特別指揮能力があるわけでもない。灯個人で見れば、戦力としての期待値は零どころかマイナス。」
黒霧 「皆の足を引っ張るだけのお荷物でしかない。」
曙 「そんな・・・。父さん、私・・・わたしっ。」ウッ ヒグッ
黒霧 「でも、七駆の中でなら、灯は輝ける。皆の帰るべき場所を示す灯火になれる。」ポム
曙 「うぅ・・・。」
黒霧 「灯、君は澪のこと、撫子のこと、姫百合のことをよく理解している。どんな性格で、どんな行動を取りたがるのか知っている。」
黒霧 「戦場に居て猶、周囲の状況を観察するだけの冷静さを持っている。そして何より、"時鏡の瞳"がある。」
曙 「うん。」
黒霧 「君はほんの少しだけなら、その瞳で未来を視ることができる。あまり先のことだと的中率は低くなってしまうけれど・・・。」
黒霧 「数秒先の未来なら問題ない。衛星からの俯瞰データを基に未来の配置を読み、七駆にとって最良の選択へと導く。」
黒霧 「それが灯の役割であり、灯にしかできないこと。更に言えば、七駆でしかできないことだ。」
黒霧 「君の存在価値は此処にある。大事にするんだよ?」フフ
曙 「言われなくたって、わかってるわよ・・・くそ親父。」クスッ
黒霧 「あ、でも最初に言ったことも事実だから、忘れちゃ駄目だよ。」ニッコリ
曙 「自覚してるわよ!それはこれから時間を掛けて解決していくから今は浸らせてよ!莫迦ぁ!」ワッ
ヲ級 「灯お姉ちゃんもかなりお父さんに毒されてきたの。」ヲー
龍田 「一度泣かせてから持ち上げて・・・。娘が相手でも自重する気なし・・・か。この人とだけは所帯を持ちたくないわね。」ヤレヤレ
黒霧 「そして、姫百合。」ポム
潮 「はい!」ニコニコ
漣 「っべー。姫姉の笑顔が眩しー。」
曙 「ていうか、そろそろ交代してほしいんだけど。」ムゥ
ヲ級 「ヲーちゃんが先なの。順番は守ってほしいの。」
朧 「レーちゃん、おめざー。私と代わってたもー。」ペシペシ
レ級 「ん~。」ウッ
黒霧 「・・・龍田、ちょっと隣りに座ってもらえるかな。」
龍田 「え?まぁ、そのくらいは別に構わないけれど・・・。変なことしない?」
黒霧 「そこまで信用が無いとは・・・。」ズーン
龍田 「あぁ、違うの!そういう意味で言ったんじゃなくて、その・・・。心臓に悪いことをしないでって、言いたくて・・・。」
龍田 「ほら!あたしってこう見えて、経験・・・ないし。」モジモジ
黒霧 「若しかして、昨日のあれは熊野に頼んだほうがよかった?」
龍田 「///」プシュー
黒霧 「ごめん、もう少し君のことをよく見ておくべきだった。」
龍田 「いいの。それはそれで、困るから。///」
ヲ級 「因みにヲーちゃんは龍田お姉ちゃんの本性を見抜いてたの。でも、面白そうだから見張り役に推薦しておいたの。」ムフゥ
漣 「黒幕はヲーちゃんかよ。」
朧 「恐ろしい娘っ。」ヒェァッ
潮 (私の艤装にはどんな機能がついているのでしょうか!)キラキラ
曙 「姫百合は周囲に気を配ることを覚えたほうがいいわね。」ハァ
黒霧 「さ、龍田の膝を解禁したところで話を戻そうか。」
ヲ級 「ヲー!」チョコン
漣 「やだ、ちょーふかふかなんですけど。」オッホォ
龍田 「意外と重い・・・。」ウッ
曙 「あんたはなんて所に入り込んでんのよ。」チョット
朧 「股の間ですが、何か?」キリッ
龍田 「撫子ちゃん、其処動かないでね?じゃないと、下着が見えちゃうからっ。」プルプル
漣 「ほんとすっげー格好だよな。野外で大股開きなんて。」
龍田 「その言い方はやめてちょうだい!」
潮 (艤装の説明はまだでしょうか!)キラキラ
黒霧 「もう少し待っててね。」アハハ
龍田 「み、澪ちゃん。申し訳ないんだけど、一旦降りてもらえるかしら。脚が、攣りそうなのっ。」クゥッ
漣 「えー。もう?なんか俺が重いみたいじゃーん。」ブー
龍田 「事実、重いの!お願いだから早く退いて!限界なの!」クワッ
漣 「澪ちゃんのハートはばらばらに砕け散りました・・・。」ズーン
朧 「ちゃん澪、アロン〇ルフアがあるさ。」ポン
漣 「莫迦野郎、接着剤じゃ心は直せねぇよ。」
朧 「なら、心は何で直す言うか!」
漣 「他人の不幸だ!秘技・スカート捲り!」バサッ
フワッ
漣 「わ~お。すっけすけだー。」
朧 「アダルティなのね。」オー
龍田 「っ~!!///」カァァ
バッ
龍田 「み、見た・・・?///」チラ
黒霧 「灯に阻止された。」
曙 「いい仕事をするでしょ?」フフン
龍田 「そう・・・。」ホッ
黒霧 「でも、何となく想像はつくかな。」
龍田 「///」ボンッ
漣 「いや~、他人の不幸で飯が美味い。」ヘヘッ
朧 「ちゃん澪、悪党。」
曙 「こいつらはっ・・・!」
潮 「お話はまだですか!」キラッ
曙 「あんたも大概ね!七駆にまともな奴は居ないのかしら!」
漣 「それ、自分がまともじゃないって認めてるぜ?」
曙 「私はまともを装ってるだけよ!悪い!?」
イヤ・・・ ベツニ?
龍田 「あの・・・勘違いしないでね?これは足柄ちゃんに貰ったから仕方なく穿いてるだけであって、あたしの趣味じゃないから。///」
龍田 「あたし、そんなはしたない女じゃないから。誘ってなんかないし。そういうことに興味なんてこれっぽっちも・・・。」モジモジ
足柄 「ねぇ。それってつまり、私がはしたないってこと・・・?」ユラァ
龍田 「あ、足柄ちゃん!?いつから其処に!?」ビクッ
足柄 「かなり前から居たわよ。たっちゃんがこいつの隣りに座ってるから、何事かと思って様子を見に来てあげたってのに・・・。」ジトォ
龍田 「ち、違うのよ?今のは、その、言葉の綾で・・・。」アハハ
足柄 「あぁ?」ゴゴゴ
龍田 「」
チラ
天龍 「本気でキレた足柄、半端ねぇな。龍田が押されてるとこなんて初めて見たぜ。」
天龍 「・・・もう少し様子見しとくか。これは決して足柄が恐いからではない。姉として妹の成長を見守っているのだ。」ウム
黒霧 「琴、龍田は君のくれた下着についてはしたないと言ったのであって、君自身を貶めたわけじゃないよ。」
黒霧 「それとも君は、龍田がはしたないと評する下着を好んで身に着けるようなはしたない女なのかな?」
足柄 「ちっがうわよ!あれは酔いの勢いで買っちゃって、後々ありえないわって思ってたっちゃんにあげてたやつよ!」
龍田 「・・・は?」ピク
漣 「うーわ。ただ要らない物をお下がりであげるならまだしも。」
曙 「使ってる人の気が知れないってレベルの物を押し付けるとか。」
漣・曙「ないわー。」ドンビキ
足柄 「ぐっ。だって、たっちゃん水着も結構際どいの平気で着てたし。そういうのが好きなんだと思って。」
龍田 「一応、あたしの好みを考えてくれてたことには礼を言うわ。でもね。一言確認してほしかったわ~。」フフフ
足柄 「・・・ごめん。」
龍田 「罰として、足柄ちゃんがどんな下着を着けてるのか見せてちょうだい。今、此処で。」
足柄 「え?い、今?此処で?こいつの目の前で?」
龍田 「何か、不都合でも?」ニコォ
足柄 「は、ははっ・・・。ない、です。」ウルッ
龍田 「よろしい。じゃ、脱いで?」フフッ
足柄 「はい・・・。」
ヌギヌギ
黒霧 「今回は目隠しをしないんだね、灯。」
曙 「だってこれは罰だもの。さっきは龍田さんの為にしただけ。こいつには不要よ。」フンッ
朧 「いんがおーほーなのね。」ヘッ
足柄 「ほ、ほら。これで、いいでしょ。」パサ
漣 「いや駄目だ。制服は半脱ぎが相場。全部脱いでどうする!」クワッ
足柄 「着けてる下着を確認したいんでしょ!?だったら全脱ぎしたほうが見やすいじゃない!変な拘りぶっ込むんじゃないわよ!」
龍田 「足柄ちゃ~ん。」
足柄 「はいっ!半脱ぎのほうがよろしいでしょうか!?」ビシッ
龍田 「自分だけ可愛い下着を着けて・・・狡い。」ムゥ
足柄 「・・・今度、一緒に買い物、行く?」
龍田 「今日行きましょう。」
足柄 「随分と急ね。明日じゃ・・・。」
龍田 「今日、行きましょう?」ニコッ
足柄 「わかったわよ。じゃあ、羽黒にも声掛けておいてよね。あの娘、意外にそういうの詳しいから。」ハァ
龍田 「羽黒ちゃんが一緒となると、妙高ちゃんもついてくるわね。折角だから、那智ちゃんも誘って6人で行きましょうか。」チラ
黒霧 「ん。天龍と龍田の分はもう用意してあるから、妙高型の外出許可証を追加で出しておくよ。」ジー
龍田 「ありがとう。」フフ
足柄 「///」プイ
曙 「父さん、見すぎよ。」テシッ
黒霧 「そりゃあね。大昔に僕がプレゼントしたものを今も着けてくれてるわけだし。目が離せなくなっても仕方がないってものだよ。」
足柄 「大昔とか言うな!」
漣 「つーか、女性に下着贈るとか。まじ半端ねぇぜ、ぱぱん。」
曙 「よくサイズわかったわね。」
黒霧 「あぁ、それは琴と一夜をともに・・・。」ムグッ
足柄 「子供の前で何を言ってるのかしら~!」
曙 「そもそも、なんで下着を贈ろうと思ったのよ。」
足柄 「あ、それは私も知らない。」パッ
黒霧 「ありえない組み合わせを平然と着てたから。」
一同 「あ~。」
足柄 「何、その瞳っ!ていうか、もっと早く言いなさいよ!」バカ!
天龍 「なんだ。足柄も大して龍田と変わりないじゃねぇか。」
足柄 「そうなの?」
龍田 「やっと出てきたと思ったら、一言目がそれ?曝露話ならあたしも負けないわよ、お姉ちゃん。」キッ
天龍 「あー。ははっ。すみませんでした。」
漣・曙「よわっ。」
黒霧 「下着に関しては三人とも同列でしょ?天龍はトップレス、龍田はお下がりの色物だらけ、足柄は常に上下が揃ってない。」
天龍田「」ウッ
足柄 「今日は揃ってるわよ!」
黒霧 「今日"だけ"でしょ。」
足柄 「」ウッ
黒霧 「これを機に、各々意識改善に努めること。さもないと・・・。」
龍田 「と・・・?」
黒霧 「天龍が酷いことになります。」
天龍 「なんでだよ!それぞれにペナルティでいいだろうがよ!なんで俺が代表みたいになってんだよ!」
黒霧 「君が一番まずい状況に在るからだよ。君、男だったら今年で魔法使いになる歳らしいね。」
黒霧 「今踏みとどまっておかないと、もうこの先挽回する気力は起きないよ?」
天龍 「・・・実年齢の話はするなよ。」
黒霧 「四半世紀以上守り続けてきた純血、本当に奪うからね。頑張ってらっしゃい。」
足柄 「もういっそ一回抱かれたほうがいいんじゃないの?あんた達。」
龍田 「あたしを入れないで!?」
天龍 「俺の純血は散らされてもいいのかよ・・・。」ハハッ
曙 「ったく。経験がないまま大人になると、ああも面倒くさい奴になるのね。」ハァ
漣 「お~お。当人達が居なくなった途端に言いますなぁ、あかりん。20年後にブーメランにならないといいね。」ニィ
朧 「寧ろそうならない未来が見えないのねん。」
曙 「やかましい。この中なら莫迦澪が一番そういうのに縁が無さそうだわ。」フン
漣 「なら勝負しようぜ。七駆の中で誰が一番に彼氏持ちになるか。ま、どうせ一番はこの撫子大先生だろうけどな。」ヘヘッ
朧 「おーとも・・・。」オゥ?
曙 「そこは自分だって息巻くところでしょうが。」
漣 「いや、でもさ・・・。勝てる気しねーべ?まずうちはそういう対象に見られるか怪しいし。あかりんは性格きついし。」
ア? ソウイウトコダッテ
漣 「姫姉はさ・・・。」チラ
潮 「Zzz」クー
漣 「告白されても全部断るだろ。今が一番幸せって、そういう顔してる。」
曙 「姫百合って、意外と人の話聞かないわよね。だから成績が伸びないんじゃ・・・。」
朧 「消去法で一番になるのは不本意なのね。」ムゥ
黒霧 「そろそろ艤装の説明に戻ってもいいかな?」
五月雨「おはようございま~す。」ポヤポヤ
時雨 「眠い・・・。」ウゥ
鳳翔 「おはようございます。随分と早かったですね。てっきり今日はお昼まで起きてこないものと。」アラ
五月雨「昼夜逆転すると、色々と支障が出るので。」クァ~
時雨 「頑張って、起きて・・・。」Zzz
陸奥 「姉のほうは駄目みたいね。」
五月雨「陸奥さん、おはようございます。昨晩は眠れなかったみたいですね。お父さん達の熱気に中てられでもしましたか?」
陸奥 「テンションを深夜から朝に調整してちょうだい。姉さんの鼾が五月蠅くて眠れなかっただけよ。」ゲッソリ
五月雨「はて。前の鎮守府でも同部屋だったのでは?」
陸奥 「別よ。艦娘同士の結託を抑止する目的でね。そういう所もあるの。」
五月雨「そうですか・・・。ところで、その長門さんは?」
陸奥 「まだおねんねしてるわよ。」
五月雨「そうですか・・・。」
時雨 「Zzz」
五月雨「・・・私も寝ようかな。」
カチャ
天龍 「お、なんだ。意外と揃ってるじゃねぇか。」
五月雨「居ない人のほうが多いですけどね。」オハヨウゴザイマス
龍田 「七駆の娘達と妹ちゃんは、お父さんと一緒に外に居るわよ~。」
時雨 「そと・・・?」ムクリ
陸奥 「あら、おはよう。」
時雨 「ボクも、そとで、ねる・・・。」フラフラ
五月雨「いってらっしゃーい。」
パタム
足柄 「大丈夫なの?あれ。」
五月雨「さあ?」
サアッテ・・・
五月雨「まぁ、時雨姉さんのことはいいとして。天龍さん、龍田さん。お父さんに何か言われませんでしたか?」
龍田 「言われたというか・・・。」
天龍 「俺の貞操が危機だな。」ハハッ
足柄 「私は一回ヤっておくべきだと思うのよね、たっちゃんも含めて。」
龍田 「だから、あたしを入れないでってば。」
天龍 「俺はいいのかよって。」
龍田 「本気で嫌がってるように見えないから、いい。」ビッ
天龍 「お前も大概だぞ?」
龍田 「はぁ・・・?」
足柄 「そうね。たっちゃんの場合、嫌がってるというよりはただ慣れてないだけって感じがするわ。」
龍田 「慣れてないから嫌なの。」
足柄 「誰だって始めは慣れないものよ。」
龍田 「・・・慣れる気がしないのよ。」
陸奥 「あー。それすっごいわかる。」
五月雨「此処の大人達はコミュニケーション能力が低すぎやしませんか?」
鳳翔 「そういう問題でしょうか・・・。」
鈴谷 「んー。ここを、こう?」スッ
紫苑茜「そうそう。あんた、中々筋が良いじゃない。センスを感じるわ。」
鈴谷 「ほんと?いやいや照れるな~。」エヘヘ
熊野 「私も出来ましてよ。」フフン
鈴谷 「何、その超リアルなうさぎリンゴ。逆にキモい・・・。」ウワァ
熊野 「なっ!ここまで仕上げるのに私がどれだけ苦労したと・・・!」
紫苑茜「こういうのはデフォルトでいいの。あんまり凝りすぎると・・・ああなるわよ。」チラ
近衛麗「」モクモク
鈴谷 「シル〇ニアファミリーみたい・・・。」ワーオ
熊野 「飴細工まで・・・。いったい何処でそんな技術を・・・。」エェ
紫苑茜「姫ちゃんが食べてくれるだろうからいいけど、昨日のあんたに何があったのよ。本当に。」ハァ
近衛麗「麗ちゃんは只今傷心中です。どうぞお構いなく。」イジイジ
紫苑茜「近衛の一族が一度振られたくらいで、みっともない。」ハッ
近衛麗「二度目ですぅ。というか、何回目かなんてことは問題じゃないの。脈があるかないかが問題なの。」フン
紫苑茜「そりゃあ、あれだけパパ、パパ言ってればある脈もなくなるでしょうよ。」
近衛麗「んな急に呼び方を変えられるわけないじゃない!一緒に暮らしたのがたった数年でも、私にとっては重みのある数年なの!」
紫苑茜「それはしーちゃんだって同じことよ。昨日のあれも、軽々にしたことじゃないでしょう?お互いに。」
近衛麗「・・・うん。」
紫苑茜「昔ね。何度か、あんたの話をしてくれたことがあったの。誰が訊いたわけでもないのに、あのしーちゃんが自分から。」
紫苑茜「そのときのしーちゃんの顔、はっきりと憶えてるわ。父親の顔をしてた。娘を愛し、心配する父親の顔をね。」
紫苑茜「この際だからはっきり言うけど、しーちゃんにとってあんたは"娘"よ。ひとりの"女"である前にね。だから・・・わかるでしょう?」
近衛麗「・・・わかってるわよ。昨日のあれで諦めろって、そういうことなんだってことくらい。」
近衛麗「でも、どうしようもないの!どうしようもないくらい・・・好きなの・・・!」
紫苑茜「その気持ちはわからなくもないけど・・・。」
近衛麗「初めてなのよ!この私が!誰かを、本気で好きになるなんてっ!本気で・・・恋をするなんて・・・!」
紫苑茜「・・・。」ウン?
近衛麗「ねぇ。私はこれからどうすればいいの?恋の終わらせ方なんて、わからないわよ・・・。」
紫苑茜「そうね。取り敢えず、相談する時間をちょうだい。直ぐに戻るから。」タッ
キー バタム
熊野 「え・・・?この状態で放置ですの?私達も一緒に?」
鈴谷 「うぅ・・・。つらい、だろうね。なんだか、鈴谷。泣けて・・・。」ズビッ
熊野 「前言撤回ですわ。私をこの場に放置しないでくださいまし!」ダット
日陰 「ん~ふふっ。」ニヨニヨ
紫苑茜「お楽しみのところ失礼するわよ。」ヌ
日陰 「わっ。ちょっと、吃驚させないでよ。お腹の子に障ったらどうするの?」モウ
紫苑茜「黒霧のくせに気配に鈍いあんたが悪い。というか、お腹の子って・・・。」
日陰 「さ~て、誰の子で・・・。」
紫苑茜「そんなことは今はいいの。」
日陰 「そんなことって。これってかなり重大なことだよ?神命に知られたらどうなるか、想像しただけでおもしろ・・・気が重いのに。」
紫苑茜「いいから聞きなさい。しーちゃんが受け入れる女性の傾向についてよ。」
日陰 「受け入れるねぇ。陥れるの間違いだと思うけど。時雨くんって、餌を蒔かないうちから寄ってくる女には冷たかったりするし。」
紫苑茜「・・・なるほど。だから麗は駄目なのね。わかったわ。ありがとう。ところで、あんたのお腹の子についてなんだけど。」
日陰 「あ、やっぱり気になる?気になっちゃう?」ニマニマ
紫苑茜「その勝ち誇った顔。最高にむかつくわぁ。」ピキッ
日陰 「だってぇ、あの時雨くんが自分から行動を起こしてくれたんだよ?理由はともかくとしてさ。」
日陰 「神命が生涯を捧げてまで夢見たことなのに、横から私が攫っていくなんて・・・。ゾクゾクしちゃう。」アハァ
紫苑茜「この女はっ・・・!」ヒクッ
熊野 「・・・何処に居ても地獄ですわ。」
紫苑茜「戻ったわよ・・・。」キー
鈴谷 「おかえりー。」グスッ
紫苑茜「・・・なんであんたが泣いてるのよ。」
鈴谷 「いや、想いが受け入れられないのは哀しいなって・・・。あ、くまのん何処に行ったか知らない?」
紫苑茜「あの娘なら部屋に戻ったわよ。何処も地獄だって言って。」
鈴谷 「そっか。じゃあ、鈴谷が作ったうさぎリンゴ差し入れてくるね。」トテトテ
紫苑茜「ええ。いってらっしゃい。」
バタム
紫苑茜「・・・で、どうするかは決まったの?」
近衛麗「どうするって何よ。娘として傍に居続けるか、諦めて帰るかってこと?どっちもお断りよ。」ハッ
紫苑茜「・・・あんたは、どうしたいの。」
近衛麗「女として、大切にされたい。」
紫苑茜「それだけ?」
近衛麗「・・・愛されたい。ぱ・・・ううん。"時雨"の愛が欲しい。」
紫苑茜「そう・・・。それじゃあ、あんたはわたしの敵ね。完膚なきまでに叩きのめしてやるわ。」フンス
近衛麗「はぁ?この流れでそんなこと言う?」
紫苑茜「わたしだって、しーちゃんの愛が欲しいもの。注がれる愛は多いほうが良いに決まってるじゃない。だから、あんたは敵よ。」
近衛麗「ふーん。ぱ・・・時雨の愛を独り占めしようっての。そんなことはさせないわよ。この私が居る限りね。」
紫苑茜「あら、言うじゃない。女として受け入れられてないくせに。」フッ
近衛麗「それはあんたも同じでしょうが。」アァ?
紫苑茜「何度拒まれようと、わたしが諦めない限り終わりはないのよ。永遠の時を掛けてじっくりと攻略してみせるわ。」フフン
近衛麗「あっそう。」
紫苑茜「あんたは残り少ないその寿命でしーちゃんを振り向かせることができるかしら?」ニィ
近衛麗「やってやるわよ。永遠の時に胡坐をかいて眺めてなさい。私があんたより先に幸せを掴んでやるんだから。」グッ
・・・チラ
五月雨「お母さんも悪い人ですねぇ。敵になり得ないとわかった途端に喧嘩を売って励まして・・・。」
五月雨「お母さんの性根がもう少しマシだったなら、ヲーちゃんは完全な天使になれていたでしょうに。あ~あ、勿体ない勿体ない。」ヤレヤレ
羽黒 「」ジー
カキカキ
妙高 「羽黒?さっきから何を描いて・・・。あら、貴女は写生も達者なのね。描いているものは気に入らないけれど。」フフ
羽黒 「ねぇ、お姉ちゃん。これを見て、どう思う?」スッ
妙高 「どうせなら私を描いてくれたらいいのにって思うわ。」ニコリ
羽黒 「お姉ちゃん・・・。」ジト
妙高 「そんな瞳をしないでちょうだい。貴女の絵のモデルが、よりにもよってあの人だってことが本当に頭にくるの。」ヒクッ
羽黒 「・・・那智お姉ちゃんはどう思う?」プイ
那智 「ん?そうだな。良い笑顔をしていると思うぞ。それほど優しい微笑みを向けられたことはないがな。」フッ
妙高 「あぁ、ごめんなさい。私も良い笑顔をしてると思うわ。お姉ちゃんが悪かったから、無視をしないでちょうだい!」アセアセ
羽黒 「やっぱり、そうだよね。子供達に囲まれて、優しい微笑みを浮かべる黒い人の表情は、とても偽りのものとは思えない。」ンー
羽黒 「でも、そんな黒い人の"好き"は"壊したい"。好きなのに・・・好きだから?好きって、何だろう。」トオイメ
那智 「また随分と難しいことを考えているな。出番だぞ、妙高。貴様の大好きな妹の悩みを解決してやれ。」
妙高 「これは、羽黒が私に振り向いてくれるチャンスなのでは!?」ピシャーン
那智 「今回も駄目そうだな。」フッ
足柄 「ねぇ、羽黒居る~?」カチャ
妙高 「好き好き好き好き好き好き好き・・・。」グルグル
足柄 「・・・。」キー
那智 「見なかったことにして逃げるのはやめろ。妙高がおかしいのはいつものことだろう。」
足柄 「それにしたって今回のは異常よ。精神病院で診てもらったほうがいいんじゃないの?」
妙高 「もう経験済みです。」
足柄 「知りたくなかったわ、そんな事実・・・。」
足柄 「あ、で、羽黒。今日暇でしょ?ちょっと買い物に付き合ってくれないかしら。」
羽黒 「この先ずっと人間観察で忙しいから無理。」
足柄 「・・・たっちゃんの頼みでも?」
羽黒 「行く。」
足柄 「相変わらず早い変わり身だこと。」イラッ
妙高 「羽黒が行くなら私も行きます。文句は言わせません。」
足柄 「だろうと思って、もう黒に話を通してあるわ。許可証が発行されたら直ぐに行くわよ。那智姉も。」
那智 「私もか?こういうときは留守番になるものとばかり思っていたぞ。」
足柄 「それは那智姉がナンパされまくるからでしょ。うちには初心な乙女が多いんだから、誘われなくもなるわよ。」
那智 「寄ってくるものは仕方がないだろう。しかし、どうして今回は私もなんだ?」
足柄 「私がついてきてほしかったの。色っぽい下着を買って、黒を驚かせてやるんだからっ。」フンス
那智 「そうか・・・。ならば、行かないわけにはいかないな。」フフッ
羽黒 「私が指名された理由はそれか・・・。ということは、龍田さんって実はそういうのに疎い・・・。」
羽黒 「強請るネタに使えるかも・・・。」フフフ
鳳翔 「もうすぐ朝ご飯の用意ができるというのに・・・。」
陸奥 「ふあ~。眠い。」フゥ
日陰 「んふふ~。」~♪
鳳翔 「ふたりしか集まっていないだなんて。」ハァ
五月雨「私も居ますよ?」ヒョコ
鳳翔 「知っていますよ。料理を手伝ってくれてありがとうございます。」フフ
五月雨「いえいえ。私は調味料を手渡したりしていただけで、殆どお母さんと麗さんがやってしまいましたから。礼は不要です。」フフン
鳳翔 「おふたり共、本当に料理が上手で・・・。ちょっぴり、羨ましいです。」
五月雨「鳳翔さんだって、味付けの知識とか凄かったじゃないですか。お母さんが教えられているところなんて初めて見ました。」
鳳翔 「愛の賜物ですよ。」ウフフ
五月雨「それはお母さんも同じことです。麗さんも。」
鳳翔 「こんなにも人に愛されて、時雨さんは幸せ者ですね。」
五月雨「それは、この私に愛されて幸せにならない男なんて居ないってことですか?」
鳳翔 「ええ。私にとってはそれが"愛する"ということですから。」ニコリ
近衛麗「一番の敵は彼女かしら・・・。」ムー
紫苑茜「いや、あの娘は多分、一方的な愛で満足しちゃうタイプだから。大丈夫でしょ。」
三隈 「只今帰りましたのー。」ウゥ
オカエリー
漣 「うわ。みっちゃん先生、よれよれじゃん。また蓮華たんに扱かれたんけ?」
朧 「そろそろ、それも快感になる頃よの。」ウム
三隈 「なりませんの。ところで、そんな重そうな鉄球を持って何をしていますの?」エェ
漣 「あー!みっちゃん、今ちょっとひいたべな!こちとら一所懸命、誠心誠意、訓練に励んでるってのにさ!」
朧 「うちは無関係です。」シレッ
オイコラァ!
三隈 「そしてこちらは・・・。」
曙 「また、負けた。」ズーン
ヲ級 「5連勝なの。」ムフー
レ級 「いい加減諦めようぜ?ヲーちゃんには勝てねぇって。」ナ?
曙 「もういっかい!」ンン!
ヲ級 「何度でも返り討ちにしてやるの。」ヘッ
レ級 「灯姉の負けず嫌いも大概だな。」ヤレヤレ
三隈 「どうしてオセロでそこまでムキになれるのやら・・・。」ストッ
黒霧 「さも当然のように僕の隣りに座るとは、君も成長したね。」
朧 「褒めて遣わすのである。」ムフン
三隈 「喧しいですの。三隈には構わず稽古を続けますの。」フン
潮 「Zzz」クー
三隈 「一番鍛える必要のある娘が・・・。」ハァ
黒霧 「姫百合は燃費が悪いんだよ。」ナデナデ
三隈 「まったく。膝の上とは羨ましいですのっ。」ムン
黒霧 「肩なら空いてるけど、使う?」
三隈 「・・・今はまだ、遠慮しておきますの。」モジモジ
時雨 「ん~。」モゾッ
三隈 「ああも無遠慮にはなれませんの。少なくとも、生徒達の前では。」マッタク
漣 「つーかさぁ。しぐしぐってぱぱんのこと嫌いだべ?その割にはいっつも傍に居るべな。」
朧 「素直になれないお年頃ぉ。」
黒霧 「眠はいつだって素直だよ。ただ心が複雑な所為で、そう見えないだけさ。」サラッ
時雨 「にぃに、その撫で方・・・駄目。」ンッ
三隈 「起きてましたの?」アラ
Zzz
三隈 「え?寝言ですの・・・?」
黒霧 「つまり骨抜きにする絶好の機会。」キラン
ワシャワシャ ハフゥ~
朧 「おぉうおぅおぅお~。」キラキラ
漣 「撫子もやってほしいってよ。」
潮 「ご飯!」ガバッ
ギューン
紫苑茜「あんた達~。朝ご飯の用意ができ・・・。」
シュバビーン タァ!?
紫苑茜「な、何事・・・?」
漣 「姫姉は飯が最優先だってよ。」
三隈 「ぶれませんわね。それが良いのか悪いのかは別として。」フゥ
イタダキマース
足柄 「・・・美味しいわね。」ム
那智 「お前の腕では到底勝てそうにないな。」フッ
足柄 「今は、ね!練習すれば私だってこれくらい・・・。」ブツブツ
羽黒 「あれだけ練習して、普通に美味しい程度のカツしか揚げられないお姉ちゃんには無理だと思う。」
足柄 「なんですってどうもありがとう!」
羽黒 「どっち・・・。」エェ
妙高 「落ち着きなさい。」モウ
ムグムグ
ヲ級 「次はお魚が食べたいのっ。」ンフー
黒霧 「ん。骨は取ってあげるからね。」
ヲ級 「なの!」ニパッ
レ級 「ん”!!ほ、骨が喉にっ!」ゲホッ
黒霧 「ああ、ほら。こっち向いて口開けて。」グイ
レ級 「うん。」グスッ
アー
黒霧 「何も見えない。」
ヲ級 「当たり前なの・・・。」
レ級 「いいから早く取ってくれよ、父ちゃ~ん。」ウゥ
五月雨「最近、お父さんがポンコツな件。」
時雨 「どうせ演技でしょ?全部。」アム
天龍 「あいつのとこの連中は、みんな料理が上手いのな。」モグモグ
龍田 「うちだと熊野ちゃんくらいだものね。"ちゃんと"料理ができるの。」
陸奥 「あら。足柄ちゃんだって料理は上手よ?」
龍田 「品目が偏ってさえいなければね。」
陸奥 「まぁ、それは・・・。」ハハ
三隈 「昔から貴女は何でもできますの。羨ましいですの。」
鈴谷 「ほんとだよ。鈴谷もそんな才能が欲しい~。」
熊野 「器用貧乏が才能だなんて莫迦莫迦しい。何でもできることを、さも良いことのように言いますけれど、実際は違いますわ。」ハッ
鈴谷 「なんでさ。」
熊野 「言ってもわかりませんの。」
鈴谷 「なんて嫌味なっ。そんな風に育てた覚えはありません!」フン
熊野 「育てられた覚えもありませんわ・・・。」
ダダダダッ
長門 「大変だ!」バァン
陸奥 「何がよ。誰よりも遅いお目覚めのくせして騒々しい。」ジト
長門 「ヲ級が居なくなった!」
陸奥 「・・・はぁ?」
長門 「昨晩は一緒に寝ていたのだ。それが、起きたら居なくなっていた!」
陸奥 「姉さんの鼾にうんざりして避難したんじゃないの?」
長門 「私は鼾などかかん!」
陸奥 「あ?」ブチッ
天龍田「あー。」
陸奥 「誰の所為で私が寝不足になってると・・・。貴女にはこの目の下の隈が見えないのかしらぁ?」ユラァ
長門 「酷い隈だな。枕が合わなかったか?」ム
陸奥 「あんたの鼾の所為だって、言ってるでしょうがぁ!!」ギチッ
長門 「お、おい!陸奥!絞め技は私の装甲でも耐えられ・・・!」
ウラァァァァ! マテ!ハヤマルナ!
漣・朧「いいぞー!もっとやれー!」ヤイノヤイノ
曙 「阿呆らし。」ハッ
潮 「」モキュモキュ
レ級 「ヲーちゃんは平気だったのか?ながもんの鼾。」
ヲ級 「先に寝ちゃったから、鼾のこと自体知らなかったの。」
長門 「はっ!ヲ級が居る!」
陸奥 「今は私から安眠を奪ったことについて反省しなさぁい!」ググッ
長門 「待て!これ以上は本当にっ!」
ギャアア!
鳳翔 「鎮守府がこんなに賑やかなのは、いつ振りでしょうか。」ウフフ
五月雨「賑やかというよりは。」
時雨 「騒がしい。」モグモグ
五月雨「ですね。」
時雨 「うん。」ゴックン
カチャカチャ
鳳翔 「人数が増えると、洗い物が大変ですね。」フゥ
紫苑茜「いいじゃない。それだけ幸せがあるってことよ。それに、子供達も手伝ってくれるわ。」
レ級 「食べ終わった後の食器を見てると、性格が見えてくるもんだな。」ワシワシ
ヲ級 「天龍お姉ちゃんは繊細な乙女なの。」ジャー
五月雨「それも今夜までですよ。お父さんに純血を散らされて、さてはてどう変わることやら。」キュッ
時雨 「試験に合格できないのは確定事項なんだ・・・。」フキフキ
紫苑茜「会話の内容はあれだけど。」
鳳翔 「どうしてこうなるまで放っておいたんですか・・・。」ハァ
紫苑茜「逆よ。しーちゃんの傍に居たからこうなってるの。」
鳳翔 「計り知れないですね、時雨さんの影響力は。」
五月雨「鳳翔さんはその身を以て知っていますからね~。」
時雨 「経験者は語るってね~。」
鳳翔 「言葉にされると・・・その、恥ずかしいです。///」シュー
近衛麗「可愛いわね、この娘。」ジー
レ級 「食べるなよ?」
鳳翔 「え・・・?」
ヲ級 「表現"だけ"は知ってるレーちゃんなの。」
レ級 「だけで充分だろ?まだ〇歳なんだから。」
鳳翔 「えぇ・・・。」
コンコン
榛名ミニ「・・・。」モクモク
コンコン・・・
榛名ミニ「・・・。」ンー
黒霧 「返事くらいはしてほしいものだね。」ムニッ
ワヒャイ!
榛名ミニ「ひ、ひぐへしゃん!?」
黒霧 「朝ご飯まだでしょ?持ってきてあげたよ。」フフッ
榛名ミニ「あ、ありがとうございます・・・。」
ハイ アーン ウェエ!?
黒霧 「ほら、はやく。」
榛名ミニ「え、えぇ・・・。あ、あ~」
ンッ
黒霧 「美味しい?」
榛名ミニ「はい。美味しい、です。」ムグムグ
黒霧 「よかった。君の為に作り直したんだよ?」
榛名ミニ「そんなっ。態々気を遣っていただかなくとも、私は・・・。」
黒霧 「お腹が空かない?」
榛名ミニ「・・・はい。」
黒霧 「僕も同じさ。」
エ?
黒霧 「僕の身体は既に生命活動を停止している。原初の霧で創られた、魔力で動く肉体だからね。食事も、睡眠だって必要ない。」
黒霧 「だけど、一度身に染みた習慣は中々抜けないでしょ?必要ないとわかってはいても、何だか落ち着かない。」
榛名ミニ「はい・・・。だから私は絵を・・・。」
黒霧 「必要のないことでも、やっていけないわけじゃない。案外、無駄だと思ってることが一番楽しかったりするものだよ。」フフ
榛名ミニ「食事を無駄とは・・・凄いことを言いますね。」
黒霧 「今ならどんなに食べても太らないんだから、思いっきり食べてみたら?」
榛名ミニ「こんな小さな身体に収まる量なんて高が知れてます。満腹になっても量が伴わないなら満足には足りないかと。」
黒霧 「・・・元のサイズに戻ってみる?」
榛名ミニ「できるんですか!?」
黒霧 「元の大きさに戻るだけならね。君の身体の構造を解析して、大きさを調整するだけだから。勿論、無料ではないけど。」
榛名ミニ「何を、支払えばいいんですか・・・?」
黒霧 「君の唇。」スッ
榛名ミニ「唇・・・ですか。」
黒霧 「さぁ、どうする?」ニコリ
ハルナハ・・・
ウーン ハッ
長門 「あれからどれだけ時間が経った!?」ガバッ
黒霧 「さあ?30分くらいかな?」
長門 「そうか。陸奥は・・・。」
黒霧 「部屋に戻ったよ。今頃ぐっすり眠ってるんじゃないかな。」
長門 「私の鼾はそんなに五月蠅いのか・・・。」ズーン
黒霧 「僕は知らないけど、陸奥にとってはそうだったのかも知れないね。」
長門 「・・・提督、部屋替えを申し出たいのだが。」
黒霧 「却下。姉妹は同室がこの鎮守府の基本方針です。それから、僕は後任が決まるまでの代理だから"提督"はなし。"黒"と呼ぶように。」
長門 「しかしだな、黒よ。このままでは陸奥が睡眠不足で倒れるぞ。」
黒霧 「ヘッドホンと静かで優しい音楽でもプレゼントしてあげたら?そういうの、やったことないでしょ。」
黒霧 「きっと喜ぶよ。驚きのほうが大きいとは思うけど。」フフッ
長門 「そうか。そうだな!よし。そうと決まれば直ぐに行動だ。言い出したのは黒なのだから、付き合ってくれるな!」ムフー
黒霧 「それは構わないけど、ちゃんと自分が良いと思ったものを選ぶんだよ?」
長門 「わかっている。ところで・・・。」
???「」モッ モッ
長門 「先程から巨大なパフェを頬張っているあの娘は・・・。」
黒霧 「榛名だよ?」
榛名 「ん~!」パタパタ
黒霧 「体重を気にせず食べることができるって素敵だね。」ニッコリ
長門 「そう・・・なのか?」ウン?
榛名 「時雨さ~ん?後でちょっとお話があるのですが~。」ウフフ
黒霧 「さぁ、長門。陸奥へのプレゼントを買いに行こうか。」スタスタ
長門 「あ、ああ・・・。」
榛名 「まったくもう。乙女に対してデリカシーってものがないですね、あの人は。」ハム
ンー!
榛名 「でも、榛名は今とっても幸せです。」ニヘラ
足柄 「」チラ
羽黒 「」ホケー
妙高 「」イライラ
那智 「」ペラ
足柄 「・・・遅い。」
妙高 「絞めますか。」ゴキッ
羽黒 「返り討ちに遭うだけだからやめて。」
那智 「大方、服を買いに行く為の服が無いのだろう。どんな格好で妥協してくるか、期待して待っていればいいさ。」ペラ
足柄 「なるほど。なら、思いっきり笑ってやる準備をしておかないとね。」フフフ
羽黒 「お姉ちゃんの悪巧みは失敗の予感。」
那智 「さて、どっちに転ぶだろうな。」フッ
オーイ
妙高 「やっと来ましたね。」
足柄 「さぁ。たっちゃん達はいったいどんな面白い格好を・・・。」エ?
天龍 「悪ぃ。遅れた。」キラーン
龍田 「ごめんなさい。むっちゃんの拘りが強くって・・・。」シャラーン
那智 「そうか。陸奥に借りたか。」フフッ
龍田 「私はね。天龍ちゃんのは、長門ちゃんに借りたわ。」ウフフ
羽黒 「」ポー
天龍 「・・・なんだよ。こういう洒落た服は似合わないってか?」
足柄 「もうそのまま黒のとこ行ってきなさいよ。」
天龍 「下着を買いに行くんだろ・・・?目的変わってるぞ。」オイ
羽黒 「序でに服も買いに行っていいですか?」ズイ
龍田 「ええ。それは構わないけれど、欲しい服でもあるの?」
羽黒 「龍田さんに服を選んであげたい。」キラキラ
龍田 「え?」
妙高 「それなら私にも!」
羽黒 「お姉ちゃんは少女味が無いから嫌。」バッサリ
妙高 「なんてこと・・・。」ズーン
那智 「ここは姉として妹の成長を喜ぶところだぞ、妙高。あの羽黒がやりたいことを見つけたのだからな。」
妙高 「そうね・・・。涙を飲んで、羽黒の成長を祝福するわっ。」ムン
羽黒 「愛情がウザい・・・。」ムゥ
足柄 「流石はむっちゃんと言うべきか。また綺麗に纏めたわねぇ。」マジマジ
天龍 「おい。あんまりじっくりと見るんじゃねぇよ。恥ずかしいだろ。」
那智 「黒のカッターに黒のパンツ。緩く絞めた黒のネクタイには白のラインが一本。あの方を意識したとしか思えない装いだな。」
天龍 「んなこと俺が知るかよ。選んだのは陸奥だぞ。」
足柄 「それにしてもよく釦を留められたわね。いくら長門の服ったって、貴女の胸囲は相当でしょ?」
天龍 「晒巻いてんだよ。言わせんな。」ッタク
足柄 「それに対してこっちは・・・。」
龍田 「なぁに?別におかしくないでしょう?」
足柄 「おかしくはないけど・・・。正直、浮いてる。」
龍田 「なんで!?」ガーン
足柄 「だって、たっちゃん・・・。」
黒霧 「まるで水彩画の中から飛び出してきたみたいだ。」
ビクッ
黒霧 「淡い空色のワンピースに白のケープ。この世のものとは思えない美しさと儚さがある。綺麗だよ、龍田。」フフ
龍田 「あぅ・・・。///」シュー
天龍 「妹が褒められるのは、悪くないな。」ヘヘッ
黒霧 「君も魅力的だよ、天龍。どちらかと言うと僕は、男寄りの格好のほうが好きなんだ。」
天龍 「お、おう・・・。あんがとな。」テレッ
ン?
天龍 「いや、なんで俺がお前の好みに寄せたみたいになってんだよ!違うからな!これは陸奥のセンスだからな!」
黒霧 「わかってるよ。僕はただ、素直に感想を述べただけさ。」ニコッ
足柄 「はまってるわぁ。吃驚するくらい黒の趣味ど真ん中をぶち抜いてるわぁ。」
那智 「お前も素材は良いんだ。磨いて瞳を眩ませてやれ。」フッ
足柄 「見えてないじゃない・・・それ。」
那智 「しかし、ふたりだけ感想を貰って私達には何もなしというのはいただけないな。」
足柄 「確かにそうね。私服姿を見せる機会なんて殆どないわけだし。何か言ってみなさいよ。」ホレホレ
ジャア エンリョナク
黒霧 「綾は流石の着こなしだね。デニムで上下を纏めつつ、所々に女性らしさを感じさせるポイントを作ってる。」
黒霧 「へそ出し然り、ペディキュア然り。如何にもモテる女性って感じがするよ。」
那智 「絶賛だな。」フフン
黒霧 「琴は、綾に影響されすぎかな。それも半端に真似してる所為で何とも言い難い仕上がりになってる。」ウーン
足柄 「姉妹なんだから似たような服装になるものでしょ!?」
黒霧 「そうではない実例が此処に。」
天龍田「ん?」
足柄 「このふたりは例外よ!」
天龍 「俺達を色物扱いしてんじゃねぇ。」オイコラ
ハイ ツギー ナガスナァ!
黒霧 「妙高は・・・なんで中世ヨーロッパの家庭教師みたいな格好をしてるの?」
妙高 「例えがわかりづらくて不愉快です。」ニコォ
黒霧 「ロングのタイトスカートにフリル付きのブラウス。胸許を彩るアメジストのブローチ。似合ってはいるけど・・・。」
妙高 「けど・・・何です?」ピキッ
黒霧 「髪型が普段と変わらないから雰囲気がきついままだ。」スッ
妙高 「私に触れ・・・!」
黒霧 「時よ。脆く崩れ去れ。」
ピタ
羽黒 「お姉ちゃん・・・?」
黒霧 「後ろで束ねるんじゃなくて、纏めて肩に垂らせば・・・。」セッ セッ
黒霧 「ほら。大人の色香を漂わせる艶やかな女性の出来上がり。」パチン
妙高 「るな!って、あら?」
羽黒 「お姉ちゃん。髪、下ろしたほうがいい。凄く色っぽい。」パー
妙高 「そ、そう?羽黒がそう言うなら、下ろしてみても・・・。もう下ろしてる?」ウン?
黒霧 「最後は羽黒だね。」
羽黒 「うん。」
黒霧 「羽黒は・・・無垢な少女を演出してるところがあざとい。」
羽黒 「そういうファッションだもん。風に揺らぐロングスカートに薄桃色のブラウス。袈裟懸けのポーチもポイントだよ?」フフ
足柄 「羽黒が誰かに笑いかけてるとこ、初めて見たかも・・・。」ヘェ
妙高 「っ!駄目ですよ、羽黒!他の誰でも駄目ですけど、この人は特に駄目です!」ガシ
羽黒 「痛い・・・。」ウッ
妙高 「ごめんなさい・・・でも、わかってちょうだい。お姉ちゃんは貴女のことが心配なの!!」ブワッ
羽黒 「私の気持ちを勝手に決めないで。お姉ちゃんのそういうとこ、嫌い。」プイ
妙高 「」ピシィ
那智 「羽黒も時を止める能力に目覚めたらしい。」ホウ
足柄 「姉さん限定でね。」
オーイ
那智 「なんだ。まだ他にも誘っていたのか?」
足柄 「いや、今回は6人だけのはずだけど・・・。」
天龍 「既に7人目が居るだろ?」
ソウイエバ・・・
長門 「すまん。待たせた。陸奥が中々解放してくれなくてな。」フゥ
ヲ級 「服選びにすっごく拘ってたの。」
長門 「まさか下着まで替えさせられるとは思わなかった。」
・・・ハ?
黒霧 「長門。君、陸奥に何て言ったの?」
長門 「私は何も言っていないぞ?ただ、何処に出掛けるのか訊かれたときにヲ級がだな。」
ヲ級 「デートって言ってやったの。」ムフー
長門 「それでこの有様だ。」フェミニーン
黒霧 「そう・・・。筋トレは程々にね・・・。」
長門 「陸奥にも同じことを言われた。」ウム
ジャ イコウカ ナノ!
天龍 「いや・・・え?」
那智 「尾行するか。」
足柄 「そうね。」
天龍 「えぇ・・・。」
龍田 「私達は買い物に行きましょうね。」
羽黒 「うん。楽しみ・・・。」クスッ
長門 「しかし、こう三人で手を繋いで歩いていると、デートというより親子の休日みたいだな。」
ヲ級 「一日家族体験なの。」ンフフ
黒霧 「それは面白そうだ。ね?"母さん"。」フフ
長門 「かっ!?・・・そ、そうだな。父さん。」ボソボソ
ヲ級 「おかーさん。」ニパ
長門 「っ!はぁ・・・こんな可愛い娘ができるなら、本当に結婚してしまうのもいいかも知れないな。」フッ
ヲ級 「あんまり調子に乗るとヲーちゃんは容赦しないの。」パー
長門 「・・・スミマセンデシタ」
ヲ級 「ヲーちゃんのお母さんはお母さんだけなの。擬似体験で我慢するの。でも、肉体関係までなら目を瞑ってあげてもいいの。」ムフー
長門 「お前はどういう教育をしてるのだ。実の親でなくとも、私はこの娘の将来が心配だ。」
黒霧 「大丈夫。ヲ級は自分の責任で行動を選択できる娘だ。僕がどれ程の猛毒だったとしても、それさえ飲み干してみせるさ。」
ポム
黒霧 「ヲ級、僕は君がどれだけ歪んだ道を歩もうと、ずっと君の父親で在り続ける。だけど・・・。」
黒霧 「僕の本質が冷酷非情な"暗殺者"であることを、忘れてはいけないよ。」
ヲ級 「うん・・・。わかってるのっ。」ニヘッ
長門 「どういう意味かはわからんが、私が踏み入っていい話ではないようだ。」フゥ
足柄 「何の話をしてるのかしら・・・。」コソッ
那智 「さぁな。だが、長門が気圧されているようにも見える。」フム
天龍 「なんで俺まで。」ハァ
長門 「ところでだな。黒の発言に気になる言葉が含まれていたのだが・・・"暗殺者"というのは何の冗談だ?」
黒霧 「君が冗談だと思うならそれでいいさ。ただ、徒にそれを吹聴してまわる心算なら、夜の闇に呑まれないようにね・・・。」フ
長門 「っ!?」ゾワッ
黒霧 「ま、これは隠し事をする気はないって、君達に或る種の誠意を示しているだけなんだけど・・・。」
黒霧 「あんまり広まるのも困るから、この真実は長門の胸の内に仕舞っておいてもらえると助かるかな。」フフ
長門 「・・・墓場まで持っていくと誓おう。」タラー
黒霧 「ありがとう。」ニコリ
長門 「だが、陸奥のやつに誠意を示すのは遠慮してやってくれ。」
長門 「あいつはあれで男性への免疫が低いからな。この喉元に突き付けられた刃には、きっと耐えられん。」
黒霧 「・・・。」ニコー
長門 「ヲ級よ。私はとても嫌な予感がするのだが、これは気の所為か?」
ヲ級 「んーん。近い未来、陸奥お姉ちゃんの涙腺が崩壊することが確定したの。」
長門 「そうか・・・。」トオイメ
五月雨「さて、お父さんも居ないことですし。勝手に訓練でもやっちゃいますか!」
漣・朧「うぇ~い!」ヒャッハー
紫苑茜「危なくないものにしなさいよ~。大怪我しても今日のしーちゃんに治療するだけの余力は残ってないわよ~。」
五月雨「安全な訓練などありましぇん!怪我をしないからという慢心が思わぬ事故を誘発するのどぇす!」
漣・朧「どぇす!」ビシッ
曙 「その前に、父さんに余力が残ってないってどういうことよ。」
時雨 「能力を使っちゃったってことだよ。榛名さんを元の大きさに戻すためにね。」
紫苑茜「人体の生成は魔力の消耗が激しいの。今日これ以上しーちゃんに能力を使わせるのは危険だわ。」
曙 「でも、どうせまた気絶するだけでしょ?」
紫苑茜「気絶で済むなら、こんなこと言わないわよ・・・。」
エ・・・?
五月雨「とぅはいえ!訓練をしないわけにもいきません!死なない程度に扱いてやるから全員纏めて掛かってこいやぁ!」ウラァ!
漣 「いきなり模擬戦か~い!」
朧 「先生!ぽんぽんが痛いです!」
五月雨「時雨姉さんは入渠の準備をお願いします。」ムン
時雨 「あれ?ボクも参加するんじゃないの?」チャキ
五月雨「・・・すみません。訓練はしますけど、模擬戦ってのは冗談です。あと、せめて刃を落としたやつ使ってあげてください。」エェ
漣 「暗殺者って恐い・・・。」
朧 「当たり前なのねん。」
五月雨「まぁ、そんなわけですんで、ちゃっちゃと始めますか。一対一の真剣勝負。」ギラッ
漣 「お~し、やったったん・・・いや、今なんて?」ウン?
五月雨「だから、模擬戦ではなく真剣勝負をすると言ったんです。あ、勿論ハンデは差し上げますよ?その上で、真剣勝負です。」ニタァ
エェ・・・
五月雨「私は撫子ちゃんとです。ハンデとして、私は素手でお相手しましょう。」
朧 「お~ぅ。」
時雨 「ボクは澪ちゃんとだね~。ハンデは・・・要らないよねぇ?」ニィ
漣 「言ってることが違うじゃん!?さみちゃん、この人どうにかして!!」
五月雨「澪ちゃんのこと、お願いしますね。」ニパー
時雨 「任せてよ。」ニコー
漣 「駄目だ。この姉妹、いかれてやがる。」
朧 「今や私達も義理の姉妹なのよ。」
五月雨「いつでもいいですよ?撫子ちゃんなりの闘い方を見せてください。」
アイサー
撫子 「うっほ うっほ」ドンドン
五月雨「ドラミングですか。自分でエネルギーを溜めるとは、また効率の悪いことを・・・。しかし、悪くはないですね。」フム
撫子 「はどーけん!」ソイ
ピシュン スカッ
五月雨「流石に衝撃波は速いですねぇ。ま、中たってなんてあげませんけど。」シュン
撫子 「いらっしゃ~い。」ニヒッ
五月雨「さぁ、殴り合いを始めましょうか。」グンッ
ラララララァ!!
曙 「前々から思ってたんだけど、なんで五月雨は音速超えの攻撃を躱せるのよ。」
紫苑茜「しーちゃんに鍛えられたからじゃないの?恩恵の効果だったり、元々の素質もあるだろうけどね。」
曙 「恩恵・・・。そういえば、私まだ恩恵を授かってない。」ム
紫苑茜「灯の存在そのものが恩恵よ。」
曙 「それは母さんにとってでしょ。撫子も姫百合も授かってるのに。莫迦澪より後だったら絶対に許さないからね。」ゴゴゴ
紫苑茜(父と娘のディープキス・・・。想像しただけで悪寒が走るわ。)ハァ
曙 「私だって恩恵を授かれば、もっとこう・・・役に立てるかも知れないのに。」ボソッ
近衛麗「それは無理だと思うわよ。」
曙 「・・・どういう意味よ。」
近衛麗「どうもこうも、貴女は"紫苑の一族"でしょ?戦闘音痴が戦闘で役に立つわけないじゃない。」
曙 「父さんと同じことを・・・!」クッ
曙 「でも、私は黒霧の血だって引いてるんだから!義理のあんたとは違ってね!」
近衛麗「へぇ。中々言うじゃない。小娘の分際で。」ピキッ
紫苑茜「ヤッバ」
近衛麗「そこまで言ったんだから、見せてくれるのよねぇ。私には無い、黒霧の血を引く証ってやつを・・・。」
曙 「や、やややってやろうじゃない。」ガタガタ
近衛麗「白兵戦に特化した近衛に生まれ、パパの許で修行した"義理の"娘の実力。思い知りなさい、"実の"娘さん。」ニィ
曙 「」ウルウル
チラッ
紫苑茜「ごめんなさい、灯。わたしに麗は止められないわ。それに黒霧の娘を名告るなら自分で売った喧嘩くらい自分で片をつけなさい。」
イヤアアア!
漣 「殺されるぅ~!!」ヒェェ
時雨 「ほらほら。逃げてばかりじゃ、運命は覆せないよ!」ギラッ
漣 「ばっか!こちとら刃は包丁しか握ったことがないってんだ!それでどないせぇっちゅうねん!」クワッ
時雨 「見て学べ!見て倣え!盗んで自分のものにしてみせろ!」グンッ
漣 「あ~あ!暗殺者ってのはどいつもこいつも優しくないねぇ!・・・だから動きが読みやすい。」ニヤ
ポイ
時雨 (閃光弾!?)バッ
漣 「はっは~!ブラフでしたぁ!」ソリャッ
クルッ ピタリ
時雨 「最後の一撃を大振りせず、刺突に抑えた抑制力は評価するよ。でも、まだまだキレがない。目を閉じていても避けられる。」チャキ
漣 「すみません。調子に乗りました。どうか私めの喉許に突き付けた刃をお収めください、御姉様。」タラー
時雨 「仕込み刀は脆い。斬り合いを嫌う態度は良い。一撃を狙うタイミングも良い。後は、確実に仕留める技術を身につけるだけだ。」スッ
漣 「それが一番難しんじゃん。」ハァ
ツー ン?
漣 「ちょっと斬れてるぅ!!」ナンジャコリャー!
五月雨「ららららぁ!」ドドド
朧 「そっくりそのまま返してやるのねん!」フライガエシ!
シュバァ オット
五月雨「今のは危なかったですね。」フゥ
朧 「全部紙一重で躱される。」ムゥ
五月雨「ダメージを受けないとわかっているが故の余裕。カウンターに注力されるとこうもやりづらくなりますか。」
五月雨「こんなのを相手に打撃一本で小破させたんですね、茜さんは。いやはや、真性の莫迦ですよ。まったく。」ヤレヤレ
朧 「さみちゃんに勝ち目は無いよの。さっさと降参するヨロシ。」フフン
五月雨「さぁ、それはどうでしょう。打撃だけが体術ではないですからね・・・。」ユラァ
シュンッ オゥ!?
五月雨「攻撃を受けること前提の構えが徒になりましたね。こうも簡単に首を極めることができたのは初めてです。」ガシ
朧 「こっ!」
ギチィ ゲェッ!
五月雨「あれ?今、何か言いましたか?」
朧 「こっ・・・。」カハッ
五月雨「ん~。気の所為みたいですね。」ニコッ
パンパンパン!
五月雨「おっと。降参ですか。」スッ
朧 「げほっ!ごほっ!」
五月雨「駄目ですよ?降参ならもっと早くに言わないと。」メッ
朧 (言わせてもらえなかったのね・・・。)ガタガタ
五月雨「まぁ、能力に溺れた者の末路は大体こんなものです。次は落としますから。そのつもりで構えてくださいね。」スン
朧 「」
レ級 「五月雨姉も眠姉も容赦ないな。」パク
潮 「」モッ モッ
レ級 「これは俺も本腰入れて指導しねーとかなー。」チラ
潮 「むっふ~。」キラキラ
レ級 「先に麗姉の傷心デザート、片づけないとな。」アム
ムグムグ
レ級 「・・・灯姉、まだ生きてっかな。」トオイメ
潮 「レーちゃん。」
ウオッ
レ級 「ど、どうしたよ。急に声掛けるから吃驚したじゃねーか。」ドキドキ
潮 「レーちゃん、私のこと何て呼んでたっけ。」
レ級 「"姫"だろ?姫百合だし、澪も撫子も、そう呼んでるときあるし・・・。駄目か?」
潮 「ううん。嬉しい。でも、灯ちゃんのことは何て呼んでたっけ。」
レ級 「灯姉。」
潮 「なんで?」
エ・・・? ナンデ?
レ級 「そんなに気になるか?呼び方なんて、みんな適当だろ?」
潮 「適当って、適切に当てはめるってことだよね。だったら、呼び方の違いには意味があるはずでしょ?」ジー
レ級 「お前、本当に姫百合か・・・?」
潮 「漢字だけは得意なの。」
レ級 「本当に"だけ"なところが虚しいな。」
潮 「そういうのはいいから。」
ア ハイ
潮 「で、なんでなの?」
レ級 「なんでって言われてもなー。姉ちゃんだからって以外に理由なんてないし。」ウーン
潮 「私もレーちゃんのお姉ちゃんだよ?」
レ級 「でも、"義理"だろ。」
潮 「それは灯ちゃんもおな・・・え?」
レ級 「灯姉は"ちゃんと"俺達の姉ちゃんだぜ。血は繋がってないかも知んねーけどな。」
エエエエエ!?
レ級 「なーんか、わかっちまうんだよなー。そういうの。」ニヒッ
ン?
レ級 「血が繋がってないならどっちにしろ義理なのか?でも、父ちゃんと母ちゃんは同じだし・・・。」ムー
レ級 「ま、いっか。」ペカー
曙 「どうしようどうしようどうしよう・・・。」グルグル
紫苑茜「ほら、灯~!考え事してる余裕なんて無いわよ~!相手の動きをよく観察しなさ~い!」
曙 「観察たって、光が海面に反射する所為であいつの姿なんて・・・。というか、なんで潜ってるのよ、あいつは!」
ザパッ
近衛麗「海の上に立てる能力が無いからよ。」ヒュゴッ
ドゴォ クゥッ!
曙 「このっ!飛沫よ、氷雨と成りて射貫け!」シュバッ
シュパパッ
紫苑茜「海中に向けて放っても無駄よ~。或る程度まで潜られたら、弾丸だって届かないんだから~。もう少し頭使いなさ~い。」
曙 「だ~!もう!考えるなの次は考えろ!?戦闘経験浅いくせに余計な口出さないでよ!混乱するじゃない!」キッ
紫苑茜「へぇ。折角"錬成"が上手く使えるようになったことを褒めてあげようと思ったのに・・・残念ね。」
曙 「ごめんなさい!でも事実でしょ!後で絶対褒めてよね!」
紫苑茜「素直と正直を履き違えてないかしら・・・あの娘。」
漣 「とぉぉおぅ!」ヤー
時雨 「頭で考えて声に出さない。」ベシッ
イダッ
漣 「った~。何も刀で殴ることないじゃんか!間違って顔に傷でも付いたらどうしてくれるのさ!」プンスコ
時雨 「ボクがそんなミスをするとでも?」
漣 「結果論で未来を語るとか、すっごい自信・・・。尊敬しちゃう。」エェ
時雨 「とてもそんな風には見えないけど。」
漣 「だって、しぐしぐってば全然教えてくんねぇじゃん。見て学べって言うけどさぁ。無茶が過ぎるぜぇ。」
漣 「しぐしぐがどう動いてるかはわかっても、どう身体を動かせばそうなるかまではわかんねぇって。」
時雨 「それを習得することも含めて訓練だから。失敗したら考える。成功するまで、その繰り返しだよ。」
時雨 「さ、考える時間は充分にあったね。次にいこうか。」チャキ
漣 「鬼め・・・。」クッ
ソイソイソイソイソーイ
朧 「上段突き!」
五月雨「的の小さい頭を狙うのは素人のすることですよ。」ヒョイ
朧 「中段突き!」
五月雨「踏み込みが甘いです。自分の腕の短さを自覚しましょう。」スッ
朧 「地獄突き!」
五月雨「死角から突き上げる攻撃は良し。ですが、やはり小さい的を狙うものではないですね。」サッ
朧 「さそり!」グンッ
五月雨「蠍蹴りですか。見様見真似で形にしてしまうところ、無駄に器用ですね。」シュパッ
朧 「下段・地獄突きぃ!」チェストォ
ウワッ!?
五月雨「女の子が何て攻撃してくれてんですか!はしたないですよ!もう!///」
朧 「あと少しで"タマ"が取れたのね。」チッ
五月雨「私にそんなものはついてません!!あんまり調子に乗ると蠍固めを極めますからね!」
朧 「サブミッションは勘弁なのよ。」オーウ
ゲホッ オエッ
曙 「くっそ・・・。」ハァ ハァ
近衛麗「もう終わり?その程度で黒霧の名を語ろうだなんて、思い上がるのも大概にしなさいよ。」オォォ
曙 「るっさいわね。今の私にそんな資格が無いことくらい、私が一番よくわかってるわよ。この先、望み薄だってことも・・・!」
曙 「でも・・・自分の決意を口にすることまで恐れていたら、本当に何も掴めなくなるでしょうが!」キッ
曙 「私は諦めない!何度無駄な努力と誹られようが!何度身の程を知らない莫迦と嗤われようが!絶対に!」
曙 「私は私を超えていく。乗り越えられない壁なら、その壁を越えられるくらいに大きくなってやる。」
曙 「私は!私の可能性を諦めない・・・!」ビキッ
ビキ ビキッ
近衛麗「うそ・・・。なんで、あんたが・・・。痣の無いあんたが・・・なんで。」
近衛麗「なんで、"凶化"を使えるの・・・。」
曙 「はぁ?そんなの決まってるじゃない。私が、父さんの娘だからよ!」
シャカシャカ♪
黒霧 「いい曲は見つかった?」
長門 「ん?すまん。もう一度言ってくれるか?よく聞こえなかった。」スッ
黒霧 「僕も一緒に聴かせて。」
長門 「一緒にって。イヤホンならまだしも、ヘッドホンでシェアは・・・。」オイオイ
黒霧 「耳のとこ外向きにできるから。」
長門 「なんと。これは凄いな。」オォー
黒霧 「半分、譲ってもらえるかな。」フフ
長門 「ああ。」
シャカシャカ♪
長門 「・・・肩が触れているのだが。」
黒霧 「君の肩のほうが硬いだなんて、何だか複雑な気分だよ。」
長門 「それは私の科白だ。もっと鍛えろ。」
黒霧 「君の性欲が強すぎるのが悪い。」
長門 「公共の場で言うのはやめてくれ。これでも乙女なのだぞ?」
黒霧 「知ってる。こういう可愛らしいものが好きなんでしょ?」シャラ
長門 「熊のストラップ・・・くれるのか?私に。」
黒霧 「勿論。」ハイ
長門 「・・・ありがとう。大切にする。」キュッ
黒霧 「さっきヲ級がくじで当ててね。」
長門 「お前にはがっかりだ。」ジト
長門 「で、そのヲ級は何処に行ったのだ?」
黒霧 「ピアノの試し弾きしてくるって、向こうに。」ユビサシ
~♪ ガヤガヤ
長門 「もの凄い人集りが出来ているが・・・。まさか、あれか?」
黒霧 「みたいだね。」
長門 「多才だな、お前の娘は。」
黒霧 「今は君の娘でもあるけどね。」
長門 「まだ続いていたのか、その設定。ヲ級に怒られるのはもう御免だぞ。」
モウイイ? ウ ウン・・・
龍田 「ど、どうかしら?」シャッ
羽黒 「10点。」
妙高 「女として嫉妬します。」チッ
龍田 「それは褒めてくれてるの?何点中の10点なの?妙高ちゃんに女としての感情なんてあったの?」
妙高 「どういう意味ですか?それは・・・。」ゴゴゴ
羽黒 「お姉ちゃん、邪魔。」グイ
妙高 「じゃ!?」ガーン
羽黒 「龍田さん、肌綺麗だから布地少ないほうが映える。イメージ的に、フリルとか無しでシンプルなのがいいと思う。」
龍田 「そ、そう?折角だから普段着けてるのとは真逆のものを選んだんだけど・・・。やっぱり、過激なほうが似合うのかしら。」
羽黒 「過激、違う。龍田さんに似合うのはセクシー。紐とか、そういうちょっとした露出の増え方がいい。」
龍田 「わかったわ。その方向で選んでみるわね。ありがとう、羽黒ちゃん。」ウフフ
羽黒 「うん。きっと、黒い人も喜んでくれる。」
エ?
龍田 「待って。どうしてあの人に見せることになってるの?」
羽黒 「え?見せる用だから、本気で下着選びしてるんじゃないの?」
龍田 「違うから!普通に普段用だからっ!///」
羽黒 「そう、なんだ。じゃあ、他人の評価は気にせず、自分が好きなものを選べばいいと思う。」
龍田 「ええ、そうするわ。///」シャッ
羽黒 「なんだ。からかって遊ぼうと思ってたのに・・・つまんないの。」ボソッ
妙高 「」マッシロ
羽黒 「・・・お姉ちゃんを無理矢理くっつけるのと、私がくっついて精神的に追い詰めるのなら、どっちが面白いかな。」
龍田 (え・・・。何、この娘。恐い!)ゾワッ
黒霧 「さて、陸奥にプレゼントするものは決まったかな?」
長門 「ああ。これにしようと思う。ゲームの音楽らしいが、この没入感には凄まじいものがある。」
長門 「これならば陸奥も他の何を気にすることなく眠れるだろう。」フ
黒霧 「そう。じゃあ、それを買ったらヲ級を連れて入り口で待っていて。知合いを見つけたから少し話してくるよ。」ジャ
長門 「わかった。あまり待たせるなよ。」
黒霧 「大丈夫。直ぐに済むから。」フフ
スタスタ
足柄 「やっば。気づかれた。」ゲ
那智 「何を今更。」
天龍 「それがわかってるなら尾行なんてやめりゃいいのに・・・。」
黒霧 「でも、ついてきたのは君自身の意志でしょ?」ユラァ
天龍 「っ!?」ビクゥッ
那智 「流石だな。いつの間にか背後に回っている。」フッ
足柄 「心臓に悪いったら。」
天龍 「いやもうほんとにマジで勘弁してくれ・・・。」ドキドキ
黒霧 「吊橋効果って知ってる?」ニコニコ
天龍 「知ってるけど絶対今じゃねぇ!」
黒霧 「で、こんな所で油を売っていて大丈夫なのかな?期限は今日が終わるまでって言ったはずだけど。」
天龍 「わかってんよ。それについてお前に確認したいことがあったから嫌々ついてきたんだ。」
黒霧 「確認したいことって?」
天龍 「お前に出されたお題の答えは、俺が俺らしく在ることなんじゃないかってこった。」ビシッ
黒霧 「へぇ・・・。思ったより早く気づいたね。」
天龍 「やっぱりな!振舞い方を身につけろって言葉がずっと引っ掛かってたんだ。」ヘッ
天龍 「思うがままに行動すれば、自ずとそれが俺らしい振舞いになる。危うく騙されるところだったぜ。」フゥ
黒霧 「でも、残念。このままだと今晩、君の寝室にお邪魔しないといけなくなる。」
天龍 「え?俺の部屋に来るのか?ってことは、龍田に見られながらするってことか!?」
黒霧 「今はそういう話をしてるんじゃなくて・・・。天龍、僕が君に何て言ったか憶えてる?」
天龍 「自分の魅力を理解して相応の振舞い方を身につけろ、だろ?」
黒霧 「そう。君の魅力。君はまだそれを理解できていない。」
天龍 「でもよ。自然体で居ることが俺らしく在ることに繋がるなら、別に俺の魅力なんて俺自身が理解する必要ないんじゃないか?」
黒霧 「」キョトン
天龍 「なんだよ・・・。」
黒霧 「いや、天龍って意外と賢いんだなって。」
天龍 「あんまり莫迦にしてっとぶっとばすぞ、この野郎。」
黒霧 「自然体で居ることが自分らしく在ることに繋がる。これは正しいと僕も思う。」
天龍 「だろ?」
黒霧 「ではここで問題です。」テーレン
天龍 「どうした、急に。」
黒霧 「自分らしさって、誰が決めるの?」
天龍 「は?そんなの、自分が決めるにきまって・・・。」
黒霧 「本当の私はそうじゃないんだけどなって、そう思ったことはない?」
天龍 「・・・。」アー
黒霧 「自分らしさを自分だけが決められるなら、誰もそんなことは思わない。周囲からの期待と現実の差に苦しむことはない。」
黒霧 「つまり何が言いたいかっていうと、他人が思う君の魅力と君自身が思う君の魅力、その両方を理解しろってこと。」
天龍 「他人の目に俺がどう映ってるかなんて、俺がいくら考えたってわかるわけねぇだろ。俺は俺なんだし。」
黒霧 「わからないなら訊けばいいでしょ?」
天龍 「俺の魅力って?」
黒霧 「僕がそれを話すのは夜になってからだよ。」ソレジャ
スタスタ
天龍 「なぁ、俺の魅力って?」
足柄 「無駄にデカい胸。」
那智 「※自主規制※」ドカーン
天龍 「駄目だ。こいつらじゃ話になんねぇ。龍田と合流しよ。」ピ ポ パ
タツタ? イマドコニ・・・ オネエチャン タスケテ!
天龍 「え・・・?」
ツー ツー
天龍 「・・・え?」
ソウカ ナノ!
黒霧 「ただいま。」
長門 「やっと戻ったか。待ちくたびれたぞ。」
ヲ級 「おっそ~い、なの。」ニヒー
黒霧 「とても草臥れているようには見えないけど・・・。帰ろうか。」スッ
ヲ級 「帰りはもんちゃんに譲ってあげるの。」グイ
長門 「は!?いや、待て!私はっ!」
黒霧 「ヲ級の厚意を無碍にすると罰を中てるよ。」ギュ
長門 (この握り方はぁ・・・!)モンモン
ヲ級 「そしてヲーちゃんは空いたほうの手を貰うの。」ムフン
黒霧 「絶対に我慢はしないヲ級なのでした。」
長門 「」ボー
黒霧 「いつまで向こうの世界に行ってるのさ。」ンッ
長門 「・・・はっ。今、何かしたか?」
黒霧 「別に何も?」フフッ
ヲ級 「期待通りのもんちゃんクオリティなの。」ヘッ
ホオガシメッテイル?
レ級 「・・・。」
潮 「うんしょっと。」ガション
レ級 「俺が言うのもだけどよ・・・。なんだ?そのごっつい艤装。そんなの俺が運んできた中にあったか?」
潮 「私に言われても・・・。ぱぱがこれだって。」
レ級 「んー。でもなー。」ムー
イギャアアア!
レ級 「戦闘狂共め。無茶はさせるなって母ちゃんに言われ・・・。」アレ?
レ級 「澪と撫子、なんで脚部艤装しか着けてねぇんだ?」
潮 「そういう仕様にしたらしいよ?動力部を改造して脚部艤装に無理矢理詰め込んだんだって。」
レ級 「改造ってレベルの話じゃねぇぞ、それ。蓮華のやつ、またとんでもねぇことを・・・。」ッタク
レ級 「ん?でも俺、確かに四人分の艤装を運んできたぞ・・・。」
潮 「やっぱりちょっと重いなぁ。こんなに重くて大丈夫かな。沈んだりしない・・・よね。大丈夫だ。」ホッ
潮 「あ、起動したら軽くなった。」オー
レ級 「まさか、駆逐艦四隻分の艤装をひとつに・・・。」マジカ
レ級 「来い、タイラント。」ズオォ
潮 「障壁展開。安全装置、解除。」ガション
レ級 「いくぜ、姫。」ニィ
潮 「えっと。右膝を着いて、左足は気持ち前に。それから腋に抱えるように手を回して・・・。」モタモタ
レ級 「・・・シュガル、ちょっと雷落としてやれ。」クイ
ゴロゴロ ピシャーン バチィ
潮 「射撃補助装置を起動・・・。あ、これ凄い。弾道予測線が見える。」ワァ
レ級 「エネルギーシールドの全方位防御とか反則だろ。シュガルの雷が全然効いてないじゃねぇか。」クソガ
潮 「ターゲット捕捉、照準固定。射撃準備、良し。・・・撃て。」カチ
ドォーン
レ級 「受け止めろ、ニブル。氷壁!」ズアッ
バキィ
潮 「次弾装填。照準変更なし。射撃準備、良し。・・・撃て。」カチ
ドォーン ベキィ
レ級 「二発でニブルの氷を砕いた。つーことは並の重巡より少し上くらいの火力か。」ホーン
潮 「目標破壊。照準を戦艦レ級に変更、固定。射撃準備、良し。・・・撃て。」カチ
ドォーン
レ級 「一割解放、凶化。」ピキッ
フン! ガキンッ
潮 「え・・・殴った?」
レ級 「ま、重巡レベルならこんなもんか。」フゥ
潮 「レーちゃん、かっこいい。」キラキラ
レ級 (上手くいってよかったぁぁ!!ぶっつけでやったのバレたら怒られるかな。後で姫に口止めしとかねーと。)ホッ
チラリ ン?
日陰 「・・・。」ニヤッ
レ級 (おわったぁ・・・。)サー
曙 「もう無理。動けない。」ゼェ ハァ
近衛麗「情けないわね。始めてまだ5分でしょうが。」フー フー
曙 「あんただって、肩で息してるじゃないの。」
近衛麗「5分間全力で泳ぎ回ってたら息くらい切れるわ。」ハッ
曙 「凶化と錬成を同時に使うのも疲れるっての。というか、凶化の反動ってこんなに凄かったのね。脱力感が半端じゃないわ。」グッタリ
近衛麗「脱力感ねぇ。灯のそれは本当に凶化なのかしらね・・・。」ボソ
ナニ? ベツニナンデモ
曙 「嗚呼、もう!自力で起き上がれないじゃない!母さん、手伝って!」ウー
紫苑茜「わたしに灯を抱えられるような筋力があるとでも?」
曙 「母親としてどうなのよ、それ。少しは鍛えなさいよ。」エェ
ヒョイ
曙 「・・・何のつもりよ。」ジト
近衛麗「勘違いしないでよね。別に、身動きが取れない今のうちに色々と弄くって遊ぼうだなんて全然思ってないんだからね。」ニィ
曙 「このっ!」
近衛麗「さ~て、灯ちゃんの性感帯は何処かしら~。」コチョコチョ
曙 「ちょっ!小学生に対して何てこと!や、やめっ・・・。」ヒャッ
ア アハハハ!
曙 「あとで、憶えてなさいよ・・・。」ピクピク
近衛麗「やれるものならやってみなさい。期待せずに待っててあげる。背中がよわ~い、灯ちゃん。」フフッ
曙 「父さんに言いつけてやるっ。」
近衛麗「虎の威を借るのはやめなさい。碌な大人にならないわよ。」
曙 「娘の躾けは父親の義務でしょうが!虎の威でも借りるほうも虎の子ですぅ!」イー
近衛麗「・・・私のこと、パパの娘だって認めてくれるのね。」
曙 「はぁ?認めるも何も、あんたは父さんの娘じゃない。そこに関しては私がどうこう言えないわよ。」
曙 「でも、お姉ちゃんとは呼んであげないから。」フン
近衛麗「可愛くない妹だこと。」クスッ
近衛麗「ほら、こっち来なさい。膝枕してあげるわ。」ポンポン
曙 「・・・。」ズリズリ
ポフッ
近衛麗「私自慢の膝枕はどうかしら。」ナデリコ
曙 「まあまあね。母さんのほうが心地好いわ。」
近衛麗「ま、私は引き締まってるから。」
紫苑茜「それはわたしが太ってるって言いたいの?」ハッタオスワヨ?
紫苑茜「ねぇ、麗ちゃん。」
近衛麗「なによ。可愛い妹の寝顔を楽しんでいるんだから、邪魔しないでちょうだい。」ツンッ
曙 「ん・・・。」Zzz
紫苑茜「・・・あんたねぇ。今朝、自分が宣言したこと、忘れてないでしょうね。」ジト
近衛麗「あー、それ。なんかもうどーでもいいや。」
紫苑茜「こいつっ。」ヒクッ
近衛麗「勢いで言ったものの、妻としてパパの隣りに居る自分が想像できないのよね。パパの結婚観とかもよくわかんないし。」
近衛麗「別に諦めるわけじゃないけどさ。本気で落としに掛かるのは、もっと可能性が見えてからでもいいかなって。」
紫苑茜「あっそう。」
近衛麗「灯を弄るのも楽しいし。取り敢えずは、この娘に"お姉ちゃん"って呼ばせることを目標にしようかしら。」フフ
紫苑茜「直ぐに達成されそうね、その目標。」
近衛麗「だから良いんじゃない。私、じれったいのは苦手なの。」
紫苑茜「しーちゃんとの相性最悪じゃないの・・・。」
近衛麗「そうかもね。でも、関係ない。相性の悪さなんて吹き飛ばしてしまえるくらい、私はパパのことが好きだから。」
紫苑茜「何と言うか・・・眩しいわ、今の麗は。」
近衛麗「"は"って何よ。というか、"ちゃん"付けじゃなかったのかしら。」
紫苑茜「わたしは精神年齢で他人を計るの。今の貴女に"ちゃん"は不要よ。」
近衛麗「そう・・・。パパは"ちゃん"なのね。」
紫苑茜「ええ。良くも悪くも変わっていないもの。出会った頃から、ずっと・・・。」
天龍 「おーい、龍田~?たーつたー。」
龍田 「お姉ちゃん!」バッ
ウオッ!?
天龍 「どうしたんだよ。普段のお前なら他人の目がある所で抱きついたりなんてしないだろ。らしくねぇぞ?」
龍田 「」ジト
天龍 「な、なんだよ。」
龍田 「それが助けを求める妹に掛ける姉の言葉かっ。」フンッ
ゴチッ アダッ
天龍 「頭突きとか・・・乙女がしていい技じゃねぇぞ。」オアァ
龍田 「うっさい。あたしの中学時代知ってるでしょ。」
天龍 「裏の番長時代か。あの頃の龍田は本当に・・・。」ハァ
天龍 「それが今や、こんなに可愛らしい服をって陸奥のワンピースはどうした。なんだその服。」
龍田 「羽黒ちゃんに剥かれたの。少女味がどうのって着せ替え人形にされて・・・それで。」
天龍 「幼稚園児みたいな格好にされたのか。」
龍田 「幼稚園児とか言うな。」
天龍 「だってお前。上から下までふりふり尽くしじゃねぇか。小学生でもそんな格好しねぇぞ。」
龍田 「羽黒ちゃんの趣味なんだからしょうがないでしょ!好きでこんな格好しないわよ!」
天龍 「嫌なら着なきゃいいのに。なんで羽黒の言いなりになってんだよ。」
龍田 「うっ。それは・・・。」
羽黒 「は~な~ちゃ~ん?」ユラァ
ヒッ
羽黒 「次はこれ、着てください・・・ね?」ニコォ
龍田 「は・・・はい。」フルフル
天龍 「俺が居ない間に何が・・・。つーか久し振りに聞いたな、龍田の本名。」
龍田 「つっかれた・・・。」ズーン
天龍 「ま、よかったじゃねぇか。最終的にはまともに可愛い服を選んでもらえて。」
龍田 「オーバーオールなんて初めて買ったわ。」
天龍 「そもそも服買うのだって初めてだろ。」
龍田 「どの口が言うか。というかお姉ちゃん、下着の調達は済んだの?」
天龍 「あー。」ハハッ
龍田 「まだなのね。念の為に訊いておくけど、抱かれる心算は無いのよね?いや、無いわよね?無いと言いなさい。」ズイ
天龍 「ねぇよ。店にサイズが無いから特注になるってだけだ。安心しろ。」チカイ
龍田 「そう・・・。」ハァ
龍田 「なんで三十路の姉の心配をしなくちゃいけないのかしら。」
天龍 「うっせ。来年は"花"の番だぞ。」
龍田 「それは今年中に結婚するってこと?」
天龍 「年齢の話だよ。結婚するにも相手が居ねぇっての。」
龍田 「あの人と随分打ち解けているように見えますけど~?」
天龍 「否定はしない。」
龍田 「"黒霧 里"で領収書切ってやる。」フン
天龍 「おいこら。何を買う気だ?あんまり高いのはやめろよ?つーか、その領収書使えねぇぞ。おい、花?おいって!」キケヨ!
羽黒 「ん~。」ノビー
フゥ
羽黒 「満足。」ムフー
足柄 「あのたっちゃんを相手によくもまぁ。結構図太いのね、あんた。」
羽黒 「たっちゃん、違う。花ちゃん。」
足柄 「初耳だっつの。」
那智 「天龍は確か、里・・・だったか。」
足柄 「古くさい名前だこと。」
羽黒 「琴も大差ない。」
足柄 「里よりはましよ。あ、そういえば私、羽黒の本名知らないんだけど。」
那智 「妙高の本名も聞いた憶えがないな。」フム
羽黒 「お姉ちゃんに名前の話はしちゃ駄目。私も駄目。」
足柄 「あっそ。ま、無理には訊かないけど。」
那智 「知られたくない過去か。益々興味が湧くな。」フッ
妙高 「後悔しますよ?那智。」ユラァ
那智 「・・・どういう意味だ。」
妙高 「そのままの意味です。改造組の多くは、様々な事情で艦娘にならざるを得なかった娘達ですから。」
妙高 「そう例えば、口減らしの捨子だったり戦争孤児だったり、"死刑囚"だったり・・・ね。」フフフ
那智 「ほう。」ニィ
足柄 「冗談きついわ・・・。」ハハッ
羽黒 「だから言ったのに。名前の話はしちゃ駄目って。」
カポーン
漣 「あ~。つっかれた~。」
朧 「ちーん。」プカー
曙 「口で言う奴、初めて見たわ。」
潮 「Zzz」クー
近衛麗「私より大きい・・・。」ムッ
レ級 「ちゃんと抱いててやれよ、麗姉。此処の風呂は深いからな。」スーイ
漣 「な~、レーちゃん。あの白露姉妹、どうにかなんねーの。あれじゃあ強くなる前に殺されちまうぜぇ。」
朧 「うちも全身の骨をへし折られかねないのね。」
レ級 「あれだけ手加減してもらっといて贅沢言うなよな。昔の五月雨姉はもっと・・・。」
五月雨「もっと、なんですか?」ニコォ
レ級 「やっぱり今でも怖い。」
五月雨「さーて、それではっ。総評ですよぉ!」ビシッ
グウゥ
五月雨「何の音ですか?」
近衛麗「姫ちゃんのお腹の音よ。」
潮 「Zzz」スヤァ
五月雨「寝てるのに・・・?」エェ
五月雨「ま、それはいいとして、澪ちゃん!」
漣 「あはん!」ビシ
五月雨「投擲の狙いが良すぎです。意図的に外せるように練習してください。小刀の扱いはお父さんに訊け、とのことです。」
アイサー!
五月雨「はい、撫子ちゃん!」
朧 「いやん!」ビシ
五月雨「籠手の意味を理解してもらえたようで何よりです。撫子ちゃんの弱点は斬撃。それをいなすための装備ですからね。」
朧 「関節技の指導もお願いします!」
イイデショウ!
五月雨「次は、灯ちゃん!」
漣・朧「じーとぉー。」ジー
曙 「う・・・うふん。」
漣・朧「声が小さい!もう一回!」
曙 「えっへん!」バーン
漣 「その逃げ道があったか・・・!」クッ
曙 「どんなもんよ。」ドヤァ
五月雨「灯ちゃんに関しては麗さんからお願いします。」ドウゾ
近衛麗「そうねぇ。ま、頑張りなさい。」
曙 「雑っ!」
近衛麗「だってそうでしょう?灯は今持てる自分の力を引き出すのが上手いもの。あとはどれだけ力を伸ばせるかってだけよ。」
近衛麗「だから、頑張りなさい。」
曙 「・・・うん。」
近衛麗「特に体力面。劣化版凶化が5分しか保たないって・・・。お笑いだわ。」ハッ
曙 「わかってるわよ。そのくらい。」ウグ
曙 「て、劣化版って何よ!私のもちゃんと凶化でしょ!?」
近衛麗「いや、手合わせしてみた限り身体能力が向上してる感も無かったし。狂ってもなかったし。どう考えても凶化ではないわよ。」
曙 「でも・・・でもっ。」グスッ
漣 「ええい、泣くな!レーちゃんからも言ってやれぃ!」
レ級 「痣が無いなら凶化じゃないんじゃねぇか?」
漣 「そっちじゃねぇよ!」クワッ
レ級 「どっちがあんだよ・・・。」
五月雨「ま、凶化についてはお父さんに丸投げするとして・・・。最後!姫百合ちゃん!」
潮 「Zzz」クー
五月雨「まだ寝てるんですか。」ハァ
漣 「次は"お"なんだけどな~。」
朧 「姫にぴったりな"あれ"があるのにな~。」
近衛麗「あぁ、おっぱいね。」モミ
ン・・・
曙 「姫百合に手ぇ出したらぶっ飛ばすわよ。」オォォ
近衛麗「まぁ、怖い。」パッ
レ級 「にしても起きないな。」チョンチョン
潮 「ん~。」エヘヘ
漣 「すっげぇニヤけ顔。」
朧 「いい夢見ろよ。」フッ
レ級 「どんな夢見てんだろうな。」
漣 「飯だろ。」
朧 「飯っす。」
曙 「ご飯ね。」
五月雨「ご飯ですよ~。」
潮 「おかわり!」バッ
ア オキタ
五月雨「気を取り直して。レーちゃん、お願いします。」ドウゾ
レ級 「俺から言えるのはひとつだけ。勘違いするなよ。それだけだな。」
五月雨「・・・負け惜しみですか?」
レ級 「ちげぇよ!姫の艤装は反則級に性能が良いんだよ!五月雨姉も見てただろ!?」
五月雨「冗談ですよ。正直、私もあの防壁を突破する自信は無いです。ま、持久戦に持ち込めば勝手に自滅してくれますけど。」
レ級 「だから勘違いするなよって言ったんだ。姫の艤装は燃費が悪すぎる。蓮華はいったい何を考えてんだか。」マッタク
潮 「つまり、いっぱい食べたらいいんだよね。」ムフー
漣 「ただでさえ食べるのに・・・。」エェ
朧 「これ以上食べるのは・・・。」オォウ
曙 「太るわよ。」
漣・朧「胸がな。」キリッ
潮 「大丈夫だよ。消費した分しか食べないから。」エヘヘ
レ級 「その消費量が尋常じゃないだろうに。」
五月雨「食費が莫迦になりませんねぇ。」
近衛麗「それより食事の用意が大変よ。厨房が地獄と化す未来が見えるわ。」トオイメ
曙 「奇遇ね。私にも見えるわよ。キレ気味に忙しなく厨房を行ったり来たりしてる、あんたの姿が。」フッ
近衛麗「でも、その隣りには~?」
曙 「父さんが居る。」チッ
近衛麗「灯も早く料理ができるようになりなさい。」
曙 「じゃあ教えてよね。」
近衛麗「はいはい。」ウフフ
時雨 「おかえり~。」ニコニコ
黒霧 「ただいま。」フフッ
時雨 「楽しかったぁ?」ニコニコ
黒霧 「見てのとおりだよ。」
時雨 「そっかぁ・・・。いい加減さぁ。手、放したら?」スン
長門 「そんな瞳で私を見ないでくれ。放そうとしないのがどっちなのかは一目瞭然だろう。」タラー
時雨 「ふ~ん。じゃあ、長門さんは失格だね。はい、失礼しま~す。」グイッ
長門 「は?お、おい・・・?」
時雨 「さぁ、にぃに。当然、お土産は用意してあるんだよね?じゃないとボク、怒っちゃうかもだよ?」ギュ
黒霧 「土産話なら沢山。」
時雨 「ぎ~るてぃ~。修行に付き合え~。」キャー
・・・
長門 「なんだ、あれは。」ボーゼン
ヲ級 「ヲーちゃんからひとつアドバイスなの。笑顔を貼り付けた暗殺者には絶対に近づくな・・・なの。」
鈴谷 「きょ~おっの気分はマリンブルー。」フンフーン
熊野 「ブルーなのは私ですわ。」ハァ
三隈 「というか、今頃マニキュアを塗りますの?」
鈴谷 「いつだっていいじゃん?風の吹くまま、気の向くまま。鈴谷は自由なのだ~。」ヘッヘー
三隈 「一応訊いて差し上げますけれど、何故マリンブルーですの?」
熊野 「私をスルーしないでくださいまし。」チョット
鈴谷 「特に理由は無いけど、海のように広い心を持ちたいな~、という願いを込めてみました。」シャラン
熊野 「広い心・・・。」
三隈 「鈴谷は何を許したいんですの?」
鈴谷 「・・・友達の懺悔。」
三隈 「は?」
鈴谷 「ごめん。みっちゃんのブラ、可愛かったから試しに着けてみたら・・・壊しちゃった。」テヘッ
三隈 「・・・。」
鈴谷 「本当に、すみませんでしたぁ!心を入れ替えてダイエットに励みます!」ドゲザ
三隈 「食事管理で胸が小さくなるか、ぶあ~かぁ!!」ブワッ
三隈 「うあああん!」ダット
鈴谷 「いや~、ははっ。下着は貸し借りするもんじゃないですな~。」タハハ
熊野 「そういえば、鈴谷。最近、私のお気に入りの下着が行方不明になったのですけれど、何か知ってまして?」
鈴谷 「・・・きょ~おっの気分はマリンブルー。」
熊野 「鈴谷ぁ?」
鈴谷 「ごめんなさぁ~い!」ピューン
スズヤァ!
陸奥 「・・・何これ。」
長門 「何とは随分だな。お前の為だけに買ってきたのだぞ?」
陸奥 「それは嬉しいけど・・・CDとヘッドホンって。」エェ
長門 「わ、私の鼾が五月蠅いのだろう?だから、陸奥の健康を守る為にだな・・・。」モゴモゴ
陸奥 「いや、姉さんの意図はわかるのよ?だけど・・・。ねぇ?」
長門 「なんだ。気に入らないのなら返せ、莫迦者。返品してくる。」ムッ
陸奥 「嫌よ。初めて姉さんから貰ったプレゼントだもの。大切にするわ。」サッ
長門 「だったら何が不満なんだ。遠慮せず言ってみろ。」
陸奥 「じゃあ言うけど・・・。」
長門 「うむ。」
陸奥 「プレイヤーは?」
長門 「ぷれいやー?」
陸奥 「CDを再生する本体は?」
長門 「そんな物は知らんぞ。」
陸奥 「この姉は・・・。」ハァ
扶桑 「山城、その書類は今日までよ?全く進んでいないようだけど大丈夫?」
山城 「大丈夫じゃないです。書式も内容もさっぱりぱーです。」ウツロ
真宵 「仕事の大半を加賀に押しつけて怠けている罰だ。俺の嫁ならばさっさと仕事を覚えろ。」テキパキ
山城 「まーちゃんだって最近やっと書類が書けるようになったくせに。」ブー
真宵 「だが、俺はできるようになったぞ。」
山城 「いいじゃない。嫁は三人も居るんだから、ひとりくらい仕事ができなくたって。」フン
扶桑 「駄目よ、山城。真宵ちゃんを支えることが妻である私達の役目なんだから。」メッ
山城 「だったら私は夜の営みでまーちゃんの心を支えます。」フンス
真宵 「身体が保たんわ、莫迦。お前達には二日の空きがあっても、俺は毎晩なんだぞ。」
山城 「んまっ。姉様ったら、吹っ切れた途端に・・・。盛ってるんですね。」アラアラ
扶桑 「なっ!毎晩ってことは山城もでしょ!///」
真宵 「まぁ、加賀に較べたら幾分ましだがな。最近の加賀は妙に積極的というか・・・。」
加賀 「あなた!」バァン
真宵 「どうした?また夕張の莫迦が問題でも起こしたか?やはり時雨が不在のときに送るべきではなかったか。」ヤレヤレ
加賀 「赤ちゃんが欲しいです!」クワッ
真宵 「・・・。」
山城 「あら。遂にうちにもベイビーが。」
扶桑 「加賀さんが産休に入ったときは頑張らないとですね、山城。」フフ
山城 「なんてこと。」ズーン
雷 「まーしゅまろを 七輪にー かざしてみーれーばー♪」
雷 「ほんのり あめーいろー♪」
雷 「それが食べ頃よー♪」アム
雷 「お酒も欲しいわね。」ンフ
夕立 「最近は出撃が少なくて暇っぽい。」ムー
雷 「夕立もマシュマロ食べる?」
夕立 「これ以上食べたら糖尿になるっぽい。」ウェ
雷 「あっはは。建造組の私達が病気に罹るわけないじゃなーい。」ケタケタ
夕立 「そんなに食べてたら建造組でも不調になるっぽい。もう五袋は空けてるっぽい。」
雷 「・・・暇なのよ。」ドヨーン
夕立 「趣味でもつくるっぽい。」
雷 「麻雀とか?」
夕立 「おっさんじゃん。」エェ
雷 「その科白にこそ"ぽい"を付けなさいよ。失礼ね。」
雷 「穏やかな海ね。」
夕立 「今日も何処かで誰かが戦ってるっぽい。」
雷 「そうね。元帥が替わってから私達の出撃はめっきり減っちゃったけど、未だ終わってないのよね。」
夕立 「なんで減っちゃったっぽい?」
雷 「真宵ちゃん曰く、狂犬を放ったから・・・らしいわ。」
夕立 「どうせ資源が無いだけっぽい。メロンと苺ミルクが異動になったのも、資源に依存しない艤装を開発するためっぽい。」ヘッ
雷 「・・・なんでそんなこと知ってるのよ、貴女。」
夕立 「大和さんが元帥に泣きついてるのを聞いちゃったから・・・。」メソラシ
雷 「それは・・・。」ハハ
???「もう耐えられないんです。」ユラァ
ギャアアア!!
雷 「や、大和さん!?」
夕立 「吃驚したぁ・・・。」ポイ
大和 「もう嫌なんです。海軍の秘密兵器と持て囃され迎えられて。でも結局、出撃は最初の一回きりで・・・。」ウゥ
大和 「このまま穀潰しで居続けるのは嫌なんですぅ!私だって、好きでいっぱい食べるわけじゃないのに!食べないと動けないからぁ!」
大和 「以前はまだ出撃以外に求められるものがあったから。こんな私でも役に立てるんだって、言い聞かせることができました。」
大和 「でも今は。今はもう・・・。本当にただの穀潰しで・・・!」ポロポロ
大和 「私に、存在する価値なんて無いんですぅ!!」
ウアアア!
雷 「重症ね・・・。」
夕立 「困ったときの雷ちゃんっぽい。小さなお母さんの異名は伊達じゃないってところを魅せるっぽい。」
雷 「初耳なんだけど。その異名。」
アアアアア!
真宵 「またか・・・。」ハァ
扶桑 「最近は特に酷いですね。心配しなくていいとは伝えているのですけど。」
真宵 「大和は落ち込みやすい性格だからな。実感が伴わなければ不安が拭えないのだろう。何か、仕事を与えてやれればいいのだが。」フム
山城 「私の代わりに書類仕事をやってもらいましょう。」サッ
真宵 「この前の惨劇を忘れたか。」
山城 「そうでした。」ツップシ
扶桑 「やる気はあるのですけどね・・・。」
真宵 「というわけでだ。大和のことは任せたぞ、東。」
近衛東「・・・。」
カチャ パタム
山城 「無言・・・。」
扶桑 「私達が居る手前、嫌とは言えないですものね。」
真宵 「後で何か奢ってやろう。」
山城 「鰻が食べたいです。」ハイ
真宵 「最低限やるべきことをやってから言え、莫迦。」
扶桑 「こんなとき、武蔵さんが居てくれたら・・・。」
山城 「余計に拗れるだけじゃないですか?」
真宵 「武蔵は何かに依存することを嫌うからな。今の大和にも容赦ない言葉を吐きそうだ。」
山城 「自分の足で立って歩け。必要とされるだけの価値を身につけろ。でしたっけ?」
真宵 「アルバイターとして自立してしまったからな。本当に凄い奴だ。」
扶桑 「確か、大和さんもアルバイトの面接を幾つか・・・。」
山城 「面接中に号泣して全滅したらしいですね。」
扶桑 「・・・どうしましょう。」
真宵 「難しい問題だな。」
ウーン
山城 「そういえば加賀は何処に行ったんですか?」
真宵 「精力剤を買いに薬局へ・・・。」
扶桑 「頑張ってくださいね。私達の分まで。」
真宵 「三人か・・・。」トオイメ
雷 「いいのよ、大和さん。泣きたいときは思いっきり泣いたらいいの。」ヨシヨシ
大和 「うぅぅ。」グズグズ
夕立 「やっぱり違和感が凄い。」
雷 『貴女も手伝いなさいよ!私にはもう大和さんに掛ける言葉のストックが無いの!』
夕立 『態々個別の回線を使わなくたって私に言葉の在庫は無いっぽい。』
雷 「あんた、本当に使えないわね!」クワッ
大和 「そうですぅ!私は役立たずなんですぅ!」ブワッ
雷 「あ、いや、違うのよ?今のは夕立に言ったのであって!」アセアセ
近衛東「代わるぞ、雷。」
雷 「東さぁん!」パァ
大和 「私をお嫁に貰ってくださぁい!」ヒシッ
雷 「・・・うん?」
近衛東「俺には伊58が居る。諦めろ。」
大和 「妾でもいいですからぁ!」
近衛東「この国に妾制度は無い。」
大和 「でも、東さんは海底神殿の主だから神様と同じようなものだって元帥が。」グスッ
近衛東「真宵め・・・。」
夕立 「そういえば大和さんって、昔から東さんのこと好きだったっけ。」
雷 「夕立、語尾。」
夕立 「あ・・・ぽい。」
近衛東「何度も言っているが、俺は伊58の他に妻を娶る心算は無い。」
大和 「そこを何とか!私には東さんしか居ないんですっ!」ガシ
近衛東「世界には39億の男が居るらしいぞ。」
大和 「どうして顔も名前も知らない誰かを愛さないといけないんですか!」
近衛東「まだ知り合っていないだけだと言いたかったのだがな。兎も角、嫁入りは諦めろ。いい男を紹介してやる。」
大和 「嫌です!私は東さんがいいんです!」
近衛東「こういうときだけ強気になるな、大和は。」ハァ
近衛東「勘違いしているようだが、俺は嫁入りを諦めろと言った。それは俺に限った話ではない。」
大和 「え?」
近衛東「お前は戦場に立つ機会を奪われた結果、他人に依存するようになった。ならば、また戦場に立たせてやればいい。そうだろう?」
大和 「・・・はい。」
近衛東「俺が紹介しようとしている男にはそれができる。どうだ?会ってみたくはないか?」フフ
大和 「はい!」パァ
近衛東「よし。ならば手続きを進めておこう。大和は荷作りと、そうだな。武蔵にも連絡してみたらどうだ?喜んで帰ってくるだろう。」
大和 「ええ、きっと!大和、抜錨します!」ビシッ
ピューン
夕立 「今日の食堂は修羅場と化すっぽい。」
雷 「今日の当番、私・・・。」ズーン
夕立 「どん、まい。」ポン
近衛東(時雨には何か奢ってやらねばな。)フゥ
明石 「例のあ~れはどっこかな~♪」ゴソゴソ
夕張 「なんでそんなに上機嫌なの?気持ち悪いんだけど。」
明石 「失礼なっ。こんな美少女が上機嫌だったら普通見惚れるでしょ。」ムン
夕張 「自分で言うとか、痛いわー。というか、上機嫌の明石って結構気持ち悪い顔してるからね?」
明石 「え・・・?」ピタッ
夕張 「それなりに長い付き合いだからわかると思うけどさ。私、明石とふたりのときに悪口染みた冗談とか言わないから。」
明石 「もっと早く言ってほしかった。」ズーン
夕張 「で、どんないいことがあったの?」
明石 「そう!聞いてよ、夕張!」キラキラ
夕張 「立ち直り早っ。てことは発明絡みか。」
明石 「そうなのよ!私の発明が必要だって、態々連絡をくれた人がいたの!」ムフー
夕張 「さいで。因みに訊くけど、何が必要だって?」
明石 「手軽に持ち運べるコンパクトCDプレイヤー。略さず言うと、コンパクトコンパクトディスクプレイヤーよ!」フンス
夕張 「データで音楽を持ち運ぶこの時代に?」ハッ
明石 「あー!今、莫迦にしたなぁ!私は百歩譲っていいとして、クロさんを莫迦にするのは許さないかんね!」
夕張 「クロさんて。ほんと明石って自分の発明を褒めてくれる人に心を開くのが早いよね。それで何度も危ない目に遭ってるのに。」
明石 「ぐっ。で、でも、最終的には何とかなってるしぃ?」
夕張 「先まで挿入されたところでガチ泣きして事無きを得たって噂。あれ、ほんとなの?」
明石 「」メソラシ
夕張 「マジか、この女。相手が気の毒だわ~。絶対トラウマになってるって。」ウワァ
明石 「今思えば、悪いことをしたと・・・。でも、あのときは私も必死で!」
夕張 「ほぼ男子校の工業生も童貞捨てたくて必死なんだよ?」フッ
明石 「知ったことかぁ!!」
コンコン
天龍 「入るぜ~。」カチャ
黒霧 「返事くらい待ってから入りなよ。"取り込み中"だったらどうするのさ。」
天龍 「遠慮なく雰囲気をぶち壊してやるよ。つーか、手は出すなって言ったよな。」オイ
黒霧 「手を出すのと仲良くなるのは別だから。」
天龍 「仲が良いだけの男女が恋人繋ぎなんてしねぇ。」ジト
黒霧 「腕相撲しようか。」スッ
天龍 「上等だ、こら。捻り潰してやるよ。」ニギ
黒霧 「・・・。」
天龍 「なんだよ。やんねぇのか?」
黒霧 「いや、想定してた反応と違うなって。」
天龍 「やっぱり無自覚だったか。だから灰汁の強いうちの連中にも直ぐに解け込めるんだろうな、お前は。」ヘヘッ
黒霧 「何の話?」
天龍 「なんでもねぇよ。こっちの話、だっ!」グッ
グリン ブフッ
天龍 「・・・あれ?」パチクリ
黒霧 「力を入れる前の溜めがわかり易すぎる。確かに力は発揮できるけど、不意打ちには向かないよ。」フフ
天龍 「くっそ。力較べで艦娘に勝てる人間なんて聞いたことねぇぞ。」ッタク
黒霧 「僕だってないさ。」
天龍 「・・・は?」
黒霧 「僕は人間じゃないよ。暗殺を生業とする黒霧という魔族だ。こう見えて、君達の何百倍の時を生きている。」フフッ
天龍 「はー。だから性欲が薄いのか。」ナルホドナ
黒霧 「それは心が枯れてるって言いたいのかな?」
天龍 「枯れたを通り越して干からびてるんじゃねぇの?木乃伊だ、木乃伊。」
黒霧 「眠と同じことを・・・。」
天龍 「別にいいじゃねぇか。その御蔭で俺とも仲良くなれるんだぜ?」ニッ
黒霧 「男として複雑です。」
天龍 「お前に男としてなんて感情があったのか。」ヘェ
黒霧 「莫迦にしてない?」
天龍 「ねぇよ。寧ろ尊敬してるんだぜ?女の胸を凝視してるのに、その視線がやらしくないなんて。なんつーか、男じゃねぇよ。」
黒霧 「莫迦にしてるよね?」
天龍 「だからねぇって。褒めてんだよ。」
黒霧 「こうなったら、此処で天龍を襲って男を見せるべきか。」ムー
天龍 「そりゃ男じゃなくて獣だ、ばーか。」
黒霧 「ところで、何の用事で来たの?」
天龍 「ん?ああ、お前に渡したいものがあってな。」ホレ
黒霧 「領収書?"黒霧 里"って。しかも買ったものがペアリング。斬新な求婚だね。」
天龍 「なわけあるか。龍田が拗ねてんだよ。どうにかしてくれ。」
黒霧 「妬いてるんでしょ?君が僕と仲良くなろうとするから。」
天龍 「なろうとはしてねぇよ。自然とそうなるだけだ。」
黒霧 「よりどうしようもないような。」
天龍 「だろ?」
黒霧 「君自身の問題だろうに。」
天龍 「お前の所為でもあるだろうが。」
黒霧 「なんでさ。」
天龍 「てめぇで考えろ。」ニィ
黒霧 「痛い返しだ。」
プフッ
天龍 「ははっ。あははは。」
天龍 「ほれ、黒。」ン
黒霧 「着けろって?」
天龍 「折角買ったんだ。箪笥の肥やしにはしてくれるなよ?」
黒霧 「君がそう望むなら。」スッ
天龍 「お、おい?何を・・・。」
黒霧 「指輪は左手の薬指がよく似合う。」フフ
天龍 「てめぇ・・・やりやがったな。覚悟しろよ?」ガシ
ア アレ・・・?
天龍 「なぁ、黒。お前、指のサイズ幾つだ。」タラー
黒霧 「知らない。でも、君よりは小さいみたいだね。」
天龍 「チクショウが・・・!」クゥ
天龍 「・・・今更だけどさ。こんなことして大丈夫なのか?お前、既婚者なんだろ?」キラッ
黒霧 「勿論大丈夫じゃないさ。でも、だからこそ面白い。」フッ
天龍 「やっぱりこれ外す。黒みたいに首飾りにする。」グイ
ン?
天龍 「外れねぇ・・・。」アオザメ
黒霧 「あ、明日こっちに南が来るから。」ヨロシク
天龍 「誰だよ、南って。」
黒霧 「南方棲戦鬼。僕の奥さん。」
天龍 「冗談じゃねぇ!悪巫山戯で殺されて堪るかってんだ!意地でも外してやらぁ!」グギギ
黒霧 「がーんばれ。がーんばれ。」
天龍 「他人事じゃねぇだろうに。このっ!」フンヌヌ
ハァ ハァ
天龍 「いっそ切断して高速修復材で・・・。」
黒霧 「やめなさい。」コラ
龍田 「で、結局外れなかったと。」
天龍 「明日が俺の命日だってよ。」ツップシ
龍田 「悪ノリするから・・・。」ハァ
天龍 「だって、毎回いいようにやりくるめられて悔しかったんだよ。だから・・・。」モゴモゴ
龍田 「結婚を臭わせるようなことをすれば、ちょっとは焦らせることができるって?」
天龍 「・・・うん。」
龍田 「ば~か。」
天龍 「うるせぇ。これでもちっとは仕返ししてやったんだぞ、ちくしょう。」
龍田 「それが何倍になって返ってくるのやら。言っとくけど、あたしは関知しないからね。」
天龍 「薄情者ー。今夜は眠れると思うなよー。」
龍田 「・・・まさか、あたしを売ったりしてないでしょうね。若しそうなら、本当に明日が命日になるからね?」オォォ
天龍 「してねぇよ。この部屋にあいつが来るってだけだ。」
龍田 「はぁ!?あたしが居る目の前で事に及ぼうっての!?その前に抱かれるのは確定事項なの!?」
天龍 「知らね。それどころじゃなかったし。」
龍田 「お姉ちゃんの次に狙われるのはあたしなんだからね?可愛い妹を護ってよね!」モウ
天龍 「29歳にもなって何言ってんだ。」ハッ
龍田 「未経験の三十路女に言われたくないわ!」
天龍 「俺は今日で経験者になるもんねー。」
龍田 「前の旦那に言いつけてやる。」ジト
天龍 「もう言ってきたよ。俺は前に進む。ただ、偶にはお前を思い出してやらんこともないってな。」
龍田 「いいの?それで。先立った夫に操を立てるとか。あたしにはよくわかんないけど、あるんじゃないの?そういうのが。」
天龍 「あいつは俺を幸せにするってプロポーズしたんだぜ?それがどうだ。約束を果たす前に逝っちまいやがって。」
天龍 「なんでそんな奴の為に残された者が新しい幸せを我慢しなきゃならねぇんだよ。」
天龍 「時期が早い?莫迦か。どっかの茶人も言ってただろうが。ひとつひとつの出会いを大切にしなさいって。」
天龍 「目の前に幸せが転がってるなら手を伸ばす。普通のことだろ。それを邪魔するような想いならいっそ、捨てて仕舞えばいいんだ。」
龍田 「お姉ちゃん。言いすぎ。」
天龍 「・・・すまん。」
龍田 「はぁ。言いたいことは理解したわ。でもね。あたしは反対だから。あの人とだなんて、絶対に駄目。」
天龍 「何も黒と結婚するだなんて言ってねぇだろ?」
龍田 「いや、今のはそうとしか取れないわよ。好きになっちゃったんでしょ?あの人のこと。」
天龍 「おう。」
龍田 「で、ゆくゆくは結婚したいと。」
天龍 「いや?」
龍田 「なんでよ。その歳にもなれば好きと結婚を切り離して考えるとかできないでしょ?」
天龍 「そりゃ、黒が未婚だったら考えたぜ?既婚だったとしても相手が艦娘ならまだ・・・。でもよぉ。」ナ?
龍田 「要するにビビってるのね。情けない。」
天龍 「お前、俺を結婚させたいのかさせたくないのかどっちなんだよ。」
龍田 「一応、参考までに訊いておくけど・・・。なんで惚れたの?」
天龍 「知らん。気づいたら惚れてた。」
龍田 「何の参考にもなってないんですけど。」
天龍 「人の心なんてそんなもんだろ?理由なんて所詮後付けだ。」
龍田 「じゃあ、お姉ちゃんが考える後付けの惚れた理由って?」
天龍 「あいつの言葉には下心が無いからじゃねぇの?"襲う"とか、そういうこと平気で言いやがるけどさ。それだけなんだよな。」
天龍 「襲った先にどうしてやるとか。襲うことが目的を達するための手段じゃなくて、そこで完結する結果なんだよ。あいつの場合。」
天龍 「だから何つーか。警戒してんのが莫迦らしくなってきてさ。」フッ
天龍 「超絶初心なこの俺がだぜ?黒が相手だと全然緊張しねぇんだよ。寧ろ、すっげぇ安心する。だから、惚れたんだろうな。」ニッ
龍田 「・・・本気なやつだ、これ。」
五月雨「お風呂の後は~?」
漣・朧「こーひーぎゅーにゅー!」イエー
鳳翔 「ごめんなさい。うちに珈琲牛乳は置いてないの。」
三人衆「えー。」ブー
時雨 「ちょっと静かにしてくれないかな。今ちょっと集中してるから。」
漣 「うっす。すんません!」
五月雨「集中したいなら人が来ない所でやればいいのに。」
時雨 「ひとりになると余計なことばっかり考えちゃうから。」
五月雨「そうですか。ところで何のシミュレーションを?」
時雨 「ん~?さっきにぃにと小刀の稽古してさぁ。」
五月雨「ボロ雑巾みたいに熨されたわけですか。」
時雨 「そこまで酷くないって。でも、珍しく気合入ってたかなぁ。」
五月雨「珍しく?時雨姉さんと手合わせしてるときのお父さんはいつも本気だと思いますけど。」ンー
時雨 「まぁ、そうなんだけど。本気の質が違うっていうか。今日のにぃには静かだったんだよね。」
五月雨「殺気がですか?」
時雨 「そう。暗殺者として凄く参考になった。目の前に居るはずなのに、居ないように感じてしまう。そういう気配の操り方とかさ。」
時雨 「やっぱりにぃには凄いよ。ムカつくけど。何度シミュレーションしてみても、必ず何処かに真似できない要素が出てくる。」
時雨 「まだまだ、届かないな・・・。」フゥ
五月雨「まぁ、そんな簡単に届いてしまったら、お父さんのこれまでは何だったんだって話ですけどね。」
時雨 「・・・何年分?」
五月雨「少なくとも千以上。」
時雨 「一回の艦生じゃ足りないな。」トオイメ
漣 「ちび共、ちょいと集合。」
朧 「ういっす。」
曙 「同じちびに言われるとムカつく。」
・・・ン?
漣 「姫は何処行った?」
曙 「厨房に麗引きずってったわよ。晩前ご飯作ってもらうんだと。」
漣 「俺達の分、なくなったりしないよな。」
曙 「あり得るわね。」
エー
漣・朧「ま、いっか。」
漣 「とぉうは言えないけど流して本題だぁ。」ヒソッ
曙 「何よ、もう。」メンドクサ
漣 「しぐしぐとさみちゃんて、なんであんなに仲良いの?」
曙 「・・・撫子、合わせなさい。」
朧 「おぅ。」アイサー
セーノ
曙・朧「知らねーよ。」ターコ
漣 「今タコっつったのどっちだ、こらぁ!」オウオウ!
時雨 「ちゃん澪、五月蠅い。」ジト
漣 「あい!とぅみまてぇん!」ビシッ
漣 「ほらな?おいらだと怒られっぺ?」ヒソヒソ
曙 「そらそうでしょうよ。」
朧 「今のは誰でもアウトだぎゃ。」ウム
漣 「でも、さみちゃんだとさぁ。」チラ
五月雨「日本舞踊だと・・・。」ウンヌン
時雨 「それだと下半身の負担が・・・。」カンヌン
五月雨「美人薄命の由来は白粉に毒が混じってたからって説があるらしいですね。」
時雨 「美人の定義が現代と違うってやつ?日本舞踊から舞妓さんを連想して今の話したの?」
五月雨「はぁい。」シレッ
シーン
時雨 「今の化粧品にもさ。有害物質が入ってたりするんだってね。熊野さんが熱く語ってた。」
五月雨「そこまで気にすることですかね。人体に影響が無い程度しか含まれてないから認められてるんでしょうに。」
時雨 「水道水に基準値が設定されてるのと同じだよねー。」
ネー
漣 「おもっきり話題逸らしても怒られねーべ?何ならしぐしぐから脇道に逸れてんべ。」ナ?
曙 「それが許容できる関係ってことでしょ。」
朧 「つまり仲が良いということなのねん。」
紫苑茜「鈴谷ちゃん、オーブン温めておいてもらえるかしら。」トントン
鈴谷 「あいあいさ~。」
紫苑茜「熊野ちゃんはサラダをよろしく。」
熊野 「承知しましたわ。」テキパキ
紫苑茜「三隈は死ぬ気でベシャメルソースを混ぜ続けなさい。」
三隈 「呼び捨て。更には命令形・・・。」クッ
紫苑茜「下っ端が生意気言わないの。調理に参加させてもらえるだけ有り難いと思いなさい。それ焦がしたらはったおすからね。」
三隈 「無茶を言わないでくださいまし!幾つかに分割して作るなら未だしも、ひとつの釜で一気に作るとか莫迦なんですの!?」
長門 「案ずるな。そのための私だ。」ムフー
三隈 「不安材料が増えただけですの・・・。あぁ、力任せにしないでくださいな!粘り気が出るまでは優しく!飛び散ってますの!」
紫苑茜「三隈!調理場で喚くな!飛沫が散るでしょうが!」
三隈 「ごっ・・・めんなさい。」
長門 「大変だ、三隈。」
三隈 「なんですの。三隈も精神的に大変ですのに・・・。」
長門 「混ぜ棒が折れた。」ベキット
三隈 「混ぜ手も混ぜ棒もチェ~ンジ!!」
ミクマァ! ハイ!ゴメンナサァイ!
ザザーン
鳳紅蓮「・・・何の用だ?」
神命 「父親の仕事をしろや、阿呆紅蓮。」ソレジャ
ザッ ザッ
鳳紅蓮「・・・何の用だ。」
南方戦「ちょっと相談にね。」
鳳紅蓮「俺にか?」
南方戦「アンタだからよ。ワタシ、頭の良い奴が考えることは理解できないから。」
鳳紅蓮「それは俺が・・・。」
南方戦「あのひとが別の女つくってたら・・・ワタシ、どうしよう。」
鳳紅蓮「・・・今更だろ。」
南方戦「でも、いつ何が契機で本気になるかわからないじゃない。普段は平気な振りしてるけど、ほんとは不安なのよ。」
南方戦「ワタシ、あのひとのこと何もわかってない。安心して女の園に送り出せるほど、理解してあげられてない・・・。」
鳳紅蓮「・・・。」
南方戦「何か、言いなさいよ。」
鳳紅蓮「なら、ひとつだけ。絶対に折れるな。俺が言えるのはそのくらいだ。」スック
ザッ ザッ
南方戦「単純ね・・・。期待どおりに期待外れだわ、ほんと。」フフッ
ヨシッ
南方戦「明日、覚悟して待ってなさいよぉ!時雨ぇ!」
ザッ ザッ
神命 「珍しく良いこと言うじゃん。」
鳳紅蓮「珍しくは余計だ。・・・戻ったんじゃなかったのかよ。」
神命 「あの地獄の空間に私ひとりで戻れっての?」
鳳紅蓮「俺も逃げてきた口なんだが。」
神命 「てめぇの嫁だろうが。何とかしろや。」オイ
鳳紅蓮「今朝も言ったろ。時雨を喚べ。」
神命 「・・・いっそ乗り込もうか、みんなで。」
鳳紅蓮「いずれそうなるだろ。」
神命 「いずれというか、明日ね。」
鳳紅蓮「今夜は早く休まないとな。」
神命 「だからてめぇの嫁の所為でそうできないんだろうがって!さっさとあのわけのわからんカラオケ大会止めさせろやぁ!」
ベイサ ベイシュダ ノマノマ イェイ!
神命 「うるさぁぁい!!」
鳳紅蓮「やはり紅華は金剛の娘だな。あの空間に耐えられるとは・・・。」
・・・
紅華 (明石さんから耳栓貰っておいて良かった。)フゥ
紅華 (ただ、さっきから母さんがマイクを私に向けてくるのよね・・・。)
紅華 (早く戻ってきて、父さん!)フルフル
天龍 「・・・こんなもんか?」ウーン
龍田 「な~にがこんなんか、よ。ばたばた掃除なんてしちゃって。乙女かっ。」ケッ
天龍 「うるせぇな。部屋に他人を招くんだから綺麗にするのは当然の礼儀だろうが。つーか、避難しなくてもいいのか?」
龍田 「私には使命があるから。」チャキ
天龍 「その薙刀はなんだ・・・。」オイオイ
コンコン
龍田 「どうぞ~。」ニコニコ
天龍 「ばっ!薙刀仕舞えって!」
カチャ
足柄 「邪魔するわ・・・。」ピタ
キー
天龍 「待て待て待て!せめて説明させろ!ってか、なんでお前なんだよ!」
足柄 「序でに抱いてもらおうと思って。」
天龍 「プライドとかねぇのかよ、お前・・・。」
足柄 「できもしないことにプライドなんて持っても仕方ないじゃない。」
龍田 「足柄ちゃん"の"誘惑は効かないのね。」
足柄 「すっごい引っ掛かるけど、そうよ。下着姿で夜這いを掛けても、動けないように抱き締められてそのまま夜が明けるのよ。」
天龍 「聞くに堪えねぇ・・・。」
黒霧 「本当にね。」
龍田 「」チャキ
オット
黒霧 「随分と警戒されたものだね。」フフ
龍田 「あたしに近づかないで。」キッ
天龍 「ん?俺を護るためじゃなかったのか?」
龍田 「抱かれる気満々のお姉ちゃんなんて知らないっ。」フンダ
黒霧 「そうなの?」
天龍 「い、いや・・・。」アハハ
龍田 「白々しい。」ハッ
黒霧 「それは申し訳ないことをしたね。」
・・・エ?
黒霧 「君は合格だよ、天龍。今夜はゆっくり休むといい。」フフッ
天龍 「や、やった~。」ハハッ
足柄 「じゃあ私が代わりに。」
黒霧 「うん、ちょっと待ってて。」
足柄 「それは駄目ではないってことよね!言霊取ったからね!もう撤回は受け付けないからね!」ズイ
黒霧 「わかったから。少し黙ってなさい。」
足柄 「はぁい!」ムフー
黒霧 「さて、それじゃあ約束どおりに君の魅力について語ってみようか。」
天龍 「そんな約束したっけか。」
黒霧 「昼に言ったでしょ?僕が君の魅力について話すのは夜になってからって。」
天龍 「隠語じゃなかったのか・・・それ。」
龍田 「お姉ちゃん、まさか昼からずっと期待して・・・。」ジトォ
天龍 「・・・。」フイ
足柄 「下着チェックしとく?」
天龍 「要らねぇよ!おい、やめろ!スカートの中に手を入れるなぁ!」
ギャー ギャー
黒霧 「・・・花。」
ビクッ
龍田 「な、何?」
黒霧 「ちょっとおいで。」ニコニコ
龍田 「やだ。」
黒霧 「おいで。」ニコニコ
龍田 「・・・はぃ。」ウゥ
龍田 「なんですか。本当の狙いはあたしだったってことですか。勘弁してください。あたしは貴方が怖いです。ごめんなさい。」
黒霧 「前にも言ったけど、もっと堂々とする。弱気になってる君を見ると虐めたくなる。」
龍田 「」ウルッ
黒霧 「・・・君は元々の性格が龍田とかけ離れすぎてるね。その差がまた嗜虐心を煽るというか。僕との相性は最悪みたいだ。」ハァ
ポス
黒霧 「花、おいで。お互いに顔が見えなければ多少はましでしょ?」ポンポン
龍田 「だからって、なんで膝の間に・・・。」グスッ
黒霧 「僕はこういう遣り方しかできないの。慣れるまで執拗に絡むから、覚悟しておくように。」フフッ
ストッ フゥ
龍田 「もう慣れました。」
黒霧 「嘘を吐くとペナルティが科せられます。」ギュ
龍田 「もうやだ・・・。」ウゥ
黒霧 「はい、ゆっくり息を吸って~。吐いて~。"龍田"を思い出して~。」
龍田 「すー はー」フゥ
黒霧 「ところで、さっきから天龍が凄い格好をしているね。」
龍田 「パンツ脱がされないように必死なんでしょ。はしたないったら。」
龍田 「潔く脱がされたほうが恥を曝さずに済むんじゃな~い。」
天龍 「潔くってなんだ!俺は何も悪いことはしてねぇ!花こそ黒の上に座って何やってんだ!」
龍田 「上じゃないし。何もしてないし。襲われてるだけだし。はよ助けろ、莫迦姉。」
天龍 「こっちも自分のことで手一杯だっつの!」
足柄 「うーん。天龍の下着に染みは無いみたいねー。」
天龍 「それを確認するだけなら脱がす必要ないだろうが!いい加減、手ぇ放せぇ!」
龍田 「あたしも放してほしい。」
黒霧 「駄目。これはペナルティだから。話が一段落するまではこのままだよ。」
龍田 「う~。」ムゥ
黒霧 「さて、それじゃあ本題に入ろうか。」
龍田 「一言で済ませて早くあたしを解放して。」
黒霧 「ごめん。天龍の・・・いや、里の魅力を一言で語り尽くすのは無理かな。」
足柄 「ほ~ん。良かったわね。」ニヨニヨ
天龍 「うっせ。」フン
デハ・・・ コホン
黒霧 「里の魅力は、誰に対しても壁をつくらず向き合えるところ・・・。」
龍田 「はい終わり。解散!」
黒霧 「まだ続くから。」
龍田 「早くして。」
ハイハイ
黒霧 「世の中の多くの人は、或る人物に対して壁をつくり、その壁に映した先入観という映像を見て為人を理解したつもりになる。」
黒霧 「その人物を見ているつもりになっているだけで、実際は自分の勝手な思い込みを盲信してしまっている。」
黒霧 「これの厄介なところは、自覚症状が無いってこと。指摘されても気づけない人が居るくらいだからね。」
黒霧 「にも拘わらず、里はきちんと黒霧時雨という人物に向き合い、自分の瞳でその為人を見極めようとした。」
黒霧 「それがどれだけ好感の持てる行為か。一番近くに居た君が一番よく知っているはずだよ。」
龍田 「・・・。」
黒霧 「まぁ、初対面の頃はできていなかったけどね。」
天龍 「仕方ねぇだろ。あのときはまだ整理がついてなかったんだから。」
黒霧 「でも、またできるようになった。だから、合格。君は君だけの魅力を取り戻した。」
天龍 「・・・おう。」
黒霧 「その陰には花の活躍があったわけだけど。」コソッ
龍田 「黒幕が何を・・・。」ハッ
黒霧 「次は君の番だからね、花。」
龍田 「・・・消えてしまいたい。」
龍田 「もうやだ。完全に標的にされたぁ。」ウゥ
足柄 「別に身体を狙われてるわけじゃないんだから。そこまで気にすることないでしょ?」
龍田 「いっそ身体目当てのほうがよかった。」
天龍 「何言ってんだ。んなこと俺が許さねぇからな。」
龍田 「さっきまで抱かれる心算でいた人には言われたくない。」
天龍 「さっきまでじゃねぇ。今もだ。これから頭下げに行くからな、俺は。」
龍田 「はぁ?」
天龍 「このままだと俺は前に進めねぇんだよ。自分は吹っ切ったつもりでも、周りがそうは思わないだろ?」
天龍 「それこそ花が言ったみたいに前の夫に操を立てて、とかよ。んな風に思われてたんじゃ、いつまでも俺は立ち止まったままだ。」
天龍 「俺は行くぜ。止めたって聞かねぇからな。土下座でも何でもかまして抱かれてやる。」
ジャ イッテクル
足柄 「・・・行っちゃったわね。天龍の代わりにって話も何処かに行っちゃうそうだわ。」
龍田 「あぁ、もう。お姉ちゃんはいつも、あたしを置いてひとりで・・・。」
龍田 「あ~!苛々する!お姉ちゃんは進むべき道を見つけちゃうし!あの人は勝手にあたしの道を創ろうとするし!」
龍田 「あたしはまだ何も決められてないのに・・・!ほんと、空っぽな自分が嫌になる。」ギリッ
フー ヨシ
天龍 「たのもー。」カチャ
・・・アレ?
天龍 「居ねぇ・・・。」
・・・
足柄 「じゃ、私は失礼するわね。」
龍田 「うん・・・。」
足柄 「・・・。」ハァ
足柄 「やっぱりやめた。今日は一緒に寝ましょう。」
龍田 「え、嫌ですけど。」
足柄 「人が折角気を遣って・・・。」イラッ
足柄 「あのねぇ。同期の好みで一緒に居てやろうって言ってるのよ?たっちゃんを護るために。」
龍田 「・・・護る?」
足柄 「そうよ。あいつはねぇ、人が落ち込んでるときに限って絡んでくるのよ。」
足柄 「どうせ今も何処かに隠れてたっちゃんが独りになるのを待って・・・。」
黒霧 「わかってるなら下手な情を持つべきじゃなかったね。」ユラァ
足柄 「んぶっ!?」
トサッ
黒霧 「やっと、ふたりきりだね・・・。」ニィ
龍田 「」ブワッ
黒霧 「ごめん。調子に乗った。」
龍田 「もう滅茶苦茶にしていいからぁ。明日からは普通に接してよぉ。」グズグズ
黒霧 「あ、ほんと?じゃあ遠慮なく。」ヨイショ
龍田 「え?ちょっ・・・。」ワッ
ボスッ
黒霧 「君さ。心の何処かで、最終的には何事もなく終わるって思ってるよね。結局は手を出されないって。」グイ
龍田 「あ・・・。」ンッ
黒霧 「悪いけど、僕は決めたから。中身の無い言葉はもう、届かないよ・・・。」
ンー
足柄 「・・・焦点が定まらない。あんの黒服野郎、危険量の薬を盛りやがったわね。あー、くらくらする。」
龍田 「」ポー
足柄 「たっちゃん・・・よね?」
龍田 「うん。」ホケー
足柄 「何というか。あんまり気にしないほうがいいわよ。そう、犬に噛まれたとでも思って。」ネ?
龍田 「大丈夫。あたしはまだ処女だから。」
足柄 「これは・・・かなりきてるわね。どうしよう。私ひとりじゃ黒に敵わないし。かといって那智姉はあてにならないし。」ウー
龍田 「本当よ?」
足柄 「え?いや、でも・・・。」
龍田 「本当に何もされてないから。キスはしたけど・・・。ちゃんと幸せの味がしたから、大丈夫。」ウフフ
足柄 「何もされてないのにこうなってるなら逆に恐いんですけど!?」
天龍 「Zzz」グガー
黒霧 「待ってるだろうなとは思ったけど、まさか寝て待ってるとはね。しかも生まれたままの姿で。」
黒霧 「あ~あ。折角天龍のために体力を残しておいたのにな~。罰として抱き枕になってもらおうかな~。」モゾモゾ
ギュッ
黒霧 「・・・君を傍に感じると、獣を抑えるのに苦労するよ。」マッタク
黒霧 「今だから白状するけど、僕は別に性欲が薄いわけじゃないからね?ただ欲を抑える訓練を受けてるってだけで。」
黒霧 「本当に性欲が薄いなら、僕はこんなに子沢山じゃないだろうし。」
黒霧 「さっきだって、何度龍田の身体に手が伸びそうになったことか。最後に接吻はしちゃったけど。」
黒霧 「ま、そういうわけで僕は今もやもやしているのですよ。そんな状態で君を抱いたらどうなるか。未経験でも想像はできるよね?」
黒霧 「だから今夜は・・・。」
グリン ノシッ
天龍 「・・・。」ジト
黒霧 「やめておいたほうがいいと思うんだけど。」オモイ
天龍 「俺は生半可な覚悟で此処に居るわけじゃねぇ。それに、この行為には過去との決別って意味もあんだよ。」オモイイウナ
天龍 「俺が壊れる?やれるもんならやってみやがれ。余裕で耐え抜いて、お前のプライドをずたずたに引き裂いてやんよ。」ヘッ
黒霧 「そうまで言われたんじゃあ僕も退くわけにはいかないな。」フッ
黒霧 「全力でぶつけるから。優しさなんて期待しないでよ。」ギラッ
天龍 「上等だ、こら。あとで龍田の件についてじっくりと聞かせてもらうからな!」
天龍 「あ、でもいきなりは勘弁してください。」
黒霧 「優しさは無しと言いました!」グイ
ヤ ホントニマッ タァアアア!!
天龍 「どうだ。耐えきってやったぜ。」ハァ ハァ
黒霧 「ん。よく頑張りました。」ヨシヨシ
天龍 「へへっ。」ニッ
黒霧 「痛かったでしょ。」
天龍 「そりゃあもう・・・。ちったぁ加減しろよな。滅茶苦茶しやがって。」
黒霧 「全力でぶつけるって言ったから。加減したら失礼かなと思って。」フフ
天龍 「お気遣いどーも。」
黒霧 「・・・里って、痛いのが好きな人なの?」
天龍 「なんでそうなんだよ。」チゲェヨ
黒霧 「だって、情欲の赴くままに抱いたのに、お気遣いどーもって。」
天龍 「てめぇ、わかって言ってるだろ。」
黒霧 「そりゃ勿論。」
天龍 「あのなぁ。俺だって本当は、もっと違うのを期待して・・・。」モゴモゴ
黒霧 「違うのって?」
天龍 「だから、その・・・な?わかるだろ?」
黒霧 「わからないよ。ちゃんと言ってくれなきゃ、わからない。」
天龍 「・・・さい。」
黒霧 「なに?」ンフフ
天龍 「もっと優しく!・・・愛して、ください。///」プイ
黒霧 「瞳を見てもういっかい。」
天龍 「言わねぇよ、ば~か。」
黒霧 「せめてこっちを向いてもらえるかな。」
天龍 「ちょっと。今、顔見られない・・・。///」プシュー
黒霧 「まったく君は。可愛いなぁ、もう。」ボソッ
天龍 「耳許で言うんじゃねぇよ、ちくしょうが。///」
チュンチュン
天龍 「・・・朝だな。」
黒霧 「そうだね。」カタッ
天龍 「俺、徹夜したの初めてだ。」
黒霧 「徹夜なんて、そうするものじゃないよ。」コポポ
ハイ ホットミルク
天龍 「・・・忘れねぇからな、今日のこと。」コクッ
黒霧 「僕も、できる限り憶えておくよ。」フフッ
天龍 「そこは嘘でも言い切ってくれよ。寂しいだろ。」ムッ
黒霧 「だって、まるでこれが最後みたいに言うからさ。」
天龍 「・・・。」
黒霧 「龍田には言ったの?」
天龍 「言ってない。言う心算もない。」
黒霧 「そう・・・。」
天龍 「花のこと、頼みます。」フカブカ
黒霧 「今回だけだよ?」フゥ
天龍 「ああ、今回"だけ"だ。」ニッ
雷 「夕立!カツはまだ揚がらないの!?」
夕立 「あと少し待つっぽい!」
雷 「早くしてちょうだい!注文が滞ってるわよ!」
夕立 「生焼けで腹痛を起こしてもいいなら直ぐにでも出せるっぽい。」ムッ
雷 「莫迦言わないで!」
夕立 「なら待つっぽい。」フン
雷 「なる早で頼むわよ!」モウ
大和 「次、和定食でお願いしまふ!」ングング
武蔵 「私も和定食だ。」
ハーイ
雷 「和定、に~!」オーダー!
夕立 「注文拒否したい・・・。」ムゥゥ
雷 「本音が漏れてるわよ~!口より手を動かす!」
夕立 「口しか動いてない人に言われたくないっぽい!」
雷 「私に包丁を持たせると酷いことになるわよ!昨晩みたいに!」ムフー
夕立 『業務連絡!元帥の嫁、至急厨房まで来られたし!』
雷 「加賀さんはお取り込み中。扶桑さんは書類でてんてこ舞い。山城さんは何処かでサボタージュだって。」
夕立 「どいつもこいつもぉ!!」ウガー
明石 「これとこれと・・・あと、これも!」ムフフー
夕張 「頼まれたのはCDプレイヤーだけじゃなかったっけ?どんだけ持っていく気よ。」
明石 「序でに他の発明も見てもらおうと思って。」エヘヘー
夕張 「それでひかれても知らないからね。」
明石 「大丈夫よ。クロさんは善い人だから。」
夕張 「まだ会ったことないくせに・・・。これだから夢見がちな乙女は。」ハッ
明石 「ぐっ。彼氏持ちが上から・・・。くぅ~!腹立つぅ!」
夕張 「悔しかったら明石も彼氏をつくることね。」フフン
明石 「くっそぉ。いっかい会わせろ、こんにゃろう。」
夕張 「やなこった。」
明石 「・・・ねぇ、いっつも思ってたんだけど。夕張って本当に彼氏持ちなの?」
夕張 「何、疑ってるの?」
明石 「だって、普通彼氏がいるなら休みの日にデートとか行くじゃん。でも夕張は工廠に居るし。ツーショットの写真も持ってないし。」
夕張 「連絡手段が手紙なんだから仕方ないでしょ?彼、兵器開発部門の所属だから休日も少ないみたいだし。」
明石 「最後に会ったのいつよ。」
夕張 「私が軍学校に編入する前。」
明石 「それ付き合ってるっていえるの?私、こんなに憧れない恋って初めてなんだけど。」
夕張 「はっ!わかってないわねぇ。会えなくてもお互いが一途に想い合ってるって、最高にキュンキュンするじゃない。」
明石 「てきとーなこと書いてキープされてるだけなんじゃないの?」エー?
夕張 「こいつっ。こういうときだけ現実を見おってからに。」クッ
明石 「ちょっとその手紙見せてよ。」
夕張 「やだ。」
明石 「見せてよー。」
夕張 「い~や~だ~!」
龍驤 「夕張~。君宛てに手紙が・・・。」
明石 「もらったぁ!」バッ
夕張 「あ!こら!」
明石 「へっへ~!駆けっこじゃ、私のほうが速いもんね~!」タタタッ
夕張 「くっそ!龍驤さん!あいつ捕まえて!」ビッ
明石 「狡いぞ!夕張メロン!」
夕張 「黙れ!苺ミルク!」
龍驤 「・・・すまん。うちも手紙の内容、気になっててん。」
夕張 「そんなっ!」
明石 「よっし。それじゃあ、御開帳~!」ピリッ
ヤ ヤメロォ!!
明石 「えーと。うわ、兵装の話ばっかじゃん。つまんな。」
夕張 「ほっとけ!」
明石 「あ、追伸ある。今度、結婚することになったので、是非友人代表としてスピーチを・・・。」アー
夕張 「・・・え?」
明石 「なんか・・・ごめん。」
夕張 「えぇぇ・・・。」ヘタリ
龍驤 「何処で間違えたんやろな。」ポム
天龍 「ん~!」ノビー
フゥ
天龍 「好い・・・。」
龍田 「好い朝ね、お姉ちゃん。」
天龍 「お、おう。おはよう。」イツノマニ
・・・ン?
天龍 「花。お前、化粧品変えたか?」
龍田 「ううん。いつもと同じだけど、なんで?」
天龍 「いや。なんか、若返ったような気が・・・。」ウーン
龍田 「あんまりじっと見ないで?恥ずかしい。///」クスッ
天龍 ("龍田"の要素が抜けてる!?)ピシャーン
天龍 「そういえば昨日、黒が戻ってくるまでかなり待った・・・。」ア
天龍 「花に何しでかしたか問い詰めるの忘れてたぁ!」
龍田 「あたしは何もされてないよ?」
天龍 「少なくともキスはしてんだろうが!」ダッ
クロォォォォ!
龍田 「ほんとに何もされてないのに・・・。」ポツーン
ダダダダ
天龍 「黒!」バァン
黒霧茜「ん?私に何か用事か?」
天龍 「・・・誰!?」
黒霧茜「私でなく時雨に用事があるなら暫くは無理だぞ。今は彼奴を休ませねばならんからな。」
天龍 「そう・・・ですか。」
黒霧茜「ところで、五月雨が何処に居るか知らんか。久方振りに暴れた所為で熟睡してしまってな。地理が頭に入っておらんのだ。」
天龍 「あぁ、それなら食堂に行けば、そのうち会えると・・・。」
黒霧茜「そうか。序でに案内も頼めるか?」
天龍 「お、おう。こっちだぜ。」スッ
黒霧茜「すまんな。助かる。」フッ
天龍 (やべぇ。緊張して上手く喋れねぇ。何だよ、この感覚・・・。)チラ
黒霧茜「どうかしたか?」
天龍 (こいつ、只者じゃねぇ・・・!)タラー
コツッ コツッ
時雨 「あ、ねぇねだ。」バッタリ
黒霧茜「おぉ、眠か。少し背が伸びたか?」ナデッ
時雨 「そんなわけないでしょ。今の遣り取り、なんだか久し振りに会ったお祖母ちゃんみたいだよ?」
黒霧茜「・・・そうか。」ズーン
天龍 「時雨、ちょっといいか。」チョイチョイ
時雨 「・・・なに。ねぇねと話す機会あんまりないから邪魔しないでほしいんだけど。」ジト
天龍 「そんな瞳で見るなよ・・・。怖ぇよ。」
時雨 「で、なに。」
天龍 「この人、誰だ。」ヒソヒソ
時雨 「にぃにのお姉さん。佐世保の黒白雪。」
天龍 「・・・。」ハー
黒霧茜「なんだ。私を見詰めても何にもならんぞ。」
天龍 「思ってたより柔らかい表情してんだな。」
黒霧茜「・・・どういう意味だ?」ウン?
時雨 「阿呆ぽいってことだよ。」シレッ
天龍 「優しそうって意味です!」
天龍 「何言ってくれてんだ!おい!」ヒソヒソ
時雨 「大丈夫だよ。ねぇねは冗談通じないタイプだから。」
天龍 「何も大丈夫じゃねぇ!!」
黒霧茜「時に眠よ。五月雨はどうしている。」
時雨 「ん~?五月雨なら厨房で鳳翔さんの手伝いをしてるよ?」
黒霧茜「そうか。では案内してくれるか。五月雨に話しておかねばならんことがあるのでな。」
時雨 「りょーかーい。こっちだよー。」トテトテ
黒霧茜「世話になったな、里。またゆっくり話でもしよう。」デハナ
天龍 「お、おう。また・・・。」ン?
天龍 「俺、自己紹介したっけか?」
五月雨「煮干しの内蔵、取り終えました~。」アーイ
紫苑茜「ご苦労様~。こし布に包んで煮込んでもらえる~?」
五月雨「こし布・・・?いいんですか、そんなことをして・・・。」
紫苑茜「いちいち移し換えるの面倒でしょ?始めから布で包んで紐で縛っておけば後が楽なのよ。」
五月雨「わかりました。お母さんがそう言うなら・・・。」ゴクリ
五月雨「いざっ!」ホァッ
近衛麗「待った。」ガシ
五月雨「うわっと。なんですか、もう。邪魔しないでくださいよ。」ムゥ
近衛麗「五月雨、その手に持ってる物は何。」ゴゴゴ
五月雨「何って。こし布ですけど。」
近衛麗「料理に使うのは濾布!あんたが持ってるのは腰布!ていうか、それ私のパレオ!」
五月雨「どおりで好い出汁が取れそうな布だと。」ハヘー
近衛麗「布から出汁が取れるかぁ!」
鈴谷 「ほ~。五月雨ちゃん、やるぅ~。」
紫苑茜「貴女は真似しちゃ駄目よ。面倒見きれないから。」
ギャー ギャー
時雨 「相変わらず騒がしいなぁ。また五月雨が誰かをおちょくって遊んでる。」
黒霧茜「似なくてもいいところが似てしまったな。もう少し天使の要素が・・・。」ン?
日陰 「げ・・・。」
黒霧茜「ほう。懐かしい顔が居るな。時雨の矯正録壱号ではないか。」
日陰 「壱号はあんたでしょ・・・。」ボソッ
黒霧茜「聞こえたぞ。」
日陰 「はーい、すみませーん。」イソイソ
黒霧茜「待て。貴様、足音が以前と違うぞ。息遣いも荒いようだ。自己管理がなっていないのではないか?」ギロ
日陰 「こういうとこだけ本当に鋭い。」チッ
黒霧茜「貴様は昔から手を抜くのが上手かったからな。とりわけ肉体作りに関しては虚弱体質を理由に怠けてばかり。」
黒霧茜「一度、本気で指導してやりたいと思っていたのだ。これがいい機会だ。少し付き合え、日陰。」フフフ
時雨 「駄目だよ、ねぇね。妊婦さんに無理させちゃ。妊娠したてなんだし。激しい運動は厳禁です。」メッ
キョトン
黒霧茜「そう、なのか?」
日陰 「・・・うん。」フイ
黒霧茜「そう・・・か。私が眠っている間に・・・そうか。南よりも先にふたりめをつくってしまったか。」
黒霧茜「彼奴がふたりめをつくる初めての相手は南だと思っていたのだがな。まさか、よりにもよって日陰とは・・・。」
日陰 「言い方・・・。」
黒霧茜「嘗て時雨がふたりの子をもうけたのは双子が産まれたときだけなのだ。誇っていいぞ、日陰。お前はそれなりの事をやり遂げた。」
日陰 「だから言い方!茜姉はほんっと昔から言葉に思いやりが無い!」
黒霧茜「私は素直に褒めている心算なのだが・・・?」
時雨 「ねぇねに気の利いた言葉を期待しても無駄っと。」メモメモ
五月雨「そのメモ必要ですかね・・・。」エェ
黒霧茜「おぉ、五月雨か。丁度良かった。お前に頼みがあるのだ。」
五月雨「頼みですか。いいですよ。五月雨ちゃんにどーんと任せてください。」ムフー
黒霧茜「我が姪は頼もしいな。」フフ
五月雨「そうでしょう。そうでしょう。」フフン
黒霧茜「では、この指示書どおりに頼む。」スッ
五月雨「指示書?茜さんがそんな社会人みたいなことを・・・するわけないですよね。わかってました。」オトウサンノジダ
五月雨「ていうか、これ茜さんに宛てて書かれたものじゃないですか。弟からのお願いを他人に任せるだなんて・・・。」ハァ
五月雨「姉としてどうなんですかー?」ジト
黒霧茜「勘違いするな。万事、私が表に立ってやり遂げてみせるさ。だが・・・。」
五月雨「ひとりでは心許ないと。わかりました。助太刀しましょう。」
黒霧茜「・・・物わかりが良くて助かる。助かるが・・・私は酷く傷ついた。」ウルッ
ハイ チュウモーク
五月雨「全員が揃う機会が朝食と夕食くらいしかないので食事中に失礼します!」
時雨 「此方におわそう方を何方と心得る!」
五月雨「畏れ多くも先の佐世保憲兵隊隊長。」
露姉妹「黒霧茜様なるぞ!」ババーン
黒霧茜「私は立っているだけでいいのか?」
ハイ ソウカ・・・
足柄 「うそ・・・。」
那智 「生きていたのか・・・隊長。」
黒霧茜「若しやお前・・・綾か?」
那智 「はい。御壮健のようで何よりです。」ビシッ
黒霧茜「そうか。あの砲撃の中を生き延びたか。お前も中々に悪運の強い女だ。」フッ
那智 「隊長には敵いませんよ。」
足柄 「那智姉がちゃんと敬語使ってる。似合わなー。」ウワァ
黒霧茜「隣りのお前は確か・・・琴、だったか。我が弟の下に就くと色々と大変だろう。」
足柄 「本当ですよ!お姉さんからびしっと言ってやってください!もっと部下を労えって!」
黒霧茜「しかし、お前が彼奴に泣きついた夜は幸せそうな表情をしていたではないか。」
足柄 「え・・・?」
黒霧茜「もう黒でいいや。こんなに胸をいっぱいにしたのは、黒が初めてだから。好き。私を黒だけの女にして・・・。」
足柄 「わー!!///」
羽黒 「何、今の恥ずかしい科白。」
足柄 「違うの!雰囲気に流されただけなの!若気の至りなの!///」ウー!
足柄 「ていうか、なんでそれを貴女が!?て、黒しかいないじゃない。あいつぅ~!!」クゥゥ
ブットバシテヤルー!!
五月雨「その当時にはお父さんの身体に戻ってたんですね。」
黒霧茜「うむ。あれは佐世保が壊滅した後のことだからな。」
時雨 「弟の情事を内側から見守る姉ってどうなの・・・?」エェ
五月雨「因みに、茜さんにも感触が共有されたりするんですか?」
黒霧茜「琴は、筋肉質でありながらしなやかさも備えた好い肉体をしているぞ。武道家として理想的な肉体だ。」ウム
五月雨「そんなことは訊いてねぇよ。この戦莫迦が。」
黒霧茜「本当に似なくてもいい部分が似てしまったようだ。伯母は悲しいぞ。」
時雨 「似てるって、にぃにも紫苑さんもそんなに口悪かったっけ。」
五月雨「口が悪いとは失礼な。」ムッ
時雨 「自覚が無いなら尚のこと悪いよ。」
黒霧茜「五月雨にあの悪魔の要素は受け継がれていないだろう。お前は原初の霧と天使の十字架を素材に建造された・・・。」
紫苑茜「あーちゃん?今、悪魔って聞こえたんだけど~?」ユラァ
黒霧茜「」ダラダラ
紫苑茜「はぁ・・・。いい加減、姉さんって呼んでもらいたいものね。しーちゃんだってそう呼んでるでしょ~?」モウ
黒霧茜「私にとって、あれは・・・トラウマ、なのだ。この手から大事なものが零れていく感覚。」
黒霧茜「もう二度と離すまいと誓ったはずなのに。ああも容易く奪われた・・・お前に。」
紫苑茜「それに関しては返す言葉が無いけど・・・。」
五月雨「こう聞くと、お母さんってとんだ悪女ですよね。どうしてお父さんが普通に接しているのか、不思議なものです。」
黒霧茜「お前の顔を見ると、どうしようもなく不安になるのだ。また私の手を離れて、行ってしまうのではないかと。」
黒霧茜「五月雨の言うように、何故か彼奴はお前に気を許している。それが余計に不安を煽る。肉体を共有した今となってもだ。」
紫苑茜「あーちゃん・・・。」
黒霧茜「あの出来事は私にとって大きすぎた。別に責めているわけではないぞ?彼奴が気にしていないのだからな。」
黒霧茜「だが、もう暫く待っていてくれ。いつかきっと克服してみせる。」
五月雨「お母さんの弱みを握らない限り無理じゃないですかね、それ。私が探ってやりましょうか。」
紫苑茜「母を伯母に売らないでちょうだい。」チョット?
黒霧茜「くっはは!・・・本当に五月雨はスフィアによく似ているな。」フゥ
五月雨「スフィア・・・?」
紫苑茜「わたしも知らないんだけど。誰よ、それ。」
黒霧茜「ん?あぁ、そうか。あれはお前が彼奴に斬られた後の話だったか。スフィアは、時雨が異界で迎えた初めての嫁の名だ。」
漣 「ほほう。最初の女とな。」ニヤッ
朧 「そこのところ詳しくなのん。」ニマッ
時雨 「何処にでも湧いて出るね、このふたりは・・・。」
近衛麗「私も聞きた~い。」
鳳翔 「私も失礼して。」チョコン
龍田 「あたし達も行く?」
天龍 「お、おう。龍田がそう言うなら・・・。」
龍田 「"花"って呼んで?昔みたいに。ね、お姉ちゃん?」ウフフ
五月雨「随分とギャラリーが増えましたね。」
黒霧茜「我が弟は人気者だな。」フッ
コホン
黒霧茜「スフィアはだな。依頼を受けて魔獣を狩り、その報酬で生計を立てる狩人だった。」
黒霧茜「眉目秀麗、片手剣の腕も一流。特に魔獣の動きを予測し回避する体捌きには目を見張るものがあった。」
黒霧茜「しかし、人付き合いは苦手なようでな。正直が過ぎて女に嫌われ、腕が立ちすぎて男にも倦厭される始末だ。」
黒霧茜「本当は誰かと組んで狩りを成功させた喜びを分かち合いたいのに・・・。」
黒霧茜「そんなときに出会ったのが我が弟だ。己と肩を並べて闘う実力と、正直さを笑って受け止める寛容さを備えた男。」
黒霧茜「思い描く理想そのものが形を成して顕れたような者との出会いにスフィアは歓喜した。」
黒霧茜「それからふたりは行動を共にするようになるのだが・・・ここからが長かった。」
五月雨「そうなんですか?聞いてる限りだと直ぐにゴールインしてしまいそうですけど。」
黒霧茜「黒霧には結婚の概念など無いからな。スフィアも、時雨に出会うまでは碌に人付き合いをしていない。進展などするはずがない。」
黒霧茜「互いに惹かれ合いながらも、ただ一緒に居るだけという関係が続き・・・。結局、どうやって結婚に至ったと思う?」
五月雨「さあ?」
黒霧茜「他の狩人達に、まだ夫婦ではなかったのかと、口を揃えて驚かれたからだ。」
黒霧茜「それで結婚というものを知った時雨がプロポーズしたのだ。」
五月雨「ちゃんとプロポーズはしたんですね。よかったです。」
時雨 「で、どうして五月雨とその人が似るってことになったの?数十年前ってレベルの話じゃないんでしょ?」
黒霧茜「それはもう言ったぞ?天使の十字架を素材にして五月雨を建造したからだ。」
五月雨「天使の十字架?私の体内にそんなものがあるんですか。」ナント
黒霧茜「天使の十字架はスフィアの母が遺したものでな。スフィア自身の形見でもある、天使の力を宿した一種の魔具だ。」
黒霧茜「無事の加護を授け、所持者をあらゆる危機から救うといわれている。五月雨の回避能力も大半はこれの御蔭だろう。」
五月雨「私の回避能力は天性の才能ではなかったという衝撃の事実!!」ガーン
黒霧茜「十字架には天使固有の能力、"破邪"を授ける効力もあると聞く。髪が白く輝いたことはないか?」
羽黒 「演習のとき・・・。」
五月雨「蒼白く輝いていたみたいですね。」
黒霧茜「"破邪"が発動している証拠だ。悪意を以て放たれた攻撃を無効化する力がある。今はまだ不完全だが・・・。」
黒霧茜「髪が完全に白くなったとき、"破邪"は完成する。"大鎌の天使"の誕生だな。」フフッ
五月雨「どっちかっていうと天使より死神のほうがいいです。」
時雨 「正直に言わない。ていうか、スフィアさんと五月雨が似てる理由がまだ聞けてない。」
ソウダッタカ? ソウダヨ
黒霧茜「スフィアと五月雨が似ている理由は、天使の十字架に魂の残滓が封じられているからだ。単純な話だろう?」
五月雨「そして魂が溶け合った結果、みたいなことですか?」
黒霧茜「理屈は知らん。だが、現状そうなっているのだから溶け合っているのだろうな。」
時雨 「それにしても、どうしてにぃには今頃になって十字架を手放すことにしたんだろうね。これまでずっと自分で持ってたのに。」
黒霧茜「機会が無かっただけだろう。彼奴は、妻の形見は己で持たず子供に託すようにしているからな。」
時雨 「それって、スフィアさんとの間には子供がいなかったってこと?」
黒霧茜「いや、いたぞ?母の死に際を目の当たりにし、父に失望して独り旅立った挙句、二度と戻ることのなかった息子が・・・な。」
黒霧茜「時雨は随分と悔やんでいた。妻を護れなかったこと。息子に未来を掴ませてやれなかったこと。」
黒霧茜「あのとき、天使の十字架を息子に預けていれば・・・。それからだ。彼奴が妻の形見を子に託すようになったのは。」
五月雨「でも、どうして私だったんでしょう?これまでにも子供は沢山つくってきたでしょうに。」
黒霧茜「その子らにはその子らの母がいるだろう。」
五月雨「なるほど。建造組なら特定の親はいないから・・・ん?それだと、私のお母さんはスフィアさんってことになりませんか?」アレ?
黒霧茜「そうだな。」
五月雨「あらまぁ、どうしましょう。これから何と呼んでほしいですかぁ?」チラ
紫苑茜「好きになさい。」
五月雨「そうですか。じゃあ、"お母さん"でお願いします。ね、お母さん?」ニヘッ
紫苑茜「はいはい。これからもよろしく頼むわ。わたしの可愛い娘。」ウフフ
日陰 「茜姉、序でに訊いてもいい?」
黒霧茜「私に答えられる内容であればな。」
日陰 「時雨くんが唯一、ひとりの女性との間に複数の子を持ったその相手と子について知りたい。」
黒霧茜「リーシャと双子の姉妹についてか。好かろう。あの姉妹のことはよく憶えているからな。」
黒霧茜「まずはリーシャに関してだが。本名をリムアリーシャ。とある王国で騎士をしていた者だ。」
黒霧茜「人間の中では上位に入る実力の持ち主ではあったが、その枠に収まってしまう普通の少女だった。」
黒霧茜「馴れ初めは割愛して、双子の話に入るぞ。」
近衛麗「ちょっと。そこが一番興味あるところなのに省かないでよ。」
紫苑茜「無駄よ、麗。あーちゃんは闘ったら面白そうな相手のことしか記憶できない生粋の戦莫迦だから。」
黒霧茜「そういうことだ。私には何故彼奴がリーシャに惚れたのか理解できん。」
近衛麗「私にはどうしてパパの一番があんたなのか理解できないわ。」
黒霧茜「双子の姉妹についてだが。姉をレイラ、妹をローザという。内も外も真逆のふたりでな。本当に姉妹なのか、怪しいものだった。」
五月雨「泥沼の予感・・・?」
時雨 「思っても口に出さない。」
黒霧茜「安心しろ。そう疑いたくなる程に似ていないというだけで、実の姉妹であることに間違いはない。何しろ双子だからな。」
黒霧茜「姉のレイラは負けん気の強い、精神的に幼い娘だった。母に似たのは金髪だけで身体のほうは成長が足りなかったようだ。」
黒霧茜「反対に妹のローザは随分と落ち着いていた。長い黒髪を靡かせ佇むその姿は黒薔薇を思わせ・・・。」
時雨 「待った。今、長い黒髪って言った?父親は白髪で母親は金髪。何処に黒髪の要素があるの・・・?」
五月雨「やっぱり泥沼・・・。」
黒霧茜「黒霧の一族は元々黒髪だぞ?どの一族の血が混じって白髪になったのかは知らんが、本来は黒髪なのだ。」
黒霧茜「始祖の姿に還る凶化を発動させたとき、黒髪になるからな。」
露姉妹「なるほどー。」
黒霧茜「兎も角、レイラとローザは対極の性質を持った姉妹だったのだ。ふたりの能力についてもそうだ。」
黒霧茜「レイラは光系統の能力"光の御子"に、ローザは闇系統の能力"闇楔"に目覚めた。有り得ないことに・・・な。」
黒霧茜「血の繋がった姉妹であれば、普通は同じ系統の能力に目覚める。稀に異なる系統に目覚めることもあるが・・・。」
黒霧茜「同じ血を分けて対極の系統が発現するなど、あるはずがないのだ。」
五月雨「やっぱりど・・・!」
時雨 「流石にしつこい。」ベシ
アダ
黒霧茜「種を明かせば、どうということはない。"そういう"家系能力に目覚めていたことが原因だった。」
黒霧茜「"極双星"。双子にのみ発現する珍しい能力でな。それぞれに対極の性質を授け、二位一体となることを可能にするのだ。」
黒霧茜「簡単に言えば、"融合"だ。伝承に聞くばかりだったが、まさか実在するとは・・・。あの衝撃は今も忘れられん。」
五月雨「因みに、姉妹の共通点は無かったんですか?あ、女性って答えは受け付けませんよ。」
時雨 「こっち見ながら言わないでよ。」
黒霧茜「共通点か。そうだな・・・。両親への愛情くらいか?ローザは少々危うい気もしたが、レイラは愛らしいものだったぞ。」
五月雨「思わず、レーちゃんとヲーちゃんを想起してしまったのは私だけでしょうか・・・。」
紫苑茜「あー。頭が痛いわ。」
レ級 「心外だな。な、ヲーちゃん。」
ヲ級 「何がなの?」ニコォ
レ級 「・・・。」ヒシ
紫苑茜「はいはい、恐かったわね~。」ヨシヨシ
ジリリリ ガチャ
真宵 「只今大変電話が込み合っております。ピーという発信音の後に・・・。」
パオラ『あたしなんだけど。』
真宵 「なんだ、パオラか。珍しいな、お前が電話を使うとは。」
パオラ『"風の便り"は疲れるの。で、ちょっとお願いがあるんだけど。』
真宵 「許可する。好きにしろ。」デハナ
パオラ『え?ちょっ!』ガチャン
ツー ツー
パオラ「雑っ。まぁ、許可が欲しかっただけだからいいけど。物資の要求とかだったらどうする心算だったのかしら。」
パオラ「さて、それじゃあ許可も取れたことだし。行きましょうか、神州丸。」
神州丸「・・・うん。」ギラッ
パオラ「というわけで、後はよろしくぅ~。」ピューン
大鳳 「書類の山・・・。」ハハッ
赤城 「・・・。」ベキィ
蒼龍 「万年筆がっ。」ヒィッ
飛龍 「寝よ。」スタスタ
蒼龍 「え~!飛龍も手伝ってよぉ!」ムー
飛龍 「今日が期限のやつはやったから。明日が期限のやつを明日やるわ。」ソレジャ
パタム
蒼龍 「いつの間に・・・。」
大鳳 「飛龍さんは仕事が早い上に正確ですからね。もう少し協力的だと助かるんですけど。」アハハ
赤城 「なら、期限に余裕のある書類から片づけていきましょう。それなら飛龍さんも手伝わざるを得ません。」フフフ
大鳳 「そんな禁忌を犯してまで仕事を割り振らなくても・・・。」
赤城 「これだけの書類をふたりで片せるわけがないじゃないですか。やるしかないんです。いくら飛龍さんが恐ろしかろうと!」グッ
蒼龍 「飛龍って、もうそういう対象になっちゃったんだ・・・。というか、人数おかしくなかった?」アレ?
赤城 「蒼龍さんは書類を期日毎に仕分けてください。後の処理は私と大鳳さんでやりますので。」
蒼龍 「あっはは。私、そんなに使えない娘・・・?」グスッ
扶桑 「パラオ泊地の提督からですか?」
真宵 「ああ。黒電話に留守電の機能なんぞついていないことにも気づかんような抜けた奴だ。」フッ
扶桑 「いい加減、その電話の断り方はやめたら如何ですか?どうせ直ぐにバレるのに・・・。」
真宵 「直ぐに嘘とわかるから良いのだ。緊急の用であれば、また掛け直してくるだろう?」
扶桑 「まさか、電話対応を減らす為にそんな芝居を・・・?」
真宵 「根本の解決にはなっていないがな。今が凌げればそれでいい。これから、忙しくなるぞ。」
扶桑 「ええ、何処かの誰かさんが筆頭秘書艦に産休を取らせた所為で。」
真宵 「昨日の今日で妊娠したかどうかなどわかりはしないのだがな。もうすっかりその気になってしまっている。」ヤレヤレ
扶桑 「これで若し、妊娠していなかったら・・・。」
真宵 「言うな。考えるだけで恐ろしい。」
扶桑 「余程激しかったのですね。お疲れさまです。」
真宵 「ならば俺はもう・・・。」
扶桑 「駄目ですよ?」ニッコリ
真宵 「やす・・・。」
扶桑 「駄目です。やるべきことをやってからにしてくださいね、"元帥"。」ウフフ
真宵 「扶桑は仕事の鬼と化してしまったか。」トオイメ
扶桑 「誰の所為でしょうね~。」
真宵 「山城だな。」
扶桑 「それは否定できませんね。」ハァ
山城 「ねぇ、まだ買うの?腕もげそうなんだけど。」オモッ
加賀 「新たな命を迎えるには準備が必要なの。その程度で根を上げてもらっては困るわ。」
山城 「十月十日って知ってる?何も今に全部揃えなくてもさぁ。」
加賀 「明日やろうはぎりぎりまでやらないと同義よ。思い立った今やらないでどうするの。」
山城 「それは加賀の理論でしょ?私は思い立ってもやらないから。」
加賀 「貴女、そんな調子で母になるつもり?」エェ
山城 「いや、私建造組だから子供産めないし。」
加賀 「大丈夫。私が三人産むわ。」キリッ
山城 「姉様の言葉を真に受けなくていいのよ?子供が三人、母が三人でも、血の繋がりがあるのは加賀だけなんだし。」
加賀 「・・・。」シュン
山城 「私は端から見守るくらいで充分。子育てなんて、かったるくてやってられないわ。」ハッ
加賀 「やっぱり三人産むわ。若しくは建造組が妊娠できる方法を探す。それが駄目なら、養子をとりなさい・・・私から!」ドン
山城 「結局自分で産むほうに戻ってるじゃない。別にそこまで気を遣わなくても・・・。」ハァ
加賀 「駄目よ。私達に差があっては駄目。私達は三人一緒に救われた。だから、三人一緒に幸せになりましょう?」
山城 「・・・その言葉が先頭に立っている者だからこそ言える言葉だって気づかないあたり、罪創りな女だわ。」フフッ
加賀 「何か言った?」
ナンデモナーイ
夕張 「ねぇ、明石。」
明石 「なぁに?夕張。」
夕張 「確か、クロさんって男の人だったよね。」
明石 「そうだねぇ。」
黒霧茜「なんだ。私では不満か?」
明石 「性転換かな?」
夕張 「んなわけあるか。」テシッ
アイター
五月雨「茜さん茜さん。お仕事ですよっ。」クイクイ
黒霧茜「わかっている。そう急かすな。」
コホン
黒霧茜「よく来たな、我が義妹よ。」フンゾリ
南方戦「挨拶はいいから早くあのひとを出しなさいよ。」ゴゴゴ
黒霧茜「・・・五月雨よ。予定と違うのだが。」
五月雨「聞く耳を持たない場合は"アレ"を見せろ、と。」
黒霧茜「あれ?あぁ、これのことか。」キラッ
南方戦「」ピクッ
黒霧茜「しかし、こんなものを見せてどうなるというのだ?指輪に紐を通して首飾りにしているだけではないか。」ンー?
五月雨「え・・・。黒霧って結婚指輪の概念も・・・あるわけないか。結婚を知らなかったって言ってましたもんね。」
南方戦「義姉さん。それ、時雨が誰かに贈ったってことよね。そう捉えていいのよね。」オォォ
黒霧茜「私に訊かれてもな。」
五月雨「茜さん。」チョンチョン
ン? コレヲイエバイイノカ?
黒霧茜「"君自身の目で確かめてくればいい。"」
南方戦「上等よ。存分に品定めしてやろうじゃない。」ニィ
明石 「・・・修羅場?」
夕張 「帰りたい・・・。」ハァ
黒霧茜「さて、まずは簡単な仕事から片づけていきたいのだが。例の物は持ってきてくれたか?」
明石 「もっちろんさ~。私の発明を必要としてくれる人の頼みとあらば、たとえ火の中水の中・・・。」ゴソゴソ
明石 「たとえ樹海の中、おばけ屋敷の中・・・。」ア アレ?
黒霧茜「どうかしたか?」
明石 「あ、あはは。いや、そんなはずは・・・。」ンー?
夕張 「明石、あんたまさか。」
五月雨「忘れてきたんですか?」ジト
明石 「・・・ごめんなさい。」メソラシ
夕張 「調子に乗るから・・・。」ハァ
明石 「いや~。それも見事に頼まれたCCDPだけ入れ忘れるとは・・・まいりましたな。」タハハ
黒霧茜「何故、こう予定どおりに事が進まんのだ。」ムゥ
五月雨「蓮華ちゃんに連絡してきますんで、ちょっと待っててください。」ヤレヤレ
天龍 「んー。」ムムム
龍田 「凄い顔してるわよ、お姉ちゃん。」
天龍 「具体的にどんな顔だ?」
龍田 「にやけるのを必死に我慢してる顔。」
天龍 「・・・自覚はある。」
龍田 「そんなに"自分が"贈った指輪を見るのが嬉しい?」
天龍 「強調するなよ。」
龍田 「しかも選んだのあたしだし。」
天龍 「ぐ・・・。」
龍田 「その指輪に一体どれだけの意味があるのかな~?」
天龍 「う、五月蠅ぇ。黒にはめてもらったってことに意味があるんだよ。仮にこれが夜店で買った安物だったとしても、俺は・・・。///」
龍田 「此処に乙女が居ま~す。」
オイ!
鈴谷 「他所でやってくんないかなぁ。」ケッ
熊野 「出ましたわね、まっくろ鈴谷。」
熊野 「貴女、そうやって他人の幸せを僻むから彼氏ができないのですわよ?」
鈴谷 「だってさぁ。鈴谷がいいなぁって思って目をつけてた人が片っ端から盗られていくんだもん。」ムー
鈴谷 「最初は違ったよ?嗚呼、鈴谷はあの人に負けたんだなぁって。けどさぁ。毎回毎回毎回毎回毎回・・・。」フフフ
熊野 「こわ・・・。」
三隈 「鈴谷は悪い意味で距離が近いんですの。恋愛対象から外れる振舞いをしてしまっているのではなくて?」
鈴谷 「えぇ~?私と天ちゃんの何が違うのかなぁ。」
三隈 「意外性。」
熊野 「胸。」
鈴谷 「よぉし!喧嘩だ!」ニコッ
南方戦「邪魔よ、アンタ達。」ゴゴゴ
熊鈴谷「ひやああああ!!」
三隈 「あーあ。嵐が来ましたの。」
龍田 「指輪、隠さなくていいの?あの人でしょ?時雨さんの奥さんって。」チラ
天龍 「・・・いい。ちゃんと向き合う。」グッ
龍田 「そ。頑張ってね。」ヒラヒラ
天龍 「おう。あとで黒の呼び方が変わったことについて聞かせろよな。」
龍田 「大丈夫よ~。ただの感謝の表れだから~。」ウフフ
天龍 「よくわからんけど、ちゃんと説明してくれよ?」
南方戦「ええ、まずはアンタがねぇ。」フフフ
天龍 「なんで黒は傍に居てくれねぇんだ。」ダラダラ
龍田 「心が折れるのが早い。」ンモウ
南方戦「アンタが時雨の・・・。」オォォ
天龍 「お、おう。」タジ
南方戦「その指輪は何。」ギロ
天龍 「俺が贈って、黒にはめてもらった指輪だ。」
南方戦「・・・そう。あのひとが贈ったわけじゃないのね。」ホッ
南方戦「でも、はめたのは・・・。」ワナワナ
フンッ! ベキィ!
天龍 (こえぇぇ。)ガタガタ
龍田 「里ちゃん、ふぁいお~。」オー
天龍 (他人事だと思ってぇ!)キッ
鳳翔 「食堂の机を・・・。」ピキッ
近衛麗「っ!ちょっと!この娘、ヤバいんじゃない?」ヒソヒソ
日陰 「私に言われてもなー。」
紫苑茜「これ以上南方ちゃんがやらかさないように宥めてくるわ。」
南方戦「ふー!ふー!」
天龍 「」フルフル
紫苑茜「南方ちゃん、落ち着いて。あんまり暴れると食堂の番人が黙ってないわよ。」ポン
南方戦「あぁ?」ギロ
鳳翔 「うふふふふ。」コォォ
南方戦「うっ。・・・ごめん、なさい。」
南方戦「誰よ、あれ。あんなのが居るだなんて聞いてないんだけど!」ヒソヒソ
紫苑茜「わたしだって知らなかったわよ。しーちゃんが間宮ちゃんと半同棲してた頃にちゃんと同棲してた女が居ただなんて。」
南方戦「はぁ?益々聞き捨てならないじゃない。」イライラ
紫苑茜「気持ちはわかるけど、苛々しないの。感情的になると見えるものも見えなくなるわよ。」
南方戦「・・・そうね。得体の知れない男を旦那にしたんだもの。視野は広く持たないと、また弄ばれるわ。」フゥ
紫苑茜「それに関しては手遅れな気もするけど。」
南方戦「言わないで。どうにかなるって思えるうちが花なんだから。」
南方戦「で、そろそろ大事な話に移りましょうか。アンタ、名前は?」
天龍 「天龍型一番艦・・・。いや、白咲里だ・・・です。」
南方戦「そう。ワタシは南方棲戦鬼、南でいいわ。あと、普段どおりの口調で話しなさい。ワタシはアンタの為人を見極めに来たの。」
天龍 「為人・・・?」
南方戦「ワタシはね。一夫多妻だとか一妻多夫だとか、そういうのに抵抗は無いの。ワタシがあのひとの一番で在るなら、それでいい。」
南方戦「でもね。アンタがあのひとの傍に居るに相応しい女かどうかは見させてもらうわ。覚悟はいいかしら?」オォォ
天龍 「おう。なんでもきやがれ。」
南方戦「まず、ひとつ。アンタにとって、時雨は何人目の男なの。」
天龍 「男ってのはどういう意味での男だ?異性として意識したってことか?それとも経験人数か?」
南方戦「へぇ。そんな返しをするってことは、好きでもない相手と関係を持ったことがあるってことよねぇ。」
天龍 「ち、違ぇよ!前の旦那とは・・・その、そういうことをする前に死に別れたってだけで・・・。」
南方戦「ごめんなさい。無神経だったわ。」
天龍 「いや・・・。」
南方戦「じゃあ、次。時雨の何処が好き?」
天龍 「すっ!?///」カァ
南方戦「あら。意外と初心なのね、この娘。自分で指輪を贈ったって言ってたから、図太いタイプだと思ってたんだけど。」
紫苑茜「南方ちゃんも他人のこと言えないでしょうに。はい、しーちゃんの好きなところを言ってみて~。」サン ハイ
南方戦「素っ気なく見えて、実はちゃんと愛してくれてるとこ・・・。///」
天龍 「傍に居ると安心できるとこ。///」
近衛麗「私の誘惑に靡かない強さが好き。能力で嵩増しされてない本来の私を・・・。」
紫苑茜「貴女はお呼びじゃないから。今は自重してちょうだい。」コラ
近衛麗「え~。一緒に恋バナしましょうよ~。」
紫苑茜「眠ちゃ~ん。」オネガーイ
時雨 「はーい、こっちで温和しくしておきましょうね~。」ズリズリ
アーレー
紫苑茜「さ、気を取り直して。」
南方戦「これが最後よ。若し時雨ではない誰かが、時雨と同じ様にアンタに接したとして、アンタはそいつに惚れたと思う?」
天龍 「・・・正直に言えば、わからねぇ。でも、これだけは言える。俺は黒に何かされたから惚れたんじゃねぇ。」
天龍 「黒だから、惚れたんだ。」ジッ
南方戦「そう・・・。」フフッ
天龍 「な、なんだよ。笑うなよ。俺だって、言っててちょっと恥ずかしかったんだからな?///」
南方戦「なんでもないわよ。ただ、ワタシの旦那は本当に魅力的なひとなんだって再認識できて嬉しくなっちゃっただけ。」
南方戦「これから、よろしくね、里。」スッ
天龍 「おう。よろしくな、南。」ニッ
トコロデ
天龍 「俺の妹も黒と好い感じみたいなんだけどよ。序でに尋問してくれねぇか。」コソッ
南方戦「へぇ。その話、詳しく聞かせてもらおうかしら。」ヒクッ
紫苑茜「肝心のその妹が居ないみたいだけど?」
天龍 「え?さっきまで其処に・・・。さては逃げたな。」チクショウ
龍田 「・・・。」
日陰 「流石に厨房の中は直ぐにバレるんじゃない?」
龍田 「身体が咄嗟に動いたの。もうどうしようもないの。」フルフル
日陰 「ふ~ん。」ニヤァ
龍田 「あたしが此処に居るってバラしたら、貴女が時雨さんの子供を孕んだこともバラすから。」キッ
日陰 「そんなことが交渉のカードになるとでも?これから執拗に時雨くんに絡んで困らせてやろうと思ってるのに。」フフフ
龍田 「性格、悪っ。」ウワァ
日陰 「褒め言葉よ。」フッ
日陰 「里ちゃ~ん、此処に妹が隠れてま~す。」オーイ
龍田 「ちょっ!?」
天龍 「よぉし。約束どおり、洗い浚いに吐いてもらうからなぁ!花ぁ!」ダッ
龍田 「急に元気になって、もう!日陰ちゃんは時雨さんの子供を妊娠してま~す!」ピュー
南方戦「は?」ビキッ
日陰 「あっはは。覚悟はしてたけど、やっぱり恐いなぁ。」ハハッ
ソーレ
漣 「とうとう本妻が乗り込んできたにゃー。」イーチ
曙 「"本"て表現が正しいのか、そもそも疑問だけど。」ニー
レ級 「母ちゃんは別に結婚してるわけじゃないしなー。」サーン
五月雨「それ、本人の前で言っちゃ駄目ですよ。既に一度やらかしてますけど。」シー
ヲ級 「ヲーちゃん達も、体外受精の培養基生まれなの。」ゴー
潮 「え?そうなの?」ローク
朧 「姫姉、高く上げすぎ・・・。」シチー
黒霧茜「彼奴の胸の内は姉の私にすら計りきれんからな。」ハーチ
ヒュゴッ
五月雨「ボール、見えなくなりましたね。」
漣・朧「黒姉、はんぱね~。」
レ級 「あれ、どっかに落ちてくんだぜ?人に中たったらどうすんだよ。」オイオイ
ヲ級 「宇宙まで行ってることを祈るばかりなの。」ヲー
潮 「あ、流れ星。」
曙 「そんな莫迦な。」エェ
五月雨「というか、仕事中に姪っ子達と遊んでていいんですか?」
黒霧茜「姪と遊んでやるのも、伯母の務めだろう?」
漣 「優しい伯母様を持って、澪ちゃん幸せっ。」キャルン
五月雨「ま、大和さん達が到着するまで暇なだけなんですけど。」シレッ
黒霧茜「わかっているなら訊くな。」マッタク
漣・朧「え~。」ブー
潮 「大和さんが、来るんですか・・・?」
五月雨「おや。なんだか不満げですね。大和さんと何かあったんですか?」
潮 「うん。あれは忘れもしない・・・。」
曙 「おかわりしようと思ったら大和さんに全部食べられてただけでしょ。」
潮 「"だけ"じゃないよ!大問題だよ!」ムゥ!
南方戦「はぁ・・・。」ツップシ
紫苑茜「お疲れみたいね。」
南方戦「そりゃ疲れるわよ。新しい嫁に日陰の妊娠。あのひとはいったいどれだけワタシを追い込めば気が済むのよ。」ウゥ
紫苑茜「本人に直接訊けば?」
南方戦「それができないからこうなってるの!少なくとも今は!」クワッ
紫苑茜「あーちゃんに愚痴るのも手だと思うわよ。しーちゃん、あーちゃんの言うことだけは素直に聞くし。」
南方戦「義姉さんに相談しても、それの何が問題なのかわからないって顔されて終わりそうじゃない。」
紫苑茜「・・・そうね。」
南方戦「今までの奥さんも同じような思いをしてたのかしら。」
紫苑茜「してたんじゃないの~。」
南方戦「いい加減な返しをしないでよ。ワタシは真剣に悩んでるのよ?」チョット
紫苑茜「仕方ないじゃない。わたしは未婚だった頃と、この世界に来てからのしーちゃんしか知らないんだから。」
南方戦「じゃあ、誰なら知ってるのよ。」
紫苑茜「わたし以外の懐刀関係者。」
南方戦「・・・紅蓮に訊こうかしら。」ヨシ
紫苑茜「あんたのその紅蓮に対する謎の信頼は何なの。」エェ
鳳紅蓮「」フー
比叡ミニ「Zzz」スカピー
霧島ミニ「・・・。」カクンッ
金剛 「あ、脚が・・・。」プルプル
神命 「あの紅蓮が瞑想してる。"あの"紅蓮が・・・。」ウワァ
最上 「神命ちゃん、紅蓮さんにだけは中たり強いね。何かあったの?」
神命 「ん~ん。何もないよ。ただ生理的に受けつけないだけ。」
龍驤 「一番どうしようもないやつやん、それ。」
神命 「ま、冗談だけど・・・半分。」
龍驤 「半分はほんまなんかい。」ハハ
蓮華 「龍驤、貴様こんな所に居たのか。捜したぞ。」フゥ
龍驤 「なんや。うちになんか用か?」ウン?
蓮華 「貴様に用事といえばひとつしかないだろう。」
龍驤 「ま、せやな。うちといえば荷運びの・・・。」
蓮華 「パシリだ。」
龍驤 「仕事ボイコットしたんぞ、こら。」アァン?
最上 「こっちもこっちで。」
神命 「酷いねぇ。」
鳳紅蓮「そろそろか・・・。」スック
神命 「もうそんな時間?もうちょっとゆっくりしてたかったなぁ。」ハァ
鳳紅蓮「らしくないな。戦闘狂のお前が戦いを嫌がるなんてよ。」
神命 「数が多いだけの戦闘は嫌なんですぅ。紅蓮とは違って。」
鳳紅蓮「別に休んでてもいいんだぜ?俺ひとりで事足りる。」
神命 「はぁ?他人を護りながらの戦闘経験皆無のくせして何抜かしてんの?」
鳳紅蓮「護らなきゃいけないような奴が此処に居るか?」
神命 「そうだけど、そうじゃない。」
ゴゴゴゴ
ゴーヤ「・・・なんでちか、あれは。」チャポ
三笠 「」ゾロゾロ
ゴーヤ「三笠がいっぱいでち。」ヒャー
ゴーヤ「東から覚悟しておけと言われたでちが、これは予想以上でちな。」ムー
ゴーヤ「例えるなら天変地異・・・。いや、惑星崩壊・・・。」
???「そこで何をしてるの。」ユラァ
ゴーヤ「へ?」
???「何を、しているの?」ニタァ
ゴーヤ「あ、あはは・・・。戦略的てった・・・!」
三笠 「」ズラッ
ゴーヤ「囲まれてるでちぃ!!」イヤアア!
???「あなたの魂も取り込んであげるねぇ。」ウフフフ
ゴーヤ「あ、あぁ・・・。」
???「唸れ、大海よ。」
グォォ ウミガ!?
ゴーヤ「東ぁ!」ブワッ
近衛東「何をしている、伊58。帰るぞ。お前に戦場は似合わん。」
ゴーヤ「うん!」
???「逃がさない!」バッ
近衛東「押し戻せ。」スッ
ザパーン
???「がっ!」
近衛東「黒霧の血を継ぐ者であれば退き際くらい弁えろ。大海の支配者に海で挑むなど愚の骨頂だぞ。」フン
???「ちぃ!」キッ
近衛東「それぞれの場所で待つ。伝えたぞ。確かに引き当てろ。」デハナ
クソガアアア!
ソウカ アア リョウカイシタ
真宵 「ふぅ。遂に始まってしまったか。」トオイメ
扶桑 「手が止まっていますよ。」テキパキ
真宵 「書類が片付かずとも死にはせん。」
扶桑 「真宵ちゃんがサボった分だけ私は忙殺されます。」
真宵 「・・・いつも助かっている。」
扶桑 「言葉も良いですけど、行動で示してほしいものですね。」チラ
ンッ
扶桑 「・・・。」ホケー
扶桑 「///」ボンッ
真宵 「自分が言ったことだろうに。」ククッ
扶桑 「まさか、本当にしてくれるだなんて、思っていなくて・・・。///」モジモジ
真宵 「手が止まっているぞ、扶桑。」
ナッ!?
真宵 「少し出てくる。加賀と山城が帰ってきたら伝えてくれ。温和しく待っていろ、とな。」カチャ
扶桑 「え・・・はい、わかりました。」イッテラッシャイ
パタム
扶桑 「どうしたのでしょう?なんだか、真宵ちゃんらしくないような・・・。」
真宵 「行くぞ、お前達。」
雷 「久し振りの出撃ね。どーんと私に任せていいのよ。」フフン
夕立 「すっごい嫌な予感がするっぽい。」ウー
真宵 「案ずるな。奴らの相手は俺と東がする。お前達は下がって観戦でもしていろ。」
雷 「え~。それじゃあ私達がついていく意味ないじゃない。」ムー
真宵 「屑鉄の回収は誰がするのだ。海を穢す気か?」
雷 「まさかの死体回収班・・・。」エェ
夕立 「ほらやっぱり。」ハァ
五月雨「ん~。」
黒霧茜「・・・。」
五月雨「遅いですね、大和さん達。」
黒霧茜「そうだな。時雨の指示書に因れば、そろそろ到着していてもよい頃合いなのだが・・・。このままだと順番が前後してしまうぞ。」
五月雨「戦闘中に颯爽と現れる大和型。これだけ聞けば真打ち登場のようですが、実際にやられると迷惑でしかないですね。」
黒霧茜「大本営でも大和型に充分な補給をしてやるだけの余裕は無いらしいからな。戦力としては現状あてにならんだろう。」
五月雨「まさかとは思いますけど、遭遇しちゃったりしてないですよね。」
黒霧茜「そうでないことを祈るばかりだな。今からでは、どのみち間に合わん。」
五月雨「そうかもですね。誰かさんを除いては・・・。」チラリ
三隈 「なんですの。」
五月雨「三隈さん、私とデートしません?」ニコッ
三隈 「へぇっ!?///」カァ
鈴谷 「え・・・。みっちゃんて、そっちもいける人?」エェ
熊野 「これは大スクープですわ。青葉さんにたれこまなくては。」
三隈 「違いますの!三隈はクロさん一筋で・・・じゃなくて!青葉さんだけはやめてくださいまし!」
神命 「古の大海を支配した者。最も古き海神・オケアノスよ。我が身に宿り、その力を示せ。」オォォ
ヨシ
神命 「いっちょやったりますか。」ムン
鳳紅蓮「あまり出すぎるなよ。」
神命 「それはこっちの科白。」
最上 「ボク的には出てくれたほうが助かるけどね。前みたいに陸から支援砲撃しようと思ってるし。」
神命 「それって私達に肉壁になれってこと?」ジト
最上 「好きでしょ?そういうの。」
神命 「好きですけど何か。」アァ?
鳳紅蓮「俺を巻き込むな。」オイ
蓮華 「談笑中のところ悪いが、来たようだぞ。」クイ
最上 「わー。黒い点がいっぱい。あれ全部三笠なの?」ウハー
神命 「狙いをつける手間が省けていいじゃん。」
最上 「それは神命ちゃんに中ててもいいってこと?」ガション
神命 「中てられるものならね~。」ヒラヒラ
最上 「余裕だな~。神命ちゃんの背中ってあんなに大きかったっけ。」フフ
鳳紅蓮「オケアノスの気質が表に出てるだけだろ。」
最上 「そんなこと言ってると紅蓮さんに中てちゃうかもよ?」
鳳紅蓮「俺に砲弾は届かねぇよ。全部蒸発しちまうからな。」
最上 「何それ、反則。」
蓮華 「脚部艤装まで蒸発させたら赦さんからな。」
鳳紅蓮「・・・なるべく俺は狙わないように頼む。」
最上 「あっはは。りょーかい。」
ドォーン
神命 「アハハハ!」ギュン
ワー ギャー
鳳紅蓮「ったく。もう呑まれてやがる。」ハァ
三笠 「っ。」ガション
鳳紅蓮「灼き尽くせ、大地の息吹。」スッ
ゴォォ アァァ!
最上 「んー。」ガション
蓮華 「最上、戦闘中に構えを解くな。咄嗟の対応ができんだろう。」
最上 「そう言われてもな。ふたりで間に合ってるみたいだし。余計な茶々を入れてこっちに矛先が向くほうが迷惑でしょ。」
蓮華 「それでもだ。狙っているぞという圧を掛けろ。奴らほどの実力者ともなれば、それだけで充分な支援になる。」
最上 「なるほど。だから金剛ちゃんがこれ見よがしに仁王立ちしてるんだね。」
金剛 「むっふー。」キラキラ
蓮華 「あれはただの的だ。砲弾が飛んでくるとしたらあそこだぞ。しっかり護ってやれ。」
最上 「流石は深海棲艦。艦娘使いが荒い・・・。」ハハ
オォォ
真宵 「嫌な天気だな。暗雲が立ちこめている。」ストッ
近衛東「随分と遅かったな、真宵。嫁が放してくれなかったか?」
真宵 「それは今のお前だろう。俺は、あいつらの速度に合わせていただけだ。」クイ
雷 「何が合わせていた、よ。全速力で走らせてたくせに・・・。」ゼェ ハァ
夕立 「もう動けないっぽい。」ハァ ハァ
近衛東「そうか。」
ゴーヤ「」ヒシッ
真宵 「しかし、よくもまあこれだけの数を揃えたものだ。」
三笠 「」
近衛東「戦闘の勘を取り戻すには丁度いい。弓を引くのは久方振りだからな。」スッ
真宵 「海神の霊弓か。一撃で終わらせてくれるなよ?」フッ
近衛東「それでは訓練にならんだろう。初手から"スコール"など使わん。一撃必中。まずはそこからだ。」パシュ
三笠 「っ!」
バシャン
近衛東「少しずれたか。」フム
真宵 「それでも一撃で仕留めているだろうに。」クハハ
夕立 「実戦で練習するとか・・・。」ウワァ
雷 「あんまり舐めた真似してると竹篦返しをくらうわよ。」メッ
真宵 「訓練で本気になれない者が戦場で徒花を散らすのだ。俺達は本気で"訓練"に臨んでいるぞ。」ニィ
雷 「その理屈だと元帥達の戦場は何処にあるのよ・・・。」
キィィィ
五月雨「おぉお。風が凄い・・・。」グォォ
三隈 「我慢してくださいまし。三隈はいつもこの風と闘っていますの。」
五月雨「いや~。私、人より感覚が鋭いみたいで。かなり、つらい・・・。」
オリマシテ? ハイ・・・
五月雨「ふぅ。あー、顔が痛い。」ペシペシ
三隈 「五月雨さん、案外環境の変化に弱いんですのね。」
五月雨「みたいですね。感知能力向上の弊害といいますか。何事も良いことばかりではないってことですかね。」アハハ
三隈 「それにしても、居ませんわね。もうかなりの所まで来たはずですのに・・・。」
五月雨「・・・此処からは警戒態勢で行きましょう。」ギソウテンカイ
三隈 「ええ。これは何かあったと考えるのが自然ですの。上からの警戒は任せてくださいまし。」フワッ
五月雨「更にその上の警戒も怠らないでくださいよ~。」フリフリ
三隈 「まさかそんな・・・。そういえばクロさんにはそれで一本取られ・・・。」チラ
パオラ「やっほ。こんな所で奇遇ね。」
神州丸「空飛ぶ艦娘・・・。」オー
三隈 「」
五月雨「この世界は言ったことを現実にしないとどうにかなってしまう制約でも課されてるんですかね。」ヤレヤレ
ン?
五月雨「とすると大和さん達は・・・。」アー
五月雨「これは、本格的にまずいかも・・・ですね。」
???「どうして。どうして?」ユラユラ
武蔵 「くぅ・・・!」ガホッ
大和 「武蔵!」
武蔵 「構うな!自分のことに集中しろ!貴様に他人を気に掛けるだけの余裕は無いだろう!身の程を弁えろ!」カッ
大和 「」ヒッ
???「どうして、にげるの?わたしから。わたし、から。わたし?わたしはだぁれ?」
武蔵 「くそ。何なんだ、こいつは。」クッ
大和 「叱られた。武蔵に叱られた。お腹に穴が空いてるのに。大声出させちゃった。」ウジウジ
武蔵 「この姉は・・・。」
???「あのひと。あの、ひと。あのひとは、どこ?」フラフラ
武蔵 「大和、残弾数は幾つだ。」
大和 「三発。」グスッ
武蔵 「二発寄越せ。それで隙をつくる。」
大和 「うん・・・。」ハイ
武蔵 「その一発、外すなよ?」ニッ
大和 「え・・・?」
武蔵 「大和型戦艦二番艦、武蔵!押して参る!」
武蔵 「ああああ!!」ブンッ
???「たま、なげ?」
武蔵 「機銃斉射!」バババ
チュドドーン
???「けむり、すごい。」ケホッ
武蔵 「らぁっ!」グアッ
ガシッ
武蔵 「大和!撃てぇ!!」
???「はがい、じめ?」
大和 「っ!貫通しませんように。主砲、てぇ!」ドォォーン
ヒュゴッ
???「わたしは、しばられない。」スゥ
武蔵 「なぁ!?」
チュドーン
大和 「え・・・?」
武蔵 「」ドシャ
大和 「うそ。うそうそうそ。私が、武蔵を。武蔵を・・・。」ヘタッ
アアアアア!!
???「かなしい。かなしい、ね。わかれはかなしい。そう。わかれはかなしいの。かなしい・・・。」フフッ
アハハハハ!
五月雨「大和さん!」
三隈 「どうやら、遅かったみたいですの。」クッ
大和 「私の、私の所為で・・・。」
パオラ「神州丸、あれの反応は?」
神州丸「ない。逃げられた。」フルフル
パオラ「そう・・・。三隈、武蔵を運ぶわよ。手伝ってちょうだい。」
三隈 「承知しましたの。五月雨さん、後はお願いしますの。」
五月雨「はい、任されました。」
デハ・・・
五月雨「それじゃあ、私達も行きましょうか。ね、大和さん。」
大和 「・・・行きません。」
五月雨「はい?」
大和 「私は此処に残ります。鎮守府には、行きません。」
五月雨「残って、どうするんですか。」
大和 「このまま・・・沈みます。」
五月雨「どうして?」
大和 「どうしてって。私の所為で武蔵がっ!こんな駄目な私に生きてる価値なんて・・・!」ウゥ
五月雨「大和さん。口、閉じたほうがいいですよ?」ニコォ
大和 「え・・・?」
フンッ ドゴッ
大和 「あぅ!」バシャ
神州丸「ぐーで殴った・・・。」ウワァ
五月雨「あーあ。流石は戦艦様ですねぇ。殴ったこっちが大変ですよ、まったく。折れたかな・・・これ。」ヒラヒラ
大和 「え・・・えぇ・・・。」グスッ
五月雨「何を勘違いしているか知りませんけど、自分が駄目だって気づいている時点で大和さんは駄目じゃないですよ。」
五月雨「駄目な部分は直せばいい。本当に駄目なのは自分が駄目だってことに気づいていないことだと、私は思います。」ニッ
大和 「でも、私の所為で武蔵が大怪我を・・・。」
五月雨「私の所為で・・・ねぇ。大和さんって、戦闘の勝敗を左右できるほどの実力があるんですか?」
エ・・・?
五月雨「正直私には、今の大和さんがどれだけ頑張ったって、怠けたって、武蔵さんが大怪我を負う未来しか想像できないです。」
五月雨「寧ろ大和さんがやっちゃった御蔭で武蔵さんが殺されずに済んでよかったんじゃないですかね。」
大和 「よかった?大怪我をしてよかったなんて!そんなっ!」
五月雨「もう一発殴られたいですか?」ニコォ
大和 「ひぅ!」ビクッ
五月雨「はぁ。これから戦場に立とうって艦娘が、情けないですねぇ。いいですか?一度しか言わないのでよく聞いてください。」
五月雨「戦士として最も重要な才能は、命の使いどころを見極める戦闘勘です。」
五月雨「全員での生還が難しいとき。全滅必至のとき。そういう極限の状況において、冷静に頭を回し、行動する。」
五月雨「貴女の妹さんは実際にそれをやってのけたんじゃないですか?貴女がそうやって何もできないでいる間に。」
大和 「っ!」
五月雨「悔しいですか?悔しいですよね?そうでないと困ります。」
五月雨「役に立たない上に闘志まで失ったとあっては連れて帰る意味が無いですから。」ヘッ
大和 「むぅぅ!」キッ
五月雨「さ、行きましょうか。貴女は今、艦生の大きな岐路に立っています。その意気地の無い性根、叩き直して差し上げますよ。」ニィ
大和 「私、貴女のこと嫌いです!」フンッ
五月雨「奇遇ですねぇ。私も大和さんが嫌いです。虐め抜いてあげますんで、楽しみにしててくださいねっ。」アハッ
大和 「・・・生意気言って、ごめんなさい。」スッ
五月雨「そういうとこですよ、まったく。」ハァ
五月雨「あ、神州丸さん。縄とか出せたりしません?」
神州丸「出せないよ。陰陽の術を何だと思ってるの・・・。」
五月雨「いや~、大和さんを縛り上げて引きずっていってやろうと思ったんですけど。やっぱり無理ですかぁ。残念ですねぇ~。」
大和 「あ、あの・・・。本当にごめんなさい!さっきまでの非礼は詫びますから!どうか機嫌を直してっ!」
五月雨「私、別に機嫌悪くなんてないですよ?普段どおりです。」ケロリ
大和 「え・・・。」
五月雨「さ~て、どんな訓練メニューを組みましょうかね~。今から楽しみですっ。」ルンッ
大和 「私はなんてことを・・・。」アァ
神州丸「早くパオラと合流したいんだけど。」
龍驤 「戦場から戦場へ。希望を背負って死地を渡る。ったく、輸送班は大変やで。」
紅華 「補給線を断つのは戦の定石ですものね。でも、安心してください。私がついていますから。」フフ
比叡ミニ「私達もいますよ~。」ニシシ
霧島ミニ「護衛する側に回るとは新鮮な経験です。」キリッ
龍驤 「体の良い厄介払いやろ。」ボソッ
ナニカ? イイヤ ナンモ?
龍驤 「そもそもやな。うち、戦う手段持ってるし。一方的に護られるなんて性に合わへんねん。」
比叡ミニ「それなら龍驤も艦載機を飛ばして戦えばいいんじゃないですか?」
龍驤 「阿呆。うちは軽空母やで?何の連携もなしに活躍できるような火力は無い。だから・・・。」
紅華 「なるほど。効果的な支援をするためにも、私達の戦闘スタイルを把握しておきたいと。」フム
龍驤 「君、紅蓮と金剛の娘にしてはほんま頭ええな。」
紅華 「どうして父さんと母さんの評価はこう低いのでしょう・・・。」
龍驤 「そんで?君らは具体的に何ができるんや?」
比叡ミニ「何がって、艦娘なんだから砲撃ができるに決まって・・・。」
龍驤 「今の君は艦娘やなくて妖精やろ。」ハァ?
比叡ミニ「おっと、そうでした。」アハハ
霧島ミニ「まったく、姉様は・・・。」ヤレヤレ
比叡ミニ「でも、そうなると今の私達にできることって・・・あんまり、無い・・・かも。」ウーン
霧島ミニ「空が飛べる。動物と意思疎通ができる。羅針盤妖精なのに迷子になる。」
龍驤 「最後のはできることと違うやろ。ちゅーか、よくそんなんで護衛する側なんて言えたな。」
紅華 「そんなことはないですよ?比叡さんも霧島さんも、とても優秀な妖精さんです。」フフッ
比叡ミニ「そーなんです。」ムフー
龍驤 「なんで生まれたばっかの君がそれを知ってるんかツッコミたいとこやけど。ま、ええわ。」
龍驤 「聞かせてみ。このチビふたりがどれだけ優秀かってこと。」ニィ
紅華 「ええ、臨むところです。」
霧島ミニ「比較対象が無くても小さい人にチビとか言われたくないのですが。」キリ
比叡ミニ「比較対象があればおっぱいも小さいよね~。」ムニムニ
龍驤 「きさんら、後で覚えとれよ・・・。」イラッ
紅華 「あはは・・・。」
比叡ミニ「あ、比較対象。」
霧島ミニ「これは、紅華さんの圧勝ですね。」
龍驤 「ちっくしょー!!」
紅華 「任務中にこれだけ余裕がある風に振舞えるなら、皆さん充分に優秀なんじゃ・・・。」ハハ
紅華 「では、僭越ながら私が説明させていただきます。」コホン
紅華 「まず霧島さんは驚異的な熱耐性を持っています。炎はおろか、マグマの中だってへっちゃらなんですよ。」
霧島ミニ「紅蓮さんの息吹だって耐えられます。」フフン
龍驤 「ほーん。」
紅華 「比叡さんは自身の肉体を鉱石と同じ性質に変化させることができます。願い石ならその性質に応じた能力も使えるとか。」
比叡ミニ「オスミウムしか使ったことないですけどね。」ドヤァ
龍驤 「ふーん。で、君は?」
紅華 「わ、たしは・・・。」アハハ
龍驤 「どないしてん?」ウン?
紅華 「その、家系能力で超再生を授かっているということ以外は・・・。ごめんなさい。」
龍驤 「あぁ、授かった恩恵の内容は発現してみるまでわからんっちゅうのと同じあれか。」
龍驤 「ということは・・・自衛手段持ってるの、うちだけやないか!」ズガーン
紅華 「だ、大丈夫です!いざとなれば、私が肉壁となって皆さんを護りますからっ!」ムン
龍驤 「女の娘が肉壁なんて言うたらあかん!」
霧島ミニ「比叡姉様。」チョイチョイ
比叡ミニ「ん、なぁに?」
霧島ミニ「少し試してみたいことが・・・。」
ンー? ゴニョゴニョ
比叡ミニ「えっと。メテオライト~!」バッ
シーン
比叡ミニ「何も起きないよ?」
霧島ミニ「そのようですね。やはりファンタジー世界のようにはいきませんか。」フム
オーイ
龍驤 「妖精共~。何をぼさっとしてんねん。三笠に追いつかれる前にクロさんと合流せんと。はよ行くで~。」
比叡ミニ「はーい。」フワフワ
霧島ミニ「・・・ん?あの紅いものは・・・流れ星?でも、なんだか真っ直ぐこちらに向かってきているような・・・。」
龍驤 「こら、霧島。いつまでも空見上げとらんではよ・・・って、なんやあれ。」
紅華 「紅い、弾?」
比叡ミニ「隕石じゃないですか?さっきメテオライトって唱えましたし。隕石召喚に成功しちゃったとか。」
霧島ミニ「なるほど。多少の時差はあるようですが、概ね計算どおりです。」キリッ
龍驤 「その召喚した隕石がうちらに向かって落ちてきよるのも計算どおりってか。」
霧島ミニ「まさか。」
スゥー
龍驤 「逃げろぉぉ!!」ダッ
比叡ミニ「これは、ヤバいですねっ。」アハッ
霧島ミニ「ファイトです、龍驤さん。」スポッ
龍驤 「振り落とされんなや、比叡!霧島は後でしばいたる!」ウオオ!
霧島ミニ「案外、心地好いですよ?龍驤さんの胸の谷間。」
龍驤 「ありがとう!でも、しばく!」
紅華 「・・・。」
龍驤 「紅華!何をしとんのや!はよ逃げんと隕石に潰されるで!」
紅華 「どうぞ、お先に。私はあれを受け止めてみます。」コキコキ
龍驤 「はぁ!?無茶やって!石ころが降ってくるんとは違うんやぞ!」
紅華 「だからこそですよ、龍驤さん。あのサイズだと、逃げたところで津波に呑まれて終わりです。誰かが受け止めないと。」
紅華 「それに、なんだかやれる気がするんです。根拠は無いですけど。」エヘヘ
霧島ミニ「紅華さんに賭ける以外の道は無いようですね。」
龍驤 「厄災の根源は黙っとれ。・・・はぁ。ったく、しゃーないなぁ、もう!紅華の好きにしたらええ。うちも見守っといたる。」フゥ
紅華 「ありがとうございます。」フフ
龍驤 「そんかわり、しっかり受け止めてや?」
紅華 「ええ、勿論です!」
ゴォォ
霧島ミニ「あれ、本当に受け止められると思いますか?」
比叡ミニ「いや、無理でしょ。」アハハ
龍驤 「阿呆。最後まで希望は捨てたらあかん。未来を諦めたらあかん。たとえ此処でくたばるとしても、未来に繋ぐものを遺さな。」
比叡ミニ「たとえば?」
龍驤 「頼まれた物資を艦載機に括りつけて運ばせる。」
霧島ミニ「流石ですね。こんな状況でも仕事を全うすることを考えているとは。」
龍驤 「艦載機なら津波の影響も受けへんしな。」
比叡ミニ「今の私達みたいに?」
霧島ミニ「そういえば。」フワッ
龍驤 「逃がすかっ!」ガシ
霧島ミニ「放してください。私はまだこんな所で終わるわけにはいかないんです。」グググ
龍驤 「何を言うとんねん。こんな状況をつくった張本人のくせして自分だけ逃げるとか許されると思うなや。」グググ
比叡ミニ「どっちにしろ手遅れだと思うけど。おぉ、想像してたよりおっきい。」ハヘー
紅華 「ふー。せい、やぁ!!」ドゴォ!
バシャ ジュワッ!
霧島ミニ「海が窪んで・・・。」
龍驤 「紅華ぁぁぁぁ!!」
紅華 「るぅああああ!」グァッ
グォォォ!!
比叡ミニ「すっごい火柱。」オー
龍驤 「海に大穴が・・・て、あかん!穴に寄せる海流に呑まれる!」バッ
ウオオオ!
龍驤 「気張れぇ!うちのタービン!!」キエエ!
霧島ミニ「頑張ってくださーい。」フワフワ
比叡ミニ「タービン タービン ビン ビン」~♪
龍驤 「宙に浮けるってええな!」クッソゥ!
ハァ ハァ
龍驤 「死ぬかと思った・・・。」フゥ
霧島ミニ「紅華さんが居なければ確実にそうなってましたね。」
龍驤 「ほんまにな・・・。」
比叡ミニ「紅華ちゃん、隕石と一緒に沈んでいってから全然上がってこないよ?」ンー
龍驤 「言うな。言うたら、あかん。」
比叡ミニ「え?でも・・・。」
龍驤 「紅華が命を張った理由は何や?今、うちらがやるべきことは何や?うちらは今、何処に立ってる?」
霧島ミニ「・・・わかりたく、ないですね。」
龍驤 「そら元凶は君やもんな、霧島。」
霧島ミニ「・・・。」
比叡ミニ「あの~。」
龍驤 「紅華は命を賭してうちらを護ってくれた。それは感謝せなあかん。弔ってやらなあかん。でも、此処は戦場や。」
龍驤 「今、立ち止まってしもうたら、三笠に追いつかれてしもうたら、全部が無駄になる。それが一番あかん。」
比叡ミニ「あの・・・。」ムッ
龍驤 「紅華の死を無駄にしたらあかん!!」ブワッ
比叡ミニ「あのぉ!」ワッ
龍驤 「なんや、さっきから!今、うちは涙を呑んで未来に進もうとしてんねん!水を差すなや!」クワッ
比叡ミニ「このぶくぶくしてるの。紅華ちゃんなんじゃないですか?」ビッ
コポッ コポ・・・ シーン
龍驤 「そういうことは、はよ言わんかい!今、助けたるからなぁ!紅華!」ザパン
比叡ミニ「聞かなかったの龍驤じゃん。」プクー
霧島ミニ「・・・った。」ボソッ
紅華 「いや・・・ははっ。無茶はするものじゃないですね。」
龍驤 「ほんまやで、もう。金剛にどんな顔して謝ればいいかって、うち・・・うち!」グスッ
紅華 「ごめんなさい。脚部艤装の御蔭で海の上に立てているのを忘れてて。艤装、壊しちゃった。どうしよう。蓮華ちゃんに怒られる。」
龍驤 「そんなこと気にしてる場合かいな。生きててくれた。それだけで充分や。」ニッ
比叡ミニ「勝手に死んだことにしてたくせに。」
龍驤 「うっさい。戦場でうじうじ悩んでられんやろが。さっと判断して、きびきび動かな。みんな死んでまう。」
霧島ミニ「ええ、本当に。」
三笠 「」コォォ
龍驤 「やっば。」ゲ
紅華 「どうしましょう。私、完全にお荷物・・・。」
黒霧茜「荷物なら担げばいいだろう。」
・・・エ?
ヒョイ ワッ
黒霧茜「ん?お前・・・紅蓮の縁者か?随分と魔力の波長が似ているな。」
紅華 「あ、えっと・・・娘、です。」
黒霧茜「娘・・・?娘、か。そうか・・・。」フッ
紅華 「な、何か・・・?」フルフル
黒霧茜「何もそう怯えることはないだろう。これからは懐刀の同士として永く付き合っていくことになるのだ。」クハハ
黒霧茜「よろしく頼むぞ・・・。」
シーン
紅華 「あ、鳳紅華です。」
黒霧茜「うむ。紅蓮の娘にしては気の利く好い娘だな。」ハッハッハ
紅華 「此処でも父さんの評価が・・・。」ウゥ
黒霧茜「さぁ、話は一端ここまでだ。先に三笠を片づけるぞ。」コキッ
ハルナ! ハイ
黒霧茜「紅華を任せる。しっかり抱えておいてやれ。」ポイ
紅華 「うわわ!」
ホッ
榛名 「うんしょっと。もう、茜さんったら。女の娘を無下に扱うものではないですよ?」
紅華 (お姫様抱っこ・・・。///)カァ
霧島ミニ「榛名・・・?」
比叡ミニ「榛名じゃないですかぁ。どうして元の大きさに?」
榛名 「どちら様ですか?」ニッコリ
霧島ミニ「は、榛名?」
榛名 「榛名に妖精さんの姉妹なんて居ません。何方かと勘違いされていませんか?」ウフフ
比叡ミニ「何を言っているんですか、榛名。大切な妹を見間違うわけないじゃないですか。」ケロリ
榛名 「うっ・・・。///」
比叡ミニ「心配したんですよ?いきなり居なくなるんだもん。でも、元気そうでよかった。」ニコッ
榛名 「うぅぅ!」ポロポロ
比叡ミニ「よしよし。」ナデリコ
ウアアア!
黒霧茜「好いものだな。姉妹の絆というものは。」フッ
足柄 「姉妹の絆ね~。」チラ
那智 「なんだ。これまでのお前に対する行いは謝罪しただろう。」
足柄 「わかってるって。那智姉なりに私を想ってくれてたってことくらい。」バシバシ
那智 「痛い・・・。」
陸奥 「まぁでも、その想いはちゃんと形にしてほしいものね。」チラ
長門 「だからCDとヘッドホンを贈ってやったろう。プレイヤーは・・・またなんとかする。」
陸奥 「お詫びの印じゃなくて愛の証が欲しいって言ってるの。長門はわたしを愛してくれないの?」ウルッ
長門 「陸奥。まさか貴様、幼女だけに飽き足らず私まで毒牙に掛けようと・・・。」ヒキッ
陸奥 「殴ってもいいかしら~。」ヒクッ
漣 「お姉ちゃんって大変ねー。」ジー
朧 「ねー。」ジー
潮 (な、何か期待されてるっ!?)
曙 「姫百合、莫迦を演じてる奴らに付き合ってると、こっちが莫迦をみるわよ。」
龍驤 「それにしても、こんなに連れてきて大丈夫なんか?茜さんが居るんなら、もうちっと少なくても・・・。」
霧島ミニ「妙高型に第七駆逐隊、時雨さんに長門型。確かに多いですね。」フム
黒霧茜「何、心配要らんさ。鎮守府には庵が居るからな。」
龍驤 「庵?誰や、それ。」ウン?
漣 「鳳翔さんのことっすよ、パイセン。」コソッ
龍驤 「鳳翔。鳳翔ねぇ。は?鳳翔!?」
漣 「そんなに驚くことっすか?」
龍驤 「そら驚くわ!庵って名前があるっちゅうことは改造組やろ!?改造組の鳳翔はひとりしか知らん。あいつ、生きとったんか。」ハハッ
・・・
鳳翔 「この弓を引くのも久し振りですね。」ウフフ
前書きで正体を明かしておきながら、本編では正体をはっきりさせないままという謎の展開で幕を閉じた今回。まぁ、次で明かせば良いかと思う反面。いつまで書き続けられるものか、という考えが頭を過ぎる今日この頃に御座います。2022年は書き抜きますけどもね!!
では、簡単なキャラ紹介をば・・・。
天龍・・・本名、白咲里(しらさき さと)。貧乏から抜け出すために艦娘となった少女。艦娘歴は十年を超えるベテラン。今年で三十歳になる。ケッコン経験があり、前の旦那とは夫婦らしいこともしないままに死別した。現在は何やかんやあって左手の薬指に結婚指輪を光らせている。而して、彼女には何か思惑があるらしく・・・続きは本編で。
龍田・・・本名、白咲花(しらさき はな)。姉の後を追って艦娘となった少女。天龍とは実の姉妹。他人はおろか身内からも恐れられている嫌いがあるが、実はかなりの恐がり且つ泣き虫。こわ~い男性から身を護る為に薙刀の腕を磨いた。時雨と何かがあった夜から、龍田らしいS気が抜けつつある。
鈴谷・・・恋に恋するJK艦娘。ノリが良く大概のボケには乗ってくる。その性格からは想像できないが、実は良いとこの御嬢様。熊野とは家族ぐるみの付き合いがあり、最上や三隈とも顔見知り。学生時代、三隈の保健体育の教本を薄い本にすり替える計画を企て、最上が実行。而して知識の乏しかった当時の三隈には不発。鈴谷自身もすっかり忘れてしまっていた。因みに実年齢だと疾うの昔に成人している。
熊野・・・現実主義で完璧主義の艦娘。鈴谷とは正反対の性格をしているが、本人曰くだからこそ仲が良いらしい。最優秀艦娘への選出歴があり、エリート思考の強い士官候補生に言い寄られることも屡々。学生時代も相当モテたらしく、鈴谷から嫉妬の籠もった眼差しを向けられている。而して歴代の彼氏には勝手な御嬢様のイメージを押しつけられていたため、生涯の伴侶は気心の知れた、素の自分を受け入れてくれる男性がいいなと思う、今日この頃。
妙高・・・両親を惨殺した罪で投獄されていた元死刑囚。命令に背いた場合、直ぐさま処分できるように小型爆弾を体内に仕込まれている。鎮守府の前提督は、それを傘に無理強いをせず彼女の意志を尊重してくれたため、かなり気に入っていた。一方、提督代理の時雨は嫌い。だって、愛しの羽黒が彼に興味を惹かれているようだもの。
那智・・・本名、海波綾(みなみ あや)。元佐世保憲兵隊所属の陸軍兵士。佐世保襲撃の後は舞鶴に移籍し、時雨の部下として働いていた。強い男にしか興味が無く、言い寄ってきた男を試しては、その程度かと一蹴。唯一憧れを抱いたのが時雨であり、彼が海軍へ移籍したと噂に聞き、艦娘となって後を追った。再会した現在でもその想いは消えていないが、恋仲になりたいのかと問われれば、そういうわけでもない様子。
足柄・・・本名、海波琴(みなみ こと)。元舞鶴憲兵隊所属の陸軍兵士で、時雨直属の部下。当時から上司・部下の垣根を越えた関係だったらしく、隊員の殆どが恋仲にあると勘違いしていた。酒の勢いで初めてを捧げた相手ではあるが、本人的には男女の性に目覚める前からの幼馴染みと酒を飲んで巫山戯合ってたらなんかそういう雰囲気になっていくとこまでいっちゃったみたいな感じ?なのだとか。而して、殆どの者がそれを信じていない。
羽黒・・・孤児院出身の艦娘。自身の身の安全を何よりも優先し、その為ならば姉妹のことも平気で囮に使ってみせる。元々艦娘になりたくなかったらしく、学費を出してくれない孤児院に反抗して、学費免除の特待生となり自力で大学を卒業。四回生になる頃には一流企業の内定まで貰っていた。而して、結局国家権力には抗えず、嫌々ながら艦娘に。そんな彼女も五月雨との出会いを契機に、少しずつ変わり始めている。
長門・・・大本営で建造され、大和型と入れ替わりで鎮守府所属となった艦娘。小さな子供や可愛らしいもの全般が好き。世相に疎いところがあり、抜けた言動が目立つ。それが可愛く映るのか、子供からも好かれやすいちょっと変わった長門。一方で、爆発的な性的妄想力を内に秘めており、時折次元の彼方へ思考がぶっ飛んでいることがある。その肉体美は性欲を紛らす為に行った筋トレによってもたらされたもの。
陸奥・・・大本営で建造され、大和型と入れ替わりで鎮守府所属となった艦娘。幼女趣味を拗らせており、駆逐艦から怖がられがち。その様子は長門が本気で心配するレベル。また陸奥特有の誘い文句をよく口にしているが、実は男性に対する免疫が低く、長門が近くに居ないときには男性と距離を置くようにしている。一度、前提督をからかっている際にこっそり長門がその場から立ち去ったことがあり、その後長門に抱きつき泣きながらキレている陸奥が目撃された。
鳳翔・・・本名、日野庵(ひの いおり)。嘗て第一線で活躍していた実力者で、間宮こと長瀬狭霧の学生時代の同級生。間宮の策略で引退に追い込まれ、時雨と間宮の愛の巣となるはずだった家で匿われていた。利き手の指が満足に動かせないため、日常生活にも様々な支障を来している。それを出汁に当時は時雨に散々からかわれていた。而して、自分が自分らしく生きることのできる道を与えてくれた時雨には感謝しており、秘かな想いも抱いている。今ではそれを告白してしまっているが、彼の為に何かができるというだけ満足らしく、愛の争奪戦には不参加の予定。
では、また次回に・・・。
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