2023-01-13 00:15:17 更新

概要

ようやく稼働し始めた艦娘強化訓練島。
今、その第壱期生の娘達が新たな一歩を踏み出そうとしていた。


前書き

五月雨が艦娘強化訓練島に着任してから一月が経った。
廃墟と化していた大本営も無事、再建され稼働を始める。
さぁ、これより紡がれる物語は世界の運命に翻弄される少女達の半生。
彼女達の短くも永い日々をお楽しみください。


時が流れるのは早いもので。


真宵 「・・・完成したな。」


加賀 「そうですね。」


扶桑 「真宵ちゃんが頑張った御蔭ですねっ。」ウフフ


山城 「私も頑張りました。」ムフン


真宵 「お前は煉瓦の下敷きになって藻掻いていただけだろうが。」


山城 「ええ・・・。本当に頑張りました。」トオイメ


真宵 「災難だったな。」


山城 「」スッ


真宵 「・・・どうした?しゃがみこんで。腹下りか?」


山城 「ちがわい!」クワッ


山城 「ん!」ズイッ


真宵 「・・・はぁ。」ナデナデ


山城 「んふふ。」ニヨニヨ


扶桑 「山城だけ・・・狡い。」ムゥ


加賀 「あなた。ペットを可愛がるのも程々にしてくださいね。」


山城 「あ?」ビキッ


ダレガペットダッテ? カレノツマハワタシデスノデ


扶桑 「真宵ちゃん、真宵ちゃん。」コソコソ


真宵 「ん?いつものか?」


扶桑 「はい!」ソワソワ


ヨッコイセ


扶桑 「やっぱり、真宵ちゃんの抱き心地が一番ですね。」ウフフ


真宵 「誰と較べているのやら。」フッ


扶桑 「言葉の綾ですよ?」ムッ


真宵 「わかっている。こう見えて人生経験は豊富だからな。」ニッ


扶桑 「それは前に聞きました。」フフッ


真宵 「そうだったな。」クハハ


???「何、あれ・・・。」エェ


???「あたしゃ、もう慣れたよ。」



未来あるちびっ娘達。


???「真宵ちゃん、お手紙が届いてます。」トテトテ


真宵 「潮か。何処からだ?」


潮  「えっと。くろきり、ときあめ?さんから・・・。」ドウゾ


真宵 「潮よ。それはくろぎりしぐれと読むのだぞ。」ウケトリ


潮  「そうなんですか?勉強になりました。」ムフー


真宵 「しっかり覚えておいたほうがいい。お前の教官となる者の名だからな。」


潮  「遂に始まるんですね、私達の訓練が。」パァ


真宵 「楽しみか?」


潮  「はい!」キラキラ


真宵 「そうか。第七駆逐隊の娘達を呼んできてくれ。辞令を言い渡す。」


潮  「え・・・?真宵ちゃんと離れ離れになるの?」


真宵 「何か不都合があるのか?」


潮  「・・・うん。」


真宵 「言ってみろ。」


潮  「真宵ちゃんと離れたくない。」


真宵 「・・・。」


扶桑 「モテモテですね。」ウフフ


加賀 「あなた。こんな子供にまで手を出して・・・。」ユラァ


真宵 「俺がそんなことをするはずがなかろう。それから、山城はどうした?」


加賀 「そこに転がってますよ。」クイッ


山城 「」ゴフッ


扶桑 「嗚呼、山城。愛に破れてしまったのね・・・。」ヨヨヨ


潮  「私、離れたくないです。」ヒシッ


加賀 「あなた。」ジリッ


真宵 「よし、わかった。取り敢えず落ち着け。落ち着いて、頭を冷やしておけ。」シュンッ


加賀 「逃がしません!」ハッカン!


バババババッ


???「ひえー。まーたやってるよ。」ソラミアゲ


???「ほんと、よくやるわ。」



物事は始めと終わりが肝心です。


黒霧 「準備はいいかい?」


???「勿論だ。」フッ


黒霧 「いくよ。」


???「ああ。」


バサッ オォー


五月雨「誰だかわかんなーい!」ワァ


南方戦「アンタは憶えてないでしょうしね。誰かさんの所為で。」チラッ


集積姫「私の後ろには誰も居ないわよ?」クルッ


南方戦「アンタのことよ。」


集積姫「身に覚えがありましぇーん。」


南方戦「アンタねぇ・・・。まぁ、いいわ。」ハァ


五月雨「それを判断するのは私ですよね。なんで南ちゃんが決めちゃうんですか。」


南方戦「どうせ気にしてないでしょ?」


五月雨「当然。」ムフン


レ級 「なんか、やっと元に戻ったって感じがするな。」ヘヘッ


ヲ級 「蓮華ちゃんだけ、ず~と違和感があったの。」ヲー


三隈 「三隈達にしてみれば、寧ろ違和感の塊でしかありませんの。」


最上 「これからは呼び方も変えないといけないね~。」フフッ


黒霧 「それじゃあ、みんな。せ~の。」


一同 「おかえり!蓮華ちゃん!」


蓮華 「ああ。ただいまだ!」ニパッ


バァン!


龍驤 「ギリギリセーフ!」ズザァ


シーン


龍驤 「なんや?間におうたやろ?」ゼェ ハァ


蓮華 「アウトだ、龍驤。」フッ


龍驤 「・・・だれぇ!?」



偶には外に出るか。


龍驤 「ほんまに誰やねん。」


蓮華 「わからんのか?」


龍驤 「いや、わかるけどやな・・・。変わりすぎやないか?」


蓮華 「これが本来の姿だ。慣れろ。」フッ


龍驤 「中身は変わっとらんな。せや、元帥から手紙預かってきたで。」ホイ


黒霧 「ありがとう。」ウケトリ


五月雨「そういえば、大本営はもう再建したんですか?」


龍驤 「ああ。ばっちりな。」ニッ


三隈 「僅か1ヶ月で建て直すとは・・・。流石、魔族の長ですわね。」


最上 「クロさん。手紙、なんて?」ノゾキコミ


黒霧 「好感度が鰻登りで大変だってさ。」


五月雨「やっぱり、魔族には誑ししか居ないみたいですね。」


三隈 「ちょっと、もがみん?顔が近いですの。」グイッ


最上 「え~。手紙見てるだけなのに~。」ブー


南方戦「互いに潰し合ってくれると、楽でいいわね。」


集積姫「あれは一方的に遊ばれてるだけよ。南方ちゃんみたいにね。」フフ


南方戦「聞き捨てならないんだけど。」ネェ


レ級 「なぁ。異動拒否って書いてあるけど、いいのか?これ。」ヒョコッ


五月雨「なんだってぇ!!」クワッ


ヲ級 「折角歓迎会の準備もしたのに・・・。」ヲー


蓮華 「今日は私のお披露目会じゃなかったのか?」


ヲ級 「使い回せばお得なの。」ムフン


蓮華 「なんだと?」ジロリ


ヲ級 「って、五月雨お姉ちゃんが言ってたの。」タラー


蓮華 「お姉ちゃん。」ギラッ


五月雨「」ギクッ


蓮華 「誠意って言葉、知ってるか?」ユラァ


五月雨「ワタシニホンゴワカリマセーン。」


蓮華 「そうか。ならば教えてやろう。みっちりとなぁ。」フフフ


五月雨「私を捕らえるのは容易ではないぞ!」ダット


蓮華 「手伝え、レ級!」ダッ


レ級 「よっしゃ!ヲーちゃんも来い!」バッ


ヲ級 「なの!」タッ


五月雨「おのれ、裏切るか!ヲーちゃん!」クッ


ヲ級 「悪い娘にはお仕置なの~!」トテテテ


アハハ~ ツカマエテゴランナサ~イ キャラヲトウイツシヤガレ!



序章から抜け出せない現状。


最上 「それにしても、異動拒否か~。こんなことあるんだね~。」アハハ


三隈 「配属先に深海棲艦が居れば、そうもなりますわ。」


黒霧 「いや、理由は別にあるみたいだよ?そもそも、あの娘達にはこっちの状況を伝えてないしね。」


龍驤 「大丈夫なんか?それ。」ウワァ


集積姫「な~に?私達が此処に居ちゃ駄目ってこと?」ニタァ


龍驤 「そこまでは言わん。言わんけど・・・。一番の不安要素は君やで、集積。」


南方戦「ワタシが見張っておくわよ。」ダイジョウブヨ


三隈 「それはそれで心配ですの。」


南方戦「アンタ・・・。最近言うようになってきたじゃない。」ピキッ


三隈 「三隈はただ事実を述べただけですの。」フン


南方戦「そういえば、まだアンタの実力を見せてもらってなかったわねぇ。ちょっと表に出なさい。」クイッ


三隈 「・・・う、受けて立ちますの。」ハッ


最上 「声が震えてるよ?」


三隈 「武者震いですの!」ガタガタ


最上 「・・・はぁ。仕方ないなぁ。南さん、ボクとみっちゃんで組んでもいいかな。」


南方戦「いいわよ。ふたり掛かりでいらっしゃいな。」ニィ


三隈 「もがみん・・・。」ジーン


最上 「この貸しは高くつくからね?」マッタク


モツベキモノハモガミンデスノ ハイハイ


龍驤 「鬼級との演習か。最上もようやるわ。なぁ、クロさん・・・。て、居らんし。」


龍驤 「集積も居らんな。まさか大本営に?いやいや、まさか・・・。まさかな。」ハハッ



師匠も走る師走とはよく言ったもので。


集積姫「時雨ちゃんとふたりきりになるのも久し振りね。」


黒霧 「うちも賑やかになったからね。」フフ


集積姫「賑やかすぎるくらいよ。四六時中、時雨ちゃんの取り合いなんだもの。」


黒霧 「妬いてるの?」


集積姫「あら、わかってるじゃない。」


黒霧 「真宵ではないけど、経験は豊富だからね。」


集積姫「だったら、やるべきこともわかってるわよね?」


黒霧 「それじゃあ、失礼して。」スッ


集積姫「え?///」


ヨット ヒョイッ


黒霧 「このまま、大本営まで行こうか。」ニコリ


集積姫「待って。私を曝し者にする気?相変わらずのSっぷりね。」


黒霧 「集積にはぴったりでしょ?姫なんだから。」


集積姫「上手いこと言って誤魔化さない。」モウ


・・・


???「困りましたね。此処はいったい何処なのでしょう。」ハテ


???「羅針盤妖精の仕様になっているとのことでしたから大丈夫かと思ったのですが・・・。」


???「迷子ですね・・・完全に。」ドウシマショウ


???「まったく。羅針盤妖精は信用なりませんね。今や私も同類ですが・・・。」ハァ


???「さて、どうなることやら。」



読者を置き去りにするスタイル


集積姫「」~♪


黒霧 「ご機嫌だね。」


集積姫「んふふ。ふたりきりって、いいわね。」


黒霧 「素の君は本当に甘えたがりだね。まるで、茜姉さんみたいだ。」フフ


集積姫「あら。時雨ちゃんと茜ちゃんはそんな関係だったかしら?」


黒霧 「黒霧の茜じゃなくて、紫苑の茜だよ。」


集積姫「茜はふたり居るのね。初耳だわ。」フーン


黒霧 「」フフッ


集積姫「ちょっと。今、笑うところあったかしら。」ムゥ


黒霧 「いや、本当に茜姉さんは演技が下手だなって。」フフフ


集積姫「・・・いつから気づいてたの。」


黒霧 「あの日からだよ。自分を抑えられなくなってから、茜姉さんの素が表に出るようになっていた。」


黒霧 「始めは、まさかそんなはずがないと思っていたけど、信じずにはいられなくなった。」


黒霧 「だから、正直に言えば、気づいてはなかった。だけど、信じてよかったよ。」ニコリ


集積姫「そう・・・。あ~あ。嵌められちゃったわね~。」ハァ


集積姫「しーちゃんには敵わないわ。」ウフフ


黒霧 「神命の仕業かな?」


集積姫「分霊までは、そうね。でも、この肉体に宿ったのは偶然よ。分霊箱が次元の狭間に落っこちちゃったから。」


黒霧 「だからか・・・。やっと得心がいったよ。」


黒霧 「どうして茜姉さんが異物になることなく、この世界に存在できているのか。」


集積姫「まぁ、結果オーライじゃない。数百年振りに懐刀が揃ったんだから。」


黒霧 「それはいいんだけど、正導が終わってからはどうするの?集積はこの世界の住人だよ?」


集積姫「しーちゃんと一緒に帰れないって?大丈夫よ。正導が完了した後は何が起こってもおかしくないんだから。」


黒霧 「・・・性格変わったね、茜姉さん。」



散らかしっぱなしはよくないね。


???「久方振りですね。」ヒョコッ


黒霧 「霧島。久し振りだね。元気にしてたかな?」


霧島ミニ「はい。御蔭様で、姉妹共々元気に過ごせております。まぁ、若干1名元気が有り余って困る人も居ますが・・・。」


黒霧 「あはは。そこのところは紅蓮に任せるよ。偶にはうちに遊びにおいで。」フフ


霧島ミニ「ぜひ、お邪魔させていただきます。」フフッ


集積姫「貴女、いつから其処に?」


霧島ミニ「今し方です。見知った人影を見つけて、必死に追いかけてきたところですので。」キリッ


集積姫「方向音痴は相変わらずなのね。」


霧島ミニ「ええ。奇しくも羅針盤妖精の能力があてにならないことが・・・。いえ、ある意味では信用できることが証明されました。」


霧島ミニ「妖精の勘に従った結果、あなた方に出会うことができましたから。ところで、どちらへ?」


黒霧 「大本営だよ。駄々をこねてる訓練生の説得にね。」フフ


霧島ミニ「なるほど。奇遇ですね。私も定期連絡に大本営に向かうところでして、ご一緒してもよろしいですか?」


集積姫「いいわよ。時雨の肩で休んでなさい。疲れてるでしょう?紅蓮の島はかなり遠いから。」


霧島ミニ「実を言うと、かなり・・・。助かります。」フゥ


黒霧 「それじゃあ、行こうか。飛ばされないように気をつけてね。」


霧島ミニ「お構いなく。胸ポケットに収まっておりますので。」スッポリ


集積姫「身体が小さいと便利ね。運ぶのも簡単だわ。ねぇ、しーちゃん?」


黒霧 「本当に。」


集積姫「あらぁ。それじゃあまるでわたしが重いみたいじゃな~い。」ニコニコ


黒霧 「肉体が変わっても、変わらないね。」ニコリ


集積姫「あんた、昔からわたしにだけは気を遣わないわよね。」ムゥ


黒霧 「姉さんを泣かせた罪は重いよ?」フフ


集積姫「根に持つ男は嫌われるわよ~。」


黒霧 「暗殺者の性だね。」


ウフフ フフッ


霧島ミニ(・・・眠い。)ウトウト



イリュージョン


集積姫「流石に、このままの姿で顔を出すわけにはいかないわよね。」


黒霧 「事情を知ってるのは真宵と東だけだからね。」


集積姫「能力を使うのも久し振りだわ。上手くいくかしら。」


黒霧 「最悪、僕がどうにかするさ。」


集積姫「それはどうも。」


パァァ


紫苑茜「ふぅ。成功ね。」フフン


黒霧 「心なしか重くなった気がするんだけど。」


紫苑茜「ねぇ、質量保存の法則って知ってる?」ウフフ


黒霧 「集積と茜姉さんでは体格が違うでしょ。」


紫苑茜「御蔭で本来のわたしより小さく、って何言わせるのよ。」


黒霧 「細い茜姉さんは新鮮だね。」


紫苑茜「人が態々"小さく"って言葉を濁したのに・・・。」ワナワナ


黒霧 「女性らしくていいと思うよ。」フフッ


紫苑茜「今更言っても遅いのよ。」フン


黒霧 「南には敵わないけど。」


紫苑茜「わたしを虐めて愉しいかしらっ!」ブワッ



澪標


「ひとつ ならべて 母のため~♪」


「は なんだ」


「ふたつ ならべて 父のため~♪」


「あ どした」


「みっつ ならべて みおつくし~♪」


「あ よいしょ」


「よっつ ならべりゃ ひめゆりの~♪」


「は どっせい」


「いつつ ならべて なでしこは~♪」


「あ そ~れ」


「むっつ ならべて むらさきのえん~♪」


「よくできました~。」


「なんのなんの。」


「人の名前で遊ぶなぁ!」ドゲシッ


「ぶべらぁ!」ゴシャァッ


「おあとがよろしいようで。」



長らくお待たせ致しました。


???「紫苑ちゃんよぉ。もうちっとお淑やかにできんのかね。」サスサス


???「本名で呼ぶな。私は曙。あんたは漣。おわかり?」


漣  「ボーノに蹴られた所為で澪ちゃん、莫迦になっちゃった。」テヘ


曙  「あんたの莫迦は生まれつきでしょうが。」ハッ


漣  「人は生まれつき莫迦なんじゃい!そこから成長するから人間なんだい!」


曙  「じゃあ、あんたは人間になり損ねたわけね。」


漣  「だって艦娘だもの。ねぇ、撫子はん。」


???「おーともさー。」


曙  「朧、漣が付け上がるからやめてちょうだい。」ハァ


漣  「安心しな、ぼのたん。あたしゃ、いつだって平常運転だよ。」キリッ


曙  「だから質が悪いのよ。元帥の前で巫山戯始めたときは、本当に死を覚悟したわ。」


朧  「へーき。私達はまだ生きてる。」


漣  「そーだそーだ。元帥は善い人だー。あの姫百合ちゃんが懐いてるのだからー!」


潮  「その名前、久し振り。」ヒョコッ


曙  「潮。用事は済んだの?随分と掛かったじゃない。」


潮  「・・・うん。」


漣  「なになに?元気ないねぇ。あたすが慰めてあげようか?」


朧  「だいじょうぶ?おっぱい、揉む?」


漣  「姫百合ちゃんは寧ろ揉まれるほうだよね~。」ワキワキ


潮  「ふぇえ。」ウルッ


曙  「やめんかっ!」ドゴッ


漣  「ぐほぁっ。」ガクッ



最近、数年越しの正夢を見た。


チュドーン


南方戦「・・・痛いじゃないの。」ニィ


最上 「今、直撃したよね?大和砲だよ?なんで無傷なのさ。」エェ


三隈 「もがみん、その調子で装甲を削ってくださいまし。その隙に上から狙いますの。」シュバッ


最上 「体良く逃げただけだよね、それ。まぁ、どのみちボクは盾役なんだけど・・・。」ハァ


南方戦「ほら、いくわよ。」ボカーン


三隈 「ひっ!」サッ


最上 「よっと。」ブゥン バシャーン


三隈 「なんて巫山戯た射程をしてますの・・・。こちらのレールガンもギリギリですのよ?」クッ


最上 「おかしいな。設定は反射のはずなんだけど・・・。逸れただけなんてね。」


最上 「これが、自力の差ってやつなのかな~。」ハハッ


南方戦「もう終わりかしら?この程度であのひとと並んで闘おうだなんて、笑わせてくれるじゃない。」ニィ


三隈 「」ブチッ


三隈 「もがみん、下がってくださいまし。」ブゥン


最上 「・・・みっちゃん、それは流石にやばいんじゃ。」


三隈 「煽ったのはあっちですの。」


最上 「いや、だから・・・。」


三隈 「殺す気で撃ってやる。」シュンッ


最上 「だから話をって、あ~あ。南さんに怪我させて怒られるのはみっちゃんなのに・・・。」


最上 「ボクは庇ってあげないよ~。本気で怒ったクロさんに向き合う度胸はないからね。」ソソクサ


ソーラーレイデスノ!!


・・・


黒霧 「」ピタッ


紫苑茜「どうしたのよ。大本営はもうすぐそこよ?」


黒霧 「・・・手早く済ませよう。」バッ


紫苑茜「ちょっ!ほんとにどうしたのよ!」ネェ!



責任者は何処か。


加賀 「さて、お話といきましょうか。」セイザ


真宵 「それは構わんが、まずは縄を解いてくれんか。」ギチッ


加賀 「自力で抜け出しては如何です?」ジトッ


真宵 「そうだな。」フンッ


ブチィッ パラッ


加賀 「・・・。」


真宵 「どうかしたか?」


加賀 「いえ、まさか本当に引き千切るとは思わなかったもので・・・。」


真宵 「そうか?この身体を見れば・・・。そういえば、こっちに来てからはちゃんと服を着ていたな。」


加賀 「はい?」


ヌギヌギ


真宵 「ふぅ。やはりこれが楽でいいな。」キラキラ


加賀 (・・・上裸。///)ボタボタ


真宵 「・・・すまん。刺激が強すぎたな。」


加賀 「いえ、お構いなく・・・。」ダバー


真宵 「医療班は何処か。」



サーモンピンクのビーチクルーザー


ノックシテモシモーシ


漣  「お邪魔しま・・・した~。」クルッ


曙  「なんでよ。」バシッ


漣  「いや、これはマジなやつやって。」ヒソヒソ


曙  「・・・何を見たのよ。」ヒソヒソ


漣  「加賀さんが鼻血を出しながら元帥に迫ってるところ。」ヒソヒソ


朧  「おー。ついにいたしちゃうー。」


曙  「ば、ばっかじゃないの!?///」フンッ


漣  「いや~。やっぱり加賀さんはショ・・・。」


ガシッ ン?


加賀 「誰が、なんですって?」チミドロ


漣  「わ~お。スプラッタ~。」ダラダラ


曙  「あ、あああ。」ガタガタ


朧  「」ソローリ


潮  「」チーン


真宵 「医療班は何処か!」クワッ



ただ訊かれなかっただけだ。


扶桑 「もう。何をしているんですか。」フキフキ


加賀 「・・・不覚だったわ。」


山城 「姉様、私にもティッシュを。」ズビッ


扶桑 「あら、花粉症?建造組でもなるんですね。」


山城 「いえ、鼻血です。」ポタポタ


扶桑 「山城まで・・・。仕方ないですね。」モウ


漣  「いや~。マジで死んだと思った。」アハハ~


曙  「あんたと居ると心臓に悪いわ。」


漣  「退屈しないっしょ?」ニヒヒ


曙  「命が幾つあっても足んないわよ。」ハァ


漣  「それはそうと、撫子やい。」


朧  「は~い~。」


漣  「うちらを生け贄にして逃げたべな。」ジトッ


朧  「悔い改めるつもりはない。」キリッ


漣  「うらぎりもの~。」ポカポカ


朧  「あ~れ~。」


曙  「付き合ってらんないったら・・・。」ハァ


潮  「ん・・・。」パチクリ


真宵 「やっと起きたか、寝ぼすけめ。」ナデナデ


潮  「真宵ちゃん・・・。ちゃんと服着ないと風邪ひくよ?」ダイジョウブ?


真宵 「心配無用だ。鍛えているからな。」フッ


漣  「ほんとエグい筋肉してるよね~。私達と歳変わらないくらいなのに、どんな鍛え方したらそうなるのかにゃ~。」


真宵 「歳が同じくらいだと?」


潮  「違うの?」


真宵 「正確な数字は憶えていないが、千は裕に超えているぞ?」


加賀 「はい?」


扶桑 「・・・うそ。」


山城 「えぇ・・・。」


漣  「ジジ・・・。」


曙  「それ以上はいけない。」クチフサギ


朧  「ジジイじゃん!?」クワッ


曙  「思わぬ伏兵が!!」シマッタァ



一般常識の一般とは、何を指してるのかしら。


真宵 「魔族ならば皆、そんなものだぞ?」


漣  「魔族ぅ!?」


扶桑 「そんな・・・。」ヘタッ


山城 「姉様。お気を確かに。」ヨリソイ


曙  「ビックリ人間じゃなかったのね。」


加賀 「あなた。どうして黙っていたの?」


真宵 「知らぬが仏と言うだろう?」


加賀 「でしたら、最後まで黙っていてほしかったですね。」


真宵 「・・・すまん。思慮が足りなかったようだ。」


加賀 「ちゃんと向き合ってくださいね。特に、扶桑さんは・・・。」


真宵 「ああ、わかっている。」


チョット! セメテオロシナサイヨ! ネェ! ネェッテバ!!


黒霧 「邪魔するよ!」バァン


漣  「邪魔するなら帰ってや~。」


黒霧 「じゃあ、また来るよ。」クルッ


紫苑茜「待ちなさい!」グイッ


黒霧 「・・・耳、痛い。」


紫苑茜「あんた。今、本気で帰ろうとしたでしょ。」


黒霧 「僕は早く帰りたい。」ジッ


紫苑茜「そんな瞳で見ても駄目よ。仕事をしてからにしなさい。」


黒霧 「わかった・・・。」


漣  「・・・だれ?」


曙  「知らないわよ。私に振らないで。」


潮  「真宵ちゃんと同じ匂いがする・・・。」


朧  「海の香りだ。」クンクン


曙  「朧、直接嗅ぐのはやめなさい。」グイッ


朧  「あ~れ~。」ズリズリ


黒霧 「個性的な娘達だね。」


真宵 「お前達ほどではなかろう。時雨よ、その荷物を下ろしたらどうだ?」


紫苑茜「誰が荷物よ。うちの男共は嗜虐的過ぎていけないわ。」


真宵 「喧しい。貴様の犯した罪を考えれば軽いものだろうが。」


紫苑茜「・・・返す言葉もないわね。」


黒霧 「そろそろ本題に入ろうか。」


真宵茜「お前(あんた)が言うな。」


山城 「息ぴったり・・・。」



空を翔るはパオラ便。ならば私は海を往く。


真宵 「紹介しよう。白髪の男が黒霧時雨。横の紫が阿婆擦れだ。」


紫苑茜「ちょっと?」


漣  「そんなっ。まさか・・・。」タジッ


曙  「どうして私のほうを見てるのかしらぁ?」ビキッ


漣  「横の紫=ボーノ。」


朧  「紫苑ちゃんは、あばずーれ。」


曙  「歯ぁ食いしばりなさい!」


バチーン! アイタァ!!


漣  「何故にあちきだけ・・・。」ヨヨヨ


紫苑茜「ねぇ、あなた。」チョイチョイ


朧  「は~い~。」


紫苑茜「何処でわたしの名前を知ったのかしら。」ズイッ


朧  「・・・は?」キョトン


漣  「うっは。撫子のあんな顔初めてみたぜい。」


潮  「思考が停止してる顔だ。」


曙  「紫苑は私の名前よ。あんたじゃないわ。」


紫苑茜「あっそ。でも奇遇ね。わたしも紫苑なのよ。苗字がだけどね。あんたは?」


曙  「私のは名前よ。物心つく前に孤児になったから、苗字は知らないわ。欲しいと思ったこともないけど。」フン


紫苑茜「あんた、生意気ね。年上から嫌われるタイプでしょ。」


曙  「あんたこそ、碌に友達もいないんじゃないの?」ハッ


紫苑茜「わたしはしーちゃんと一緒に居られるならそれでいいもの。他には何も望まないわ。」


曙  「そうやって誤魔化してきたわけね。いつまで保つか、見物ね。」フッ


ナニヨ アンタコソナニヨ


漣  「あ~あ。ま~た始まったよ。ぼのたんの捻くれ祭り。それで何回泣かされたんだっけ?」ハァ


朧  「丸ボーロは喧嘩が滅茶弱い。」


曙  「あんた、今なんつったぁ!!」クワッ


紫苑茜「うふふ。勝負の前に降参してもいいのよ~。」フフフ


黒霧 「自分が無様を曝すかも知れないからね。」


真宵 「子供との組み手で本気になった挙句、敗北した実績があるしな。」


紫苑茜「そういうことは黙ってなさいよ。」チッ


真宵 「良い勝負になりそうだな。」クハハ


漣  「応援してるぜ~。」


漣・朧「ボーノ ボーロ 丸ボーロ~♪」


曙  「後で憶えてなさい。」イライラ


漣  「そんなこと言われてもねぇ。」


朧  「ぼのりんは非力だから。」


漣・朧「蹴られたところで痛くねぇ。」キリッ


曙  「」っ金槌


漣  「・・・持てんの?」


曙  「今、頑張ってるのよ!」ナミダメ



檻の中の女神


曙  「だらぁぁぁ!!」プルプル


漣  「1ミリも動いてね~べ。」


朧  「ある意味才能。」ウム


黒霧 「長くなりそう?」


曙  「待ってなさい。今に持ち上げてやるから。」グギギ


漣  「目的変わってるぞ~。」


真宵 「無様を曝さずに済んだな、紫の。」


紫苑茜「あのさぁ。もう少しまともな呼び方ないわけ?」


真宵 「髪の色で呼ぶほうがわかりやすいだろうが。」


紫苑茜「そのシステムが適用されてるのわたしだけなんだけど。」


真宵 「名前で呼んでほしくば信頼の回復に努めることだな。」


紫苑茜「・・・わかってるわよ。」


曙  「こなくそぉぉ。」フンヌゥ


漣  「子供用のに換えようか~?」


曙  「けっこう!」


黒霧 「・・・。」ハァ


黒霧 「続きは基地に行ってからにしようか。」スッ


曙  「え?」


ヒョイッ


曙  「あ、あにするのよ!///」ジタジタ


黒霧 「茜姉さんは背中に。」


紫苑茜「はいはい。」


ヨット ノシッ


黒霧 「肩に座らないでほしいんだけど。」


紫苑茜「どうせ飛んで帰るんでしょ?後ろ向きに座らないと息ができないのよ。」


黒霧 「真宵、窓開けて。」


真宵 「それはいいのだが、狭いぞ?」キィ


黒霧 「心配ないさ。霧はどんな隙間もすり抜ける。」


シュンッ バサッ ベチッ アダッ


真宵 「行ってしまったか・・・。」


漣  「・・・え?ぼのたん、誘拐された?」


朧  「売られてゆ~く~の~♪」


霧島ミニ「あいたた・・・。」


真宵 「霧島、居たのか。」


霧島ミニ「はい、時雨さんの胸ポケットに収まって寝ていたのですが。いったい何が?」


真宵 「忘れられたらしいな。」


霧島ミニ「なんと・・・。まぁ、目的は達せられましたので。閣下、定期連絡に参りました。」ビシッ


真宵 「お前はそれでいいのか。」



空の旅へ


潮  「霧島さん・・・ですか?」


霧島ミニ「はい、私は霧島ですが?」チマッ


潮  「妖精さんの羽根が・・・。」


霧島ミニ「今の私は羅針盤妖精ですので。」キリッ


霧島ミニ「方向音痴ですが。」ボソリ


潮  「・・・え?」


イエ ナンデモアリマセン


真宵 「それよりだ。お前達、曙を追いかけなくていいのか?」


漣  「いいんでないの?」


朧  「ついてこいとは言われてない。」


真宵 「現代っ子か!時雨はお前達の教官だ!辞令を言い渡す。今すぐ追いかけろ!」クワッ


漣・朧「あらほらさっさぁ!!」ビシッ


漣  「いくぜぇ、撫子!」


朧  「おーともさ、澪ちゃん。ところで、何処に行くんで?」


漣  「知らねぇな!」


朧  「こんなときは・・・。」


漣  「部屋でゲームだな。」トテトテ


朧  「華麗なるリュカ捌きをとくと見よ。」フッフッフー


真宵 「島まで吹っ飛ばしてもいいんだぞ?」ゴゴゴ


朧  「それはそれで楽しそう。」ボソッ


真宵 「そうか。時雨が受け止めてくれることを祈るのだな。」ガシッ


朧  「」サー


ウラァ! イヤァァァ!!


漣  「撫子ぉぉぉ!!」


真宵 「」クルッ


漣  「いや・・・!来ないで!」タジッ


真宵 「潮、道案内をしてやれ。」ポム


漣  「ありゃ?」パチクリ


潮  「道案内だけでいいの?」


真宵 「残る残らないの判断は任せる。お前の知らない世界を見てこい。」


潮  「・・・わかった。いってきます。」


真宵 「よし。」フフ


漣  「実はちょっと飛んでみたかったりして。」


真宵 「潮をひとりにする気か?」


漣  「ですよね~。」


霧島ミニ「あの~。定期報告をしたいのですが。」


加賀 「私が聞きましょう。元帥には後で伝えておきます。」


霧島ミニ「そうですか。では・・・。」


霧島ミニ「紅茶分が切れたお姉様が暴れて大変なので、至急紅茶を支給されたし、とのことです。」キリッ


加賀 「・・・は?」ジロッ


霧島ミニ「私は伝令役ですので・・・。睨まないでください。」フルフル


加賀 「紅茶中毒が。」チッ


霧島ミニ「ひぃっ。」ビクビク



※彼女にそんな趣味はございません。


漣  「亜麻色の~ 長い髪を~ 風がや~さしく包む~♪」


潮  「澪ちゃんは歌が上手いね。」フフ


漣  「カラオケじゃあ90点を連発だぜい。」ドヤァ


潮  「カラオケ、行ったことあるの?」


漣  「これからそうなるのさっ。」フフン


潮  「そうだといいね。」ウフフ


漣  「悪意のない言葉ってなぁ、こうも心に刺さるものなのかねぇ・・・。」トオイメ


漣  「なでしこぉ~。あたしゃ、あんたが居ないと駄目だよぉ~。」オイオイ


潮  「大丈夫?何処か痛いの?」アセアセ


漣  「痛いねぇ。嗚呼、胸の奥がいてぇよ。姫百合よぉ、さすってくんない。」


潮  「こ、こう?」サスサス


漣  「いいねぇ。嗚呼、いいよぉ。段々、イケナイ気分に・・・。」ハァ ハァ


潮  「ふぇえ!///」マッカ


漣  「百合って、いいよね。だって君の名は姫百合だもの。」フフフ


潮  「いやぁぁぁ!」ダット


マテマテ~ コナイデー!


???「」チャプッ


???「・・・はぁ。」チャプン



年齢は倫理観の要素がひとつ。


扶桑 「マヨイチャン・・・」ブツブツ


山城 「嗚呼、お労しや姉様。」ヨヨヨ


真宵 「さて、どうするか・・・。」フム


山城 「どうするんですか?」


真宵 「それを今考えているのだ。」


山城 「取り敢えず、抱かれてみます?」ウデヒロゲ


真宵 「膝の上に座ると言え。」ヨッコイセ


山城 「最近、抵抗しなくなりましたね。」ギュッ


真宵 「無駄なことはしない主義でな。素直な子供のほうが楽だろう?」


山城 「あんまり手が掛からないのも寂しいような。」


扶桑 「」ブツブツ


真宵 「普段の扶桑なら・・・。」


山城 「代わってくれとせがんでくるところですが・・・。」


真宵 「重症だな。」ハァ


山城 「ですね。」ナデナデ


真宵 「おい。俺を子供と勘違いしてないか?」


扶桑 「真宵ちゃんは子供でいいんです!」クワッ


山城 「姉様?」


扶桑 「真宵ちゃんが年上だなんて・・・。私、信じませんからぁ!!」ウワァァン


山城 「それが引っ掛かってたんですか!?」ネエサマ!


真宵 「加賀よ。」


加賀 「何か?私は今、紅茶をどれだけ仕入れるか計算するので忙しいのだけど。」カタカタ


真宵 「人は何故、些末なことで悩んでしまうのだろうな。」


加賀 「私にとっては、それも些末なことなのだけど?」カタカタ


真宵 「そうだな。」


加賀 「それから、私はあなたを子供扱いなんてしませんから。」


真宵 「嫁に子供扱いされた日には、いくら俺でも泣くぞ?」フフッ


加賀 「ええ。だから・・・。今夜、待ってますね。」ニコリ


真宵 「そうか・・・。」フゥ


真宵 「・・・東に相談するか。」


ナニカ? イヤ ナンデモナイ



こんなの? 初めて!


真宵 「と、いうわけなのだが。」


近衛東「そんなことのために俺を呼んだのか?」


真宵 「そんなこととはなんだ。これは最重要案件だぞ。」


近衛東「お前の口癖は何だったか・・・。」ハァ


真宵 「喧しい。我ら久遠に子孫を残すという概念は無いのだ。経験がないのは寧ろ道理とも言える。」フンッ


近衛東「で、何を悩んでいるんだ?求められたのなら、応えてやればいいだろうに。」


真宵 「いやな。上手くできるか・・・不安でな。」


近衛東「誰でも最初は拙いものだろう?」


真宵 「それは尤もなのだが、普段の俺の振る舞いからして、加賀の抱いている理想が高そうで怖い。」


近衛東「知ったことか。」


真宵 「参考までにお前とゴーヤの話を聞きたい。教えろ。」


近衛東「教えを請う者の態度ではないな。それに俺とゴーヤの間に爛れた関係は無いぞ。」


真宵 「おい。夫婦の愛情表現を爛れた関係と一緒にするな。というか、お前達は結婚して暫く経つのではないのか?」


近衛東「そうだな。かれこれ一年は経つか・・・。」


真宵 「その間、1回もないのか?」


近衛東「ない。ゴーヤは清廉潔白だからな。」


真宵 「お前に遠慮しているだけだろ。偶にはお前から歩み寄ってやれ。」


近衛東「これは真宵の相談話ではなかったか?」


真宵 「始めはな。だが、お前では話にならんことがわかっただけだったのでな。」ハァ


近衛東「女性関係の相談は時雨に限る。結婚やら子育てやらは、奴にしか経験のないことだからな。」


近衛東「それを承知で、何故俺に相談した?」


真宵 「時雨が長けているのは女を堕とす技術であって愛の伝え方ではないからな。」


真宵 「あれに相談したら、それこそ爛れた関係に陥りかねん。」


真宵 「知ってるか?時雨はな、自分から女に手を出したことがないのだ。これまでの関係も全て、女が時雨に惚れて始まっている。」


近衛東「今回に限って言えば、俺も真宵も同じだと思うが?」


真宵 「懐刀の男共は揃いも揃ってポンコツだな。」


近衛東「魔性、とも言えるな。」


真宵 「お前の場合は特にな。」


近衛東「違いない。」フッ


???「真宵ちゃんはまだ、子供。まだ・・・子供。」フフフ



君はまだシンデレラさ~♪


近衛東「さて、俺は席を外そう。」スッ


真宵 「まぁ、待て。もう少しくらいよいのではないか?」


近衛東「充分に時間はあっただろう。誠実に向き合え。なるようになるさ。」


真宵 「逆に言えば、なるようにしかならんということだろうに。」ハァ


近衛東「そうとも言うな。」フッ


デハナ アア


真宵 「・・・いい加減に出てこい、扶桑。」


扶桑 「気づいていたんですね。私が居ることに・・・。」ヒョッコリ


真宵 「まぁな。取り敢えず、座れ。」


扶桑 「はい。」スッ


真宵 「今回は、向き合って座るのだな・・・。」


扶桑 「ええ。だって、真宵ちゃんにはちゃんと向き合ってほしいですから。」ウフフ


真宵 「ああ・・・。」


扶桑 「」ニコニコ


真宵 「・・・俺の何が不満だ?」


扶桑 「もう・・・。直球過ぎますよ?」ムゥ


真宵 「回りくどい訊き方をして齟齬が生じてはつまらんだろう。だから単刀直入に訊く。何が不満だ?」


扶桑 「真宵ちゃんに不満なんてありません。だって、真宵ちゃんは私達を救ってくれたんですもの。」


真宵 「そうか。不満がないというのは結構なことだ。だが、思うところはあるのだろう?」


扶桑 「ええ。まぁ・・・。」


真宵 「この際だ。遠慮なく言え。」


扶桑 「・・・私は、真宵ちゃんが本当に子供だと思っていました。ちょっぴり優秀で、特殊な能力を持った子供なんだ・・・と。」


扶桑 「でも、違った。艦としての年齢で考えても、私の何倍もの時を生きている大人だった。」


扶桑 「それがショックだったんです。」


真宵 「そうか・・・。」


扶桑 「真宵ちゃんに出会って、あの笑顔を見て・・・。嗚呼、この笑顔を護りたいって。これが母性なんだって・・・。」ウゥ


扶桑 「私のこの母性は、これからどうすればいいんですかぁ!!」ブワッ


真宵 「俺に向ければよいのではないか・・・?」


扶桑 「無理です!私は真宵ちゃんが子供じゃないって、知ってしまったからっ!」


真宵 (雲行きが怪しくなってきたな。)ムゥ


扶桑 「だから・・・私、母を卒業することにしました。」グスッ


真宵 「そうか・・・。」


扶桑 「でも、真宵ちゃんが大人になる瞬間を見届ける前に卒業するわけにはいきません。」スクッ


真宵 「俺は大人ではなかったのか?」ン?


扶桑 「まだ、子供の部分がありますよね。」ジリッ


真宵 「まさか・・・。」タラー


扶桑 「私で大人の階段を上ってみませんか?」ニコリ


真宵 「・・・詰んだな。」ハハッ



主人公は誰か。


扶桑 「真宵ちゃん・・・。」ジリジリ


真宵 「少し、時間をくれ。」


扶桑 「嫌です。」ニッコリ


真宵 「万事休すか・・・。」ハァ


扶桑 「覚悟は出来たみたいですね。」ウフフ


真宵 「そうだな。魔王ともあろう者がこうも振り回されるとは・・・情けない話だ。」


扶桑 「もう。今はそんなことどうでもいいではないですか。真宵ちゃんは真宵ちゃんです。」


真宵 「いや、関係はある。魔族を統べる者として、器も懐も大きいことを示さねばならん。」


真宵 「この世界に魔族は居らずとも、俺に付き従う懐刀の面々は居るのだからな。」


真宵 「それに、俺はただでさえ身体が小さい。せめて心は大きく在りたいと思うのも道理ではないか?」


扶桑 「それはまぁ、確かにそうかも知れませんね。」


真宵 「だから俺は、覚悟を決めた。」


扶桑 「はい。」


真宵 「扶桑、お前を妻に迎える。序でに山城もだ。」


扶桑 「・・・はい?」


真宵 「3人まとめて愛してやる!加賀に殴られる覚悟はもう出来ているぞ!」フハハ


山城 「まーちゃん!」バァン


扶桑 「山城!?」


山城 「今の話は本当ですか!?」クワッ


真宵 「ああ、本当だ。指輪は今から買ってくる。少し待っていろ。」


山城 「奥さん。私が、まーちゃんの奥さん・・・。」ウフフフ


扶桑 「どうしましょう。山城が壊れてしまったわ。」アラアラ


山城 「扶桑姉様。」


扶桑 「何かしら?」


山城 「私、もう姉様に遠慮しませんから。」フフ


扶桑 「そう・・・。でもね、山城。今まで遠慮してたと思ってるなら、それは貴女の勘違いよ?」


山城 「なんてこと。」ガーン


扶桑 「これからは一緒に幸せになりましょうね。」ウフフ


加賀 「あなた。」チョイチョイ


真宵 「2、3発は覚悟している。」


加賀 「違うわ。」


真宵 「そうか。」ホッ


加賀 「扶桑さんに山城、そして私は同じ苦しみを味わった仲間。」


加賀 「正直、私ひとりで幸せになっていいものか、後ろめたさもあったの。」


加賀 「だから、今回のあなたの選択をどうこう言うつもりはないわ。」


真宵 「だが、条件があるのだろう?」


加賀 「当然よ。」


真宵 「誓おう。俺はお前との約束を必ず守り抜く。」


加賀 「聞く前に、そんなことを言ってしまっていいのかしら?」


真宵 「俺なりに誠意を示したつもりだ。何でも言え。俺はその全てを受け入れよう。」


加賀 「そう。では、お言葉に甘えて・・・。」


加賀 「愛に順位を付けないで。」


真宵 「・・・それだけか?」


加賀 「これは大事なことよ?特に、子供を産める産めないの差がある、私達にとっては・・・。」


真宵 「・・・そうだな。わかった。俺はお前達を平等に愛そう。公平ではなく、平等にな。」ニィ


加賀 「やっぱり公平に愛する方向でお願いするわ。」


真宵 「ああ。精々自分を磨くことだ。」フフッ


加賀 「随分と上からものを言うのね。」ムッ


真宵 「許せ。今日は俺も疲れた。」


加賀 「今日だけよ?」


真宵 「ああ・・・。」


山城 「姉様、私達かなり出遅れてませんか。」


扶桑 「ええ。これは由々しき事態よ。」ドウシマショウ


山城 「襲いますか?」ヒソヒソ


扶桑 「既成事実ね。」ヒソヒソ


加賀 「一番は譲れません。」ズイッ


扶桑型「」ビクッ


加賀 「今夜は私が貰います。明日、明後日は譲りましょう。」


扶桑 「なるほど。一日交替ですか。」


山城 「では、明日は私が。」


扶桑 「明後日は私ですね。」ウフフ


真宵 「・・・大丈夫。このためではないとはいえ、俺には鍛えた肉体がある。大丈夫だ、きっと。」


真宵 「取り敢えず、指輪を買ってくるか。」トテテ



朧のなが~い空の旅


アババババ


紫苑茜「好い風ね~。」フゥ


曙  「どこがよ!風圧の所為で碌に息もできんわ!」クワッ


紫苑茜「あんた、この風の中よく聞き取れたわね。」スゴイワ


曙  「えぇ!?聞こえない!」


紫苑茜「しーちゃん、趣味が悪いわよ。」


黒霧 「ふたりには啀み合ってもらってたほうが面白いからさ。」


紫苑茜「言い切ったわね・・・。」コノコハ


・・・アァァ


紫苑茜「ねぇ、何か飛んでくるわよ。」ナニアレ


黒霧 「・・・真宵め。」


曙  「ちょっと!いい加減、何処に連れていくのか教えてくれてもいいんじゃないの!ていうか、放せぇ!」ジタジタ


黒霧 「お望みとあらば。」パッ


曙  「へ?」


イヤァァァ!!


黒霧 「茜姉さんも一旦降りて。」


紫苑茜「せめて高度と速度を落としなさいよ。わたしはあんた達と違って頑丈じゃないんだから。」


黒霧 「問答無用。」フリオトシ


紫苑茜「あ!このっ!後で憶えてなさいよ~!!」ヒューン


黒霧 「さて、と。」クルッ


朧  「あい うぉんと~。」ビューン


ドゴッ


黒霧 「くっ・・・。頭突きすることないだろうに。首、大丈夫?」


朧  「救急車・・・。いや、霊柩車・・・。」ガクッ


黒霧 「ボケのために命を懸けるとは、五月雨みたいな娘だね。人に迷惑を掛けるところもそっくりだ。」ハハッ


チョット! ナニカワスレテナーイ!


黒霧 「ごめん。今、動けそうにないや。」ズツキノダメージガ・・・


アンタ フザケルノモタイガイニッ バッシャーン


黒霧 「あ、そうだ。集積に戻っておいてね~。」


・・・キコエテナイカナ?



人の性格はそう簡単には変わらない。


朧  「いってぇ・・・。マジ、首いってぇ。」サスサス


黒霧 「無茶するから。ほら、ちょっと診せて。」


朧  「ん。」


黒霧 「・・・うん。捻挫してる。」


朧  「なんと。」オゥ


黒霧 「応急処置して暫く安静にするのと今すぐに治すの、どっちがいい?」


朧  「もち、後者。」キリッ


黒霧 「みんなには内緒だよ?」スッ


ンンッ


朧  「」ホケー


ハッ


朧  「また怪我してくりゅ!」キラキラ


黒霧 「程々にね。」フフッ


曙  「あにやってんだか・・・。」プカプカ


集積姫「あの子は昔から倫理観がズレてるのよね~。」プカプカ


曙  「あんた達、付き合い長い・・・の。」チラッ


集積姫「まぁね。わかりやすく言えば、幼馴染みってところかしら。」


曙  「・・・けて。」フルフル


集積姫「なぁに?何か言った?」


曙  「だずげで、撫子ぉぉぉ!」ビェェ


集積姫「ちょっと。泣くことないでしょ?別に取って食べようってわけじゃないんだから。」


曙  「・・・食べるの?」ウルウル


集積姫「それもアリな気がしてきたわね。///」ウフフ


曙  「ばぁぁぁぁ!!」ダバー


ジョウダンヨー


黒霧 「昔は泣き虫だったのかな?」


朧  「ちゃん澪が矯正するまでは、あんな感じ。」


黒霧 「姫級に出会したくらいで泣いてもらっちゃあ、困るな~。」フフフ


朧  「・・・鬼教官の予感。」オーウ



自分を変える契機は外からやってくる。


曙  「ひっく。えぐっ。」グスッ


朧  「おーよちよち。」ナデナデ


曙  「うぅ。」ヒシッ


集積姫「ねぇ、これってわたしが悪いの?」


黒霧 「茜姉さん以外に加害者が居るとでも?」


集積姫「少なくともあんたはこっち側よ、しーちゃん。」


黒霧 「何のことやら。」


集積姫「まったく。そうやって今までどれだけの女を泣かせてきたのかしら。」ヤレヤレ


黒霧 「星の数くらい?」


集積姫「いっかい死んで人生やり直してみたら?」


黒霧 「死んだところで過去が変わるわけじゃない。それは茜姉さんも経験済みでしょ?」


集積姫「・・・そうね。」


黒霧 「それにあんまり優しく接してると、いざというときに役目を全うできなそうで恐い。」


集積姫「へぇ。それが本音?てっきり、そういう趣味なんだと思ってたわ。」


黒霧 「女性の泣き顔は好きだよ?」


集積姫「あんた、それ冗談でもわたし以外の人の前では絶対に言っちゃ駄目よ。」


黒霧 「わかってるよ。」フフッ


集積姫「ほんとにわかってるのかしら・・・。」フアンダワ



私にもわからない苦悩がそこにはある。


集積姫「そもそも、しーちゃんの言ういざというときって愛する者を手に掛けるときのことでしょ?そんなことあるかしら。」


黒霧 「間宮のこと・・・忘れたとは言わせないよ。」オォォ


集積姫「彼女を愛したしーちゃんは偽りの人格だったんじゃなかったの?殺気出てるわよ。」


黒霧 「新たな人格を創ることは僕の十八番と言ってもいいくらいの技能さ。だけど、僕は人格の消し方までは知らない。」


集積姫「じゃあ、しーちゃんは今でも間宮ちゃんのこと・・・。」


黒霧 「"愛してる"よ。」


集積姫「言っちゃうのね、その言葉。生前には一度も言ってあげなかったくせに。」


黒霧 「言葉の力には凄まじいものがあるからね。それで選択を誤ってしまっては元も子もないでしょ。」


集積姫「そう・・・。つらい役割を押し付けてごめんなさいね。おいで。お姉ちゃんが抱き締めてあげるわ。」ホラ


黒霧 「さて、そろそろ出発しようか。」スック


集積姫「ちょっとー?」


黒霧 「慰めは不要だよ、茜姉さん。そんなことされたら、好きになっちゃうでしょ?」フフッ


集積姫「ばっちこいよ。」ホレホレ


黒霧 「冗談だよ。」ニコリ


集積姫「何よ。つれないわね。」ムゥ


黒霧 「撫子。紫苑。おいで。」


朧  「あいあい。」スーイ


曙  「だから、本名で呼ぶなっての。」グスッ


黒霧 「まだ泣いてたの?」


曙  「う、うるさい!///」


黒霧 「次、君が泣くようなことがあったら・・・。」


朧  「ら~?」


黒霧 「二度と泣けないように、その涙を枯らしてあげるよ。」ニコォ


曙  「」ピゥッ


黒霧 「はい、しゅっぱ~つ。」ダキカカエ


朧  「おしんこー。」ダー


曙  「・・・コロサレル」ガタガタ


・・・


集積姫「わたしは!?」オキザリー



相手に合わせると意外になんとかなったりする。


漣  「まてまて~。」ウエヘヘ


潮  「いやぁぁぁ!」


???「いい加減にするでち!」ガシッ


漣  「うわっ!」バシャーン


潮  「ゴーヤさぁん!」ヒシッ


ゴーヤ「もう大丈夫でちよ。この色情魔はゴーヤがとっちめてやるでち。」ヨシヨシ


漣  「あたたた。水面って結構痛いんだ。初めて知ったぜい。」ハナガ


ゴーヤ「まったく。どうしてお前は問題を起こさないと行動ができんでちか。」


漣  「だってぇ。個性が死んじゃうんだもん。」


ゴーヤ「軍人に個性は要らんでち。」


漣  「澪ちゃんってば軍人だったんだ。」ワーオ


ゴーヤ「こいつっ。」イラッ


潮  「うぅ。」グスッ


ゴーヤ「取り敢えず、潮に謝罪するでちよ。」


漣  「あーはいはい。め・・・。」


ゴーヤ「巫山戯たら、わかってんだろうなぁ。」ゴゴゴ


漣  「誠に申し訳御座いませんでした。私にそのような趣味は御座いません。どうか御安心下さい。そして今まで通りに接して下さい。」


ゴーヤ「どうするでちか?潮。」


潮  「・・・うん。澪ちゃんの性格はよく知ってるから。あれが本気じゃないってことはわかってたよ?」


潮  「だけど、これからは控えめにしてくれると嬉しいな。」フフ


漣  「有り難き幸せ。」ハハァー


ゴーヤ「よし。それじゃあ行くでちよ。ここからはこのゴーヤ姉さんが先導してやるでち。」ムフン


漣  「お、マジで?やりぃ!なら、あちきは後ろに下がっとくんで、よろしくでーす。」ソソクサ


ゴーヤ「ん?どうして後ろに下がる必要があるでち?」


潮  「ゴーヤさん・・・。後ろ。」フルフル


ゴーヤ「後ろ?」クルッ


集積姫「ねぇ、しーちゃんったら本当にわたしを置き去りにして行きやがったの。流石に酷いと思わない?」


ゴーヤ「そうでちか。それは災難だったでちな。」


集積姫「でしょ?後でとっちめてやらなくちゃ。」ムフー


ゴーヤ「手を貸すでちか?」


集積姫「あら、いいの?悪いわね。助かるわ。」フフ


ゴーヤ「困ったときはお互い様でちからな。」


潮  「凄い。ゴーヤさん、深海棲艦と普通にお喋りしてる。」


漣  「見る目がないねぇ、姫百合ちゃんよぉ。苦瓜姉さんの瞳を見てみな。」


潮  「瞳?」


漣  「ありゃあ、人生を諦めた瞳さね。」ハッ


潮  「ヤケクソだったんだね・・・。」


漣  「そーさね。その証拠に、苦瓜姉さんと呼んでも魚雷が飛んでこない。」キリッ


潮  「ほんとだ!」


集積姫「言われてるわよ?」イイノ?


ゴーヤ「演習用の魚雷ならまだしも、実弾は洒落にならんでち。ゴーヤはまだまだ東とイチャコラしたいでち。軍法会議は勘弁でち。」


集積姫「あんた、東と深い仲なの?」


ゴーヤ「深いも何も夫婦でち。そっちこそ、ゴーヤの旦那を知ってるでちか?」


集積姫「知ってるも何も、わたしと東は懐刀の仲間よ。」


ゴーヤ「は?深海棲艦が懐刀ぁ?」


集積姫「まぁ、そうなるわよね。でも困ったわ。この姿じゃないと海の上に立ってられないのよね・・・。」ドウシマショウ


集積姫「・・・取り敢えず、目的地に向かいましょうか。」


ゴーヤ「そうでちな。ふたりとも、行くでちよ。」


ハーイ


潮  「このままついていっても大丈夫なのかな。」ヒソヒソ


漣  「どっちにしたって、うちらの実力じゃあ逃げ切れねーべ。今はただ、前進あるのみってな。」


潮  「澪ちゃんがかっこいい。」


漣  「姫、私の瞳をよく御覧下さい。」キリッ


潮  「・・・魚が死んだ瞳をしてる。」ヤケクソダ


漣  「そゆこと。でも、流石に言いすぎでないかい?」キズツクゼ



やっぱり好きなんだ。


「灯りを点けましょ 摩天楼~♪」


「ぽい」


「水辺に咲くのは 彼岸花~♪」


「ぽい」


「雑木林の古井戸を~♪」


「ぽぽい」


「覗けば けんちゃん おいわさん~♪」


「ぽぉぉい」グスッ


「貴女、大好きだったものね。」


「今でも大好きっぽい~。」ウアァ


「存分に泣くといいわ。そして前を向くのよ。」ヨシヨシ


「違うの。これは笑ってるの。」ポイ


「紛らわしいわ!」



時間軸を乱立させるのも程々に。


加賀 「お取り込み中申し訳ないのだけど、仕事よ。」コンコン


???「やっとお仕事が始まるのね。まったく。待ちくたびれちゃったわ。」ムフー


加賀 「くたびれている割には気合いが入っているようね、雷。」フフ


雷  「当然よ。久々だもの。」フフン


???「私はちょっとおセンチっぽい~。」ウゥ


加賀 「そんな夕立に朗報があるのだけど・・・。」


夕立 「な~に?」


???「やぁ。」ヒョコッ


加賀 「新しい同居人よ。仲良くしてあげなさい。」


夕立 「時雨っぽい~!」バッ


時雨 「うわわっ!ちょっと。いきなり飛びついたら危ないじゃないか。」モウ


夕立 「えへへ~。」スリスリ


時雨 「聞いてないな・・・。」アハハ


雷  「それで、お仕事は?」ソワソワ


加賀 「仕事は逃げたりしないわ。落ち着いて聞いてちょうだい。」


雷  「わかったわ。で?で?」ズズイ


加賀 「全くわかってないわね。まぁ、いいでしょう。貴女達にお願いする仕事は、この娘の護衛よ。」


霧島ミニ「どうも。」


雷  「・・・ちっちゃい霧島さんだ!」


夕立 「霧島さんは妖精さんっぽい!?」ビックリ


時雨 「へぇ。こう見ると戦艦の霧島さんも可愛いものだね。」


霧島ミニ「そうですか。元の私は可愛くないですか・・・。」ズーン


時雨 「あ、いや、そんなつもりじゃ・・・。」


霧島ミニ「いいんです。学生だった頃もあいつにフラれたら終わりだなんて言われてましたから。」ドヨーン


霧島ミニ「なんですか。私は恋愛の最終防衛線かってんですよ。」ケッ


時雨 「・・・どうしよ。地雷、踏み抜いちゃった。」


雷  「大丈夫!霧島さんは可愛いわ!私が保証する!」


霧島ミニ「」ブツブツ


夕立 「聞いてないっぽい。」


加賀 「放っておきなさい。そのうち勝手に立ち直るわ。霧島を胸ポケットに収めて、この島まで護衛をお願いするわね。」つ海図


雷  「了解したわ。」ウケトリ


加賀 「それから、時雨。」


時雨 「何かな?」


加賀 「元帥からの勅令よ。ある人物に会ってきなさい。護衛任務が終わった後にね。」


時雨 「うん。わかったよ。」


夕立 「それ、ついていっちゃ駄目っぽい?」


加賀 「護衛任務が終われば、貴女達は非番よ。」


夕立 「じゃあ。」キラキラ


加賀 「好きになさい。」


夕立 「やったぁ!時雨と一緒っぽい~!」キャイキャイ


雷  「こ~ら。まずは任務に集中しないと駄目でしょ?」メッ


夕立 「わかってるっぽい。」ムフフ~


時雨 「これは・・・。」


雷  「わかってないわね。」ハァ


加賀 「頼みますね、ふたりとも。」


雷時雨「了解!」ビシッ


夕立 「ぽい!?」



自らを演しゅつする乙めのかい


五月雨「どうして、こんなことに・・・。」


ヲ級 「南お姉ちゃんっ。」ヒグッ


レ級 「泣くな。泣くんじゃねぇ、ヲーちゃん。」ズビッ


蓮華 「ぐちゃぐちゃな顔をして何を言うか。」ハッ


レ級 「うるせぇ!これは・・・花粉症なだけだ!」ブワッ


レ級 「だいたい、なんでてめぇは平気そうな面してんだよ。」


蓮華 「あ?これが平気そうに見えるか?」オォォ


レ級 「」ビクッ


蓮華 「私にはまだやることが残っているのでな。涙を流している暇などないのだ。」ギラッ


三隈 「」ヒッ


最上 「白装束の用意でもしておこうか?」


三隈 「もがみん、助けてくださいまし。」ヒシッ


最上 「ボク、止めたよね?それを聞かなかったみっちゃんが悪い。ボクはこの件に関して一切擁護しないからね。」プイ


三隈 「そんなっ。」


最上 「まったく。クロさんに何て言って謝ればいいのさ。」


三隈 「あぁ。」ヘタッ


蓮華 「安心しろ。父上が貴様を罰することはない。」


三隈 「・・・。」


蓮華 「その前に、私が貴様の息の根を止めてやるからな。」オォォ


三隈 「」


南方戦(ふふふ。大分堪えてるみたいね。いい気味だわ。)


南方戦(少しお灸を据えすぎた気がしないでもないけど、これで多少は温和しくなるでしょう。)


南方戦(しかしまぁ・・・。起きづらいわね。まさか蓮華があそこまで怒ってくれるなんて、予想外だったわ。)


南方戦(なんだかんだ言って、ワタシのことが大好きなんじゃない。)フフッ


五月雨「・・・ん?」ワラッタ?


南方戦(さて、どうやって起きようかしら。あんまり普通に起きると怒りがワタシに向きかねないわ・・・。)


五月雨「南ちゃん、起きてますよね?」ヒソヒソ


南方戦「」ギクッ


五月雨「みんな蓮華ちゃんのほうに気がいってますから、起きてるなら私の手を握り返してください。」ヒソヒソ


ギュッ


五月雨「やっぱり。で、どうするんですか?この状況、そう簡単には収まりませんよ?」


南方戦「それを今考えてるのよ。アンタも手を貸しなさい。」


五月雨「え~。私は別に?ぜ~んぶ南ちゃんの演技だったって、みんなにバラしてもいいんだけどな~。」チラッ


南方戦「・・・何が望みよ。」


五月雨「それはこれから考えます。」


南方戦「わかったわよ。なんでもいいから手伝ってちょうだい。」チッ


五月雨「交渉成立ですね。」フフー


ヲ級 「ヲーちゃん、いいこと聞いちゃった。」ニマニマ


南方戦「くっ・・・。もうひとりくらいなら。」


レ級 「それ、どうにかふたりに増やせねぇか?」ニィ


南方戦「蓮華に気が向いてるんじゃなかったの?まぁ、わかっ。」


ガラッ


黒霧 「ただいま。」


朧  「ただまー。」オッス


曙  「・・・コロサレル」プラーン


五月雨「あらら。起きるタイミング逃しましたね。」


南方戦「だったら、さっきの・・・。」


レ級 「今更なしにはさせねぇよ?なぁ、五月雨姉。」


五月雨「そうですね。少なくとも私とヲーちゃんの分は同意を貰ってますから。」ニタァ


ヲ級 「ふっふー。」ムフン


南方戦「憶えてなさいよ、この娘狐共。」ワナワナ


五月雨「上手く切り抜けられるといいですね。」ニコニコ


ヲ級 「健闘を祈るの。」ニパッ


レ級 「また、仲間外れか・・・。」ズーン



状況把握は冷静に。


黒霧 「随分と荒れてるみたいだね、蓮華。」


蓮華 「当然だろう?この女が、母上を・・・母上をっ!」クッ


三隈 「」


黒霧 「」チラッ


五月雨「」ニコニコ


ヲ級 「」ムフフー


レ級 「やっぱり俺は虐められっ娘。」イジイジ


最上 「あのさ、クロさん。なんて言ったらいいか、わかんないけど・・・。」


黒霧 「最上が気に病むことじゃないさ。なんとなく状況はわかったから、後は任せてよ。」フフ


最上 「え?・・・うん。」キョトン


黒霧 「さて、蓮華。南が今どんな状態なのか、説明してくれるかな。」


蓮華 「母上は今、意識不明の重体だ。肉体の損傷も激しい。今夜が峠だろう。」ギリッ


黒霧 「そう・・・蓮華は知らなかったんだね。まぁ、闘ってる南の姿を見たことが無いだろうから、当然と言えば当然か。」


蓮華 「何がだ?父上。」


黒霧 「南はね、驚異的な自己再生能力を持ってるんだよ。即死さえしない限り、危篤状態にだってなりはしないさ。」フフッ


蓮華 「・・・は?」


黒霧 「良かったね、南。蓮華は君のことが大好きだってさ。」


南方戦「そうね。あんまり父上父上うるさい娘だから、安心したわ。ワタシも蓮華が大好きよ?」フフフ


蓮華 「はぁ!?///」カァァ


五月雨「あはは~。引っ掛かってやんの~。」プークスクス


蓮華 「趣味が悪いぞ!お姉ちゃん!」マッカ


五月雨「私の趣味が悪いのはお父さんの遺伝ですー。文句ならお父さんにどうぞ。」


蓮華 「くぅっ!」キッ


黒霧 「カメラがあれば良かったのに。」ボソッ


蓮華 「父上のあほぉ!!」ポカポカ


アハハ


三隈 「助かった・・・。」ホッ


黒霧 「あ、三隈は後で僕と演習ね。」ニコリ


三隈 「神様ッ。」アオザメ


五月雨(シンパシーを感じる!)ムムッ



あの天使は何処へ・・・。


五月雨「よかったですね、なんとかなって。」


南方戦「ほんと、時雨の勘が良くて助かったわ。」ハァ


五月雨「約束、忘れないでくださいね。」ニコー


南方戦「はぁ?アンタ達は何もしてないでしょうが。」


五月雨「やだな~。ドッキリ首謀者の汚名を被ってあげたじゃないですか~。」


南方戦「・・・そうね。」


五月雨「チョロい。」ボソッ


ナニカイッタ? イエイエナニモ?


南方戦「でも、ヲーちゃんは本当に何も。」


ヲ級 「ヲ?」ウルウル


南方戦「何も・・・。」


ヲ級 「」ウルウル


南方戦「この場に居てくれたものね。」クッ


ヲ級 「なの!」ムフー


レ級 「」ツップシ


五月雨「レーちゃんは何も要求しなくていいんですか?」


レ級 「どうせ俺はハブられる運命なんだよ。」モゴモゴ


五月雨「何を言ってるんですか。私達はレーちゃんにお父さんを譲っただけですよ?」


レ級 「は?」


五月雨「これを口実にして、お父さんに甘えてくるがいいです。」フッフー


ヲ級 「レーちゃん、ファイトなの。」ニパッ


レ級 「五月雨姉、ヲーちゃん・・・。」ジーン


レ級 「おう!ふたりとも、ありがとな!行ってくるぜ!」ニカッ


トウチャーン! バッ オット ドウシタノ? エヘヘー


五月雨「存分に甘えるといいですよー。私達は南ちゃん経由で、もっとすんごいことを要求するので。」ニコニコ


ヲ級 「なの。」ニコニコ


南方戦(集積。アンタの娘はとんでもない化け狐みたいよ。責任をとって再教育しなさいよね。)トオイメ


南方戦「と言うか、集積は何処に消えたのよ。」



嫌われたほうが記憶に残る現実。


集積姫「あ~。自分の足で移動すると遠いわね~。浮島のままだったら、もう着いてたでしょうに。」ヨロヨロ


ゴーヤ「浮島でちか?」


集積姫「そう。後ろのふたりが着任するはずの訓練基地は元々、急設された浮島だったのよ。」


漣  「ほ~ん。浮島だってさ。移動要塞みたいに動くのかね。」


潮  「引っ張って?」


漣  「無茶言うない。いくら浮島とは言え引っ張ったくらいで動く訳が・・・。」


集積姫「動くわよ。実際に引っ越しの時も、何人かで引っ張ったんだから。」


漣  「わ~お。引っ越し後の着任で助かったぜい。」


集積姫「ほんと、あんな肉体労働は二度と御免だわ。」ゲッソリ


潮  「浮島と綱引き・・・面白そう。」ボソッ


漣  「せんせ~い。ここに体力莫迦が居ま~す。」


集積姫「あら、ほんと?丁度良かったわ。目的地までわたしを負ぶっていってちょうだい。体力の限界だったのよ。」ノシッ


潮  「うえぇ!?」ワタワタ


集積姫「よろしく~。」ダラー


漣  「すっげ、姫百合の頭にメロンが乗ってやがる。ただでさえでっかいのをぶら下げてるってのに。」ワーオ


潮  「もう!澪ちゃん!///」ムー


ゴーヤ「さっさと行くでちよ~。」


漣  「苦瓜姉さん、そろそろ元の姉さんに戻りましょうぜ。」


ゴーヤ「3発。」


漣  「ほへ?」


ゴーヤ「基地に着いたら演習用の魚雷を3発ぶち込んでやるでち。覚悟しとけ。」ギロッ


漣  「うはは~い。」フルエゴエ


潮  「苦瓜姉さんなんて呼ぶから・・・。」


ゴーヤ「1発、追加でち。」


漣  「なんで!?言ったの姫百合じゃん!!」


龍驤 「何を話しとるんや?君ら。」


漣  「あ、Cカップ先輩。おはざ~す。」ペコッ


龍驤 「泣かすぞ、コラ。」アァン?


漣  「間に合ってま~す。」シュバッ


集積姫「ちょっと、あまり脇腹に触らないでもらえる?くすぐったいわ。」


漣  「へ~。」ニヤッ


潮  「澪ちゃん、それだけは駄目だからね。」ジッ


漣  「あちきの魂が騒ぐんでい。笑いに命を懸けろと。」クッ


集積姫「若しくすぐったら、この娘の命は無いわよ?」グイッ


潮  「ひっ。」サー


漣  「やめろ!姫に手を出すな!やるならまず俺からにしろい!」クワッ


集積姫「そういう科白はわたしと向き合って言いなさいな。いつまで後ろに隠れてる気よ。」


漣  「Cカップ先輩の怒りが収まるまで。」


龍驤 「だったら呼び方を改めんかい!君は他人を貶める以外の笑いを覚えなあかんでぇ!」


漣  「いや、このスタイルは先輩方にしか使わないんで。」


伊龍驤「猶悪いわ!」



視力の低下につき、人の顔を認識できません。


集積姫「で、あんたは大本営に帰還中かしら?真宵は艦娘使いが荒いわね~。」


龍驤 「せやねん。嘆願状でも出そうかと今こっそり、てそうやなくてな。」オイ


漣  「流石は先輩、姫級を前にしても笑いを忘れないその根性。尊敬しまーす。」


龍驤 「・・・莫迦にしとらんか?」


漣  「そんな莫迦な。」エェッ


龍驤 「ま、ええわ。それよりもや、南のねえちゃんが意識不明の重体やて。」


集積姫「南方ちゃんが?何が原因よ。」


龍驤 「三隈の光熱砲に全身貫かれたらしいで。うちは直接見たわけやないから、詳しくは知らん。」


集積姫「そう。なら大丈夫でしょ。南方ちゃんは頑丈だから。」


龍驤 「そうか?蓮華が血相変えて飛び出して行きよったからな。大事やと思ったんやけど・・・。」


集積姫「へぇ、あの蓮華ちゃんがねぇ。良いこと聞いたわ。」フフフ


潮  「あのー。」


龍驤 「ん?どないしたんや?」


潮  「龍驤さんとこの深海棲艦さ・・・。」


集積姫「集積地棲姫よ。集積でいいわ。」


潮  「・・・集積さんはお知り合いなんですか?」


龍驤 「知り合い・・・か。まぁ、知らん仲ではないな。」


集積姫「そうかしら。わたしはあんたの顔くらいしか知らないけど。」


龍驤 「そらお互い様や。」


集積姫「だったら、知らない仲じゃない。」フフ


龍驤 「んなこと言い出したらキリがないやろ?知り合いでええやんか。」


集積姫「納得いきましぇーん。」ブー


龍驤 「めんどくさっ。」


潮  「仲良しさんみたいだね。」


漣  「これが作戦の内だったら大したもんだぁね。」ウム



最高記録 ほろ酔い2本


ゴーヤ「それで姐御は何処に向かってるでちか?」


龍驤 「ん?ああ、せや。クロさん呼びに行こう思うてこっちまで来てん。クロさんは何処や。一緒に居ったんと違うんか?」


集積姫「一緒だったわよ。ちょっと前まではね。わたしだけ置き去りにして先に行きやがりましたの。」ムスッ


龍驤 「なんや荒れとんなぁ。でも、うちはクロさん見てへんで?」


集積姫「はぁ?そんなわけないでしょ?しーちゃんは真っ直ぐ基地に飛んでったのよ?」


龍驤 「しーちゃん?」


集積姫「そこは気にしないでちょうだい。」オット


龍驤 「そう言われてもなぁ。見てないもんは見てないからな。」ウーン


集積姫「訓練生の娘をふたり連れてたのよ?あんたの電探に引っ掛からなかったわけ?」


龍驤 「せやな。君ら以外の反応は感知してへんで。」


集積姫「ふ~ん。てことは瞬影でも使ったのかしら。」


龍驤 「まっ、クロさんが基地に戻っとるならええわ。ほな、うちは大本営に帰らしてもらうわ。」ヒラヒラ


集積姫「やっぱり帰るんじゃない。パシリは大変ね。」


龍驤 「喧しい。パシリにはパシリの矜持があんねん。小間使い舐めんな。」ハッ


集積姫「かっこよくないわ~。」


漣  「先輩、ダサ~い。」


龍驤 「姫のねえちゃんとは気が合いそうで良かったなぁ、漣。とことん可愛がってもらいや。」ニィ


ホナ サイナラ


漣  「はっは。名誉を捨てて爆弾置いて行きやがりましたよ、あのCカップ。」


ゴーヤ「ゴーヤからもプレゼントでち。」ポイッ


漣  「・・・なんすか、これ。」マジマジ


ゴーヤ「お手製、小型爆弾でち。」ポチッ


チュドーン


ゴーヤ「姐御が信用する相手ならゴーヤも信用するでち。後は任せるでちよ。」チャプン


集積姫「あいあい。」ヒラヒラ


漣  「なんてぇ先輩よ。一発中破レベルの爆弾を新人にくらわすとか、ほんと莫迦でないの。」ケホッ


潮  「集積さん、重い・・・。」


集積姫「女性に重いなんて言っちゃ駄目よ。目的地はもうすぐだから、ほら頑張って~。」ダラー


潮  「自分で立ってよぉ。」ウゥ



忍び寄る影。それは海鳴の悪夢。


ゴーヤ「姐御。あの深海棲艦は本当に信用できるでちか?」


龍驤 「さぁ?」


ゴーヤ「さぁって、知り合いじゃなかったでちか?」


龍驤 「んなこと言われてもなぁ。うちは姫のねえちゃんをよく知っとる人のことを知っとるだけやし。」


龍驤 「正直、あれのことはわからん。普段は緩い感じやけど、腹の中で何を企んどるか・・・。」


ゴーヤ「ゴーヤ、そんな奴に新人を預けたでちか・・・。」


龍驤 「大丈夫やろ。最悪、クロさんがどうにかしてくれるわ。」


ゴーヤ「件の暗殺者でちか。」


龍驤 「なんや、クロさんのこと知っとるんか?」


ゴーヤ「東からそれとなく聞いてるでち。でも、詳しくは知らんでちから、姐御に聞かせてほしいでち。主に、為人の部分を。」


龍驤 「クロさんの性格かぁ。ちょっち長くなるで?」


ゴーヤ「どうせ暇でち。構わんでちよ。」


龍驤 「なら、遠慮なく。」


マズアノヒトハ・・・ デチデチ


???「東・・・ね。ふ~ん。こんな所に居たんだ。ふふ。久し振りの再会といきましょうか。」ゴポッ


・・・


夕立 「潮風が気持ちいいっぽい~。」ワフー


時雨 「そうだね~。」フフ


雷  「これで髪がベタつかなければ最高なんだけど。」オフロガタイヘンダワ


霧島ミニ「」ブツブツ


夕立 「霧島さん、まだいじけてるっぽい?」


雷  「余程暗い学生時代を過ごしていたみたいね。」


時雨 「ほんと・・・ごめん。」


雷  「時雨が気にすることじゃないわ。加賀さんも言ってたじゃない。そのうち立ち直るって。」


時雨 「でもさ。」


夕立 「む~。折角の海なのに雰囲気が台無しっぽい!時雨も霧島さんも気にしすぎっぽい!」ブー


時雨 「君はもう少し気にしたほうがいいと思うけど。」アハハ


夕立 「こんなときは思いっきり身体を動かして、汗をかくのが良いっぽい!紅蓮の孤島まで競争っぽい!」シュバァァ


雷  「あっ、こら!スタートの合図も無しに始めるのは卑怯よ!」シュバッ


時雨 「競争自体はいいんだ。」


霧島ミニ「妖精サイズとはいえ、私も負けませんよ!」バビューン


時雨 「ほんとに立ち直ってるし。霧島さんって意外と脳筋なのかな。」エェ


シグレモハヤククルッポイー


時雨 「はぁ、わかった。今行くよ。」ヤレヤレ


オッソーイ! イカヅチ ソレイジョウハイケナイ!



お姉ちゃんが来た!


龍驤 「ゴーヤ、気づいとるか?」チラッ


ゴーヤ「ばっちり気づいてるでちよ。」


龍驤 「なら、やることはわかっとるな?」ニィ


ゴーヤ「当然でち。」ニッ


ゴーヤ「水雷投下!からのダイブでち!」シュパンッ


龍驤 「ノースプラッシュ・・・10点。」ウム


ゴーヤ「捕まえたぁ!」バシャッ


???「いったぁ。もう、何すんのよ。」


龍驤 「どうしてうちらをつけとったんや?」


???「あっは。やっぱりバレてた?」


ゴーヤ「あんな御粗末な尾行に気づかないはずがないでち。莫迦にしてるでちか?」アァ?


???「うんにゃ?別に気づかれても不都合無かったし?」ニヒヒ


龍驤 「そうか。ま、取り敢えず真宵に突き出すで。海に潜っとったちゅうことは、懐刀の関係者やろ。」


???「真宵?懐刀?何それ。」


ゴーヤ「真宵を知らんでちか?現魔王でちよ?」


???「そういえばそんな名前だったっけ。ま、私は東に会えたらそれで充分だからさ。」


ゴーヤ「東とどんな関係でち?」ギロッ


???「睨まないでよ。私はあいつのお姉ちゃんよ。」ケタケタ


伊龍驤「は?はぁぁぁぁ!?」


近衛姉「以後お見知りおきをってね。」ニヒヒ



まさかこの人が再登場するなんて・・・。


夕立 「到着っぽいぃ!とと、うにゃぁぁぁ!」ズザー


雷  「あ~あ。止まることを考えてなかったのね。まったく、砂浜で良かったわ。」ハァ


夕立 「口の中がジャリジャリっぽい~。」ペッペッ


霧島ミニ「はぁはぁ。おぇっ。」ウプッ


時雨 「大丈夫?霧島さんって体力無いんだね。」サスサス


霧島ミニ「違います。身体が小さいので貴女達より飛行距離が相対的に何倍か長いだけです。」ゼェ ハァ


時雨 「そう・・・だね。」アハハ


コウチャハマダネー!!


夕立 「うわぁ~。」ポイ


雷  「想像以上だわ。」


時雨 「荒れてるね。」


霧島ミニ「お姉様・・・。」ハァ


榛名ミニ「霧島!戻っていたのね!」フワフワ


比叡ミニ「お姉様とドッジボール大会だー!」ワー


金剛 「紅茶ぁぁぁ!!」フヌヌヌ


榛名ミニ「お姉様!その大岩は洒落になっていません!」オチツイテクダサイ!


比叡ミニ「霧島、受け止めますよ!」ムフー


霧島ミニ「はい、比叡姉様。」ニィ


榛名ミニ「この脳筋共が!皆さんは逃げてください!」


雷  「逃げるったって・・・ねぇ。」


時雨 「あはは・・・。」


夕立 「もう手遅れっぽい。」


榛名ミニ「え?」クルッ


大岩< ヒューン


榛名ミニ「いやぁぁぁ!」


比叡ミニ「霧島!」


霧島ミニ「はい!」


鳳紅蓮「莫迦か、お前ら。人間が一軒家を持ち上げるようなものだぞ。潰されるのがオチだ。」


榛名ミニ「紅蓮さん!」パァ


鳳紅蓮「こういうときは、全力で殴り飛ばすに限る。」フッ


榛名ミニ「へ?」


ボコォッ イヤァァァ! ハヘンガ!


榛名ミニ「此処には脳筋しか居ないのですか・・・。」ボロッ


榛名ミニ「もう、いやぁ!家出してやるぅ!!」ウアァァ


時雨 「どうしよっか。」


雷  「護衛任務は達成したし、帰る?」


夕立 「こっそり行くっぽい。」


雷  「そうね。行きましょう。」


コソコソ シツレイシマース ポイ



蒼の再会


近衛東「・・・。」


近衛姉「やぁ、弟。貞操守ってる?」ニコニコ


近衛東「・・・。」イラァ


ゴーヤ(空気が重いでち・・・。)


真宵 「ほう。姉が居たのか、東。てっきり兄弟姉妹は居ないものと思っていたぞ。」フッ


近衛東「この女には良い思い出が無いのでな。できれば存在ごと記憶から消し去りたい。」


近衛姉「あ~ら、失礼しちゃうわね。そんなにお姉ちゃんのことが嫌い?」


近衛東「嫌いだ。」


近衛姉「はっきり言ってくれるじゃないの。お姉ちゃん、傷ついちゃうわ~。」シクシク


近衛東「で、要件はなんだ?さっさと済ませろ。そして帰れ。」


ゴーヤ(本当にお姉さんのことが嫌いでちね。)


近衛姉「もう、相変わらずつれないんだから。私の要件なんて訊かなくてもわかるでしょ?けっ・・・。」


近衛東「断る。」カエレ


近衛姉「ちょっと、せめて最後まで・・・。」


近衛東「聞く価値が無い。」カエレ


近衛姉「何よ~。仮にも私はあんたにとって初めての女なのよ?ちょっと冷たすぎるんじゃな~い?」ムゥ


近衛東「お前を女として見たことなどな・・・今、なんて言った?」


ゴーヤ「初めての・・・女?」ヘ?


真宵 「未経験ではなかったのか?東よ。」


近衛東「そのはずだ。俺は誰とも・・・。」


近衛姉「何?憶えてないの?ふ~ん。へぇ~。」ニヤニヤ


近衛東「なんだその顔は。俺はお前と床を共にした憶えは無いぞ。」


近衛姉「いやね。やけに積極的だな~とは思ってたのよ?それがまさか魅了の効きすぎが原因とは思わなかったわ~。」


真宵 「ほう。お前達近衛の一族が持つ能力か。確かあれは自分に気がある者に対してしか効果が無いのだったな。」フッ


近衛姉「あんた、お姉ちゃんのこと大好きなんじゃない。」ウフフ


近衛東「///」チッ


ゴーヤ「」マッシロ


近衛姉「あの海鳴の夜を再現してあげましょうか?///」フフ


近衛東「やめろ。もう何人の男に抱かれたかわからんその身体で俺に近寄るな。」


近衛姉「は?あんた、私のこと阿婆擦れか何かと勘違いしてな~い?」


近衛東「現にそうだろうが。」


近衛姉「は~。見る目がないのね、あんた。い~い?よ~く聞いておきなさい。」


近衛姉「私はね。身体の相性よりも心の相性を大事にしたいの。結婚したからといって、簡単に股を開くような女じゃないわ。」


真宵 「開いてもいいと思って結婚するものではないのか?」チラッ


加賀 「私をこの話に巻き込まないでもらえるかしら。何のために今まで黙っていたと思ってるの?」ジトッ


真宵 「そうだな。これは飽くまで、あいつ独自の理論だ。聞き流すとしよう。」


加賀 「賢明な判断ね。」


近衛姉「私がこれまで身体を許したのは、あんただけよ。」フフ


近衛東「それは・・・本当なのか?」


近衛姉「お姉ちゃんのことが信じられないの?」ン?


近衛東「何度も求婚しておきながら、結局は他の男と結婚するような女の言葉を信じろと?」


近衛姉「はは~ん。あんた、嫉妬してたんだ~。もう、可愛いところあるじゃな~い!」ギュッ


近衛東「そんなこと・・・ある、かも知れないな。」フッ


近衛姉「うふふ。ねぇ、東。改めて言うわね。私と、結婚してちょうだい。」ジッ


近衛東「・・・認めよう。俺は姉さんが好きだ。」ハァ


近衛姉「じゃあ・・・。」


近衛東「だが、その感情は"愛"に遠く及ばない。」


近衛姉「・・・は?」


ゴーヤ「ふぇ?」


近衛東「俺は、ゴーヤを愛している。俺の隣りはもう埋まっている。」


ゴーヤ「あずま・・・。」ウルウル


アズマァァァ!! ダキッ


近衛姉「あら~。」


近衛東「今度は立場が反対だな、姉さん。」ニッ



私の心はシリアスに囚われている。


近衛姉「へ~え。あんたが結婚ね~。おめでとう?」


近衛東「一応、礼は言おう。だが、何故疑問形なんだ?」


近衛姉「さぁ?素直に喜べないから?それとも諦めるつもりがないからかな~?」ンフフ


ゴーヤ「むっ。ゴーヤは東を譲る気はないでちよ。」ヒシッ


近衛姉「私だって、貴女に譲ってもらおうなんて考えてないわよ。貴女の後を引き継ぐのよ。」


ゴーヤ「なんでちか。離婚の予言でちか。そんなものは現実にさせないでちよ。」フルフル


近衛姉「自信は無いのね。」フルエテルワヨ


近衛東「大丈夫だ、ゴーヤ。俺はお前を放さない。たとえ、誰が立ちはだかろうとも・・・な。」オォォ


近衛姉「あら、怖い。でも安心なさい。あんた達の関係が続いている間は温か~く見守ってあげるから。」


ゴーヤ「そうでちか。」ホッ


近衛姉「た~だ、私達魔族とゴーヤちゃんとでは寿命の概念が違うでしょう?」


ゴーヤ「・・・ん?」


近衛姉「貴女の葬式を挙げた後に私が東を貰うわね。」ウフフ


ゴーヤ「上等じゃ、ごるぁ!!意地でも長生きしたらぁ!」ジャァ!


真宵 「東の言葉はそういう意味ではないのだがな・・・。」フゥ


真宵 「まぁ、俺も他人事ではないからな。少し、気合いを入れておくか。」オォォ


加賀 「」ビクッ


真宵 「・・・すまん。」


加賀 「いえ。私も、慣れなくて・・・。」モジモジ


近衛東(俺達の覚悟は既に出来ている。後はお前次第だ、時雨・・・。)


・・・


時雨 「」クシュッ


夕立 「時雨、風邪っぽい?」


雷  「ちょっと、大丈夫?」


時雨 「大丈夫だよ。さ、見えてきたよ。あれが目的の城さ。」


雷  「・・・城?」


夕立 「時雨、ほんとに大丈夫?」


時雨 「うん・・・今のは忘れて。///」カァァ


テイウカ フツウニシャベレルノネ アナタ



構想が練りきれていないのです。


バシュッ スカッ


黒霧 「ほら、どうしたの?掠ってもないよ?」フフフ


三隈 「っ~!」


黒霧 「隙あり。」バンッ


三隈 「ひっ!」チュイッ


最上 「ほえ~。クロさんって射撃もできるんだね~。それも狙って掠らせるなんて、流石は化物。」


五月雨「こら~。お父さんを化物呼ばわりすると、私がオコですよ~。」


最上 「でも、事実だし。」


五月雨「そうですね。」ケロリ


レ級 「ちゃんと否定してくれよ、五月雨姉。」


三隈 「くっ!ここは一旦距離をっ!」シュバッ


黒霧 「あらら。逃げられてしまった・・・なんてね。」ニィ


三隈 「この高度まで逃げれば、いくらクロさんといえども・・・。」


黒霧 「魔族には翼が付きものだよ?」シュンッ


三隈 「更に上ですの!?」


黒霧 「ちょっと痛いよ!」フンッ


三隈 「がっはぁ!」ドゴォ


レ級 「うお~。完全に入ったな、あれは。」オー


最上 「なんで飛べるのさ。」エェ


五月雨「翼があるからじゃないですか?」テキトー


ヲ級 「お父さんに翼なんて生えてないの。お風呂で見たお父さんの背中は綺麗だったの。」


五月雨「ヲーちゃん、お風呂で見たことは自分の内に秘めておくものですよ。」


ヲ級 「うん、わかったの!」ニパッ


最上 「で、なんで飛べるの?」


蓮華 「あれは原初の霧の権能を組み合わせたものだ。翼を創造し、飛行に適した肉体に強化する。そうして父上は空を翔る。」


最上 「なるほど。能力って便利だね~。」フーン


蓮華 「・・・そうだな。」


三隈 「だー!もう!!レールガンでは埒が明きませんの!」


三隈 「クロさん、三隈は貴方を信じますの。絶対に躱してくださいまし。」クッ


三隈 「ソーラーレイですの!」ブゥン


シュバァッ


黒霧 「」ヒラッ


ザシュッ クアッ


三隈 「流石・・・クロさんですの。」ハァ ハァ


黒霧 「駄目だよ、三隈。たとえ僕が相手でも殺す気で撃たないと。」グッ


ウァァァァ!


最上 「あー。若しかして、クロさん。かなり怒ってる?」


五月雨「案外愉しんでるだけとかじゃないですか?」


レ級 「うへぇ。痛そ・・・。」


ヲ級 「脇腹を刃が貫いてるの。」ヲー


蓮華 「・・・。」


南方戦「蓮華、随分と元気が無いみたいね。何をそんなに悩んでるのよ。」


蓮華 「悩んでいるのは私ではない。父上だ。」


南方戦「あっそ。だったら、アンタも気にしないことね。」


南方戦「ワタシにも相談しないようなことも、アンタにだけは話すのよ?それがひとりで抱え込んだら、もうどうしようもないわ。」


蓮華 「違うぞ、母上。私は父上の悩みを知っている。だからこそ心配なのだ。父上がいったいどちらの道を選ぶのか・・・。」


南方戦「そう・・・。あのひとの悩みが何なのか、癪なことにワタシは知らないけど・・・。」


南方戦「取り敢えず、アレ止めるわよ。三隈が大変なことになってるわ。」


蓮華 「やれやれ。始祖の血が騒いでしまったか、父上。」シカタナイナ


朧  「・・・グロい。」ウェ


曙  「コロサレル」ガタガタ



未来を失ったちびっ娘達。


漣  「姫姉様、あれは何ですかや。」


集積姫「さぁ?公開処刑かしらね。」


漣  「姫様、あれは何ですかや。」


潮  「」チーン


漣  「姫姉様、姫様がご逝去遊ばされました。」ガッショウ


集積姫「良かったわね、楽に逝けて。次は誰が餌食になるのかな~。」ウフフ


漣  「いやだぁ!!俺はまだ死にたくないぃ!!」ウアァ


・・・


雷  「ねぇ、目的地って此処であってるのよね?」


夕立 「間違ってると思いたいっぽい・・・。」


時雨 「残念ながら、あってる・・・かな。」アハハ


雷  「長居は無用ね。さっさと済ませて帰るわよ。」ハァ


夕立 「賛成っぽい。あの人はおっかないっぽい。」ウー


雷  「で、元帥が時雨に会わせたがってる人は誰だかわかってるの?」


時雨 「多分、あの白髪の人。」


雷夕立「・・・。」ウワァ


時雨 「ボク、行ってくるよ。」


夕立 「時雨、気をつけてっぽい。」フリフリ


雷  「行っちゃったわね・・・。ねぇ、夕立。」


夕立 「ぽい?」


雷  「どうして時雨はあの人が目的の人だってわかったんだと思う?」


夕立 「それは、元帥から特徴とか聞いて・・・ないっぽい。」アレ?


雷  「私達はある人物としか聞かされてない。なのに時雨はどうして・・・。」ウーン


夕立 「時雨に直接訊けばいいっぽい。」


雷  「私達も行く?」


夕立 「それは勘弁っぽい。」


アンタ ハクジョウネ ソノクチトジルッポイ


・・・


曙  「コロサレル コロサレル コロサレル・・・」ガタガタ


朧  「しっぺ でこぴん 馬場ちょっぷ!」トウッ


ゴチッ イッダァァァ!


曙  「あにすんのよ!莫迦撫子!」ヒリヒリ


朧  「いい加減、現実を見るヨロシ。此処で生き抜く術を身に付ける以外に道は無いアベシ。」


曙  「巫山戯てるくせにまともなこと言ってるのが腹立つ。」クゥ


朧  「合言葉はひとつ!」セーノ


朧・曙「覚悟完了!」ビシッ


曙  「こうなったら、もう自棄よ!やってやろうじゃないの!たとえ腑かっさばかれようが最後まで喰らいついてやるわ!」アハハハハ!


朧  「チョロい。」フッ



録画の消化に追われる日々よ、こんにちわ。


南方戦「少しは落ち着いたかしら?」


黒霧 「僕はずっと冷静だよ?」


南方戦「莫迦ね。普段のアンタだったら徒に痛めつけるようなことはしないわよ。」


黒霧 「そうかな。肉を斬る感触と苦痛に歪む顔はけっこう・・・。」フフフ


南方戦「はい、この話はここまで!ったく。アンタのその嗜虐性はどうにかならないわけ?」ネェ


黒霧 「負の遺産ってやつだよ。元々そういう素質もあったんだろうけど、僕はあまりに多くの死際を見てしまった。」


黒霧 「心が壊れた結果か、それとも壊れないように防衛機能が働いた結果か。どちらにしろ積み重ねた歴史が歴史だからね。」


南方戦「それ、ワタシの温もりでどうにかできない?」ソッ


黒霧 「嫌なことを言うようだけど、僕にとって君は何人目の妻だと思う。」


南方戦「ホントに嫌なこと言いやがるわね、アンタ。まぁ、言わんとすることはわかるわ。」


南方戦「これまでも、何人もの女がアンタの傷を癒やそうとしたんでしょ。今のワタシみたいに。」


南方戦「それで悉く失敗した。で、アンタ自身も諦めてしまった。違う?」


黒霧 「大当たり。」フッ


南方戦「言っとくけど、ワタシは違うから。これまでに誰も成し得なかったことも、ワタシは果たしてみせる。」


黒霧 「その科白は聞き飽きたよ。」ボソッ


南方戦「だからアンタも信じなさい。信じられないなら、ワタシを信じるアンタを創り出してでも信じなさい。」ビシッ


黒霧 「」キョトン


黒霧 「・・・ぷっ。」フフッ


南方戦「な、何よ!莫迦にしてるの!?ワタシはアンタのことを想って!」バッ


黒霧 「ごめんごめん。予想の斜め上を行く返しだったからさ。」アハハ


・・・ハァ ワライツカレタ アンタネェ


黒霧 「今夜・・・君の部屋に行くよ。」


南方戦「ぅえ!?///」ボンッ


黒霧 「相談にね。」ニコリ


南方戦「ま、紛らわしいのよ!///」


ギャーギャー


蓮華 「気張れよ、三隈。もう少しで父上の唇がやってくるからな。」


三隈 「そ、それで丸め込まれる自分が、恨めしいですの・・・。」ゴフッ


五月雨「うはー。これ内蔵見えてるんじゃないですか?」ツンツン


三隈 「は、はは・・・。これが、黄泉の國ですの・・・。」ハー


最上 「クロさん、早く!みっちゃんがあの世に逝っちゃう!」



ふたりの時雨


ンー


黒霧 「・・・三隈?もう傷は治ってるよ?」ハナレテ


三隈 「まだ治ってませんの。三隈の心はまだ~。」グググ


蓮華 「それ以上は追加料金が発生するぞ。さっさと離れろ。」グイッ


三隈 「む~。名残惜しいですが、致し方ありませんの。」ズリズリ


黒霧 「風俗か何かなのかな?」アハハ


トスッ


黒霧 「ん。」


時雨 「」ジー


ジー・・・


黒時雨「君と僕の心音は同じだ。」


プフッ


時雨 「あはは。なんで被るのさ。変わってるね、君。」フフフ


黒霧 「君ほどではないよ。」フフッ


時雨 「どうしてかな。君とは初めて会った気がしないや。」


黒霧 「名前が同じだからじゃないかな、時雨。」


時雨 「へぇ。君も時雨なんだね。まぁ、ボクの場合はただの識別名みたいなものだけど。」


黒霧 「なら、新しく名前を付けてみたらどうかな?君は建造組でしょ?」


時雨 「いいね、それ。と言うか、どうしてボクが建造組だってわかったの?」


黒霧 「真宵に聞いたから。」


時雨 「なるほど。で、君はボクにどんな名前をくれるのかな?」ソワソワ


黒霧 「そうだね・・・"狭霧"、なんてどうかな。」


時雨 「狭霧・・・か。その名前は・・・ちょっと、嫌・・・かな。」


黒霧 「どうして?」


時雨 「わからない。だけど、何と言うか、心がザワつくんだ。」


黒霧 「そう。じゃあ、別の名前を考えてみるよ。少し、時間をくれるかい?」


時雨 「うん。楽しみにしてるね。」ニコッ



まずい。録画を消化する前に今期のアニメがっ!


五月雨「え~、皆様。この度はお集まりいただき、誠にありがとうございます。」E.マイク


五月雨「てめぇ、誰だ。と言ってやりたい方も何人か居るようですが、これより新人歓迎会を開催いたしま~す。」


五月雨「無礼講だ、こんチキショー!さぁ!飲めや、騒げや、暴れろやぁ!取り敢えず、私を抱き締めて~。お父さ~ん!」ウハハーイ


ハイハイ オイデ


レ級 「ああ!抜け駆けはなしだぜ!五月雨姉!」ガタッ


ヲ級 「ヲーちゃんもぎゅってしてほしいの!」ワーイ


五月雨「今だけは遠慮しませんからね!お姉ちゃんは欲望全開ですよ!」ムフー


黒霧 「それは構わないけど、大事なことを忘れてるよ?」


五月雨「そうでした。酒は飲んでも呑まれるな!そんでもって、未成年飲酒は禁止じゃあ!」ソコォ!


雷  「いいじゃな~い。私達が幼いのは見た目だけなんだから~。///」


夕立 「ぽい~。///」ケプッ


時雨 「あはは。ボクは止めたんだけど・・・聞かなくて。」


五月雨「まっ、私も飲むんでいいですけど。」ヨッ


黒霧 「駄目に決まってるでしょ?」ガシッ


五月雨「冗談ですよ~。だから、手を放してく~ださい。」ニコニコ


黒霧 「君が酒瓶から手を放したらね。」フフフ


五月雨「」チッ


蓮華 「何をしているんだ、お姉ちゃんは。」ハァ


南方戦「アンタこそ、ワタシの隣りで何してるのよ。あのひとの傍に行かなくてもいいの?」


蓮華 「偶には母上の隣りに居てやろうと思ってな。」フッ


南方戦「へぇ。そんなにワタシのことが好きなの?」ニィ


蓮華 「ああ。大好きだぞ、母上。」ジリジリ


南方戦「・・・気持ちワルっ!」ゾワッ


蓮華 「素直に喜べ、母上。私を近くに感じるのは、それこそ私が乳飲み娘だった頃以来だろう?」


南方戦「だからこそよ。ワタシとアンタの距離感はそのくらいで丁度良かったの。それがいきなり縮まってみなさいな。ゾッとするわ。」ハッ


蓮華 「まぁ、昔に戻ったと思って受け入れろ。何ならその乳吸ってやろうか。」ン?


南方戦「此処で曝せってか。」アァ?


蓮華 「ほれ、幼い娘の世話をしろ母よ。」ヨッコイセ


南方戦「膝に乗るな。」コラ


蓮華 「父上お手製の唐揚げを食わせろー。」ホレホレ


南方戦「そこはワタシお手製のにしなさいよ。別にいいけど。」ハイ アーン


アーン ムグムグ


蓮華 「美味い!」キラキラ


南方戦「そう、よかったわね。」フフ



緊急指令:胃袋を掴め。


集積姫「あんた達、しっかり食べてるかしら~?」


漣  「ふぁったりふぇ~よ。」ムグムグ


朧  「うんふぇ~。」キラキラ


曙  「口に物入れながら喋るんじゃないわよ。汚いわねぇ。」バッチィワ


潮  「」パクパク モグモグ


集積姫「あ~ら。良い食べっぷりね~。」


曙  「食べ過ぎなくらいよ。どんだけ皿に盛ってんのよ、まったく。」モウ


漣  「あれだけ食べて太らないのが不思議だよな~。」


朧  「栄養が全部乳に行ってる。」


漣  「またでっかくなったんだって?」


朧  「なんと脅威の1メートル超え。胸囲だけに。」フッ


漣  「美味い!牛乳一杯!」カンパーイ!


朧  「医学的根拠は御座いません!」カンパーイ!


・・・プハァ


漣  「カルーアミルクだ、これ!」キタコレ!


朧  「将来が楽しみだ!」ヘパパイヤ!


アハハハ!


曙  「酔っぱらってんじゃないの?こいつら。言ってることが滅茶苦茶だわ。」ヤレヤレ


集積姫「姫百合ちゃん。ケーキ食べる?」


潮  「」パァァ


集積姫「うふふ。わたしのお手製よ~。」アーン


パクッ ムグムグ


潮  「んふっ。」キラキラ


集積姫「気に入ったみたいね。」フフッ


曙  「餌付けされとるがな。」エェ



笑顔の訳


曙  「ったく。うちの連中はどうしてこう・・・チョロいのかしら。」ハァ


曙  「確かに料理は美味しい。それは認めざるを得ないわ。だけど此処には深海棲艦が居るし・・・何より。」チラッ


ネムイノ? レキュウ バーロォ オレハマダマダ・・・ Zzz ネマシタネ ソウダネ


曙  「あの悪魔が居る。」ジー


ヲ級 「お父さんがどうかしたの?」ヒョコッ


曙  「うっひゃぁぁぁ!」ビクゥッ


曙  「ど、どっから顔出してんのよぉ!」


ヲ級 「股の間なの。」


曙  「態々口に出さんでいい!///」


ヲ級 「何をそんなに怒ってるの?」クビカシゲ


曙  「べ、別に怒ってないわよっ!」


ヲ級 「怒ってるの。ヲーちゃん、何か悪いことしちゃった?」ウルウル


曙  「あ、いや、ほんとに!本当に怒ってないから!」ワタワタ


ヲ級 「ほんとに?」グスッ


曙  「本当よ。ほら、お姉ちゃん笑ってるでしょー。」ニコー


ヲ級 「下手なつくり笑いなの。」ヘッ


曙  「なんですってぇ!!」クワッ


ヲ級 「女の武器は笑顔と涙なの。こうやって笑うの。」ニパッ


曙  「こ、こう?」ヒキツッタエガオ


漣  「キモっ。」ウワァ


曙  「うっさいわ!あんたもやってみなさいよ!結構難しいんだから!」


漣  「いいぜ~。澪ちゃんの~営業スマイル!」ニコッ


朧  「撫子の微笑み!」ニコリ


漣  「そんでもってぇ!」


漣・朧「姫百合の癒やし!」


潮  「ふぇ?」


漣  「生クリームを頬に付けたままケーキを頬張るその姿。」アァ


朧  「癒やされる。」


潮  「や、やだ!言ってよ!うぅ、恥ずかしい。///」フキフキ


漣  「耳まで真っ赤にして恥ずかしがるその姿。」アァ


朧  「癒やされるぅ。」


曙  「趣旨が変わってる・・・。」


ヲ級 「つくり笑いならお父さんに習うといいの。お父さんは笑顔の仮面を被る天才なの。」ムッフー


曙  「あんた・・・それ、褒めてないからね?」



さぁ!サービスタイムだ!絵があればなっ!


カポーン


漣・朧「うおお~。ひれぇ~。」キラキラ


集積姫「蓮華ちゃんが大改造してくれたからね~。此処だけは豪邸並みよ。」ウフフ


漣・朧「泳いでもいい?」ソワソワ


蓮華 「この湯船は半身浴仕様だ。泳げるものなら泳いでみろ。爪が割れても知らんからな。」


漣  「うえ~。深い湯船とかねぇの?」


朧  「でーぷなばっすですいみんぐぅ~。」


蓮華 「そんなに泳ぎたいなら表に出るといい。何処までも広がる水風呂が待っているぞ。」フッ


漣  「それ海やないか~い。」


朧  「無限の彼方へ~。さぁ、行くぞ~。」ダー


漣  「撫子や。流石のあちしも真っ裸で外には行けねぇぜ。」ガシッ


朧  「おーうのー。」


集積姫「ほら、駄弁ってないでこっち来なさい。頭洗ってあげるわ。」


漣・朧「うはは~い。」トテテテ


曙  「すっかり懐いちゃったわね、あいつら。」ハァ


ヲ級 「ヲーちゃんはお母さんをとられて、ちょっと複雑なの。」ムー


曙  「あっそ。それは災難だったわね。ところで・・・あの人、誰?」


・・・


五月雨「お客さん、凝ってますねぇ。そのでっかい重りの所為ですかぁ?」モミモミ


黒霧茜「ここ暫くは身体を動かせていなかったからな。鈍っているのだろう。」モットウチガワダ


五月雨「茜さんって、ストレス発散とかどうしてるんですか?」ココデスカ


黒霧茜「早朝にな。時雨と組み手をしているのだ。しかしこの頃は能力を使う場面が多かっただろう?だから少し溜まっている。」アア ソコダ


五月雨「へ~え。お父さんも大変ですね。茜さんの相手をさせられるなんてっ。」グリッ


黒霧茜「っ!!」ビクッ


黒霧茜「今のは、痛かったぞ。」ゴゴゴ


五月雨「許してヒヤシンス。」テヘッ


黒霧茜「交代だ、五月雨。今度は私が貴様を揉みほぐしてやろう。」ボキッ ゴキッ


五月雨「はっは。揉み砕くの間違いじゃないですか?」


黒霧茜「いいから寝ろ。」


五月雨「・・・あい。」


・・・


ヲ級 「茜お姉ちゃんなの。お父さんのお姉ちゃんなの。怒らせちゃ駄目な人なの。若し怒らせると・・・。」


曙  「怒らせると?」ゴクリ


ウギャァァァァ!!


ヲ級 「五月雨お姉ちゃんみたいになるの。」


曙  「肝に銘じておくわ。」



五月病ならぬ、正月病を発症中。


雷  「露天風呂に浸かりながらの月見酒も乙なものね~。」


夕立 「ぽい~。」


時雨 「もう。いい加減にしたら?飲み過ぎだよ?」


雷  「まだまだ序の口よ~。」フフフ


夕立 「ぽ・・・Zzz。」スカピー


時雨 「これの何処が序の口なのかな。」マッタク


南方戦「失礼するわよ。」ガラッ


雷  「あら、南方さんじゃな~い。一杯、ど~お?」


南方戦「遠慮しとくわ。ワタシ、お酒弱いの。」チャプ


雷  「それは残念。」クイッ


レ級 「南姉・・・眠い。」フラフラ


南方戦「溺れても助けないわよ。」シッカリナサイ


レ級 「深海棲艦が溺れるかっての。」フア~


時雨 「それで、ボク達に何か用でも?」


南方戦「別に用ってほどのものでもないの。ちょっと様子を見にきただけよ、"間宮"。」


レ級 「あ?」ピクッ


雷  「も~。何を言ってるの~。この娘は時雨。白露型の駆逐艦よ~。」ヘベレケー


時雨 「・・・うん。ボクは、時雨だよ?」ニコリ


南方戦「そう・・・。邪魔したわね。」ザバッ


レ級 「なぁ、南姉。今のって・・・。」


南方戦「なんでもないわよ。忘れなさい。」


レ級 「忘れろったってよ~。」ナァ


雷  「へ~んなの~。南方さんも酔っぱらってたのかしら~。」アハハ~


時雨 「そう・・・かもね。」


雷  「どうしたの?名前を間違えられてそんなにショックだった~?だいじょ~ぶよ。私が居るじゃな~い。」フッフー


時雨 「あはは・・・。」


夕立 「もう食べられないっぽい~。」ムニャムニャ


時雨 「君はいいね、夕立。無邪気なままで居られてさ。」


・・・


南方戦「・・・どう思う?」


三隈 「演技をしているようには見えませんの。貴女の早とちりではなくて?」


南方戦「そうだといいんだけど、万が一ってこともあるでしょう?」


最上 「ボクも演技をしていないって点はみっちゃんと同じかな~。ただ・・・。」


三隈 「ただ、何ですの?」


最上 「な~んか引っ掛かるんだよね~。」ウーン


南方戦「その何かがわからないことにはどうしようもないわね。」


最上 「クロさんにも相談してみたら?」


南方戦「言われずとも今夜するわよ。」


三隈 「羨ましい。」ムー


南方戦「アンタの想像するようなことは一切ございませ~ん。」


三隈 「ふたりきりの時間があるというだけで羨ましいですの。そもそも、三隈に夜の営みはまだ早いですの。」フン


最上 「お~。成長したね、みっちゃん。」


三隈 「羞恥心は棄てましてよ。」フフン


最上 「身の程を弁えてるって意味だったんだけど。」


三隈 「喧嘩なら買いますわよ?」ムカッ


南方戦「元気ねぇ。あのひとに殺されかけた後だってのに。ま、ふたりでやってなさいな。その間にあのひとはワタシが戴くわ。」ジャ


最上 「いってらっしゃ~い。」フリフリ


三隈 「今に見てますの。いずれ三隈もクロさんの隣りに登り詰めてみせますの。」グッ


レ級 「みっちゃ~ん。洗いっこしよ~ぜ~。」オーイ


三隈 「今行きますの~。」タタタッ


最上 「みっちゃん。お風呂で走るとあぶな・・・。」


ツルッ ズデッ アイタァ!


最上 「言わんこっちゃない。」ヤレヤレ



データが消えなくてよかったわ。


五月雨「嗚呼、身体がかる~い。」クネクネ


ヲ級 「茜お姉ちゃんに絞られてたんじゃなかったの?」ヲ?


五月雨「ヲーちゃん、タイ古式マッサージって知ってます?」


ヲ級 「理解したの。」


五月雨「ヲーちゃんは賢いですね~。」ウリウリ


ヲ級 「えへへ~。」ニヨニヨ


レ級 「やベぇ。全然眠くねぇ。」パッチリ


蓮華 「夕時に寝るからだ。マッサージでもしてやろうか?リラックスすれば、多少眠くなるだろう。」


レ級 「お前にマッサージされるとか・・・恐怖しか無いわ。」ヘッ


蓮華 「ならば鍼にするか?」キラッ


レ級 「別に何処も悪くねぇよ。」


蓮華 「お灸は?」ボッ


レ級 「だから何処も悪くねぇって、しつけぇな。つーか火力おかしいだろ。」ボッテナンダヨ


蓮華 「折角この私が貴様に尽くしてやろうというのに、我儘な奴だな。」ヤレヤレ


レ級 「・・・頭でも打ったのか?」


・・・


漣  「ママ~。ご本読んで~。」ネェネェ


集積姫「誰がママよ。一緒に居るのはあんた達が寝るまでだからね。」


朧  「Zzz」スヤァ


集積姫「・・・あんたが寝るまでだからね。」


漣  「俺はそう簡単にゃあ、眠らねぇぜ?」フッフー


集積姫「ふーん。」カチッ


~♪


漣  「お、おれは・・・ね、な・・・Zzz」スカピー


集積姫「我ながら凄い効き目ね、これ。それじゃあ、帰りますか。あんた達も早く寝なさいよ~。」


曙  「言われずとも寝るわよ。」ウッサイワネ


集積姫「その生意気な顔が苦痛に歪んでいくのを想像すると、ゾクゾクするわぁ。」ウフフ


曙  「やれるもんならやってみなさい。」ハッ


集積姫「しーちゃんの訓練は甘くないわよ~。」ガンバリナサイ


曙  「そうだった・・・。」ズーン


潮  「」カキカキ


曙  「何してるのよ、潮。」


潮  「真宵ちゃんにね。お手紙を書いてるの。」フフッ


曙  「ふーん。あんたも物好きね。あんな筋肉達磨の何処がいいのやら。」


潮  「真宵ちゃんは善い人だよ?」


曙  「知ってる。で、どんな恋文を書くつもり?」ニィ


潮  「こっ!恋文!?///」ボンッ


漣  「なんだってぇ!・・・Zzz。」ポスッ


潮  「ち、違うよ。此処に残るって書いてただけだよ。」ヒソヒソ


曙  「は?そんなの当たり前じゃない。何の為に此処まで来たと思ってるのよ。」ヒソヒソ


潮  「そ、それは・・・。」アハハ


曙  「ま、いいわ。で?どうして残ろうと思ったの?」


潮  「・・・笑わない?」


曙  「何よ。笑うような理由なわけ?」


エットネ・・・



本当に今更気づいたこと。


南方戦「・・・。」


黒霧茜「・・・。」


南方戦「なんで時雨じゃないのよ。」


黒霧茜「三隈の治療で疲れたようだ。ぐっすり眠っている。」


南方戦「あんの莫迦っ。」ギリッ


黒霧茜「何、心配は要らん。貴様に話すべきことは時雨からしかと聞かされているからな。」フフン


南方戦「つまり、それ以外の話はできないってことでしょ。」ハァ


黒霧茜「・・・そうだな。」シュン


南方戦「いいわよ。義姉さんが闘いに特化した女だってことは承知してるから。」


黒霧茜「私がいつ貴様の姉になったのだ。」ウン?


南方戦「アンタの弟と結婚してるんだから義理の姉妹でしょうが。」ナニイッテルノヨ


黒霧茜「・・・。」ハッ


黒霧茜「お前は私の義妹なのか!」


南方戦「今頃気づいたの!?」


黒霧茜「ということは、私には幾人もの義妹達が・・・。」ナント


南方戦「その話はやめて。さっさと本題に入るわよ、忘れる前にね。」


黒霧茜「・・・莫迦にしてないか?」ムッ


南方戦「気の所為よ。」


黒霧茜「まぁ、いい。時雨が言うには、時雨に間宮と近しい気を感じるらしい。時雨自身も確信があるわけではないようだがな。」


南方戦「時雨が多くてわかりづらいわ。時雨がなんですって?そもそも、時雨ってどっちの時雨よ。」


黒霧茜「私に訊くな。私はただ、時雨の言葉をそのまま伝えただけなのでな。」


南方戦「使えない。」ボソッ


黒霧茜「聞こえたぞ。」


南方戦「聞き流してもらえると助かるわ。で、結局あの娘の中に間宮の魂が入ってるってことでいいのかしら?」


黒霧茜「さぁな。だが、時雨は"近しい気"と言った。記憶が曖昧だからなのかは知らんが、少なくとも今は間宮でなく時雨なのだろう。」


南方戦「ってことは、今のところ何とも言えないわけね。」


黒霧茜「そういうことだ。」


南方戦「・・・。」


黒霧茜「・・・。」


南方戦「もう帰っていいわよ?」


黒霧茜「私と寝るのは嫌か?」


南方戦「嫌に決まってるじゃない・・・。」


黒霧茜「寂しいことを言うな、義妹よ。」


南方戦「どうしたのよ。ワタシ達、今までそんな距離感じゃなかったでしょ?」


黒霧茜「いやな。昔から私は時雨と共に眠っていただろう?」


南方戦「知らないわよ。」


黒霧茜「時雨には抱き付き癖があってな。毎晩、彼奴に抱き付かれながら寝ていたのだ。」


南方戦「それは知ってる。緊張で睡魔も吹っ飛んだワタシを胸に抱きながら寝息を立てるアイツにイライラしたのをはっきり憶えてるわ。」


黒霧茜「だからな・・・。私も、誰かに抱き付かれながらでないと、眠れなくなってしまったのだ。」


南方戦「は?」


黒霧茜「義妹よ。義姉を助けると思って、この胸に飛び込んでこい。」バッ


南方戦「やーよ。子供部屋にでも行けば?」


黒霧茜「・・・。」


スクッ スタスタ


黒霧茜「邪魔したな。」バタム


南方戦「ウチの連中は莫迦ばっかりね。」ハァ



夏が暑いと冬は寒いだぁね。


雷  「Zzz」グガー


夕立 「Zzz」スピー


時雨 「」ムクリ


ガチャッ ソローリ


三隈 「何処に行きますの?」


時雨 「」ビックゥ


三隈 「今、何時だと思ってますの?2時ですのよ?温和しく寝てくださいまし。」


時雨 「君こそ、こんな時間まで何してるのさ。」


三隈 「見張りですの。」


時雨 「そっか・・・。じゃあ、ちょっとついてきてよ。行きたい場所があるんだ。」タッ


三隈 「あ、こら!自分の立場わかってますの!?勝手に動き回らないでくださいな!」


・・・


三隈 「なんですの?これは。」


時雨 「ん~。隠し階段?」ガコッ


三隈 「此処へ来て一ヶ月経つ三隈が知らないことを、どうして貴女が知ってますの?」


時雨 「さぁ?どうしてだろうね。」フフッ


三隈 「はぁ?」


時雨 「ボクにもわからないんだ。どうしてこんなことを知っているのか。だけど・・・何て言うかな。」


時雨 「微かに、残ってるんだ。此処で過ごした記憶が・・・。」


三隈 「そうですの・・・ん?此処で過ごした?」


時雨 「この先に行けば、何かがわかる。そんな気がするんだ。」


三隈 「・・・仕方ないですわね。私もお供してさしあげますの。色々と突っ込みたいこともありますが、訊かないであげますの。」


時雨 「ありがとう、三隈さん。気を遣ってくれて。」ニコリ


三隈 「ただし、条件がありますの。」


時雨 「条件?」


三隈 「ええ・・・。その、手を繋いでいてくださいまし。///」モジモジ


時雨 「手を?なんで?」


三隈 「・・・すの。」ボソボソ


時雨 「ごめん。聞こえなかった。」ナンテ?


三隈 「だからっ!」


???「うふふふふふ!」ユラァ


ヒヤァァァ!!


三隈 「な、なんですの!?」ヒシッ


時雨 「三隈さん・・・痛い。」


???「あはは。相変わらずのビビりっぷりだね~、みっちゃん。」


三隈 「なんだ、もがみんですの。もう!驚かせないでくださいまし!」ムゥ


最上 「いや~。偶々通りかかったらお化け屋敷が苦手なんて話をしてるところだったからさ、つい。」エヘヘ


三隈 「心臓が止まるかと思いましたの。というか、しれっとバラさないでくださいまし!」


時雨 「偶々・・・ね。」


最上 「さっ、この先に行くんでしょ?ボクもお供しちゃうよ!」フフン


時雨 「そうだ。懐中電灯とかあったりするかな。」


三隈 「持ってませんの。」


最上 「君こそ用意してなかったの?」


時雨 「うん。」


三隈 「ということは・・・。」


最上 「明かり無しで地下探検か。」


三隈 「部屋に戻らせていただきますの。」クルッ


最上 「今更帰るとかなしだよ~。」ガシッ


三隈 「嫌ですの!真っ暗は恐いですの!クロさんが隣りに居てくれるなら頑張りますのぉ!」グググ


最上 「最近のみっちゃんはほんとに好意を隠さないね。尊敬するよ。」


時雨 「先に行ってるね。」スタスタ


三隈 「待ちますの!まだ、心の準備が・・・。」


最上 「問答無用。」ズリズリ


アァァァァ!



忘れていたわけではない。


カツーン カツーン


最上 「いいねぇ。雰囲気があるよ。な~んにも見えないけど。」


三隈 「もがみん、手を離さないでくださいまし。」フルフル


最上 「え?みっちゃん・・・誰の手を握ってるの?」


三隈 「」ピシィ


三隈 「し、時雨さん・・・ですの?」フルエゴエ


時雨 「ボクはこっちだよ。」フフッ


三隈 「じ、じゃあ・・・この手は・・・。」アオザメ


最上 「ボクでした~。」アハハ


三隈 「」ブチィ


三隈 「ぶちくらわすぞ、貴様ぁ!!」


最上 「そんな言葉遣いをしてはいけませんよ?お・じょ・う・さ・ま。」ニヒヒ


三隈 「このこのこのこのこのぉ!」ポカポカ


最上 「はっはっはー。装甲が強化されたボクには効かないなぁ。」


時雨 「仲が良いんだね。」


三隈 「」ピタッ


最上 「ん?」


時雨 「あ、あれ?ボク、また地雷踏んじゃった?」オロオロ


三隈 「何か、聞こえますのっ。」ヒシッ


最上 「ええ?何も聞こえないよ?時雨ちゃん、聞こえる?」


時雨 「ううん。何も聞こえないよ。」


・・・コ


三隈 「またっ!」ビクビク


最上 「え~?」


・・・ドコ


三隈 「ほらぁ!!」


最上 「あー。」アハハ


時雨 「ボク、聞こえちゃったかも・・・。」サー


???「出口は何処なのぉ!!」ガシッ


三隈 「ひやぁぁぁぁ!!」


時雨 「うわぁぁぁぁ!」


???「にいさまぁ・・・どこぉ・・・。」ウアァ


最上 「・・・神命ちゃん?」


神命 「うん・・・。そうだよぉ。」グスッ


最上 「見ないと思ったらこんな所に居たんだ・・・。て、一ヶ月も居たの!?」


神命 「お腹すいたぁ。兄様のご飯が食べたいぃ。」グゥ~


最上 「この一月の間どうしてたの?」


神命 「それは訊かないでぇ。」ウゥ


最上 「・・・一旦帰ろっか、みっちゃ・・・みっちゃん?」アレ?


三隈雨「」チーン


最上 「暗くて見えないけど、気絶してるんだろうなぁ。運ぶほうの身にもなってよ、まったく。」ハァ



人生初の雪掻きをしましてよ。


最上 「やっと出られたよ。あ~疲れた。」ヘタッ


チュンチュンチュン チュチュンガチュン オレノツバサニヨイナチュン


最上 「もう朝じゃん・・・。軽い気持ちで付き合うんじゃなかった。」ゲッソリ


三隈雨「Zzz」スピー


神命 「兄様・・・。」ムニャムニャ


最上 「神命ちゃんも寝ちゃってるし・・・。ボク、頑張ったよね?」ハハッ


黒霧 「お疲れ、最上。」


最上 「クロさ~ん、どうして此処に?ってのは置いといて。後よろしく~。」ポテッ


Zzz


黒霧 「了解。ゆっくりお休み。どうせ今日は訓練になりそうもないからさ。」チラッ


窓< ギンセカイ


黒霧 「五月に大雪とはね・・・。この世界も狂い始めたかな。」トオイメ


・・・


漣  「雪だー!」


朧  「皐月だー!」


漣・朧「なんじゃこりゃー!」ウオー


曙  「さっむ。」ブルッ


潮  「どうしよう。半袖しか持ってないよ?」


曙  「借りたらいいじゃない。」


集積姫「残念でした~。深海棲艦に夏服も冬服もありましぇ~ん。」ニヒッ


曙  「」イラッ


南方戦「大丈夫よ。ワタシとあのひとが作ってあげるから。」


潮  「ほんと?」


南方戦「どうせ五月雨の分を作らないとだから。ついでよ、ついで。」


潮  「やった!ありがとう、南さん!」キラキラ


南方戦「・・・どういたしまして。///」フンッ


蓮華 「子供相手に赤面する大人とは如何なものか。」ハッ


南方戦「なんですって?」ギラッ


蓮華 「いつかお姉ちゃんにも言われただろう。大人の余裕を持て、と。」フッ


南方戦「今日は普段通りのアンタみたいね。大人をからかうと痛い目見るわよ?」


ボスッ アタッ


南方戦「・・・誰かしらぁ?ワタシに雪玉をぶつけたのはぁ。」ニコニコ


ゴスッ サクッ イッタァ!


南方戦「氷柱仕込みやがったわねぇ!上等よ、徹底的に相手してやるわ!かかってきなさい、五月雨ぇ!」ウガー


五月雨「私ですか!?」


南方戦「アンタしか居ないでしょうが!」ブンッ


ボゴッ ブベッ


五月雨「南ちゃん、これは最早雪玉じゃなくて雪達磨ですよ?」フフフ


五月雨「おらぁ!子供の団結力舐めんなよ!レーちゃん、ヲーちゃん、蓮華ちゃん!やりますよぉ!」フンガー


レヲ級「お(ヲ)ー!!」


蓮華 「仕方ないな。」フッ


ウリャー! ノワァー!


漣  「さっき、氷柱入りの雪玉投げたのって・・・。」


朧  「ちっちゃいヲ級ちゃんなのね。」


漣・朧「恐ろしい娘っ!」



だってお姉ちゃんだもの。


曙  「・・・あほらし。」ハッ


曙  「私は部屋に戻るわ。寒いし。」トテトテ


ボスッ パラパラ


曙  「さ~ざ~な~み~!」ゴゴゴ


潮  「ひぅっ!」ビクッ


曙  「え?・・・潮?」


潮  「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・。」フルフル


漣  「あ~あ。紫苑ちゃんが姫百合泣かした~。」


朧  「みーちゃった みーちゃった せーんせいにゆっちゃーろ」


曙  「え!?あ、いや、その・・・。」ワタワタ


曙  「わー。雪合戦したいなー。」アハハー


潮  「いいの!?」キラキラ


曙  「勿論いいに決まってるじゃなーい。さっ、あんた達も・・・。」ブフッ


漣  「ぼのたん、戦場には試合開始の合図なんて無いんだぜ?」キリッ


朧  「契機なんて、所詮後付け。」キリリッ


曙  「潮・・・。氷柱、取ってきてくれない。」


潮  「氷柱?雪達磨にでも使うの?」


曙  「何言ってるのよ。雪玉に仕込むために決まってるじゃない。」ウフフ


潮  「紫苑ちゃん・・・?」ヒッ


曙  「大丈夫。氷柱如きで艦娘は死にゃしないわよ。ちょっと痛い思いをするだけ・・・。」


曙  「全力で殺す。」オォォ


潮  「言ってることが全然違うよ!?」


漣・朧「キルミーベイベー!!」ヒャッハー


曙  「くらえやぁ!」フンッ


ヒューン ポテッ


漣朧曙「・・・。」


漣  「届いてねぇし!」クワッ


朧  「流石はハンドボール投げのマイナス記録保持者!」クワッ


曙  「」グスッ


漣  「あ・・・やべっ。」


曙  「おうちかえるぅ~!!」ビェェ


朧  「おーう。」


ヒュゴッ バチコーン イギャッ


曙  「ふぇ?」パチクリ


漣  「あたたた。」ムクリ


朧  「容赦無い・・・。」オゥ


潮  「虐めは駄目だよ。」ムン


潮  「紫苑ちゃんも泣いてないで、一緒に悪い娘を懲らしめるよ!」フンスッ


曙  「・・・うん。」クシクシ


曙  「やってやるわ!」


漣  「あらら~。姫姉が覚醒しちゃったよ。どうする?撫子。」


朧  「我らに後退はない。ただ眼前の敵を討ち果たすのみ。」フッ


漣  「だよね~。いっちょ派手にやりますかぁ!」ニシシ


漣・朧「勝負だ!胸も背丈も凸凹コンビ!」


曙  「これから成長予定じゃ!ボケなす共!」


潮  「え?艦娘になったら成長はとま・・・。」


曙  「言うなぁ!」ブワッ


漣  「ぼのたんには雪玉より言霊だぁね。」


朧  「間違いない。」ウム



惹かれる理由付けはしっかりしたいが難しい。


ワーワー ギャーギャー


黒霧 「子供は元気が一番だね。」フフッ


集積姫「ひとり、違うのが交じってるけどね~。」ウフフ


黒霧 「似たようなものでしょ?」


集積姫「それ、南方ちゃんが聞いたら泣くわよ?」


黒霧 「俄然聞かせたくなった。」


集積姫「あんたはそうだったわね、ったく。しーちゃんの嫁は大変だわ。」


黒霧 「自分も立候補してたくせに。」


集積姫「"してた"じゃなくて"してる"の。早く貰ってくれないかしら?」


黒霧 「い・や・だ。」ニコリ


集積姫「なんでよ~。自分で言うのもだけど、わたし結構いい女よ?」ウフッ


黒霧 「知ってるよ。料理が上手で、一途で、欲望に忠実な割に初心で、綺麗で、細かな気遣いもできて・・・。」


黒霧 「そして何より、君の愛は本物だ。」フフ


集積姫「ま、まさかそんな返しが来るとは思わなかったわ。///」シュー


黒霧 「何年一緒に居ると思ってるのさ。夜の為に体力づくりをしてることも知ってるくらいだよ?」


集積姫「あんた、わたしのこと好き過ぎるでしょ。なんでそんなことまで知ってるのよ。」


黒霧 「だって大好きだもの。若し結婚なんてしようものなら、君を壊してしまいかねないくらいに・・・ね。」ニィ


集積姫「ふ~ん。」


パァァ


紫苑茜「いいわよ?しーちゃんの暗い部分も含めて全部、このわたしが受け止めてあげる。」オイデ


黒霧 「まぁ、冗談なんだけどさ。」フイッ


紫苑茜「莫迦ね。あんたがわたしのことをよく知ってるように、わたしはあんたのことをよく理解してるの。」


紫苑茜「あーちゃんが嫌いな嘘やら冗談やらを、しーちゃんが言うわけないでしょ?」フフッ


黒霧 「ばれたか。茜姉さんには敵わないな。」フッ


紫苑茜「もういいでしょ?わたしは充分待ったわよ?いい加減、わたしを貰ってちょうだ・・・。」


レ級 「母ちゃん?」


紫苑茜「い。」ゲッ


レ級 「どうしたんだ?その姿。特殊メイクか?」ヨクデキテンナ


紫苑茜「人違いじゃないかしら~。」ダラダラ


レ級 「はぁ?俺が母ちゃんを見間違えるはずねぇだろ?」ナニイッテンダ


レ級 「ああ。そっか、母ちゃんも魔族なんだな!あれだろ。自在に姿を変える能力でもあんだろ!」ニシシ


紫苑茜「なんでこういうときだけ勘が良いのよ、あんたは。」ハァ


黒霧 「正確には分子変換だけどね。それで何か御用かな?」


レ級 「いやー。南姉が思った以上にマジになっててさ。どうにかしてくれよ、父ちゃん。飼い主だろ?」


黒霧 「それは大変だ。すぐに行って宥めなければ。」


紫苑茜「おーい。逃げるなー。」


黒霧 「この際だからはっきり言うけど、黒霧に永遠の誓いなんて概念は無い。従って、僕が生涯の伴侶を選ぶこともない。」


紫苑茜「だったら南方ちゃんは何なのよ。あんた達結婚してるじゃないの。」


黒霧 「南には寿命があるでしょ?クゥの加護を受けた僕達には無い"限り"がさ。」


紫苑茜「ただの屁理屈じゃない!」


黒霧 「僕はひとりしか愛せない。その人が生きている限り・・・ね。」ニコリ


紫苑茜「納得いかないわ!」ウガー


レ級 「よくわかんねぇけど、早く行こうぜ。割とマジで洒落にならねぇ状況だからさ。」クイッ


黒霧 「まったく南は・・・もう少し大人らしくできないのかな。」ヤレヤレ



ちょっと箸休め。


パオラ「パオラです・・・。一番最初に再登場するかと思いきや、一番最後になったとです。」


パオラ「紫苑ちゃんは未だしも、紅蓮より遅いのは納得いきません!」


パオラ「パオラです・・・パオラです・・・パオラです・・・。」


大鳳 「ノリノリですね。」


パオラ「いや、だからあたしはクールビューティー枠なんだけど?」


大鳳 「知ってますか?クールビューティー枠と書いてキャラ崩壊枠と読むんですよ?」ウフフ


パオラ「んなわけあるか。」


大鳳 「長門さん。」


パオラ「」ウグッ


大鳳 「加賀さん。」


パオラ「大食らいなら大鳳もでしょ?」


大鳳 「私は普通です。」


パオラ「あんたこの前赤城といいしょう・・・。」


大鳳 「普通です。」ニコニコ


パオラ「・・・そうね。」


大鳳 「後は、ユーちゃんとかでしょうか。」ウーン


パオラ「あれは最早別の生物よ。」


大鳳 「それで今回は何のお話ですか?」


パオラ「あら。もう本題に行くの?もう少し駄弁りましょうよ。」


大鳳 「パルちゃんの世間話はつまらないですから。」フフッ


パオラ「辛辣~。」


大鳳 「今回のお題は!」


パオラ「時雨の歴代奥様について!」


ハッジマッルヨー!!


パオラ「つられちゃったじゃない。」


大鳳 「パルちゃんも案外チョロいですね。」



書類仕事と現場仕事ではつらさの質が違う。


大鳳 「歴代の奥様と言いますが、時雨さんはバツ付きなのですか?」


パオラ「バツ付きと言うか、未亡人?少なくとも離婚はしてないわ。」


大鳳 「これまでの奥様全員がですか?それは最早呪いなのでは・・・。」


パオラ「そうね~。寿命という終わりが無いってのも、ある意味呪いなのかも知れないわね。」


大鳳 「なるほど。そういうことでしたか。」


パオラ「それに歴史の正導が完了したら、あたし達は元の世界に帰らないといけないし・・・。」ボソッ


ガシッ ン?


蒼龍 「帰っちゃ嫌だよ!パルちゃん!」ウルウル


飛龍 「私は寧ろ帰ってほしいわ。」


パオラ「対照的ね、あんた達。というかなんで居るのよ。」


???「私はパルちゃんに帰られると困ってしまいます。」


パオラ「赤城まで・・・。」


赤城 「貴女が居なくなってしまったら、誰がパラオ泊地を管理するのですか?」ウフフ


パオラ「それは勿論、あか・・・。」


赤城 「嫌です。」ニコニコ


パオラ「そこをなんとか。」


赤城 「嫌です。貴女達が遠征に行っている間、私がどれだけ苦しい思いをしたか。よくご存知でしょう?」ニコニコ


パオラ「あー。」ハハッ


赤城 「貴女が、溜めに溜めた、書類を、全て、私に、押し付けて、逃げたから!」ウフフフフ


パオラ「ごめんちゃい。」テヘッ


赤城 「お覚悟を。」スッ


大鳳 「赤城さん?それ、本物の矢・・・。」サー


バシュッ アブナッ


パオラ「ちょっと!中たったら怪我しちゃうじゃない!」


蒼龍 「怪我じゃ済まないよ・・・普通。」


赤城 「ちょこまかと。」チッ


パオラ「あったまきた!あんたがその気ならいいわよ。かかってきなさい!全部撃ち落としてやるわっ!」バッ


ハァァァァ!


蒼龍 「弓矢で弓矢を撃ち落としてる・・・。」ハヘー


飛龍 「ほんと莫迦。」



雪解け 間近の~♪


ゼェ ハァ


赤城 「流石ですね、パルちゃん。まさか本当に全部撃ち落とされるとは思いませんでした。」フッ


パオラ「伊達に長生きしてないっての。あんた達とあたしとじゃ、経験値が違うわ。」フフン


赤城 「やはり、お婆さんには敵いませんね。」ハァ


パオラ「心も体もまだまだ若いわ!」


ハイハイ カルクナガスナ!


大鳳 「パルちゃん。また話が脱線してますよ。」モウ


パオラ「え?ああ、そうね。で、何の話だっけ?」


蒼龍 「時雨さんのお嫁さんの話!」クワッ


パオラ「・・・あたしが帰るって話は?」


飛龍 「どうでもいい。」


蒼龍 「パルちゃんより時雨さん。」ムフー


パオラ「薄情ね、あんた達。」


・・・


パオラ「気を取り直して、時雨には沢山嫁がいます。以上。」


蒼龍 「それだけ!?」


飛龍 「何股してるのよ。」


パオラ「これだけ聞くとただの屑野郎よね、あの子。」


大鳳 「時雨さんはそんな人じゃありません!」ズイッ


パオラ「大鳳、理想と現実は往々にして乖離しているものよ。」ポンッ


大鳳 「そんなっ!?」ガーン


赤城 「こら。純朴少女をからかってはいけません。」


パオラ「へーい。」


大鳳 「よかった。やっぱり時雨さんはそんな人じゃないですよね。」ホッ


赤城 「ええ、そうですよ。あんな瞳をした人が誰かを愛せるはずありません。」


大鳳 「」マッシロ


パオラ「訂正して悪化したんじゃ世話ないわね。」


赤城 「私は事実を言ったまでです。」


飛龍 「ちょっと、こっちまで流れ弾が来てるんだけど。」


蒼龍 「・・・はは。」ポヘー


飛龍 「どう収集つけるのよ、これ。」



パラオ泊地編:第弐幕~了~


パオラ「まずは正しい情報に訂正しないとね。」


パオラ「訂正その壱。時雨は何か特別な理由でもない限り、同時に複数の女性と関係を持つことはありません。」


飛龍 「でも、沢山嫁がいるんでしょ?」


パオラ「時期は被ってないから。」


飛龍 「あっそ。」


パオラ「訂正その弐。時雨はちゃんと人を愛せます。」


赤城 「嘘ですね。」


パオラ「真実よ。偽りの愛であの間宮を堕とせるわけないでしょ?」


赤城 「それは・・・。」グッ


パオラ「そして新情報。時雨が嫁にする女性の特徴は。」


大蒼龍「特徴は!?」フッカツ


飛龍 「単純な娘達だこと。羨ましいわ。」ハッ


パオラ「時雨より年下であること。」


大鳳 「時雨さんって幾つなんですか!?」ズイッ


蒼龍 「待って!私って何歳になるの!?」ズズイッ


飛龍 「知らないわよ。」


パオラ「大丈夫よ。あの子割と適当なところあるから。自分の歳も憶えてないみたいだし。あんた達は守備範囲内よ。」


大蒼龍「いよしっ!」グッ


パオラ「赤城は守備範囲外ね。」


赤城 「訊いてませんが。」イラッ


飛龍 「なんで赤城は駄目なのよ。」


パオラ「お姉ちゃんぽいから。」


赤城 「ちょっと遠征してきますね。」クルッ


大鳳 「駄目です!うちにそんな余裕はありません!」ガシッ


赤城 「放してください、大鳳さん。好意を抱いているわけでもない人にそんな理由でフラれただなんて・・・。」グググ


赤城 「一発撃ち込まないと気が収まりません!告白する予定もないというのに!」カッ


大鳳 「蒼龍さん!手伝ってください!」


蒼龍 「うん!赤城さん、落ち着いて!」


キェェェェ!


飛龍 「彼、年上には興味ないのね。」


パオラ「嗜虐心の対象にはなるみたいだけどね。これも紫苑の呪いが原因よ。」


飛龍 「呪い?」


パオラ「そっ。"お姉ちゃんが傍に居ないと駄目になる呪い"。これの所為で時雨が姉と認識した女性は自動的に恋愛対象から外れるの。」


パオラ「実の姉である茜、姉代わりのあたし、そしてこの呪いを掛けた張本人とか。その他お姉さん属性のある女性がね。」


飛龍 「莫迦みたいな呪いね。」


パオラ「そりゃそうよ。呪いを掛けた奴が莫迦なんだもの。折角頭は良いのにさ。」


・・・


紫苑茜「」ヘブシッ


黒霧 「・・・風邪?」


紫苑茜「温もりが足りないわ。そう、愛という温もりが!」ズビッ


黒霧 「はいはい、ご愁傷様。」


紫苑茜「もっと構え~。」ムゥ



訓練どころではない訓練基地の現状。


ウラァ! ヘバッ


五月雨「くっそ。あんつー威力、射程、精度ですか。」バケモノメ


南方戦「あらあら。得意の回避も陸上じゃ形無しねぇ、五月雨。」ニタァ


五月雨「頭に身体がついてこないですね~。急に歳食った気分ですよ、まったく。」チッ


ヲ級 「避けられないなら撃ち落とせばいいの。ヲーちゃんにお任せなの。」ムン


五月雨「頼みますよ、ヲーちゃん。お姉ちゃんは相打ち覚悟で突っ込むので。」ニィ


ヲ級 「投げ合いはしないの?」ヲ?


五月雨「ヲーちゃん、お姉ちゃんは砲撃が苦手です。」ニッコリ


ヲ級 「そうだったの。すっかり忘れてたの。」


南方戦「作戦会議は終わったかしら~?」


五月雨「さて、南ちゃんを待たせるのも悪いですし。行きますよ!ヲーちゃん!」ダッ


ヲ級 「なの!艦載機、発艦!」シュバッ


南方戦「へぇ、艦載機を盾に使うとはね。面白いじゃないの。」ニタァ


南方戦「だったら、雪玉なんて小賢しいものは意味ないわねぇ!これでどうかしら!」ズァッ


五月雨「でっか!直径何メートルあるんですか、それぇ!というか、いつ作ったんですか!」ゲェッ


ヲ級 「ヲー。これは逃げの一択なの。五月雨お姉ちゃんの健闘を祈るの。」スタコラー


南方戦「アハハハ!潰れなさい、五月雨ぇ!」ブンッ


五月雨「なんのぉ!私の大鎌は棒高跳びの要領で高く跳べるんですよ!」ブゥン


シュバッ


五月雨「私を潰したいなら、山でも投げることですね!」ハッハー


南方戦「やるじゃない。でも、着地はどうするつもりなのかしら?」ニヤッ


五月雨「あ。」


カンガエテナカッタァァァァ! ゴシャッ


南方戦「ざまぁないわね。」フフッ


五月雨「ぐっぞぉぉ。」ウゥ


ヲーチャンアブネェ!!


ヲ級 「ヲ?」


超雪玉< ズォォォォ


ヲ級 「ヲヲヲヲ!!」


五月南「ヲーちゃん!」


シュンッ


黒霧 「原初に帰せ。」


シュパァッ


五月雨「おお。あの雪達磨が黒い霧に・・・。」


南方戦「よかった。」ヘタッ


紫苑茜「よかった、じゃないわよ!わたしの愛娘に大怪我させるところだったのよ!五月雨ならまだしもヲーちゃんに!」


五月雨「私はいいんですかぁ!?」エエ!


南方戦「すみませんでした・・・。」ドゲザ


紫苑茜「まったくもう。気をつけなさいよ?」


五月雨「というか、どちら様でしょうか。」ダレ?


紫苑茜「あんたの母親よ。」


五月雨「・・・イメチェンですか?お胸も益々ご立派になられて。」ジー


紫苑茜「まぁ、似たようなものね。て、何処見てんのよ。」


南方戦「ワタシより大きいじゃないの。」


紫苑茜「そうよ?これで南方ちゃんがわたしに勝ってる要素は無くなったってわけ。」フフン


南方戦「・・・。」


五月雨「大丈夫ですよ。お母さんは喧嘩が弱いですから、力では勝てます。」


南方戦「喧嘩だけの女って、どうなの?」


五月雨「ヲーちゃんの様子を見てきますね~。」スタコラー


南方戦「ねぇ、どうなの?」


紫苑茜「わたしにフォローを求めないでよ。」


南方戦「どうなのよ・・・。」グスッ


紫苑茜「ああ・・・もう。しーちゃぁん!嫁がナイーブになってるわよぉ!慰めてあげて!」



今日、恋を始めます。


黒霧 「怪我は無いかな?ヲ級。」


ヲ級 「死ぬかと思ったの。でも大丈夫なの!」ニパッ


黒霧 「そう。よかった。」フフッ


シーチャァン!


ヲ級 「お母さんが呼んでるの。」


黒霧 「レ級もヲ級も、よくあれが自分のお母さんだってわかったね。」


レ級 「なんつーか、雰囲気?」


ヲ級 「ヲーちゃんは胸で判断してるの。」


レ級 「マジか・・・。」エェ


黒霧 「あはは・・・。レ級、ヲ級のことは任せたよ。」


レ級 「おう。南姉のことは任せたぜ。」ニヒッ


黒霧 「行ってくる。」タッ


イッテラッシャーイ


レ級 「さっきの冗談だよな・・・?」


ヲ級 「この距離で判断するにはそれが一番なの。」


レ級 「じゃあ、近くだったら?」


ヲ級 「・・・おっぱいなの。」キリッ


レ級 「言い換えただけじゃねぇか。」ダメダコリャ


・・・


黒霧 「どうしたの?」


紫苑茜「見てのとおりよ。」


南方戦「時雨に捨てられるぅ。」ヒグッ


黒霧 「ごめん。全然状況が飲み込めない。」


五月雨「かくかくしかじか、です。」


南方戦「所詮ワタシじゃ、釣り合いが取れないのよぉ。」ウァァ


黒霧 「ああ。大体わかったかも。」


五月雨「マジですか・・・。」スゲェ


黒霧 「茜姉さんは七駆の様子を見てきてよ。」


紫苑茜「なんでわたしが。五月雨でいいじゃない。」


黒霧 「此処に居たら、多分茜姉さんが泣くことになるからさ。」


紫苑茜「行ってくるわ。」サッ


南方戦「喧嘩だけの女に、時雨の横に居る資格なんて・・・。」ブツブツ


黒霧 「ねぇ、南。僕達はどっちが先に惚れて、関係が始まったんだっけ?」


南方戦「・・・ワタシよ。」グスッ


黒霧 「そうだね。僕は惚れられた側で、君が追いかける側だった。それで?」


南方戦「それで・・・ワタシはアンタを振り向かせたい一心で努力した。」


黒霧 「そう。惚れた側の君は必死で努力した。惚れられた側はいいよね。だって、追いつかれるのをただ待てばいいんだから。」


南方戦「何が言いたいのよ。」


黒霧 「だけど、走ることをやめた者はいつか走り続ける者に追い抜かれる。」


黒霧 「惚れられたはずだったのに、気づけば自分が追いかける側になってしまっている。」


黒霧 「そんな入れ換わりを繰り返してお互いを高め合う。それが恋人の関係だと僕は思う。」


南方戦「・・・懐かしいわね。あの頃を思い出すわ。だけど、ワタシ達は夫婦よ?恋人じゃない。」フフッ


黒霧 「恋人はお互いの良い部分を見る。なら、夫婦は?」


南方戦「悪いところ、かしら?」


黒霧 「君はもう少し落ち着きを持ったほうがいい。蓮華と南は母娘というより姉妹だ。悪い意味でね。」ニコリ


南方戦「なっ!アンタこそ!徒に女を誑かす癖どうにかしなさいよ!自覚してやらかしてることくらい気づいてるんだから!」


南方戦「他にもねぇ!嗜虐的なところとか、自分の弱みを見せないところとか、わざと攻撃を受けて傷をつくるところとか・・・。」


南方戦「不満は尽きないわよ!!」


黒霧 「それだけじゃないでしょ?一番言いたいことが、まだ残ってる。」


南方戦「・・・もっと、ワタシを頼りなさいよ。不安になるじゃない。」バカ


黒霧 「ごめん。君を危険な目に遭わせたくなかったんだ。」ソッ


南方戦「ワタシは深海の鬼よ?心配要らないわよ。」ギュッ


黒霧 「どんなに力を持った者でも死ぬときは死ぬ。そんな場面を僕は幾度となく見てきた。心配しないなんて無理な話だよ。」


南方戦「なら、アンタがワタシを護りなさいよ。ずっと傍に居て。」


黒霧 「そうだね・・・。」フフッ


・・・


黒霧 「さて、僕が君に物申したいことはこれで全部だ。」


南方戦「はぁ?ひとつだけ?」


黒霧 「そう。君の悪いところはひとつだけ。それに較べて僕は?沢山ある。釣り合っていないのは、いったいどっちだろうね。」フフ


南方戦「そ、そんなの・・・黙ってればわからないじゃない・・・。」


黒霧 「僕は君の努力を知ってる。僕を見守ってくれる君の優しさを知ってる。徒に踏み込んでこない君の心遣いを知ってる。」


黒霧 「こんなにも君のことを知っているのに、僕は君の欠点に気づけない。それくらい君に夢中だ。」


南方戦「なっ!・・・なぁっ!///」


黒霧 「僕はまだ君に恋をしている。南のことになるとどうにも自分を抑えられなくてね。少し距離を置いてたんだ。」


黒霧 「でも、もう遠慮しないから。覚悟してね。」フフッ


南方戦「お、お手柔らかに・・・お願いします。///」プシュー


黒霧 「流石にちょっと、照れるね。///」ニコッ


五月雨「これはこれは。今夜にも雪は解けそうですね。」ニマニマ



最近、相撲中継ばかり観ている。


黒霧 「そういえば、蓮華は何処に行ったの?」


五月雨「蓮華ちゃんなら、身体が冷えたとか言ってお風呂に行きましたよ。雪合戦の途中に。」


黒霧 「流石と言うか何と言うか。自由な娘だね。」


五月雨「どっちに似たんでしょうね~。」


黒霧 「僕だろうね。南に似たなら、勝負の最中に抜けるなんてことはしないだろうし。」


五月雨「でしょうね。」


黒霧 「さぁ、レ級とヲ級を連れておいで。僕達も身体を温めに行こう。」


五月雨「あいあいさ~。」タッ


黒霧 「南、手を・・・。」スッ


南方戦「・・・うん。」ソッ


黒霧 「こうやって手を繋ぐのは初めてだよね。」


南方戦「そうね。」フフ


黒霧 「折角だから恋人繋ぎにしようか。」


南方戦「うぇ!?///」


黒霧 「嫌とは言わせないよ。」ギュッ


南方戦「///」カァァ


五月雨「アツアツですね~。」ニヨニヨ


レ級 「それはいいんだけどよ。こう見せつけられるとなぁ。」


ヲ級 「鬱陶しいの。」ムッ


五月雨「みんなお父さんが大好きなんですね~。そんなふたりに朗報です。お父さんの右手はまだ空いてますよ?」ムフッ


レ級 「よっしゃ!俺がもらっ。」


ヲ級 「」シュバッ


レ級 「あ!待て!ヲーちゃん!父ちゃんの右手は俺が貰う!」ダッ


五月雨「それでは私は南ちゃんの左手でも貰いましょうかね~。」ユッタリ



Let's 爆裂!


漣  「澪ちゃんの~ダイナみぃ!」テヤッ


キャッ


潮  「やったな~。」ソリャッ


ヘブァッ


朧  「ひとりだけ、威力がおかしいのね・・・。」ドサッ


漣  「撫子ぉ!俺をひとりにしないでくれぇ!」


チクショー モーモーイワシテヤルゥ! フエェッ!


曙  「私の腕力じゃあ射程は精々1メートル。それに雪玉の威力はたかが知れてる・・・。」ブツブツ


曙  「限界まで押し固めたら、氷になったりしないかしら?なんて・・・。」ムギュッ


パァァ ウワッ!


氷塊< 狙いは漣でっか?


曙  「な、何よ・・・これ。」フルフル


紫苑茜「あんた・・・。」


曙  「あっ。えっと・・・阿婆擦れの。」ナンダッケ


紫苑茜「はったおすわよ?」


曙  「冗談よ。紫苑でしょ?同じ名前だもの。嫌でも覚えるわ。」


紫苑茜「んなこたどうでもいいのよ。ちょっと来なさい。話があるわ。」グイッ


曙  「痛っ!ちょっと!持ち方考えなさいよ!肩外れたらどうするのよ!」


ハナシヲキケェ!!


漣  「マウントポッジショ~ン。」ニヤァ


潮  「いやぁ・・・。」フルフル


漣  「さ~て。どんなすんごい目に遭ってもらおうかな~。」グフフ


朧  「ちゃん澪、ちゃん澪。また紫苑ちゃんが拐かされてった。」


漣  「またっすか。人気者ですな~。」


潮  「澪ちゃん、退いてよぉ。」ウゥ


漣  「あ~ちょい待ち。もう少しだから。」


潮  「何が!?」


漣  「ナニがって、そんなぁ。///」クネクネ


朧  「恥ずかしくて、い・え・な・い。」ウフッ


潮  「誰か助けてぇ!!」ウワァァン


ヒュゴッ アベシッ


漣  「今のは効いたぜ。」アタタ


朧  「巻き添え・・・。」イタイ


龍驤 「何が巻き添えや。大概共犯やろ、君ら。」


潮  「龍驤さぁん!」ヒシッ


龍驤 「安心し。うちが来たからには、こんバラガキ共の好きにはさせへんからな。」ヨシヨシ


漣  「へっ。上等よぉ。」


漣・朧「止められるもんなら、止めてみな!」ビシッ


龍驤 「ええで。君らが相手なら手加減は要らんなぁ。」ニィ


朧  「撫子的にエマージェンシーコール。」スタコラー


漣  「あ!ちょ、撫子!?」


龍驤 「なんや。君ひとりか?」ン?


漣  「・・・澪ちゃん、大ピンチ。」ハハッ


ウギャァァァ!


朧  「安らかに・・・。」ナムナム



母娘設定にしようか迷ったけどやめた。


曙  「ちょっと、何処連れてく気よ!」


紫苑茜「しーちゃん!神命ちゃん、何処!」


黒霧 「最上の部屋で寝かせてるけど。」


紫苑茜「ありがと!」ジャッ


曙  「いい加減、話を聞けぇ!」ズリズリ


黒霧 「どうしたんだろうね。」


五月雨「さぁ?」つ南の左手


ヲ級 「急ぎの用事なのは確かなの。」つ時雨の右手


レ級 「くっそぉ。」イジイジ


黒霧 「肩車でもしようか?」


レ級 「マジで!?」キラキラ


ヨット


レ級 「むふふ~。」~♪


南方戦「よかったわね。」フフ


レ級 「おう!」ニヒッ


・・・


紫苑茜「神命ちゃん!」バァン


神命 「ふぇ?何~?」フアァ


紫苑茜「魂の鑑定をしてほしいの。」ズイッ


神命 「鑑定~?て、あれ?師匠?確か兄様に斬られて死んだはずじゃ・・・。なんだ夢か~。」ペカー


紫苑茜「夢じゃないわよ!神命ちゃんの分霊でストック作っといたでしょうが!」ガシッ


神命 「ん~?お~そうだった~。お久し振りです、師匠。おやすみなさ~い。」Zzz


バチィン イッタァ!


神命 「おひゃようございます、師匠。」ジンジン


紫苑茜「おはよう。早速、お願いできるかしら。」


神命 「この娘と師匠のですか?それまたどうして・・・。」


紫苑茜「この娘、錬成を使ったのよ。名前も紫苑だし、若しかしたらと思ってね。」


神命 「なるほど。そういうことなら協力しましょう。」ムムム


紫苑茜「・・・どうかしら?」


神命 「そうですね~。この娘が紫苑の血統なのは間違いないかと。」ンー


紫苑茜「やっぱり。」


神命 「・・・これ、言ってもいいのかな。」


紫苑茜「何よ。まだ何かあるの?この際だから言っちゃいなさい。」


神命 「師匠・・・兄様と子供つくりました?」


紫苑茜「つくったわよ?五月雨にレーちゃんにヲーちゃん。」


神命 「いえ、この娘のことです。」


曙  「はぁ?」


紫苑茜「・・・ないわ。こんな捻くれ者がわたしの娘とかないわ。」


曙  「こっちだって願い下げよ!誰があんたみたいな阿婆擦れの娘になるか!」


紫苑茜「阿婆擦れ違うわ!わたしは昔からしーちゃんとあーちゃんの二筋よ!」


曙  「二筋なんて初めて聞いたわ!どっちかに絞りなさいよ!ていうか、あーちゃんは女でしょうが!」


ギャァギャァ


神命 「あー。これは姉妹のほうだったかな?」アハハ



名前の募集はしません。


黒霧 「・・・妹?」


紫苑茜「誠に遺憾ながらね。」


曙  「それはこっちの科白だっての。」フンッ


黒霧 「間違いないの?」


神命 「魂の波長がそっくりだから、かなり近しい血縁者ってことは確実だと思う。」


紫苑茜「わたしの娘はこの3人だけだもの。残る選択肢は妹しかないわ。」


五月雨「どうも壱号です。」


レ級 「弐号だぜ。」ヘヘッ


ヲ級 「参号なの!」


五月雨「3人揃えて!」


五レヲ「かかってこいや 喧嘩上等!」ソリャ!


五レヲ「女の道は喧嘩上等!」ウォイ!


パーパパーパッパッパパー カモォン


蓮華 「喧しいぞ、レ級。そのまま外に放り出されたいか?」ギラッ


レ級 「何故に俺だけ!?」


黒霧 「妹が居るなんて初耳なんだけど?」


紫苑茜「わたしもよ。」


神命 「駄目じゃん、師匠。」エェ


紫苑茜「だって里を出てから連絡とってなかったし、殆ど離縁状態だったし・・・。」


黒霧 「知らない間に妹ができていても不思議ではない・・・か。」


紫苑茜「そういうことよ。」


神命 「でも、それならなんで・・・。」


紫苑茜「そう。なんでこの娘は、此処に居るのか・・・。」


曙  「あによ?私は居ちゃいけないっての?」アァ?


紫苑茜「当たり前でしょ?この世界に魔族は存在しないんだから。」


曙  「それはあんたも同じでしょうが!」


紫苑茜「あんたじゃないわよ!お姉ちゃんと呼びなさい!」


曙  「はっ!あんたなんか莫迦姉で充分よ!ほら、丁度響きが茜に似てるしぃ!」イーダ


紫苑茜「誰が莫迦ですってぇ!少なくともあんたよりは賢いわよ!座学で赤点だらけのあんたよりはっ!」


曙  「今、成績の話は関係ないでしょ!大体、莫迦姉だって私をあんた呼ばわりしてるじゃない!」


紫苑茜「それはあんたに名前が無いからよ!なんで自分の名前も憶えてないのよ!」


曙  「知ったこっちゃないわ!気づいた時には孤児院に居たんだからぁ!」グスッ


曙  「今更・・・遅いのよぉ。ばかぁ。」ウアァ


紫苑茜「・・・。」ダキッ


曙  「おねえちゃぁぁん!」バァァァァ


紫苑茜「名前、考えないとね。」ギュッ


ウアァァァ・・・


漣  「何この状況・・・。」


朧  「風呂場でどんちゃん騒ぎ。私も交ぜろ。」イェー


潮  「撫子ちゃん。今はそういう空気じゃないから。」メッ


龍驤 「取り敢えず身体を温めるのが先や。君らも浸かり。」ホレ


漣  「流石は先輩。このカオスにも全く動じない。その歳のとり方に憧れるぅ。」


龍驤 「漣ぃ。君だけ補給物資の要望訊いたらんからな。」


漣  「あ~ごめんなさい。許してください、おでぇかんさまぁ~。」



名前のストックはもう無い。


紫苑茜「名前は何にしようかしらね~。」ヨシヨシ


曙  「変な名前にしたら許さないから。」


ウーン


黒霧 「春は曙。」


五月雨「やうやう白くなりゆく山ぎわ。」


南方戦「少しあかりて。」


ヲ級 「紫だちたる雲の細くたなびきたる。」


レ級 「・・・続きなんて知らねぇよ!」クワッ


紫苑茜「枕草子ね~。」フム


黒霧 「丁度、曙も紫も入ってることだし。この中から選んだら?」


五月雨「名前っぽいものと言えば・・・。」


レ級 「春だな!」


ヲ級 「細と書いて"ささめ"なの。」


南方戦「あかり。」


紫苑茜「・・・決めた。灯(あかり)にするわ。」


曙  「紫苑 灯。」


紫苑茜「曙のあかりは、明かりほど強くない。だけど確かな温もりのある灯り。」


紫苑茜「貴女は灯火のような優しさと温もりを持つ娘。そうよね?」


曙  「本人に訊かないでよ。恥ずかしいじゃない。///」カァァ


潮  「紫苑ちゃんは優しいよ!」


朧  「仲間の為に何処までも頑張れる!」


漣  「ぼーののツッコミは愛に溢れてるぜ!でもビンタは勘弁な!非力でも結構いてぇのよこれが!」ハッハー


龍驤 「余計なことは言わんでいい。」ドゴッ


漣  「ぐほぁ!う、裏拳はねぇですぜ・・・先輩。」ガクッ


紫苑茜「ぴったりみたいね。」フフッ


曙  「お姉ちゃんのばぁか。///」ウゥ


蓮華 「それにしても、あかりか。よく思いついたな、母上。」


南方戦「ま、まぁね。」ギクッ


黒霧 「大方ふたりめの名前にしようとしてたんでしょ?あかりには"証"の意味もあるから。僕達の"愛の証"ってね。」フフッ


南方戦「なぁ!///」ボンッ


黒霧 「南は片付ける癖をつけないとね。辞書、開きっぱなしだったよ?」


南方戦「普通それだけで気づかないわよ!もう!・・・もう!!///」


蓮華 「待て。妹ができるのか?私に?」オォ


蓮華 「早速名前を考えるぞ!父上!母上!」キラキラ


黒霧 「気が早いよ、蓮華。」アハハ


南方戦(どうしよう。義姉さんに乗せられて名前を考えてただけだなんて・・・言えない!)ダラダラ


黒霧 「蓮華にこう喜ばれたんじゃ、頑張らないわけにはいかないね。」ボソッ


南方戦「そ、そうね。やってやるわ。」ムン



予習の重要性を改めて知った今日この頃。


ンン


時雨 「お酒臭い・・・。」ウッ


雷  「おら~。もっろのめ~。」ウヘヘ


夕立 「Zzz」グガー


時雨 「雷・・・夢の中でも飲んでるのかな。」アハハ


時雨 「っと、取り敢えず換気しないと。」ガラッ


時雨 「ほら、ふたりとも?起きて。もうお昼だよ?」ユサユサ


夕立 「うぅ・・・。揺すらないでぇ。出る・・・。」ウプッ


時雨 「うぇえ!ちょ、ちょっとまっ!」


オロロロロ ウワァァァ!


時雨 「ごめん。夕立が、その・・・大変な迷惑を・・・。」


黒霧 「大丈夫だよ。片付けはすぐに済むから。」フフ


夕立 「まだ気持ち悪いっぽい・・・。」ウゥ


時雨 「これからは外で飲ませないからね。」モウ


夕立 「うえ~。それは勘弁っぽいぃ。」


時雨 「駄目ったら駄目!」


夕立 「そんなぁ。」ポイィ


雷  「む~迎え酒だ~!」ナハハ


時雨 「雷は暫くお酒禁止!」


雷  「・・・私の希望が。」ズーン


時雨 「重いよ!!」


黒霧 「時雨、少しいいかな。」


時雨 「え?いいけど、ボクが目を離すとこのふたりがまた何をしでかすか・・・。」チラッ


雷夕立「えへへ~。」ニコニコ


黒霧 「心配は要らないよ。目付役は頼んであるから。」フフッ


時雨 「そうかい?じゃあ、行くよ。ふたりとも、行儀良くね。」


雷夕立「は~い。」ニコニコ


・・・


雷夕立「」セイザチウ


龍驤 「君ら、外泊許可出とったかなぁ。」ゴゴゴ


雷夕立「いえ、出てません。」ポイ


龍驤 「クロさんからの提案で泊まったならええわ。でも、君らが泊まった理由。何やったっけ?」ジロッ


雷夕立「飲酒により航行不可能と判断されたためです。」ポイ


龍驤 「これは説教が必要やなぁ。」フフフ


雷夕立「ひぃぃ。」ガタガタ


コンカイノセッキョウハナガイデェ!


・・・


時雨 「ふたりの悲鳴が聞こえてくるようだよ。」フフッ


黒霧 「龍驤は顔が広いからね。古参ってこともあるし、指導役には最適さ。」


時雨 「良い薬だよ。ところで、ボクに話って。あの地下施設のことかな?」


黒霧 「まぁ、それ以外に無いよね。」


時雨 「ボクは何も答えられないよ?何も憶えていないから・・・。」


黒霧 「別に話を聞き出そうだなんて考えていないよ。」


時雨 「じゃあ、どうして・・・。」


黒霧 「確かめに行くのさ。あの先に何があるのか。そして、この世界が何処まで歪んでしまっているのか。」


時雨 「世界の、歪み?」


黒霧 「それは追々説明するよ。」ガコッ


黒霧 「さぁ、行こうか。君の秘密を解き明かしに。」



宵闇に生きる者達


時雨 「暗い・・・。」


黒霧 「電気系統は死んでるみたいだね。自爆の影響かな・・・。」


時雨 「君は、この施設を知ってるのかい?ボクの過去については?」


黒霧 「ひとつずつ答えると、この施設の存在自体は知ってる。詳細までは知らないけどね。君の過去についても殆ど知らないかな。」


時雨 「そっか・・・。ところで、この暗闇の中、よく平然と歩を進められるね。」


黒霧 「原初の霧といって、万象の素となる黒い霧を僕は操作できるんだ。これを通じて、壁との距離を測っているのさ。」


時雨 「へぇ。視界零でも関係なしか。いい能力だね。」


黒霧 「御蔭で奇襲に強くなったよ。」フフッ


時雨 「君は奇襲する側でしょ?」


黒霧 「わかる?」


時雨 「わかるよ。さっきから全然足音がしないからさ。そんなんじゃあ、すぐにバレちゃうよ?」


黒霧 「構わないよ。僕は表に出ないタイプの暗殺者だから。」


時雨 「あはは。言っちゃうんだ・・・。」


黒霧 「同類に隠し事は無用さ。君の人差し指、随分と綺麗だね。今にも僕の血管を切り裂いてしまいそうだ。」


時雨 「・・・わかってるなら答えろ。どうして姉さんを殺した。」オォォ


黒霧 「それが彼女の運命だからだよ。人類の滅亡を目論んだ彼女は、同志の裏切りに遭い生涯を終える運命だった。」


時雨 「誰がそんなこと決めた。姉さんの運命は姉さんだけのものだ。」


黒霧 「言われてみれば考えたことなかったな。神は滅んだはずなんだけど・・・。」ウーン


時雨 「巫山戯たことをっ!」シュパッ


黒霧 「いいの?手を離しても。いくら夜目の訓練をしたところで、僅かな光も届かない此処では意味を成さないよ?」


時雨 「構わない。此処までの歩数は憶えている。お前の最期を見届けてから、ゆっくり帰るさ。尤も、見えはしないがな。」ニィ


黒霧 「・・・長瀬 眠。姉・狭霧の影として育てられた海軍の刺客。」


黒霧 「大本営が崩壊した後、何処に消えたのかと思っていたけど・・・流石だね。君は戻ってきた。」


黒霧 「態々、"時雨"に姿を変えて・・・。」フフッ


時雨 「黙れ。温和しく死んでろ。」


黒霧 「死・・・か。僕にとって、それほど近く、また遠い言葉は無いだろうね。」


時雨 「何が言いたい。」


黒霧 「・・・静か過ぎると思わない?」


時雨 「血の滴る音が・・・聞こえない。」ハッ


黒霧 「僕はもう死んでいる。残念だったね。君では、既に終わった運命を終わらせることなんて、できはしない。」


時雨 「貴様っ!」ギリッ


黒霧 「ごめんよ。意地の悪い言い方をしてしまったね。さぁ、行こうか。」スッ


時雨 「くそっ。」チッ


黒霧 「冷静だね。姉の仇と手を繋ぐのは嫌じゃないのかな?」


時雨 「今の私に勝ち目は無い。わかりきったことを一々訊くな。」キザムゾ


黒霧 「少し、話をしようか・・・。」


時雨 「勝手に話してろ。」


黒霧 「じゃあ、遠慮なく。」フフッ



物語は加速する。


黒霧 「世界には、在るべき姿というものがある。人はそれを"歴史"と呼ぶ。」


黒霧 「歴史は人が紡いだものだ、と多くの者が言う。自分の意志で行動した結果だと。確かにそうだ。人は己の意志で行動する。」


黒霧 「だけど、その意志こそが世界によって予め決められていることだとしたら?」


黒霧 「さっき、誰が運命を決めるのかと言ったね。その問いに対する答えは、"世界"だ。」


黒霧 「在るべき姿は世界が決める。創造の神でさえも、所詮は世界の枠組みに囚われた住人でしかない。」


黒霧 「考えてみればわかるはずさ。異世界を含め、全ての世界に共通する存在なんて在りはしないのだから。」


黒霧 「神が在って、世界が在るんじゃない。この世の最上位に君臨するのは、"世界"だ。」


時雨 「姉さんを殺したのは"世界"だとでも言いたいのか?歴史には逆らえないから仕方がないとでも言うつもりか?」


黒霧 「僕はこの世界の住人じゃない。だから、この世界の歴史には縛られない。」


時雨 「だったら!」


黒霧 「そう。僕には間宮を斬らないという選択肢もあった。事実、歴史上では間宮を殺すのは集積のはずだった。」


黒霧 「だけど、歴史が変わると世界に歪みが生じてしまう。五月なのに大雪が降ったのも歪みの一部だ。」


時雨 「それがどうした。その程度の影響ならば姉さんを救ってもよかっただろう!」


黒霧 「本気で言ってる?それ。」


時雨 「本心だ。だが、本気ではない。口に出さずにはいられなかっただけだ。」


黒霧 「この大雪は間宮を殺したのが僕に変わったことによる歪みだ。」


黒霧 「それが本来死ぬはずの人間が生き長らえるなんてことになれば・・・。」


時雨 「世界が崩壊するレベルの歪みが生じる・・・か。」


黒霧 「本末転倒でしょ?」


時雨 「お前が姉さんを斬る選択をした理由はわかった。赦す気など更々無いが、納得はしてやる。」


黒霧 「それはどうも。」


時雨 「で、こんなところに連れてきたのはその話をするためか?大体、いつから私の正体に気づいていた。」


黒霧 「僕の背後をとっておいて気づかれてないつもりだったの?君って意外と抜けてるんだね。」


時雨 「くっ・・・。///」チッ


黒霧 「そもそも、君を此処に連れてきたのは僕の懺悔を聴いてもらうためじゃない。」


時雨 「待て。今までの遣り取りの何処に懺悔の要素があった?」


黒霧 「君、自分がどうやって生まれてきたか。知らないでしょ。」


時雨 「は?そんなの、母から産まれてきたに決まって・・・。」


黒霧 「間宮は母親について何も知らなかった。おかしいよね。君と間宮は歳が離れているというのに・・・。」


黒霧 「姉である彼女が、母親の顔さえ知らないだなんて。」


時雨 「ま、さか・・・。」


黒霧 「その答えは此処にある。このクローン培養研究所に・・・。」


時雨 「嘘だ・・・。」ガクッ


ウソダァァァ!!


???「」ゴポッ



PV数を気にせず更新できる胆力が欲しい。


龍驤 「あぁ~。そこそこ。」クハー


五月雨「龍驤さん、ガチガチですよ?元帥に頼んで休暇でも貰ったらどうですか?」モミモミ


龍驤 「そうしたいのは山々やけど、うちが休んだら誰が此処に物資輸送するんや?」


五月雨「・・・前々から疑問だったんですけど、なんで龍驤さんなんですか?」


龍驤 「何が~?」フゥ


五月雨「態々パラオ泊地から大本営に異動させてまで龍驤さんが担当する意味は?」


龍驤 「ああ、それか。それはな・・・うちも知らん。」


五月雨「なんと・・・。」


龍驤 「よぉ考えてみぃ。うちが輸送担当になったとき、元帥はまだ真宵になっとらんかったやろ?」


五月雨「そういえばそうですね。」


龍驤 「大方、実績で選んだだけと違うか?うちの初任務は間宮へのプレゼントばっかりやったし。」ハ~


モウエエデ アンガトサン


龍驤 「嗚呼、身体が軽いわ。これで何事もなく帰れそうや。」クルクル


五月雨「最近帰るの早いですね。前はあんなに嫌がってたのに。」


龍驤 「元帥が真宵に替わったからな。魔王様様やで、ほんま。」


三隈 「三隈は忘れてませんの。師匠に対する暴言の数々を・・・。」ユラァ


龍驤 「あー。」ハハッ


三隈 「魔の者は悪、などと騒いでいたのは何処の何方でしたかしら。」ゴゴゴ


龍驤 「・・・すまん。」


三隈 「それだけですの?」ズイッ


龍驤 「堪忍してぇな。」


潮  「」チラッ


潮  (真宵ちゃんへのお手紙を渡したい・・・けど、入りづらいよぉ。)ウゥ


最上 「何してるの?」ヒョコッ


潮  「うひゃい!」ビクッ


最上 「そんなに驚かなくても・・・。え~と、姫百合ちゃん・・・だっけ?」


潮  「最上さん・・・。はい、私は姫百合です。」カチコチ


最上 「あはは。堅いねぇ。まぁ、あんまり砕け過ぎるのもどうかと思うけどさ。」チラッ


漣  「せん姉!せん姉!氷像作ろうぜ!」


朧  「氷の滝ー!!」イェー


紫苑茜「こら!今は灯に錬成を教えてるんだから邪魔しないの!ていうかあんた、茜の音読み知ってるのね。やるじゃない。」


漣  「こう見えて勉強はできるもので。」フフン


朧  「孤児院のつーとっぷなもので。」ドヤァ


紫苑茜「それに較べて灯は・・・わたしの妹なのに・・・。」ハァ


曙  「莫迦で悪かったわね。どうせ不出来な妹ですよ~だ。」ケッ


紫苑茜「拗ねないの。これからできるようになればいいんだから。まずは状態変化からマスターするわよ。分子の動きをイメージして。」ホラ


曙  「イメージ・・・イメージ・・・。分子の動き・・・分子?」ウン?


紫苑茜「そこからか。」


最上 「これはボクが鞭にならないとかな~。ところで、何か用事があるんじゃないの?」


潮  「え?あっ。えと・・・お手紙を。その、龍驤さんにお願いしたくて・・・。」オズオズ


最上 「なるほど。みっちゃんの所為で渡しに行けないわけだ。」


潮  「あはは・・・はい。」シュン


最上 「仕方ないなぁ。その手紙、ボクが頼んであげるよ。貸して。」


潮  「あ、ありがとうございます。」


最上 「いいよ。みっちゃんが迷惑掛けたお詫び。でも、もう少し積極的になろうね。姫ちゃん。」ジャッ


潮  「善い人だったな・・・。でも、多分怒らせちゃいけない人だ。」ゴクリ


ミッチャーン シンジンガコワガッテルヨー ソンナッ!



漣の主人公感が薄い。


蓮華 「ふむ。この服も大分小さくなってきたな。」ピチピチ


レ級 「いいよな~。父ちゃんとお揃いの服。俺にも作ってくれよ~。」ナァナァ


ヲ級 「ヲーちゃんも~。」


南方戦「はいはい。わかったわよ。アンタ達のも作ってあげるわ。」


レ級 「やったぜ!」ウシッ


ヲ級 「なの~!」ニパッ


南方戦「それはいいとして、肝心の五月雨は何処に行ったのよ。採寸しようと思ってたのに。」ッタク


蓮華 「お姉ちゃんなら龍驤のマッサージをしていたぞ?」


南方戦「あの娘、整体師にでもなるつもりかしら・・・。」


蓮華 「新人共も一緒に居たからな。こちらから出向いたほうが早いのではないか?」


南方戦「えぇ・・・。面倒くさっ。」


蓮華 「・・・喪女め。」


南方戦「なんですってぇ!」クワッ


レ級 「ま~た始まった。」アーア


ヲ級 「だから餓鬼扱いされるの。」ヤレヤレ


レ級 「最近辛辣だな。どうした?ヲーちゃん。」


ヲ級 「お父さんの真似なの。」ヘッ


レ級 「そういうところは真似しなくていいと思うぞ?お姉ちゃんは心配だ。」


・・・


夕立 「頭がガンガンするっぽい~。」ウゥ


雷  「貴女、後に引くタイプだものね。」


夕立 「今襲撃されたら一発アウトっぽい。」


雷  「ちょっと、思っても口に出さないでよ。ほんとに襲撃されそうだわ。」


ハァ


夕立 「何事も起こらないことを祈るっぽい。」


雷  「そうね。せめて酔いが醒めるまでは休ませてほしかったわ。」


近衛姉「ちょっと、い~い?」ヌ


ギヤァァァァ!!


近衛姉「うるさっ。もう、鼓膜が破れたらどうするの~?」


雷  「貴女、何者?」ミガマエ


雷  (全く気配が無かった。まさか・・・刺客!?)


夕立 「雷・・・出そう。」ウプッ


雷  「ええ!?今ぁ!?」


夕立 「大声出したから・・・。もう、無理。」オロロロロ


ユウダチィ! アラアラ~


近衛姉「まぁ、私は道の確認をしたかっただけだから、失礼するわ~。訓練島って、こっち方向でいいのよね?」


雷  「ええ、そうよ。」サスサス


夕立 「うえぇ。胃酸が・・・。」オエッ


近衛姉「ありがと~。お大事にね~。」バイバーイ


雷  「結局、何だったのかしら・・・。」


夕立 「今はそれどころじゃないっぽい。」ハァハァ


雷  「貴女はね。雰囲気に流されて飲む癖、いい加減に直したら?」


夕立 「努力はするっぽい。」


雷  「それは駄目なやつだわ、夕立。」ヤレヤレ


・・・


近衛姉「楽しみね~。東が薦める、お・と・こ。」~♪


近衛姉「彼の欲望は、いったいどんな味がするのかしら?」ウフフ


近衛姉「あっは。熱くなってきちゃった。///」ニィ



さぁ、後付けの謎を解いていこうか。


時雨 「なんだよ・・・これ。」ハハッ


時雨 「何なんだよ!」


黒霧 「どうやら彼女が、"本当の"長瀬狭霧みたいだね。」


狭霧 「」ゴポッ


時雨 「姉さん・・・いや、お前はクローンと言ったな。ならば、母さんのほうが正しいか。」


黒霧 「此処ではクローンについての研究が行われていた。僕もそこまでしか知らない。」


時雨 「ほう。ならば、私や姉さんがクローンであることをお前は知らなかったのか?それにしては随分と落ち着いているようだが。」


黒霧 「落ち着いてる?全然だよ。こんなことは歴史に無かった。何処で歪みが生じたのか、それで頭がいっぱいさ。」フッ


時雨 「ひとつ訊きたい。私は、その歴史とやらに存在していたか?」


黒霧 「長瀬眠の名は、この世界に来て初めて知ったよ。」


時雨 「ふっ。そうか。私自身も歪みの一部だったか・・・。よし、徹底的に調べるぞ。私達の秘密、全て解き明かしてやる。」


黒霧 「この山のような資料をか。骨が折れそうだ。」


時雨 「私は俄然愉しくなってきたぞ。お前への憎しみを忘れてしまいそうだ。」フハハ


黒霧 「それもどうかと思うけど・・・。」


時雨 「構わん。今はお前より、私という存在を弄んだ者に対して怒っているからな。さぁ、お前も手伝え!」


黒霧 「積極的で大変よろしい、のかな?」フフッ



魂の論争


時雨 「・・・狂ってやがる。」チッ


黒霧 「そうかもね。」


時雨 「かもね?確定だろ。長瀬狭霧の正体は、元帥のひとり娘だぞ。」ハッ


黒霧 「事故で脳死と判断された彼女を母体として、君達クローンが生まれた。」


時雨 「かなり紆余曲折あったらしいがな。」


黒霧 「魂の論争って、知ってるかな。」


時雨 「人工的に生み出されたクローンに魂は宿るのか、なんてやつか?」


黒霧 「よくご存知で。」


時雨 「お前はどう思う。」


黒霧 「宿らないに一票。」


時雨 「その心は?」ホウ


黒霧 「人の住まない家は朽ちるのが早いと言うでしょ?」


黒霧 「人を魂、家を肉体に置き換えると、クローンが短命であることを説明できる・・・気がする。」


時雨 「曖昧だな。」オイオイ


黒霧 「生物学的なことはわからないからさ。実験に基づくデータを提示して反論されたら、感情論では反論できない。」


黒霧 「何せ感情論には、動かぬ証拠が無いからね。僕が正しいと思うから正しい。根拠はそれだけさ。」


時雨 「お前、中々面白いことを言うな。私は好きだぞ、数字や事実にものを言わせる堅物よりはよっぽどな。」ニッ


黒霧 「それはどうも。話を戻すけど、クローンは短命だ。これこそがクローンの研究に於ける最大の問題だった。」


時雨 「その解決策を模索し、此処の研究者達も色々試したようだな。」


黒霧 「栄養素を自身で生成できるようにしたり、深海の因子を注入したり・・・。」


時雨 「幾度となく失敗を繰り返し、彼らは見つけた。」


黒霧 「艦娘に改造することで、寿命を引き延ばす方法を。」


時雨 「私や姉さんがその成功例だ。」


黒霧 「培養した肉体に艦娘の魂を入れ込む・・・か。」


時雨 「お前の理論にも根拠が出来たな。」フッ


黒霧 「そうだね。」フフッ



彼女の日常へ。


時雨 「しかし、同じ名前を付けるか?普通。」


黒霧 「元帥にとっては、彼女も長瀬狭霧だったんだろうね。」


時雨 「爺はいいさ。娘だろうが孫娘だろうが、さして変わらんからな。だが、婿養子はどうだ?嫁が娘になるのだぞ?」


時雨 「しかも、お前にとられることになるのだ。まったく、笑いが止まらんな。」ククッ


黒霧 「あの人は気にしてなかったと思うけど。」


時雨 「・・・政略結婚か。」


黒霧 「恐らく。彼にとっては元帥の婿養子になる。それさえ達成できれば、他のことはどうでもよかったはずさ。」


時雨 「それが実際に相対したお前の見解か?」


黒霧 「ああ。」


時雨 「くっはは!ざまぁねぇな。姉さんが見限るわけだ。」


黒霧 「まぁ、間宮には深海の因子が注入されているからね。」


時雨 「は?そんな資料、私は知らんぞ。」


黒霧 「まだ見せてないから。ほら、これだよ。」スッ


時雨 「もったいぶるなよ。」パシッ


時雨 「・・・なるほどな。これで合点がいった。どうして姉さんに艦娘になる前の人生があるのか。」


黒霧 「クローンは十年も生きられない。にも関わらず、間宮には狭霧として十数年の時を過ごした過去がある。」


時雨 「深海の因子でも、延命はできていたのか。だが、精神が安定しなかったようだな。」


黒霧 「間宮が人類の滅亡を目論んだ原因は、深海の因子がもたらした人類への憎悪なのかも知れないね。」


時雨 「それはどうだろうな。私にも深海の因子は注入されているようだが、別に人類への憎しみなど無いぞ?」


黒霧 「恨む契機が無かっただけじゃないかな。間宮は海軍の闇に直接触れていた。でも、君は?」


黒霧 「暗殺者とは言っても、君の任務は間宮の護衛だった。君はまだ、生命を狩った経験がないんじゃないの?」


時雨 「・・・お前には敵わないな。そのとおりだ。私は間宮となった後の姉さんを遠巻きに見守っていた。それだけだ。」


時雨 「技術は教え込まれたが、それを実際に使うことはなかった。誰かを傷付けたのだって、さっきが初めてだ。」


時雨 「なぁ、訊いてもいいか?人の命を奪うって、どんな感覚なんだ?」


黒霧 「君が知る必要はないさ。手を汚さないに越したことはない。」ポム


時雨 「汚れた手で触らないでおくれよ。」フフッ


黒霧 「おっと。これは失礼。」


時雨 「冗談だよ。さぁ、帰ろう。ボクはもう満足だから。」


黒霧 「まだ、資料は残っているよ?」


時雨 「いいさ。これ以上知ってしまったら、ボクは誰かを恨んでしまうかも知れないから。手を汚さないに越したことはない、でしょ?」


黒霧 「そうだったね。」フッ


時雨 「あぁ、最後に君にお願い。彼女を葬ってあげておくれよ。こんな所で裸を曝し続けるなんて、ボクには耐えられない。」


黒霧 「わかった。」スッ


サァァ・・・


時雨 「さよなら・・・お母さん。」


・・・トウ


時雨 「・・・うん。」ニコリ


時雨 「さぁ、帰ろう!ボク達の日常に!」



本懐を遂げる為ならば、私はクズにだってなってやる!


時雨 「戻ってきた~!」ンン


黒霧 「これからどうするの?」


時雨 「ん~そうだな。ひとつだけ決めてることがあるにはあるんだけど、取り敢えず一度大本営に戻らないと。」


龍驤 「お!こんな所に居った!」


時雨 「龍驤さん。残っててくれたんだね。」


龍驤 「当たり前やろ。新人をひとりで帰らす莫迦が何処に居んねん。あいつらは先に帰らしとるから、うちらも行くで。」


時雨 「うん。じゃあ、またね。えっと・・・にぃに!」ニコッ


龍驤 「にぃに・・・?」ポカーン


黒霧 「別の呼び方にしてもらえると助かるんだけど・・・。」アハハ


時雨 「やなこった。これはボクからの細やかな仕返しだからね。」フフーン


ジャーネー ア コラ! カッテニイッタラアカンデ! シグレェ!


黒霧 「困った義妹だ。」フゥ


神命 「に~い~さ~ま~?」ジトォ


黒霧 「どうしたの?」


神命 「どうしたの?じゃないよ!ま~た女の人誑かして!誰、あのパツキン!」クワッ


黒霧 「パツキンって、誰のことを言って・・・。」


神命 「とぼけても無駄!兄様に会いに来たって、もう言霊を得てるんだから!」ムゥ


黒霧 「そう言われてもな。心当たりが全く・・・。」


神命 「言い訳はいい!来て!」グイッ


黒霧 「乱暴は勘弁だよ。」


神命 「どの口が言うか!」


・・・


近衛姉「ねぇ、いい加減に通してくれない?東の紹介で会いに来たって言ってるでしょ?」


紫苑茜「そんなこと言われてもねぇ。何処の誰かもわからない人を、はいそうですかって入れるわけにもいかないのよ。」


近衛姉「何処の誰かは説明したじゃな~い。東のお姉ちゃんよ。」


紫苑茜「東に姉がいるとか、聞いたことないんだけど?」ハァ?


近衛姉「あの子、どんだけ私の存在を秘密にしてんのよ。いい迷惑だわ。ったく。」


神命 「兄様連れてきたよ~!」グイグイ


近衛姉「あら~。やっと運命のご対面ね~。」ウフフ


近衛姉「さ~て、どんないい男が現れるのかし・・・ら。」


黒霧 「なんだ麗か。久し振りだね。いい娘にしてたかな?」フフッ


近衛姉「帰るわ。」クルッ


紫苑茜「帰すわけないでしょうが。」ガシッ


近衛姉「放しなさい!会いたかったのは認めるけど、今は駄目なのよ!」グググ


紫苑茜「くっ。流石に近衛の一族は力が強いわね!南方ちゃん!ヘルプ!」フヌヌ


南方戦「任されたわ。」グイッ


近衛姉「ひゃっ!あんた、なんて膂力してるのよ。私が力負けするなんて・・・。」


紫苑茜「さぁて、洗いざらい吐いてもらうわよ?しーちゃんとあんたが過去にどう関わったのか。それはもう事細かにねぇ。」フフフ


近衛姉「謀りやがったわね~!あずまぁぁぁ!!」ウガー


・・・


真宵 「よかったのか?時雨に押し付けて。人間関係が滅茶苦茶にされるのではないか?」


近衛東「時雨ならば大丈夫だろう。あわよくば姉さんの悪癖を矯正してくれることを期待している。」


真宵 「悪癖か。あれを悪癖という言葉で済ませていいものか、甚だ疑問ではあるがな。」ククッ


近衛東「平然と嘘を吐く。身体を許したのが俺だけだと?寧ろ逆だろうが、阿婆擦れめ。」ハッ


真宵 「しかし、お前にとって初めての女というのは事実なのだろう?」フッ


近衛東「その話はやめてくれ。反吐が出そうだ。」


真宵 「それは姉に対してか?それとも、そんな姉に惚れてしまった己に対してか?」


近衛東「もういいだろう。あまりからかうと姉さんの命が危ないぞ?」


真宵 「抑えろよ?身内殺しの十字架を背負うのは、俺だけで充分だ。」


近衛東「わかっている。ただ、俺の言葉が冗談でないこと。しかと胸に刻んでおけ。」クルッ


真宵 「ああ。」


バタム


真宵 「さて、時雨よ。お前はあの阿婆擦れをどう料理する?」フフッ



これは艦これのSSですか?


黒霧 「改めまして、近衛麗。東のお姉さんです。」


近衛麗「は~い。麗さんで~す。」


紫苑茜「東の姉ねぇ・・・。」ジトッ


近衛麗「何よ~。」ブー


神命 「全然似てない。」


近衛麗「ちゃんと姉弟です~。血の繋がった姉と弟です~。」イー


黒霧 「調子に乗らない。」コラ


近衛麗「はい。ごめんくさい。」


黒霧 「う~る~は~?」クシャッ


近衛麗「あ~やめて!私、元々くせっ毛だから乱れたら直すのが面倒なの!」キャー


ウリウリ ヤメテッテバ!


神命 「なんだろう・・・。」


紫苑茜「すっごい悔しい・・・。」


南方戦「随分と愉しそうね、時雨。」オォォ


黒霧 「大人の女性を子供扱いするのって、愉しいよね。」フフフ


紫苑茜「なんて高度な遊びを・・・。」エェ


近衛麗「もう、ずっと子供扱いのままなんだから。」ウゥ カミガ


南方戦「ずっと?まま?」アァ?


黒霧 「近い・・・。」


紫苑茜「どういうことよ?ちゃんと説明してちょうだい。」


近衛麗「絶対に嫌。」


黒霧 「麗は僕の娘だったんだよ。」シレッ


近衛麗「なんで言っちゃうのよ!パパぁ!・・・あ。」


黒霧 「麗も満更じゃないみたいだね。」フフッ


近衛麗「っ~!!///」カァ


神命 「・・・どゆこと?」


紫苑茜「わたしに訊かないで。」


南方戦「」ポクポクポク チーン


南方戦「ふたりめ?」


紫苑茜「落ち着いて、南方ちゃん。一旦、冷静になりましょう。」



幾つになっても親と子さ。


神命 「でさ。結局どういうことなの?」


黒霧 「言葉のとおりだよ。一時期、麗は僕の娘だった。」


神命 「それがわからないんだけど・・・。」


紫苑茜「観念して吐いたら?しーちゃん、あれでもあんたに気を遣ってんのよ。」


近衛麗「・・・わかったわよ。ったく、半端に気を遣うくらいなら始めから遣うなっての。」ハァ


近衛麗「私はね。王都の警備隊に所属してたの。」


紫苑茜「してた?過去形なのね。」


黒霧 「任務に失敗してクビになったんだよ。」


近衛麗「言い方!あれは失敗したんじゃなくて、失敗させられたの!それにクビにはなってないわっ!」


紫苑茜「へぇ。仲間の裏切りにでも遭ったの?」


近衛麗「裏切りと言うか、仲間だと思ってた者が敵の頭目だったと言うか・・・。」


紫苑茜「それを裏切りと言うんでしょうに。」


近衛麗「ともかく!私達の部隊は罠に嵌められて全滅。私は記憶を奪われ、子供の身体にされた。」


近衛麗「それで以て、危うく何処ぞの娼館に売られるところだったわ。」


紫苑茜「そこをしーちゃんに救われたってわけね。」


近衛麗「そうよ。元の身体に戻るまでお世話になりました~。」ケッ


南方戦「よくもまぁ、そういう場面に居合わせるわね。アンタ。」


黒霧 「偶々だよ。あの組織は僕に依頼が来るくらいに凶悪な組織だったからね。」


南方戦「また過去形?」フフッ


黒霧 「僕は失敗しないからさ。」フッ


神命 「あのさ~。なんで子供の身体にする必要があったの?売るなら大人のままのほうがいいんじゃ?」


近衛麗「それは私の能力の所為よ。歳を重ねるほど強力になる能力だから、無自覚に使われることを恐れたんでしょ。」


神命 「は~なるほど?」


紫苑茜「そんなに危険な能力なの?」


黒霧 「"淫魔"。異性を魅了し服従させる魔性の能力だよ。」


神命 「うわ~。」ヒキッ


紫苑茜「うちの娘に近づかないでちょうだい。」


近衛麗「生まれ持った能力なんだから仕方ないじゃない!」


黒霧 「それを使う麗の性根が問題なんだよ。」


近衛麗「うぐっ。」


黒霧 「子供の頃の麗はあんなに可愛らしかったのに・・・。」ヨヨヨ


近衛麗「や、やめてよ!パパぁ~!///」ウゥ


南方戦「アンタ達、なんで今もそんな力関係なのよ。親子の関係はかなり前に終わってるんじゃないの?」


近衛麗「それは、そうなんだけど・・・。」


神命 「だけど?」


近衛麗「私、父親を知らないのよ。だから、私にとってのパパはパパだけだし。あの頃の温もりは今も残ってるし。何より・・・。」


南方戦「何より?」


近衛麗「私の能力が効かないのよね、こいつ。」


紫苑茜「それが本音か。」


黒霧 「こいつ呼ばわりとはいけないな~。」ウリウリ


近衛麗「あ~ごめんなさい。一緒に寝てあげるから許してください~。」イヤー


黒霧 「今日は南と寝るからだ~め。」フフッ


近衛麗「え~。」ブー


紫苑茜「よかったわね、南方ちゃん。」ニヤニヤ


神命 「姪っ娘を期待してるよ、義姉様。」ニヨニヨ


南方戦「くっそ。オチはワタシか。///」チッ



偶に会うくらいが丁度良い。


近衛麗「パパ、背もたれになって。」


黒霧 「はいはい。」ヨット


近衛麗「パパ、抱き締めて。」ンフフ


黒霧 「はい、ぎゅ~。」ギュッ


近衛麗「パパぁ、おやすみのちゅー。」


ソレハダメ! エー


近衛麗「いいじゃな~い。おでこへのキスくらい。」


神命 「なんだ。おでこか。」ホッ


近衛麗「唇を合わせるキスは恋人か妻だけの特権よ。子供へのキスはおでこが基本。パパ、膝立てて。肘掛けにしたいから。」


黒霧 「はいはい。」


紫苑茜「あんた、そんなキャラだっけ?さっきと全然表情が違うわよ?」


近衛麗「今度パパに会ったら思いっきり甘えるって決めてたの。本当はふたりきりでこっそり甘えたかったけど・・・。」


近衛麗「バレたからにはもう遠慮しないわ!私は世界で一番!パパが好き!!」バーン


紫苑茜「東に言うわよ?」


近衛麗「勘弁してくれぇ。」ダラッ


紫苑茜「せめて姿勢くらいは正しなさいよ。誠意が感じられないわ。」ハッ


黒霧 「麗に誠意を求められてもね。」


近衛麗「私には縁の無い言葉よね~。」ネー


紫苑茜「こいつっ。と言うか、しーちゃんはそっち側なのね。」クッ


神命 「兄様、娘の躾けがなってないんじゃないの?」ムー


黒霧 「放任主義だからね。とやかく言うつもりはないよ。たとえ僕の子供達が皆、問題児だったとしても。」


近衛麗「そうなの?」


紫苑茜「そんなわけないでしょ!?みんないい娘よ!あんたを除いて!」


黒霧 「五月雨は戦闘狂だし。蓮華は何処か大人を莫迦にしてるところがあるし。ヲ級は腹黒だし。まぁ、レ級はいい娘かな。」ポンコツダケド


南方戦「アンタ、意外とあの娘達のこと見てるのね。ヲーちゃんの裏の顔を見抜いてるとは思わなかったわ。」ヘェ


黒霧 「職業柄、人の本質を見抜く目は鍛えられてるからさ。」フフッ


・・・


五月雨「バレてるみたいですよ?ヲーちゃん。」


ヲ級 「ちょっと派手に動きすぎたの。」チッ


蓮華 「気にすることはない。父上に隠し事は通用せんからな。どのみちバレていたさ。」


レ級 「俺だけ、いい娘。」エヘヘ


蓮華 「最後の言葉を聴いていなかったのか、この莫迦は。」ヤレヤレ


五月雨「それは触れないであげましょう。それよりです。このまま、お父さんを独占されてもいいんですか?」ニィ


蓮華 「わかりきったことを。」フッ


ヲ級 「お父さんはみんなのお父さんなの。独り占めはさせないの。」


レ級 「いい娘・・・。///」ムフフ


イキマスヨ! バァン


五月雨「こらー!お父さんの独占は許しませんよー!」


蓮華 「父親よりも背が高い娘が何処に居る!」カッ


ヲ級 「蓮華ちゃんの言ってることは無視してなの!」


レ級 「えへへ・・・。あれ?あっ!おい!俺を置いていくな!」


ワー


近衛麗「人気者ね、パパ。」フフッ


黒霧 「父親冥利に尽きるよ。」ニコリ



実はまだ続きがあったのよ。


五月雨「さて、何故か閉め出されたわけですが・・・。」


ヲ級 「このまま温和しくしてるヲーちゃんじゃないの。」フフフ


蓮華 「同感だな。あいつだけが部屋に居座ることを許された意味がわからん。」


ヲ級 「どうにかして突入してやるの。」


五月雨「そのためにはまず・・・。」チラッ


南方戦「何よ。此処は通さないわよ?」


蓮華 「母上を攻略せねばな。」


ヲ級 「余裕なの。」ヘッ


五月雨「問題にもなりませんね。」フッ


蓮華 「そうだな。では次にどう扉を蹴破るかだが・・・。」


南方戦「聞こえてるのよ!わざとか!わざとなんでしょ!巫山戯んじゃないわよ!ワタシがチョロくないってこと、思い知らせてやるわ!」


五月雨「誰もチョロいとは言ってないですけどね。」


ヲ級 「自覚があるってことなの。」


蓮華 「事実チョロいがな。」


南方戦「」ブチィ


ナンデスッテェ!!


黒霧 「五月雨達は上手くやってくれてるみたいだね。」


紫苑茜「哀れな南方ちゃん。」ヨヨヨ


レ級 「なぁ、なんで俺は待機なんだ?まぁ、父ちゃんと一緒に居られるから別にいいんだけどよ。」


黒霧 「レ級には、とある重要な任務を任されてほしいからだよ。」フフッ


レ級 「重要な任務・・・俺が!?」


黒霧 「そう。レ級だからこそ、任せたい任務だ。」ポム


レ級 「おぉ・・・。」パァ


レ級 「俺はやるぜ!父ちゃん!」キラキラ


黒霧 「期待しているよ。」ニコニコ


紫苑茜「あっちを任せられないだけでしょうに。」


神命 「師匠!しー!」


近衛麗「私も此処に居ていいの?」


黒霧 「問題ないよ。歴史の正導についての知識が無いと、理解が追いつかないだろうし。」


近衛麗「そう。じゃあ、私は寝てるから。終わったら起こしてね、パパ。」オヤスミー


黒霧 「わかった。」オヤスミ


Zzz ハヤッ!?


黒霧 「さて、本題に入ろうか。地下の研究所で見つけた・・・この資料についてなんだけど。」スッ


紫苑茜「」ゲッ


黒霧 「『擬似深海棲艦計画』責任者は、小暮 菫。知らない名だ。なのに、筆跡は誰かさんにそっくりだ。」


紫苑茜「あはは・・・。」ダラダラ


黒霧 「どういうことか、詳しく説明してもらおうか。ねぇ、茜姉さん。」ニコォ


紫苑茜「・・・はい。」


神命 「兄様が結構マジで怒ってる・・・。」オゥ


レ級 「あれ?俺の任務って、なんだっけ?」



気づかないのも道理だ。だって後から以下略。


レ級 「父ちゃん、俺の任務ってなんだっけ?」ナァナァ


神命 「レーちゃん、こっちおいで。」チョイチョイ


レ級 「なんだよ、神命姉。俺は父ちゃんに大事な・・・。」


神命 「いいから。今は兄様の邪魔をしないことが大事な任務だから。」


レ級 「おう・・・わかった。」ムゥ


神命 「お姉ちゃんの膝の上で温和しくしてようね。」ヨット


レ級 「・・・母ちゃんのほうが柔らかくて座り心地が好いな。」ボソッ


神命 「この娘はっ。」イラッ


黒霧 「『擬似深海棲艦計画』長瀬狭霧のクローン研究から派生した計画で、要するに人工的に深海棲艦を造ろうってことみたいだね。」


黒霧 「で、それを主導していたのが小暮菫。つまり、茜姉さんだよね?」


紫苑茜「・・・そうよ。わたしが転生したのは集積地棲姫ではなく、小暮菫という極普通の少女だった。」


紫苑茜「わたし自身の記憶が蘇ってからはまた研究やら実験やらに明け暮れる毎日で、気づけば海軍の研究機関で所長にまでなってたわ。」


黒霧 「此処の地下施設はクローン研究のために創られたものだよね。それがどうしてこんな研究に?」


紫苑茜「あまりに上手くいかなかったからよ。クローンを生み出すこと自体は然程難しくない。だけど・・・。」


黒霧 「永く生きられない。」


紫苑茜「そう。培養液から出て、保って三年。早くて数ヶ月。とても元帥の要望を満たせる代物じゃなかった。」


紫苑茜「だからわたし達は、深海因子に手を出してしまった。頑強な深海棲艦の因子を加えれば、どうにかなると焦って・・・。」


紫苑茜「結果は知ってのとおりよ。表の世界には間宮が、裏の世界には眠が放たれた。」


紫苑茜「そこで終わっていれば、まだよかった。」


黒霧 「深海因子による身体機能の強化・・・か。」


紫苑茜「ええ。それを軍事利用できないかと、上層部から要請があったの。そして『擬似深海棲艦計画』は始まった。」


紫苑茜「問題は山積みよ。深海因子では得られる恩恵が少なすぎるもの。とても戦力として期待できるものじゃなかったわ。」


紫苑茜「艦娘に深海因子を注入したら?なんて案もあったけど、精神が不安定になる副作用の所為で却下。」


紫苑茜「被検体の中には上官殺しの罪で解体された娘もいたくらいだから。」


黒霧 「それは不信感を煽る行為をしたからさ。深海因子に眠る人類への憎悪を呼び覚ましたそいつが悪い。」


紫苑茜「わかってるわよ。だけど、当時の腐った海軍ではそれが普通だった。だから間宮は人類滅亡なんて大それたことを・・・。」


黒霧 「もう終わったことだ。眠とも話をつけた。」


紫苑茜「眠に会ったのね。」


黒霧 「ああ。本音をぶつけられたよ。」


紫苑茜「・・・そう。」


レ級 「何の話か全然わからん。」


神命 「大丈夫。私もわかんないから。」


黒霧 「さぁ、続きだ。」


紫苑茜「そうね。深海因子による艦娘の強化を断念したわたし達は、深海細胞に目をつけた。」


紫苑茜「艦娘を深海に近づけるのではなく、深海棲艦そのものを造ってやろうってね。」


紫苑茜「そこで課題になったのが深海因子の除去。深海細胞の中には、当然深海因子が含まれているから。」


紫苑茜「精神への影響は深海因子がもたらすもので、深海細胞自体は無害。それがわたしの立てた仮説。」


紫苑茜「説を立証する実験は、わたし自身を被検体にして行ったわ。その結果、わたしは集積地棲姫となったの。」


黒霧 「でもそれは、成功と言うにはあまりに不十分な成果だった。違う?」


紫苑茜「察しが良いわね。そうよ。この実験は成功じゃない。何なら失敗と言っていいくらいのものだった。」


紫苑茜「だって、強靱な深海棲艦になったはずのわたしが、人間に劣るくらいに非力なままだったから。」


紫苑茜「深海細胞は人間の細胞よりかなり丈夫ってだけのものだった。深海棲艦を脅威たらしめているのは、深海因子だった。」


紫苑茜「深海因子には、精神を不安定にする代わりに強大な力をもたらす働きがある。」


紫苑茜「ヒトの細胞ではその効果が薄かったけど、深海細胞には強力に作用した。筋力や耐久力、自然治癒力は勿論、精神にも・・・ね。」


紫苑茜「深海因子抜きに、この計画を達成することはほぼ不可能だと全員が悟ったわ。それは殆ど、計画の破綻を意味していた。」


黒霧 「だけど君は諦めなかった。」


紫苑茜「違うわ。完全に諦めてた。そして自棄になった挙句、思い出したの。わたしの人生を変えたのは"愛"だったなって。」


紫苑茜「灰色の人生を彩りに溢れる人生に変えたのは"愛"だった。だから深海棲艦に"愛"を教えようなんて莫迦げた計画を立ち上げたの。」


紫苑茜「長瀬狭霧のクローンを基に深海細胞を培養、暴走しない程度の深海因子を打ち込んで深海棲艦を生み出し・・・。」


紫苑茜「偽の記憶を埋め込んで、捕まってるなんて設定を与えてね。そして恋をさせ、愛を育ませ、人類への憎悪を希釈した。」


紫苑茜「実験は大成功。だけど相手役に立候補する男が居なくて計画は頓挫。幸せを手にした深海棲艦だけが残った。」


黒霧 「それが・・・南か。」


紫苑茜「そう。これがわたしの知ってる全て。しーちゃんの知らない、歴史の影よ。」



全ては彼の責任。


レ級 「Zzz」


神命 「つまり・・・どゆこと?」


黒霧 「南は茜姉さんが生み出したクローンだってことさ。序でに言えば、間宮の妹でもある。」


神命 「わぁお。」


黒霧 「南に子供っぽい一面があるのも納得だよ。だって本当に子供なんだから。」


紫苑茜「やっぱり記憶を埋め込むだけじゃ駄目ね。様々な経験をして、あれこれ考えて初めて心は成長する。」


黒霧 「話を逸らそうとしても無駄だよ?」ニコリ


紫苑茜「」チッ


黒霧 「それじゃあ、本題に入ろうか。」


神命 「え?今までの話は本題じゃなかったの?」


黒霧 「僕達の役目は何だっけ?」


神命 「ああ・・・世界の歴史にどれだけ影響があるかってことか。」


黒霧 「神命にしてはものわかりが良いね。」フフッ


神命 「最近、兄様の私に対する扱いが酷い件について・・・。」ムゥ


ハイ ホンダーイ


黒霧 「世界の歴史に名前が載る人物はそう多くない。これまでの出来事に限って言えば、五月雨に間宮、そして集積くらいだ。」


黒霧 「歴史の流れを要約すると、暴走した間宮を生みの親と言っても過言ではない集積地棲姫こと小暮菫が処理した。そんな感じかな。」


黒霧 「そして間宮の影には長瀬眠が居た。名前こそ載ってはいないけど、彼女の生まれた意味を考えれば歴史に反した存在ではない。」


黒霧 「だけど南は違う。南は茜姉さんだからこその発想と僕という要素が揃って初めて、生まれることのできる存在だ。」


神命 「つまり、南さんは"異物"。この世界に存在しなかったはずの存在・・・。」


黒霧 「しかも世界への影響が未知数だからね。どの程度の歪みが生じるか、予測ができない。」


紫苑茜「ごめんなさい。知らなかったこととは言え、しでかした事の重大さは理解してる。でも、しーちゃんだって同罪よ?」


黒霧 「わかってるよ。僕が間宮と接触していなければ、南が生まれることもなかったんだ。その責任は取るさ。」


神命 「・・・斬るの?」


黒霧 「・・・。」


神命 「駄目だよ。そんなの絶対に駄目!させない。兄様の魂を天に還してでもさせないからっ!」ダンッ


紫苑茜「それだと本末転倒よ、神命ちゃん。落ち着きなさい。」


神命 「ごめん・・・でもっ。」


黒霧 「大丈夫。蓮華と約束したから。」


神命 「約束?」


黒霧 「そう。愛する者達の安全を護ることも大事だけど、それ以上に家族の幸せを護ることが大事だって・・・。」


黒霧 「僕は、この先どんな危険が降り掛かろうと、今在る幸せを護ってみせる。」


神命 「兄様・・・。」パァ


黒霧 「これから忙しくなるよ。」フフッ


紫苑茜「上等よ。自分が招いた事態だもの。責任取って解決してやるわよ。」フッ


神命 「私も、全力で協力するよ!」フンス


黒霧 「ありがとう、ふたりとも。異物ふたり分の歪みだ。中々、骨の折れる仕事になりそうだね。」


紫苑茜「待った。ふたり分?」


神命 「南さんと、誰?」


黒霧 「眠だよ。彼女は多分、間宮の手で処理されていたはずだから。」


黒霧 「間宮を見張る役目を負っていた眠は、海軍に反旗を翻した間宮にとって邪魔な存在だっただろうし。」


紫苑茜「なら、どうして彼女は今生きているのかしら?」ジトッ


黒霧 「さぁ?僕が眠から仕事を取っちゃったからじゃないかな?」


紫苑茜「あんたも結構なことしでかしてんじゃないの!他人事みたいに話してんじゃないわよ!」クワッ


黒霧 「まぁまぁ、お相子ってことで。」ドウドウ


紫苑茜「これは詫びのひとつでもないことには収まらないわよ?明日一日、わたしに付き合いなさい。」


黒霧 「えー。」


紫苑茜「拒否権は認めません!」


神命 「兄様・・・。」ハァ


ギャアギャア


潮  「何のお話してるのかな。」チラッ


曙  「さぁ?痴話喧嘩じゃないの?」


朧  「愛、故に・・・。」キリッ


漣  「存在しないはずの存在・・・ねぇ。」


三隈 「どうしましたの?難しい顔をして。」


漣  「いや、雰囲気を出してみようかと。」キリッ


三隈 「そうですの・・・。」


最上 「ボクはクロさんに相談したほうがいいと思うけどな~。」ボソッ


漣  「もがみん先輩。」


最上 「ひとりで抱えられない重荷なら、みんなで抱えたらいい。そうでしょ?」


漣  「先輩・・・。いや、了解したっす!もがみん教官!」ビシッ


最上 「よし、行っておいで。」


曙  「え?あの中に?」


漣  「うおぉ!澪ちゃんのお通りでぇ!」ダッ


朧  「死ぬ気か、ちゃん澪。」グスッ


潮  「撫子ちゃん!?えっと、ハンカチは・・・。」ゴソゴソ


曙  「潮、朧の左手見てみなさい。眼薬隠し持ってるから。」


朧  「」ギクッ


オレノハナシヲキケェ!!



80000字だよ!ほぼ全員集合!


龍驤 「今帰ったで~。」ガチャッ


時雨 「ただいま~。」


真宵 「おう。よく戻ったな、お前達。」


扶桑 「おかえりなさい。」ウフフ


山城 「姉様、そろそろ交代していただきたいのですが。」ソワソワ


加賀 「その前に仕事をしてほしいのだけど。」カリカリ


時雨 「あっちも相当だけど、こっちも中々だね。」アハハ


龍驤 「気にしたら負けやで、時雨。ああ、せや。潮から手紙預かってきたで。」ホイ


真宵 「そうか。潮は残るか・・・。」パシ


龍驤 「寂しくなるなぁ。ほな、うちは失礼させてもらうわ。」ヒラヒラ


加賀 「手紙には、何と?」カタカタ


真宵 「ご飯が美味しいので残ります・・・だと。」クハハ


扶桑 「あの娘らしい理由ですね。」フフッ


山城 「姉様、交代を・・・。」


時雨 「」ニコニコ


真宵 「どうした?何か用か?」


時雨 「うん。お願いがあってね。いいかな?」


真宵 「遠慮は要らん。言ってみろ。」


時雨 「えっとね。ボクを・・・。」


・・・


五月雨「いや~良い汗かきました。」アハッ


蓮華 「まったくだな。」フッ


レ級 「んがっ。」Zzz


黒霧 「南はどうしたの?」


ヲ級 「ベッドに縛り付けてきたの。」ムフー


黒霧 「それはそれは。」


曙  「お姉ちゃん・・・。」ジトッ


紫苑茜「わたしじゃないわよ。あれはしーちゃんの遺伝子が原因よ。」


黒霧 「それじゃあ僕は南の所に行ってくるよ。麗、起きて。」ポム


近衛麗「おはようのちゅー。」


チュッ


近衛麗「ん。おはよう、パパ。」ウフフ


神命 「おでこだからセーフ。あくまでも父と娘だからセーフ。」ブツブツ


最上 「神命ちゃん、深呼吸しようか。」


紫苑茜「しーちゃんが居ないとなると、わたしがこの場を纏めないとかしら。」


三隈 「お待ちになって。クロさん、集積さん、序でに南さんが不在の際には三隈が場を纏める決まりですの。三隈が仕切りますわ。」ムン


紫苑茜「わたしがその集積よ。で?話があるってのはあんただっけ?」


漣  「おうよ!澪ちゃんの話を聴きなっ!」


三隈 「今、とんでもない発言が・・・。」


曙  「お姉ちゃんが、集積地棲姫?」


最上 「聞き流して本題にいくよ。一々反応してたら話が進まないから。澪ちゃん、よろしく。」


漣  「うっす、教官。」


三隈 「もがみん、大きくなりましたのね。」


最上 「みっちゃんも早く追いついてよね。」ニィ


三隈 「前言撤回ですの。」イラッ


漣  「あの、始めてもいいすか?」


紫苑茜「少し待ってちょうだい。先にスタートラインを揃えましょう。この基地の過去と世界の歪みについて話してあげる。」


・・・


南方戦「くそ。あんの莫迦娘共。いつか仕返ししてやるわ。」


黒霧 「やめたほうがいいと思うよ。どうせまた倍になって返ってくるだけだから。」フフッ


南方戦「時雨・・・。何?襲いにでもきたの?」


黒霧 「それは襲ってくれって言ってるのかな?」


南方戦「さぁ?アンタはどう思う?」ニィ


黒霧 「せめて暗くなってからにしてよ。というか、その枕は?」


南方戦「見たらわかるでしょ?Yes/No 枕よ。蓮華がしたり顔で置いてったわ。」


黒霧 「両面 Yes なんだけど。」ヒョイッ


南方戦「どんだけ妹が欲しいのよ、あの娘・・・。」


・・・


紫苑茜「とまぁ、そういうわけよ。」


最上 「異物と世界の歪みねぇ。ややこしい問題だなぁ。」


五月雨「ヘイ!マミー!」ハイ


紫苑茜「何かしら?壱号。」


五月雨「異物の存在が歪みをもたらすなら、蓮華ちゃん達はどうなるんですか!」


紫苑茜「当然、蓮華やレーちゃん、ヲーちゃんが産まれたことでも歪みは生じてるわよ。」


五月雨「それって、歴史を正しく導く者達としてどうなんですか~。」


紫苑茜「どうせ大した歪みは生じないんだからいいじゃない。わたしはしーちゃんとの間に愛の証が欲しかったの。」


三隈 「本音が出ましたわね。」


五月雨「どうして大した歪みが生じないなんてわかるんですか~。」


紫苑茜「逆に訊くけど、あんたの妹達が産まれたことで世界の何が変わったかしら。」


五月雨「私がお姉ちゃんになりました。」


紫苑茜「他には?」


五月雨「私が妹狂いのお姉ちゃんになりました。」


紫苑茜「一緒じゃないの。」


最上 「なるほどね。異物にも影響力に応じた区別があるってことだ。」フーン


紫苑茜「そういうこと。間宮が拾なら、あんた達は壱。今日の異常気象が伍ってところかしら。」


神命 「問題は、南ちゃんや眠ちゃんの影響力が未知数ってことだよね~。」ムー


紫苑茜「㭭くらいは覚悟しておかないとね。」


曙  「㭭ってどれくらいよ?」


神命 「一国家の滅亡くらいかな。」


漣・朧「やべぇじゃん!?」



後半いってみよー。


紫苑茜「それで?あんたの話って?」


漣  「おっ。やっとあちしの番ですかい。待たされた分、ぶっこんでやりやすぜぇ。」ヘヘッ


朧  「いったれ、澪ちゃん。」


漣  「実は私・・・歪みの正体を知っているのです。」フフフ


神命 「おー。」


漣  「その正体とは!」


朧  「ばばん!」


漣  「戦艦・三笠!其の人也!」


朧  「なり~。」


曙  「なんであんたがそんなこと知ってるのよ。」


漣  「知ってるつーか、調べたでね。三笠に関する資料は一切見つからなかったけど!」ムフン


潮  「それじゃあ、三笠さんは居ないってことなんじゃ?」


漣  「わかってないにゃあ、姫百合よぉ。資料では存在しないことになってるってのがミソなのさっ。」


紫苑茜「三笠に関する資料ねぇ。そりゃ、見つからないでしょうね。」


漣  「おっ。何か知ってる感じっすか?せん姉。」


紫苑茜「ええ。よ~く知ってるわよ。あの忌まわしい出来事のことは・・・ね。」


曙  「忌まわしい出来事?」


最上 「不完全なままに建造された三笠が、暴走して宅地に向かって砲撃したんだよ。死者も出たって聞いてる。」


三隈 「その後、三笠は三隈達が無力化し、解体されましたの。箝口令が敷かれ、三笠に関する資料は全て破棄されたはずですわ。」


紫苑茜「三笠の建造は海軍の悲願だった。でも、この出来事の所為で三笠に関する研究は凍結された。」


紫苑茜「当時、この研究を主導していた研究者はわたしの後輩だったの。今となっては生きているかも定かではないけどね。」


漣  「てーこたぁ、何かい?三笠はもう、この世には居ねぇってことかい?」


三隈 「そうなりますわね。」


漣  「じゃあ、俺は何の為に此処まで・・・。」ギリッ


最上 「ねぇ、澪ちゃん。若しかして君、三笠の砲撃で亡くなった人の・・・。」


パオラ「時雨は居るかぁー!」バァン


シーン オ?


パオラ「亡霊が居る!?」


紫苑茜「ちゃんと生きとるわ!」


神命 「パルちゃんだ~。どうしたの?兄様に御用?」


パオラ「そうなのよ。赤城が一発殴らせろって聞かなくてさ~。」ヤレヤレ


近衛麗「」ピクッ


赤城 「確かにそうですけど、もう少しオブラートに包んでいただけませんか?」


近衛麗「へぇ。」ピクピクッ


蓮華 「間が悪かったな、パオラよ。父上は今、私の妹をつくるので手一杯だ。」フッ


パオラ「お盛んね。こんな陽の高いうちから。」ホー


黒霧 「しないよ。」


南方戦「してくれなかったわ。」


パオラ「あら、おかえりなさい。」


蓮華 「なんだと。あれだけ御膳立てしておいていたさないだとっ!父上、まさかEDなのか!?」


黒霧 「ちゃんと夜にするから。」フフッ


蓮華 「頼むぞ、父上。母上も気張れよ。」


南方戦「はいはい。期待して待ってなさい。」


赤城 「パルちゃん、あれが件の・・・?」


パオラ「そうよ。あの白髪が時雨よ。」


赤城 「そうですか。」スッ


近衛麗「」サッ


赤城 「何か?」


近衛麗「パパには手出しさせないわ。」


赤城 「パパ?」チラッ


パオラ「」ブンブン


赤城 「吐くにしても、もう少しまともな嘘を吐いては如何ですか?」


近衛麗「無知というのは、憐れなものね。」ニィ


赤城 「潰す。」オォォ


バチバチ


パオラ「誰よ、あの女。パパって何?」ヒソヒソ


紫苑茜「話すと長くなるわ。取り敢えず、あれ止めなさい。あんたの部下でしょ?」


パオラ「え?無理。赤城に逆らったら書類仕事が滞るから。」


紫苑茜「あんた、まさかまだこの世界の言語を習得できてないの?紅蓮と同レベルよ?」


パオラ「えー。だって言語の種類が多すぎるんだもん。平仮名に片仮名に漢字、和製英語に専門用語。そんなに要る?」


紫苑茜「あるものは仕方ないでしょ?頑張って覚えなさい。神命ちゃんだって覚えてるのよ?」


パオラ「え?マジ?」


神命 「自分の名前を漢字で書けます!」ムフン


パオラ「おー!凄いわ、神命!あたしを超えたわね!」


神命 (自分の名前しか書けないけどねっ。)エヘヘー


曙  「お姉ちゃん。この人、誰?」


紫苑茜「自分の名前が片仮名だってことに気づかない莫迦よ。鼻で嗤ってやりなさい。」ハッ


・・・


飛龍 「大鳳、私の担当分は終わったわ。」


大鳳 「ありがとうございます。流石、仕事が早いですね。」


飛龍 「じゃあ、私は部屋に戻ってるから。」


大鳳 「はい、お疲れ様です。」


蒼龍 「待ってよ、飛龍~。私の分も手伝って~。」ウゥ


飛龍 「嫌よ。ちゃんと等分したでしょ?自分でやって。」バタム


蒼龍 「そんなぁ。」ウアァ


大鳳 「あはは・・・。蒼龍さん、もう一息ですよ!」ファイトッ


蒼龍 「うぅ~、パルちゃんのあほぉ!」



また零から始められるなら。


漣  「粉雪 ねぇ 心まで白く 染められたなら・・・」アァ


最上 「君が歌うと、また意味が違って聞こえるね。」


漣  「もがみん教官。」


三隈 「心配しましたのよ?何も言わずに出ていってしまうんですもの。」


漣  「みっちゃん先輩。」


三隈 「・・・三隈も教官ですのに。」ムゥ


最上 「ねぇ、澪ちゃん。君が艦娘になった理由、訊いてもいいかな?」


漣  「何言ってんですかい、教官。もう、わかってやすでしょ?」フッ


最上 「そうかもね。でも、君の口から直接聴きたいからさ。」


漣  「そうですかい。まぁ、いいでやすよ。どうせあっしにはもう、何も残っちゃいやせんから。」


漣  「あっしが艦娘を志したのは小学生の頃でやした。あっしの家を、家族を吹き飛ばしやがった野郎に復讐してやるって・・・。」トオイメ


最上 「やっぱり君は・・・。」


三隈 「もがみんと同じですの。」


漣  「え?もがみん教官も?」


最上 「・・・うん。ボクの場合は深海棲艦の襲撃だったけどね。」


三隈 「砲弾の降り注ぐ中、燃える家を前に動こうとしないもがみんを説得するのには苦労しましたの。」ハァ


最上 「説得?みっちゃん、あのときボクの近くに居たんだ。」


三隈 「てめぇ・・・。」イラッ


最上 「ごめん。本当に憶えてない。」


三隈 「わかってますの。あの頃のもがみんは、周りが全然見えてなかったですから。」


漣  「へぇ。もがみん教官にも、そんな時代があったんすね。意外っす。」


最上 「そう?ボクは結構、怒りっぽいほうだと思うけど。」フフッ


漣  「その冗談、笑えねぇっす。」


最上 「あはは。まぁ、今のボクが在るのは全部みっちゃんの御蔭かな。」


三隈 「三隈の?」


最上 「そうだよ?戦場で荒れ狂うみっちゃんを見てたら、ボクがしっかりしないと駄目だなって。」フフフ


三隈 「なっ!荒れ狂うだなんて!それは言いすぎですの!」


最上 「え~?それ本気で言ってる~?実はさ、みっちゃんの勇姿を収めたテープがあるんだけど・・・観る?」ニヒッ


三隈 「観ませんの!早く処分してくださいまし!」


漣  「仲良いっすね、おふたりとも。」


最上 「澪ちゃんにも居るでしょ?互いの人生を預けられるような仲間がさ。」


三隈 「もがみん・・・。」ジーン


漣  「そっすね。」


最上 「嘗てのボクは憎しみを晴らす為に戦った。でも今は違う。大切な仲間を護る為に戦う。だから南さん達とも仲良くできる。」


最上 「ちょっと荒っぽいところもあるけど、南さん達だって護る為に力を振るう人だからね。」


漣  「護る為に・・・か。ありがちっすね。」


最上 「気に入らない?」


漣  「今の澪ちゃんには、届かないっすね。申し訳ないっす。」


最上 「そっか・・・。あ~あ、みっちゃんがボクに惚れ直しただけだったか~。」ヤレヤレ


三隈 「ちょっと。あまり変なことは言わないでくださいまし。クロさんに誤解されたら、どうしてくれますの?」ムゥ


最上 「大丈夫だよ。クロさんはボクよりよっぽど観察眼に長けてるから。こんな冗談で誤解したりしないって。」


三隈 「まったく、もう。もがみんったら・・・。」ハァ


漣  「もがみん教官よりも観察眼に長けてる・・・か。つーこたぁ、あちしの腹の内も見透かされてるってことかねぇ。」


最上 「クロさんにも相談してみなよ。人生の大先輩、それも特殊な経験を積んできた人だからさ。何か掴めるかも知れないよ?」


漣  「うっす。教官、ありがとうございました。」ペコリ



漣の腹の内


ノックシテモシモーシ


漣  「ちわーす。お悩みお届けにあがりましたー。」ドモ


黒霧 「いらっしゃい。待ってたよ、とでも言うべきかな?」フフッ


漣  「うっは。流石は魔窟の大黒柱。全てはお見通しってわけですかい。」


黒霧 「全て、ではないけどね。この間も茜姉さんの行動を読み違えたし・・・。」ハァ


漣  (落ち込んでる・・・。自信あったんだ、観察眼に。)


黒霧 「で、他の三人を自分の都合に巻き込んだ挙句、戦力としてしか見てなかったことに今更後ろめたさを感じてる君の悩みって?」ハァ


漣  「いや、全部言っちゃってるから。そこまで見抜いてるとか最早ホラーだから。」エェ


黒霧 「そっか。別にいいんじゃない?そのままでも。」ケロリ


漣  「え?でもさ、みんなうちのこと仲間だと思ってるべ?うち、最低だべ?」


黒霧 「それがわかってるなら大丈夫だよ。だから今までどおり、彼女達のリーダーを演じたらいいさ。」


漣  「はー、酷なことを言うもんですなぁ。もがみん教官とは大違いだわ。」


黒霧 「同じアドバイスをしたって意味が無いでしょ?」


漣  「そうだけどさ~。限度っつーか、何つーか。あるじゃん?そういうのが。」


黒霧 「空っぽの君に何を言ったって無駄だし。」シレッ


漣  「うぉい。真面目に考えてんのか適当なのかはっきりしろや。」


黒霧 「真面目に不真面目。」キリッ


漣  「適当なんじゃん!なんだよ~。俺は助けてくれないのかよ~。」


黒霧 「助けてほしいなら、せめて助けようのある状態になってから来てくれるかな。」


漣  「えー、無理。」


黒霧 「だろうね。」


潮  「会話の内容が全然わからない。」


曙  「わかる奴なんて居ないわよ。漣の悩みも結局要領を得ないままだし・・・。」


朧  「せまい。」モゾモゾ


潮  「ひゃっ!紫苑ちゃん!手が・・・その、お胸に・・・。///」ウゥ


曙  「机の下なんだから仕方ないでしょ!というか、私じゃなくて撫子が!」


朧  「じゃま。」グイッ


クォラ! ナデシコォ!


漣  「足下が騒がしいみたいですね。」


黒霧 「それも踏まえて、先の話をしようか。」


漣  「うぃ。おら、黙れ!下の!これからてめぇらも無関係じゃない大事な話じゃ!」


シーン ヒョコッ


漣  「出てくんなよ。てめぇらが居ない体で話すつもりだったのに。」オイ


朧  「いないてーでよろ。」チョコン


黒霧 「僕の膝の上には誰も居ないよ。さぁ、物語を始めよう。」



君と知らない物語


黒霧 「少女は全てを奪われた。文字通り、全てを・・・。」


黒霧 「空っぽの少女は中身を巧みに詰め替え、歩み寄り、生ける武器を手に入れた。」


黒霧 「危機的状況にこそ真価を発揮する司令塔。戦力的、精神的中核を担う砲手。そして天賦の万能娘。」


黒霧 「彼女達の将来的な伸び代を見抜き、此処まで導いたその手腕。まったく、頭が下がるよ。」


漣  「へっへ。性格を観察すれば、職業の適性がわかるってな。」フフン


黒霧 「まぁ、適性という言葉は"適した性質・性格"って意味だからね。」フフッ


漣  「真面目な返しは要らねーです。」ヘッ


曙  「そういう風に私達のことを見てたのね、あいつ。」


潮  「・・・天賦の万能娘って、誰のことだろう。」


曙  「それ、はっきりさせるの?」エェ


潮  「私のことだったら嬉しいなって。」エヘヘ


曙  「私が言うのもだけど、それだけはないわ。」


潮  「だよね・・・。」シュン


漣  「つーかさぁ。先の話するんじゃなかったっけ?それってば全部過去の話だべ?」


黒霧 「前提の話をしないと、みんなの向かう方向を揃えられないでしょ?」


漣  「んな軍隊みたいなこと言われてもにゃー。」


黒霧 「君は海軍の艦娘でしょうに。」


漣  「おっと、そうだった。」ハッハ


朧  「ちゃん澪は頭良いけど、な~んにも考えないでべしゃるよの。」


漣  「その艦娘人形はよく出来てんね。スピーカーぶっこぬいてくんない?」


朧  「何人たりとも私から言の葉を奪うことは出来ぬ。」フッ


漣  「先生、その口塞いでやれ。」


朧  「おぅし!ばっちこい!」


カポッ


漣  「何それ。」


黒霧 「ギャグボール。」


朧  「」フピー


漣  「なんで持ってんのよ。」エェ


黒霧 「さて、続きなんだけど。」


漣  「その状態で?」


黒霧 「三笠はまだこの世界に居るよ。」


漣  「いやせめてそのギャグ、なんだってぇ!!」クワッ


黒霧 「僕達はこの世界の歴史を正しく導く為に此処に居る。だから大本営やらパラオ泊地やら名も無き孤島やらに散らばっているんだ。」


黒霧 「一応、巡回もしてるんだよ・・・パオラが。そしてこんな写真を撮ったみたいなんだけど・・・。」スッ


漣  「これは・・・。」マジマジ


黒霧 「どう思う?」


漣  「ピントがぶれぶれでようわからん。」


黒霧 「練習しないとできない娘だから、許してあげて。」フフッ


漣  「でも、この砲塔の感じは・・・三笠、かなぁ?」ウーン


曙  「三笠って、解体処分されたんじゃなかった?」


潮  「紫苑ちゃん、私達も喋っていいの?」


曙  「いいのよ。居ない"体"なんだから。それと言いそびれてたけど、私のことは"灯"って呼んでちょうだい。」


潮  「あ、そっか。ごめんね、灯ちゃん。」ウフフ


漣  「確かに、あっかり~んの言うとおり三笠は解体処分されたべ?深海化したにしても、解体でっつーのは飛躍が過ぎねぇかな。」ムー


曙  「」イラッ


黒霧 「君と因縁のある三笠ではないよ。多分、新しく建造された三笠だ。」


漣  「ほほう。その心は?」


黒霧 「三笠の研究主任はその後の行方がわからないって話があったでしょ?」


漣  「せん姉の後輩だって話?まぁ、生きてるかどうかも定かではないたぁ言ってたねぇ。」


黒霧 「当時の海軍が、言い方は悪いけど、数人の死者が出たくらいで諦めると思う?」


漣  「あたしゃ、当時の海軍を知らねぇでね。だけど、諦めるとは思わねぇな。」


黒霧 「そう、三笠の研究はある孤島で未だに行われている。前元帥の死によって、大本営との繋がりが断たれた今でもね。」


漣  「あんたはそれを知ってたんけ?」


黒霧 「知らないはずがないよね。何せ東は前元帥の時代から、元帥補佐の座に就いていたのだから。」


漣  「せん姉はマジで知らなかったみたいだったけど?」


黒霧 「茜姉さんはこの世界の歴史について何も知らないよ。この世界の住人として紛れ込んでしまったからね。」


漣  「ほーん。で?うちらは何をしたらいいのかにゃ?」


黒霧 「力をつけて、研究施設ごと三笠を潰す。」


漣  「へぇ、面白れぇじゃん。」ニヒヒ


曙  「どんな言い掛かりをつけて潰す気よ。軍が主導した研究なら、それなりの建前が必要なんじゃない?」


漣  「そういうとこ頭回るよな、あっかり~んはさ。勉強はてんで駄目なのに。」


曙  「いい加減、我慢の限界なんだけど。」ワナワナ


潮  「抑えて、灯ちゃん。」オロオロ


朧  「」フピー


漣  「おめぇ、もう自分で外せよそれ。涎で大変なことになってんぞ。」ウワァ


フピピピピ キッタネェ!


黒霧 「建前に関しては心配無用だよ。勝手に自滅してくれるからさ。だからそれまでに君達を鍛え上げるわけだけど・・・。」


漣  「おう、よろしく頼むぜ!教官殿!」ニッ


黒霧 「君、暗殺術を学ぶ気はあるかな。」


漣  「・・・まじ?」



少女達の目指す道


漣  「澪ちゃんってば、暗殺者の弟子になっちった。」テヘッ


曙  「まっ、いいんじゃない?それで戦力が向上するなら。」


潮  「暗殺者かぁ。かっこいいなぁ。」


朧  「ちゃん澪にはぴったりなのら。」ウム


漣  「撫子もそう思っちゃう?アサシン澪が誕生しちゃう?」ムフフ


曙  「精々頑張りなさい。私達の為に・・・ね。」


漣  「へーい。巻き込んだ責任は取りますよっと。」


潮  「それは違うよ、澪ちゃん。私達は自分の意志でついてきたんだよ。」


漣  「えー。姫百合を口車に乗せるのはすげぇ簡単だった気が・・・。」


朧  「チョロいぜ、姫百合。」フッ


潮  「チョロくなんかないもん!」ムゥ


漣  「おめぇも大概だぜ?撫子よぉ。何たって自分から寄ってきたんだからな。」


朧  「つまりリーダーは私。」ドヤッ


漣  「それは意味がわからん。」


曙  「リーダーは澪でいいわよ。」


漣  「おっ、マジで?つーか、本名で呼ぶのな。」ヘヘッ


曙  「三笠の倒すのは漣じゃなくて澪なんでしょ?それに私達は何処まで行っても孤児院の仲間だから。」


曙  「あんたの帰ってくる場所は此処よ。目的を果たしたからって勝手に消えたら、許さないから。」


潮  「灯ちゃん・・・。」ウルウル


漣  「・・・たくよぉ。ほんとそういうとこだけ頭回るよなぁ、あっかり~ん。」


曙  「」ブチィ


曙  「憶えてなさい、莫迦澪。お姉ちゃんに錬成の特訓つけてもらって、いつか倍にして返してやる。」ゴゴゴ


漣  「わーお。澪ちゃん、大ぴーんち。」ハハッ



これから始まる時雨の訓練 何人化けるかわからない ヘイ!


五月雨「大変恐縮では御座いますが、私が開会の宣言をさせて頂きたく存じます。」


デハ


五月雨「激論!夜までそれ正解~!」


パーパッ パーパラッパー


五月雨「今回参加頂くのは、各分野に於ける教官の皆様です。宜しくお願い致します。」


三隈 「小隊指揮と座学の教官を務めます、三隈ですの。」


最上 「砲撃指導の最上だよ~。」フフッ


紫苑茜「戦闘糧食担当のお姉さんで~す。」


蓮華 「開発担当の蓮華だ。」


五月雨「回避機能訓練担当の五月雨です。実践演習担当の南方棲戦鬼さんは諸事情により欠席です。では議長、お願いします。」


黒霧 「はい。長々とありがとう。」


五月雨「形から入るのも大事かと思いまして。」フフン


黒霧 「新人の四人には、それぞれに用意したカリキュラムでの訓練を受けてもらう。理由は時間が無いから。」


三隈 「なるほどですの。」


最上 「わかりやすい理由だね。」


黒霧 「澪には僕が付く。艤装は軽さを重視して、小銃と小太刀があればいい。」


蓮華 「了解した。」


黒霧 「灯には茜姉さんが錬成の特訓を。砲撃の訓練は要らない。肉体づくりからやらないといけなくなるからね。」


紫苑茜「任せなさい。序でに灯個人の能力も覚醒させてやるわ。」


黒霧 「姫百合は最上に任せる。重巡クラスの装備をさせるから、そのつもりで砲撃指導を頼むよ。」


最上 「あいさ~。」


黒霧 「撫子は回避機能訓練を中心に行う。頼んだよ、五月雨。」


五月雨「お任せあれ。」ムフン


黒霧 「座学、小隊指揮の講義は全員に行う。課題は軽めにね。ただし、灯には容赦しなくていい。」


三隈 「了解ですの。」ニィ


黒霧 「艤装の詳細は追々詰めていこう。コンセプトは今日中に渡すよ。」


蓮華 「明日でも構わんぞ、父上。今晩は私の妹をつくるという重要な仕事があるだろう?」フッ


黒霧 「それだと実践演習は誰が担当するのかな?」


蓮華 「・・・。」


黒霧 「妹は三笠の件が片付いてからね。」フフッ


蓮華 「ぶっ潰す。」オォォ


五月雨「これはもの凄い艤装が完成しそうですね。」ヤレヤレ



牡蠣とれた~海胆も~♪


近衛麗「ん・・・ごちそうさま。」


赤城 「くっ。」ガクッ


近衛麗「私を甘く見たわね~。艦娘になると多少膂力が増すみたいだけど、それじゃあ魔族には届かないわ~。」ウフフ


赤城 「卑怯な手を・・・。」キッ


近衛麗「そんな瞳で見ないでくれる?これが私の闘い方なの。生まれ持った能力を活用した結果なの。卑怯と言われる筋合いは無いわ。」


赤城 「」クッ


南方戦「卑怯かどうかは置いておくにしても、子供の前ですることではないわよねぇ。」ユラァ


赤城 「そうですっ!」


近衛麗「」フイッ


南方戦「アンタもよ、黒髪の。」


赤城 「赤城です!」


近衛麗「あら、まだ元気そうね~。吸い足りなかったかしら~。」ニィ


南方戦「ふたりとも正座!」クワッ


赤城 「・・・はい。」


近衛麗「え~。なんで私が貴女に怒られないといけないの~?」ブー


南方戦「アンタ、あのひとの娘なんでしょ?だったらワタシの娘も同然じゃない。母が娘を叱るのは必然よ。」


近衛麗「私、ちゃんと母親いるんだけど・・・。」


南方戦「口答えしない。」


近衛麗「へーい。」


パオラ「代わりに叱ってくれる人が居るっていいわね~。うちに欲しいわ。」


レ級 「ちゃんと仕事しようぜ、パル姉。泊地の提督なんだろ?」


パオラ「うちは自由な泊地運営が売りだから。」アハハ


ヲ級 「組織の頭が正常に機能していない状態は無秩序というの。自由と無秩序を履き違えると大変なことになるの。」


パオラ「手厳しいなー。」ハハ


神命 「パルちゃんの所って、確か空母の娘しか居ないんだよね。」


パオラ「そうよ。うちは偵察任務が多いから。」


レ級 「でもよぉ。空母って燃費悪いだろ?空母だけで戦線維持とか無理だろ、普通。」


パオラ「そこはほら、普通じゃない要素があるでしょ?」フフッ


ヲ級 「魔族は便利なの。」ヘッ


パオラ「その言い方は凄いひっかかるわ。」



オチまで駆け抜けたい気分。


南方戦「大体、一発殴らせろって、アンタあのひとに何されたのよ?」


赤城 「告白してもいないのにフラれたことに腹が立ちまして。」


南方戦「・・・はぁ?」


近衛麗「あんたにパパの恋人が務まるわけないでしょうに。」ハッ


赤城 「なんですって?」ギロッ


近衛麗「何?また吸われたいの?」ギラッ


南方戦「アンタ達は・・・。」ワナワナ


パオラ「とことん相性悪いわね、あのふたり。」


神命 「他人事みたいに言ってるけど、片方はパルちゃんの部下だよね?」


黒霧 「南、仲裁おつかれさま。後は僕達が引き継ぐよ。」


南方戦「時雨、丁度良かったわ。そろそろ我慢の限界だったの。」フゥ


近衛麗「パパぁ、お帰りなさい。」フフッ


赤城 「黒霧時雨・・・。」ジトォ


黒霧 「どうしてそんな瞳で見られてるのかはわからないけど、態々此処に乗り込んでくるってことは相当気に障ったようだね。」


赤城 「ええ、それはもう。」


黒霧 「そっか。じゃあ、聞かせてもらえるかな?パオラも交えて。」チラッ


パオラ「え?」


黒霧 「僕は赤城と殆ど接点が無い。つまり、君が余計なことを吹き込みでもしない限り、彼女に嫌われるはずがないんだよね。」フフフ


パオラ「あー。」ハハッ


近衛麗「どうでもいいけど、早く終わらせてね。私もパパとお話したいから。」


赤城 「どうでもいい?」アァ?


近衛麗「もう会えないかも知れなかった父と娘が、奇跡的に再会できたのよ?積もる話もあるの。」


近衛麗「それとも何?あんたの用事は、これよりも大事な話だって言うの?」


赤城 「・・・。」


パオラ「赤城?」


赤城 「帰りましょう、パルちゃん。」


パオラ「え?いいの?貴女、結構な怒り方してたけど・・・。」


赤城 「いいんです。私の用事なんて、父娘の時間を奪ってまで押し通すものでもないですから。」


パオラ「そう・・・。」フフッ


赤城 「ただ、最後にひとつ。よろしいですか?時雨さん。」


黒霧 「何かな?」


赤城 「貴方はどんな女性を妻に迎えるのですか?」


近衛麗「」ピクッ


神命 「おおっ。なんて興味深い質問を。」


黒霧 「僕が妻にする女性・・・か。そうだね。南みたいな女性かな。」ウーン


南方戦「///」


レ級 「紅くなってんぜ、南姉。」ニヤニヤ


南方戦「うっさい。///」フンッ


赤城 「もう少し具体的に話していただけませんか?私は、南さんの為人を知りませんので。」


黒霧 「ヲ級、南ってどんな女性?」


ヲ級 「ツンデレ、努力家、家族想い、負けず嫌いで子供っぽい。そしておっぱい。」キリリッ


南方戦「ヲーちゃん?」


赤城 「なるほど、"胸"ですか。」


黒霧 「訂正させてもらえるかな。」アハハ


近衛麗「胸なら私だって・・・。」ムゥ


神命 「くっ、強敵がいっぱい。」


黒霧 「みんな、僕の言葉を聴いて。」



あなたの求めるものは何ですか?


赤城 「それで、貴方が女性に求める本当の条件は何になるのでしょうか?」


黒霧 「僕が女性に求める条件は、昔からひとつだけだよ。」


赤城 「その条件とは・・・?」


黒霧 「僕を愛してくれること。」


神命 「私は兄様を愛しています!」ズイッ


パオラ「ちょっと落ち着こうか。」ドウドウ


赤城 「それだけ、ですか?」


黒霧 「それだけだよ。今も昔も、これからも。」


赤城 「そうですか。やはり、年下が条件とは貴女の戯言だったようですね、パオラ。」フフフ


パオラ「いや、本当よ!時雨には"お姉ちゃんが傍に居ないと駄目になる呪い"が掛かってるから、年下じゃないと恋愛対象にならないの!」


ネッ ソウヨネ?


黒霧 「茜姉さんが掛けた呪いのこと?あれならとうの昔に解けてるよ。」


パオラ「は?」


黒霧 「本で勉強した程度の茜姉さんが、永久に解けることのない呪いなんて掛けられると思う?」


パオラ「確かに・・・。」


赤城 「結局、事の発端はパルちゃんの勘違いなのですね。皆様、大変後迷惑をお掛けしました。謹んでお詫び申し上げます。」スッ


パオラ「ごめん・・・て、待ちなさい。上手いこと責任転嫁しようとしてない?」


赤城 「そんなことはないですよ。では、私達はこれで失礼致します。」ペコリ


パオラ「え?これで終わり?ほんとに帰るの?」


赤城 「何をしているのですか、パルちゃん?早く帰って、国語のお勉強ですよ。」


パオラ「時雨ぇ。」ウルウル


黒霧 「やめてよ。そんな瞳をされたら、虐めたくなっちゃうじゃないか。」フフッ


パオラ「どっちも地獄か・・・。」ハァ



愛さえあれば。それは欧米的な考え方。


チラッ


漣  「愛してくれるなら誰でもいいってよ。ったく、どんな昏い過去を持ってんだか。」


紫苑茜「んなわけないでしょうが。過去については強く否定できないけど、誰でもいいなんてありえないわ。」


漣  「だよな~。愛してくれるだけでいいなら、せん姉も嫁になってないとおかしいもんな。」


紫苑茜「そういうことよ。」フフン


潮  「じゃあ、どうしてお姉さんはお嫁に行けないのかな?」


紫苑茜「」グサッ


曙  「あんた、今のはエグいわ。」


朧  「南姉との違いを考えるとよいのではないかと私は思うのだ。」


紫苑茜「わたしと南方ちゃんの違いねぇ。」


朧  「そこにアトランティスへの鍵はある!」


曙  「何の話よ。」


漣  「それで言うとさぁ。あかりんも結構いい線行ってると思うのよ。」


曙  「はぁ?」


漣  「だって、ツンデレ、努力家、家族想い、負けず嫌いに子供っぽい。そしておっぱい、だろ?」


潮  「殆ど当てはまってる。」ワァ


漣  「だしょ?ぽい、じゃなくて本当に子供だってことを除けば、当てはまってないのは・・・。」


朧  「おっぱい。」キリッ


曙  「これから成長予定よ。見なさい。これが私の未来予想図よ。」フンッ


紫苑茜「歳の離れた姉妹の正しい使い方ってね。」


朧  「あかりん、ボスの嫁になるのか?」


曙  「何故そうなる。」


潮  「え?違うの?」


曙  「待って。いつそんな話になった?」


漣  「いや~。今の問答は師匠の現嫁である南姉に取って代わりたいって風にしか聞こえねぇぜ?」ニィ


曙  「潮、一回病院行って看てもらいなさい。」ガシッ


潮  「どうして、私だけ?」


曙  「漣と朧はただのボケよ。でもあんたのはマジだわ。私は心配してるの。」


曙  「どうしてあんなに勉強しているのにぶっちぎりの最下位なのか。きっと頭の何処かが悪いのよ。一度、看てもらいましょう?」ネッ


潮  「」ブワァ


ウワァァァァン! ドコカイタイノ!?


漣  「ああ、痛いだろうぜ。」


朧  「ハートってやつがよぉ。」トオイメ


紫苑茜「わたしは頭が痛いわ。」ヤレヤレ



急に姉妹が増えてすぐに仲良くなれるわきゃあない。


近衛麗「やっとふたりっきりになれたわね、パパ。」ウフフ


黒霧 「まるでストーカーだね、麗。」フフッ


近衛麗「似たようなものじゃない。あの頃の私はパパにべったりだったから。」


黒霧 「本当にね。いい歳して困ったものだよ。」


近衛麗「いい歳って。まぁ、そうだけどさ。もう少し別の言い方なかったの?」ムゥ


黒霧 「そうだね。麗が僕の言い付けどおり、いい娘のままだったなら違ったかもね。」


近衛麗「」フイッ


黒霧 「身に憶えはあるかな?」ニコニコ


近衛麗「憶えしかございませんです。はい。」


黒霧 「まったく、早く好いひと見つけて落ち着いたら?」


近衛麗「好いひとなら居るわよ。」


黒霧 「当然、僕は除いてるよね?」


近衛麗「私は生涯独身を貫く運命なのね。」


黒霧 「麗・・・。」ヤレヤレ


近衛麗「だって仕方がないじゃない。娘が最初に意識する異性は大概が父親よ?普通なら法と血の壁に阻まれて諦める。」


近衛麗「だけど私は違う。パパを諦めないといけない理由がないし、本気でパパを愛してる。両方の意味でね。」


黒霧 「どうしてそこまで僕にこだわるのさ。他にも男はいるだろうに。」


近衛麗「パパに責任を取ってもらわないといけないから。」


黒霧 「具体的に、且つ納得できるように説明して。」


近衛麗「男でも女でも、自分に自信がある人は無関心な態度を取られることに慣れてない。更に言えば、許せない。」


近衛麗「だから自分に関心を向けさせようと必死になる。で、その人を振り向かせたいなんて思いが想いに変わっていく。」


近衛麗「パパの常套手段でしょ?」


黒霧 「否定はしない。」


近衛麗「私はその被害者なんだけどな~。」


黒霧 「最初からべったりだったくせによく言うよ。」


近衛麗「そんな昔のことは憶えてませ~ん。」


黒霧 「そっか。麗は僕と過ごしたあの日々を忘れてしまったんだね。」ヨヨヨ


近衛麗「あ、いや・・・憶えてる!憶えてるから!」ワタワタ


黒霧 「じゃあ、始めからべったりだったことも憶えてるよね?」ニコリ


近衛麗「はい、憶えております。」


黒霧 「どうして嘘を吐いたのかな~?」ニコニコ


近衛麗「それは・・・パパに、責任を・・・。」モゴモゴ


黒霧 「責任?」


近衛麗「ああ、もう!わかりました!降参ですぅ。私の負けですぅ。ただパパに構ってほしかっただけですぅ。」イーダ


黒霧 「嘘を吐く悪い口はこれかな~。」ムニムニ


近衛麗「地味にいひゃいかりゃ、やめて~。」ウゥ


黒霧 「昔に較べるとハリが無くなったね。」ウリウリ


近衛麗「嘘だと言って・・・。」ズーン


・・・


五月雨「楽しそうですね。」


レ級 「あいつも父ちゃんの娘なんだろ?ってことは、俺達の姉ちゃんなんだよな。」


ヲ級 「ヲーちゃんは別に構わないの。」


蓮華 「ほう、意外だな。ヲ級が奴を認めるとは。」


ヲ級 「寧ろ認めてないからこそなの。お父さんに言いくるめられてる間は姉妹として接してやってもいいの。」


蓮華 「末恐ろしい娘だな。」


五月雨「末娘だけにですか?」


レ級 「うわ、さっぶ。」


蓮華 「明日の訓練が楽しみだな。」


五月雨「やめてくださいよ。怪我をするのは撫子ちゃんなんですから。」


・・・


近衛麗「あの娘達、わざと聞こえるように喋ってるのかしら。」


黒霧 「まぁ、計算ずくだろうね。」


近衛麗「上手くやっていけるか、心配だわ~。」


黒霧 「下手に気は遣わないほうがいい。僕を取り合うくらいが丁度良いんじゃないかな。」


近衛麗「人気者は大変ね、パパ。」


黒霧 「本当に大変なのは、その周りに居る君達でしょ。僕はただ受け止めるだけでいい。まぁ、偶に受け流すこともあるけど。」


近衛麗「偶に?殆どの間違いでしょ。」


黒霧 「そうかもね。」フフッ



未来へ。


南方戦「いよいよ始まるのね。」


黒霧 「そうだね。始まるまでは長かったけど、始まってしまえば、きっとあっという間だ。」


南方戦「戦艦・三笠。あの娘達だけで倒せるかしら。」


黒霧 「倒せるさ。倒してもらわないと困る。」


南方戦「歴史が変わってしまうから?」


黒霧 「そう。間宮のときのようなことは御免だよ。」


南方戦「集積にやらせればよかったのに。」


黒霧 「集積に間宮を倒せるような戦闘力は無いよ。中身が茜姉さんだから。」


南方戦「ねぇ、ワタシあの人のこと何て呼べばいいのかしら。」


黒霧 「今までどおり集積でいいんじゃない?」


南方戦「アンタ、嫁の相談くらい真面目にのりなさいよ。」ムゥ


黒霧 「真面目だよ。集積地棲姫から紫苑茜に、姿こそ変わったけど中身は同じ。」


黒霧 「南に対する接し方も変わってないでしょ?だったら、南も変に意識しなくていいさ。そうでしょ?」


南方戦「そう・・・ね。何よ、ちゃんと考えてくれてるじゃない。」フフッ


黒霧 「まぁ、偶々思い付いただけなんだけど。」シレッ


南方戦「それはどっちのことを言ってるの?提案?それとも理由のほうかしら?」ジト


黒霧 「どっちも。」ニコリ


南方戦「やっぱり適当なんじゃない!」


黒霧 「心外だなー。思い付きとはいっても、ちゃんと自分の中で整理しながら話してるよ。少なくとも適当ではないさ。」


南方戦「証明して。」


黒霧 「・・・何を?」


南方戦「アンタがワタシのことをちゃんと想ってるってこと。」


黒霧 「それは君がただしたいだけなんじゃ。」


南方戦「こっちは昼におあずけくらってんのよ。つべこべ言わずに付き合いなさい。」ノシッ


黒霧 「明日は寝不足かな・・・。」ハハ


・・・


五月雨「見える、見えますよ。貴女の敗北が。」フフフ


蓮華 「戯言を。その程度の数字で勝ったつもりか?」フッ


レ級 「交換はなしでいいのか?」


五月雨「当然。」


蓮華 「ああ、必要ない。」


イザ ショウブ!


五月雨「ハートの2!?」


蓮華 「ダイヤの2だと!?」


ヲ級 「どっちも最弱なの。」


レ級 「お前ら、引きなさすぎだろ。」


ガチャッ


紫苑茜「あんた達、そのくらいにしときなさいよ~。特にレーちゃん。あんた朝弱いでしょ~。」


レ級 「へーい。」


紫苑茜「じゃ、わたしは妹の所に行ってくるから。」バタム


ヲ級 「いってらっしゃいなの~。」フリフリ


五月雨「これからお母さんは妹さんに付きっきりになりそうですね~。」


レ級 「しゃーねぇよ。あんなに泣かれたんじゃあ、もう何も言えねぇよ。」


ヲ級 「外まで聞こえてたの。」


五月雨「それならせめて、私達からお母さんを奪った分の仕返しをしてあげましょうか。」


レ級 「母ちゃんの妹ってことは・・・。」


ヲ級 「おばちゃんって呼んでやるの。」ニィ


フフフフ・・・


蓮華 「まったく、集積の一派は陰湿だな。」ヤレヤレ


・・・


潮  「Zzz」スヤー


漣  「相変わらずだにゃ~、姫百合は。」


朧  「よく学び、よく遊び、よく食べ、よく眠る。」


漣  「身体は成長する一方で。」


朧  「頭は全然良くならない。」


漣・朧「不憫だ・・・。」


曙  「艦娘になったら成長は止まるでしょうが。」


漣  「此処だけの話。姫百合、去年より身長とバストが成長してるのよ。」


曙  「マジで?」


漣  「マジマジ。つまり一番不憫なのは。」


漣・朧「外見も中身も変わらない、あっかり~んなのね。」


曙  「喧嘩売ってるのかしら。」ワナワナ


紫苑茜「くぉら。うちの妹を虐めるとお姉ちゃんが黙ってないわよ。」ユラァ


漣・朧「うはは~い。」


曙  「お姉ちゃん・・・。」


紫苑茜「大丈夫よ。灯はこのわたしの妹なのよ?今にないすばでぇになるわ。」ウフフ


曙  「・・・。」


漣  「あー。せん姉?そういうのは多分、逆効果だぜ?」


曙  「潮はともかくとして朧も、漣だって多少の膨らみがあるのに・・・。」ドヨーン


紫苑茜「あ、灯・・・?」


曙  「ねぇ、お姉ちゃん。お姉ちゃんはいつから育ち始めたの?」


紫苑茜「え?えっと、あなた達くらいの歳の頃かしら。」


曙  「・・・私、本当にお姉ちゃんの妹なのかな。」ハハッ


紫苑茜「こういうとき、何て声を掛けたらいいの?」ヒソヒソ


漣  「それを考えるのがお姉ちゃんの仕事だろ?」


紫苑茜「姉にそんな仕事は無いわよ。」


朧  「いっそ押し倒しちまいな。」ヘッ


漣  「撫子、百合ネタはもうやっちまったよ。」


朧  「なん・・・だと。」


紫苑茜「それ、採用。」ポンッ


漣・朧「は?」


紫苑茜「灯。」ギュッ


曙  「ん。お姉ちゃん、苦しい。」ムギュッ


紫苑茜「あんたはわたしの妹よ。神命ちゃんも言ってたでしょ?魂の波長が似てるって。」


紫苑茜「どれだけ身体が貧相だって、勉強ができなくたって、わたし達の間には魂の繋がりがあるの。灯はわたしの大切な妹よ。」


後書き

文字数の関係上、中途半端なところで終わってしまいました。訓練島が稼働する、なんて始まり方をしておきながら、未だ訓練は始まっておりません。どうしてこうなった。まぁ、それは思い付きでダラダラ書いているからなのですが、次作では漣達の訓練と三笠との決戦の様子を書いていく"予定"です。あっかり~ん状態だった漣が、主人公として輝くことを祈る許りで御座います。

では、簡単なキャラ紹介をば・・・。

パルテ・ハオ・ライト・・・パラオ泊地の提督。元妖精族の魔族で、風と植物を操ることができる。空母許りを運用しているため、泊地の運営は常にギリギリ。パオラ自身が出撃することで何とかやりくりしている。興味関心のある事にしかやる気が起きないらしく、読み書きができない。従って、書類仕事は全て他人任せ。

大鳳・・・パラオ泊地所属。パオラの初期艦。田舎から出稼ぎに来た純朴少女で、一生懸命な女の子。パオラがポンコツなため、書類仕事は殆ど大鳳が受け持っている。想像力豊かで、最近は自作小説を書いているらしい。

龍驤・・・パラオ泊地所属。泊地の中では大鳳の次に古株。建造組としては最古参。艦載機運用の技術に長けており、新人研修を担当することが多い。嘗ては胸にコンプレックスがあったが、時雨に頼み込んでCカップの胸を得た。現在では大本営に所属し、物資輸送を一手に担っている。

赤城・・・パラオ泊地所属。元キャリアウーマンで書類仕事はお手のもの。ただし極度の機械音痴であり、パソコンの類いは一切使えない。実はそれが原因で会社をクビになった。艦娘になる以前から大食いだったらしく、食べても太らない特殊な体質をしている。

飛龍・・・パラオ泊地所属。龍驤の次に建造された古参メンバー。冷めた性格をしており、人にも物にも執着しない。優秀な艦娘ではあるが、何処か陰のある少女。

蒼龍・・・パラオ泊地所属。飛龍と同時に建造された。天真爛漫で悩みは三歩歩けば忘れてしまう。時雨に恋をしているが、その原因はパオラの口車に乗せられたこと。勘違いのはずが本気になってしまった純粋が過ぎる天然娘。


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