2015-05-17 14:48:03 更新

概要

提督と艦娘たちが鎮守府でなんやかやしてるだけのお話です

注意書き
誤字脱字があったらごめんなさい
基本艦娘たちの好感度は高めです
艦娘達は提督の見てるアニメやら何やらに影響されて妙な事をやりだすかもしれません
提督が出撃しちゃうシーンが少しだけ
ちょっと長いかもしれない


前書き

14回めになりました
楽しんでいただければ幸いです お目汚しになったらごめんなさい
ネタかぶってたら目も当てられませんね

それではこの番組は

北上「ほーら提督、北上様はこっちだよーん」(←ゲーム中
提督「だーもー、人の射程外からちまちまと」(←ゲーム中
多摩「提督、諦めるにゃ。その構成では勝てないにゃ…」
大井「そうよ、私みたいにミサイル満載して木曾さんを爆砕するのよっ!」
球磨「いやいや、球磨みたいに火砲を満載して木曾を粉砕するクマっ!}
木曾「お前らは…そんなに俺を打ち砕きたいのか…」

夕張「出来たわっ!私の自信作。試し撃ちしなきゃっ」(使命感
金剛「まさかほんとにBuildするとは…」

三日月「あれ、皐月…この変な名前の艤装は?」
皐月「ああ…うん。なんかついやっちゃんたんだって…そろそろ出来るって聞いたけど」
文月「きっと楽しくなってきたんだね」
望月「zzzzz」

菊月「私の砲火力もう少し上がらないものだろうか?」
長月「駆逐艦だろ、お前は…」

睦月「ふぉぉぉ♪、睦月と如月に上着(改2用)届いたしっ」
如月「一足先に、ね♪」

卯月「うーちゃんとっ」
瑞鳳「ず、瑞鳳のっ」
卯月「今 回予告 ぴょんっ」
瑞鳳「 今 回 予 告 だよっ」
弥生「バラバラ…」
瑞鳳「ちょっと卯月っまともに合わせてよっ」
卯月「瑞鳳がずれてるんだぴょんっ」
弥生「はぁ…球磨さん編、始まります…」(ぺこり

以上のメンバーでお送りします


↑前「提督と皐月」

↑後「提督と大本営」



提督と球磨


ー球磨達の部屋ー


木曾「よっしゃっかったー!!」(←winner

提督「げ、木曾さんに負けた…」(←Loser


TV画面から爆発音が鳴り響き

画面にリザルトが表示される

暇だったから始めたTVゲーム

その結果は珍しく木曾の勝ちだった


球磨「提督、よわっちぃクマ…」

提督「だってぇ…」


パタリとその場で提督がへたり込む


木曾「さぁ、提督。罰ゲームの時間だぜ」


木曾が側に置いてあったハリセンを拾い上げ上段に構えた


提督「木曾さん…初めてなの、優しくして…ね?」


恥ずかしげに自分の体を抱き、上目遣いで木曾を見つめる提督

どことなく、褥の上の少女のような雰囲気を演出していた


木曾「…ああ、任せろ。全力でいってやる」


冷めた目と呆れたような声音でもって答える木曾

直後、部屋いっぱいに乾いた音が広がった




提督「きーたーかーみーさーまー、木曾さんがいじめるの」


空いていた北上の膝の上に提督がぽふっと頭を乗せる

誰が見ても膝枕だった


北上「おーよしよし、大人げないお姉ちゃんですねー」


その乗せられた提督の頭を、北上が子供をあやすように優しく撫でていた


北上「木曾っちも手加減くらいしたげればいいのに」

提督「えー…それはなんかヤダ」

北上「…提督も大概わがままよね?」

提督「そーゆー北上様だって、手加減してくれないじゃないか」

北上「手加減したら私が負けちゃうじゃんか。提督ってば弱っちぃのに手加減すると妙に強いんだもの」

提督「それは…褒めてるのか?」

北上「まさか」

提督「でしょうよ」


肩をすくめて見せる北上に提督が苦笑いで応えた




球磨「なに提督に勝ったくらいで良い気になってるクマ?」


提督が投げ出したコントローラーを球磨が手に取り位置に付く


木曾「お、やるか?」


それをみて木曾もコントローラーを握り直す


球磨「ふん。提督は鎮守府の中でも最弱クマ、面汚しクマ、ぺっぺけくーだクマ」

木曾「なんだよ、ぺっぺけくーって…」

球磨「とはいえ。提督を倒した罪、万死に値する」


ギリギリとコントローラーに込められる力が増していく


木曾「はんっ、提督が弱いのが悪い…」


それを鼻で笑って返す木曾


球磨「道理だクマ。ならばその言葉」


球磨・木曾「今度はお前にくれてやる」


第2ラウンド開始




大井「て、ていとく…」


茶器のこすれる音が聞こえ、視線を向けてみると

大井がお盆をもったまま固まっていた


大井「何をしてらっしゃるの?」

提督「何って?膝枕?」


指摘され、これみよがしに北上の太ももに頬ずりし始める提督


大井「ちょっとっ!?私だってまだしてもらったこと無いのにっ」


驚きと嫉妬と羨望で妙なことを口走る大井


多摩「…(そういう問題なのかにゃ)」


その横で多摩が寝っ転がっていた


提督「初めての相手は大井ではないっ、この提督だっ!」


膝枕されたままそんなこと言っても、一向に格好なんてつかないけれど


多摩「さすが提督、下らない事を平気でやってのけるにゃ…」

北上「いやぁ、私は別にどっちだっていいんだけどね」


投げやり気味な多摩と北上


提督「んだよ、ノリが悪いな北上様」

北上「えー…だってそこに乗っかると、わたし泥水で足洗わないといけなくなるじゃん、それはやだなぁ」

提督「あぁ、それはそうね…」


至極まっとうなご意見だった


大井「そ、それじゃあ北上さん、私もお膝を…」


「お借りしてもいいかしら」

そう口にしようとした大井が、その口を開いたまま固まった


多摩「ほほぅ、これはなかなか気持ちが良いにゃ」


提督の反対側、空いていた北上の膝に多摩が頭を乗っけていた。膝枕勢その2である


提督「だろ?」

多摩「にゃ、明日からはここで丸くなるぅ」


多摩がそのまま体を丸め昼寝の体勢に入った


北上「あらら、北上様モテモテで困っちゃうねぇ」


とはいいつつも、満更でもなさそうな北上様


大井「この置き去りにされた想いは何処に置けばいいのかしら…」

北上「なに、大井っち?そんなにして欲しかったの?」

大井「…(こくこく)」

北上「まあ、あとでね?今は見ての通りだからさ」


見ての通り…多摩と提督が両膝を占拠していた

どっからどうみても北上様が保護者みたいだった




球磨「ふんっ、ざっとこんなもんクマ」(←winner

木曾「げっ…」(←Loser


画面を前に、右手を振り上げ勝利宣言をする球磨と、がっくりとうなだれる木曾


球磨「さぁ、罰ゲームの時間だクマ」


その辺に転がっていたハリセンを球磨が手に取り上段に構える


木曾「あーえと、そう。は、はじめてなんだ…やさしく…な?」


木曾がちょっと可愛らしく懇願してはみるものの…


球磨「くまくまくまw。任せろ、全力でやってやる」


        「いってー!」

直後乾いた音と木曾の悲鳴が広がった


そんないつも通りな日常だった




~回想~


~執務室~


球磨「は?提督がいない?どうゆう事クマ」


着任の挨拶をひと通り済ませた後、提督の所在を聞いてみればこれだった


皐月「いや、その…オゾンより下にはいるとおもうよ…」


いつだかに聞いた妖精さんの言葉をそのまま繰り返す皐月


球磨「せめて日の本くらいにして欲しい…」

皐月「あ、うん…そうだよね」


日の本どころか鎮守府に限定されても良いくらい


球磨「はぁ、仕方ねぇクマ…ん?」

皐月「あーうん。なんかごめんね…」


ふと、球磨がじっと1点を見つめていた


皐月「球磨さん?」

球磨「ああ、いや…それじゃちょっと探してくるクマ」


退室するクマの背中を皐月が見送る

そして、扉が閉まるの確認して口を開いた


皐月「もう行ったよ…司令官」

提督「…ほんとに?」


皐月が座っている提督の机。その下から声が返ってくる


皐月「ほーんと」

提督「ほいほい出て行ったら、噛み付かれたりしない?」

皐月「いいから出てこい」

提督「あ、はい」


もぞもぞと机の下から提督が姿を表した


皐月「なーんで急に隠れたりするのさ」

提督「隠れるのに理由がいる?」

皐月「また悪戯かい?ボクの時みたいにさ…」


じとーっと非難の視線で提督を見据える皐月


提督「…人が逃げ隠れするなんて、怖いから意外あるのかい?」


皐月の視線から逃れるように、提督が顔を反らして呟くように口にする


皐月「怖いって…まあ、そういうのは、うん」


しゅんっと皐月が肩を落とした

艦娘。容姿こそ人のそれではあるが、人とは違うもの

良くても、外人さんを見るような目で見られたり

悪ければ、外人さんを毛嫌いするように扱われたり

酷ければ、深海棲艦と同じように見られたりなんて話もあるくらいだった


皐月「司令官、そんなに怖いかい?ボクらの事…」


ボクらの事、つまり艦娘の事が怖いのかと、恐る恐る皐月が提督に問う

あまり聞きたくはない事だったが

今後の事を考えればここではっきりさせておこうと


提督「ん?別に。私は初対面だったらだいたいこんなもんよ?」

皐月「え、ん?初対面だったらって、普通の人相手でもって事?」


予想外の言葉とあっけらかんとした返答に、皐月が目を白黒させる


提督「ばーか、普通の人のがよっぽどこぇーぞ。何考えてるか分からんし」


あーやだやだっと、提督が何かを追っ払うように手を振りだす


皐月「司令官、それさ…人見知りっていうんだよ、知ってた?」

提督「そうともいう」

皐月「そうとしか言わない…はぁ」


聞いてしまえばなんて事のない答えだった。心配したのが馬鹿に思えるくらいに

皐月の緊張がとけ、肩から一気に力を抜いた


そして、彼女には少々サイズの大きい椅子に体を預ける


提督「なーに?嫌われたりーとか考えた?」


ニヤリと笑みを貼り付けた提督が皐月に顔を近づけた


皐月「ん…まぁ、すこしだけ」

提督「ふふ、可愛い」

皐月「…」


ニヤニヤがニタァっと広がり口角がさらに釣り上がる


提督「可愛い」

皐月「2度も言わないでさ…」


皐月が恥ずかしそうに身をよじり、提督の視線から逃れようと顔を背ける


提督「さーつーきー♪」

皐月「て、ちょっと司令官っ」


提督が無遠慮に皐月に抱きついた


皐月「頭なでるなっ、頬ずりするなぁっ…って、何処触ってんのさっ!?」


過剰なスキンシップに耐え切れなくなった皐月が強引に提督を引き剥がした


提督「おっとと、やり過ぎたか」

皐月「もうっ、遊んでる暇あったら球磨さん探してくるっ、いいね?」

提督「あ、はい」


皐月の剣幕に押されて提督が素直に頷いた


皐月「はぁ、もう…」


提督を執務室から追い出したあと、皐月の口から深い溜息がこぼれた


皐月「可愛い、か…」


提督の言葉を何となく反芻する

こそばゆい感じ、嬉しくもあり照れくさくもあった


皐月「ん?」


頬に風を感じ顔を上げてみれば、開いた窓が目に入る

別に自分で開けたわけではなく、司令官を追い出した時にそのまま飛び降りた後だった

3階から飛び降りるような人が人見知りという事実に疑問が浮かぶ

まあ、提督業をやる人は変なのが多いとは話には聞くけれど


開いた窓を閉めようと手を伸ばしてみれば、自分の顔がガラスに映っていた

金髪で金眼で、まだまだ幼さの残る少女の顔

そして…それに気付いた皐月が自分の口元を手で触れた


皐月「うわぁ…」


ガラスに映った自分の顔が嬉しそうにニヤけていた




~食堂~


球磨「意外と物は揃ってたクマ」


球磨の目前、その机の上

大量の肉と、煌々と赤い光を灯す炭、それを内包した七輪が置かれていた


球磨「後は焼くだけクマ」


球磨の脳裏に先ほどの光景が浮かび上がる

皐月の足元、その机の下の隙間から視えた人影

ざっと見た限りこの鎮守府には他の艦娘はおろか人はいないようだった

ではあれが提督だったんだろう

あんな所でナニをしてたのか、までは問うまいが

とりあえず、隠れてるものを探すなんて時間の無駄で

ならば引きずり出せばよろしかろうと

彼女はそう判断した


球磨「さあ、肉よ。焼けるクマ」


窓は全開、扉も全開、匂いや煙は撒き放題だった

時刻は昼時。そんな時間に美味そうな肉の匂いでも嗅げば


球磨「ふふふふ、提督が釣れるのも時間の問題クマ」


立ち込める煙と、充満する肉の匂いの中

焼けた肉を食べ始める球磨ちゃんだった




~執務室~


自分のニヤケ顔が見てられなくて、カーテンを下ろそうとした皐月の手が止まる


皐月「え、煙…って、どこからっ!?」


慌てて開いた窓から身を乗り出して煙の元を探し始める


皐月「…食堂からって、もうっ!」


だっと、踵を返すと全力で駆け出した皐月だった




~食堂~


皐月「…何やってるのさ二人共」


食堂に飛び込んだ皐月が目にしたもの

焼ける肉とそれを頬張る馬鹿2人


提督「くうかい?」

球磨「皐月も食べるクマ?」


2人してお箸に肉をはさみ皐月に差し出す


皐月「…はぁぁ…はぁぁ…」


皐月が盛大にため息を吐き出す、2回も


皐月「君ら馬鹿なの?」


素直な感想を口にする皐月


球磨「…?」

提督「…?」


提督と球磨、2人がお互いを視線を送る


球磨・提督「提督(球磨)、馬鹿だってよ」


肉の挟まったお箸をお互いに向けあい馬鹿にしあう馬鹿達


球磨・提督「あむ」


そして、お互いに向けられた肉をそれぞれ頬張った


皐月「きーみー「ら」っだよっ!2人に言ってんのっ!」

球磨・提督「…(もぐもぐごっくん)なにをそんなに怒ってる(クマ?」


1人地団駄を踏む皐月と、不思議そうな顔をする2人


皐月「良いからっ火止めてっ!」


ジリリリリリ…

が、少し遅かった

不安が煽られそうな警報音の後、天井から水がバラ撒かれた

スプリンクラーが発動した瞬間だった

程なくして辺り一体水浸しになる

もちろん、皐月も、球磨も、提督も


「…」


バツが悪そうな球磨と提督

そして、皐月の濡れた肩がわなわなと震えだすと…


 「もうっ、どうすんのさっこれっ!!」


キーンっと皐月の声が食堂を埋め尽くした



~執務室~


それからちょっとたった後

提督がソファーで寝っ転がっていると

勢い良く執務室の扉が開かれる


球磨「提督!」


そして開かれた扉から球磨が飛び込んできた


提督「ん?どうした騒々しい」

球磨「どーしたもこーしたもないっ、修復剤をっ、高速修復剤を所望するクマ!」

提督「勝手に使え、そのへんに転がってたろう」

球磨「わかったクマ!」


それだけ聞くと入ってきた勢いか、それ以上の速度で部屋を出て行く球磨

なんか修復剤全部使われそうな気になるほどだった


提督「ふぅ…やらかしたか」


左手の指輪を眺める提督

皐月が大破したであろうことはコレが教えてくれてはいたけれど


提督「大破、しなくなったと思ったんだけどなぁ」


それでも毎回怪我して返ってくるのはなんなのかと、思わなくもなかったが


提督「とりあえず、行ってみるか」



~入渠ドック~


提督「大破するなんて久しぶりね?」

皐月「うっ、司令官…また勝手に…」


ドック内、その壁面に寄りかかり提督が皐月に声をかける

その声を聞くやいなや、皐月が口元まで体を湯船に沈めた


皐月「…あの、さ。司令官?球磨さんの事、怒らないであげてね?

   たぶん自分のせいとか言うと思うけど、さ?」

提督「実際そうなんだろう?」

皐月「いや、まあ…そうかもしれないけど…」


球磨を庇って大破しました。では、庇うような事体に陥ったのは誰のせいかって話らしい


提督「こんど皐月が添い寝してくれるって言うなら考えるわ」

皐月「うっ…なにさ、それ。けど、うん…わかった。じゃあそれで…」


一瞬 悩みはしたものの皐月の決断は早かった


提督「…なに馬鹿なこと言ってんの。さっさと治しておけ」


そう言い残し、ふぃっと顔を背けた提督の背中が湯気に紛れて消えていった


皐月「馬鹿なことって…自分で言い出したくせに…」


ぶくぶくぶく…

皐月が吐き出した吐息が水面を泡立たせていた…



~母港~


提督「さて、久しぶりだな…」


「勝手に海に出たら怒るからなっ」なんて

皐月に止められたのがいつだったか


球磨「何処に行くつもりクマ」

提督「…」


海面に踏み出した所で後ろから球磨に呼び止められる


提督「散歩?」

球磨「なんで疑問形なのか、それに…。散歩にしてはちょっと物騒クマ」


提督の手には刀が握られていた


提督「傘だよ傘、こういうのあるだろ?」


ぶんぶん、振り回してなんでも無いアピールするが

勢い余って鞘が抜け、白刃が黄昏時の夕日にキラリと光る


提督「あ…」

球磨「ずぶ濡れになりそうな傘だクマ」

提督「そうね、うん。はぁ…で、要求は?」


観念した提督がため息一つと、球磨に問う


球磨「球磨もつれてけ」

提督「じゃー、ちゅーでもしてくれたら…んっ!?}

球磨「…」


なんて馬鹿な事を言い終わる前に、球磨の手が提督の顎を抑え込み

むりやり自分のそれを重ねていた

色気なんてものは欠片もなく、唇を奪うと書けば文字通りといった具合だった


提督「おま…」

球磨「満足したか?」


顔を赤くして後ずさる提督

そんな提督を球磨がつまらなそうに見つめる


球磨「今度はどうする?服でも脱ぐか?」


いうやいなや、自分の服に手をかけ始める球磨


提督「すとっぷすとっぷ。いいから、もういいからっ」


球磨の手を提督が抑えて慌てて阻止する


提督「あぁ、もう…ただの八つ当たりだよ?」


八つ当たり。皐月を大破させた深海棲艦が彷徨いてるのが気に食わないって、ただそれだけだった


球磨「構わない。こっちも似たようなものだクマ」


面倒臭そうにしている提督をじっと見つめる球磨


提督「ふぅ…左手を」


観念した様に息を一つ吐き。提督が球磨の左手を取る

そして、その薬指にそっと銀色の指輪を添えた


球磨「…どさくさに紛れてプロポーズとは、随分余裕だクマ」


さっと、球磨が提督の手を振り払う


提督「そりゃ、唇奪われましたもの」

球磨「心まで奪われましたとか言うつもりクマ?」


呆れ気味の球磨ちゃん


提督「まさか、私のものは私のものだ。そんで…

    お前も私のもんだ、勝手に沈むなよ…」


提督が球磨に背を向け歩を進める


球磨「何を言って…奪ったのは球磨の方。提督こそ勝手に死ぬんじゃ…ってちょっと待つクマぁ」


さっさと沖向かう提督を球磨が慌てて追いかけていった



~鎮守府近海~


小さな波紋を立てて首一つが水面に沈んでいく

黄昏時の夕日に赤く染まった海面が、どこか血の色を匂わせる

そしてその奥。時間の経った血が黒く染まっていくかの様な海面から海底へのコントラスト

その変化が、何かの境界の様に思えて…


提督「あーやだやだ。重巡まで来ると人切ってるみたいで気持ち悪いな…」


ぶんぶんっと、益体もない思考と嫌な感触を振り払うかのように、刀を振り回す提督


提督「さて、あらかた片付いたが…球磨は?」


ぐるりと周りを見渡してみれば、沈んいでいく深海棲艦が数隻目に入るくらいで

後は…深海棲艦に取り囲まれてる球磨が見つかった


提督「あーあ…これは、手出さないとダメなのかな…」




球磨「マズったクマ…」


気がづけば駆逐3隻、軽巡1隻に囲まれていた

たかだかその程度と言いたい所ではあるが練度の低い今の球磨には少々荷が重かった


球磨「提督は…大丈夫そうクマ」


視界の隅にちらりと映った提督の姿を見て取り敢えずの平静は保てそうだったが

なんで普通に戦ってるのかという疑念も同時に浮かんではいた


球磨「まあ、いい。今は重要じゃあないクマ」


このままだとあの時の二の舞いだと

皐月に助けられて、提督にも助けられる事になんてなったら…

別に足手まといになりに来たわけではない…ならばどうするか


球磨「使うか…」


そう思った瞬間、球磨の体が桜色の光に包まれた

そして、その光が桜吹雪の様に広がり取り囲んでいた深海棲艦ごと飲み込んでいく


球磨「くっ…かっはっ…」


一瞬何が起こったのか分からなくなる

目の前が桜色に染まり手足の感覚が遠くなる

空気を求めて口を開けば、桜吹雪が口の中に入り込みそれどころではなくなり、次第に意識までも遠くなっていく

だが、不思議と死ぬとか沈むとかの恐怖はない

その変わりか、体の中から外から桜の華に流され、塗りつぶされそうな感覚

自分が自分で無くなりそうな不快感に押しつぶされそうな不安を覚えていた


球磨「…」


助けを求めるように手を伸ばす

だが手足の感覚すらなくなっている現状、本当に手を伸ばしてるのかさえ自分では分からない

それでも構わずに拳を握りこむ

掴んだのは決意と覚悟

助けられる側ではなく、助ける側になりたいという勇気と信念


…大きく息を吸い込んだ

当然のように体に入ってくる桜の華

ならば全部飲み込んでしまえばいいと、大きく大きく胸がいっぱいになってもまだ吸い続ける

そして桜の華の、その最後のひとひら までも吸い尽くし、ゴクリと飲み干した…


それと同時に意識が覚醒し、体の感覚が元に戻る

自分の手に戻った体は、つま先から髪の毛の先に至るまで、生まれ変わったようであった

鼓動は力強く脈打ち体中に力を回し

手足に力を込めてみれば、自分の骨さえ砕けそうなほどに

髪の毛一本から全身の産毛、皮膚感覚に至るまで、風の向きや波の強さを頭に叩き込んでくる

ともすれば自分で自分の体を壊してしまいそうな程の力が全身にみなぎっていた


球磨「舐めるな、クマァァァァ!!}


咆哮一閃。裂帛の気合とともに吐出された雄叫びが空気を振動させ、桜色の光を弾き飛ばす

晴れ渡った視界の中、自分の手が握りつぶしていたソレを真横にいたソレに叩きつけた


金属がぶつかり合い火花が散る

装甲どうしがひしゃげて甲高い金切り音が響いた

そして爆発が起こり2隻の駆逐艦が海に沈んでいった




提督「なんだあれ、あんなに変わるものなのか…」


自分の左手で輝きを増している指輪に目を向ける

その輝きが頼もしくもあり、少々恐ろしくもあった




球磨「ちぃ…!」


残った敵 駆逐艦の砲撃が球磨を捉える

衝撃と爆発で艤装の一部が吹き飛び軋みを上げるが

それにも構わず残った主砲を撃ち返し海の底に叩き返す


球磨「あと ひとつぅぅ!!」


体を反転させて敵軽巡を正面に見据える

それと同時に、一直線に向かってくる雷跡も視認できた


球磨「クマ?」


回避しようと足を動かすも先ほどの砲撃の影響が

タービンが上手く回らない


球磨「はぁ…しゃーねークマ」


嘆息と愚痴を1つずつこぼした後

足元に到達した魚雷を踏み付けた


当然の様に爆発が起こり、立ち昇った水柱が球磨を飲み込む

だが、水柱が海面に返るその前に球磨の腕が付きだし水柱に穴を開ける

そして、雨露でも払うかのように腕を横に薙ぐと、一気に視界が開けた


球磨「魚雷発射クマァァ!!」


爆発の影響で艤装が軋みを上げ、それが悲鳴のようにも聞こえる中

壊れた魚雷発射管から無理やり魚雷を引き抜き軽巡に投げつけた

ロングランスとも称されたそれが、一直線に飛んでいく姿はまさに投槍の様なありさまで

その切っ先が軽巡に突き刺さり大爆発を引き起こした


球磨「はぁ…はぁ…」


球磨が肩で息をしている

その横で、力尽きた軽巡が沈んでいった


提督「おつかれ。と、言いたいがお前まさか…皐月の時にもそんな戦い方してたんじゃないだろね?」


何時の間にやら後ろに現れた提督が、球磨に切っ先を突きつける

場合によってはこのまま突き刺すと言わんばかりに


球磨「まさか…あれは完全に球磨の失態クマ」


肩で息をしながらも球磨がそれに答えた


球磨「調子に乗って前に出て、いいように魚雷撃たれて…皐月が庇ってくれなきゃきっと沈んでたクマ」


懺悔するように吐出される球磨の言葉


提督「ふん、まあ無事だったから良いんだけどね」


提督が刀を仕舞い、球磨に背を向ける


提督「ほら、帰るよ?スッキリしたし、一応」

球磨「提督、ちょっとまって欲しい…」


呼び止められて、提督が肩越しに球磨を見やる


球磨「担げとは言わないクマ、せめて手を引いて欲しい…:

提督「なに?急にしおらしい…」

球磨「沈みそうクマ」


言ってるそばから球磨の体がブクブクと海中に没していく


提督「おいぃぃぃっ!?」


大慌てで提督が球磨を抱き上げた


球磨「すまない…今度はちゃんと護ってやるから、今はちょっと眠い…クマ」


そのまま目を閉じると、静かな寝息が聞こえてきた


提督「護ってやる、ねぇ…帰ろ」


球磨を抱きかかえたままの提督が、夕日と共に消えていった




~回想終わり~


ー母港ー


木曾「どうしてあんなもん作ったんだよ…」


呆れ気味の木曾が隣の夕張を小突く


夕張「い、いやぁ…提督が作ろうぜっていうから、私もつい調子に乗っちゃって…

    まさかほんとに出来るとは思わなかった…」

多摩「艦娘になったって、軽巡の仕事は大鑑巨砲じゃないにゃ…」


海に突き刺さるようにそびえ立つそれを見ながら多摩が呟いた




海上で球磨が仁王立ちをしていた


球磨「ふふんっ♪」


その右側には自身の身長と同じくらいはありそうな程の長砲身が鎮座している

また両肩には32号電探の四角い大きな箱がぶら下がってもいた




北上「あーどこかで見たと思ったら、ああいうロボットいたよね。でんどろなんやらってさ」

大井「私はあれかしら、この間提督たちが見ていたアニメに、あんな感じの武装した女性がいたような…はるこんなんちゃらって」

北上「あぁ、あったあった」


   「・・・」

2人がしばし沈黙する


北上・大井「やりすぎ…」


2人の素直な感想だった




瑞鳳「ねえ、アレってどう思う?」


アレとはつまり、球磨と一緒にそびえ立ってる何かの事で


弥生「すっごく大きいです…」

卯月「瑞鳳の飛行甲板より大きいぴょん♪」

瑞鳳「…うーづーきー、どこ見ていってるのかなぁ?」


無論 卯月の視線は瑞鳳の胸部に

そして、笑顔を貼り付けたままの瑞鳳が卯月のほっぺを引っ張った


卯月「痛いぴょん、はーなーすーぴょーん」(じたばたじたばた

瑞鳳「あんたが泣いて謝るまで つねるのはやめない」


言いながら更に横に伸びていく卯月のほっぺ


卯月「いい加減諦めるぴょん、軽空母は大きくはならないぴょんっ、身の程を弁えるぴょん!}


胸の話である一応


瑞鳳「あんたは口を慎みなさいよっ!」


びにょーんと卯月のほっぺが限界ギリギリまで引き伸ばされる


弥生「ふふっ…卯月、変な顔…ふふ」


ほっぺの伸びきった卯月の変顔が余程面白かったのか、弥生がお腹と口元を抑えて小さく笑っていた


卯月「やよやよー笑ってないで助けるぴょーん」

弥生「うん、写真とったらね…」


パシャリと卯月の変顔をデジカメに収める弥生


卯月「‥」

瑞鳳「‥」


なんとなく興が覚めていくのを感じる2人


弥生「ほら、瑞鳳‥卯月の変な顔」


弥生が採りたてほやほやの写真を瑞鳳に見せる


弥生「ね?」

瑞鳳「ぷふっ…」


途端、瑞鳳が卯月から手を離し、顔を背けて笑いをこらえ始める

自分でやったとはいえ、怒りが収まった後ではその顔はあまりに滑稽に映ったらしい


卯月「うー、二人して笑うこと無いぴょん…」


卯月がちょっと赤くなってる頬をさすりながら、不満を漏らしていた




金剛「Hey! 球磨、こっちは準備OKデース、いつでもいいヨー」


ぶんぶんと、元気よく金剛が球磨に手を振って合図を送る


球磨「よろしい、では始めるクマ」


重そうに長大な砲身を動かし金剛に照準を合わせる

その足元では海面が波立ち、支えているというよりは沈まないようにしてるのがやっとと言った具合だった


妖精「不明な艦種が接続されました…直ちに使用を解除して下さい…(以下リピート)」

球磨「ぐっ、狙いが…ずれる…ていうか、うっさいクマ!」

妖精「怪我してもしらないんだから、べー」


球磨の一言にへそを曲げる妖精さんだった


とはいえ、32号電探x2でむりやり補正をかけても一向に軸が合わない

それどころか支えている自分の体でさえ軋みをあげていた


球磨「すぅ…はぁ…クマ!」


大きく深呼吸をした球磨が、一瞬の感覚に全神経を集中させ引き金を引き絞る

轟音と爆風が起こり、その反動で球磨の体が後ろに跳ねる


金剛「Wao…」


金剛が驚きの声をあげる

自身に飛来してくるそれがしっかりと戦艦用のしかも46cmの砲弾だったことへの素直な反応だった


金剛「デスが…ふんっ!」


金剛が右手を横に薙ぐと、砲弾を裏拳の要領で弾き飛ばす


金剛「ふふん♪」


案外とやれば出来るものだった


金剛「Hey! 提督♪見ててくれましたかー」


提督の方に向き直り、左手を振ってアピールする金剛

しかしその右手の行くさきは自分の背中。赤く腫れ上がった右手の甲を、背中にこすりつけて痛みを誤魔化していた




発射の衝撃が、離れていた観客席にまで届いてなお、髪を後ろにはためかせるだけの風を巻き起こす


長月「おい、司令官…あれはなんだ?」


なびく髪を抑えつつ長月が問う


提督「そうね、私製46cm単装砲。軽巡にも装備できるように頑張ってみたよ?」

長月「いらん努力をするんじゃない。だいたい頑張ったのは夕張だろう…」

提督「まあ、そうだけど…」


「Hey! 提督♪見ててくれましたかー」


と、そこへ金剛の声が届きとりあえず手を上げて返す提督


提督「…(痛そ)」


ばっちりと右手の行く先は把握していた


菊月「なあ、司令官…」

提督「ん?」


提督の服の裾を菊月が小さくひっぱる


菊月「あれ、私も装備できないだろうか…」

提督「んー…」


ふと、提督が視線を感じてみれば。長月にじとーって睨まれていた

その顔は言外にも「ほら、こうなったろう?」っていいたげだった


提督「むーつーきー!」


「はいはーい」

大声で提督が名前を呼ぶと、どこからとも無く声が返って来て


睦月「呼んだ♪」

提督「呼んだ」


たいして間もおかず睦月が姿を表した

なんか、犬みたいだった


提督「お菊さんや。お前、睦月抱えて戦闘出来るか?」

菊月「むっ、出来るさそのくらいっ」

睦月「?」


妙な意地を張った菊月が睦月に近づき よたよたと何とか持ち上げた


菊月「お、重い…」

睦月「重くないよっ、普通だよっ」


なんて抗議の声をあげる睦月

そりゃ、幼女が幼女を抱えれば普通だろうがなんだろうが重いだろうけど

とはいえ、女の子が重いと言われれば、そう反応したくもなるか


如月「どうかしらぁ…お腹のお肉最近柔らかくなってない?」


ひょっこり現れた如月が、服の隙間から覗いていた横腹を突っつき始めた


睦月「ちょっ、如月。やめるしぃ、くすぐったい~」


ぱたぱたと菊月の上で暴れ始める睦月


菊月「あ、あんまり暴れると…くぅぅぅ!?」


ついにバランスを崩して菊月が後ろに倒れこんだ


長月「まったく…危ないだろう」

菊月「うぐぅ、すまない長月。たすかった」


倒れこんだ菊月を長月が受け止めていた


提督「お、二の腕もぷにぷにだぜ」

睦月「うぅぅ、提督までぇ…やめてよー」


提督が睦月の襟首を引っ掴んで空中にぶら下げていた


提督「あ…」

睦月「へ…にゃしっ!?」


提督が掴んでいた襟首、その上着(改2用)がずれて睦月が地面に落ちた


如月「あらあら。大丈夫、睦月?」


すぐに如月が側に寄って睦月の様子を伺い


睦月「へいきぃ…」

如月「そう、ならよかった」


睦月の頭を優しく撫でた


提督「ほら、上着」


提督が睦月に上着を掛ける


睦月「ありがと…あ、提督の匂いがするし…」


睦月が大事そうに上着を着こむと妙な事を口走る


提督「しないだろう…」

睦月「だめかっ!」

如月「ダメでしょうねぇ」


あらあらと笑みを浮かべる如月

どこでそんな言葉を覚えたのかちょっと心配になっていた




一方海上では…


球磨「ふんっ、わかったクマ」


球磨が32号電探を収納する


金剛「くーまー、電探しまったらHitは難しんじゃー」

球磨「問題ないクマ」


球磨が電探の代わりに、タービンと新型高圧缶をセットした

不安定に波立っていた足元が落ち着きを取り戻し、球磨がその場でくるりと回る


球磨「よし、コレなら動けるクマ」


そして、金剛を見据えて加速した


金剛「StopStop!どうしてそんなの担いでAssaultしてくるデス!」

球磨「当てればよかろうクマぁぁぁ!」


そう当てればいい。近距離だろうがゼロ距離だろうが…脳筋の思考だった


金剛「そんなんでHitするわけ無いデショ!バーニングラーブっ!」


金剛が主砲を構えて斉射する

自分が担いでる大砲、それと同じものが6門こっちを向いて火を吹いた


球磨「まったく、その砲火力 羨ましい限りクマ…それでも!」


砲弾を掻い潜り球磨がさらに距離を詰める


球磨「当たらなければっどうといことはっ、ないクマ!」


長大な砲身を横薙ぎに振り抜いて、砲弾を叩き落とした


金剛「お、おぅ…貴女ほんとに軽巡ですか…ともかく」


このままだと足を止める前に取り付かれると判断して金剛がタービンを回す


球磨「そんな常識!球磨の!無理で!こじ開けるクマぁぁぁ!」


振り抜いた砲身に引きずられるように反転して球磨が金剛に背を向ける

その瞬間。再びの発砲、狙いは海面

巨大な砲弾と爆風が海面を叩き上げ水柱を生み出す

そして、その反動が小柄な球磨の体を後ろにふっ飛ばした


金剛「what!」


球磨の体が宙に浮き金剛を飛び越えて後ろに回る

さながら棒高跳びの様であった

初撃と違い、もとより飛ぶつもりだったことと、今まで加速した勢いも有り余って

そんな大道芸を成立させていた


金剛「Backに入られる!けどネ!」


金剛が振り向きながら主砲を照準する

そして二人の動きが止まった


球磨「良い反応だクマ」


金剛に46cm単装砲をつきつける球磨


金剛「さすがと言いたいデスが…このまま主砲を撃てば金剛の勝ちデース」


戦艦の金剛と軽巡の球磨では装甲耐久ともに差がありすぎた

金剛とて痛手は受けるだろうが、球磨のダメージの比ではないのは明らかだった


球磨「わかってる、球磨の負けクマ」


大人しく46cm単装砲をしまう球磨ちゃん


金剛「い、いえ…そもそも試射会だとearしてたのデスが…」

球磨「ゆうばりー!!コレもうちょっと軽くならんクマー!!」

夕張「無茶言わないでよー、それで限界ギリギリなんだからー」


金剛の言葉をよそに球磨が夕張に改善要求を出していた



ー執務室ー


46cm単装砲の爆音が執務室の窓を揺らして室内にも響いていた


文月「よかったのー?司令官たちにあんなオモチャ作らせて」

皐月「良かったも何も、もう作っちゃってるし…それに、みんな楽しそうだから、多少はね?」


喋りながらも書類をまとめていく皐月と

要らなくなった書類で折り鶴を作り始める文月


文月「司令官がーじゃなくて?」

皐月「み・ん・な・がっ、変なとこ強調しないでよさ」

文月「大事な所だと思うんだけどなぁ」

皐月「まーたそうやってボクの事からかおうとする」

文月「えへへへへ、ばれちゃった♪」

皐月「もう…」


ちろっと舌をだして肩を竦めてみせる文月だった


そして、2度めの砲撃音が室内に響き渡る


望月「うるせぇ…なんなのさぁ…」


あまりの煩さに寝ていた望月がだるそうに声をあげる


三日月「もう起きたら?いい時間なんだし」

望月「んー…」


そう言われた所で、起きる気の起こらない望月が布団の中でもぞもぞしていた


望月「…あと5分」

三日月「5分って、私そう言って望月が起きたの見たこと無いんだけど…」

望月「今日がその日なんだよ…」

三日月「またそういう事言って…5分だからね」

望月「んー…」


そういって、布団に包まり直す望月


皐月「…ほっ」


その様子をみて皐月がほっと胸を撫で下ろしていた


三日月「皐月、どうしたの?」

皐月「ううん、なんでもないっ、なんでもないから?」

三日月「そう?」


不思議そうな顔を浮かべる三日月だったが、本人がそう言うならと直ぐに皐月の手伝いに戻る


文月「できたー」


そうして、文月が何枚目かの鶴をおり終えた頃


三日月「ほら、望月。5分たったから…」


ゆさゆさと望月を軽く揺すって起こそうとする三日月


望月「んー…ちゅーしてくれたら、お、おきるぅ…」

三日月「ちゅ、ちゅーって…なによ、突然…」


心なしか声が震えている望月。眠気と戦っていると言うより、こみ上げる笑いと戦っている感じだった

と、そんな事には気付かずにちょっと顔を赤くする三日月


皐月「…っ!」


べきっと皐月が使っていた鉛筆が折れた…


皐月「あのね、望月。それ以上続けたらボク…怒るよ?」


皐月の脳裏にいつかの思い出が鮮明に浮かび上がる

望月の寝てる横でイチャついてたのは事実だが…再現されて平気なほど悟りは開いていなかった


望月「んだよ、人の寝てる横でいちゃついてたの皐月じゃんか」

皐月「あれは、だって…司令官が起きないから…仕方なく…」


だんだんと言葉尻が小さくなっていく皐月


文月「でもしたんだよね?ちゅー」

皐月「ぅっ…」


文月の言葉に皐月が言葉をつまらせていると


三日月「ほ、ほら…別にちゅーくらい、今さら、ね?」

皐月「そ、そうだよっ、みんなやってるじゃんかっ」


三日月のフォローに皐月が乗っかった

しかしとうの三日月の頭の中は、皐月と司令官のキスシーンでいっぱいいっぱいだった


文月「ライクとぉ ラブの差は大きいと思うよー?」

皐月「うるさいよっ、そこっ」


にこにこと笑顔で突っついていくスタイルの文月だった


望月「初めてだったんだからな…」


ぽつりと…望月が皐月の声音を真似て先を続けた


皐月「もーちーづーきー!」


机を飛び越えて望月に迫る皐月


望月「やーん、ムードとタイミングくらい考えてー」


望月が布団を頭から被り防御態勢に入る


皐月「この、ばかばかばかばかっ!」


手近にあった枕を引っ掴み、布団にくるまった望月を滅多打ちにし始める皐月

ホコリが飛び回りちょっとけむい


三日月「あ、あはははは…」

文月「うんうん、今日も平和平和♪」


苦笑いを浮かべる三日月と

そんな皆を楽しそうに眺める文月だった




ー母港ー


球磨「…」


球磨が護岸に座り、足をぷらぷらさせていた

時折、水面に足をつけては波を蹴っ飛ばしたりして遊んでたりする


提督「あれぐらいなら指輪使えよ。もう少しまともに使えただろう?」


と、そんな球磨の後ろから提督が声をかけた


球磨「いらんクマ。あんなのは所詮オモチャ クマ、実戦で使うようなもんでもない」

提督「それはそうだけれど…球磨は指輪使いたがらないねぇ」


提督が球磨の隣に腰をおろす


球磨「提督…いつだか、球磨は護ってやるって言ったクマ」

提督「それは聞いたけれど」

球磨「じゃーそういう事。だというのに提督に負担かかるような事してられんクマ」


すっと袖をまくり力こぶを作る球磨


球磨「それに球磨は指輪無くても強いクマぁ!」


えっへんと、そこそこある胸を張る球磨ちゃん


提督「いつだか、お前は私のものとも言ったけどね…勝手に沈むなってさ。使えるものは何でも使えよ」

球磨「ふんっ、あの日提督を奪ったのは球磨の方。いい加減負けを認めるクマ」

提督「何の勝負だよ…ったく」

球磨「ま、球磨の唇を奪う度胸の無い奴には貞操はくれてやらんってな、クマクマクマクマw」


地味に提督を見ながら笑い出す球磨ちゃん

その視線は暗に「提督には無理だろう」って言いたげだった


提督「…んっ」

球磨「クマぁ…んんっ!?」


提督が球磨の顎を抑えて無理やり自分のそれを重ねる

いつぞやに誰かにされた事をやり返す形になった


提督「じゃー返してもらったよ、私の唇」

球磨「…待つクマ。これだとまだイーブン クマ」


球磨が手の甲で口元を抑えながら、提督を見据える


提督「往生際の悪い…が、まあ確かに道理だな…」


お互いに唇を奪って奪われて…プラマイゼロ、計算の上では間違いはない、計算の上では


球磨「提督はっ、球磨のものクマっ!」


がっちりと球磨が提督の頬を抑えこむ


提督「なにを、お前は私のものだと…」


しっかりと提督が球磨の頬を抑えこむ

そして、お互いが顔を近づけ…ガツンと派手におでこがぶつかった

どうしてキスシーンで頭突きになるのか


球磨「ぐるるるるる…」

提督「がるるるるる…」


お互いの頬を抑えこみ、おでこを擦り付けあい、見つめ合うX→睨み合う◯2人だった




木曾「んだよ、あれ?喧嘩か…」

多摩「知らんにゃ、スルーしてやるのも優しさ…」


1抜けたとばかりに多摩が立ち去った


木曾「あ、あぁ…そう、だな」


その後に木曾も続いていく


結局残されたバカ2人は、夕食に呼ばれるまでそうしてたとか…



ーおしまいー


後書き

はい、というわけで最後まで読んでくれた方。本当にありがとうございました
貴重な時間が少しでも楽しい物になっていれば幸いです

それではこの番組は

球磨「さあ、提督。こっち肉を食うクマ美味いクマ」
提督「うまうま」
木曾「喧嘩してたんじゃないのか…」
多摩「木曾にはあれが喧嘩に見えたのか…」
大井「ちょっとあなた達、そんなにがっつかられると北上さんの分が」
北上「ほら、大井っち。喋る前に肉食べる、ほんとになくなっちゃうよ」

菊月「見ろ長月♪」(←46cm単装砲妖精さんが肩に乗ってる
長月「返してこい…」(←眉間抑えてる
如月「まあまあ。もしかしたら睦月型皆で持てば使えるかもじゃない?」
睦月「必殺技にゃしっ」
卯月「睦月型ハリケーンぴょん♪」
弥生「ダイナマイトでも…」
三日月「そんなヒーロー番組みたいなこと…」
望月「ものは試しって言うじゃーん」
文月「皐月、ほんとに作らせてよかったのかな?}
皐月「あ、うん。ちょっと後悔してる」

夕張「夕張とっ」
瑞鳳「瑞鳳のっ」
夕張「試し打ちっ」
瑞鳳「次回予告っ」
夕張&瑞鳳「え?」
夕張&瑞鳳「しないの?」
夕張「試し撃ち」
瑞鳳「いやいや、次回予告でしょっ」
夕張「46cm単装砲なのよっ、今撃たなきゃもう出番ないかもじゃないっ」
瑞鳳「知らないって、そんな事…」

以上のメンバーでお送りしました


ー以下蛇足に付きー


♪教えて皐月ちゃんのコーナー♪

皐月「ついに睦月と如月にも改2が来たね」
提督「その内皐月にも来るのかな」
皐月「あははは、早めに来るといいけれど」
提督「ダメっこれ以上皐月が可愛くなったら提督直視できないっ」
皐月「いや、その…見てくれないとボクもほら、ね?せっかく、おめかしするんだし?」
提督「…うん、頑張る」
皐月「…うん、頑張って」

皐月「それじゃ今回は、素直に今回の解説でもする?」
提督「46cm単装砲?」
皐月「それそれ、どうして作っちゃったのかなぁ」
提督「だって皐月がそんな艦もあったていうから」
皐月「作れとはいってない」
提督「作らなきゃ損だろう」
皐月「何と戦ってるんだよ、司令官は」
提督「話のネタと」
皐月「メタい事いわないの」
提督「欄外編だからいいんだよ」

皐月「もう…。それと球磨さんの指輪開放シーンについても言っとこうかな?」
提督「あれ?低レベル艦が指輪使ったらちょっと大変だよって描写を少ししたくなっただけ」
皐月「…じゃーなに?あのまま球磨さんが桜の華に飲まれてたら?」
提督「んー良くてぶっ倒れるか…深海棲艦絶対殺すマンになるか…かな?」
皐月「そんな危ないもの、ひょいって渡さないでよさ」
提督「まーまー、あって損はないんだから…それにほら、皐月とおそろいだし?」
皐月「またそういうこと言う…まあ、悪い気はしないんだけど…」
提督「素直に司令官大好きって言えばいいのに」
皐月「うるさいよっ」

皐月「それじゃ、今回はこんな所かな。ここまで付き合ってくれてありがとう
    よかったら、またな。ばいばーい」
提督「ばいばーい」


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山椒さんから
2015-05-12 17:17:03

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SS好きの名無しさんから
2017-04-17 21:05:55

山椒さんから
2015-05-12 17:17:01

このSSへのコメント

1件コメントされています

1: 山椒 2015-05-12 17:24:05 ID: LZBDOBV6

やっぱり球磨の姉御はイケメンですねぇ...
提督との不思議な関係も好きです

皐月と文月の改二はよ
(ノシ 'ω')ノシ バンバン

後書きで口から砂糖が止まりません

次のお話期待です


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