2024-10-20 02:32:34 更新

概要

死にたがりの彼は…死ぬ為に艦娘を救う…救えた先に彼は待ち受ける未来は…


前書き

こんにちは!正直クオリティーは褒められたものではないですが、自分なりに頑張ってこのシリーズを完走させたいと思っております!ただしクオリティー低いのと、気を付けて入るのですがキャラ崩壊注意です。
それでは行ってらっしゃい



エピローグ


突然だが、僕は死にたがりだ。死にたい…死にたい…今すぐにでも…死んで償わなきゃ行けない事がある。でもそれは今じゃない。「それは本当に死にたいのか?」そう思う人もいるだろう。僕だって今すぐにでも死にたいさ…でもまだ駄目なんだ…あいつとの約束を果たすまでは…



提督「ここか…〇〇…お前が救って欲しい子がここに居るんだよな…」





第1話 死にたがりの提督




〜鎮守府にて


提督「本日よりこの鎮守府に配属されたよろしく頼む!」



本日付けで僕はこの鎮守府に配属された。因みに提督をするのはここが初めてである。取り敢えず出来るだけ元気に挨拶したのだが…



艦娘達「よろしくお願いします…」



彼女達の目は何処か、緊張して、強張っている様に見えた。どこか怯えている?そういう風にも見える。ここは少し緊張を和らげないとな



提督「そんなに緊張しなくていい。僕はまだまだ未熟な提督だ。まだ着任したばかりでよく分からない所や頼りない所も多々ある。君達は

   とても真面目で、優秀だと聞いている。力不足の私ではあるがよろしく頼む。」


その言葉に彼女達は



「はい!」



と元気に答えたが、やはり顔が引きつっていて何処か怯えている様だった。



その後僕は大まかな説明を受け、早速執務に取り掛かっていた。



因みに提督には毎日日替わりで補佐をする秘書艦が付いてくれるらしい。

いやはや、中々ありがたいものである。



それから数日間、やっと提督業務にも慣れてきたのだが…



おかしい…絶対おかしい…何がおかしいかって?秘書艦の書類の量だよ。

秘書艦の子達いつも僕の3倍の量やってるんだけど?今日の秘書艦の榛名だって明らかに書類の量が以上だ。



秘書艦って補佐だよね?こんなにやらせてるとか罪悪感半端ないんだけど?

つかそもそも書類の量がおかしい。なんなん?ブラックすぎひん?



と言うかここの子達は何か暗い

僕とは必要以上に関わろうとしない。食事を一緒にしようとしても遠慮されるし、何より働きすぎだ。

今だって、秘書艦の榛名は僕の倍以上の書類をこなしている。マジで申し訳ないし、ここは1度無理をしすぎない様に言っておこう


提督「あの…榛名…?」



榛名「はっはい!」



提督「頑張りすぎじゃない?ていうか秘書艦は補佐なんだから僕以上の仕事をさせるのは申し訳ないというか…提督としてね?」



榛名「いえ榛名は大丈夫です!」



提督「いやでも…そんなに無理したら」



榛名「無理じゃありません!」



いきなり、榛名の顔が変わる。これは…恐怖と使命感…普通なら見せないギリギリまで追い詰められた顔。



提督「榛名…?一旦落ち着い…「榛名は出来ます!」



榛名「私は出来ます!これくらいなら大丈夫です!」



何かに取り憑かれた様に榛名は呟く



榛名「私は大丈夫…大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫…大丈夫なんです!」



提督「榛名…落ち着いて…」



榛名「は…申し訳ありません…とにかく私は大丈夫ですので…」



提督「大丈夫じゃない…」



榛名「榛名は…大丈夫で…」



提督「大 丈 夫 じ ゃ な い だ ろ !」



榛名「提…督…?」



提督「大丈夫なら…そんな苦しそうな顔はしない…そんなに…泣かない…」



榛名「!…違っ…これは…」



提督「もういい…榛名…」



ギュッ



榛名「…!」



提督「君に何があったのかは分からない…でも君が極限まで追い詰められているのは分かる…」



提督「そして…他の子達も…」



提督「僕は君を救いたい…だから…ボクに全部吐き出してほしい…」



提督「今まで…極限まで追い詰められるまで…何があったのか…」



提督「それを…全部…受け止めるから…」



榛名は抱きしめられたまま…顔を埋めぽつりぽつりと言葉を溢す…



榛名「榛名は…ただ皆んなの役に立ちたかった…そしていっぱい褒めて欲しかった…」



榛名「でも前任の提督は…言いました…『所詮変えのきく兵器だよお前らは…』



榛名「でも…榛名は頑張りました…榛名が役に立たないからそんな事言うんだって…役に立てばそんな事無くなるって…」



榛名「でも…褒められる日はこなくて…毎日毎日怒られて…榛名は気付きました…」



榛名「そうです…私達はただの兵器…変えはいくらでもきく…褒めてもらったりだとかそんな事をするのはおこがましいって…」



榛名「でも榛名は!!本当は褒められたかった…!褒めて貰うためなら…あの提督からの仕事はいくらでもこなした…」



榛名「でも…榛名が役に立たないから…所詮は兵器だから…そんな日は来なかった…それだけの話です…」



提督「…」



ナデナデギュー



榛名「え?提督?」



提督「榛名…よくがんばったね…君は偉い子だ…」



提督「良いかい?君が役に立たない何て事は絶対にない。そんな事を言ったその前任はアホだ。」



榛名「それは…違っ…!「良いや榛名は偉い子だ」



提督「今まで…よく耐えた、よく頑張った。」



提督「これからは僕が榛名を褒める、褒めまくる、これでもかと言うくらいには褒めちぎる。」



提督「だから榛名…もう良いんだよ…無理しなくて」



榛名「あっ…あっ…榛名は…褒められた…んですか…」



提督「そう、褒められたの…そしてこれからも褒めまくるの。」



榛名「う…うわぁぁぁぁぁん!」



榛名「ひっぐ…ひっぐ…提督…私…」



提督「よしよし…よく頑張ったぞ。」ナデナデ



榛名「しばらく…このまま…泣かせて下さい…いっぱい褒めてください…」



提督「あぁ、勿論だ。よく頑張ったな、榛名。」


ーーーーーー


ーーーー


ーーー






提督「落ち着いたか?」



榛名「はい、お陰様で。」



提督「良かったよ…これからは無理するなよ?」



榛名「はい、本当にありがとうございました…」



提督「ほら、いつまでも暗い顔しない、笑って笑って」ニコッ



榛名「はい!」ニコッ



提督「そう、その顔が1番だ。」



提督「さてと…もうお昼か…少し散歩に行ってくるよ。」



榛名「分かりました。ではその間私が書類を…」



デコピン



提督「コラッさっき無理しちゃダメって言っただろ?榛名もお昼休みだ。」



提督「書類は午後やるぞ。ちゃんと…2人で」



榛名「はい!提督と…2人で…」



提督「あと、一つ聞いて良いか?」



榛名「何でしょう?」


提督「さっき、お前を救いたいって言ったけど…お前を救う事…できたか?」



榛名「はい!勿論です!提督に榛名は救われました!」ニコッ



提督「そうか…なら良かった…」



榛名「提督…どうぞ、他の子達も…」


提督「分かっている。ここの子達全員、俺が救う。」



ガチャ バタン



そうこぼして僕は部屋を後にする…



提督「まさか…ここまでとはな…」



提督「お前が救ってほしいって…そう言うのも分かるよ…」



提督「…分かってる、約束だ。全員ちゃんと救う、でも…」



あの日、あの時から俺は死にたがり何だよ…でも約束はしちまった…だからさ…死ぬ為に救うんだ…約束守れないと死ねないから…

そう…俺は死ぬ為に…あいつの元にいく為に…あいつらを…救う…だから…



提督「俺が約束果たして…死ねるようになるまで…そっちで待っててくれ…」



提督「なぁ?〇〇…」





第2話 榛名の肩揉み!?



〜執務室〜


提督「つっ疲れた…」



あの後、執務室に戻った僕は、榛名と共に執務に励んでいた。にしても書類の量が多く流石に疲れが溜まってきている。



榛名「大丈夫ですか?」



榛名が心配そうに見つめてくる。優しい子である。



提督「大丈夫…では無いな…結構疲れた…」



榛名「まぁ書類の量が量でしたから…仕方ないです。」



そう、書類の量。マジでやばい…ここまでブラックだとは思っていなかった…



榛名「今日はお開きにしましょうか。9割9部は片付きましたし。」



提督「そうだな…少しくらいなら明日に回しても良いだろ…」



グーッと背伸びをする。窓を覗くと日は暮れており、かなり暗い。かなりの時間執務をやっていたんだと自覚する。

いやはや、自分でもここまで集中出来るとは驚きである。しかし流石に疲れたな。肩がかなり凝った。そう思い自分の肩を叩いていると…



榛名「肩が凝ったんですか?」



提督「まぁな、執務はまだ慣れてなくてな、どうしようもなく肩が凝るもんだ。」



榛名「でしたら、榛名が肩をお揉み致します。」



提督「ふぇ?」



いきなりの提案に素っ頓狂な声が出る。めっちゃいきなりやん。でも心配してくれるのは嬉しいな。

だが、今日は榛名だって疲れているはずだ。ここは休む様に言っておこう。



提督「いや、榛名だって今日は疲れているだろう。今日は休n…「榛名は大丈夫です。」



提督「え?いやでも…」



榛名「だめ…ですか…?」ウル



うん、その顔はずるい。こっちが罪悪感湧いてくるものである。まぁ…ここで断るのも悪いか…



提督「いや…そんなことは無いよ。お願いしよう」



榛名「…!はい、榛名にお任せください!」ニパァ


ーーーーーー


ーーー


ーー




モミモミモミ



提督「…」



モミモミモミ



やばい…思った以上に榛名の肩揉みが上手い。今日の疲れが吹っ飛ぶどころか、もう眠りに落ちそうなくらいには気持ちが良い。

マッサージ屋開けるんじゃないかこれ。



榛名「提督、如何ですか?」



提督「あぁ、正直めっちゃ上手いよ。今日の疲れが吹き飛ぶ。」



榛名「それは良かったです!」



提督「しっかし、本当に上手いなぁ…榛名はマッサージ師になれるかもなぁ。」



榛名「マッサージ師…ですか…」



提督「マッサージ師はあんまり好きじゃないか?」



榛名「いえ…その…なるなら…てっ、提督専属が良いかなと。//」



提督「え?こんなに上手いんだから鎮守府の皆んなに皆んなにやって欲しいな。てか顔赤いぞ?大丈夫か?」



榛名「………」



提督「榛名?」



モミモミモミ…ガシガシガシ…バキバキバキ



提督「ちょっ!?榛名さん!?力強くありません!?」



今バキって言った!肩揉みでなる音じゃないってそれ!



榛名「別に…提督がかなり鈍感なのが分かりました。」



提督「…?」



その後、ちょっと強め…いや痛めの肩揉みが続くのだった…


ーーー


ーー




提督「ふぅ…」



クルクルと自分の手を回す。かなり軽い。榛名様々である。



榛名「もう大丈夫何ですか?」



提督「あぁ、お陰様でな。」



榛名「せっかくなら…もうちょっと…(ボソッ」


提督「何か言ったか?」



榛名「いっいえ!何でも//」



提督「そうか。」



チラリと時計を覗く。かなり遅い時間だ。流石に…お腹が空いたな。榛名を誘って食堂に行くとしよう。



提督「榛名」



榛名「何でしょう?」



提督「もうこんな時間だし、夕飯食べに行くぞ〜」



榛名「私が、ご一緒して良いんですか?」



提督「…?何言ってる、当たり前だろ。飯ってのはな1人で食うより誰かと食べた方が上手い。」



提督「ほらっ早く行くぞ。お腹と背中がくっつきそうだ。」ニコッ



榛名「はい!」


ーーーーーー


ーーーーー


ーーー





提督「間宮さーん、カレー2つ。」



間宮「あら提督に、榛名さん、お二人ですか、珍しいですね。今お作りします。」



榛名「はい、お願いします。」



榛名「提督、あそこに座りましょう。榛名の特等席です」ドヤァ



提督「おっそれは楽しみだなぁ。」



間宮「…」



提督「間宮さん、どうかしました?」



間宮「いえ、少しお話しよろしいですか。すぐ終わりますので。」



提督「分かりました。榛名先行ってて、特等席、楽しみにしてるよ。」ナデナデ



榛名「んふ〜♪榛名にお任せ下さい!」



スタスタスタ…



提督「それで間宮さん話って?」



間宮「榛名さんがあんな楽しそうな顔をするのを見るのは初めてです。」



間宮「私、ずっと見ていられなかったんです。ただの兵器だと言われ続ける艦娘の皆さんをここで見るのが。」



間宮「でも、どうやら提督なら大丈夫そうです。榛名さんにあんな笑顔見せれる様にしちゃうんですもん。」



提督「そんな大層な事はしてません。」



間宮「いえいえ、とても立派です。他の艦娘も…



提督「勿論、ここにいる子全員救います。」



間宮「でしたらやはり立派ですよ。」




提督「立派…ですか…はたから見たらそうなのでしょうけど…僕の場合、救う動機はこれではね…それで立派なら世も末ですよ。」



間宮「それは…どう言う…「無駄口が過ぎました」



提督「それでは榛名が待っていますので。美味しいカレー期待してます。」



榛名「あっ提督。何のお話でしたか?」



提督「いや対した事じゃない。」



間宮「お待たせしました。カレーです。」



提督「よっしゃ、食べるぞー。榛名もいっぱい食べろよ。」



榛名「はい!頂きます!」



榛名「あれ…いつもより美味しいです。1人で食べるより美味しいって本当なんですね。」



提督「当たり前だ。どうだ?これからもご飯一緒にしないか?」



榛名「良いんですか…!?」



提督「当たり前だ。こっちからお願いしたいくらいだな。やっぱ1人は寂しい。引き受けてくれるか?」



榛名「はい!喜んで!」



この感じ…思い出すな…あぁそう言えば誰かと飯を食べるのはいつぶりだったか…あの時もあいつとこんな風に…



榛名「提督?大丈夫ですか?ボーッとして」



提督「ん?あぁ大丈夫だ。それより折角2人なんだ。楽しく食べよう。」



榛名「はい!」


そうして榛名と何でもない雑談を交わしながら食事をとっていると…



⁇「何を…しているんですか…提督…榛名。」



少し…怒気の入った冷たい声が僕らの後ろから響くのだった…





第3話 兵器としての立場



⁇「何を…しているんですか…提督…榛名…」


提督「加賀…」


加賀、うちの鎮守府の正規空母で何度か話した事はある。その度、その度、に話して感じたのは…警戒と怒り…


提督「何って、こうやって一緒にご飯を食べているだけだが?」


加賀「…!いつも言っているはずです。自分と兵器と立場を考えろと。そんな事したら兵器としての立場を見失ないかねません…」


まただ…加賀は僕と話すと毎回こうなる。ただ使われるだけの兵器だと…そう思うあいつと、そうは思わない僕で毎回対立する。

ここまで兵器として徹底した姿勢を貫く姿、固執を見て確信をしている。恐らく加賀はこの鎮守府の中で、1番待っている闇が深い。

恐らく、加賀を救うにはかなりの時間がかかる。だけど…約束…だからな…まずは飯にでも誘ってみよう…


提督「これくらいでそうカリカリしないでくれ。」


提督「それにな、艦娘達だって生きてる。もちろん榛名も、加賀…お前も。」


提督「お前達は充分にやってくれてる。こうやって楽しく飯を食べるくらい当たり前の権利だろ。なにが駄目なのか僕にはさっぱりだ。」


加賀「いいえ違います。私達はいくらでも替えがきく兵器です。貴方の様にされては困ります。どうやら…榛名は毒されてしまったらしいです

   し…」


提督「そんな事言うな…榛名は良い子だ。良くやってくれてる。これくらいは問題ない。」


加賀「いいえ…ここは譲れません…」


加賀「どうしても…艦娘に情の様な物を向けたいなら他の鎮守府に行って下さい。」


榛名「加賀さん!…それは…!」


加賀「貴方もよ榛名、提督に何を言われたのかは知らないけれど、兵器としての立場を見失わない様に。」


榛名「…」


提督「悪いが…他の鎮守府には行けない。僕はここの子達は全員救う。」


加賀「救う…?面白い冗談ですね。」


提督「冗談じゃない。僕はここの子達が前任の人にどんな事をされたのかは知らない。」


提督「ただ、それで傷を負ったり、極限まで追い詰められてるのは知ってる。」


提督「だから俺が救う、皆んな笑顔で笑い合って、楽しく、普通に生活してもらう。」


提督「もちろん加賀…お前もだ。」


加賀「何故貴方がそこまでする必要が?」


加賀「私からみた貴方は…偽善者です…」


榛名「加賀さん!今のは取り消して下さい!今すぐに!」


加賀「嫌よ、提督くれぐれも無駄な情は向けないように…私はこれで…」


そう言って加賀は去っていった…


榛名「提督…申し訳ありません…」


提督「気にするな、お前が謝る事じゃない。」


提督「夜も遅い。部屋まで送っていくとしよう。」


榛名「何から何まですみません…」


提督「榛名…こう言う時は…謝罪じゃなくてありがとうだ。」


榛名「あっありがとうございます!」


提督「そう、榛名はそれで良いの。」


提督「それじゃ榛名、


提督「それでは提督、


「「お休みなさい」」


ーーー


ーー




〜自室〜


自室にて俺は考え事をしていた。加賀の事である。


提督「思った以上に…闇が深いな…」


あの異様な程に兵器であることに固執するのは、やはり前任の提督の影響か…分からない…まだ…分からない。

だが、いつかはあいつも救う、救わなきゃ行けない。まぁでも…


提督「まず1人…救う事ができた。」


これは大きな一歩だ。ここから、明日から、ここの子達を救って行こう。だってそうしないと…


提督「俺…死ねないからな…」


再び目的を再確認した俺は、眠りに付くのだった…


ーーーーーー


ーーー


ーー


夢を…見ていた…あいつと俺と2人でいて、幸せな夢…でもいきなりそれが壊されて…目の前は真っ黒になる…


(待って…行くな…行かないでくれ…〇〇…!)


提督「行くなぁぁぁ!!」


提督「ハァ…ハァ…夢…か…」


時刻は深夜3時…どうやら…悪夢を見ていたらしい…びっしょりと、気持ちの悪い汗が自分の体を覆っている。

嫌な汗だ…今すぐ流そう…


ーーー


ーー




〜シャワー室〜


提督「ふぅ…」


さっきまで、僕を覆っていた気持ちの悪い汗が流されていく。


提督「夢…か…」


そう、夢、いつぶりだろう。見るのも久しぶりだ。しかもあいつに関する…なおかつ悪夢…

原因は…何だ…考える、そして一つのことが頭に浮かぶ。


提督「昨日の…カレー…」


そうか、カレー、ここに来て一度も食べた事が無いから忘れていた。油断していた。

あの日、あの時から…あれを食べた日には必ずあいつの悪夢を見る。これは…仕方ない事…だが、それでも慣れない…

この悪夢見た後にかく異様に気持ちの悪い汗だけは…俺を縛り付けるかの様だ…


提督「はは…」


乾いた笑みが漏れる。


提督「こんな事も忘れてるなんてな…ごめんよ〇〇…お前のカレーじゃ無いとな…」


そんな言葉をこぼした後にシャワー室を去っていくのだった…


ーーーーーー


ーーーー


ーー




あの後一度自室に戻ったが、どうにも落ち着かず俺は執務室にいた。


提督「」カリカリカリ


やる事もないので黙々と書類をこなす。すると…


榛名「朝からお仕事ですか?提督。」


提督「おぉ、榛名か。お前こそかなり朝早いんだな。」


榛名「いえ、榛名は少し目が覚めてしまったので。」


榛名「そうだ、お茶でもお入れしましょうか?」


提督「あぁ、お願いするとしよう。」


榛名「紅茶とココアどちらで?」


提督「紅茶で。」


榛名「分かりました!(榛名と一緒です//)」


お茶を淹れながら榛名から質問が飛んでくる。


榛名「提督こそ今日はどうしたんですか?こんな早くに。」


普通なら、目が覚めてしまった。でこの話は終わりだろう。しかし、そう言われてしまうと思い出す…あの悪夢…1人置いてかれる寂しさ…

死にたい…そう強く思わせる…


榛名「紅茶、出来上がりましたよ。」


提督「…あっあぁ…ありがとう」


榛名「提督…」


ギューーー


後ろから抱き締められている事に数秒遅れて気付く。


提督「榛名?」


榛名「提督、物凄い疲れた顔をしています。」


榛名「確かに他の子達も救って欲しいと言いました、でもその前に、無理はしないで下さい…」


榛名「分かってます。矛盾してるって。でも貴方には無理はして欲しくないんです。」


榛名「そんなに疲れた顔をして欲しくない…それに私…貴方無しじゃ駄目…だから提督…」


榛名「辛かったら、榛名に頼って下さいね?」


その言葉に少し苦笑しながら


提督「あぁ、確かに少し疲れていた…これからは頼らせてもらうさ。」


榛名「はい!榛名、全力で頼られます!」ニコッ


榛名「それでは提督、榛名は一度部屋に戻りますゆえ、失礼します。」


そう言って、榛名は部屋を去っていく…その背中を見ながら俺は呟く…


提督「案外、嘘つくの上手いなぁ…俺…」


提督「悪いな榛名…これは俺の問題だ…頼ることは…できないなよ…」


そんな言葉が、執務室にそんな言葉が響くだった…





第4話 私の書きたい新聞は…



ルーティーン


ルーティーンと言うものがあるだろうか?ある人もいればない人もいる。まぁまばらだろう。

私には朝のルーティーンがある。そのルーティーンというのは…


間宮「提督、おはようございます。紅茶でよろしいんでしたっけ?」


提督「あぁ、ありがとう。」


僕のルーティーン、それは朝のティータイムだ。元々、ルーティーンと言うものは僕にもなかった。

しかし、ある出会いからこのルーティーンは今でも続いているのだが…


提督「何か…足りないよなぁ…」


間宮「足りない?何かお気に召しませんでしたか?」


少し不安げに間宮さんが聞いてくる。


提督「いやそんなことは無いよ。」


提督「ただやっぱり読み物が欲しいと思ってね。」


そう、僕の朝のティータイムはお茶飲むだけじゃ無い。何か読み物を読みながら、と言うものも入れて朝のルーティーンなのだ。

しかし、提督となりこの鎮守府に着任してから、読書や新聞を読んだりなどした事が無い。だから何か物足りなさを感じてしまうのだ。


間宮「読み物…ですか…」


間宮「なら、青葉さんの新聞を買っては如何ですか?」


提督「新聞?この鎮守府にあったんですね。」


間宮「はい、青葉さんが定期的に写真を撮って新聞を書いてますよ〜」


青葉か、確かにたまに写真撮っているのを見かけるな。まさか新聞を出してたとは。


提督「よし、その新聞買いに行くよ。どこに行けば良い?」


間宮「あちらの角を曲がった先に青葉さんがいると思いますのでそちらに。」


提督「そうか、ありがとう、間宮さん」


間宮「いえいえ、お気になさらず。」


さてと、新聞か…少し興味が湧くな。そんな事を思いながら俺は廊下を歩くのだった…


ーーー


ーー




提督「おっいたいた。おーい。」


青葉「?」


提督「おはよう、青葉」


青葉「てっ提督!?」


青葉「おっおはようございます!こんな所にようこそ!」


提督「そんなに緊張しなくて良いよ。」


青葉「あっあの…今日はどう言ったご用件で…」


提督「いや、大した事ないよ。」


提督「今日は青葉の新聞を買いに来たんだ。」


青葉「私の、新聞を…?」


提督「あぁ、間宮さんから聞いてな。是非どんなものかと。」


青葉「光栄です!どうぞ、お受け取りください!」


提督「え?いや…お金…」


青葉「私達何かが、提督からお金を頂くなんてとんでもありません!どうぞ!」


ぐいっと新聞を手渡される。


青葉「それでは、私は失礼します!」


それだけ言って青葉は去っていく…


提督「やっぱり…青葉も訳ありだな…」


まぁ、前任の話を聞くと訳ありじゃない方が珍しいよな…

取り敢えず、この新聞を読んで見よう。そうすれば何か掴めるかもしれない…

そう思った僕は、執務室にて新聞を読むのだった…


ーーーーー


ーーー


ーー




〜執務室〜


提督「ふむ…なるほどな…」


あの後、執務室にて青葉の新聞を読んでいるのだが…


提督「これは…軍のプロパガンダに近い…と言うかプロパガンダそのものだな…」


だが、青葉はこう言うものを進んだ書くような事はしないだろう…となると…


榛名「提督、青葉さんの新聞ですか?」


先程まで執務をしていた榛名がこちらに質問してくる


提督「あぁ、ちょっと興味が湧いて読んでみたんだが…」


そうだ、榛名に聞けばもっと詳しく分かるかも知れないな…


提督「榛名はこの新聞を読んだ事は?」


榛名「はい、前任の時は全て買うようにと言われていました。」


榛名「まぁ…進んで読もうとは思わないので…提督が来てからは買ってませんが…」


提督「買わされていたのはここの子達みんなか?」


榛名「まぁ、そうですね」


成る程…さしずめ、前任提督が艦娘達に自分達は兵器である事を自覚させるために、作らせ、買わせていたプロパガンダ新聞ってとこか。

下らない事するなぁ…だが、やる事は決まった。


提督「榛名、青葉を」


榛名「青葉さんを、読んでくればよろしいですか。」


提督「察しが良いな。」


榛名「提督が、青葉さんを救うって分かってるので。」


提督「全く…ここに来てからお前に世話になりっぱなしだ。」


提督「ありがとな、榛名。」ニコッ


榛名「何言ってるんですか、私だって提督に救われた身…これくらいお茶の子さいさいです!」ニコッ


その言葉、俺は思わず笑みを浮かべるのだった…


ーーー


ーー




青葉「失礼します!青葉、入ります!」


提督「おぉ、来てくれたか。」


青葉「あの…提督…」


青葉「新聞に不服がありましたのでしょうか…」


提督「不服…まぁ気になる点はかなりあったな。」


青葉「…!申し訳ありません。いっ今すぐ直して…」ガタガタ


提督「そういう事じゃない。」


青葉「え?」


提督「まぁ担当直入に言うぞ、あれは青葉が作った新聞であって青葉の新聞ではない。」


青葉「そっ…それは…どう言う…」


提督「あの新聞は、ただ言われた事を書いただけ。青葉の新聞って言うには足りないんだよ…


提督「青葉の書きたいものが」


青葉「私の…書きたい…もの…?


『勘違いするなよ、青葉。これはお前の新聞じゃない。勝手な事を書くな!!お前はプロパガンダを使っていれば良い。お前の書きたいもの

 なんぞ知らん。書けるだけ幸せだと思え。』


ビクッ


提督「と、まぁそんな事を言われたんだろうが…」


提督「青葉、これはお前の新聞だ。お前の書きたい事を書け。お前の撮りたい写真を載せろ。」


青葉「私の…新…聞…」


提督「そう、世界に一つだけ、青葉だけの新聞。」


提督「だから言ってごらん、君はどんな新聞が書きたい?」


提督「どんな写真を撮って載せて、どんな事を書きたい?」


青葉「わ…私…私は…!」


ギュッ


青葉「…!」


提督「良いよ、青葉が今まで言えなかった、どんなものを書きたいか、撮りたいか、全部吐き出してごらん」ニコッ


青葉「皆んなの笑顔が撮りたい…!皆んなが楽しめるもの書きたい…!」


青葉「プロパガンダ何か書きたくない!」


青葉「何より…私の掴んだトクダネで、皆んなを…何より私が楽しみたい…!」


提督「じゃあそうすれば良い。」


青葉「…え?」


提督「皆んなの笑顔の写真撮って、トクダネ掴んで、皆んな楽しんで、そして何より…」


提督「青葉が楽しめる新聞」


提督「僕がそれを作れる鎮守府を作ってやるさ!」ニコッ


青葉「提督…青葉…ちょっと無理です…しばらくこのままで…もう少し強く抱きしめて…」


ギュッ


提督「これで良いかい?」


青葉「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」


青葉「やっと…青葉の…書きたいもの…書けるよぉ…」


青葉「ひっぐ…ひっぐ…えっぐ…」


提督「よしよし、そうだなでも少し待っててくれ。」


提督「まず、他の子達救って笑顔が作れるようにしなきゃ行けないからさ。」


提督「それが出来たら、存分に青葉書きたいもの書いてくれ。」


青葉「はい!絶対、絶対に面白い新聞書きます!その時の第一号、絶対に提督にお渡ししますから!」


その言葉に僕は笑みと共に返した。


提督「あぁ、楽しみにしてるよ。」ニコッ


ーーー


ーー




私は、青葉さんを呼んだ後、盗み聞きをしていた…悪い事だとは分かっていた…それでも気になってしまったのだ…

提督は青葉さんを救う事ができた。なのに何故だろう…心がモヤモヤする。私自身、ここの皆んなが提督に救われる事を願っていたはずなのに

青葉さんが提督に抱きしめられた瞬間、心がチクッとした。提督が青葉さんとお話しているのを見ているとモヤモヤした…


榛名「榛名は…どうなってしまったのでしょう。心がモヤモヤ、チクチクします…」


この時、まだこの感情が何か知らない私はそう言葉をこぼすのだった…





第5話 心の込めたお料理を



提督「ふむ…」


現在、僕こと提督は調べ事をしている。ここの艦娘達についてだ。何度も言うが僕は死ぬ為に、この子達を救わなきゃならない。

しかし、思ったより闇が深い子も多い。その為一度ここの子達の事を調べれる必要があると思ったのだ。

調べた結果大体の事が分かった。まず全員の共通点としては、


道具だと刷り込まれていた事、実際その様に扱われていた事


これは分かったのだが、


提督「これ以上は、個人的に関わらないと分からないか…」


提督「っと…もうこんな時間か…」


提督「何だか…今日は飲みたい気分だな…」


提督「ん…そう言えば、艦娘がやってるお店があったな…確か鳳翔さんだったか…」


提督「良い機会だ、少し飲みに行ってみるとしよう。」


そう思った僕は、席を立つのだった…


ーーーーーー


ーーー




ガラガラ


提督「今晩は〜」


鳳翔「てっ提督!?」


鳳翔「あの、ようこそこんな所へ…何か不都合がありましたでしょうか…」


提督「そんな事は無いですよ、鳳翔さん。今日は少し飲みたい気分だったので、ご迷惑でしたか?」


鳳翔「いえ、そんな事はありません!」


提督「そうですか、なら良かった。あと何か適当にお料理お願い出来ますか?」


鳳翔「承りました。」


〜数十分後〜


提督「ふぅ…やっぱり良いですねぇ…仕事終わりの1杯は…」


提督「このおつまみも美味しいです。」


鳳翔「それなら良かったです。」


提督「鳳翔さんも、一緒に如何ですか?」


鳳翔「いっ…いえ…!私何かが…おこがましい…」


提督「ふむ…ではこれは命令にしましょう。僕とお酒の席に付き合って下さい。」


鳳翔「ごっご命令ならば…」


提督「さて、鳳翔さん。折角のお酒の席です。少し僕のお話を聞いては頂けませんか?」


鳳翔「はっはい!」


提督「私はね、理由は伏せますが、ここの子達は全員救うって決めてるんです。」


鳳翔「…救う?」


提督「はい、前任の提督には…皆んな随分酷い事をされてきた様ですから…」


提督「もちろん鳳翔さん、貴方も。」


鳳翔「…!」


鳳翔「わっ私は何も…「前任の提督は」 


ビクッ


提督「よくここに来られていたそうですね。」


提督「少し、この店の事を調べましてね、ここは艦娘達のお気に入りの場所だったらしたそうじゃ無いですか。」


提督「しかし、そんな場は壊された。前任の提督によって。」


鳳翔「…」


提督「その後は提督の為だけの酒飲み場になったそうですね、そして貴方はいつもお酒を注ぐ役をやらされた。」


提督「深夜まで注ぐのはざら、お皿を何度も発注している所を見ると料理を何度か投げ捨てられましたか…」


提督「鳳翔さん。」


ギュッ


鳳翔「…!」


提督「そんな横暴、よく耐えましたよ。貴方はとても強い人だ。」


提督「でも、これからはそんな事させません。だから安心して下さい。」


鳳翔「提督、私…!」ポロポロ


提督「良いですよ、今はいっぱい泣いて…」


鳳翔「うわぁぁぁぁぁぁん」


提督「本当に、よく頑張りましたね、明日鳳翔さんにしたい事があります。食堂で待ってますので。」

ーーー


ーー




提督「間宮さん、厨房借りれるかな?」


間宮「料理ですか?分かりました。」


提督「ありがとうございます。」


提督「さてと…」


久しぶりだな…このカレーを作るのも。いつもあいつと作ってた。今でも覚えてる…


提督「大事なのは…具が溶けるまでしっかり煮込む事…だよな。」


提督「いつだって忘れないさ…この作り方は…な…」


そう言葉を残しつつ、私はカレーを作るのだった…


ーーー


ーー




鳳翔「提督、ただいまご到着致しました!」


提督「おっ、来ましたか。そこに座って待っててください。もうすぐできますから。」


鳳翔「できる…?」


提督「あ、そこ座って下さい。」


鳳翔「はっはい…」


提督「っと、出来上がりましたよ。」コトッ


鳳翔「これは…」


提督「カレーです。召し上がれ。」


鳳翔「あの…なぜ私に?」


提督「簡単ですよ、鳳翔さんはいつも料理出す側でしょう?」


提督「でも前任の提督に、ご飯出しては投げ捨てられってしてたんでしょう?」


提督「それって最低の行為だと僕は思います。」


頭ポン


提督「だから今日は、今まで頑張って料理を作ってきた鳳翔さんに、食べてもらう側になって貰いたくて。」


提督「心を込めて、作りました。鳳翔さんがそうしてきた様に、ね。」ニコッ


提督「さぁ、召し上がれ。」


鳳翔「提…督…」


パクッ


鳳翔「」ポロポロ…


提督「口に合いませんでしたか…?」


ダキッ


提督「ふぇ?」


鳳翔「いいえ…とっても、美味しいです…!私、この味、一緒忘れません…!」


鳳翔「提督…今度は私の料理を振る舞いたいです。だからまた、お店に顔を出してくれますか?」


提督「もちろん、楽しみにしてます。」ニコッ


鳳翔「はい!」ニコッ


(この方と…私…いつか2人でお店を開きたいです…)




第6話 救うのは死ぬ為に


青葉「提督〜!どもども!本日の青葉新聞朝刊であります!」ビシッ


朝のティータイムを楽しんでいた所に青葉が来る。本日の朝刊だ。

因みに青葉には最近毎朝新聞を貰っている。やはりティータイムには何か読むものが無いと落ち着かないのが僕なのだ


提督「おぉ、サンキューな。」


提督「に、してもお前大分明るくなったよな。」


青葉「明るく…ですか?」


キョトンとした顔で青葉が返す。


提督「明るくなったとも、前とは比べ物にならないくらいには。」


青葉「今の青葉より、前の青葉の方が良かったりします?」


提督「いや、今の青葉の方が好きだよ。青葉らしい。」ナデナデ


青葉「ほ〜ナデナデとは中々良いものですねぇ。」


提督「そう言えばお前、今日演習の旗艦じゃなかったか?」


青葉「あっ…!」アセアセ


提督「全くドジな奴だな、ほら早く行ってこい。」ニコッ


青葉「はい、それではまた後で!」


慌ただしそうに走っていく青葉に、僕は苦笑を浮かべた後執務室に向かうのだった…


そう言えば、今日は着任したての子が秘書艦だったよな…


ーーーーーー


ーーーー


ーー


「おはようございます!提督!」


シャキッと元気の良い挨拶が執務室に響く。


…!この声…


提督「あぁ、おはよう…」


咄嗟に出た動揺を隠す…


「本日より着任しました。吹雪です!よろしくお願いします!」


提督「早速だが吹雪。」


吹雪「はい」


提督「今日は秘書艦、おまけに演習で出払ってるわけだ。単刀直入に聞こう。」


一度深呼吸を挟む…


提督「何故…ここに来た…」


さっきまで笑顔だった吹雪の顔が少し険しくなる。


吹雪「察しが良いんですね。」


提督「あの時からの付き合いだ。」


一度考える素振りをしてから吹雪は言葉を発する。


吹雪「まぁ、お話しても問題はありませんか…」


吹雪「一言で言えばあの人から言われて来ました。貴方の様子を見てくる様にと。」


提督「そんな事だろうと思ったよ…」


吹雪「聞きましたよ、まだほんの一部、雀の涙ほどの人数の艦娘からの評価ですが。」


吹雪「新しいここの提督は思いやり溢れた素晴らしい方と言う評価だとか。」


吹雪「あの人もそれに関しては喜んでおられました。」


吹雪「まぁ…」


提督「なんだ…」


吹雪「同時に少し悲しそうでしたが…」


提督「…」


吹雪「まだ…救ったら死ぬつもりですか…?」


提督「当たり前だ。そもそも死ぬために救っている。」


吹雪「あの人が恋しいのは分かります。あの人との約束ですから救うのも分かります。私も救うのは賛成です。」


吹雪「しかし…しかし…!」


段々と吹雪の顔が必死になる。


吹雪「だからといって…「死ぬ事はないんじゃ無いかってか?」


吹雪「…そうです。」


その言葉に思わず乾いた笑みが溢れる


提督「ハハッ…!」


吹雪「何がおかしいんですか…!」


提督「お前は…変わらないな…そうやってすぐに熱くなるし僕の事をいつも思いやる。」


提督「僕だけじゃ無い、救う事自体には賛成って言ってたな?まだ話した事もない奴も救おうとする。」


吹雪「それは、貴方m…「僕は自分の為にやってる。」


提督「だがお前はどうだ、自分の利益に関係なく相手を助けたいと願う。すぐ目の前のものに絆され、情に流れる。」


提督「艦娘は兵器だとか、人じゃないとか頭のおかしい事を言う奴もいるが、」


提督「お前は…」


吹雪の頭にポンっと手を起き、私は言葉を紡ぐ。


提督「僕よりよっぽど人間臭い。」ニコッ


提督「救う事は賛成そう言ってたよな?」


吹雪「まぁ…はい…」


提督「なら、全員救うまでは協力といこう。」


吹雪「…分かりました。ですがその後は絶対に死なせたりはしません。」


提督「まぁ、そこに関しては精々頑張ってくれ。」


提督「さーてと、僕少し外の風浴びてくるから。10分くらいで帰ってくるからそしたら執務再開だ。」


吹雪「了解しました。」


ガチャーバタンッ


そうして、彼は部屋を去っていく。


吹雪「あいも変わらず…死にたがりですか…」


そう…あの日、あの時、あの人が居なくなってからだ。彼は死に取り憑かれている。死ぬ為に動いている。

でも…でも…


ガクッ


膝を地面につける。そのまま止まることのない涙が溢れる…


吹雪「何で…何で…覚えて無いんですか…!」


あの人が最後に言ったのは救う事だけじゃない…

それから先は嗚咽も溢れる所々聞き取れないほどになっていた…


吹雪「あの…人は…貴方に…ーーー…って…言ってたんですよ…!」


その言葉は静寂したこの部屋に、静かに響くのだった…




第7話 役に立たない艦娘


提督「うわぁ…結構厳しいなこれ…」


現在僕こと提督は資材状況を確認している。率直に言おう。めっちゃひもじい…


提督「これは、遠征に行かせるしかないか。」


資材確保の基本である遠征、実はそれを着任してから一度も僕はしていない。理由は簡単だ。遠征メニューがブラックすぎたからだ。

僕がここに着任した時には、そのブラックなメニューで駆逐艦の子達は疲弊しきっていた。

その為、しばらくは休養という形を取っていたがいよいよ資材がキツくなってきたというわけである。


提督「まぁ、充分な休養は取れたと思うんだが、精神的が問題だな…」


かと言ってこの状況をこのままにする訳にも行かない。


提督「一度、あの子達の状態を見ないとな…」


そう思った僕は、執務室に今回行けそうな子を呼ぶのだった…


ーーーーーー


ーーーー


ーー


〜執務室〜


提督「さてと、顔を合わせるのは着任以来か。」


提督「どうだ?疲れは取れたか?」


睦月「はっはい、お陰様で。」


今回読んだのは睦月型のメンバー。1番疲れが取れてそうだったからだ。あと燃費。


提督「ふむ、それなら良かった。」


提督「実は資材がそろそろ切れそうでな、遠征に行ってもらう事にした。」


ビクッ


彼女達の様子がいきなり変わる。恐怖の表情だ。


提督「まだ、怖いか?」


睦月「いっいえ…そんなことは…!」


口ではそう言うが、顔が引き攣っている。やはり、まだ厳しいな…


提督「無理はしなくていい、まだ資材はあるにはあるからな。」


提督「それに…」


提督「補給はなし、修復もせず、沈没するまで資材集め、こんなやり方じゃ仕方ない。トラウマにもなる。」


提督「大丈夫だ、僕はこんな事はしない。無理はさせないよ。」


提督「ただ、僕は着任してまだ間もない、信用しろと言う方が無理だろう。」


提督「ゆっくりで良い、僕を信用できるってそう思ったら、僕に身を預けて出撃して欲しい。」


提督「大丈夫、それは君達のタイミングで良いから。」ニコッ


提督「さっ今日は部屋に戻りなさい。」


「あの!」


睦月「私達、司令官の行動、見てました。」


睦月「榛名さんも、青葉さんも、鳳翔さんも、提督が救ってました。」


睦月「だから、私信用できます!確かにまだ怖いけど…司令官は大丈夫だって確信を持って言えます!」


すると、その言葉に続くように、静寂を保っていた他の子達も言葉を発する。


如月「あの…私も行けます…」


卯月「卯月も…行ける…ぴょん…」


弥生「私も…」


文月「しれいかん、私も…」


長月「私もだ、問題ない。貴方は信用に値する。」


菊月「あぁ、私も行ける。」


三日月「わっ私も問題ありません。」


望月「めんどいけど…今の司令官ならまだマシかな…」


以外と、信頼されている事に嬉しさを感じつつ僕は言葉を発する。


提督「そうか、ありがとう。ただ無理はしないでくれよ。」ニコッ


提督「さて、皐月はどうする?」


皐月「ぼっ僕は…」


提督「僕は、無理だけはして欲しくない。嫌だったら行かなくて良い。」


提督「無理に行っても、君が苦しい思いをするだけだ。」


皐月「司令官は、どうしてそんなに優しくするの?前の人は、僕達は役立たずだから沈没してでも資材届けろって…」


提督「僕はここの子達を救いたい。そんな救いたい相手に苦しい思いをさせる訳には行かない。それだけだよ。」ニコッ


皐月「僕…行くよ…」


提督「大丈夫…なのか?」


皐月「うん、僕は司令官を信用するよ。」


提督「そうか、ありがとう。なら僕も責任を持って君達を守るよ。」


睦月「よーしそれじゃ、睦月型張り切って参りましょー!」


「「「「「「「「「「「おーー!」」」」」」」」」」


そうして僕が着任して初の遠征任務は始まるのだった…


ーーーーーー


ーーーー


ーー


提督「睦月、敵艦は見えるか?」


睦月「いえ、問題ありません。資材もたんまり持って帰れそうです。」


提督「そうか、気を抜かずそのまま帰投してくれ。」


睦月「了解です!」


提督「それから、帰ったら間宮さんと鳳翔さんがご飯を用意しておくと言っていた。」


提督「入浴後楽しみにしておけ。」


睦月「マジですか!楽しみにゃしぃ!」


提督「あぁ、楽しみなのは分かるが取り敢えず気を抜かず帰投し…「敵艦発見!」


提督「何!?」


おかしい、その海域には深海凄艦はいないはずどうして!?

いや…慌てても仕方ない状況を把握しよう…


提督「敵艦の数は?」


三日月「駆逐艦20、重巡洋艦5、そして…


三日月「戦艦…」


提督「戦…艦…」


まずい…非常にまずい。


提督「資材はすてろ!!全力撤退だ!!」


睦月「え?でもそれだと…」


提督「早くしろ!!これは命令だ!今撤退しなければ沈むぞ!」


睦月「り、了解!」


皐月「…」


睦月「皐月ちゃん!何してるの、撤退だよ、撤退!」


皐月「僕は役に立たない…ここで引いたら…またそう言われる…また殴られる…?」ビクビク


睦月「何言ってるの!今の司令官はそんな事しない!」


皐月「ここで、やらなきゃ…!」


睦月「皐月ちゃん!待って!」


ゴォォン!!


瞬間、轟音が鳴り響く。


睦月「提督、皐月ちゃんが、皐月ちゃんが!大破です!


提督「全艦全力離脱だ!皐月はおぶっていけ!何としてでも全員で帰ってこい!


それから…何時間経っただろう。僕は必死に指揮を取り続けた。睦月達も必死に逃げた。途中大破艦は出たが…


睦月「司令官…離脱、成功です。中破以上多数ですが…」


睦月「沈没艦、無しです…!」


提督「了解、入渠の準備は出来ている。報告には来なくて良いからすぐに傷を癒してくれ。」


提督「それから、皐月は回復が終わったら執務室にくる様に。」


提督「ふぅ…」


力が抜け、椅子に横たわる。

危なかった…本当に危なかった…もしここで誰かが沈んでいたら…


ゾクッ


瞬間背中凍りつく。僕の目的はここの子達を救う事。それが出来なければ死ねない。

故に、誰一人死なせては行けない。そうでないと…僕は死ねないから…


コンコン


提督「入って良いぞ。」


皐月「失礼します。司令官、何かな?」


提督「何故、命令を無視した。下手したら沈んでいたぞ。」


皐月「だってあそこで撤退したら、僕は役立たずのまま…」


提督「そんな理由で!」


皐月「…!」


提督「自分の命を投げ捨てたのか!」


提督「良いか皐月よく聞け、そもそもお前は役立たずなんかじゃない!」


『チッ…!性能は低いし、貴様は本当に役に立たんな皐月、このグズが…!どれ1発殴らせろ』


皐月「違…僕は…役に…」ビクビク


ギュッ


皐月「…!」


提督「良いや、役に立ってる。お前は最高に役に立つ艦娘だ。」


提督「それに、資材なんか後からいくらでも集まる、でも皐月の命は一個だ。今の皐月は1人だけだ。」


提督「睦月達の事も考えてくれ、大事な人に勝手に逝かれるのってさ…とっても辛いんだよ…」


提督「あとこれだけは覚えていて欲しい。」


提督「大丈夫、これからは皐月の事を役立たずなんて言わせない。これからは睦月達も僕もいるから。」ニコッ


皐月「うわぁぁぁぁぁぁん!」


皐月「司令官、僕…!僕…!」


提督「よしよし、今は好きなだけ泣いて良いんだよ。」


ーーーーーー


ーーーー


ーー


皐月「司令官…ありがとう。」


提督「気にするな、当たり前の事をしたまでだ。」


提督「さぁ、今日はもう寝なさい。」


皐月「うん!」


提督「それじゃ皐月


皐月「それじゃ司令官


「「おやすみなさい」」


(司令官…多分僕、今日というこの日から…司令官といる日なら全部が特別な日になるってそんな気がするよ…)




第8話 自分らしさを捨てないで


提督「何か久しぶりな気がするな。」


現在、執務室にて執務を行っている僕は、今日の秘書官である子に声を掛けていた。


榛名「まぁ、最近は他の子達が秘書艦でしたから。」


榛名「それに、提督はここの皆さんを救うって言う大事な役目がありますしね。」ニコッ


提督「そうだな、でも榛名にも感謝しているぞ?」


提督「着任当初からだいぶお世話になっているしな。」


榛名「いっいえ、榛名には勿体ないです!私も提督に救って頂いていますし…」


提督「まぁまぁ、こう言う時は謙遜せずに素直に喜ぶもんだぞ。」ナデナデ


榛名「…!//そっそう言う物でしょうか…」


提督「そうそう、そう言うもんだ。」


などと榛名と雑談を交わしていると…


コンコン


提督「入っていいぞ〜」


吹雪「失礼します、提督。」


提督「おっ吹雪か。」


吹雪「提督、例の資料をお持ち致しました。」


榛名「例の資料?」


提督「あぁ、吹雪に極秘に頼んでおいたやつでな。悪いが少し席を外してくる。」


榛名「分かりました。執務はお任せください。」


少し、僕は榛名に申し訳なさを感じる。


提督「悪いな…ごめん。」


榛名「いえ、極秘なら仕方ないです。榛名は大丈夫です!」


その言葉に僕は少し苦笑を浮かべ、


提督「そうか、ありがとう。じゃあ行ってくる。」


と言葉を返した。


榛名「はい、行ってらっしゃいませ。」ペコリ


バタン


…そうして提督は部屋を去っていく。


寂しい…


そう心の中で感じている私がいた。最近の私はおかしい…提督の事を思ってしまうし、他の子と仲良くしている所を見ているとモヤモヤする。


榛名「もっと…提督と居たいです…」


誰にも届かないその言葉が執務室に響くのだった…


ーーーーーー


ーーーー


ーー



提督「で、だ。この子か?」


吹雪「はい、駆逐艦浦風。前任から謹慎処分をくらっており本日でそれが終わります。」


提督「原因は?」


吹雪「言葉づかい、だそうです。それ以外は何とも。」


提督「ふむ、後は話してみないとか…ありがとうそれじゃ行ってくる。」


吹雪「はい。」


吹雪「それと提督。」


提督「何だ?」


吹雪「何度も言いますけど、救うのを手伝いはしますが…」


吹雪「私は絶対に貴方の死にたがりを認めてませんから。」


提督「…分かってるよ。」


そう言葉残し僕は浦風の元へ向かう。


にしても、言葉遣いか…一体なぜそんな理由で謹慎になるのか…


提督「まぁ僕は全力で救う、だよな?〇〇…」


ーーーーー


ーーー




そうして僕は浦風と対面していた。


提督「初めまして。僕が新しく着任した提督だ。」


すると、下を俯いていた浦風が言葉を発する


浦風「貴方が、新しい提督さん?」


不安そうに浦風が言葉を溢す。


提督「あぁそうだ。」


提督「まずはお疲れ様。理不尽な謹慎処分で君も納得がいかなかっただろう。」


浦風「そっ…そんな事は…!うちが悪いん…じゃけぇ…」


浦風「…!」


いきなり、浦風が口を抑える。


浦風「ごめんなさいごめんなさい。また変な喋り方してごめんなさい。」


提督「浦風…?大丈夫か?少し落ち着い…「ごめんなさい!」


浦風「じゃとか、じゃけぇって使ってごめんなさいゴメンなさいゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」


気付けば、浦風の顔は恐怖と涙で包まれていた。


浦風「お願…い…お願いだから打たないで…閉じ込めないで…」ポロポロ


そうか、確かこの子は元々広島弁を話す艦娘らしかったな…

それが前任提督は気に食わなかったらしい、だからこその謹慎…暴行…


本当に…本当に…!


ギリッ


思わず歯軋りをする。本当に胸糞が悪い。


提督「浦風…」


ギュッ


浦風「…!」


提督「お前の喋り方は変な何かじゃない!」


浦風「変じゃ…ない…?」


提督「そうだ、変なんかじゃない!それはお前の「自分らしさ」だ。」


浦風「うちの…自分…らしさ…?」


『貴様、何だその喋り方は!全くもって気持ちが悪い…謹慎でもしておけ!』


提督「そうだ、喋り方だってお前の自分らしさ何だよ。だから…」


提督「自分らしさを捨てるな。」


浦風「でも…あの人はおかしいって…」


提督「気にするな、その人は浦風の自分らしさを捨てようとする人だ。耳を貸しちゃ行けない。」


提督「それに…


提督「その喋り方、とっても可愛くて魅力的で俺は好きだぞ。」ニコッ


浦風「あ…あ…」


浦風「うわぁぁぁぁぁん!!」


浦風「提督さん…提督さん…うち…うちぃ…」


浦風「変な喋り方じゃないんよね…」


浦風「これは…うちの魅力じゃけぇ…そう思ってええんよな…?」


提督「当たり前だ。浦風の魅力で自分らしさだよ。」ナデナデ


浦風「そうか…ありがと…うち、少しこのままでいたいわ…」


提督「あぁ、了解だ。」ニコッ


ーーーーーー


ーーーー


ーー



提督「落ち着いたか?」


浦風「提督さんのお陰でな。」ニコッ


浦風「提督さん…ほんまに有難うな。お返しになるかわからへんけど、何かあったらうちに相談してや。」


その言葉に僕は苦笑を浮かべながら


提督「浦風がそう言うなら、こちらこそこれから頼らせてもらうよ。」


ニパァ


浦風「うん!うち頑張るけぇね!」


(提督さん…うちこの日、この時間、一生に心に刻むけぇね…)


(後、これはもう、うち提督さんの事好きになってしまったわ。)






第9話 変化



そうして、次の日。僕は吹雪と出かける準備をしていた。



榛名「提督、留守の間は榛名にお任せください!」



提督「おう、任せたぞ。」



吹雪「それじゃ提督、行きますか。」



提督「だな。」



ーーバスにてーー



現在、僕らが出かけるのはある人物に会う為だ。



吹雪「何年ぶりですかね、あの人と貴方が会うのは。」



提督「んまぁ、2年ぶりじゃないのか。」



吹雪「2年、あれからもうそんなに経ったんですね…」



提督「あぁ…そうだな…あいつを失ってもう2年だ…」



そう、今日この日は、あれから丁度2年前なのだ。



〇〇を失い…僕が死にたがりになった日から…



ーーーーー   



ーーー






提督「っと、到着だな。」



吹雪「提督、あの人がいますよ。」



⁇「おーい、やっときたかお前達。」



吹雪「はい、お出迎えありがとうございます…」



吹雪「大将。」



大将「まぁまぁ、堅苦しいのは無しだ、長旅お疲れ様。」



提督「…久しぶりだな…親父…」



大将「お前もな…」



大将「積もる話は中でしよう。」



そうして、僕らは家の中へと案内されていくのだった…



ーーーーーー



ーーー






大将「さてと、まずはお前達の近況を聞こうか。」



提督「大変ブラックな提督業に勤しんでるよ…」



大将「それは結構、それより…」



大将「あの約束はどうだ?」



提督「まぁ、ぼちぼちだよ…死ぬ為には救わなきゃだしな…」



その言葉に、親父は少し悲しい顔を浮かべながら返す。



大将「それなら…何よりだ。」



吹雪「何よりだ…じゃありませんよ…」



その時、鍵を刺すように吹雪が言う。

その顔は、怒りの最高潮に達していた…



吹雪「私は!貴方の死にたがりを認めてません!」


瞬間、怒号が響き渡る。

一息、ため息をつき、僕は一言返す。



提督「吹雪、いつまでその話を続けるつもりだ?」



提督「俺は死にたがり、それは2年前のこの日から変わらずだ…」



提督「俺の意志は変化しない、どれだけ経ってもな…」



吹雪「違います…貴方は今確実に変化してる…!」



提督「何を根拠にそんな事を言うんだ?俺は約束を果たして死にたい、だからその為に救う、ただそれだけだ。」



吹雪「本当に…そう言えますか?」



提督「何だと?」



吹雪「昨日、映画を見ましたよね。貴方が今まで救ってきた子達と一緒に。」



吹雪「その時のあの子達は、最初とは比べ物にならないくらいの笑顔でした。」



吹雪「その時の貴方の顔、悪くないって顔してましたよ。」



提督「そんなの…お前の気のせいだろ…」



吹雪「気のせいじゃありません、だって貴方、その顔見て笑ってたじゃないでか…」



提督「…黙れ…」



吹雪「本当は、あの子達を救ってそのまま生活しても良いって思い始めてるんじゃないんですか?」



吹雪「このまま暮らすのも悪くないって…!救う事にだって喜びを感じてるんじゃないですか?」


 

吹雪「約束なんかじゃなくて…自分が救いたいって思ってるんじゃないですか…?」



吹雪「そして…貴方は生きたいと…感じているんじゃ…」



提督「う っ せ ぇ な !!」



提督「僕は死にたいんだよ!ただあいつの元に行きたいだけなんだよ…!」



提督「僕が生きたいと思ってるだって?ふざけるな…!」



提督「大体…約束じゃなきゃ救ってない!!」



提督「僕は…あいつと約束してなかったら救おうとすら思わない!」



提督「別にどうなって良い…!ただ自分が死ねればそれでいいだけの人間なんだよ!!」



提督「死にたいから救う、死ぬ為だ!全部自分の為だ、あいつらの事を思ってやった事じゃない!」



提督「僕は自分の事しか考えていない、そう言うクズなんだよ、可哀想だから救ってやるなんて優しい人間じゃない。」



提督「ただ傷ついた奴を救ってそいつらに好かれて仲良しこよしなんてするつもりはない…」



提督「救った後何か知ったこっちゃない、僕があいつらにどれだけ好かれようがそんなのは関係ない…」



提督「僕はただの死にたがりだ…」



提督「外に出てくる…あいつにも報告しなきゃな帰ってきたって、もうすぐそっちに逝くってな…」



吹雪「な…んで…貴方は…」ポロポロ



バタン



そうして僕は部屋を後にする、思わず熱くなってしまった…

でも、自分の意思をもう1度確かめる事ができた。


そうだ、僕は死にたがりだ。少しでもこっち側で生を感じては行けない…

今僕にあるのは、死だ。死が全てだ。それが死にたがりである僕なんだ…



1人そんな事を考えながら、僕はある場所に向かっていくのだった…



ーーーーーー



ーーー






提督「久しぶりだな…〇〇…帰ってきたよ。」



そう、ここは…あいつと俺が1番好きだった場所…そして…



ーーー〇〇が最期を迎えた場所ーーー



提督「なぁ…お前との約束通り、僕はちゃんと救ってるよ…」



提督「以外だろ?お前といた時にはやる事なすことめんどくさそうな奴だったのに。」



提督「もう少しだけ…待っててくれ…大丈夫…きっとそっちに行く…」



提督「僕は、死にたがりに関しては世界一だからな。」



大将「決意は…固いな…」



提督「なんだよ、あんたまで僕を説得か?」



大将「別にそんな事はしないよ、それが俺たち親子の距離感と言うものだ。」



提督「そうだったな…」  



提督「あんたには…感謝してるよ…」



提督「昔は、生きる事で精一杯だった…いつ親に殺されるか分からなかったからな…」



提督「そんな時だ、遂に親は俺の事を殺そうとした…それを察知して家出した僕は当てもなく彷徨っていた、そこを拾ったのがあんただ…」



提督「まぁそれ以上は語らないよ、ただ血は繋がってなくとも…」



提督「間違いなく、あんたは俺の親父だよ…」



大将「デレるのが遅い…」



大将「死にたければ止めはしない、うんと救って悔いなく死んでこい。」



大将「息子の道を応援するのが父親だよ…」



大将「例えどんな道でもな…」



提督「そろそろ帰るとするよ。」



大将「気をつけてな。」



そうして、そいつは去っていく。



大将「息子の道を邪魔する気は無い…だが…」



大将「なぁ、息子が救った君達は…」


ゆっくりと夜空を見上げつぶやく…


大将「もしあいつが君たち全員を救った時、君達はあいつを救えるかな?」



その言葉は、静かに消えていくのだった…





第11話 やりたい事はやってみる




その後、僕はバスに揺られ鎮守府に帰った。

因みに吹雪はいない、あそこでの喧嘩の後一言も話すことはなかった。


元々、吹雪は親父のとこの艦娘だ。親父の命でこちらにきていただけで、今回戻ると言う形になった。

まぁ、正直あそこまで喧嘩した時点でそれは仕方ないことかも知れない。


ふと、バスの窓から空を覗く。

目には空の風景が写っているが、脳は目に写っていることを理解していないような感覚を覚える。


頭の中は昨日の事でいっぱいだ。

理由は何か、そんなことは簡単だ。もうすぐなのだ、もうすぐで…終わるのだ。


昨日、あいつの墓で言った通り、あと少しで救い終わる。

ようやく、僕は死ねるのだ。


一つ言っておこう、僕は救うのは何度も言うが自分の為だし、周りから見ればただの偽善者だ。

まぁその実、裏にはしっかりと自分の目的がある分、僕は偽善者より酷い。


だがそれももうすぐ終わる。数にすれば後数人。

偽善者もどきは終わり、死にたがりとして死ねるのだ。


だからこそ、あいつの墓でもう一度気合を入れ直した。

さぁ、救おう、僕が死ぬために…


心の中で自分の決意を再確認した僕は、帰路へ着くのだった…



ーーーーーー



ーーーー



ーーー



そうして、僕は鎮守府に到着する。


榛名「提督、お帰りなさい!」



元気な挨拶と共に、榛名が出迎えてくれる。


榛名「?」


しかし僕の様子を見て、きょとんと首を傾げる。


榛名「提督、吹雪さんはどうしたのですか?」


その言葉には、僕は


提督「別に、あいつの出向期間は終わったってだけだ。」


榛名「はぁ…そうなんですか…」


少し困惑しながらも納得する榛名。


提督「っと、それよりだ。」


これ以上掘り下げられるのは、あまり良くないので、僕は話題を変える。


榛名「何でしょうか?」


提督「休みの間、大分仕事が溜まってしまっているからな。」


提督「今仕事はどれくらい溜まっているか分かるか?」


榛名「その件でしたら、執務に関しては滞りなく。」


榛名「ただ、工廠の任務が溜まっているのでそちらをお願いしても良いでしょうか?」


提督「了解、工廠だな。」


にしても、確か、工廠は明石がいたよな。

あの子とは、まだ任務以外では話していない。


これは良い機会だろう。

そんなことを思いながら、僕は工廠に向かうのだった…



ーーーーーー



ーーーー



ーー



そうして、僕は工廠に着く。

実の所、必要じゃない時はほとんど工廠に足を運ばない。


なので、意外と来る時は新鮮な感じがする。


妖精「あー提督さんだー。」


すると、1人の妖精が近づいて来る。


妖精「珍しいね、いつもあんまり来ないのに。」


提督「まぁな、工廠関連の仕事が溜まってたし、これを機会に明石と話してみようと思ってな。」


妖精「明石さんとねぇ…ふむふむ…」


顎に手を当て、妖精は思考する仕草を取る。


妖精「やっぱり、救うって奴?」


提督「ご名答だ。」


提督「お前には、偽善に見えたりするのか?」


妖精「うーん…ただ救うってだけならそうだったかもしれないね。」


妖精「ただ、あなたの目を見れば分かる、その裏にはきっと自分の目的がある。」


妖精「実際、自分の目的が裏にある方が信用できる事もあるんだよ。」


妖精「例えば、その目的が死だったらしたらね。」


提督「妖精って言うのは感が鋭いんだな。」


妖精「まぁ、人間というものを嫌というほど見てきたからね…」


妖精「話が終わったら、またここに来てくれるかい?」


妖精「もう少し、話したいことがある。」


提督「了解だ。」


そう言葉を残し僕は明石の元は向かっていくのだった。



ーーーーーー



ーーーー



ーー



提督「…これは?」


ふと、見たことないものを発見する。

これは…何かの発明品か?


近くに書き置きがある。

恐らく、この発明品の概要だろうか。


提督「ポーカーフェイスになれる道具…か」


これはきっと明石の発明品だろうか。

成る程、随分と面白いものを作るんだな。


明石「どなたでしょうか?」


背後から、声がする。

即座に振り向くと、そこには明石がいた。


提督「よう、明石。こうして話すのは初めてだな。」


明石「提督…!?申し訳ないです。来るとわかってたらもっと綺麗に…」


提督「別にそんな必要はない、ちょっと話がしたかっただけだ。」


提督「明石、これはお前の発明品か?」


スッと、先程の発明品を明石に見せる。


明石「…!」


瞬間、明石の顔が青くなる。


明石「申し訳ありません!勝手にこんなもの作ってしまって…」


明石「提督が不在の間、少し作りたくなってしまって、本当にごめんなさい…」


提督「これを作る事の何がダメなんだ?」


提督「なぁ、明石。お前はきっと何かを発明したりするのが得意なんだろう。」


提督「なのに何故、そこまでタブーになる。」


提督「僕は何も知らない、ここに来るまでお前が、お前たちが何をされたか。」


提督「だが、僕はお前達を救いたい、救うためにここにいる。」


提督「お前の過去を…話してくれ。」


明石「分かり…ました…」


力なく、明石が椅子に座り込む…

そうして、ぽつりぽつりと言葉を紡ぎ出す。


明石「提督と言う通り、私は何かを発明したりするのが好きです、得意です。」


明石「でも、ここではそれを否定されました。」


明石「私は、いつも何かを作る時は面白いものを作りたいと思うんです。」


明石「でも、私たちは兵器…私の使命は戦争に勝つためにより良いものを発明する事…」


明石「だから、遊び心のあるものなんかは作る必要はない、そうして私の発明品は否定されました。」


明石「バカみたいですよね…艦娘のくせに、こんなもの作りたがるなんて…否定されても…仕方ないです。」


提督「面白いじゃん、お前の発明品、僕は好きだよ。」


明石「え?」


提督「だってそうだろ、中々思いつかない発想がお前には出来る。そんな奴が作る発明品なんて面白いに決まってる。」


提督「だからな、明石。」


提督「やりたい事はやってみろ、その方がきっと楽しい。」


提督「大丈夫、お前の発明品はいいもんだって僕が保証しよう。」ニコッ


明石「…!」


『こんなガラクタなんぞ作るな!お前の発明なんか役に立つはずがない!ただのガラクタだ!』


明石「…はい!」


初めて、認められた。初めて、価値があると言われた。私の発明品はガラクタなんかじゃなかった…!


明石(ありがとうございます、提督。)


明石(私、もう1度、自分の作りたいものを作ります。)


明石(だって…やりたい事はやってみろ。ですもんね!)






11話 最後の1人




その後、僕は明石と適当に雑談をし工房を出た。

そして…もう一度言われた通り妖精のところまで戻ってきていた


提督「で、話ってのは何なんだ?」


妖精「そうだね、幾つか話したい事はあるんだけど…」


妖精「取り敢えずは、ここまでお疲れ様。」


提督「なんだ?労いの言葉をかけたかったのか?」


妖精「まぁその要素も無い訳では無いんだけど…」


と、妖精は一言置いて…


妖精「ほら、後1人でしょ。」


そう、言葉を告げる…


妖精「確かにさ、前の提督に皆んな傷を負わされてる。」


妖精「でも浅い子は君の態度とか振る舞いの時点で安心して回復してる訳で。」


妖精「君が頑張るのは後1人、あの子で最後でしょ。」


提督「本当に、妖精ってやつは感が鋭いな。」


妖精「言ってるでしょ、色々見てきたって。」


妖精「加賀は…あの子は他とは違うよ…。」


ゆっくりとそう言葉を告げる妖精


提督「違う…か。」


妖精「そう、傷の深さは誰よりも深い、そして…」


そうして、一度息を置き、妖精はその言葉を告げる


妖精「あの子にあるのは恐怖とかじゃない、紛れもない憎しみ。」


提督「…だろうな。目を見れば分かる。」


妖精「今まで、君は相手のトラウマを聞き、前に進む言葉をかける事で救ってきた。」


妖精「でもそれじゃダメ、それじゃあの子は救えないんだよ。」


妖精「あの子はね、ただ憎んでるだけだから、人間を。」


妖精「何なら君…殺されるかもよ。」


その言葉に僕は苦笑を浮かべながら…


提督「それなら、死にたがりの僕とだけは気が合いそうだな。」


そんな様子を見て、妖精はため息を零す


妖精「呑気だなぁ…君。」


提督「ま、それが僕って奴だよ。」


妖精「数々の人間を見てきたけど、君みたいなのは初めてだ。」


妖精「死にたがりになると皆んなそうなるのかい?」


提督「んにゃ、あまりお前の見てきた人間と変わらないさ。」


提督「分かるだろ?人間ってのは醜い生き物だ。」


提督「自らの欲の為に動く。」


提督「僕はただ、それが死ぬ事だっただけだ。」


提督「そして死ぬ為に動いてこうなってる、それだけだよ。」


妖精「死ぬ為に…か。君が死のうとしてるのは分かるけど、どうしてそれが救うと結び付くのか…。」


妖精「まるで逆の行為、救えば救う程死に向かうなんて、意味が分からないね。」


提督「死ぬ為に必要なだけだ。」


妖精「だからどーやってそこが結び付くのかを聞いてるんだけどなぁ…」


困惑する妖精…


提督「んま、そこは僕の事情ってやつさ。」


妖精「それなら深くは追求しないけどさ…。」


妖精「でも、お礼は言わせてもらうよ。」


そうして、妖精はペコリと頭を下げる…


妖精「ありがとう、あの子達を救ってくれて。」


妖精「確かに理由には自分の欲の為、それでも救ったと言う事実がそこにある。」


妖精「だから、ありがとう。」


その言葉に、ポリポリと頭をかく。

いきなりお礼を言われてもむず痒いと言うものである。


提督「こうゆうのは、あんまり慣れないな。」


妖精「まま、妖精さんからの感謝なんて早々貰えないんだから、大切にしなさい。」


提督「まぁ、大事に覚えておくよ。」


妖精「それでよろしい。」


妖精「さてと、本題に戻ろうか。」


声音が真面目な雰囲気に戻る…


妖精「君は、あの子を…加賀を救うのかい?」


その言葉に、僕は迷わず答える。


提督「救うよ、絶対に。」


提督「だってそれが、僕が死ぬ為に必要な事であるから。」


こくりこくりと、妖精が頷く


妖精「うん、予想通りの答えだね。」


妖精「私はあの子が救われることを望む、憎しみから、そして何より過去からの解放を。」


妖精「つまりwin winな関係、だからこそ私は君に話す。」


妖精「あの子の過去を君に…。」


妖精「その話を聞いて、君が何を思い、あの子に何を話し、どう救うのか、全て君に任せる。」


妖精「私は…今まで救ってきた君を信じる。それで、良いかな?」


その質問に、僕はまっすぐと目を見つめて答える


提督「あぁ、僕は救わなきゃならない、だから話してくれ。」


そうして、妖精は、ゆっくりとその過去を話し始めた…




****




妖精「これが、全てだよ。」


妖精「これがあの子の過去、後は君に任せる。」


妖精「頼んだよ、死にたがり君。」


その言葉に、僕は笑みを見せながら


提督「安心しろ、僕は死にたがりだ、死ぬ為には何でもやり遂げるさ。」


妖精「うん、それとさ。」


提督「ん?」


妖精「君が死にたがりとして満足できる死になる事も、私は願っているよ。」


提督「そいつは嬉しいお言葉だ、ありがとな。」


そう言って、彼はこの場を去っていく…

残された私は…


妖精「救うか…。」


妖精「この鎮守府に、君を死にたがりから救う子はいる。」


妖精「君の事だ、隠れて死のうとしてるんだろう、でもきっとあの子は気付くよ、最初に救ったあの子は。」


妖精「私はそう思うよ、死にたがり君…。」


そんな事を、私は呟くのだった…





第12話 気付かなかった気持ち




工廠に向かう提督を見届けた後、大体の仕事が済んだ私は、部屋に戻っていた

特に理由もなく、天井を見上げる


少し…最初の頃を思い出そう…

彼がここにやってきた…その日だ。


最初は、この人も私達を物として扱うんだろうと…

そう思っていた…


でも…彼は救うと言い出した…

私達を救うと、それが目的だと…


そして彼は、本気でしようとしていた…

本当なら偽善だと…私は思っていたと思う…でもあの人の目には…


あの人の目には…その先に明確な何かがあった…

それが何なのかなんて、私には分からない。


ただ、だからこそ…彼には絶対に救うという意志があったからこそ…

私は彼に救いを求めた…今まで溜め込んできた物を…全てぶちまけた…


結果…私は救われた。彼は本当に…救う事ができるんだと確信した瞬間だった。

だから私は、他の子も同じ様に救う事を願った…当たり前の事だ…なのに…なのに…


最近、救っていくことで他の人と仲良くなっていく彼を見て、胸がズキズキする

それどころか…毎回心の奥底からこんな声が聞こえる…



ーー 最初に救われたのは私 ーー



そんな言葉が聞こえる…

何故だろう…私は…いつからこんな風に…


分からない…分からない…分からない…

私は今…どんな気持ちを…


などと、そんな事を考えていると…


トントンと、ノック音がした。


「今開けます〜」


そう答え、ゆっくりと身体を起こす。






僕がノックして数秒経って、ドアが開かれた。


榛名「提督…?」


提督「悪いな、寝てたか?」


流石に寝てる所を起こしたのは気まずいので、謝っておく


榛名「いえ、未だ起きていた所ですが…」


榛名「榛名に何か御用でしょうか?」


提督「いや大した事はない、ただ…。」


僕は…苦笑を浮かべながら


提督「お礼を言いに来ただけだよ、お前に。」


榛名「お礼?」


きょとんと、首を傾げる榛名。


提督「あぁ、もう救い終わる。」


提督「加賀を救って…やっとみんなを救える…だから。」


提督「ここに来てから1番世話になったお前に、礼を言いたかった。」


その言葉に、榛名は僅かに笑みを浮かべながら…


榛名「私は…何もしていませんよ…。」


榛名「ただ、見ていただけです、最初に救われたから…」


榛名「だから他の子を救っていく所を隣で見ていた、救えたのは貴方の力です。」


提督「んな訳ないだろ、お前がいなかったら…僕はもっと苦労してたよ。」


提督「だから、ありがとう。」


提督「本当に…ありがとう。」


榛名「そうおっしゃるなら…そのお礼、ありがたく頂きます。」


提督「そか、そいつは嬉しいよ。」


提督「それから…」


提督「僕はこれが終わったら…提督を辞めるよ。」


榛名「…え?」


途端、目を見開く榛名。


提督「僕の目的は、救う事だ。それを達成した先…僕がここにいるよりも、もっと優秀な奴が来たほうがいい。」


提督「大丈夫、そこら辺のコネはあるんだ。」


ゆっくりと、顔を俯かせる榛名…


榛名「そう…ですか。」


それに対して、僕は笑みを浮かべながら


提督「大丈夫、偶に顔くらいは出すよ。」


そう答える…

榛名も笑みで返しながら…


榛名「はい、お待ちしてます。」


僕もなかなか最低の嘘つきだな…

榛名の顔を見ながら僕はそう思うのだった…



****


再び、私は自室で1人になっていた…

頭の中が更にぐちゃぐちゃになる…


自分でもよく分からないモヤモヤする気持ち…

そして、急に出された別れ…


なんだろう…提督が居なくなる…ただそれだけなのに…

凄く…凄く…凄く…



ーー 凄く嫌だ ーー


その瞬間、様々な嫌が押し寄せてくる



他の人と仲良くされるのが嫌だ


居なくなられるのが嫌だ


私も救われた存在の1人でしかないのが嫌だ…


嫌だ…嫌だ…嫌だ…


特別じゃなきゃ…嫌だ…


その瞬間…私は全てを理解する…


榛名「あぁそっか…私、あの人の事…好きなんだ…。」


榛名「好きで好きで仕方ないんだ…。」


でも、今頃気付いたところでもう遅い…そんな考えが私の頭をよぎる…

だって彼はもう居なくなるから…


いや…違う…。


未だ間に合う…。


全員救い終わった直後…


全てを伝えよう…この気持ちを…。


そう、私が決心したその瞬間だった…

ポケットの携帯が鳴り響いた…


そこに書いてあったのは…吹雪という名前だった。

確か、一度提督と里帰りした後、提督だけ帰ってきたはずだ…


そんな事を考えながら、電話に出る


榛名「もしもし?」


吹雪「もしもし…私です、吹雪です。」


吹雪「今少し、お時間よろしいでしょうか?」


榛名「えぇ、問題ありませんが…」


吹雪「そうですか…なら…」


そう言った、次の瞬間…



ーー お願いです、提督を救ってください ーー



そんな発言に、私は…


榛名「え?」


と、返すことしかできないのだった。




13話 歪んだ人




真夜中の砂浜…。

砂浜に沿って通る道の街灯と月明かりだけがその場所を照らしていた。


海は静まり帰っていた。


穏やかな波の音は、僕からすればこれから起こる嵐の前の静けさのようにも聞こえていた。


綺麗に纏められた短いサイドテール。

彼女は静かに海を見つめていた。


提督「待たせたな、加賀。」


彼女はゆっくりと振り返る。

そしてやっぱりこちらを嫌悪した声音で返答を返してくる。


加賀「やっと来たんですね、提督。」


加賀「待たせたという自覚があるなら、もっと早く来て欲しかった所ではありますが、それは目を瞑りましょう。」


皮肉混じりにそんなことを言う加賀。


提督「ははっ、まぁそう言ってくれるなよ。」


提督「君が気に食わない僕の行動も、今日で最後になるんだ」


加賀「最後、えぇ…そうですね。確かにこれが最後です。」


加賀はそう言って頷く。

彼女はそのまま私から海へと視線を逸らした。


加賀「提督、貴方はここに来て心に傷を負った少女達を見た。」


加賀「そしてその少女達を救うと宣言し、彼女達に寄り添うという姿勢を取りました。」


加賀「貴方は1人1人、傷の重い子達の元を回り、話を聞き、トラウマを吐き出させ、そして甘い言葉で彼女達を立ち直らせました。」


加賀「確かに、彼女達は前を向けたかもしれない。それは認めましょう…。」


加賀は俯きながらそう言う。

でも…そんな言葉で彼女は再び言葉を紡ぐ。


加賀「でも、それでも私はこう言いましょう。」


貴方の行為は偽善の押しつけです__。


提督「それは中々、手厳しい評価だな。」


加賀「暖かい言葉を並べて甘やかすのはさぞ気持ちの良いことだったのでしょう。」


加賀「そして段々と貴方に全幅の置く信頼を置ける少女達が増えていく…さぞ悦に浸れるものだったのでしょう。」


提督「僕はただ…傷付いた子達を救いたいだけだよ、君も含めてね。」


加賀「いいえ提督、貴方の言葉の背後には常に自分の欲望が見え隠れしている。」


加賀は僕の言葉を即座に否定した。

そして彼女は僕を睨みつける…それはまるで得体の知れない化け物を見ているかのように。


加賀「そう…命を、心を救うなんて建前で並べる言葉の裏に…正当化、偽善、そして歪んだ欲望が隠れているんですよ。」


加賀「貴方は死にたいと思ってる。その姿はさながらはた迷惑な自殺希望者ですよ。」


加賀「歪んでいる…貴方は本当に歪んでいる…、自分が早く死ぬために、足枷となる何かを解くために人を救っているんです。」


そう言う加賀の目は、怒りに満ち溢れている。


加賀「だから自分が死んだ時の影響なんて考えていない、本当に歪んでいて……反吐が立つ!」


加賀「だから……!!」


加賀はそう言って僕に向けて弓を引く…。

弦が引っ張られ弓の軋む音が彼女の怒りを表しているかのようだった。


加賀「そんな貴方に私は救えない…。この心に燃え盛る憎悪は消しされない!」


加賀「分かったら金輪際、私に関わらないで下さい。」


加賀「さもないと…私の矢は、どこに刺さるか分かりません。」


提督「参ったな。」


僕は思わず頭をかいていた。


提督「そこまで見抜かれてしまうとはな。」


提督「そうだよ、僕は…自分が悔いなく死ぬためにこんな事をしてる。」


提督「それでも…それでもだ加賀。」


そう…確かに僕は歪んでいる。

約束を果たさないと死ねない、だからこうやって頑張っている。


それは確かに歪んでいるのだろう。

でもそれで良い…僕は最初から言い聞かせていたはずだ。身勝手な死にたがりだと。


だから…ここで諦める訳には行かない。

アイツを忘れられない僕は、諦めることなんてできない。


僕は1歩1歩、歩みを進める。


加賀「ッ!近付くなと言ったはずです!」


加賀「これ以上は本当に……」


提督「それでも、僕は君に手を伸ばすよ、加賀。」


提督「なんてたって、死にたがりにその脅しは通用しないからね。」


提督「さぁ加賀…、次は。」


君の話をしよう__。


後書き

皆さんこんにちは。
第13話如何でしたでしょうか。
お久しぶりです、かぴおです。3年ぶりに更新しました、我ながら完全なる黒歴史…。読むだけで胸が痛い痛い…。ただそれでも我が子です。作品は我が子です。頑張って風呂敷を畳んでやるのが親心と思い帰ってまいりました。かなり物語としてはぐちゃぐちゃですが、何とか着地させたいと思います。
13話以降も随時更新していきます。この作品は何とか完結させたい。
自分の中でもちょっと恥ずかしい作品ではありますが…何とか風呂敷を畳みます、頑張ります…。
厳しい意見、アドバイス等お待ちしております!


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2024-12-01 22:14:38

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1: ししろこ 2020-11-10 00:01:36 ID: S:-xpzWp

○○は一体誰なんでしょうかね…これから明かされていきそうな展開に期待が膨らみます!頑張ってください!

2: 嵐山 2020-11-10 00:47:20 ID: S:ppZtII

安定の高クオリティ...期待しています

3: たぴおさん 2020-11-10 01:10:14 ID: S:dmAQOX

コメントありがとうございます!今後も楽しんでもらえるように頑張っていきます。

4: K,E 2020-11-23 04:47:53 ID: S:dAmmv0

初コメです!

更新頑張ってください。

5: たぴおさん 2020-11-23 21:41:13 ID: S:5OfTay

ありがとうございます!頑張ります!

6: SS好きの名無しさん 2020-11-28 19:41:25 ID: S:6J13CI

提督が救う中で度々見せる死に対する執着…果たしてこの先どうなるのか…期待してます!頑張って下さい!

7: たぴおさん 2020-11-28 21:22:02 ID: S:XEOYfK

ありがとうございます😭

8: SS好きの名無しさん 2020-12-05 18:12:38 ID: S:6YANOz

単調すぎておもん無い

9: たぴおさん 2020-12-05 19:00:22 ID: S:2RWMv_

ご指摘ありがとうございます。今後は改善して楽しんでいただける様な作品を書ける様頑張ります!

10: SS好きの名無しさん 2020-12-12 08:44:12 ID: S:zqhqsL

自己満足作品。面白くない。これ面白いって言ってる奴頭おかしい

11: SS好きの名無しさん 2020-12-19 14:13:37 ID: S:n5tmHf

この作品良いですね、読む前よくあるブラ鎮ものだと思ってたのが恥ずいです。1人1人、題材を決めてサブタイトルもその子の話に合わせて考えて、でもあくまで提督くんの物語として絞っている所もグットです。死にたがりの原因は何なのか、〇〇とは何なのか、そこまで死に固執するのは何なのか、気になります。
最後に1つ、どこでも良いのでこの作品に使って欲しい言葉があります。この作品読んでてこの作品に送る言葉として思い付いたので出来れば使ってみてください。
「救えば救う程、死に向かう。」

12: SS好きの名無しさん 2020-12-22 02:31:03 ID: S:n5mfP3

時雨に関連するワードの雨の使い方が上手い…

-: - 2020-12-28 18:09:18 ID: -

このコメントは削除されました

-: - 2020-12-28 18:15:06 ID: -

このコメントは削除されました

15: SS好きの名無しさん 2021-04-29 15:45:39 ID: S:zbUgd0

救うために死ぬ?前任より質が悪いわ

16: たぴおさん 2021-04-29 18:58:06 ID: S:3aSrC7

批評ありがたくお受けいたします、今回の意見を受け止め今後は面白い作品だと思っていただけるよう頑張って参ります。コメントありがとうございます。


このSSへのオススメ

2件オススメされています

1: SS好きの名無しさん 2020-11-28 19:42:47 ID: S:n7ES_s

読んでる中で多少の読みづらさはあります。
ですが題材がとても引き込まれるもので、しっかりと自分の世界を描けている作品です

2: 嵐山 2020-11-30 13:06:56 ID: S:eD0Utd

惹きこまれてとても面白いです、続き期待しています


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