2023-05-13 18:22:11 更新

概要

艦娘がいるからと言って全員が艦娘の世界を知れる訳ではない。その世界に入れるのは極わずか、非常に狭き門。その割にブラック……だから興味は無いしダラダラ暮らしたかった……のに!
ひょんな事から艦娘の大淀さんが同居人に……!


前書き

新!シリーズ!不定期更新だけどよろしくお願いします!



『艦娘』


この世界には…そう呼ばれる少女達が存在する。

ある日突然この世界に現れた深海棲艦という化け物。


海を生きる領域とするこの化け物に対抗されて作り出されたのが、船の魂を宿した少女達だった。


それこそが、艦娘。

今も世界の海の平和の為に、艦娘達は戦っている。


そしてその艦娘達が集まる鎮守府の最高責任者にして、艦娘達を率いる指揮官こそ…


提督、と呼ばれる者たちだ。

提督になれる人間は少ない。


優秀でなければいけないから?

身体的に優れていなければならないから?


…勿論それもあるのだが、1番の鬼門は…

妖精が見える事だ。


この世界において妖精は、艦娘の建造、装備の開発、艦載機の搭乗員、その他にも非常に重要な役割を担っている。


この妖精が見える人間が非常に稀であるからこそ、提督は限られた人間しかなれないのだ。


そして今…その提督は……


圧倒的な人材不足に陥っていた……!!




プロローグ 大問題!提督が足りない!?





「これは……大問題だな。」


少ししわがれた声が部屋に響いた。

声の主の貫禄のある面持ちも相まって、会議室は重苦しい雰囲気に包まれていた。


ここは海軍上層部の会議室。

現在、ある問題についての議論がなされているところだ。


「全線の兵がどれだけ居ても、指揮官が足りないなど笑い物だな。」


先程の声の主が再び口を開く。

声の主は海軍大臣、資料に目を通しその現実に頭を抱える他無い様子だった。


周りを見ればその他幹部も同じような反応。


「ご覧の資料の通り、現在我が海軍は鎮守府の建設及び艦娘の建造においてある程度の余裕を確保しておりますが…。」


「明らかに各鎮守府に配属させる提督が足りていません…。」


海軍の人事を担当する幹部がようやくその現実を口にして見せた。


提督の不足…その原因は明らかである。

妖精が見える人間、これがあまりにも少なすぎるのである。


現状、戦況にはある程度余裕が出てきた。

ここで少しづつでもこちらの海域を広げたい。


その為には各所に鎮守府を置きたいのだが……


「指揮官が居なくては話にならんな。」


大臣の言う通りである…。

艦娘に指揮でもさせようか、という冗談でも言いたいくらいだ。


「大臣、そこでなのですが…私に1つ案があります。」


左手に座る1人の幹部が手を挙げた。


「聞こう。」


「は、実は妖精の見える人間について…ひとつ新しい情報が入りました。」


「ほう?」


「妖精が見える人間の血縁者…特に兄弟関係にある者は妖精が見える確率が高いという事です。」


「そこでなのですが…現在配属されている提督の中で、血縁者を居るものには、その者を自身の鎮守府の補佐として着任させ、1年間の養成期間を与えます。」


「面白い、続けたまえ。」


「調べによれば、兄弟を持つ提督はかなり居ます、この手法で各鎮守府で1年間提督として養成すれば…1年後にはかなりの人材が手に入るかと。」


「なるほど…、多少抵抗する者も居るだろうが今は戦時中だ。」


「そもそも徴兵があってもおかしくは無い、多少無理をしてでもやらせるとしよう。」


「この案で行く、1年間で人材不足を解決させるぞ。」


こうして…提督の人材不足解決に向けての計画が動きだすのだった。




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「血縁者を連れてこいだぁ!?」


執務室に響く声…。

彼女の名前は…中村 楓那。


数ある鎮守府の中でも大きな規模の呉鎮守府の女性提督である。


楓那「えーっと…大淀さんでいいんでしたっけ?」


自身の目の前に立つ少女に楓那は問掛ける。

この少女は大本営からの遣いらしい。


「はい、大本営からの派遣でまいりました、大淀です。」


大淀「今回の計画、楓那提督の補佐として派遣されましたので、お好きにお使いください。」


楓那「いやまぁ…それはありがたいんだけどさ…」


楓那「えっ…?提督ってそんな足りてないの?」


大淀「はい…上は戦況に余裕が出来たこのタイミングで1年間でまとまった人材を確保したいとの事で…。」


楓那「にしてもこんなぶっ飛んだ計画よく思いつくわね〜…連れてこられる側の事情もあるでしょうに…。」


楓那「まぁ…そんくらい上も焦ってるのか。」


とは言ったものの、本当に強引である。

無理やり血縁者を連れて来るこちらの身にもなって欲しい。


それで恨まれたら溜まったものじゃない。

血縁者の人生設計をぶっ壊す役目を言い渡されたようなものだ、楓那からすれば全く勘弁して欲しいものだった。


楓那「にしても血迷ってんなぁ…上も。」


思わずそう言わずには要られない。


大淀「ご不満は…十分理解致します、ただ私も1艦娘ですので…」


楓那「あ〜!ごめんね!大淀さんに怒ってる訳じゃないのよ、寧ろ板挟みで1番大変な立場だよね…。」


しまった、こういう中間管理職的な立場の辛さは自分だって分かっているつもりだ。


無駄な気苦労を使わせてしまった。

楓那は心の中で猛省する。


にしてもこの大淀さんもだいぶ不憫だ。

楓那は心の底からの同情が沸く。


大淀「さて…心苦しいですがそろそろ養成する為に連れていく血縁者を選んでいただきます。」


楓那「そうだねぇ…」


顎に手をやり、楓那は思考する…。

自身にも妹や弟が何人かいる。しかし可愛い弟や妹達をこの大変な職業に無理に連れてくるのはやはり心が痛い…。


それぞれ夢も持っている。

戦時中とは言え…なるべくなら守ってやりたい。


何とか…ルールの穴をついた策を…

と、そこで楓那は叫んだ


楓那「あいつだぁぁぁぁ!!!!」


大淀「っ!?どうかなされました?」


楓那「大淀さん、確か連れてくるのは1人…最悪の場合は従兄弟でも可だよね?」


大淀「えっ?まぁはい…規定には収まりますが…」


楓那「それなら居たわ…ここに連れて来ても罪悪感感じない奴が。」


楓那「あいつに決めた!」


にししっと、不敵な笑みを浮かべる楓那。

大淀はそんな楓那にただただ首を傾げるしかなかった。


……そして、この時大淀は知る由もなかった。

これが…彼女にとって目まぐるしい1年間の始まりになる事を…。



続く。





第1話 今日から貴方の同居人!





子供の頃から不思議な生き物が見えた。

それは昔よく遊んでいた海辺で見ていた気がする。


ちっちゃくて、いつもせっせと働いていた何か。


…妖精、だったのだろう。

大人になった今ではそう思う。


「懐かしいな…」


昼下がりの縁側、茶を飲みながら昔の事を思い出し感傷に浸るこの男。


そのような行動をするには少しばかり早すぎる若い見た目とこれといって何も無い平凡な顔立ち。


彼の名前は、中葉 椛。(なかは もみじ)

現在は昼の12時、グーダラと縁側で過ごすのがこの男のルーティンである。


さてこの男、何故こんなところでグーダラと過ごしているのかと言うと……


言ってしまえば簡単、不労所得を得たニート生活男だからである。


昔から椛は面倒くさがり屋だった。

何をするにもやる気を出さず、まず先にサボる事を考える、それがこの男である。


皆んなが公園で遊んでいる時は家で寝ているか、ベンチで寝ているかの2択。


宿題はまともに提出しない、授業も抜け出して昼寝三昧。


などなど、上げればきりもないほど出てくる。


そんな彼にも唯一将来役に立つ強みがあった。

むしろそのお陰で椛はこうやってだらけて生きていけるのかもしれない。


そう、「妖精が見える」ことだ。

何度も言うようにこの世界では妖精が見える人間は大変貴重だ。


子供の頃から妖精が見えると判明すると、実はその時点で国から支援金が出る制度まで揃っていたりする。


そんな恩恵も受けられるからか、椛は特に親に怒られることも無くただ適当に毎日を過ごしてこれた。


オマケにそれは大人になってからも変わらずで、未だに妖精が見える、という1つのアドバンテージで様々な使える制度を使い、支援金や生活保護を受けてくらすダメ人間なのである。


ただ……基本的にこれら椛が使う制度には共通の条件がある。


『支援金制度を使う人間は非常事態の場合、提督候補生として招集できるものとする。』


「まぁ、今は戦況は有利、呼ばれるわけないんだよなぁ。」


一般社会側に居る彼は知らない、それとは裏腹に人材不足であること。


……だからこそ、もうすぐダラけてきた付けが回ることも……彼は知らないのだ。


近ずいて来ている、彼の天敵である……彼女。

そう……


中村 楓那 は。



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椛「あーぁ、今日も生活するのめんどくさいなぁ。」


時は楓那に依頼が来てから1日後、椛は今日も今日とて不労所得でグーダラ生活。


人間として恥ずかしくないのか、なんて疑問はとうに跳ね除け終わっているのだ。


椛「今日はゲームでもするかなぁ……」


などと……椛がいつも通りの日常を始めようとした…その瞬間だった。


「コラァァァ!!椛ぃぃぃぃ!!」


椛「……げ!?この声は……!?」


彼の家すら揺れるような声が響く。


「楓那提督……!?」


続けるように違う女性の声。

いや…そんな事は今はどうでもいい。


椛「……んで、なんであいつが…!!」


確かに聞こえた…「楓那」と。


慌てる椛……とにかく玄関を締めなければと縁側を立とうとした瞬間だった。


楓那「その思考は読めてるんじゃゴラァ!!」


縁側の塀から勢いよく登ってくる女性。

楓那である、いや鬼である、いや閻魔である。


楓那「だらけてんじゃ…ねぇ!!」


鉄拳制裁……!

塀を登り終えた楓那からの助走を付けた強烈なパンチが椛を襲う……!


椛「ぐべあ!?」


縁側から奥の畳の部屋まで吹き飛ぶ椛。

見事な左ストレート、その威力がむしろ増していて非常に恐ろしい。


椛は痛む頬を抑えながら叫ぶ


椛「っっっってぇぇぇ!!楓那ぁ!お前何しにここに来たんだ!」


楓那「ダラケてるあんたにツキが回ってきたのよ。」


楓那「話はあと、ほら!早く茶を出せふたつよ!」


椛「2つ!?まだ誰か呼んでるのかよ!?」


楓那「大淀、塀上ちゃっていいわよ。」


ここで困惑にまみれた大淀がようやく塀を乗り越え着地する。


大淀「あの……まさか連れてきて良い奴って」


楓那「まぁ、話は後でゆっくりね。」




……


椛「んで……結局何をしに来たんだよ?」


しかめっ面で茶を出す椛。

大の苦手な楓那が来たのだ、仕方の無い反応である。


楓那は椛の従姉妹であり大の天敵。

子供の頃から何かとうるさくて苦手なのだ。


楓那「今話した通りよ、こっちは提督のなり手が足りないって話、ね?大淀。」


大淀「えっえぇ……そうですね。」


ここで振られても困る、大淀は強くそう思った。

そして自分とは対極の性格をしていそうなこの男とも反りが合わないと少し思ってもいた。


椛「……だから僕にどうしろと?」


楓那「もう分かるでしょ?私が育てる提督候補生としてあんたを選んだ。」


楓那「どーせっグーダラ不労所得で生きてるあんたなら良いわ、そろそろ社会の苦労を知りなさいな。」


椛「ふっっっざけんな!」


椛「僕は好き好んでこのグーダラをやってるんだい!妖精が見える?知らん!何処までもグーダラが僕の心情!」


椛「提督候補生なんて嫌だし、この家から離れるのも嫌だよ。」


楓那「と……あんたがそこまで言うのも把握してる。」


椛「なんだと?」


警戒を深める椛。

だいたいこう言う時、楓那は変な悪巧みを考えている。


楓那「きっとね、水と油の私が育てようにもこのモンスターは提督としては育たない。」


楓那「そこで天才私は考えました。」


楓那「…大淀さん、貴方は私が好きに使っていいのよね?」


大淀「…そうですけど、あの……すんごい嫌な予感が……」


大淀が難色を示そうとした……その瞬間だった。

それを静止するように……


楓那「1年間違う人物と触れ合うことで貴方は変われるんじゃないかって。」


楓那「丁度この家と鎮守府が通えることも奇跡的だったわ。」


楓那は話を続ける……。

そして楓那は……ニヤリと微笑みながら宣言する!


楓那「中葉 椛!提督候補生として貴方の補佐としてこの大淀をつけます!1年間共同生活の中で提督として相応しい人材に成長されたし!」


楓那「つまり……」


楓那「大丈夫、艦娘のが力は強いから乙女と言えども襲われる心配もないし?二人が恋仲でそういう事が起きるならそれも良し!」


椛「はっ……」


大淀「はっ……」



[chapter: 提督になるまで、大淀とのドキドキ共同生活のスタートよ!!

]




「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」


その瞬間……2人の絶叫が部屋にこだまするのだった……。



続く。


後書き

どもども皆さんこんにちは!かぴおさんです!
まさかの同居生活命令!次回をお楽しみに!ここまで読んでくれてありがとうございました!
次回いつになるか分からないけれど良ければよろしくお願いします!それではまた!


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